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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20240402BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240402BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G08G1/01 E
B60W60/00
B60W40/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020103197
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196894
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】黒田 龍介
(72)【発明者】
【氏名】藤木 拓也
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-044826(JP,A)
【文献】特開2014-006696(JP,A)
【文献】特開2018-067225(JP,A)
【文献】特開2018-147078(JP,A)
【文献】特開2005-324661(JP,A)
【文献】特開2018-181186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渋滞中に車両を自動運転制御する車両制御装置であって、
前記車両に搭載された前記車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号に基づいて、前記車両の周囲の少なくとも一つの他の車両を検知する検知部と、
検知された前記少なくとも一つの他の車両の挙動を表す挙動評価値を算出し、前記挙動評価値が渋滞解消条件を満たす場合に、前記車両の周囲において渋滞が解消されたと判定する渋滞解消判定部と、
前記車両の周囲の道路の環境を表す道路環境情報に基づいて前記渋滞解消条件を設定する条件設定部と、
を有し、
前記渋滞解消判定部は、前記挙動評価値として、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの車速の平均値、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの加速度の平均値、及び、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの車速の分散のうちの少なくとも一つを算出し、前記車速の平均値が継続して所定の速度閾値以上となる期間の長さが所定時間以上となるか、前記加速度の平均値が所定の加速度閾値以上となるか、または前記車速の分散が所定の分散閾値以下となる場合に前記渋滞解消条件が満たされると判定し、
前記道路環境情報は、前記車両の周囲の道路の構造を表す情報を含み、
前記条件設定部は、前記車両を含む所定区間内に道路の構造が渋滞を誘発する構造となっている渋滞誘発地点が位置している場合の前記渋滞解消条件を、前記渋滞誘発地点が前記所定区間から外れているときの前記渋滞解消条件よりも緩和する、車両制御装置。
【請求項2】
前記条件設定部は、前記渋滞誘発地点として前記道路における合流地点、分岐地点、当該道路に面する出入口、料金所が存在する地点または前記道路の幅員が増加する地点が前記所定区間内に位置している場合の前記渋滞解消条件を、前記渋滞誘発地点が前記所定区間から外れているときの前記渋滞解消条件よりも緩和する、請求項に記載の車両制御装置。
【請求項3】
渋滞中に車両を自動運転制御する車両制御装置であって、
前記車両に搭載された前記車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号に基づいて、前記車両の周囲の少なくとも一つの他の車両を検知する検知部と、
検知された前記少なくとも一つの他の車両の挙動を表す挙動評価値を算出し、前記挙動評価値が渋滞解消条件を満たす場合に、前記車両の周囲において渋滞が解消されたと判定する渋滞解消判定部と、
前記車両の周囲の道路の環境を表す道路環境情報に基づいて前記渋滞解消条件を設定する条件設定部と、
を有し、
前記渋滞解消判定部は、前記挙動評価値として、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの車速の平均値、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの加速度の平均値、及び、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの車速の分散のうちの少なくとも一つを算出し、前記車速の平均値が継続して所定の速度閾値以上となる期間の長さが所定時間以上となるか、前記加速度の平均値が所定の加速度閾値以上となるか、または前記車速の分散が所定の分散閾値以下となる場合に前記渋滞解消条件が満たされると判定し、
前記条件設定部は、前記道路の少なくとも一部が塞がれる所定のイベントが生じた地点を前記車両が通過してから所定距離だけ走行するまで、または所定時間経過するまでの前記渋滞解消条件を、前記車両が、前記イベントが生じた地点に到達するまでの前記渋滞解消条件よりも緩和する、車両制御装置。
【請求項4】
前記条件設定部は、前記渋滞解消条件を緩和する場合において前記所定の速度閾値及び前記所定の加速度閾値の少なくとも何れかを前記渋滞解消条件を緩和しない場合よりも低下させ、あるいは、前記渋滞解消条件を緩和する場合において前記所定時間を、前記渋滞解消条件を緩和しない場合よりも短くする、請求項1~3の何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
渋滞中に車両を自動運転制御する車両制御方法であって、
前記車両に搭載された前記車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号に基づいて、前記車両の周囲の少なくとも一つの他の車両を検知し、
検知された前記少なくとも一つの他の車両の挙動を表す挙動評価値を算出し、
前記挙動評価値が渋滞解消条件を満たす場合に、前記車両の周囲において渋滞が解消されたと判定し、
前記車両の周囲の道路の環境を表す道路環境情報に基づいて前記渋滞解消条件を設定する、
ことを含み、
前記挙動評価値の算出は、前記挙動評価値として、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの加速度の平均値、及び、検知された前記少なくとも一つの他の車両のそれぞれの車速の分散のうちの少なくとも一つを算出することを含み、
前記渋滞が解消されたとの判定は、前記加速度の平均値が所定の加速度閾値以上となるか、または前記車速の分散が所定の分散閾値以下となる場合に前記渋滞解消条件が満たされると判定することを含む、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を自動運転制御する車両制御装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲が渋滞しているか否かを判定し、車両の周囲が渋滞している場合に車両を制御する技術が研究されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された技術では、運転支援装置は、受信した道路交通情報が渋滞情報で、かつ、自車両の速度情報が所定速度以下である場合に、道路が渋滞中であると判定する。また、この運転支援装置は、道路が渋滞中であると判定した後に、前方車両との距離が検出されないとき、道路の渋滞が解消されたと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-108955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術では、渋滞が実際には解消しているにもかかわらず、渋滞が解消したと判定されない場合、渋滞中に適用される車両の制御が、渋滞が解消した後も継続して適用されることになる。逆に、渋滞中にもかかわらず、渋滞が解消したと誤判定されると、渋滞中に適用されるべき車両の制御が実施されなくなり、ドライバに不要な負担を与えることになる。
【0006】
そこで、本発明は、渋滞が解消したか否かを適切に判定できる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、渋滞中に車両を自動運転制御する車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、車両に搭載された車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号に基づいて、車両の周囲の少なくとも一つの他の車両を検知する検知部と、検知された少なくとも一つの他の車両の挙動を表す挙動評価値を算出し、挙動評価値が渋滞解消条件を満たす場合に、車両の周囲において渋滞が解消されたと判定する渋滞解消判定部と、車両の周囲の道路の環境を表す情報に基づいて渋滞解消条件を設定する条件設定部とを有する。
【0008】
この車両制御装置において、道路環境情報は、車両の周囲の道路の構造を表す情報を含み、条件設定部は、車両を含む所定区間内に道路の構造が渋滞を誘発する構造となっている渋滞誘発地点が位置している場合の渋滞解消条件を、渋滞誘発地点が所定区間から外れているときの渋滞解消条件よりも緩和することが好ましい。
【0009】
この場合において、条件設定部は、渋滞誘発地点として道路における合流地点、分岐地点、その道路に面する出入口、料金所が存在する地点またはその道路の幅員が増加する地点が所定区間内に位置している場合の渋滞解消条件を、渋滞誘発地点が所定区間から外れているときの渋滞解消条件よりも緩和することが好ましい。
【0010】
あるいは、条件設定部は、道路の少なくとも一部が塞がれる所定のイベントが生じた地点を車両が通過してから所定距離だけ走行するまで、または所定時間経過するまでの渋滞解消条件を、車両が、その所定のイベントが生じた地点に到達するまでの渋滞解消条件よりも緩和することが好ましい。
【0011】
さらに、この車両制御装置において、渋滞解消判定部は、挙動評価値として検知された少なくとも一つの他の車両のそれぞれの車速の平均値または加速度の平均値を算出し、車速の平均値が継続して所定の速度閾値以上となる期間の長さが所定時間以上となるか、加速度の平均値が所定の加速度閾値以上となる場合に渋滞解消条件が満たされると判定し、条件設定部は、渋滞解消条件を緩和する場合において所定の速度閾値及び所定の加速度閾値の少なくとも何れかを渋滞解消条件を緩和しない場合よりも低下させ、あるいは、渋滞解消条件を緩和する場合においてその所定時間を、渋滞解消条件を緩和しない場合よりも短くすることが好ましい。
【0012】
他の実施形態によれば、渋滞中に車両を自動運転制御する車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両に搭載された前記車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号に基づいて、車両の周囲の少なくとも一つの他の車両を検知し、検知された少なくとも一つの他の車両の挙動を表す挙動評価値を算出し、挙動評価値が渋滞解消条件を満たす場合に、車両の周囲において渋滞が解消されたと判定し、車両の周囲の道路の環境を表す道路環境情報に基づいて渋滞解消条件を設定する、ことを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両制御装置は、渋滞が解消したか否かを適切に判定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】(a)及び(b)は、それぞれ、第2の速度閾値、第1の所定時間及び加速度閾値のうちの少なくとも一つまたは全てを低下させる区間の一例を示す図である。
図5】渋滞中及び渋滞解消後の車両の周囲の他の車両の平均車速の変化の一例を示す図である。
図6】手動運転モードから自動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理の動作フローチャートである。
図7】自動運転モードから手動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置及び車両制御装置において実施される車両制御方法について説明する。この車両制御装置は、渋滞中に車両を自動運転制御する。そのために、この車両制御装置は、車両に搭載されたセンサにより得られたセンサ信号に基づいて検知された他の車両の挙動などに基づいて、車両の周囲が渋滞中か否かを判定する。そしてこの車両制御装置は、車両の周囲において渋滞が解消されると、適用される運転モードを、車両制御装置が車両の走行を制御する自動運転モードからドライバが車両の走行を制御する手動運転モードへ移行させる。その際、この車両制御装置は、渋滞が解消したときに車両の周囲の他の車両の挙動を表す挙動評価値が満たすべき渋滞解消条件を、車両の周囲の道路環境を表す情報に基づいて設定することで、渋滞が解消したか否かを適切に判定することを可能とする。
【0016】
図1は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図2は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、GPS受信機2と、カメラ3と、無線通信器4と、ストレージ装置5と、ユーザインターフェース6と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)7とを有する。GPS受信機2、カメラ3、無線通信器4、ストレージ装置5及びユーザインターフェース6とECU7とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。このような距離センサは、車両10の周囲の状況を検知するセンサの一例である。さらに、車両制御システム1は、目的地までの走行予定ルートを探索するためのナビゲーション装置(図示せず)を有していてもよい。
【0017】
GPS受信機2は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機2は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。なお、車両10はGPS受信機2以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両10の自己位置を測位すればよい。
【0018】
カメラ3は、車両10の周囲の状況を検知するセンサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ3は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。そしてカメラ3は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ3により得られた画像は、センサ信号の一例であり、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。
【0019】
カメラ3は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。
【0020】
無線通信器4は、所定の移動通信規格に準拠して、無線基地局との間で無線通信する。そして無線通信器4は、無線基地局を介して、他の装置から、車両10が走行中の道路またはその周囲における交通状況を表す交通情報(例えば、Vehicle Information and Communication System, VICS(登録商標)による情報)を受信し、その交通情報を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。なお、交通情報には、例えば、道路工事、事故、または交通規制の有無、及び、道路工事、事故または交通規制が実施されている場所及び時間帯に関する情報が含まれる。また、無線通信器4は、車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての、自動運転制御に利用される高精度地図を、無線基地局を介して地図サーバから受信し、受信した高精度地図をストレージ装置5へ出力してもよい。
【0021】
ストレージ装置5は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、不揮発性の半導体メモリ、または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置5は、地図情報の一例である高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての車線区画線または停止線といった道路標示を表す情報、道路標識を表す情報、及び、道路周囲の建築物(例えば、防音壁等)を表す情報が含まれる。さらに、高精度地図には、各道路について、所定の長さの区間ごとの勾配及び高度などの情報が含まれてもよい。
【0022】
さらに、ストレージ装置5は、高精度地図の更新処理、及び、ECU7からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置5は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信器4を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信し、地図サーバから無線通信器4を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信してもよい。また、ストレージ装置5は、ECU7からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を表す高精度地図を切り出して、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。
【0023】
ユーザインターフェース6は、通知部の一例であり、例えば、液晶ディスプレイといった表示装置またはタッチパネルディスプレイを有する。ユーザインターフェース6は、車両10の車室内、例えば、インスツルメンツパネルの近傍に、ドライバへ向けて設置される。そしてユーザインターフェース6は、ECU7から車内ネットワークを介して受信した各種の情報を表示することで、その情報をドライバへ通知する。ユーザインターフェース6は、さらに、車室内に設置されるスピーカを有していてもよい。この場合、ユーザインターフェース6は、ECU7から車内ネットワークを介して受信した各種の情報を音声信号として出力することで、その情報をドライバへ通知する。
【0024】
ユーザインターフェース6がドライバへ通知する情報には、例えば、車両10に適用される運転モードを変更することを通知する情報(例えば、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えまたはその逆を通知する情報)、または、ドライバにステアリングの保持あるいは前方監視を要求することを通知する情報が含まれる。
【0025】
ECU7は、車両10の周囲が渋滞しているか否か判定する。そして車両10の周囲が渋滞している場合、ECU7は、車両10の制御に適用される運転モードを自動運転モードとして、車両10の走行を制御する。
【0026】
図2に示されるように、ECU7は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0027】
通信インターフェース21は、ECU7を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、GPS受信機2から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、カメラ3から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、ストレージ装置5から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。一方、通信インターフェース21は、プロセッサ23から通知情報を受け取ると、その通知情報をユーザインターフェース6へ出力する。
【0028】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU7のプロセッサ23により実行される車両制御処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、車両10の周囲の画像、自己位置の測位結果、高精度地図、カメラ3の焦点距離、画角、撮影方向及び取り付け位置などを表す内部パラメータ、及び、車両10の周囲を走行する他車両などの検出に利用される、物体検出用の識別器を特定するためのパラメータセットなどを記憶する。さらに、メモリ22は、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0029】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0030】
図3は、車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、検知部31と、渋滞判定部32と、渋滞解消判定部33と、条件設定部34と、車両制御部35とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0031】
検知部31は、ECU7がカメラ3から画像を取得する度に、その取得した画像に基づいて、車両10の周囲の他の車両を検知する。
【0032】
例えば、検知部31は、ECU7がカメラ3から画像を取得する度に、識別器にその画像を入力することで、車両10の周囲を走行する他の車両を検出する。そのような識別器として、検知部31は、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク型(CNN)のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。このような識別器は、画像から車両10の周囲に存在する、検知対象となる他の物体(例えば、車両、車線区画線といった道路標示、道路標識など)を検出するように予め学習される。識別器は、入力された画像上で検知した物体を含む物体領域を特定する情報及び検知した物体の種類(車両、道路標示、道路標識など)を表す情報を出力する。したがって、検知部31は、ECU7がカメラ3から画像を取得する度に、その画像から検知された物体を含む物体領域及びその検知された物体の種類を表す情報をメモリ22に記憶するとともに、プロセッサ23の他の各部へ出力する。
【0033】
渋滞判定部32は、それまで車両10の周囲に渋滞が生じていない場合において、所定の周期(例えば、0.1秒~数秒)ごとに、車両10の周囲に渋滞が生じたか否かを判定する。
【0034】
例えば、渋滞判定部32は、車両10に搭載された車速センサ(図示せず)により測定された車両10の速度に基づいて車両10の周囲に渋滞が生じたか否か判定する。この場合、渋滞判定部32は、例えば、通信インターフェース21を介して車速センサから取得した車両10の速度の測定値が第1の速度閾値(例えば、20km/h)以下となる状態が第1の期間(例えば、5秒)以上継続した場合、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定する。あるいは、渋滞判定部32は、車両10の速度の測定値が第1の速度閾値よりも低い第2の速度閾値(例えば、10km/h)以下となる状態が第1の期間よりも短い第2の期間(例えば、3秒間)以上継続した場合、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定してもよい。あるいはまた、渋滞判定部32は、直近の第1の所定期間(例えば、3秒間)における車両10の速度の測定値の変化が所定の速度変化幅(例えば、1m/s)以内となっている場合に、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定してもよい。なお、この場合、第1の所定期間における車両10の速度の平均値が所定速度以下である場合に限り、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定してもよい。所定速度は、例えば、車両10が走行中の道路の法定速度または制限速度から所定のオフセット(例えば、20km/h~40km/h)だけ減じた速度とすることができる。この場合、渋滞判定部32は、例えば、GPS受信機2から受信した測位情報で表される車両10の現在位置と高精度地図とを参照して、車両10が走行中の道路の法定速度または制限速度を特定すればよい。なお、渋滞判定部32は、カメラ3により得られた画像に表された地物と高精度地図とを照合することで、車両10の現在位置及び姿勢を推定してもよい。例えば、渋滞判定部32は、車両10の位置及び姿勢を仮定して、カメラ3から得た画像から検出された道路上の地物(例えば、車線区画線あるいは停止線といった道路標示)をカメラ3の内部パラメータを参照して高精度地図上に投影するか、あるいは、高精度地図上の車両10の周囲の道路上の地物を画像上に投影する。そして渋滞判定部32は、画像から検出された道路上の地物と高精度地図上に表された道路上の地物とが最も一致するときの車両10の位置及び姿勢を、車両10の現在位置として推定すればよい。この場合、渋滞判定部32は、例えば、検知部31から受信した、画像から検知された地物に関する情報を車両10の位置及び姿勢の推定に利用すればよい。
【0035】
さらに、渋滞判定部32は、車両10が停車して第2の所定期間(例えば、1秒間)以上経過している場合に、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定してもよい。
【0036】
あるいは、渋滞判定部32は、検知部31により検知された、車両10の周囲を走行する他の車両の挙動に基づいて、車両10の周囲に渋滞が生じたか否かを判定してもよい。
【0037】
渋滞判定部32は、カメラ3から取得した時系列の一連の画像のそれぞれから検出された他の車両に対して、オプティカルフローを用いた追跡処理といった所定の追跡処理を実行することで、他の車両を追跡する。そして渋滞判定部32は、各画像に対して、カメラ3の内部パラメータを用いて視点変換処理を実行して各画像を鳥瞰画像に変更することで、各画像取得時における、車両10に対する追跡中の他の車両の相対的な位置を算出する。その際、他の車両が表された物体領域の下端は、路面と他の車両とが接している位置を表していると推定される。そこで、渋滞判定部32は、各画像において、他の車両が表された物体領域の下端に相当するカメラ3からの方位と、カメラ3の内部パラメータの一つであるカメラ3の路面からの高さとに基づいて、各画像取得時の車両10から他の車両までの距離を推定してもよい。そして渋滞判定部32は、各画像取得時における、車両10から他の車両までの距離の推定値を、車両10に対する追跡中の他の車両の相対的な位置の算出に利用してもよい。
【0038】
渋滞判定部32は、追跡中の他の車両のうち、車両10の前方を走行する先行車両を選択する。先行車両が複数存在する場合、渋滞判定部32は、複数の先行車両のうち、車両10に最も近い先行車両を選択してもよい。そして渋滞判定部32は、直近の所定期間(例えば、3~5秒間)における、選択した先行車両までの相対的な位置の変化に基づいて、直近の所定期間における、車両10とその先行車両との相対速度の変化及び車間距離の変化を算出する。
【0039】
あるいは、車両10がLiDARあるいはレーダといった距離センサを有している場合、渋滞判定部32は、その距離センサにより得られる、車両10の前方の所定の角度範囲(例えば、車両10の進行方向を中心として、路面に平行な±30°の角度範囲)内の距離の測定値が所定値以下である場合に、先行車両が存在すると判定してもよい。そして渋滞判定部32は、直近の所定期間における、距離センサにより得られた距離の測定値の変化に基づいて、直近の所定期間における、車両10とその先行車両との相対速度の変化及び車間距離の変化を算出してもよい。
【0040】
渋滞判定部32は、直近の所定期間にわたって車両10と先行車両との相対速度の絶対値が所定の相対速度閾値(例えば、1m/s)以下であり、かつ、車両10と先行車両との車間距離が所定の距離範囲(例えば、3m以上25m以下)である場合、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定する。
【0041】
あるいは、渋滞判定部32は、追跡中の他の車両の全てについて、直近の所定期間における、車両10と他の車両との相対速度の変化及び車間距離の変化を算出してもよい。そして渋滞判定部32は、追跡中の他の車両の全てについて、直近の所定期間にわたって車両10に対する相対速度が所定の相対速度閾値(例えば、3m/s)以下である場合に、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定してもよい。なお、渋滞判定部32は、追跡中の他の車両のうち、車両10が走行する車線と隣接する車線(以下、単に隣接車線と呼ぶことがある)を走行する車両のみを、渋滞判定に利用してもよい。この場合には、渋滞判定部32は、例えば、追跡中の他の車両のうち、識別器により検出された車線区画線が車両10との間に位置する他の車両を、隣接車線を走行する車両と判定すればよい。あるいは、渋滞判定部32は、追跡中の他の車両のうち、車両10の進行方向に沿った線に対する距離が車線の幅以上離れている他の車両を、隣接車線を走行する車両と判定してもよい。
【0042】
あるいはまた、渋滞判定部32は、無線通信器4を介して受信した交通情報において、車両10が走行中の道路について渋滞が生じていることが示された場合に、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定してもよい。なお、この場合、渋滞判定部32は、車両10の現在位置と高精度地図とを参照して、車両10が走行中の道路を特定すればよい。
【0043】
あるいはまた、渋滞判定部32は、上記の渋滞判定手法の何れか二つ以上に関して車両10の周囲に渋滞が生じたと判定された場合に限り、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定してもよい。
【0044】
渋滞判定部32は、車両10の周囲に渋滞が生じたと判定した場合、その判定結果を条件設定部34、渋滞解消判定部33及び車両制御部35へ通知する。
【0045】
渋滞解消判定部33は、渋滞判定部32から、車両10の周囲に渋滞が生じていることが通知されると、その通知以降、所定の周期ごとに、カメラ3により得られた画像により検知された、車両10の周囲を走行する他の車両の挙動に基づいて、車両10の周囲において渋滞が解消したか否かを判定する。
【0046】
例えば、渋滞解消判定部33は、以下の二つの条件(条件1、条件2)の両方が満たされる場合に、車両10の周囲の渋滞が解消したと判定する。これらの条件は、渋滞解消条件の一例である。
(i)条件1:車両10の速度が第1の速度閾値以上
(ii)条件2:以下の三つの選択条件のうちの少なくとも一つが満たされること
・選択条件a:車両10の周囲の1以上の他の車両の速度の平均値(以下、単に平均車速と呼ぶ)が第2の速度閾値以上となることが第1の所定時間以上継続
・選択条件b:車両10の周囲の1以上の他の車両の加速度の平均値(以下、単に平均加速度と呼ぶ)が所定の加速度閾値以上
・選択条件c:車両10の周囲の1以上の他の車両の速度の分散(以下、単に速度分散と呼ぶ)が所定の分散閾値以下
なお、渋滞解消判定部33は、車両10に搭載された車速センサ(図示せず)により測定された車両10の速度を、条件1についての車両10の速度として用いればよい。また、渋滞解消判定部33は、検知部31により検知された1以上の他の車両のそれぞれについて、渋滞判定部32と同様の処理を実行することで、平均車速、平均加速度及び速度分散を算出できる。すなわち、渋滞解消判定部33は、カメラ3により得られた時系列の一連の画像のそれぞれから検知部31により検知された1以上の他の車両のそれぞれを追跡して、各画像取得時における、車両10に対する他の車両のそれぞれの相対速度を算出できる。そして渋滞解消判定部33は、各画像取得時における車両10の速度と他の車両のそれぞれの相対速度とに基づいて、各画像取得時における他の車両のそれぞれの速度及び加速度を算出し、他の車両のそれぞれの速度及び加速度に基づいて、各画像取得時における速度平均値、加速度平均値及び速度分散を算出できる。なお、速度平均値、加速度平均値及び速度分散は、それぞれ、車両10の周囲の他の車両の挙動を表す挙動評価値の一例である。
【0047】
詳細は後述するように、渋滞解消条件を構成する第1の速度閾値、第2の速度閾値、第1の所定時間、加速度閾値及び分散閾値のそれぞれは、条件設定部34により、車両10の周囲の道路環境を表す情報に基づいて設定される。
【0048】
渋滞解消判定部33は、渋滞が解消したと判定するとその判定結果を車両制御部35へ通知する。
【0049】
条件設定部34は、渋滞判定部32から、車両10の周囲に渋滞が生じていることが通知されると、その通知以降、所定の周期ごとに、車両10の周囲の道路環境を表す情報に基づいて、渋滞解消条件を構成する第1の速度閾値、第2の速度閾値、第1の所定時間、加速度閾値及び分散閾値のそれぞれを設定する。
【0050】
例えば、渋滞が道路の構造が渋滞を誘発する構造となっているために生じている場合、その渋滞の原因となる地点(例えば、合流または分岐が有る地点、高速道路または駐車場などの出入り口といったその道路に面する出入口または料金所が有る地点、あるいは、道路の幅員が減少する地点、以下、説明の便宜上、渋滞誘発地点と呼ぶ)の付近(ただし、幅員減少による渋滞に関しては、幅員が広がる地点)において渋滞が解消する可能性が高い。そのため、渋滞誘発地点の付近を通過した車両は、急に加速することがある。そこで、条件設定部34は、車両10を含む所定区間内に道路の構造が渋滞を誘発する構造となっている渋滞誘発地点が位置している場合の渋滞解消条件を、渋滞誘発地点が所定区間から外れているときの渋滞解消条件よりも緩和する。具体的に、条件設定部34は、渋滞誘発地点の付近を車両10が走行している場合に、第2の速度閾値、第1の所定時間及び加速度閾値のうちの少なくとも一つまたは全てを、渋滞誘発地点の付近を車両10が走行していない場合におけるそれらの値よりも低い値に設定する。例えば、条件設定部34は、車両10の現在位置と高精度地図とを参照して、車両10が走行中の道路において、車両10の進行方向に沿って、車両10の現在位置の手前(すなわち、車両10が通過した後)の第1の区間(例えば1km)以内に、渋滞誘発地点が含まれるか否か判定する。なお、高精度地図は、車両10の周囲の道路環境を表す情報の一例である。そして条件設定部34は、第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれる場合、第2の速度閾値、第1の所定時間及び加速度閾値のうちの少なくとも一つまたは全てを、第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれない場合におけるそれらの値よりも所定のオフセット量だけ低い値に設定する。例えば、第2の速度閾値について、所定のオフセット量は、5km/h~15km/hとすることができる。例えば、第1の区間内に渋滞誘発地点が無い場合の第2の速度閾値が50km/hである場合、第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれる場合の第2の速度閾値は35km/h~45km/hとすることができる。また、第1の所定時間について、所定のオフセット量は、例えば、1秒~3秒とすることができる。例えば、第1の区間内に渋滞誘発地点が無い場合の第1の所定時間が5秒である場合、第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれる場合の第1の所定時間は2秒~4秒とすることができる。さらに、加速度閾値について、所定のオフセット量は、例えば、0.05g~0.1gとすることができる。なお、gは重力加速度である。例えば、第1の区間内に渋滞誘発地点が無い場合の加速度閾値が0.2gである場合、第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれる場合の加速度閾値は0.1g~0.15gとすることができる。これにより、道路の構造に起因する渋滞が生じていた場合において、渋滞解消判定部33は、渋滞が解消したことをより早期に検出できる。
【0051】
なお、道路の分岐、高速道路あるいは自動車専用道からの出口、または、道路の幅員が増加する地点が車両10の前方に存在している場合、車両10の周囲の渋滞は、それらの地点よりも手前の位置にて解消していることがある。そこで条件設定部34は、これらの地点に関しては、第1の区間を、車両10の進行方向に沿って、車両10の現在位置を含む前後それぞれに所定距離を有する区間(例えば、前後1km)の区間としてもよい。
【0052】
また、渋滞が、車両10が走行中の道路の少なくとも一部が塞がれる所定のイベントに起因して生じていることがある。このような場合、その所定のイベントが生じた地点(例えば、道路工事が実施されている地点、事故が発生している地点、路上駐車車両または落下物が存在する地点、以下、説明の便宜上、イベント発生地点と呼ぶ)を車両10が通過すると直ちに車両10の周囲の渋滞が解消する可能性が高い。そこで、条件設定部34は、例えば、カメラ3から得られた最新の画像を識別器に入力することで、道路工事を報知する看板、あるいは、事故の発生を報知する看板といった、道路工事または事故の発生を報知する物体が存在するか否か判定する。そのような識別器として、例えば、検知部31に関して説明した識別器と同様に、CNN型のアーキテクチャを有するDNNが用いられる。識別器が、入力された画像において道路工事または事故の発生を報知する物体を検出すると、条件設定部34は、イベント発生地点が車両10の前方に存在すると判定する。同様に、条件設定部34は、カメラ3から得られた最新の画像を識別器に入力することで、識別器が、入力された画像において道路上の落下物を検出すると、条件設定部34は、道路上の落下物が存在すると判定してもよい。あるいはまた、条件設定部34は、渋滞判定部32に関して説明したように、カメラ3から得られた時系列の一連の画像を識別器に入力することで車両10の周囲の他の車両を検出するとともに検出した他の車両を追跡することで、その追跡中において道路上に停止している車両、すなわち、路上駐車車両を検出してもよい。そして条件設定部34は、落下物または路上駐車車両を検出すると、イベント発生地点が車両10の前方に存在すると判定する。そして条件設定部34は、検出したそれらの物体を、渋滞判定部32に関して説明したのと同様の手法によって追跡するとともに、カメラ3から最新の画像が得られる度に、それらの物体が存在する地点、すなわち、イベント発生地点の車両10に対する相対的な位置を求め、その相対的に位置に基づいて、車両10がイベント発生地点を追加したか否か判定する。なお、カメラ3から得られた画像は、車両10の周囲の道路環境を表す情報の他の一例である。
【0053】
この場合、条件設定部34は、車両10がイベント発生地点を通過すると、その通過した時から所定距離だけ走行し、あるいは所定時間が経過するまで、第2の速度閾値、第1の所定時間及び加速度閾値のうちの少なくとも一つまたは全てを、車両10がイベント発生地点に到達する前におけるそれらの値よりも所定のオフセット量だけ低い値に設定する。これにより、イベントの発生に起因する渋滞が生じていた場合において、渋滞解消判定部33は、車両10がイベント発生地点を通過した後、渋滞が解消したことをより早期に検出できる。なお、所定のオフセット量は、上記の第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれる場合のオフセット量と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。特に、車両10がイベント発生地点を通過すると、車両10の周囲の他の車両は急に加速すると想定される。そこで、車両10がイベント発生地点を通過したときの加速度閾値に対するオフセット量は、第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれる場合のオフセット量よりも大きく設定されてもよい。
【0054】
図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、第2の速度閾値、第1の所定時間及び加速度閾値のうちの少なくとも一つまたは全てを低下させる区間の一例を示す図である。
【0055】
図4(a)に示される例では、渋滞誘発地点の一例である道路の合流地点401から先の区間402内に、矢印で示される方向へ進む車両10が位置している場合(すなわち、車両10の現在位置を基準として、区間402と同じ長さを有し、その現在位置の手前側に位置する区間内に合流地点401が含まれる場合)、第2の速度閾値、第1の所定時間及び加速度閾値のうちの少なくとも一つまたは全てが低下される。なお、地点401が合流地点でなく、分岐地点である場合には、区間402は、点線で示されるように、地点401よりも手前側まで延長されてよい。
【0056】
また、図4(b)に示される例では、イベント発生地点の一例である事故の発生地点411から先の区間412内に、矢印で示される方向へ車両10が位置している場合、第2の速度閾値、第1の所定時間及び加速度閾値のうちの少なくとも一つまたは全てが低下される。
【0057】
さらに、車両10の周囲の渋滞がいわゆる自然渋滞である場合、車両10の周囲の渋滞が解消する際には、車両10の周囲の他の車両は比較的緩やかに加速していくことが想定される。また、渋滞が解消していないにもかかわらず、車両10の周囲の渋滞の程度の変化により、瞬時的に車両10の周囲の他の車両が加速することもある。そこで、条件設定部34は、第1の速度閾値及び分散閾値の何れか一方または両方について、上記の第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれる場合及び車両10がイベント発生地点を通過した後におけるそれらの閾値よりも所定のオフセット量だけ低い値に設定してもよい。これにより、渋滞解消判定部33は、車両10の周囲に生じた自然渋滞の解消を適切に判定することができる。
【0058】
図5は、渋滞中及び渋滞解消後の車両10の周囲の他の車両の平均車速の変化の一例を示す図である。図5において、横軸は時間を表し、縦軸は速度を表す。そしてグラフ501は、平均車速の時間変化を表すグラフである。図5において、期間Pでは車両10の周囲に渋滞が生じており、期間P以降において車両10の周囲の渋滞が解消したものとする。また、時刻t1において、車両10が渋滞誘発地点を通過したとする。この場合、時刻t1までは、第2の速度閾値は相対的に高い値511に設定される。そのため、渋滞中において一時的に平均車速が速くなっても、渋滞解消判定部33は、渋滞が解消したと誤判定することがない。一方、時刻t1以降では、車両10の手前の第1の区間内に渋滞誘発地点が含まれることになるので、第2の速度閾値は相対的に低い値512に設定される。そのため、渋滞解消後において、平均車速が第2の速度閾値を超えるタイミングが早くなるので、渋滞解消判定部33は、車両10の周囲の渋滞が解消したことを早期に検出できる。
【0059】
条件設定部34は、第1の速度閾値、第2の速度閾値、第1の所定時間、加速度閾値及び分散閾値の何れかを変更する度に、変更後のそれらの値を渋滞解消判定部33へ通知する。
【0060】
車両制御部35は、渋滞判定部32から車両10の周囲において渋滞が生じたことが通知されると、車両10に適用する運転モードを手動運転モードから自動運転モードに切り替える。その際、車両制御部35は、ユーザインターフェース6に、車両10に適用する運転モードを手動運転モードから自動運転モードに切り替えることを表すメッセージを表示させ、あるいはそのメッセージを表す音声を出力させて、ドライバに運転モードの切り替えを通知してもよい。そして車両制御部35は、その通知後に、車両10を自動運転するよう制御する。
【0061】
逆に、車両制御部35は、渋滞解消判定部33から車両10の周囲の渋滞が解消したことが通知されると、車両10に適用する運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り替える。その際、車両制御部35は、ユーザインターフェース6に、車両10に適用する運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り替えることを表すメッセージを表示させ、あるいはそのメッセージを表す音声を出力させて、ドライバに運転モードの切り替えを通知する。そしてその通知から所定期間を経過すると、車両制御部35は、車両10の自動運転を停止し、それ以降、ドライバの運転操作に従って車両10の走行を制御する。なお、車両制御部35は、ステアリングに設けられたタッチセンサ(図示せず)から、ステアリングが保持されたことを表す信号を受信するまでは、車両10の自動運転を継続してもよい。
【0062】
車両10に対して自動運転モードが適用されている間、目的地までの走行予定ルートに沿って車両10が進むよう、直近の所定の区間(例えば、500m~1km)における車両10の走行予定経路(トラジェクトリ)を1以上生成する。走行予定経路は、例えば、所定の区間を車両10が走行する際の各時刻における、車両10の目標位置の集合として表される。そして車両制御部35は、その走行予定経路に沿って車両10が走行するように車両10の各部を制御する。
【0063】
車両制御部35は、カメラ3により得られた時系列の一連の画像から検出された、車両10の周囲に存在する物体(例えば、他の車両)と車両10とが衝突しないように走行予定経路を生成する。例えば、車両制御部35は、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33に関して説明したように、検知部31により検出された物体を追跡する。なお、渋滞解消判定部33が検知された物体を追跡している場合には、車両制御部35は、渋滞解消判定部33による追跡結果を利用してもよい。そして車両制御部35は、その追跡結果により得られた軌跡から、物体のそれぞれの所定時間先までの予測軌跡を推定する。その際、車両制御部35は、各画像の取得時における、車両10の位置及び姿勢と、検出された物体までの推定距離と、車両10からその物体へ向かう方向とにより、各画像の取得時における、検出された物体の位置を推定できる。なお、各画像取得時における車両10の位置及び姿勢は、渋滞判定部32に関して説明したように、カメラ3により得られた画像と高精度地図とを照合することで推定されればよい。そして車両制御部35は、各画像の取得時における、検出された物体の推定位置に対してKalman FilterまたはParticle Filterなどを用いたトラッキング処理を実行することで、その検出された物体の予測軌跡を推定することができる。
【0064】
車両制御部35は、追跡中の各物体の予測軌跡に基づいて、何れの物体についても所定時間先までの追跡中の物体のそれぞれと車両10間の距離の予測値が所定距離以上となるように、車両10の走行予定経路を生成する。その際、車両制御部35は、車両10の速度が予め設定された上限速度を超えないように走行予定経路を設定してもよい。
なお、車両制御部35は、複数の走行予定経路を生成してもよい。この場合、車両制御部35は、複数の走行予定経路のうち、車両10の加速度の絶対値の総和が最小となる経路を選択してもよい。
【0065】
車両制御部35は、走行予定経路を設定すると、車両10がその走行予定経路に沿って走行するように車両10の各部を制御する。例えば、車両制御部35は、走行予定経路、及び、車速センサ(図示せず)により測定された車両10の現在の車速に従って、車両10の目標加速度を求め、その目標加速度となるようにアクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして車両制御部35は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、車両制御部35は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。
【0066】
さらに、車両制御部35は、車両10が走行予定経路に沿って走行するために車両10の進路を変更する場合には、その走行予定経路に従って車両10の操舵角を求め、その操舵角に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ出力する。
【0067】
図6は、プロセッサ23により実行される、手動運転モードから自動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、車両10に対して手動運転モードが適用されている間、所定の周期ごとに、以下の動作フローチャートに従って手動運転モードから自動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理を実行すればよい。
【0068】
プロセッサ23の検知部31は、車両10の周囲の他の車両を検知する(ステップS101)。プロセッサ23の渋滞判定部32は、車両10自身の挙動、車両10の周囲の他の車両の挙動あるいは受信した交通情報に基づいて、車両10の周囲に渋滞が生じたか否か判定する(ステップS102)。車両10の周囲に渋滞が生じていない場合(ステップS102-No)、プロセッサ23の車両制御部35は、手動運転モードの適用を継続する(ステップS103)。一方、車両10の周囲に渋滞が生じている場合(ステップS102-Yes)、車両制御部35は、適用される運転モードを手動運転モードから自動運転モードへ切り替える(ステップS104)。そしてその切り替え以降、車両制御部35は、車両10を自動運転するよう制御する。ステップS103またはS104の後、プロセッサ23は、手動運転モードから自動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理を終了する。
【0069】
図7は、プロセッサ23により実行される、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、車両10に対して自動運転モードが適用されている間、所定の周期ごとに、以下の動作フローチャートに従って自動運転モードから手動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理を実行すればよい。
【0070】
プロセッサ23の検知部31は、車両10の周囲の他の車両を検知する(ステップS201)。また、プロセッサ23の条件設定部34は、車両10の現在位置、高精度地図またはカメラ3により得られた画像といった道路環境情報に基づいて、渋滞解消条件を設定する(ステップS202)。なお、プロセッサ23は、ステップS201の処理とステップS202の処理の順序を入れ替えてもよく、あるいはステップS201の処理とステップS202の処理を並列に実行してもよい。
【0071】
プロセッサ23の渋滞解消判定部33は、車両10の周囲の他の車両の平均車速または平均加速度といった挙動を表す挙動評価値を算出し、その挙動評価値が渋滞解消条件を満たすか否か判定する(ステップS203)。挙動評価値が渋滞解消条件を満たしていない場合(ステップS203-No)、車両制御部35は、自動運転モードの適用を継続する(ステップS204)。
【0072】
一方、挙動評価値が渋滞解消条件を満たす場合(ステップS203-Yes)、車両制御部35は、適用される運転モードを自動運転モードから手動運転モードへ切り替える(ステップS205)。そしてその切り替え以降、車両制御部35は、車両10の自動運転を停止する。ステップS204またはS205の後、プロセッサ23は、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えに関する車両制御処理を終了する。
【0073】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、車両の周囲が渋滞している間、車両を自動運転するよう制御する。そしてこの車両制御装置は、車両の周囲において渋滞が解消されると、車両に適用される運転モードを自動運転モードから手動運転モードへ切り替える。その際、この車両制御装置は、渋滞が解消したときに車両の周囲の他の車両の挙動を表す挙動評価値が満たすべき渋滞解消条件を、車両の周囲の道路環境を表す情報に基づいて設定する。これにより、この車両制御装置は、渋滞が解消したか否かを適切に判定することができる。その結果として、この車両制御装置は、渋滞が解消しているにもかかわらず、渋滞中に適用される車両制御の条件、例えば、上限速度が適用されたままとなり、車両がその周囲の他の車両に追従できなくなることを抑制できる。さらに、この車両制御装置は、車両の周囲の道路環境に応じて渋滞解消条件を設定するので、渋滞が解消したと誤判定することを防止できる。そのため、この車両制御装置は、渋滞中であると判定された状態と、渋滞が解消したと判定された状態とが頻繁に切り替わり、自動運転制御と手動運転制御間の制御の移行が頻発することを抑制できる。その結果として、この車両制御装置は、ドライバへの車両の操作の受け渡しが頻繁に要求されることを防止して、ドライバの負担を軽減することができる。
【0074】
変形例によれば、条件設定部34は、車両10が下り坂を走行している場合における渋滞解消条件を、通常時における渋滞解消条件よりも渋滞が解消したと判定され難くなるように設定してもよい。例えば、条件設定部34は、車両10が下り坂を走行している場合における、第2の速度閾値及び加速度閾値の何れかまたは両方を、上記の実施形態に示された車両10の周囲の道路環境において設定されるそれらの閾値よりも所定のオフセット値だけ高く設定してもよい。これにより、下り坂に起因して車両10の周囲の他の車両の速度が一時的に速くなる場合でも、渋滞解消判定部33は、車両10の周囲の渋滞が解消したと誤判定することを抑制できる。なお、条件設定部34は、車両10の現在位置及び進行方向と、高精度地図とを参照することで、車両10が下り坂を走行しているか否かを判定すればよい。また、条件設定部34は、車両10の進行方向を、例えば、ナビゲーション装置により求められた車両10の走行予定ルート、直近の複数回の車両10の位置の測定結果、または、車両10に搭載されたコンパスなどによる方位の測定結果に基づいて特定することができる。また、条件設定部34は、下り坂の勾配が大きくなるほど、第2の速度閾値及び加速度閾値の何れかまたは両方について、所定のオフセット値を大きくしてもよい。その際、条件設定部34は、高精度地図を参照することで、車両10の現在位置における下り坂の勾配を求めればよい。
【0075】
また、条件設定部34は、車両10の周囲を走行し、かつ追跡中の他の車両の台数(以下、追跡車両数と呼ぶ)が所定の台数閾値以下である場合における渋滞解消条件を、通常時における渋滞解消条件よりも渋滞が解消したと判定され難くなるように設定してもよい。例えば、条件設定部34は、追跡車両数が台数閾値以下である場合における、第2の速度閾値、第1の期間及び加速度閾値の少なくとも一つまたは全てを、上記の実施形態に示された車両10の周囲の道路環境において設定されるそれらの値よりも所定のオフセット値だけ高く設定してもよい。これにより、渋滞解消判定部33は、車両10の周囲を走行する他の車両の台数が少なくても、車両10の周囲の渋滞が解消したと誤判定することを抑制できる。
【0076】
他の変形例によれば、渋滞解消判定部33は、車両10が走行中の道路の種類によっては、上記の実施形態における、車両10の速度に関する条件(すなわち、条件1)が満たされるか否かにかかわらず、他の車両の挙動に関する条件(すなわち、条件2)が満たされると車両10の周囲の渋滞が解消したと判定してもよい。例えば、車両10が走行中の道路の制限速度が所定の速度以下の場合、渋滞解消判定部33は、他の車両の挙動に関する条件が満たされると車両10の周囲の渋滞が解消したと判定してもよい。
【0077】
また他の変形例によれば、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、車両10の周囲の他の車両のうち、サービスエリアまたはパーキングエリアへ向かう車両を渋滞判定及び渋滞解消判定の際に参照しないようにしてもよい。これにより、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、車両10の周囲に渋滞が生じたか否か、及び、車両10の周囲の渋滞が解消したか否かをより正確に判定できる。この場合、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、追跡中の他の車両の軌跡と高精度地図とを参照して、追跡中の他の車両の軌跡がサービスエリアまたはパーキングエリアへ向かう分岐路上に位置しているか否かを判定し、その軌跡がその分岐路上に位置している場合、その車両をサービスエリアまたはパーキングエリアへ向かう車両と判定すればよい。
【0078】
同様に、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、車両10が走行中の車線と異なる車線であり、かつ、車両10が走行中の車線を含む道路から分岐する車線(以下、分岐車線と呼ぶ)を走行する他の車両を渋滞判定及び渋滞解消判定の際に参照しないようにしてもよい。さらに、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、バスレーン、High Occupancy Vehicle(HOV)レーン、あるいはExpressレーンといった、特定の種類の車両のみが走行可能な車線(以下、車種制限車線と呼ぶ)を走行する他の車両を渋滞判定及び渋滞解消判定の際に参照しないようにしてもよい。分岐車線または車種制限車線の渋滞の度合いは、車両10が走行中の車線の渋滞の度合いと異なることがあるので、分岐車線または車種制限車線を走行する他の車両を渋滞判定及び渋滞解消判定の判定に利用しないことで、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、車両10の周囲に渋滞が生じたか否か、及び、車両10の周囲の渋滞が解消したか否かをより正確に判定できる。この場合も、上記と同様に、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、追跡中の他の車両の軌跡と高精度地図とを参照して、追跡中の他の車両の軌跡が分岐車線上に位置しているか否かを判定し、その軌跡がその分岐車線上に位置している場合、その車両を、分岐車線を走行する車両と判定すればよい。同様に、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、追跡中の他の車両の軌跡が車種制限車線上に位置しているか否かを判定し、その軌跡が車種制限車線上に位置している場合、その車両を、車種制限車線を走行する車両と判定すればよい。
【0079】
さらに、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、車両10の周囲を走行する他の車両のうち、二輪車及び緊急車両を渋滞判定及び渋滞解消判定の際に参照しないようにしてもよい。二輪車及び緊急車両は、車両10の周囲が渋滞していても、ある程度の速度で走行することがあるためである。この場合、渋滞判定部32及び渋滞解消判定部33は、画像を識別器に入力することで検出された他の車両のうち、その車両の種類が二輪車あるいは緊急車両であるものを除いて、平均車速などを算出するようにすればよい。
【0080】
さらに他の変形例によれば、車両制御部35は、車両10の周囲の渋滞が解消した場合に車両10に適用される自動運転の制御レベルを、車両10の周囲が渋滞している場合の制御レベルよりも低下させてもよい。例えば、車両制御部35は、車両10の周囲の渋滞が解消した場合において、ドライバが車両10の前方を監視していることを条件として、車両10の自動運転制御を継続してもよい。この場合、車両制御部35は、例えば、車両10の車室内においてドライバの頭部を撮影するように設けられたドライバモニタカメラ(図示せず)から得られた車内画像から、ドライバの視線方向を検出することで、ドライバが車両10の前方を監視しているか否かを判定すればよい。そのために、車両制御部35は、例えば、車内画像からドライバの瞳孔及びドライバを照明する光源の角膜反射像(プルキンエ像)を検出し、その瞳孔の重心とプルキンエ像との位置関係に基づいて、ドライバの視線方向を検出すればよい。
【0081】
あるいは、車両制御部35は、車両10の周囲の渋滞が解消した場合において、車両10と車両10の前方を走行する他の車両との車間距離が一定に保たれるように、車両10の速度を自動制御してもよい。ただしこの場合、車両制御部35は、ドライバによるステアリング操作に従って車両10の進行方向を制御する。
【0082】
また、上記の実施形態または変形例による、ECU7のプロセッサ23の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0083】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
1 車両制御システム
10 車両
2 GPS受信機
3 カメラ
4 無線通信器
5 ストレージ装置
6 ユーザインターフェース
7 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 検知部
32 渋滞判定部
33 渋滞解消判定部
34 条件設定部
35 車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7