(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】機械式駐車装置の入出庫制御装置と方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
E04H6/18 601A
(21)【出願番号】P 2020099067
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】巽 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 和弘
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059980(JP,A)
【文献】特開2011-001710(JP,A)
【文献】特開2013-139677(JP,A)
【文献】特開2017-214799(JP,A)
【文献】特開2012-128802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗込み部と、複数の前記車両を個別に格納する複数の格納棚と、前記乗込み部と複数の前記格納棚との間で前記車両を個別に移動する入出庫装置と、を備えた機械式駐車装置の入出庫制御装置であって、
データ分析期間にわたり複数の前記車両の利用者、利用日、及び出庫時刻を検出しデータベースに記憶する記憶装置と、
前記データベースに基づき、出庫ピーク時間帯、前記乗込み部に近い前記格納棚である優先棚の優先棚数、及び
出庫が集中する時間帯の出庫利用頻度が高い利用者の
順位が高くなるように設定される利用率順位の高い順に前記優先棚数に相当する数の優先者を特定する分析装置と、を有し、
入庫時において、前記優先棚に、優先者以外の前記車両は入庫させず、優先者のみの前記車両を格納する、機械式駐車装置の入出庫制御装置。
【請求項2】
出庫時間帯ごとの平均出庫回数を算出し、
前記平均出庫回数の1日の平均である1日平均回数を算出し、
前記平均出庫回数が前記1日平均回数を超える前記出庫時間帯ごとの超過数を出庫ピーク指標として算出し、
前記出庫ピーク時間帯を、前記出庫ピーク指標が最大となる前記出庫時間帯に設定する、請求項1に記載の機械式駐車装置の入出庫制御装置。
【請求項3】
前記データ分析期間の前記利用者の累積出庫回数を算出し、
前記累積出庫回数に
前記利用者の前記出庫ピーク指標を加算した値を前記利用者の優先レートR(i)として算出し、
前記利用者の利用率順位を、前記優先レートの大きい順に設定する、請求項2に記載の機械式駐車装置の入出庫制御装置。
【請求項4】
前記優先棚数Nに相当する数の前記優先レートR(i)を用いて、i=1~NのDCGを算出し、
DCGを正規化して、分析日数ごとのNDCGを算出し、
前記データ分析期間を、前記NDCGの値が所定の閾値を超える前記分析日数に設定する、請求項3に記載の機械式駐車装置の入出庫制御装置。
【請求項5】
前記優先棚数を、前記出庫ピーク時間帯
の出庫台数が前記1日平均回数を超える
利用者数に設定する、請求項2に記載の機械式駐車装置の入出庫制御装置。
【請求項6】
車両の乗込み部と、複数の前記車両を個別に格納する複数の格納棚と、前記乗込み部と複数の前記格納棚との間で前記車両を個別に移動させる入出庫装置と、を備えた機械式駐車装置の入出庫制御方法であって、
記憶装置により、データ分析期間にわたり複数の前記車両の利用者、利用日、及び出庫時刻を検出しデータベースに記憶し、
分析装置により、前記データベースに基づき、出庫ピーク時間帯、前記乗込み部に近い前記格納棚である優先棚の優先棚数、及び
出庫が集中する時間帯の出庫利用頻度が高い利用者の
順位が高くなるように設定される利用率順位の高い順に前記優先棚数に相当する数の優先者を特定し、
入庫時において、前記優先棚に、優先者以外の前記車両は入庫させず、優先者のみの前記車両を格納する、機械式駐車装置の入出庫制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出庫が集中する時間帯における待ち時間を短縮する機械式駐車装置の入出庫制御手段に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置(例えばエレベータパーキング)は、車両の乗込み部と、複数の車両を個別に格納する複数の格納棚と、乗込み部と複数の格納棚との間で車両を個別に移動する入出庫装置と、を備える。
かかる機械式駐車装置を特定の者(例えば契約者)が利用する場合、利用者ごとに格納棚を決めるか、或いは、入庫の際に、乗込み部に近い順に又はランダムに車両を格納棚に格納している。
しかしこの場合、「出庫が集中する時間帯」に「出庫利用頻度が高い利用者」の車両が乗込み部から遠い位置(例えば最上段近傍の格納棚)に格納されてしまうことがある。その場合、「出庫が集中する時間帯」における「出庫利用頻度が高い利用者」の出庫に時間がかかり、結果として「出庫が集中する時間帯」において、利用者全体の待ち時間が長くなってしまう。
【0003】
この問題を解決するために、例えば特許文献1が既に提案されている。
特許文献1の機械式格納庫制御手段は、情報記憶部、出庫準備指示生成部、及び動作制御部を備える。情報記憶部は、格納物ごとの過去の出庫時の日時情報を記憶する。出庫準備指示生成部は、予め設定された時間帯が到来する前に、その時間帯に出庫する可能性が高い格納物を出庫口に近い格納棚に移動させる指示を生成する。動作制御部は、機械式格納庫が動作していないときに、出庫準備指示生成部で生成された出庫準備指示に基づいて、機械式格納庫内の機器を動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手段によれば、機械式格納庫が動作していないときに、出庫準備指示生成部で生成された出庫準備指示に基づいて、機械式格納庫内の機器を動作させる。これにより、予め設定された時間帯が到来する前に、その時間帯に出庫する可能性が高い格納物を出庫口に近い格納棚に移動させることができる。
【0006】
しかし、特許文献1の手段には以下の問題点があった。
「予め設定された時間帯が到来する前に、その時間帯に出庫する可能性が高い格納物を出庫口に近い格納棚に移動させる」ためには、その時間帯の前に出庫口に近い格納棚の車両を遠い位置の空の格納棚に移動させる必要がある。そのため、空の格納棚の準備が必要であり、格納庫の収容効率が低下する。また、この移動(入替)には通常の入庫時間又は出庫時間のほぼ倍の時間を要するため、その間(予め設定された時間帯が到来する前に)、通常の入出庫を停止する必要がある。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、空の格納棚が不要であり、出庫が集中する時間帯に出庫利用頻度が高い利用者の待ち時間を短縮し、かつ出庫が集中しない時間帯において通常の入出庫を行うことができる機械式駐車装置の入出庫制御手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、車両の乗込み部と、複数の前記車両を個別に格納する複数の格納棚と、前記乗込み部と複数の前記格納棚との間で前記車両を個別に移動する入出庫装置と、を備えた機械式駐車装置の入出庫制御装置であって、
データ分析期間にわたり複数の前記車両の利用者、利用日、及び出庫時刻を検出しデータベースに記憶する記憶装置と、
前記データベースに基づき、出庫ピーク時間帯、前記乗込み部に近い前記格納棚である優先棚の優先棚数、及び出庫が集中する時間帯の出庫利用頻度が高い利用者の順位が高くなるように設定される利用率順位の高い順に前記優先棚数に相当する数の優先者を特定する分析装置と、を有し、
入庫時において、前記優先棚に、優先者以外の前記車両は入庫させず、優先者のみの前記車両を格納する、機械式駐車装置の入出庫制御装置が提供される。
【0009】
また本発明によれば、車両の乗込み部と、複数の前記車両を個別に格納する複数の格納棚と、前記乗込み部と複数の前記格納棚との間で前記車両を個別に移動させる入出庫装置と、を備えた機械式駐車装置の入出庫制御方法であって、
記憶装置により、データ分析期間にわたり複数の前記車両の利用者、利用日、及び出庫時刻を検出しデータベースに記憶し、
分析装置により、前記データベースに基づき、出庫ピーク時間帯、前記乗込み部に近い前記格納棚である優先棚の優先棚数、及び出庫が集中する時間帯の出庫利用頻度が高い利用者の順位が高くなるように設定される利用率順位の高い順に前記優先棚数に相当する数の優先者を特定し、
入庫時において、前記優先棚に、優先者以外の前記車両は入庫させず、優先者のみの前記車両を格納する、機械式駐車装置の入出庫制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入庫時において、優先棚に、優先者以外の車両は入庫させず、優先者のみの車両を格納するので、出庫が集中する時間帯に出庫利用頻度が高い利用者(すなわち優先者)の待ち時間を短縮することができる。
【0011】
また、利用者の利用率順位の高い順に優先棚数に相当する数の優先者を特定するので、優先棚数の優先棚のすべてに利用率順位の高い優先者の車両を格納し、優先棚以外の格納棚のすべてに優先者以外の車両を格納することができる。
従って、空の格納棚が不要であり格納棚のすべてに車両を格納できる。
【0012】
また、入庫時において優先棚に優先者のみの車両を直接格納するので、出庫ピーク時間帯のための車両の移動(入替)が不要であり、出庫が集中しない時間帯において常に通常の入出庫(入庫又は出庫)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】従来の出庫時間帯と出庫待ち時間との関係図である。
【
図3】平日の出庫時間帯と平均出庫回数との関係図である。
【
図4】休日の出庫時間帯と平均出庫回数との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、機械式駐車装置10の正面図である。
この図において、機械式駐車装置10は、車両1の乗込み部12と、複数の車両1を個別に格納する複数の格納棚14と、乗込み部12と複数の格納棚14との間で車両1を個別に移動する入出庫装置16と、を備える。
【0016】
この例で、機械式駐車装置10は、エレベータパーキングであり、入出庫装置16は、車両1を載せて昇降路3を昇降するケージ16aである。
また、乗込み部12は、入出庫レベルFL(例えば地上レベル)に設けられ、複数の格納棚14は入出庫レベルFLより上方の昇降路3の両側に設けられている。
【0017】
一例として、このエレベータパーキングは、普通車132台を格納する高層エレベータパーキングである。
【0018】
図2は、従来の出庫時間帯T(横軸)と出庫待ち時間(縦軸)との関係図である。
「出庫時間帯」とは、この例では、午前中の1時間、例えば7時台(午前7時0分から午前8時直前まで)、8時台、等を意味する。出庫時間帯の長さは、1時間に限定されず、任意の時間幅(例えば2時間以上)であってもよい。
以下、1時間の出庫時間帯をTで表す。すなわち、T=7とは7時台の時間帯を意味する。
【0019】
「出庫待ち時間」とは、出庫時の待ち時間であり、「待ち時間」は、自分より前の利用者の入出庫作業完了待ち時間(待機時間)+自分の車両の呼び出し完了待ち時間(自己出庫時間)を意味する。
待機時間は、同じ出庫時間帯Tにおいて、自分より前の利用者の出庫時間の総和であり、自分より前の利用者の人数とそれぞれの出庫時間の影響を受ける。出庫時間は、乗込み部12とそれぞれの車両1の格納棚14との距離に比例する。自己出庫時間も、乗込み部12と自己の車両1の格納棚14の距離に比例する。
【0020】
図2に示すように、従来は、例えば7時台(T=7)、8時台(T=8)に出庫待ち時間が長くなっていた。この場合、出庫ピーク時間帯(7時台、8時台)において「出庫利用率が高い利用者」は、常に出庫に時間がかかり、不便を強いられていた。
以下、「出庫が集中する時間帯」すなわち出庫ピーク時間帯をPTで表す。すなわち、PT=7とは出庫ピーク時間帯が7時台であることを意味する。
【0021】
本発明の目的は、このように出庫ピーク時間帯に「出庫利用頻度が高い利用者」の待ち時間を短縮することにある。なお、出庫ピーク時間帯に出庫する車両数は変わらないものとする。
【0022】
図1において、機械式駐車装置10の入出庫制御装置100は、例えばコンピュータ(PC)であり、記憶装置20と分析装置30とを有する。
【0023】
記憶装置20は、データ分析期間Xにわたり複数の車両1の利用者(利用者ID)、利用日(Date)、及び出庫時刻(Time)を検出しデータベース22に記憶する。
以下、利用者IDに基づく利用者番号をi(=1,2,3、・・・)とする。iの最大値は、格納台数m、又はそれより少ない整数である。利用者番号iは利用者IDに対応させて予め決定する。
【0024】
データ分析期間Xは、後述の例では365日であり、この場合X=365である。
【0025】
分析装置30は、データベース22に基づき、出庫ピーク時間帯PT、乗込み部12に近い格納棚14である優先棚14Aの優先棚数N、及び利用者の利用率順位jの高い順に優先棚数Nに相当する数の優先者を特定する。優先者は、利用者の一部である。
出庫ピーク時間帯PTは、データベース22から決定する。出庫ピーク時間帯PTは、1つ(例えばPT=7)であることが好ましいが、必要により2以上であってもよい。
優先棚数Nは、出庫ピーク時間帯PTの出庫台数に応じて設定する。
優先者はそれぞれ利用率順位j(=1,2,3、・・・)を有する。jの最大値は、優先棚数Nに相当することが好ましい。また利用率順位jは、利用者ID及び利用者番号iと対応させてデータベース22に記憶される。
【0026】
また、入出庫制御装置100は、入庫時において、優先棚14Aに、優先者以外の車両1は入庫させず、優先者のみの車両1を格納する制御を実施する。
【0027】
また、本発明の機械式駐車装置10の入出庫制御方法は、S1~S3のステップを有する。
ステップS1では、記憶装置20により、データ分析期間Xにわたり複数の車両1の利用者、利用日、及び出庫時刻を検出しデータベース22に記憶する。
ステップS2では、分析装置30により、データベース22に基づき、出庫ピーク時間帯PT、乗込み部12に近い格納棚14である優先棚14Aの優先棚数N、及び利用者の利用率順位jの高い順に優先棚数Nに相当する数の優先者を特定する。
ステップS3では、入庫時において、優先棚14Aに、優先者以外の車両1は入庫させず、優先者のみの車両1を格納する制御を実施する。
【0028】
以下、本発明の効果を説明する。
図1において、車両1の格納台数mが132台、格納棚14の段数が66段(=m/2)、最下段(1段)の出庫時間が2分12秒、最上段(66段)の出庫時間が4分47秒であるとする。
この場合、最下段と最上段の時間差は2分35秒であり、1段上がるごとに、2.39秒(=2分35秒/(66-1))ずつ増加する。
【0029】
車両1がランダムに入庫している場合、平均出庫時間は最下段と最上段の平均の約3分30秒であり、1時間に17.1人出庫できることになる。
従って、
図2のピーク時(7時台)に出庫する車両が14台であり、出庫台数は変化しないとすると、7時台の待ち行列長さは14.0/(17.1-14.0)=4.5人となる。
【0030】
一方、本発明において、ピーク時(7時台)の出庫台数14台に合わせて14台の優先棚14Aを乗込み部12に最も近い最下段から7段(14台分)に設定する。この場合、平均出庫時間は最下段から7段までの平均の約2分19秒であり、1時間に25.8人出庫できることになる。
従って、
図2のピーク時(7時台)の出庫台数14台が変化しないとすると、7時台の待ち行列長さは14.0/(25.8-14.0)=1.2人となる。
【0031】
上述した例において、従来例では7時台の待ち行列長さは4.5人であり、一人当たりの平均出庫時間は約3分30秒となる。これに対し、ピーク時(7時台)の出庫台数は変化しないにもかかわらず、本発明では、待ち行列長さは1.2人、一人当たりの平均出庫時間は約2分19秒となる。すなわち、従来例と比較して、出庫が集中する時間帯に出庫利用頻度が高い利用者の待ち時間を大幅に短縮できることがわかる。
この場合、出庫が集中する時間帯は7時台であり、出庫利用頻度が高い利用者は、利用率順位jが1~14の優先者である。
【0032】
次に、上述した出庫ピーク時間帯PT、利用者の利用率順位j、データ分析期間X、及び優先棚数Nの決定方法を説明する。
【0033】
(出庫のピーク時間帯PT)
図3は平日の出庫時間帯Tと平均出庫回数K1との関係図、
図4は休日の出庫時間帯Tと平均出庫回数K1との関係図である。平均出庫回数K1は、データ分析期間Xにおける出庫時間帯Tごとの平均の出庫回数である。
この例は、データ分析期間Xとして2016年の1年間の実績を記憶したデータベース22に基づく。なお平日とは祝日を除く月曜~金曜であり、休日とは土曜、日曜、及び祝日である。
【0034】
図3において、最初に、データベース22から平日の出庫時間帯T(この例ではT=0~23時台)ごとの平均出庫回数K1を算出する。
次に、平均出庫回数K1の1日の平均であるの1日平均回数K2を算出する。この例で1日平均回数K2は約7回である。
次に、平均出庫回数K1が1日平均回数K2を超える超過数を出庫時間帯T(この例ではT=7,8)ごとの出庫ピーク指標I(T)として算出する。
この例で、I(7)≒8(≒15-7)、I(8)≒4(≒11-7)である。
平均出庫回数K1にばらつきがある場合、I(T)は最大値を用いることが好ましい。また、平均出庫回数K1が1日平均回数K2を超えない場合は、I(T)=0とする。
最後に、出庫ピーク時間帯PTを、出庫ピーク指標I(T)が最大となる出庫時間帯T(この例ではT=7時台)に設定する。
【0035】
図4の休日についても、同様にして、出庫時間帯T=7~12のI(T)とピーク時間帯PTを設定する。
図4の例では、I(7)≒4、I(8)≒5、I(9)≒3、I(10)≒4、I(11)≒2、I(12)≒1である。
【0036】
(利用者の利用率順位j)
利用者の利用率順位j(=1,2,3、・・・)は、以下のように特定する。
最初に、データベース22からデータ分析期間Xの利用者の累積出庫回数K3を算出する。例えば、利用者番号iがi=1,2,3,4,5の利用者の累積出庫回数K3が、32,46,18,10,22であるとする。
【0037】
次に、累積出庫回数K3に出庫ピーク指標I(T)を加算した値を利用者の優先レートR(i)として算出する。
優先レートR(i)は、利用者の利用率順位jの適合度(レイティング)を意味する。出庫ピーク指標I(T)を加算するのは、出庫ピーク時間帯PTと利用者の利用率との関係性を優先レートR(i)として数値化するためである。
これにより、出庫ピーク指標I(T)が大きい利用者の優先レートR(i)が大きくなり、「出庫が集中する時間帯の出庫利用頻度が高い利用者」である適合度が高くなる。
【0038】
例えば、利用者番号i=1,2,3,4,5の利用者の累積出庫回数K3が、32,46,18,10,22であるとする。
またi=1の利用者の出庫ピーク指標I(7)が8、i=2の利用者の出庫ピーク指標I(8)が4であり、その他の利用者のI(T)は0であるとする。
この場合、利用者番号i=1,2,3,4,5の利用者の優先レートR(i)はそれぞれ40,50,18,10,22となる。
利用者の利用率順位jは、優先レートR(i)の大きい順に設定し、i=2,1,5,3,4の順となる。
【0039】
(データ分析期間X)
データ分析期間Xは、以下のように特定する。最初に分析日数Dは、暫定的に例えば100日間であるとする。また、優先棚数Nは、出庫ピーク時間帯PTの出庫台数を参考にして暫定的に設定する。
【0040】
次に優先棚数Nに相当する数の優先レートR(i)を用いて、i=1~NのDCG(Discounted Cumulative Gain)を算出する。
DCGとは,利用率順位jの順位(ランキング)を評価するための指標である。
次でDCGを正規化して、分析日数ごとのNDCG(Normalized Discounted Cumulative Gain)を算出する。
【0041】
DCGは、i=1,2,3,・・・Nについて、数1の式(1)で求める。
またNGDCは、過去365日間(0≦D<365)のNDCG推移を算出する際に数1の式(2)で求める。
【数1】
【0042】
ここでjは利用率順位、R(j,D)はD日目における利用率順位j位の優先レートである。
NDCGとは、データ分析期間Xを分析した結果の予測順位とDCGで求めた利用率の順位を比較し,予測通りのランキングとなっているかどうかを評価する指標である。
データ分析期間Xにおいて,D日目のNDCGを求め,所定の閾値を達成することを評価してデータ分析期間Xの範囲を決定する。
NDCGは、ランキング予測結果の評価指標として広く使われている。NDCGは0から1の値をとり、1に近いほど正しいランキング予測結果であることを表わす。また予測順にがすべて正解の場合に1となる。
また、上述した優先レートR(i)は、ランキング中のi番目の要素の適合度(レイティング)を表わす。
【0043】
図5は、分析日数DとNDCGとの関係図である。この図において、N=10,20,30は、優先棚数を示す。
この図から、データ分析期間Xを、NDCGの値が所定の閾値(例えば0.95)を超える分析日数D(例えば80日)に設定する。
【0044】
(優先棚数N)
優先棚数Nは、出庫ピーク時間帯PTの出庫台数に応じて設定する。例えば、優先棚数Nは、出庫ピーク時間帯PTに平均出庫回数K2を超える利用者数に設定するのがよい。
また、
図5において、N=10,20,30のNDCGの値から、NDCGの最も高いもの(この例ではN=20)を設定してもよい。
【0045】
上述したデータ分析期間Xは、少なくとも1週間(7日)以上、好ましくは1ヶ月以上であるのがよい。
データベース22は、データ分析期間Xの経過後も継続してデータを蓄積するのがよい。
また、分析装置30による分析は、所定の期間(例えば1か月)毎に更新するのがよい。また平日と休日、曜日別、天候別、月別、季節別に分析してもよい。
【0046】
上述した本発明の実施形態によれば、出庫ピーク時間帯PT、利用者の利用率順位j、データ分析期間X、及び優先棚数Nを統計分析により適正化することができる。
【0047】
また、入庫時において、優先棚14Aに、優先者以外の車両は入庫させず、優先者のみの車両を格納するので、出庫が集中する時間帯(出庫ピーク時間帯PT)に出庫利用頻度が高い利用者(すなわち優先者)の待ち時間を短縮することができる。
【0048】
また、利用者の利用率順位の高い順に優先棚数に相当する数の優先者を特定するので、優先棚数の優先棚のすべてに利用率順位の高い優先者の車両を格納し、優先棚以外の格納棚のすべてに優先者以外の車両を格納することができる。
従って、空の格納棚が不要であり格納棚のすべてに車両を格納できる。
【0049】
また、入庫時において優先棚14Aに優先者のみの車両を直接格納するので、出庫ピーク時間帯PTのための車両の移動(入替)が不要であり、出庫が集中しない時間帯において常に通常の入出庫(入庫又は出庫)を行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
D 分析日数、FL 入出庫レベル、I(T) 出庫ピーク指標、
i 利用者番号、j 利用率順位、K1 平均出庫回数、K2 1日平均回数、
K3 累積出庫回数、m 格納台数、N 優先棚数、T 出庫時間帯、
PT 出庫ピーク時間帯、R(j,D) 優先レート、X データ分析期間、
1 車両、3 昇降路、10 機械式駐車装置、12 乗込み部、
14 格納棚、14A 優先棚、16 入出庫装置、16a ケージ、
20 記憶装置、22 データベース、30 分析装置、100 入出庫制御装置