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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ハイブリッド温水暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20240402BHJP
   F24D 3/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F24D3/00 K
F24D3/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021021679
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124105
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
(72)【発明者】
【氏名】川上 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】弓削 力也
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159663(JP,A)
【文献】特開2017-078544(JP,A)
【文献】特開2014-156953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0124357(US,A1)
【文献】特開2003-106659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00-19/10
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス加熱器、前記ガス加熱器から受熱する第1熱源側熱交換器、及び、第1負荷側熱交換器、を温水配管で接続して、温水循環回路を形成し、
圧縮機、外気と熱交換可能な第2熱源側熱交換器、減圧手段、及び、第2負荷側熱交換器、を冷媒配管で接続して、冷媒循環回路を形成し、
前記第1負荷側熱交換器、前記第2負荷側熱交換器、少なくとも1つの負荷端末を、前記第2負荷側熱交換器が前記第1負荷側熱交換器の上流側に直列に配設されるようにしつつ循環液配管で接続して、負荷側回路を形成し、
少なくとも前記圧縮機及び前記ガス加熱器を制御する制御手段を設けた、ハイブリッド温水暖房システムにおいて、
前記循環液配管内の循環液の実温度を検出する実温度検出手段を有し、
前記制御手段は、
前記圧縮機が起動された後、前記実温度が予め定めた所定の温度範囲の第1上限値に達したら前記圧縮機を停止し、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第1下限値に達したら当該温度範囲の前記第1上限値に達するまで前記圧縮機を駆動することにより、前記実温度が所定の目標温度となるように制御する第1温調制御手段と、
前記実温度が前記第1上限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が停止した際、少なくとも前記実温度が前記第1下限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が駆動を再開するまでの間において、当該駆動再開の際における前記ガス加熱器による温水生成の要否を判定する加熱要否判定手段と、
を備え、
前記加熱要否判定手段による判定結果に応じて前記ガス加熱器を制御する
ことを特徴とするハイブリッド温水暖房システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記加熱要否判定手段で前記温水生成が必要と判定された場合、前記温水配管内の温水の加熱を行うように前記ガス加熱器を制御し、前記加熱要否判定手段で前記温水生成が不要と判定された場合、前記温水配管内の温水の加熱を行わないように前記ガス加熱器を制御する
ことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド温水暖房システム。
【請求項3】
前記加熱要否判定手段は、
前記実温度が前記第1上限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が停止した際、当該停止の直前の前記圧縮機の駆動時間区分における前記実温度の上昇挙動に基づき、前記温水生成の要否を判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のハイブリッド温水暖房システム。
【請求項4】
前記加熱要否判定手段は、
前記実温度が前記第1下限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が駆動を再開した前記直前の前記駆動時間区分の開始タイミングから、前記実温度が前記第1上限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が停止した前記駆動時間区分の終了タイミングまでの時間が、所定のしきい値を超えていた場合は前記温水生成が必要と判定し、所定のしきい値以下の場合は前記温水生成は不要と判定する
ことを特徴とする請求項3記載のハイブリッド温水暖房システム。
【請求項5】
前記加熱要否判定手段は、
前記直前の前記駆動時間区分が、前記圧縮機が起動された後の最初の前記駆動時間区分であった場合には、前記温水生成は不要と判定する
ことを特徴とする請求項4記載のハイブリッド温水暖房システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記加熱要否判定手段で前記温水生成が必要と判定され、前記ガス加熱器が起動された後、前記実温度が予め定めた所定の温度範囲の第2上限値に達したら前記ガス加熱器を停止し、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第2下限値に達したら当該温度範囲の前記第2上限値に達するまで前記ガス加熱器を駆動することにより、前記実温度が所定の目標温度となるように制御する第2温調制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のハイブリッド温水暖房システム。
【請求項7】
前記第2上限値は前記第1上限値よりも低く、前記第2下限値は前記第1下限値よりも低い
ことを特徴とする請求項6記載のハイブリッド温水暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮機を備えた冷媒循環回路とガス加熱器を備えた温水循環回路とを有する、ハイブリッド温水暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の暖房システムにおいては、特許文献1記載のように、負荷端末を備えた負荷側回路に、圧縮機を備えたヒートポンプの冷媒循環回路と熱交換する熱交換器と、ガス加熱器により加熱された温水が流通する温水循環回路と熱交換する熱交換器とを設け、冷媒側及び温水側それぞれから受熱可能に構成したものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-159663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のものに開示の構成では、ヒートポンプの特性として冷媒の温度上昇に時間がかかり、冷媒循環回路側から負荷側回路への加熱が迅速には行えない。そこで例えば暖房運転開始時において、ガス加熱器により生成した温水により温水循環回路側から負荷側回路への加熱を迅速に行い上記ヒートポンプによる加熱を補助することで、システム全体としての初期暖房能力を向上させることができる。
【0005】
一方、通常、冷媒循環回路においては、前記負荷側回路内の循環液の温度が所定の目標温度となるように圧縮機の回転数を制御する、いわゆる温調制御が行われる。すなわち、前記循環液の温度が所定の温度範囲の上限値に達したら圧縮機を停止し、その後循環液温度が前記温度範囲の下限値に達したら前記上限値に達するまで再び圧縮機を駆動することで循環液温度が前記目標温度となるように制御される。
【0006】
ここで、上記従来のものにおいて前記のガス加熱による加熱補助を行う場合に、冷媒循環回路側で温調制御が実行されると、以下のような不都合が生じ得る。すなわち、温調停止後の圧縮機の再駆動時においては暖房負荷が小さいためガス加熱による加熱補助を行うとすぐに循環液温度が前記上限値に到達し、温調停止してしまう。本来であれば前記上限値~前記下限値の間の温調制御中においては暖房負荷が小さいため、ガス加熱による加熱補助なしでも暖房能力として十分な場合も多いが、上記のようにガス加熱による加熱補助を行うことで、無駄にエネルギコストが増大してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、ガス加熱器、前記ガス加熱器から受熱する第1熱源側熱交換器、及び、第1負荷側熱交換器、を温水配管で接続して、温水循環回路を形成し、圧縮機、外気と熱交換可能な第2熱源側熱交換器、減圧手段、及び、第2負荷側熱交換器、を冷媒配管で接続して、冷媒循環回路を形成し、前記第1負荷側熱交換器、前記第2負荷側熱交換器、少なくとも1つの負荷端末を、前記第2負荷側熱交換器が前記第1負荷側熱交換器の上流側に直列に配設されるようにしつつ循環液配管で接続して、負荷側回路を形成し、少なくとも前記圧縮機及び前記ガス加熱器を制御する制御手段を設けた、ハイブリッド温水暖房システムにおいて、前記循環液配管内の循環液の実温度を検出する実温度検出手段を有し、前記制御手段は、前記圧縮機が起動された後、前記実温度が予め定めた所定の温度範囲の第1上限値に達したら前記圧縮機を停止し、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第1下限値に達したら当該温度範囲の前記第1上限値に達するまで前記圧縮機を駆動することにより、前記実温度が所定の目標温度となるように制御する第1温調制御手段と、前記実温度が前記第1上限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が停止した際、少なくとも前記実温度が前記第1下限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が駆動を再開するまでの間において、当該駆動再開の際における前記ガス加熱器による温水生成の要否を判定する加熱要否判定手段と、を備え、前記加熱要否判定手段による判定結果に応じて前記ガス加熱器を制御するものである。
【0008】
また、請求項2では、前記制御手段は、前記加熱要否判定手段で前記温水生成が必要と判定された場合、前記温水配管内の温水の加熱を行うように前記ガス加熱器を制御し、前記加熱要否判定手段で前記温水生成が不要と判定された場合、前記温水配管内の温水の加熱を行わないように前記ガス加熱器を制御するものである。
【0009】
また、請求項3では、前記加熱要否判定手段は、前記実温度が前記第1上限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が停止した際、当該停止の直前の前記圧縮機の駆動時間区分における前記実温度の上昇挙動に基づき、前記温水生成の要否を判定するものである。
【0010】
また、請求項4では、前記加熱要否判定手段は、前記実温度が前記第1下限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が駆動を再開した前記直前の前記駆動時間区分の開始タイミングから、前記実温度が前記第1上限値に達して前記第1温調制御手段により前記圧縮機が停止した前記駆動時間区分の終了タイミングまでの時間が、所定のしきい値を超えていた場合は前記温水生成が必要と判定し、所定のしきい値以下の場合は前記温水生成は不要と判定するものである。
【0011】
また、請求項5では、前記加熱要否判定手段は、前記直前の前記駆動時間区分が、前記圧縮機が起動された後の最初の前記駆動時間区分であった場合には、前記温水生成は不要と判定するものである。
【0012】
また、請求項6では、前記制御手段は、前記加熱要否判定手段で前記温水生成が必要と判定され、前記ガス加熱器が起動された後、前記実温度が予め定めた所定の温度範囲の第2上限値に達したら前記ガス加熱器を停止し、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第2下限値に達したら当該温度範囲の前記第2上限値に達するまで前記ガス加熱器を駆動することにより、前記実温度が所定の目標温度となるように制御する第2温調制御手段を備えるものである。
【0013】
また、請求項7では、前記第2上限値は前記第1上限値よりも低く、前記第2下限値は前記第1下限値よりも低いものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の請求項1によれば、負荷端末へ循環液を供給可能な負荷側回路と、外気と熱交換可能な冷媒循環回路とが備えられ、外気からの吸熱を用いた循環液の加温により、負荷端末を介した暖房運転を行うことができる。すなわち、冷媒循環回路において、第2熱源側熱交換器にて外気と熱交換して蒸発し受熱した冷媒が、制御手段により制御される圧縮機へ導かれて圧縮され、高温高圧となった後、第2負荷側熱交換器に導かれて放熱しながら凝縮する。これにより、負荷側回路の循環液が加温される。また、上記と併せて、制御手段により制御されるガス加熱器が温水配管内の温水を加熱することができる。すなわち、温水循環回路において、第1熱源側熱交換器にてガス加熱器から受熱した温水が第1負荷側熱交換器に導かれて放熱する。これによっても、負荷側回路の循環液が加温される。これらの循環液の加温により、負荷端末において十分な暖房能力を確保することができる。
【0015】
上記暖房運転時において、冷媒循環回路では、制御手段に備えられる第1温調制御手段による温調制御が行われる。すなわち、実温度検出手段により検出される循環液の実温度が所定の温度範囲の第1上限値に達したら前記圧縮機が停止され、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第1下限値に達したら前記第1上限値に達するまで前記圧縮機が駆動される。これにより、循環液の前記実温度が所定の目標温度となるように制御される。
【0016】
このような温調制御が行われる際において前述のような無駄なガス加熱器の駆動を回避するために、本願発明においては、制御手段に加熱要否判定手段が備えられる。加熱要否判定手段は、前記のように実温度が第1上限値に達して第1温調制御手段により前記圧縮機が停止した際、圧縮機の駆動再開の際におけるガス加熱器による温水生成が必要なのか不要なのか、その要否を判定する。制御手段では、この判定結果に応じてガス加熱器の制御が行われる。
【0017】
これにより、例えば温調制御によって前記実温度が前記第1上限値~前記第1下限値となっている状態で暖房負荷が小さい場合には、加熱要否判定手段がガス加熱器による温水生成不要と判断することで、ガス加熱器を駆動しないようにすることが可能となる。この結果、温調制御中で暖房負荷が小さい場合も無駄にガス加熱による加熱補助を行いエネルギコストが増大してしまうのを、防止することができる。
【0018】
また、請求項2によれば、制御手段の制御に基づき、前記加熱要否判定手段で温水生成必要と判定された場合はガス加熱器が温水の加熱を行い、温水生成不要と判定された場合はガス加熱器は温水加熱を行わない。これにより、ガス加熱による無駄な加熱補助を防止しエネルギコストを確実に低減することができる。
【0019】
また、請求項3によれば、加熱要否判定手段による前記温水生成の要否判定は、前記実温度が第1上限値に達して圧縮機が温調停止した際、その直前の圧縮機の駆動時間区分における実温度の上昇挙動に基づいて行われる。これにより、例えば当該直前の駆動時間区分において実温度の上昇が緩慢であった場合には、当該駆動時間区分において暖房負荷が増大したとみなし、前記温水生成が必要と判定することが可能となる。このように、本願発明においては、無駄な加熱補助の防止を図りつつも、加熱補助が有効である暖房負荷増大時においてはガス加熱器を確実に駆動することで、システム全体の暖房能力を増大させることができる。
【0020】
また、請求項4によれば、直前の駆動時間区分の開始タイミングから、実温度が前記第1上限値に達し圧縮機が温調停止した駆動時間区分の終了タイミングまでの時間が、所定のしきい値を超えていた場合には、加熱要否判定手段による温水生成は必要と判定される一方、しきい値以下の場合は温水生成は不要と判定される。このように下限値から上限値到達までの所要時間の長短で見極めを行うことにより、簡便かつ円滑な手法でガス加熱要否の判定を行うことができる。
【0021】
また、請求項5によれば、圧縮機が起動された後の最初の駆動時間区分であった場合、すなわちシステムが起動されて第1回目の温調停止の場合には、加熱要否判定手段によって前記温水生成は不要と判定される。これにより、明らかに暖房負荷が一旦軽くなっていると思われるシステム起動直後の温調停止時において、確実にガス加熱による無駄な加熱補助を防止することができる。
【0022】
また、請求項6によれば、ガス加熱器が駆動される際、制御手段に備えられる第2温調制御手段による温調制御が行われる。すなわち、実温度検出手段により検出される循環液の実温度が所定の温度範囲の第2上限値に達したら前記ガス加熱器が停止され、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第2下限値に達したら前記第2上限値に達するまで前記ガス加熱器が駆動される。これにより、循環液の前記実温度が所定の目標温度となるように、ガス加熱器を制御することができる。
【0023】
また、請求項7によれば、第2温調制御手段によるガス加熱器に対する温調制御時の第2上限値は、第1温調制御手段による圧縮機に対する温調制御時の第1上限値よりも低い。これにより、循環液の温度が上昇して温調停止する際、まず加熱補助の役割であるガス加熱器が先に停止し、それでもさらに循環液温度が上昇したときに圧縮機が停止するようにすることができる。同様に、第2温調制御手段によるガス加熱器に対する温調制御時の第2下限値は、第1温調制御手段による圧縮機に対する温調制御時の第1下限値よりも低い。これにより、循環液の温度が下降して駆動再開される際、まず圧縮機が駆動再開し、それでもさらに循環液温度が下降したときに加熱補助の役割であるガス加熱器が駆動再開するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態のハイブリッド温水暖房システム全体の回路構成図
図2】ヒートポンプ単独暖房運転時の作動を説明する図
図3】ガス単独暖房運転時の作動を説明する図
図4】ヒートポンプ・ガス暖房運転時の作動を説明する図
図5】ヒートポンプ制御装置の機能的構成図
図6】熱交換ユニット制御装置の機能的構成図
図7】ボイラー制御装置の機能的構成図
図8】ヒートポンプ・ガス暖房運転時において、熱交換ユニット制御装置の加熱制御部とヒートポンプ制御装置の圧縮機・ポンプ制御部との協働により実行される制御手順を表すフローチャート図
図9】ヒートポンプ・ガス暖房運転時において、熱交換ユニット制御装置の加熱制御部とヒートポンプ制御装置の圧縮機・ポンプ制御部との協働により実行される制御手順を表すフローチャート図
図10】加熱要否判定部による加熱要否判定を行わない比較例における温度及び出力挙動を表すタイムチャート図
図11】加熱要否判定部による加熱要否判定を行う本発明の一実施形態における温度及び出力挙動を表すタイムチャート図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図1図11に基づいて説明する。
【0026】
本実施形態は、本発明を複合熱源型のハイブリッド温水暖房システムに適用した場合の実施形態である。
【0027】
<全体回路構成>
本実施形態のハイブリッド温水暖房システム1全体の回路構成を図1に示す。図1に示すように、前記ハイブリッド温水暖房システム1は、熱交換ユニット4Aと、ガス暖房給湯器ユニット4Bと、ヒートポンプユニット5と、を備えている。このハイブリッド温水暖房システム1には、熱交換端末36(負荷端末に相当)に循環液L(例えば、水や不凍液)を循環させる、負荷側回路としての端末循環回路30と、前記熱交換ユニット4A及び前記ガス暖房給湯器ユニット4Bに備えられ、ガス加熱による熱源を利用して前記熱交換端末36側の循環液Lを加熱可能な温水循環回路40と、前記ヒートポンプユニット5に備えられ、空気熱源を利用して前記熱交換端末36側の循環液Lを加熱又は冷却可能な冷媒循環回路50と、が設けられている。
【0028】
<温水循環回路>
温水循環回路40は、出力可変のガス加熱器(気体又は液体燃料の燃焼ガスで加熱する燃焼式加熱器であり、いわゆるバーナー)43と、第1負荷側熱交換器としての第1熱交換器41と、第1熱源側熱交換器としての暖房熱交換器45と、温水循環ポンプ44と、が、温水配管42によって環状に接続されている。
【0029】
前記第1熱交換器41は、例えばプレート式熱交換器で構成されている。このプレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートが積層され、温水C1(例えば、水や不凍液。後述の図3図4等参照)を流通させる冷媒流路と前記循環液Lを流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
【0030】
前記暖房熱交換器45は、ガス加熱器43から受熱することで、温水配管42内の温水を加熱する。なお、このとき、暖房熱交換器45と同様に、ガス加熱器43から受熱可能に給湯熱交換器46が設けられている。給湯熱交換器46に備えられた水配管47には外部からの市水が供給されており、ガス加熱器43からの受熱により加熱された温水は、水配管47に接続された給湯栓48へと供給される。すなわち、ガス加熱器43、暖房熱交換器45、及び給湯熱交換器46は、いわゆるボイラーを構成している。
【0031】
また、ガス加熱器43から導出された温水C1の温度は、ボイラー往き温度センサ42aによって検出され、その検出結果は、ボイラー制御装置63へ入力される。また、ボイラー制御装置63にはリモコン60が接続されており、リモコン60での手動操作によりガス加熱器43の加熱能力を調節することもできる。
【0032】
<冷媒循環回路>
冷媒循環回路50は、能力可変の圧縮機53と、第2負荷側熱交換器としての第2熱交換器51と、減圧手段としての膨張弁54と、外気と熱交換可能に構成された第2熱源側熱交換器としての空気熱交換器55とが、冷媒配管52によって環状に接続されている。この冷媒配管52には、前記冷媒循環回路50における冷媒C2(後述の図2図4等参照)の流れ方向を切り換える切換弁としての四方弁58が設けられている。また前記空気熱交換器55には、送風ファン56が設けられている。
【0033】
前記第2熱交換器51は、前述と同様、例えばプレート式熱交換器で構成されており、前記冷媒C2を流通させる冷媒流路と前記循環液Lを流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
【0034】
また、圧縮機53から吐出された冷媒C2の温度は、冷媒吐出温度センサ52aによって検出される。同様に、膨張弁54から空気熱交換器55までの冷媒配管52に設けられた冷媒温度センサ52bによって、低圧側(暖房時)又は高圧側(冷房時)の冷媒C2の温度が検出される。さらに、外気の温度が、例えば空気熱交換器55又はその近傍に設置された外気温センサ57によって検出される。前記冷媒吐出温度センサ52a、冷媒温度センサ52b、及び前記外気温センサ57の検出結果は、ヒートポンプ制御装置62へ入力される。また、ヒートポンプ制御装置62にはリモコン60が通信可能に接続されており、リモコン60での手動操作により冷媒循環回路50の能力を調節することができる(詳細は後述)。
【0035】
なお、前記冷媒循環回路50の前記冷媒C2としては、例えばR410AやR32等のHFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒を用いることができる。
【0036】
<端末循環回路>
端末循環回路30は、前記第1熱交換器41と、前記第2熱交換器51と、少なくとも1つの熱交換端末36とが、循環液配管としての負荷配管31によって上流側から順に環状に接続されている。熱交換端末36としては、例えば、床暖房パネル、暖房パネル、冷温水パネル、ラジエータ、ファンコイル、パネルコンベクタ等が含まれる。図示の例では、1つの床暖房パネルが接続された例を示している。この負荷配管31には、端末循環回路30に前記循環液Lを循環させる循環液循環ポンプ32と、循環液Lを貯留し端末循環回路30の圧力を調整する圧力調整タンク(図示省略)とが設けられている。また、前記熱交換端末36は、端末用リモコン(図示省略)によって操作可能である。なお、熱交換端末36は、図1では1つ設けられているが、2つ以上であってもよく、数量や仕様が特に限定されるものではない。
【0037】
このとき、端末循環回路30においては、前記第1熱交換器41と前記第2熱交換器51とが直列に接続されており、かつ、前記したように、端末循環回路30を循環する循環液Lの流れに対して、前記第2熱交換器51が前記第1熱交換器41よりも上流側に配設されている。すなわち、前記ハイブリッド温水暖房システム1は、ガス加熱による熱源を利用して前記熱交換端末36側の循環液Lを加熱可能な温水循環回路40の第1熱交換器41と、空気熱源を利用して熱交換端末36側の循環液Lを加熱又は冷却する冷媒循環回路50の第2熱交換器51とが、端末循環回路30に対して直列に接続された、複合熱源ヒートポンプ装置となっているものである。
【0038】
なお、負荷配管31には、熱交換端末36から第2熱交換器51に流入する循環液Lの温度を検出する戻り温度センサ34と、第2熱交換器51から第1熱交換器41側へ流出する循環液Lの温度(実温度に相当)を検出する第2往き温度センサ35(実温度検出手段に相当)と、第1熱交換器41から熱交換端末36側へ流出する循環液Lの温度を検出する第1往き温度センサ33と、が設けられている。第1往き温度センサ33の検出結果は、熱交換ユニット制御装置61へ入力される。戻り温度センサ34及び第2往き温度センサ35の検出結果は、ヒートポンプ制御装置62へ入力される。
【0039】
また、前記ヒートポンプ制御装置62、前記熱交換ユニット制御装置61、及び、前記ボイラー制御装置63は、互いに情報送受信可能に接続されており、前述のように入力された各センサの検出結果を互いに共有することができる。
【0040】
<暖房運転>
ここで、前記ハイブリッド温水暖房システム1は、前記の四方弁58の切替によって暖房運転を行う暖房装置、若しくは、冷房運転を行う冷房装置として選択的に機能させることができる。特に暖房運転の場合は、冷媒循環回路50を介した空気熱源の利用のみにより循環液Lの加熱を行う暖房運転(以下適宜、「HP単独暖房運転」という)と、温水循環回路40を介したガス加熱による熱源の利用のみにより循環液Lの加熱を行う暖房運転(以下適宜、「ガス単独暖房運転」という)と、冷媒循環回路50を介した空気熱源の利用と温水循環回路40を介したガス加熱による熱源の利用との両方により循環液Lの加熱を行う暖房運転(以下適宜、「HP・ガス暖房運転」という)と、の3つを選択的に実行することができる。
【0041】
<HP単独暖房運転>
図2に、HP単独暖房運転時の状態を示す。なお、図示の煩雑を防止するために、図1に示していた各種の信号線は省略している。この図2に示すHP単独暖房運転時においては、前記冷媒循環回路50では、図示のように前記四方弁58が切り替えられることで、圧縮機53から吐出された冷媒C2を、第2熱交換器51、膨張弁54、空気熱交換器55の順に流通させた後、圧縮機53に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の冷媒C2が前記圧縮機53で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する前記第2熱交換器51において前記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って前記循環液Lを加熱しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった冷媒C2は前記膨張弁54において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する前記空気熱交換器55において、送風ファン56の作動により送られる空気との熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱した後、低温・低圧のガスとして再び前記圧縮機53へと戻る。
【0042】
このとき、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により第2熱交換器51に流入した循環液Lは、蒸発器として機能する前記第2熱交換器51において、前記空気熱交換器55で外気と熱交換し前記のように加熱された前記冷媒C2との熱交換を行って受熱する。こうして加温された循環液Lは、その後、前記熱交換端末36に供給されて被空調空間を加温する。
【0043】
なお、以上においては暖房運転を例にとって説明したが、熱交換端末36として冷房可能な端末が用いられる場合には、四方弁58が切り替えられることで、圧縮機53から吐出された冷媒C2を、空気熱交換器55、膨張弁54、第2熱交換器51の順に流通させた後、圧縮機53に戻す流路を形成し、冷房運転を行うこともできる(詳細な説明は省略)。
【0044】
<ガス単独暖房運転>
図3に、ガス単独暖房運転時の状態を示す。前述と同様、図1に示していた各種の信号線は省略している。この図3に示すガス単独暖房運転時においては、温水循環ポンプ44により暖房熱交換器45に流入した温水C1が、暖房熱交換器45においてガス加熱器43の火力により加熱され、高温となる。その後、高温となっている温水C1は、前記第1熱交換器41において前記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って前記循環液Lを加熱して温度降下した後、再び暖房熱交換器45へと戻る。
【0045】
このとき、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により第1熱交換器41に流入した循環液Lは、前記第1熱交換器41において、前記ガス加熱器43で前記のように加熱された前記温水C1との熱交換を行って受熱する。こうして加温された循環液Lは、その後、前記熱交換端末36に供給されて被空調空間を加温する。
【0046】
<HP・ガス暖房運転>
図4に、HP・ガス暖房運転時の状態を示す。前述と同様、図1に示していた各種の信号線は省略している。この図4に示すHP・ガス暖房運転時においては、図2を用いて前述した前記冷媒循環回路50における空気熱交換器55による冷媒C2の加熱と、図3を用いて前述した前記温水循環回路40におけるガス加熱器43による温水C1の加熱と、の両方が行われる。
【0047】
そして、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により第2熱交換器51に流入した循環液Lが、前記第2熱交換器51において、前述のように加熱された前記冷媒C2との熱交換を行って受熱した後、第1熱交換器41に流入する。第1熱交換器41に流入した循環液Lは、前述のように加熱された前記温水C1との熱交換を行ってさらに受熱する。これらのようにして空気熱源とガス加熱による熱源とにより加温された循環液Lは、その後前記熱交換端末36に供給され、被空調空間を加温する。
【0048】
<制御装置の機能的構成>
次に、本実施形態における熱交換ユニット制御装置61、ボイラー制御装置63、及びヒートポンプ制御装置62について説明する。前記熱交換ユニット制御装置61、ボイラー制御装置63、及び前記ヒートポンプ制御装置62は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。これら前記熱交換ユニット制御装置61、ボイラー制御装置63、及び前記ヒートポンプ制御装置62の機能的構成を図5図6、及び図7により説明する。なお、以下の図5図6図7においては、前述のように互いに送受信可能である熱交換ユニット制御装置61、ボイラー制御装置63、ヒートポンプ制御装置62同士の信号送受信、及び、各制御装置を介した信号送受信については、適宜図示を省略し、実質的に後述の各制御部に入出力される信号を示している。
【0049】
<ヒートポンプ制御装置>
図5に示すように、前記ヒートポンプ制御装置62は、圧縮機・ポンプ制御部62Aと、膨張弁制御部62Bと、ファン制御部62Dと、四方弁制御部62Eと、を機能的に備えている。
【0050】
圧縮機・ポンプ制御部62Aは、例えば前記戻り温度センサ34及び第2往き温度センサ35により検出された循環液Lの温度に応じて、前記圧縮機53の回転数を制御する。特にこの例では、圧縮機・ポンプ制御部62Aは、第1温調制御部62Aa(第1温調制御手段に相当)により、前記第2往き温度センサ35が検出する前記循環液Lの往き温度が、例えば前記リモコン60の操作に対応した所望の目標温度となるように、前記圧縮機53の回転数を制御する。また圧縮機・ポンプ制御部62Aは、例えば循環液Lの所望の目標温度や運転の種類に応じて、前記循環液循環ポンプ32の回転数を制御する。なお、圧縮機・ポンプ制御部62Aには、熱交換ユニット制御装置61からの加熱要否判定結果(後述)も入力される。
【0051】
膨張弁制御部62Bは、前記冷媒吐出温度センサ52aにより検出される冷媒C2の温度に応じて、前記膨張弁54の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部62Bは、冷媒吐出温度センサ52aにより検出される冷媒C2の温度が、例えば前記リモコン60の操作に対応した制御上の目標温度となるように、前記膨張弁54の弁開度を制御する。
【0052】
ファン制御部62Dは、前記外気温センサ57により検出された外気の温度に応じて、前記送風ファン56の回転数を制御する。
【0053】
前記四方弁制御部62Eには、前記リモコン60からの運転指示(暖房運転、冷風運転等のうちいずれの運転開始及び運転停止を指示する制御信号)、及び、熱交換ユニット制御装置61からの運転ON・OFF信号、が入力される。四方弁制御部62Eは、上記運転指示に応じて、実際に冷媒循環回路50をどのような運転態様で運転するかを決定し、対応する運転情報を、圧縮機・ポンプ制御部62A、膨張弁制御部62B、ファン制御部62D、及び熱交換ユニット制御装置61へと出力する。また四方弁制御部62Eは、上記決定された運転態様に対応する制御信号を四方弁58へ出力し、四方弁58を切り替える。
【0054】
<熱交換ユニット制御装置>
図6に示すように、前記熱交換ユニット制御装置61は、運転制御部61Aと、加熱制御部61Bと、ポンプ制御部61Cと、を機能的に備えている。
【0055】
運転制御部61Aは、例えば前記外気温センサ57により検出された外気の温度、第1往き温度センサ33により検出された第1熱交換器41からの循環液Lの往き温度、及び、ヒートポンプ制御装置62から入力された前述の運転情報等に基づき、温水循環回路40のガス加熱器43等の運転・非運転、詳細には、冷媒循環回路50の圧縮機53等とともに温水循環回路40のガス加熱器43等を運転する(前述のHP・ガス暖房運転)か、あるいは(冷媒循環回路50の圧縮機53等が運転されていない状態で)温水循環回路40のガス加熱器43等を運転する(前述のガス単独暖房運転)か、を判定する。そして、その判定結果に基づき、ヒートポンプ制御装置62及びボイラー制御装置63に対し、運転を行う場合に対応する運転ON又は運転を行わない場合に対応する運転OFF信号を出力する。
【0056】
加熱制御部61Bは、例えば第2往き温度センサ35により検出された循環液Lの温度、第1往き温度センサ33により検出された第1熱交換器41からの循環液Lの往き温度、及び前記リモコン60の操作等に基づき、ガス加熱器43の出力の大小を制御するための加熱制御信号をボイラー制御装置63へと出力する。特にこの例では、加熱制御部61Bは、第2温調制御部61Ba(第2温調制御手段に相当)により、前記第2往き温度センサ35が検出する前記循環液Lの温度が、例えば前記リモコン60の操作に対応した所望の目標温度となるようにガス加熱器43を制御するための、加熱制御信号を出力する。
【0057】
また加熱制御部61Bは、加熱要否判定部61Bbを備えている。加熱要否判定部61Bbは、第2往き温度センサ35により検出された循環液Lの温度及び前記リモコン60の操作等に基づき、ガス加熱器43による加熱が必要であるか否かを判定し(詳細は後述)、対応する加熱要否判定結果をヒートポンプ制御装置62及びボイラー制御装置63へ出力する。
【0058】
ポンプ制御部61Cは、例えば循環液Lの所望の目標温度や運転の種類に応じて、温水循環ポンプ44の回転数を制御するための回転制御信号をボイラー制御装置63へと出力する。
【0059】
<ボイラー制御装置>
図7に示すように、ボイラー制御装置63は、例えば前記加熱制御部61Bからの加熱制御信号及び前記加熱要否判定結果、前記ポンプ制御部61Cからの回転制御信号、及び、ボイラー往き温度センサ42aによって検出された温水C1の往き温度、等に基づき、温水循環ポンプ44の回転数及びガス加熱器43の出力を制御する。
【0060】
<実施形態の特徴>
以上の基本構成及び作動であるハイブリッド温水暖房システム1において、本実施形態の特徴は、前述のHP・ガス暖房運転時における圧縮機53及びガス加熱器43に対する制御態様にある。
【0061】
すなわち、前記ヒートポンプユニット5では、ヒートポンプの特性として冷媒C2の温度上昇に時間がかかり、冷媒循環回路50側から端末循環回路30への加熱が迅速には行えない。そこで例えばHP・ガス暖房運転の開始時において、ガス加熱器43により生成した温水により温水循環回路40側から端末循環回路30への加熱を迅速に行い上記ヒートポンプユニット5による加熱を補助することで、システム全体としての初期暖房能力を向上させることができる。
【0062】
このとき、冷媒循環回路50においては、ヒートポンプ制御装置62の前記第1温調制御部62Aaにより、端末循環回路30内の循環液Lの前記往き温度が前記リモコン60の操作に対応した前記目標温度となるように圧縮機53の回転数を制御する、いわゆる温調制御が行われる。すなわち、前記循環液Lの温度が所定の上限値(この例では目標温度+3℃。後述)に達したら圧縮機53を停止し、その後循環液Lの温度が所定の下限値(この例では目標温度-4℃。後述)に達したら前記上限値に達するまで再び圧縮機53を駆動することで、循環液Lの温度が前記目標温度となるように制御される。
【0063】
ここで、上記のようにガス加熱器43による加熱補助を行う場合に、前記第1温調制御部62Aaによる温調制御が実行されると、そのままでは以下のような不都合が生じ得る。すなわち、温調停止後の圧縮機53の再駆動時においては暖房負荷が小さいためガス加熱器43による加熱補助を行うとすぐに循環液Lの温度が前記上限値(目標温度+3℃)に到達し、温調停止してしまう。本来であれば前記上限値(目標温度+3℃)~前記下限値(目標温度-4℃)の間の温調制御中においては暖房負荷が小さいため、ガス加熱器43による加熱補助を伴わないヒートポンプユニット5単独でも暖房能力として十分であるが、上記のようにガス加熱器43による加熱補助を行うことで、無駄にエネルギコストが増大してしまう。
【0064】
そこで本実施形態では、熱交換ユニット制御装置61の加熱制御部61Bに加熱要否判定部61Bb(加熱要否判定手段に相当)を設け、前記のように暖房負荷が小さい場合はガス加熱器43を駆動せず暖房負荷が大きい等により加熱補助が必要な場合にのみガス加熱器43を駆動するようにする。加熱補助が必要か否かの判定は、温調停止した際、その直前の温度上昇挙動がどのようなものであったか(一例としては後述のように温調停止までどれだけ時間がかかったか)に基づいて行われる。
【0065】
なお、本実施形態では、加熱補助が必要な場合においてガス加熱器43が駆動される時には、熱交換ユニット制御装置61の加熱制御部61Bに設けた第2温調制御部61Baにより、当該ガス加熱器43に対しても温調制御が行われる。すなわち前記循環液Lの温度が別途の上限値(この例では目標温度-2℃)になるとガス加熱器43が駆動停止されるとともに、別途の下限値(この例では目標温度-5℃)になるとガス加熱器43が駆動再開される。
【0066】
<制御手順>
上述の手法を実現するために、熱交換ユニット制御装置61の加熱制御部61Bとヒートポンプ制御装置62の圧縮機・ポンプ制御部62Aとが協働して実行する制御手順を、図8及び図9により説明する。
【0067】
図8において、まずS5で、加熱制御部61Bにより、前記リモコン60に設けられた暖房運転スイッチ(図示省略)の操作を介して操作者から暖房運転の開始指示があったか否かが判定される。なお以下適宜、この暖房運転スイッチが操作されることを「運転スイッチON」のように称する(図示も同様)。運転スイッチがONされたらYes判定され、S10へ移行する。
【0068】
S10では、圧縮機・ポンプ制御部62Aの第1温調制御部62Aaにより、圧縮機53が駆動開始されるとともに循環液循環ポンプ32が駆動開始される。その後、S15で、ガス加熱器43による加熱実行を表す加熱フラグF=1とされ、S20へ移行する。
【0069】
まずS20では、加熱制御部61Bにより、前記リモコン60に設けられた運転停止スイッチ(図示省略)の操作を介して操作者から暖房運転の停止指示があったか否かが判定される。なお以下適宜、この運転停止スイッチが操作されることを「運転スイッチOFF」のように称する(図示も同様)。運転スイッチがOFFされたらYes判定されてS22へ移行し、圧縮機・ポンプ制御部62Aの第1温調制御部62Aaにより圧縮機53が駆動停止されるとともに循環液循環ポンプ32が駆動停止され、このフローを終了する。
【0070】
S20で運転スイッチがOFFされなければNo判定され、S25へ移行する。S25では、この時点で前記加熱フラグFが1であるか否かが判定される。F=0であればNo判定されて後述のS35へ移行し、F=1であればYes判定されてS30へ移行する。S30では、加熱制御部61Bの第2温調制御部61Baにより、ガス加熱器43が駆動開始される。その後S35へ移行する。
【0071】
S35では、第2温調制御部61Baにより、第2往き温度センサ35が検出する循環液Lの温度が、ガス加熱に関して予め定められた循環液Lの温度範囲の上限値(以下適宜、「第2上限値」と称する)以上となったか否かが判定される。なお、この第2上限値は、後述の第1上限値よりも低い値に設定される(この例ではリモコン60の操作に基づく前記目標温度より2℃低い値)。循環液Lの温度が前記第2上限値未満であればNo判定され前記S20へ戻って同様の手順が繰り返される。循環液Lの温度が前記第2上限値以上であればYes判定され、S40へ移行する。
【0072】
S40では、この時点で前記加熱フラグFが1であるか否かが判定される。F=0であればNo判定されて後述のS50へ移行し、F=1であればYes判定されてS45へ移行する。S45では、加熱制御部61Bの第2温調制御部61Baにより、ガス加熱器43が駆動停止される。その後S50へ移行する。
【0073】
S50では、第1温調制御部62Aaにより、第2往き温度センサ35が検出する循環液Lの温度が、ヒートポンプ加熱に関して予め定められた循環液Lの温度範囲の上限値(この例ではリモコン60の操作に基づく前記目標温度より3℃高い値。以下適宜、「第1上限値」と称する)以上となったか否かが判定される。循環液Lの温度が前記第1上限値未満であればNo判定され前記S20へ戻って同様の手順が繰り返される。循環液Lの温度が前記第1上限値以上であればYes判定され、S55へ移行する。
【0074】
S55では、第1温調制御部62Aaにより、圧縮機53が駆動停止される。その後S60へ移行する。
【0075】
S60では、加熱要否判定部61Bbにより、S55での圧縮機53の駆動停止の直前の前回の駆動区分(温調制御下における圧縮機53の駆動開始のタイミングからその後の駆動停止のタイミングまでの時間区分)が、暖房運転開始後の最初の駆動区分であるか、若しくは、10分(所定のしきい値に相当)以内の駆動区分であったか否かが判定される。最初の駆動区分でも10分以内の駆動区分でもなかった場合はNo判定され、S70で加熱フラグF=1とされてS75へ移行する。最初の駆動区分若しくは10分以内の駆動区分であった場合はYes判定され、S65で加熱フラグF=0とされてS75へ移行する。なお、上記S60及びその後のS65(又はS70)は、S55における圧縮機53の駆動停止直後に行うのには限られない。すなわち、圧縮機53の駆動停止の後、少なくとも、後述のS85において圧縮機53が駆動再開されるまでの間のいずれかのタイミングで行えば足りるものである。
【0076】
S75では、前記S20と同様、加熱制御部61Bにより、運転スイッチがOFFされたか否かが判定される。運転スイッチがOFFされたらYes判定されて前記のS22へ移行し、運転スイッチがOFFされなければNo判定され、図9のS80へ移行する。
【0077】
S80では、第1温調制御部62Aaにより、第2往き温度センサ35が検出する循環液Lの温度が、ヒートポンプ加熱に関して予め定められた循環液Lの前記温度範囲の下限値(この例ではリモコン60の操作に基づく前記目標温度より4℃低い値。以下適宜、「第1下限値」と称する)未満となったか否かが判定される。循環液Lの温度が前記第1下限値未満になったらYes判定され、S85へ移行する。
【0078】
S85では、S55で駆動停止された圧縮機53が第1温調制御部62Aaにより駆動再開される。その後、S90へ移行する。
【0079】
S90では、第2温調制御部61Baにより、第2往き温度センサ35が検出する循環液Lの温度が、ガス加熱に関して予め定められた循環液Lの前記温度範囲の下限値(以下適宜、「第2下限値」と称する)未満となったか否かが判定される。なお、この第2下限値は、前記の第1下限値よりも低い値に設定される(この例ではリモコン60の操作に基づく前記目標温度より5℃低い値)。循環液Lの温度が前記第2下限値以上であればNo判定され図8の前記S35へ戻って同様の手順が繰り返される。循環液Lの温度が前記第2下限値未満であればYes判定され、S95へ移行する。
【0080】
S95では、この時点で前記加熱フラグFが1であるか否かが判定される。F=0であればNo判定されて図8の前記S35へ移行し、F=1であればYes判定されてS100へ移行する。S100では、加熱制御部61Bの第2温調制御部61Baにより、S45で駆動停止されているガス加熱器43が駆動再開される。その後図8の前記S35へ移行する。
【0081】
なお、以上説明した図8及び図9に示す各手順を実行する加熱制御部61B及び圧縮機・ポンプ制御部62Aを含む、熱交換ユニット制御装置61、ヒートポンプ制御装置62、ボイラー制御装置63が、制御手段の一例に相当している。
【0082】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のハイブリッド温水暖房システム1によれば、図4に示すHP・ガス暖房運転において、熱交換端末36へ循環液Lを供給可能な端末循環回路30と、外気と熱交換可能な冷媒循環回路50とが備えられ、外気からの吸熱を用いた循環液Lの加温により、熱交換端末36を介した暖房運転を行うことができる。すなわち、冷媒循環回路50において、空気熱交換器55にて外気と熱交換して蒸発し受熱した冷媒が、圧縮機53へ導かれて圧縮され、高温高圧となった後、第2熱交換器51に導かれて放熱しながら凝縮する。これにより、端末循環回路30の循環液Lが加温される。また、上記と併せて、ガス加熱器43が温水配管42内の温水を加熱することができる。すなわち、温水循環回路40において、暖房熱交換器45にてガス加熱器43から受熱した温水が第1熱交換器41に導かれて放熱する。これによっても、端末循環回路30の循環液Lが加温される。これらの循環液Lの加温により、熱交換端末36において十分な暖房能力を確保することができる。
【0083】
そして上記HP・ガス暖房運転時において、冷媒循環回路50では、第1温調制御部62Aaによる温調制御が行われる。すなわち、第2往き温度センサ35により検出される循環液Lの実温度がヒートポンプ加熱に関して予め定められた前記温度範囲の前記第1上限値(前記の例ではリモコン60の操作に基づく前記目標温度より3℃高い値。以下同様)に達したら前記圧縮機53が停止され、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第1下限値(前記の例ではリモコン60の操作に基づく前記目標温度より4℃低い値。以下同様)に達したら前記第1上限値に達するまで前記圧縮機53が駆動される。これにより、循環液Lの前記実温度が所定の目標温度となるように制御される。
【0084】
このような温調制御が行われる際において前述のような無駄なガス加熱器43の駆動を回避するために、本実施形態においては、加熱要否判定部61Bbが備えられる。加熱要否判定部61Bbは、前記のように実温度が第1上限値に達して第1温調制御部62Aaにより前記圧縮機53が停止した際、圧縮機53の駆動再開の際におけるガス加熱器43による温水生成が必要なのか不要なのか、その要否を判定する(図8のS60参照)。制御装置61~63では、この判定結果に応じてガス加熱器43の制御が行われる。
【0085】
これにより、温調制御によって前記実温度が前記第1上限値~前記第1下限値となっている状態で暖房負荷が小さい場合には、加熱要否判定部61Bbがガス加熱器43による温水生成不要と判断することで、ガス加熱器43を駆動しないようにすることが可能となる。この結果、温調制御中で暖房負荷が小さい場合も無駄にガス加熱による加熱補助を行いエネルギコストが増大してしまうのを、防止することができる。この効果を、比較例を用いてさらに詳細に説明する。
【0086】
図10に、前記加熱要否判定部61Bbの実行する加熱要否判定を行わない比較例における温度及び出力挙動を示す。なお、出力としては、冷媒循環回路50から端末循環回路30側への放熱出力(図中「HP出力」と略示)と、温水循環回路40から端末循環回路30側への放熱出力(図中「ガス出力」と略示)と、の2つを示している。なお、この例では、循環液Lの目標温度は40[℃]であり、これに対応してヒートポンプ加熱に係わる前記の第1上限値は43[℃]、第1下限値は36[℃]となっている。またガス加熱に係わる前記の第2上限値は38[℃]、第2下限値は35[℃]となっている。
【0087】
まず時間t0においてそれまで停止していたシステムが起動され、圧縮機53及びガス加熱器43の両方が駆動開始されることで前記の循環液Lの温度は急上昇し、時間t1で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止される。その後循環液Lの温度は緩やかに上昇し循環液Lの温度が目標温度である40[℃]を超えて時間t2で43[℃]に達したことで圧縮機53が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t0から時間t2までが第1回目(初回)の圧縮機53の駆動時間区分となる(図中では「初回運転」と略示。以下同様)。
【0088】
時間t2での温調停止により循環液Lの温度は徐々に下がり時間t3において36[℃]まで低下したことで圧縮機53が駆動再開されるが、さらに直後の時間t4において35[℃]まで低下したことでガス加熱器43が駆動再開される。これにより循環液Lの温度は再び急上昇し、時間t5で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止された後、時間t6で43[℃]に達して圧縮機53が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t3から時間t6までが第2回目の圧縮機53の駆動時間区分となる。
【0089】
その後、前記と同様、時間t6での温調停止により循環液Lの温度が時間t7において36[℃]まで低下して圧縮機53が駆動再開された後、時間t8において35[℃]まで低下してガス加熱器43が駆動再開される。循環液Lの温度は時間t9で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止され、時間t10で43[℃]に達して圧縮機53が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t7から時間t10までが第3回目の圧縮機53の駆動時間区分となる。
【0090】
時間t10での温調停止により循環液Lの温度は徐々に下がり時間t11において36[℃]まで低下したことで圧縮機53が駆動再開されるが、さらに直後の時間t12において35[℃]まで低下したことでガス加熱器43が駆動再開される。前記と同様に循環液Lの温度は再び急上昇し時間t13で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止されるが、この例ではこのときに暖房負荷の増大が生じている。その結果、直後の時間t14において循環液Lの温度が35[℃]まで低下したことでガス加熱器43が駆動再開される。これにより循環液Lの温度は再び緩やかに上昇し、時間t15で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止された後、時間t16で43[℃]に達して圧縮機53が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t11から時間t16までが第4回目の圧縮機53の駆動時間区分となる。
【0091】
その後は、前記と同様、時間t16での温調停止により循環液Lの温度が時間t17において36[℃]まで低下して圧縮機53が駆動再開された後、時間t18において35[℃]まで低下してガス加熱器43が駆動再開される。循環液Lの温度は時間t19で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止される。
【0092】
上記のように、この比較例においては、圧縮機53が温調停止した後に駆動再開される都度、ガス加熱器43も併せて駆動される。そして、負荷が増大した後の時間t14~t15の間の駆動を除く、時間t4~t5、時間t8~t9、時間t12~t13、時間t18~t19は通常の圧縮機53の温調制御中であって暖房負荷が小さいため、すぐに循環液Lの温度が前記第2上限値(この例では38[℃])に到達しガス加熱器43が駆動停止してしまう。本来であればこれら時間t4~t5、時間t8~t9、時間t12~t13、時間t18~t19の温調制御中においてはガス加熱器43による加熱補助なしの冷媒循環回路50における圧縮機53だけの加熱能力でも十分であるが、上記のようにガス加熱器43による加熱補助を行うことで、無駄にエネルギコストが増大してしまう。
【0093】
これに対応して前記のように前記加熱要否判定部61Bbによる加熱要否判定が行われる本実施形態における温度及び出力挙動を図11に示す。本実施形態では、前記したように加熱要否判定部61Bbによる判定(図8のS60参照)に対応して加熱フラグF=1となっている場合にのみ、ガス加熱器43による加熱補助が行われる。
【0094】
図10と同様、まず時間t20においてそれまで停止していたシステムが起動される。なおこの起動時においてまず加熱フラグF=1とされている(図8のS15参照)。圧縮機53及びガス加熱器43の両方が駆動開始されることで前記の循環液Lの温度は急上昇し、時間t21で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止される。その後循環液Lの温度は緩やかに上昇し循環液Lの温度が目標温度である40[℃]を超えて時間t22で43[℃]に達したことで圧縮機53が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t20から時間t2までが第1回目(初回)の圧縮機53の駆動時間区分となる。またこの温調停止時に、初回の駆動時間区分であることに対応して加熱フラグF=0とされる(図8のS65参照)。
【0095】
時間t22での温調停止により循環液Lの温度は徐々に下がり時間t23において36[℃]まで低下したことで圧縮機53が駆動再開され、さらにその直後の時間t23′において35[℃]まで低下する。しかしながらこのとき前述のように加熱フラグF=0となっているためガス加熱器43は駆動再開されない(図9のS95参照)。圧縮機53による加熱のみにより循環液Lの温度は緩やかに上昇し、時間t24で43[℃]に達して圧縮機53が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t23から時間t24までが第2回目の圧縮機53の駆動時間区分となる。
【0096】
その後、前記と同様、時間t24での温調停止により循環液Lの温度が時間t25において36[℃]まで低下して圧縮機53が駆動再開された後、時間t25′において35[℃]まで低下するが加熱フラグF=0のままなのでガス加熱器43は駆動再開されない。循環液Lの温度が緩やかに上昇し時間t26で43[℃]に達して圧縮機53が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t25から時間t26までが第3回目の圧縮機53の駆動時間区分となる。
【0097】
時間t26での温調停止により循環液Lの温度は徐々に下がり時間t27において36[℃]まで低下したことで圧縮機53が駆動再開され、さらに直後の時間t27′において35[℃]まで低下するが加熱フラグF=0のままなのでガス加熱器43は駆動再開されない。この例では前記同様このときに暖房負荷の増大が生じている結果、循環液Lの温度はさらに約33[℃]まで低下した後に緩やかに時間をかけて上昇する挙動となり、時間t27から所定のしきい値(この例では10分)以上の時間が経過した時間t28でようやく38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止される(温調停止)。すなわち時間t27から時間t28までが第4回目の圧縮機53の駆動時間区分となる。そしてこの温調停止時に、直前の第4回目の駆動時間区分が前記しきい値以上の長さであったことに対応して加熱フラグF=1とされる(図8のS70参照)。
【0098】
その後は、時間t28での温調停止により循環液Lの温度が時間t29において36[℃]まで低下して圧縮機53が駆動再開された後、時間t30において35[℃]まで低下したとき、加熱フラグF=1に対応してガス加熱器43が駆動再開される(図9のS100参照)。これにより循環液Lの温度は急上昇して時間t31で38[℃]に達してガス加熱器43が駆動停止される。以降は圧縮機53による加熱のみにより循環液Lの温度は緩やかに上昇した後、前記同様の挙動となる。
【0099】
以上のように、本実施形態によれば、暖房負荷が大きくない間は温水生成が不要と判断されてガス加熱器43が駆動されず、暖房負荷が大きい場合にのみ温水生成が必要と判断されてガス加熱器43が駆動される(時間t20~t21、時間t30~t31)。この結果、前記比較例のように、温調制御中で暖房負荷が小さい場合も無駄にガス加熱による加熱補助を行いエネルギコストが増大してしまうのを、防止することができる。
【0100】
なお、前記した、無駄なガス加熱によりエネルギコストが増大してしまう技術課題は、特に熱交換端末36としてファンコイルが用いられる場合に顕著であり、したがって前記のエネルギコスト低減効果もファンコイルが用いられる場合に特に有効である。その理由は以下の通りである。
すなわち、一般に、ファンコイルでは、室温を常時モニタリングするために温調停止時も内部の送風ファンを微小回転数で駆動しており、循環液Lと室内空気との強制対流による熱交換が継続されている。その結果、温調停止時においてファンコイルは床暖房パネル等に比べて循環液Lの温度が比較的早く低下するため、例えば前記下限値(前記の例では目標温度-4℃)にて圧縮機53が駆動開始した直後にガス加熱器43が燃焼開始してしまう傾向となる。
これに対し、前記強制対流のない床暖房パネル等の他の熱交換端末が用いられる場合では、温調停止時の循環液Lの温度低下がファンコイルに比べても緩やかであるため、前記下限値(前記の例では目標温度-4℃)にて圧縮機53が駆動開始した後でも、暖房負荷が小さい場合にはガス加熱器43が駆動しない場合もあり得るからである。
以上により、本実施形態による前記のエネルギコスト低減効果は、熱交換端末36としてファンコイルが用いられる場合に特に有効となる。
【0101】
また、本実施形態では特に、加熱要否判定部61Bbで温水生成必要と判定された場合はガス加熱器43が温水の加熱を行い、温水生成不要と判定された場合はガス加熱器43は温水加熱を行わない。これにより、ガス加熱による無駄な加熱補助を防止しエネルギコストを確実に低減することができる。
【0102】
また、本実施形態では特に、加熱要否判定部61Bbによる前記温水生成の要否判定は、循環液Lの温度が前記第1上限値に達して圧縮機53が温調停止した際、その直前の圧縮機53の駆動時間区分における実温度の上昇挙動(前述の例では駆動時間区分の時間がどれだけ長かったか否か)に基づいて行われる。これにより、当該直前の駆動時間区分において実温度の上昇が緩慢であった場合(例えば図11の時間t27~t28参照)には、当該駆動時間区分において暖房負荷が増大したとみなし、前記温水生成が必要と判定される(図8のS60参照)。このように、本実施形態においては、無駄な加熱補助の防止を図りつつも、加熱補助が有効である暖房負荷増大時においてはガス加熱器43を確実に駆動することで、システム全体の暖房能力を増大させることができる。
【0103】
また、本実施形態では特に、直前の駆動時間区分の開始タイミングから、実温度が前記第1上限値に達し圧縮機53が温調停止した駆動時間区分の終了タイミングまでの時間が、所定のしきい値(前記の例では10分)を超えていた場合には、温水生成は必要と判定される一方、しきい値以下の場合は温水生成は不要と判定される(図8のS60参照)。このように第1上限値到達までの所要時間の長短で見極めを行うことにより、簡便かつ円滑な手法でガス加熱要否の判定を行うことができる。
【0104】
また、本実施形態では特に、圧縮機53が起動された後の最初の駆動時間区分であった場合、すなわちシステムが起動されて第1回目の温調停止の場合には、前記温水生成は不要と判定される(図8のS60参照)。これにより、明らかに暖房負荷が一旦軽くなっていると思われるシステム起動直後の温調停止時(図11の時間t22参照)の際、その直後におけるガス加熱による無駄な加熱補助を確実に防止することができる。
【0105】
また、本実施形態では特に、ガス加熱器43が駆動される際、第2温調制御部61Baによる温調制御が行われる。すなわち、第2往き温度センサ35により検出される循環液Lの実温度がガス加熱に関して予め定められた循環液Lの所定の温度範囲の第2上限値(前記の例ではリモコン60の操作に基づく目標温度より2℃低い値)に達したら前記ガス加熱器43が停止され、当該停止後前記実温度が前記温度範囲の第2下限値(前記の例ではリモコン60の操作に基づく目標温度より5℃低い値)に達したら前記第2上限値に達するまで前記ガス加熱器43が駆動される。これにより、循環液Lの前記実温度が前記目標温度となるように、ガス加熱器43を制御することができる。
【0106】
また、本実施形態では特に、第2温調制御部61Baによるガス加熱器43に対する温調制御時の前記第2上限値は、第1温調制御部62Aaによる圧縮機53に対する温調制御時の前記第1上限値よりも低い。これにより、循環液Lの温度が上昇して温調停止する際、まず加熱補助の役割であるガス加熱器43が先に停止し(例えば図11の時間t21,t31参照)、それでもさらに循環液L温度が上昇したときに圧縮機53が停止する(例えば図11の時間t22参照)ようにすることができる。同様に、第2温調制御部61Baによるガス加熱器43に対する温調制御時の第2下限値は、第1温調制御部62Aaによる圧縮機53に対する温調制御時の第1下限値よりも低い。これにより、循環液Lの温度が下降して駆動再開される際、まず圧縮機53が駆動再開し(例えば図11の時間t29参照)、それでもさらに循環液L温度が下降したときに加熱補助の役割であるガス加熱器43が駆動再開する(例えば図11の時間t30参照)ようにすることができる。
【0107】
<変形例>
なお、以上においては、端末循環回路30において、循環する循環液Lの流れに対して前記第2熱交換器51が前記第1熱交換器41よりも上流側に配設されている場合を例にとって説明したが、これに限られず、反対に前記第1熱交換器41が前記第2熱交換器51よりも上流側に配設されてもよい。さらには、端末循環回路30において前記第1熱交換器41と前記第2熱交換器51とが並列に接続されてもよい。
【0108】
また、以上においては、前記第2熱交換器51の出口側(流出側)の前記第2往き温度センサ35により検出された循環液Lの往き温度に応じて、前記圧縮機53の回転数を制御する、いわゆる往き温度制御を行ったが、これに限られない。第2熱交換器51の入口側(流入側)の前記戻り温度センサ34により検出された循環液Lの戻り温度に応じて、前記圧縮機53の回転数を制御する、いわゆる戻り温度制御を行ってもよい。この場合は前記戻り温度が循環液Lの実温度に相当し、戻り温度センサ34が実温度検出手段に相当する。
【0109】
また、上記実施形態では、1台の熱交換端末が接続される場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち2台以上の熱交換端末が接続される構成でも良い。
【0110】
また、図8及び図9に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0111】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0112】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0113】
1 ハイブリッド温水暖房システム
30 端末循環回路(負荷側回路)
31 負荷配管(循環液配管)
32 循環液循環ポンプ
34 戻り温度センサ
35 第2往き温度センサ(実温度検出手段)
36 熱交換端末(負荷端末)
40 温水循環回路
41 第1熱交換器(第1負荷側熱交換器)
42 温水配管
43 ガス加熱器
45 暖房熱交換器(第1熱源側熱交換器)
50 冷媒循環回路
51 第2熱交換器(第2負荷側熱交換器)
54 膨張弁(減圧手段)
53 圧縮機
55 空気熱交換器(第2熱源側熱交換器)
61 熱交換ユニット制御装置(制御手段)
62 ヒートポンプ制御装置(制御手段)
63 ボイラー制御装置(制御手段)
C1 温水
C2 冷媒
L 循環液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11