(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】物標識別装置及び物標識別プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/41 20060101AFI20240402BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01S7/41
G01S13/58 200
(21)【出願番号】P 2020075924
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】土屋 廣憲
(72)【発明者】
【氏名】板倉 晃
(72)【発明者】
【氏名】平木 直哉
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-067756(JP,A)
【文献】特開2002-116249(JP,A)
【文献】特開2014-055883(JP,A)
【文献】特開平08-166445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ反射信号から、反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかを抽出するパラメータ抽出部と、
レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布、前記速度分布及び前記速度分散分布の少なくともいずれか
の空間的な一様性の有無及び時間的な変化の有無に基づいて、レーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別部と、
を備えることを特徴とする物標識別装置。
【請求項2】
前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布が、空間的に一様でないとともに時間的に変化することに基づいて、レーダ反射信号が鳥の群れによるものと識別する
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標識別装置。
【請求項3】
前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことに基づいて、レーダ反射信号がクラッタによるものと識別する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の物標識別装置。
【請求項4】
前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記速度分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、前記速度分布中の速度の大きさと、に基づいて、レーダ反射信号が鳥の群れ及びクラッタのいずれによるものかを識別する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の物標識別装置。
【請求項5】
前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記速度分散分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、前記速度分散分布中の速度分散の大きさと、に基づいて、レーダ反射信号が鳥の群れ及びクラッタのいずれによるものかを識別する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の物標識別装置。
【請求項6】
前記物標識別部は、鳥の群れによるものと識別したレーダ反射信号が、静止物標を除去する速度フィルタにより除去されたときに、前記速度フィルタにより鳥の群れが除去された時点の鳥の群れの位置をレーダ表示装置に出力する、又は、前記速度フィルタにより鳥の群れが除去される直前の鳥の群れによるものと識別したレーダ反射信号を前記レーダ表示装置に出力する
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の物標識別装置。
【請求項7】
レーダ反射信号から、反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかを抽出するパラメータ抽出ステップと、
レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布、前記速度分布及び前記速度分散分布の少なくともいずれか
の空間的な一様性の有無及び時間的な変化の有無に基づいて、レーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための物標識別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物標の種類(例えば、鳥の群れ等)を識別するレーダ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥とヘリコプターとを識別するレーダ技術が、特許文献1等に開示されている。ここで、特許文献1では、物標距離及び反射強度に基づいて、鳥とヘリコプターとを識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、最終的には人間の目視に基づいて、鳥とヘリコプターとを識別するため、自動的にはバードストライクを防止することができなかった。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、レーダ技術を用いて、様々な移動する物標の種類(鳥の群れ等)を自動的に識別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、レーダ反射信号から抽出された反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかに基づいて、様々な移動する物標の種類(鳥の群れ等)を自動的に識別することとした。
【0007】
具体的には、本開示は、レーダ反射信号から、反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかを抽出するパラメータ抽出部と、レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布、前記速度分布及び前記速度分散分布の少なくともいずれかに基づいて、レーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別部と、を備えることを特徴とする物標識別装置である。
【0008】
また、本開示は、レーダ反射信号から、反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかを抽出するパラメータ抽出ステップと、レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布、前記速度分布及び前記速度分散分布の少なくともいずれかに基づいて、レーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別ステップと、を順にコンピュータに実行させるための物標識別プログラムである。
【0009】
これらの構成によれば、レーダ技術を用いて、様々な移動する物標の種類(鳥の群れ等)を自動的に識別することができる。具体的には、以下に記載の処理を実行する。
【0010】
また、本開示は、前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布が、空間的に一様でないとともに時間的に変化することに基づいて、レーダ反射信号が鳥の群れによるものと識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0011】
この構成によれば、鳥の群れが3次元的に一様に分布しないとともに翼を運動させることに基づいて、レーダ技術を用いて、鳥の群れを他の物標と識別することができる。
【0012】
また、本開示は、前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記反射強度分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことに基づいて、レーダ反射信号がクラッタによるものと識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0013】
この構成によれば、クラッタが2次元的にほぼ一様に分布することに基づいて、レーダ技術を用いて、クラッタを他の物標と識別することができる。
【0014】
また、本開示は、前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記速度分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、前記速度分布中の速度の大きさと、に基づいて、レーダ反射信号が鳥の群れ及びクラッタのいずれによるものかを識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0015】
この構成によれば、鳥の群れが3次元的にクラスタを形成すること、クラッタ(海上の海波及び地上の樹木等)がほぼ一様に進行すること、鳥の群れとクラッタとが異なる速度を有することに基づいて、鳥の群れとクラッタとを識別することができる。
【0016】
また、本開示は、前記物標識別部は、レーダ反射信号から抽出された前記速度分散分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、前記速度分散分布中の速度分散の大きさと、に基づいて、レーダ反射信号が鳥の群れ及びクラッタのいずれによるものかを識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0017】
この構成によれば、個々の鳥がほぼ同様に翼を運動させること、個々のクラッタ(海上の海波及び地上の樹木等)がほぼ同様な特性を有すること、鳥の群れとクラッタとが異なる速度分散を有することに基づいて、鳥の群れとクラッタとを識別することができる。
【0018】
また、本開示は、前記物標識別部は、鳥の群れによるものと識別したレーダ反射信号が、静止物標を除去する速度フィルタにより除去されたときに、前記速度フィルタにより鳥の群れが除去された時点の鳥の群れの位置をレーダ表示装置に出力する、又は、前記速度フィルタにより鳥の群れが除去される直前の鳥の群れによるものと識別したレーダ反射信号を前記レーダ表示装置に出力することを特徴とする物標識別装置である。
【0019】
この構成によれば、鳥の群れが着地着水したときにレーダ表示されなくても、鳥の群れの位置をマーカ表示することにより、鳥の群れが飛び立つときに備えることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本開示は、レーダ技術を用いて、様々な移動する物標の種類(鳥の群れ等)を自動的に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示のレーダシステムの設置を示す図である。
【
図2】本開示のレーダシステムの構成を示す図である。
【
図3】本開示の物標識別処理の手順を示す図である。
【
図4】本開示の鳥の群れの物標識別処理の内容を示す図である。
【
図5】本開示のクラッタの物標識別処理の内容を示す図である。
【
図6】本開示のその他の物標識別処理の内容を示す図である。
【
図7】本開示の鳥の群れの着地着水処理の内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0023】
本開示のレーダシステムの設置を
図1に示す。
図1の左欄では、レーダシステムは、陸上局Lに設置される。
図1の右欄では、レーダシステムは、ドローンDに設置される。
図1の左右欄では、レーダシステムは、様々な移動する物標の種類(例えば、鳥の群れB、海波W、地面G、ヘリコプターH、航空機A、車両C及び船舶S等)を識別する。
【0024】
本開示のレーダシステムの構成を
図2に示す。レーダシステムRは、レーダ送受信装置1、物標識別装置2及びレーダ表示装置3を備える。物標識別装置2は、パラメータ抽出部21及び物標識別部22を備える。物標識別装置2は、
図3に示した物標識別プログラムをコンピュータにインストールすることにより実現することができる。
【0025】
レーダ送受信装置1は、レーダ照射信号を送信し、レーダ反射信号を受信する。物標識別装置2は、様々な移動する物標の種類(例えば、鳥の群れB、海波W、地面G、ヘリコプターH、航空機A、車両C及び船舶S等)を識別する。レーダ表示装置3は、様々な移動する物標の位置を表示するとともに、様々な移動する物標の種類を表示してもよい。
【0026】
本開示の物標識別処理の手順を
図3に示す。パラメータ抽出部21は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から、反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかを抽出する(ステップS1)。物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかに基づいて、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する(ステップS2)。具体的には、以下に記載の処理を実行する。
【0027】
本開示の鳥の群れの物標識別処理の内容を
図4に示す。鳥の群れBは、3次元的に一様に分布しないとともに翼を運動させる。よって、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度分布は、空間的に一様でないとともに時間的に変化する。
図4の左欄では、面フィルタで抽出された反射強度≠0の広い領域において、反射強度=1~5が空間的に一様に分布せず時間的に変化する。
【0028】
そこで、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度分布が、空間的に一様でないとともに時間的に変化することに基づいて、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号が鳥の群れBによるものと識別する。
【0029】
このように、鳥の群れBが3次元的に一様に分布しないとともに翼を運動させることに基づいて、鳥の群れBを他の物標と識別することができる。
【0030】
そして、鳥の群れBは、3次元的にクラスタを形成する。よって、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分布は、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しない。また、鳥の群れBの速度は、クラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等、
図4の中欄と
図5の中欄とを比較)の速度と比べて一般的に大きいと考えられる。
図4の中欄では、面フィルタで抽出された速度≠0の広い領域において、速度=2が空間的にほぼ一様に分布し時間的にほぼ変化しない。
【0031】
そこで、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、速度分布中の速度が比較的大きいことと、に基づいて、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号がクラッタではなく鳥の群れBによるものと識別する。
【0032】
このように、鳥の群れBが3次元的にクラスタを形成すること、鳥の群れBの速度が比較的大きいことに基づいて、鳥の群れBを他の物標と識別することができる。
【0033】
さらに、個々の鳥は、ほぼ同様に翼を運動させる。よって、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散分布は、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しない。また、鳥の群れBの速度分散は、クラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等、
図4の右欄と
図5の右欄とを比較)の速度分散と比べて一般的に大きいと考えられる。
図4の右欄では、面フィルタで抽出された速度分散≠0の広い領域において、速度分散=3が空間的にほぼ一様に分布し時間的にほぼ変化しない。
【0034】
そこで、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、速度分散分布中の速度分散が比較的大きいことと、に基づいて、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号がクラッタではなく鳥の群れBによるものと識別する。
【0035】
このように、個々の鳥がほぼ同様に翼を運動させること、鳥の群れBの速度分散が比較的大きいことに基づいて、鳥の群れBを他の物標と識別することができる。
【0036】
本開示のクラッタの物標識別処理の内容を
図5に示す。クラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等)は、2次元的にほぼ一様に分布する。よって、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度分布は、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しない。
図5の左欄では、面フィルタで抽出された反射強度≠0の広い領域において、反射強度=1が空間的にほぼ一様に分布し時間的にほぼ変化しない。
【0037】
そこで、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことに基づいて、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号がクラッタによるものと識別する。
【0038】
このように、クラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等)が2次元的にほぼ一様に分布することに基づいて、クラッタを他の物標と識別することができる。そして、クラッタの除去及び鳥の群れBの抽出が可能となる。
【0039】
そして、クラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等)は、ほぼ一様に進行する。よって、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分布は、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しない。また、クラッタの速度は、鳥の群れB(
図5の中欄と
図4の中欄とを比較)の速度と比べて一般的に小さいと考えられる。
図5の中欄では、面フィルタで抽出された速度≠0の広い領域において、速度=1が空間的にほぼ一様に分布し時間的にほぼ変化しない。
【0040】
そこで、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、速度分布中の速度が比較的小さいことと、に基づいて、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号が鳥の群れBではなくクラッタによるものと識別する。
【0041】
このように、クラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等)がほぼ一様に進行すること、クラッタの速度が比較的小さいことに基づいて、クラッタを他の物標と識別することができる。そして、クラッタの除去及び鳥の群れBの抽出が可能となる。
【0042】
さらに、個々のクラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等)は、ほぼ同様な特性を有する。よって、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散分布は、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しない。また、クラッタの速度分散は、鳥の群れB(
図5の右欄と
図4の右欄とを比較)の速度分散と比べて一般的に小さいと考えられる。
図5の右欄では、面フィルタで抽出された速度分散≠0の広い領域において、速度分散=2が空間的にほぼ一様に分布し時間的にほぼ変化しない。
【0043】
そこで、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散分布が、空間的にほぼ一様であるとともに時間的にほぼ変化しないことと、速度分散分布中の速度分散が比較的小さいことと、に基づいて、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号が鳥の群れBではなくクラッタによるものと識別する。
【0044】
このように、個々のクラッタ(海上の海波W及び地面G上の樹木等)がほぼ同様な特性を有すること、クラッタの速度分散が比較的小さいことに基づいて、クラッタを他の物標と識別することができる。そして、クラッタの除去及び鳥の群れBの抽出が可能となる。
【0045】
本開示のその他の物標識別処理の内容を
図6に示す。
図6では、その他の物標として、ヘリコプターH、航空機A、車両C及び船舶Sを挙げている。
【0046】
ヘリコプターHは、大きさが中程度であり、速度が中速度であり、水平面内で延伸し回転するブレードを有する。
図6の左欄、中欄及び右欄では、それぞれ、面フィルタで抽出されなかった反射強度、速度及び速度分散≠0の狭い領域において、特に、垂直偏波よりは水平偏波を用いて、反射強度=2、速度=2及び速度分散=5が観測されている。
【0047】
航空機Aは、大きさが中程度であり、速度が高速度であり、水平面内で延伸し固定されている主翼を有する。
図6の左欄、中欄及び右欄では、それぞれ、面フィルタで抽出されなかった反射強度、速度及び速度分散≠0の狭い領域において、特に、垂直偏波よりは水平偏波を用いて、反射強度=1、速度=5及び速度分散=1が観測されている。
【0048】
車両Cは、大きさが小程度であり、速度が低速度であり、異方性を有さず塊として移動しほぼ揺れない。
図6の左欄、中欄及び右欄では、それぞれ、面フィルタで抽出されなかった反射強度、速度及び速度分散≠0の狭い領域において、水平偏波及び垂直偏波等のいずれを用いても、反射強度=1、速度=1及び速度分散=1が観測されている。
【0049】
船舶Sは、大きさが大程度であり、速度が低速度であり、異方性を有さず塊として移動し大きく揺れる。
図6の左欄、中欄及び右欄では、それぞれ、面フィルタで抽出されなかった反射強度、速度及び速度分散≠0の狭い領域において、水平偏波及び垂直偏波等のいずれを用いても、反射強度=5、速度=1及び速度分散=2が観測されている。
【0050】
このように、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかに基づいて、ヘリコプターH、航空機A、車両C及び船舶Sを他の物標と識別することができる。
【0051】
本開示の鳥の群れの着地着水処理の内容を
図7に示す。
図7の左欄では、鳥の群れBの着地着水前に、反射強度=1~5が観測されている。
図7の中欄では、鳥の群れBの着地着水後に、反射強度=0が観測されている。すると、鳥の群れBが着地着水したときにレーダ表示されないため、鳥の群れBが飛び立つときに備えることができない。
【0052】
そこで、物標識別部22は、鳥の群れBによるものと識別した水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号が、静止物標を除去する速度フィルタにより除去されたときに、速度フィルタにより鳥の群れが除去された時点の鳥の群れBの位置をレーダ表示装置3に出力する。
図7の右欄では、鳥の群れBの位置出力時に、鳥マーカが表示されている。
【0053】
或いは、物標識別部22は、鳥の群れBによるものと識別した水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号が、静止物標を除去する速度フィルタにより除去されたときに、速度フィルタにより鳥の群れBが除去される直前の鳥の群れBによるものと識別した水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号をレーダ表示装置3に出力する。つまり、鳥の群れBの位置出力時に、
図7の左欄に示したレーダ反射信号が表示されている。
【0054】
このように、鳥の群れBが着地着水したときにレーダ表示されなくても、鳥の群れBの位置をマーカ表示することにより、鳥の群れBが飛び立つときに備えることができる。
【0055】
図4から
図6に基づいて、様々な移動する物標の種類(例えば、鳥の群れB、海波W、地面G、ヘリコプターH、航空機A、車両C及び船舶S等)を識別することができる。すると、鳥の群れB等が航空機A等と衝突することを防止すること等ができる。そして、比較的小規模な信号処理回路で実現可能であり、ドローンD等に搭載可能である。
【0056】
図3の右欄に示したように、物標識別部22は、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度分布、速度分布及び速度分散分布の少なくともいずれかを入力とし、水平偏波又は垂直偏波等を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを出力とする、教師データを学習することもできる(ステップS3)。
【0057】
なお、レーダ送受信装置1の仰角方向のビーム幅をドローン搭載又は低コスト化で絞れないときには、高位置の鳥の群れB、ヘリコプターH及び航空機Aと、低位置の車両C、船舶S、海波W及び地面Gと、を同時に抽出してしまうものの、別個の物標として識別することができる。特に、レーダ送受信装置1をドローンDに搭載するときには、物標の高度を推定することができるため、航行の効率を上げることができる(例えば、物標を低位置の車両C又は船舶Sと識別しても、その物標を避ける必要がない。一方で、物標を高位置の鳥の群れB、ヘリコプターH及び航空機Aと識別すれば、その物標を避ける必要がある。)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
このように、本開示の物標識別装置及び物標識別プログラムは、レーダ技術を用いて、鳥の群れ等が航空機等と衝突することを防止すること等ができる。
【符号の説明】
【0059】
L:陸上局
D:ドローン
H:鳥の群れ
W:海波
G:地面
H:ヘリコプター
A:航空機
C:車両
S:船舶
R:レーダシステム
1:レーダ送受信装置
2:物標識別装置
3:レーダ表示装置
21:パラメータ抽出部
22:物標識別部