(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】A/D変換器及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20240402BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20240402BHJP
H03M 1/38 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
H04N25/78
H03M1/12 A
H03M1/38
(21)【出願番号】P 2020553031
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038839
(87)【国際公開番号】W WO2020085016
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2018200376
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 康史
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】江藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和寿
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/038958(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
H03M 1/12
H03M 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素信号の過大入力が入力されたかどうか判断する閾値電圧の比較を行う比較器回路と、
前記比較の結果が制御端子に入力され、クランプ回路を構成する第1のトランジスタと、
入力電流ライン及び参照電流ラインを構成する一対の差動対トランジスタと、
前記差動対トランジスタに流すバイアス電流を制御する一対のバイアストランジスタと、
を備え
、
前記第1のトランジスタは、前記一対のバイアストランジスタに対し、上流側あるいは下流側のいずれかに設けられ、
クランプ時に接続される第1の所定位置と第2の所定位置に流れる電流を等しくし、あるいは、前記第1の所定位置と前記第2の所定位置の電圧を等しくする、
A/D変換器。
【請求項2】
前記クランプ回路は、前記画素信号として所定の過大入力閾値以上の信号が入力されたか否かを判定する閾値判定回路を備え、
前記閾値判定回路の出力に基づいて、前記第1のトランジスタは、クランプ時に接続される第1の所定位置と第2の所定位置とを短絡状態とする、
請求項1記載のA/D変換器。
【請求項3】
入力電流ライン及び参照電流ラインを構成する一対の差動対トランジスタと、
前記差動対トランジスタに流すバイアス電流を制御する一対のバイアストランジスタと、
クランプ時に接続すべき第1の所定位置と第2の所定位置に対し、前記第1の所定位置にアノードが接続され、前記第2の所定位置にカソードが接続されたダイオードを備える、
A/D変換器。
【請求項4】
光電変換を行う複数の画素がアレイ状に配置された画素アレイ部と、
前記画素アレイ部からアナログ画素信号を読み出して信号処理を行う信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記アナログ画素信号のアナログ/ディジタル変換を行うA/D変換器を含み、
前記A/D変換器は、画素信号と過大入力が入力されたかどうか判断する閾値電圧の比較を行う比較器回路と、
前記比較の結果が制御端子として入力され、クランプ回路を構成する第1のトランジスタと、
入力電流ライン及び参照電流ラインを構成する一対の差動対トランジスタと、
前記差動対トランジスタに流すバイアス電流を制御する一対のバイアストランジスタと、
を備え
、
前記第1のトランジスタは、前記一対のバイアストランジスタに対し、上流側あるいは下流側のいずれかに設けられ、
クランプ時に接続される第1の所定位置と第2の所定位置に流れる電流を等しくし、あるいは、前記第1の所定位置と前記第2の所定位置の電圧を等しくする、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、A/D変換器及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体微細加工技術を応用したCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子がディジタルカメラやスマートフォン等において広く採用されている。
【0003】
これらの撮像素子においては、各画素内に設けられた光電変換素子としてのフォトダイオードにおいて、被写体から入射した光が光電変換され、得られた電荷の量に対応する電圧信号が増幅トランジスタ及び垂直信号線を介して読み出されてコンパレータを有するA/D変換器によりアナログ/ディジタル(A/D)変換されて撮像データとして出力される。
【0004】
CMOS等の撮像素子を用いた撮像装置では、高輝度な被写体を撮像した場合、A/D変換部の一斉反転による電源ノイズの影響によって、撮像画像上で左右方向に延びる帯状のラインノイズ、いわゆるストリーキングが発生することがあり、これを抑制するための技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、CMOS等の撮像素子を用いた撮像装置において、逐次変換型のA/D変換器を用いて、高輝度な被写体を撮像した場合、すなわち、画素信号ライン側に過大入力が印加されている場合には、A/D変換部を構成しているプリアンプ部の差動対トランジスタのそれぞれに流れる電流が大きく異なる。
【0007】
このため、下位ビットの変換時においても差動対トランジスタに流れる電流は大きく異なった状態となっており、コンパレータの比較時間は入力信号に対して指数関数で変わるために、この入力差分による比較時間差がストリーキングとなって表れる虞があった。
【0008】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画素信号ライン側に過大入力が印加された場合にストリーキングを抑制することができるA/D変換器及び電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示のA/D変換器は、画素信号の過大入力が入力されたかどうか判断する閾値電圧の比較を行う比較器回路と、前記比較の結果が制御端子に入力され、クランプ回路を構成する第1のトランジスタと、入力電流ライン及び参照電流ラインを構成する一対の差動対トランジスタと、前記差動対トランジスタに流すバイアス電流を制御する一対のバイアストランジスタと、を備え、前記第1のトランジスタは、前記一対のバイアストランジスタに対し、上流側あるいは下流側のいずれかに設けられ、クランプ時に接続される第1の所定位置と第2の所定位置に流れる電流を等しくし、あるいは、前記第1の所定位置と前記第2の所定位置の電圧を等しくする。
【0010】
クランプ回路をオン状態(閉状態)とすることで第1のトランジスタによりクランプ時に接続される第1の所定位置と第2の所定位置に流れる電流を等しくする、もしくは第1の所定位置と第2の所定位置の電圧を等しくする、ことでストリーキングを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、差動アンプ出力に発生する電圧差を抑制してストリーキングを抑制することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における固体撮像素子の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】本技術を適用したA/D変換器の一実施形態の構成例を説明する図である。
【
図3】7ビットA/D変換器を例とした、画素信号の電圧と閾値電圧信号の電圧との関係説明図である。
【
図4】第1実施形態のプリアンプ部の詳細構成図である。
【
図6】閾値判定回路(閾値判定用経路)の処理フローチャートである。
【
図7】第1実施形態の第2変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
【
図8】第1実施形態の第3変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
【
図9】第2実施形態のプリアンプ部の詳細構成図である。
【
図10】第2実施形態の第1変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
【
図11】第3実施形態のプリアンプ部の詳細構成図である。
【
図12】第3実施形態の第1変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
【
図14】第4実施形態の信号処理部の概要構成ブロック図である。
【
図15】本技術を適用した間接光飛行時間型距離センサの一例のブロック図である。
【
図16】本技術の形態における画素の一構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
(1)第1実施形態
[固体撮像素子の構成例]
図1は、実施形態における固体撮像素子の一構成例を示すブロック図である。
固体撮像素子1は、画素アレイ部2、行走査回路3、信号処理部4、タイミング制御部5、列走査回路6及び画像処理部7を備えている。
【0015】
上記構成において、画素アレイ部2は、複数の走査線と、複数の信号線とが設けられており、各走査線と各信号線の交差部には、それぞれ画素回路が配置されて、二次元格子状に複数の画素回路が設けられている。
【0016】
行走査回路3は、タイミング制御部5の制御下で、複数の走査線のうちいずれかの走査線をアクティブ状態とし、当該アクティブ状態とした走査線に対応する画素アレイ部2を構成している一行分の画素回路を駆動して画素信号を出力させるものである。
【0017】
信号処理部4は、複数の後述するA/D変換器を有し、入力された画素信号のA/D変換等の信号処理を行って画素データを生成する。
タイミング制御部5は、行走査回路3、信号処理部4および列走査回路6のそれぞれが動作するタイミングを制御する。
【0018】
列走査回路6は、タイミング制御部5の制御下で、行走査回路3及び信号処理部4の動作に同期して動作し、信号処理部4において信号線ごとに信号処理された信号を画素データとして順次画像処理部7に転送する。
【0019】
画像処理部7は、複数の画素データから構成される画像データに対し、様々な画像処理を実行する。
この画像処理においては、例えば、デモザイク処理やホワイトバランス処理などが実行される。
そして、画像処理後の画像データは、外部の画像メモリ等の記録装置に送信される。
【0020】
以上の説明においては、画像処理部7を固体撮像素子1内に配置していたが、この画像処理部7を固体撮像素子1の外部に別体に設けることも可能である。
【0021】
また、固体撮像素子1内の回路のそれぞれは、単一の半導体基板に配置してもよいし、積層した複数の半導体基板に分散して配置してもよい。
【0022】
[A/D変換器の構成例]
図2は、本技術を適用したA/D変換器の一実施形態の構成例を説明する図である。
A/D変換器10は、
図2に示すように、ローカル参照電圧生成部11、DA変換部12、プリアンプ部13、コンパレータ部14、逐次変換ロジック部15及びローテーションロジック部16を備えている。
【0023】
ローカル参照電圧生成部11は、信号処理部4に複数設けられており、参照電圧生成部5Aから供給された基準参照信号(基準参照電圧)STrefに基づいて、当該A/D変換器10において用いる複数種類のローカル基準参照信号(ローカル基準参照電圧)Srefを生成し、出力する。
【0024】
DA変換部12は、ローカル参照電圧生成部11が生成した複数種類のローカル基準参照信号Srefを用い、後述の逐次変換ロジック部及びローテーションロジック部の制御下で制御データDCNTのディジタル/アナログ(D/A)変換を行って閾値電圧信号Sthを出力する。
【0025】
プリアンプ部13は、画素アレイ部2の画素信号入力端子TVSLから入力された画素信号SVSL及び閾値電圧信号Sthを増幅し、差動信号OUTP、OUTNを出力する。
【0026】
コンパレータ部14は、プリアンプ部から出力された差動信号OUTP、OUTNを比較し、比較結果DCMPを出力する。
【0027】
逐次変換ロジック部15は、比較結果データDCMPから閾値電圧信号Sth生成用のディジタル制御データDSAR(例えば、13ビット)を出力する。また、逐次変換ロジック部15は、入力された比較結果データDCMPを記憶し、記憶した比較結果データDCMPに基づいて画素信号SVSLのアナログ/ディジタル(A/D)変換結果である画素データDVSLを出力端子TDOUTから出力する。
【0028】
ローテーションロジック部16は、信号処理部5に設けられた疑似乱数生成部4Bから供給された疑似乱数データDPNに基づいてデータDROTを生成して出力する。
【0029】
[A/D変換器の概要動作]
ここで、A/D変換器10の概要動作について説明する。
【0030】
A/D変換器10は、A/D変換結果となる画素データDVSLの最上位ビットから最下位ビットまで逐次比較を行うことにより、全ビットの値(“1”又は“0”)を設定している。
【0031】
まず、逐次変換ロジック部15は、初期値としてすべてのビットをセンター電圧(Vrc)に設定する。
【0032】
これと並行して疑似乱数生成部4Bはローテーションロジック部16に、疑似乱数データDPNを供給する。
【0033】
プリアンプ部13は、入力された画素信号SVSL及び閾値電圧信号Sthの差分を増幅し、差動信号OUTP、OUTNを生成し、コンパレータ部14に出力する。
コンパレータ部14は、差動信号OUTP、OUTNの電圧を比較し、比較結果データDCMPとして逐次変換ロジック部15に出力する。
【0034】
逐次変換ロジック部15は、比較結果データDCMPの結果に応じてDA変換部12の制御データDSAR、DROTの生成および比較結果データDCMPのデータを記憶する。
【0035】
DA変換部12は、ローカル参照電圧生成部11が生成した複数種類のローカル基準参照信号Srefを用い、入力された制御データDCNTのディジタル/アナログ(D/A)変換を行って閾値電圧信号Sthをプリアンプ部13に出力する。
【0036】
以下、同様にして最上位ビット(MSB)~最下位ビット(LSB)まで逐次比較を行い、逐次変換ロジック部15は、各ビットの値を確定し記憶することとなる。
そして、全てのビットの値が確定すると、記憶したデータをA/D変換結果データとして出力端子TDOUTから出力することとなる。
【0037】
[従来のA/D変換器の問題点]
ここで、A/D変換器における従来技術の問題点について説明する。
図3は、7ビットA/D変換器を例とした、画素信号の電圧と閾値電圧信号の電圧との関係説明図である。
【0038】
図3の画素信号S
VSLにおいては、下側が電圧が低い状態(白色側)であり、上側が電圧が高い状態(黒色側)である。横軸は、時間である。
図3において、A/D変換時の第xビットは(x)と表示するものとする。例えば、MSB変換時の入力信号は(7)に対応し、LSBは(1)に対応している。
【0039】
図3(a)は、比較開始時点において画素信号S
VSLの電圧と閾値電圧信号S
th電圧の電圧との差が大きいがA/D変換のレンジ内の場合、
図3(b)は、比較開始時点において、画素信号S
VSLの電圧と閾値電圧信号S
thの電圧との差が小さくA/D変換のレンジ内の場合、
図3(c)は、画素信号S
VSLの電圧と閾値電圧信号S
thの電圧差が非常に大きく(過大振幅)A/D変換のレンジ外の場合である。
【0040】
逐次変換型のA/D変換器ではコンパレータの比較結果に応じて閾値電圧S
thを画素信号S
VSLに近づける様に変更するために、画素信号がレンジ内の場合(
図3(a)、(b))には、LSB変換時(1)には画素信号S
VSLと閾値電圧S
thの差が小さく1LSB以下となる。
【0041】
これらに対し、
図3(c)に示す例の場合には、LSB変換時(1)においても画素信号S
VSLと閾値電圧S
thの差が大きく1LSB以下となっていない。コンパレータの比較時間は入力信号に対して指数関数で変わるために、この入力差分による比較時間差がストリーキングとなって表れる。
【0042】
[第1実施形態のコンパレータ部の詳細構成]
図4は、第1実施形態のプリアンプ部13の詳細構成図である。
プリアンプ部13は、電源ラインAVDにソース端子Sが接続され、ゲート端子Gがドレイン端子Dに接続されダイオード接続とされたPチャネルMOSトランジスタTR11と、電源ラインAVDにソース端子Sが接続され、ゲート端子GがPチャネルMOSトランジスタTR11のゲート端子Gに接続され、PチャネルMOSトランジスタTR11と共働してカレントミラー回路として機能するPチャネルMOSトランジスタTR12と、一端がPチャネルMOSトランジスタTR11のドレイン端子Dに接続され、他端がグランドラインAVSに接続された定電流源CCと、を備えている。
【0043】
また、プリアンプ部13は、ゲート端子Gに画素信号SVSLが入力され、ソース端子SがPチャネルMOSトランジスタTR12のドレイン端子Dに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR13と、ソース端子SがPチャネルMOSトランジスタTR13のドレイン端子Dに接続され、ゲート端子Gにバイアス電圧BIASが入力されて、カスコード回路として機能するPチャネルMOSトランジスタTR14と、一端がPチャネルMOSトランジスタTR14のドレイン端子Dに接続され他端がグランドラインAVSに接続された第一の負荷抵抗R1と、を備えている。
【0044】
さらに、プリアンプ部13は、ゲート端子Gに閾値電圧信号Sthが入力され、ソース端子SがPチャネルMOSトランジスタTR12のドレイン端子Dに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR15と、ソース端子SがPチャネルMOSトランジスタTR15のドレイン端子Dに接続され、ゲート端子Gにバイアス電圧BIASが入力されて、カスコード回路として機能するPチャネルMOSトランジスタTR16と、一端がPチャネルMOSトランジスタTR16のドレイン端子Dに接続され他端がグランドラインAVSに接続された第二の負荷抵抗R2と、を備えている。
【0045】
さらにまた、プリアンプ部13は、一方の入力端子がPチャネルMOSトランジスタTR14のドレイン端子に接続されて第1出力信号OUTPが入力され、他方の入力端子がPチャネルMOSトランジスタTR16のドレイン端子に接続されて第2出力信号OUTNが入力され、第1出力信号OUTP及び第2出力信号OUTNを比較して判別結果信号SEVを出力する閾値判定回路21と、を備えている。
【0046】
また、プリアンプ部13は、PチャネルMOSトランジスタTR13のドレイン端子D及びPチャネルMOSトランジスタTR14のソース端子の接続点CP1にドレイン端子Dが接続され、PチャネルMOSトランジスタTR15のドレイン端子D及びPチャネルMOSトランジスタTR16のソース端子の接続点CP2にソース端子Dが接続され、ゲート端子Gに閾値判定回路21が出力した判別結果信号SEVが入力されて接続点CP1及び接続点CP2を短絡するためのスイッチング素子(スイッチ)として機能するNチャネルMOSトランジスタTR17と、を備えている。
【0047】
上記構成において、NチャネルMOSトランジスタTR17は、クランプ回路を構成している。
また、PチャネルMOSトランジスタTR13、PチャネルMOSトランジスタTR14、PチャネルMOSトランジスタTR15、PチャネルMOSトランジスタTR16、第一の負荷抵抗R1及び第二の負荷抵抗R2は、差動アンプDAを構成している。
【0048】
画素信号SVSLが所定のA/D変換レンジ内の場合は、LSB変換時に画素信号SVSLと閾値電圧信号Sthの電圧の差分は小さいため、プリアンプ部13の出力である第1出力信号OUTP及び第2出力信号OUTNの差分も小さくなっている。
【0049】
一方、画素信号SVSLが所定のA/D変換レンジを超える過大入力信号の場合で、NチャネルMOSトランジスタTR17をオフ状態(開状態)とした場合には、LSB変換においてもプリアンプ部13の出力である第1出力信号OUTP及び第2出力信号OUTNの差分は大きいままである。
【0050】
この場合にNチャネルMOSトランジスタTR17をオン状態(閉状態)とすることで、負荷抵抗R1、R2に流れる電流を等しくでき、第1出力信号OUTP及び第2出力信号OUTNは同電位となる。
したがって、後段に接続するコンパレータ部14の変換時間を同じにすることが出来、コンパレータの変換スピード差によるストリーキング劣化を低減する事が可能となる。
【0051】
ここで、過大入力信号の判定方法について記載する。
通常のA/D変換処理前に閾値電圧Sthを過大入力判定電圧Vthに設定し、その過大入力判定電圧Vthと画素信号SVSLの電圧との比較を閾値判定回路21を用いて行う。この結果、画素信号SVSLの電圧の方が低い(閾値電圧としての過大入力判定電圧Vthが高い)場合は、画素信号SVSLは、A/D変換のレンジ外(過大入力信号)であると判定され、NチャネルMOSトランジスタTR17をオン状態(閉状態)とする。
【0052】
一方、画素信号SVSLの電圧の方が高い(閾値電圧としての過大入力判定電圧Vthが低い)場合は、画素信号SVSLは、A/D変換のレンジ内と判定され、NチャネルMOSトランジスタTR17をオフ状態(開状態)のままとする。
その後、通常のA/D変換処理が実行される。
【0053】
[コンパレータ部の回路構成例]
ここで、コンパレータ部14の回路構成例について説明する。
図5は、コンパレータ部14の回路構成例の説明図である。
コンパレータ部14は、
図5に示すように、大別すると、増幅部(増幅段)14A、ラッチ部14Bを備えている。
増幅部14Aは、ソース端子Sがディジタル電源DVDに接続され、ゲート端子Gがクロック信号ラインCLKに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR21と、ドレイン端子DがPチャネルMOSトランジスタTR21のドレイン端子に接続され、ゲート端子Gが正側入力端子INPに接続されたNチャネルMOSトランジスタTR22と、ソース端子Sがディジタル電源DVDに接続され、ゲート端子がクロック信号ラインCLKに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR23と、ドレイン端子DがPチャネルMOSトランジスタTR23のドレイン端子Dに接続され、ゲート端子Gが負側入力端子INNに接続されたNチャネルMOSトランジスタTR24とドレイン端子DがNチャネルMOSトランジスタTR22のソース端子S及びNチャネルMOSトランジスタTR24のソース端子Sに共通接続され、ゲート端子Gがクロック信号ラインCLKに接続され、ソース端子SがディジタルグランドDVSに接続されたNチャネルMOSトランジスタTR25と、を備えている。
また、増幅部14AはインバータTR31、TR32およびTR33、TR34を備えており、これらが共働することにより、信号の増幅を行っている。
【0054】
ラッチ部14Bは、ソース端子Sがディジタル電源DVDに接続され、ゲート端子Gがクロック信号ラインCLKに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR41と、ソース端子Sがディジタル電源DVDに接続され、ドレイン端子DがPチャネルMOSトランジスタTR41のドレイン端子Dに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR42と、ドレイン端子DがPチャネルMOSトランジスタTR41のドレイン端子D及びPチャネルMOSトランジスタTR42のドレイン端子Dに接続され、ゲート端子GがPチャネルMOSトランジスタTR31のドレイン端子D及びNチャネルMOSトランジスタTR32のドレイン端子Dに接続されたNチャネルMOSトランジスタTR43と、ドレイン端子DがNチャネルMOSトランジスタTR43のソース端子Sに接続され、ソース端子SがディジタルグランドDVSに接続され、ゲート端子GがPチャネルMOSトランジスタTR42のゲート端子Gに接続されたNチャネルMOSトランジスタTR44と、を備えている。
【0055】
また、ラッチ部14Bは、ソース端子Sがディジタル電源DVDに接続され、ゲート端子Gがクロック信号ラインCLKに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR45と、ソース端子Sがディジタル電源DVDに接続され、ドレイン端子DがPチャネルMOSトランジスタTR45のドレイン端子Dに接続され、ゲート端子GがPチャネルMOSトランジスタTR42のドレイン端子D及びNチャネルMOSトランジスタTR43のドレイン端子Dに接続されたPチャネルMOSトランジスタTR46と、ドレイン端子DがPチャネルMOSトランジスタTR45のドレイン端子D及びPチャネルMOSトランジスタTR46のドレイン端子Dに接続され、ゲート端子GがPチャネルMOSトランジスタTR33のドレイン端子D及びNチャネルMOSトランジスタTR34のドレインDに接続されたNチャネルMOSトランジスタTR47と、ドレイン端子DがNチャネルMOSトランジスタTR47のソース端子Sに接続され、ソース端子SがディジタルグランドDVSに接続され、ゲート端子GがPチャネルMOSトランジスタTR46のゲート端子Gに接続されたNチャネルMOSトランジスタTR48と、を備えている。
【0056】
上記構成において、コンパレータ部14は、クロック信号ラインCLKの立ち上がり時の入力信号INP,INNに応じて、コンパレータ出力OUTPを出力する。
【0057】
[閾値判定回路の動作]
図6は、過大入力判定回路(閾値判定用回路)の処理フローチャートである。
まず、閾値電圧S
thを過大入力と判定する過大入力判定電圧V
thに設定する(ステップS11)。
ここで、電圧の設定の方法は、D/A変換部12の機能を拡張してもよいし、別途設定回路を設けるようにしてもよい。
【0058】
続いて、閾値判定回路21を用いて、画素信号SVSLと過大入力判定電圧Vthの比較を行い、過大入力判定電圧Vthより低いか否か(過大入力でA/D変換器10のレンジ外かどうか)を判定する(ステップS12)。閾値判定回路はコンパレータ部14を用いて判定を行ってもよい。
【0059】
閾値判定回路21は、ステップS12の判定において、画素信号SVSLが過大入力判定電圧より高い場合は(ステップS12;No)、差動アンプの一方の入力端子であるPチャネルMOSトランジスタTR13のゲート端子Gに過大入力(過大電圧入力)は印加されていないと判定して、“L”レベルの判別結果信号SEVをNチャネルMOSトランジスタTR17のゲート端子Gに出力する。
【0060】
この結果、NチャネルMOSトランジスタTR17は、オフ状態(開状態)を維持する(ステップS14)。
この結果、差動アンプDAは、通常の動作状態を維持することとなる。
【0061】
これに対し、閾値判定回路21は、ステップS12の判定において、画素信号SVSLが過大入力判定電圧Vthより低い場合(過大入力でA/D変換器10のレンジ外の場合)は(ステップS12;Yes)、差動アンプDAの一方の入力端子であるPチャネルMOSトランジスタTR13のゲート端子Gに過大入力(過大電圧入力)が印加されていると判定して、“H”レベルの判別結果信号SEVをNチャネルMOSトランジスタTR17のゲート端子Gに出力する。
【0062】
この結果、NチャネルMOSトランジスタTR17をオン状態(閉状態)とする(ステップS13)。
この結果、接続点CP1及び接続点CP2が短絡され、出力電圧OUTP,OUTNは、ほぼ等しくなる。
【0063】
これにより、過大入力電圧印加時においても、コンパレータ部14に入力される電圧差分は非常に小さな値となる。これにより過大入力動作時においてもコンパレータ部14への入力を小さくすることが出来、変換スピードを他の画素信号と同様にすることが出来るため、ストリーキングの劣化を抑制することが可能となる。
【0064】
[第1実施形態の効果]
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、差動アンプDAに過大入力が印加された場合でも、下位ビット変換時の応答時間を差動アンプDAに過大入力が印加されていない場合と同様とすることができ、ストリーキングの劣化を抑制することが可能となる。
【0065】
[第1実施形態の第1変形例]
以上の説明においては、一度閾値電圧Sthを過大入力判定電圧Vthに設定し閾値判定回路21の判定結果を直接NチャネルMOSトランジスタTR17のゲート端子Gに出力する構成を採っていた。
しかしながら、一度過大入力判定電圧Vthに設定するのではなく、通常動作としてA/D変換を行っていき、上位から数Bit続けてコンパレータ部14の判定結果が“H”の場合に、過大入力と判定し、NMOSトランジスタTR17をオン状態にするといった構成にすることも可能である。この場合は過大入力判定電圧Vthへの設定および過大入力判定を行う必要が無いので、実際のA/D変換以外に余計なA/D変換時間が不要となり、処理の高速化が図れる。
【0066】
このような構成を採ることにより、NチャネルMOSトランジスタTR17、逐次変換ロジック部15からゲート端子Gへの配線及び逐次変換ロジック部15の制御プログラムを変更するだけで、第1実施形態の動作を実現することが可能となる。
【0067】
[第1実施形態の第2変形例]
図7は、第1実施形態の第2変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
図7において、
図4と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第1実施形態の第2変形例のプリアンプ部13Aが第1実施形態のプリアンプ部13と異なる点は、画素信号S
VSLの電圧を所定の過大入力状態に相当する基準比較電圧V
thと比較して判別結果信号S
EVAを出力する比較判定回路25と、PチャネルMOSトランジスタTR14のドレイン端子D及び抵抗R1の接続点CP11にドレイン端子Dが接続され、PチャネルMOSトランジスタTR16のドレイン端子D及び抵抗R2の接続点CP12にソース端子Sが接続され、ゲート端子Gに比較判定回路25が出力した判別結果信号S
EVAが入力されて接続点CP11及び接続点CP12を短絡するためのスイッチとして機能するNチャネルMOSトランジスタTR17Aと、を備えた点である。
【0068】
本第1実施形態の第2変形例によっても、画素信号SVSLの電圧が所定の過大入力状態に相当する基準比較電圧Vthよりも低くなった場合には、NチャネルMOSトランジスタTR17Aをオン状態(閉状態)とするので、接続点CP11及び接続点CP12が短絡され、プリアンプ出力OUTP、OUTNの電圧はほぼ等しくなり、コンパレータ部14に入力される電圧差を小さくすることが可能となる。
【0069】
[第1実施形態の第3変形例]
図8は、第1実施形態の第3変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
図8において、
図4と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第1実施形態の第3変形例のプリアンプ部13Bが第1実施形態のプリアンプ部13と異なる点は、画素信号S
VSLの電圧を所定の過大入力状態に相当する基準比較電圧V
thと比較して判別結果信号S
EVBを出力する比較判定回路25、を備え、比較判定回路25の判定結果をNチャネルMOSトランジスタTR17Bのゲート端子Gに入力するようにした点である。
【0070】
本第1実施形態の第3変形例によっても、画素信号SVSLの電圧が所定の過大入力状態に相当する基準比較電圧Vthよりも低くなった場合には、NチャネルMOSトランジスタTR17Bをオン状態(閉状態)とするので、プリアンプ出力OUTP、OUTNの電圧はほぼ等しくなり、コンパレータ部14に入力される電圧差を小さくすることが可能となる。
【0071】
[第1実施形態の第4変形例]
以上の説明においては、プリアンプ部13Bの入力段のMOSトランジスタの構成をPチャネルMOSトランジスタ構成としていたが、NチャネルMOSトランジスタ構成を採るようにすることも可能である。
【0072】
(2)第2実施形態
[第2実施形態のコンパレータ部の詳細構成]
図9は、第2実施形態のプリアンプ部の詳細構成図である。
図9において、
図4の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0073】
第2実施形態のプリアンプ部13Cが第1実施形態のプリアンプ部13と異なる点は、NチャネルMOSトランジスタTR17及び閾値判定回路21に代えてダイオードとして機能するNチャネルMOSトランジスタTR51を備えた点である。
【0074】
上記構成において、NチャネルMOSトランジスタTR51は、PチャネルMOSトランジスタTR14のドレイン端子D及び抵抗R1の接続点CP11にドレイン端子Dが接続され、PチャネルMOSトランジスタTR16のドレイン端子D及び抵抗R2の接続点CP12にソース端子Sが接続され、ゲート端子Gが接続点CP11に接続されている。
【0075】
画素信号SVSLの電圧と閾値電圧信号Sthの電圧との差が大きく、第1出力信号OUTPと第2出力信号OUTNとの差分が大きい場合はNチャネルMOSトランジスタTR51がオン状態(導通状態)となり、第1出力信号OUTPと第2出力信号OUTNとの差分電圧をNチャネルMOSトランジスタTR51のダイオードとしての閾値電圧まで小さくすることが可能となる。この方式では第1実施形態と比較して、過大入力判定の比較時間や逐次変換ロジック部15からのフィードバック信号が不要となる。
【0076】
また過大入力は画素信号SVSL側からしか印加されないため、ダイオードとして機能するNチャネルMOSトランジスタTR51のゲート端子Gが画素信号SVSL側に接続されていることも特徴の1つである。
ただし、負荷容量を合わせるために、TR51と同様のNチャネルMOSトランジスタをCP12側ゲート、ドレインを接続、CP11側にソースを接続することも可能である。
【0077】
[第2実施形態の第1変形例のコンパレータ部の詳細構成]
図10は、第2実施形態の第1変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
図10において、
図4の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第2実施形態のプリアンプ部13Dが第1実施形態のプリアンプ部13と異なる点は、NチャネルMOSトランジスタTR17及び閾値判定回路14に代えてダイオードとして機能するNチャネルMOSトランジスタTR52を備えた点である。
【0078】
上記構成において、NチャネルMOSトランジスタTR52は、PチャネルMOSトランジスタTR13のドレイン端子D及びPチャネルMOSトランジスタTR14のソース端子Sの接続点CP1にドレイン端子Dが接続され、PチャネルMOSトランジスタTR15のドレイン端子D及びPチャネルMOSトランジスタTR16のソース端子Sの接続点CP2にソース端子Sが接続され、ゲート端子Gが接続点CP1に接続されている。
【0079】
上記構成によれば、画素信号SVSLの電圧と閾値電圧信号Sthの電圧との差が大きく、第1出力信号OUTPと第2出力信号OUTNとの差分が大きい場合はNチャネルMOSトランジスタTR52がオン状態(導通状態)となり、第1出力信号OUTPと第2出力信号OUTNとの差分電圧を小さくすることが可能となる。この方式では第1実施形態と比較して、閾値判定の比較時間や逐次変換ロジック部15からのフィードバック信号が不要となる。
【0080】
この場合においても、第2実施形態と同様に、過大入力は画素信号SVSL側からしか印加されないため、ダイオードとして機能するNチャネルMOSトランジスタTR52のゲート端子Gが画素信号SVSL側に接続されていることも特徴の1つである。
ただし、負荷容量を合わせるために、TR52と同様のNチャネルMOSトランジスタをCP2側ゲート、ドレインを接続、CP1側にソースを接続することも可能である。
【0081】
[第2実施形態の第2変形例]
以上の説明においては、プリアンプ部13Cの入力段のMOSトランジスタの構成をPチャネルMOSトランジスタ構成としていたが、NチャネルMOSトランジスタ構成を採るようにすることも可能である。
【0082】
(3)第3実施形態
[第3実施形態のコンパレータ部の詳細構成]
図11は、第3実施形態のプリアンプ部の詳細構成図である。
図11において、
図4の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0083】
第3実施形態のプリアンプ部13Eが第1実施形態のプリアンプ部13と異なる点は、NチャネルMOSトランジスタTR17に代えて閾値判定回路21が出力した判別結果信号SEVに基づいて、基準画素信号変換時に相当する初期電圧VSETとしてPチャネルMOSトランジスタTR13のゲート端子Gに印加するPチャネルMOSトランジスタTR53を備えた点である。
【0084】
上記構成において、PチャネルMOSトランジスタTR53は、PチャネルMOSトランジスタTR13のゲート端子Gにドレイン端子Dが接続され、閾値判定回路21の出力端子OUTP1にゲート端子Gが接続されている。
【0085】
本第3実施形態によれば、画素信号SVSLの電圧が所定の過大入力状態に相当する基準比較電圧Vthよりも低くなったことを閾値判定回路21が検出した場合には、PチャネルMOSトランジスタTR53をオン状態(閉状態)とするので、プリアンプ部13EのPチャネルMOSトランジスタTR13のゲート端子Gには、初期電圧VSETが印加され、基準画素信号変換時と同様の変換を行うこととなるため、他カラムに与える影響は基準画素信号変換時と同じとなるため、CDS(Correlated Double Sampling)後の影響は小さくなり、ストリーキング量の劣化を抑制することが可能となる。
【0086】
[第3実施形態の第1変形例のプリアンプ部の詳細構成]
図12は、第3実施形態の第1変形例のプリアンプ部の詳細構成図である。
図12において、
図11の第3実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第3実施形態の第1変形例のプリアンプ部13Fが第3実施形態のプリアンプ部13Eと異なる点は、画素信号S
VSLの電圧を所定の過大入力状態に相当する基準比較電圧V
thと比較して判別結果信号S
EVFをPチャネルMOSトランジスタTR53のゲート端子Gに出力する閾値判定回路30を備えた点である。
【0087】
本第3実施形態の第1変形例によっても、画素信号SVSLの電圧が所定の過大入力状態に相当する基準比較電圧Vthよりも小さくなった場合には、PチャネルMOSトランジスタTR53をオン状態(閉状態)とするので、プリアンプ部13FのPチャネルMOSトランジスタTR13のゲート端子Gには、初期電圧VSETが印加され、基準画素信号変換時と同様の変換を行うために、他カラムに与える影響は基準画素信号変換時と同じとなり、CDS(Correlated Double Sampling)後の影響は小さくなり、ストリーキング量の劣化を抑制することが可能となる。
【0088】
ここで、上記実施形態で用いていた初期電圧設定回路の構成について簡単に説明する。
図13は、初期電圧設定回路の一例の説明図である。
初期電圧設定回路は、抵抗R3の電圧降下により電流源として機能しているPチャネルMOSトランジスタTR12のドレイン端子-ソース端子間電圧Vdsを保証するととともに、プリアンプ部13のPチャネルMOSトランジスタTR13のゲート端子Gに印加する初期値電圧V
SETを規定し、設定している。
【0089】
(4)第4実施形態
以上の各実施形態においては、一画素を処理するA/D変換器について説明したが、本第4実施形態は、複数画素について順次A/D変換処理を行うA/D変換器を複数備えた信号処理部の実施形態である。
【0090】
[第4実施形態の信号処理部の概要構成]
図14は、第4実施形態の信号処理部の概要構成ブロック図である。
図14に示す信号処理部4Aは、一つのA/D変換器においてそれぞれ8個の画素について時分割で処理を行う場合の例であり、図示の簡略化のため、2n個(n:自然数)設けたA/D変換器のうち、n個のA/D変換器10-1~10-nを図示している。実際においては、上に延びている画素からの出力信号ラインの上方に残りのn個のA/D変換器が配置されている。
【0091】
この場合において、A/D変換器10-1~10-nは、
図2に示したA/D変換器10と同様の構成を採っており、
図14においては、DA変換部12、プリアンプ部13、コンパレータ部14、逐次変換ロジック部15及びローテーションロジック部16を図示している。
【0092】
各A/D変換器10-1においては、
図14に示す場合、画素PX1~PX4、画素PX11~PX14、画素PX21~PX24及び画素PX31~PX34の16個の画素のうち、半分の8個の画素が割り当てられている。
【0093】
具体的には、図示しているA/D変換器10-1については、画素PX1、画素PX3、画素PX11、画素PX13、画素PX21、画素PX23、画素PX31、画素PX33の8個の画素が割り当てられている。
【0094】
同様に図示していないA/D変換器については、画素PX2、画素PX4、画素PX12、画素PX14、画素PX22、画素PX24、画素PX32、画素PX3の8個の画素が割り当てられている。
【0095】
(第4実施形態の信号処理部の基本動作)
ここで、第4実施形態の信号処理部4Aの基本動作について説明する。
信号処理部4Aを構成しているA/D変換器10-1~10-n及び図示しないn個のA/D変換器は、同期してそれぞれ独立して処理を行っているため、A/D変換器10-1を例として基本動作を説明する。
【0096】
A/D変換器10-1は、例えば、1回のデータ読み出しに際し、画素PX1→画素PX3→画素PX11→画素PX13→画素PX21→画素PX23→画素PX31→画素PX33の順番で処理を行う。
【0097】
すなわち、1回のデータ読み出しの第1の処理タイミングにおいては、A/D変換器10-1のDA変換部12は、ローカル参照電圧生成部11が生成した複数種類のローカル基準参照信号Srefを用い、後述の逐次変換ロジック部及びローテーションロジック部の制御下で制御データDCNTのディジタル/アナログ(D/A)変換を行って閾値電圧信号Sthをプリアンプ13に出力する。
【0098】
これにより、プリアンプ部13は、画素信号入力端子TSL1から入力された画素PX1に対応する画素信号SVSL及びDA変換器12から入力された閾値電圧信号Sthを増幅し、コンパレータ部14に出力する。
【0099】
コンパレータ部14は、プリアンプ出力を比較し、比較結果データDCMPを逐次変換ロジック部15に出力する。
【0100】
逐次変換ロジック部15は、比較結果データDCMPをアナログ/ディジタル変換時の逐次変換制御を行うための逐次変換制御データDSARを出力するとともに、入力された比較結果データDCMPを記憶し、記憶した比較結果データDCMPに基づいて画素信号SVSLのアナログ/ディジタル(A/D)変換結果である画素データDVSLを出力端子TDOUTから出力する。
【0101】
以下、同様にして、第2の処理タイミング~第8の処理タイミングにおいて、A/D変換器10-1は、画素信号入力端子TSL2から入力された画素PX3、画素信号入力端子TSL3から入力された画素PX11、画素信号入力端子TSL4から入力された画素PX13、画素信号入力端子TSL5から入力された画素PX21、画素信号入力端子TSL6から入力された画素PX23、画素信号入力端子TSL7から入力された画素PX31、画素信号入力端子TSL8から入力された画素PX33のそれぞれに対応する画素信号SVSLのアナログ/ディジタル(A/D)変換を実施し、出力端子TDOUTから出力する処理を行う。
【0102】
このとき、A/D変換器10-2~10-n及び図示しないn個のA/D変換器も同様の処理を同時並行して行う。
【0103】
以上の説明のように、本第4実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、A/D変換器の個数を画素別にA/D変換器を設ける場合と比較して約1/8とすることができ、信号処理部4Aの回路面積、ひいては、固体撮像素子の設置面積を小さくし、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0104】
(5)第5実施形態
図15は、本技術を適用した間接光飛行時間型距離センサの一例のブロック図である。
間接光飛行時間(Indirect-Time of Flight)型距離センサ100は、センサチップ101およびセンサチップ101に積層された回路チップ102を備えている。
【0105】
画素アレイ部112は、センサチップ101上に二次元のグリッドパターンでアレイ状に配置された複数の画素(pixel)111を有している。ここで、画素アレイ部112は、行列上に配置されていても良く、また、複数の列信号線を含んでも良い。それぞれの列信号線はそれぞれの画素に接続されている。
回路チップ102には、垂直駆動回路113、カラム信号処理部114、タイミング調整回路115および出力回路116が配置されている。
【0106】
垂直駆動回路113は、画素を駆動し、カラム信号処理部114に画素信号を出力するように構成されている。
カラム信号処理部114は、入力された画素信号に対して、A/D変換処理を実施し、A/D変換処理した画素データを出力回路116に出力する。
出力回路116は、カラム信号処理部114からの画素データに対して、CDS(Correlated Double Sampling)処理などを実行し、後段の信号処理回路に画素データを出力する。
【0107】
タイミング制御回路115は、それぞれの垂直駆動回路113の駆動タイミングを制御するように構成されている。カラム信号処理部114、出力回路116は、タイミング制御回路115が出力した垂直同期信号と同期して動作している。
【0108】
ここで、画素アレイ部112を構成している画素111について詳細に説明する。
図16は、本技術の形態における画素の一構成例を示す回路図である。
画素アレイ部112には、二次元状のグリッドパターンで複数の画素111が配置されており、それぞれの画素111は赤外光を受光し、画素信号に光電変換可能な構成となっている。
【0109】
また、画素111の列ごとに、垂直方向に垂直信号線VSL1及び垂直信号線VSL2が配線される。画素アレイ部112内の列の総数をM(Mは、整数)とすると、合計で2×M本の垂直信号線が配線される。それぞれの画素において、2つのタップを有している。垂直信号線VSL1は画素111のタップAに接続され、垂直信号線VSL2は画素111のタップBに接続される。また、垂直信号線VSL1は、画素信号AINP1を伝送し、垂直信号線VSL2は、画素信号AINP2を伝送する。
【0110】
垂直駆動回路113は、画素エリア112の行を順に選択して駆動し、その行において画素ブロック221ごとに画素信号AINP1および画素信号AINP2を同時に出力させる。言い換えれば、垂直駆動回路113は、画素111の2k行目および2k+1行目を同時に駆動する。
【0111】
画素111は、フォトダイオード121、二つの転送トランジスタ122、123、二つのリセットトランジスタ124、125、2つのタップ(浮遊拡散層126、127)、二つの増幅トランジスタ128、129及び二つの選択トランジスタ130、131を備える。
【0112】
フォトダイオード121は、受光した光を光電変換して電荷を生成するものである。このフォトダイオード121は、半導体基板において回路を配置する面を表面として、表面に対する裏面に配置される。このような固体撮像素子は、裏面照射型の固体撮像素子と呼ばれる。なお、裏面照射型の代わりに、表面にフォトダイオード121を配置する表面照射型の構成を用いることもできる。
【0113】
転送トランジスタ122及び転送トランジスタ123は、垂直駆動回路113からの転送信号TRGに従ってフォトダイオード121からTAPA126、TAPB127にそれぞれシーケンシャルに電荷を転送するものである。
TAPA126およびTAPB127は、転送された電荷を蓄積して、蓄積した電荷の量に応じた電圧を生成するものである。
【0114】
オーバーフロートランジスタ132は、フォトダイオード121の電荷をシーケンシャルに高電位側電源VDDに排出するトランジスタで、フォトダイオード121をリセットする機能を持つ。
【0115】
リセットトランジスタ124、125は、垂直駆動回路113からのリセット信号RSTpに従ってTAPA126、TAPB127のそれぞれから電荷を引き抜いて、電荷量を初期化するものである。
【0116】
増幅トランジスタ128、129は、TAPA126、TAPB127の電圧をそれぞれ増幅するものである。選択トランジスタ130、131は、垂直駆動回路113からの選択信号SELpに従って、増幅された電圧の信号を画素信号としてふたつの垂直信号線(例えば、VSL1、VSL2)を介してカラム信号処理部114へ出力するものである。垂直信号線および垂直信号線VSL2は、カラム信号処理部114内の一つのA/D変換器10の入力に接続されている。
【0117】
なお、画素111の回路構成は、光電変換により画素信号を生成することができるものであれば、
図15に例示した構成に限定されない。
【0118】
本第5実施形態によれば、第4実施形態と同様に、固体撮像素子の設置面積を小さくし、間接光飛行時間型距離センサの小型化を図ることが可能となる。
【0119】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0120】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
画素信号の過大入力が入力されたかどうか判断する閾値電圧の比較を行う比較器回路と、
前記比較の結果が制御端子に入力され、クランプ回路を構成する第1のトランジスタと、
を備えたA/D変換器。
(2)
クランプ時に接続される第1の所定位置と第2の所定位置に流れる電流を等しくし、あるいは、前記第1の所定位置と前記第2の所定位置の電圧を等しくする、
(1)記載のA/D変換器。
(3)
入力電流ライン及び参照電流ラインを構成する一対の差動対トランジスタと、
前記差動対トランジスタに流すバイアス電流を制御する一対のバイアストランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、前記一対のバイアストランジスタに対し、上流側あるいは下流側のいずれかに設けられている、
(1)又は(2)記載のA/D変換器。
(4)
前記クランプ回路は、前記画素信号として所定の過大入力閾値以上の信号が入力されたか否かを判定する閾値判定回路を備え、
前記閾値判定回路の出力に基づいて、前記第1のトランジスタは、クランプ時に接続される第1の所定位置と第2の所定位置とを短絡状態とする、
(1)~(3)のいずれか1つに記載のA/D変換器。
(5)
入力電流ライン及び参照電流ラインを構成する一対の差動対トランジスタと、
前記差動対トランジスタに流すバイアス電流を制御する一対のバイアストランジスタと、
クランプ時に接続すべき第1の所定位置と第2の所定位置に対し、前記第1の所定位置にアノードが接続され、前記第2の所定位置にカソードが接続されたダイオードを備える、
A/D変換器。
(6)
光電変換を行う複数の画素がアレイ状に配置された画素アレイ部と、
前記画素アレイ部からアナログ画素信号を読み出して信号処理を行う信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記アナログ画素信号のアナログ/ディジタル変換を行うA/D変換器を含み、
前記A/D変換器は、画素信号と過大入力が入力されたかどうか判断する閾値電圧の比較を行う比較器回路と、
前記比較の結果が制御端子として入力され、クランプ回路を構成する第1のトランジスタと、
を備えた電子機器。
(7)
光電変換を行う複数の画素がアレイ状に配置された画素アレイ部と、
前記画素アレイ部からアナログ画素信号を読み出して信号処理を行う信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記アナログ画素信号のアナログ/ディジタル変換を行うA/D変換器を含み、
前記A/D変換器は、入力電流ライン及び参照電流ラインを構成する一対の差動対トランジスタと、
前記差動対トランジスタに流すバイアス電流を制御する一対のバイアストランジスタと、
クランプ時に接続すべき第1の所定位置と第2の所定位置に対し、前記第1の所定位置にアノードが接続され、前記第2の所定位置にカソードが接続されたダイオードと、
を備えた電子機器。
【符号の説明】
【0121】
2 画素アレイ部
4 信号処理部
10 A/D変換器
11 ローカル参照電圧生成部
12 DA変換部
13、13A~13F プリアンプ部
14 コンパレータ部
14A 増幅部
14B ラッチ部
15 逐次変換ロジック部
16 ローテーションロジック部 21 閾値判定回路 CP1、CP11 接続点(第1の所定位置)
CP2、CP12 接続点(第2の所定位置)
TR17、TR17A、TR17B NチャネルMOSトランジスタ(クランプ回路)
TR51、TR52 NチャネルMOSトランジスタ(クランプ回路)
TR53 PチャネルMOSトランジスタ(スイッチング素子)
DA 差動アンプ
SEV 判別結果信号