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特許7464525標的療法のためのチェックポイント遮断を組み合わせる二官能性タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】標的療法のためのチェックポイント遮断を組み合わせる二官能性タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240402BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240402BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240402BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240402BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240402BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240402BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240402BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K39/395 N
A61K39/395 V
A61K45/00
A61K47/65
A61P35/00
C07K16/28
C07K16/46 ZNA
C12N15/13
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020540311
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019019786
(87)【国際公開番号】W WO2019168947
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-07-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】62/636,825
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517297049
【氏名又は名称】エーピー バイオサイエンスィズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】何正宏
(72)【発明者】
【氏名】游忠哲
(72)【発明者】
【氏名】徐靜軒
(72)【発明者】
【氏名】黄柏霖
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107602702(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0281765(US,A1)
【文献】国際公開第2017/136562(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-90
C07K
C12Q
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD-L1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分からなる細胞表面タンパク質結合ドメインのC末端に、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害性ドメインを結合させた二官能性融合タンパク質であって、
(1)PD-L1に特異的に結合する抗体は、
ア 配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号3のアミノ酸1~111のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含むか、または、
イ 配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号5のアミノ酸1~111のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含み、
(2)VEGF阻害性ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性のアミノ酸配列を含み、VEGFに特異的に結合し、
前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列に対する配列同一性は、相補性決定領域(CDRs)を除く、
前記二官能性融合タンパク質。
【請求項2】
前記二官能性融合タンパク質がさらに、
Fcドメインと、
該FcドメインのN末端に接続されているFab断片であって、前記細胞表面タンパク質結合ドメインを含むFab断片と
を含み、
前記VEGF阻害性ドメインは、該FcドメインのC末端に接続されている、請求項1に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項3】
さらに、前記Fcドメインと前記VEGF阻害性ドメインとの間にリンカーを含む、請求項2に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項4】
記抗体は、配列番号12または13に記述されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項5】
記抗体は、1対のポリペプチド鎖を含む、請求項1に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項6】
記抗体は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgY抗体である、請求項5に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項7】
記抗体は、IgG抗体である、請求項6に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項8】
前記IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である、請求項7に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項9】
前記IgG1抗体は、IgG1抗体の抗体依存性細胞媒介型細胞傷害の低下型である、請求項8に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項10】
前記二官能性融合タンパク質は、ヒト抗体である、請求項1に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の二官能性融合タンパク質と、少なくとも1種の薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
治療薬と、
請求項1~10のいずれか一項に記載の二官能性融合タンパク質と、
を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、
該治療薬は、リンカーによって、該二官能性融合タンパク質に共有結合的にコンジュゲートされている、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項13】
癌の治療における使用のためである、請求項1~10のいずれか一項に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項14】
前記癌が、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される、請求項13に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項15】
前記有効量が、0.001μg/kgから250mg/kgである、請求項13に記載の二官能性融合タンパク質
【請求項16】
請求項1に記載の二官能性融合タンパク質をコードする核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野)
本発明は、抗体に関する。より詳細には、本発明は、癌療法のための抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
ヒトにおけるリンパ球の2つの主要なタイプは、T(胸腺由来)およびB(骨髄由来)である。これらの細胞は、リンパ球発達経路のために関与した骨髄および胎児肝臓の造血幹細胞に由来する。これらの幹細胞の後代は、Bリンパ球またはTリンパ球に成熟するための分岐経路に従う。ヒトBリンパ球発達は、完全に骨髄内において生じる。その一方で、T細胞は、骨髄を去って血流によって胸腺まで移動する未成熟前駆体から発達し、そこで、それらは、増殖し、成熟Tリンパ球へと分化する。
【0003】
(T細胞)
T細胞は、最も豊富に存在し(血液リンパ球の約75%)、強力な免疫キラー細胞である。抗腫瘍性免疫応答におけるエフェクターT細胞の役割は、インビトロ研究および、腫瘍のいくつかのタイプにおけるCD8T細胞の高浸潤が好ましい臨床予後と相関関係を有するという観察(Fridman et al.,2012)によって強く支持される。エフェクターナイーブT細胞の活性化は、少なくとも3つの相補シグナル:(i)共受容体(CD4またはCD8)の支援によるTCR-CD3/Ag-MHC相互作用;(ii)CD80またはCD86などの共刺激性分子のCD28、CD40/CD40Lへの結合;(iii)サイトカインなどのアクセサリ分子を必要とする。
【0004】
T細胞への共刺激または2つの異なるシグナルの提供は、抗原提示細胞(APC)による静止Tリンパ球のリンパ球活性化の、広く受け入れられたモデルである(Lafferty and Cunningham,1975)。このモデルは、さらに、自己と非自己との区別および免疫寛容性を提供する(Bretscher and Cohn,1970;Bretscher,1999;Jenkins and Schwartz,1987)。一次シグナル、または抗原特異的シグナルは、主要組織適合複合体(MHC)との関連において提示される外来抗原ペプチドの認識に従ってT細胞受容体(TCR)を介して変換される。二次または共刺激シグナルが、抗原提示細胞(APC)上に発現した共刺激性分子によってT細胞に届けられ、T細胞に、クローン増殖、サイトカイン分泌、およびエフェクター機能を促進するように仕向ける(Lenschowら,1996)。共刺激の不在下において、T細胞は、抗原刺激に対して抵抗性となり得、有効な免疫応答を開始せず、さらに、結果として、外来抗原に対して疲弊または寛容性を生じ得る。
【0005】
(免疫チェックポイントタンパク質:PD-L1)
免疫チェックポイントは、通常、付随的な組織損傷を最小限に抑えるため、自己寛容性を維持し、末梢組織における生理学的応答の持続期間および振幅を調節するために、免疫系、具体的にはT細胞媒介性免疫を張り巡らせるリガンド-受容体相互作用によって開始される、阻害性および刺激性経路のグループを意味する(Pardoll,2012)。腫瘍細胞は、免疫抵抗性の主要メカニズムとして、ある特定のチェックポイント経路を選出する。例えば、プログラム細胞死タンパク質1リガンドのPD-L1は、一般的に、ヒト癌の腫瘍細胞表面において上方制御される。PD-L1と、腫瘍浸透リンパ球(TIL)、特にT細胞、において発現される、その受容体であるPD-1との相互作用は、局所的T細胞媒介性応答を阻害することにより、免疫監視から逃れる(Liang et al.,2006;Sznol and Chen,2013)。したがって、癌細胞での免疫抑制性シグナルの阻害、またはT細胞の直接的アゴニスト刺激は、強い持続性の抗腫瘍免疫応答を生じるおよび/または誘導する。最近の臨床研究は、抗体を介した、または可溶性リガンドまたは受容体によって調節される、免疫チェックポイントタンパク質の遮断が、治療的抗腫瘍免疫の活性化に対する最も有望なアプローチであることを強く示唆した(Topalian et al.,2014)。現在、抗PD-1および抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4)抗体が、黒色腫などの疾患を治療するために、FDAによって承認されている。
【0006】
(血管新生およびVEGF阻害ドメイン(VID))
血管新生、すなわち、既存の血管からの新しい血管の形成は、胎児発達および組織修復にかかわる正常で不可欠なプロセスである。当該プロセスは、血管新生因子および抗血管新生因子の両方によって高度に制御され、ならびに、それは、内皮細胞の遊走および増殖、血管の成熟化および再構成、ならびに細胞外マトリクスの分解を伴う。それは、正常な増殖および発達において重要なプロセスであるが、血管新生は、腫瘍増殖においても重要な役割を果たす。腫瘍は、増殖するために血管供給を必要とし、リガンドの血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーのメンバーを含む血管新生促進増殖因子の発現を介してこれを達成することができる(Hicklin and Ellis,2005)。VEGFおよび他の内皮増殖因子が、内皮細胞上のそれらの受容体に結合する場合、これらの細胞内のシグナルが開始され、それは、新しい血管の成長および生存を促進する。VEGF特異抗体(アバスチン)、可溶性VEGF受容体(アフリベルセプト)、またはVEGFチロシンキナーゼ活性の阻害剤(スニチニブ)によるVEGF活性の阻害は、腫瘍または血管新生タイプの障害(例えば、AMDなど)を治療するために使用されてきた戦略である。
【0007】
(二重特異性/二官能性抗体)
エフェクター免疫細胞に腫瘍細胞を効果的に再標的化させるために二重特異性抗体を使用するアイデアは、1980年代に現れた(Karpovsky et al.,1984;Perez et al.,1985;Staerz et al.,1985)。二重特異性の足場は、一般的に、Fc断片、IgG様分子、および小さい組換え二重特異性形式(それらの大部分は、単鎖可変断片(scFv)に由来する)の有無に基づいて、異なる薬物動力学特性を有する2つの主要な群に分類される。抗体断片は、それらのコンパクトなサイズにより、通常、IgG様分子より効率的に腫瘍に浸透するが、この利点は、それらの全体的腫瘍取り込みおよび滞留時間を制限する短い血清半減期(数時間)によって緩和される(Goldenberg et al.,2007)。対照的に、新生児Fc受容体に結合するFc断片の存在は、IgG様形式に対して長い血清半減期(>10日)を提供し、これは、腫瘍取り込みおよび滞留に有利に働くが、腫瘍浸透を制限する。
【0008】
最近の研究は、癌細胞を破壊するために患者自身の免疫系を利用する癌治療の類である免疫療法の治療効力を強調している。腫瘍内において、まとめて「チェックポイント阻害因子」として知られるネガティブ調節分子のファミリーの存在は、抗腫瘍免疫を抑制するT細胞の機能を阻害することができる。CTLA-4およびPD-1などのチェックポイント阻害因子は、T細胞増殖およびサイトカイン産生を減少させる。アンタゴニストモノクローナル抗体(mAb)によるCTLA-4およびPD-1の標的化された遮断は、抗腫瘍免疫を高めるために、T細胞上に「ブレーキ」を放出する。さらに、最近の研究は、いくつかの悪性腫瘍(例えば、古典的なホジキンリンパ腫(cHL)(Koh et al.,2017)および神経膠腫(Xue et al.,2017)など)における、PD-L1またはPD-L2/PD-1経路と、低酸素誘導因子(HIF)および血管内皮増殖因子(VEGF)を含む血管新生促進遺伝子との間の関係を報告した。Kohらは、PD-L1、VEGF、またはMVDの間に正の相関関係を確認した。彼らの見解は、cHLに対する現在の標準的な治療計画に加えて、抗PD-L1/PD-1および抗VEGF療法の組み合わせを含む新規の治療アプローチを支持する証拠を提供した(Koh et al.,2017)。VEGFは、癌免疫サイクルにおける重要なステップ:腫瘍中へのT細胞浸潤、を妨害する能力も証明した(Kim and Chen,2016;Terme et al.,2012)。VEGFの標的化は、腫瘍内微小環境中へのT細胞浸潤を増加させることによって、癌免疫サイクルの一部を回復するのに役立ち得る(Hughes et al.,2016;Terme et al.,2012;Wallin et al.,2016)。VEGF経路の阻害は、内皮細胞上での細胞接着分子の発現増加を引き起こし得、腫瘍内T細胞を増加させて、免疫炎症を起こした腫瘍内微小環境を作り出し得る。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、前立腺癌、肺癌、NSCLC、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、RCC、または卵巣癌などの癌を患う患者の治療を目的とする免疫調節およびそのための血管新生阻害を有する二重特異性抗体を調査するために設定された。
【0010】
本開示は、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む二重特異性抗体またはその抗原結合性タンパク質であって、当該ポリペプチド鎖は、細胞表面タンパク質に結合する結合性ドメインと;血管内皮増殖因子(VEGF)阻害性ドメインと、を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合性タンパク質を提供する。
【0011】
一実施形態において、当該細胞表面タンパク質は、プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD-L1)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、細胞傷害性Tリンパ細胞関連抗原4(CTLA-4)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、OX40(分化クラスター134、CD134)、CD27、CD28、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9またはCD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOSまたはCD278)、CD40、またはこれらの組み合わせを含む。
【0012】
一実施形態において、当該結合性ドメインは当該PD-L1に結合し、ならびに、配列番号4および6からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号3のアミノ酸1~111および配列番号5のアミノ酸1~110からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0013】
一実施形態において、当該VEGF阻害性ドメインは、ヒトVEGF受容体1(VEGFR-1)またはヒトVEGF受容体2(VEGFR-2)由来である。
【0014】
一実施形態において、当該VEGF阻害性ドメインは、配列番号1、2、9、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、およびその組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。
【0015】
一実施形態において、当該二重特異性抗体またはその抗原結合性タンパク質は、さらに、Fcドメインと;当該FcドメインのN末端に接続されているFab断片であって、当該結合性ドメインを含むFab断片とを含み、当該VEGF阻害性ドメインは、当該FcドメインのC末端に接続されている。
【0016】
一実施形態において、当該二重特異性抗体またはその抗原結合性タンパク質は、さらに、当該FcドメインとVEGF阻害性ドメインとの間にリンカーを含む。
【0017】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、配列番号12または13に記述されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
一実施形態において、当該二重特異性抗体またはその抗原結合性タンパク質は、1対のポリペプチド鎖を含む。
【0019】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgY抗体である。
【0020】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、IgG抗体である。
【0021】
一実施形態において、当該IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である。
【0022】
一実施形態において、当該IgG1抗体は、IgG1抗体の抗体依存性細胞媒介型細胞傷害の低下型(reduction)である。
【0023】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、ヒト抗体である。
【0024】
本開示は、上記において言及される二重特異性抗体またはその抗原結合性部分と、少なくとも1種の薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物も提供する。
【0025】
本開示は、治療薬と、PD-L1および/またはVEGF阻害性ドメインに結合する二重特異性抗体またはその抗原結合性部分とを含む抗体-薬物コンジュゲートであって、当該治療薬は、リンカーによって、該抗体または当該抗原結合性部分に共有結合的にコンジュゲートされている、抗体-薬物コンジュゲートも提供する。
【0026】
一実施形態において、当該二重特異性抗体または抗原結合性部分は、上記において言及される二重特異性抗体または抗原結合性部分から選択される。
【0027】
本開示は、癌を治療する方法であって、上記において言及される二重特異性抗体または抗原結合性部分の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0028】
一実施形態において、当該癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される。
【0029】
一実施形態において、当該有効量は、0.001μg/kgから250mg/kgである。
【0030】
本開示は、上記において言及される抗体または抗原結合性部分をコードする核酸分子も提供する。
【0031】
本開示は、(a)対象から体液試料または細胞試料を得ることと、(b)PD-L1およびVEGFからなる群より選択される癌マーカのパネルの発現を検出することができる1種または複数種の抗体に当該体液試料または細胞試料を接触させることと、(c)当該細胞または当該試料に対する当該1種または複数種の抗体の結合を検査することと、(d)当該対象における癌の存在を特定するために、抗体結合のレベルを測定して正常なコントロールと比較することによって、アッセイにおいて当該対象の当該癌の状態を評価することと、を含む、対象における癌診断の方法も提供する。
【0032】
本開示は、癌を患う対象のリスクを評価する方法、または対象において癌をスクリーニングする方法であって、(a)対象から体液試料または細胞試料を得ることと、(b)PD-L1およびVEGFからなる群より選択される癌マーカのパネルの発現を検出することができる1種または複数種の抗体に当該体液試料または細胞試料を接触させることと、(c)当該細胞または当該体液試料に対する当該1種または複数種の抗体の結合を検査することと、(d)対象が癌を患うリスクを有するか否かを特定するために、抗体結合のレベルを測定して正常なコントロールと比較することによって、アッセイにおいて当該対象の癌の状態を評価することと、を含む方法も提供する。
【0033】
本発明は、以下の添付の図面に対する言及と共に、実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、T細胞媒介性免疫を調節する免疫チェックポイントを示す図である。当該チェックポイントに対してアゴニスト的またはアンタゴニスト的である抗体(例えば、抗ICOS、抗CD28、抗OX40、および抗CD27、または抗PD-1、抗CTLA4、抗LAG3、抗BTLAなど)は、用途に応じて二官能性融合タンパク質を構築するために使用することができた。
図2A図2Aは、組換えPD-L1に対する直接的ELISAによるファージクローンのスクリーニングを示す図である。
図2B図2Bは、組換えPD-L1に対する直接的ELISAによるファージクローンのスクリーニングを示す図である。
図3図3は、完全性および純度を明らかにするための、非還元SDS-PAGEによる、PD-L1に対して特異的な精製した抗体リードを示す図である。
図4図4は、精製した抗免疫チェックポイントタンパク質およびPD-L1に対する抗PD-L1抗体リードの直接的リガンド結合活性の実施例を示す図である。最初に、リガンドで予めコーティングされたウェルを、示されるような様々な濃度の抗体リードと共にインキュベートした。次いで、結合したタンパク質を、HRP標識ヤギ抗ヒトIgGFab特異的抗体で検出し、OD450の読み取り値をプロットした。
図5図5は、PD-L1発現293細胞を使用したフロー解析を示す図である。最初に、PD-L1発現HEK293細胞を、精製した抗体リードと共にインキュベートし、結合した当該抗体を、Alexa-488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)を用いて検出し、その後、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)分析を行った。
図6図6は、精製した抗PD-L1抗体によるPD-1/PD-L1相互作用の遮断を示す図である。PD-1/PD-L1相互作用の阻害活性を評価するために、示された精製した抗体をビオチン化PD-L1-Fcと96ウェルプレートに予めコーティングしたPD-1/Hisと共に適用した。組換えPD-1上に結合している組換えPD-L1-Fcをストレプトアビジン-HRPによって検出し、ELISAによって分析した。
図7A図7Aは、抗体処理の3日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、1μg/mLまたは10μg/mLの抗PD-L1抗体リードが、IL-2および/またはIFN-γ産生を刺激することを示す図である。
図7B図7Bは、抗体処理の5日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、1μg/mLまたは10μg/mLの抗PD-L1抗体リードが、IL-2および/またはIFN-γ産生を刺激することを示す図である。
図8図8は、VEGF受容体由来のVEGF阻害ドメイン(VID)と融合した抗体重鎖Fcの構造を示す図である。
図9図9は、抗免疫チェックポイント抗体-VID二重特異性抗体のPAGE-ゲル分析の例を示す図である。精製した融合タンパク質である抗PD-L1-VID二重特異性抗体が、分子量約220kDa(非還元)を有することが示されており、両方の抗体融合物において、重鎖融合物は、約85kDaを有し、軽鎖は約25kDa(還元)である。Mはマーカであり、レーン1は、非還元抗PD-L1-VID/eIgG1であり、レーン2は、還元抗PD-L1-VID/eIgG1であり、レーン3は、非還元抗PD-L1-VID/IgG4であり、ならびにレーン2は、還元抗PD-L1-VID/IgG4である。レーンのそれぞれは、3μgをロードする。
図10A図10Aは、SEC-HPLC分析による、HEK293細胞由来の精製された抗PD-L1-VID/IgG4二重特異性抗体の純度を示す図である。
図10B図10Bは、SEC-HPLC分析による、HEK293細胞由来の精製された抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体の純度を示す図である。
図11A図11Aは、直接的ELISAによる、精製された抗PD-L1-VID二重特異性抗体のPD-L1結合活性の例を示す図である。最初に、リガンドで予めコーティングしたウェルを、示される様々な濃度の試験試料と共にインキュベートした。次いで、結合したAbを、HRP標識ヤギ抗ヒトIgGFcまたはF(ab’)特異抗体によって検出し、OD450読み取り値をプロットした。
図11B図11Bは、直接的ELISAによる、精製された抗PD-L1-VID二重特異性抗体のVEGF165結合活性の例を示す図である。最初に、リガンドで予めコーティングしたウェルを、示される様々な濃度の試験試料と共にインキュベートした。次いで、結合したAbを、HRP標識ヤギ抗ヒトIgGFcまたはF(ab’)特異抗体によって検出し、OD450読み取り値をプロットした。
図12図12は、精製された抗PD-L1-VID二重特異性抗体による、VEGF165刺激HUVEC増殖の阻害を示す図である。VEGF165を、示される試験試料と共に1日間、予めインキュベートし、次いで、HUVEC細胞に適用して、VEGF165刺激HUVEC細胞増殖をモニターした。3日間の培養後、当該細胞増殖を、MTS試薬(Promega)によって特定した。吸光度を、試験試料のAb濃度に対してプロットし、当該細胞増殖が50%阻害される濃度(IC50)を特定した。
図13A図13Aは、二重特異性抗体が、アイソタイプIgG、基準抗体(MPDL3280A)、または抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体処理の3日後または5日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてIL-2産生に対するT細胞活性化を相乗作用的に刺激することを示す図である。
図13B図13Bは、二重特異性抗体が、アイソタイプIgG、基準抗体(MPDL3280A)、または抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体処理の3日後または5日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてIFN-γ産生に対するT細胞活性化を相乗作用的に刺激することを示す図である。
図14A図14Aは、異なる種(ヒト血清)由来の抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体のインビトロ血清安定性を示す図である。精製された抗体を、示された異なる種由来の血清(15μg/mL)中において37℃で1日間、2日間、3日間、5日間、7日間、および14日間インキュベートした。インキュベーション後、収集した試料をサンドイッチELISAアッセイに適用して、PD-L1およびVEGF165に対する相対的結合活性を特定した。半減期を、血清中での二重特異性抗体の濃度に基づいてプロットした。
図14B図14Bは、異なる種(マウス血清)由来の抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体のインビトロ血清安定性を示す図である。精製された抗体を、示された異なる種由来の血清(15μg/mL)中において37℃で1日間、2日間、3日間、5日間、7日間、および14日間インキュベートした。インキュベーション後、収集した試料をサンドイッチELISAアッセイに適用して、PD-L1およびVEGF165に対する相対的結合活性を特定した。半減期を、血清中での二重特異性抗体の濃度に基づいてプロットした。
図14C図14Cは、異なる種(カニクイザル血清)由来の抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体のインビトロ血清安定性を示す図である。精製された抗体を、示された異なる種由来の血清(15μg/mL)中において37℃で1日間、2日間、3日間、5日間、7日間、および14日間インキュベートした。インキュベーション後、収集した試料をサンドイッチELISAアッセイに適用して、PD-L1およびVEGF165に対する相対的結合活性を特定した。半減期を、血清中での二重特異性抗体の濃度に基づいてプロットした。
図15A図15Aは、Fox Chase SCID(登録商標)BeigeマウスにおけるPC-3腫瘍の増殖に対する抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体処理およびモノクローナル抗体処理の効果を示す図である。
図15B図15Bは、接種の35日後に、二重特異性抗体処理の腫瘍サイズが、アイソタイプまたは基準抗体処理より著しく小さいことを示す図である。
図16A図16Aは、IFN-γ刺激A549において、抗PD-L1単独と比較して、抗PD-L1-VID Abがその抗原結合特異性を保持することを示す図である;MFI:平均蛍光強度。
図16B図16Bは、NCI-H292において、抗PD-L1単独と比較して、抗PD-L1-VID Abがその抗原結合特異性を保持することを示す図である;MFI:平均蛍光強度。
図16C図16Cは、安定PD-L1発現293細胞において、抗PD-L1単独と比較して、抗PD-L1-VID Abがその抗原結合特異性を保持することを示す図である;MFI:平均蛍光強度。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(詳細な説明)
実施例が添付の図面に示されている本発明の本実施形態について、以下において詳細に言及されるであろう。同じまたは同様の部分を参照するために、図面および説明において、可能な限り、同じ参照番号が使用される。
【0036】
本発明は、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体のFcドメインのC末端への単離された機能性VEGF阻害ドメインを用いた二官能性タンパク質の発現、精製、およびキャラクタリゼーションについて説明する。これらのタンパク質は、その対応するチェックポイント標的と相互作用し、T細胞関与免疫を調節するために阻害性シグナルを伝達し、同時に、VEGF誘導性血管新生を中和する。本発明におけるFc融合タンパク質の成分は、全てヒト起源であり、したがって、非免疫原性であることが予想され、ならびにヒトの治療に使用することができる。
【0037】
二重特異性抗体(BsAb)などの二重特異性分子は、単一の治療薬によって同じ分子標的または異なる標的上の複数のエピトープを同時に標的化する手段を提供する。癌治療として、それらは、2種のmAbの混合物とは対照的に、新規のまたはより強力な活性を付与し、商品コストを下げ、かつ新規の治療計画の開発を促進する可能性を有する(Chames and Baty,2009;Hollander,2009;Thakur and Lum,2010)。最近、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)およびCD3を標的とする三官能性二重特異性抗体であるカツマキソマブが、上皮癌の腹膜癌症を患う患者において明確な臨床的有益性を示し(Heiss et al.,2010)、CD19およびCD3に対する二重特異性を有する二重特性T細胞誘導(bispecific T-cell engaging:BiTE)抗体も、CD19を発現する血液悪性腫瘍を患う患者において、臨床的活性を高めることを実証した(Bargou et al.,2008)。癌治療としての二重特異性分子の開発に対する強い関心にもかかわらず、安定で活性な二重特異性分子の製造における技術的チャレンジは、過去において、ほとんどの二重特異性形式の臨床評価を妨げてきた。IgG様二重特異性抗体を含む多くの遺伝子改変抗体形式は、安定性または溶解性を損なってきた(Bargou et al.,2008;Demarest and Glaser,2008;Lu et al.,2005)。その上、製造物品質および二重特異性分子のインビボ安定性を増加させるために、ペグ化、ヒト血清アルブミンとのコンジュゲート化、およびFc遺伝子改変を含む、いくつかの戦略が取られてきた(Muller et al.,2007;Ridgway et al.,1996)。上記において説明される一般的な形式の二重特異性単鎖抗体は、2つのVドメイン、単一のリンカー、または1つのスペーサーをコードするヌクレオチド配列を、単一のプロモータの制御下において、好適な宿主発現生物に組み込むことができるという利点を有する。このことは、作製の際の実験者による制御の度合いと同様に、これらの構築物を設計する際のフレキシビリティーを増加させる。さらに、IgGのFcは、結合能力を除く全ての抗体の機能を含むため、新規の治療法を設計するための非常に魅力的な別の足場である。Fc遺伝子改変は、当該二重特異性抗体の効力を向上させるために重要である。したがって、本発明では、癌療法における免疫細胞上の2つの非依存性標的または血管新生促進タンパク質に対して、IgGベースの立体配座を使用している。
【0038】
免疫チェックポイントタンパク質の標的化は、抗腫瘍免疫を活性化するための、有望なアプローチである。抗チェックポイントタンパク質(例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3など)は、現在、臨床的に評価されている(図1)。免疫チェックポイントタンパク質の遮断剤による予備的データは、持続性の臨床反応を生じさせる可能性を有する抗腫瘍免疫を増加させることができることを示していた。しかしながら、いくつかの悪性腫瘍におけるこれらの薬剤の顕著な臨床有効性にもかかわらず、それらが、多くの患者にとって十分に有効ではないことが明らかになった。多数の追加の免疫調節経路、ならびに腫瘍内微小環境において骨髄細胞または間質細胞によって発現または分泌される阻害因子は、免疫チェックポイント遮断との相乗作用のための潜在的標的である。したがって、抗癌療法または二重特異性抗体療法を組み合わせることは、癌を患う患者に対して完全な寛解および回復を達成するために不可欠であった。その一方で、VEGFの標的化は、腫瘍による血管新生を減少させることが既に知られており(Hicklin and Ellis,2005)、腫瘍内微小環境中へのT細胞湿潤を増加させることによって癌免疫サイクルの一部を回復させるのに役立ち得る(Hughes et al.,2016;Terme et al.,2012;Wallin et al.,2016)。
【0039】
ヒトVEGF受容体の細胞外リガンド結合性ドメイン(配列番号1および2)は、VEGFリガンドに結合することができ、ならびに、1つまたは複数のVEGF受容体のIg様ドメインD1~D7(表1)の1つまたは複数を含む。好ましくは、当該VEGF受容体の細胞外リガンド結合性ドメインは、第1のVEGF受容体のIg様ドメインD2と、第2のVEGF受容体のIg様ドメインD3とを含み、この場合、当該第1および第2のVEGF受容体は、同じまたは異なるVEGF受容体である。本発明において、VEGF受容体の細胞外リガンド結合性ドメインであるVEGF阻害ドメイン(VID)は、VEGFを遮断し、血管新生を減少させるために、VEGFR1のIg様ドメインD2とVEGFR2のIg様ドメインD3とを含む。
【0040】
【表1】
【0041】
いくつかの実施形態において、当該VEGF阻害性ドメインは、配列番号1、2、9、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、およびその組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施例において、当該VEGF阻害性ドメインは、上記において言及したアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、または95%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。
【0042】
本発明は、ヒトVEGF受容体由来のVEGF阻害ドメイン(VID)と融合した抗免疫チェックポイントタンパク質抗体Fcの構築、発現、およびキャラクタリゼーションについて説明する。融合構築物中におけるN末端に位置された抗PD-L1抗体は、融合の相手が、他の免疫チェックポイント(例えば、抗CTLA-4、CD3、OX40抗体)、または細胞表面標的化分子(例えば、抗EGFR、抗HER2、抗CD40抗体など)によって置き換えられる場合、免疫増強剤を越えて融合タンパク質のパワーを拡大させることを可能にする。
【0043】
本開示は、細胞表面タンパク質に結合する結合性ドメインと、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害性ドメインと、を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合性タンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、PD-L1に結合する当該結合性ドメインは、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。当該重鎖可変ドメインは、配列番号4および6からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸を含む。いくつかの実施例において、当該重鎖可変領域は、上記において言及したアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、または95%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。当該軽鎖可変ドメインは、配列番号3のアミノ酸1~111および配列番号5のアミノ酸1~110からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施例において、当該軽鎖可変領域は、上記において言及したアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、または95%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。
【0044】
(OmniMabライブラリからの抗体の生成)
PD-L1に対する治療抗体の生成のために、OmniMabファージミドライブラリによる選択を実施した。当該ファージミドライブラリは、百を超える健康なドナーのB細胞のコレクションからAP Biosciences Inc.(APBio Inc.)によって生成される。パンニングの第一ラウンドのためのファージを、Hyperphage(Μ13Κ07ΔρΙΙΙ、Progen、ハイデルベルク、ドイツ)によって調製した。PD-L1特異的バインダー選択およびOmniMabライブラリからの単離に対して、PD-L1に対する固相パンニングおよび細胞パンニングを適用した。固相パンニングは、第一ラウンド選択において組換えヒトPD-L1-Fc(APBio Inc.)を使用して実施し、次いで、追加の第二ラウンドの濃縮に対して、PD-L1を発現したHEK293細胞を使用した。3つのラウンド選択の後、当該特異的PD-L1バインダーをスクリーニングし、対応する組換えタンパク質を用いた直接的ELISAによって単離した(図2Aおよび2B)。予めコーティングしたPD-L1-Fc組換えタンパク質を、レスキューされたファージを含有する上清を用いて1時間ブロットし、0.1%のTween-20を含有するPBSで3回洗浄した。結合したファージを、HRP標識抗M13抗体(Roche)によって検出し、シグナル発生のために、TMB基質を使用した。OD450読み取り値を記録した。ポジティブバインダーを単離し、重鎖および軽鎖の配列および多様性を確認するために配列決定を行った。PD-L1に対して特異的な重鎖および軽鎖の可変領域は、配列番号3から配列番号6で記述され、この場合、配列番号3は、PD-L1クローン6の軽鎖であり、配列番号4は、PD-L1クローン6の重鎖の可変領域であり、配列番号5は、PD-L1クローン32の軽鎖であり、配列番号6は、PD-L1クローン32の重鎖の可変領域である。図2Aおよび2Bに示されるように、いくつかのクローンを単離し、それらは、ネガティブコントロールと比較して、対応する抗原に対して特異的に認識されることが知られている。
【0045】
(IgG形式としての選択されたPD-L1特異的バインダーのサブクローニングおよび発現/精製)
T細胞活性化における機能性を有する特異的バインダーの迅速なスクリーニングを容易にするために、ELISAによるPD-L1に対するポジティブバインダーの重鎖および軽鎖を増幅し、消化し、IgG4定常領域(配列番号7)を保持するAPBio専用IgG発現ベクター中へサブクローニングした。配列検証後、プラスミドを調製し、抗体発現のために、293フェクチントランスフェクション試薬(Invitrogen)によってHEK293細胞中へとトランスフェクトした。4日間の培養後、無血清培地中に分泌された抗体を、タンパク質Gクロマトグラフィーによって、培養上清からアフィニティー精製した。次いで、精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析した。透析したタンパク質の最終濃度を、NanoDrop2000分光光度計によって特定し、図3に示されるように、還元試薬を用いずに、SDS-PAGEによって純度および完全性を特定した。精製された様々な抗体リードの完全性は、基準抗体MPDL3280Aと同様に、HEK293細胞において正常である。
【0046】
(直接的ELISAによるPD-L1特異的IgGリードの結合活性の特定)
直接的コーティングされた設定でのヒトPD-L1-Fcに対するELISA結合キャラクタリゼーションのために、PD-L1に対する精製された抗体リード(抗PD-L1抗体リード)を適用した。図4は、抗PD-L1抗体に対するELISA結合結果を示した。PD-L1特異的抗体の場合、ほとんどのリードは、基準抗体(Ref Ab、MPDL3280A、Roche)に対して、同様のまたはより良い結合活性を示した。
【0047】
精製されたヒトPD-L1IgG1Fcキメラ(PD-L1-Fc、APBio)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)において透析し、1mg/mLに調節して、次いで、PBSによって1μg/mLの最終濃度へと希釈した。Nunc-Immuno Maxisorp 96ウェルプレートを、ウェルあたり0.1mLにおいて組換えPD-L1-Fcキメラでコーティングし、非特異的結合コントロールに対しては空のウェルのままで、4℃で一晩インキュベートした。当該PD-L1-Fcキメラ溶液を除去し、当該プレートを0.4mLの洗浄緩衝液(PBS中における0.1%のTween-20)で3回洗浄した。0.4mLブロッキング緩衝液(PBS中における5%の低脂肪ミルク粉末)を全てのウェルに加え、混合しながら室温で1時間インキュベートした。当該ブロッキング緩衝液を除去し、プレートを0.4mLの洗浄緩衝液で3回洗浄した。PBSにおいて当該PD-L1試験抗体の段階希釈を調製し、0.1mLの希釈されたAbを各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした。抗体溶液を除去し、当該プレートを、ウェルあたり0.4mLの洗浄緩衝液で3回洗浄した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgGであるF(ab’)特異的F(ab’)抗体(Jackson Immunoresearch #109-036-097)を、PBSで1:2000に希釈し、各ウェルに0.1mLを加えた。当該プレートを室温で1時間インキュベートし、ウェルあたり0.4mLの洗浄緩衝液で洗浄した。0.1mLのTMB試薬(Invitrogen)を加え、室温で1~5分間インキュベートした。0.05mLの1NのHClを加えることによって反応を止め、Bio-Tek Spectraにおいて、450nmで吸光度を読み取った。PD-L1に対する抗PD-L1抗体リードの計算されたEC50は、直接的ELISAにより、ほとんどのリードが、MPDL3280A(Ref Ab)と同様に、良好な結合活性を有することを示した(図4)。
【0048】
(FACSによるPD-L1特異的IgGリードに対する結合活性の特定)
結合活性を特定して、PD-L1を発現したHEK293細胞を用いて結合活性を特定、比較するために、フローサイトメトリに対しても、精製された抗体リード(抗PD-L1抗体リード)を適用した。図5は、安定発現されたPD-L1のHEK293細胞を用いたFACSによって示される、対応する抗体リードの結合活性を示している。
【0049】
PD-L1結合活性を調べるために抗PD-L1抗体リードで染色したPD-L1安定発現293細胞のFACS分析のために、安定発現細胞を、1μg/mLの精製した抗PD-L1抗体リード、基準抗体(Ref Ab MPDL3280A)と共に、またはネガティブコントロールとしてのアイソタイプ抗体と共に、氷上で1時間インキュベートした。当該細胞を1×PBSで3回洗浄し、次いで、Alexa-488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Invitrogen Inc.)と共に、氷上でさらに1時間インキュベートした。染色後、当該細胞を1×PBSで3回洗浄し、1×PBS/2%FBSに再懸濁させ、その後、FACS Calibur(BD Biosciences、Inc.)およびFlowJo(TreeStar、LLC)によって分析した。図5に示されるように、ほとんどの抗PD-L1抗体リードは、基準抗体と同様に、良好な結合活性を有する。このことは、OmniMabライブラリから選択されたファージクローンが、実際に、当該細胞におけるネイティブなPD-L1を認識することを示した。
【0050】
(リガンド競合結合(ELISAアッセイ))
抗体リードは、結合選択性を示し、PD-1へのPD-L1の結合を遮断する能力について本発明の抗PD-L1抗体リードを評価するために親和性アッセイを使用した。
【0051】
組換えヒトPD-1/His(hPD-1/His)へのヒトPD-L1-Fcキメラ(PD-L1-Fc)の結合を遮断する能力について、ELISAによって抗体を試験した。精製された組換えhPD-1/His(APBio)を、PBS中における1mg/mlへと透析し、次いで、ビオチン(Abcam)とコンジュゲートした。Nunc Maxisorp 96ウェルプレートを、ウェルあたりPBS中における250ngのhPD-1/Hisで一晩かけてコーティングした。当該hPD-1/His溶液を除去し、当該プレートを0.4mLの洗浄緩衝液(PBS中における0.1%のTween-20)で3回洗浄した。0.4mLブロッキング緩衝液(PBS中における5%の低脂肪ミルク粉末)を全てのウェルに加え、混合しながら室温で1時間インキュベートした。ブロッキングステップの際、当該抗体ストックを、2倍の段階希釈によって、PBS中における200nMから0nMの範囲で希釈した。精製したビオチン化組換えPD-L1-Fcキメラを、PBS中における4μg/mLに希釈した。PD-1/Hisでコーティングしたプレートを、0.2mLの洗浄緩衝液(PBS中における0.1%のTween-20)で3回洗浄した。60μLの抗体希釈物(抗PD-L1抗体リードまたはRef Ab MPDL3280A)を60μLのビオチン化PD-L1-Fcキメラと一緒に加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを、前に説明したように洗浄した。ストレプトアビジン-HRPを、PBSにおいて1:2000に希釈し、結果として得られる溶液の100μLを、洗浄したプレートのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを、前に説明したように洗浄し、100μLのTMB基質溶液を各ウェルに加え、10分間インキュベートした。50μLの1NのHClによって反応を止め、Bio-Tek読み取り機を使用して450nmの吸光度を読み取り、図6に示した。部分抗体リードは、競合ELISAによって、PD-1-PD-L1の間の相互作用を阻害することが示された。ほとんどの抗体リードは、基準抗体(Ref Ab MPDL3280A)と比較した場合、同様のブロッキング活性を示した。
【0052】
(抗PD-L1抗体に対するPD-1:PD-L1リガンド相互作用の阻害によるT細胞活性化の刺激増強)
当該PD-1シグナル伝達経路は、中程度のTCR/CD28共刺激シグナルを阻害し、その場合、T細胞増殖を減少することなく、サイトカイン産生がまず減少する。当該TCR/CD28共刺激シグナルが弱まると、当該PD-1経路が支配的となり、増殖の減少に伴い、サイトカイン産生が著しく減少する。したがって、本発明のヒト抗体のPD-L1との相互作用の阻害を介した当該PD-1の阻害がT細胞活性化を高めることを検証するために、混合リンパ球反応(MLR)を実施する。
【0053】
ヒト全血液由来の単球を、RosetteSep(商標)Human Monocyte Enrichment Cocktail(Cat. No.15068)によって濃縮し、10%のFBS、100ng/mL(1000U/mL)のGM-CSF、100ng/mL(500U/mL)を含む分化培地RPMI 1640において6日間培養した。分化を検証するために、単球由来の当該分化樹状細胞(DC)を、DC-SIGN-PE、FITC Abとコンジュゲートした抗CD14、PE Abとコンジュゲートした抗CD83、またはFITC Abとコンジュゲートした抗CD80によって点検し、MLRにおいてAPCとして使用した。
【0054】
ヒト全血液由来の同種異系CD4T細胞を、RosetteSep(商標)Human CD4T Cell Enrichment Cocktail(Cat. NO. 15062)によって単離した。純度が95%超であることを確実にするために、CD4T細胞の純度を抗CD4コンジュゲート化APC Abによって確認し、T細胞増殖アッセイのために、1μMのCFSE(CellTrace(商標) CFSE細胞増殖キット、Life technologies、Cat. NO. C34554)によって標識した。当該抗体リードが、PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断することによってT細胞活性化を回復できるかどうかを見るため、標識したCD4T細胞を使用して、3日間および5日間において、示されるような異なる抗体リードを伴う未成熟DCと共に共培養した。3日間および5日間のインキュベート後、ELISAによるIL-2およびIFN-γ定量化など、サイトカインのために上清を収集した。未成熟樹状細胞と同種異系T細胞とによる培養物への抗PD-L1抗体リード(クローン6、32、28、51、64、27、および37)の添加は、結果として、アイソタイプIgG(イソ#1、#2)で処理した培養物と比較して、T細胞増殖およびサイトカイン産生における増加を生じることが予想され、それは、図7Aおよび7Bに示した。当該IL-2およびIFN-γ産生は、特に抗PD-L1抗体クローン6の場合、抗体処理の3日後(図7A)または5日後(図7B)に、アイソタイプの抗体処理と比較して、MLRにおいて著しく増加する。サイトカインの増分は、抗体処理の5日後においても、依然として明らかであり、基準抗体(ref)であるMPDL3280Aと同様である。このことは、当該抗PD-L1抗体クローン6が、二重特異性抗体複合物のための潜在的リードの1つであることを示した。
【0055】
(抗PD-L1-VID抗体の構築、発現、および精製)
二重特異性は、VEGF阻害ドメインと融合させたIgGベースとして設計されるため、当該抗PD-L1抗体クローン6は、IgG形式であるように割り当てられ、その一方で、VEGF受容体におけるVEGF結合性ドメインD1およびD2は、抗PD-L1クローン6抗体におけるFc領域のC末端において融合される。Fcアイソタイプまたは遺伝子改変Fcは、哺乳動物細胞における当該二重特異性抗体の有効性または産生を向上させるために重要であるため、結果として、2つの異なるFcアイソタイプであるIgG4(配列番号7)および遺伝子改変IgG1(eIgG1、抗体依存性細胞媒介型細胞傷害(ADCC)の低下型(reduction)、配列番号8)を、二重特異性構築に使用した。VID(配列番号9)と融合した二重特異性抗PD-L1抗体Fcの構築を図8に表した。正確な折り畳みを確実にし、立体障害を最小にするために、短いフレキシブルなペプチドリンカー((GGGGS)(配列番号10)を、例えば、Fc領域(配列番号4)の抗PD-L1抗体重鎖C末端と、VIDのN末端モジュールとの間に位置した。IgG4およびeIGg1に対する抗PD-L1-VID重鎖のコード配列を、配列番号12および13に示した。構築された抗体Fc融合タンパク質を、シグナルペプチド(配列番号11)によってリードし、哺乳動物細胞によって発現させ、ならびにトランスフェクトされた細胞培養上清から一段階タンパク質Gクロマトグラフィーによって精製した。図9に示されるように、一段階精製プロセスにおいて95%を超える純度を得ることができ、それは、精製された融合タンパク質が正しい分子量(Mw=220kDa)を有することを示す。低い純度または回収率は、化学、製造、および品質管理(CMC)生産における当該二重特異性抗体または融合タンパク質の製造にとって主要な問題であるため、したがって、二重特異性抗体の純度を評価するために、両方の精製された二重特異性抗体を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるサイズ溶離カラム(SEC)にも適用した(図10Aおよび10B)。両方の二重特異性抗体抗、PD-L1-VID/IgG4(図10A)または抗PD-L1-VID/eIgG1(図10B)のどちらかは、SEC-HPLC分析において、99%純度より高い純度であることが明らかとなった。それは、当該形式が、CMC開発において容易に処理することができ、ならびに、さらなる開発において上出来の率を提供することを意味する。
【0056】
図8に示されるように、抗免疫チェックポイント抗体の構造は、Fc末端においてVIDと融合した。いくつかの実施形態において、抗体は、阻害性抗免疫チェックポイント抗体(例えば、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4、抗LAG3など)、あるいは刺激性抗体(例えば、抗CD28、抗CD137、抗CD27、抗ICOSなど)、あるいは細胞表面受容体/抗原(例えば、HER2、EGFRなど)であり得る。二重特異性抗体を生成するために、リンカーが、抗体FcとVIDとの間に位置される。
【0057】
(PD-L1およびVEGF165に対する融合タンパク質の結合親和性)
PD-L1、またはVEGF-AのスプライシングバリアントであるVEGF165に対する当該二重特異性抗体の結合親和性を測定するために、直接結合酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用した。組換えVEGF捕捉タンパク質(VEGFR-Fc)および親抗PD-L1抗体クローン6を、それぞれ、PD-L1およびVEGFに対するポジティブコントロール1として使用した。VEGFR-Fcであるアフリベルセプトは、加齢黄斑変性症(AMD)を治療するための治療用途のために遺伝子改変された可溶性VEGF受容体であり、現在、食品医薬品局(FDA)によって承認されている。VEGFR-Fcは、ヒトIgG1のFc領域に融合されたVEGFR2の第3のIg様ドメイン(D3)に融合されたVEGFR1の第2のIg様ドメイン(D2)を含む(Holash et al.,2002)。
【0058】
100μLのコーティング溶液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中における1μg/mLのVEGF165、pH7.2)を、96ウェルELISAプレートの各ウェルに加え、当該プレートを4℃で一晩インキュベートした。当該ウェルを400μLのPBS緩衝液で2回洗浄し、余分な液体をペーパータオルで注意深く除去した。400μLのブロッキング溶液(PBS中における5%の無脂肪スキムミルク)を各ウェルに加え、当該プレートを室温で1時間インキュベートした。当該ウェルを、PBS緩衝液で2回洗浄した。二重特異性抗体およびコントロールの試料を、最も高いタンパク質濃度が100nMとなるように、ブロッキング溶液において3倍に段階希釈した。100μLの当該段階希釈した試料を各ウェルに加えた。当該プレートを覆い、プレートシェーカー(約100rpm)上において室温で1時間インキュベートした。当該ウェルを、洗浄緩衝液(PBS中における0.05%のTween-20)で3回洗浄した。ブロッキング溶液中における1:2500に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgGFc特異抗体の100μLを、各ウェルに加えた。当該プレートを密封し、プレートシェーカー上において室温で1時間インキュベートした。当該プレートを、洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μLのTMB基質を各ウェルに加え、反応を起こさせるために、当該ウェルを3分間から5分間インキュベートした。当該反応を止めるため、100μLの停止液(1NのHCl)を各ウェルに加えた。各ウェルの光学濃度(OD)を、ELISAプレートリーダ(Bio-Tek)を使用して、450nmの吸収波長において測定した。当該吸光度を、当該融合タンパク質またはコントロールのタンパク質濃度に対してプロットし、シグナルが最大有効濃度の半分になる濃度(EC50)を特定した。その一方で、両方の二重特異性抗体に対するPD-L1の結合親和性も、結合した二重特異性抗体をホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgGであるF(ab’)特異的F(ab’)抗体によって検出したことを除いて、上記において説明されるのと同様のシナリオとして実施した。
【0059】
図11Aに示されたデータのように、EC50値として表現された結合親和性は、組換えPD-L1タンパク質に対して、抗PD-L1-VID/IgG4および抗PD-L1-VID/eIgG1抗体の両方において0.075であった。両方の二重特異性抗体は、ポジティブコントロールである抗PD-L1クローン6抗体(0.1nM)と同様に、結合活性を有する。その一方で、当該結果も、VEGF結合活性試験のために記録した。図11Bに示されるデータのように、両方の二重特異性抗体は、ポジティブコントロールであるVEGFR-Fc(アフリベルセプト)と比較して、同様のVEGF結合活性を示した。結合活性は、PD-L1結合活性またはVEGF結合活性のどちらかに対して、両方の二重特異性抗体において影響されない。
【0060】
(抗PD-L1-VID二重特異性抗体によるHUVEC増殖の阻害)
本発明における二重特異性抗体の機能性を試験するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)増殖アッセイを実施した。ポジティブコントロールとして、上記において説明したVEGFR-Fcを使用した。100μLのコーティング溶液(再蒸留水中における1%のゼラチン)を、96ウェルELISAプレートの各ウェルに加え、当該プレートを、37℃で2時間または一晩インキュベートした。当該ウェルを、PBS緩衝液で2回洗浄した。内皮細胞増殖培地における3500のHUVEC細胞を各ウェルに加え、当該プレートを37℃で一晩インキュベートした。示された試料を、30nMの最高タンパク質濃度となるように、アッセイ緩衝液(培地-199 1×アール塩、10%のウシ胎仔血清、10mMのHEPES、1×抗生物質/抗真菌薬)で希釈した。当該試料を、VEGF165(8ng/mL)と混合し、当該混合物を、室温で一晩インキュベートした。次いで、当該ウェルを200μLのPBSで洗浄した。100μLのVEGF165/試料混合物を各ウェルに加え、当該プレートを、5%のCOにおいて37℃で72時間インキュベートした。インキュベーション後、10μLのMTS検出試薬(蒸留したPBS中における3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)+フェナジンメトサルフェート)を各ウェルに加え、当該プレートを37℃で2.5時間インキュベートした。各ウェルのODを、ELISAプレートリーダ(Bio-Tek)を使用して、490nmの吸収波長において測定した。吸光度を、試験試料のタンパク質濃度に対してプロットし、当該細胞増殖が50%阻害される濃度(IC50)を特定した。細胞増殖の阻害(IC50)が、試験された本発明の融合タンパク質に対して0.1070nMから0.1233nMの間であることを特定した。二重特異性抗体の1つである抗PD-L1-VID/eIgG1は、別の二重特異性抗体である抗PD-L1-VID/IgG4よりも良好に阻害することが明らかとなった(図12、0.1070nM対0.1233nM)。抗PD-L1-VID/eIgG1のIC50は、ポジティブコントロールであるVEGFR-Fcと同様に良好である(0.1072nM)。
【0061】
(MLRにおける抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体リードに対するT細胞活性化の刺激の増強)
PD-1とPD-L1の間の相互作用の阻害による、T細胞活性化の増強における二重特異性抗体のアンタゴニスト機能性を特定するため。二重特異性抗体リードである抗PD-L1-VID/eIgG1抗体を、上記において説明したMLRに適用した。次いで、抗体処理の3日後または5日後に、IL-2およびIFN-γ産生を記録した。T細胞活性化増進におけるアンタゴニスト機能性を比較するために、単一または二重特異性抗体を等しいモルにおいて適用し、アイソタイプIgGをネガティブコントロールとして使用した。図13Aおよび13Bに示されたデータのように、当該抗PD-L1-VID/eIgG1抗体は、処理の3日後に著しいIL2誘導を示し、処理の5日後に低下した。サイトカイン産生のプロファイルは、基準抗体であるMPDL3280Aと非常に類似性が高い。その一方で、IFN-γ産生も、処理の3日後または5日後に、当該二重特異性抗体リード処理において上方調節され、蓄積される。この示された当該抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体は、本発明におけるいかなる活性の損失もなく、基準抗体と同様に、T細胞活性化におけるアンタゴニスト機能性も有する。
【0062】
(抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体のインビトロ血清安定性)
精製した抗PD-L1-VID/eIgG1を、示された異なる種に由来する血清(15μg/mL)と共に、水浴において37でインキュベートした。当該精製した二重特異性抗体を含有する血清試料を、14日目まで、異なる時点において採取した。当該血清試料中の当該二重特異性抗体の濃度は、下記のようなサンドイッチELISAアッセイを使用して特定されるであろう。VEGF165(1μg/mL)で予めコーティングしたウェルを、滴定した濃度の精製した抗PD-L1-VID/eIgG1二重特異性抗体と共にインキュベートして、当該血清(新鮮な調製物、0日)中のAb濃度を計算するための標準曲線とした。検出のため、異なる時点から採取した試料を、予めコーティングしたVEGF165ウェルにも適用した。PBS中における0.1%のTween-20で洗浄した後、インタクトであり、かつ結合したAbを、ビオチン化PD-L1-FcおよびHRP標識ストレプトアビジンで検出し、その後、顕色処理した。外挿法によって当該血清中のAbの濃度を計算し、次いで、Abの半減期を、図14A、14B、および14Cに示されるようにプロットした。抗PD-L1-VID/eIgG1の半減期は、カニクイザル(8.6日)、マウス(9.2日)、またはヒト血清(11.9日)のいずれも、8日よりも長い。当該長い半減期は、将来、動物研究または臨床試験での少ない投与頻度における二重特異性抗体の使用の融通性を提供することが可能であろう。
【0063】
(二重特異性抗体の抗腫瘍活性(インビボモデル))
二重特異性抗体における当該PD-L1の齧歯動物交差反応性の欠如は、当該抗体の抗ヒト腫瘍効力の評価に対する標準的なマウス同系またはヒト異種移植腫瘍モデルの使用を妨げた。したがって、ベージュ(Bg)変異欠如マウスのTおよびBリンパ球および機能性NK細胞を有するSCID-Bgマウス(CB.17/Icr.Cg PkrdcscidLystbg/CrI)を使用して、新規のhuPBL-SCID-Bg異種腫瘍マウスモデルを作製した。当該二重特異性抗体の抗ヒト腫瘍効力を、下記において説明するようにこのモデルを使用して評価した。
【0064】
PC-3ヒト前立腺をアメリカンタイプカルチャーコレクションから得て、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリン/ストレプトマイシン、および10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS,Gibco Cat. No. 10437)を含むRPMI-1640(Invitrogen)において培養した。細胞を、T-150ファルコンフラスコにおいてコンフルエントに増殖させた。続いて、細胞を、トリプシン処理し(トリプシン0.25%-EDTA;Invitrogen)、接種に十分な細胞数に、増殖をスケールアップした。製造元のプロトコル(STEMCELL Technologies Inc.)に従って、Lymphoprep(商標)を使用して、末梢血液リンパ球(PBMC)をヘパリン処理血液から単離した。各マウスが、PBS中における0.1mLの単一ボーラス注入において0.75×10のPBMCおよび3×10腫瘍細胞の注入を受けるように、カウントした細胞懸濁液を組み合わせた。当該マウスにおける腫瘍細胞の増殖を促進するために、別の0.1mLのマトリゲルを、当該組み合わせた細胞懸濁液と混合し、すぐに調製マウスに注入した。
【0065】
各マウスに対して、0.2mL量の当該組み合わせた細胞懸濁液を、当該動物の右脇腹の皮下に注入した。接種日後、固形腫瘍が形成され、約~100mmに達し、当該二重特異性抗体(10mg/kg)またはコントロール抗体を、腹腔内注射(i.p.)によって3週間から4週間にわたり毎週2回与えた。毎週2回、Pressierキャリパーによる腫瘍測定、ならびに実験期間における試験試料投与を行い、ならびに体重も記録した。以下の計算:長さ×幅×0.44=容量(mm)を用いて腫瘍容量を計算し、図15Aにプロットした。腫瘍容量が2000mmに達するか、実験の終了前に体重が20%減少したマウスを研究から除去した。接種7日後に腫瘍を測定したところ、同様の結果が観察され、腫瘍容量に従って動物をランダマイズした。動物研究のため、各グループは、6匹のマウスを含んでいた。図15Aに示されたデータのように、当該二重特異性抗体は、PC-3異種移植マウスモデルにおいて、著しい抗腫瘍効力を示した。PD-L1基準抗体と同様に、腫瘍サイズは、腫瘍接種の18日後に縮小し、200mm未満に減少し続けた。図15Bは、接種の35日後において、二重特異性抗体処理による腫瘍サイズが、アイソタイプまたは基準抗体処理よりも著しく小さいことを示している。それは、抗PD-L1-VID/eIgG1Abが、動物において抗腫瘍性活性の相乗効果を有することを示した。当該PC-3異種移植マウスモデルは、二重特異性抗体の抗腫瘍について予め実証され、将来における治療薬リードである可能性が明らかである。
【0066】
まとめると、これらの結果は、二重特異性抗体が、PD-1/PD-L1シグナル伝達におけるその免疫チェックポイント遮断性を維持し、血管新生促進タンパク質であるVEGFを中和することを示した。適切な動物モデル(例えば、ヒト化NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtmIwjI/SzJ(NSG)モデルにおけるPC-3腫瘍など)を使用してこれらのタンパク質の二重特異的活性をさらに調査するために、研究が進められている。
【0067】
本発明におけるFc領域は、任意の免疫グロブリンアイソタイプ、サブクラス、アロタイプ、遺伝子改変変異体(例えば、ノブおよびホール(knob and hole)Fc断片など)に由来し得る。
【実施例
【0068】
(実施例)
下記の実施例は、ヒトPD-L1およびVEGFを標的とする治療目的にとって好適なモノクローナル抗体の作製について説明するものである。複合体、ヒト抗ヒトPD-L1およびVEGF中和ドメインは、それぞれ、抗PD-L1抗体クローン6および、ヒトVEGF受容体由来のVEGF捕捉ドメインから作製した。ヒトV領域配列のセグメントは、無関係のヒト抗体(生殖系列および非生殖系列)配列データベースを供給源とした。
【0069】
実施例1 PD-L1およびVEGFに結合するIgG抗体の作製
本発明によって提供されるある特定の抗体は、ヒトPD-L1に結合するFabから独自に作製した。当該Fabは、対応するFc融合タンパク質(PD-L1-Fc)および対応するヒトタンパク質(PD-L1)を発現する細胞における交互パンニング(alternating panning)に従って、ファージディスプレイライブラリであるOmniMabファージミドライブラリから選択した。直接的ELISAスクリーニング後、当該ポジティブクローンを、重鎖および軽鎖に対して配列決定した。これらのFabは、PD-L1に対して、「OM-PD-L1-6」および「OM-PD-L1-32」などと命名されるものを含んでいた。本出願において開示されるPD-L1抗体PD-L1-クローン6、およびPD-L1-クローン32は、HEK293細胞またはCHO-S細胞における「OM-PD-L1-6」および「OM-PD-L1-32」から作製した。ならびに二重特異性抗体標的化PD-L1およびVEGFを、同時に、抗PD-L1-VID(VEGF阻害ドメイン)抗体として設計した。所定のFabの軽鎖可変領域および重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、当該軽鎖可変領域および重鎖可変領域の当該アミノ酸配列と同一である。
【0070】
実施例2 抗PD-L1-VID二重特異性抗体の、その対応する標的へのインビトロ結合
抗PD-L1-VID二重特異性抗体を、図8に示されるように構築し、HEK293細胞またはCHO-S細胞において発現させた。二重特異性抗体を含む培地を、プロテインGクロマトグラフィーによって、培養上清からアフィニティー精製した。精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析し、図9に示されるようにSDS-PAGEによって分析した。PD-L1またはVEGF165への精製された融合タンパク質の直接結合をELISAにおいて試験するために、100ng/ウェルの組換えPD-L1を、96ウェルELISAプレートにおいてコーティングした。様々な濃度の精製された抗PD-L1-VID Abを各ウェルに加え、1時間インキュベートした。洗浄後、抗Fabまたは抗FcHRPコンジュゲート(Jackson Immunochemicals)の1:5000希釈を各ウェルに加え、さらに1時間インキュベートした。最終洗浄後、TMB基質(Invitrogen Inc.)を加え、450nmにおけるOD吸光度を測定した。当該データを、GraphPad Prism 5を使用してS字形曲線フィッティングによって解析し、EC50を計算した。
【0071】
実施例3 FACS分析による抗PD-L1-VIDの抗原結合特異性
【0072】
PD-L1-VID Ab抗体結合特異性を試験するために、安定PD-L1発現293細胞(ヒト胎児腎臓細胞)、IFN-γ刺激A549(肺癌)、またはNCI-H292(粘膜表皮肺癌)を、氷上で1時間かけて、30nM 抗PD-L1-VID Ab抗体の3倍段階希釈物で染色し、その後、1×PBSで3回洗浄した。結合した抗体融合タンパク質を、Alexa-488標識ヤギIgG(H+L)で検出し、その後、FACS分析を行った。当該試験のネガティブコントロールとして、アイソタイプ抗体を使用した。結果は、抗PD-L1-VID Abが、抗PD-L1単独と比較して、その抗原結合特異性を維持していることを示した(図16A、16B、および16C)。
【0073】
実施例4 抗PD-L1-VID二重特異性抗体のインビトロ免疫調節効果
T細胞応答性を調節する当該抗PD-L1-VID Abの能力を測定するために、精製されたT細胞が、数日間かけて、GM-CSFおよびIL-4において単球を培養することによって調製した同種異系樹状細胞と共に培養されるであろう。市販のELISAキットを使用して、それぞれ、IL-2およびIFN-γを測定するために、3日目および5日目での上清の収集を可能にするように、平行プレートを準備した。Genentech/Rocheのヒト化抗PD-L1であるMPDL3280Aが、自前で作製され、ポジティブコントロールとして使用されるであろう。図13Aおよび13Bに示されたデータのように、当該IL-2およびIFN-γ産生は、抗体処理の3日後または5日後に、基準抗体と同様に、二重特異性抗体処理において高度に上方調節される。それは、当該二重特異性抗体が、依然として、T細胞活性化を促進するために、T細胞と樹状細胞との間のPD-1/PD-L1相互作用を阻害する能力を有することを明らかにした。
【0074】
実施例5 インビボでの二重特異性抗体によって誘導されるヒト白血球増殖
マウスPD-L1との当該PD-L1抗体における検出可能な交差反応の欠如、およびヒト免疫細胞の存在に対する要件は、当該二重特異性抗体のインビボ機能性評価のためのモデルの開発を必要とした。重症複合免疫不全(SCID)変異およびIL-2受容体共通ガンマ鎖(一般的に、NSGと呼ばれる)における欠損を有するNOD遺伝的背景のマウスは、多くのヒト末梢血白血球(huPBL)の移植を支持することができ、少なくとも30日間、移植を維持することができる(King et al.,2008)。huPBL-NSGモデルとしても知られるこのマウスモデルを、ヒト免疫細胞に対する当該抗体のインビボ全身性投与の機能効果を評価するために使用した。
【0075】
詳細には、新たに単離した600万のヒトPBMCを、静脈内注入によってhuPBL-NSGマウスへと養子移入した。PBMC注入の9日間後、当該動物に、腹腔内注入によって、単回1mg/kgのモノ抗体、二重特異性抗体、またはアイソタイプコントロール抗体を投与した。PBMC移植の24日から28日後に、フローサイトメトリによって評価したヒトおよびマウスCD45に対する抗体でPBMCを染色した。リンパ球ゲートを特定するために、前方および側方散乱プロファイルを使用した。移植されたマウスの末梢血におけるヒトCD45細胞の割合の増加によって証明されるように、二重特異性抗体は、ヒト白血球の増殖を高めることができた。各群に対して、n≧6匹のマウス。
【0076】
実施例6 抗PD-L1-VID/eIgG1抗体によるhuPBL-NSGにおけるPC-3またはA498腫瘍細胞増殖の阻害
huPBL-NSGマウスにおいて異種移植モデルを確立するために、PD-L1ポジティブヒト前立腺癌細胞株PC-3(ATCCCRL-1435)または腎癌細胞株A498(ATCC(登録商標)HTB-44(商標))を使用することができる。腫瘍形成のために、3×10のPC-3細胞(またはA498細胞)/マウスが、上記において説明したhuPBL-NSGマウスに、皮下において注入されるであろう。腫瘍増殖に対する阻害効果を評価するために、腫瘍細胞移植の14日後に、0.1~3mg/kgの異なる濃度の抗PD-L1-VID/eIgG1抗体、基準抗体、またはアイソタイプ抗体が、毎週2回、4週間にわたってマウスに静脈内投与されるであろう。腫瘍増殖は、Fox Chase SCID(登録商標)Beigeマウスモデルにおいて説明したように、最長5週間にわたって毎週2回測定されるであろう。
【0077】
実施例7 マウスおよびサルにおける抗PD-L1-VID/eIgG1の薬物動態評価
10mg/kgから40mg/kgの二官能性タンパク質である抗PD-L1-VID/eIgG1が、皮下注入または静脈内注入によってマウスまたはサルに投与されるであろう。注入後、最長15日間まで、異なる時点において、血清試料が採取されるであろう。当該血清試料中のFc融合タンパク質の濃度が、サンドイッチELISAアッセイを使用して特定されるであろう。
【0078】
本開示について、実施例により、および好ましい実施形態の観点から説明してきたが、本開示はそれらに限定されるわけではないことは理解されるべきである。それに対して、様々な変更および同様の配置および手順を網羅することが意図され、したがって、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような変更および同様の配置および手順を包含するような最も広い解釈が認められるべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
【配列表】
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