(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】被覆装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20240402BHJP
B05C 3/09 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01N1/28 N
G01N1/28 J
B05C3/09
(21)【出願番号】P 2020109381
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】517448489
【氏名又は名称】合同会社H.U.グループ中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 健之
(72)【発明者】
【氏名】松下 雅季
【審査官】野口 聖彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-147400(JP,A)
【文献】特表2016-505841(JP,A)
【文献】特開2003-106963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 33/00
B05C 1/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体保持体に保持されている検体の表面をパラフィンで被覆するための被覆装置であって、
前記検体保持体を支持する第1支持手段と、
溶融したパラフィンを保持することが可能な保持手段と、
前記保持手段を支持する第2支持手段と、
前記保持手段に保持された前記パラフィンが前記検体の表面の検体対象部分に塗布されるように、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させるための水平移動手段と、
前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際に、前記検体保持体の厚さに応じて前記第1支持手段又は前記第2支持手段を略鉛直方向に移動させるための鉛直移動手段と、
を備え、
前記鉛直移動手段は、鉛直方向に弾性復元力を有する弾性体を少なくとも1つ以上備える、
被覆装置。
【請求項2】
前記保持手段における前記パラフィンが保持される保持面を、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面に形成した、
請求項1に記載の被覆装置。
【請求項3】
前記保持手段の保持面の傾斜角度を、下記式(1)及び下記式(2)を満たすように設定した、
請求項2に記載の被覆装置。
D×cosθ>d×cosθ+Δy/tanθ・・・(1)
d×sinθ+Δy<D×sinθ・・・(2)
(ここで、θ:前記保持手段の保持面の傾斜角度、
D:前記保持手段の保持面の長さ、
d:前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際の前記パラフィンと前記検体対象部分との必要接触距離、
Δy:前記検体保持体の最小厚さと前記検体保持体の最大厚さとの差)
【請求項4】
前記水平移動手段は、前記検体対象部分が前記保持手段の保持面の端部のうち前記水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させる、
請求項2又は3に記載の被覆装置。
【請求項5】
前記弾性体は、鉛直方向に伸縮可能なバネ材であり、
前記弾性体のバネ定数を、下記式(3)を満たすように設定した、
請求項1から4のいずれか一項に記載の被覆装置。
k>W/n×(A-(d×sinθ+Δy))・・・(3)
(ここで、k:前記弾性体のバネ定数、
W:前記保持手段、前記第2支持手段、及び前記保持手段に保持されている前記パラフィンの総重量、
n:前記弾性体の本数、
A:前記弾性体の最大縮み量、
θ:前記保持手段の保持面の傾斜角度、
d:前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際の前記パラフィンと前記検体対象部分との必要接触距離、
Δy:前記検体保持体の最小厚さと前記検体保持体の最大厚さとの差)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体が保持されているカセットであって、一部が薄切りされることで標本が作製された後のカセットを被覆する技術として、熱溶融したパラフィンで満たされたホットプレートにカセットを作業者が手動で擦り付けることでカセットの薄切りされた部分をコーティングする技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記従来の技術においては、上述したように、ホットプレートにカセットを手動で擦り付けるので、擦り付ける作業中に作業者がやけど等するおそれがあることから、安全性の向上が要望されていた。
【0004】
そこで、上述した問題を解消するために、カセットを挟持可能な送り出しロール及び転写ロールと、送り出しロールを転写ロールと逆回転させることにより、転写ロールに保持されたパラフィンをカセットに付着するように転写ロールを送り出すための機構(具体的には、一対の歯車及びガイドレール等)とを備える装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の装置においては、上述したように、送り出しロール、転写ロール、及び機構を備えているので、当該装置の構造が煩雑になるおそれがあった。また、カセットの厚さに応じて送り出しロール及び転写ロールのそれぞれの高さを変える必要があることから、装置に対する作業も煩雑になるおそれがあった。よって、検体をパラフィンで被覆する作業(以下、「被覆作業」と称する)の作業性を高めながら、装置の製造性を高める観点からは改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためのものであって、被覆作業の作業性を高めながら、被覆装置の製造性を高めることが可能になる、被覆装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の被覆装置は、検体保持体に保持されている検体の表面をパラフィンで被覆するための被覆装置であって、前記検体保持体を支持する第1支持手段と、溶融したパラフィンを保持することが可能な保持手段と、前記保持手段を支持する第2支持手段と、前記保持手段に保持された前記パラフィンが前記検体の表面の検体対象部分に塗布されるように、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させるための水平移動手段と、前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際に、前記検体保持体の厚さに応じて前記第1支持手段又は前記第2支持手段を略鉛直方向に移動させるための鉛直移動手段と、を備え、前記鉛直移動手段は、鉛直方向に弾性復元力を有する弾性体を少なくとも1つ以上備える。
【0009】
請求項2に記載の被覆装置は、請求項1に記載の被覆装置において、前記保持手段における前記パラフィンが保持される保持面を、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面に形成した。
【0010】
請求項3に記載の被覆装置は、請求項2に記載の被覆装置において、前記保持手段の保持面の傾斜角度を、下記式(1)及び下記式(2)を満たすように設定した。
D×cosθ>d×cosθ+Δy/tanθ・・・(1)
d×sinθ+Δy<D×sinθ・・・(2)
(ここで、θ:前記保持手段の保持面の傾斜角度、
D:前記保持手段の保持面の長さ、
d:前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際の前記パラフィンと前記検体対象部分との必要接触距離、
Δy:前記検体保持体の最小厚さと前記検体保持体の最大厚さとの差)
【0011】
請求項4に記載の被覆装置は、請求項2又は3に記載の被覆装置において、前記水平移動手段は、前記検体対象部分が前記保持手段の保持面の端部のうち前記水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させる。
【0012】
請求項5に記載の被覆装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の被覆装置において、前記弾性体は、鉛直方向に伸縮可能なバネ材であり、前記弾性体のバネ定数を、下記式(3)を満たすように設定した。
k>W/n×(A-(d×sinθ+Δy))・・・(3)
(ここで、k:前記弾性体のバネ定数、
W:前記保持手段、前記第2支持手段、及び前記保持手段に保持されている前記パラフィンの総重量、
n:前記弾性体の本数、
A:前記弾性体の最大縮み量、
θ:前記保持手段の保持面の傾斜角度、
d:前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際の前記パラフィンと前記検体対象部分との必要接触距離、
Δy:前記検体保持体の最小厚さと前記検体保持体の最大厚さとの差)
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の被覆装置によれば、保持手段に保持されたパラフィンが検体の表面の検体対象部分に塗布されるように、第1支持手段又は第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させるための水平移動手段と、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分に塗布される際に、検体保持体の厚さに応じて第1支持手段又は第2支持手段を略鉛直方向に移動させるための鉛直移動手段と、を備えるので、従来技術(送り出しロール、転写ロール、及び機構を備える装置を用いて検体を被覆する技術)に比べて、簡易な構造で構成できると共に、様々な厚さの検体保持体に対する被覆作業を安全且つ簡易に行うことができ、被覆作業の作業性を高めながら、被覆装置の製造性を高めることができる。
また、鉛直移動手段が、鉛直方向に弾性復元力を有する弾性体を少なくとも1つ以上備えるので、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分に塗布される際に第1支持手段又は第2支持手段が略鉛直方向のいずれか一方に移動しても当該第1支持手段又は当該第2支持手段を元の位置に自動的に戻すことができ、当該戻す作業を省略できる。
【0015】
請求項2に記載の被覆装置によれば、保持手段におけるパラフィンが保持される保持面を、第1支持手段又は第2支持手段のいずれか一方の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面に形成したので、保持面が水平面である場合に比べて、検体保持体の厚さに関わらず、パラフィンを検体対象部分に確実に塗布させることができ、様々な厚さの検体保持体に対する被覆作業を正確に行いやすくなる。また、検体保持体を手動で検体を被覆する場合と略同様に、弧を描くように検体保持体を移動させることができる。よって、保持面が水平面である場合に比べて、検体対象部分全体にパラフィンを均一に塗布しやすくなるため、当該塗布されるパラフィンの厚さを所望の厚さに設定しやすくなる。
【0016】
請求項3に記載の被覆装置によれば、保持手段の保持面の傾斜角度を、式(1)及び式(2)を満たすように設定したので、最適な保持面の傾斜角度を設定でき、様々な厚さの検体保持体に対する被覆作業を正確に行いやすくなる。
【0017】
請求項4に記載の被覆装置によれば、水平移動手段は、検体対象部分が保持手段の保持面の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、第1支持手段又は第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させるので、検体対象部分を保持面の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と接触させない場合に比べて、検体保持体に付着した余分なパラフィンを取り除くことができ、被覆作業後の検体保持体の意匠性を高めることができる。
【0018】
請求項5に記載の被覆装置によれば、弾性体のバネ定数を、式(3)を満たすように設定したので、水平移動部によってパラフィンが検体対象部分に塗布される際に、鉛直移動手段による検体保持体に対する押返しの負荷を低減でき、検体に破損が生じることを回避しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る被覆装置を示す斜視図である。
【
図2】保持部、第2支持部、及び鉛直移動部を示す斜視図である。
【
図3】第2支持部及び鉛直移動部を示す斜視図である。
【
図4】制御ユニットの電気的構成を示したブロック図である。
【
図5】第1支持部の水平移動の概要を示す図であり、(a)最小厚さの検体保持体が支持されている場合の第1支持部の水平移動の概要を示す図、(b)最大厚さの検体保持体が支持されている場合の第1支持部の水平移動の概要を示す図である。
【
図6】実施の形態に係る被覆処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る被覆装置の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念について説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、検体保持体に保持されている検体の表面をパラフィンで被覆するための被覆装置に関するものである。
【0023】
ここで、「パラフィン」とは、任意の飽和炭化水素化合物を意味し、例えば、直鎖又は分岐のパラフィン、1個の飽和環を有するパラフィン分子等が該当する。また、「被覆」とは、検体を密着して覆うことを意味する。また、「検体」とは、標的物質を含むと思われる(又は含んでいるかを知るために検査される)、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、骨髄液、リンパ液、組織、拭い液などの生体試料を意味する。この「検体」は、標的物質として、例えば、抗体などのタンパク質、核酸(一例として、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)等)、ウイルス、細菌、小胞、細胞、組織、毛髪、骨、糞便等を含む概念である。
【0024】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0025】
(構成)
最初に、実施の形態に係る被覆装置の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る被覆装置を示す斜視図である。
図2は、保持部、第2支持部、及び鉛直移動部を示す斜視図である。
図3は、第2支持部及び鉛直移動部を示す斜視図である。以下の説明では、
図1のX方向を被覆装置の左右方向(-X方向を被覆装置の左方向、+X方向を被覆装置の右方向)、
図1のY方向を被覆装置の前後方向(+Y方向を被覆装置の前方向、-Y方向を被覆装置の後方向)、
図1のZ方向を被覆装置の上下方向(+Z方向を被覆装置の上方向、-Z方向を被覆装置の下方向)と称する。
【0026】
被覆装置1は、検体保持体Hに保持されている検体(図示省略)の表面をパラフィン(図示省略)で被覆するための装置であり、
図1に示すように、第1支持部10、保持部20、第2支持部30、水平移動部40、鉛直移動部50、供給部60、第3支持部70、及び後述する
図4の制御ユニット80を備えている。
【0027】
なお、被覆装置1における各部の接続形態について説明すると、具体的には、第1支持部10、水平移動部40、及び供給部60の各々と後述する制御ユニット80の制御部85とは、図示しない配線(例えば、電気配線又は光ケーブル等)を介して接続されており、後述する制御ユニット80の制御部85のコントロールで動作することができる。
【0028】
(構成-検体保持体)
ここで、検体保持体Hの具体的な構成については、検体保持体Hの面のうち検体を保持する保持面(
図1では、検体保持体Hの下面)にパラフィンで包埋された検体を固定することができる限り任意であるが、実施の形態では以下の通りに構成されている。
【0029】
すなわち、
図1に示すように、検体保持体Hの形状については、中空箱状体に設定している。具体的には、左面及び右面を、上下方向に略沿った平坦な鉛直面に設定している。また、上面を、水平方向に略沿った平坦な水平面であり、且つ図示しない切欠孔が形成された水平面に設定している。また、下面を、検体を保持することが可能となるように、水平方向に略沿った非平坦な水平面(より具体的には、複数の貫通孔を有する水平面)に設定している。また、前面を、上下方向に略沿った平坦な鉛直面に設定している。また、後面を、当該後面の上端部が当該後面の下端部よりも後方に位置するように傾斜した平坦な傾斜面に設定している。
【0030】
また、検体保持体Hの左右方向の長さについては、第1支持部10の左右方向の長さよりも短く設定しており、検体保持体Hの前後方向の長さは、第1支持部10の前後方向の長さよりも短く設定しており、検体保持体Hの上下方向の長さについては、第1支持部10の上下方向の長さよりも短く設定している。
【0031】
また、検体保持体Hの材質については、樹脂材料(例えば、ポリアセタール樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン樹脂等)で構成されている。
【0032】
(構成-第1支持部)
第1支持部10は、検体保持体Hを支持する第1支持手段である。この第1支持部10は、例えば公知の支持部材(一例として、検体保持体Hを挟み込み自在な支持部材)を用いて構成されており、
図1に示すように、後述する水平移動部40の水平移動部本体41の先端部に設けられており、当該先端部に対して固定具等によって固定されている。
【0033】
(構成-保持部)
保持部20は、溶融したパラフィンを保持することが可能な保持手段である。ここで、「保持する」とは、実施の形態では、保持部20におけるパラフィンが保持される保持面21(
図1では、保持部20の上面)に溶融したパラフィンを留め置くことを意味する。
【0034】
この保持部20は、例えば公知の保持部材を用いて構成されており、
図1に示すように、水平移動部40の近傍に設けられている。
【0035】
この保持部20の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0036】
すなわち、
図1、
図2に示すように、保持部20の形状については、矩形状の板状体にて形成されているが、これに限らず、例えば、円形状又は楕円形状に設定してもよい。
【0037】
また、保持部20の左右方向の長さについては、検体保持体Hの左右方向の長さよりも長く設定しており、具体的には、保持部20の前後方向の長さよりも長く設定している(例えば、保持部20の前後方向の長さの2倍から5倍程度の長さに設定してもよい)。また、保持部20の前後方向の長さは、検体保持体Hの前後方向の長さよりも長く設定している。また、保持部20の上下方向の長さについては、検体保持体Hの上下方向の長さよりも長く設定しているが、これに限らず、例えば、検体保持体Hの上下方向の長さよりも短く又は略同一に設定してもよい。
【0038】
また、保持部20の材質については、熱伝導性を有する材質で構成しており、例えば、スチール材、ステンレス材、銅材、又はアルミニウム材等で構成してもよい。なお、保持部20の構成の詳細については、後述する。
【0039】
(構成-第2支持部)
図1に戻り、第2支持部30は、保持部20を支持する第2支持手段である。この第2支持部30は、例えば公知の支持部材を用いて構成されており、
図1、
図2に示すように、設置面PSよりも上方において、第2支持部本体31、第2支持側加熱部(図示省略)、及び第2支持側連結部32を備えている。
【0040】
(構成-第2支持部-第2支持部本体)
第2支持部本体31は、第2支持部30の基本構造体である。この第2支持部本体31は、中空のブロック状体であり、
図2に示すように、第2支持部本体31の上面に保持部20が載置されるように設けられている。
【0041】
また、第2支持部本体31の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0042】
すなわち、
図2に示すように、第2支持部本体31の平面形状については、矩形状に設定しているが、これに限らず、例えば、円形状又は楕円形状に設定してもよい。
【0043】
また、第2支持部本体31の左右方向の長さについては、保持部20の左右方向の長さよりも長く設定しているが、これに限らず、例えば、保持部20の左右方向の長さと略同一に設定してもよい。また、第2支持部本体31の前後方向の長さについては、保持部20の前後方向の長さよりも長く設定しているが、これに限らず、例えば、保持部20の前後方向の長さと略同一に設定してもよい。また、第2支持部本体31の上下方向の長さについては、保持部20の上下方向の長さよりも長く設定しているが、これに限らず、例えば、保持部20の上下方向の長さと略同一に設定してもよい。
【0044】
また、第2支持部本体31の材質については、熱伝導性を有する材質で構成しており、例えば、スチール材、ステンレス材、銅材、又はアルミニウム材等で構成してもよい。
【0045】
また、第2支持部本体31のその他の構成については、
図2、
図3に示すように、第2支持部本体31の上面に第1凹部31a及び第2凹部31bが設けられている。
【0046】
(構成-第2支持部-第2支持部本体31-第1凹部)
第1凹部31aは、供給部60から供給されたパラフィンを貯めるための凹部であり、
図2に示すように、第2支持部本体31の上面の略全体にわたって形成されている。
【0047】
また、第1凹部31aの上下方向の長さについては、第1凹部31aに貯められたパラフィンによって第2凹部31bに嵌合された保持部20の保持面21の略全体を浸すことが可能な長さに設定しており、具体的には、保持部20における第2凹部31bに嵌合される部分以外の部分の上下方向の長さよりも長く設定している。
【0048】
このような第1凹部31aにより、第1凹部31aに貯められたパラフィンを保持部20に保持させることが可能となる。
【0049】
(構成-第2支持部-第2支持部本体-第2凹部)
第2凹部31bは、保持部20を嵌合するための凹部であり、
図3に示すように、第1凹部31aの底部分の一部に形成されている。
【0050】
また、第2凹部31bの具体的な形状及び大きさについては、保持部20を嵌合できる限り任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0051】
すなわち、
図3に示すように、第2凹部31bの平面形状については、保持部20の平面形状と略同一の形状に設定しており、具体的には、矩形状に設定している。
【0052】
また、第2凹部31bの左右方向の長さについては、保持部20の左右方向の長さと略同一に設定しており、第2凹部31bの前後方向の長さについては、保持部20の前後方向の長さと略同一に設定している。また、第2凹部31bの上下方向の長さについては、保持部20の上下方向の長さよりも短く設定しており、例えば、均一な長さに設定してもよく、又は左側から右側に向かうにつれて長くなるように設定してもよい。
【0053】
このような第2凹部31bにより、保持部20を嵌合でき、後述するように、水平移動部40によってパラフィンが検体に塗布される際に、保持部20が水平方向に移動することを回避できる。
【0054】
(構成-第2支持部-第2支持側加熱部)
第2支持側加熱部は、第2支持部本体31を加熱するための第2支持側加熱手段であり、例えば公知の加熱器及び温度センサを用いて構成され、第2支持部本体31内に設けられている。
【0055】
また、この第2支持側加熱部の具体的な構成については任意であるが、例えば、後述する制御ユニット80の操作部81を介して入力された温度調整操作に基づいて、第2支持側加熱部の加熱温度を調整可能に構成されてもよく、あるいは、上記第2支持側加熱部の加熱温度を調整不能に構成されてもよい(なお、後述する供給側加熱部についても略同様とする)。
【0056】
(構成-第2支持部-第2支持側連結部)
第2支持側連結部32は、第2支持部本体31及び第2支持側加熱部を支持しながら、鉛直移動部50と連結するための第2支持側連結手段である。この第2支持側連結部32は、例えば鋼製の中空(又は中実)のブロック状体にて形成されており、
図1、
図2に示すように、第2支持側連結部32の上面に第2支持部本体31が載置されるように、設置面PSと間隔を隔てて設けられている。
【0057】
また、第2支持側連結部32の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0058】
すなわち、
図2に示すように、第2支持側連結部32の平面形状については、矩形状に設定しているが、これに限らず、例えば、円形状又は楕円形状に設定してもよい。
【0059】
また、第2支持側連結部32の左右方向の長さについては、第2支持部本体31の左右方向の長さよりも長く設定しており、第2支持側連結部32の前後方向の長さについては、第2支持部本体31の前後方向の長さよりも長く設定している。また、第2支持側連結部32の上下方向の長さについては、第2支持部本体31の上下方向の長さと略同一に設定しているが、これに限らず、例えば、第2支持部本体31の上下方向の長さよりも長く又は短く設定してもよい。
【0060】
また、第2支持側連結部32の具体的な構成については任意であるが、第2支持側連結部32には接続孔32aが設けられている。
【0061】
(構成-第2支持部-第2支持側連結部-接続孔)
接続孔32aは、鉛直移動部50と第2支持側連結部32とを接続するための貫通孔であり、例えば公知の接続孔32a(一例としてネジ孔等)で構成されており、第2支持側連結部32の各角部又はその近傍部分であって、第2支持部本体31と重複しない部分に複数形成されている(実施の形態では、4つ形成されている)。
【0062】
これにより、鉛直移動部50と第2支持側連結部32とを接続でき、鉛直移動部50によって第2支持部30を設置面PSに対して支持できる。
【0063】
(構成-水平移動部)
図1に戻り、水平移動部40は、保持部20に保持されたパラフィンが検体保持体Hに保持された検体の表面の部分TS(以下、「検体対象部分TS」と称する。後述する
図5を参照。)に塗布されるように、第1支持部10又は第2支持部30のいずれか一方を略水平方向に移動させるためのものである。
【0064】
ここで、「検体対象部分TS」とは、検体の表面のうちパラフィンが塗布される対象となる部分を意味し、実施の形態では、検体の表面のうち、標本の作製のために薄切りされた部分(後述する
図5では、検体の下面)として説明する。ただし、これに限らず、例えば、検体の表面のうち、薄切りされた部分以外の部分(一例として、単にパラフィンが塗布されていない部分や、パラフィンの塗布量が比較的少ない部分)であってもよい。
【0065】
この水平移動部40は、例えば第1支持部10を水平移動可能な公知の移動装置(一例として、第1支持部10を3次元方向に移動可能な移動装置)を用いて構成されており、
図1に示すように、水平移動部本体41及び駆動部(図示省略)を備えている。
【0066】
(構成-水平移動部-水平移動部本体)
水平移動部本体41は、水平移動部40の基本構造体である。この水平移動部本体41は、例えば公知の移動装置用移動機構(一例として、3次元方向に向きを変更可能なリンク部42を複数備える移動機構)を用いて構成されており、
図1に示すように、第2支持部30の近傍において設置面PSに載置されている。
【0067】
この水平移動部本体41の具体的な大きさについては、第1支持部10を所定距離程度水平移動させることができる限りは任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。ここで、「所定距離」については、実施の形態では、被覆装置1で取り扱うことが可能な検体保持体Hに対応する検体対象部分TSに対して所望量のパラフィンを塗布可能な距離が該当する。
【0068】
すなわち、
図1に示すように、水平移動部本体41の長手方向の長さについては、第2支持部30の上下方向の長さよりも長く設定している。また、水平移動部本体41の径については、第2支持部30の左右方向の長さ(又は前後方向の長さ)よりも長く設定している。
【0069】
(構成-水平移動部-駆動部)
駆動部は、水平移動部本体41及び第1支持部10を動作させるための駆動手段である。この駆動部は、例えば公知の移動装置用駆動手段を用いて構成され、水平移動部本体41の内部に少なくとも1つ以上設けられている。
【0070】
(構成-鉛直移動部)
鉛直移動部50は、水平移動部40によって溶融したパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際に、検体保持体Hの厚さに応じて第1支持部10又は第2支持部30を略鉛直方向に移動させるためのものである。この鉛直移動部50は、
図1に示すように、各接続孔32aに対応する位置にそれぞれ設けられており(実施の形態では、4つ設けられており)、弾性体(図示省略)、鉛直側収納部51、及び鉛直側連結部52を備えている。なお、これら4つの「鉛直移動部50」は、特許請求の範囲における「鉛直移動手段」に対応する。
【0071】
(構成-鉛直移動部-弾性体)
弾性体は、鉛直移動部50の基本構造体であって、鉛直方向に弾性復元力を有するものである。この弾性体は、例えば、鉛直方向(上下方向)に伸縮可能なバネ材(一例として、公知の鋼製のスプリング材)を用いて構成されており、第2支持部30よりも下方に設けられている。
【0072】
(構成-鉛直移動部-鉛直側収納部)
鉛直側収納部51は、弾性体を収納するための収納手段である。この鉛直側収納部51は、例えば公知の収納部材(一例として、鋼製の筒状体)を用いて構成されており、第2支持部30よりも下方において弾性体を収納するように設けられており、弾性体又は鉛直側連結部52に対して取り付けられている。
【0073】
(構成-鉛直移動部-鉛直側連結部)
鉛直側連結部52は、第2支持部30と弾性体とを連結するための鉛直側連結手段である。この第2支持側連結部32は、例えば鋼製の棒状体(一例として、一部ネジ切りされた棒状体)にて形成されており、
図1に示すように、弾性体よりも上方に設けられており、第2支持部30の接続孔32aに挿通されていると共に、弾性体に対して固定具又は溶接等によって接続されている。なお、鉛直移動部50の構成の詳細については、後述する。
【0074】
(構成-供給部)
供給部60は、溶融されたパラフィンを第2支持部30の第1凹部31aに供給するための供給手段である。この供給部60は、例えば公知のパラフィン用供給装置を用いて構成されており、
図1に示すように、供給部本体61、供給側加熱部(図示省略)、及び吐出部62を備えている。
【0075】
(構成-供給部-供給部本体)
供給部本体61は、供給部60の基本構造体であると共に、パラフィンを収納するための供給側収納手段である。この供給部本体61は、例えば鋼製の中空状体にて構成されており、
図1に示すように、第2支持部30の近傍において設置面PSと間隔を隔てて設けられている。
【0076】
(構成-供給部-供給側加熱部)
供給側加熱部は、供給部本体61を加熱するための供給側加熱手段であり、例えば公知の加熱器及び温度センサを用いて構成され、供給部本体61内に設けられている。
【0077】
(構成-供給部-吐出部)
吐出部62は、供給部本体61に収納されたパラフィン(具体的には、溶融されたパラフィン)を外部に吐出するための吐出手段であり、例えば公知の吐出部材(一例として、吐出口が開閉自在な吐出部材)を用いて構成されており、
図1に示すように、供給部本体61における第2支持部30側の部分であって、第1凹部31aよりも上方側の部分に取り付けられている。
【0078】
また、供給部60によるパラフィンの供給動作については任意であるが、例えば、所定のタイミング(一例として、定期的なタイミング、又は後述する制御ユニット80の操作部81を介して所定操作が受け付けられたタイミング)が到来すると、供給部本体61から溶融されたパラフィンを吐出部62から吐出させること等が該当する。
【0079】
(構成-第3支持部)
第3支持部70は、第2支持部30及び供給部60を支持するための第3支持手段であり、
図1に示すように、第2支持側第3支持部71及び供給側第3支持部72を備えている。
【0080】
(構成-第3支持部-第2支持側第3支持部)
第2支持側第3支持部71は、第2支持部30を支持するものである。この第2支持側第3支持部71は、例えば鋼製の板状体にて形成されており(具体的には、第2支持部30の平面形状よりも大きな矩形状の板状体にて形成されており)、
図1に示すように、設置面PS上において各鉛直移動部50とそれぞれ当接するように設けられている。
【0081】
(構成-第3支持部-供給側第3支持部)
供給側第3支持部72は、供給部60を支持するものである。この供給側第3支持部72は、例えば、側面形状がL字状である鋼製の板状体にて形成されており、
図1に示すように、設置面PS上において、供給側第3支持部72の上端部と供給部本体61の下端とが当接するように設けられ、供給部本体61に対して固定具又は溶接等によって取り付けられている。
【0082】
なお、第3支持部70の形成方法については任意であるが、例えば、公知の成形方法を用いて鋼板を成形することにより、第2支持側第3支持部71及び供給側第3支持部72を一体形成してもよい。あるいは、第2支持側第3支持部71と供給側第3支持部72とを別体に形成した後に、これらを溶接等によって接続してもよい。
【0083】
(構成-制御ユニット)
図4は、制御ユニット80の電気的構成を示したブロック図である。制御ユニット80は、被覆装置1の各構成要素を制御するユニットであり、水平移動部40又は供給部60の近傍に設けられており、
図4に示すように、操作部81、入力部82、出力部83、電源部84、制御部85、及び記憶部86を備えている。
【0084】
(構成-制御ユニット-操作部)
操作部81は、制御ユニット80に対する操作入力を受け付ける操作手段である。
【0085】
(構成-制御ユニット-入力部)
入力部82は、操作部81又は図示しない外部装置(例えば、検体を管理する管理システム等)からの信号の入力を受け付ける入力手段であり、例えば公知の入力端子等を用いて構成されている。
【0086】
(構成-制御ユニット-出力部)
出力部83は、信号を水平移動部40及び供給部60に出力する出力手段であり、例えば公知の出力端子等を用いて構成されている。
【0087】
(構成-制御ユニット-電源部)
電源部84は、図示しない商用電源又は電池(例えば、バッテリ等)から供給された電力を、図示しない配線を介して制御ユニット80の各部に供給する電源手段である。
【0088】
(構成-制御ユニット-制御部)
制御部85は、制御ユニット80の各部、水平移動部40、及び供給部60を制御する制御手段である。この制御部85は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。なお、上述した「制御部85」及び「水平移動部40」は、特許請求の範囲における「水平移動手段」に対応する。また、この制御部85によって実行される処理の詳細については後述する。
【0089】
(構成-制御ユニット-記憶部)
記憶部86は、制御ユニット80の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、書き換え可能な公知の記録媒体を用いて構成され、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性記録媒体を用いることができる。
【0090】
このような被覆装置1により、従来技術(送り出しロール、転写ロール、及び機構を備える装置を用いて検体を被覆する技術)に比べて、簡易な構造で構成できると共に、様々な厚さの検体保持体Hに対する被覆作業を安全且つ簡易に行うことができ、被覆作業の作業性を高めながら、被覆装置1の製造性を高めることができる。
【0091】
(構成-保持部の構成の詳細)
次に、保持部20の構成の詳細について説明する。
図5は、第1支持部10の水平移動の概要を示す図であり、(a)最小厚さの検体保持体Hが支持されている場合の第1支持部10の水平移動の概要を示す図、(b)最大厚さの検体保持体Hが支持されている場合の第1支持部10の水平移動の概要を示す図である。ただし、保持部20は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。
【0092】
実施の形態では、保持部20の保持面21は、第1支持部10の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面に形成されている。具体的には、
図5に示すように、左側から右側に向かうにつれて上方に傾斜する平坦な傾斜面に形成されている。ただし、これに限らず、例えば、非平坦な傾斜面(一例として、湾曲状の傾斜面)に形成されてもよい。
【0093】
ここで、保持面21の傾斜角度の設定方法については任意であるが、実施の形態では、
図5に示す各種のパラメータを参照しながら、下記式(1)及び下記式(2)を満たすように設定している。
D×cosθ>d×cosθ+Δy/tanθ・・・(1)
d×sinθ+Δy<D×sinθ・・・(2)
(ここで、θ:保持部20の保持面21の傾斜角度、
D:保持部20の保持面21の長さ、
d:水平移動部40によってパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際のパラフィンと検体対象部分TSとの必要接触距離、
Δy:検体保持体Hの最小厚さと検体保持体Hの最大厚さとの差)
【0094】
なお、「検体保持体Hの最小厚さ」とは、被覆装置1で取り扱うことが可能な検体保持体Hの厚さのうち最小の厚さを意味する。また、「検体保持体Hの最大厚さ」とは、被覆装置1で取り扱うことが可能な検体保持体Hの厚さのうち最大の厚さを意味する。
【0095】
また、保持面21の平滑度の設定方法については任意であるが、実施の形態では、保持部20の保持面21に所望量の厚さのパラフィンを保持でき、且つ保持面21全体に途切れなくパラフィンを保持できるように設定しており、例えば、実験結果又は解析結果等に基づいて設定してもよい。ここで、「所望量の厚さ」については、例えば、水平移動部40の動作誤差を許容するために、0mmから10mm程度に設定してもよく、より好ましくは、1mmから2mm程度に設定することが望ましい。
【0096】
このような保持部20の構成により、保持面21が水平面である場合に比べて、検体保持体Hの厚さに関わらず、パラフィンを検体対象部分TSに確実に塗布させることができ、様々な厚さの検体保持体Hに対する被覆作業を正確に行いやすくなる。また、検体保持体Hを手動で検体を被覆する場合と略同様に、弧を描くように検体保持体Hを移動させることができる。よって、保持面21が水平面である場合に比べて、検体対象部分TS全体にパラフィンを均一に塗布しやすくなるため、当該塗布されるパラフィンの厚さを所望の厚さに設定しやすくなる。さらに、式(1)、式(2)を満たすように保持面21の傾斜角度を設定するので、最適な保持面21の傾斜角度を設定でき、様々な厚さの検体保持体Hに対する被覆作業を正確に行いやすくなる。
【0097】
(構成-鉛直移動部の構成の詳細)
次に、鉛直移動部50の構成の詳細について説明する。ただし、鉛直移動部50は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。
【0098】
実施の形態では、鉛直移動部50の弾性体(バネ材)のバネ定数を、下記式(3)を満たすように設定している。
k>W/n×(A-(d×sinθ+Δy))・・・(3)
(ここで、k:弾性体のバネ定数、
W:保持部20、第2支持部30、及び保持部20に保持されているパラフィンの総重量、
n:弾性体の本数、
A:弾性体の最大縮み量、
θ:保持部20の保持面21の傾斜角度、
d:水平移動部40によってパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際のパラフィンと検体対象部分TSとの必要接触距離、
Δy:検体保持体Hの最小厚さと検体保持体Hの最大厚さとの差)
【0099】
このような鉛直移動部50の構成により、水平移動部40によってパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際に、第2支持部30が略鉛直方向のいずれか一方(例えば、下方)に移動しても当該第2支持部30を元の位置に自動的に戻すことができ、当該戻す作業を省略できる。また、上記第2支持部30を元の位置に自動的に戻す際に、鉛直移動部50による検体保持体Hに対する押返しの負荷を低減でき、検体に破損が生じることを回避しやすくなる。
【0100】
(被覆処理)
次に、このように構成された被覆装置1の制御部85によって実行される被覆処理について説明する。
図6は、実施の形態に係る被覆処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。
【0101】
被覆処理は、検体保持体Hに保持されている検体の表面をパラフィンで被覆するための処理である。この被覆処理を実行するタイミングは任意であるが、実施の形態においては、被覆装置1の電源が投入された後に起動されるものとして説明する。また、この被覆装置1の前提については、第1支持部10に検体保持体Hが支持されておらず、第2支持部30の第1凹部31aに溶融されたパラフィンが貯められており、且つ保持部20にパラフィンが保持されているものとして説明する。
【0102】
被覆処理が起動されると、
図6に示すように、SA1において制御部85は、検体保持体Hに保持されている検体の表面をパラフィンで被覆するタイミング(以下、「被覆タイミング」と称する)が到来したか否かを判定する。
【0103】
この被覆タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、外部装置から検体の表面をパラフィンで被覆する旨を示す被覆信号の入力が受け付けられたか否か、又は操作部81を介して所定操作が受け付けられたか否かに基づいて判定し、上記被覆信号の入力が受け付けられた場合又は上記所定操作が受け付けられた場合には被覆タイミングが到来したと判定し、上記被覆信号の入力が受け付けられていない場合及び上記所定操作が受け付けられていない場合には被覆タイミングが到来していないと判定する。
【0104】
そして、制御部85は、被覆タイミングが到来するまで待機し(SA1、No)、被覆タイミングが到来したと判定された場合(SA1、Yes)にはSA2に移行する。
【0105】
SA2において制御部85は、検体保持体Hを第1支持部10に支持させる。
【0106】
この検体保持体Hを第1支持部10に支持させる方法については任意であるが、実施の形態では以下の通りに実行する。すなわち、まず、水平移動部40によって、第1支持部10を検体保持体Hが保管されている保管領域(図示省略)まで水平方向又は鉛直方向に移動させる。次に、第1支持部10によって、検体保持体Hを挟み込むことにより支持させる。その後、水平移動部40によって、第1支持部10がSA3の処理を開始する処理開始位置(具体的には、保持部20の左端部から所定高さの位置)まで水平方向又は鉛直方向に移動させる。なお、「所定高さ」については、実施の形態では、検体保持体Hの最大厚さと略同一の長さに設定しているが、これに限らず、例えば、検体保持体Hの最大厚さよりも若干長く設定してもよい。
【0107】
SA3において制御部85は、水平移動部40によって第1支持部10を略水平方向に移動させる。
【0108】
この第1支持部10を略水平方向に移動させる方法については任意であるが、実施の形態では、検体対象部分TSが保持部20の保持面21の端部のうち第1支持部10の水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、第1支持部10を略水平方向に移動させる。
【0109】
具体的には、
図5に示すように、検体対象部分TSが保持面21における少なくとも必要接触距離dに対応する部分であり、且つ保持部20の右端部を含む部分と直接又は間接に接触するように、処理開始位置から保持面21の右端部に至るまで略水平方向に移動させる。この場合において、第1支持部10の略水平移動時の検体対象部分TSと保持面21とが接触している際には、鉛直移動部50によって検体保持体Hの厚さに応じて第1支持部10を略鉛直方向(下方)に移動させることができることから、様々な厚さの検体保持体Hに対して被覆作業を行うことができる。また、第2支持部30が下方に移動しても当該第2支持部30を元の位置に自動的に戻すことができ、当該戻す作業を省略できる。さらに、上記第2支持部30を元の位置に自動的に戻す際に、鉛直移動部50による検体保持体Hに対する押返しの負荷を低減でき、検体に破損が生じることを回避しやすくなる。
【0110】
一例として、被覆装置1で取り扱うことが可能な検体保持体Hのうち、最小厚さの検体保持体Hが第1支持部10に支持されている場合には、
図5(a)に示すように、検体対象部分TSが保持面21の上記必要接触距離に対応する部分C1(
図5(a)では、太線で記載の部分)と接触するように、第1支持部10を略水平方向に移動させることになる。
【0111】
また、被覆装置1で取り扱うことが可能な検体保持体Hのうち、最大厚さの検体保持体Hが第1支持部10に支持されている場合には、
図5(b)に示すように、検体対象部分TSが保持面21の左端部の近傍部分から右端部に至る部分C2(
図5(b)では、太線で記載の部分)と接触するように、第1支持部10を略水平方向に移動させることになる。
【0112】
このような処理により、検体対象部分TSを保持面21の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と接触させない場合に比べて、検体保持体Hに付着した余分なパラフィンを取り除くことができ、被覆作業後の検体保持体Hの意匠性を高めることができる。また、検体保持体Hの厚さに関わらず、水平移動部40に対して同一の制御を行うことができ、水平移動部40の制御の簡素化を図ることができる。
【0113】
図6に戻り、SA4において制御部85は、検体保持体Hを所定位置まで搬送させる。ここで、「所定位置」とは、例えば、SA3の処理後の検体保持体Hの搬送先となる搬送領域(図示省略)等が該当する。
【0114】
この検体保持体Hの搬送方法について任意であるが、実施の形態では、水平移動部40によって、第1支持部10を所定位置まで水平方向又は鉛直方向に移動させた後に、第1支持部10による検体保持体Hの挟み込みを解除して、検体保持体Hを所定位置に置くことにより、搬送する。
【0115】
SA5において制御部85は、被覆処理を終了するタイミング(以下、「終了タイミング」と称する)が到来したか否かを判定する。
【0116】
この終了タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、操作部81を介して所定操作が受け付けられたか否かに基づいて判定し、上記所定操作が受け付けられた場合には終了タイミングが到来したと判定し、上記所定操作が受け付けられていない場合には終了タイミングが到来していないと判定する。
【0117】
そして、制御部85は、終了タイミングが到来したと判定された場合(SA5、Yes)には被覆処理を終了する。一方、終了タイミングが到来していないと判定された場合(SA5、No)にはSA1に移行し、SA5において終了タイミングが到来したと判定されるまで、SA1からSA5の処理が繰り返される。なお、例えば、終了タイミングが到来したと判定された場合には、その旨を示す信号を外部装置に出力してもよい。
【0118】
以上のような被覆処理により、様々な厚さの検体保持体Hに対する被覆作業を安全且つ簡易に行うことができ、被覆作業の作業性を高めることが可能となる。
【0119】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、保持部20に保持されたパラフィンが検体の表面の検体対象部分TSに塗布されるように、第1支持部10を略水平方向に移動させるための水平移動手段と、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際に、検体保持体Hの厚さに応じて第2支持部30を略鉛直方向に移動させるための鉛直移動部50と、を備えるので、従来技術(送り出しロール、転写ロール、及び機構を備える装置を用いて検体を被覆する技術)に比べて、簡易な構造で構成できると共に、様々な厚さの検体保持体Hに対する被覆作業を安全且つ簡易に行うことができ、被覆作業の作業性を高めながら、被覆装置1の製造性を高めることができる。
【0120】
また、保持部20におけるパラフィンが保持される保持面21を、第1支持部10の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面に形成したので、保持面21が水平面である場合に比べて、検体保持体Hの厚さに関わらず、パラフィンを検体対象部分TSに確実に塗布させることができ、様々な厚さの検体保持体Hに対する被覆作業を正確に行いやすくなる。また、検体保持体Hを手動で検体を被覆する場合と略同様に、弧を描くように検体保持体Hを移動させることができる。よって、保持面21が水平面である場合に比べて、検体対象部分TS全体にパラフィンを均一に塗布しやすくなるため、当該塗布されるパラフィンの厚さを所望の厚さに設定しやすくなる。
【0121】
また、保持部20の保持面21の傾斜角度を、式(1)及び式(2)を満たすように設定したので、最適な保持面21の傾斜角度を設定でき、様々な厚さの検体保持体Hに対する被覆作業を正確に行いやすくなる。
【0122】
また、水平移動手段は、検体対象部分TSが保持部20の保持面21の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、第1支持部10を略水平方向に移動させるので、検体対象部分TSを保持面21の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と接触させない場合に比べて、検体保持体Hに付着した余分なパラフィンを取り除くことができ、被覆作業後の検体保持体Hの意匠性を高めることができる。
【0123】
また、鉛直移動部50が、鉛直方向に弾性復元力を有する弾性体を少なくとも1つ以上備えるので、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際に第2支持部30が略鉛直方向のいずれか一方に移動しても当該第2支持部30を元の位置に自動的に戻すことができ、当該戻す作業を省略できる。
【0124】
また、弾性体のバネ定数を、式(3)を満たすように設定したので、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際に、鉛直移動部50による検体保持体Hに対する押返しの負荷を低減でき、検体に破損が生じることを回避しやすくなる。
【0125】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0126】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0127】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。例えば、被覆装置1の制御ユニット80を、相互に通信可能に構成された複数の装置に分散して構成し、これら複数の装置の一部に制御部85を設けると共に、これら複数の装置の他の一部に記憶部86を設けてもよい。
【0128】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0129】
(検体保持体について)
上記実施の形態では、検体保持体Hが中空箱状体にて形成されていると説明したが、これに限らず、例えば、中空箱状体以外の形状(一例として、中空円柱状体、中空三角錐状体等)、又は中実直方体にて形成されてもよい。
【0130】
(被覆装置について)
上記実施の形態では、被覆装置1が、第3支持部70を備えていると説明したが、これに限られない。例えば、鉛直部及び供給部60が直接設置面PSに載置される場合には、第3支持部70を省略してもよい。
【0131】
また、上記実施の形態では、被覆装置1が、供給部60を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、ユーザが手動でパラフィンを第1凹部31a又は保持部20に供給する場合には、供給部60を省略してもよい。
【0132】
(保持部について)
上記実施の形態では、保持部20の保持面21全体が、第1支持部10の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面であると説明したが、これに限らない。例えば、保持部20の保持面21の一部のみが、第1支持部10の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面であってもよい。あるいは、保持部20の保持面21全体が水平面であってもよい。
【0133】
また、上記実施の形態では、保持部20の保持面21の傾斜角度を、式(1)及び式(2)を満たすように設定していると説明したが、これに限らない。例えば、式(1)又は式(2)のいずれか一方のみ満たすように設定してもよく、あるいは、式(1)及び式(2)を満たさないように設定してもよい。
【0134】
(第2支持部について)
上記実施の形態では、第2支持部30が、第1凹部31a又は第2凹部31bを備えていると説明したが、これに限らず、例えば、第1凹部31a又は第2凹部31bを省略してもよい。
【0135】
また、上記実施の形態では、第2支持部30が、第2支持側連結部32を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、第2支持側連結部32を省略してもよい。この場合には、鉛直移動部50は、第2支持部本体31と第2支持側第3支持部71との間に設けられてもよい。
【0136】
(水平移動部について)
上記実施の形態では、水平移動部40が、第1支持部10を略水平方向に移動させると説明したが、これに限らず、例えば、第2支持部30を略水平方向に移動させてもよい。この場合には、第1支持部10が所定の固定対象に固定され、水平移動部40が第2支持部30の近傍に設けられ、水平移動部40を構成する駆動シリンダによって第2支持部30及び鉛直移動部50を水平移動させてもよい。
【0137】
(鉛直移動部について)
上記実施の形態では、第2支持部30を略鉛直方向に移動させると説明したが、これに限らない。例えば、鉛直移動部50を第1支持部10と水平移動部40の先端との間に設けて、第1支持部10を略鉛直方向に移動可能にしてもよい。この場合には、第2支持部30側の鉛直移動部50を省略してもよく、あるいは、第2支持部30側の鉛直移動部50を省略しないことで、第1支持部10及び第2支持部30の各々を略鉛直方向にそれぞれ移動可能としてもよい。
【0138】
また、上記実施の形態では、鉛直移動部50の設置数が4つであると説明したが、これに限らない。鉛直移動部50の弾性体が、少なくとも1つ以上が設けられていれば足りることから、例えば、4つ未満であってもよく、あるいは、5つ以上であってもよい。
【0139】
また、上記実施の形態では、鉛直移動部50の弾性体が、スプリング材であると説明したが、これに限らない。例えば、板バネ材又はゴム材であってもよい。あるいは、弾性体に代えて、鉛直方向に弾性復元力を有しない非弾性体であってもよい。この場合には、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分TSに塗布される際に第2支持部30を略鉛直方向のいずれか一方に移動した後に当該第2支持部30を元の位置に戻す作業を手動で行ってもよい。
【0140】
また、上記実施の形態では、鉛直移動部50の弾性体のバネ定数を、式(3)を満たすように設定していると説明したが、これに限らず、式(3)を満たさないように設定してもよい。
【0141】
また、上記実施の形態では、鉛直移動部50が、鉛直側収納部51及び鉛直側連結部52を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、鉛直側収納部51又は鉛直側連結部52を省略してもよい。なお、鉛直側連結部52を省略する場合には、弾性体を第2支持部30に直接連結してもよい。
【0142】
(被覆処理について)
上記実施の形態では、SA2及びSA4が実行されると説明したが、これに限らない、例えば、第1支持部10への検体保持体Hの取り付け又は取り外しを手動で行う場合には、SA2又はSA4を省略してもよい。
【0143】
また、上記実施の形態では、SA3において、検体対象部分TSが保持面21の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、第1支持手段を略水平方向に移動させると説明したが、これに限らない。例えば、検体対象部分TSが保持面21の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と接触しないように、第1支持手段を略水平方向に移動させてもよい。特に、検体保持体Hの厚さに応じて第1支持部10を水平移動させる距離が異なることで被覆されるパラフィンの厚さが異なるため、被覆されるパラフィンの厚さの均一化を図る観点から、検体保持体Hの厚さに関わらず、第1支持部10を水平移動させる距離を同一にして、保持面21の端部のうち第1支持部10の水平移動方向の他方側の端部と接触しないように、移動させてもよい。
【0144】
(付記)
付記1の被覆装置は、検体保持体に保持されている検体の表面をパラフィンで被覆するための被覆装置であって、前記検体保持体を支持する第1支持手段と、溶融したパラフィンを保持することが可能な保持手段と、前記保持手段を支持する第2支持手段と、前記保持手段に保持された前記パラフィンが前記検体の表面の検体対象部分に塗布されるように、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させるための水平移動手段と、前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際に、前記検体保持体の厚さに応じて前記第1支持手段又は前記第2支持手段を略鉛直方向に移動させるための鉛直移動手段と、を備える。
【0145】
付記2の被覆装置は、付記1に記載の被覆装置において、前記保持手段における前記パラフィンが保持される保持面を、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面に形成した。
【0146】
付記3の被覆装置は、付記2に記載の被覆装置において、前記保持手段の保持面の傾斜角度を、下記式(1)及び下記式(2)を満たすように設定した。
D×cosθ>d×cosθ+Δy/tanθ・・・(1)
d×sinθ+Δy<D×sinθ・・・(2)
(ここで、θ:前記保持手段の保持面の傾斜角度、
D:前記保持手段の保持面の長さ、
d:前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際の前記パラフィンと前記検体対象部分との必要接触距離、
Δy:前記検体保持体の最小厚さと前記検体保持体の最大厚さとの差)
【0147】
付記4の被覆装置は、付記2又は3に記載の被覆装置において、前記水平移動手段は、前記検体対象部分が前記保持手段の保持面の端部のうち前記水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、前記第1支持手段又は前記第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させる。
【0148】
付記5の被覆装置は、付記1から4のいずれか一項に記載の被覆装置において、前記鉛直移動手段は、鉛直方向に弾性復元力を有する弾性体を少なくとも1つ以上備える。
【0149】
付記6に記載の被覆装置は、付記5に記載の被覆装置において、前記弾性体は、鉛直方向に伸縮可能なバネ材であり、前記弾性体のバネ定数を、下記式(3)を満たすように設定した。
k>W/n×(A-(d×sinθ+Δy))・・・(3)
(ここで、k:前記弾性体のバネ定数、
W:前記保持手段、前記第2支持手段、及び前記保持手段に保持されている前記パラフィンの総重量、
n:前記弾性体の本数、
A:前記弾性体の最大縮み量、
θ:前記保持手段の保持面の傾斜角度、
d:前記水平移動手段によって前記パラフィンが前記検体対象部分に塗布される際の前記パラフィンと前記検体対象部分との必要接触距離、
Δy:前記検体保持体の最小厚さと前記検体保持体の最大厚さとの差)
【0150】
(付記の効果)
付記1に記載の被覆装置によれば、保持手段に保持されたパラフィンが検体の表面の検体対象部分に塗布されるように、第1支持手段又は第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させるための水平移動手段と、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分に塗布される際に、検体保持体の厚さに応じて第1支持手段又は第2支持手段を略鉛直方向に移動させるための鉛直移動手段と、を備えるので、従来技術(送り出しロール、転写ロール、及び機構を備える装置を用いて検体を被覆する技術)に比べて、簡易な構造で構成できると共に、様々な厚さの検体保持体に対する被覆作業を安全且つ簡易に行うことができ、被覆作業の作業性を高めながら、被覆装置の製造性を高めることができる。
【0151】
付記2に記載の被覆装置によれば、保持手段におけるパラフィンが保持される保持面を、第1支持手段又は第2支持手段のいずれか一方の水平移動方向の一方側から他方側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面に形成したので、保持面が水平面である場合に比べて、検体保持体の厚さに関わらず、パラフィンを検体対象部分に確実に塗布させることができ、様々な厚さの検体保持体に対する被覆作業を正確に行いやすくなる。また、検体保持体を手動で検体を被覆する場合と略同様に、弧を描くように検体保持体を移動させることができる。よって、保持面が水平面である場合に比べて、検体対象部分全体にパラフィンを均一に塗布しやすくなるため、当該塗布されるパラフィンの厚さを所望の厚さに設定しやすくなる。
【0152】
付記3に記載の被覆装置によれば、保持手段の保持面の傾斜角度を、式(1)及び式(2)を満たすように設定したので、最適な保持面の傾斜角度を設定でき、様々な厚さの検体保持体に対する被覆作業を正確に行いやすくなる。
【0153】
付記4に記載の被覆装置によれば、水平移動手段は、検体対象部分が保持手段の保持面の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と直接又は間接に接触するように、第1支持手段又は第2支持手段のいずれか一方を略水平方向に移動させるので、検体対象部分を保持面の端部のうち水平移動方向の他方側の端部と接触させない場合に比べて、検体保持体に付着した余分なパラフィンを取り除くことができ、被覆作業後の検体保持体の意匠性を高めることができる。
【0154】
付記5に記載の被覆装置によれば、鉛直移動手段が、鉛直方向に弾性復元力を有する弾性体を少なくとも1つ以上備えるので、水平移動手段によってパラフィンが検体対象部分に塗布される際に第1支持手段又は第2支持手段が略鉛直方向のいずれか一方に移動しても当該第1支持手段又は当該第2支持手段を元の位置に自動的に戻すことができ、当該戻す作業を省略できる。
【0155】
付記6に記載の被覆装置によれば、弾性体のバネ定数を、式(3)を満たすように設定したので、水平移動部によってパラフィンが検体対象部分に塗布される際に、鉛直移動手段による検体保持体に対する押返しの負荷を低減でき、検体に破損が生じることを回避しやすくなる。
【符号の説明】
【0156】
1 被覆装置
10 第1支持部
20 保持部
21 保持面
30 第2支持部
31 第2支持部本体
31a 第1凹部
31b 第2凹部
32 第2支持側連結部
32a 接続孔
40 水平移動部
41 水平移動部本体
42 リンク部
50 鉛直移動部
51 鉛直側収納部
52 鉛直側連結部
60 供給部
61 供給部本体
62 吐出部
70 第3支持部
71 第2支持側第3支持部
72 供給側第3支持部
80 制御ユニット
81 操作部
82 入力部
83 出力部
84 電源部
85 制御部
86 記憶部
H 検体保持体
TS 検体対象部分