(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】流体解析のためのクロマトグラフィ弁
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20240402BHJP
G01N 30/54 20060101ALI20240402BHJP
G01N 30/08 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01N30/26 M
G01N30/54 G
G01N30/08 G
(21)【出願番号】P 2020565800
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 CA2019050759
(87)【国際公開番号】W WO2019227231
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514009007
【氏名又は名称】メカニック・アナリティック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】ガマシェ,イブ
(72)【発明者】
【氏名】ラモンターニュ,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ベダール,フレデリック
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03267736(US,A)
【文献】実公昭46-032560(JP,Y1)
【文献】特開2016-173249(JP,A)
【文献】特開2016-031370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0263649(US,A1)
【文献】米国特許第06193213(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0119127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/26,30/54,
F16K 3/00,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体解析およびクロマトグラフィ用途で使用するためのクロマトグラフィ弁であって、
平坦面を有しかつ複数の通路が貫通している第1のボディであって、各通路が、外側端部では細管に接続可能であり、また内側端部では前記平坦面に開口する通路ポートで終端する、第1のボディと、
前記第1のボディと密閉関係で係合される第2のボディであって、前記第1および第2のボディのうちの一方が、前記第1のボディの前記複数の通路間の流体循環を制御するために、2つ以上の位置の間で前記第1のボディおよび前記第2のボディのうちのもう一方に対して移動可能であり、前記第2のボディが、少なくとも1つのカートリッジ受容空洞を備える、第2のボディと、
前記第2のボディの前記少なくとも1つのカートリッジ受容空洞内に取外し可能に設けられる少なくとも1つのカートリッジであって、前記第2のボディに対する前記第1のボディの位置に応じて前記第1のボディの前記通路ポートの対と各チャネルが流体連通する少なくとも2つのチャネルを備え、それにより、前記少なくとも2つのチャネルを介して、前記複数の通路のうちの選択された通路に流体が通る、少なくとも1つのカートリッジと、
前記少なくとも1つのカートリッジが、前記第1のボディの前記平坦面に面する前面と、
複数の
環状リップであって、各
環状リップが前記カートリッジの前記前面から突出しかつ前記少なくとも2つのチャネルのうちの対応するチャネルを取り囲む、複数の環状リップと、
隣り合うチャネル間で、当該チャネルが隣り合う方向に対して垂直な方向に延在するパージチャネルと、
を備える、クロマトグラフィ弁。
【請求項2】
前記少なくとも2つのチャネルが、前記第1のボディの2つの通路間の流体連通を確立するために、前記少なくとも1つのカートリッジの前記前面上に画定された凹部に対応する、請求項1に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項3】
前記少なくとも2つのチャネルのそれぞれが、前記カートリッジ内に延在し、かつ、前記チャネルの両端にカートリッジポートの対を備え、前記カートリッジポートが、前記第1のボディの2つの通路間の流体連通を確立するために、前記カートリッジの前面に開口しかつ前記通路ポートに面する、請求項1に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項4】
前記パージチャネルが、対応する複数の更なる環状リップによって取り囲まれている、請求項1に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項5】
前記パージチャネルを取り囲む前記複数の更なる
環状リップと、前記少なくとも2つのチャネ
ルを取り囲む前記複数の
環状リップとが、リップ接続部を介して接続されている、請求項4に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項6】
前記複数の環状リップが、テーパ付けされた内側側面および外側側面、ならびに頂端を有し、前記頂端が、前記2つ以上の位置のうちの選択された位置において、前記第1のボディの前記通路ポートを取り囲む環状領域と密閉接触する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項7】
前記複数の環状リップが、不活性被覆を備える、請求項
1、2、3、6のいずれか一項に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項8】
前記通路ポートおよび前記少なくとも1つのカートリッジを取り囲み、それにより前記第1のボディと前記第2のボディとの間に密閉空間を作り出す密閉リングを備える、請求項1から
7のいずれか一項に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項9】
前記第1のボディおよび/または前記第2のボディを封入するためのエンクロージャをさらに備え、前記第1のボディ、前記エンクロージャ、および/または前記第2のボディが、前記密閉リングを受容するためのシール溝を備える、請求項
8に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項10】
前記複数の通路における別々の通路が、前記密閉空間から不純物を除去するためのパージ入口およびパージ出口を備える、請求項
8または
9に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項11】
前記パージ出口が、前記弁の作動の際の内部加圧を軽減するために、残りの通路ポートよりも幅広である、請求項
10に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項12】
前記少なくとも1つのカートリッジが、単一カートリッジであり、前記少なくとも1つのカートリッジ受容空洞が、前記単一カートリッジを受容するための単一カートリッジ受容空洞であり、前記単一カートリッジが前記少なくとも2つのチャネルを備える、請求項1から
11のいずれか一項に記載のクロマトグラフィ弁。
【請求項13】
前記第1のボディが、前記第2のボディの内側セクションと外側セクションとの間の流体連通を可能にするために、前記平坦面上に画定されかつ前記パージチャネルに面する複数のパージポケットを備える、請求項1から
12のいずれか一項に記載のクロマトグラフィ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]技術分野は、一般に、クロマトグラフィ弁に関連するシステムおよび方法に関し、より詳細には、改善された密閉性を有するクロマトグラフィ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
[2]クロマトグラフ弁は、様々なタイプおよび構成で存在する。それらを特定のタイプの用途に多かれ少なかれ適したものにする固有の特性を有する、それらのそれぞれ。
[3]回転弁は、非常に広範な一連の用途をカバーすることができ、また、より廉価であるので、より一般的である。回転弁は、典型的なGC-ダイヤフラム弁におけるような流れディレーティング(flow derating)に悩まされないので、高温における好ましい選択である。ダイヤフラム弁では、ダイヤフラムは、それらが動作される温度に応じてその形状を失い得る。対照的に、回転弁は、典型的には、温度動作条件にかかわらずその形状を保つ単一の一体部品で作られる。とは言え、回転弁は、回転子表面と固定子表面との間の強い摩擦により、より摩耗しやすい。回転弁の寿命は、それらの構成に使用される部品の材料に大きく依存する。クロマトグラフィで知られているように、分析されるサンプルと弁材料との間の化学的適合性に配慮するために、様々な材料が必要とされる。弁構成要素に使用される材料は、典型的には、材料の耐久性よりも、弁を使用する用途によって決定される。回転弁における固定子および回転子の界面もまた、適切に密閉するのが難しい。密閉状態は、回転子および固定子の円錐表面を合わせることによって達成される。2つの同一の円錐表面を適切に合わせることの難しさを考えると、2つの部品の界面における漏れをできる限り抑えるために、回転子および固定子を互いに押し付けるようにそれらの接触面に高い圧力が印加される。この追加の力を印加することは、弁を作動させるときに部品間により多くの摩擦をもたらし、それにより弁の寿命が短縮される。この増大した押圧が原因で時間の経過とともに壊れることも、回転子にはまれなことではない。この現象は、温度が高くなるとさらに悪化する。
【0003】
[4]回転弁に関連する問題を解決するために、ダイヤフラム弁が導入されてきた。 ダイヤフラム弁は、より長い寿命を有し、かつ、UHP(超高純度)電子ガス分析などの重要な用途でしばしば必要とされるより良好な密閉性を提供する。そのようなダイヤフラム弁では、ポート間の連通は、プランジャをダイヤフラムに押し付ける/プランジャをダイヤフラムから後退させることによって遮断されるかまたは可能とされ、ダイヤフラムは、典型的には、プラスチック、カプトン、ポリイミド、または任意の適切な材料などの軟質材料で作られる。良好な密閉状態を達成するために、プランジャは、ダイヤフラムと比較して、非常に高い精度および並外れた表面仕上げを有して機械加工されなければならない。プランジャが押し付けられる表面は、滑らかで、かつ、かき傷がない状態でなければならない。回転弁とは対照的に、平坦な表面上に良好な表面仕上げを得ることは、円錐表面に比べてより容易である。ダイヤフラム弁の課題のうちの1つは、ダイヤフラム材料の適切な選択である。ダイヤフラム材料は、良好な密閉性を提供するのに十分に平滑でなければならないが、プランジャがダイヤフラムから後退するときに跳ね返るのに十分に硬くなければならない。さらに、ダイヤフラムは、弁の動作温度にかかわらず、その形状および剛性を維持しなければならない。完全な材料は存在しないので、ダイヤフラム材料は、予想される最も広範な温度スペクトルをカバーするために、多種多様の組成物の中から選択されなければならない。動作温度に加えて、分析下のサンプルに関するダイヤフラムの化学的適合性も考慮されなければならないことを考えると、適切なダイヤフラム組成物の選択は、かなり複雑になる。また、材料選択にかかわらず、ダイヤフラムはみな、大抵の用途にとって問題である、経時的な温度流れ劣化(temperature flow degradation)に悩まされる。
【0004】
[5]スライド弁(摺動弁とも呼ばれる)もまた、クロマトグラフ用途に利用可能である。しかし、それらの設計により、スライド弁は、不十分な漏れ完全性および寿命の問題に悩まされる。このタイプの弁によれば、密閉状態は、他の2つの部品すなわち中間部品と摺動部品との間に挟まれる部品に押圧を印加することによって達成される。押圧は弁の作動中に一定であり続けるので、摺動弁は、固定部品と可動部品との間の摩擦からもたらされる摩耗に悩まされる。密閉されるべき表面積は大きく、また、一様で平滑な表面を有する広い領域を機械加工することは難しく、したがって2つの広い表面を互いに適切に密閉するのに必要とされる押圧は、大きい。押圧/密閉力を増大させることは、接触面上のより多くのかき傷をもたらし、それにより、密閉完全性は経時的に低下し、したがって、摺動弁の寿命が短縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[6]上記のことを考慮すると、弁の摺動中の摩耗および摩擦を減少させるための改善された弁が必要とされている。製造するのがより容易であり、かつ/または、固定/静止部品と摺動/可動部品との間に良好な密閉状態を提供することを可能にする弁、および、広い平坦な表面を高精度で製造する難しさに関連する欠点を克服することを可能にする弁もまた、必要とされている。少量用途に使用することができ、またできる限りより低コストで使用することができる多用途弁も、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[7]第1の態様によれば、流体解析およびクロマトグラフィ用途で使用するためのクロマトグラフィ弁が提供される。クロマトグラフィ弁は、平坦面を有しかつ通路が貫通している第1のボディを含む。各通路は、外側端部では細管に接続可能であり、また内側端部では上記平坦面に開口する通路ポートで終端する。クロマトグラフィ弁は、第1のボディと密閉関係で係合される第2のボディをさらに含み、第1のボディおよび第2のボディのうちの一方は、第1のボディの通路間の流体循環を制御するための2つ以上の位置の間で、第1のボディおよび第2のボディのうちのもう一方に対して移動可能である。第2のボディは、少なくとも1つのカートリッジ受容空洞をさらに含む。弁はまた、第2のボディの少なくとも1つのカートリッジ受容空洞内に取外し可能に設けられる少なくとも1つのカートリッジを含み、少なくとも1つのカートリッジは、第2のボディに対する第1のボディの位置に応じて第1のボディの通路ポートの対と流体連通する少なくとも1つのチャネルを有し、それにより、少なくとも1つのチャネルを介して、通路のうちの選択された通路に流体を通す。
【0007】
[8]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、第1のボディの平坦面に面する前面を備え、かつ、カートリッジの前面から突出しかつ少なくとも1つのチャネルを取り囲む少なくとも1つの環状リップをさらに備え、環状リップは、平坦面に接触しかつ平坦面に押し付けられる。
【0008】
[9]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのチャネルは、第1のボディの2つの通路間の流体連通を確立するために、前面上に画定された凹部を含む。
[10]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのチャネルは、カートリッジ内に延在し、かつ、チャネルの両端にカートリッジポートの対を備え、カートリッジポートは、第1のボディの2つの通路間の流体連通を確立するために、カートリッジの前面に開口し、かつ、通路ポートに面する。
【0009】
[11]可能な一実施形態によれば、クロマトグラフィ弁は、カートリッジポートのそれぞれまたは両方を取り囲むように成形されかつ構成された少なくとも1つの環状リップをさらに含む。
【0010】
[12]可能な一実施形態によれば、カートリッジポートの少なくとも1つの対を取り囲む環状リップは、楕円形状を有し、また、カートリッジポートの別の対を取り囲む環状リップは、実質的に円形である。
【0011】
[13]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、前面に対向する後面を備え、後面は、少なくとも1つのカートリッジを少なくとも1つのカートリッジ受容空洞内に適切に収めるための屈曲点を備える。
【0012】
[14]可能な一実施形態によれば、環状リップは、テーパ付けされた内側側面および外側側面、ならびに頂端を有し、頂端は、2つ以上の位置のうちの選択された位置において、第1のボディの通路ポートを取り囲む環状領域と密閉接触する。
【0013】
[15]可能な一実施形態によれば、環状リップは、不活性被覆を備える。
[16]可能な一実施形態によれば、通路ポートおよび少なくとも1つのカートリッジを取り囲み、それにより第1のボディと第2のボディとの間に密閉空間を作り出す密閉リング。
【0014】
[17]可能な一実施形態によれば、クロマトグラフィ弁は、第1のボディおよび/または第2のボディを封入するためのエンクロージャをさらに含み、第1のボディ、エンクロージャ、および/または第2のボディは、密閉リングを受容するためのシール溝を備える。
【0015】
[18]可能な一実施形態によれば、通路は、密閉空間から不純物を除去するためのパージ入口およびパージ出口を備える。
[19]可能な一実施形態によれば、パージ出口は、弁の作動の際の内部加圧を軽減するために、残りの通路ポートよりも幅広である。
【0016】
[20]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、薄い連結要素によって相互接続された別個の弁座を備える。
[21]可能な一実施形態によれば、チャネルは、V形状またはU形状の横断面を有する。
【0017】
[22]可能な一実施形態によれば、クロマトグラフィ弁は、少なくとも1つのカートリッジおよび/またはチャネルを加熱してその中を循環する流体を気化させるように構成された1つまたは複数の加熱要素をさらに含む。
【0018】
[23]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、サンプル採取カートリッジを含み、サンプル採取カートリッジのチャネルは、サンプル採取空洞を含む。
[24]可能な一実施形態によれば、サンプル採取カートリッジは、上記空洞を通って循環する流体の粒子を捕捉するためにサンプル採取空洞内に設けられた濃縮器を備える。
【0019】
[25]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、円弧形状とされる。
[26]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、複数のカートリッジを含み、第2のボディの少なくとも1つのカートリッジ受容空洞は、複数のカートリッジのうちの対応するカートリッジを受容するための複数のカートリッジ受容空洞を含む。
【0020】
[27]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、単一カートリッジを含み、少なくとも1つのカートリッジ受容空洞は、単一カートリッジを受容するための単一カートリッジ受容空洞を含む。
【0021】
[28]可能な一実施形態によれば、単一カートリッジは、複数のチャネルを備える。
[29]可能な一実施形態によれば、チャネルのうちの1つまたは複数は、選択されたサンプルループとしてチャネルが使用されることを可能にするための異なる体積のものである。
【0022】
[30]可能な一実施形態によれば、クロマトグラフィ弁は、カートリッジを第1のボディに向かって押すために少なくとも1つのカートリッジの下に設けられた付勢デバイスを含む。
【0023】
[31]可能な一実施形態によれば、付勢デバイスは、1つまたは複数のばねおよび/もしくは弾性高分子パッドを含む。
[32]可能な一実施形態によれば、付勢デバイスは、少なくとも1つのカートリッジを第1のボディに向かって押すための複数の弾性部分を有する単一弾性高分子パッドを含み、弾性パッドの各弾性部分は、それぞれの弾性を有する。
【0024】
[33]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジ受容空洞のそれぞれは、付勢デバイスを個々に備える。
[34]可能な一実施形態によれば、第2のボディは、隣り合うチャネル間で径方向に延在するパージチャネルを備える。
【0025】
[35]可能な一実施形態によれば、少なくとも1つのカートリッジは、隣り合うチャネル間で径方向に延在するパージチャネルを備える。
[36]可能な一実施形態によれば、第1のボディは、第2のボディの内側セクションと外側セクションとの間の流体連通を可能にするために、平坦面上に画定されかつパージチャネルに面する、複数のパージポケットを備える。
【0026】
[37]可能な一実施形態によれば、単一のチャネルが、第1のボディの通路のうちの選択された通路を通して循環される選択された流体の流体解析を可能にするために、所定のタイミングで第1のボディの通路と流体連通する。
【0027】
[38]可能な一実施形態によれば、クロマトグラフィ弁は、第1のボディおよび第2のボディを互いに押し付けるように適合された押付け組立体を含む。
[39]可能な一実施形態によれば、押付け組立体は、第1のボディと第2のボディとを互いに押し付けるために、円板ばねおよび皿ワッシャ(Belleville washer)のうちの少なくとも一方を備える。
【0028】
[40]可能な一実施形態によれば、クロマトグラフィ弁は、押付け組立体によって印加される密閉力を変化させるための圧力調節手段を含む。
[41]可能な一実施形態によれば、クロマトグラフィ弁は、第1のボディおよび第2のボディのうちの一方を2つ以上の位置の間で移動させるための作動組立体を含む。
【0029】
[42]可能な一実施形態によれば、弁は、線形スライド弁であり、作動組立体は、対応するボディを他方のボディに対して直線的に移動させるために第1のボディおよび第2のボディのうちの一方に動作可能に接続される空気式アクチュエータを備える。
【0030】
[43]可能な一実施形態によれば、空気式アクチュエータは、第2のボディの各側上に設けられたカムの対によって圧縮される圧縮ばねを備え、カムは、カム接続部を介して第2のボディに動作可能に接続される。
【0031】
[44]可能な一実施形態によれば、スライド弁は、回転スライド弁であり、第2のボディは、ディスクプレート、およびディスクプレートから延在する回転子アームを備え、少なくとも1つのカートリッジ受容空洞は、ディスクプレート内に画定される。
【0032】
[45]可能な一実施形態によれば、第2のボディは、ディスクプレート受容空洞を備え、ディスクプレートは、ディスクプレート受容空洞内に取外し可能に接続される。
[46]可能な一実施形態によれば、作動組立体は、ディスクプレートを第1のボディに対して回転自在に摺動させるために、第2のボディに動作可能に接続された回転組立体を備える。
【0033】
[47]可能な一実施形態によれば、回転組立体は、上記回転子アームを第1のボディに対して回転させるために、回転子アームに動作可能に接続されたレバーアームを備える。
[48]第2の態様によれば、流体解析およびクロマトグラフィ用途で使用するためのクロマトグラフィ弁が提供される。弁は、平坦面を有しかつ通路が貫通している静止ボディを含み、各通路は、外側端部では細管に接続可能であり、また内側端部では上記平坦面に開口している静止ポートで終端する。弁はまた、静止ボディと密閉関係で係合されるスライドボディを含み、スライドボディは、静止ボディの通路間の流体循環を制御するために、2つ以上の位置の間で静止ボディに対して摺動可能である。スライドボディは、スライドポートの対を含むスライド面と、スライドボディ内に延在するチャネルと、を含み、各チャネルは、対応するスライドポートの対を接続し、各対のスライドポートは、静止ボディの上記静止ポートのうちの2つに面する。スライドポートは、スライド面から突出する環状リップによって取り囲まれ、環状リップは、静止ボディの平坦面に接触しかつ平坦面に押し付けられ、それにより、スライドプレートを静止ボディに対して移動させることが、スライドボディ内のチャネルを介して静止ボディの通路のうちの選択された通路に流体を通すことを可能にする。
【0034】
[49]第3の態様によれば、流体解析およびクロマトグラフィ用途で使用するためのクロマトグラフィ弁を動作させる方法が提供される。方法は、可動組立体を第1の位置に摺動自在に移動させて、複数のチャネルとそれぞれの通路ポートとを位置合わせし、それによりそれらの間の流体連通を確立するステップと、サンプル流体を第1の通路ポート内に注入して、少なくとも1つのチャネルを通って循環するサンプル流路を画定するステップと、可動組立体を中間位置に摺動自在に移動させて、少なくとも1つのチャネルとの間の流体連通を中断し、それによりチャネル内の所定量のサンプル流体を分離するステップと、第2の通路ポート内にキャリヤ流体を注入して、キャリヤ流路を画定するステップであって、キャリヤ流路が弁出口に接続される、ステップと、可動組立体を中間位置から第2の位置へ摺動自在に移動させ、少なくとも1つのチャネルと第2の通路ポートとを位置合わせして、キャリヤ流体が所定量のサンプル流体を弁出口に向かって運ぶことを可能にするステップと、を含む。
【0035】
[50]可能な一実施形態によれば、チャネルは、可動組立体内に取外し可能に挿入される少なくとも1つのカートリッジ内に画定される。
[51]可能な一実施形態によれば、方法は、対応するチャネル内で循環されるサンプル流体を気化させるために、可動組立体を第2の位置に摺動自在に移動させるのに先立ってカートリッジを加熱するステップをさらに含む。
【0036】
[52]可能な一実施形態によれば、方法は、可動組立体の線形位置または角度位置を検出するステップと、可動組立体の検出された位置に応じて可動組立体に印加される密閉圧力を調節するステップと、をさらに含む。
【0037】
[53]可能な一実施形態によれば、密閉圧力は、可動組立体を摺動自在に移動させるのに先立って減少され、また、密閉圧力は、可動組立体が第1の位置または第2の位置にあるときに増大される。
【0038】
[54]可能な一実施形態によれば、密閉圧力は、弁の動作温度に基づいて設定される。
[55]可能な一実施形態によれば、チャネルのうちの1つまたは複数は、内部サンプル採取ループとして使用される。
【0039】
[56]可能な一実施形態によれば、方法は、必要とされるサンプル採取ループの体積に応じて少なくとも1つのカートリッジを選択するステップをさらに含み、サンプル採取ループの体積は、対応するチャネルの体積に相当する。
【0040】
[57]可能な一実施形態によれば、チャネルのうちの1つまたは複数は、円形のカートリッジポートを含み、また、チャネルのうちの1つまたは複数は、楕円形のカートリッジポートを含み、それによって中間位置において流体連通が中断されないようになっている。
【0041】
[58]可能な一実施形態によれば、方法は、少なくとも1つのチャネルを通って循環するサンプル流体を濃縮するステップをさらに含む。
[59]可能な一実施形態によれば、サンプル流体は、少なくとも1つのチャネルに沿って設けられた空洞内に配置された濃縮器を使用して濃縮される。
【0042】
[60]本発明の利点の他の特徴は、添付の図面を参照しながら本発明の例示的な実施を読めば、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】[61]可能な一実施形態によるクロマトグラフィ弁の上面斜視分解組立図(top perspective and exploded view)である。
【
図1B】[62]
図1Aのクロマトグラフィ弁の底面斜視分解組立図(bottom perspective and exploded view)である。
【
図2】[63]エンクロージャが取り外された、
図1Aの弁の上面図である。
【
図3】[64]第2のボディ内に設けられたチャネルと流体連通している通路の対を示す、線3-3に沿った
図2の弁の断面図である。
【
図4】[65]チャネルが通路の異なる対と流体連通する第2の位置にある第2のボディを示す、
図2の弁の断面図である。
【
図5】[66]一実施形態による、
図1Aの弁のカートリッジの斜視図である。
【
図5A】[67]一実施形態による、カートリッジの頂面の両側上のポートの対を示す、
図5のカートリッジの上面図である。
【
図5B】[68]一実施形態による、カートリッジ内で対のポート間に延在するチャネルを示す、線5B-5Bに沿った
図5Aのカートリッジの断面図である。
【
図6】[69]別の可能な実施形態によるクロマトグラフィ弁の側面斜視図である。
【
図7】[70]弁の様々な構成要素を示す、
図6のクロマトグラフィ弁の斜視分解組立図である。
【
図8】[71]一実施形態による、静止ボディの平坦面上に画定された静止ポートを示す、
図6の弁の静止ボディの底面斜視図である。
【
図9】[72]
図8に示されたボディの断面図である。
【
図10】[73]カートリッジの下方に設けられた付勢デバイスを示す、一実施形態による
図6の弁の可動組立体の上面斜視図である。
【
図11】カートリッジの下方に設けられた付勢デバイスを示す、一実施形態による
図6の弁の可動組立体の上面斜視図である。
【
図12】[74]可能な一実施形態による、
図6の弁で使用するためのカートリッジの側面斜視図である。
【
図12A】[75]一実施形態によるカートリッジの上面に開口しているカートリッジポートを示す、
図12のカートリッジの上面図である。
【
図12B】[76]カートリッジ内に延在しかつカートリッジポートを接続するチャネルを示す、線12B-12Bに沿った
図12Aのカートリッジの断面図である。
【
図13A】[77]取外し可能なディスクプレートおよび上記ディスクプレートの下方に設けられた単一の付勢デバイスを示す、可動組立体の可能な実施形態の上面斜視図である。
【
図13B】取外し可能なディスクプレートおよび上記ディスクプレートの下方に設けられた単一の付勢デバイスを示す、可動組立体の可能な実施形態の上面斜視図である。
【
図14】[78]カートリッジの上面上に設けられたチャネルを含む、別の実施形態によるカートリッジの斜視図である。
【
図15】[79]ディスクプレート内に挿入可能な
図14のカートリッジを示す、一実施形態による可動組立体の上面斜視図である。
【
図16】[80]付勢デバイスの上方に設けられた単一カートリッジを示す、可動組立体の別の可能な実施形態の上面斜視部分分解組立図(top perspective and partially exploded view)である。
【
図17】[81]一実施形態による、カートリッジの上面上に画定されたチャネルを示す、
図16に示された単一の取外し可能なカートリッジの斜視図である。
【
図18】[82]
図16の可動組立体で使用するための単一カートリッジの別の実施形態の斜視図である。
【
図19A】[83]エンクロージャ内に配置されかつ第1の位置に位置決めされた可動組立体を示す、
図16の可動組立体の上面図である。
【
図20】[84]可動組立体と静止ボディとの間に画定された密閉空間を示す、一実施形態による回転弁の上面斜視分解組立図である。
【
図21】[85]一実施形態による、静止ボディの平坦面に画定されたパージポケットを示す、
図20の回転弁の底面斜視分解組立図である。
【
図22】[86]弓形カートリッジの対、および線形サンプル採取カートリッジを示す、可動組立体の別の可能な実施形態の斜視図である。
【
図23A】[87]「サンプル採取モード」で使用されるように位置決めされた可動組立体を示す、
図22の可動組立体の図である。
【
図23B】「気化モード」での使用のために位置決めされた可動組立体を示す、
図22の可動組立体の図である。
【
図23C】「注入モード」での使用のために位置決めされた可動組立体を示す、
図22の可動組立体の図である。
【
図24A】[88]カートリッジのサンプル採取空洞内に位置決め可能な濃縮器を示す、
図22の可動組立体で使用するための可能な一実施形態によるサンプル採取カートリッジの上面斜視図である。
【
図24B】カートリッジのサンプル採取空洞内に位置決め可能な濃縮器を示す、
図22の可動組立体で使用するための可能な一実施形態によるサンプル採取カートリッジの底面斜視図である。
【
図25】[89]カートリッジの上面上に画定された単一の凹部を示す、カートリッジの別の実施形態の斜視図である。
【
図26】
図25のカートリッジを備える可動組立体の斜視図である。
【
図27】[90]第1のボディに接続された作動組立体を示す、
図1の弁の代替実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[91]本発明は例示的な実施形態に関連して説明されるが、本発明の範囲をそのような実施形態に限定することは意図されていないことが、理解されるであろう。むしろ、本明細書において定義されるような全ての代替形態、修正、および均等物をカバーすることが、意図されている。
【0045】
[92]以下の説明において、図面の同様の特徴には、同様の参照番号が与えられている。図面の明瞭さを保つために、いくつかの参照番号は、先行する図においてそれらがすでに確認されている場合、省略されている。
【0046】
[93]以下で説明される実施態様は、単に例として挙げられたものであり、その様々な特質および特殊性は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。「頂部(top)」、「底部(bottom)」などのような位置に関する記述は、別段の指示がない限り、図に照らして解釈されるべきであって、限定するものと見なされるべきではない。
【0047】
[94]本発明は、弁に関し、より具体的には、クロマトグラフィ弁、およびその関連する動作方法に関する。本発明によるクロマトグラフィ弁は、「スライド弁」とも呼ばれ得る。「スライド弁」により、線形スライド弁および回転スライド弁の両方を包含することが意図されている。本クロマトグラフィ弁は多くの改善点を含み、そのそれぞれが、互いに独立してまたは組み合わさって、弁において実施され得る。例えば、弁は、取外し可能なカートリッジ、またはインサートを含むことができ、そのそれぞれは、カートリッジ内に延在するチャネルによって接続された少なくとも2つのポートを含むことができる。ポートは、弁の静止構成要素と可動構成要素との間の接触面積を減少させるために、ポートの末端における開口部の周りに突出する環状のリップまたは隆起部を備えることができる。可能な実施形態では、本発明の弁は、カートリッジを伴わずに、「標準」プレート上の環状リップを含むことができる。弁の他の実施形態は、環状リップを伴わずに、取外し可能なカートリッジを含むこともできる。本発明は、弁の可能な実施形態に関する説明により、より良く理解されるであろう。以下で説明される弁の様々な実施形態は、線形スライド弁、および回転スライド弁であるが、他のタイプの摺動弁/可動弁も可能であることが、理解される。
【0048】
[95]
図1Aから5Bを参照すると、弁10の第1の可能な実施形態が提供される。この場合、クロマトグラフィ弁10は、線形スライド弁である。
図1Aに最も良く示されるように、弁10は、第1のボディ100、第2のボディ200、カートリッジ(またはインサート)300、作動組立体400、および、押付け/密閉組立体500を含む。使用に際して、第1のボディ100は、第2のボディ200と密閉関係で係合され、それにより、第1のボディおよび第2のボディは、押付け組立体500によって互いに押し付けられる。エンクロージャ600が、様々な弁構成要素を取り囲んで保護する。
【0049】
[96]次に、
図1Aおよび1Bに加えて
図2から4を参照すると、第1のボディ100は、好ましくは平坦である内側面102を含む。第1のボディの内側面102は、第2のボディ200と相互作用または協働する。本実施形態では、第1のボディ100は、単一のプレート122で作られるが、複数の構成要素/部品で第1のボディを製造することが可能である。
【0050】
[97]
図3および4に見られるように、通路104が、第1のボディ100内に設けられる。各通路104は、管52を受容することができ、管52は、ねじ付きナット54および口輪56により、所定の位置に維持され得る。通路104は、通路ポート110(
図1B)として第1のボディ100の平坦面102上で終端する。
図1Aから5Bの示された実施形態では、弁10は、3対の通路ポート110で終わるサンプル通路および/またはキャリヤ通路として使用可能な6つの通路と、パージ流体を循環させるためのパージ通路として使用される2つの通路の、8つの通路を含む。2つのパージ通路は、パージ入口118、およびパージ出口120(
図1Bで確認される)をそれぞれ含む。本実施形態では、第1のボディ100は、実質的に静止するもの(すなわち、静止ボディ)であるが、第2のボディは、可動/摺動可能組立体200である。
【0051】
[98]しかし、代替実施形態では、第1のボディ100は可動であってもよく、一方で第2のボディ200は実質的に静止するものであってもよいことが、理解される。例えば、
図27は、線形スライド弁10の代替実施形態を示す。この実施形態では、作動組立体400は、第1のボディ100に動作可能に接続され、第2のボディ200は、エンクロージャ600に固定して接続される。したがって、通路104は、第2のボディ200内に設けられたカートリッジ300に対して移動されることが、理解される。さらに、密閉組立体500は、第1のボディ100の両側に設けられかつ下方向の力を提供するように構成された空気式アクチュエータ520を含み、それにより、必要な場合に第1のボディ100を第2のボディ200に押し付ける。いくつかの実施形態では、密閉組立体500は、弁が動作位置にあるときにのみ下方向の圧力を印加するように、また、作動組立体400を介して第1のボディ100を摺動させるときに印加される圧力を軽減するように、構成され得る。
【0052】
[99]可動組立体200は、通路104間での流体循環を制御するために2つ以上の位置の間で静止ボディ100に対して摺動または移動する組立体であることが、理解されるべきである。
図1から5Bに戻り参照すると、弁10は、直線スライド弁(rectilinear slide valve)であり、したがって、可動組立体200は、静止ボディ100に対して直線的に平行移動する。さらに、この実施形態では、可動組立体200は、可動ボディまたはプレート206、ならびにカートリッジ300を収容する形状およびサイズとされたカートリッジ受容空洞202を含む、いくつかの構成要素/部品を備える。本実施形態では、カートリッジ300は、1つまたは複数のチャネル306を含み、チャネル306のそれぞれは、
図5から5Bに見られるように、対のカートリッジポート302を流体的に接続する。さらに、静止ボディ100に対する可動組立体200の位置に応じて、静止ポート110の異なる対が、カートリッジポート302および対応するチャネル306を介して相互接続される(すなわち、互いに流体連結される)。しかし、他の実施形態では、あまり実際的ではないが、カートリッジ受容空洞202を含まずに、したがって対応するカートリッジ300を含まずに、単一の部品/構成要素として可動組立体200を形成することが可能である。上記の代替実施形態では、チャネル306は、可動プレート206内に直接形成される。
【0053】
[100]
図3を参照すると、第2のボディ200が、第1の可能な位置で示されており、
図4では、第2の可能な位置で示されている。第1の位置では、第1の静止ポート110aが、その下に位置合わせされたカートリッジ300のチャネル306を介して、第2の静止ポート110bに流体的に接続される。第2の位置では、可動組立体200が(図に関して)右側に向かって移動されると、静止ポート110bおよび110cが、上記チャネル306を介して流体的に接続されることになる。他のチャネル306は、第1の位置および/または第2の位置において静止ポートのうちの選択された静止ポート間の流体連通を確立するように位置決めされかつ構成されることが、留意されるべきである。この実施形態では、可動組立体は、4つのカートリッジ300を収容するように適合されているが、可動組立体はより多くのカートリッジ300を含み得ることが、理解される。以下でより詳細に説明されるように、可動組立体は、第1の位置と第2の位置の間などの中間位置に移動され得ることも、理解される。
【0054】
[101]次に、
図1Aに加えて
図5から5Bを参照すると、カートリッジの可能な実施形態が示されている。カートリッジ300は、静止ボディ100の平坦面102に面するように設計されかつ構成された前面308、および後面318(または座面)を備える。この事例では、カートリッジは、矩形角柱として成形されるが、当然ながら、他の形状も可能である。カートリッジ300は、チャネル306が穿孔されしたがってV形状に形成された、単一部品として機械加工されたブロックとして提供されてもよい。あるいは、カートリッジは、3D印刷によって形成されてもよく、この場合、チャネルは、U形状をとることができるが、他の可能な形状もとることができる。
【0055】
[102]可動組立体内に1つまたは複数の取外し可能/交換可能なカートリッジ300を含むことは、多くの利点を提供する。例えば、解析すべき流体に応じて、カートリッジの材料は、流体との化学的適合性に従って選択され得る。鋼鉄またはアルミニウムなどの、より頑丈かつより安価な材料が、可動プレート206のために選択されてもよく、また、セラミック、PEEK、Vespel、Teflon、または任意の他の適切な材料などの別の材料が、カートリッジのために使用されてもよい。さらに、様々なカートリッジが、様々な体積を有するチャネルを備えてもよい。小サンプル量の用途では、カートリッジチャネルは、サンプルループとして使用され得る。そのような場合、可動組立体内に挿入されるカートリッジは、必要とされるカートリッジチャネル306の体積に基づいて選択され得る。したがって、カートリッジチャネルの体積は、カートリッジによって異なり得る。取外し可能なカートリッジの使用によって提供されるさらに別の利点は、弁内で循環されるサンプル流体がカートリッジチャネルを通過するときに気化するように、弁を作動させるのに先立ってカートリッジを加熱することができることである。
【0056】
[103]
図5から5Bに示されるように、ポート302は、カートリッジの前面308から突出または延在する、環状のリップまたは隆起部310によって取り囲まれる。使用に際して、環状リップ310は、弁100が動作位置にあるときに、静止ボディ100の平坦面102に、より具体的には静止ポート110の周りの環状領域に接触して、それを圧迫する。弁が取外し可能なカートリッジを含まず、また、可動組立体が単一の摺動プレートで作られ、それによりポートおよびチャネルが可動プレート内に形成される弁の実施形態では、環状リップはまた、摺動プレート上に直接形成されて、ポート302を取り囲むはずである。
【0057】
[104]なおも
図5から5Bを参照すると、環状リップ310は、テーパ付けされた内側側面311および外側側面312、ならびに頂端314または頂上を有することが好ましい。環状リップの頂端は、動作位置にあるときに、静止ボディの平坦面102と接触し、より正確には、静止ポートの周りの環状領域と接触する。場合により、環状リップ310は、密閉状態を向上させかつ/または可動部品の摩耗を減少させるために、被覆を備え得る。そのような実施形態では、被覆は好ましくは不活性であることが、留意されるべきである。
【0058】
[105]流体解析およびクロマトグラフィ用途において、従来のスライド弁は、経時的な摩耗および劣化を被る(ダイヤフラムなどの)柔軟な変形しやすい構成要素を含まないという点で、ダイヤフラム弁よりも有利であり得る。ダイヤフラム弁では、プランジャが繰り返しダイヤフラムを圧迫しかつダイヤフラムから後退してポートを閉開させるが、そのような繰り返しの衝突が、ダイヤフラムを弁において最も損傷を受けやすい部品の1つにする。さらに、ダイヤフラムは、柔軟であるが衝撃に抵抗性がありかつ解析される流体と化学的に適合する材料で作られなければならない。従来のスライド弁は、これらの欠点に悩まされないが、それらの主要構成要素のうちの2つは適切な密閉を確実とするために互いに圧迫される平坦なプレートであるという事実により、漏れおよびアウトバウンド汚染(outbound contaminant)をより起こしやすい。実際には、極めて平坦な面を大きな/広大な面積で製造することは、難しい。静止プレートおよび可動プレートの界面における変形は、極めて小さいが、連通するチャネルの適切な密閉に影響を及ぼし得る。これは、解析されるガスが小サイズの原子または分子を含む用途に、特に当てはまる。
【0059】
[106]摺動プレートおよび静止プレートの界面において弁のポート302の周りに設けられた環状リップ310は、弁の静止ボディに押し付けられる表面領域が、摺動構成要素の内側表面全体からなるのではなく、これらのリップに限定されるので、この欠点を大いに緩和する。さらに、カートリッジが使用される実施形態の場合、インサートを静止ボディに向かって付勢するかまたは押すために、付勢デバイスまたは弾性デバイスが、カートリッジの下に配置され得る。この場合、カートリッジおよび/または環状リップのいかなる高さのばらつきも、付勢デバイスによって補償または相殺される。さらに別の可能な実施形態によれば、インサートの後面318は、カートリッジ受容空洞内に適切に収められるように、屈曲点もしくは凸形状を有して形成されるかまたは備えてもよい。
【0060】
[107]
図1Aおよび1Bを再度参照すると、シール116または密閉リングが、静止ボディ100と可動組立体200との間に設けられる。シール116は、静止ボディの静止ポート110、および可動組立体200内に収容されたカートリッジ300を取り囲んで、静止ボディ100と可動組立体200との間に密閉空間またはチャンバ20を作り出す。静止ボディ100および/または可動組立体200は、密閉リング116を受容するためのシール溝114(
図1Bで確認される)を備えることが、好ましい。シールは、ゴムで、または合成高分子で作られ得る。
図1Bに最も良く示されるように、静止ボディの通路104は、上記密閉空間またはチャンバ20に開口するパージ入口118およびパージ出口120を含む。したがって、パージ流体が、チャンバ20内に存在し得るいかなる不純物をも収集しかつ除去するために、チャンバ20内でパージ入口からパージ出口へ循環され得る。場合により、パージ出口120は、弁を作動させたときの内部加圧を軽減するために、残りの静止ポートよりも幅広であってもよい。
【0061】
[108]
図1Aから4を参照すると、弁10は、可動組立体200を2つ以上の位置の間で摺動させるための作動組立体400を含む。
図1Aから4に示された弁のこの特定の実施形態では、弁10は、線形スライド弁であり、作動組立体400は、可動組立体200に動作可能に接続されるカートリッジ402を備える。カートリッジ402は、可動組立体200を静止ボディ100に対して直線的に摺動または平行移動させることができる。示されるように、1つの特定の実施形態によれば、カートリッジ402は、可動組立体200の両側に設けられたカム406の対によって圧縮されるばね404を含み得る。カム406は、スライドプレート206に固着されるブロックで構成され得るカム接続部410を介して、可動組立体に動作可能に接続され、カム接続部410は、カム406の端部を受け入れるための凹部を有する。カム連結要素、またはブラケット414が、カム406の向かい合った端部を接続し、かつ、リニアモータなどの線形アクチュエータに動作可能に接続されてよく、線形アクチュエータは、動作中、ばね404を圧縮するかまたは復元させ、したがって、可動組立体200を第1の動作位置と第2の動作位置との間で前後に移動させる。本実施形態では、線形スライド弁は、2つの位置の間で移動可能であるが、弁の他の実施形態は、回転弁に関する記述とともにより詳細に説明されるように、例えば中間位置を含む3つ以上の位置の間での変位を可能にし得る。
【0062】
[109]次に、
図1Aおよび1Bをさらによく参照すると、静止ボディ100および可動組立体200を接続しかつ保持するための手段が提供される。押付け組立体500が、静止ボディ100、この事例ではプレート122と、スライドボディ/プレート206(「引出し」とも呼ばれる)を含む可動組立体200とを保持しかつ互いに押し付ける。この例では、押付け組立体500は、肩付きねじ508を含み、肩付きねじ508は、スライドプレート206にある長円形の/細長い開口部に通されて、固定プレート122にあるナット/ばね受容空洞内に提供されるナットおよび円板ばね502と協働する。押付け組立体500は、可動組立体200を静止ボディ100に押し付け、かつ、シール116をスライドプレート206の内側面に圧迫する。スライドプレート206にある長円形の/細長い開口部は、スライドプレートが直線的に平行移動されて、肩付きねじ508の周りにクリアランスを提供することを可能にする。示された例では、固定プレートおよびスライドプレートを「密閉」するために印加される圧力は、肩付きねじおよび円板ばねによって設定され、かつ、ねじを締めるまたは緩めることにより手動で調節され得る。しかし、他の可能な実施形態では、押付け組立体によって印加される密閉力を変動させるために、圧力調節手段を弁に提供することが可能である。さらになお、スライドプレートを様々な動作位置間で移動させるときに固定プレートおよびスライドプレートに印加される圧力を減少させ、また、動作位置のうちの1つにスライドプレートが位置決めされるときに圧力を増大または再印加することが、可能である。これは、摺動組立体と静止組立体との間の摩擦を減少させることを有利に可能にし、それにより、摩耗および不要な粒子生成が抑えられる。
【0063】
[110]次に
図6から26を参照すると、クロマトグラフィ弁10の可能な実施形態が示されており、ここでは、弁は、線形スライド弁ではなく、回転スライド弁10である。
図6から9を参照すると、この実施形態では、第1のボディ100は、実質的に円筒形状を有するカバーとして成形された、静止するまたは固定されたボディ100であり、通路104が、円に位置決めされ、かつ、静止ボディ100内に延在している。しかし、例えば完全な円の代わりに円弧に沿って位置決めされるなどの通路104の他の構成が可能であることが、理解される。各通路104は、例えばねじ付きナット54を使用して所定の位置に保持され得る細管に接続可能な外側端部と、静止ボディ100の内側平坦面102に開口する静止通路ポート110で終端する内側端部と、を有する。
【0064】
[111]本実施形態では、第2のボディは、エンクロージャ600内に収容されかつ静止ボディ100に密閉関係で係合する、可動組立体200(
図7)である。可動組立体200は、静止ボディ100を通って延在する通路104間での流体循環を制御するために、2つ以上の動作位置の間で静止ボディ100に対して回転することができる。
図7に加えて、
図10および11に見られるように、可動組立体200は、線形弁に関連して上記で説明されたようなスライドプレートの代わりに、ディスクプレート208などの回転可能なカートリッジ受容ボディ208を備える。回転可能なディスクプレート208は、場合により、カートリッジ300を受容/収容するための形状およびサイズとされたカートリッジ受容空洞202を含み得る。この実施形態では、ディスクプレート208は、3つのカートリッジ受容空洞202を例示的に含むが、他の構成(例えば、より多くのカートリッジ受容空洞202)が可能であることが、理解される。
【0065】
[112]この実施形態では、各カートリッジ300は、弁10が動作位置にあるときに静止ボディ100の通路104のうちの選択された通路104間の流体連通を確立するように適合される。いくつかの実施形態では、弁は、2つ以上の動作位置間で移動されることができ、各位置は、異なるカートリッジ300を異なる通路104と流体連通させる。この例では、静止ボディ100は、6つの静止ポート110(
図8)を含み、弁10は、可動組立体200内に提供された3つのカートリッジ300を含む。この実施形態では、カートリッジ300の形状およびサイズは、2つの隣接する通路104間の流体連通を確立するように構成されているが、他の構成が可能であることが理解されることが、留意されるべきである。例えば、隣接しない通路104が流体的に接続され得るように、2つ以上のカートリッジ300が、互いに(例えば、ディスクプレート208を通じて)連通するように適合され得る。
【0066】
[113]
図6および7に戻り参照すると、可動組立体200は、ディスクプレート208、およびディスクプレート208から延在する回転子アーム210を備える。ディスクプレート208および回転子アーム210は、単一の構成要素として作られてもよく、または、協働する2つ以上の別々の構成要素として作られてもよい。回転組立体450が、回転子アーム210と係合して回転子アーム210を回転させる少なくとも1つの構成要素を含む。この実施形態では、回転組立体450は、回転子アーム210に、したがってディスクプレート208にも動作可能に接続される、回転レバーアーム452を含む。したがって、回転レバーアーム452を作動させることにより、回転子アーム210およびディスクプレート208が効率的に回転されて、弁10が様々な動作位置に移動されることが、理解されるべきである。弁の回転する構成要素は、「回転子」と呼ばれ得る。
【0067】
[114]次に
図12から12Bを参照すると、各カートリッジ300は、流体がそこを通って流れることを可能にし、したがって弁10が動作位置にあるときに静止ボディ100の選択された通路104を流体的に接続するように適合された、チャネル306を備える。この実施形態では、チャネル306は、カートリッジ300のボディ内に延在し、かつ、チャネル306を通る流体の流れを可能にするために、その向かい合った端部にカートリッジポート302の対をさらに含む。より具体的には、カートリッジ300は、使用時に静止ボディの平坦面に面する前面/外側面308を含む。カートリッジポート302は、例示的に、静止ボディの静止ポートに面するように前面308に開口している。
【0068】
[115]動作位置にあるときに、カートリッジポート302は、チャネル306を介して通路104のうちの選択された通路に流体を通すために、弁10の位置に応じて(すなわち、可動組立体200の位置に応じて)静止ポート110のうちの2つに面する。本実施形態では、カートリッジ300は金属で作られ、したがって、チャネルは、カートリッジのボディ内に機械加工され得る。したがって、チャネル306は、
図12Bに見られるように、V形状の断面を有し得ることが、理解される。しかし、他の実施形態では、カートリッジは、金属または他の材料から3D印刷されてもよく、したがって、チャネルは、U形状または他の可能な形状などの異なる形状を取り得る。なおもさらに、薄い連結要素によって相互接続される2つの別個の弁座を連結することによりカートリッジを形成することが可能である。
【0069】
[116]
図12から12Bをなおも参照すると、各カートリッジポート302は、前面308から突出する環状の隆起部またはリップ310によって取り囲まれてよく、環状リップ310は、使用時には、静止ボディ100の平坦面102に接触してそれに押し付けられる。いくつかの実施形態では、ポート302を取り囲む環状リップ310は、頂端314において一緒になるテーパ付けされた内側側面311および/または外側側面312を有することができ、頂端は(例えば、動作位置のうちの1つに位置決めされたときに)、静止ボディの静止ポート110を取り囲む環状領域と密閉接触する。固定ボディ100と接触する環状リップの領域(例えば、頂端314)の摩擦および摩耗を軽減するために、突出する環状リップ310上に被覆も設けられ得る。各カートリッジ300はまた、前面308に対向する後面/座面318を含む。カートリッジの後面318は、カートリッジ300をそれぞれのカートリッジ受容空洞内に適切に収めるために、屈曲点320を備え得る。理解され得るように、カートリッジ300は、材料の適合性または必要とされる体積に応じて、交換可能でありかつ/または選択され得る。例えば、チャネル306は、約1.0μlから5.0μlの間の体積の流体を保持するための形状およびサイズとなされ得るが、他の体積が可能であることが、理解される。
【0070】
[117]
図10および11に戻り参照すると、環状リップ310が静止ボディ100の平坦面102に正しく押し付けられることを確実にするために、ばね(
図10)、弾性要素/パッド(
図11)などのような1つまたは複数の付勢部材316が、カートリッジ300の下に設けられて、カートリッジ300を静止ボディ100に向かって押すことができる。いくつかの実施形態では、各カートリッジ受容空洞202は、各カートリッジ300が静止ボディ100に向かって独立に上方に押されるように、付勢デバイス316をそれぞれ備え得る。しかし、他の構成が可能であることが、理解される。例えば、
図13Aおよび13Bを参照すると、ディスクプレート208は、可動組立体200のディスクプレート受容空洞209内に取外し可能に接続され得る。示された実施形態では、付勢デバイス316は、ディスクプレート208の下方でディスクプレート受容空洞209内に設けられる、単一の高分子/弾性パッドを含む。したがって、弾性パッド316は、ディスクプレート208に画定されたカートリッジ受容空洞202内に位置決めされたときのカートリッジ300の下方に事実上位置決めされる。
【0071】
[118]
図13Bに示された例示的な実施形態では、弾性パッド316は、カートリッジ300のうちの1つまたは複数を静止ボディ100に向かって押すように構成された複数の弾性部分316aを含む。より具体的には、弾性部分316aは、カートリッジ300を互いに独立にまた選択された力で上方に押すために、異なる弾性を有し得る。いくつかの実施形態では、弾性部分316aは、部分間の異なる弾性を可能にするために、異なる材料および/または厚さもしくは材料を含むが、他の構成が可能であることが、理解される。
【0072】
[119]次に
図14および15を参照すると、カートリッジ300の代替実施形態が示されている。この実施形態では、チャネル306は、カートリッジポートの対を含まずに、凹部307を含むかまたは凹部307として成形される。チャネル306は、カートリッジ300の前面308上に画定される。この実施形態では、環状リップ310は、凹部307の周りに突出して、凹部307の周囲を取り囲む。上記で説明されたように、環状リップ310は、弁10が動作位置にあるときに静止ポート110の周りで静止ボディ100の平坦面102に接触するように適合される。この実施形態では、環状リップ310は、平坦面102に接触しかつ流体が凹部307から漏出するのを防ぐためのシールを作り出すための、実質的に平坦な頂面315を含む。しかし、上記で説明されたような、頂端314を備えた環状リップ310を有する構成などの他の構成が可能であることが、理解される。凹部307は、環状リップ310が静止ボディ100と接触しているときに静止ポート110のうちの2つを取り囲み、それによりチャネル306を介した(すなわち、凹部307を介した)静止ポート110間の流体連通を可能とするような形状およびサイズとされる。先の実施形態と同様に、凹部307は、必要とされる体積に応じて約1.0μlから5.0μlなどの予め選択された体積の流体を保持するように構成され得るが、他の体積が可能であることが、理解される。
図15に見られるように、異なる体積の凹部307を有するカートリッジ300が同じディスクプレート208内で使用され得ることが、理解される。
【0073】
[120]次に
図16から18を参照すると、可動組立体200は、単一カートリッジ300’を受容するように適合された単一カートリッジ受容空洞202を含み得る。この実施形態では、単一カートリッジ300’は、通路104のうちの選択された通路104間の流体連通を確立するように適合された複数のチャネル306を含む。示されたチャネル306は、カートリッジ300’の前面308上に画定された凹部307をそれぞれ含む。この実施形態では、各凹部307は、所与の凹部307と静止ボディ100の2つの離接する静止ポート/通路との間の流体連通を可能にするために、カートリッジ300’の周囲の一部分に沿って延在する。示されていないが、単一カートリッジ300’のチャネル306は、凹部307の代わりにカートリッジポート302を含み得ることが、理解されるべきである。さらに、単一カートリッジ300’は、任意の適切な数のチャネル306/凹部307を含むことができる。例えば、
図17の単一カートリッジ300’は、3つの凹部307を有し、したがって、6つの静止ポートを有する静止ボディと協働するように適合されている。あるいは、
図18の単一カートリッジ300’は、5つの凹部307を有し、したがって、10個の静止ポートを有する静止ボディと協働するように適合されている。
【0074】
[121]単一カートリッジ300’内に画定された複数の凹部307を有することは、実質的に平らな環状リップ310(例えば、同じ高さを有するリップ)を製造することを容易にし得ることが、理解されるべきである。より詳細には、各凹部307は、各凹部307にわたって水平な頂面315を画定し、それにより環状リップ310を静止ボディ100の平坦面102に押し付けることによって作り出される密閉状態を向上させるために、実質的に同時に機械加工され得る。
【0075】
[122]先の実施形態と同様に、また、
図19Aおよび19Bに見られるように、単一カートリッジ300’を有する弁10を作動させることは、静止ボディ100の静止ポート110a~110f(概略的に示される)のうちの選択された静止ポート間の流体連通を確立するための様々な動作位置の間で可動組立体200を効率的に移動させる。例えば、
図19Aに見られる第1の動作位置では、静止ポート110aは、第1の凹部307aを介して静止ポート110bに接続され、静止ポート110cは、第2の凹部307bを介して静止ポート110dに接続され、静止ポート110eは、第3の凹部307cを介して静止ポート110fに接続される。
図19Bに見られるように、可動組立体が回転されて、弁が第2の動作位置にあると、第1の凹部307aは、今や静止ポート110bおよび110cを接続し、第2の凹部307bは、静止ポート110dおよび110eを接続し、第3の凹部307cは、静止ポート110aおよび110fを接続する。示された実施形態は例示的なものであること、および、単一カートリッジ300’を使用する弁10の他の構成が可能であることが、理解されるべきである。
【0076】
[123]いくつかの実施形態では、回転弁は、カートリッジを含まず、すなわち、チャネル306(例えば、ポート302および/または凹部307)は、ディスクプレート208内に直接形成され、また、環状リップ310は、上記チャネル306を取り囲み、したがって、やはりディスクプレート上に直接形成される。
【0077】
[124]
図7に戻り参照すると、弁は、密閉リング116を含み、密閉リング116は、静止ボディ100とディスクプレート208との界面において開口する静止ポート110およびカートリッジ300を取り囲み、それにより、それらの間に密閉空間20を作り出す。静止ボディ100およびディスクプレート208が互いに押し付けられるので、密閉空間20は非常に小さいが、なおも所与の量の空気が2つの表面間に存在し、その所与の量の空気は、出て行くまたは入って来る汚染物質および不純物によって汚染されるには十分である。この空間または体積を密閉することにより、この空間内に存在し得るいかなる不純物をも収集して除去するために、パージ流体が循環され得る。本実施形態では、固定エンクロージャ600は、密閉リング116(例えば、ゴムおよび/または高分子のOリング)が入れ子にされるシール溝114を備える。あまり実際的ではないが、固定ボディ100にまたはディスクプレート208に溝を設けることが可能である。さらに、静止ボディ100内に設けられる通路104は、パージ流体を使用してパージ流を作り出すことにより密閉空間20から不純物を排出するために、パージ入口118およびパージ出口120を含む。
【0078】
[125]さらに、また
図17および18に見られるように、単一カートリッジ300’は、隣り合うチャネル306(例えば、凹部307)間で径方向に延在するパージチャネル330を含み得る。本実施形態では、追加の環状リップ310が、パージチャネル330を取り囲み、かつ、隣り合う凹部307を取り囲む環状リップ310とリップ接続部332を介してさらに接続する。上記で説明されたように、パージ流体が、不純物を排除するために密閉空間20内で循環される。
図20および21に見られるように、静止ボディ100と可動組立体200との間に画定される密閉空間20は、単一カートリッジ300’上(または上方)に配置される内側セクション22(すなわち、環状リップ310およびリップ接続部332によって取り囲まれたセクション)と、単一カートリッジ300’の周りに配置される外側セクション24とを含み得る。したがって、パージチャネル330は、ディスクプレート208(およびカートリッジ300’)が静止ボディ100に押し付けられたときにパージ流体がパージ入口からパージ出口まで流れるのを可能とされるように、密閉空間20の内側セクション22と外側セクション24との間の流体連通を可能にするように適合される。
【0079】
[126]
図20および21をなおも参照すると、単一カートリッジ300’の全周を取り巻く環状リップ310の存在により、内側セクション22と外側セクション24との間の流体連通は、ディスクプレート208が静止ボディ100に押し付けられたときに妨げられ得る。密閉空間20のセクション間の流体連通を確実にするために、静止ボディ100は、パージチャネル330を通じた流体連通を促進するように適合されたパージポケット130を備え得る。より具体的には、パージポケット130は、パージチャネル330のうちの1つの対応する端部の上方に位置決めされるように適合された、静止ボディの平坦面102内に画定された窪みである。
【0080】
[127]より具体的には、パージポケット130は、パージチャネル330の対応する端部と内側セクション22および外側セクション24のうちの一方との間の流体連通を可能にするように成形されかつ構成される。したがって、外側セクション24(パージ入口118が配置される)から内側セクション22(パージ出口120が配置される)に向かって、各パージチャネル330に沿ってパージ流が画定される。したがって、所与の凹部307から漏出するいかなる流体も、対応するパージチャネル330のパージ流がいかなる粒子をもパージ出口に向かって引きずるので、隣接する凹部307に入ることができないことが、理解されるであろう。
図21に見られるように、パージポケット130の数は、パージ流体が実質的に連続的に(例えば、中間位置においてさえ)流れることを可能とされるように、弁10の動作位置の数を上回ってよい。
【0081】
[128]線形弁と同様に、回転弁10の実施形態は、押付け組立体500を含む。
図7に見られるように、押付け組立体500は、可動組立体200を静止ボディ100に対して圧迫する/押すために、様々な部品を含む。例えば、押付け組立体500は、皿ワッシャ504を含むことができ、皿ワッシャ504は、用途に必要とされる圧力に応じて皿ワッシャ504を圧縮するまたは復元させるためにエンクロージャ600にねじ式係合される押付けナット516などの調節押付け手段により、圧縮される。押付けナットレバーアーム514が、押付けナット516をディスクプレート208に向かってまたはディスクプレート208から離れるように動かしてディスクプレート208に印加される圧力/力を調節するために、回転され得る。ころ軸受518もまた、皿ワッシャ504と押付けナット516との間に配置されて、エンクロージャ内に設けられ得る。代替実施形態では、ディスクプレート208が第1の動作位置から第2の動作位置に移動されるときに固定ボディ100に向かう可動組立体に印加される密閉圧力を減少させる自動圧力調節手段を設けること、および、静止ポート110がスライド/カートリッジポートに面する動作位置にあるときに印加される密閉圧力を増大させることが、可能である。可動組立体が2つの動作位置間で移動されているときでも、適切な密閉状態を維持するために、減少した負荷と完全な負荷との間の密閉中間圧力を印加することも可能である。また、弁の動作温度に応じて、可動組立体200を移動させることを可能にする作動力を調節することが、可能である。
【0082】
[129]次に
図22から23Cを参照すると、可動組立体200のさらに別の可能な実施形態が提供される。サンプルループとしてカートリッジチャネルが使用される用途の場合、弁は、ポートのうちのいくつかが2つのカートリッジポート302の間に面するまたは位置決めされる、中間位置(
図23B参照)に移動され得る。この場合、サンプルループの一部ではないカートリッジからのカートリッジポートは、楕円形状を有し、かつ/または、円弧形状に従う楕円形状の環状リップ310によって取り囲まれる。
図22に最も良く見られるように、木カートリッジのうちの2つは、円弧形状(300a、330b)を有するが、サンプルループとして使用される第3のカートリッジ(300c)(サンプル採取カートリッジと呼ばれ得る)は、実質的に矩形のまたは長円の形状を有する。それにより、中間位置にある弁を作動させることで、後続の流体注入を開始する前にサンプル採取カートリッジ内の流体を隔離しかつサンプル採取カートリッジ内の流体を気化することが、可能になる。
【0083】
[130]他のカートリッジからの楕円形状のポート(または、環状リップ310)は、中間位置におけるポート内の流れを維持することを可能にする。したがって、例えば長円形または矩形などの他の形状が、ポートおよび/または環状リップに適切であり得ることが、理解される。
図23A~23Cは、作動レバー452が0度、20度、および60度にそれぞれ位置決めされている弁を示し、中間位置は、
図23Bによって示された位置である。
図23Aおよび23Cでは、可動組立体は、静止ポートがカートリッジポートと流体連通するように位置決めされている。中間位置は、静止ポートのうちのいくつかがカートリッジポートの間に面する(すなわち、遮断される)ように可動組立体を動作位置の間に位置決めすることにより必要に応じてカートリッジを加熱することを可能にし得る。すると、動作中、加熱されるカートリッジのチャネル内を循環するサンプル流体は、チャネルの加熱された側壁の接点において気化するはずである。
【0084】
[131]サンプル採取カートリッジとして使用され得るカートリッジまたはインサートの可能な実施形態が、
図24Aおよび24Bに示される。理解され得るように、サンプル採取カートリッジ300は、環状リップ310を備えた第1および第2のカートリッジポート302の対を含む。しかし、この事例では、2つのポートを連結するカートリッジチャネル306は、サンプル採取容積またはサンプル採取チャンバを形成する、空洞325またはチャンバを含む。場合により、サンプル採取空洞325は、濃縮器326(または、極小予備濃縮器)を受容することができ、この濃縮器326は、その中を循環する流体を「捕捉」するために、多孔質材料で作られるか、または、多孔性、櫛様、もしくはメッシュ様の構成を有することが好ましい。触媒もまた、サンプル採取空洞325の側壁を被覆するために使用されるか、または濃縮器326に付加されてもよい。解析する流体に応じて、様々なタイプの材料が選択され得る。カートリッジ300は、組み立てられたときにカートリッジチャネル(例えば、サンプル採取空洞325)を形成して必要であれば濃縮器326を挿入することを可能にするように設計されたベース322およびボディまたはカートリッジハウス324の、2つの部品で作られ得る。ベースおよび/または濃縮器は、流体がサンプル採取カートリッジ内を循環しているときに気化されるように、加熱要素327を含むかまたは加熱要素327に接続されて、カートリッジ300、チャネル360、および/または予備濃縮器を加熱することを可能にし得る。例えば、加熱要素は、濃縮器および/またはベース322などのカートリッジのボディに組み入れられた抵抗線を含み得る。サンプル採取空洞325を密閉するために、カートリッジのベースとボディとの間にシールが配置され得る。場合により、サンプル採取カートリッジは、「Macor」の機械加工可能ガラスセラミックなどのセラミックで作られ得る。この場合、環状リップ310は、ゴムまたは高分子のOリングシールで作られ得る。
【0085】
[132]弁10の可能な実施形態は、サンプル採取モードや注入モードなどのより「慣例的な」モードを含む様々なモードで弁を動作させることが可能であるが、上記で説明されたように、カートリッジを加熱することによりサンプルを気化させることを可能にする「気化」モードである、第3の動作モードが可能である。
図23Aの例示的な実施形態では、弁は、サンプル採取モードにおいて位置決めされており、このモードでは、キャリヤガスは、第1のカートリッジ300a内に流され、次いでGCカラムへ流され、最終的に検出器へ流され、サンプルガスは、カートリッジ300bからカートリッジ300cへ循環される。このモードでは、濃縮器326を含むサンプル採取カートリッジ300cは、サンプル採取温度Tsにある。
【0086】
[133]
図23Bでは、回転子は、例えば20°回転されており、弁は、弁が「気化」モードで使用されることを可能にする中間位置に位置決めされている。キャリヤガスは、引き続き第1のカートリッジ300a内に流され、次いで検出器へ流されるが、この場合、サンプルガス注入は、停止され得るか、あるいは、カートリッジ300bから静止ボディと可動組立体との間の密閉空間20へ循環されてもよく、また、弁の外側へ排出されてもよい。この間、サンプル採取インサート300cは孤立され、かつ、サンプル採取温度よりも高い所定の温度Tv(または「気化温度」)で加熱されてもよく、この所定の温度Tvは、濃縮器326の解放温度にも相当し得る。
【0087】
[134]次いで、
図23Cに示されるように、弁は、弁を「注入モード」に配置する第2の位置に位置決めされ、この第2の位置では、サンプル採取インサート300cは、気化したサンプルガスをキャリヤガスが「収集」してGCカラムおよび検出器に向かって押すことができるように、今や検出器と直列して(または流体連通して)いる。
【0088】
[135]次に
図25および26を参照すると、単一カートリッジ300’は、単一のチャネル306を備えることができ、単一のチャネル306は、この実施形態では凹部307を含む。したがって、流体の単一の流れが単一のチャネル306を介していつでも弁を通って循環し得ることが、理解される。この実施形態では、静止ボディの通路は、様々な動作位置においてチャネル306が静止ボディの通路との流体連通を維持するように、実質的にその中心に配置されたサンプル弁出口を含む。したがって、単一のチャネル306は、静止ポートのうちの選択された静止ポートと弁出口との間の流体連通を確立し、一方で、残りの静止ポートは、遮断され、かつ/または、弁出口および/もしくは他の静止ポートとの間の連通を妨げられる。
【0089】
[136]理解され得るように、改良されたスライド弁は、いくつかの利点を提供する。改良されたスライド弁は、厳しい公差の中で大きな/広い領域が可能な限り平坦かつ一様に作られなければならないので製造するのが難しい既存のスライド弁の代替手段を提供する。ポートを取り囲む隆起した/突出する環状リップまたは隆起部の存在は、隆起したリップのみが固定ボディに接触することになるので、平坦かつ一様である必要がある領域を大幅に縮小させる。カートリッジの下の弾性手段の使用は、カートリッジが付勢されて固定ボディに向かって圧迫されるので、平坦さまたは一様さに関するいかなる問題をもさらに緩和する。上記の実施形態は、6ポート弁および10ポート弁に関連して説明されているが、弁は、例えば流体解析作業に有用な任意の適切な数のポートを含むことができることが、理解される。
【0090】
[137]リップ上にのみ与えられた被覆が、さらに摩擦を軽減しかつ/または摩耗への耐性を向上させ得る。さらに、交換可能な/取外し可能なカートリッジ/インサートを可動組立体に提供することは、弁における限られた構成要素のために-すなわち、サンプルまたはキャリヤガスと接触する構成要素のみに-適切な材料特性を選択することを可能にする。可動組立体の残りの部分は、より安くかつ/またはより丈夫な材料で作られ得る。取外し可能なカートリッジを提供することはまた、用途に応じて適切なチャネル体積を選択することを可能にし、また、解析のための流体に接触することになる弁の構成要素を熱選択することを可能にする。カートリッジはまた、必要であれば、サンプル濃縮器および/または加熱要素を受容することができる。上記で説明された実施形態のうちの1つの実施形態の特徴は、他の実施形態またはその代替案と組み合わせられ得ることが、理解される。
【0091】
[138]さらに、弁の実施形態およびその対応する部品は、本明細書において説明されかつ示された特定の幾何学的構成からなるが、そのような構成要素および幾何形状は、全てが絶対必要な訳ではなく、したがって、それらの限定的な意味にとられるべきではない。他の適切な構成要素およびそれらの間の協働、ならびに他の適切な幾何学的構成が、本明細書において簡単に説明されたように、また、当業者により本明細書から容易に推論され得るように、弁に対して使用され得ることが理解され、当業者にも明らかである。さらに、「~よりも上に(above)」、「~よりも下に(below)」、「左」、「右」などのような位置に関する記述は、別段の指示がない限り、図に照らして解釈されるべきであって、限定するものと見なされるべきではないことが、理解される。
【0092】
[139]いくつかの代替的な実施形態および例が、本明細書において説明されかつ示されてきた。上記で説明された本発明の実施形態は、単なる例示であることを意図されている。当業者は、個々の実施形態の特徴、ならびに構成要素の可能な組み合わせおよび変形を理解するであろう。当業者は、実施形態のいずれもが、本明細書において開示された他の実施形態との任意の組み合わせで提供され得ることを、さらに理解するであろう。本発明は他の仕様で具現化され得ることが、理解される。したがって、目下の例および実施形態は、あらゆる点で説明に役立つものであって制限的なものではないと見なされるべきであり、また、本発明は、本明細書において挙げられた詳細に限定されるものではない。したがって、特定の実施形態が示されかつ説明されてきたが、本発明から著しく逸脱することなしに、多くの修正が思い浮かぶ。