(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】反応射出成形品及び開閉装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20240402BHJP
B60R 7/04 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
B29C45/00
B60R7/04 C
(21)【出願番号】P 2020049736
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直洋
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-158218(JP,A)
【文献】特開2007-313752(JP,A)
【文献】国際公開第2021/070854(WO,A1)
【文献】実開平04-104748(JP,U)
【文献】特開2003-024227(JP,A)
【文献】実開昭60-065149(JP,U)
【文献】実開昭55-025923(JP,U)
【文献】実開平03-100410(JP,U)
【文献】特開2006-123322(JP,A)
【文献】特開2008-254302(JP,A)
【文献】特開2017-205978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B60R 3/00- 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応射出成形された成形部を備える反応射出成形品であって、
前記成形部は、
第一面部と、
この第一面部の端末部からこの第一面部と交差する方向に延びる第二面部と、
この第二面部の先端から、この第二面部の表側と連なる面を形成するように延出する薄肉部と、を有し、
前記薄肉部は、
少なくとも成形型の合わせ部に接する先端側の部分が前記第二面部の先端から前記第二面部の裏側に向かい折られて巻き込まれて
前記第二面部の裏側に重なって位置する
ことを特徴とする反応射出成形品。
【請求項2】
成形部は、第二面部の先端にて薄肉部の基部の位置に形成された溝部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の反応射出成形品。
【請求項3】
開口部を有する装置本体部と、
前記開口部を開閉可能に前記装置本体部に取り付けられる請求項1または2記載の反応射出成形品と、
を備えることを特徴とする開閉装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応射出成形された成形部を備える反応射出成形品、及びこれを有する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転者や同乗者が触れたり把持操作したりする部品の表面を覆う材料に、反応射出成形により得られる例えば板状の部品を用いることがある。このような部品として、例えば、塩化ビニル製のレザーシートなどにスラブウレタンシートなどのコア材を積層した表皮材を巻き込んだものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
これに対し、例えばインテグラルスキンタイプと呼ばれる軟質のポリウレタン表皮材は、直接にクッション層の柔らかさに触れることができる点で好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-95936号公報 (第2-3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インテグラルスキンタイプのポリウレタン表皮材を成形する際に、閉鎖された成形型の射出空間部(キャビティ)内に注入される反応段階の混合液が低粘度であるため、成形型の合わせ面すなわちパーティング面に混合液が侵入しやすく、また、反応により生じるガスを射出空間部から排出するための排出部も必要であるため、ばりが生じやすい。インモールドコート、あるいはバリアコートなどと呼ばれる型内コーティングを施した成形品の合わせ面から、コーティングの余り部や混合液のしみ出しと一体になったばりが、製品の必要から切り落とされると、その切り落とされた部分において、発泡などした芯部分がコーティングにより隠蔽されないため、他のコーティングのある箇所と連続した一の面として形成することができない。そのため、切り落とされた部分において、すじ状のポリウレタン素地が露出し、その周囲の部分とは色調や表面質感が異なることもある。
【0006】
例えばコンソールボックスのリッドのアウタ部材の場合、開閉時に、その周面部の先端部のエッジ部分が見えるため、他の操作や動作を伴わない、通常比較的一定方向からのみ見られる部品と比較して、カットラインやコーティングが不連続となるような態様が目につきやすく、美観を損なうこととなる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、美観を向上した反応射出成形品、及びこれを有する開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の反応射出成形品は、反応射出成形された成形部を備える反応射出成形品であって、前記成形部は、第一面部と、この第一面部の端末部からこの第一面部と交差する方向に延びる第二面部と、この第二面部の先端から、この第二面部の表側と連なる面を形成するように延出する薄肉部と、を有し、前記薄肉部は、少なくとも成形型の合わせ部に接する先端側の部分が前記第二面部の先端から前記第二面部の裏側に向かい折られて巻き込まれて前記第二面部の裏側に重なって位置するものである。
【0009】
請求項2記載の反応射出成形品は、請求項1記載の反応射出成形品において、成形部は、第二面部の先端にて薄肉部の基部の位置に形成された溝部を有するものである。
【0010】
請求項3記載の開閉装置は、開口部を有する装置本体部と、前記開口部を開閉可能に前記装置本体部に取り付けられる請求項1または2記載の反応射出成形品と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の反応射出成形品によれば、反応射出成形時の成形型の合わせ部が位置する薄肉部の先端側の部分を第二面部の先端から第二面部の裏側に向かい折って巻き込んで第二面部の裏側に重ねるので、視認される側に美観を損なう部分が生じなくなり、美観を向上できる。
【0012】
請求項2記載の反応射出成形品によれば、請求項1記載の反応射出成形品の効果に加えて、溝部によって薄肉部の折れ部分の肉が減るので、第二面部の裏側に向かい折られる薄肉部の基部に形成されるエッジ部分の折り線がよりシャープに形成され、見栄え及び美観をより向上できる。
【0013】
請求項3記載の開閉装置によれば、請求項1または2記載の反応射出成形品は第一面部から第二面部のエッジ部分に亘り美観を損なう部分が生じないため、美観を向上した開閉装置の蓋体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の反応射出成形品を一部を切り欠いて表面側から示す斜視図、(b)は同上反応射出成形品の一部の断面図、(c)は同上反応射出成形品の成形品本体部を裏側から示す斜視図である。
【
図2】同上反応射出成形品を備える開閉装置を示す斜視図である。
【
図3】(a)は同上反応射出成形品の製造方法のコーティング塗布工程を示す断面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】(a)は同上反応射出成形品の製造用の反応射出成形用成形型及び反応射出成形品の製造方法の型閉じ工程を示す断面図、(b)は(a)の一部の一例を拡大して示す断面図、(c)は(a)の一部の他の例を拡大して示す断面図である。
【
図5】(a)は同上反応射出成形品の製造方法により成形された成形品本体部を備える中間体を示す断面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図6】(a)は同上反応射出成形品の製造方法の巻き込み工程の一部を示す断面図、(b)は巻き込み工程において(a)に続く工程を示す断面図、(c)は巻き込み工程において(b)に続く工程を示す断面図である。
【
図7】(a)は本発明の第2の実施の形態の反応射出成形品の中間体の一部を拡大して示す断面図、(b)は同上反応射出成形品の一部を拡大して示す断面図である。
【
図8】(a)は本発明の第3の実施の形態の反応射出成形品の中間体の一部を拡大して示す断面図、(b)は同上反応射出成形品の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)及び
図1(b)において、10は反応射出成形品である。反応射出成形品10は、任意の装置に用いてよいが、例えば本実施の形態では、
図2に示すように、車両用の開閉装置であるセンタコンソールボックス11のリッドつまり蓋体として好適に用いられる、自動車用内装部品である。
【0017】
図示される例では、センタコンソールボックス11は、容器部である装置本体部12と、この装置本体部12に回動可能に取り付けられる開閉体である反応射出成形品10と、を備える。
【0018】
装置本体部12は、反応射出成形品10の回動により開閉される開口部14を有する。本実施の形態において、開口部14は、装置本体部12の上部に配置されている。また、開口部14は、ヒンジにより装置本体部12に例えば後部が支持されるとともに、ロックによって例えば前部が装置本体部12に係脱される。そして、
図2の矢印Aに示すように、反応射出成形品10が上下に回動することにより、開口部14が開閉されるようになっている。
【0019】
図示される例では、装置本体部12は、両側部パネル16,16と、これら両側部パネル16,16の上部に配置される上部パネル17と、後部パネル18と、を有する。両側部パネル16,16、上部パネル17、及び後部パネル18により開口部14の縁部が囲まれている。また、両側部パネル16,16、上部パネル17、及び後部パネル18の内方に、開口部14と連通する収納空間部が囲まれている。
【0020】
上部パネル17としては、例えば木目調パネルが用いられる。上部パネル17には、一以上の取付開口部20が形成されている。本実施の形態において、取付開口部20は、複数形成されている。例えば前側の(一方の)取付開口部20には、運転者が操作する図示しないドライブ用ノブが取り付けられる。前側の(他方の)取付開口部20は、カップホルダ、モバイルフォンチャージャ、USB端子などが配置される。
【0021】
そして、
図1(a)及び
図1(b)に示す反応射出成形品10は、概略として四角形状に形成されている。反応射出成形品10は、成形品本体部22を備える。成形品本体部22は、反応射出成形品10の意匠側を構成するアウタ部材である。本実施の形態において、反応射出成形品10は、反応射出成形により成形される成形部24と、基材25と、を一体的に有する。
【0022】
成形部24は、反応射出成形(RIM成形)により成形される部分である。成形部24は、表皮部とも呼び得る部分である。成形部24は、軟質の合成樹脂、例えばポリウレタンにより形成されている。成形部24を形成するポリウレタンの例としては、例えばアスカーC硬度で45~55、密度が0.45~0.55g/cm3、引張強度が2.5~4.0MPa、伸びが80~110%、引き裂き強度が100~150N/cmのものが好適に用いられる。
【0023】
成形部24は、第一面部27と、第二面部28と、薄肉部29と、を一体的に備える。第一面部27は、表面部とも呼ばれる部分である。第一面部27は、成形部24及び成形品本体部22の主面部を構成する。本実施の形態において、第一面部27は、四角形状に形成されている。第一面部27は、少なくとも中心部の厚みが2.5mm以上に形成されている。図示される例では、第一面部27は、一定または略一定の厚みに設定されている。第一面部27の表側すなわち表面は、意匠面であり、この表面には、コーティング(バリアコート)31が施されている。第一面部27は、コーティング31により意匠面全体が覆われている。コーティング31は、例えば成形時に施されるインモールドコート(IMC)である。コーティング31は、着色の他に、成形部24を形成する合成樹脂の経時黄変防止及び表面摩耗耐久性の向上のために施されている。コーティング31は、第一面部27から第二面部28に亘り、薄肉部29の先端まで連なる部分全体を覆って形成されている。なお、コーティング31は、説明を明確にするために、各図面において厚みを誇張して示している。
【0024】
第二面部28は、端面部とも呼ばれる部分である。第二面部28は、第一面部27の端末部から、第一面部27と交差する方向に延びている。第一面部27の端末部とは、本実施の形態においては、第一面部27の四辺の位置である。第二面部28は、第一面部27の表側すなわち表面に対して反対方向、つまり第一面部27の裏側方向である裏面方向(
図1(b)に示す上方向)に延びている。また、本実施の形態において、第二面部28は、第一面部27に対して徐々に湾曲しつつ連なっている。すなわち、第一面部27と第二面部28とが連なっている部分の少なくとも表面は、滑らかな曲面を構成している。さらに、第二面部28は、第一面部27の角部において互いに連なって形成されている。すなわち、第二面部28は、第一面部27の端末部全体において連なって形成されている。
【0025】
薄肉部29は、端面薄肉片、あるいは端面ばりなどとも呼ばれる。薄肉部29は、第二面部28の先端から、第二面部28よりも薄肉状に延出されている。薄肉部29は、反応射出成形品10の端末部をなす。薄肉部29は、第二面部28の表側と連なる面を形成するように第二面部28から延出されている。つまり、薄肉部29の表面は、第二面部28の表面と同一面、または、滑らかに連なる面を形成している。薄肉部29は、第二面部28の先端の外側部分から第二面部28と面一、または略面一に延出されている。本実施の形態において、薄肉部29は、第二面部28の半分未満の厚みに形成されている。薄肉部29は、例えば厚みが0.15~0.5mmであり、第二面部28からの突出長さが10~20mmである。また、薄肉部29は、第二面部28の先端の幅よりも長く形成されている。薄肉部29は、第二面部28の先端から内方、つまり第二面部28の裏側に向かい山折りされて巻き込まれている。つまり、薄肉部29は、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、成形部24の裏側、または、基材25の裏側に重ねられるように折り返されている。本実施の形態において、薄肉部29は、第二面部28の先端を覆うように巻き込まれ、成形品本体部22の端面部である成形部24の第二面部28の裏側、本実施の形態では基材25の裏側に重ねられて固定されている。なお、薄肉部29は、成形部24の主面部の裏側に固定されてもよい。
【0026】
基材25は、成形部24を保持する部分である。基材25は、成形部24の表面とは反対側に一体的に配置されている。基材25は、成形部24よりも硬質の合成樹脂により形成されている。基材25は、例えばABS、あるいはポリプロピレン(PP)などにより形成されている。基材25は、基材第一面部33と、基材第二面部34とを一体的に備える。基材第一面部33は、成形部24の第一面部27の裏側に重ねられる部分である。つまり、基材第一面部33は、成形部24の第一面部27と相似する形状に形成されている。本実施の形態において、基材第一面部33は、四角形状に形成されている。また、基材第二面部34は、成形部24の第二面部28の裏側に重ねられる部分である。つまり、基材第二面部34は、基材第一面部33の端末部から、基材第一面部33と交差する方向に延びている。また、基材第二面部34は、基材第一面部33の角部において互いに連なって形成されている。すなわち、基材第二面部34は、基材第一面部33の端末部全体において連なって形成されている。基材第二面部34の少なくとも一部には、巻き込まれた成形部24の薄肉部29の先端側が重ねられて接着などにより固定されている。さらに、本実施の形態において、基材25には、補強部であるリブ35が形成されている。図示される例では、リブ35は、基材第一面部33の裏側に格子状または縦横に延びて形成され、基材第二面部34,34間に亘っている。なお、基材25は、必須の構成ではない。
【0027】
さらに、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施の形態において、成形品本体部22には、インナ部材38が取り付けられている。インナ部材38は、硬質の合成樹脂により形成されている。インナ部材38は、例えばPPにより形成されている。本実施の形態において、インナ部材38は、インナ面部40を備える。インナ面部40は、成形品本体部22の主面部である成形部24の第一面部27の裏側、本実施の形態では基材25の基材第一面部33の裏側に重ねられる部分である。本実施の形態において、インナ面部40は、例えば四角形状に形成されている。また、インナ面部40の端末部、本実施の形態ではインナ面部40の四辺には、巻き込まれた成形部24の薄肉部29の先端側を押さえる押さえ部41が一体的に形成されている。押さえ部41は、薄肉部29の先端側を、成形部24の第二面部28または基材25の基材第二面部34との間に挟み込んでいる。すなわち、押さえ部41またはインナ部材38により薄肉部29の先端側が覆われて外面から隠され、露出しないようになっている。押さえ部41は、インナ面部40に対して、屈曲されていてもよい。本実施の形態において、インナ部材38は、ビスなどの固定部材によって成形品本体部22に固定されている。図示される例では、インナ部材38は、固定部材を受けるボス42を備え、固定部材を介して基材25の裏側に重ねられて基材25に一体的に固定されている。また、インナ部材38には、反応射出成形品10を装置本体部12(
図2)に対して回動可能に支持するヒンジ及び装置本体部12(
図2)に対して係脱するロックがそれぞれ取り付けられていてもよい。
【0028】
次に、上記の反応射出成形品10の製造方法について説明する。
【0029】
反応射出成形品10の製造の際には、
図3(a)に示す反応射出成形用成形型46を用いる。反応射出成形用成形型46は、第一成形型48と、第二成形型49と、を備える。
【0030】
第一成形型48は、キャビティ型とも呼ばれる凹型である。第一成形型48は、第一成形型本体部51と、側壁部52と、を有する。第一成形型本体部51は、成形品本体部22の第一面部27(
図1(b))の表側を成形する部分である。したがって、第一成形型本体部51は、第一面部27(
図1(b))を成形可能な形状に形成されている。本実施の形態において、第一成形型本体部51は、四角形平面状に形成されている。また、側壁部52は、成形品本体部22の第二面部28及び薄肉部29(
図1(b))の表側を成形する部分である。側壁部52は、第一成形型本体部51の端末部から立ち上げられて形成されている。本実施の形態において、第一成形型本体部51の端末部と側壁部52とは、滑らかな曲面を形成するように連なっている。側壁部52の先端は、平面状の第一合わせ面53となっている。
【0031】
第二成形型49は、コア型とも呼ばれる凸型である。第二成形部49は、第二成形型本体部55と、延出部56と、を有する。第二成形型本体部55は、第一成形型48の第一成形型本体部51との間に、成形品本体部22(
図1(b))を成形するための空間部(キャビティ)C(
図4(a))を形成するものである。第二成形型本体部55は、凸状に形成され、第一成形型本体部51に対向する主面部が成形部24の第一面部27(
図1(b))を成形する部分であり、側壁部52に対向する側部57が成形部24の第二面部28及び薄肉部29(
図1(b))を成形する部分である。第二成形型本体部55の側部57には、段差部58が形成されている。
図4(b)及び
図4(c)に示すように、空間部Cには、第一面部27(
図1(b))を成形する第一空間部C1と、第二面部28(
図1(b))を成形する第二空間部C2と、薄肉部29(
図1(b))を成形する第三空間部C3と、が一体的に形成される。第一空間部C1は、第一成形型48の第一成形型本体部51と第二成形型49の第二成形型本体部55の先端との間に形成される。第二空間部C2は、第一成形型48の側壁部52と第二成形型49の段差部58との間に形成される。第三空間部C3は、第一成形型48の側壁部52と第二成形型49の側部57との間に形成される。したがって、段差部58は、
図1(b)などに示す成形部24の第二面部28と薄肉部29との境界部を構成する。
【0032】
また、
図3(a)などに示すように、本実施の形態において、段差部58には、基材25がセットされる。つまり、基材25は、第二成形型本体部55から段差部58に亘る部分を覆うように第二成形型49にセットされる。また、延出部56は、第二成形型本体部55の端末部から外方に突出し、
図4(a)に示すように、空間部Cの外側部分まで延びている。延出部56は、第一成形型48と対向する位置が、平面状の第二合わせ面59となっている。
【0033】
そして、
図1(b)などに示す反応射出成形品10を製造する際には、まず、コーティング塗布工程として、
図3(a)に示すように、反応射出成形用成形型46を開いた状態で、第二成形型49に、基材25をセットするとともに、第一成形型48に、主として空間部C(
図4(a)及び
図4(b))側を狙って、離型剤、バリアコートを順次吹き付け、コーティング31の付与を行う。基材25をPPで形成する場合には、フレーム処理(火炎処理)などの表面処理を施して成形部24(
図1(b))との接合強度を高めることが好ましい。また、コーティング31は、例えばコーティング塗布装置であるスプレーガンG1を用いて行う。このとき、コーティング31の一部は、
図3(b)に示すように、第一成形型48の第一合わせ面53上の一部にも塗布される。また、
図3(a)に示す第二成形型49の側部57には、フッ素樹脂のコーティング加工がなされる、または、フッ素樹脂テープが添付される。
【0034】
次いで、型閉じ工程として、
図4(a)に示すように、反応射出成形用成形型46を閉じる。この状態で、第一成形型48の第一成形型本体部51及び側壁部52と、第二成形型49の第二成形型本体部55との間に空間部Cが形成されるとともに、第一成形型48の第一合わせ面53と第二成形型49の第二合わせ面59とが突き当てられて、合わせ部(パーティングライン)PLが形成される。合わせ部PLは、
図1(b)などに示す成形部24の薄肉部29の先端近傍に位置する。薄肉部29の先端近傍とは、薄肉部29の先端から基端までの中間位置よりも先端側の範囲をいう。例えば、
図4(b)に示すように、合わせ部PLは、空間部Cの先端部と面一または略面一に配置されてもよいし、
図4(c)に示すように、第二成形型49の延出部56と側部57とが連なる位置を凹部60となるように形成することで、空間部Cの先端部から段差状に僅かに下がった位置に配置されてもよい。合わせ部PLは、
図1(b)などに示す薄肉部29の先端から、第二面部28の先端または基材第二面部34の先端に重ねられる位置までの間にあることが好ましく、薄肉部29の先端からインナ部材38により挟み込まれる位置までの間の位置にあることがさらに好ましい。
【0035】
その後、射出工程として、
図4(a)などに示す空間部Cに連通する図示しないゲートからウレタン反応液を空間部Cに射出する。ウレタン反応液は、例えばポリオールとイソシアネートとをミキシングヘッドで混合した混合液であり、発泡剤、酸化防止剤、着色剤などが適宜添加されている。ウレタン反応液は、発泡を伴いつつ反応して、空間部Cに
図5(a)に示す成形部24が成形される。
【0036】
そして、取り出し工程として、反応射出成形用成形型46を開き、成形部24と基材25とが一体的にインサート成形された、第一面部27、第二面部28、及び薄肉部29を有する成形品本体部22からなる中間体Mを反応射出成形用成形型46から取り出す。射出工程において、反応段階のウレタン反応液は低粘度であるため、合わせ部PLにウレタン反応液の一部が侵入し、
図5(b)に示すように、コーティング31の余り部と一体になったばり62が合わせ部PL(
図4(a))の位置に、成形部24の薄肉部29の先端側に連なって形成される。つまり、ばり62は、成形品本体部22の端末部に形成される。ばり62は、必要に応じて切り離される。
【0037】
次いで、巻き込み工程として、
図6(a)に示すように、中間体Mの薄肉部29の裏側に対し、接着剤を塗布する。接着剤の塗布は、接着剤塗布装置であるスプレーガンG2を用いて吹き付ける。この後、
図6(b)に示すように、薄肉部29を中間体Mの内側へと山折りに倒し、第二面部28の先端部及び基材25の基材第二面部34の先端部を覆うように巻き込み、
図6(c)に示すように、薄肉部29の先端部を内側、本実施の形態では基材25の基材第二面部34の内側に重ねて圧着する。なお、接着剤に替えて、工業用ステープラ(タッカ)を用いて薄肉部29を成形部24及び/または基材25に固定してもよい。そして、インナ部材38を成形品本体部22に対して取り付け、反応射出成形品10を完成する。
【0038】
上述したように、第1の実施の形態によれば、第一面部27の端末部から第一面部27と交差する方向に延びる第二面部28の先端に、第二面部28の表側と連なる面を形成するように薄肉部29を延出し、この薄肉部29を、第二面部28の先端から第二面部28の裏側に向かい折って巻き込むことで、薄肉部29の先端側に反応射出成形時の合わせ部PLを配置することにより、視認される表側つまり意匠側の位置に、ばり62のカットラインやコーティング31の不連続部分など、美観を損なう部分が生じなくなる。そのため、第二面部28のエッジ部分が連続的に形成され、美観を向上できる。また、表皮層及び発泡層の二度の成形が必要なスラッシュ成形を用いて成形する場合と比較して、ウレタンを用いる反応射出成形によって成形できるので、安価で、かつ触感も向上できるとともに、ウレタンを用いる反応射出成形において課題であった、合わせ部PLによる意匠側への美観を損なう部分の露出を解決できるので、高触感の自動車用内装部品に好適に用いることができる。
【0039】
つまり、反応射出成形用成形型46は、第一成形型48と第二成形型49との合わせ部PLを、上記の反応射出成形品10の成形部24の薄肉部29の先端近傍に位置させることで、視認される表側つまり意匠側の位置に、ばり62のカットラインやコーティング31の不連続部分など、美観を損なう部分が生じない反応射出成形品10を効率的に生産できる。
【0040】
また、センタコンソールボックス11の開口部14を開閉する蓋体のアウタ部材は、開閉時に上下方向に回動されるので、その周面となる第二面部28の下部のエッジ部分が見えるため、ばり62のカットラインやコーティング31が不連続となるような部分が目につきやすいものの、本実施の形態の反応射出成形品10は、第一面部27から第二面部28のエッジ部分に亘り美観を損なう部分が生じないため、美観を向上したセンタコンソールボックス11の蓋体として好適に用いることができる。
【0041】
なお、上記の第1の実施の形態において、
図7(a)及び
図7(b)に示す第2の実施の形態のように、第二面部28の先端にて薄肉部29の基部の位置に溝部65を形成してもよい。この場合には、溝部65によって薄肉部29の折れ部分の肉が減ることで、第二面部28の裏側に向かい折られる薄肉部29の基部に形成されるエッジ部分の折り線がよりシャープに形成され、見栄え及び美観をより向上できる。
【0042】
また、
図8(a)及び
図8(b)に示す第3の実施の形態のように、薄肉部29の先端側が巻き込まれる基材25の基材第二面部34の先端に、段部67を形成してもよい。段部67は、基材第二面部34の先端に、基材第二面部34の厚み方向に対して外側に向かいクランク状の段差が生じるように突設されている。この段部67により、薄肉部29の基部と連なる成形部24の第二面部28の先端の厚みを、薄肉部29と等しくまたは略等しくすることができる。そのため、薄肉部29を折って巻き込むことにより、基材25の基材第二面部34のエッジ部分が薄肉部29の折れ線に一層シャープさを与えることができる。また、成形部24において、薄肉部29の折れ線を跨ぐ位置、つまり
図8(a)中の薄肉部29の基部の上下の位置で厚みが一定または略一定となるため、厚みに起因する収縮線(ひけ線)の発生を抑制でき、美観をより向上できる。
【0043】
そして、上記の各実施の形態において、反応射出成形品10は、センタコンソールボックス11に用いるものに限らず、自動車用のその他の内装部品に用いてよい。
【0044】
また、反応射出成形品10は、自動車用の内装部品に限らず、良好な触感を要する任意の部品として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、コンソールボックスのリッドなどの自動車の内装部品として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0046】
10 反応射出成形品
11 開閉装置であるセンタコンソールボックス
12 装置本体部
14 開口部
24 成形部
27 第一面部
28 第二面部
29 薄肉部
65 溝部
C 空間部
PL 合わせ部