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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240402BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20240402BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20240402BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240402BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240402BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240402BHJP
   A61B 90/30 20160101ALI20240402BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240402BHJP
   F21W 131/205 20060101ALN20240402BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240402BHJP
【FI】
F21S2/00 375
F21S2/00 610
F21V29/503
F21V29/70
F21V23/00 160
F21V5/04 400
F21V19/00 150
F21S2/00 320
A61B90/30
H05K1/02 F
H05K1/02 Q
F21W131:205
F21Y115:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166180
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057768
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森下 駿
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-140914(JP,A)
【文献】特開2011-060619(JP,A)
【文献】特開2020-035606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0045432(US,A1)
【文献】国際公開第2007/139195(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 19/00 - 19/06
F21V 23/00 - 99/00
A61B 90/30
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の箇所を照らす照明ユニットと、この照明ユニットを一端に備える支持ユニットと、この支持ユニットの他端を接続し、前記照明ユニットへ電力を供給する電源ユニットとを具備し、
前記照明ユニットは、少なくとも一方が開口した中空の殻部材と、前記殻部材の開口端を封鎖して設けられた集光レンズとを備え、
前記殻部材には、その発光面が前記集光レンズと対向するよう配置されている発光素子と、この発光素子を支持する基板と、この基板を固定する放熱体とが内包されており、
前記基板および放熱体は、その軸方向に電線経路が貫通しており、この電線経路には、前記電源ユニットと発光素子とを電気的に接続する電線が通過し、 前記基板は、前記発光素子が接続される接続部および前記放熱体に接着されている放熱部を有し、その軸方向に接続部と放熱部とを伝熱的に接続させるスルーホールが貫通形成され
前記接続部は、基板上の所定の位置に前記発光素子を固定する素子接続部と、この素子接続部に連続し、前記電線経路に向かって延びる電線接続部とを有していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記放熱部は、その面積が前記素子接続部の面積より広く構成されていることを特徴とする請求項に記載の照明装置。
【請求項3】
前記接続部は、前記スルーホールに向かって延びる伝熱経路を有しており、この伝熱経路の表面には、レジストが塗布されていることを特徴とする請求項1または請求項に記載の照明装置。
【請求項4】
前記基板は、その直径が前記発光素子の幅寸法の2倍から3倍の範囲で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項の何れかに記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術時に術野を照射する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
術野の照度は、10,000ルクスから100,000ルクスが推奨されている。このため、手術室の天井には無影灯等の高照度の照明が備えられ、術野を照らしている。しかし、身体の深部に術部がある場合等においては、周辺組織に遮られて無影灯の光が術部に十分届かず、十分な術野を確保できないことがある。
【0003】
そのため、特許文献1に示すような照明装置が知られている。この照明装置は、所定の箇所を照明可能な照明ユニットと、この照明ユニットを一端に支持する支持ユニットと、この支持ユニットの他端が接続された制御ユニットとを備えており、照明ユニットを術部付近に設置し、術部を照射するように構成されている。このように照明ユニットが術部を直接照射する照明装置は、ライトガイドによる伝送損失がないため消費電力が小さいという利点および、ライトガイドのように許容曲げ半径がないため設置場所、照射可能範囲の自由度が高いという利点がある。しかしながら、このような照明装置においては、発光素子の発熱量を抑えるために発光素子に大きな電力をかけることができず、結果、照度が不足してしまう等の課題があった。
【0004】
そのため、特許文献2に記載の照明装置が創成されている。この照明装置は、所定の箇所を照明可能な照明ユニットと、この照明ユニットを一端に支持する支持ユニットと、この支持ユニットの他端が接続された制御ユニットとを備えており、前記照明ユニットは、貫通孔が形成された中空の殻部材と、この殻部材の開口端を封鎖する集光レンズと、前記殻部材内に殻部材および集光レンズと空隙を持って配置された発光素子とから構成されており、発光素子は、発光素子より十分大容量に構成された放熱体に支持されている。この放熱体には、発光素子側の端部から支持ユニット側の端部に連続する銅箔が貼り付けられており、この銅箔を介して前記発光素子と支持ユニットの電線とが接続するように構成されている。このような照明装置は、発光素子の発した熱が前記銅箔を介して放熱体に伝達されるため、発光素子に比較的大きい電力を負荷できる。これにより、10,000ルクス以上照度で照射可能という特徴があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-527959号公報
【文献】特開2020-140914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の照明装置は、銅箔上に発光素子を取り付ける構造であるため、発光素子を前記集光レンズの軸線上に配置するために微少な位置調整が必要となり、組立効率を悪化させていた。また、銅箔と放熱体との接着が不十分であると、銅箔が放熱体から剥離することがあった。これにより、銅箔に接続された発光素子とレンズとの距離が変化して、集光性能が悪化するという問題や、銅箔と放熱体との間に空気層ができ、放熱性能が悪化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、発熱による発光素子の破損等を防止し、術部を高照度で照明可能かつ、容易に組立可能な照明装置の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、所定の箇所を照らす照明ユニットと、この照明ユニットを一端に備える支持ユニットと、この支持ユニットの他端を接続し、前記照明ユニットへ電力を供給する制御ユニットとを具備し、前記照明ユニットは、少なくとも一方が開口した中空の殻部材と、前記殻部材の開口端を封鎖して設けられた集光レンズとを備え、前記殻部材には、その発光面が前記集光レンズと対向するよう配置されている発光素子と、この発光素子を支持する基板と、この基板を固定する放熱体とが内包されており、前記基板は、前記発光素子が接続される接続部および前記放熱体に接着されている放熱部を有し、その軸方向に接続部と放熱部とを伝熱的に接続させるスルーホールが貫通形成されていること特徴とする。このように構成された照明装置は、基板により、発光素子が発する熱を円滑に放熱体に伝達可能となる。
【0008】
なお、前記基板および放熱体は、その軸方向に電線経路が貫通しており、この電線経路には、前記制御ユニットと発光素子とを電気的に接続する電線が通過し、前記接続部は、基板上の所定の位置に前記発光素子を固定する素子接続部と、この素子接続部に連続し、前記電線通路に向かって延びる電線接続部とを有していることが好ましい。また、放熱部は、その面積が前記素子接続部の面積より広く構成されていることが好ましい。さらに、前記接続部は、前記スルーホールに向かって延びる伝熱経路を有しており、この伝熱経路の表面には、レジストが塗布されていることが好ましい。しかも、前記基板は、その直径が前記発光素子の幅寸法の2倍から3倍の範囲で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発光素子が基板に支持されているため、発光素子を基板の中心に固定し易い。また、基板がスルーホールにより発光素子から発せられた熱を放熱体に円滑に伝達可能に構成されているため、金属箔より伝導性の低い基板を使用しても放熱性能を維持可能となる。このため、高照度での照射可能かつ組立が容易となる等の利点がある。また、基板および放熱体に電線経路が貫通しているため、基板を放熱体の軸線上に容易に固定可能等の利点がある。さらに、放熱部が発光素子より広面積で形成されているため、発光素子単体を放熱体に接続させるより広い面積伝熱でき、放熱効率が向上する等の利点がある。また、伝熱経路の表面にレジストが塗布されているため、はんだがスルーホール内に流れ込むことが防止される。これにより、はんだが基板と放熱体との間に空気層が形成し、放熱性能を悪化させることを防止可能等の利点がある。さらに、基板の直径が発光素子の幅寸法の2倍から3倍に構成されているため、前述の放熱性能を維持しつつ照明装置の小型化が可能等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る照明装置の概略説明図である。
図2】本発明に係る照明ユニットの構造を示す要部拡大一部切欠断面図である。
図3】本発明に係る照明ユニットの構造を示す要部拡大一部切欠き断面斜視図である。
図4】本発明に係る基板の構造を示す要部拡大平面図である。
図5図4の基板の裏面構造を示す要部拡大底面図である。
図6】本発明に係る照明ユニットの伝熱構造を示す図4のA-A線断面概略図である。
図7】本発明に係る基板の他の実施形態を示す要部拡大平面図である。
図8図7の基板の裏面構造を示す要部拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1ないし図5において1は照明装置であり、この照明装置1は、支持ユニット2と、この支持ユニット2の一端に支持され、所定の箇所を照明可能な照明ユニット3と、前記支持ユニット2の他端が接続された電源ユニット4とを備える。
【0012】
前記支持ユニット2は、長手方向に延びる中空の弾性チューブ21を備えており、この弾性チューブ21には、電線22,22および銅線23が挿通している。この電線22,22および銅線23は、弾性チューブ21の一端から所定の寸法突出しており、この電線22,22および銅線23の突出部分は、前記照明ユニット3内に挿入されている。また、電線22,22は、導体を絶縁性の皮膜で被覆した一般的なものであり、この電線22,22の他端には、受電コネクタ24が接続されている。さらに、銅線23は、照明ユニット3および支持ユニット2の自重で湾曲せず、なおかつ人力で湾曲させることが可能な太さに設定されている。このため、支持ユニット2は、この銅線23により外力により変形する可撓性と、外力を除いても任意の形状を維持する形状維持機能とを有する。
【0013】
前記照明ユニット3は、軸方向に貫通孔311が形成された中空円筒状の殻部材31を備えており、この殻部材31の貫通孔311は、図示しない被照射対象側(以下、一端側という)に開口する小径部312と、この小径部312に連続し、前記支持ユニット2側(以下、他端側という)に開口する大径部313とから構成されている。この大径部313は、その穴径が前記小径部312の穴径より大きく構成されており、小径部312と大径部313との境界部分には、段部314が形成されている。この殻部材31の一端には、殻部材31の開口部を封鎖する集光レンズ32が装着されている。この集光レンズ32は、貫通孔311の小径部312より小なる直径の球面部321と、この球面部321と一体に形成され、前記小径部312より大なる直径の円板部322とを有する平凸レンズであり、この集光レンズ32は、球面部321を外方に向け、円板部322が貫通孔311の段部314に当接している。この円板部322と段部314との間は、接着剤等で気密に接着されている。一方、前記円板部322の他端側の面には、殻部材31の軸線と平行に延びる2本の脚部323,323が一体に形成されている。この脚部323,323は、後述する発光素子36と接触しないよう所定の幅を開けて形成されており、その軸方向の寸法(脚部323,323の長さ)は、集光レンズ32の屈折率等に基づいて決定されている。すなわち、発光素子36が発する光の照度が有効照射面(少なくとも10,000ルクスの照度を確保できる面)において均一になり、かつ当該有効照射面が可能な限り広くなるよう設定してある。これにより、円板部322と発光素子36との間には空気層が形成され、両者が接触しないように構成されている。
【0014】
前記貫通孔311の大径部313には、この大径部313の穴径と同径に形成された略円柱状の放熱体33が内接して挿入されている。この放熱体33の一端には、略円板形状の基板34が同心上に固定されており、放熱体33は、この基板34が前記集光レンズ32の脚部323,323に当接するよう殻部材31内に固定されている。基板34は、その直径が放熱体33の直径より若干小さく構成された略円板状部材であり、この基板34の集光レンズ32と対向する面(以下、表面という)には、光源である発光素子36が固定されている。このように、脚部323,323が基板34と当接することにより、発光素子36と集光レンズ32の円板部322との距離が決定される。また、放熱体33および基板34には、その軸方向に溝状の電線経路35,35が貫通形成されており、この電線経路35,35には、前記支持ユニット2の電線22,22が挿通されている。さらに、放熱体33と殻部材31とは、接着剤により固定されており、殻部材31と支持ユニット2の弾性チューブ21とは、収縮チューブ37により固定されている。この収縮チューブ37により、支持ユニット2と照明ユニット3との連結部分の気密性が保たれるため、照明ユニット3および支持ユニット2内に血液等が侵入することが防止されている。しかも、前記放熱体33の他端には、前記支持ユニット2の銅線23一端が挿入されている。なお、放熱体33は、その体積が前記発光素子36よりも遙かに大きく構成されており、これにより放熱体33は、発光素子36の発熱量に対して十分な熱容量を持つように構成されている。
【0015】
前記基板34は、図4に示すように表面に導電パターンで成る接続部341,341′がプリントされており、この接続部341,341′は、基板34の中心に形成された素子接続部342,342′と、この素子接続部342,342′から前記電線経路35,35に向かって延びる電線接続部343,343′とを有する。前記素子接続部342,342′は、発光素子36とほぼ同じ面積で構成されており、発光素子36をはんだ付け等で基板34の中心に位置決め固定可能に構成されている。なお、一方の接続部341は、他方の接続部341′より若干大きく構成されており、接続部341に前記発光素子36のグランド側端子が接続されている。また、前記電線接続部343,343′には、前記電線経路35,35を通過した電線22,22の先端が接続されているため、発光素子36と電線22,22とが接続部341,341′を介して電気的に接続される。さらに、前記接続部341,341′は、素子接続部342,342′から外周方向に向かって延びる伝熱経路344,344′を有している。この伝熱経路344,344′は、電線接続部343,343′と基板34の中心を基準に90度離れた方向に延びており、この伝熱経路344,344′の素子接続部342,342′から所定の隙間を空けた位置には、スルーホール345,345′が貫通している。このスルーホール345,345′は、その内周面に銅等の比較的伝熱性の優れた金属が鍍金され、伝熱性を有する貫通穴から構成される。これらにより、前記発光素子50が発する熱が基板34の表面から裏面(放熱体33側の面)へ伝達される。しかも、基板34は、前記伝熱経路344,344′の表面にはんだを弾く塗料(以下、レジストという)が塗布されている。このため、基板34に発光素子36あるいは電線22,22を実装する課程ではんだがスルーホール345,345′内へ流入することが防止される。
【0016】
また、前記基板34は、図5に示すように裏面にこれも導電パターンでなる放熱部346,346′がプリントされている。この放熱部346,346′は、前記素子接続部342,342′より広く、基板34の裏面ほぼ全体に広がって構成されており、この放熱部346,346′は、前記スルーホール345,345′に連続している。このため、スルーホール345,345′を介して、前記接続部341,341′と放熱部346,346′とが電気的、伝熱的に接続される。さらに、基板34には、放熱部346,346′を含む裏面全面に絶縁性と熱伝導性を兼ね備えた接着剤が塗布されており、この接着剤により前記放熱体33に接着されている。このため、基板34と放熱体33が電気的に絶縁されるとともに、基板34から放熱体33へ放熱することが可能となる。なお、前記基板34および放熱体33は、後述の放熱性能が悪化しない範囲で極力直径が小さく構成されており、本実施形態において、直径が前記発光素子36の幅寸法の2倍から3倍程度になるように構成されている。また、基板34は、極力薄く構成されており、発光素子の厚さの半分程度に構成されている。
【0017】
なお、前記殻部材31は、生体適合性を有する金属材料の一例であるステンレス鋼またはチタン合金等から構成されており、前記放熱体33は、軽量、安価かつ比較的熱伝導率が高い金属材料の一例であるアルミニウム合金等から構成されている。また、前記集光レンズ32は、ガンマ線を照射された際に変色や劣化が少ない、耐ガンマ線グレードのポリカーボネート等から構成されている。さらに、前記発光素子36は、表面実装型の白色発光LED(発光ダイオード)である。具体的には、光の色を表す色温度が5000~6500Kの範囲内で、被照射物の色の再現率を表す平均演色評価数Raが95以上のものが好ましく、特に赤色の再現率を表す特殊演色評価数R9が90以上のものが好ましい。
【0018】
前記電源ユニット4は、直接外部の商用電源(以下、電源という)の電源コンセント(図示せず、以下、コンセントという)に接続可能な電源プラグ(図示せず)を備える電源接続部41を有しており、この電源接続部41は、電源から送られてきた交流電流を電圧が一定の直流電流に変換して電気回路42に送電している。この電気回路42は、電源接続部41から送られてきた直流電流の値を所定の値に変換しており、この電気回路42には、前記支持ユニット2の受電コネクタ24に接続可能な給電コネクタ43に接続されている。この給電コネクタ43は、受電コネクタ24と着脱可能に構成されており、これらコネクタ43,24の接続により、電源ユニット4と支持ユニット2とが電気的に接続される。
【0019】
次に、上記のように構成された照明装置1の作用を説明する。
電源に接続された前記電源ユニット4を被施術者の近傍に設置し、この電源ユニット4の給電コネクタ43に、支持ユニット2の受電コネクタ24を接続する。この時、電源から前記電源接続部41に供給された交流電流は、一定電圧の直流電流に変換されて電気回路42に伝えられる。この電気回路42に伝えられた直流電流は、発光素子36に適した所定の電流に変換され、支持ユニット2に供給される。この発光素子36に適するように変換された電流は、支持ユニット2の電線22,22から基板34を通じて発光素子36まで供給され、これにより発光素子36が発光する。この時、基板34と放熱体33との間が絶縁性を有する接着剤により絶縁されているため、短絡・漏電が防止されている。
【0020】
前述のように発光素子36が発した光は、照明ユニット3の集光レンズ32を介して所定範囲の照射面を形成する。この時、基板34は、殻部材31に固定されている放熱体33と集光レンズ32の脚部323,323とに挟設されているため、集光レンズ32に対して位置ずれを起こしにくい。同様にこの基板34に接続されている発光素子36も常時所定の位置に位置決め固定されるため、振動等により発光素子36が集光レンズ32に対して位置ずれを起こしたり、振動したりするのを防止可能である。この結果、本照明装置1においては、集光レンズ32による集光精度を保持でき、所望の位置に有効照射面を形成可能となる。
【0021】
照明ユニット3で術部を照射する場合には、照射面の照度が10,000ルクスになる光が推奨されることから、発光素子36には比較的大きな電力がかけられる。これにより、術部を良好に照射し、十分な術野を確保することが可能となる。
【0022】
発光素子36は、前述のように大きな電力が印加されることにより、その特性上比較的従来よりも大きな熱を帯びる。この発光素子36が発する熱は、図6の矢印H1に示すように発光素子36を支持する基板34に伝達される。この時、基板34にスルーホール345,345′が形成され、接続部341,341′と放熱部346,346′とが伝熱的に連続しているため、発光素子36から発せられた熱は、図6の矢印H2に示すように接続部341,341′と放熱部346,346′へ円滑に伝熱される。このように放熱部346まで伝達された熱は、前記伝熱性を有する接着剤を介して放熱体33まで円滑に伝達される。この時、前記放熱部346,346′が基板34の裏面全体に広がっているため、図6の矢印H3に示すように放熱体33に広い面積で効率よく熱を伝達可能となる。また、放熱体33が発光素子36に対して十分に大きな熱容量を持つものとして構成されていることにより、長時間の使用においても、発光素子36は、放熱体33に放熱し続けることが可能となる。これら構成により、発光素子36が自身の発する熱により、劣化、破損することが防止される。
【0023】
前述のように放熱体33まで伝達された熱は、放熱体33の一端側から他端側に広がりながら放熱体33が内接している殻部材31に伝達され、外部に放散される。このため、照明ユニット3全体で放熱可能となる。この時、前記基板34の直径が放熱体33の直径より小さく構成され、基板34と殻部材31との間には空気層が存在するため、基板34から直接殻部材31に熱が伝達されることが防止される。これにより、発光素子36からの熱のほとんどが放熱体33に伝達され、照明ユニット3の外表面の何処か一点が局所的に高温化するということが防止される。また、放熱体33に伝達された熱の一部は、放熱体33に挿入された銅線23を介して支持ユニット2にも伝達されるため、照明ユニット3の外表面がより高温化しにくい。さらに、集光レンズ32の脚部323,323が基板34に当接していることにより、基板34に伝達された熱の一部は、集光レンズ32にも伝達されることとなる。しかし、集光レンズ32の円板部322と発光素子36との間に空気層が形成され、発光素子36から発せられる熱が直接円板部322に伝達されにくい構造であるため、脚部323,323から伝達される熱量より球面部321が外気に放熱する熱量の方が大きくなる。そのため、集光レンズ32が高温になることが防止されている。これらにより、照明ユニット3の表面温度は、常時摂氏42度未満に維持されることが確認されており、これにより、照明ユニット3および支持ユニット2が被施術者に接触した場合にも、熱傷等を引き起こす危険がない。以上のような放熱効果を有するため、本発明の照明装置1においては、発光素子36に上記のように大きな電力を長時間印加することが可能となる。この結果、長時間の手術においても、高照度に照明し続けることが可能となる。
【0024】
照明ユニット3で術部を照射する場合には、支持ユニット2を湾曲・屈曲させることにより、所望の位置に照明ユニット3を配置することが可能である。よって、照明すべき術部が転々と変わる場合や、被施術者の体勢が変更された際などにおいても、その都度施術者にとって都合の良い最適な位置、向きに照明ユニット3を自在に配置し、照明したい位置を正確に照らすことが可能となる。また、放熱体33に支持ユニット2の銅線23を挿入した構成であるため、照明ユニット3と支持ユニット2との接続部分で折れること等が防止される。よって、照明ユニット3の重さで、支持ユニット2が照明中に湾曲してしまい、照射範囲が変更されることを防止することが可能になるとともに、照明ユニット3を支える支持ユニット2を極力小型化することが可能となる。しかも、前記電線経路35,35に支持ユニット2の電線22,22が収容されるため、放熱体33が殻部材31に内接し、なおかつ発光素子36と電源ユニット4とが電気的に接続可能となる。この結果、前述の放熱性能を維持したまま省スペースに配線可能となるため、照明ユニット3を極力小さくできる。この結果、術部付近に設置しても施術者の邪魔にならない等の利点がある。
【0025】
本照明装置1は、前述のように照明ユニット3が極力小さく構成されているが、基板34の中心に形成された素子接続部342,342′に発光素子36を接続するため、基板34の中心と発光素子36の中心とを容易に揃えることが可能となる。また、この基板34および放熱体33に形成された電線経路35,35を一致させることにより、発光素子36および基板34の中心を放熱体33の軸線上に揃えて配置することが可能となる。このように発光素子36および基板34が軸線上に配置された放熱体33を殻部材31の貫通孔311に内接させて固定することにより、殻部材31に固定された集光レンズ32の中心と放熱体33に支持された発光素子36の中心とが容易かつ高精度に揃い、優れた集光性能を発揮可能となる。さらに、集光レンズ32の脚部323,323に基板34が当接するよう構成されているため、集光レンズ32と発光素子36との距離を組立時に改めて調節することなく、照射面が広くかつ照射面内に明暗の差が生じないような絶妙な位置を容易に設定可能となり、組み立て効率が向上する。しかも、貫通孔311の段部314に集光レンズ32の円板部322を当接させ、固定するよう構成されているため、殻部材31の軸線に対して集光レンズ32が傾き難く、より容易に組立可能な構成となる。
【0026】
また、上記放熱性能を目的に基板34が薄く形成されているため、万一発光素子36を基板34に実装する課程ではんだが前記スルーホール345,345′内に流れ込んだ場合、はんだがスルーホール345,345′の裏側開口部から流出して、基板34の裏面に突起を形成する。この時、はんだに形成された突起により、基板34と放熱体33との間に空気層が形成されるため、基板34と放熱体33間の伝熱性能が悪化することがある。しかしながら、本照明装置1は、前記基板34の伝熱部344,344′表面にレジストが塗布されており、スルーホール345,345′周辺がはんだを弾くように構成されているため、前述のような不良が生じ難く、組立効率が向上する。
【0027】
この照明装置1は、使用後および保管時において、前述のように支持ユニット2と電源ユニット4とが、給電コネクタ43と受電コネクタ24とによって着脱可能に構成されているため、術部付近に設置される支持ユニット2および照明ユニット3のみを、手術後に破棄または滅菌処理することができる。これにより、術部付近で用いる照明ユニット3を常に清潔に保ちつつ、比較的構成が複雑で高価な電源ユニット4については再使用が可能となる。また、集光レンズ32がガンマ線により変色しない耐ガンマ線グレードのポリカーボネートで構成されているため、照明ユニット3および支持ユニット2に対してガンマ線滅菌を行うことが可能となる。さらに、照明時に術部付近に設置される照明ユニット3の殻部材31は、一端側では集光レンズ32が気密に接着され、他端側では収縮チューブ37によって気密性が確保されているため、血液等が支持ユニット2や照明ユニット3の内部に侵入せず、これらによる汚染、短絡等が防止される。
【0028】
なお、本発明に係る照明装置1は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、電源ユニット5は、外部の商用電源に接続される電源接続部41を有する構成ではなく、電池を備えた構成であっても何ら問題ない。また、前記伝熱経路344に塗布されるレジストは、伝熱経路344の全面に塗布されていても、前記スルーホール345付近のみに塗布される構造であっても良い。さらに、基板34は、図7および図8に示すように、電線経路35,35が基板34および放熱体33を貫通する貫通穴であり、当該貫通穴に電線22が挿入された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 照明装置
2 支持ユニット
22 電線
3 照明ユニット
31 殻部材
311 貫通孔
32 集光レンズ
33 放熱体
34 基板
341 接続部
342 素子接続部
343 電線接続部
344 伝熱経路
345 スルーホール
346 放熱部
35 電線経路
36 発光素子
4 電源ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8