(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ポリウレタンウレア弾性繊維およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 6/70 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
D01F6/70 Z
D01F6/70 A
(21)【出願番号】P 2020177918
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502179282
【氏名又は名称】東レ・オペロンテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】高山 弘
(72)【発明者】
【氏名】原 昌嗣
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/005309(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066592(WO,A1)
【文献】特開2012-041671(JP,A)
【文献】特開2009-024320(JP,A)
【文献】特開2009-144266(JP,A)
【文献】特開平7-166426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の両末端が1級または2級アミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aと、
ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩であるポリウレタンウレア重合体Bと、
を含むポリウレタンウレア弾性繊維。
【請求項2】
前記ポリウレタンウレア重合体Bが、前記ポリウレタンウレア重合体Aの分子鎖の末端に存在する1級または2級アミノ基の少なくとも一方に、分子量96以上300以下のスルホン酸化合物が結合したポリウレタンウレア重合体である請求項1に記載のポリウレタンウレア弾性繊維。
【請求項3】
ポリウレタンウレア弾性繊維1kg中における前記スルホン酸アミン塩の含有量の合計が0.01mmol以上50mmol以下である請求項1または2に記載のポリウレタンウレア弾性繊維。
【請求項4】
さらに、分子構造中に3級アミンを有するポリウレタン重合体Cを含有し、かつ、該ポリウレタン重合体Cの含有量が0.1重量%以上10重量%以下である請求項1から3のいずれかに記載のポリウレタンウレア弾性繊維。
【請求項5】
ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し分子鎖の両末端がアミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aと、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩であるポリウレタンウレア重合体Bと、を含む紡糸溶液を乾式紡糸するポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法。
【請求項6】
ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し分子鎖の両末端がアミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aを含有する紡糸原液aを調製し、
該紡糸原液aに分子量96以上300以下のスルホン酸化合物を添加して反応させることにより、該紡糸原液aに含まれる前記ポリウレタンウレア重合体のAの一部をポリウレタンウレア重合体Bとすることで前記紡糸溶液を得る
請求項5に記載のポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法。
【請求項7】
ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し分子鎖の末端がアミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aを含有する紡糸原液aを調製し、
前記紡糸原液aの一部を分割し、その一方に、分子量96以上300のスルホン酸化合物を添加して反応させることにより、ポリウレタンウレアBを生成させた紡糸原液bを調製し、
前記紡糸原液aと紡糸原液bを混合して得た紡糸溶液を乾式紡糸する請求項5に記載のポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンウレア弾性繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維は、鎖伸張剤に主としてジオールが用いられるポリウレタンウレタン弾性繊維と、鎖伸張剤に主としてジアミンが用いられるポリウレタンウレア弾性繊維に大別される。
【0003】
前者は高強度、高伸度を有することを特徴としている。例えば、特許文献1には、糸物性が経時変化しにくいポリウレタンウレタン弾性繊維の例が示されている。
【0004】
一方、後者は高伸度を有しているが、強度については前者対比劣っており、また、糸物性が経時変化しやすいことから、在庫管理や該繊維の加工条件管理に課題があり、安定した生地物性や生地品質の布帛を得ることが困難であった。すなわち、従来の特性を保持しつつ、高強度で糸物性が経時変化しにくいポリウレタンウレア弾性繊維よりなるポリウレタン弾性繊維は存在しなかった。
【0005】
ポリウレタンウレア弾性繊維については、例えば、特許文献2には、ポリウレタンウレア重合時における安定性について検討し、停止剤として、特定の化合物を使用するポリウレタンウレア弾性繊維の例が記載されており、ポリウレタンウレア溶液粘度の上昇が抑制されるといったことが開示されている。また、特許文献3には、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤をポリウレタン弾性繊維へ添加することにより高強伸度、高回復性、耐光性に優れたポリウレタン弾性繊維となることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-81045号公報
【文献】特開2003-155624号公報
【文献】特開2011-144491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のポリウレタンウレタン弾性繊維の特性を有しつつ、高強度で糸物性が経時変化しにくいポリウレタンウレア弾性繊維やそれを得る方法については知られていなかった。
【0008】
本発明は、ポリウレタンウレア重合体の分子鎖末端を改質することにより、高強伸度で、かつ、糸物性の経時安定性に優れたポリウレタンウレア弾性繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、そのようにして得られるポリウレタンウレア弾性繊維を用いることにより、在庫管理や該繊維の加工条件管理を容易とし、安定した生地物性や生地品質の布帛を得ることのできるポリウレタンウレア弾性繊維およびその製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するため、以下のいずれかの手段を採用する。
(1)ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の両末端が1級または2級アミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aと、
ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩であるポリウレタンウレア重合体Bと、
を含むポリウレタンウレア弾性繊維。
(2)前記ポリウレタンウレア重合体Bが、前記ポリウレタンウレア重合体Aの分子鎖の末端に存在する1級または2級アミノ基の少なくとも一方に、分子量96以上300以下のスルホン酸化合物が結合したポリウレタンウレア重合体である前記(1)に記載のポリウレタンウレア弾性繊維。
(3)ポリウレタンウレア弾性繊維1kg中における前記スルホン酸アミン塩の含有量の合計が0.01mmol以上50mmol以下である前記(1)または(2)に記載のポリウレタンウレア弾性繊維。
(4)さらに、分子構造中に3級アミンを有するポリウレタン重合体Cを含有し、かつ、該ポリウレタン重合体Cの含有量が0.1重量%以上10重量%以下である前記(1)から(3)のいずれかに記載のポリウレタンウレア弾性繊維。
(5)ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し分子鎖の両末端がアミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aと、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩であるポリウレタンウレア重合体Bと、を含む紡糸溶液を乾式紡糸するポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法。
(6)ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し分子鎖の両末端がアミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aを含有する紡糸原液aを調製し、
該紡糸原液aに分子量96以上300以下のスルホン酸化合物を添加して反応させることにより、該紡糸原液aに含まれる前記ポリウレタンウレア重合体のAの一部をポリウレタンウレア重合体Bとすることで前記紡糸溶液を得る前記(5)に記載のポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法。
(7)ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し分子鎖の末端がアミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aを含有する紡糸原液aを調製し、
前記紡糸原液aの一部を分割し、その一方に、分子量96以上300のスルホン酸化合物を添加して反応させることにより、ポリウレタンウレアBを生成させた紡糸原液bを調製し、
前記紡糸原液aと紡糸原液bを混合して得た紡糸溶液を乾式紡糸する前記(5)に記載のポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、高引張強度・低残留歪率を有するものであるので、この弾性繊維を使用した衣服などは、脱着性、フィット性、着用感などに優れたものとなる。また、この弾性繊維は機械物性の経時安定性に優れているので、この繊維を単独又は他の繊維と組み合わせて高次加工する場合、カバーリングや編成や織機などの工程通過性において優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の本発明について、さらに詳細を述べる。
【0012】
まず、本発明で使用されるポリウレタンウレアについて述べる。
【0013】
以下においては、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の両末端が1級または2級アミノ基であるポリウレタンウレア重合体を「ポリウレタンウレア重合体A」と称し、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を有し、分子鎖の少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩である重合体を「ポリウレタンウレア重合体B」と称する。
【0014】
ポリウレタンウレア重合体Bは、片末端のみがスルホン酸アミン塩であるものと、両末端共にスルホン酸アミン塩であるものとが含まれる。片末端のみがスルホン酸アミン塩であるものについては、もう一方の末端は1級または2級アミノ基である。このような、ポリウレタンウレア重合体Bは、例えば、ポリウレタンウレア重合体Aの少なくとも一方の末端にスルホン酸化合物を反応させて塩を形成させることで得ることができるが、製法はこれに限定されない。
【0015】
また、ポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bとを総称する場合には、単に「ポリウレタンウレア重合体」と記し、ポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bとを含むポリウレタンウレア重合体の混合物を指す場合には、「ポリウレタンウレア重合体混合物」と記すこととする。
【0016】
ポリウレタンウレア重合体Aやポリウレタンウレア重合体Bを含有したポリウレタンウレア重合体混合物を得る方法は任意の方法でよく、特に限定されるものではない。例えば、ポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bを個々に調製し、これら2つを混合してポリウレタンウレア重合体混合物を得ることができる。また他の方法として、過剰量のポリウレタンウレア重合体Aに対して、スルホン酸化合物を反応させることにより、ポリウレタンウレア重合体Bの生成量を調節することにより、ポリウレタンウレア重合体Aを残存させ、ポリウレタンウレア重合体混合物を得ることもできる。
【0017】
本発明に使用されるポリウレタンウレア重合体A、および、ポリウレタンウレア重合体Bは、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない(先述の通り、ポリウレタンウレア重合体A、および、ポリウレタンウレア重合体Bを、単に「ポリウレタンウレア重合体」と記す場合もある)。ここで、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とするとは、得られるポリウレタン重合体がそれぞれの成分に由来する構造を有することを表す。すなわち、本明細書においてポリマージオールとジイソシアネートと有機アミンとを出発物質として得られるポリウレタン重合体の構造を特定するものであって、異なる原料から同等の構造が形成されたものであってもよく、原料自体を特定するものではない。同様に、同原料にて合成する場合であっても、その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンとからなるポリウレタンウレア重合体であってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレア重合体であってもよい。出発物質の異なる2種以上のポリウレタンウレア重合体が任意の割合で混合されていてもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグリコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0018】
ここで、本発明におけるポリウレタンウレア重合体を構成する代表的な構造単位について述べる。
【0019】
ポリウレタンウレア重合体を構成する構造単位を与えるポリマージオールとしては、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0020】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3-メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M-PTMGと略する)、THFおよび2,3-ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報等に開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0021】
また、耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61-26612号公報等に開示されている側鎖を有するポリエステルポリオール等のポリエステル系ジオールや、特公平2-289516号公報等に開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0022】
こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0023】
ポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性等を得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性繊維を容易に得ることができる。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0024】
次にジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5-ナフタレンジイソシアネート等が好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタンウレア弾性繊維の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
次に、上記したようなポリマージオールとジイソシアネートからポリウレタンウレア重合体を合成するにあたって用いられる鎖伸長剤としては、アミノ基の数が2以上の低分子量アミンのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。特に好ましくは、アミノ基の数が2の低分子量ジアミンである。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
【0026】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p,p’-メチレンジアニリン、1,3-シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)フォスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
【0027】
さらに、ポリウレタンウレア重合体には、次の化合物が1種または2種以上混合添加されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン等のモノアミン等が好ましい。
【0028】
本発明に用いられるポリウレタンウレア重合体の分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0029】
本発明は、以上のような基本構成を有し分子鎖の両末端が1級または2級アミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aと、以上のような基本構成を有し分子鎖の少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩であるポリウレタンウレア重合体Bとを含むポリウレタンウレア弾性繊維である。このように、分子鎖の両末端が1級または2級アミノ基であるポリウレタンウレア重合体Aと、分子鎖の少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩であるポリウレタンウレア重合体Bとを、ポリウレタンウレア弾性繊維に含有させることで、ポリウレタンウレア弾性繊維が元来有している伸縮性を阻害することなく、高強度とすることが可能となり、それと同時に糸物性の経時安定性に優れたポリウレタンウレア弾性繊維とすることが可能となる。
【0030】
なお、少なくとも一方の末端がスルホン酸アミン塩であるポリウレタンウレア重合体Bは、ポリウレタンウレア重合体Aの分子鎖の末端に存在する1級または2級アミノ基の少なくとも一方に、スルホン酸化合物を反応させることにより得ることが好ましい。
【0031】
ポリウレタンウレア重合体Bとしては、少なくとも一方の末端が下式(1)で表されるものが例示される。
【0032】
【0033】
(式中、「~」は、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を表し、R1、R2は互いに独立にH、任意の置換基のいずれかを表す。R3は任意の置換基を表す。)
一例を挙げて具体的に説明すると、1級アミノ基末端を有するポリウレタンウレア重合体Aに対し、前記アミノ基のカウンターアニオンとしてp-トルエンスルホン酸一水和物(以下、PTSAと略す)を用いることにより、得られるポリウレタンウレア重合体Bとして下式(2)のものを示すことができる。
【0034】
【0035】
(式中、「~」は、ポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを出発物質とする分子鎖を表す。)
本発明において、分子鎖の両末端が1級または2級アミノ基であるポリウレタンウレア重合体の末端をスルホン酸アミン塩とするために用いられる化合物としては、スルホン酸化合物であることが好ましい。本発明におけるスルホン酸化合物とは、スルホン酸基を有する化合物を表し、該スルホン酸基のHが解離状態にあってもよく、また、スルホン酸化合物が水和物であってもよい。
【0036】
前記スルホン酸化合物は、分子鎖の両末端が1級または2級アミノ基であるポリウレタンウレア重合体の末端への立体選択性およびポリウレタンウレア重合体の分子鎖との立体障害の最適化という観点から、分子量96以上300以下であることが好ましい。より好ましくは分子量96以上200以下である。
【0037】
前記スルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、デカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸、シクロヘキシルスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、モノクロロベンゼンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、ビニルスルホン酸、ドデセンスルホン酸、テトラデセンスルホン酸、ヘキサデセンスルホン酸等の不飽和脂肪族スルホン酸等が挙げられる。分子内にアニオン性基であるスルホン酸と、カチオン性基であるアンモニウム塩を共に有するスルホベタイン類であってもよい。また、これらのスルホン酸化合物はポリウレタンウレア弾性繊維の糸物性を従来水準より下げない範囲であれば任意の置換基を有していてもよいし、これらを単独ないし2種以上を用いてもよい。特に好ましいスルホン酸としては、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸である。
【0038】
また、本発明において、ポリウレタンウレア重合体Bの収率向上という観点から、スルホン酸アミン塩を形成する前のポリウレタンウレア重合体が、分子鎖末端として1級または2級アミノ基末端を有することが好ましく、1級アミノ基末端であることがより好ましい。
【0039】
上記のようなポリウレタンウレア重合体Bに含まれるスルホン酸アミン塩の含有量は、ポリウレタンウレア弾性繊維1kg中に0.01mmol以上50mmol以下の範囲であることが好ましい。スルホン酸アミン塩の含有量がポリウレタンウレア弾性繊維1kg中0.01mmol以上であれば、ポリウレタンウレア弾性繊維の強度を向上させるのに、十分な濃度のスルホン酸アミン塩が存在することになる。ポリウレタンウレア弾性繊維として、より良好な伸縮特性が得られるという観点からは、スルホン酸アミン塩の含有量がポリウレタンウレア弾性繊維1kg中0.05mmol以上25mmol以下の範囲が好ましい。なお、かかるスルホン酸アミン塩の含有量は、ポリウレタンウレア弾性繊維について1H-NMR、元素分析、イオンクロマトグラフ等の種々の分析法にて同定および定量することができる。
【0040】
さらに、本発明において、紡糸原液よりポリウレタンウレア弾性繊維を得るにあたり、良好な紡糸性でかつ、最終的に得られるポリウレタンウレア弾性繊維の伸縮特性および糸物性の経時安定性を両立させるという観点から、分子構造中に3級アミンを有するポリウレタン重合体Cがポリウレタンウレア弾性繊維に含有されていることが好ましい。
【0041】
分子構造中に3級アミンを有するポリウレタンとしては、第3級窒素含有ジオールおよび/または第3級窒素含有ジアミン並びにジイソシアネートを含有するポリウレタンおよび/またはポリウレタンウレア重合体を添加することが挙げられる。さらには、これらの重合体等にN,N-ジアルキルセミカルバジド末端基を持たせた重合体を添加することも挙げられる。第3級窒素を主鎖に有し、かつ末端にN,N-ジアルキルセミカルバジドを有する化合物は低濃度のN,N-ジアルキルセミカルバジドであっても染色時における高耐熱性を発揮することができ、未配合の場合より高強伸度なものにできる。
【0042】
前記第3級窒素含有ジオールの好ましい具体的としては、例えば、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジプロパノールアミン、N-メチル-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-ブチル-N,N-ジエタノールアミン、N-t-ブチル-N,N-ジエタノールアミン、N-オクタデカン-N,N-ジエタノールアミン、N-ベンジル-N,N-ジエタノールアミン、N-t-ブチル-N,N-ジイソプロパノールアミン等、およびビスヒドロキシエチルピペラジン、ビスヒドロキシイソプロピルピペラジン等のピペラジン誘導体等も使用することができる。この中で特に好ましいのはN-t-ブチル-N,N-ジエタノールアミンまたはN-ベンジル-N,N-ジエタノールアミン等である。
【0043】
前記第3級窒素含有ジアミンの好ましい具体的としては、例えば、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、N-ブチル-アミノビス-プロピルアミン、N-メチル-アミノビス-エチルアミン、N-t-ブチル-アミノビス-プロピルアミン、ピペラジン-N,N’-ビス(3-アミノプロピル)およびピペラジン-N,N’-ビス(2-アミノエチル)等を使用することができる。この中で特に好ましいのは、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン)またはピペラジン-N,N’-ビス(3-アミノプロピル)等である。
【0044】
前述の第3級窒素含有ジオールおよび/または第3級窒素含有ジアミン並びにジイソシアネートを含有するポリウレタンおよび/またはポリウレタンウレア重合体におけるジイソシアネートの好ましい具体的としては、例えば、メチレン-ビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、およびダイマー酸から誘導されるDDI等の脂肪族ジイソシアネート等を使用することができる。この中で特に好ましいのは、メチレン-ビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)またはイソホロンジイソシアネート等である。
【0045】
そして、ポリウレタンまたはポリウレタンウレア重合体の末端基はセミカルバジド基を形成せしめたものも好ましい。ジイソシアネートと反応して末端セミカルバジド基とする場合は、置換ヒドラジン等が用いられるのが好ましい。置換ヒドラジンの好ましい具体的としては、例えば、N,N-ジメチルヒドラジン、N,N-ジエチルヒドラジン、N,N-ジプロピルヒドラジン、N,N-ジイソプロピルヒドラジン、N,N-ジブチルヒドラジン、N,N-ジイソブチルヒドラジン、N,N-ジヒドロキシエチルヒドラジン、およびN,N-ジヒドロキシイソプロピルヒドラジン等を使用することができる。この中で特に好ましいのは、N,N-ジメチルヒドラジンおよびN,N-ジヒドロキシエチルヒドラジン等である。
【0046】
前述の第3級窒素含有ジオールおよび/または第3級窒素含有ジアミン並びにジイソシアネートを含有するポリウレタンおよび/またはポリウレタンウレア重合体として特に好ましいのは、N-t-ブチル-N,N-ジエタノールアミンとメチレン-ビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)の反応によって生成せしめたポリウレタンまたはN-t-ブチル-N,N-ジエタノールアミン、メチレン-ビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)の反応によって生成せしめたポリウレタンにN,N-ジメチルヒドラジンを末端に反応させたポリウレタン、およびN-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン)とメチレン-ビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)の反応によって生成せしめたポリウレア等である。N-t-ブチル-N,N-ジエタノールアミンとメチレン-ビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)との反応比率は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、約1:1.05の反応によって生成せしめたものが好ましく、この場合の交互共重合体のウレタン基濃度とウレア基濃度の総計は約5.1mol/kgである。
【0047】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維には、各種安定剤や顔料等が含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤等にBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA-80等のヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P-16等のリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタン等の各種顔料、ハイドロタルサイト類化合物、フンタイト、ハイドロマグネサイト、トルマリン等の鉱物、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物等を含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油等の滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系等の各種の帯電防止剤等が含まれることも好ましく、またこれらがポリマーと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素等への耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN-150等の酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA-80等の熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622等の光安定剤が使用されることも好ましい。また、これら各種安定剤や顔料を配合する場合には、その糸中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはこれらの混合物で表面処理された無機薬品を用いることも好ましい。
【0048】
次に本発明のポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0049】
本発明においては、出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートおよび有機アミンを用い、それらから得られるポリウレタンウレア重合体Aと上記したポリウレタンウレア重合体Bとを含む紡糸原液を乾式紡糸する。
【0050】
ポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bとを含む紡糸原液を調製する方法としては、任意の方法でよい。
【0051】
例えば、ポリウレタンウレア重合体Aを含有する紡糸原液aと、ポリウレタンウレア重合体Bを含有する紡糸原液bとを、個別に調製し、これら2つを混合して紡糸溶液を得る方法でもよい。かかる方法で、紡糸溶液を得る場合、ポリウレタンウレア重合体Aを含有する紡糸原液aの一部を分割し、その一方に、分子量96以上300のスルホン酸化合物を添加して反応させることにより、ポリウレタンウレアBを生成させた紡糸原液bを調製してもよい。
【0052】
また他の方法として、ポリウレタンウレア重合体Aを含有する紡糸原液aを調製し、該紡糸原液aに分子量96以上300以下のスルホン酸化合物を添加して反応させることにより、該紡糸原液aに含まれるポリウレタンウレア重合体のAの一部をポリウレタンウレア重合体Bとすることで、ポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bとを含有する紡糸溶液を得る方法でもよい。
【0053】
なお、かかる方法でポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bとを含有する紡糸溶液を得る方法として、(i)ポリウレタンウレア重合体Aの分子鎖末端に存在する1級または2級アミノ基に対し、不足当量のスルホン酸化合物を添加し反応を完結させることにより、ポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bが混在するポリウレタンウレア重合体を含有する紡糸溶液を得る方法、(ii)スルホン酸化合物を添加し反応を完結させないことにより、ポリウレタンウレア重合体Aとポリウレタンウレア重合体Bが混在するポリウレタンウレア重合体を含有する紡糸溶液を得る方法でもよい。なお、(ii)の場合には紡糸溶液に一部未反応のスルホン酸化合物が残存してもかまわない。
【0054】
また、溶液の溶質であるポリウレタンウレア重合体の製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンウレア重合体にゲル等の異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタンウレア弾性繊維を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0055】
そして本発明に特に好適なポリウレタンウレア重合体としては、ポリマージオールとして数平均分子量が1800以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
【0056】
ポリウレタンウレア重合体は、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMP等やこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンウレア重合体とする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンウレア重合体とする方法等が、特に好適な方法として採用され得る。
【0057】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0058】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0059】
アミン系触媒としては、例えば、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ビス-2-ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’-ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-ジメチルアミノエチル-ピペラジン、N-(2-ジメチルアミノエチル)モルホリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0060】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0061】
こうして得られるポリウレタンウレア重合体溶液におけるポリウレタンウレア重合体の濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0062】
本発明においては、かかるポリウレタンウレア重合体A溶液にスルホン酸化合物を添加することにより、ポリウレタンウレア重合体Bを含有するポリウレタンウレア重合体溶液を得る。スルホン酸化合物をポリウレタンウレア重合体A溶液へ添加する場合、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、撹拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法等各種の手段が採用できる。
【0063】
次に、上記スルホン酸化合物が添加されたポリウレタンウレア重合体溶液に任意の反応条件を採用することができる。反応条件としては、例えば、温度や時間や触媒の有無が挙げられるが、スルホン酸化合物とポリウレタンウレア重合体Aの末端アミノ基の反応性に依存することから、これらは特に限定されるものではない。すなわち、紡糸前に10~40℃でポリウレタンウレア重合体Aとスルホン酸化合物を0.5~2時間撹拌することにより、ポリウレタンウレア重合体Bを得て、それを紡糸してポリウレタンウレア弾性繊維を得てもよい。紡糸前にポリウレタンウレア重合体Aとスルホン酸化合物を混合し、ポリウレタンウレア重合体Aとスルホン酸化合物が未反応の状態で、100~300℃、10秒の紡糸条件下において、反応紡糸によってポリウレタンウレア重合体Bが生成したポリウレタンウレア弾性繊維を得てもよい。
【0064】
なお、紡糸条件に応じ、ポリウレタンウレア重合体溶液の紡糸に適した粘度に制御する観点から、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン等のモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノール等のモノオール等が1種または2種以上混合することも好ましく行われる。
【0065】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明における基本的な繊維を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0066】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維の繊度、断面形状等は特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0067】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0068】
たとえば、本発明のポリウレタンウレア弾性繊維の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタンウレア弾性繊維を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。また、紡糸速度は、得られるポリウレタンウレア弾性繊維の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
【実施例】
【0069】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
<ポリウレタンウレア重合体Aの調製方法>
分子量1800のPTMG、MDIおよび鎖伸長剤としてエチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体AのDMAc溶液(濃度35質量%)を常法により調製し、これをa1とした。
【0071】
分子量3500の3M-PTMG、MDIおよび鎖伸長剤としてエチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体AのDMAc溶液(濃度35質量%)を常法により調製し、これをa2とした。
【0072】
<ポリウレタンウレア重合体Bの調製方法>
ポリウレタンウレア重合体AのDMAc溶液(濃度35質量%)90~99重量%に対し、スルホン酸化合物のDMAc溶液(濃度35質量%)1~10重量%を加え、均一に混合した。窒素雰囲気下20~40℃で0.5~2時間混合を続けることによって、ポリウレタンウレア重合体Aのアミン末端がスルホン酸アミン塩化したポリウレタンウレア重合体Bと、ポリウレタンウレア構造を有さないスルホン酸アミン塩との混合物のDMAc溶液(濃度35質量%)m1を得た。前述m1におけるポリウレタンウレア構造を有さないスルホン酸アミン塩とは、ポリウレタンウレア重合体A製造過程の残留モノマーである低分子アミンがスルホン酸アミン塩化した化合物であった。
【0073】
前述m1をヘキサン抽出およびトルエン洗浄を繰り返すことにより、ポリウレタンウレア構造を有さないスルホン酸アミン塩を除去し、ポリウレタンウレア重合体Bの固形物を得た。ポリウレタンウレア重合体Bの固形物をDMAcに溶解させ、ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液(濃度35質量%)を調製し、これをb1とした。
【0074】
<分子構造中に3級アミンを有するポリウレタンの調製方法>
t-ブチルジエタノールアミンとメチレン-ビス-(4-シクロヘキシルイソシアネ-ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)のDMAc溶液(濃度35質量%)を調製し、これをt1とした。
【0075】
<ポリウレタンウレア弾性繊維1kg中のスルホン酸アミン塩の含有量>
ポリウレタンウレア弾性繊維1kg中におけるスルホン酸アミン塩の含有量については、1H-NMRによるスルホン酸アミン塩の構造同定の後、イオンクロマトグラフによりポリウレタンウレア重合体中に含有されるスルホン酸アミン塩画分の比により算出した。
【0076】
<評価方法>
[1]弾性繊維の特性
弾性繊維の特性として、基本特性および経時安定性を測定するにあたり、インストロン4502型引張試験機を用い、以下の条件で試料糸の引張テストを実施した。
【0077】
すなわち、5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰り返し、5回目の300%伸長時の応力を(G1)とした。次に、試料の長さを300%伸長のまま30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に試料の伸長を回復せしめ応力が0になった際に試料の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料が切断されるまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料長さを(L3)とした。また、前述の5回目の30秒間保持後の回復時における歪みと応力をプロットして曲線を描き、200%歪み時の応力を(P-200)として、所定の繊度(22dtex)の伸縮特性における実使用領域の強度を(G4)として算出した。
【0078】
測定回数はn=3で測定し、それらの平均値を採用して、前記特性を算出した。(1)弾性繊維の基本特性
弾性繊維の基本特性として、破断強度、破断伸度、永久歪率を測定した。以下、上記特性は下式により算出される。
・破断強度(cN)=(G3)
・破断伸度(%)=100×((L3)―(L1))/(L1)
・永久歪率(%)=100×((L2)-(L1))/(L1)
(2)弾性繊維の経時変化安定性
弾性繊維の経時安定性として、実使用領域強度経時変化比、永久歪率経時変化比を測定した。なお、紡糸により試験糸を採取した日を0日とし、温度21℃、湿度60%で保管の後、1日後および3ヵ月後の試験糸の物性を測定することにより、上記特性を下式により算出した。
・実使用領域強度経時変化比(%)=[(紡糸3ヶ月後の糸の実使用領域強度)/(紡糸1日後の糸の実使用領域強度)]×100
・永久歪率経時変化比(%)=[(紡糸3ヶ月後の糸の永久歪率)/(紡糸1日後の糸の永久歪率)]×100
このとき、実使用領域強度は下式より算出される。
・実使用領域強度(cN)=(G4)
さらに、ポリウレタンウレア弾性繊維の下記特性値が紡糸1日後と紡糸3ヵ月後とで差が小さいものほど経時変化安定性が優れているものと判定した。すなわち、実使用領域強度経時変化比、永久歪率経時変化比について、それぞれ90%以上120%未満を経時安定性が特に優れているとして◎と判定し、85%以上90%未満または120%以上125%未満を経時安定性が優れているとして○判定とし、85%未満または125%以上を経時安定性に課題が残るものとして×と判定した。
【0079】
[2]弾性繊維の紡糸性
紡糸を連続して48時間行い、その時の糸切れ回数を紡糸性判定の指標とした。すなわち、48時間の連続紡糸において、糸切れ回数が2回未満を◎と判定した。48時間中、糸切れ回数が2回以上でかつ24時間中の糸切れ回数が2回未満を○と判定した。
【0080】
[実施例1]
<ポリウレタンウレア重合体Aの調製方法>に記載の方法で、ポリウレタンウレア重合体AのDMAc溶液としてa1を調製した。
【0081】
<ポリウレタンウレア重合体Bの調製方法>に記載の方法に従い、次の手順でポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるb1として1b1を調製した。
・スルホン酸化合物としてPTSAを用い、スルホン酸化合物のDMAc溶液としてs1を調製した。
・a1とs1よりなる1b1を調製した。1b1の調製に際しては、a1を99重量%に対し、s1を1重量%添加し、均一に混合後、25℃、1時間混合した。1b1にはポリウレタンウレア構造を有するスルホン酸アミン塩がポリウレタンウレア重合体1kgあたり1.0mmol含まれていた。
【0082】
その他の展開剤として分子構造中に3級アミンを有するポリウレタン重合体の溶液としてt1を調製した。
【0083】
各溶液a1、1b1、t1をそれぞれ98.98重量%、0.02重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0084】
[実施例2]
各溶液a1、1b1、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0085】
[実施例3]
各溶液a1、1b1、t1をそれぞれ96.0重量%、3.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0086】
[実施例4]
各溶液a1、1b1、t1をそれぞれ79.0重量%、20.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0087】
[実施例5]
各溶液a1、1b1、t1をそれぞれ59.0重量%、40.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0088】
[実施例6]
各溶液a1、1b1、t1をそれぞれ39.0重量%、60.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0089】
[実施例7]
実施例1の方法に準拠し、s1の代わりとして、2-モルホリノエタンスルホン酸を用いてスルホン酸化合物のDMAc溶液としてs2を調製した。ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるb1として、a1とs2よりなる1b2を調製した。1b2にはポリウレタンウレア構造を有するスルホン酸アミン塩がポリウレタンウレア重合体1kgあたり1.0mmol含まれていた。
【0090】
各溶液a1、1b2、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0091】
[実施例8]
実施例1の方法に準拠し、s1の代わりとして、メタンスルホン酸を用いてスルホン酸化合物のDMAc溶液としてs3を調製した。ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるb1として、a1とs3よりなる1b3を調製した。1b3にはポリウレタンウレア構造を有するスルホン酸アミン塩がポリウレタンウレア重合体1kgあたり1.0mmol含まれていた。
【0092】
各溶液a1、1b3、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0093】
[実施例9]
実施例1の方法に準拠し、s1の代わりとして2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸一水和物を用い、スルホン酸化合物のDMAc溶液としてs4を調製した。ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるb1として、a1とs4よりなる1b4を調製した。1b4にはポリウレタンウレア構造を有するスルホン酸アミン塩がポリウレタンウレア重合体1kgあたり1.0mmol含まれていた。
【0094】
各溶液a1、1b4、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0095】
[実施例10]
実施例1の方法に準拠し、s1の代わりとして3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を用い、スルホン酸化合物のDMAc溶液としてs5を調製した。ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるb1として、a1とs5よりなる1b5を調製した。1b5にはポリウレタンウレア構造を有するスルホン酸アミン塩がポリウレタンウレア重合体1kgあたり1.0mmol含まれていた。
【0096】
各溶液a1、1b5、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0097】
[実施例11]
実施例1の方法に準拠し、s1の代わりとして3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸を用い、スルホン酸化合物のDMAc溶液としてs6を調製した。ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるb1として、a1とs6よりなる1b6を調製した。1b6にはポリウレタンウレア構造を有するスルホン酸アミン塩がポリウレタンウレア重合体1kgあたり1.0mmol含まれていた。
【0098】
各溶液a1、1b6、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0099】
[実施例12]
各溶液a1、1b6、t1をそれぞれ59.0重量%、40.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0100】
[実施例13]
各溶液a1、1b4、t1をそれぞれ39.0重量%、60.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0101】
[実施例14]
各溶液a1、1b3、t1をそれぞれ79.0重量%、20.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0102】
[実施例15]
ポリウレタンウレア重合体AのDMAc溶液としてa2を調製した。ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるb1として、a2とs1よりなる2b1を調製した。2b1の調製に際しては、a2を98重量%に対し、s1を2重量%添加し、均一に混合後、30℃、1時間混合した。2b1にはポリウレタンウレア構造を有するスルホン酸アミン塩がポリウレタンウレア重合体1kgあたり1.0mmol含まれていた。
【0103】
各溶液a2、2b1、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0104】
[実施例16]
各溶液a2、2b1、t1をそれぞれ79.0重量%、20.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0105】
[実施例17]
ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるm1として、a1とs1よりなる1m1を調製した。1m1の調製に際しては、a1を92重量%に対し、s1を8重量%添加し、均一に混合後、37℃、0.5時間混合した。
【0106】
各溶液a1、1m1、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。なお、ポリウレタンウレア弾性繊維中におけるポリウレタン構造を有さないスルホン酸アミン塩として、PTSAとジエチルアミンからなるスルホン酸アミン塩を含む化合物を10mmol/kg検出した。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0107】
[実施例18]
ポリウレタンウレア重合体BのDMAc溶液であるm1として、a1とs1よりなる1m2を調製した。1m1の調製に際しては、a1を96重量%に対し、s1を4重量%添加し、均一に混合後、20℃、2時間混合した。
【0108】
各溶液a1、1m1、t1をそれぞれ79.0重量%、20.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。なお、ポリウレタンウレア弾性繊維中におけるポリウレタン構造を有さないスルホン酸アミン塩として、PTSAとジエチルアミンからなるスルホン酸アミン塩を含む化合物を10mmol/kg検出した。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0109】
[実施例19]
各溶液a1、1b1をそれぞれ99.9重量%、0.1重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0110】
[実施例20]
各溶液a1、1b1をそれぞれ80.0重量%、20.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0111】
[比較例1]
各溶液a1、t1をそれぞれ99.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0112】
[比較例2]
各溶液a2、t1をそれぞれ99.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0113】
[比較例3]
ポリウレタンウレア構造を有さないスルホン酸アミン塩系添加剤Dとして三洋化成(株)社製の“ネオジャーミDFS”(ジデシルジメチルアンモニウム3フッ化メチルスルホン酸塩)を用い、スルホン酸アミン塩のDMAc溶液(濃度35質量%)としてd1を調製した。
【0114】
各溶液a1、d1、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0115】
[比較例4]
各溶液a1、d1、t1をそれぞれ79.0重量%、20.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0116】
[比較例5]
各溶液a1、s1、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合した後、直ちに実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。なお、ポリウレタンウレア弾性繊維中においてポリウレタンウレア重合体Bは検出されなかった。一方、ポリウレタン構造を有さないスルホン酸アミン塩として、PTSAとジエチルアミンおよびエチレンジアミンからなるスルホン酸アミン塩を含む化合物を0.1mmol/kg検出した。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0117】
[比較例6]
各溶液a1、s4、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合した後、直ちに実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。なお、ポリウレタンウレア弾性繊維中においてポリウレタンウレア重合体Bは検出されなかった。一方、ポリウレタン構造を有さないスルホン酸アミン塩として、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸とジエチルアミンおよびエチレンジアミンからなるスルホン酸アミン塩を含む化合物を0.1mmol/kg検出した。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。
【0118】
[比較例7]
スルホン酸化合物の代わりにスルホン酸重合体としてフェノールスルホン酸のホルムアルデヒド縮重合体(数平均分子量約20000)を用い、DMAc溶液(35質量%)のsp1を調製した。
【0119】
各溶液a1、sp1、t1をそれぞれ98.9重量%、0.1重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸原液とし、実施例1の方法に従い、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。ポリウレタンウレア弾性繊維の組成を表1、各種特性を表2に示す。なお、ポリウレタンウレア弾性繊維中においてスルホン酸アミン塩は検出されなかった。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、高引張強度・低残留歪率を有するものであるので、この弾性繊維を使用した衣服などは、脱着性、フィット性、着用感などに優れたものとなる。また、この弾性繊維は機械物性の経時安定性に優れているので、この繊維を単独又は他の繊維と組み合わせて高次加工する場合、カバーリングや編成や織機などの工程通過性において優れたものとなる。
【0127】
また、本発明によれば、ポリウレタンウレア弾性繊維はこれらの優れた特性を有することから、単独での使用はもとより、各種繊維との組合せにより、優れたストレッチ布帛を得ることが可能で、編成、織成、紐加工に好適である。その使用可能な具体的用途として、ソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、洋服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋や靴下をはじめとする各種繊維製品の締め付け材料、紙おしめなどサニタニー品の漏れ防止用締め付け材料、防水資材の締め付け材料、似せ餌、造花、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケットなどが挙げられ、これら種々の用途に展開可能である。