(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】建物壁貫通電気ケーブル用案内スリーブ及び電気ケーブル配線施工方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20240402BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20240402BHJP
H05K 7/00 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
H02G3/22
F16L5/02 N
H05K7/00 P
(21)【出願番号】P 2020167492
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】595106969
【氏名又は名称】大東建託株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】安田 美沙紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 拓磨
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-33128(JP,A)
【文献】特開2011-61919(JP,A)
【文献】特開2006-77988(JP,A)
【文献】特開昭58-190591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
F16L 5/02
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁を貫通する1又は複数の電気ケーブルを案内する案内スリーブであって、
前記壁に形成された貫通穴の周辺部に固定される環状のベース板と、
前記ベース板の内周縁から前記ベース板と交差する向きに突出された筒部と、
前記筒部の軸線と交差する板状に形成され、周縁部が前記筒部と連なる閉塞板部と、を備え、
前記閉塞板部には、複数の閉環状の易破断部が互いに離れて設けられ、各易破断部の外側の閉塞板部分と内側の分離可能部分とが、前記分離可能部分の全周にわたって前記易破断部を介して連なっていることを特徴とする建物壁貫通電気ケーブル用案内スリーブ。
【請求項2】
前記各易破断部が、前記閉塞板部に形成された閉環状の溝であり、前記溝が、全周にわたって前記閉塞板部を厚み方向に貫通していないことを特徴とする請求項1に記載の建物壁貫通電気ケーブル用案内スリーブ。
【請求項3】
前記筒部の内部には、前記複数の易破断部における第1の易破断部と第2の易破断部とを隔てる隔壁が、前記閉塞板部と交差するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物壁貫通電気ケーブル用案内スリーブ。
【請求項4】
前記閉塞板部が前記筒部の軸線方向の中間に配置され、前記筒部の突出端部が前記閉塞板部より突出されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の建物壁貫通電気ケーブル用案内スリーブ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の案内スリーブを用いて、1又は複数の電気ケーブルを建物の壁を貫通するように配線する電気ケーブル配線施工方法であって、
前記壁に形成した貫通穴に前記案内スリーブを設置し、
前記設置の前又は後に、前記案内スリーブにおける複数の易破断部から1又は複数の易破断部を選択して、該選択された易破断部を破断して、その内側の分離可能部分を前記案内スリーブから分離、除去することによって、前記選択された易破断部を周縁とする貫通穴部を形成し、
前記貫通穴部に前記電気ケーブルを挿通し、
前記貫通穴の周縁と前記案内スリーブとの間、及び前記貫通穴部の周縁と前記電気ケーブルとの間に止水材を設けることを特徴とする電気ケーブル配線施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ケーブルや信号ケーブルなどの電気ケーブルを案内する案内スリーブ、及び該案内スリーブを用いた電気ケーブル配線施工方法に関し、特に建物の壁を貫通する電気ケーブルに適した案内スリーブ及び配線施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物の屋外に設置された給湯器、空調室外機などの電気機器に接続される電気ケーブルは、建物の外壁を貫通するように配線される。外壁に貫通穴を開けて電気ケーブルを挿通する。その後、貫通穴の周縁と電気ケーブルとの間の隙間を止水材によって塞いで止水する。電気ケーブルとしては、電力供給用の電源ケーブル、遠隔操作用の信号ケーブルなどの種類がある。電気機器によっては、複数本の電源ケーブル又は複数本の信号ケーブルを要するものもある。
【0003】
特許文献1には、フランジ状のベース板及び筒部を含む案内スリーブを壁の貫通穴に取り付け、空調パイプ等の流体管を筒部に通す壁貫通配管施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数本の電気ケーブルを、建物の壁を貫通するように配線しなければならない場合、1本の電気ケーブルごとに、壁に貫通穴を形成するのは煩雑である。1つの貫通穴に複数本の電気ケーブルを束ねて挿通する場合は、貫通穴の周縁と該貫通穴内の複数本の電気ケーブルとの間の隙間を止水材で完全に塞ぐのが容易でなく、止水材の所要量も増える。特許文献1の案内スリーブを応用したとしても、壁の貫通穴が案内スリーブの筒部に代わるだけで、止水の困難性や止水材の所要量が増大する点においては同様である。
本発明は、かかる事情に鑑み、1又は複数の電気ケーブルを、建物の壁を貫通するように配線するに際して、壁に開ける貫通穴を少なくでき、かつ配線後の電気ケーブルのまわりを少量の止水材で容易に止水できる案内スリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の壁を貫通する1又は複数の電気ケーブルを案内する案内スリーブであって、
前記壁に形成された貫通穴の周辺部に固定される環状のベース板と、
前記ベース板の内周縁から前記ベース板と交差する向きに突出された筒部と、
前記筒部の軸線と交差する板状に形成され、周縁部が前記筒部と連なる閉塞板部と、を備え、
前記閉塞板部には、複数の閉環状の易破断部が互いに離れて設けられ、各易破断部の外側の閉塞板部分と内側の分離可能部分とが、前記分離可能部分の全周にわたって前記易破断部を介して連なっていることを特徴とする。
【0007】
当該案内スリーブを用いれば、電気ケーブルの本数に拘わらず、建物の壁には、当該案内スリーブを通す貫通穴を1つだけ形成すればよい。電気ケーブルごとに、建物の壁に複数の貫通穴を形成する必要はない。更に、案内スリーブの複数の易破断部の中から必要なものだけ選択して破断し、電気ケーブルを通す。使わない易破断部は破断せずにそのまま残置する。したがって、止水材を塗布すべき隙間又は開口の面積が小さくなり、止水材の塗布量を減量できる。易破断部の破断によって出来た貫通穴部の周縁と該貫通穴部に通した電気ケーブルの外周との環状隙間に、止水材を塗布すればよく、束ねた複数の電気ケーブル間の隙間を封止する必要がなく、止水材の塗布作業が容易である。
更に、易破断部の破断によって出来た貫通穴部ごとに電気ケーブルを通すことによって、少なくとも閉塞板部においては、複数の電気ケーブルどうしを、対応する易破断部どうしの離間距離分だけ離間させて、縁を切ることができる。
【0008】
前記各易破断部が、前記閉塞板部に形成された閉環状の溝であり、前記溝が、全周にわたって前記閉塞板部を貫通していないことが好ましい。これによって、破断されずに残置された易破断部については、止水処理をする必要が無い。
【0009】
前記筒部の内部には、前記複数の易破断部における第1の易破断部と第2の易破断部とを隔てる隔壁が、前記閉塞板部と交差するように設けられていることが好ましい。これによって、第1の易破断部を破断して挿通した電気ケーブルと、第2の易破断部を破断して挿通した電気ケーブルとが、案内スリーブ内で接触するのを出来るだけ避けることができる。
【0010】
前記閉塞板部が前記筒部の軸線方向の中間に配置され、前記筒部の突出端部が前記閉塞板部より突出されていることが好ましい。これによって、少なくとも閉塞板部から筒部の突出端部までの距離分だけ、電気ケーブルの被覆管などの差し込みしろを設けることができる。
【0011】
本発明方法は、前記の案内スリーブを用いて、1又は複数の電気ケーブルを建物の壁を貫通するように配線する電気ケーブル配線施工方法であって、
前記壁に形成した貫通穴に前記案内スリーブを設置し、
前記設置の前又は後に、前記案内スリーブにおける複数の易破断部から1又は複数の易破断部を選択して、該選択された易破断部を破断して、その内側の分離可能部分を前記案内スリーブから分離、除去することによって、前記選択された易破断部を周縁とする貫通穴部を形成し、
前記貫通穴部に前記電気ケーブルを挿通し、
前記貫通穴の周縁と前記案内スリーブとの間、及び前記貫通穴部の周縁と前記電気ケーブルとの間に止水材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1又は複数の電気ケーブルを、建物の壁を貫通するように配線するに際して、壁に開ける貫通穴が少なくて済み、かつ配線後の電気ケーブルのまわりを少量の止水材で容易に止水できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る案内スリーブの正面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のIIa-IIa線に沿う平面断面図である。
図2(b)は、同図(a)の円部IIbを拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、前記案内スリーブを前方かつ下側から矢視した斜視図である。
【
図4】
図4は、前記案内スリーブが設置された建物の外壁を、止水材の未塗工時の状態で示す、
図5のIV-IV線に沿う正面図である。
【
図5】
図5は、施工後の前記外壁の側面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る案内スリーブの正面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII折曲線に沿う、前記第2実施形態に係る案内スリーブの階段断面図である。
【
図8】
図8は、前記第2実施形態に係る案内スリーブの斜視図である。
【
図9】
図9は、前記第2実施形態に係る案内スリーブの適用例を示す、建物外壁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
【0015】
図5は、例えば、建物における屋外の給湯器(図示せず)の近くの外壁1(壁)を示したものである。外壁1には貫通穴2が形成されている。該貫通穴2に前記給湯器用の1又は複数の電気ケーブル3が通されている。詳しくは、外壁1は、構造合板1a(壁本体)と、該構造合板1aを挟んで屋内側の室内壁1bと、屋外側のサイディング1c(室外壁)とを含む。構造合板1a及びサイディング1cにそれぞれ貫通穴2を構成する穴部分2a,2cが貫通形成されている。サイディング1cの外面には、防水コンセント4が、穴部分2cに被さるように設けられている。
なお、構造合板1aにおける屋外側の面(
図5において左側面)には、防水シート5が張られている。
【0016】
図5に示すように、電気ケーブル3は、弱電の信号ケーブル3a、及び強電の電源ケーブル3bを含む。信号ケーブル3aは、CD管などの鞘管3dに収容されている。図示は省略するが、信号ケーブル3aの室内側の端部は、浴室や台所のリモコンパネルに接続されている。信号ケーブル3aは、1本だけの場合もあり、浴室用と台所用の2本(複数本)の場合もある。
ケーブル3a,3bの種類を特に区別しないときは「電気ケーブル3」と称す。各電気ケーブル3(3a,3b)が、構造合板1aと室内壁1bの間を通り、貫通穴2を経て、防水コンセント4に接続されている。詳細な図示は省略するが、防水コンセント4に前記給湯器が電気的に接続されている。
【0017】
図4及び
図5に示すように、外壁1の貫通穴2には、これら電気ケーブル3を案内する案内スリーブ10が設けられている。案内スリーブ10の材質は、特に限定は無いが、好ましくは樹脂などの絶縁材である。より好ましくは、案内スリーブ10の材質は、ABS樹脂であるが、これに限らず、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)等であってもよい。
好ましくは、案内スリーブ10は、樹脂の射出成形によって作製される。
【0018】
図1~
図3に示すように、案内スリーブ10は、ベース板11と、筒部20と、閉塞板部(蓋板部)30を一体に有している。ベース板11は、外形が例えば四角形であり、中央部に円形の穴12を有する環状の板状になっている。ベース板11の四隅にはビス穴13が形成されている。
【0019】
筒部20は、円筒形状に形成されている。筒部20は、ベース板11から屋外側(
図2(a)において下側、
図3において左側)へ突出されている。筒部20の内周面が、ベース板11の円形穴12の内周縁と面一に連なっている。
図5に示すように、筒部20の軸線L
20は、屋外(
図5において左側)へ向かって僅かに下へ傾斜されている。これによって、筒部20における内周面の下側部分に排水勾配が付けられている。排水勾配は、好ましくは1°以下である。
図3に示すように、筒部20の下側部には水抜き穴22が貫通形成されている。水抜き穴22は、筒部20の軸線L
20に沿って、後記閉塞板部30とのコーナー部からベース板11の近くまで延びている。
【0020】
図1~
図3に示すように、筒部20における屋外側を向く突出端部21に閉塞板部30が設けられている。閉塞板部30は、筒部20の軸線L
20と交差する板状に形成されている。閉塞板部30の周縁部が、筒部20の突出端部21と連なっている。閉塞板部30によって、筒部20の突出端部21が塞がれている。厳密に言うと、未使用時ないしは供用前のデフォルト状態の案内スリーブ10においては、筒部20の突出端部21が、閉塞板部30によって、水抜き穴22を除いて閉塞されている。
以下の閉塞板部30の説明では特に断らない限り、案内スリーブ10は、未使用または供用前のデフォルト状態であるものとする。
【0021】
図1に示すように、閉塞板部30には、例えば3つ(複数)の易破断部31,31,32が互いに離れて設けられている。各易破断部31,32は閉環状に形成されている。例えば、2つの第1の易破断部31は比較的大きな円形状になっている。第2の易破断部32は比較的小さな長方形状(四角形)に形成されている。閉塞板部30は、易破断部31,32において容易に破断可能である。各易破断部31,32の内側は、当該易破断部31,32の破断によって、閉塞板部30から分離される分離可能部分33となっている。
【0022】
図2(a)に示すように、具体的には、各易破断部31,32は、閉塞板部30の表側面30a(屋外を向く面)に形成された閉環状の比較的深い溝35である。
図2(b)に示すように、溝35の深さt
35は、閉塞板部30の厚みt
30の好ましくは半分以上であり、より好ましくは閉塞板部30の厚みt
30の70%~90%程度である。溝35の断面形状は、例えば垂直面35aと斜面35bを有する直角三角形状になっている。垂直面35aは、環状の溝35の外周側の溝側面を構成している。斜面35aは、環状の溝35の内周側の溝側面を構成している。垂直面35aと斜面35bとのなす角度φ
35(
図2(a))は、好ましくはφ
35=20°~40°程度、より好ましくはφ
35=30°程度である。
なお、溝35の断面形状は、直角三角形状に限らず、二等辺三角形状等の他の三角形状でもよく、半円形状などでもよい。
【0023】
溝35は、全周にわたって、閉塞板部30における裏側面30b(筒部20の内部空間に面する面)には達していない。したがって、閉塞板部30における、各易破断部31,32の外側の閉塞板部分39と、分離可能部分33とが、分離可能部分33の全周にわたって易破断部31,32を介して連なっている。
【0024】
図4及び
図5に示すように、供用状態の案内スリーブ10は、外壁1の構造合板1aとサイディング1cとの間に配置されている。ベース板11が、構造合板1aの屋外側面における穴部分2aの周辺部に配置されている。ビス19がビス穴13を通して、構造合板1aに打ち込まれることによって、ベー板11が構造合板1aに固定されている。ひいては、案内スリーブ10が、外壁1に固定されている。
円形穴12が穴部分2aと重なっている。筒部20の内部空間は、円形穴12を通して穴部分2aに連なっている。
水抜き穴22は下へ向けられている。筒部20の内部が、水抜き穴22を通して、構造合板1aとサイディング1cとの間の壁内通気層1dに連なっている。
【0025】
図4及び
図5に示すように、筒部20の突出端部21は、サイディング1cの穴部分2cに差し入れられている。閉塞板部30は、サイディング1cの外面とほぼ面一に配置されている。
図5に示すように、サイディング1cの穴部分2cの周縁と筒部20の外周との間の環状隙間6は、コーキング材などの止水材40によって水密に封止されている。
【0026】
図4及び
図5に示すように、供用状態の案内スリーブ10においては、複数の易破断部31,32のうちの一部が破断されて、その内側の分離可能部分33が分離、除去されることによって貫通穴部36,37となっている。例えば
図4においては、2つの円形状の易破断部31のうちの1つと、1つの長方形状の易破断部32とが破断されている。これによって、1つの円形状の貫通穴部36と、1つの長方形状の貫通穴部37とが形成されている。
図4に示すように、前記複数の易破断部31,32のうち、残りの易破断部31は、破断されることなく、その内側の分離可能部分33が閉塞板部30の一部として残置されている。
【0027】
図5に示すように、各貫通穴部36,37に電気ケーブル3が通されている。詳しくは、円形状の貫通穴部36には、鞘管3dに被覆された信号ケーブル3aが通されている。長方形状の貫通穴部37には、電源ケーブル3bが通されている。
各貫通穴部36,37の周縁と電気ケーブル3の外周との間の環状隙間36c,37cは、それぞれコーキング材などの止水材41によって水密に封止されている。
【0028】
<電気ケーブルの配線施工方法>
前記の案内スリーブ10を用いて、電気ケーブル3が次のようにして配線される。
案内スリーブ10は、デフォルト状態すなわち易破断部31,32が全く破断されていない状態で建物の施工現場に搬入される。
外壁1に貫通穴2を形成して、前記案内スリーブ10を設置する。外壁1には、配線すべき電気ケーブル3の本数に拘わらず、当該案内スリーブ10を通す貫通穴2を1つだけ形成すればよい。電気ケーブル3ごとに、外壁1に複数の貫通穴を形成する必要はない。
案内スリーブ10を外壁1に設置する前又は設置後に、案内スリーブ10における複数の易破断部31,32の中から、配線すべき電気ケーブル3の本数や種類に応じて、1又は複数の易破断部を選択する。該選択された易破断部31,32を破断する。例えば、マイナスドライバーの先端を溝35の溝底に突き刺したり、分離可能部分33をハンマーで叩いたりすることによって、選択された易破断部31,32を破断できる。易破断部31,32を環状の深い溝によって構成することによって簡単に破断できる。
なお、所要の電気ケーブル3が1本だけである場合には、易破断部を1つだけを破断する。所要の電気ケーブル3が3本の場合には、3つの易破断部31,32を破断する。
選択された易破断部31,32の破断によって、その内側の分離可能部分33が案内スリーブ10から分離される。分離された分離可能部分33を除去する。これによって、前記選択された易破断部31,32を周縁とする貫通穴部36,37が形成される。
【0029】
次いで、各貫通穴部36,37に、対応する電気ケーブル3を挿通する。
さらに、壁1の穴部分2cの周縁と案内スリーブ10との間に止水材40を塗布することによって環状隙間6を塞ぐとともに、案内スリーブ10の貫通穴部36,37の周縁と電気ケーブル3との間に止水材41を塗布することによって環状隙間36c,37cを塞ぐ。
【0030】
当該案内スリーブ10を用いた配線施工方法によれば、貫通穴部36,37を必要な数だけ形成して、所要の電気ケーブル3を通すことができる。使わない易破断部31は破断せずに残しておくことで、貫通穴部36が無駄に形成されないようにすることができる。 未破断の易破断部31は、全周にわたって貫通されていないため、止水処理する必要がない。当然ながら、閉塞板部30における易破断部31以外の閉塞板部分39についても、止水処理する必要がない。
したがって、止水材を塗布すべき隙間又は開口の面積が小さくなり、止水材の塗布量を減量できる。ひいては、工期を短縮することができる。
案内スリーブ10の外周の環状隙間6の他、小面積の環状隙間36c,37cに止水材40,41を塗布すればよく、束ねた複数の電気ケーブル間の隙間を封止する必要がなく、止水材の塗布作業が容易である。
更に、貫通穴部36,37ごとに電気ケーブル3を通すことによって、少なくとも閉塞板部30においては、複数の電気ケーブル3どうしを閉塞板部分39によって離間させることで、電気ケーブル3どうしの縁を切ることができる。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図6~
図10)>
図6~
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る案内スリーブ10Bにおいては、筒部20の内部に隔壁25が設けられている。隔壁25は、軸線L
20とほぼ平行に配置され、かつ閉塞板部30と交差している。隔壁25は、筒部20の軸線方向の全長にわたって設けられている。隔壁25の屋内側の端部は、ベース板11の屋内側面と面一になっている。隔壁25の屋外側の端部は、筒部20の突出端部21と面一になっている。
【0032】
隔壁25は、2つの第1の易破断部31と第2の易破断部32との間に配置されている。隔壁25によって、2つの第1の易破断部31と、第2の易破断部32とが隔てられている。筒部20の内部が、隔壁25によって、第1の筒内配線路23と、第2の筒内配線路24とに仕切られている。
図9に示すように、第1の筒内配線路23には、例えば信号ケーブル3aが通される。第2の筒内配線路24には、例えば電源ケーブル3bが通される。
【0033】
図6~
図8に示すように、案内スリーブ10Bの閉塞板部30は、筒部20の突出端部21よりベース板11側に引っ込み、筒部20の軸線方向の中間に配置されている。筒部20の内部において、閉塞板部30と隔壁25とが直角に交差している。閉塞板部30の周縁部は、筒部20の内周面に連なっている。
【0034】
このため、筒部20の突出端部21が閉塞板部30より突出されている。閉塞板部30から突出端部21までの突出距離L21は、好ましくはL21=数mm~十数mmであり、より好ましくはL21=10mm程度である。
【0035】
各分離可能部分33における表側面30aには、破断用凸部34が形成されている。破断用凸部34は、正面視で長方形状に形成されている。
【0036】
図7の仮想線に示すように、選択した易破断部31(32)を破断するときは、破断工具として例えばマイナスドライバー7を用意する。該マイナスドライバー7の先端部を破断用凸部34と閉塞板部30とで作る入隅部に宛がうとともに、ハンマー8によってマイナスドライバー7の後端部を叩く。これによって、応力波が、選択した易破断部31(32)に衝撃応力として伝播され、該易破断部31(32)を容易に破断できる。
【0037】
易破断部31(32)の破断によって貫通穴部36(37)が形成される。該貫通穴部36(37)を介して、筒内配線路23(24)における閉塞板部30を挟んで両側の配線路部分どうしが連通される。すなわち、筒内配線路23(24)が開通される。開通した筒内配線路23(24)に電気ケーブル3を通す。
【0038】
図9に示すように、案内スリーブ10Bの内部においては、第1の筒内配線路23の信号ケーブル3aと、第2の筒内配線路24の電源ケーブル3bとが、隔壁25によって完全に隔離されて配線される。したがって、これらケーブル3a,3bどうしが、案内スリーブ10B内で接触するのを確実に防止できる。
【0039】
図9に示すように、案内スリーブ10Bの突出端部21は、外壁1の屋外側面と面一をなして防水コンセント4とほぼ突き当たる。一方、閉塞板部30は、防水コンセント4から距離L
21分だけ屋内側に引っ込んで配置される。したがって、鞘管3dを、貫通穴部36に通して閉塞板部30よりも防水コンセント4側に引き込むことができる。要するに、案内スリーブ10Bによれば、鞘管3dの引き込みしろを設定することができる。
また、電源ケーブル3bについては、絶縁被覆部3fの先端部が、貫通穴部36を通して閉塞板部30よりも防水コンセント4側に確実に配置されるようにできる。
【0040】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、案内スリーブ10の易破断部31,32の数は、複数であれば3つに限らず、2つでもよく、4つ以上でもよい。
易破断部の溝35が、閉塞板部30の裏側面30bに形成されていてもよく、両面30a,30bに形成されていてもよい。
電気ケーブル3が接続される電気設備は、給湯器に限らず、空調機の室外機やテレビ受像機などであってもよい。案内スリーブに通す電気ケーブルは、テレビのアンテナケーブルであってもよい。要するに、案内スリーブは、テレビのアンテナケーブルの引き込み口としても利用できる。
案内スリーブが設けられて電気ケーブルが貫通する壁は、建物の外壁に限らず、屋内の壁でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば住宅の外壁を貫通する電気ケーブルの配線施工に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 外壁(壁)
2 貫通穴
3 電気ケーブル
3a 信号ケーブル(電気ケーブル)
3b 電源ケーブル(電気ケーブル)
3f 絶縁被覆部
6 環状隙間
10 案内スリーブ
10B 案内スリーブ
11 ベース板
12 円形穴
20 筒部
21 突出端部
23 第1の筒内配線路
24 第2の筒内配線路
25 隔壁
30 閉塞板部
31 第1の易破断部
32 第2の易破断部
33 分離可能部分
34 破断用凸部
35 溝
36,37 貫通穴部
36c,37c 環状隙間
39 閉塞板部分
40,41 止水材