(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】鉄道車両構体及び鉄道車両構体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B61D 17/06 20060101AFI20240402BHJP
B61F 1/10 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B61D17/06
B61F1/10
(21)【出願番号】P 2020042265
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】真下 学
(72)【発明者】
【氏名】麻生 和夫
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-048015(JP,A)
【文献】特開2014-108635(JP,A)
【文献】特開2017-109730(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109177994(CN,A)
【文献】国際公開第2010/109890(WO,A1)
【文献】特開平11-268640(JP,A)
【文献】特開2019-111928(JP,A)
【文献】特開昭54-110507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0096534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/06
B61F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室が設けられる先頭車両を構成する鉄道車両構体であって、
側構体を含む車両構体を台枠上に形成してなる本体部と、
前記本体部における車両前端側に接合され、前記本体部への接合によって前記運転室を構成する先頭部と、を備え、
前記本体部の前記台枠は、
少なくとも上面側が開口した筒状のポケットを有し、
前記先頭部は、前記運転室よりも車両前端側で車両高さ方向に延びる衝突柱を有し、前記衝突柱を前記ポケットに差し込んだ状態で前記本体部に対してボルト固定されて
おり、
前記衝突柱は、前記ポケットに対して非固定となっている鉄道車両構体。
【請求項2】
前記台枠は、前記側構体よりも車両前端側に張り出す張出部分を有し、
前記ポケットは、前記張出部分に設けられている請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記先頭部を車両正面から見た場合に、前記衝突柱の下端部は、前記台枠と交差する位置まで延びている請求項1又は2記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記ポケットは、前記台枠から車両前端側に突出するように設けられており、
前記ポケットの車両前端部分と前記台枠とが補強部材によって連結されている請求項1~3のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項5】
前記先頭部は、前記運転室よりも車両前端側で少なくとも車両幅方向に延びる運転室柱を有し、
前記衝突柱は、前記運転室柱に対して溶接されている請求項1~
4のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項6】
前記衝突柱は、中空部材によって形成されている請求項1~5のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項7】
前記先頭部を前記本体部に固定するボルトは、前記先頭車両の前後方向に沿う向きに取り付けられている請求項1~6のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項記載の鉄道車両構体の製造方法であって、
前記本体部において前記運転室となるスペースに運転台を含む機器類を搬入及び設置する工程と、
前記機器類の設置後、前記先頭部の前記衝突柱を
少なくとも上面側が開口した筒状の前記ポケットに差し込み、前記台枠上に前記先頭部を設置する工程と、
前記台枠上に設置した前記先頭部を前記本体部に対してボルト固定する工程と、を備え
、
前記台枠上に前記先頭部を設置する工程では、前記衝突柱を前記ポケットに対して非固定とする鉄道車両構体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両構体及び鉄道車両構体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車両には、客室を構成する車両のほか、運転室が設けられた車両(いわゆる先頭車両)が連結されている。先頭車両において、運転室には、運転台や当該運転台に付随する各種機器類が配置されている。また、先頭車両を構成する鉄道車両構体には、万一の障害物等との衝突に備え、運転室を保護するための衝突柱が設けられている。例えば特許文献1に記載の鉄道車両構体では、鉄道車両の底部を構成する台枠の車両長手方向の端部に、屋根構体に向かって延びる柱部材が設けられている。柱部材と台枠との接合部付近には、所定以上の荷重によって接合部の破断よりも前に曲げ変形を開始するヒンジ部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、先頭車両を構成する鉄道車両構体の製造効率の向上のため、当該鉄道車両構体のモジュール化が検討されている。先頭車両のモジュール化にあたっては、例えば主として客室部分を構成する本体部と、当該本体部との間で運転室を構成する先頭部とを形成し、本体部に先頭部を結合することにより先頭車両を形成することが考えられる。この場合、モジュール化された先頭車両では、上述した衝突に対する十分な安全性が求められるほか、先頭部を本体部に接合するに際しては、運転室に配置される運転台等の各種機器類の設置作業等に悪影響を及ぼさないような工法を採用する必要がある。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、先頭車両の製造効率の向上が図られると共に、衝突に対する安全性を担保できる鉄道車両構体及び鉄道車両構体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る鉄道車両構体は、運転室が設けられる先頭車両を構成する鉄道車両構体であって、側構体を含む車両構体を台枠上に形成してなる本体部と、本体部における車両前端側に接合され、本体部への接合によって運転室を構成する先頭部と、を備え、本体部の台枠は、柱を差し込み可能なポケットを有し、先頭部は、運転室よりも車両前端側で車両高さ方向に延びる衝突柱を有し、衝突柱をポケットに差し込んだ状態で本体部に対してボルト固定されている。
【0007】
この鉄道車両構体では、本体部と先頭部とをモジュール化することにより、先頭部の接合前に本体部において、運転台を含む機器類の搬入及び設置スペースを広く確保できる。したがって、運転台を含む機器類の設置作業性を十分に確保でき、製造効率の向上が図られる。また、この鉄道車両構体では、本体部と先頭部との接合をボルト固定とすることで、溶接の場合と比較して、既に設置された運転台を含む機器類に悪影響が及ぶことを回避できる。本体部と先頭部との接合にあたって、先頭部側の衝突柱を台枠側のポケットに差し込むため、衝突の際の荷重を衝突柱と台枠とに効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を十分に担保できる。
【0008】
台枠は、側構体よりも車両前端側に張り出す張出部分を有し、ポケットは、張出部分に設けられていてもよい。この場合、衝突の際の荷重を衝突柱と台枠とにより効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を一層十分に担保できる。
【0009】
先頭部を車両正面から見た場合に、衝突柱の下端部は、台枠と交差する位置まで延びていてもよい。これにより、衝突の際の荷重を衝突柱と台枠とにより効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を一層十分に担保できる。
【0010】
ポケットは、台枠から車両前端側に突出するように設けられており、ポケットの車両前端部分と台枠とが補強部材によって連結されていてもよい。これにより、衝突の際の荷重を衝突柱と台枠とにより効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を一層十分に担保できる。
【0011】
衝突柱は、ポケットに対して非固定となっていてもよい。この場合、衝突柱とポケットとの固定を省略する分、製造工程の簡単化が図られる。
【0012】
先頭部は、運転室よりも車両前端側で少なくとも車両幅方向に延びる運転室柱を有し、衝突柱は、運転室柱に対して溶接されていてもよい。この場合、衝突柱の強度が向上し、衝突に対する安全性を更に向上できる。
【0013】
本開示の一側面に係る鉄道車両構体の製造方法は、上記鉄道車両構体の製造方法であって、本体部において前記運転室となるスペースに運転台を含む機器類を搬入及び設置する工程と、機器類の設置後、先頭部の衝突柱をポケットに差し込み、台枠上に先頭部を設置する工程と、台枠上に設置した先頭部を本体部に対してボルト固定する工程と、を備える。
【0014】
この鉄道車両構体の製造方法では、本体部と先頭部とをモジュール化することにより、先頭部の接合前に本体部において、運転台を含む機器類の搬入及び設置スペースを広く確保できる。したがって、運転台を含む機器類の設置作業性を十分に確保でき、製造効率の向上が図られる。また、この鉄道車両構体の製造方法では、本体部と先頭部との接合をボルト固定とすることで、溶接の場合と比較して、既に設置された運転台を含む機器類に悪影響が及ぶことを回避できる。本体部と先頭部との接合にあたって、先頭部側の衝突柱を台枠側のポケットに差し込むため、衝突の際の荷重を衝突柱と台枠とに効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を十分に担保できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、先頭車両の製造効率の向上が図られると共に、衝突に対する安全性を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】鉄道車両構体の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した鉄道車両構体の分解斜視図である。
【
図5】衝突柱とポケットとの結合部分を示す要部拡大斜視図である。
【
図6】(a)は、
図5の平面図であり、(b)は、
図5の正面図である。
【
図7】鉄道車両構体の製造工程の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る鉄道車両構体及び鉄道車両構体の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、鉄道車両構体の一実施形態を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した鉄道車両構体の分解斜視図である。
図3は、
図1の正面図であり、
図4は、
図1の側面図である。
図1~
図4に示す鉄道車両構体1は、運転室R(
図4参照)が設けられる先頭車両2を構成する金属製の構体である。「先頭車両」は、客室のみで構成される他の車両との区別のための便宜的な称呼である。先頭車両2は、例えば複数の車両が連結される場合には、複数の車両の先頭及び最後尾にそれぞれ編成され、車両の進行方向に応じていずれかの車両が先頭となる。先頭車両2は、編成によっては、複数の車両の中間に連結され得る。
【0019】
図1~
図4に示すように、先頭車両2を構成する鉄道車両構体1は、主として客室部分を構成する本体部3と、本体部3における車両前端側に接合され、本体部3への接合によって運転室Rを構成する先頭部4とを備え、これらの本体部3及び先頭部4によってモジュール化されている。運転室Rは、運転士などの乗員が車両の運転を行うスペースであり、運転台M1及びこれに付随する各種機器類M2(
図7参照)が配置されている。
【0020】
本体部3は、側構体11と、屋根構体12とを含む車両構体13を台枠14上に形成することによって構成されている。側構体11は、先頭車両2の側面を構成する構体であり、台枠14の幅方向の両端部にそれぞれ立設されている。側構体11には、運転室Rの出入口となる扉が設けられる開口部11aのほか、客室の出入口となる扉が設けられる開口部、客室の窓が取り付けられる開口部などが設けられている。屋根構体12は、先頭車両2の屋根部を構成する構体であり、例えば上方に向かって緩やかに凸状に湾曲し、台枠の幅方向の両端部の側構体11,11の上端同士を繋ぐように設けられている。屋根構体12には、車内の温度を調整するためのエアコンディショナーや、パンタグラフなどが設置されている。
【0021】
台枠14は、先頭車両2の床面を構成する構体であり、台枠14の幅方向の両端部の側構体11,11の上端同士を繋ぐように、屋根構体12と対向して設けられている。台枠14は、例えば
図2及び
図4に示すように、側構体11よりも車両前端側に張り出す張出部分15を有している。張出部分15の張り出し量は、先頭部4における車両長手方向の長さに応じて適宜調整されている。張出部分15には、柱を差し込み可能なポケット16が設けられている。本実施形態では、ポケット16は、先頭車両2の幅方向の中心を挟んで左右にそれぞれ1体ずつ配置されている。
【0022】
先頭部4は、運転室Rを画成する運転室構体21と、先頭車両2の万一の衝突の際に運転室Rを保護する衝突柱22とを有している。先頭部4の外面側には、例えば繊維強化プラスチックなどで形成した前面覆いなどが更に取り付けられるが、説明の簡略化のため、
図1等では前面覆いを省略している。運転室構体21は、運転室Rの前面を構成する前面部分23と、運転室Rの側面前方側を構成する側面部分24と、運転室Rの天面を構成する天面部分25とを有している。
【0023】
前面部分23には、運転室Rの前面窓が取り付けられる開口部23aや、貫通路(先頭車両に連結される車両と往来するための通路)用の扉が設けられる開口部23bなどが設けられている。前面部分23の両脇下部には、本体部3との接合に用いられる板状の垂下部26がそれぞれ設けられている。垂下部26は、例えば台枠14の車両高さ方向の厚さよりも小さい長さで前面部分23の下端から下方に突出している。また、前面部分23の側面部分24及び天面部分25における本体部3側の端部には、垂下部26と共に本体部3との接合に用いられる内向きフランジ部27(
図3及び
図4参照)が連続的に設けられている。
【0024】
衝突柱22は、例えば断面矩形の中空の金属部材によって形成されている。本実施形態では、衝突柱22は、
図3に示すように、台枠14のポケット16の形成位置と対応するように先頭車両2の幅方向の中心を挟んで左右にそれぞれ1本ずつ配置され、運転室構体21の前面側に溶接によって固定されている。衝突柱22は、いずれも車両高さ方向に延びている。衝突柱22の上端部22aは、開口部23aに設けられる前面窓に衝突柱22が被らないように、前面部分23の開口部23aの下縁よりも下方に位置している。また、衝突柱22の下端部22bは、先頭部4を車両正面から見た場合に、台枠14と交差する位置まで延びている。本実施形態では、衝突柱22の下端部22bは、台枠14の車両高さ方向の厚さと同程度で前面部分23の下端から下方に突出し、台枠14の底面14a付近となる位置まで延びている。
【0025】
次に、上述した本体部3と先頭部4との接合構造について更に詳細に説明する。
【0026】
本体部3と先頭部4との接合にあたり、
図5及び
図6に示すように、台枠14の張出部分15には、上述したポケット16が設けられている。ポケット16は、例えば金属部材によって形成され、衝突柱22の形状に対応して上面側が開口した有底の箱型形状をなしている。本実施形態では、ポケット16は、張出部分15の前面側に溶接によって固定され、台枠14から車両前端側に突出した状態となっている。
【0027】
また、本実施形態では、ポケット16の車両前端部分16aと台枠14とが補強部材31によって連結されている。補強部材31は、例えば金属製の板状部材であり、ポケット16の車両前端部分16aの角部Kと、張出部分15の前面側とにそれぞれ溶接されている。補強部材31は、ポケット16の側面部分24との間に平面視で三角形状の空間が形成されるように、側面部分24に対して傾斜して配置されている(
図5及び
図6(a)参照)。
【0028】
このポケット16には、先頭部4側の衝突柱22が差し込まれている。衝突柱22の下端部22bは、ポケット16の底面部分16bに突き当てられており、これにより、ポケット16に対して衝突柱22が位置決めされている。ポケット16に差し込まれた衝突柱22は、ポケット16に対して溶接もボルト等による固定もなされておらず、ポケット16に対して非固定となっている。
【0029】
ポケット16に対して衝突柱22が差し込まれた状態において、
図4に示すように、先頭部4の垂下部26は、台枠14の張出部分15の前面側に当接し、且つ先頭部4の内向きフランジ部27は、側構体11及び屋根構体12の車両前端側に当接する。先頭部4の垂下部26と台枠14の張出部分15との当接部分、及び先頭部4の内向きフランジ部27と側構体11及び屋根構体12との当接部分には、ボルトBを挿通させる挿通孔及び当該挿通孔に対応するボルト孔が一定の間隔をもって設けられている。そして、挿通孔を通してボルト孔にボルトBをそれぞれ螺合することにより、先頭部4は、衝突柱22をポケット16に差し込んだ状態で本体部3に対して強固に固定されている(
図1及び
図4参照)。
【0030】
次に、鉄道車両構体1の製造方法について説明する。
【0031】
図7は、鉄道車両構体の製造工程の一例を示す側面図である。同図に示すように、鉄道車両構体1を製造する場合、側構体11及び屋根構体12等を組み立てることにより台枠14上に車両構体13を形成し、予め本体部3を形成する。また、運転室構体21に衝突柱22を固定し、予め先頭部4を形成する。本体部3を形成した時点では、車両構体13の車両前方側が開口した状態となっている。この開口を利用し、運転室RとなるスペースRaに運転台M1及びこれに付随する各種機器類M2を搬入する。搬入後、運転台M1及び各種機器類M2を運転室RとなるスペースRaに設置し、必要な配線、配管、内装の取付作業を実施する。
【0032】
次に、
図8に示すように、先頭部4の衝突柱22を台枠14側のポケット16に差し込み、台枠14の張出部分15上に先頭部4を設置する。また、先頭部4の垂下部26を台枠14の張出部分15の前面側に当接させ、先頭部4の内向きフランジ部27を側構体11及び屋根構体12の車両前端側に当接させる。台枠14に先頭部4を設置した後、
図9に示すように、当該当接部分同士をボルト固定することにより、先頭部4を本体部3に対して固定する。これにより、運転室Rが構成され、
図1に示した鉄道車両構体1が形成される。
【0033】
以上説明したように、この鉄道車両構体1及び鉄道車両構体1の製造方法によれば、本体部3と先頭部4とをモジュール化することにより、先頭部4の接合前に本体部3において、運転台M1を含む各種機器類M2の搬入及び設置スペースを広く確保できる。したがって、運転台M1を含む各種機器類の設置作業性を十分に確保でき、製造効率の向上が図られる。また、鉄道車両構体1では、本体部3と先頭部4との接合をボルト固定とすることで、溶接の場合と比較して、既に設置された運転台M1を含む各種機器類M2に悪影響が及ぶことを回避できる。本体部3と先頭部4との接合にあたって、先頭部4側の衝突柱22を台枠14側のポケット16に差し込むため、衝突の際の荷重を衝突柱22と台枠14とに効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を十分に担保できる。
【0034】
本実施形態では、台枠14が側構体11よりも車両前端側に張り出す張出部分15を有し、ポケット16は、張出部分15に設けられている。このような構成により、衝突の際の荷重を衝突柱22と台枠14とにより効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を一層十分に担保できる。
【0035】
本実施形態では、先頭部4を車両正面から見た場合に、衝突柱22の下端部22bが台枠14と交差する位置まで延びている。これにより、衝突の際の荷重を衝突柱22と台枠14とにより効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を一層十分に担保できる。
【0036】
本実施形態では、ポケット16が台枠14から車両前端側に突出するように設けられており、ポケット16の車両前端部分16aと台枠14とが補強部材31によって連結されている。これにより、衝突の際の荷重を衝突柱22と台枠14とにより効率的に分散させることができる。したがって、衝突に対する安全性を一層十分に担保できる。
【0037】
本実施形態では、衝突柱22がポケット16に対して非固定となっている。この場合、衝突柱22とポケット16との固定を省略する分、製造工程の簡単化が図られる。
【0038】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、断面矩形の2本の衝突柱22を運転室Rよりも車両前端側に配置しているが、衝突柱22の形状及び本数は、要求される強度に応じて適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、ポケット16に対して衝突柱22が非固定となっているが、ポケット16に対して衝突柱22を溶接やボルトによって固定してもよい。
【0039】
また、
図10に示すように、先頭部4において、運転室Rよりも車両前端側で少なくとも車両幅方向に延びる運転室柱41を設け、衝突柱22を運転室柱41に対して溶接した構成を採用してもよい。
図10の例では、運転室柱41は、一又は複数の横骨42と縦骨43とによって構成されている。横骨42及び縦骨43は、例えば断面コの字状の鋼材によって形成されている。横骨42は、運転室Rの前面窓が取り付けられる開口部23aの下縁よりも下方となる位置で、運転室構体21の一方の端部と貫通路用の扉が設けられる開口部23bとを結ぶように車両幅方向に延在している。縦骨43は、運転室構体21の一方の端部と貫通路用の扉が設けられる開口部23bとの間で所定の間隔で配列され、横骨42と台枠14とを結ぶように車両高さ方向に延在している。衝突柱22は、横骨42及び縦骨43の前面側にそれぞれ溶接又はボルトによって固定されている。この場合、衝突柱22の強度が向上し、衝突に対する安全性を更に向上できる。
【0040】
また、ポケット16の補強部材31は、必ずしも設ける必要はなく、補強部材31を省略してもよい。また、貫通路用の扉が設けられる開口部23bの縁に補強柱(貫通路柱)を設ける場合には、ポケット16を貫通路柱に接合してもよい。また、上記実施形態では、ポケット16が台枠14の張出部分15の前面側に溶接によって固定され、台枠14から車両前端側に突出した状態となっているが、
図11に示すように、ポケット16を台枠14の張出部分15内に形成してもよい。この場合、ポケット16が台枠14から車両前端側に突出しない分、先頭部4の車両長手方向の長さを抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…鉄道車両構体、2…先頭車両、3…本体部、4…先頭部、11…側構体、14…台枠、15…張出部分、16…ポケット、16a…車両前端部分、22…衝突柱、22b…下端部、31…補強部材、41…運転室柱、B…ボルト、M1…運転台、M2…機器類、R…運転室、Ra…スペース。