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  • 特許-回転軸の軸受固定構造 図1
  • 特許-回転軸の軸受固定構造 図2
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  • 特許-回転軸の軸受固定構造 図4
  • 特許-回転軸の軸受固定構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】回転軸の軸受固定構造
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/073 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F16C35/073
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020106131
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001767
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 金哉
(72)【発明者】
【氏名】布施 健司
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-346085(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044524(WO,A1)
【文献】特開2016-132050(JP,A)
【文献】特開2014-164774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,33/30-33/66,
35/00-39/06,43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周面に軸線方向に延びるレーザ照射部が円周方向に等間隔に3箇所以上設けられた軸受装設部を設け、前記軸受装設部の周面には前記レーザ照射部と非レーザ照射部が交互に設けられ、
外輪を介して被取付体に固着されたボールベアリングの内輪に前記回転軸が嵌挿され、前記レーザ照射部により前記回転軸と前記内輪との調芯がなされ、前記軸受装設部と前記内輪との間に介在させた接着剤により前記軸受装設部を前記内輪に接合して、前記被取付体に対し前記回転軸を回転可能に支持するように構成したことを特徴とする回転軸の軸受固定構造。
【請求項2】
前記レーザ照射部の表面が凸部分及び凹部分を有し、前記凸部分により前記調芯がなされている、請求項1に記載の回転軸の軸受固定構造。
【請求項3】
前記凸部分が前記非レーザ照射部の表面よりもせり上がっており、前記凹部分が前記非レーザ照射部の表面よりも凹んでいる、請求項2に記載の回転軸の軸受固定構造。
【請求項4】
前記回転軸は前記軸受装設部を除き、外径が一定の丸棒であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回転軸の軸受固定構造。
【請求項5】
前記回転軸は前記軸受装設部を除き、外径5mm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転軸の軸受固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の軸受固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回転軸の軸受固定構造として、一般的に実施されているのは、図5に示すようなものがある。
モータの回転軸101にボールベアリング104を装着する場合、回転軸101の軸受装設部102に予め段部102aを形成し、適切な嵌合公差に研磨加工を施し、回転軸101の軸受装設部102にボールベアリング104を圧入することで、回転軸101にボールベアリング104を固定している。ボールベアリング104の外輪は、モータのブラケット103に固着されている。
特許文献1においては、仕上り精度を向上するための研磨加工の研磨時間が長くなること、研磨設備が必要なことや、作業性の悪さなどによるコスト高となる欠点が挙げられている。しかし、近年においては、研磨設備の精度向上もあり、特に接着等も必要なく、圧入のみで、真円度の精度も良く、回転軸にボールベアリングを固定できるため、直径φ5mmより大きい径の回転軸の場合は、一般的に行われている。
【0003】
しかしながら、直径φ5mm以下の径の回転軸の場合は、ボールベアリングも小径のものが採用されるので、ボールベアリングの内輪の強度も弱く、回転軸の軸受装設部に予め段部を、更に高精度の嵌合公差に研磨加工を施す必要があり、研磨加工の研磨時間が長くなることや、作業性の悪さなどによるコスト高となる欠点が解決できていない。
【0004】
特許文献1の第1図に示されているように、回転軸を丸棒にして、ボールベアリングの装着部に予めローレット加工により軸方向に沿った複数の凹凸による係合部が形成され、その凹凸によって回転軸の外径よりも見かけ上の外径が増大し、これによって容易にボールベアリングの圧入が可能となることが記載されている。しかし、ローレット加工による、凹凸で回転軸の外径より見かけ上の外径が増大する場合は、転造加工によるローレット加工の場合である。転造加工によるローレット加工の場合、凹凸部にμオーダーの精度出しは困難である。転造加工する前に回転軸ごと測定の上加工する必要があり、転造加工を行うにつれダイス等の加工具も摩耗していく。このように、精度の維持及び管理が煩雑となり現実的ではなく、凹凸部の精度が悪くなり、ボールベアリングを圧入した時にボールベアリングの内輪が変形したり、回転軸の軸心が傾いたり、位置ずれしたりして、回転軸をモータに組み込んだ時の軸振れの精度が悪くなる恐れがある。また、転造加工は硬い材料には向かないため、焼入れ後には行えないという制約もある。
【0005】
したがって、直径φ5mm以下の径の回転軸にボールベアリングを固定する場合は、回転軸とボールベアリングの内径とに5μmほどの適正な隙間を設けて接着する固定構造や、特許文献2に記載されているように、さらに、回転軸の外周面に複数の保持溝を設けてボールベアリングの内径を接着する固定構造などが実施されている。特許文献2の場合においても、回転軸の周面が残るように保持溝が凹設され、保持溝内に接着剤が保持されるとともに、この接着剤により回転軸の周面とボールベアリングの内輪の内周面とが接合されているので、特許文献2においても、回転軸とボールベアリングの内径とに5μmほどの適正な隙間を設けて接着する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭60-147971号公報
【文献】特開2000-346085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の回転軸の軸受固定構造にあっては、特許文献2に記載されているように、保持溝を回転軸の周面に一定間隔をおいて均一に設けたとしても、ボールベアリングの内径とに5μmほどの適正な隙間を設けて接着する場合、接着剤が周面に亘り均一の厚さ(2.5μm)となるように、回転軸にボールベアリングを接着することは困難であり、不均一に接着されてしまう(最悪の場合は、5μmのずれが発生する)。
このため、回転軸の軸心が傾いたり、位置ずれしたりして、回転軸をモータに組み込んだ時の軸振れの精度が悪くなる恐れがある。また、軸受の内径の公差、回転軸の加工公差から、回転軸と軸受の隙間を5μmより小さくすることも困難である。
という問題点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題(欠点)に着目してなされたもので、回転軸の軸受装設部に軸方向に3箇所以上の複数のレーザ照射を等間隔で行い、回転軸とベアリングを調芯させて、レーザ照射部および非レーザ照射部ともに、回転軸とベアリングの内輪とを接着して固定することにより、上記の課題を解決することができる回転軸の軸受固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、回転軸の外周面に軸線方向に延びるレーザ照射部が円周方向に等間隔に3箇所以上設けられた軸受装設部を設け、前記軸受装設部の周面には前記レーザ照射部と非レーザ照射部が交互に設けられ、外輪を介して被取付体に固着されたボールベアリングの内輪に前記回転軸が嵌挿され、前記レーザ照射部により前記回転軸と前記内輪との調芯がなされ、前記軸受装設部と前記内輪との間に介在させた接着剤により前記軸受装設部を前記内輪に接合して、前記被取付体に対し前記回転軸を回転可能に支持するように構成したことにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1によれば、回転軸の外周面にレーザ照射部を形成することで、レーザ照射部の凸部で調心されるので、位置ずれが防止できる。さらに、レーザ照射部の凹凸面および非レーザ照射部に接着剤を介在させることができ、より強固に接着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、回転軸をボールベアリングに、嵌挿して固定する前の、分解斜視図である。
図2図2は、回転軸をボールベアリングに、嵌挿して固定した、固定部の断面図である。
図3図3は、図2のレーザ照射部の拡大図である。
図4図4は、図1のレーザ照射部の部分拡大図である。
図5図5は、従来の回転軸とボールベアリングの固定構造を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は、レーザ照射をしたモータの回転軸1を示したもので、回転軸1を支持するボールベアリング5との固定構造を示したものである。回転軸1は、外径が一定の丸棒で構成されている。回転軸1には、周面部に軸受装設部2が設けられ、この軸受装設部2には、外周面に軸線方向に延びるレーザ照射部3が、周面の円周方向に沿って一定間隔で設けられている。図示例では円周方向に3か所のレーザ照射部3が設けられている。これらレーザ照射部3は、回転軸1の円周方向に等間隔に3箇所以上設けられており、レーザ照射部3は必要に応じて4か所、5か所、6か所以上と増加することができる。また、レーザ照射部3の軸方向長さlも任意に設定することができ円周方向の幅mも任意に設定することができる。レーザ照射部3の幅mは、軸受装設部2のレーザを照射しない非レーザ照射部4の幅nとの関係で、一定の比率、m:n=xにすることができる。この比率xも任意に設定することができる。
【0013】
前記ボールベアリング5は、ボールベアリング5の内輪6と、ボールベアリングの外輪7との間に図示しない多数のボールが装填されたもので、ボールベアリング5の内輪6の内側に回転軸1が挿通されている。この回転軸1の軸受装設部2とボールベアリング5の内輪6との隙間8には、接着剤9が充填されている。この接着剤9の厚みpも任意に設定することができる。
【0014】
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
図1に示す通り、モータ等の回転軸1の軸受装設部2に、軸方向に一定長さのレーザ照射を行い、このレーザ照射部3を回転軸1の軸受装設部2の周面に円周方向に沿って等間隔に3箇所レーザ照射部3を形成する。前記軸受装設部2の外周面において、レーザ照射されていない部分が非レーザ照射部4となる。
回転軸1は、外径が一定のステンレス製の丸棒である。回転軸1の軸受装設部2に嵌挿して固定するボールベアリング5の内輪6の内径と回転軸1の外径との嵌め合い公差は、隙間8が5μm程度の隙間嵌めとし、接着剤9により接着して固定する。回転軸1をボールベアリング5の内輪6に嵌挿して回転軸の軸受装設部2に接着して固定したときの断面図を図2に示す。
【0015】
金属部材の接着固定の場合、レーザ照射により表面に凹凸を形成する下地処理を行い、接着固定することが行われている(特許文献:特開2014-114327号公報)。
本願においては、図1に示す通り、回転軸1の軸受装設部2の軸方向にレーザ照射を行い、そして、この軸受装設部2の円周方向に等間隔に3箇所、レーザ照射部3を形成することで、図3および図4に示すように、レーザ照射部3の表面30は凹凸状の荒れた面30aとなる。レーザ照射部3の表面30の凹凸状の大きさは、レーザ加工機の出力とスキャンスピード及びパルス周期により調整でき、図3に示すように、凸部分31は、回転軸1の表面1aよりも2μm程度のせり上がりが生じるようにしている。図4にレーザ照射した面30aの拡大図を示す。凸部分31は、穴部分の周囲が表面1aより環状にせり出した突起部に形成されている。
【0016】
ボールベアリング5の内輪6の内径と回転軸1の外径との嵌め合い公差は、隙間が5μm程度の隙間嵌めとしているが、レーザ照射部3に2μm程度の凸部が形成されるので、図2に示されるように、3箇所のレーザ照射部3の凸部分31でボールベアリング5の内輪6の内径と回転軸1の外径の隙間を埋めるように、調心して嵌合される。さらに、レーザ照射部3および非レーザ照射部4ともに接着剤9を介在させ、接着して固定している(図2参照)。接着剤9は、嫌気性接着剤が用いられる。
【0017】
上記に説明した通り、5μmの隙間嵌めで接着した場合、位置ずれを起こす恐れがあるが、レーザ照射部3を形成することで、レーザ照射部3の凸部分31で調心されるので、位置ずれが防止できる。さらに、レーザ照射部3の凸部分31および凹部分32との凹凸面および非レーザ照射部4に接着剤9を介在させることができ、より強固に接着固定することができる。
【0018】
次に、本発明の他の実施の形態を示す。
上記実施の形態では、回転軸1の軸受装設部2に設けられるレーザ照射部3は、円周方向に3箇所の事例で説明したが、3箇所以上であれば4個所、5個所、6個所、7個所、8個所以上であっても良い。強度や作業面の問題がなければ、全周にレーザ照射を施しても良い。
また、本願のモータの回転軸1は、外径5mm以下の場合がより効果があるが、外径5mmより大きい外径の回転軸1と軸受の固定構造に適用しても良い。
【0019】
このようにモータ等の回転軸1へ等間隔にレーザ照射して軸受装設部2の表面に凹凸を設けることで、レーザ照射部3の凸部分31および凹部分32との凹凸面に、接着剤9が入り込み、凹凸に留まり易くなり接着強度が安定する。
回転軸1のレーザ照射された凸部分31でモータの回転軸1とボールベアリングが調芯されるので、回転軸1の軸心が傾いたり、位置ずれしたりして、回転軸1をモータに組み込んだ時の軸振れの精度が悪くなることを防止できる。
【0020】
以上説明してきたように、上記実施の形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
回転軸1の外周面に軸線方向に延びるレーザ照射部3が、円周方向に等間隔に3箇所以上設けられた軸受装設部2を設け、外輪7を介して被取付体に固着されたベアリング5の内輪6に前記回転軸1が嵌挿されるとともに、前記軸受装設部2に介在させた接着剤9により前記回転軸1の軸受装設部2を前記内輪6に接合して、前記被取付体に対し前記回転軸1を回転可能に支持するように構成したので、回転軸1の外周面にレーザ照射部3を形成することで、レーザ照射部3の凸部で調心されるので、位置ずれが防止できる。さらに、レーザ照射部の凹凸面および非レーザ照射部4に接着剤9を介在させることができ、より強固に接着固定することができる。
前記回転軸1の軸受装設部2の周面には、前記レーザ照射部3と非レーザ照射部4が交互に設けられるとともに、これらレーザ照射部3と非レーザ照射部4が設けられた前記軸受装設部2には、前記ベアリング5の内輪6との間に接着剤9が介在されているので、レーザ照射部3の凸部分31および凹部分32との凹凸面に、接着剤9が入り込み、凹凸に留まり易くなり接着強度が安定する。
前記回転軸1の軸受装設部2に設けられた前記レーザ照射部3は、回転軸1のレーザ照射された凸部分31でモータの回転軸1とボールベアリング5の内輪6が調芯されるので、回転軸1の軸心が傾いたり、位置ずれしたりして、回転軸1をモータに組み込んだ時の軸振れの精度が悪くなることを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、モータの回転軸に適用したが、回転軸であれば、モータに限定されるものではなく、発電機など他の回転電機に適用することもできる。その他、本発明の技術的範囲を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
1 回転軸
2 軸受装設部
3 レーザ照射部
4 非レーザ照射部
5 ボールベアリング
6 内輪
7 外輪
8 隙間
9 接着剤
30 表面
31 凸部分
32 凹部分
図1
図2
図3
図4
図5