(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ロボット掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 7/02 20060101AFI20240402BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A47L7/02
A47L9/28 L
A47L9/28 E
(21)【出願番号】P 2020194224
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武富 篤
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】城内 猛
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034138(JP,A)
【文献】特開2019-103816(JP,A)
【文献】特表2015-536489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0280147(US,A1)
【文献】特表2017-533810(JP,A)
【文献】特開2019-216831(JP,A)
【文献】特開2019-034130(JP,A)
【文献】特開2015-112439(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0103836(KR,A)
【文献】特開2002-085305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 7/02
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走しつつ床面を掃除するロボット掃除機本体と、
前記ロボット掃除機本体と通信可能に構成され、前記ロボット掃除機本体で掃除を行う掃除領域を設定可能な端末装置と、を備え、
前記ロボット掃除機本体は、前記床面に紫外光を照射する発光ダイオードからなる光源を有し、
前記端末装置は、
前記掃除領域の設定後に、前記掃除領域内で、前記光源による紫外光の照射を行う照射領域と、前記光源による紫外光の照射を行わない非照射領域とを設定可能に構成されると共に、前記照射領域内での紫外光の照射強度を設定可能に構成され、
前記ロボット掃除機本体は、前記端末装置での設定に応じて、前記照射領域のみで、設定された照射強度で前記光源による紫外光の照射を行うよう前記光源を制御する光源制御部を有する、
ロボット掃除機。
【請求項2】
前記ロボット掃除機本体は、掃除対象となる前記床面のマッピングを行い、取得した床面マップを前記端末装置に送信するマップ取得部を有し、
前記端末装置は、表示器を有し、前記表示器に前記マップ取得部より受信した前記床面マップを表示し、前記床面マップ上で前記掃除領域、前記照射領域、前記照射強度、及び前記非照射領域を設定可能に構成されている、
請求項1に記載のロボット掃除機。
【請求項3】
前記端末装置は、前記照射領域の前記床面の材質を設定可能に構成されており、設定された前記床面の材質に応じて、紫外光の照射強度を設定可能に構成されている、
請求項2に記載のロボット掃除機。
【請求項4】
前記ロボット掃除機本体は、掃除対象となる前記床面の汚染状況を検知する汚染状況検知部を有し、
前記マップ取得部は、取得した床面マップを、前記汚染状況検知部で検知した汚染状況と関連づけて前記端末装置に送信するように構成され、
前記端末装置は、前記照射領域の汚染状況に応じて、紫外光の照射強度を設定可能に構成されている、
請求項2または3に記載のロボット掃除機。
【請求項5】
前記床面マップは、前記照射領域における紫外光の累積照射量を含み、前記床面マップ上に前記累積照射量を表示可能に構成されている、
請求項2乃至4の何れか1項に記載のロボット掃除機。
【請求項6】
前記端末装置は、前記床面マップ上に表示される前記累積照射量に応じて、前記照射強度の設定値入力を制限する又は前記照射強度の設定値に対する警告を行う、
請求項
5に記載のロボット掃除機。
【請求項7】
前記光源が、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を発する発光ダイオードからなる、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のロボット掃除機。
【請求項8】
前記床面の材質毎に、前記床面の汚染状況に応じて段階的に照射強度が設定されている、
請求項3に記載のロボット掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット掃除機及び床面除菌ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自走して室内の清掃を行うロボット掃除機が知られている。特許文献1では、ロボット掃除機の本体の底面に設けられた紫外線ランプ(紫外線殺菌燈)から床面に紫外光を照射することで、床面を殺菌可能としたロボット掃除機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボット掃除機の掃除対象となる床面が紫外光に対する耐性の低い材質からなる場合、紫外光の照射により床面が劣化したり変色したりしてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、床面への紫外光の照射による床面の劣化や変色を抑制可能なロボット掃除機及び床面除菌ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、自走しつつ床面を掃除するロボット掃除機本体と、前記ロボット掃除機本体と通信可能に構成され、前記ロボット掃除機本体で掃除を行う掃除領域を設定可能な端末装置と、を備え、前記ロボット掃除機本体は、前記床面に紫外光を照射する発光ダイオードからなる光源を有し、前記端末装置は、前記掃除領域内で、前記光源による紫外光の照射を行う照射領域と、前記光源による紫外光の照射を行わない非照射領域とを設定可能に構成されると共に、前記照射領域内での紫外光の照射強度を設定可能に構成され、前記ロボット掃除機本体は、前記端末装置での設定に応じて、前記照射領域のみで、設定された照射強度で前記光源による紫外光の照射を行うよう前記光源を制御する光源制御部を有する、ロボット掃除機を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、自走しつつ床面を掃除する床面除菌ロボット本体と、前記床面除菌ロボット本体と通信可能に構成された端末装置と、を備え、前記床面除菌ロボット本体は、前記床面に紫外光を照射する発光ダイオードからなる光源を有し、前記端末装置は、前記光源による紫外光の照射を行う照射領域と、前記光源による紫外光の照射を行わない非照射領域とを設定可能に構成されると共に、前記照射領域内での紫外光の照射強度を設定可能に構成され、前記床面除菌ロボット本体は、前記端末装置での設定に応じて、前記照射領域のみで、設定された照射強度で前記光源による紫外光の照射を行うよう前記光源を制御する光源制御部を有する、床面除菌ロボットを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外光の照射による床面の劣化や変色を抑制可能なロボット掃除機及び床面除菌ロボットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係るロボット掃除機の概略構成図であり、(b)はロボット掃除機本体を底面側から見た斜視図である。
【
図3】(a)は掃除領域の設定を説明する図であり、(b)は照射領域及び非照射領域の設定を説明する図である。
【
図4】床面の材質に応じた紫外光の照射強度の設定手順の一例を示す図である。
【
図5】ロボット掃除機の使用開始時の制御フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1(a)は、本実施の形態に係るロボット掃除機の概略構成図であり、(b)はロボット掃除機本体を底面側から見た斜視図である。
図2は、ロボット掃除機の機能ブロック図である。
【0012】
図1(a),(b)及び
図2に示すように、ロボット掃除機1は、自走しつつ床面を掃除するロボット掃除機本体2と、ロボット掃除機本体2と相互に通信可能に構成され、ロボット掃除機本体2で掃除を行う掃除領域を設定可能な端末装置3と、を備えている。
【0013】
(ロボット掃除機本体2)
ロボット掃除機本体2は、カメラ21と、障害物検知センサ22と、集塵機構23と、駆動機構24と、光源25と、制御部26と、これらを収容するケース27と、本体側通信部28と、を備えている。
【0014】
カメラ21は、ロボット掃除機本体2の周囲を撮像するためのものであり、後述する床面マップの取得やロボット掃除機本体2の位置取得等に用いられる。ロボット掃除機本体2には、複数のカメラ21が搭載されていてもよく、当該複数のカメラ21でロボット掃除機本体2の周囲を撮像するように構成されていてもよい。
【0015】
障害物検知センサ22は、ロボット掃除機本体2が障害物に衝突してしまうことを抑制すべく、ロボット掃除機本体2の近くに障害物が存在しているか否かを検知するものである。障害物検知センサ22としては、例えば、赤外線センサや超音波センサ等を用いることができる。
【0016】
図示していないが、ロボット掃除機本体2は、障害物検知センサ22以外の各種センサを備えていてもよい。例えば、ロボット掃除機本体2が移動した際の回転角度を検出するジャイロセンサ、ロボット掃除機本体2が移動した距離を検出する走行センサ、ロボット掃除機本体2と床面との距離を検出し段差の検出等を行う床面距離センサ、吸い込み口27aから吸い込んだ塵等の量を検出するパーティクルセンサ等を備えていてもよい。
【0017】
集塵機構23は、床面の塵や埃を吸い込み、ロボット掃除機本体2の内部へと集める機構であり、ケース27の底面で床面に向けて開口する吸い込み口27aに回転可能に設けられた回転ブラシ23aと、回転ブラシ23aを回転駆動することで床面の汚れを掻き取るブラシ駆動部(不図示)と、吸い込み口27aから塵や埃を吸引する吸引ポンプ(不図示)と、吸い込み口27aから吸い込まれた塵や埃を貯留する集塵タンク(不図示)と、を有する。なお、集塵機構23の具体的な構成は特に限定されない。
【0018】
駆動機構24は、ロボット掃除機本体2を移動(自走)させるための機構であり、ケース27の底面に設けられた車輪24aと、車輪24aを駆動するモータと、を有する。ここでは、2つの車輪24aが、回転軸が一直線上に並ぶように対向配置されている場合を示しているが、車輪24aの数や配置については特に限定されるものではない。
【0019】
本実施の形態に係るロボット掃除機1では、ロボット掃除機本体2は、床面に紫外光を照射する光源25を有している。光源25は、床面に紫外光を照射することで、床面に存在する細菌やウィルスを不活化する役割を果たす。本実施の形態では、光源25は、紫外光を照射する発光ダイオードからなる。例えば、光源25として紫外線ランプを用いることも可能であるが、紫外線ランプの多くは水銀を用いているために破損時の安全性に問題がある。また、紫外線ランプは、細菌等の不活化に適した波長の紫外光だけでなく、赤外線をも含んだ非常に広い波長範囲の光を発するために、無駄が多く消費電力も大きくなってしまう。また、出力を大きくすると赤外線により床面が熱をもち焦げる等の不具合が生じるおそれもある。本実施の形態のように、光源25として発光ダイオードを用いることで、破損時の安全性を確保し、消費電力を抑え、かつ床面が焦げる等の不具合も抑制することが可能になる。さらに、紫外線ランプでは、紫外光の照射開始時の立ち上がりに時間がかかるが、発光ダイオードを用いることで、紫外光の照射開始時の立ち上がりに時間を短縮することも可能である。
【0020】
光源25に用いる発光ダイオードとしては、細菌等の不活化効果が高い深紫外光を発する発光ダイオードを用いることが望ましい。より具体的には、光源25に用いる発光ダイオードとしては、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を発する発光ダイオードを用いるとよい。本実施の形態では、波長280nmの深紫外光を発する発光ダイオードを光源25として用いた。
【0021】
図1(b)に示されるように、発光ダイオードからなる光源25は、ケース27の底面に床面と対向するように設けられている。また、ケース27の底面には、複数の光源25が設けられている。ここでは、ケース27の底面が略円形状に形成されているが、複数の光源25は、略円形状のケース27の底面の周縁に沿うように離間して配置されている。また、複数の光源25は、ロボット掃除機本体2の前側と後側にそれぞれ設けられている。図示の例では、ロボット掃除機本体2の前側に4つの光源25が設けられ、ロボット掃除機本体2の後側に4つの光源25が設けられている。これにより、ロボット掃除機本体2が床面の任意の位置を通過する際に、当該位置で2回紫外光の照射を受けることになり、細菌等の不活化の効率が向上する。なお、光源25の数や配置は図示のものに限定されず、例えば、光源25は、吸い込み口27aの周縁に沿うように配置されていてもよい。
【0022】
ケース27は、本実施の形態では、略円柱状に形成されている。ただし、ケース27の形状はこれに限定されない。ケース27には、壁際やコーナー部の塵等を掻き出すためのブラシ27bが設けられている。
【0023】
本体側通信部28は、端末装置3に搭載された端末側通信部34との間で相互に通信可能に構成されている。この際の通信方式は特に限定するものではないが、例えば、ブルートゥース(登録商標)を用いることができる。
【0024】
制御部26は、カメラ21や障害物検知センサ22からの情報を基に、集塵機構23、駆動機構24、及び光源25の制御を行うものであり、演算素子、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア、記憶装置等を適宜組み合わせて実現される。制御部26は、マップ取得部261、位置取得部262、汚染状況検知部263、駆動制御部264、集塵制御部265、光源制御部266、及び記憶部267を有している。
【0025】
マップ取得部261は、初回の掃除の際等にテスト走行を行い、掃除対象となる床面のマッピングを行い、床面マップを取得する。テスト走行及びマッピングの処理については様々な方法が知られており公知であるため、ここでは説明を省略する。マップ取得部261は、取得した床面マップを本体側通信部28を介して端末装置3に送信すると共に、記憶部267に記憶する。
【0026】
位置取得部262は、床面マップ内のどの位置にロボット掃除機本体2が存在するかを示す位置情報を取得する。位置取得部262は、例えば、カメラ21より得られた画像や、ジャイロセンサや走行センサ等の情報を基に、ロボット掃除機本体2の位置情報(床面マップ内での位置座標)を得る。
【0027】
汚染状況検知部263は、掃除対象となる床面の汚染状況を検知する。汚染状況検知部263は、例えば、パーティクルセンサで検出した集塵量を基に、床面の汚染状況を検知する。また、後述する駆動制御部264や集塵制御部256が、集塵量に応じて移動速度や吸引強度を可変に構成されている場合、移動速度や吸引強度を基に床面の汚染状況を検知するよう汚染状況検知部263を構成することもできる。本実施の形態では、マップ取得部261が、取得した床面マップを、汚染状況検知部263で検知した汚染状況と関連づけて端末装置3に送信するように構成されている。
【0028】
駆動制御部264は、駆動機構24の駆動制御を行うことで、ロボット掃除機本体2を走行させる。駆動制御部264は、端末装置3で設定された掃除領域内をくまなく走行するようにルート設定を行い、設定したルートに従ってロボット掃除機本体2を走行させる。また、駆動制御部264は、障害物検知センサ22等を用い、ロボット掃除機本体2が障害物等に衝突しないように駆動制御を行う。駆動制御部264は、集塵量に応じて移動速度を変更可能に構成されてもよい。例えば、集塵量が多い場合に移動速度を遅くし、集塵量が小さい場合に移動速度を早くすることで、効率良く集塵を行うことが可能になる。
【0029】
集塵制御部265は、集塵機構23の制御を行う。集塵機構23は、集塵量に応じて吸引強度を変更可能に構成されてもよい。例えば、集塵量が多い場合に吸引強度を強くし、集塵量が小さい場合に吸引強度を弱くすることで、消費電力を抑制し効率良く集塵を行うことが可能になる。
【0030】
光源制御部266は、光源25の駆動制御を行う。光源制御部266は、端末装置3で行われた照射領域、非照射領域の設定(後述する)に応じて、照射領域のみで光源25による紫外光の照射を行い、非照射領域では光源25による紫外光の照射を行わない(光源25を消灯する)ように光源25を制御する。光源制御部266は、照射領域において、光源25を連続点灯してもよいし、光源25を点滅させる(点灯と消灯とを交互に繰り返す)ようにしてもよい。光源25を点滅させることで、消費電力の抑制が図れる。
【0031】
また、光源制御部266は、端末装置3での設定に応じて、照射領域における紫外光の照射強度を制御する。詳細は後述するが、本実施の形態では、端末装置3で設定された床面の材質、及び床面の汚染状況に応じて、紫外光の照射強度を制御することになる。光源25における紫外光の照射強度は、駆動電流の大きさにより制御可能である。また、光源25を点滅する場合、点滅の時間間隔や点灯時間と点滅時間の割合により、紫外光の照射強度を制御可能である。
【0032】
記憶部267は、マップ取得部261で取得した床面マップや、汚染状況検知部263で検知した床面の汚染状況、端末装置3により設定された掃除領域、照射領域、非照射領域、紫外光の照射強度の設定、紫外光の累積照射量等を記憶する。
【0033】
(端末装置3)
端末装置3は、ロボット掃除機本体2の設定を行うためのものである。端末装置3としては、例えば、スマートフォンを用いることができる。なお、端末装置3は、スマートフォンに限らず、例えばタブレットであってもよく、専用の端末(リモコン等)であってもよい。
【0034】
端末装置3は、表示器31と、入力装置32と、設定部33と、を有している。表示器31は、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイである。入力装置32は、ロボット掃除機本体2で掃除を行う掃除領域の設定等を行うためのものである。端末装置3としてスマートフォンを用いる場合、表示器31及び入力装置32は、タッチ入力が可能なディスプレイ(タッチパネル)で構成される。端末側通信部34は、ロボット掃除機本体2の本体側通信部28と相互に通信可能に構成される。
【0035】
設定部33は、演算素子、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア(例えば、スマートフォン用のアプリケーション等)、記憶装置等を適宜組み合わせて実現される。設定部33は、掃除領域設定部331と、照射領域設定部332と、照射強度設定部333と、記憶部334と、を有している。
【0036】
掃除領域設定部331は、ロボット掃除機本体2で掃除を行う掃除領域を設定する機能を有する。
図3(a)に示すように、掃除領域設定部331は、ロボット掃除機本体2より受信した床面マップ4を表示器31に表示する。ユーザは、床面マップ4上で掃除領域41としたい範囲をドラッグ入力等により指定することで、掃除領域41を設定する。設定された掃除領域41は、記憶部334に記憶される。なお、掃除領域41の設定方法はこれに限定されず、例えば、掃除領域41から掃除を行いたくない領域(ロボット掃除機本体2を進入させたくない領域、非掃除領域)を設定するようにし、設定した非掃除領域を除く床面マップ4の他の領域を掃除領域41に設定する、といった設定方法も可能である。
【0037】
照射領域設定部332は、掃除領域41内で、光源25による紫外光の照射を行う照射領域と、光源25による紫外光の照射を行わない非照射領域とを設定する機能を有する。
図3(b)に示すように、ユーザは、表示器31に表示された床面マップ4の掃除領域41内で、照射領域42としたい範囲をドラッグ入力等により指定することで、照射領域42を設定する。照射領域42に設定されていない掃除領域が、非照射領域43となる。なお、照射領域42内でさらに非照射領域43を設定できるように構成することもできる。設定された照射領域42及び非照射領域43は、記憶部334に記憶される。
【0038】
照射強度設定部333は、照射領域42における紫外光の照射強度を設定する機能を有する。照射強度設定部333は、汚染状況検知部263で検知した床面の汚染状況を基に、照射領域42の汚染状況を抽出し、照射領域42の汚染状況に応じて、紫外光の照射強度を設定する。照射強度設定部333は、照射領域42の汚染状況が高い(集塵量が多い)とき紫外光の照射強度を高く設定し、照射領域42の汚染状況が低い(集塵量が多い)とき紫外光の照射強度を低く設定する。照射強度設定部333が設定した紫外光の照射強度は、記憶部334に記憶される。
【0039】
また、本実施の形態では、表示器31に表示された床面マップ4上で、床面の材質を設定可能に構成されており、照射強度設定部333は、設定された床面の材質に応じて、紫外光の照射強度を設定可能に構成されている。すなわち、本実施の形態では、照射領域42の汚染状況と、床面の材質とに応じて、照射強度が設定される。
【0040】
図4は、床面の材質に応じた紫外光の照射強度の設定手順の一例を示す図である。
図4に示すように、照射領域42の設定後、照射強度設定部333は、床面の材質(床材)の選択画面51を表示する。床材の選択画面51でユーザが選択した床材が紫外光の照射に適した床材である場合、確認画面52を表示する。確認画面52でYESが選択されれば、設定を記憶した旨を表示するメッセージ画面53を表示し、照射強度設定部333が選択した床材に応じた照射強度を設定し記憶部334に記憶される。確認画面52でNOが選択された場合には、照射領域の設定画面、あるいは床材の選択画面51に戻る。
【0041】
床材の選択画面51でユーザが選択した床材が紫外光の照射に適さない床材である場合、床材が紫外光の照射に適さないため非照射領域43とするかを選択する警告画面54を表示する。警告画面54でYESが選択された場合、照射領域42の設定をキャンセルして照射領域42の設定画面に戻る。警告画面54でNOが選択された場合、紫外光の照射強度を設定する強度設定画面55を表示する。強度設定画面55でユーザによる設定がなされた後、確認画面56を表示し、確認画面でYESが選択されると、設定を記憶した旨を表示するメッセージ画面53を表示し、照射強度設定部333が、ユーザが設定した照射強度を記憶部334に記憶する。確認画面56でNOが選択された場合、強度設定画面55、あるいは警告画面54に戻る。床材が紫外光の照射に適しているか否か、及び床材毎の照射強度は、予めデータベースとして作成され記憶部334に記憶される。なお、床材毎の照射強度は、汚染状況に応じて選択可能とされているとよく、例えば床材毎に、汚染状況が高い場合、中程度の場合、低い場合等と段階的に照射強度が設定されていてもよい。なお、
図4の手順はあくまで一例であり、適宜変更可能である。
【0042】
また、ロボット掃除機本体2は、紫外線を照射した位置の位置情報と、照射時間、照射強度(累積照射量)を記憶するように構成されていてもよい。さらに、ロボット掃除機本体2は、床面の材質毎に累積照射量の閾値を予め記憶しておき、設定された照射領域42の床面の材質に応じて、累積照射量が閾値を超えないように、紫外線の照射を制限する機能を有していてもよい。この場合、照射領域42の任意の位置で累積照射量が閾値を超えた場合に、端末装置3に警告表示を表示するように構成されてもよい。なお、このような累積照射量の制限機能は、端末装置3に搭載されていてもよく、例えば、照射領域42の設定時や照射強度の設定時等において、累積照射量が閾値を超えると予測される場合に、警告表示を表示するよう構成してもよい。
【0043】
(ロボット掃除機1の使用開始時の制御フロー)
図5は、ロボット掃除機1の使用開始時の制御フローを示すフロー図である。
図5に示すように、ロボット掃除機1の使用開始時には、まず、ステップS1にて、端末装置3でマップ取得開始指示を入力する。なお、マップ取得開始指示は、ロボット掃除機本体2側で入力可能としてもよい。
【0044】
ステップS1でマップ取得開始指示が入力されると、ステップS2にて、ロボット掃除機本体2のマップ取得部261が、床面マップ4を取得するマップ取得処理を行う。マップ取得処理では、汚染状況検知部263による床面の汚染状況の検知も合わせて行われる。その後、ステップS3にて、マップ取得部261が、取得した床面マップ4及び床面の汚染状況を端末装置3に送信する。
【0045】
その後、ステップS4にて、端末装置3で掃除領域41の設定を行う。この際、掃除領域設定部331が、受信した床面マップ4を表示器31に表示し、床面マップ4上で掃除領域41を設定する(
図3(a)参照)。その後、ステップS5にて、床面に紫外光を照射するかを判定する。例えば、表示器31に床面に紫外光を照射するか否かを選択する選択画面を表示し、当該選択画面での入力に応じて、床面に紫外光を照射するかを判定するとよい。ステップS5でNOと判定された場合、ステップ
S8に進む。
【0046】
ステップS5でYESと判定された場合、ステップS6にて、照射領域設定部332が、照射領域42及び非照射領域43の設定を行う。この際、表示器31に表示された床面マップ4の掃除領域41内で、照射領域42としたい範囲をドラッグ入力等により指定することで、照射領域42を設定する(
図3(b)参照)。
【0047】
その後、ステップS7で照射強度設定処理を行う。照射強度設定処理では、照射強度設定部333が、照射領域42の汚染状況と、床面の材質とに応じて、照射強度を設定する(
図4参照)。
【0048】
ステップS8では、端末装置3にて掃除開始指示を入力する。ステップS8で掃除開始指示が入力されると、ステップS9にて、掃除領域41、照射領域42、非照射領域43、照射強度、床面の材質等の設定がロボット掃除機本体2に送信される。
【0049】
その後、ステップS10では、ロボット掃除機本体2が、受信した掃除領域41等の設定にしたがって掃除を開始する。この際、照射領域42に設定された領域のみで、予め設定された照射強度で、光源25から床面に紫外光の照射が行われる、床面に存在する細菌等の不活化が行われることになる。
【0050】
なお、2回目以降の掃除の際には、使用開始時の掃除領域41や照射領域42等の設定をそのまま使用して掃除を実行することが可能である。
【0051】
(変形例)
本実施の形態では、ユーザの入力により照射領域42における床面の材質を特定したが、床面の材質を特定可能な適宜なセンサをロボット掃除機本体2に設け、当該センサにより床面の材質を自動で特定するように構成してもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、照射領域42の床面の材質が紫外光の照射に適した材質である場合、自動で照射強度を設定したが、手動で照射強度を設定できるようにしてもよい。
【0053】
さらに、紫外光の照射による床面の細菌等の不活化を重点的に行う重点照射領域を設定可能としてもよい。例えば、設定された重点照射領域を複数回ロボット掃除機本体2が通過するようルート設定を行うように構成したり、重点照射領域でのロボット掃除機本体2の移動速度を遅くするように構成したりすることで、所望の領域の細菌等の不活化をより確実に行うことが可能になる。
【0054】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロボット掃除機1では、ロボット掃除機本体2が、床面に紫外光を照射する発光ダイオードからなる光源25を有し、端末装置3は、掃除領域41内で、光源25による紫外光の照射を行う照射領域42と、光源25による紫外光の照射を行わない非照射領域43とを設定可能に構成されると共に、照射領域42内での紫外光の照射強度を設定可能に構成され、ロボット掃除機本体2は、端末装置3での設定に応じて、照射領域42のみで、設定された照射強度で光源25による紫外光の照射を行うよう光源25を制御する光源制御部266を有している。
【0055】
これにより、所望の領域(照射領域42)のみで床面に紫外光を照射し、床面に存在する細菌等の不活化を行うことができ、かつ、紫外光の照射に適さない床面を非照射領域43に設定して、紫外光の照射による床面の劣化や変色を抑制することが可能になる。さらに、照射領域42の床面の材質や汚染状況に応じた照射強度を設定可能となり、照射領域42における床面の劣化や変色を抑制しつつも、適切な照射強度で効率良く細菌等の不活化を行うことが可能になる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0057】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、掃除機能を有するロボット掃除機1に本発明を適用する場合について説明したが、掃除機能は省略可能であり、床面の除菌機能(細菌等の不活化機能)のみを有する床面除菌ロボットとすることも可能である。この場合、床面除菌ロボットは、自走しつつ床面を掃除する床面除菌ロボット本体(上記実施の形態のロボット掃除機本体2に相当)と、床面除菌ロボット本体と通信可能に構成された端末装置3と、を備え、床面除菌ロボット本体は、床面に紫外光を照射する発光ダイオードからなる光源25を有し、端末装置3は、光源25による紫外光の照射を行う照射領域42と、光源25による紫外光の照射を行わない非照射領域43とを設定可能に構成されると共に、照射領域42内での紫外光の照射強度を設定可能に構成され、床面除菌ロボット本体は、端末装置3での設定に応じて、照射領域42のみで、設定された照射強度で光源25による紫外光の照射を行うよう光源25を制御する光源制御部266を有するとよい。掃除機能を省略することで、床面除菌ロボット本体の小型化、及びシステムの簡素化が可能となり、コストの低減を図ることが可能になる。
【0058】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0059】
[1]自走しつつ床面を掃除するロボット掃除機本体(2)と、前記ロボット掃除機本体(2)と通信可能に構成され、前記ロボット掃除機本体(2)で掃除を行う掃除領域(41)を設定可能な端末装置(3)と、を備え、前記ロボット掃除機本体(2)は、前記床面に紫外光を照射する発光ダイオードからなる光源(25)を有し、前記端末装置(3)は、前記掃除領域(41)内で、前記光源(25)による紫外光の照射を行う照射領域(42)と、前記光源(25)による紫外光の照射を行わない非照射領域(43)とを設定可能に構成されると共に、前記照射領域(42)内での紫外光の照射強度を設定可能に構成され、前記ロボット掃除機本体(2)は、前記端末装置(3)での設定に応じて、前記照射領域(42)のみで、設定された照射強度で前記光源(25)による紫外光の照射を行うよう前記光源(25)を制御する光源制御部(266)を有する、ロボット掃除機(1)。紫外線照射の光源として発光ダイオードを用いることにより、照射強度を自由に設定可能になるため、紫外光の照射による床面の劣化や変色を抑制可能となる。
【0060】
[2]前記ロボット掃除機本体(2)は、掃除対象となる前記床面のマッピングを行い、取得した床面マップ(4)を前記端末装置に送信するマップ取得部(261)を有し、前記端末装置(3)は、表示器(31)を有し、前記表示器(31)に前記マップ取得部(261)より受信した前記床面マップ(4)を表示し、前記床面マップ(4)上で前記掃除領域(41)、前記照射領域(42)、前記照射強度、及び前記非照射領域(43)を設定可能に構成されている、[1]に記載のロボット掃除機(1)。床面マップを端末上の表示機にて表示させることで、掃除領域、照射領域、非照射領域の設定を簡便に行うことができる。
【0061】
[3]前記端末装置(3)は、前記照射領域(42)の前記床面の材質を設定可能に構成されており、設定された前記床面の材質に応じて、紫外光の照射強度を設定可能に構成されている、[2]に記載のロボット掃除機(1)。床面マップの上にて床面の材質を設定でき、それに応じて紫外光の照射強度を簡便に調節可能となる。
【0062】
[4]前記ロボット掃除機本体(2)は、掃除対象となる前記床面の汚染状況を検知する汚染状況検知部(263)を有し、前記マップ取得部(261)は、取得した床面マップを、前記汚染状況検知部(263)で検知した汚染状況と関連づけて前記端末装置(3)に送信するように構成され、前記端末装置(3)は、前記照射領域の汚染状況に応じて、紫外光の照射強度を設定可能に構成されている、[2]または[3]に記載のロボット掃除機(1)。汚染状況検知部を設けることで、床面マップ上に入力した時点では分からない床面の汚染状況に応じた自動補正が可能となる。
【0063】
[5]前記床面マップ(4)は、前記照射領域(42)における紫外光の累積照射量を含み、前記床面マップ(4)上に前記累積照射量を表示可能に構成されている、[2]乃至[4]の何れか1項に記載のロボット掃除機。紫外光の累積照射量を床面マップに表示することで、床面への累積照射量を視覚で認識可能となる。
【0064】
[6]前記端末装置(3)は、前記床面マップ(42)上に表示される前記累積照射量に応じて、前記照射強度の設定値入力を制限する又は前記照射強度の設定値に対する警告を行う、[2]乃至[5]の何れか1項に記載のロボット掃除機。一定期間における累積照射量に応じて照射強度の設定値入力が制限される又は入力した設定値に対する警告を行うことができるようにすることで、紫外線の過照射による床面の劣化や変色を抑えることができる。
【0065】
[7]前記光源(25)が、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を発する発光ダイオードからなる、[1]乃至[6]の何れか1項に記載のロボット掃除機(1)。上記波長の深紫外光を用いることにより、清掃と同時に、細菌等の不活化(除菌・滅菌)が可能となる。
【0066】
[8]自走しつつ床面を掃除する床面除菌ロボット本体と、前記床面除菌ロボット本体と通信可能に構成された端末装置(3)と、を備え、前記床面除菌ロボット本体は、前記床面に紫外光を照射する発光ダイオードからなる光源(25)を有し、前記端末装置(3)は、前記光源(25)による紫外光の照射を行う照射領域(42)と、前記光源(25)による紫外光の照射を行わない非照射領域(43)とを設定可能に構成されると共に、前記照射領域(42)内での紫外光の照射強度を設定可能に構成され、前記床面除菌ロボット本体は、前記端末装置(3)での設定に応じて、前記照射領域(42)のみで、設定された照射強度で前記光源(25)による紫外光の照射を行うよう前記光源(25)を制御する光源制御部(266)を有する、床面除菌ロボット。紫外線照射の光源として発光ダイオードを用いることにより、照射強度を自由に設定可能になるため、紫外光の照射による床面の劣化や変色を抑制可能となる。また、掃除機能を省略することで、床面除菌ロボット本体の小型化、及びシステムの簡素化が可能となり、コストの低減を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0067】
1…ロボット掃除機
2…ロボット掃除機本体
25…光源
261…マップ取得部
263…汚染状況検知部
266…光源制御部
3…端末装置
31…表示器
331…掃除領域設定部
332…照射領域設定部
333…照射強度設定部
4…床面マップ
41…掃除領域
42…照射領域
43…非照射領域