(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】音源分離装置、半導体装置、および、電子機器
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240402BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20240402BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240402BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240402BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240402BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240402BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20240402BHJP
H03K 17/693 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R1/40 320A
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L27/088 J
H01L27/088 Z
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H03K17/00 D
H03K17/693 A
(21)【出願番号】P 2020550956
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2019058364
(87)【国際公開番号】W WO2020075010
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018192877
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 丈也
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126888(JP,A)
【文献】特開2006-222618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/40
H01L 21/8234
H01L 27/088
H10B 12/00
H01L 29/786
H03K 17/00
H03K 17/693
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1選択回路と、
第1信号保持回路と、
第2選択回路と、
第2信号保持回路と、を有する半導体装置であって
、
アナログ信号が
前記半導体装置に入力され、
前記第1選択回路は、前記アナログ信号を、異なる時刻
にサンプリングする機能を有し、
前記第1選択回路は、
前記第1信号保持回路および前記第2信号保持回路の一方を選択する機能を有し、
前記第1信号保持回路は、前記アナログ信号を異なる時刻にサンプリングして得られた第1アナログ電位を保持する機能を有し、
前記第2信号保持回路は、前記アナログ信号を異なる時刻にサンプリングして得られた第2アナログ電位を保持する機能を有し、
前記第2選択回路は、前記
第1信号保持回路が保持している前記第1アナログ電位および前記第2信号保持回路が保持している前記第2アナログ電位の一方を出力する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記
第1信号保持回路および前記第2信号保持回路は、トランジスタと容量素子とを有し、
前記トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置。
【請求項3】
第1マイクロホン乃至第Nマイクロホン(Nは2以上の自然数)と、
第1遅延回路乃至第N遅延回路と、
信号処理回路と、を有し、
第Kマイクロホン(Kは1以上N以下の自然数)は、前記第K遅延回路と、電気的に接続され、
前記第Kマイクロホンは、前記第K遅延回路に、第K音源信号を出力し、
前記第K遅延回路は、第1選択回路と
、信号保持回路と、第2選択回路と
、を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第1選択回路は、前記第K音源信号を、異なる時刻にサンプリングする機能を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第1選択回路は、
前記第K音源信号を異なる時刻にサンプリングして得られたアナログ電位を、前記第K遅延回路が有する前記信号保持回路へ出力し、
前記第K遅延回路が有する前記信号保持回路は、前記アナログ電位を保持する機能を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第2選択回路は、前記第K遅延回路が有する前記信号保持回路が保持している前記アナログ電位
を読み出す機能を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第2選択回路は、前記アナログ電位を読み出して得られた第K出力信号を、前記信号処理回路へ出力し、
前記信号処理回路は、第1出力信号乃至第K出力信号を、足し合わせる、半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記信号保持回路は、トランジスタと容量素子とを有し、
前記トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置。
【請求項5】
第1マイクロホン乃至第Nマイクロホン(Nは2以上の自然数)と、
第1遅延回路乃至第N-1遅延回路と、
信号処理回路と、を有し、
第Kマイクロホン(Kは1以上N-1以下の自然数)は、前記第K遅延回路と、電気的に接続され、
前記第Kマイクロホンは、前記第K遅延回路に、第K音源信号を出力し、
前記第Nマイクロホンは、前記信号処理回路に、第N音源信号を出力し、
前記第K遅延回路は、第1選択回路と
、信号保持回路と、第2選択回路と
、を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第1選択回路は、前記第K音源信号を、異なる時刻にサンプリングする機能を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第1選択回路は、
前記第K音源信号を異なる時刻にサンプリングして得られたアナログ電位を、前記第K遅延回路が有する前記信号保持回路へ出力し、
前記第K遅延回路が有する前記信号保持回路は、前記アナログ電位を保持する機能を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第2選択回路は、前記第K遅延回路が有する前記信号保持回路が保持している前記アナログ電位
を読み出す機能を有し、
前記第K遅延回路が有する前記第2選択回路は、前記アナログ電位を読み出して得られた第K出力信号を、前記信号処理回路へ出力し、
前記信号処理回路は、第1出力信号乃至第K出力信号と、第N音源信号とを、足し合わせる、半導体装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記信号保持回路は、トランジスタと容量素子とを有し、
前記トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、特定の方向から発せられている音を分離する、音源分離装置に関する。
【0002】
また、本発明の一形態は、半導体装置に関する。本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップや、パッケージにチップを収納した電子部品、集積回路を備えた電子機器は、半導体装置の一例である。
【0003】
なお、本発明の一形態は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一形態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
音源分離装置として、複数のマイクロホン(マイクロホンアレー、ともいう)を用い、特定の方向から発せられている音を強調する、ビームフォーマが知られている。ビームフォーマは、音波が音源から各マイクロホンへ伝播する時間が異なることを利用し、各マイクロホンが出力する電気信号それぞれに遅延を与え、足し合わせることで、目的の方向から発せられている音を強調することができる。また、目的の方向以外から発せられている音を低減することができる。
【0005】
ビームフォーマを用いると、例えば、スマートホンなどの携帯型情報端末、対話型ロボット、自動車のナビゲーション、TV会議などにおいて、使用者の音声を強調し、周囲の雑音、反響などの影響を低減することができる(例えば、特許文献1、参照)。
【0006】
一方、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(酸化物半導体トランジスタ、OSトランジスタ、ともいう)が近年注目されている。酸化物半導体トランジスタは、トランジスタがオフ状態にあるときのドレイン電流(オフ電流、ともいう)が非常に小さいため、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のメモリセルに用いることで、容量素子に蓄積した電荷を長時間にわたって保持することができる。その結果、リフレッシュ頻度が少なく、消費電力の少ない記憶装置(半導体装置、メモリ、ともいう)を作製することができる(例えば、特許文献2)。
【0007】
また、特許文献3には、OSトランジスタとOSトランジスタ以外のトランジスタ(例えば、Siトランジスタ)を、ゲインセル型のメモリセルに用いた例が開示されている。本明細書等では、OSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(登録商標、Nonvolatile Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ。NOSRAMは、例えば、記憶した情報(データ、ともいう)を非破壊で読み出すことができる。
【0008】
酸化物半導体(Oxide Semiconductor、ともいう)に関して、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛など、一元系金属の酸化物のみでなく、多元系金属の酸化物も知られている。多元系金属の酸化物の中でも、特に、In-Ga-Zn酸化物(IGZO、ともいう)に関する研究が盛んに行われている。
【0009】
IGZOに関する研究により、酸化物半導体において、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造、および、nc(nanocrystalline)構造が見出された(非特許文献1乃至非特許文献3、参照)。
【0010】
非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いて、トランジスタを作製する技術が開示されている。さらに、CAAC構造およびnc構造よりも結晶性の低い酸化物半導体でさえも、微小な結晶を有することが、非特許文献4および非特許文献5に示されている。
【0011】
非特許文献6では、酸化物半導体を用いたトランジスタの、オフ電流が非常に小さいことが報告され、非特許文献7および非特許文献8では、オフ電流が非常に小さい性質を利用した、LSI(Large Scale Integration)およびディスプレイが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2011-515897号公報
【文献】特開2012-256820号公報
【文献】特開2012-256400号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】S.Yamazaki et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2012,volume 43,issue 1,p.183-186
【文献】S.Yamazaki et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2014,volume 53,Number 4S,p.04ED18-1-04ED18-10
【文献】S.Ito et al.,“The Proceedings of AM-FPD’13 Digest of Technical Papers”,2013,p.151-154
【文献】S.Yamazaki et al.,“ECS Journal of Solid State Science and Technology”,2014,volume 3,issue 9,p.Q3012-Q3022
【文献】S.Yamazaki,“ECS Transactions”,2014,volume 64,issue 10,p.155-164
【文献】K.Kato et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2012,volume 51,p.021201-1-021201-7
【文献】S.Matsuda et al.,“2015 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers”,2015,p.T216-T217
【文献】S.Amano et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2010,volume 41,issue1,p.626-629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したビームフォーマにおいて、例えば、各マイクロホンは入力された音を電気信号に変換して出力し、電気信号はA/D(Analog to Digital)変換回路を介してデジタル信号に変換され、デジタル信号は信号処理回路を介してそれぞれに適切な遅延が与えられる。このようにして遅延が与えられた信号を足し合わせることで、目的の方向から発せられている音を強調した信号を生成することができる。
【0015】
また、ビームフォーマは、マイクロホンの数が多いほど角度分解能が高く、目的の方向から発せられている音を強調する能力が高いが、マイクロホンの数が多いと処理する信号の数が多くなり、A/D変換回路および信号処理回路に高い処理能力が要求され、また、消費電力が高くなるという課題があった。このことは、小型、軽量で、バッテリでの動作可能時間が長いことが要求される携帯型情報端末等では、特に問題であった。
【0016】
本発明の一形態は、A/D変換回路を必要とせず、アナログ信号のまま音源分離を行うことができる、半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一形態は、音源分離を低い消費電力で行うことができる、半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一形態は、新規な半導体装置等を提供することを課題の一つとする。
【0017】
なお、本発明の一形態は、必ずしも上記の課題の全てを解決する必要はなく、少なくとも一つの課題を解決できるものであればよい。また、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。これら以外の課題は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から自ずと明らかになるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一形態は、第1選択回路と、複数の信号保持回路と、第2選択回路とを有する半導体装置である。半導体装置にはアナログ信号が入力され、第1選択回路は、アナログ信号を異なる時刻に複数回サンプリングする機能を有し、サンプリングして得られたアナログ電位を、信号保持回路へ出力する。信号保持回路は、アナログ電位を保持する機能を有し、第2選択回路は、信号保持回路が保持しているアナログ電位を、アナログ信号がサンプリングされた時刻とは異なる時刻に出力する。
【0019】
また、上記形態において、信号保持回路は、トランジスタと容量素子とを有し、トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【0020】
また、本発明の一形態は、第1マイクロホン乃至第Nマイクロホン(Nは2以上の自然数)と、第1遅延回路乃至第N遅延回路と、信号処理回路とを有する半導体装置である。第Kマイクロホン(Kは1以上N以下の自然数)は、第K遅延回路と電気的に接続され、第Kマイクロホンは、第K遅延回路に、第K音源信号を出力する。第K遅延回路は、第1選択回路と、複数の信号保持回路と、第2選択回路とを有し、第K遅延回路が有する第1選択回路は、第K音源信号を、異なる時刻にサンプリングする機能を有し、第K遅延回路が有する第1選択回路は、サンプリングして得られたアナログ電位を、第K遅延回路が有する信号保持回路へ出力する。第K遅延回路が有する信号保持回路は、アナログ電位を保持する機能を有し、第K遅延回路が有する第2選択回路は、第K遅延回路が有する信号保持回路が保持しているアナログ電位を、アナログ電位がサンプリングされた時刻とは異なる時刻に読み出す機能を有し、第K遅延回路が有する第2選択回路は、アナログ電位を読み出して得られた第K出力信号を、信号処理回路へ出力する。信号処理回路は、第1出力信号乃至第K出力信号を足し合わせる。
【0021】
また、上記形態において、信号保持回路は、トランジスタと容量素子とを有し、トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【0022】
また、本発明の一形態は、第1マイクロホン乃至第Nマイクロホン(Nは2以上の自然数)と、第1遅延回路乃至第N-1遅延回路と、信号処理回路とを有する半導体装置である。第Kマイクロホン(Kは1以上N-1以下の自然数)は、第K遅延回路と電気的に接続され、第Kマイクロホンは、第K遅延回路に、第K音源信号を出力し、第Nマイクロホンは、信号処理回路に、第N音源信号を出力する。第K遅延回路は、第1選択回路と、複数の信号保持回路と、第2選択回路とを有し、第K遅延回路が有する第1選択回路は、第K音源信号を、異なる時刻にサンプリングする機能を有し、第K遅延回路が有する第1選択回路は、サンプリングして得られたアナログ電位を、第K遅延回路が有する信号保持回路へ出力する。第K遅延回路が有する信号保持回路は、アナログ電位を保持する機能を有し、第K遅延回路が有する第2選択回路は、第K遅延回路が有する信号保持回路が保持しているアナログ電位を、アナログ電位がサンプリングされた時刻とは異なる時刻に読み出す機能を有し、第K遅延回路が有する第2選択回路は、アナログ電位を読み出して得られた第K出力信号を、信号処理回路へ出力する。信号処理回路は、第1出力信号乃至第K出力信号と、第N音源信号とを、足し合わせる。
【0023】
また、上記形態において、信号保持回路は、トランジスタと容量素子とを有し、トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一形態により、A/D変換回路を必要とせず、アナログ信号のまま音源分離を行うことができる、半導体装置を提供することができる。または、本発明の一形態により、音源分離を低い消費電力で行うことができる、半導体装置を提供することができる。または、本発明の一形態により、新規な半導体装置等を提供することができる。
【0025】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。また、本発明の一形態は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。これら以外の効果は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1は、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、遅延回路の構成例を説明する回路図である。
図3A、
図3Bは、信号処理回路の構成例を説明する回路図である。
図4は、遅延回路のタイミングチャートである。
図5は、遅延回路のタイミングチャートである。
図6は、遅延回路のタイミングチャートである。
図7A、
図7Bは、スマートホンの構成例を示す斜視概略図である。
図7Cは、音と信号のイメージ図である。
図8は、半導体装置の構成例を示す断面図である。
図9A、
図9B、
図9Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図10Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図10B、
図10Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図11Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図11B、
図11Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図12Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図12B、
図12Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図13Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図13B、
図13Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図14Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図14B、
図14Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図15Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図15B、
図15Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図16Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。
図16Bは、トランジスタの構造例を示す斜視図である。
図17A、
図17Bは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図18A、
図18Cは、トランジスタの断面図である。
図18B、
図18Dは、トランジスタの電気特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0028】
また、以下に示される複数の実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0029】
なお、本明細書に添付した図面では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとしてブロック図を示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0030】
また、図面等において、大きさ、層の厚さ、領域等は、明瞭化のため誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
【0031】
また、図面等において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0032】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0033】
また、本明細書等において、「上」や「下」などの配置を示す用語は、構成要素の位置関係が、「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0034】
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0035】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0036】
また、本明細書等において、「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、グラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位差とは言い換えることができる。
【0037】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む、少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域、またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域、またはソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0038】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等において、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0039】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。つまり、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流、という場合がある。
【0040】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソース電流をいう場合がある。また、オフ電流と同じ意味で、リーク電流という場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0041】
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体、を含む)、酸化物半導体などに分類される。
【0042】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)と呼ぶことができる。すなわち、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタを、「酸化物半導体トランジスタ」、「OSトランジスタ」と呼ぶことができる。同様に、上述した、「酸化物半導体を用いたトランジスタ」も、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである。
【0043】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と呼称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。金属酸化物の詳細については後述する。
【0044】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態に係わる半導体装置の構成例について説明する。本発明の一形態に係わる半導体装置は、複数のマイクロホンを有し、各マイクロホンが出力する電気信号に遅延を与え、足し合わせることで、目的の方向から発せられている音を強調する、音源分離装置としての機能を有する。音源と各マイクロホンとの距離の差が、音の飛行時間(Time of Flight:ToF)の差となることを利用して、目的の方向から発せられている音を強調し分離することができる。
【0045】
<半導体装置の構成例>
図1に示す半導体装置100は、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_N(Nは2以上の自然数)、遅延回路20_1乃至遅延回路20_N、および、信号処理回路30、を有する。マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_Nをまとめて、マイクロホンアレー、ともいう。
【0046】
なお、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_Nのうち、任意のマイクロホンを指すときは、マイクロホン10の符号を用いて説明し、1つを特定する必要があるときは、マイクロホン10_1、マイクロホン10_2などの符号を用いて説明する。他の要素についても同様であり、複数の要素を区別するために、「_1」あるいは[_2]などの符号が用いられる。また、本明細書等で説明する図面においては、主な信号の流れを矢印または線で示しており、電源線等は省略する場合がある。
【0047】
マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_Nは、入力された音を電気信号に変換して出力する機能を有する。なお、本明細書等において、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_Nが出力する電気信号を音源信号と呼ぶこととし、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_Nは、それぞれ音源信号D_1乃至音源信号D_Nを出力するとして、表記または図示している。
【0048】
遅延回路20_1乃至遅延回路20_Nは、マイクロホン10ごとに設けられる。遅延回路20_1乃至遅延回路20_Nには、それぞれ音源信号D_1乃至音源信号D_Nが入力され、遅延回路20_1乃至遅延回路20_Nは、それぞれ音源信号D_1乃至音源信号D_Nを遅延させた信号を生成する機能を有する。遅延回路20_1乃至遅延回路20_Nのそれぞれは、選択回路21、複数の信号保持回路22、選択回路23を有する。
【0049】
<遅延回路の説明>
選択回路21(第1選択回路、ともいう)は、音源信号D_1乃至音源信号D_Nのいずれか一つ、例えば、音源信号D_1を複数の信号保持回路22に振り分けるデマルチプレクサとしての機能を有する。選択回路21はスイッチの機能を有し、選択信号Wによってオン(導通状態、ともいう)またはオフ(非導通状態、ともいう)が制御される。例えば、選択信号Wを、ハイレベルまたはローレベルで表されるデジタル信号とし、選択回路21を、nチャネル型のトランジスタで構成することができる。この場合、選択回路21が有するトランジスタは、選択信号Wがハイレベルでオンとなり、ローレベルでオフとなる。
【0050】
複数の信号保持回路22は、音源信号に応じたアナログ電位を保持し、当該アナログ電位に応じた電位を出力する機能を有する。信号保持回路22へのアナログ電位の書き込みは、所定の時刻に選択回路21が有するスイッチをオンにし、音源信号をサンプリングすることで行われる。すなわち、信号保持回路22へのアナログ電位の書き込みは、選択信号Wをハイレベルとすることで行われ、信号保持回路22でのアナログ電位の保持は、選択信号Wをローレベルとすることで行われる。
【0051】
なお、複数の信号保持回路22には、それぞれ異なる時刻の音源信号がサンプリングされ、保持される。すなわち、複数の信号保持回路22は、音源信号のサンプリングを次々と行うことで、マイクロホン10から出力される音源信号の離散的な値を保持することができる。
【0052】
また、複数の信号保持回路22は、保持したアナログ電位を増幅して出力する機能を有する。例えば、複数の信号保持回路22は、それぞれソースフォロワ回路を有し、当該ソースフォロワ回路を介して保持したアナログ電位に応じた電位を出力する機能を有する。
【0053】
選択回路23(第2選択回路、ともいう)は、複数の信号保持回路22に保持したアナログ電位のいずれか一つを選択し、異なる時刻に出力するマルチプレクサとしての機能を有する。選択回路23はスイッチの機能を有し、選択信号Sによってオンまたはオフが制御される。例えば、選択信号Sを、ハイレベルまたはローレベルで表されるデジタル信号とし、選択回路23を、nチャネル型のトランジスタで構成することができる。この場合、選択回路23が有するトランジスタは、選択信号Sがハイレベルでオンとなり、ローレベルでオフとなる。
【0054】
選択回路23は、遅延回路20_1乃至遅延回路20_Nのそれぞれに設けられ、出力信号Q_1乃至出力信号Q_Nを出力する。出力信号Q_1は、音源信号D_1に対応する信号であり、遅延回路20_1が有する複数の信号保持回路22に保持したアナログ電位を、順次出力することで得られる離散的な信号である。
【0055】
出力信号Q_2乃至出力信号Q_Nについても同様に、それぞれ音源信号D_2乃至音源信号D_Nに対応する信号であり、遅延回路20_2乃至遅延回路20_Nが有する信号保持回路22に保持したアナログ電位を、順次出力することで得られる離散的な信号である。
【0056】
出力信号Q_1は、音源信号D_1を所定の時間だけ遅延させた信号に相当する。同様に、出力信号Q_2乃至出力信号Q_Nは、それぞれ音源信号D_2乃至音源信号D_Nを所定の時間だけ遅延させた信号に相当する。すなわち、選択回路23は、選択信号Sを選択信号Wより所定の時間だけ遅延させてハイレベルとすることで、音源信号D_1乃至音源信号D_Nを、それぞれ所定の時間だけ遅延させた出力信号Q_1乃至出力信号Q_Nを出力することができる。
【0057】
<遅延回路の構成例>
次に、遅延回路20の回路構成例を説明する。
図2には、遅延回路20を代表して、遅延回路20_1の回路構成例を示す。
【0058】
図2に示す遅延回路20_1は、信号保持回路22をm個(mは2以上の自然数)有する。
図2では、選択回路21を構成するトランジスタ101、信号保持回路22を構成するトランジスタ101乃至トランジスタ103、および、容量素子C11、ならびに、選択回路23を構成するトランジスタ104を図示している。トランジスタ101乃至トランジスタ104は、nチャネル型のトランジスタである。また、トランジスタ101およびトランジスタ104は、選択信号Wまたは選択信号Sがハイレベルでオン、ローレベルでオフとなるスイッチとして機能する。
【0059】
図2では、選択回路21の選択信号Wとして、選択信号W_1乃至選択信号W_mを図示している。選択信号W_1乃至選択信号W_mは、異なる時刻に音源信号D_1のアナログ電位をサンプリングするための信号である。そして、選択回路21でサンプリングされたアナログ電位は、ノードF11乃至ノードF1mに保持される。
【0060】
図2では、トランジスタ102およびトランジスタ103がソースフォロワ回路を構成し、ノードF11乃至ノードF1mが、ソースフォロワ回路の入力端子であるトランジスタ102のゲートに接続される構成を示している。トランジスタ103のゲートには、ソースフォロワ回路のバイアス電位VBが印加され、ソースフォロワ回路の出力端子であるノードO11乃至ノードO1mの電位は、ノードF11乃至ノードF1mのアナログ電位に相当する。ソースフォロワ回路があることで、後段にある選択回路23への電流供給能力を高めることができるが、ソースフォロワ回路は必ずしも必要ではない。また、ノードF11乃至ノードF1mには、容量素子C11が接続される構成を示しているが、トランジスタ102のゲート容量が十分大きい場合など、容量素子C11を省略できる場合がある。
【0061】
図2では、選択回路23の選択信号Sとして、選択信号S_11乃至選択信号S_1mを図示している。選択回路23は、サンプリングしたアナログ電位に相当するノードO11乃至ノードO1mの電位を選択して出力することで、音源信号D_1を所定の時間だけ遅延させた出力信号Q_1を生成することができる。
【0062】
遅延回路20_1の回路構成例について説明したが、遅延回路20_2乃至遅延回路20_Nについても同様である。すなわち、遅延回路20_1乃至遅延回路20_Nは、それぞれ音源信号D_1乃至音源信号D_Nのアナログ電位をサンプリングする機能、サンプリングしたアナログ電位を保持する機能、および、保持したアナログ電位を所定の時間だけ遅延させて出力する機能を有する。遅延回路20は、音源信号をデジタル信号に変換することなく、音源信号を所定の時間だけ遅延させることができる。
【0063】
<遅延回路を構成するトランジスタ>
なお、遅延回路20を構成する各トランジスタには、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)を用いることが好ましい。本発明の一形態の構成では、OSトランジスタのオフ電流が非常に小さい性質を利用して、音源信号をサンプリングして得られるアナログ電位を、遅延回路20が有する信号保持回路22に保持さることができる。すなわち、OSトランジスタを用いた信号保持回路22は、所定の時間だけ遅延させても、保持したアナログ電位を正確に出力することができる。または、容量素子C11を小さくし、多数の信号保持回路22を搭載することができる。
【0064】
ここで、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときのドレイン電流をいう。酸化物半導体のバンドギャップは2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上であるため、OSトランジスタは熱励起によるリーク電流が小さく、オフ電流が非常に小さい特徴を有する。OSトランジスタは、例えば、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を100zA/μm以下、または10zA/μm以下、または1zA/μm以下、または10yA/μm以下とすることができる。
【0065】
また、OSトランジスタは、高温下でもオフ電流が増加しにくい、高温下でもオン電流とオフ電流の比が大きい、という特徴を有する。例えば、125℃以上150℃以下といった高温下においても、OSトランジスタは良好なスイッチング動作を行うことができ、OSトランジスタを用いた遅延回路20は、高温下においても信頼性が高い。
【0066】
OSトランジスタのチャネル形成領域に用いられる金属酸化物は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一方を含む酸化物半導体であることが好ましい。このような酸化物半導体としては、In-M-Zn酸化物(元素Mは、例えばAl、Ga、YまたはSn)が代表的である。電子供与体(ドナー)となる水分、水素などの不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減することで、酸化物半導体をi型(真性)、または実質的にi型にすることができる。このような酸化物半導体は、高純度化された酸化物半導体と呼ぶことができる。なお、OSトランジスタの詳細については、実施の形態2および実施の形態3で説明する。
【0067】
OSトランジスタを用いた信号保持回路22は、電荷の充電または放電によってアナログ電位の書き込みを行うため、アナログ電位の書き換え可能回数は、実質的に無制限である。OSトランジスタを用いた信号保持回路22は、磁気メモリあるいは抵抗変化型メモリなどのように、原子レベルでの構造変化を伴わないため、書き換え耐性に優れている。また、OSトランジスタを用いた信号保持回路22は、書き換え動作を繰り返し行っても、フラッシュメモリのように、電子捕獲中心の増加による不安定性が認められない。
【0068】
また、OSトランジスタは薄膜トランジスタであるため、積層して設けることができる。例えば、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタを用いて構成された回路上などに、OSトランジスタを設けることができる。そのため、遅延回路20を多数備える構成であっても、集積化を容易に行うことができる。
【0069】
もしくは、遅延回路20を構成する各トランジスタに、オフ電流が低ければOSトランジスタ以外のトランジスタを用いてもよい。例えば、チャネル形成領域にバンドギャップが大きい半導体を有するトランジスタを用いてもよい。バンドギャップが大きい半導体とは、バンドギャップが2.2eV以上の半導体を指す場合があり、例えば、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0070】
<信号処理回路の構成例>
信号処理回路30は、遅延回路20_1乃至遅延回路20_Nが出力した、出力信号Q_1乃至出力信号Q_Nを加算して(足し合わせて)出力する機能を有する。
図3Aに、信号処理回路30の回路構成例を示す。
図3Aに示す信号処理回路30は、オペアンプを用いた回路構成例である。
【0071】
信号処理回路30は、オペアンプ110、抵抗素子R11、抵抗素子R21乃至抵抗素子R2N、および、容量素子C21乃至容量素子C2Nを有する。容量素子C21乃至容量素子C2Nの一方の端子には、それぞれ出力信号Q_1乃至出力信号Q_Nが入力され、容量素子C21乃至容量素子C2Nの他方の端子は、それぞれ抵抗素子R21乃至抵抗素子R2Nの一方の端子と電気的に接続される。
【0072】
抵抗素子R21乃至抵抗素子R2Nの他方の端子は、オペアンプ110の非反転入力端子(
図3Aでは、“+”と表記)に電気的に接続され、オペアンプ110の非反転入力端子とオペアンプ110の出力端子は、抵抗素子R11を介して電気的に接続される。オペアンプ110の出力端子からは、出力信号D_OUTが出力される。
【0073】
なお、出力信号Q_1乃至出力信号Q_Nを等価に加算する場合等、抵抗素子R21乃至抵抗素子R2Nを同じ抵抗素子R20、容量素子C21乃至容量素子C2Nを同じ容量素子C20としてもよい(
図3B、参照)。
【0074】
<遅延回路の動作例1>
図4は、遅延回路20_1が、音源信号D_1のアナログ電位をサンプリングする動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0075】
図4では、遅延回路20_1が、信号保持回路22を3個(m=3)有する場合のタイミングチャートを示している。すなわち、
図4に示すタイミングチャートにおいては、遅延回路20_1は、異なる3回の時刻に音源信号D_1のアナログ電位をサンプリングする。
【0076】
図4では、音源信号D_1の波形とともに、選択信号W_1乃至選択信号W_3、および、ノードF11乃至ノードF13に書き込まれる電位について、時刻T11乃至時刻T13での動作を示している。なお、タイミングチャートにおいて、ハッチングを付した期間は、不定状態を表す。
【0077】
時刻T11で、選択信号W_1をハイレベルとし、音源信号D_1の電位V1がノードF11に書き込まれ、音源信号D_1のサンプリングが行われる。期間DTをあけた時刻T12で、選択信号W_2をハイレベルとし、音源信号D_1の電位V2がノードF12に書き込まれ、音源信号D_1のサンプリングが行われる。
【0078】
なお、正確には、選択信号Wがハイレベルからローレベルへ変化するタイミングにおいて、音源信号D_1の電位がサンプリングされる。また、期間DTは短いほうが好ましい。音源信号のサンプリング数を多くすることで、音源信号の離散的な値をサンプリングすることによる音質劣化を抑制することができる。
【0079】
同様に、時刻T13で、選択信号W_3をハイレベルとし、音源信号D_1の電位V3がノードF13に書き込まれ、音源信号D_1のサンプリングが行われる。ノードF11乃至ノードF13に保持した電位V1乃至電位V3は、選択信号W_1乃至選択信号W_3をローレベルとすることで、保持することができる。保持した電位を初期化する場合は、例えば、時刻T14に示すように、定電位の音源信号を与えた状態で、選択信号W_1をハイレベルとすればよい。
【0080】
<遅延回路の動作例2>
図5は、遅延回路20_1および遅延回路20_2が、それぞれ、音源信号D_1、音源信号D_2のアナログ電位をサンプリングし、所定の時間だけ遅延させた出力信号Q_1および出力信号Q_2を生成する動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0081】
図5では、遅延回路20_1は、音源信号D_1を期間DT_1だけ遅延させた出力信号Q_1を生成し、遅延回路20_2は、音源信号D_2を期間DT_2だけ遅延させた出力信号Q_2を生成するものとする。また、遅延回路20_1および遅延回路20_2は、それぞれ、信号保持回路22を3個(m=3)有するものとする。
【0082】
図5では、選択信号W_1乃至選択信号W_3、選択信号S_11乃至選択信号S_13、選択信号S_21乃至選択信号S_23、ノードF11乃至ノードF13に書き込まれる電位、および、ノードF21乃至ノードF23に書き込まれる電位について、時刻T21乃至時刻T27での動作を示している。
図4と同様に、ハッチングを付した期間は、不定状態を表す。
【0083】
時刻T21で、選択信号W_1をハイレベルとし、音源信号D_1の電位V_11がノードF11に書き込まれ、音源信号D_2の電位V_21がノードF21に書き込まれる。同様に、時刻T22で、選択信号W_2をハイレベルとし、音源信号D_1の電位V_12がノードF12に書き込まれ、音源信号D_2の電位V_22がノードF22に書き込まれる。時刻T23で、選択信号W_3をハイレベルとし、音源信号D_1の電位V_13がノードF13に書き込まれ、音源信号D_2の電位V_23がノードF23に書き込まれる。
【0084】
図5では、時刻T23で、選択信号S_11をハイレベルとし、ノードF11に保持されている電位V_11が出力信号Q_1として出力される。同様に、時刻T24で、選択信号S_12をハイレベルとし、ノードF12に保持されている電位V_12が出力信号Q_1として出力される。時刻T25で、選択信号S_13をハイレベルとし、ノードF13に保持されている電位V_13が出力信号Q_1として出力される。
【0085】
すなわち、遅延回路20_1は、時刻T23から時刻T21を引いた時間、音源信号D_1を遅延させている。この時刻T23から時刻T21を引いた時間が、期間DT_1に相当する。なお、正確には、選択信号Wがハイレベルからローレベルへ変化するタイミングで、電位V_11乃至電位V_13が保持されるため、前記、期間DT_1に相当する時間には誤差がある。
【0086】
また、時刻T24で、選択信号S_21をハイレベルとし、ノードF21に保持されている電位V_21が出力信号Q_2として出力される。同様に、時刻T25で、選択信号S_22をハイレベルとし、ノードF22に保持されている電位V_22が出力信号Q_2として出力される。時刻T26で、選択信号S_23をハイレベルとし、ノードF23に保持されている電位V_23が出力信号Q_2として出力される。
【0087】
すなわち、遅延回路20_2は、時刻T24から時刻T21を引いた時間、音源信号D_2を遅延させている。この時刻T24から時刻T21を引いた時間が、期間DT_2に相当する。なお、正確には、選択信号Wがハイレベルからローレベルへ変化するタイミングで、電位V_21乃至電位V_23が保持されるため、前記、期間DT_2に相当する時間には誤差がある。
【0088】
<遅延回路の動作例3>
なお、実際には、連続した音源信号のアナログ電位をサンプリングするために、遅延回路20が有する信号保持回路22は、音源信号を遅延させたい時間よりも長い時間、アナログ電位を保持できるだけの数が必要である。
【0089】
例えば、
図5において、遅延回路20_2が音源信号D_2を期間DT_2だけ遅延させると、時刻T24で、ノードF21に保持されている電位V_21が出力信号Q_2として出力されるが、時刻T21乃至時刻T23で、ノードF21乃至ノードF23に、それぞれ電位V_21乃至電位V_23が書き込まれているため、時刻T24における音源信号D_2の電位を書き込むことができない。
【0090】
そこで、
図6に、遅延回路20_1が連続した音源信号のアナログ電位をサンプリングする動作を説明するためのタイミングチャートを示す。
図6は、
図5におけるタイミングチャートから、遅延回路20_1に関する部分を抜き出し、拡張して図示したものである。
【0091】
図6における時刻T21乃至時刻T23で、電位V_11乃至電位V_13が、それぞれノードF11乃至ノードF13に書き込まれ、時刻T23乃至時刻T25で、電位V_11乃至電位V_13が、順次出力信号Q_1として出力されることは、
図5における説明と同じである。
【0092】
図6では、時刻T24で、再び選択信号W_1をハイレベルとし、音源信号D_1の時刻T24における電位V_14がノードF11に書き込まれる。遅延回路20_1は、時刻T23で、ノードF11に保持されている電位V_11が出力信号Q_1として出力されているため、ノードF11に保持されている電位V_11を上書きすることができる。
【0093】
同様に、時刻T25で、選択信号W_2をハイレベルとし、音源信号D_1の時刻T25における電位V_15がノードF12に書き込まれ、時刻T26で、選択信号W_3をハイレベルとし、音源信号D_1の時刻T26における電位V_16がノードF13に書き込まれ、時刻T27で、選択信号W_1をハイレベルとし、音源信号D_1の時刻T27における電位V_17がノードF11に書き込まれる。
【0094】
同様に、時刻T26で、再び選択信号S_11をハイレベルとし、ノードF11に保持されている電位V_14が出力信号Q_1として出力され、時刻T27で、選択信号S_12をハイレベルとし、ノードF12に保持されている電位V_15が出力信号Q_1として出力される。
【0095】
このようにして、遅延回路20_1は、音源信号D_1を期間DT_1だけ遅延させた出力信号Q_1を生成しながら、音源信号D_1のアナログ電位をサンプリングする動作を続けることができる。
【0096】
なお、
図5において、遅延回路20_2が、音源信号D_2を期間DT_2だけ遅延させた出力信号Q_2を生成しながら、音源信号D_2のアナログ電位をサンプリングする動作を続けるには、遅延回路20_2が信号保持回路22を4個(m=4)有する構成とすればよい。
【0097】
遅延回路20は、音源信号を遅延させたい時間よりも長い時間、アナログ電位を保持できる数の信号保持回路22を有することで、連続した音源信号のアナログ電位をサンプリングし、音源信号を所定の時間だけ遅延させることができる。なお、「音源信号を遅延させたい時間よりも長い時間、アナログ電位を保持できる数の信号保持回路22」とは、音源信号を遅延させたい時間と、音源信号のサンプリングが行われる間隔(
図4に示した、期間DT)から、計算することができる。
【0098】
<半導体装置の使用例>
次いで、上述した半導体装置100を、電子機器に搭載した例について説明する。なお、本実施の形態では、一例として、半導体装置100をスマートホン(携帯型情報端末)に搭載した場合を説明する。
【0099】
図7Aは、半導体装置100を搭載したスマートホン120の斜視概略図である。スマートホン120は、筐体121、表示部122、操作用ボタン123、スピーカ124、および、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_4を有している。マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_4は、
図7Aに示すように、スマートホン120の4隅に設けられている。また、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部122に備えられている。
【0100】
図7Aでは、スマートホン120の使用者が、スマートホン120を右手で持ち、スピーカ124を右耳にあてて(もしくは、右耳付近において)使用し、マイクロホン10_1から表示部122の法線方向へ100mm程度離れた場所に、音源125(使用者の口)がある場合を想定している。この場合、例えば、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_3を使用し、それぞれが出力する音源信号に適切な遅延時間を与えて加算することで、音源125付近の音を強調することができる。
【0101】
図7Bは、スマートホン120において、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_3のそれぞれと音源125との距離、および、スマートホン120のサイズを一例として示す図である。また、
図7Bでは、
図7Aで示したスマートホン120の角度を変えて図示し、符号を省略している。
【0102】
図7Bにおいて、スマートホン120の長辺方向に位置するマイクロホン10_1とマイクロホン10_3との距離を140mm、短辺方向に位置するマイクロホン10_1とマイクロホン10_2との距離を70mm、マイクロホン10_1と音源125との距離を100mmとしている。この場合、マイクロホン10_2と音源125との距離は、およそ122mm、マイクロホン10_3と音源125との距離は、およそ172mmとなる。
【0103】
音速を340m/sと見積もると、音源125で発せられた音が、マイクロホン10_1へ伝わる時間は、およそ294μs、マイクロホン10_2へ伝わる時間は、およそ359μs、マイクロホン10_3へ伝わる時間は、およそ506μsと計算される。
【0104】
すなわち、マイクロホン10_3の音源信号に、マイクロホン10_1の音源信号を212μs遅延させた信号、および、マイクロホン10_2の音源信号を147μs遅延させた信号を加算することで、音源125付近の音を強調することができる。
【0105】
図7Cは、音源125で発せられた音が、マイクロホン10_1乃至マイクロホン10_3へ伝わる様子、および、遅延回路20_1乃至遅延回路20_3が、それぞれ音源信号D_1乃至音源信号D_3を遅延させる様子を示したイメージ図である。
【0106】
図7Cにおいて、音源125で発せられた音は、音源125に一番近いマイクロホン10_1(
図7Cの中段に表示)に、最初に到達する。その次に、マイクロホン10_2(
図7Cの上段に表示)に到達し、マイクロホン10_1に到達する時間との差t1は、およそ65μsである。最後に、マイクロホン10_3(
図7Cの下段に表示)に到達し、マイクロホン10_2に到達する時間との差t2は、およそ147μsである。
【0107】
遅延回路20_1は、音源信号D_1を、差t1と差t2を合わせた212μs遅延させ、遅延回路20_2は、音源信号D_2を、差t2に相当する147μs遅延させ、遅延回路20_3は、音源信号D_3を遅延させず(0μsの遅延)に出力する。すなわち、音源信号D_1乃至音源信号D_3ではずれていた波形を、出力信号Q_1乃至出力信号Q_3ではそろった波形の信号(位相がそろった信号、と言ってもよい)とすることができる。
【0108】
なお、音源125で発せられた音が、一番最後に到達するマイクロホンがあらかじめわかっている場合(
図7A乃至
図7Cの例では、マイクロホン10_3)、半導体装置100は遅延回路20_3を設けない構成としてもよい。
【0109】
また、スマートホン120の使用者が、スマートホン120を左手で持つ場合に備えて、マイクロホン10_1、マイクロホン10_2、および、マイクロホン10_4を使用する設定など、スマートホン120は異なる音源に備えた設定を、いくつか有することが好ましい。スマートホン120の使用者は、状況に応じて前記設定を切り替えて使用することができる。
【0110】
図7A乃至
図7Cの例では、半導体装置100は、3つのマイクロホン10と、3つの遅延回路20、および、信号処理回路30を使って、音源125付近の音を強調することができる。遅延回路20は、音源信号をアナログ信号のまま遅延させて出力することができるため、半導体装置100は、デジタル信号に変換するためのA/D変換回路が必要なく、回路規模を縮小することができる。また、低い消費電力で音源分離を行うことができる。特に、マイクロホン10、および、遅延回路20の数が多い場合や、小型、軽量、バッテリでの動作可能時間が長いことが要求される携帯型情報端末等において、半導体装置100は好適である。
【0111】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0112】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置100に適用可能な、OSトランジスタの構成例について説明する。なお、OSトランジスタは薄膜トランジスタであり、積層して設けることができるため、本実施の形態では、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタの上方に、OSトランジスタを設けた半導体装置の構成例について説明する。
【0113】
<半導体装置の構成例>
図8に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500、および容量素子600を有している。
図9Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図9Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図9Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0114】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、オフ電流が小さいため、上記実施の形態では、これを遅延回路20が有する信号保持回路22に用いることにより、信号保持回路22は、保持したアナログ電位を正確に出力することができる。または、容量素子C11を小さくすることができる。
【0115】
本実施の形態で説明する半導体装置は、
図8に示すように、トランジスタ300、トランジスタ500、および容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600は、トランジスタ300およびトランジスタ500の上方に設けられている。
【0116】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
【0117】
トランジスタ300は、
図9Cに示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0118】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0119】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0120】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0121】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0122】
なお、導電体の材料により、仕事関数が定まるため、導電体の材料を変更することで、トランジスタのVthを調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0123】
なお、
図8に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0124】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0125】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0126】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0127】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0128】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0129】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析(TDS分析)法などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0130】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0131】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0132】
各プラグ、および配線(導電体328、および導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0133】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図8において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0134】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0135】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0136】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図8において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0137】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ600への水素の拡散を抑制することができる。
【0138】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図8において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0139】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0140】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図8において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0141】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0142】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0143】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0144】
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0145】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0146】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0147】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0148】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0149】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0150】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0151】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0152】
図9A、
図9Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516と導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、および導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された酸化物530cと、を有する。
【0153】
また、
図9A、
図9Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図9A、
図9Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図9A、
図9Bに示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0154】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。また、導電体542aおよび導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
【0155】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図8、
図9A、
図9Bに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0156】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0157】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0158】
導電体560は、第1のゲート(トップゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のVthを制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0159】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0160】
また、本明細書等において、S-channel構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造及びプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0161】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。
【0162】
絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、および絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0163】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0164】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0165】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0166】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0167】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0168】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0169】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0170】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0171】
なお、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0172】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0173】
また、トランジスタ500には、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0174】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0175】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア密度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア密度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア密度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0176】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0177】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0178】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0179】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0180】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0181】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0182】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0183】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0184】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0185】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0186】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0187】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0188】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542(導電体542a、および導電体542b)が設けられる。導電体542としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0189】
また、
図9Aに示すように、酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、および領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0190】
酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543に導電体542に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア密度が増加し、領域543は、低抵抗領域となる。
【0191】
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0192】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0193】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542が耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0194】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面および側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
【0195】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0196】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0197】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0198】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図9A、
図9Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0199】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0200】
また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0201】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0202】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0203】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0204】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0205】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0206】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0207】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0208】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0209】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540aおよび導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546および導電体548と同様の構成である。
【0210】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0211】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0212】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0213】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0214】
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0215】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0216】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0217】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0218】
図8では、導電体612、および導電体610は単層構造として示しているが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0219】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0220】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0221】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0222】
<トランジスタの構造例>
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。
【0223】
<トランジスタの構造例1>
図10A、
図10Bおよび
図10Cを用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。
図10Aはトランジスタ510Aの上面図である。
図10Bは、
図10Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図10Cは、
図10Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図10Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0224】
図10A、
図10Bおよび
図10Cでは、トランジスタ510Aと、層間膜として機能する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電体546(導電体546a、および導電体546b)と、配線として機能する導電体503と、を示している。
【0225】
トランジスタ510Aは、第1のゲート電極として機能する導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、第2のゲート電極として機能する導電体505(導電体505a、および導電体505b)と、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁体550と、第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524と、チャネルが形成される領域を有する酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体542aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
【0226】
また、
図10に示すトランジスタ510Aでは、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560は、導電体542a、および導電体542bとの間に配置される。
【0227】
絶縁体511、および絶縁体512は、層間膜として機能する。
【0228】
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0229】
例えば、絶縁体511は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
【0230】
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0231】
導電体503は、絶縁体512に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体503の上面の高さと、絶縁体512の上面の高さは同程度にできる。なお導電体503は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503を2層以上の多層膜構造としてもよい。なお、導電体503は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0232】
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、第1のゲート(トップゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体505は、第2のゲート(ボトムゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体505に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ510Aのしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体505に負の電位を印加することにより、トランジスタ510Aのしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体505に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0233】
また、例えば、導電体505と、導電体560とを重畳して設けることで、導電体560、および導電体505に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体505から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0234】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体560の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体505の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。すなわち、先に記載のトランジスタ500と同様に、surrounded channel(S-channel)構造である。
【0235】
絶縁体514、および絶縁体516は、絶縁体511または絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0236】
第2のゲートとして機能する導電体505は、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体505aが形成され、さらに内側に導電体505bが形成されている。ここで、導電体505aおよび導電体505bの上面の高さと、絶縁体516の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ510Aでは、導電体505aおよび導電体505bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体505は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0237】
ここで、導電体505aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一つ、または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0238】
例えば、導電体505aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体505bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0239】
また、導電体505が配線の機能を兼ねる場合、導電体505bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体505bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0240】
絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0241】
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0242】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0243】
また、絶縁体521は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体521を得ることができる。
【0244】
なお、
図10には、第2のゲート絶縁膜として、3層の積層構造を示したが、2層以下、または4層以上の積層構造としてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0245】
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物530は、酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の酸化物530cと、を有する。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0246】
なお、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
【0247】
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0248】
導電体542aと、導電体542bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
【0249】
また、
図10では導電体542が単層構造である場合を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0250】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0251】
また、導電体542上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体574を成膜する際に、導電体542が酸化することを抑制することができる。
【0252】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0253】
バリア層を有することで、導電体542の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542に、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0254】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、および絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
【0255】
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0256】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0257】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0258】
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0259】
また、導電体560bは、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0260】
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0261】
絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0262】
絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584は、層間膜として機能する。
【0263】
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水または水素などの不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0264】
また、絶縁体580、および絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0265】
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584に埋め込まれた導電体546などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
【0266】
また、導電体546の材料としては、導電体505と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0267】
例えば、導電体546として、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0268】
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0269】
<トランジスタの構造例2>
図11A、
図11Bおよび
図11Cを用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。
図11Aはトランジスタ510Bの上面図である。
図11Bは、
図11Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図11Cは、
図11Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図11Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0270】
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0271】
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0272】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0273】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0274】
また、導電体560の上面および側面、絶縁体550の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0275】
絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
【0276】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0277】
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0278】
<トランジスタの構造例3>
図12A、
図12Bおよび
図12Cを用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。
図12Aはトランジスタ510Cの上面図である。
図12Bは、
図12Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図12Cは、
図12Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図12Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0279】
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0280】
図12に示すトランジスタ510Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面および導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
【0281】
図12に示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。または、導電体542aの端部および導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および周波数特性の向上を図ることができる。
【0282】
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0283】
また、
図12に示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544としては、水または水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0284】
また、
図12に示すトランジスタ510Cは、
図10に示すトランジスタ510Aと異なり、導電体505を単層構造で設けてもよい。この場合、パターン形成された導電体505の上に絶縁体516となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体505の上面が露出するまでCMP法などを用いて除去すればよい。ここで、導電体505の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体505上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体505の上に形成される、絶縁層の平坦性を良好にし、酸化物530bおよび酸化物530cの結晶性の向上を図ることができる。
【0285】
<トランジスタの構造例4>
図13A、
図13Bおよび
図13Cを用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。
図13Aはトランジスタ510Dの上面図である。
図13Bは、
図13Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図13Cは、
図13Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図13Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0286】
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0287】
図13A乃至
図13Cでは、導電体503を設けずに、第2のゲートとしての機能を有する導電体505を配線としても機能させている。また、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
【0288】
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
【0289】
なお、金属酸化物552は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層(前述したOC電極)とすることができる。
【0290】
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0291】
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0292】
金属酸化物552がゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、および金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、および導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0293】
具体的には、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0294】
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0295】
絶縁体570は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体560および絶縁体550を介して、酸化物530に混入することを抑制することができる。
【0296】
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0297】
なお、絶縁体571に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
【0298】
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
【0299】
また、トランジスタ510Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0300】
領域531aおよび領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリンまたはボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0301】
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531aおよび領域531bを形成することもできる。
【0302】
酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531aおよび領域531bを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
【0303】
絶縁体571および/または導電体560をマスクとして用いることで、領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531aおよび/または領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531aまたは領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0304】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0305】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0306】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0307】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物530および絶縁体575から水素および水を吸収することで、酸化物530および絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
【0308】
<トランジスタの構造例5>
図14A乃至
図14Cを用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。
図14Aはトランジスタ510Eの上面図である。
図14Bは、
図14Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図14Cは、
図14Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図14Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0309】
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0310】
図14A乃至
図14Cでは、導電体542を設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
【0311】
図14に示す、領域531(領域531a、および領域531b)は、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0312】
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0313】
なお、酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0314】
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0315】
続いて、酸化物530b、およびダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、酸化物530cおよび絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
【0316】
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、および絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜の一部を除去することで、
図14に示すトランジスタを形成することができる。
【0317】
なお、絶縁体573、および絶縁体574は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0318】
図14に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
【0319】
<トランジスタの構造例6>
図15A乃至
図15Cを用いてトランジスタ510Fの構造例を説明する。
図15Aはトランジスタ510Fの上面図である。
図15Bは、
図15Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図15Cは、
図15Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図15Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0320】
トランジスタ510Fはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0321】
トランジスタ510Aでは、絶縁体574の一部が絶縁体580に設けられた開口部内に設けられ、導電体560の側面を覆うように設けられている。一方で、トランジスタ510Fでは絶縁体580と絶縁体574の一部を除去して開口が形成されている。
【0322】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0323】
なお、酸化物530として酸化物半導体を用いる場合は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0324】
酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cは、結晶性を有することが好ましく、特に、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OS等の結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損等)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物530bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物530bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ510Fは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0325】
なお、酸化物530aおよび酸化物530cの一方または双方を省略してもよい。酸化物530を酸化物530bの単層としてもよい。酸化物530を、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの積層とする場合は、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物530cは、酸化物530aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物530cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0326】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0327】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いてもよい。また、酸化物530cを積層構造としてもよい。例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、酸化物530cとして用いてもよい。
【0328】
具体的には、酸化物530aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:1[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:5[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、酸化ガリウムとの積層構造等が挙げられる。
【0329】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ510Fは高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、酸化物530cを積層構造とした場合、上述の酸化物530bと、酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、酸化物530cが有する構成元素が、絶縁体550側に拡散するのを抑制することが期待される。より具体的には、酸化物530cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない酸化物を位置させるため、絶縁体550側に拡散しうるInを抑制することができる。絶縁体550は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが拡散した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物530cを積層構造とすることで、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0330】
酸化物530は、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530のチャネル形成領域となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0331】
<トランジスタの構造例7>
また、
図8及び
図9では、ゲートとしての機能を有する導電体560が、絶縁体580の開口の内部に形成されている構造例について説明したが、例えば、当該導電体の上方に、当該絶縁体が設けられた構造を用いることもできる。このようなトランジスタの構造例を、
図16、
図17に示す。
【0332】
【0333】
図16、
図17に示すトランジスタは、バックゲートとしての機能を有する導電体BGEと、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体BGIと、酸化物半導体Sと、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体TGIと、フロントゲートとしての機能を有する導電体TGEと、配線としての機能を有する導電体WEと、を有する。また、導電体PEは、導電体WEと、酸化物S、導電体BGE、又は導電体TGEと、を接続するためのプラグとしての機能を有する。なお、ここでは、酸化物半導体Sが、3層の酸化物S1、S2、S3によって構成されている例を示している。
【0334】
<トランジスタの電気特性>
次に、OSトランジスタの電気特性について説明する。以下では一例として、第1のゲート及び第2のゲートを有するトランジスタについて説明する。第1のゲート及び第2のゲートを有するトランジスタは、第1のゲートと第2のゲートに異なる電位を印加することで、しきい値電圧を制御することができる。例えば、第2のゲートに負の電位を印加することにより、トランジスタのしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することができる。つまり、第2のゲートに負の電位を印加することにより、第1の電極に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0335】
また、酸化物半導体は、水素などの不純物が添加されると、キャリア密度が増加する場合がある。例えば、酸化物半導体は、水素が添加されると、金属原子と結合する酸素と反応して水になり、酸素欠損を形成する場合がある。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリア密度が増加する。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。つまり、水素などの不純物が添加された酸化物半導体は、n型となり、低抵抗化される。
【0336】
したがって、酸化物半導体を選択的に低抵抗化することができる。つまり、酸化物半導体に、キャリア密度が低く、チャネル形成領域として機能する半導体として機能する領域と、キャリア密度が高く、ソース領域、またはドレイン領域として機能する低抵抗化した領域と、を設けることができる。
【0337】
ここで、第1のゲートと第2のゲートに異なる電位を印加する場合、酸化物半導体に設ける低抵抗領域、および高抵抗領域の構成が、トランジスタの電気特性に与える影響を評価する。
【0338】
[トランジスタ構造]
図18Aおよび
図18Cは、電気特性の評価に用いたトランジスタの断面図である。なお、
図18Aおよび
図18Cでは、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0339】
図18Aおよび
図18Cに示すトランジスタは、第1のゲートとして機能する導電体TGEと、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁体TGIと、第1のゲートの側面に設けられたサイドウォールとして機能する絶縁体SWと、酸化物半導体Sと、第2のゲートとして機能する導電体BGEと、第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁体BGIと、を有する。絶縁体BGIは、導電体BGEと接する第1層、第1層上の第2層、第2層上の第3層、からなる3層構造とする。なお、第3層は酸化物半導体Sと接する。
【0340】
ここで、
図18Aに記載のトランジスタが有する酸化物半導体Sは、n
+領域と、導電体TGEと重畳するi領域を有する。一方、
図18Cに記載のトランジスタが有する酸化物半導体Sは、n
+領域と、導電体TGEと重畳するi領域と、n
+領域とi領域との間のn
-領域と、を有する。
【0341】
なお、n+領域は、ソース領域またはドレイン領域として機能し、キャリア密度が高い、低抵抗化した領域である。また、i領域は、チャネル形成領域として機能し、n+領域よりもキャリア密度が低い高抵抗領域である。また、n-領域は、n+領域よりもキャリア密度が低い、かつ、i領域よりもキャリア密度が高い領域である。
【0342】
また、図示しないが、酸化物半導体Sのn+領域は、ソースまたはドレインとして機能するS/D電極と接する構造である。
【0343】
[電気特性の評価結果]
図18Aに示すトランジスタ、および
図18Cに示すトランジスタにおいて、Id-Vg特性を計算し、トランジスタの電気特性を評価した。
【0344】
ここで、トランジスタの電気特性の指標として、トランジスタのしきい値電圧(以下、Vshともいう)の変化量(以下、ΔVshともいう)を用いた。なお、Vshとは、Id-Vg特性において、Id=1.0×10-12[A]の時のVgの値と定義する。
【0345】
なお、Id-Vg特性とは、トランジスタの第1のゲートとして機能する導電体TGEに印加する電位(以下、ゲート電位(Vg)ともいう)を、第1の値から第2の値まで変化させたときの、ソースとドレインとの間の電流(以下、ドレイン電流(Id)ともいう)の変動特性である。
【0346】
ここでは、ソースとドレインとの間の電位(以下、ドレイン電位(Vd)ともいう)を+0.1Vとし、ソースと、第1のゲートとして機能する導電体TGEとの間の電位を-1Vから+4Vまで変化させたときのドレイン電流(Id)の変動を評価した。
【0347】
また、計算は、Silvaco社デバイスシミュレータAtlasを用いた。また、下表には、計算に用いたパラメータを示す。なお、Egはエネルギーギャップ、Ncは伝導帯の実効状態密度、Nvは価電子帯の実効状態密度を示す。
【0348】
【0349】
図18Aに示すトランジスタは、片側のn
+領域を700nmとし、片側のn
-領域を0nmと設定した。また、
図18Cに示すトランジスタは、片側のn
+領域を655nmとし、片側のn
-領域を45nmと設定した。また、
図18Aに示すトランジスタ、および
図18Cに示すトランジスタにおいて、第2のゲートは、i領域よりも大きい構造とした。なお、本評価においては、第2のゲートとして機能する導電体BGEの電位(以下、バックゲート電位(Vbg)ともいう)を、0.00V、-3.00V、または-6.00Vと設定した。
【0350】
図18Bに、
図18Aに示すトランジスタの計算によって得られたId-Vg特性の結果を示す。バックゲート電位を-3.00Vとした場合、0.00Vとした時と比較して、トランジスタのしきい値電圧の変動量(ΔVsh)は、+1.2Vであった。また、バックゲート電位を-6.00Vとした場合、0.00Vとした時と比較して、トランジスタのしきい値電圧の変動量(ΔVsh)は、+2.3Vであった。つまり、バックゲート電位を-6.00Vとした場合、-3.00Vとした時と比較して、トランジスタのしきい値電圧の変動量(ΔVsh)は、+1.1Vであった。従って、第2のゲートとして機能する導電体BGEの電位(の絶対値)を大きくしても、トランジスタのしきい値電圧の変動量の変化はほとんどなかった。また、バックゲート電位(の絶対値)を大きくしても、立ち上がり特性に変化は見られなかった。
【0351】
図18Dに、
図18Cに示すトランジスタの計算によって得られたId-Vg特性の結果を示す。バックゲート電位を-3.00Vとした場合、0.00Vとした時と比較して、トランジスタのしきい値電圧の変動量(ΔVsh)は、+1.2Vであった。また、バックゲート電位を-6.00Vとした場合、0.00Vとした時と比較して、トランジスタのしきい値電圧の変動量(ΔVsh)は、+3.5Vであった。つまり、バックゲート電位を-6.00Vとした場合、-3.00Vとした時と比較して、トランジスタのしきい値電圧の変動量(ΔVsh)は、+2.3Vであった。従って、第2のゲートとして機能する導電体BGEの電位(の絶対値)を大きくするほど、トランジスタのしきい値電圧の変動量が大きくなった。一方、バックゲート電位(の絶対値)を大きくするほど、立ち上がり特性が悪化した。
【0352】
上記より、
図18Cに示すトランジスタは、第2のゲートとして機能する導電体BGEの電位(の絶対値)を大きくするほど、トランジスタのしきい値電圧の変動量が大きくなることがわかった。一方で、
図18Aに示すトランジスタは、第2のゲートとして機能する導電体BGEの電位(の絶対値)を大きくしても、トランジスタのしきい値電圧の変動量の変化はほとんど見られなかった。
【0353】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0354】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物の構成について説明する。
【0355】
<金属酸化物の構成>
本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
【0356】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0357】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0358】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0359】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0360】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0361】
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OC(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0362】
トランジスタの半導体に用いる酸化物半導体として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性または信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜を基板上に形成するには、高温またはレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
【0363】
2009年に、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(CAAC-IGZO、と呼ぶ)が発見されたことが、非特許文献1および非特許文献2で報告されている。ここでは、CAAC-IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC-IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性および信頼性を有することが報告されている。
【0364】
また、2013年には、nc構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(nc-IGZO、と呼ぶ)が発見された(非特許文献3参照)。ここでは、nc-IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
【0365】
非特許文献4および非特許文献5では、上記のCAAC-IGZO、nc-IGZO、および結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶サイズの結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC-IGZOの薄膜およびnc-IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC-IGZOの薄膜またはnc-IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
【0366】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0367】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー、ともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0368】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造、ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0369】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0370】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0371】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0372】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一形態の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0373】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0374】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0375】
また、上記酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10-24A/μm)オーダである、ことが非特許文献6に示されている。例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(非特許文献7参照)。
【0376】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献8参照)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
【0377】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。
【0378】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。なお、本発明の一態様に用いることのできる酸化物半導体のキャリア密度については、実施の形態2に記載の範囲とすればよい。
【0379】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0380】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0381】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0382】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0383】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0384】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0385】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0386】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0387】
CAAC構造およびnc構造の発見は、CAAC構造またはnc構造を有する酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性および信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下およびスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置およびLSIへの応用研究が進められている。
【0388】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0389】
C2N:容量素子、C11:容量素子、C20:容量素子、C21:容量素子、D_1:音源信号、D_2:音源信号、D_3:音源信号、F1m:ノード、F11:ノード、F12:ノード、F13:ノード、F21:ノード、F22:ノード、F23:ノード、O1m:ノード、O11:ノード、Q_1:出力信号、Q_2:出力信号、Q_3:出力信号、R2N:抵抗素子、R11:抵抗素子、R20:抵抗素子、R21:抵抗素子、S_1m:選択信号、S_11:選択信号、S_12:選択信号、S_13:選択信号、S_21:選択信号、S_22:選択信号、S_23:選択信号、S1:酸化物、t1:差、t2:差、V_11:電位、V_12:電位、V_13:電位、V_14:電位、V_15:電位、V_16:電位、V_17:電位、V_21:電位、V_22:電位、V_23:電位、V1:電位、V2:電位、V3:電位、W_1:選択信号、W_2:選択信号、W_3:選択信号、10:マイクロホン、10_N:マイクロホン、10_1:マイクロホン、10_2:マイクロホン、10_3:マイクロホン、10_4:マイクロホン、20:遅延回路、20_N:遅延回路、20_1:遅延回路、20_2:遅延回路、20_3:遅延回路、21:選択回路、22:信号保持回路、23:選択回路、30:信号処理回路、100:半導体装置、101:トランジスタ、102:トランジスタ、103:トランジスタ、104:トランジスタ、110:オペアンプ、120:スマートホン、121:筐体、122:表示部、123:操作用ボタン、124:スピーカ、125:音源、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、505a:導電体、505b:導電体、510:絶縁体、510A:トランジスタ、510B:トランジスタ、510C:トランジスタ、510D:トランジスタ、510E:トランジスタ、510F:トランジスタ、511:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、521:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、531:領域、531a:領域、531b:領域、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543:領域、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、545:絶縁体、546:導電体、546a:導電体、546b:導電体、547:導電体、547a:導電体、547b:導電体、548:導電体、550:絶縁体、552:金属酸化物、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、570:絶縁体、571:絶縁体、573:絶縁体、574:絶縁体、575:絶縁体、576:絶縁体、576a:絶縁体、576b:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、584:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、650:絶縁体