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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】測量装置及び測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G01C15/00 103D
G01C15/00 103E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020099150
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193335
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】穴井 哲治
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-50991(JP,A)
【文献】特開2019-090770(JP,A)
【文献】実開平03-043623(JP,U)
【文献】特開2019-95371(JP,A)
【文献】特開2017-142081(JP,A)
【文献】特開2019-39863(JP,A)
【文献】特開2017-215240(JP,A)
【文献】特開2017-96629(JP,A)
【文献】特開2020-41934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、水平に対する傾斜を検出する姿勢検出部と、測距光軸と受光光軸の共通部分に設けられ、前記測距光軸と前記受光光軸を一体に偏向させる光軸偏向部と、該光軸偏向部による光軸偏向角及び偏向方向を検出する射出方向検出部と、前記光軸偏向部の最大偏向範囲と略同じ画角を有する広角撮像部と、該広角撮像部より狭画角で且つ前記測距光軸と一部を共用する狭角撮像光軸を有する狭角撮像部と、測距演算部と、演算制御部とを有し、前記測距光軸と前記狭角撮像光軸の共用部分には波長特性の異なる複数の光学部材からなる波長分散補償プリズムが設けられ、前記演算制御部は、前記光軸偏向部の光軸偏向、前記測距演算部の測距作動を制御し、前記広角撮像部は前記光軸偏向部の偏向範囲を含む広角画像を取得し、前記測距演算部は測距光の送信信号と反射測距光の受信信号に基づき測定点の測距を行い、前記狭角撮像部は前記波長分散補償プリズムを透過した背景光を受光し前記測距光軸を基準とする狭角画像を取得する様構成され、前記光軸偏向部により前記測距光軸を水平方向に偏向させ、順次測距と前記狭角画像の取得を行う様構成し
前記演算制御部は、前記姿勢検出部の検出結果に基づき、前記広角画像と前記狭角画像の少なくとも一方の所定位置に水平線を表示させ、所定のスキャンパターンで前記測距光が前記水平線に沿って所定回数スキャンされる様前記光軸偏向部を駆動させ、前記水平線上に位置する前記測定点の測定結果に基づき前記水平線の高さの水平断面データを取得する様構成された測量装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、前記狭角画像中の建造物の稜線を抽出し、抽出した稜線から更に鉛直部稜線を検出し、前記水平線に沿って前記鉛直部稜線と交差する様に前記測距光をスキャンして得られた測定結果のうち、前記鉛直部稜線上の前記測定点の測定結果に基づき前記鉛直部稜線迄の水平距離を演算する様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
測量装置本体と、該測量装置本体を横方向に回転可能に支持する支持装置とを更に具備し、所定の位置で第1広角画像を取得した後、前記測量装置本体を横方向に回転させ、前記第1広角画像と一部がオーバラップする様第2広角画像を取得し、前記演算制御部は、オーバラップ部分にそれぞれ含まれる少なくとも1つの前記狭角画像に基づき前記第1広角画像と前記第2広角画像とを画像マッチングさせる様構成された請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
軸部を中心に縦方向に回転可能に構成された測量装置本体を更に具備し、所定の位置で第1広角画像を取得した後、前記測量装置本体を縦方向に回転させ、前記第1広角画像と一部がオーバラップする様第2広角画像を取得し、前記演算制御部は、オーバラップ部分にそれぞれ含まれる少なくとも1つの前記狭角画像に基づき前記第1広角画像と前記第2広角画像とを画像マッチングさせる様構成された請求項2又は請求項3に記載の測量装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の測量装置と、該測量装置と通信可能に構成された携帯端末とを有する測量システムであって、前記携帯端末は、前記測量装置との間で前記広角画像と前記狭角画像のうちの少なくとも一方を送受信可能に構成された測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広角画像、狭角画像を取得可能な測量装置及び測量システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
測量装置として、レーザスキャナがある。又、近年では、建築物の内外の状況、物の配置を確認する為、レーザスキャナを用いて水平断面を求める方法が用いられている。
【0003】
然し乍ら、一般のレーザスキャナでは、スキャン方向を自由に設定することができない。従って、従来では、先ず全周(360°)をスキャンし、全周のスキャンデータを取得していた。その後、後処理にて全周のスキャンデータから水平方向のデータを抽出し、水平断面を求めていた。
【0004】
この為、取得されるデータ数が増大し、スキャン時間やデータ所持時間が増大すると共に、演算負荷が増大していた。
【0005】
又、スキャンデータを求める際の測量装置の位置は、大まかな画像とスキャンデータから得られる形状からの推定である。従って、測定対象物の面の変化点や凹凸面によっては、スキャン位置を正確に特定することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2006-503275号公報
【文献】特許第4356050号公報
【文献】特開2016-151423号公報
【文献】特開2017-106813号公報
【文献】特開2016-161411号公報
【文献】特開2017-142081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水平断面データを効率よく取得可能な測量装置及び測量システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、水平に対する傾斜を検出する姿勢検出部と、測距光軸と受光光軸の共通部分に設けられ、前記測距光軸と前記受光光軸を一体に偏向させる光軸偏向部と、該光軸偏向部による光軸偏向角及び偏向方向を検出する射出方向検出部と、前記光軸偏向部の最大偏向範囲と略同じ画角を有する広角撮像部と、該広角撮像部より狭画角で且つ前記測距光軸と一部を共用する狭角撮像光軸を有する狭角撮像部と、測距演算部と、演算制御部とを有し、前記測距光軸と前記狭角撮像光軸の共用部分には波長特性の異なる複数の光学部材からなる波長分散補償プリズムが設けられ、前記演算制御部は、前記光軸偏向部の光軸偏向、前記測距演算部の測距作動を制御し、前記広角撮像部は前記光軸偏向部の偏向範囲を含む広角画像を取得し、前記測距演算部は測距光の送信信号と反射測距光の受信信号に基づき測定点の測距を行い、前記狭角撮像部は前記波長分散補償プリズムを透過した背景光を受光し前記測距光軸を基準とする狭角画像を取得する様構成され、前記光軸偏向部により前記測距光軸を水平方向に偏向させ、順次測距と前記狭角画像の取得を行う様構成した測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記演算制御部は、前記姿勢検出部の検出結果に基づき、前記広角画像と前記狭角画像の少なくとも一方の所定位置に水平線を表示する様構成された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記演算制御部は、前記狭角画像中の建造物の稜線を抽出し、抽出した稜線から更に鉛直部稜線を検出し、所定のスキャンパターンで前記測距光がスキャンされる様前記光軸偏向部を駆動し、前記鉛直部稜線と交差する様前記水平線に沿って前記測距光をスキャンし、前記狭角画像を取得する様構成された測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、測量装置本体と、該測量装置本体を横方向に回転可能に支持する支持装置とを更に具備し、所定の位置で第1広角画像を取得した後、前記測量装置本体を横方向に回転させ、前記第1広角画像と一部がオーバラップする様第2広角画像を取得し、前記演算制御部は、オーバラップ部分にそれぞれ含まれる少なくとも1つの前記狭角画像に基づき前記第1広角画像と前記第2広角画像とを画像マッチングさせる様構成された測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、軸部を中心に縦方向に回転可能に構成された測量装置本体を更に具備し、所定の位置で第1広角画像を取得した後、前記測量装置本体を縦方向に回転させ、前記第1広角画像と一部がオーバラップする様第2広角画像を取得し、前記演算制御部は、オーバラップ部分にそれぞれ含まれる少なくとも1つの前記狭角画像に基づき前記第1広角画像と前記第2広角画像とを画像マッチングさせる様構成された測量装置に係るものである。
【0013】
更に又本発明は、上記測量装置と、該測量装置と通信可能に構成された携帯端末とを有する測量システムであって、前記携帯端末は、前記測量装置との間で前記広角画像と前記狭角画像のうちの少なくとも一方を送受信可能に構成された測量システムに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、水平に対する傾斜を検出する姿勢検出部と、測距光軸と受光光軸の共通部分に設けられ、前記測距光軸と前記受光光軸を一体に偏向させる光軸偏向部と、該光軸偏向部による光軸偏向角及び偏向方向を検出する射出方向検出部と、前記光軸偏向部の最大偏向範囲と略同じ画角を有する広角撮像部と、該広角撮像部より狭画角で且つ前記測距光軸と一部を共用する狭角撮像光軸を有する狭角撮像部と、測距演算部と、演算制御部とを有し、前記測距光軸と前記狭角撮像光軸の共用部分には波長特性の異なる複数の光学部材からなる波長分散補償プリズムが設けられ、前記演算制御部は、前記光軸偏向部の光軸偏向、前記測距演算部の測距作動を制御し、前記広角撮像部は前記光軸偏向部の偏向範囲を含む広角画像を取得し、前記測距演算部は測距光の送信信号と反射測距光の受信信号に基づき測定点の測距を行い、前記狭角撮像部は前記波長分散補償プリズムを透過した背景光を受光し前記測距光軸を基準とする狭角画像を取得する様構成され、前記光軸偏向部により前記測距光軸を水平方向に偏向させ、順次測距と前記狭角画像の取得を行う様構成したので、前記狭角画像内全域を測距する必要がなく、測定回数及び測定完了迄の時間を大幅に低減させることができ、効率よく水平断面のスキャンを実行することができる。
【0015】
又本発明によれば、上記測量装置と、該測量装置と通信可能に構成された携帯端末とを有する測量システムであって、前記携帯端末は、前記測量装置との間で前記広角画像と前記狭角画像のうちの少なくとも一方を送受信可能に構成されたので、作業者が直接測定対象物を視認し、レベル位置を指定することができ、作業性を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】測量装置の概略構成図である。
図2】該測量装置に於ける光軸偏向部の側面図である。
図3】(A)は前記光軸偏向部の斜視図であり、(B)は波長分散補償プリズムの要部拡大図である。
図4】本実施例の波長分散補償プリズムと通常の光学プリズムの波長と誤差との関係を示すグラフである。
図5】各ディスクプリズムの偏向方向と合成偏向方向との関係を説明する説明図である。
図6】(A)はY軸方向の倍率が変化していない状態の狭角画像を示し、(B)はY軸方向の倍率が変化した状態の狭角画像を示している。
図7】各ディスクプリズムの角度差とY軸方向の倍率の変化を示すグラフである。
図8】広角画像と狭角画像との関係を示す説明図である。
図9】(A)は建造物が含まれる様取得された広角画像と狭角画像との関係を示す説明図であり、(B)は携帯端末を用いてレベル位置を設定する場合を示す説明図である。
図10】第2の実施例に係る測量装置を示す側面図である。
図11】第2の実施例に係る測量装置を示す背面図である。
図12】複数の広角画像を水平方向にマッチングする場合を示す説明図である。
図13】複数の広角画像を鉛直方向にマッチングする場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0018】
図1により第1の実施例に係る測量装置を説明する。
【0019】
測量装置1は、主に、測距光射出部11、受光部12、検出光射出部13、広角撮像部14、狭角撮像部71(後述)、測距演算部15、演算制御部16、記憶部17、姿勢検出部18、射出方向検出部19、モータドライバ21、広角撮像制御部23、画像処理部24、表示部25、光軸偏向部26、狭角撮像制御部27を具備し、これらは筐体29に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部15、前記光軸偏向部26等は、光波距離計としての機能を有する測距部28を構成する。
【0020】
前記測距演算部15、前記演算制御部16としては本実施例に特化されたCPU、或は汎用性CPU、埋込みCPU、マイクロプロセッサ等が用いられる。又、前記記憶部17としてはRAM、ROM、FlashROM等の半導体メモリ、HDD等の磁気記録メモリ、CDROM等の光学記録メモリが用いられる。
【0021】
前記記憶部17には、本実施例を実行する為の種々のプログラムが格納されており、前記測距演算部15、前記演算制御部16は、それぞれ格納された前記プログラムを展開、実行する。又、前記記憶部17には、測定データ、画像データ等の種々のデータが格納される。
【0022】
前記演算制御部16は、前記モータドライバ21を介して前記光軸偏向部26を制御する。更に前記光軸偏向部26を介して測距光軸の偏向を制御し、前記測距演算部15、前記広角撮像制御部23、前記狭角撮像制御部27の統合制御、測距、撮像、再帰反射検出光の検出の同期制御等を行う。
【0023】
前記姿勢検出部18は、前記測量装置1の水平又は鉛直に対する傾斜を検出し、検出結果は前記演算制御部16に入力される。又、前記姿勢検出部18として、チルトセンサ等の傾斜検出器が用いられ、更に特許文献3に開示された姿勢検出装置を使用することができる。
【0024】
前記測距光射出部11は、射出光軸31を有し、測距光37を発する発光素子32、例えば赤色光又は近赤外光を発するレーザダイオード(LD)が前記射出光軸31上に設けられている。又、前記射出光軸31上に前記測距光37を平行光束とする投光レンズ33が設けられている。更に、前記射出光軸31上に設けられた偏向光学部材としてのビームスプリッタ34と、受光光軸35(後述)上に設けられた偏向光学部材としての反射鏡36とによって、前記射出光軸31は、前記受光光軸35と合致する様に偏向される。前記反射鏡36は前記測距光37の光束径と同等若しくは、若干大きい程度の形状であり、更に波長分散補償プリズム55,58(後述)と同等程度の大きさである。前記反射鏡36及び前記波長分散補償プリズム55,58は前記受光光軸35を中心とする限定された部分を占有する。
【0025】
前記ビームスプリッタ34は、ハーフミラーであってもよいが、偏光光学特性を有する偏光ビームスプリッタであることが望ましい。例えば、ビームスプリッタ34は、S偏光を反射し、P偏光を透過する光学特性を有する。
【0026】
前記ビームスプリッタ34と前記反射鏡36とで射出光軸偏向部が構成される。
【0027】
前記発光素子32はレーザ光線をパルス発光し、或はレーザ光線をバースト発光する。前記測距光射出部11は、前記発光素子32から発せられたパルスレーザ光線(又はバースト発光されたレーザ光線)を前記測距光37として射出する。尚、バースト発光については、特許文献5に開示されている。又、前記測距演算部15は、タイミング信号を前記測距光の送信信号として出力することで、前記測距光射出部11が前記測距光37をパルス発光させる、或はバースト発光させる様構成される。
【0028】
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定すべき対象からの反射測距光38が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸35を有し、該受光光軸35には、前記ビームスプリッタ34、前記反射鏡36によって偏向された前記射出光軸31が合致する。
【0029】
尚、該射出光軸31と前記受光光軸35とが合致した状態を測距光軸39とする。
【0030】
基準光軸O上に前記光軸偏向部26が配設される。前記基準光軸Oは、前記光軸偏向部26の中心を透過する真直な光軸となっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部26によって偏向されなかった時の前記射出光軸31及び前記受光光軸35及び検出光光軸44(後述)及び前記測距光軸39と合致する。
【0031】
前記光軸偏向部26を透過した前記受光光軸35上に結像レンズ41が配設される。又、前記受光光軸35上に受光素子42が設けられている。該受光素子42は、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)、或は同等の光電変換素子である。
【0032】
前記結像レンズ41は、前記反射測距光38を前記受光素子42に結像する。該受光素子42は、前記反射測距光38を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部15に入力される。該測距演算部15は、前記測距光37の送信信号と前記反射測距光38の受信信号に基づき、測定対象迄の測距(光波距離測定)を行う。前記測距光37の信号、前記反射測距光38の信号としては、前記測距光37の発光タイミング信号と前記反射測距光38の受光タイミング信号、或は前記測距光37の位相信号と前記反射測距光38の位相信号(位相差信号)等種々の信号が使用できる。
【0033】
尚、測定としては、測定対象が再帰反射性を有するプリズム測定、或は測定対象が再帰反射性を有さないノンプリズム測量が行われる。
【0034】
前記光軸偏向部26、前記結像レンズ41、前記受光素子42等によって前記受光部12が構成される。
【0035】
前記検出光射出部13について説明する。該検出光射出部13は前記検出光光軸44を有し、該検出光光軸44上には、検出光光源45、反射鏡48、スプリットミラー49、前記結像レンズ41、前記反射鏡36、前記光軸偏向部26が配設される。前記検出光光軸44は前記反射鏡48、前記スプリットミラー49によって偏向され、前記受光光軸35、前記測距光軸39と合致する。ここで、前記結像レンズ41は、前記検出光射出部13に於いては投光レンズとして作用する。
【0036】
尚、検出光47を発する前記検出光光源45としては、レーザダイオード(LD)等の発光源が用いられ、前記検出光47と前記測距光37は同じか或は近い波長であることが望ましい。前記検出光47としては、赤色~近赤外の光、例えば650nm~850nmの範囲の波長帯域の光が用いられる。更に、前記検出光光源45としては、レーザダイオードから発せられた光線を光ファイバで導き、光ファイバの射出端面を検出光光源としてもよい。
【0037】
前記検出光47は、前記結像レンズ41で平行光束とされ、前記光軸偏向部26を透過し、前記測距光37と同軸で照射される。測定の対象が再帰反射性を有しない場合、対象物で反射された検出光は前記反射測距光38と同光軸で前記光軸偏向部26に入射し、該光軸偏向部26を透過後、前記反射鏡36で反射される。
【0038】
該反射鏡36は、前記測距光軸39から狭角撮像光軸44′を分離し、前記狭角撮像光軸44′に乗せる。該狭角撮像光軸44′上に前記ビームスプリッタ34が配設され、更に前記狭角撮像光軸44′上に結像レンズ46、狭角撮像素子51が配設される。
【0039】
前記測距光軸39と前記狭角撮像光軸44′とは一部が共通となっており、前記検出光射出部13、前記ビームスプリッタ34、前記結像レンズ46、前記狭角撮像素子51等は、測定点部分の画像を取得する狭角撮像部71として機能し、前記測距光軸39を基準として所定の画像位置関係で(例えば前記測距光軸39を画像中心とする)狭角画像を取得する。又、前記狭角撮像光軸44′は、前記光軸偏向部26と測定対象との間で前記測距光軸39と一致しているので、前記狭角撮像光軸44′は、前記測距光軸39と一部を共用する。
【0040】
又、前記狭角撮像素子51は、測定対象の再帰反射性によって反射された再帰反射検出光を狭角画像の一部として測定対象及び背景光と共に撮像し、取得された画像データは狭角撮像制御部27に入力される。再帰反射検出光は、特徴画像(又は特徴点)として画像マッチングの際に利用できる。
【0041】
該狭角撮像素子51は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記狭角撮像光軸44′を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。
【0042】
前記狭角撮像制御部27には、検出光光源45を点灯及び消灯のタイミング制御を行い、狭角画像内の再帰反射検出光を明確にすることができる。又、前記狭角撮像制御部27には前記演算制御部16の機能の一部を割当ててもよい。
【0043】
前記狭角撮像素子51には、後述する波長分散補償プリズム55,58を透過した光のみが入射する様になっている。
【0044】
上記した様に、前記検出光射出部13、前記結像レンズ46、前記狭角撮像素子51等は、前記測距光37の照射位置である測定点を中心とした所定範囲の画像を取得する狭角撮像部71としても機能する。この場合、前記検出光光軸44,前記狭角撮像光軸44′は、前記狭角撮像部71の狭角撮像光軸と等しくなる。
【0045】
図2図3(A)、図3(B)を参照して、前記光軸偏向部26について説明する。
【0046】
該光軸偏向部26は、一対の前記ディスクプリズム53,54から構成される。該ディスクプリズム53,54は、それぞれ同径の円板形であり、前記受光光軸35上に該受光光軸35と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記ディスクプリズム53は、光学ガラスにて成形され、基本構成として平行に配置された複数のプリズム柱と、中心部に配設された波長分散補償プリズム55とを有する。該波長分散補償プリズム55は、光学プリズム55aと光学プリズム55bを貼合せた複合プリズムとなっている。尚、図示では前記ディスクプリズム53は、3つのプリズム柱(例えば、棒状の三角プリズム、以下三角プリズム)56a,56b,56cを有している。
【0047】
同様に、前記ディスクプリズム54は、光学ガラスにて成形され、基本構成として平行に配置された3つのプリズム柱(例えば、棒状の三角プリズム、以下三角プリズム)57a,57b,57cを有し、更に中心部に配置された波長分散補償プリズム58を有している。該波長分散補償プリズム58は、光学プリズム58aと光学プリズム58bを貼合せた複合プリズムとなっている。尚、前記三角プリズム56a,56b,56cと前記三角プリズム57a,57b,57cは、全て同一偏角の光学偏向特性を有している。又、前記波長分散補償プリズム55,58の光学偏向特性も、前記三角プリズム56a,56b,56cと前記三角プリズム57a,57b,57cの光学偏向特性と同一となるように製作されている。
【0048】
前記波長分散補償プリズム55と前記波長分散補償プリズム58は、同一の構成で点対称の配置となっている。又、前記波長分散補償プリズム55,58の大きさ(前記三角プリズム56a,57aの長手方向及び幅方向の長さ)は、前記測距光37のビーム径よりも大きくなっている。
【0049】
前記波長分散補償プリズム55,58は、前記測距光37が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部となっている。又、前記波長分散補償プリズム55,58を除く部分(前記三角プリズム56a,57aの両端部及び前記三角プリズム56b,56c、前記三角プリズム57b,57c)は、前記反射測距光38が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部となっている。
【0050】
前記ディスクプリズム53,54は、それぞれ前記受光光軸35を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記ディスクプリズム53,54は、回転方向、回転量、回転速度が独立して制御されることで、射出される前記測距光37の前記射出光軸31を任意の方向に偏向する。又、前記ディスクプリズム53,54は、受光される前記反射測距光38の前記受光光軸35を前記射出光軸31と平行に偏向する。
【0051】
前記ディスクプリズム53,54の外形形状は、それぞれ前記受光光軸35(基準光軸O)を中心とする円形であり、前記反射測距光38の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記ディスクプリズム53,54の直径が設定されている。
【0052】
前記ディスクプリズム53の外周にはリングギア59が嵌設され、前記ディスクプリズム54の外周にはリングギア61が嵌設されている。
【0053】
前記リングギア59には駆動ギア62が噛合し、該駆動ギア62はモータ63の出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア61には駆動ギア64が噛合し、該駆動ギア64はモータ65の出力軸に固着されている。前記モータ63,65は、前記モータドライバ21に電気的に接続されている。
【0054】
前記モータ63,65は、回転角を検出できるモータが用いられ、或は駆動入力値に対応した回転をするモータ、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ63,65の回転量を検出してもよい。該モータ63,65の回転量がそれぞれ検出され、前記演算制御部16は、前記モータドライバ21を介して前記モータ63,65を個別に制御する。尚、エンコーダを直接リングギア59,61にそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア59,61の回転角を直接検出する様にしてもよい。
【0055】
前記駆動ギア62,64、前記モータ63,65は、前記測距光射出部11等、他の構成部と干渉しない位置、例えば前記リングギア59,61の下側に設けられている。
【0056】
前記波長分散補償プリズム55は、図3(B)に示される様に、波長特性(分散量、屈折率)の異なる2つの前記光学プリズム55a,55bが貼合されて構成される。
【0057】
図4は、前記測距光軸39、前記検出光光軸44の偏角を30°とした場合の、反射測距光、反射検出光等の光の波長に対する誤差例を示したグラフである。図4中、77は通常のプリズム(三角プリズム)を用いた場合の誤差を示し、78は前記波長分散補償プリズム55,58を用いた場合の誤差を示している。
【0058】
図4に示される様に、通常のプリズムの場合、約800nmの波長の光を用いると、単一波長であるので殆ど誤差を生じない(分散を生じない)。然し乍ら、通常のプリズムの場合、使用する光の波長帯域を拡大すると、飛躍的に誤差が大きくなる(分散を生じる)。例えば、650nm~850nmの波長帯域の光を用いて画像を取得する場合、約-400.0~1400.0秒の範囲で大きな分散が生じ、取得される画像は大きくボケた画像となる。通常のプリズムでボケを低減する為には、波長帯域を狭めて分散を小さくする必要がある。この場合、充分な光量が得られず、暗い画像となるので、充分な光量を得て明るい画像を取得する為には露光時間を長くする必要がある。
【0059】
一方、前記波長分散補償プリズム55,58を用いた場合には、650nm~850nmの波長帯域に於いても、-100.0~0.0秒の範囲迄分散を低減できる。従って、露光時間が短くても充分な光量を有するボケの少ない精細な画像を取得することができ、正確な視準や画像追尾が可能となる。
【0060】
前記投光レンズ33、前記ビームスプリッタ34、前記反射鏡36、前記測距光偏向部(第1光軸偏向部)等は、測距投光光学系を構成する。又、前記スプリットミラー49、前記結像レンズ41、前記反射測距光偏向部(第2光軸偏向部)等は、検出光射出光学系を構成する。又、前記測距光偏向部(第1光軸偏向部)、前記結像レンズ46等は、狭角撮像光学系を構成する。
【0061】
前記広角撮像部14は、前記測量装置1の前記基準光軸Oと平行な広角撮像光軸66と、該広角撮像光軸66に配置された撮像レンズ67と広角撮像素子68とを有している。前記広角撮像部14は、前記光軸偏向部26による最大偏向範囲(例えば偏向角±35゜)と同等又は略同等の画角を有し、最大偏向範囲を含む画像データを取得する。ここで、略同等の画角とは、前記光軸偏向部26の最大偏向範囲よりも僅かに大きい画角を示す。
【0062】
前記測距演算部15は、前記発光素子32を制御し、前記測距光37としてレーザ光線をパルス発光又はバースト発光(断続発光)させる。該測距光37が前記波長分散補償プリズム55,58(測距光偏向部)により、測定対象に向う様前記射出光軸31が偏向される。前記測距光軸39が測定対象を視準した状態で、測定対象の視準位置(測定点)の測距が行われる。
【0063】
前記測定対象から反射された前記反射測距光38は、前記三角プリズム56b,56c及び前記三角プリズム57b,57c(反射測距光偏向部)、前記結像レンズ41を介して入射し、前記受光素子42に受光される。尚、測定対象がプリズムであれば(プリズム測定)、プリズムで再帰反射された前記反射測距光38が前記受光素子42に受光される。又、測定対象がプリズムでなければ(ノンプリズム測定)、測定対象で自然反射された前記反射測距光38が前記受光素子42に受光される。該受光素子42は、受光信号を前記測距演算部15に送出し、該測距演算部15は前記受光素子42からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記記憶部17に格納される。
【0064】
前記射出方向検出部19は、前記モータ63,65に入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ63,65の回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ63,65の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部19は、前記モータ63,65の回転角に基づき、前記ディスクプリズム53,54の回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部19は、前記ディスクプリズム53,54の屈折率と回転位置とに基づき、各パルス光毎の前記測距光37の偏角、射出方向を演算する。演算結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部16に入力される。尚、前記測距光37がバースト発光される場合は、断続測距光毎に測距、測角が実行される。
【0065】
前記演算制御部16は、前記モータ63,65それぞれの回転量、回転方向を制御することで、前記光軸偏向部26による前記測距光軸39の偏向量、偏向方向を制御できる。又、前記演算制御部16は、前記モータ63,65それぞれの回転方向、回転速度、前記モータ63,65間の回転比を制御することで、前記光軸偏向部26による偏向作用を動的に制御し、前記測距光軸39を任意の方向に、任意のパターンで走査させることができる。
【0066】
前記光軸偏向部26の偏向作用、スキャン作用について、図2図3図5を参照して説明する。
【0067】
図2は、前記三角プリズム56a,56b,56cと前記三角プリズム57a,57b,57cが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角(例えば、±30°)が得られる。又、図3は、前記ディスクプリズム53,54のいずれか一方が180°回転した位置であり、この状態では前記ディスクプリズム53,54の相互の光学作用が相殺され、最小の偏角(0°)が得られる。従って、前記ディスクプリズム53,54を経て射出、受光されるパルスレーザ光線の光軸(前記測距光軸39)は、前記基準光軸Oと合致する。
【0068】
前記発光素子32から前記測距光37が発せられ、該測距光37は前記投光レンズ33で平行光束とされ、前記測距光偏向部(前記波長分散補償プリズム55,58)を透過して測定対象に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部を透過することで、前記測距光37は前記波長分散補償プリズム55,58によって所要の方向に偏向されて射出される。尚、前記測距光37は単一波長又は略単一波長のレーザ光線であるので、前記光軸偏向部26を透過する際の分散は僅かである。
【0069】
前記測定対象で反射された前記反射測距光38は、前記反射測距光偏向部を透過して入射され、前記結像レンズ41により前記受光素子42に集光される。
【0070】
前記反射測距光38が前記反射測距光偏向部を透過することで、前記反射測距光38の光軸は、前記受光光軸35と合致する様に前記三角プリズム56b,56c及び前記三角プリズム57b,57cによって偏向される。
【0071】
図5は、前記ディスクプリズム53と前記ディスクプリズム54とを相対回転させた場合を示している。前記ディスクプリズム53により偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記ディスクプリズム54により偏向された偏向方向を偏向Bとすると、前記ディスクプリズム53,54による光軸の偏向は、該ディスクプリズム53,54間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
【0072】
前記ディスクプリズム53と前記ディスクプリズム54との回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光37の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
【0073】
又、前記ディスクプリズム53と前記ディスクプリズム54との位置関係を固定した状態で(前記ディスクプリズム53と前記ディスクプリズム54とで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ63,65により、前記ディスクプリズム53と前記ディスクプリズム54とを一体に回転すると、前記測距光偏向部を透過した前記測距光37が描く軌跡(スキャンパターン)は前記基準光軸Oを中心とした円となる。更に、前記ディスクプリズム53の回転と前記ディスクプリズム54の回転との組合わせで、所要の2次元のスキャンパターンを形成することができる。例えば、前記光軸偏向部26の偏向範囲内で、水平方向、鉛直方向に前記測距光37を往復走査する直線スキャンも可能である。
【0074】
前記演算制御部16は、前記測距光37の偏角、射出方向から、即ち前記射出方向検出部19の検出結果から、前記基準光軸Oに対する測定点の水平角、鉛直角を演算する。更に、測定点についての水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定対象の3次元データを求めることができる。
【0075】
前記広角撮像制御部23は、前記広角撮像部14の撮像を制御する。前記広角撮像制御部23は、前記広角撮像部14が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、前記動画像、又は連続する画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと、前記測量装置1で測距するタイミングとの同期を取っている。更に、前記狭角撮像部71(図1参照)により画像を取得する場合は、該狭角撮像部71で画像を取得するタイミングと、測距のタイミングとの同期を取っている。
【0076】
前記狭角撮像部71は、前記測距光37の照射点の画像を取得するので、測距部分のファインダとして機能する。又、取得される画像は、前記測距光軸39の近傍の狭画角(例えば、5°)の画像であるので、歪みが小さい。更に、前記狭角撮像部71で取得される画像は、前記波長分散補償プリズム55,58を透過した背景光により取得されるので、波長の分散が補償され、歪みやボケの小さい精細な画像が取得される。
【0077】
ここで、前記狭角撮像部71で得られる画像は、合成偏向C方向をY軸方向とした場合(図5参照)、前記ディスクプリズム53と前記ディスクプリズム54間の角度差θの大きさに応じて、Y軸方向の倍率が変化する。
【0078】
図6(A)、図6(B)は、前記狭角撮像部71により取得される狭角画像73を示している。尚、図6(A)は、該狭角画像73のY軸方向の倍率が変化していない場合を示している。又、図6(B)は、該狭角画像73のY軸方向の倍率が変化し、該狭角画像73がY軸方向に縮んだ場合を示している。
【0079】
又、図7は、前記ディスクプリズム53と前記ディスクプリズム54間の角度差θとY軸方向の倍率の変化との関係を示すグラフである。図7に示される様に、前記狭角画像73は、角度差θが大きくなる程Y軸方向の倍率が変化し、最大で約20%程度Y軸方向の倍率が変化する。又、角度差θとY軸方向の倍率との関係は、実測する等で予め既知とすることができる。従って、前記射出方向検出部19の検出結果から角度差θ(図5参照)を求め、倍率の補正ができ、本来の画像に復元できる。
【0080】
前記演算制御部16は、狭画角の画像(狭角画像)と測定データ(測距データ、測角データ)との関連付けも実行する。
【0081】
前記広角撮像素子68は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は前記広角撮像素子68上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記広角撮像光軸66を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって前記広角撮像素子68上での位置が特定される。
【0082】
従って、広角画像内に含まれる複数の測定対象(測定点)の視準方向は、広角画像の画素座標によって、即ち広角画像上で直ちに認識することができる。
【0083】
更に、前記広角撮像部14の前記広角撮像光軸66と、前記狭角撮像光軸44′とは既知の関係となっているので、前記広角撮像部14で取得した広角画像と、前記狭角撮像部71で取得した狭角画像との関連付けも容易である。
【0084】
前記画像処理部24は、前記広角撮像部14と前記狭角撮像部71で取得した画像データについて、エッジ抽出処理、画像としての特徴点や再帰反射検出光の抽出、画像マッチング等の画像処理を行う。画像マッチングにより写真測量を用いた三次元測定ができ、三次元モデル化が可能になる。
【0085】
ところで、前記広角撮像部14と前記狭角撮像部71の光学特性(倍率、歪み)の違い、更に波長分散補償プリズム55,58の光学特性(波長、倍率変化)があり、前記射出方向検出部19により検出される偏向角、偏向方向に基づいた狭角画像中の点と対応する広角画像中の点(以下粗対応点と称す)は、概略合致しているが、詳細には一致していない。従って狭角画像による三次元測定にあたっては、広角画像中の点と正確に合致する点(以下精密対応点)を狭角画像中から的確に抽出することが重要である。
【0086】
又、広角画像にカラー、狭角画像に測定光源LD(発光素子32)の波長に近い赤、又は近赤外光の波長を用いると、広角画像と狭角画像とでは抽出される特徴点が異なる場合もあり、狭角画像での特徴点や再帰反射検出光を的確に抽出することが重要である。
【0087】
又、前記画像処理部24は、前記狭角画像を取得した際に、角度差θ、Y軸方向の倍率との関係に基づきY軸方向の倍率が1となる様に前記狭角画像を補正する。
【0088】
更に、前記光軸偏向部26は前記測距光37、即ち狭角撮像光軸44′の偏向方向を高分解能で変更することができ、前記狭角撮像光軸44′の前記演算制御部16に於ける所定の設定に基づき偏向角を微小に偏向しつつ、前記狭角撮像部71により撮像することで、微小にずらした複数枚の狭角画像を取得する。前記射出方向検出部19は各狭角画像の射出方向を検出し、前記画像処理部24は狭角画像に関して微小にずらした複数枚の狭角画像とそれぞれの射出方向の検出結果に基づいて画素以下の細かさで重ね、高細密画像を作製する。
【0089】
更に、狭画角より若干小さい角度ステップで偏向角を変えて狭角画像を複数取得し、前記射出方向検出部19が検出する射出方向の検出結果に基づいて狭角画像を合成することで、広範囲の詳細な画像を取得することができる。
【0090】
又、前記画像処理部24に於いて、前記広角画像と前記狭角画像とを同倍率として重ね合せることで、前記射出方向検出部19による検出結果により、前記広角画像の歪みを補正することができる。
【0091】
前記表示部25は、前記広角撮像部14により取得した広角画像72を表示し、又、前記狭角撮像部71で取得した狭角画像73を表示する。又、前記表示部25は、前記広角画像72を前記狭角画像73とを重ねて表示することができると共に、前記広角画像72中に表示された前記狭角画像73を拡大表示することもできる。更に、前記表示部25は、狭角範囲内を局所スキャンした場合の局所スキャン部分70を前記狭角画像73中に重ねて表示可能となっている。尚、局所スキャンは、前記光軸偏向部26の制御により、任意のパターンで前記測距光37を走査することで実行することができる。例えば、局所スキャンにより、前記局所スキャン部分70の軌跡に沿ってパルス光毎の3次元データが取得され、点群データが取得できる。
【0092】
或は、図8に示される様に、前記広角画像72に前記狭角画像73と水平線74の関係を表示する。尚、該水平線74は水平を示す直線であり、前記姿勢検出部18の検出結果に基づき前記広角画像72中の任意の位置に設定可能となっている。図8中では、前記広角画像72の画像中心を通る位置に、前記水平線74が設定されている。尚、前記広角画像72中と前記狭角画像73中には、縦と横をそれぞれ2分割する中心線69,69が表示され、該中心線69,69の交点が画像中心となっている。
【0093】
上記した様に、前記基準光軸Oと前記広角撮像光軸66とは既知の関係である。又、前記広角画像72中の測定点の位置(画素の位置)は、前記基準光軸Oに対する画角として得られる。前記狭角画像73中の所定の位置(例えば画像中心、即ち前記測距光軸39)の前記基準光軸Oに対する方向角(前記測距光37の方向角)は、前記射出方向検出部19の検出結果及び前記狭角画像73の画素座標から検出される。
【0094】
更に、前記姿勢検出部18により、水平状態に対する前記基準光軸Oの傾斜角が取得できるので、前記水平線74と前記基準光軸Oとが関連付けられる。又、前記水平線74と前記基準光軸Oとの関係に基づき、前記水平線74に対する前記広角画像72と前記狭角画像73の関係が求められる。従って、前記広角画像72の画像中心と前記狭角画像73の画像中心との関係により、前記広角画像72と前記狭角画像73の位置、及び前記水平線74が関係付けられる。
【0095】
次に図8図9(A)、図9(B)を参照して、本発明の第1の実施例に係る測定作用の一例を説明する。尚、以下では、前記測量装置1がノンプリズム測定を行う場合について説明する。
【0096】
図9(A)は、画像内に建造物75が含まれる様取得された前記広角画像72と、前記水平線74に沿って取得された前記狭角画像73のうち、前記建造物75の稜線を含む前記狭角画像73を示している。
【0097】
測定対象物の水平断面を得る為には、先ず前記測量装置1を所定の位置に設置し、測定すべき対象物へと向ける。本実施例では、対象物は前記建造物75となっている。又この時、前記測量装置1は整準されておらず、水平に対して所定角度傾斜している。
【0098】
前記演算制御部16は、光軸偏向部26を駆動させ、任意の位置に設定した前記水平線74に沿って所定回数(所定周期)局所スキャンを実行する。又、局所スキャンと並行して、順次前記狭角画像73を取得する。尚、図9中では、前記水平線74は前記広角画像72の画像中心を通過する様設定されている。又この時、隣接する該狭角画像73同士が所定量オーバラップしていることが望ましい。
【0099】
前記演算制御部16は、前記水平線74に沿って取得された複数の前記狭角画像73のうち、前記建造物75の上下方向に延出する稜線を含む画像を選択する。前記演算制御部16は、前記画像処理部24にエッジ検出等の処理を実行させ、前記建造物75の上下方向に延出する稜線を鉛直部稜線76として検出する。前記建造物75の上下方向に延出する稜線は、概ね鉛直と見なしてもよい。従って、前記建造物75から抽出された稜線を前記鉛直部稜線76として設定することができる。尚、画像処理により鉛直線を抽出する方法としては、特許文献6に示される方法がある。
【0100】
ここで、前記測量装置1から前記鉛直部稜線76迄の水平距離は、該鉛直部稜線76の高さ位置に拘わらず一定である。即ち、該鉛直部稜線76上の点であれば、どの位置を測定しても該鉛直部稜線76迄の水平距離を求めることができる。
【0101】
従って、前記水平線74に沿って実行された局所スキャンに於いて、前記鉛直部稜線76と交差する様スキャンして得られた、前記鉛直部稜線76上の任意の測定点の測定結果を取得する。この際の前記姿勢検出部18の検出結果と前記射出方向検出部19の検出結果と前記測距部28の測距結果に基づき、前記演算制御部16は前記測量装置1と前記鉛直部稜線76との間の水平距離を演算することができる。即ち、前記鉛直部稜線76の測定結果に基づき、前記鉛直部稜線76に対する前記測量装置1の正確な水平位置を求めることができる。
【0102】
又、前記水平線74に沿って実行された局所スキャンのうち、前記水平線74上に位置する測定点の測定結果を抽出することで、或は該水平線74近傍の測定点間に内挿することで、該水平線74の高さに於ける水平断面データを取得することができる。取得された水平断面データは、前記広角画像72及び前記狭角画像73と関連付けられて前記記憶部17に格納される。
【0103】
上述の様に、第1の実施例では、任意の高さに前記水平線74を設定し、該水平線74に沿って複数回局所スキャンを実行し、前記水平線74上に位置する測定点の測定結果に基づき、該水平線74の高さの水平断面を求めている。
【0104】
従って、局所スキャンは前記水平線74に沿って実行するだけでよく、前記広角画像72内、或は狭角画像73内全域でスキャンを実行する必要がないので、測定を行う測定点の数を大幅に低減させることができる。これにより、点群データの取得完了迄の時間を短縮できると共に、取得されるデータ数を低減できるので、効率よく水平断面のスキャンを実行することができる。
【0105】
又、前記狭角画像73中から前記鉛直部稜線76を抽出し、該鉛直部稜線76と交差する様前記水平線74に沿って局所スキャンを実行している。又、前記鉛直部稜線76の測定結果に基づき、該鉛直部稜線76に対する前記測量装置1の水平位置を演算している。従って、前記測量装置1の水平位置を求める際に、測定対象物の面の変化や凹凸に影響されることがなく、前記測量装置1の正確な水平位置を求めることができる。又、前記狭角画像73に基づき前記鉛直部稜線76を抽出しているので、高精度に該鉛直部稜線76を抽出することができる。
【0106】
更に、取得された水平断面データは、前記広角画像72及び前記狭角画像73に関連付けられて保存されているので、水平断面データを取得した位置を視覚で確認することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0107】
尚、第1の実施例では、前記水平線74に沿って複数回局所スキャンを実行し、該水平線74に沿った点群データ(スキャンデータ)を取得している。一方で、前記建造物75の両端間の水平距離を求める場合には、両端の前記鉛直部稜線76のうちのそれぞれ1点を測定するだけでよい。
【0108】
又、第1の実施例では、前記水平線74に沿って複数回局所スキャンを実行しているが、前記水平線74に沿って直線状に往復スキャンを実行してもよい。
【0109】
更に、前記測量装置1に別途通信部(図示せず)を設け、タブレットやスマートフォン等の携帯端末と通信可能としてもよい。図9(B)は、前記測量装置1を用いてレベル決め(水平出し)を行う場合を示したものである。
【0110】
携帯端末79は、前記測量装置1との間で、前記広角画像72や前記狭角画像73の送受信が可能となっている。又、前記携帯端末79は、通信部を介して前記測量装置1に測定やレベル出しの実行を指示可能となっている。更に、前記携帯端末79は、該携帯端末79の表示部に表示された前記狭角画像73中の作業者が指定した位置を部分画像83として拡大表示可能となっている。尚、図9(B)中、作業者の右側に示されているのは、前記携帯端末79に表示される前記狭角画像73及び前記部分画像83を示している。
【0111】
或は、前記演算制御部16が前記画像処理部24に、前記狭角画像73中の作業者の指先等を認識させてもよい。この場合、前記演算制御部16は、指先を含む前記狭角画像73を選択し、該狭角画像73中の指先部分を部分画像83として拡大し、通信部を介して前記携帯端末79に送信する。該携帯端末79は、受信した前記部分画像83を表示する。
【0112】
尚、前記測量装置1と前記携帯端末79との間での画像の送受信は、リアルタイムで実行される。即ち、作業者の指先の動きに追従して前記部分画像83も移動する様構成される。
【0113】
作業者は、前記狭角画像73や前記部分画像83中に表示された前記水平線74を参照しつつ、レベル出しを行う高さ(前記水平線74の高さ)を設定する。設定された条件は、前記測量装置1に送信され、設定された高さは、前記狭角画像73や部分画像と関連付けられて前記記憶部17に格納される。
【0114】
前記携帯端末79にリアルタイムで前記狭角画像73や部分画像が表示されることで、作業者は、直接測定対象物を視認し、レベル位置を指定することができる。従って、作業者は、前記測量装置1を近傍から直接操作する必要がないので、効率よくレベルの高さを設定することができる。
【0115】
又、設定された高さは前記狭角画像73や部分画像と関連付けられて前記記憶部17に格納されるので、設定された高さを視覚で確認することができ、作業性を向上させることができる。
【0116】
次に、図10図11に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図10図11中、図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。第2の実施例に於いても、測量装置1はノンプリズム測量を実行する。
【0117】
第2の実施例では、測量装置本体81と支持装置82を具備し、第1の実施例で説明した測量装置1が測量装置本体81として前記支持装置82に設けられる。
【0118】
尚、測量装置本体81は第1の実施例で説明した測量装置1と同等の構成であるので以下は説明を省略する。
【0119】
又、図10中、80は処理制御器を示し、90は操作パネルを示している。前記処理制御器80には、例えば高性能な演算処理部や、大容量な電池等が収納されている。前記操作パネル90と前記測量装置本体81と前記処理制御器80とは、有線、無線等各種通信手段を介してデータ通信が可能となっている。尚、高性能な演算処理部、大容量な電池等が不要である場合には、前記処理制御器80を省略してもよい。
【0120】
操作パネル90は前記一脚84に対して固定的に設けられてもよく、或は着脱可能であってもよい。又、着脱可能な場合は、前記操作パネル90を一脚84から取外し、前記操作パネル90単体の状態で、作業者が保持し、操作可能としてもよい。
【0121】
前記支持装置82は、前記一脚84及び2本の補助脚85を具備する。
【0122】
前記一脚84は、上下方向に延出する垂直部84aと、該垂直部84aの軸心延長上に前記測量装置本体81の機械中心が位置する様、該測量装置本体81を水平方向にオフセットする屈曲部84bと、該屈曲部84bの上端から上方に向って延出する支持部84cと、前記垂直部84aの下端に設けられた脚を連結する脚連結部86と、該脚連結部86の下端から下方に向って視準方向に向って傾斜しつつ延出する脚部84dとから構成されている。ここで、前記脚連結部86には水平方向の横回転を停止或は解除するロック機構が設けられている。
【0123】
該脚部84dの下端には基準板87が設けられ、該基準板87の下面には石突き88が設けられている。該石突き88はテーパ形状であり、下端が尖端となっている。該下端と前記測量装置本体81の機械中心との距離、基準光軸Oとの位置関係も既知となっている。
【0124】
又、前記基準板87の上面には基準視標89が設けられ(刻印)され、前記石突き88の頂点の位置を示すと共に、前記基準視標89の十字のうちの1本(基準線89a)は、前記測量装置本体81の基準光軸Oと平行であり、前記基準線89aの先端側が前記測量装置本体81の視準方向(基準光軸Oの方向)となっている。
【0125】
尚、前記垂直部84aは、前記ロック機構のロックを解除することで、前記脚部84d及び補助脚85に対して前記垂直部84aの軸心を中心に回転可能となっている。
【0126】
2本の前記補助脚85は、それぞれ上端を中心に前記一脚84に対して近接離反方向に所定の角度回転可能となっており、又回転した位置で固定可能となっている。前記補助脚85の下端には、それぞれ車輪91が回転自在に設けられている。前記測量装置1は、前記一脚84と2本の前記補助脚85とにより自立可能となっている。
【0127】
尚、前記測量装置本体81は、前記一脚84の軸心と基準光軸Oとが直交する様、前記一脚84に取付けられてもよいし、前記測量装置1を自立させた際に前記基準光軸Oが概略水平となる様に前記一脚84に取付けられてもよい。
【0128】
測量装置本体81の側面には軸部93と、該軸部93から延出するレバー94が設けられている。又、前記軸部93には鉛直方向の回転角を検出する縦回転検出手段としての縦回転角エンコーダ95と、前記測量装置本体81の回転の停止及び解除を行う為のロック機構(図示せず)が設けられている。前記軸部93は前記支持部84cの上端に回転可能に連結されており、前記レバー94を上下に動かすことで、前記測量装置本体81が縦方向に回転する様になっている。又、前記レバー94を左右方向に動かすことで、前記測量装置本体81が前記支持部84c、前記屈曲部84b、前記垂直部84aと一体に横方向に回転する様になっている。又、前記レバー94を捩ることで、前記脚連結部86のロック機構及び前記軸部93のロック機構が作動し、横回転、縦回転がロックされる様になっている。
【0129】
この時の前記測量装置本体81の縦方向の回転角、例えば水平に対する垂直方向の回転角(高低角)は、前記縦回転角エンコーダ95により検出される。前記縦回転角エンコーダ95で検出された回転角は、測量装置本体81の演算制御部16に入力される。
【0130】
尚、該測量装置本体81の機械中心は、前記垂直部84aの軸心上に位置し、基準光軸Oは、前記垂直部84aの軸心と交差する。
【0131】
又、前記補助脚85の下端には車輪91が設けられる。該車輪91には、それぞれ固定手段としての突出し92が突出及び格納可能に設けられ、前記測量装置1の移動状態では前記突出し92を格納し、前記測量装置1の設置状態では前記突出し92を突出させる。該突出し92は、前記車輪91を設置面から若干浮かせた状態で、突出状態を固定される。この時、前記測量装置本体81は、前記石突き88と2つの前記突出し92とを設置面と接触させた状態で3点支持される。
【0132】
第2の実施例に於いて、第1の実施例と同様、測量装置1を所定位置に設置し測量装置本体81の方向を固定し、広角画角範囲内の測定対象について測定を行ってもよい。
【0133】
第2の実施例では前記測量装置本体81が前記支持装置82に支持され、測量装置1が容易に移動可能であることから、複数地点からの測定が容易に可能である。
【0134】
以下、図12図13を参照して第2の実施例に係る前記測量装置1を用い、狭角画像による画像連携(画像マッチング)を行う測量装置システムについて説明する。
【0135】
図12は、水平方向に於ける画像マッチングを示している。
【0136】
先ず、前記脚連結部86のロック機構を作動させた状態(ロックした状態)で、広角撮像部14(図1参照)により第1広角画像72aを取得する。又、該第1広角画像72a中の所定位置、図12中では該第1広角画像72aの画像中心を通過する位置に水平線74を設定する。更に、光軸偏向部26(図1参照)を駆動し、前記水平線74aに沿って複数の狭角画像73を取得すると共に、前記水平線74aに沿って水平方向に複数回局所スキャンを実行する。
【0137】
この状態での基準光軸Oの角度測定は、前記光軸偏向部26の最大偏向範囲内で可能であり、水平角は姿勢検出部18(図1参照)と射出方向検出部19(図1参照)の検出結果に基づき求めることができる。
【0138】
次に、前記脚連結部86のロック機構を解除し、前記測量装置本体81を横方向に所定角度回転させ、再度ロック機構を作動させた後、第2広角画像72bを取得する。この時の回転角度は、回転前の前記第1広角画像72aと回転後の前記第2広角画像72bとのオーバラップ範囲に、少なくとも1つ、望ましくは2つの前記狭角画像73が含まれる角度とする。
【0139】
ここで、前記測量装置本体81の高さ位置は、該測量装置本体81を回転させたとしても変化しない。即ち、回転後に取得された前記第2広角画像72bは、回転前に取得された前記第1広角画像72aに対して水平方向に平行移動した画像となる。従って、前記第1広角画像72a中に表示された水平線74aと連続する水平線74bを容易に前記第2広角画像72b中に表示させることができる。
【0140】
該第2広角画像72bに於いても、前記水平線74bに沿って複数の狭角画像73を取得すると共に、前記水平線74bに沿って水平方向に複数回局所スキャンを実行する。
【0141】
前記第2広角画像72bのスキャンが終了すると、前記演算制御部16は、前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとのオーバラップ部分にそれぞれ存在する前記狭角画像73a同士を画像マッチングさせる。該狭角画像73a同士のマッチングで得られたマッチング条件で、前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとが画像マッチングされ、結合広角画像96が作成される。作成された該結合広角画像96は、前記水平線74と関連付けられて記憶部17に格納される。
【0142】
尚、前記広角画像72に於いて、基準光軸Oと前記広角画像72内の任意位置との間の偏向角は、前記姿勢検出部18と前記広角画像72中での前記基準光軸Oに対する偏差に基づき演算できる。従って、画像マッチングに用いた前記狭角画像73aの画像中心を基準として、前記第1広角画像72aの基準光軸Oとの間の水平角、前記第2広角画像72bの基準光軸Oとの間の水平角をそれぞれ演算することで、前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとの間の水平角を演算することができる。
【0143】
上述の様に、第2の実施例では、前記測量装置本体81を前記一脚84を中心に横方向に回転させ、各回転位置で取得した広角画像72同士を横方向に画像マッチングさせている。従って、水平方向の測定範囲を拡張することができる。即ち、水平断面データを取得する際のスキャン範囲(偏向範囲)を拡張させることができ、より広範囲の水平断面データを得ることができる。
【0144】
又、第2の実施例では、オーバラップ部分に存在する前記狭角画像73を用いて前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとの画像マッチングを行っている。従って、画像マッチングを高精度に実行することができ、高精度な前記結合広角画像96を作成することができる。
【0145】
尚、第2の実施例では、前記測量装置本体81を手動で回転させた場合を説明した。一方で、モータ駆動により前記測量装置本体81を自動で回転させる場合についても、同様に画像マッチング可能であることは言う迄もない。
【0146】
次に、図13を参照して、本発明の第3の実施例について説明する。尚、図13中、図12中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。第3の実施例に於いても、測量装置1はノンプリズム測量を実行する。
【0147】
第3の実施例では、複数の前記広角画像72を縦方向にマッチングし、測定対象物の鉛直断面を取得する構成となっている。尚、図13は、前記光軸偏向部26の最大偏角よりも広範囲に、前記建造物75の鉛直部が存在する場合を示している。
【0148】
前記測量装置本体81は、前記レバー94を上下に動かすことで、前記軸部93を中心に縦方向に回転する。然し乍ら、該測量装置本体81の設置状態によっては、前記測量装置本体81を縦方向に回転したとしても、該測量装置本体81が鉛直方向には回転しない。例えば、該測量装置本体81が水平に対して傾斜していた場合、該測量装置本体81は鉛直に対して傾いて回転する。
【0149】
従って、縦方向に前記広角画像72をマッチングさせる場合、前記測量装置本体81を回転させる前と回転させた後の、水平角の関連付けが必要となる。
【0150】
複数の前記広角画像72を縦方向にマッチングさせる際には、先ず前記広角撮像部14により回転前の第1広角画像72aを取得する。又、該第1広角画像72a中に前記狭角画像73と前記水平線74との関係を表示し、前記第1広角画像72aの所定位置に鉛直線97aを設定する。該鉛直線97aは、前記水平線74に対して直交する直線となっている。更に、前記光軸偏向部26を駆動し、前記鉛直線97aに沿って所定間隔で複数の狭角画像73を取得すると共に、前記鉛直線97aに沿って鉛直方向に複数回局所スキャンを実行する。これにより、前記鉛直線97aに沿った点群データ(スキャンデータ)を得ることができる。
【0151】
この状態での基準光軸Oの角度測定は、前記光軸偏向部26の最大偏向範囲内で可能であり、水平角は姿勢検出部18と射出方向検出部19の検出結果に基づき求めることができる。
【0152】
次に、前記レバー94を動かし、前記測量装置本体81を縦方向に所定角度回転させた後、第2広角画像72bを取得する。この時の前記測量装置本体81の回転角度は、回転前の前記第1広角画像72aと回転後の前記第2広角画像72bとのオーバラップ範囲に、少なくとも1つ、望ましくは2つの前記狭角画像73が含まれる角度とする。
【0153】
ここで、回転後に取得された前記第2広角画像72bは、回転前に取得された前記第1広角画像72aに対して前記測量装置本体81の回転方向に平行移動した画像となる。従って、前記第1広角画像72a中に表示された鉛直線97aを延長することで、該鉛直線97aと連続する鉛直線97bを容易に前記第2広角画像72b中に表示させることができる。
【0154】
該第2広角画像72bに於いても、前記鉛直線97bに沿って所定間隔で複数の狭角画像73を取得すると共に、前記鉛直線97bに沿って鉛直方向に複数回局所スキャンを実行する。これにより、前記鉛直線97bに沿った点群データを得ることができる。
【0155】
前記第2広角画像72bの前記鉛直線97bに沿った局所スキャンが終了すると、前記演算制御部16は、前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとのオーバラップ部分にそれぞれ存在する前記狭角画像73a同士を画像マッチングさせる。該狭角画像73a同士のマッチングを介して、前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとがマッチングされ、結合広角画像98が作成される。
【0156】
又、画像マッチングに用いられた前記狭角画像73aの画像中心を基準として、前記第1広角画像72aの基準光軸Oとの間の水平角と、前記第2広角画像72bの基準光軸Oとの間の水平角とをそれぞれ演算する。これにより、前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとの間の水平角が演算される。更に、前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとの間の鉛直角は、前記姿勢検出部18の検出結果に基づき演算することができる。
【0157】
前記演算制御部16は、前記鉛直線97に沿って得られたスキャンデータに基づき、前記スキャンデータに沿った鉛直断面データを取得することができる。取得された鉛直断面データは、前記結合広角画像98は、前記鉛直線97、回転前後の水平角及び鉛直角と関連付けられて前記記憶部17に格納される。
【0158】
上述の様に、第3の実施例では、前記レバー94を介して前記測量装置本体81を縦方向に回転させ、各回転位置で取得した前記広角画像72同士を縦方向にマッチングさせている。従って、鉛直方向の測定範囲を拡張することができる。即ち、鉛直断面データを取得する際のスキャン範囲を拡張させることができ、より広範囲の鉛直断面データを得ることができる。
【0159】
又、オーバラップ部分に存在する前記狭角画像73aを用いて前記第1広角画像72aと前記第2広角画像72bとの画像マッチングを行っている。従って、画像マッチングを高精度に実行することができ、高精度な前記結合広角画像98を作成することができる。
【0160】
又、前記建造物75から抽出した鉛直部稜線76と前記鉛直線97とを比較することで、前記鉛直部稜線76が前記鉛直線97に対してどれだけ傾斜しているかを演算することができる。即ち、前記建造物75の傾斜状態を判断することができる。
【0161】
更に、前記広角画像72を順次連結することで、足下から天井迄の180°、或は360°全周の鉛直断面データを求めることができる。
【0162】
尚、第3の実施例では、前記測量装置本体81を前記レバー94を介して縦方向に手動で回転させた場合について説明した。一方で、モータ駆動により前記測量装置本体81を自動で回転させる場合についても、同様に画像マッチング可能である。
【符号の説明】
【0163】
1 測量装置
11 測距光射出部
12 受光部
13 検出光射出部
14 広角撮像部
15 測距演算部
16 演算制御部
18 姿勢検出部
19 射出方向検出部
21 モータドライバ
23 広角撮像制御部
24 画像処理部
26 光軸偏向部
27 狭角撮像制御部
28 測距部
31 射出光軸
32 発光素子
35 受光光軸
37 測距光
38 反射測距光
39 測距光軸
44 検出光光軸
44′ 狭角撮像光軸
45 検出光光源
47 検出光
53,54 ディスクプリズム
55,58 波長分散補償プリズム
59,61 リングギア
63,65 モータ
66 広角撮像光軸
68 広角撮像素子
71 狭角撮像部
72 広角画像
73 狭角画像
74 水平線
75 建造物
76 鉛直部稜線
79 携帯端末
81 測量装置本体
84 一脚
87 基準板
91 車輪
92 突出し
95 縦回転角エンコーダ
96 結合広角画像
97 鉛直線
98 結合広角画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13