(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】発光装置、発光モジュール、電子機器、及び発光装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/00 20230101AFI20240402BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240402BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240402BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240402BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20240402BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20240402BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240402BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240402BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20240402BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240402BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20240402BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20240402BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20240402BHJP
H10K 50/842 20230101ALI20240402BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240402BHJP
H10K 59/121 20230101ALI20240402BHJP
H10K 59/123 20230101ALI20240402BHJP
H10K 59/124 20230101ALI20240402BHJP
H10K 59/131 20230101ALI20240402BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20240402BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20240402BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240402BHJP
H10K 71/80 20230101ALI20240402BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20240402BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240402BHJP
【FI】
H10K71/00 851
G09F9/00 338
G09F9/30 308Z
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
G09F9/30 365
H05B33/02
H05B33/04
H05B33/06
H05B33/10
H05B33/14 Z
H05B33/22 Z
H10K50/10
H10K50/11
H10K50/115
H10K50/84
H10K50/842 426
H10K50/844 445
H10K59/121 213
H10K59/123
H10K59/124
H10K59/131
H10K59/80
H10K59/95
H10K71/60
H10K71/80
H10K77/10
H10K85/10
(21)【出願番号】P 2020537894
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 IB2019056747
(87)【国際公開番号】W WO2020039293
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018156888
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】安達 広樹
(72)【発明者】
【氏名】谷中 順平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 将孝
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0255739(US,A1)
【文献】特開2017-228512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する発光装置であり、
発光素子、第1の無機絶縁層、第2の無機絶縁層、及び第1の有機絶縁層を有し、
前記第1の有機絶縁層は、前記第1の無機絶縁層上に位置し、
前記発光素子は、前記第1の有機絶縁層を介して、前記第1の無機絶縁層上に位置し、
前記第2の無機絶縁層は、前記発光素子上に位置し、
前記第1の無機絶縁層の端部及び前記第2の無機絶縁層の端部は、それぞれ、前記第1の有機絶縁層の端部よりも内側に位置し、
前記第1の有機絶縁層の端部は、前記発光装置の側面に露出する、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記発光素子の端部よりも外側において、前記第1の無機絶縁層と前記第2の無機絶縁層とは互いに接する、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の有機絶縁層は、前記発光素子の端部よりも外側に、開口を有し、
前記開口において、前記第1の無機絶縁層と前記第2の無機絶縁層とは互いに接する、発光装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
さらに、第2の有機絶縁層を有し、
前記第1の有機絶縁層は、前記第2の有機絶縁層と異なる材料を有し、
前記第1の有機絶縁層は、前記第2の有機絶縁層上に位置し、
前記第2の有機絶縁層は、前記第1の無機絶縁層の端部を覆い、
前記第2の有機絶縁層の端部は、前記発光装置の側面に露出する、発光装置。
【請求項5】
可撓性を有する発光装置であり、
発光素子、トランジスタ、第1の無機絶縁層、第2の無機絶縁層、第3の無機絶縁層、及び第1の有機絶縁層を有し、
前記トランジスタは、前記第1の無機絶縁層上に位置し、
前記第2の無機絶縁層は、前記トランジスタ上に位置し、
前記第1の有機絶縁層は、前記第2の無機絶縁層上に位置し、
前記発光素子は、前記第1の有機絶縁層を介して、前記第1の無機絶縁層上に位置し、
前記第3の無機絶縁層は、前記発光素子上に位置し、
前記第1の無機絶縁層の端部、前記第2の無機絶縁層の端部、及び前記第3の無機絶縁層の端部は、それぞれ、前記第1の有機絶縁層の端部よりも内側に位置し、
前記第1の有機絶縁層の端部は、前記発光装置の側面に露出する、発光装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記トランジスタの端部よりも外側において、前記第1の無機絶縁層と前記第2の無機絶縁層とは互いに接し、
前記発光素子の端部よりも外側において、前記第2の無機絶縁層と前記第3の無機絶縁層とは互いに接する、発光装置。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記第1の有機絶縁層は、前記発光素子の端部よりも外側に、開口を有し、
前記開口において、前記第2の無機絶縁層と前記第3の無機絶縁層とは互いに接する、発光装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一において、
さらに、第2の有機絶縁層を有し、
前記第1の有機絶縁層は、前記第2の有機絶縁層と異なる材料を有し、
前記第1の有機絶縁層は、前記第2の有機絶縁層上に位置し、
前記第2の有機絶縁層は、前記第1の無機絶縁層の端部及び前記第2の無機絶縁層の端部を覆い、
前記第2の有機絶縁層の端部は、前記発光装置の側面に露出する、発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一に記載の発光装置と、コネクタまたは集積回路と、を有する、発光モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の発光モジュールと、
アンテナ、バッテリ、筐体、カメラ、スピーカ、マイク、または操作ボタンと、を有する、電子機器。
【請求項11】
複数の発光装置を作製し、前記複数の発光装置を発光装置ごとに分割する、発光装置の作製方法であり、
第1の基板上に、剥離層を形成し、
前記剥離層上に、第1の無機絶縁層を形成し、
前記第1の無機絶縁層に、第1の開口を形成し、
前記第1の無機絶縁層上に、第1の有機絶縁層を形成し、
前記第1の有機絶縁層上に、発光素子を形成し、
前記発光素子上に、第2の無機絶縁層を形成し、
前記第2の無機絶縁層上に、第2の基板を貼り、
前記第1の基板と前記第1の無機絶縁層とを互いに分離し、
第3の基板が前記第1の無機絶縁層を介して前記第2の基板と重なるように、前記第3の基板を貼り、
分断箇所が前記第1の開口を含むように、前記複数の発光装置を発光装置ごとに分割する、発光装置の作製方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記第1の有機絶縁層は、前記第1の開口よりも内側に第2の開口が形成され、
前記第2の無機絶縁層は、前記第2の開口の内部に形成される、発光装置の作製方法。
【請求項13】
請求項11または12において、
前記剥離層は、金属酸化物層と、前記金属酸化物層上の樹脂層と、を有する、発光装置の作製方法。
【請求項14】
請求項
11または12において、
前記剥離層は、樹脂層を有する、発光装置の作製方法。
【請求項15】
請求項11または12において、
前記剥離層は、金属層と、前記金属層上の酸化物絶縁層と、を有し、
前記金属層は、前記第1の開口と重なる第3の開口を有し、
前記酸化物絶縁層は、前記第1の開口及び前記第3の開口の双方と重なる第4の開口を有し、
前記第1の開口、前記第3の開口、及び前記第4の開口が互いに重なる部分では、前記第1の基板と前記第1の有機
絶縁層とが互いに接する、発光装置の作製方法。
【請求項16】
請求項11または12において、
前記第1の有機絶縁層を形成する前に、前記第1の有機絶縁層とは異なる材料を用いて第2の有機絶縁層を形成し、
前記剥離層は、金属層と、前記金属層上の酸化物絶縁層と、を有し、
前記金属層は、前記第1の開口と重なる第3の開口を有し、
前記酸化物絶縁層は、前記第1の開口及び前記第3の開口の双方と重なる第4の開口を有し、
前記第2の有機絶縁層は、前記第1の開口、前記第3の開口、及び前記第4の開口を介して、前記第1の基板と接する、発光装置の作製方法。
【請求項17】
請求項11または12において、
前記剥離層は、第1の金属層と、前記第1の金属層上の酸化物絶縁層と、前記酸化物絶縁層上の第2の金属層と、を有し、
前記第1の開口は、前記第2の金属層と重なる、発光装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光装置、発光モジュール、及び、電子機器に関する。本発明の一態様は、発光装置の作製方法に関する。特に、本発明の一態様は、可撓性を有する発光装置とその作製方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサなど)、入出力装置(例えば、タッチパネルなど)、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用した発光素子(EL素子とも記す)は、薄型軽量化が容易である、入力信号に対し高速に応答可能である、直流低電圧電源を用いて駆動可能である等の特徴を有し、表示装置や照明装置への応用が検討されている。
【0004】
また、可撓性を有する基板(以下、可撓性基板とも記す)上に半導体素子、表示素子、発光素子などの機能素子が設けられたフレキシブルデバイスの開発が進められている。フレキシブルデバイスの代表的な例としては、照明装置、画像表示装置の他、トランジスタなどの半導体素子を有する種々の半導体回路などが挙げられる。
【0005】
特許文献1には、有機EL素子が適用されたフレキシブルな発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EL素子が適用された発光装置は、例えば、表示部が曲面を有する電子機器や、表示部を折りたたむことができる電子機器等への応用が期待される。したがって、発光装置の曲げ耐性の向上が重要となる。曲面を有する発光装置は、曲げた状態で長時間表示できる必要がある。また、折りたためる発光装置は、繰り返し(具体的には5万回以上、さらには10万回以上)の曲げに耐えられる必要がある。
【0008】
また、特許文献1では、ガラス基板上に剥離層を介して形成した半導体素子や発光素子などを剥離し、可撓性基板に転置する方法が検討されている。この方法では、半導体素子の形成温度を高めることが可能で、極めて信頼性の高い発光装置を作製することができる。実用化のために、フレキシブルな発光装置を歩留まり高く作製することが求められている。
【0009】
本発明の一態様は、曲げた状態で長時間表示可能な発光装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、小さい曲率半径での繰り返しの曲げが可能な発光装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、信頼性の高い発光装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、破損しにくい発光装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、発光装置の薄型化または軽量化を課題の一つとする。本発明の一態様は、可撓性を有する表示部または曲面を有する表示部を有する電子機器を提供することを課題の一つとする。
【0010】
本発明の一態様は、歩留まりの高い発光装置の作製方法を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、量産性の高い発光装置の作製方法を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、コストが低い発光装置の作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0011】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、発光部及び一対の第1の領域を有する発光装置である。一対の第1の領域は、それぞれ、発光装置の端部を含み、かつ、発光部に延在する無機膜が設けられていない領域である。発光部は、一対の第1の領域の間に位置する。発光部及び一対の第1の領域は、それぞれ、可撓性を有する。
【0013】
上記の発光装置は、さらに、外部接続端子及び配線部を有することが好ましい。配線部は、発光部と外部接続端子との間に位置することが好ましい。一対の第1の領域は、それぞれ、配線部に延在する無機膜が設けられていない領域であることが好ましい。配線部は、一対の第1の領域の間に位置することが好ましい。配線部は、可撓性を有することが好ましい。
【0014】
または、上記の発光装置は、さらに、外部接続端子、配線部、及び一対の第2の領域を有することが好ましい。一対の第2の領域は、それぞれ、発光装置の端部を含み、かつ、配線部に延在する無機膜が設けられていない領域であることが好ましい。配線部は、一対の第2の領域の間に位置することが好ましい。配線部及び一対の第2の領域は、それぞれ、可撓性を有することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様は、発光部及び枠状の領域を有する発光装置である。枠状の領域は、発光装置の端部を含み、かつ、発光部に延在する無機膜が設けられていない領域である。発光部は、枠状の領域の内側に位置する。発光部及び枠状の領域は、それぞれ、可撓性を有する。当該発光装置は、さらに、外部接続端子及び配線部を有することが好ましい。枠状の領域は、配線部に延在する無機膜が設けられていない領域であることが好ましい。配線部は、枠状の領域の内側に位置することが好ましい。配線部は、可撓性を有することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様は、可撓性を有する発光装置であり、発光素子、第1の無機絶縁層、第2の無機絶縁層、及び第1の有機絶縁層を有する発光装置である。第1の有機絶縁層は、第1の無機絶縁層上に位置する。発光素子は、第1の有機絶縁層を介して、第1の無機絶縁層上に位置する。第2の無機絶縁層は、発光素子上に位置する。第1の無機絶縁層の端部及び第2の無機絶縁層の端部は、それぞれ、第1の有機絶縁層の端部よりも内側に位置する。第1の有機絶縁層の端部は、発光装置の側面に露出する。発光素子の端部よりも外側において、第1の無機絶縁層と第2の無機絶縁層とは互いに接することが好ましい。第1の有機絶縁層は、発光素子の端部よりも外側に、開口を有することが好ましい。開口において、第1の無機絶縁層と第2の無機絶縁層とは互いに接することが好ましい。当該発光装置は、さらに、第2の有機絶縁層を有することが好ましい。第1の有機絶縁層は、第2の有機絶縁層と異なる材料を有することが好ましい。第1の有機絶縁層は、第2の有機絶縁層上に位置することが好ましい。第2の有機絶縁層は、第1の無機絶縁層の端部を覆うことが好ましい。第2の有機絶縁層の端部は、発光装置の側面に露出することが好ましい。
【0017】
本発明の一態様は、可撓性を有する発光装置であり、発光素子、トランジスタ、第1の無機絶縁層、第2の無機絶縁層、第3の無機絶縁層、及び第1の有機絶縁層を有する発光装置である。トランジスタは、第1の無機絶縁層上に位置する。第2の無機絶縁層は、トランジスタ上に位置する。第1の有機絶縁層は、第2の無機絶縁層上に位置する。発光素子は、第1の有機絶縁層を介して、第1の無機絶縁層上に位置する。第3の無機絶縁層は、発光素子上に位置する。第1の無機絶縁層の端部、第2の無機絶縁層の端部、及び第3の無機絶縁層の端部は、それぞれ、第1の有機絶縁層の端部よりも内側に位置する。第1の有機絶縁層の端部は、発光装置の側面に露出する。トランジスタの端部よりも外側において、第1の無機絶縁層と第2の無機絶縁層とは互いに接することが好ましい。発光素子の端部よりも外側において、第2の無機絶縁層と第3の無機絶縁層とは互いに接することが好ましい。第1の有機絶縁層は、発光素子の端部よりも外側に、開口を有することが好ましい。開口において、第2の無機絶縁層と第3の無機絶縁層とは互いに接することが好ましい。当該発光装置は、さらに、第2の有機絶縁層を有することが好ましい。第1の有機絶縁層は、第2の有機絶縁層と異なる材料を有することが好ましい。第1の有機絶縁層は、第2の有機絶縁層上に位置することが好ましい。第2の有機絶縁層は、第1の無機絶縁層の端部及び第2の無機絶縁層の端部を覆うことが好ましい。第2の有機絶縁層の端部は、発光装置の側面に露出することが好ましい。
【0018】
本発明の一態様は、上記いずれかの構成の発光装置を有し、フレキシブルプリント回路基板(Flexible printed circuit、以下、FPCと記す)もしくはTCP(Tape Carrier Package)等のコネクタが取り付けられたモジュール、またはCOG(Chip On Glass)方式もしくはCOF(Chip On Film)方式等により集積回路(IC)が実装されたモジュール等のモジュールである。
【0019】
本発明の一態様は、上記のモジュールと、アンテナ、バッテリ、筐体、カメラ、スピーカ、マイク、または操作ボタンの少なくともいずれか一と、を有する電子機器である。
【0020】
本発明の一態様は、複数の発光装置を作製し、複数の発光装置を発光装置ごとに分割する、発光装置の作製方法である。第1の基板上に剥離層を形成し、剥離層上に第1の無機絶縁層を形成し、第1の無機絶縁層に第1の開口を形成し、第1の無機絶縁層上に第1の有機絶縁層を形成し、第1の有機絶縁層上に発光素子を形成し、発光素子上に第2の無機絶縁層を形成し、第2の無機絶縁層上に第2の基板を貼り、第1の基板と第1の無機絶縁層とを互いに分離し、第3の基板が第1の無機絶縁層を介して第2の基板と重なるように、第3の基板を貼り、分断箇所が第1の開口を含むように、複数の発光装置を発光装置ごとに分割する。第1の有機絶縁層は、第1の開口よりも内側に第2の開口が形成されることが好ましい。第2の無機絶縁層は、第2の開口の内部に形成されることが好ましい。
【0021】
剥離層は、金属酸化物層と、金属酸化物層上の樹脂層と、を有することが好ましい。
【0022】
または、剥離層は、樹脂層を有することが好ましい。
【0023】
または、剥離層は、金属層と、金属層上の酸化物絶縁層と、を有することが好ましい。金属層は、第1の開口と重なる第3の開口を有することが好ましい。酸化物絶縁層は、第1の開口及び第3の開口の双方と重なる第4の開口を有することが好ましい。例えば、第1の開口、第3の開口、及び第4の開口が互いに重なる部分では、第1の基板と第1の有機樹脂層とが互いに接することが好ましい。または、剥離層が、金属層と、金属層上の酸化物絶縁層と、を有する場合、第1の有機絶縁層を形成する前に、第1の有機絶縁層とは異なる材料を用いて第2の有機絶縁層を形成することが好ましい。このとき、第2の有機絶縁層は、第1の開口、第3の開口、及び第4の開口を介して、第1の基板と接することが好ましい。
【0024】
または、剥離層は、第1の金属層と、第1の金属層上の酸化物絶縁層と、酸化物絶縁層上の第2の金属層と、を有することが好ましい。第1の開口は、第2の金属層と重なることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様により、曲げた状態で長時間表示可能な発光装置を提供できる。本発明の一態様により、小さい曲率半径での繰り返しの曲げが可能な発光装置を提供できる。本発明の一態様により、信頼性の高い発光装置を提供できる。本発明の一態様により、破損しにくい発光装置を提供できる。本発明の一態様により、発光装置の薄型化または軽量化ができる。本発明の一態様により、可撓性を有する表示部または曲面を有する表示部を有する電子機器を提供できる。
【0026】
本発明の一態様により、歩留まりの高い発光装置の作製方法を提供できる。本発明の一態様により、量産性の高い発光装置の作製方法を提供できる。本発明の一態様により、コストが低い発光装置の作製方法を提供できる。
【0027】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0030】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0031】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0032】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置及びその作製方法について
図1~
図22を用いて説明する。
【0034】
可撓性を有する発光装置を、曲げた状態で長時間保持する、または繰り返し曲げることで、クラックの発生や進行(広がり)が確認されることがある。クラックが発生する、さらには進行することで、発光装置の発光不良を引き起こす恐れがある。クラックは、発光装置が有する無機膜に発生することが多い。例えば、大型の基板に複数の発光装置を形成する(多面取りする)場合、複数の発光装置を発光装置ごとに分割する際に、分断部で無機膜にマイクロクラックが生じることがある。無機膜に発生したクラックは、発光装置を曲げることで広がりやすい。また、クラックの周囲には、さらなるクラックが発生しやすい。このように、一度、無機膜にクラックが発生すると、当該無機膜において、クラックの増加及び進行が生じやすくなる。そのため、発光装置を曲げることで、発光装置の発光不良が生じやすくなる。
【0035】
本発明の一態様の発光装置の作製方法では、発光部に延在する無機膜が設けられていない領域を分断することで、複数の発光装置を発光装置ごとに分割する。これにより、発光装置の外形加工時に、無機膜にクラックが発生しても、当該クラックが発光部に広がることを抑制できる。また、本発明の一態様の発光装置の作製方法は、無機膜が設けられていない領域を分断することで、複数の発光装置を発光装置ごとに分割することが好ましい。これにより、発光装置の外形加工時に、無機膜にクラックが発生することを抑制できる。そして、当該発光装置を、曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、クラックの発生及び進行を抑制できる。
【0036】
本発明の一態様の発光装置は、可撓性を有し、発光素子、第1の無機絶縁層、第2の無機絶縁層、及び第1の有機絶縁層を有する。第1の有機絶縁層は第1の無機絶縁層上に位置し、発光素子は第1の有機絶縁層を介して、第1の無機絶縁層上に位置し、第2の無機絶縁層は発光素子上に位置する。第1の無機絶縁層の端部及び第2の無機絶縁層の端部は、それぞれ、第1の有機絶縁層の端部よりも内側に位置する。第1の有機絶縁層の端部は、発光装置の側面に露出する。
【0037】
本発明の一態様の発光装置は、発光部に延在する無機膜が設けられていない領域を分断することで作製されるため、当該発光装置の側面には、主に有機膜が露出する。ここで、有機膜は無機膜に比べて防水性が低いため、発光装置の側面から水などの不純物が発光装置の内部に容易に入り込む恐れがある。したがって、発光素子の端部よりも外側において、第1の無機絶縁層と第2の無機絶縁層とは互いに接することが好ましい。例えば、第1の有機絶縁層は、発光素子の端部よりも外側に開口を有し、当該開口において、第1の無機絶縁層と第2の無機絶縁層とは互いに接することが好ましい。発光素子を2つの無機絶縁層で囲むことで、発光装置の側面から不純物が入り込んでも、不純物が発光素子に到達しにくい構造とすることができる。これにより、発光装置の信頼性を高めることができる。
【0038】
本発明の一態様の発光装置は、例えば、表示装置または照明装置として用いることができる。以下では、主に、表示装置として用いることができる発光装置を例に挙げて説明する。
【0039】
[発光装置の断面構造]
図1A及び
図1Bに、本実施の形態の発光装置の断面図を示す。
【0040】
図1Aに示す発光装置10Aは、基板21、接着層22、無機絶縁層31、トランジスタ40、無機絶縁層33、有機絶縁層35、発光素子60、隔壁37、無機絶縁層64、接着層24、及び基板23を有する。
【0041】
発光装置10Aは、可撓性を有する。なお、本実施の形態の発光装置は可撓性を有する。当該発光装置の構成要素には、それぞれ、可撓性を有する材料を用いる。
【0042】
トランジスタ40は、無機絶縁層31上に位置する。無機絶縁層33は、トランジスタ40上に位置する。有機絶縁層35は、無機絶縁層33上に位置する。発光素子60は、有機絶縁層35を介して、無機絶縁層31上に位置する。また、発光素子60は、有機絶縁層35を介して、無機絶縁層33上に位置するともいえる。
【0043】
発光素子60としては、OLED(Organic Light Emitting Diode)やQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)などのEL素子を用いることが好ましい。EL素子が有する発光物質としては、有機化合物及び無機化合物のどちらを用いてもよく、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)、量子ドット材料などを用いることができる。また、発光素子として、マイクロLED(Light Emitting Diode)などのLEDを用いることもできる。本実施の形態では、主に、発光素子60としてEL素子を用いる場合を例に挙げて説明する。
【0044】
発光素子60は、電極61、EL層62、及び電極63を有する。EL層62は、電極61と電極63との間に位置する。EL層62は、少なくとも発光物質を含む。電極63は可視光を透過する機能を有する。電極61は可視光を反射する機能を有することが好ましい。
【0045】
発光素子60は、可視光を発する機能を有する。具体的には、発光素子60は、電極61と電極63との間に電圧を印加することで、基板23側に光を射出する電界発光素子である(発光20参照)。つまり、発光装置10Aは、トップエミッション構造である。
【0046】
本発明の一態様の発光装置は、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型のいずれであってもよい。光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
【0047】
電極61は、無機絶縁層33及び有機絶縁層35に設けられた開口を介して、トランジスタ40が有するソースまたはドレインと電気的に接続される。電極61は、画素電極としての機能を有する。電極61の端部は、隔壁37によって覆われている。
【0048】
隔壁37は、無機絶縁層及び有機絶縁層のどちらを用いてもよい。有機絶縁層を用いる場合、隔壁37の側面を覆うように無機絶縁層64が設けられていることが好ましい。無機絶縁層を用いる場合、電極63の端部よりも外側で、隔壁37と無機絶縁層64とが互いに接することが好ましい。
【0049】
発光素子60を覆うように、保護層を設けることが好ましい。保護層を設けることで、発光素子60に水などの不純物が入り込むことを抑制し、発光素子60の信頼性を高めることができる。
【0050】
保護層は、少なくとも1層の無機膜を有することが好ましい。発光装置10Aでは、保護層として、無機絶縁層64を有する例を示す。また、保護層は、無機膜と有機膜との積層構造としてもよい。当該積層構造としては、例えば、酸化窒化シリコン膜と、酸化シリコン膜と、有機膜と、酸化シリコン膜と、窒化シリコン膜と、を順に形成する構成などが挙げられる。保護層を無機膜と有機膜との積層構造とすることで、発光素子60に入り込みうる不純物(代表的には、水素、水など)を好適に抑制することができる。
【0051】
また、接着層24によって、保護層と基板23とが貼り合わされている。
【0052】
有機絶縁層35の端部は、発光装置10Aの側面に露出している。無機絶縁層31の端部、無機絶縁層33の端部、及び無機絶縁層64の端部は、それぞれ、有機絶縁層35の端部よりも内側に位置する。
【0053】
発光装置10Aの側面は、発光装置10Aの作製工程において、外形加工のための分断により露出した面である。発光装置10Aの側面を含む領域50には無機絶縁層31、無機絶縁層33、及び無機絶縁層64が設けられていないため、分断によりこれらの層にクラックが発生することを抑制できる。したがって、発光装置10Aを、曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、発光装置10A内部においてクラックが発生しにくく、また、クラックが発生しても進行しにくい。これにより、発光装置10Aの曲げ耐性を高めることができる。
【0054】
発光装置10Aの側面を含む領域50は、基板21、接着層22、有機絶縁層35、接着層24、及び基板23を有する。これらの層は、それぞれ、有機材料を含むことが好ましい。一方、有機材料は、無機材料に比べて防水性が低いため、発光装置10Aの側面から領域50を通って水などの不純物が発光装置10Aの内部に入り込む恐れがある。したがって、トランジスタ40の端部(少なくともチャネルが形成される半導体層の端部)よりも外側かつ領域50よりも内側において、無機絶縁層どうしが互いに接することが好ましく、発光素子60の端部よりも外側かつ領域50よりも内側において、無機絶縁層どうしが互いに接することが好ましい(領域51参照)。発光装置10Aの側面から領域50を通って不純物が入り込んでも、領域51により、不純物が発光素子60及びトランジスタ40に到達しにくくすることができる。これにより、発光装置10Aの信頼性を高めることができる。
【0055】
領域51では、無機絶縁層31と無機絶縁層33とが互いに接している。また、領域51では、有機絶縁層35に設けられた開口を介して、無機絶縁層33と無機絶縁層64とが互いに接している。
【0056】
図1Bに示す発光装置10Bは、発光装置10Aの構成に加えて、有機絶縁層39を有する。有機絶縁層39は、無機絶縁層31の端部及び無機絶縁層33の端部を覆い、有機絶縁層39の端部は、発光装置10Bの側面に露出する。有機絶縁層35は、有機絶縁層39上に位置する。
【0057】
図1Bにおいて、発光装置10Bの側面を含む領域50は、基板21、接着層22、有機絶縁層39、有機絶縁層35、接着層24、及び基板23を有する。
【0058】
無機絶縁層31から基板23までの積層構造は、支持基板(図示しない)上に剥離層を介して形成された後、支持基板と分離され、基板21に転置される。後述する剥離層の構成によっては、領域50と他の領域とで、分離界面が異なる場合がある。例えば、有機絶縁層35と剥離層との界面で分離する場合、当該界面の密着性を低減させる処理(加熱やレーザ光照射)により、有機絶縁層35にダメージが入る恐れがある。有機絶縁層35は、平坦化層としての機能、及び発光素子60を支持する層としての機能などを有するため、有機絶縁層35にダメージが入ることで、発光装置の信頼性が低下する恐れがある。そのため、領域50に有機絶縁層39を設け、有機絶縁層39と剥離層との界面で分離する構成とすることが好ましい。有機絶縁層39は、有機絶縁層35とは異なる材料で形成されることが好ましい。具体的には、領域50における剥離性が高くなるように、有機絶縁層39の材料を選択することが好ましい。分離界面に有機絶縁層35が位置する場合に比べて、有機絶縁層39が位置することで、剥離性を高めることができると好ましい。一例として、有機絶縁層39にポリイミド樹脂を用い、有機絶縁層35にアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0059】
[発光装置の上面構造]
図2A~
図2Dに、本実施の形態の発光装置の上面図を示す。各発光装置は、発光部381、回路382、外部接続端子383、及び配線部384を有する。
【0060】
図2Aに示す発光装置EP1は、発光部381を挟むように設けられた一対の領域(領域50a及び領域50b)を有する。
【0061】
発光装置EP1は、例えば領域52において曲げることができる。発光装置EP1は、領域52において、領域50aと、領域50bと、発光部381と、の3か所を通る線に沿って曲げることができる。
【0062】
図2Bに示す発光装置EP2は、発光部381、回路382、外部接続端子383、及び配線部384を囲むように設けられた領域50を有する。
【0063】
発光装置EP2は、例えば領域52A及び領域52Bにおいて曲げることができる。発光装置EP2は、領域52Aにおいて、領域50の2か所と、発光部381と、の計3か所を通る線に沿って曲げることができる。当該領域50の2か所は、発光部381を挟むように位置する。また、発光装置EP2は、領域52Bにおいて、領域50の2か所と、配線部384と、の計3か所を通る線に沿って曲げることができる。当該領域50の2か所は、配線部384を挟むように位置する。
【0064】
図2Cに示す発光装置EP3は、領域50a、領域50b、及び領域50cを有する。領域50aと領域50cとは、発光部381及び配線部384を挟むように設けられており、領域50bと領域50cとは、発光部381及び配線部384を挟むように設けられている。
【0065】
発光装置EP3は、例えば2つの領域52において曲げることができる。発光装置EP3は、各領域52において、領域50aまたは領域50bと、領域50cと、配線部384と、発光部381と、の4か所を通る線に沿って曲げることができる。
【0066】
図2Dに示す発光装置EP4は、発光部381を挟むように設けられた一対の領域(領域50a及び領域50b)と、配線部384を挟むように設けられた一対の領域(領域50c及び領域50d)と、を有する。
【0067】
発光装置EP4は、例えば領域52A及び領域52Bにおいて曲げることができる。発光装置EP4は、領域52Aにおいて、領域50aと、領域50bと、発光部381と、の3か所を通る線に沿って曲げることができる。発光装置EP4は、領域52Bにおいて、領域50cと、領域50dと、配線部384と、の3か所を通る線に沿って曲げることができる。
【0068】
図2A~
図2Dに示す領域50、及び領域50a~領域50dには、それぞれ、発光装置10A(
図1A)または発光装置10B(
図1B)と同様の構成を適用することができる。つまり、領域50、及び領域50a~領域50dは、それぞれ、発光部381及び配線部384に延在する無機膜が設けられていない領域であるといえる。したがって、これらの領域を含むように発光装置を曲げることで、クラックの発生及び進行を抑制することができる。これにより、発光装置の曲げ耐性を高めることができる。
【0069】
ここで、
図3A及び
図3Bに、複数の発光装置を発光装置ごとに分割する方法について説明する。
【0070】
図3A及び
図3Bに、4つの発光装置EPを含む大判パネル55の上面図を示す。分断線66に沿って大判パネル55を分断することで、発光装置EPを1つずつに分割することができる。ここで、分断線66は領域50を通ることが好ましい。領域50は、発光部に延在する無機膜が設けられていない領域である。分断線66が領域50を通ることで、分断時に発光装置EPにクラックが発生することを抑制できる。なお、
図3Aに示す互いに隣り合う領域50Aは、
図3Bに示す領域50Bのようにつながっていてもよい。これにより、分断線の数を減らし、分断工程を短縮することができる。また、分断部の面積を縮小でき、発光部の面積を拡大することができる。
【0071】
[発光装置の作製方法]
次に、本発明の一態様の発光装置の作製方法について、
図4~
図18を用いて説明する。
【0072】
なお、発光装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法や、熱CVD法などがある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0073】
また、発光装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等の方法により形成することができる。
【0074】
また、発光装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いて加工することができる。または、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0075】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。一つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう一つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0076】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外光(EUV:Extreme Ultra-violet)やX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0077】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0078】
<作製方法例1>
図4~
図6を用いて、発光装置の作製方法例1について説明する。
【0079】
まず、支持基板11上に島状の金属酸化物層12を形成し、金属酸化物層12上に島状の樹脂層13を形成し、支持基板11上及び樹脂層13上に無機絶縁層31を形成する(
図4A)。
【0080】
作製方法例1では、金属酸化物層12と樹脂層13との界面で分離させる例を示す。当該界面の密着性を低下させる方法としては、代表的には、樹脂層13形成時の酸素を含む雰囲気下での加熱処理、及び樹脂層13へのレーザ光の照射が挙げられる。本実施の形態の発光装置の作製方法では、当該加熱処理及び当該レーザ光の照射の少なくとも一方を行うことが好ましい。なお、脆弱化された樹脂層13中で分離が生じる場合もある。
【0081】
樹脂層13の一面全体にレーザ光を照射する場合、線状レーザビームを用いることが好適である。レーザとしては、エキシマレーザ、固体レーザなどを用いることができる。例えば、ダイオード励起固体レーザ(DPSS)を用いてもよい。また、低温ポリシリコン(LTPS(Low Temperature Poly-Silicon))等の製造ラインのレーザ装置を使用することができるため、これらの装置の有効利用が可能である。例えば、LTPSの結晶化工程に用いる線状レーザ装置は、基板の向きを表裏逆にし、支持基板11側を表面としてレーザ光を真上から照射することで、本発明の一態様におけるレーザ光照射工程に、転用可能である。また、既存のLTPSの製造ラインは、酸化物半導体(OS)を用いるトップゲート型のセルフアライン構造のトランジスタの製造ラインに適用できる。このように、既存のLTPSの製造設備は、本発明の一態様の分離工程と、OSトランジスタの製造工程を有する製造設備として容易に切り替え可能である。
【0082】
または、樹脂層13形成時に酸素を含む雰囲気下で加熱処理を行う場合、樹脂層13の一面全体にレーザ光を照射する工程を削減することができる。線状レーザビームを照射するためのレーザ装置は、装置自体が高価であり、かつ、ランニングコストが高い。本発明の一態様では、当該レーザ装置が不要となるため、大幅にコストを抑えることが可能となる。また、大判基板への適用も容易である。
【0083】
また、支持基板11を介して樹脂層13にレーザ光を照射する際、支持基板11の光照射面にゴミなどの異物が付着していると、光の照射ムラが生じ樹脂層13に剥離性が低い部分が生じ、支持基板11と樹脂層13を分離する工程の歩留まりが低下することがある。本発明の一態様では、加熱処理により樹脂層13の剥離性を高めることができる。支持基板11に異物が付着していても樹脂層13に加熱のムラは生じにくいため、支持基板11と樹脂層13を分離する工程の歩留まりが低下しにくい。
【0084】
金属酸化物層12と無機絶縁層31とは、材料によっては、密着性が低い場合がある。金属酸化物層12と無機絶縁層31との密着性が低いと、発光装置の作製工程中に意図せず膜剥がれ(ピーリング)が生じ、歩留まりが低下することがある。例えば、金属酸化物層12に酸化チタン膜を用い、無機絶縁層31に酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等の無機絶縁膜を用いる際に、膜剥がれが確認されることがある。そのため、金属酸化物層12の上面及び側面を覆うように樹脂層13を設けることが好ましい。これにより、金属酸化物層12と無機絶縁層31が接する領域をなくし、意図しない膜剥がれを低減することができる。また、金属酸化物層12と無機絶縁層31との密着性を考慮する必要がないため、金属酸化物層12及び無機絶縁層31のそれぞれに用いる材料の選択の幅を広げることができる。
【0085】
また、金属酸化物層12と樹脂層13を島状に設け、島状の金属酸化物層12の端部及び島状の樹脂層13の端部を覆うように、無機絶縁層31を設けることが好ましい。支持基板11の一面全体に金属酸化物層12及び樹脂層13を設けると、樹脂層13が意図せず金属酸化物層12から剥がれることがある。そこで、支持基板11上に無機絶縁層31が接する領域を設けることが好ましい。これにより、樹脂層13が意図せず金属酸化物層12から剥がれることを抑制できる。そして、分離の起点を形成することで分離のタイミングを制御でき、所望のタイミングで金属酸化物層12と樹脂層13とを分離することができる。
【0086】
支持基板11は、搬送が容易となる程度に剛性を有し、かつ作製工程にかかる温度に対して耐熱性を有する。支持基板11に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、セラミック、サファイヤ、樹脂、半導体、金属または合金などが挙げられる。ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
【0087】
作製方法例1では、支持基板11と樹脂層13の間に下地層を形成する。下地層は、単層構造及び積層構造のどちらでもよく、金属層及び金属酸化物層の一方または双方を用いることができる。
【0088】
具体的には、下地層には、チタン、モリブデン、アルミニウム、タングステン、シリコン、インジウム、亜鉛、ガリウム、タンタル、錫、ハフニウム、イットリウム、ジルコニウム、マグネシウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ビスマス、及びニオブのうち一つまたは複数を有する層を用いることができる。下地層には、金属、合金、及びそれらの化合物(金属酸化物など)を含むことができる。下地層は、チタン、モリブデン、アルミニウム、タングステン、シリコン、インジウム、亜鉛、ガリウム、タンタル、及び錫のうち一つまたは複数を有することが好ましい。
【0089】
金属酸化物層12には、各種金属の酸化物を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiOx)、酸化モリブデン、酸化アルミニウム、酸化タングステン、シリコンを含むインジウム錫酸化物(ITSO)、インジウム亜鉛酸化物、In-Ga-Zn酸化物等が挙げられる。
【0090】
そのほか、金属酸化物としては、酸化インジウム、チタンを含むインジウム酸化物、タングステンを含むインジウム酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、チタンを含むITO、タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムを含むZnO、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化スズ、酸化ビスマス、チタン酸塩、タンタル酸塩、ニオブ酸塩等が挙げられる。
【0091】
金属層を成膜した後に、当該金属層に酸素を導入することで、金属酸化物層12を形成することができる。このとき、金属層の表面のみ、または金属層全体を酸化させる。前者の場合、金属層に酸素を導入することで、金属層と金属酸化物層との積層構造が形成される。
【0092】
例えば、酸素を含む雰囲気下で金属層を加熱することで、金属層を酸化させることができる。酸素を含むガスを流しながら金属層を加熱することが好ましい。金属層を加熱する温度は、100℃以上500℃以下が好ましく、100℃以上450℃以下がより好ましく、100℃以上400℃以下がより好ましく、100℃以上350℃以下がさらに好ましい。
【0093】
金属層は、トランジスタの作製における最高温度以下の温度で加熱されることが好ましい。これにより、発光装置の作製における最高温度が高くなることを防止できる。トランジスタの作製における最高温度以下とすることで、トランジスタの作製工程における製造装置などを流用することが可能となるため、追加の設備投資などを抑制することができる。したがって、生産コストが抑制された発光装置とすることができる。例えば、トランジスタの作製温度が350℃までである場合、加熱処理の温度は350℃以下とすることが好ましい。
【0094】
または、金属層の表面にラジカル処理を行うことで金属層を酸化させることができる。ラジカル処理では、酸素ラジカル及びヒドロキシラジカルのうち少なくとも一方を含む雰囲気に、金属層の表面を曝すことが好ましい。例えば、酸素または水蒸気(H2O)のうち一方または双方を含む雰囲気でプラズマ処理を行うことが好ましい。
【0095】
金属酸化物層12の表面または内部に、水素、酸素、水素ラジカル(H*)、酸素ラジカル(O*)、ヒドロキシラジカル(OH*)等を含ませることで、金属酸化物層12と樹脂層13との分離に要する力を低減できる。このことからも、金属酸化物層12の形成に、ラジカル処理もしくはプラズマ処理を行うことは好適である。
【0096】
金属層の表面にラジカル処理もしくはプラズマ処理を行うことで金属層を酸化させる場合、金属層を高温で加熱する工程が不要となる。そのため、発光装置の作製における最高温度が高くなることを防止できる。
【0097】
または、酸素雰囲気下で、金属酸化物層12を形成することができる。例えば、酸素を含むガスを流しながら、スパッタリング法を用いて金属酸化物膜を成膜することで、金属酸化物層12を形成できる。この場合も、金属酸化物層12の表面にラジカル処理を行うことが好ましい。ラジカル処理では、酸素ラジカル、水素ラジカル、及びヒドロキシラジカルのうち少なくとも1種を含む雰囲気に、金属酸化物層12の表面を曝すことが好ましい。例えば、酸素、水素、または水蒸気(H2O)のうち一つまたは複数を含む雰囲気でプラズマ処理を行うことが好ましい。
【0098】
ラジカル処理は、プラズマ発生装置またはオゾン発生装置を用いて行うことができる。
【0099】
例えば、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、水プラズマ処理、オゾン処理等を行うことができる。酸素プラズマ処理は、酸素を含む雰囲気下でプラズマを生成して行うことができる。水素プラズマ処理は、水素を含む雰囲気下でプラズマを生成して行うことができる。水プラズマ処理は、水蒸気(H2O)を含む雰囲気下でプラズマを生成して行うことができる。特に水プラズマ処理を行うことで、金属酸化物層12の表面または内部に水分を多く含ませることができ好ましい。
【0100】
酸素、水素、水(水蒸気)、及び不活性ガス(代表的にはアルゴン)のうち2種以上を含む雰囲気下でのプラズマ処理を行ってもよい。当該プラズマ処理としては、例えば、酸素と水素とを含む雰囲気下でのプラズマ処理、酸素と水とを含む雰囲気下でのプラズマ処理、水とアルゴンとを含む雰囲気下でのプラズマ処理、酸素とアルゴンとを含む雰囲気下でのプラズマ処理、または酸素と水とアルゴンとを含む雰囲気下でのプラズマ処理などが挙げられる。プラズマ処理のガスの一つとして、アルゴンガスを用いることで金属層または金属酸化物層12にダメージを与えながら、プラズマ処理を行うことが可能となるため好適である。
【0101】
2種以上のプラズマ処理を大気に暴露することなく連続で行ってもよい。例えば、アルゴンプラズマ処理を行った後に、水プラズマ処理を行ってもよい。
【0102】
そのほか、酸素、水素、水等の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法等を用いることができる。
【0103】
金属層の厚さは、1nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上50nm以下がより好ましく、1nm以上20nm以下がより好ましい。
【0104】
金属酸化物層12の厚さは、例えば、1nm以上200nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。なお、金属層を用いて金属酸化物層12を形成する場合、最終的に形成される金属酸化物層12の厚さは、成膜した金属層の厚さよりも厚くなることがある。
【0105】
金属酸化物層12には、酸化チタン、酸化タングステン等が好適である。酸化チタンを用いると、酸化タングステンよりもコストを低減でき、好ましい。
【0106】
樹脂層13は、各種樹脂材料(樹脂前駆体を含む)を用いて形成することができる。樹脂層13は、熱硬化性を有する材料を用いて形成することが好ましい。
【0107】
樹脂層13は、感光性を有する材料を用いて形成してもよく、感光性を有さない材料(非感光性の材料ともいう)を用いて形成してもよい。感光性を有する材料を用いると、光を用いたリソグラフィ法により、所望の形状の樹脂層13を形成することができる。例えば、樹脂層13は、開口または凹凸形状を有していてもよい。
【0108】
樹脂層13は、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、またはアクリル樹脂を含む材料を用いて形成されることが好ましい。樹脂層13は、例えば、ポリイミド樹脂と溶媒を含む材料、ポリアミック酸と溶媒を含む材料、またはアクリル樹脂と溶媒を含む材料等を用いて形成できる。ポリイミド樹脂またはポリイミド樹脂前駆体を含む材料は、耐熱性が比較的高いため、好ましい。アクリル樹脂を含む材料は、可視光に対する透過性が高いため、好ましい。ポリイミド樹脂及びアクリル樹脂は、それぞれ、発光装置の平坦化膜等に好適に用いられる材料であるため、成膜装置や材料を共有することができる。そのため本発明の一態様の構成を実現するために新たな装置や材料を必要としない。このように、樹脂層13は、特別な材料は必要でなく、発光装置に用いる樹脂材料を用いて形成できるため、コストを抑制することができる。
【0109】
そのほか、樹脂層13の形成に用いることができる樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等が挙げられる。
【0110】
樹脂層13となる膜を形成した後、当該膜に対して加熱処理を行うことで、樹脂層13を形成することができる。
【0111】
加熱処理は、例えば、加熱装置のチャンバーの内部に、酸素、窒素、及び希ガス(アルゴンなど)のうち一つまたは複数を含むガスを流しながら行うことができる。または、加熱処理は、大気雰囲気下で加熱装置のチャンバー、ホットプレート等を用いて行うことができる。
【0112】
窒素ガスを流しながら、加熱を行うことが好ましい。これにより、加熱雰囲気中に含まれる酸素を大気雰囲気よりも少なくすることができ、樹脂層13の酸化を抑制し、樹脂層13の可視光に対する透過性を高めることができる。
【0113】
または、大気雰囲気下で加熱を行うことが好ましい。または、酸素を含むガスを流しながら加熱を行うことが好ましい。樹脂層13が酸素を多く含むほど、金属酸化物層12と樹脂層13とを分離するために要する力を小さくできる。加熱処理の雰囲気の酸素の割合が高いほど、樹脂層13に多くの酸素を含ませることができ、樹脂層13と金属酸化物層12とを容易に分離することができる。
【0114】
例えば、後の工程において、樹脂層13の一面全体にレーザ光を照射する場合は、窒素ガスを流しながら加熱を行うことが好ましい。また、レーザ光の照射を行わない場合、酸素を含む雰囲気下で加熱を行うことが好ましい。
【0115】
加熱処理により、樹脂層13中の脱ガス成分(例えば、水素、水等)を低減することができる。特に、樹脂層13上に形成する各層の作製温度以上の温度で加熱することが好ましい。これにより、トランジスタの作製工程における、樹脂層13からの脱ガスを大幅に抑制することができる。
【0116】
例えば、トランジスタの作製温度が350℃までである場合、樹脂層13となる膜を350℃以上450℃以下で加熱することが好ましく、400℃以下がより好ましく、375℃以下がさらに好ましい。これにより、トランジスタの作製工程における、樹脂層13からの脱ガスを大幅に抑制することができる。
【0117】
加熱処理の温度は、トランジスタの作製における最高温度以下の温度とすることが好ましい。トランジスタの作製における最高温度以下とすることで、トランジスタの作製工程における製造装置などを流用することが可能となるため、追加の設備投資などを抑制することができる。したがって、生産コストが抑制された発光装置とすることができる。例えば、トランジスタの作製温度が350℃までである場合、加熱処理の温度は350℃以下とすることが好ましい。
【0118】
トランジスタの作製における最高温度と、加熱処理の温度を等しくすると、加熱処理を行うことで発光装置の作製における最高温度が高くなることを防止でき、かつ樹脂層13の脱ガス成分を低減できるため、好ましい。
【0119】
処理時間を長くすることで、加熱温度が比較的低い場合であっても、加熱温度がより高い条件の場合と同等の剥離性を実現できる場合がある。そのため、加熱装置の構成により加熱温度を高められない場合には、処理時間を長くすることが好ましい。
【0120】
加熱処理の時間は、例えば、5分以上24時間以下が好ましく、30分以上12時間以下がより好ましく、1時間以上6時間以下がさらに好ましい。なお、加熱処理の時間はこれに限定されない。例えば、加熱処理を、RTA(Rapid Thermal Annealing)法を用いて行う場合などは、5分未満としてもよい。
【0121】
加熱装置としては、電気炉や、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって被処理物を加熱する装置等、様々な装置を用いることができる。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。RTA装置を用いることによって、処理時間を短縮することができるので、量産する上で好ましい。また、加熱処理はインライン型の加熱装置を用いて行ってもよい。
【0122】
加熱処理を行う前に、樹脂層13となる膜に含まれる溶媒を除去するための熱処理(プリベーク処理ともいう)を行ってもよい。プリベーク処理の温度は用いる材料に応じて適宜決定することができる。例えば、50℃以上180℃以下、80℃以上150℃以下、または90℃以上120℃以下で行うことができる。または、加熱処理がプリベーク処理を兼ねてもよく、加熱処理によって、当該溶媒を除去してもよい。
【0123】
樹脂層13は、可撓性を有する。支持基板11は、樹脂層13よりも可撓性が低い。
【0124】
樹脂層13の厚さは、0.01μm以上10μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。樹脂層を薄く形成することで、低コストで発光装置を作製できる。また、発光装置の軽量化及び薄型化が可能となる。また、発光装置の可撓性を高めることができる。低粘度の溶液を用いることで、樹脂層13を薄く形成することが容易となる。ただし、これに限定されず、樹脂層13の厚さは、10μm以上としてもよい。例えば、樹脂層13の厚さを10μm以上200μm以下としてもよい。樹脂層13の厚さを10μm以上とすることで、発光装置の剛性を高めることができるため好適である。
【0125】
樹脂層13の熱膨張係数は、0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であることが好ましく、0.1ppm/℃以上20ppm/℃以下であることがより好ましく、0.1ppm/℃以上10ppm/℃以下であることがさらに好ましい。樹脂層13の熱膨張係数が低いほど、加熱により、トランジスタ等を構成する層にクラックが生じることや、トランジスタ等が破損することを抑制できる。
【0126】
無機絶縁層31は、後の加熱工程において、金属酸化物層12及び樹脂層13などから放出される水素、酸素、及び水をブロックする機能を有することが好ましい。
【0127】
無機絶縁層31は、樹脂層13の耐熱温度以下の温度で形成する。加熱処理の温度より低い温度で形成することが好ましい。
【0128】
無機絶縁層31としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。特に、樹脂層13上に窒化シリコン膜を形成し、窒化シリコン膜上に酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
【0129】
なお、本明細書等において「酸化窒化シリコン」とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものをいう。また、本明細書等において、「窒化酸化シリコン」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものをいう。
【0130】
無機絶縁層31は、成膜温度が高いほど緻密でバリア性の高い膜となるため、高温で形成することが好ましい。
【0131】
無機絶縁層31の成膜時の基板温度は、室温(25℃)以上350℃以下が好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。
【0132】
次に、無機絶縁層31の、金属酸化物層12及び樹脂層13と重なる位置に、開口を形成する(
図4B)。無機絶縁層31に開口を形成する工程は、有機絶縁層35の形成より前に行えばよく、トランジスタ80の作製前、作製中、及び作製後のいずれかで行うことができる。
【0133】
次に、無機絶縁層31上にトランジスタ80を形成する(
図4C)。
【0134】
発光装置が有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート構造またはボトムゲート構造のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネルの上下にゲート電極が設けられていてもよい。
【0135】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0136】
トランジスタの半導体層は、金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有することが好ましい。または、トランジスタの半導体層は、シリコンを有していてもよい。シリコンとしては、アモルファスシリコン、結晶性のシリコン(低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)などが挙げられる。
【0137】
本実施の形態において、トランジスタの半導体には、酸化物半導体を用いる。シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい半導体材料を用いると、トランジスタのオフ状態における電流を低減できるため好ましい。
【0138】
ここではトランジスタ80として、金属酸化物層83と2つのゲートを有するトランジスタを作製する場合を示す。
【0139】
トランジスタ80は、樹脂層13の耐熱温度以下の温度で形成する。トランジスタ80は、樹脂層13形成時の加熱処理の温度より低い温度で形成することが好ましい。
【0140】
具体的には、まず、無機絶縁層31上に、ゲート電極として機能する導電層81を形成する。導電層81は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。
【0141】
発光装置が有する導電層には、それぞれ、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、もしくはタングステン等の金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いることができる。または、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(ITO)、タングステンを含むインジウム酸化物、タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、チタンを含むインジウム酸化物、チタンを含むITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムを含むZnO、またはシリコンを含むITO等の透光性を有する導電性材料を用いてもよい。また、不純物元素を含有させる等して低抵抗化させた、多結晶シリコンもしくは酸化物半導体等の半導体、またはニッケルシリサイド等のシリサイドを用いてもよい。また、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。また、不純物元素を含有させた酸化物半導体等の半導体を用いてもよい。または、銀、カーボン、もしくは銅等の導電性ペースト、またはポリチオフェン等の導電性ポリマーを用いて形成してもよい。導電性ペーストは、安価であり、好ましい。導電性ポリマーは、塗布しやすく、好ましい。
【0142】
続いて、ゲート絶縁層として機能する絶縁層32を形成する。絶縁層32は、無機絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。
【0143】
続いて、酸化物半導体層として機能する金属酸化物層83を形成する。金属酸化物層83は、金属酸化物膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該金属酸化物膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。
【0144】
金属酸化物膜は、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましい。
【0145】
特に、金属酸化物膜として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0146】
金属酸化物膜がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0147】
スパッタリングターゲットとしては、多結晶の酸化物を含むターゲットを用いると、結晶性を有する半導体層を形成しやすくなるため好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、半導体層に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される半導体層の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0148】
なお、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍であると記載する場合、Inの原子数比を4としたとき、Gaの原子数比が1以上3以下であり、Znの原子数比が2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍であると記載する場合、Inの原子数比を5としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍であると記載する場合、Inの原子数比を1としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0149】
金属酸化物膜において、Inの原子数比がM(例えばGa)の原子数比より高いと、トランジスタの電界効果移動度を高めることができ、好ましい。また、金属酸化物膜において、M(例えばGa)の原子数比がInの原子数比より高いと、酸素欠損が形成されにくく、好ましい。
【0150】
また、金属酸化物層83は、複数の金属酸化物膜を積層して有していてもよい。
【0151】
金属酸化物膜の成膜時の基板温度は、350℃以下が好ましく、室温以上200℃以下がより好ましく、室温以上130℃以下がさらに好ましい。
【0152】
金属酸化物膜は、不活性ガス及び酸素ガスのいずれか一方または双方を用いて成膜することができる。なお、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)に、特に限定はない。ただし、電界効果移動度が高いトランジスタを得る場合においては、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)は、0%以上30%以下が好ましく、5%以上30%以下がより好ましく、7%以上15%以下がさらに好ましい。
【0153】
金属酸化物膜は、エネルギーギャップが2eV以上であることが好ましく、2.5eV以上であることがより好ましく、3eV以上であることがさらに好ましい。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物膜を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0154】
金属酸化物膜は、スパッタリング法により形成することができる。そのほか、PLD法、PECVD法、熱CVD法、ALD法、真空蒸着法などを用いてもよい。
【0155】
続いて、金属酸化物層83上に、ゲート絶縁層として機能する絶縁層34を形成する。絶縁層34は、無機絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。
【0156】
次に、絶縁層34上に、ゲート電極として機能する導電層85を形成する。導電層85は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。
【0157】
次に、導電層85をマスクとして、金属酸化物層83に不純物元素を供給し、低抵抗領域83nを形成する。金属酸化物層83のうち、導電層85と重なる領域(チャネル形成領域83i)には、不純物元素は供給されない。
【0158】
不純物元素の供給には、プラズマイオンドーピング法またはイオン注入法を好適に用いることができる。これらの方法は、深さ方向の濃度プロファイルを、イオンの加速電圧とドーズ量等により、高い精度で制御することができる。プラズマイオンドーピング法を用いることで、生産性を高めることができる。また、質量分離を用いたイオン注入法を用いることで、供給される不純物元素の純度を高めることができる。
【0159】
不純物元素としては、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、ヒ素、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、及び希ガスなどが挙げられる。不純物元素として、ホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム、またはシリコンを用いることが好ましく、ホウ素またはリンを用いることがより好ましい。
【0160】
不純物元素の原料ガスとしては、上記不純物元素を含むガスを用いることができる。ホウ素を供給する場合、代表的にはB2H6ガスやBF3ガスなどを用いることができる。また、リンを供給する場合には、代表的にはPH3ガスを用いることができる。また、これらの原料ガスを希ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。
【0161】
その他、原料ガスとして、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HF、H2、(C5H5)2Mg、及び希ガス等を用いることができる。また、イオン源は、気体に限られず、固体や液体を加熱して気化させてもよい。
【0162】
なお、不純物元素の供給方法に限定は無く、例えばプラズマ処理や、加熱による熱拡散を利用した処理などを用いてもよい。プラズマ処理法の場合、供給する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を供給することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
【0163】
本発明の一態様では、絶縁層34を介して不純物元素を金属酸化物層83に供給することができる。これにより、不純物元素の供給の際に金属酸化物層83の結晶性が低下することを抑制できる。そのため、結晶性の低下により電気抵抗が増大してしまう場合に特に好適である。
【0164】
次に、金属酸化物層83、絶縁層34、及び導電層85を覆う無機絶縁層36を形成する。無機絶縁層36は、無機絶縁層31と同様の方法により形成することができる。
【0165】
次に、絶縁層34及び無機絶縁層36に、金属酸化物層83の低抵抗領域83nに達する開口を形成する。
【0166】
続いて、導電層87a及び導電層87bを形成する。導電層87a及び導電層87bは、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。導電層87a及び導電層87bは、それぞれ、絶縁層34及び無機絶縁層36に設けられた開口を介して金属酸化物層83の低抵抗領域83nと電気的に接続される。
【0167】
以上のようにして、トランジスタ80を作製できる(
図4C)。
【0168】
なお、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36には、樹脂層13に達する開口を形成する(
図4C)。当該開口は、有機絶縁層35の形成より前に形成すればよく、トランジスタ80の作製中または作製後に形成することができる。なお、複数の層にまとめて開口を形成してもよく、1層ごとに開口を形成してもよい。
【0169】
次に、無機絶縁層36上及びトランジスタ80上に、有機絶縁層35を形成する(
図4D)。有機絶縁層35は、後に形成する発光素子の被形成面を有する層であるため、平坦化層として機能することが好ましい。
【0170】
有機絶縁層35に用いることができる材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等が挙げられる。
【0171】
有機絶縁層35は、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36に設けられた開口を埋めるように設けられ、当該開口を介して、樹脂層13と接する。有機絶縁層35は、当該開口よりも内側に、無機絶縁層36に達する開口を有するように、形成される。また、有機絶縁層35は、導電層87aに達する開口を有するように、形成される。
【0172】
次に、電極61を形成する(
図4E)。電極61は、その一部が発光素子60の画素電極として機能する。電極61は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。有機絶縁層35に設けられた開口を介して、電極61は、導電層87aと電気的に接続される。
【0173】
次に、電極61の端部を覆う隔壁37を形成する。隔壁37は、無機材料及び有機材料のどちらを用いて形成してもよい。例えば、無機絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。また、有機絶縁層35に用いることができる材料を援用できる。
【0174】
次に、EL層62及び電極63を形成する(
図4E)。電極63は、その一部が発光素子60の共通電極として機能する。
【0175】
EL層62は少なくとも発光層を有する。EL層62は、発光層以外の層として、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)等を含む層をさらに有していてもよい。
【0176】
EL層62には低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。
【0177】
EL層62は、蒸着法、塗布法、印刷法、吐出法などの方法で形成することができる。EL層62を画素毎に作り分ける場合、メタルマスクなどのシャドウマスクを用いた蒸着法、またはインクジェット法等により形成することができる。EL層62を画素毎に作り分けない場合には、メタルマスクを用いない蒸着法を用いることができる。
【0178】
電極63は、蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0179】
電極63は、樹脂層13の耐熱温度以下かつEL層62の耐熱温度以下の温度で形成する。
【0180】
以上のようにして、発光素子60を形成することができる(
図4E)。
【0181】
次に、電極63を覆って無機絶縁層64を形成する(
図4E)。発光素子60は、無機絶縁層64によって封止される。電極63を形成した後、大気に曝すことなく、無機絶縁層64を形成することが好ましい。
【0182】
無機絶縁層64は、発光素子60に水などの不純物が拡散することを抑制する保護層として機能する。保護層は、単層構造または積層構造とすることができる。保護層は、例えば、無機絶縁層64からなる構成、無機絶縁層64を含む2層以上の層からなる構成、無機絶縁層64と有機絶縁膜とを含む2層以上の層からなる構成とすることができる。
【0183】
有機絶縁層35に設けられた開口を介して、無機絶縁層64は、無機絶縁層36と接続される。これにより、トランジスタ80(金属酸化物層83)及び発光素子60の上面、側面、及び底面を、複数の無機絶縁層(無機絶縁層31、無機絶縁層36、及び無機絶縁層64など)で囲うことができる。したがって、トランジスタ80及び発光素子60に不純物が入り込むことを抑制でき、トランジスタ80及び発光素子60の信頼性を高めることができる。
【0184】
無機絶縁層64は、無機絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。
【0185】
無機絶縁層64は、PECVD法、ALD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0186】
次に、接着層24を用いて、無機絶縁層64と基板23とを貼り合わせる(
図4E)。
【0187】
接着層24には、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤等の各種硬化型接着剤を用いることができる。また、接着シート等を用いてもよい。
【0188】
基板23は、発光素子60からの光を取り出す側に位置するため、可視光に対する透過性の高い材料を用いることが好ましい。基板23には、フィルムを用いることが好ましく、特に樹脂フィルムを用いることが好ましい。これにより発光装置の軽量化、薄型化が可能となる。また、フィルム基板を用いた発光装置は、ガラスや金属などを用いる場合に比べて、破損しにくい。また、発光装置の可撓性を高めることができる。
【0189】
基板23には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ABS樹脂、セルロースナノファイバー等を用いることができる。基板23には、可撓性を有する程度の厚さのガラスを用いてもよい。
【0190】
なお、表示装置に円偏光板を重ねる場合、表示装置が有する基板には、光学等方性の高い基板を用いることが好ましい。光学等方性が高い基板は、複屈折が小さい(複屈折量が小さい、ともいえる)。
【0191】
光学等方性が高い基板のリタデーション(位相差)値の絶対値は、30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
【0192】
光学等方性が高いフィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC、セルローストリアセテートともいう)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム、及びアクリルフィルム等が挙げられる。
【0193】
また、基板としてフィルムを用いる場合、フィルムが吸水することで、表示装置にしわが発生するなどの形状変化が生じる恐れがある。そのため、基板には、吸水率の低いフィルムを用いることが好ましい。例えば、吸水率が1%以下のフィルムを用いることが好ましく、0.1%以下のフィルムを用いることがより好ましく、0.01%以下のフィルムを用いることがさらに好ましい。
【0194】
また、表示装置の基板として、円偏光板を用いてもよい。
【0195】
次に、分離の起点を形成する。
図5Aでは、基板23側から樹脂層13の端部よりも内側に刃物などの鋭利な形状の器具65を差し込み、切れ目を入れる例を示す。切れ目は、枠状に形成することが好ましい。
【0196】
または、支持基板11側から、樹脂層13の一部または全体にレーザ光を照射することで、分離の起点を形成してもよい。
【0197】
次に、分離の起点から、金属酸化物層12と樹脂層13とを分離する(
図5B)。
【0198】
例えば、樹脂層13に垂直方向に引っ張る力をかけることにより、支持基板11と樹脂層13とを分離することができる。具体的には、基板23の上面の一部を吸着し、上方に引っ張ることにより、支持基板11から樹脂層13を引き剥がすことができる。
【0199】
ここで、分離時に、分離界面に水や水溶液など、水を含む液体を添加し、該液体が分離界面に浸透するように分離を行うことで、分離を容易に行うことができる。また、分離時に生じる静電気が、トランジスタなどの機能素子に悪影響を及ぼすこと(半導体素子が静電気により破壊されるなど)を抑制できる。
【0200】
供給する液体としては、水(好ましくは純水)、中性、アルカリ性、もしくは酸性の水溶液や、塩が溶けている水溶液が挙げられる。また、エタノール、アセトン等が挙げられる。また、各種有機溶剤を用いてもよい。
【0201】
そして、露出した樹脂層13に、接着層22を用いて、基板21を貼り合わせる(
図6A)。これにより、支持基板11に作製したトランジスタ80及び発光素子60等を、支持基板11から基板23に転置することができる。
【0202】
なお、樹脂層13を除去し、酸化物絶縁層15を露出させ、当該酸化物絶縁層15と基板21とを貼り合わせてもよい。樹脂層13は、アッシングなどにより除去することができる。樹脂層13を除去することで、発光装置の薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0203】
接着層22は、接着層24に用いることのできる材料を援用できる。
【0204】
基板21は、基板23に用いることのできる材料を援用できる。また、基板21には、可撓性を有する程度の厚さのガラス、石英、樹脂、金属、合金、半導体等の各種材料を用いることができる。
【0205】
そして、発光装置の外形加工を行うことで、発光装置を作製することができる(
図6B及び
図6C)。
図6Bに示すように、分断線66が、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36に設けられた開口と重なるように、分断を行う。つまり、分断位置には無機膜が設けられていない。したがって、分断により、発光装置の内部にマイクロクラックが生じることを抑制できる。そして、当該発光装置を、曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、クラックの発生及び進行を抑制できる。
【0206】
図6Cに示す発光装置の側面には主に有機膜が露出しているが、トランジスタ80(金属酸化物層83)及び発光素子60の上面、側面、及び底面は、複数の無機絶縁層(無機絶縁層31、無機絶縁層36、及び無機絶縁層64など)で囲われている。したがって、トランジスタ80及び発光素子60に不純物が入り込むことを抑制でき、トランジスタ80及び発光素子60の信頼性を高めることができる。
【0207】
<変形例1>
図7を用いて、変形例1を説明する。作製方法例1では、支持基板11と樹脂層13との間に下地層として金属酸化物層12を形成したが、下地層は設けなくてもよい。
【0208】
図7Aに示すように、支持基板11上に、直接(下地層を介さずに)、樹脂層13を形成してもよい。そして、
図7Bに示すように、樹脂層13上に、無機絶縁層31から基板23までの積層構造を形成する。
【0209】
支持基板11上に直接、樹脂層13を形成した場合であっても、上述の樹脂層13形成時の酸素を含む雰囲気下での加熱処理、及び樹脂層13へのレーザ光の照射の少なくとも一方を行うことで、支持基板11と基板23とを分離することができる。この場合、支持基板11と樹脂層13との界面、または樹脂層13中で、分離が生じる。
【0210】
また、
図7Bでは、トランジスタ80のゲート絶縁層として機能する絶縁層34が、導電層85と金属酸化物層83との間にのみ位置している例を示す。絶縁層34は、導電層85をマスクとして、島状に加工されていてもよい。
【0211】
このとき、無機絶縁層36は、水素を含むことが好ましい。加熱処理などにより、無機絶縁層36に含まれる水素が、金属酸化物層83の無機絶縁層36と接する領域に拡散することで、当該領域が低抵抗化し、低抵抗領域83nを形成することができる。無機絶縁層36を用いて低抵抗領域83nを形成する場合、上述の不純物元素の添加が不要となるため、トランジスタ80の作製工程を削減できることがある。
【0212】
<作製方法例2>
図8~
図10を用いて、発光装置の作製方法例2について説明する。
【0213】
まず、支持基板11上に島状の金属層14を形成し、金属層14の表面処理を行った後、島状の酸化物絶縁層15を形成し、支持基板11上及び酸化物絶縁層15上に無機絶縁層31を形成する(
図8A)。
【0214】
金属層14と酸化物絶縁層15を島状に設け、島状の金属層14及び島状の酸化物絶縁層15の端部を覆うように、無機絶縁層31を設けることが好ましい。支持基板11の一面全体に金属層14及び酸化物絶縁層15を設けると、酸化物絶縁層15が意図せず金属層14から剥がれることがある。そこで、支持基板11上に無機絶縁層31が接する領域を設けることが好ましい。これにより、酸化物絶縁層15が意図せず金属層14から剥がれることを抑制できる。分離の起点を形成することで分離のタイミングを制御でき、所望のタイミングで金属層14と酸化物絶縁層15とを分離することができる。
【0215】
金属層14に用いる材料としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、シリコンから選択された元素を含む金属、該元素を含む合金、又は該元素を含む化合物等が挙げられる。
【0216】
金属層14が単層構造の場合、タングステン層、モリブデン層、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成することが好ましい。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。例えば、Mo:W=3:1、1:1、又は1:3(いずれも原子数比)などのモリブデンとタングステンの合金膜を用いてもよい。また、モリブデンとタングステンの合金膜は、例えば、Mo:W=49:51、61:39、又は14.8:85.2(いずれも重量%)の組成の金属ターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
【0217】
金属層14は、例えばスパッタリング法、CVD法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD法など)、ALD法、塗布法(スピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法等を含む)、印刷法、蒸着法等により形成できる。
【0218】
金属層14の厚さは、1nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上200nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下とする。
【0219】
金属層14の表面処理として、金属層14の表面にプラズマ処理を行うことが好ましい。金属層14の表面状態を変えることにより、金属層14と酸化物絶縁層15との密着性を制御することができる。
【0220】
プラズマ処理は、亜酸化窒素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、金属層14の表面が酸化され、金属層14上に、金属層14を構成する材料の酸化物層(図示しない)を形成することができる。
【0221】
プラズマ処理は、亜酸化窒素及びシランを含む雰囲気下で行うことが好ましい。この方法によると、とても薄い厚さの酸化物層を形成することができる。酸化物層は、電子顕微鏡等による断面観察で確認が困難な程度に薄い膜であってもよい。酸化物層がとても薄い厚さであると、半導体素子の特性変動を抑制できる。また、発光素子の光を取り出す側に酸化物層が位置していても、発光装置の光取り出し効率の低下を抑制できる。なお、シランの代わりに、ジシラン又はトリシランを用いてもよい。
【0222】
亜酸化窒素とシランを含む雰囲気下でプラズマ処理を行うと、亜酸化窒素により金属層14の表面が酸化されると同時に、シランにより金属層14上に膜(例えば、酸化窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜など)が形成されることがある。例えば、プラズマ処理中に、厚さ1nm以上20nm以下の絶縁層が形成されてもよい。プラズマ処理中に、金属層14上に絶縁層が形成されることで、金属層14の酸化の進行を制御することができる。これにより、金属層14上に、薄膜の酸化物層を形成することができる。
【0223】
金属層14は、タングステン、チタン、またはモリブデンを含むことが好ましく、プラズマ処理により形成される酸化物層は、タングステン酸化物、チタン酸化物、又はモリブデン酸化物を含むことが好ましい。
【0224】
タングステン酸化物は一般にWOx(2≦x<3)で表記され、代表的にはWO3、W2O5、W4O11、WO2といった様々な組成をとりうる不定比性化合物としても存在する。またチタン酸化物及びモリブデン酸化物も同様に、不定比性化合物としても存在する。
【0225】
この段階における酸化物層は、酸素を多く含む状態であることが好ましい。例えば金属層14としてタングステンを用いた場合には、酸化物層がWO3を主成分とするタングステン酸化物であることが好ましい。
【0226】
酸化物絶縁層15としては、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜を用いることができる。酸化物絶縁層15は、酸素、窒素、及びシリコンを含むことが好ましい。
【0227】
酸化物絶縁層15は、さらに水素を含むことが好ましい。酸化物絶縁層15は、後の加熱工程において、水素を放出する機能を有することが好ましい。また、酸化物絶縁層15は、後の加熱工程において、水素及び窒素を放出する機能を有していてもよい。
【0228】
酸化物絶縁層15は、SIMSにより検出される水素濃度が1.0×1020atoms/cm3以上1.0×1022atoms/cm3以下、好ましくは5.0×1020atoms/cm3以上5.0×1021atoms/cm3以下である領域を含むことが好ましい。
【0229】
酸化物絶縁層15は、SIMSにより検出される窒素濃度が5.0×1020atoms/cm3以上1.0×1023atoms/cm3以下、好ましくは1.0×1021atoms/cm3以上5.0×1022atoms/cm3以下である領域を含むことが好ましい。
【0230】
酸化物絶縁層15は、スパッタリング法、プラズマCVD法などの成膜方法により形成できる。特に、酸化物絶縁層15に含まれる酸化窒化シリコン膜を、シランガス及び亜酸化窒素ガスを含む成膜ガスを用いたプラズマCVD法により成膜することで、多量の水素及び窒素を膜中に含有させることができるため好ましい。また、成膜ガス中のシランガスの割合を大きくするほど、後の加熱工程において水素の放出量が多くなるため好ましい。
【0231】
酸化物絶縁層15の厚さが厚いほど、水素や窒素の放出量が多くなるため好ましいが、生産性を考慮した厚さに設定することが好ましい。酸化物絶縁層15の厚さは、1nm以上1μm以下が好ましく、50nm以上800nm以下がより好ましく、100nm以上400nm以下がさらに好ましく、100nm以上200nm以下が特に好ましい。
【0232】
無機絶縁層31の材料については、作製方法例1の記載を参照できる。例えば、無機絶縁層31には、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜を用いることができる。
【0233】
無機絶縁層31は、窒素及びシリコンを含むことが好ましい。無機絶縁層31としては、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜を用いることが好ましく、特に、窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜を用いることが好ましい。
【0234】
無機絶縁層31は、後の加熱工程において、酸化物絶縁層15から放出された水素(及び窒素)をブロックする機能を有することが好ましい。
【0235】
無機絶縁層31は、スパッタリング法、プラズマCVD法などの成膜方法により形成できる。例えば、無機絶縁層31に含まれる窒化シリコン膜を、シランガス、窒素ガス及びアンモニアガスを含む成膜ガスを用いたプラズマCVD法により成膜する。
【0236】
無機絶縁層31の厚さは特に限定されない。例えば、50nm以上600nm以下、好ましくは100nm以上300nm以下の厚さとすればよい。
【0237】
無機絶縁層31の形成後に、金属層14及び酸化物絶縁層15に対して加熱処理を行う。加熱処理により、酸化物絶縁層15から水素(及び窒素)が放出され、酸化物層に供給される。このとき、無機絶縁層31が、放出された水素(及び窒素)をブロックするため、酸化物層に水素(及び窒素)を効率よく供給することができる。
【0238】
加熱処理は、酸化物絶縁層15から水素(及び窒素)が脱離する温度以上、支持基板11の軟化点以下で行えばよい。また、酸化物層内の金属酸化物の水素による還元反応が生じる温度以上で加熱を行うことが好ましい。加熱処理の温度が高いほど、酸化物絶縁層15からの水素(及び窒素)の脱離量が高まるため、その後の剥離性を向上させることができる。なお、加熱時間、加熱温度によっては、剥離性が高くなりすぎ、意図しないタイミングで剥離が生じる場合がある。したがって、金属層14にタングステンを用いる場合には、300℃以上700℃未満、好ましくは400℃以上650℃未満、より好ましくは400℃以上500℃以下の温度で加熱する。
【0239】
加熱処理を行う雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気下で行ってもよいが、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0240】
当該加熱処理は、トランジスタの作製前、作製中、及び作製後のいずれかで行うことができる。トランジスタの作製工程における加熱処理が、当該加熱処理を兼ねていてもよい。
【0241】
次に、金属層14、酸化物絶縁層15、及び無機絶縁層31に、支持基板11に達する開口を形成する(
図8A)。当該開口を形成する工程は、有機絶縁層35の形成より前に行えばよく、トランジスタ80の作製前、作製中、及び作製後のいずれかで行うことができる。
【0242】
次に、無機絶縁層31上に、トランジスタ70を形成する(
図8B)。
【0243】
ここではトランジスタ70として、金属酸化物層73と2つのゲートを有するトランジスタを作製する場合を示す。
【0244】
具体的には、まず、無機絶縁層31上に、ゲート電極として機能する導電層71を形成する。導電層71は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。
【0245】
続いて、ゲート絶縁層として機能する絶縁層32を形成する。絶縁層32は、無機絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。
【0246】
続いて、金属酸化物層73を形成する。金属酸化物層73は、金属酸化物膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該金属酸化物膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。金属酸化物層73は、金属酸化物層83に用いることのできる材料を援用できる。
【0247】
続いて、導電層77a及び導電層77bを形成する。導電層77a及び導電層77bは、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。導電層77a及び導電層77bは、それぞれ、金属酸化物層73と電気的に接続される。
【0248】
なお、導電層77a及び導電層77bの加工の際に、レジストマスクに覆われていない金属酸化物層73の一部がエッチングにより薄膜化する場合がある。
【0249】
続いて、ゲート絶縁層として機能する絶縁層34を形成する。絶縁層34は、無機絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。
【0250】
次に、絶縁層34上に、ゲート電極として機能する導電層75を形成する。導電層75は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。
【0251】
以上のようにして、トランジスタ70を作製できる(
図8B)。
【0252】
次に、金属酸化物層73、絶縁層34、及び導電層75を覆う無機絶縁層36を形成する。無機絶縁層36は、無機絶縁層31と同様の方法により形成することができる。
【0253】
なお、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36には、支持基板11に達する開口を形成する(
図8B)。当該開口は、有機絶縁層35の形成より前に形成すればよく、トランジスタ70の作製中または作製後に形成することができる。なお、複数の層にまとめて開口を形成してもよく、1層ごとに開口を形成してもよい。
【0254】
次に、支持基板11上、無機絶縁層36上、及びトランジスタ70上に、有機絶縁層35を形成する(
図8C)。有機絶縁層35の材料については、作製方法例1の記載を参照できる。
【0255】
有機絶縁層35は、金属層14、酸化物絶縁層15、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36に設けられた開口を埋めるように設けられ、当該開口を介して、支持基板11と接する。有機絶縁層35は、当該開口よりも内側に、無機絶縁層36に達する開口を有するように、形成される。また、有機絶縁層35は、導電層87aに達する開口を有するように、形成される。
【0256】
次に、作製方法例1と同様に、電極61から基板23までの積層構造を形成する(
図8D)。
【0257】
本作製方法例2では、ボトムエミッション構造の発光装置を作製する例を示す。発光素子60の発光領域は、トランジスタ70と重ならない位置に設けられる。発光素子60は、有機絶縁層35側に光を射出する電界発光素子である。
【0258】
次に、分離の起点を形成し(
図9A)、金属層14と酸化物絶縁層15とを分離する(
図9B)。
【0259】
図9Aでは、基板23側から金属層14の端部よりも内側に刃物などの鋭利な形状の器具65を差し込み、切れ目を入れる例を示す。切れ目は、枠状に形成することが好ましい。
【0260】
分離は、主として、金属層14と酸化物絶縁層15との間に位置する酸化物層の内部、及び、酸化物層と酸化物絶縁層15との界面で生じる。
【0261】
ここで、有機絶縁層35と支持基板11とが互いに接する領域では、支持基板11と有機絶縁層35との界面で分離が生じる。例えば、当該領域に沿って、レーザ光を照射することで、支持基板11と有機絶縁層35との密着性を低下させ、支持基板11と有機絶縁層35との界面で分離させることができる。
【0262】
そして、露出した酸化物絶縁層15及び有機絶縁層35に、接着層22を用いて、基板21を貼り合わせる(
図10A)。これにより、支持基板11に作製したトランジスタ70及び発光素子60等を、支持基板11から基板23に転置することができる。
【0263】
なお、分離界面が異なることに起因して、分離により露出した面に凹凸が生じている場合がある。液状の接着剤を用いて接着層22を形成すると、シート状の接着剤を用いる場合に比べて、凹凸が生じている面を平坦化することができ、好ましい。これにより、発光装置の厚さを均一にすることができる。
【0264】
接着層22及び基板21の材料については、作製方法例1の記載を参照できる。
【0265】
そして、発光装置の外形加工を行うことで、発光装置を作製することができる(
図10B及び
図10C)。
図10Bに示すように、分断線66が、酸化物絶縁層15、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36に設けられた開口と重なるように、分断を行う。分断位置には無機膜が設けられていない。したがって、分断により、発光装置の内部にマイクロクラックが生じることを抑制できる。そして、当該発光装置を、曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、クラックの発生及び進行を抑制できる。
【0266】
図10Cに示す発光装置の側面には主に有機膜が露出しているが、トランジスタ70及び発光素子60の上面、側面、及び底面は、複数の無機絶縁層(無機絶縁層31、無機絶縁層36、及び無機絶縁層64など)で囲われている。したがって、トランジスタ70及び発光素子60に不純物が入り込むことを抑制でき、トランジスタ70及び発光素子60の信頼性を高めることができる。
【0267】
<変形例2>
図11を用いて、変形例2を説明する。作製方法例2では、金属層14から無機絶縁層36までの積層構造に設けられた開口を埋めるように、有機絶縁層35を形成したが、有機絶縁層35を設ける前に、無機絶縁層36上に、当該開口を埋める有機絶縁層39を設けてもよい。これにより、支持基板11と有機絶縁層35との界面ではなく、支持基板11と有機絶縁層39との界面で分離が生じる。有機絶縁層39は、分断部とその近傍にのみ設けられ、発光部、回路、外部接続端子、及び配線部等には設けられないことが好ましい。
【0268】
支持基板11と有機絶縁層35との界面で分離を生じさせるためには、有機絶縁層35形成時の酸素を含む雰囲気下での加熱処理、及び有機絶縁層35へのレーザ光の照射の少なくとも一方を行うことが好ましい。しかし、有機絶縁層35に高い温度がかかることで、ダメージが入り、発光装置の信頼性が低下する恐れがある。別途、有機絶縁層39を設けることで、有機絶縁層35にダメージが入ることを抑制できる。また、有機絶縁層35と有機絶縁層39とで、材料を変えることで、それぞれの機能に適した層を形成することができる。例えば、有機絶縁層35にアクリル樹脂を用い、有機絶縁層39にポリイミド樹脂を用いることが好ましい。これにより、平坦化機能の高い有機絶縁層35と、剥離性の高い有機絶縁層35とを、形成することができる。
【0269】
具体的には、作製方法例2と同様に、
図8Bに示す積層構造を形成し、金属層14から無機絶縁層36までの積層構造に設けられた開口を埋めるように、有機絶縁層39を形成する(
図11A)。その後、無機絶縁層36上及び有機絶縁層39上に、有機絶縁層35を形成する(
図11B)。
【0270】
有機絶縁層39は、後の分断工程において分断される位置に設ける。有機絶縁層39は、発光部、回路、及び配線部等に延在しないように設けることが好ましい。
【0271】
有機絶縁層39の材料としては、作製方法例1の樹脂層13に用いることができる材料を援用できる。有機絶縁層39形成時の酸素を含む雰囲気下での加熱処理、及び有機絶縁層39へのレーザ光の照射の少なくとも一方を行うことで、支持基板11と有機絶縁層39とを分離することができる。
【0272】
有機絶縁層35は、金属層14から無機絶縁層36までの積層構造に設けられた開口よりも内側に、無機絶縁層36に達する開口を有するように、形成される。また、有機絶縁層35は、導電層87aに達する開口を有するように、形成される。
【0273】
<作製方法例3>
図12~
図14を用いて、発光装置の作製方法例3について説明する。
【0274】
まず、支持基板11上に、島状の金属層14を形成し、金属層14の表面処理を行った後、島状の酸化物絶縁層15を形成し、島状の酸化物絶縁層15上に、島状の金属層16を形成する(
図12A)。
【0275】
金属層14の材料については、作製方法例2の記載を参照できる。作製方法例2と同様に、金属層14の表面処理として、金属層14の表面にプラズマ処理を行い、金属層14に酸素を供給することが好ましい。
【0276】
酸化物絶縁層15は、後の加熱工程において、水素及びフッ素を放出する機能を有することが好ましい。酸化物絶縁層15は、さらに、後の加熱工程において、窒素を放出する機能を有していてもよい。
【0277】
例えば、作製方法例2で挙げた材料を用いて酸化物絶縁層15を形成した後、フッ素を含むガスを用いた表面処理を行うことで、酸化物絶縁層15にフッ素を供給してもよい。例えば、六フッ化硫黄(SF6)ガスを用いたプラズマ処理により、酸化物絶縁層15にフッ素を供給することができる。
【0278】
または、フッ素を含むガスを用いて、酸化物絶縁層15を形成してもよい。例えば、フッ素を含む酸化シリコン(SiOF)膜を、シランガス、亜酸化窒素ガス、及び四フッ化ケイ素(SiF4)ガスを含む成膜ガスを用いたプラズマCVD法により成膜することができる。
【0279】
酸化物絶縁層15は水素を放出する機能を有する層と、フッ素を放出する機能を有する層との積層構造であってもよい。このとき、金属層14側に水素を放出する機能を有する層を設け、金属層16側にフッ素を放出する機能を有する層を設けることが好ましい。
【0280】
金属層16は、金属層14に用いることができる材料を援用できる。金属層16は、ニッケル、チタン、銀、及びこれらのいずれかを含む合金を用いて形成されることが好ましい。
【0281】
金属層14と金属層16とは、異なる金属を有することが好ましい。例えば、金属層14にタングステンを用い、金属層16にチタンを用いることが好ましい。これにより、分離界面の制御が容易となり、分離工程の歩留まりを高めることができる。
【0282】
金属層16は、後の分断工程において分断される位置に設ける。金属層16は、発光部、回路、及び配線部等に延在しないように設ける。
【0283】
次に、作製方法例2と同様に、無機絶縁層31を形成し、さらに、トランジスタ70、及び無機絶縁層36を形成する(
図12B)。
【0284】
無機絶縁層31の形成後に、金属層14、酸化物絶縁層15、及び金属層16に対して加熱処理を行う。加熱処理により、酸化物絶縁層15から水素及びフッ素(さらには窒素)が放出され、金属層16に供給される。このとき、無機絶縁層31が、放出された水素及びフッ素(さらには窒素)をブロックするため、金属層16に水素及びフッ素(さらには窒素)を効率よく供給することができる。
【0285】
加熱処理は、酸化物絶縁層15から水素及びフッ素(さらには窒素)が脱離する温度以上、支持基板11の軟化点以下で行えばよい。加熱処理の温度が高いほど、酸化物絶縁層15からの水素及びフッ素(さらには窒素)の脱離量が高まるため、その後の剥離性を向上させることができる。
【0286】
加熱処理を行う雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気下で行ってもよいが、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0287】
当該加熱処理は、トランジスタの作製前、作製中、及び作製後のいずれかで行うことができる。トランジスタの作製工程における加熱処理が、当該加熱処理を兼ねていてもよい。
【0288】
なお、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36には、金属層16に達する開口を形成する。当該開口は、有機絶縁層35の形成より前に形成すればよい。なお、複数の層にまとめて開口を形成してもよく、1層ごとに開口を形成してもよい。
【0289】
次に、作製方法例2と同様に、金属層16上、無機絶縁層36上、及びトランジスタ70上に、有機絶縁層35を形成する(
図12C)。
【0290】
有機絶縁層35は、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36に設けられた開口を埋めるように設けられ、当該開口を介して、金属層16と接する。有機絶縁層35は、当該開口よりも内側に、無機絶縁層36に達する開口を有するように、形成される。また、有機絶縁層35は、導電層77aに達する開口を有するように、形成される。
【0291】
次に、作製方法例1及び作製方法例2と同様に、電極61から基板23までの積層構造を形成する(
図12D)。
【0292】
次に、分離の起点を形成し(
図13A)、金属層14と酸化物絶縁層15とを分離する(
図13B)。
【0293】
図13Aでは、基板23側から金属層14の端部よりも内側に刃物などの鋭利な形状の器具65を差し込み、切れ目を入れる例を示す。切れ目は、枠状に形成することが好ましい。
【0294】
分離は、主として、金属層14と酸化物絶縁層15との間に位置する酸化物層の内部、及び、酸化物層と酸化物絶縁層15との界面で生じる。
【0295】
ここで、金属層16が設けられている領域では、酸化物絶縁層15と金属層16との界面で分離が生じる。
【0296】
そして、露出した酸化物絶縁層15及び金属層16に、接着層22を用いて、基板21を貼り合わせる(
図14A)。これにより、支持基板11に作製したトランジスタ70及び発光素子60等を、支持基板11から基板23に転置することができる。
【0297】
接着層22及び基板21の材料については、作製方法例1の記載を参照できる。
【0298】
そして、発光装置の外形加工を行うことで、発光装置を作製することができる(
図14B及び
図14C)。
図14Bに示すように、分断線66が、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36に設けられた開口と重なるように、分断を行う。分断位置には、金属層16が設けられているが、当該金属層16は、発光部に延在していない。つまり、分断位置には、発光部、回路、及び配線部等に延在する無機膜が設けられていない。したがって、分断により、金属層16にマイクロクラックが生じても、当該マイクロクラックが発光部、回路、及び配線部等まで進行することを抑制できる。そして、当該発光装置を、曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、クラックの発生及び進行を抑制できる。
【0299】
図14Cに示す発光装置の側面には主に有機膜が露出しているが、トランジスタ70及び発光素子60の上面、側面、及び底面は、複数の無機絶縁層(無機絶縁層31、無機絶縁層36、及び無機絶縁層64など)で囲われている。したがって、トランジスタ70及び発光素子60に不純物が入り込むことを抑制でき、トランジスタ70及び発光素子60の信頼性を高めることができる。
【0300】
<作製方法例4>
図15~
図18を用いて、発光装置の作製方法例4について説明する。
【0301】
作製方法例4では、支持基板11と無機絶縁層31との間に剥離層を設け、また、支持基板91と無機絶縁層97との間に剥離層を設け、支持基板11上及び支持基板91上にそれぞれ設けた構成要素を別の基板に転置する。剥離層としては、特に限定はなく、支持基板11上に設ける剥離層は、支持基板91上に設ける剥離層と同じ構成であってもよく、異なる構成であってもよい。
【0302】
まず、作製方法例1と同様に、支持基板11に島状の金属酸化物層12を形成し、金属酸化物層12上に島状の樹脂層13を形成し、支持基板11上及び樹脂層13上に無機絶縁層31を形成し、無機絶縁層31上にトランジスタ80、有機絶縁層35、発光素子60、隔壁37、及び無機絶縁層64等を形成する(
図15A)。
【0303】
また、
図15Aの工程とは独立して、支持基板91上に島状の剥離層を形成し、剥離層上に無機絶縁層97を形成し、無機絶縁層97上に着色層CF及び遮光層BMを形成する。
【0304】
着色層CFとして、カラーフィルタ等を用いることができる。着色層CFは、支持基板11と重ねたときに発光素子60の発光領域と重なるように配置する。
【0305】
遮光層BMとして、ブラックマトリクス等を用いることができる。遮光層BMは、支持基板11と重ねたときに隔壁37と重なるように配置する。
【0306】
図15Bでは、金属層94及び酸化物絶縁層95の積層構造を適用する例を示す。金属層94及び酸化物絶縁層95は、それぞれ、作製方法例2の金属層14及び酸化物絶縁層15に対応する。
【0307】
図15Cでは、金属酸化物層92及び樹脂層93の積層構造を適用する例を示す。金属酸化物層92及び樹脂層93は、それぞれ、作製方法例1の金属酸化物層12及び樹脂層13に対応する。
【0308】
以降では、
図15Bに示すように、支持基板91上の剥離層に、金属層94及び酸化物絶縁層95の積層構造を適用する場合を例に挙げて説明する。
【0309】
また、金属層94から無機絶縁層97までの積層構造に設けられた開口を埋めるように、有機絶縁層99を形成する(
図15B)。
【0310】
次に、支持基板11のトランジスタ80等が形成されている面と、支持基板91の着色層CF等が形成されている面とを、接着層98を用いて貼り合わせる(
図15D)。
【0311】
接着層98は、接着層24に用いることのできる材料を援用できる。
【0312】
次に、分離の起点を形成する。分離は、支持基板11と支持基板91のどちらから行ってもよい。
図16Aでは、支持基板11側から金属酸化物層12と樹脂層13との界面またはその近傍にレーザ光57aを部分的に照射し、金属酸化物層12と樹脂層13とを部分的に分離する。
【0313】
次に、分離の起点から、金属酸化物層12と樹脂層13とを分離する(
図16B)。なお、
図16Bでは、金属酸化物層12が形成されていない領域において、接着層98中で分離が生じる例を示すが、これに限られない。また、
図16Bでは、簡略化のため、接着層98の分離界面を平滑に示すが、凹凸を有していてもよい。
【0314】
そして、ここでは、分離により露出した樹脂層13を除去し、無機絶縁層31を露出させる。その後、無機絶縁層31に、接着層22を用いて、基板21を貼り合わせる(
図17A)。
【0315】
次に、分離の起点を形成する。
図17Aでは、支持基板91側から金属層94と酸化物絶縁層95との界面またはその近傍にレーザ光57bを部分的に照射し、金属層94と酸化物絶縁層95とを部分的に分離する。
【0316】
次に、分離の起点から、金属層94と酸化物絶縁層95とを分離する(
図17B)。
【0317】
そして、露出した酸化物絶縁層95に、接着層24を用いて、基板23を貼り合わせる(
図18A)。
【0318】
そして、発光装置の外形加工を行うことで、発光装置を作製することができる(
図18B及び
図18C)。
図18Bに示すように、分断線66が、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36に設けられた開口、並びに、有機絶縁層99と重なるように、分断を行う。つまり、分断位置には無機膜が設けられていない。したがって、分断により、発光装置の内部にマイクロクラックが生じることを抑制できる。そして、当該発光装置を、曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、クラックの発生及び進行を抑制できる。
【0319】
図18Cに示す発光装置の側面には主に有機膜が露出しているが、トランジスタ80(半導体層)及び発光素子60の上面、側面、及び底面は、複数の無機絶縁層(無機絶縁層31、無機絶縁層36、及び無機絶縁層64など)で囲われている。したがって、トランジスタ80及び発光素子60に不純物が入り込むことを抑制でき、トランジスタ80及び発光素子60の信頼性を高めることができる。
【0320】
[発光装置の具体例]
図19~
図22を用いて、発光装置の具体的な構成について説明する。
【0321】
<構成例1>
図19Aに、発光装置100Aの上面図を示す。発光装置100Aは、発光部381、回路382、及び配線部384を有する。
【0322】
発光装置100Aの長辺に沿って、領域50a及び領域50bが設けられている。領域50a及び領域50bは、発光部381及び配線部384を挟むように設けられている。
【0323】
発光装置100Aは、例えば領域52A及び領域52Bにおいて曲げることができる。発光装置100Aは、領域52Aにおいて、領域50aと、領域50bと、発光部381と、の計3か所を通る線に沿って曲げることができる。また、発光装置100Aは、領域52Bにおいて、領域50aと、領域50bと、配線部384と、の計3か所を通る線に沿って曲げることができる。
【0324】
領域50a及び領域50bは、それぞれ、無機膜が設けられていない領域である。したがって、これらの領域を含むように発光装置100Aを曲げることで、クラックの発生及び進行を抑制することができる。これにより、発光装置100Aの曲げ耐性を高めることができる。
【0325】
【0326】
図19Bに示すように、発光装置100Aは、基板21、接着層22、樹脂層13、無機絶縁層31、トランジスタ80、有機絶縁層35、発光素子60、無機絶縁層64、接着層24、及び基板23等を有する。
【0327】
発光装置100Aは、例えば、上記作製方法例1を用いて作製することができる。
【0328】
基板21と樹脂層13とは接着層22によって接着されている。樹脂層13を除去し、無機絶縁層31と基板21とを接着してもよい。
【0329】
発光部381は、発光素子60と電気的に接続されるトランジスタ80とを有する。トランジスタ80は、発光素子60の駆動を制御する機能を有する。
【0330】
回路382は、発光部381が有するトランジスタ80と同様の構成のトランジスタ80を有する。
【0331】
回路382が有するトランジスタと、発光部381が有するトランジスタは、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。回路382が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。同様に、発光部381が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。
【0332】
導電層385が、接続体386を介して、FPCと電気的に接続されている。導電層385は、トランジスタ80のソース及びドレインと同一の材料及び同一の工程で形成することができる。
【0333】
接続体386としては、様々な異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)及び異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0334】
発光素子60は、基板23側に光を射出する(発光20参照)。基板23には、可視光を透過する材料を用いる。
【0335】
基板23の外側には各種光学部材を配置することができる。光学部材としては、偏光板、位相差板、光拡散層(拡散フィルムなど)、反射防止層、及び集光フィルム等が挙げられる。また、基板23の外側には、ゴミの付着を抑制する帯電防止膜、汚れを付着しにくくする撥水性の膜、使用に伴う傷の発生を抑制するハードコート膜、衝撃吸収層等を配置してもよい。
【0336】
発光装置100Aの側面は、発光装置100Aの作製工程において、外形加工のための分断により露出した面である。発光装置100Aの側面を含む領域50aには無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、無機絶縁層36、及び無機絶縁層64が設けられていないため、分断によりこれらの層にクラックが発生することを抑制できる。したがって、領域50Aを含む部分を曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、発光装置100A内部においてクラックが発生しにくく、また、クラックが発生しても進行しにくい。これにより、発光装置100Aの曲げ耐性を高めることができる。
【0337】
発光装置100Aの側面を含む領域50は、基板21、接着層22、樹脂層13、有機絶縁層35、接着層24、及び基板23を有する。これらの層は、それぞれ、有機材料を含むことが好ましい。一方、有機材料は、無機材料に比べて防水性が低いため、発光装置100Aの側面から領域50を通って水などの不純物が発光装置100Aの内部に入り込む恐れがある。したがって、トランジスタ80の端部(少なくともチャネルが形成される半導体層の端部)よりも外側かつ領域50よりも内側において、無機絶縁層どうしが互いに接することが好ましく、発光素子60の端部よりも外側かつ領域50よりも内側において、無機絶縁層どうしが互いに接することが好ましい。これにより、発光装置100Aの側面から領域50を通って不純物が入り込んでも、不純物が発光素子60及びトランジスタ40に到達しにくくなり、発光装置10Aの信頼性を高めることができる。
【0338】
発光装置100Aでは、無機絶縁層31、絶縁層32、絶縁層34、及び無機絶縁層36の積層構造に、半導体層の上面、底面、及び側面が覆われている。また、有機絶縁層35に設けられた開口を介して、無機絶縁層36と無機絶縁層64とが互いに接している。このような構成により、発光素子60及びトランジスタ80に不純物が入り込むことを抑制できる。
【0339】
<構成例2>
図20Aに、発光装置100Bの断面図を示す。
【0340】
図20Aに示すように、発光装置100Bは、基板21、接着層22、酸化物絶縁層15、無機絶縁層31、トランジスタ70、有機絶縁層35、発光素子60、無機絶縁層64、接着層24、及び基板23等を有する。
【0341】
発光装置100Bは、例えば、上記作製方法例2を用いて作製することができる。
【0342】
基板21と酸化物絶縁層15とは接着層22によって接着されている。
【0343】
発光部381は、発光素子60と電気的に接続されるトランジスタ70とを有する。トランジスタ70は、発光素子60の駆動を制御する機能を有する。
【0344】
回路382は、発光部381が有するトランジスタ70と同様の構成のトランジスタ70を有する。
【0345】
導電層385が、導電層387及び接続体386を介して、FPCと電気的に接続されている。導電層385は、トランジスタ70のソース及びドレインと同一の材料及び同一の工程で形成することができる。導電層387は、発光素子60の画素電極と同一の材料及び同一の工程で形成することができる。
【0346】
発光素子60は、基板21側に光を射出する(発光20参照)。基板21には、可視光を透過する材料を用いる。
【0347】
図20Bに、発光素子60の保護層として、無機絶縁層64ではなく、保護層69を有する例を示す。保護層69は、電極63上の無機絶縁層69aと、無機絶縁層69a上の有機絶縁層69bと、有機絶縁層69b上の無機絶縁層69cと、を有する。
【0348】
無機絶縁層69aの端部と無機絶縁層69cの端部は、有機絶縁層69bの端部よりも外側に延在し、互いに接している。そして、無機絶縁層69aは、有機絶縁層35の開口を介して、無機絶縁層36と接する。これにより、無機絶縁層36と保護層69とで、発光素子60を囲うことができるため、発光素子60の信頼性を高めることができる。
【0349】
このように、発光素子60の保護層は、有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層構造であってもよい。このとき、有機絶縁膜の端部よりも無機絶縁膜の端部を外側に延在させることが好ましい。
【0350】
<構成例3>
図21Aに、発光装置100Cの上面図を示す。発光装置100Cは、発光部381、回路382、及び配線部384を有する。
【0351】
発光装置100Cの長辺に沿って、領域50a及び領域50bが設けられている。領域50a及び領域50bは、発光部381を挟むように設けられている。領域50a及び領域50bは、さらに、配線部384を挟むように設けられていてもよい。
【0352】
発光装置100Cは、例えば領域52Aにおいて曲げることができる。発光装置100Cは、領域52Aにおいて、領域50aと、領域50bと、発光部381と、の計3か所を通る線に沿って曲げることができる。
【0353】
領域50a及び領域50bは、それぞれ、発光部381に延在する無機膜が設けられていない領域である。したがって、これらの領域を含むように発光装置100Cを曲げることで、クラックの発生及び進行を抑制することができる。これにより、発光装置100Cの曲げ耐性を高めることができる。
【0354】
【0355】
図21Bに示すように、発光装置100Cは、基板21、接着層22、酸化物絶縁層15、金属層16、無機絶縁層31、トランジスタ70、有機絶縁層35、発光素子60、無機絶縁層64、接着層24、及び基板23等を有する。
【0356】
発光装置100Cは、例えば、上記作製方法例3を用いて作製することができる。
【0357】
基板21と酸化物絶縁層15とは接着層22によって接着されている。また、領域50aにおいては、基板21と金属層16とが接着層22によって接着されている。
【0358】
発光部381は、発光素子60と電気的に接続されるトランジスタ70とを有する。トランジスタ70は、発光素子60の駆動を制御する機能を有する。
【0359】
回路382は、発光部381が有するトランジスタ70と同様の構成のトランジスタ70を有する。
【0360】
導電層385が、金属層16及び接続体386を介して、FPCと電気的に接続されている。導電層385は、トランジスタ70のソース及びドレインと同一の材料及び同一の工程で形成することができる。
【0361】
作製方法例3を用いて作製された発光装置100Cは、支持基板を剥離した後に、金属層16が部分的に露出する。当該金属層16を、裏面電極、貫通電極、外部接続端子等として用いることができる。例えば、金属層16を介して、FPCなどの回路基板と電気的に接続させることができる。
【0362】
つまり、発光装置100Cは、外部接続端子として機能する金属層16と、発光部381に延在する無機膜が設けられていない領域(領域50aなど)に設けられた金属層16と、を有する。
【0363】
発光素子60は、基板23側に光を射出する(発光20参照)。基板23には、可視光を透過する材料を用いる。
【0364】
金属層16を用いることで、発光素子60の光を取り出す面とは逆側にFPCを配置することができる。そのため、発光装置を電子機器に組み込む際に、FPCを折り曲げるためのスペースを省くことができ、より小型化した電子機器を実現できる。
【0365】
<構成例4>
図22に、発光装置100Dの断面図を示す。
【0366】
図22に示すように、発光装置100Dは、基板21、接着層22、無機絶縁層31、トランジスタ80、有機絶縁層35、発光素子60、無機絶縁層64、接着層98、着色層CF、遮光層BM、無機絶縁層97、酸化物絶縁層95、接着層24、及び基板23等を有する。
【0367】
発光装置100Dは、例えば、上記作製方法例4を用いて作製することができる。
【0368】
基板21と無機絶縁層31とは接着層22によって接着されている。基板23と酸化物絶縁層95とは接着層24によって接着されている。
【0369】
発光部381は、発光素子60と電気的に接続されるトランジスタ80とを有する。トランジスタ80は、発光素子60の駆動を制御する機能を有する。
【0370】
回路382は、発光部381が有するトランジスタ80と同様の構成のトランジスタ70を有する。
【0371】
導電層385が、接続体386を介して、FPCと電気的に接続されている。導電層385は、トランジスタ80のソース及びドレインと同一の材料及び同一の工程で形成することができる。
【0372】
発光装置100Dは、カラーフィルタ方式が適用されたトップエミッション構造の発光装置である。発光素子60は、着色層CFを介して、基板23側に光を射出する(発光20参照)。基板23には、可視光を透過する材料を用いる。
【0373】
[金属酸化物]
以下では、トランジスタの半導体層に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0374】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。例えば、亜鉛酸窒化物(ZnON)などの窒素を有する金属酸化物を、半導体層に用いてもよい。
【0375】
なお、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能または材料の構成の一例を表す。
【0376】
例えば、半導体層にはCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSを用いることができる。
【0377】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの半導体層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0378】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0379】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0380】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0381】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0382】
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、及び非晶質酸化物半導体などがある。
【0383】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0384】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形及び七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0385】
また、CAAC-OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0386】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう。)など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0387】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0388】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0389】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0390】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0391】
以上のように、本実施の形態の発光装置は、発光部に延在する無機膜が設けられていない領域を分断することで、外形加工されて作製される。したがって、曲げた状態で長時間保持しても、または繰り返し曲げても、クラックの発生及び進行を抑制できる。これにより、発光装置の曲げ耐性を高めることができる。
【0392】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0393】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について図を用いて説明する。
【0394】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機が挙げられる。
【0395】
本発明の一態様の電子機器は、表示部に本発明の一態様の発光装置を有するため、繰り返しの曲げに強く、信頼性が高い。
【0396】
また、本発明の一態様の発光装置をもちいることで、低コストで量産性が高く、信頼性の高い電子機器を実現できる。
【0397】
本実施の形態の電子機器の表示部には、例えばフルハイビジョン、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。また、表示部の画面サイズとしては、対角20インチ以上、対角30インチ以上、対角50インチ以上、対角60インチ以上、または対角70インチ以上とすることができる。
【0398】
本発明の一態様の電子機器は可撓性を有するため、家屋もしくはビルの内壁もしくは外壁、または、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0399】
また、本発明の一態様の電子機器は、二次電池を有していてもよく、非接触電力伝送を用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
【0400】
二次電池としては、例えば、ゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池(リチウムイオンポリマー電池)等のリチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などが挙げられる。
【0401】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像または情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0402】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0403】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0404】
図23Aにテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0405】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。
【0406】
図23Aに示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることで操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0407】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0408】
図23Bに、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0409】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。
【0410】
【0411】
図23Cに示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0412】
図23Dは円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0413】
図23C、
図23Dにおいて、表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。
【0414】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0415】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像または動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0416】
また、
図23C、
図23Dに示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、ユーザが所持するスマートフォン等の情報端末機7311または情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311または情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311または情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0417】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311または情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数のユーザが同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0418】
図24A~
図24Fに、可撓性を有する表示部7001を有する携帯情報端末の一例を示す。
【0419】
表示部7001は、本発明の一態様の発光装置を用いて作製される。例えば、曲率半径0.01mm以上150mm以下で曲げることができる発光装置を適用できる。また、表示部7001はタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7001に触れることで携帯情報端末を操作することができる。
【0420】
図24A~
図24Cに、折りたたみ可能な携帯情報端末の一例を示す。
図24Aでは、展開した状態、
図24Bでは、展開した状態または折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態、
図24Cでは、折りたたんだ状態の携帯情報端末7600を示す。携帯情報端末7600は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により一覧性に優れる。
【0421】
表示部7001はヒンジ7602によって連結された3つの筐体7601に支持されている。ヒンジ7602を介して2つの筐体7601間を屈曲させることにより、携帯情報端末7600を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。
【0422】
図24D、
図24Eに、折りたたみ可能な携帯情報端末の一例を示す。
図24Dでは、表示部7001が内側になるように折りたたんだ状態、
図24Eでは、表示部7001が外側になるように折りたたんだ状態の携帯情報端末7650を示す。携帯情報端末7650は表示部7001及び非表示部7651を有する。携帯情報端末7650を使用しない際に、表示部7001が内側になるように折りたたむことで、表示部7001の汚れまたは傷つきを抑制できる。
【0423】
図24Fに腕時計型の携帯情報端末の一例を示す。携帯情報端末7800は、バンド7801、表示部7001、入出力端子7802、操作ボタン7803等を有する。バンド7801は、筐体としての機能を有する。また、携帯情報端末7800は、可撓性を有するバッテリ7805を搭載することができる。バッテリ7805は例えば表示部7001またはバンド7801と重ねて配置してもよい。
【0424】
バンド7801、表示部7001、及びバッテリ7805は可撓性を有する。そのため、携帯情報端末7800を所望の形状に湾曲させることが容易である。
【0425】
操作ボタン7803は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7800に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7803の機能を自由に設定することもできる。
【0426】
また、表示部7001に表示されたアイコン7804に指等で触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0427】
また、携帯情報端末7800は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0428】
また、携帯情報端末7800は入出力端子7802を有していてもよい。入出力端子7802を有する場合、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7802を介して充電を行うこともできる。なお、本実施の形態で例示する携帯情報端末の充電動作は、入出力端子を介さずに非接触電力伝送により行ってもよい。
【0429】
図25Aに自動車9700の外観を示す。
図25Bに自動車9700の運転席を示す。自動車9700は、車体9701、車輪9702、フロントガラス9703、ライト9704、フォグランプ9705等を有する。本発明の一態様の発光装置は、自動車9700の表示部などに用いることができる。例えば、
図25Bに示す表示部9710乃至表示部9715に本発明の一態様の発光装置を設けることができる。または、ライト9704またはフォグランプ9705に本発明の一態様の発光装置を用いてもよい。
【0430】
表示部9710と表示部9711は、自動車のフロントガラスに設けられた表示装置である。本発明の一態様の発光装置は、電極及び配線を、透光性を有する導電性材料で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態とすることができる。表示部9710または表示部9711がシースルー状態であれば、自動車9700の運転時にも視界の妨げになることがない。よって、本発明の一態様の発光装置を自動車9700のフロントガラスに設置することができる。なお、発光装置を駆動するためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ、または酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いるとよい。
【0431】
表示部9712はピラー部分に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9712に映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。表示部9713はダッシュボード部分に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9713に映し出すことによって、ダッシュボードで遮られた視界を補完することができる。すなわち、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0432】
また、
図25Cは、運転席と助手席にベンチシートを採用した自動車の室内を示している。表示部9721は、ドア部に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9721に映し出すことによって、ドアで遮られた視界を補完することができる。また、表示部9722は、ハンドルに設けられた表示装置である。表示部9723は、ベンチシートの座面の中央部に設けられた表示装置である。なお、表示装置を座面または背もたれ部分などに設置して、当該表示装置を、当該表示装置の発熱を熱源としたシートヒーターとして利用することもできる。
【0433】
表示部9714、表示部9715、または表示部9722はナビゲーション情報、スピードメーター、タコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。また、表示部に表示される表示項目及びレイアウトなどは、使用者の好みに合わせて適宜変更することができる。なお、上記情報は、表示部9710乃至表示部9713、表示部9721、表示部9723にも表示することができる。また、表示部9710乃至表示部9715、表示部9721乃至表示部9723は照明装置として用いることも可能である。また、表示部9710乃至表示部9715、表示部9721乃至表示部9723は加熱装置として用いることも可能である。
【0434】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0435】
EP:発光装置、EP1:発光装置、EP2:発光装置、EP3:発光装置、EP4:発光装置、10A:発光装置、10B:発光装置、11:支持基板、12:金属酸化物層、13:樹脂層、14:金属層、15:酸化物絶縁層、16:金属層、20:発光、21:基板、22:接着層、23:基板、24:接着層、31:無機絶縁層、32:絶縁層、33:無機絶縁層、34:絶縁層、35:有機絶縁層、36:無機絶縁層、37:隔壁、39:有機絶縁層、40:トランジスタ、50:領域、50a:領域、50A:領域、50b:領域、50B:領域、50c:領域、50d:領域、51:領域、52:領域、52A:領域、52B:領域、55:大判パネル、57a:レーザ光、57b:レーザ光、60:発光素子、61:電極、62:EL層、63:電極、64:無機絶縁層、65:器具、66:分断線、69:保護層、69a:無機絶縁層、69b:有機絶縁層、69c:無機絶縁層、70:トランジスタ、71:導電層、73:金属酸化物層、75:導電層、77a:導電層、77b:導電層、80:トランジスタ、81:導電層、83:金属酸化物層、83i:チャネル形成領域、83n:低抵抗領域、85:導電層、87a:導電層、87b:導電層、91:支持基板、92:金属酸化物層、93:樹脂層、94:金属層、95:酸化物絶縁層、97:無機絶縁層、98:接着層、99:有機絶縁層、100A:発光装置、100B:発光装置、100C:発光装置、100D:発光装置、381:発光部、382:回路、383:外部接続端子、384:配線部、385:導電層、386:接続体、387:導電層、7000:表示部、7001:表示部、7100:テレビジョン装置、7101:筐体、7103:スタンド、7111:リモコン操作機、7200:ノート型パーソナルコンピュータ、7211:筐体、7212:キーボード、7213:ポインティングデバイス、7214:外部接続ポート、7300:デジタルサイネージ、7301:筐体、7303:スピーカ、7311:情報端末機、7400:デジタルサイネージ、7401:柱、7411:情報端末機、7600:携帯情報端末、7601:筐体、7602:ヒンジ、7650:携帯情報端末、7651:非表示部、7800:携帯情報端末、7801:バンド、7802:入出力端子、7803:操作ボタン、7804:アイコン、7805:バッテリ、9700:自動車、9701:車体、9702:車輪、9703:フロントガラス、9704:ライト、9705:フォグランプ、9710:表示部、9711:表示部、9712:表示部、9713:表示部、9714:表示部、9715:表示部、9721:表示部、9722:表示部、9723:表示部