(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】巻線供給装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20240402BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20240402BHJP
B21C 47/18 20060101ALI20240402BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240402BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H02K15/04 Z
H02K3/04 Z
B21C47/18 A
B21C51/00 L
B21C51/00 J
B21B38/04 A
(21)【出願番号】P 2020144724
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴一
(72)【発明者】
【氏名】小林 馨
(72)【発明者】
【氏名】福島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宇正
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-197294(JP,A)
【文献】特開2000-082628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H02K 3/04
B21C 47/18
B21C 51/00
B21B 38/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻装対象に巻装される巻線を供給する巻線供給装置であって、
前記巻線の前記巻装対象への供給方向に対して断面形状が変化する前記巻線を連続的に供給する巻線供給部と、
前記巻線供給部により供給される前記巻線の前記断面形状における変化を検出する変化検出部と、を備え
、
前記変化検出部は、前記巻線を幅方向で挟み込むことにより前記巻線の幅の変化に連動する検出機構を備え、
前記変化検出部は、前記巻線の幅の変化を検出し、検出された前記幅の変化に基づいて前記巻線の前記断面形状における変化を検出する、巻線供給装置。
【請求項2】
前記巻線供給部は、前記断面形状が平角状の前記巻線を供給する第1状態と、前記断面形状が円形状の前記巻線を供給する第2状態とを含む複数の状態間で連続的に変化し、
前記変化検出部は、前記平角状の前記断面形状と前記円形状の断面形状との間の変化を検出する、請求項1に記載の巻線供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の巻線供給装置において、
前記検出機構は、前記巻線を幅方向で挟み込む一対のローラと、
前記一対のローラ間の間隔を増幅して出力するレバーと、
を備え、
前記変化検出部は、前記レバーの位置を検出する位置検出器を備え、前記位置検出器により検出される前記レバーの位置に基づいて、前記巻線の幅の変化を検出する、巻線供給装置。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の巻線供給装置において、
前記巻線を周方向に旋回させる旋回部を備え、
前記旋回部は、前記巻線を前記巻装対象に巻装する巻線機の上流側であって、前記変化検出部の下流側に位置する、巻線供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに巻装される巻線を供給する巻線供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブラシレスモータの固定子鉄心におけるコイルの巻線として平角線を用いることにより、スロット内における巻線の占積率を向上させた巻線構造が開示されている。また、スロット内では巻線を平角線としつつ、コイルの始端および終端において巻線を丸線とすることで、バスバーとの接続を容易なものとする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平角線と丸線とを適宜、組み合わせた巻線は、巻線の断面形状を連続的に変化させることができる成形機により得ることができる。この場合、例えば、丸線の位置がずれると、コイルの始端および終端に平角線が位置づけられてしまい、不都合を生ずるなどの問題がある。したがって、巻線の形状を適切に検出することが必要となる。
【0005】
本発明は、巻線の断面形状を適切に検出することができる巻線供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、
巻装対象に巻装される巻線を供給する巻線供給装置であって、
前記巻線の前記巻装対象への供給方向に対して断面形状が変化する前記巻線を連続的に供給する巻線供給部と、
前記巻線供給部により供給される前記巻線の前記断面形状における変化を検出する変化検出部と、を備える、巻線供給装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、巻線の断面形状を適切に検出することができる巻線供給装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の巻線供給装置を用いたコイルの製造工程を示す図である。
【
図3A】バスバーに装着される丸線の状態を示す図である。
【
図3B】バスバーに装着される平角線の状態を示す図である。
【
図3C】バスバーに装着される平角線の状態を示す図である。
【
図3D】ステータコアに平角線を巻き回した状態を示す断面図である。
【
図4】断面形状検出装置の検出機構の構成を示す底面図(
図5におけるIV-IV線方向から見た図)である。
【
図5】
図4におけるV-V線方向から見た側面図である。
【
図5A】丸素線がローラ間に挟み込まれた状態を示す側面図である。
【
図6A】ノズル右周り方向(時計回り方向)に旋回させた状態を示す図である。
【
図6B】ノズル左周り方向(反時計回り方向)に旋回させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について説明する。
【0010】
図1は、本実施例の巻線供給装置を用いたコイルの製造工程を示す図、
図2は、成形機の構成を示す斜視図、
図3は、巻線の成形順序を示す図、
図3Aは、バスバーに装着される丸線の状態を示す図、
図3Bは、バスバーに装着される平角線の状態を示す図、
図3Cは、バスバーに装着される平角線の状態を示す図、
図3Dは、ステータコアに平角線を巻き回した状態を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、コイルの製造工程は、リール10から矢印100で示す方向に送り出される丸素線11を平角線12に加工成形する成形機4(巻線供給部の一例)と、成形機4から送り出される丸素線11又は平角線12の断面形状を検出する断面形状検出装置5(変化検出部の一例)と、断面形状検出装置5の下流に位置し、平角線12の周方向における向きを制御する旋回部6と、旋回部6から供給される平角線12をステータコア(巻装対象の一例)に巻き回す巻線機7と、を用いて構成される。なお、旋回部6と巻線機7とを、1つの装置(巻線装置)として構成してもよい。また、本実施例では、巻装対象としてステータコアを例示しているが、巻装対象は任意であり、アーマチュアコアなどにも適用可能である。また、本発明は、非磁性体に対してコイルを巻装する場合にも適用され、コイルの機能、用途も任意である。
【0012】
成形機4は、供給方向に対して断面形状が変化する巻線を、ステータコアに装着されるコイルについて巻装が開始されてから完了するまで、連続的に供給する。また、成形機4は、断面形状が平角状の平角線12を供給する第1状態と、断面形状が円形状の丸素線11を供給する第2状態との間で連続的に変化する。
【0013】
図2に示すように、成形機4は、リール10から矢印100で示す方向に送り出される丸素線11に、
図2において横方向の圧縮力を与えるローラ対41と、ローラ対41を経由した巻線に、
図2において縦方向の圧縮力を与えるローラ対42とを備える。
図3に示すように、丸素線11は、ローラ対41により横方向に平角線12が圧縮され、次に、ローラ対42により縦方向に平角線12が圧縮される。なお、巻線に対し、横方向および縦方向へ圧縮する順序は問わない。また、ローラ対を追加し、巻線に対し、同一方向(横方向または縦方向)へ複数回、圧縮を加えてもよい。さらに、巻線に対し、一方向への圧縮のみを1回または複数回、加えてもよい。
【0014】
ローラ対41間の間隔およびローラ対42間の間幅は、駆動機構(不図示)によって制御される。この駆動機構の動作は、演算制御部52により制御される。ローラ対41間の間隔およびローラ対42間の間幅により、平角線12の形状が規定される。
【0015】
また、ローラ対41間の間隔およびローラ対42間の間隔が丸素線11の径と同じ、又は丸素線11の径よりも大きい場合には、丸素線11は成形機4における変形を受けることなく、断面形状が維持される。この場合、丸素線11は、成形機4から断面形状検出装置5および旋回部6を介して巻線機7に供給される。
【0016】
断面形状検出装置5は、成形機4により供給される巻線の断面形状における変化を検出する。
【0017】
断面形状検出装置5は、巻線を挟み込むことにより巻線の幅の変化を検出する検出機構51と、検出機構51に含まれる、後述するレバー95の位置を検出する位置検出器53と、を備える。なお、検出機構51により検出される巻線の幅は、ローラ対41により規定される横方向における平角線12の幅と、ローラ対42により規定される縦方向における平角線12の幅の両者を含む。
【0018】
断面形状検出装置5は、検出機構51を介して検出される巻線の幅の変化に基づいて巻線(丸素線11又は平角線12)の断面形状の変化を検出する演算制御部52を備える。検出機構51および位置検出器53の構成例については後述する。
【0019】
図1に示すように、演算制御部52は、成形機4、位置検出器53、旋回部6および巻線機7に接続され、成形機4、検出機構51、旋回部6および巻線機7を、互いに連動して動作するように制御する。例えば、演算制御部52は、成形機4、旋回部6および巻線機7の動作タイミングを位置検出器53からの情報に基づいて、適宜、制御することができる。
【0020】
次に、ステータコアに巻装されるコイルの実装状態について説明する。
【0021】
図3Aに示すように、コイルの始端および終端には、丸素線11が位置づけられ、丸素線11である始端および終端がバスバー81に挿入される。この場合、丸素線11には周方向に対して形状の方向性がないため、始端および終端を容易にバスバー81に挿入できるという利点がある。一方、コイルの始端および終端を平角線12により構成した場合でも、
図3Bに示すように、始端および終端をバスバー82に挿入することは可能である。しかし、
図3Cに示すように、巻線が捩れている場合などには、平角線12の周方向の向きが適正な向きからずれてしまい、平角線12をバスバー82に挿入する際に、向きを修正する必要が生ずる。
【0022】
また、コイルの巻き始めよりも始端側およびコイルの巻き終わりよりも終端側を丸素線11とすることにより、その部分において周方向に対する全方向について巻線が均等に変形しやすくなるため、巻線の引き出し(取り回し)が容易となる。
【0023】
また、始端および終端をバスバー81、82に挿入する際に、巻線の被膜を剥離する必要があるが、始端および終端を丸素線11により構成することにより、従来の通常の装置を用いて被膜を除去することが可能となる利点もある。また、平角線12の被膜を剥離する場合と異なり、周方向における巻線の周方向の向きを調整する必要がなく、容易に被膜を剥離できる。このため段取り(工程)を削減することができる。
【0024】
図3Dに示すように、巻線機7において、平角線12はコア本体31に巻き回されて、積層鉄心片30(巻装対象の一例)が構成される。積層鉄心片30はブラシレスモータの固定子鉄心を構成する部材である。具体的には、固定子鉄心は、周方向に複数に分割された積層鉄心片30を環状に連結して構成される。コア本体31の周方向における両端部には、隣接する他の積層鉄心片30に対し、圧入により連結される連結部32A、32Bが形成されている。一方の連結部32Aは凸形状を有し、他方の連結部32Bは連結部32Aを受け入れ可能な凹形状を有している。コア本体31の径方向内側の周方向の略中央部からは突極であるティース部33が固定子鉄心の径方向内側(回転中心側)に向かって一体に延設されている。
【0025】
また、ティース部33の径方向内側の端部には、周方向に延びる鍔部34が形成されている。これらティース部33とコア本体31と鍔部34とに囲まれて、平角線12を巻装するためのスロット60がティース部33の周りに形成されている。ここで、コア本体31の周方向端部と鍔部34の周方向端部とを結んだ仮想線(
図3Dにおける二点鎖線60A)より内側がスロット60におけるコイル収容部61となる。
【0026】
ティース部33の径方向内側の端部の外面には、2条の凹部35が形成されており、2条の凹部35によって一つの積層鉄心片30に対して三つのティースが形成されている。一方、鍔部34においてスロット60に面する部分は、スロット60の開口部に向かって徐々に広がるように斜壁部(スロット内側壁部)34Aが形成されている。これにより、スロット60は、スロット底部33Aからスロット60開口側に向けて徐々にその開口幅が広がるように構成されている。
【0027】
また、平角線12とコア本体31との間には、絶縁部材36が装着されている。絶縁部材36によりコイルを構成する平角線12と積層鉄心片30(コア本体31)との間が絶縁された状態で、平角線12がティース部33に巻装されている。
【0028】
図3Dに示すように、ティース部33に巻装され、コイルを構成する平角線12は、断面形状の異なる複数の平角線12a、12b、12c、12dからなる。このように、断面形状を変化させた平角線12を、連続的にティース部33に巻装することにより、スロット60内における巻線の占積率を向上させることができる。上記のように、平角線12(平角線12a、12b、12c、12d)の幅および厚みは、成形機4のローラ対41間の間隔およびローラ対42間の間隔によって制御される。
【0029】
なお、
図3Dにおいて、ティース部33に巻装された平角線12群を縦断して描画された上向き又は下向きの矢印は、平角線12の巻装順序を示している。平角線12は、例えば、積層鉄心片30(コア本体31)を軸心37を中心として回転させながら、1層目(軸心37に最も近い層)から順に、巻装される。
図3Dの例では、平角線12を5層に積層してコイルを構成しており、1層目、3層目および5層目では、
図3Dにおける上から下に向かって、2層目および4層目では、
図3Dにおける下から上に向かって、それぞれ平角線12がティース部33に巻き回される。
【0030】
図4は、断面形状検出装置の検出機構の構成を示す底面図(
図5におけるIV-IV線方向から見た図)、
図5は、
図4におけるV-V線方向から見た側面図である。
【0031】
図4および
図5に示すように、検出機構51は、巻線(丸素線11又は平角線12)を幅方向で挟み込む一対のローラ91、92と、ローラ92が取り付けられるスライド部材93と、一対のローラ91、92間の間隔、および当該間隔の変化を増幅して出力するレバー95と、を備える。なお、
図5では、ローラ91、92間に平角線12が挟み込まれた状態を示している。
【0032】
ローラ91は、
図5の上下方向に延設された固定軸91Aに対して回転可能に取り付けられ、固定軸91Aの軸心91x(
図5)を中心として回転する。ローラ92は
図5の上下方向に延設された軸92Aを備え、軸92Aを介してスライド部材93に対して回転可能に取り付けられている。ローラ92は、軸92Aの軸心92xを中心として回動可能とされる。また、ローラ92の外周には、巻線(丸素線11又は平角線12)の一部を収容する環状の溝92bが形成され、溝92bによって巻線(丸素線11又は平角線12)の位置(
図5における上下方向での位置)が規制される。
【0033】
スライド部材93は、
図4および
図5において左右方向(矢印Sで示す方向)にスライド可能とされ、かつ、圧縮ばね94により、
図4および
図5において左方に付勢されている。圧縮ばね94による付勢力は軸92Aを介してローラ92に伝達され、ローラ92がローラ91に対して押し付けられることにより、ローラ91、92間の間隔は、巻線(丸素線11又は平角線12)の幅(
図4および
図5における左右方向の寸法)に応じたものとなる。
【0034】
図5Aは、丸素線がローラ間に挟み込まれた状態を示す側面図である。
図5Aに示すように、丸素線11の幅(径)は、平角線12の幅よりも大きいため、ローラ91、92間の間隔は、
図5の場合よりも大きくなる。
【0035】
図4および
図5に示すように、レバー95は、
図4の上下方向に延設された固定軸95Aに対して回転可能に取り付けられている。スライド部材93には、
図4において上下方向に延設された軸93Aが固定され、軸93Aは、軸93Aの先端側(
図4の下端側)において、レバー95と係合している。レバー95は、レバー95に係合された軸93Aの移動(
図4および
図5における左右方向の移動)に伴って、固定軸95Aの軸心95x(
図4)を中心として、
図5の矢印Rに示すように揺動する。
【0036】
図4および
図5に示すように、位置検出器53(
図1)は、複数のセンサ53a、53b、53cを備える。センサ53a、53bおよび53cは、例えばレバー95の接近を検出する磁気センサである。
【0037】
また、位置検出器53には、レバー95の先端部(
図4および
図5において左端部)が挿入可能とされたスリット53sが設けられている。センサ53a、53bおよび53cは、レバー95の先端部が、それぞれのセンサ53a、53bおよび53cに接近した状態にあるか否かを示す信号を、それぞれ演算制御部52に出力する。これらの信号により、演算制御部52は、レバー95の先端部の位置を検出することができる。位置検出器53を構成するセンサとして、光センサを用い、レバー95の先端部により遮られる光線の位置などに基づいて、レバー95の先端部の位置を検出してもよい。
【0038】
なお、センサの個数は任意である。例えば、ローラ91、92の間に供給される巻線が丸素線11であるか否かだけを検出する場合には、適切な位置に配置された1つのセンサのみで巻線の種別(丸素線11又は平角線12)を判別することも可能である。また、センサの数を増やすことにより、丸素線11と平角線12とを判別するだけでなく、平角線12(例えば、12a、12b、12c、12d)の幅(形状)を区別して検出することも可能となる。
【0039】
成形機4から供給される巻線の断面形状が変化すると、ローラ91、92間の間隔、すなわちローラ92の位置(
図4および
図5における左右方向の位置)が巻線の断面形状に応じて変化する。ローラ92の位置の変化は、スライド部材93を介して軸93Aに伝達され、軸93Aの位置が
図4および
図5における左右方向に変動する。
【0040】
軸93Aはレバー95に係合されているため、軸93Aの移動はレバー95の固定軸95A周りの回転に変換される。このとき、固定軸95Aの軸心95xから軸93Aの軸心93x(
図4)までの距離に対し、固定軸95Aの軸心95xからレバー95の先端部までの距離が大幅に大きいため、ローラ91、92間の間隔の変化幅が増幅されて、レバー95の先端部の動きに変換される。このため、レバー95の先端部の位置を検出することにより、巻線の断面形状を正確に把握することが可能となる。また、ローラ91、92間の間隔に基づいて巻線の断面形状およびその変化を検出しているので、例えば、画像処理を用いて断面形状を検出する場合などと比較して、コストダウンを図ることができる。
【0041】
図6は、旋回部のノズルの構成例を示す図である。
図6は、平角線12の下流側からノズルを視た状態を示している。
【0042】
旋回部6は、平角線12を巻線機7に向けて供給するノズル62を備える。このノズル62は、演算制御部52により制御される旋回機構(不図示)により、
図6において平角線12の周方向に旋回される。ノズル62の旋回に伴って、ノズル62から供給される平角線12も、同時に周方向に旋回する。
【0043】
図6Aはノズル右周り方向(時計回り方向)に旋回させた状態を示す図、
図6Bはノズル左周り方向(反時計回り方向)に旋回させた状態を示す図である。なお、ノズル62の形状は任意である。
【0044】
ノズル62の向きは、巻線機7における巻線(平角線12)の巻装において、巻線(コイル)の巻き崩れを防止するために適切に制御される。例えば、
図3Dにおける1層目を巻き終え、2層目に移行する際に、ノズル62を傾ける(
図6A又は
図6B)ことにより、巻線の巻き崩れを防ぐことができる。2層目から3層目、3層目から4層目、4層目から5層目に移行する際も同様である。
【0045】
この場合、ノズル62を傾けるタイミングは、巻線機7の回転機構71の動作状態により認識することができる。すなわち、巻線の巻装状態は、巻装動作の開始からの積層鉄心片30の回転角度(回転回数)で管理することができ、ノズル62を傾けるタイミングも同様である。積層鉄心片30の回転角度は、回転機構71の動作により規定されるため、回転機構71を制御する演算制御部52は、巻線の巻装状態をリアルタイムで把握できる。例えば、
図3Dにおいて、平角線12の1層目の巻装が開始されてから積層鉄心片30をおよそ5回転させることで平角線12の1層目の巻装が完了し、続いて2層目に移行する。同様に、2層目、3層目はおよそ5回、4層目はおよそ4回、5層目はおよそ2回、それぞれ積層鉄心片30を回転させることで、各層の巻装が完了する。したがって、演算制御部52は、回転機構71の動作状態を介して認識される積層鉄心片30の回転角度に基づき、巻装が次の層に移行するタイミングでノズル62を傾けるように旋回部6の旋回機構を制御する。
【0046】
本実施例では、断面形状検出装置5を介して巻線の断面形状をリアルタイムで検出できるため、巻線の断面形状の検出結果を、旋回部6又は巻線機7の動作に反映させることができる。例えば、本来のタイミングで所定の断面形状の巻線(丸素線11又は平角線12)が成形機4から供給されていない場合には、旋回部6および巻線機7の動作タイミングを、実際に成形機4から供給されている巻線の断面形状に合致するように調整することができる。また逆に、旋回部6および巻線機7の動作タイミングに合致するように、成形機4の動作タイミングを調整することができる。
【0047】
なお、旋回部6および巻線機7の動作タイミングを、実際に成形機4から供給されている巻線の断面形状に合致するように調整する場合、あらかじめ所定の巻装のタイミング(例えば、巻装を開始するタイミング)を定めるためのマーカーを、巻線自体に施しても良い。この場合、成形機4から供給されている巻線の断面形状をマーカーとして用いることができる。例えば、短い間隔で丸素線11と平角線12を所定回数(例えば、1回又は2回)繰り返した部位を、マーカーとして使用することができる。マーカーは断面形状検出装置5により検出できるため、この検出タイミングに合わせた動作タイミングで、旋回部6および巻線機7を動作させることができる。このため、成形機4から供給される巻線の断面形状の変化に合致するタイミングでの巻装動作を確保することが可能となる。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、断面形状検出装置5により巻線の断面形状の変化を検出できるため、ステータコア(巻装対象)に巻装されるコイルの製造工程を高精度に管理することができる。例えば、コイルの始端および終端に確実に丸線を位置づけることができる。
【0049】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0050】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0051】
[付記1]
巻装対象(30)に巻装される巻線を供給する巻線供給装置であって、
供給方向に対して断面形状が変化する巻線を連続的に供給する巻線供給部(4)と、
前記巻線供給部により供給される前記巻線の前記断面形状における変化を検出する変化検出部(5)と、を備える、巻線供給装置。
【0052】
付記1の構成によれば、変化検出部により巻線供給部により供給される巻線の断面形状における変化を検出するので、巻装対象に巻装されるコイルの製造工程を高精度に管理することができる。
【0053】
[付記2]
前記巻線供給部は、前記断面形状が平角状の前記巻線(12)を供給する第1状態と、前記断面形状が円形状の前記巻線(11)を供給する第2状態とを含む複数の状態間で連続的に変化し、
前記変化検出部は、前記平角状の前記断面形状と前記円形状の断面形状との間の変化を検出する、付記1に記載の巻線供給装置。
【0054】
付記2の構成によれば、平角状の断面形状と円形状の断面形状とを判別することができる。
【0055】
[付記3]
前記変化検出部は、前記巻線の幅の変化を検出し、検出された前記幅の変化に基づいて前記巻線の前記断面形状における変化を検出する、付記1又は付記2に記載の巻線供給装置。
【0056】
付記3の構成によれば、巻線の幅の変化を検出するので、簡易な方法で巻線の幅の変化を検出できる。
【0057】
[付記4]
前記変化検出部は、前記巻線を幅方向で挟み込むことにより前記巻線の幅の変化に連動する検出機構(51)を備える、付記3に記載の巻線供給装置。
【0058】
付記4の構成によれば、巻線を幅方向で挟み込むことにより巻線の幅の変化に連動する検出機構を備えるので、低コストで巻線の幅の変化を検出できる。
【0059】
[付記5]
付記4に記載の巻線供給装置において、
前記検出機構は、前記巻線を幅方向で挟み込む一対のローラ(91,92)と、
前記一対のローラ間の間隔を増幅して出力するレバー(95)と、
を備え、
前記変化検出部は、前記レバーの位置を検出する位置検出器(53)を備え、前記位置検出器により検出される前記レバーの位置に基づいて、前記巻線の幅の変化を検出する、巻線供給装置。
【0060】
付記5の構成によれば、一対のローラ間の間隔を増幅して出力するレバーを備え、位置検出器により検出されるレバーの位置に基づいて、巻線の幅の変化を検出するので、ローラ間の間隔を精度よく検出することができる。
【0061】
[付記6]
付記1から付記5のいずれか1項に記載の巻線供給装置において、
前記巻線を周方向に旋回させる旋回部(6)を備え、
前記旋回部は、前記巻線を前記巻装対象に巻装する巻線機(7)の上流側であって、前記変化検出部の下流側に位置する、巻線供給装置。
【0062】
付記6の構成によれば、巻線を周方向に旋回させる旋回部を備えるので、巻線の巻き崩れを抑制できる。
【符号の説明】
【0063】
4 成形機
5 断面形状検出装置
6 旋回部
7 巻線機
11 丸素線
12 平角線
53 位置検出器
91 ローラ
92 ローラ
95 レバー