(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】防塵フィルタ及び電気装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/155 20060101AFI20240402BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B03C3/155 A
B03C3/40 A
(21)【出願番号】P 2021024783
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】谷中 武
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-069046(JP,A)
【文献】特開2001-190983(JP,A)
【文献】特開2019-164094(JP,A)
【文献】特開昭48-062055(JP,A)
【文献】特開2004-033944(JP,A)
【文献】国際公開第2007/148643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
F24F 1/0007,1/0059-1/008,1/02,1/032-1/0355
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される粒子を荷電化する荷電部と、
前記粒子を集塵する第1濾過フィルタと、
前記粒子を集塵し、前記第1濾過フィルタに比べて目の細かい第2濾過フィルタと、
前記粒子を前記第1濾過フィルタに透過可能に前記第1濾過フィルタに設けられ、荷電化された前記粒子を反発させる第1電極と、
前記粒子を前記第2濾過フィルタに透過可能に前記第2濾過フィルタに設けられ、荷電化された前記粒子を吸着させる第2電極と、を含む偏向部と、
を備え
、
前記第1濾過フィルタは、所定の方向よりも偏向が小さい前記粒子が入力されるように配置され、
前記第2濾過フィルタは、前記所定の方向へ進行する前記粒子が入力されるように配置され、かつ、前記第2濾過フィルタが前記第1濾過フィルタの側方に隣接して配置される
防塵フィルタ。
【請求項2】
前記第1濾過フィルタは、荷電部が設けられている方向に対して突出するように湾曲している形状を有する請求項
1に記載の防塵フィルタ。
【請求項3】
前記第1電極は、前記第1濾過フィルタの前記粒子が入力する側の面を覆うように設置され、
前記第2電極は、前記第2濾過フィルタの前記粒子が入力する側の面を覆うように設置された
請求項1
又は2に記載の防塵フィルタ。
【請求項4】
前記偏向部は、
前記第2濾過フィルタの前記粒子が入力する側と反対側の面を覆うように設置された絶縁膜と、
前記絶縁膜の前記第2濾過フィルタと反対側の面を覆うように設置され、荷電化された前記粒子が反発する第3電極と
を更に備え、
前記第3電極は、前記第2濾過フィルタの側方の、前記第1濾過フィルタの反対側を覆うように延伸された請求項
3に記載の防塵フィルタ。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の防塵フィルタを備えた電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物であるダストやガス分子(以下、「粒子」と総称する)を除去する防塵フィルタ(以下、単に「フィルタ」とも称す)の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタは、情報処理装置等の電気装置において、筐体内部への粒子の流入を防ぎ、流入する粒子を集塵する目的で設置される。フィルタを通り抜ける微粒子やガス分子の中には、導電性や腐食性を有するものが存在する。このような粒子は電気装置の短絡や腐食を引き起こすため、電気装置の信頼性を低下させるという問題があった。
【0003】
図4は、本発明で参照する電気装置の構成の一例を示す断面図である。
図4に示すように、本発明で参照する電気装置609は、フィルタ109と、情報処理装置500とを含む。フィルタ109は、情報処理装置500のベゼルに、情報処理装置500の空気取り入れ口の平面を覆うよう設置される。情報処理装置500は、空気取り入れ口と空気排出口を持ち、他の部分が密閉された筐体を有する。情報処理装置500は、筐体内部に、ディスクドライブ装置510、コントローラ520、ファン530を含む。ファン530は、情報処理装置500の空気排出口付近に設置される。ファン530は、筐体の空気取り入れ口から空気排出口へ空気の流れを生み出し、情報処理装置500全体を冷却する。フィルタ109に含まれる濾過フィルタ339は、情報処理装置500の筐体内部への異物流入を防ぎ、流入する粒子を集塵する。
【0004】
しかしながら、電気装置609では、濾過フィルタ339を通り抜けた、比較的質量の小さい粒子が情報処理装置500の内部に入り込み、ディスクドライブ装置510やコントローラ520の空気の通りの悪い部分に付着し蓄積することがある。そのような蓄積物質の中には導電性物質が存在する。導電性物質は、情報処理装置500において、短絡を引き起こし、信頼性を低下させるという問題があった。又、粒子のうちガス分子の中には腐食性を有する腐食性物質が存在する。腐食性物質は、情報処理装置500において、腐食を引き起こし、信頼性を低下させるという問題もあった。
【0005】
空気中の粒子を除去する技術の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の空気清浄機は、プレフィルタと、荷電部と、集塵部とを含む。プレフィルタは、大きな粒子を捕獲する。荷電部は、プレフィルタの下流側に設置され、空気中の粉塵を帯電させる。集塵部は、荷電部の下流側に設置され、帯電した(正荷電化された)粒子を捕獲し集塵する。上記構成の結果、特許文献1の空気清浄機では、まず、プレフィルタが大きな粒子を捕獲する。次に、荷電部が粒子を正荷電化する。続いて、負に荷電した集塵部が、正荷電化された粒子を捕獲し集塵する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の空気清浄機を電気装置のフィルタとして組み込もうとすると、プレフィルタが必要なためフィルタ部の厚みが増してしまうという欠点があった。又、特許文献1の空気清浄機では、プレフィルタと下流に設置された集塵部の2か所を空気が通過する必要があるため、空気圧損が大きくなり電気装置の十分な冷却効果を得られないという欠点があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、プレフィルタを使用することなく粒子を効果的に除去することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、防塵フィルタは、入力される粒子を荷電化する荷電部と、荷電化された粒子の一部を所定の方向へ偏向させる偏向部と、所定の方向よりも偏向が小さい粒子が入力されるように配置された第1濾過フィルタと、所定の方向へ進行する粒子が入力されるよう配置され第1濾過フィルタに比べて目の細かい第2濾過フィルタとを含む。
【0010】
本発明の一態様において、電気装置は防塵フィルタを含み、防塵フィルタは、入力される粒子を荷電化する荷電部と、荷電化された粒子の一部を所定の方向へ偏向させる偏向部と、所定の方向よりも偏向が小さい粒子が入力されるように配置された第1濾過フィルタと、所定の方向へ進行する粒子が入力されるよう配置され第1濾過フィルタに比べて目の細かい第2濾過フィルタとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プレフィルタを使用することなく粒子を効果的に除去できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態における電気装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態におけるフィルタの構成の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態におけるフィルタの構成の一例を示す断面図である。
【
図4】本発明で参照する電気装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、すべての図面において、同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の各実施形態の基本である、本発明の第1実施形態について説明する。
【0014】
本実施形態における構成について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態における電気装置の構成の一例を示す断面図である。
図1以降の図、及び以降の説明において、電気装置が設置される向きは一例であり、実際に電気装置が設置される向きは任意の向きであってよい。
図1以降の図、及び以降の説明において、ある方向から見て、電気装置の、幅(左右)方向を「X」で示し、奥行き(前後)方向を「Y」で示し、高さ(上下)方向を「Z」で示すこととする。即ち、X方向、Y方向、Z方向は互いに直交する方向である。X方向、Y方向、Z方向それぞれにおいて、右方向、奥方向、上方向を「正方向」と称し、左方向、手前方向、下方向を「負方向」と称することとする。又、以降の説明において、X方向における正方向側を「X+」側と、X方向における負方向側を「X-」側と、Y方向における正方向側を「Y+」側と、Y方向における負方向側を「Y-」側と、Z方向における正方向側を「Z+」側と、Z方向における負方向側を「Z-」側とも称することとする。
図1では、電気装置をX+側から見た断面を示している。尚、
図1では、粒子の動きを説明するために、粒子を白抜きの丸印で示し、荷電化された粒子を「+」が付加された白抜きの丸印で示す。
【0016】
図1に示すように、本実施形態における電気装置600は、フィルタ100を含む。電気装置600は、冷却が必要な任意の装置(不図示)を含んでよい。通常、電気装置600は冷却のためのファン(不図示)を含むが、冷却は電気装置600外のファン等によって行われてもよいし、フィルタ100が内蔵するファン(不図示)等によって行われてもよい。
【0017】
フィルタ100は、荷電部200と、偏向部310と、第1濾過フィルタ330と、第2濾過フィルタ340とを含む。以下、偏向部310、第1濾過フィルタ330、及び第2濾過フィルタ340を集塵部300と総称する。
【0018】
荷電部200は、入力される粒子を荷電化する。
【0019】
偏向部310は、荷電化された粒子の一部を所定の方向(
図1に示す例ではZ+側)へ偏向させる。偏向部310は、例えば、電圧が印加された1対の電極である。
図1に示した例では、荷電化は正荷電化であり、Z+方向に電界が形成されている。そして、
図1に示した例では、偏向部310は、荷電化された粒子を所定の方向(Z+側)へ偏向させている。
【0020】
第1濾過フィルタ330は、所定の方向よりも偏向が小さい粒子が入力されるように配置される。第1濾過フィルタ330は、例えば、繊維や不織布で構成される。
【0021】
第2濾過フィルタ340は、所定の方向(
図1に示す例ではZ+側)へ進行する粒子が入力されるよう配置される。第2濾過フィルタ340は、第1濾過フィルタ330に比べて目の細かい材質で構成される。第2濾過フィルタ340は、例えば、繊維や不織布で構成される。
図1に示した例では、第2濾過フィルタ340は、第1濾過フィルタ330の側方(Z+側)に隣接して設置されている。
【0022】
本実施形態における動作について説明する。
【0023】
大小様々な粒子は、フィルタ100へ流入される。入力された粒子は、荷電部200を通り抜ける際に、荷電化される。荷電化された粒子は、集塵部300を通過しようとする。ところが、荷電化された粒子は、偏向部310から受けるクーロン力によって、第2濾過フィルタ340の方向(
図1に示す例ではZ+側)へ進路を偏向させられる。
【0024】
比較的質量が大きい粒子は、慣性が大きいために、偏向部310から受けるクーロン力によってより小さく偏向される(
図1に示す例では、Z+方向へ偏向されるが、概ねY+方向へ直進する)。そして、比較的質量が大きい粒子は、第2濾過フィルタ340の方向へ向かう前に、主に第1濾過フィルタ330によって集塵される。
【0025】
比較的質量の小さい粒子は、慣性が小さいために、偏向部310から受けるクーロン力によってより大きく偏向される(
図1に示す例ではZ+方向へ偏向される)。そして、比較的質量の小さい粒子は、主に第2濾過フィルタ340によって集塵される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のフィルタ100は、荷電部200と集塵部300とを含む。荷電部200は、入力された粒子を荷電化する。集塵部300は、第1濾過フィルタ330と、第2濾過フィルタ340と、偏向部310とを含む。入力された大小様々な粒子は、荷電部200によって荷電化される。そして、比較的質量が大きい粒子は第1濾過フィルタ330によって集塵される。一方、第1濾過フィルタ330によって集塵されない、比較的質量が小さい粒子は、偏向部310から受けるクーロン力によってより大きく偏向され、第2濾過フィルタ340によって集塵される。つまり、フィルタ100は、比較的質量が大きい粒子と比較的質量が小さい粒子の両方を、粒子の大きさに応じて、第1濾過フィルタ330、又は第1濾過フィルタ330に比べて目の細かい第2濾過フィルタ340によって集塵できる。従って、本実施形態のフィルタ100には、プレフィルタを使用することなく粒子を効果的に除去できるという効果がある。
【0027】
又、本実施形態のフィルタ100には、複数の濾過フィルタが重ねて使用されないので空気圧損が増加せず、冷却効率が高いという効果がある。
【0028】
尚、本実施形態のフィルタ100では、荷電化は、正荷電化であってもよいし、負荷電化であってもよい。以下では、荷電化が正荷電化である場合を例に説明するが、荷電化が負荷電化である場合には電極の極性を逆転すればよい。偏向部310は、正電圧が印加された第1プラス電極と、第1プラス電極に印加された電圧より低い電圧が印加されたマイナス電極とを含んでもよい(第2実施形態において後述)。そして、第1プラス電極は、第1濾過フィルタ330の粒子が入力する側(
図1に示す例ではY-側)の面を、粒子が透過可能に覆うように設置される。又、マイナス電極は、第2濾過フィルタ340の粒子が入力する側(
図1に示す例ではY-側)の面を、粒子が透過可能に覆う。この場合、本実施形態のフィルタ100には、集塵部300をよりコンパクトに実現できるという効果がある。
【0029】
又、本実施形態のフィルタ100では、第1濾過フィルタ330は、粒子の一部を所定の方向(
図1に示す例ではZ+側)へ誘導する形状を有してもよい(第2実施形態において後述)。そのような形状は、
図1に示す例では、例えば、第1濾過フィルタ330のZ-側の端部をX+方向から見て時計回りに傾斜させた形状である。
【0030】
又、本実施形態のフィルタ100では、偏向部310は、絶縁膜(第3実施形態において後述)と、正電圧が印加された第2プラス電極(第3実施形態において後述)とを更に含んでもよい。この場合、絶縁膜は、第2濾過フィルタの粒子が入力する側と反対側(
図1に示す例ではY+側)の面を覆うように設置される。又、第2プラス電極は、絶縁膜の第2濾過フィルタと反対側(
図1に示す例ではY+側)の面を、覆うように設置される。又、第2プラス電極は、第2濾過フィルタの側方の、第1濾過フィルタの反対側(
図1に示す例ではZ+側)を覆うように延伸される。この場合、本実施形態のフィルタ100には、粒子が集塵部300の所定の方向(
図1に示す例ではZ+側)から散逸することを抑制できるという効果がある。
(第2実施形態)
本発明の第1実施形態を基本とする、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、集塵部において、偏向部が濾過フィルタと一体に形成されている。又、本実施形態では、第1濾過フィルタは、粒子の一部を第2濾過フィルタの方向へ誘導する形状を有する。
【0031】
本実施形態における構成について説明する。
【0032】
図2は、本発明の第2実施形態におけるフィルタの構成の一例を示す断面図である。尚、
図2では、粒子の動きを説明するために、粒子を白抜きの丸印で示し、荷電化された粒子を「+」が付加された白抜きの丸印で示す。
【0033】
図2に示すように、フィルタ105は、荷電部205と、集塵部305とを含む。フィルタ105は、通常、情報処理装置等の空気取り入れ口付近に設置される。その場合、荷電部205は空気の流れの上流側に設置され、集塵部305は空気の流れの下流側に設置される。
【0034】
荷電部205は、イオン化電極215と、対向電極225とを含む。空気の流れに沿って流入する粒子を正荷電化するために、イオン化電極215は電源415の正極に接続され、対向電極225は電源415の負極又は接地に接続される。
【0035】
集塵部305は、第1濾過フィルタ335と、第1プラス電極315と、第2濾過フィルタ345と、マイナス電極325とを含む。
【0036】
第1濾過フィルタ335は、通常の防塵用の濾過フィルタと同じ材質(繊維、不織布等)で構成される。第1濾過フィルタ335は、中央付近が空気の流入側(
図2では、Y-側)に突き出すように湾曲した形状を有する。
【0037】
第1プラス電極315は、第1濾過フィルタ335の凸面にかぶせるように設置される。第1プラス電極315は、第1濾過フィルタ335への空気の流入を妨げ難い、穴あき形状、格子形状、又は網状形状等を有する。
【0038】
第2濾過フィルタ345は、第1濾過フィルタ335の上側(Z+側の側方)及び下側(Z-側の側方)に、第1濾過フィルタ335を挟むように配置される。第2濾過フィルタ345は、微粒子の粒子を集塵又は吸着できるような、第1濾過フィルタ335よりも目の細かい材質(繊維、不織布等)で構成される。
【0039】
マイナス電極325は、第2濾過フィルタ345の前面(空気の流入側;
図2ではY-側)に設置される。マイナス電極325は、第1プラス電極315と同様に、第2濾過フィルタ345への空気の流入を妨げ難い、穴あき形状、格子形状、又は網状形状等を有する。
【0040】
第1プラス電極315は電源425の正極に接続され、マイナス電極325は電源425の負極又は接地に接続される。
【0041】
本実施形態における動作について説明する。
【0042】
大小様々な粒子は、フィルタ105へ、空気の流れに沿って流入する。流入した粒子は、荷電部205のイオン化電極215と対向電極225の間を通り抜ける際に、正荷電化される。正荷電化された粒子は、空気の流れに沿って集塵部305を通過しようとする。ところが、正荷電化された粒子は、第1プラス電極315からの斥力によって、第1プラス電極315及び第1濾過フィルタ335の湾曲面(凸面)に沿って、第2濾過フィルタ345の方向へ進路を変更させられる。
【0043】
比較的質量が大きい粒子は、慣性力が大きいために直進し、第2濾過フィルタ345の方向へ向かう前に第1プラス電極315の隙間を通過し、第1濾過フィルタ335によって集塵される。
【0044】
比較的質量の小さい粒子は、慣性力が小さいために第1プラス電極315の湾曲面(凸面)に沿って移動し、マイナス電極325からの引力によって、マイナス電極325の隙間を通過し、第2濾過フィルタ345によって集塵される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のフィルタ105は、荷電部205と集塵部305とを含む。荷電部205は、流入する粒子を正荷電化する。集塵部305は、第1濾過フィルタ335と、第1プラス電極315と、第2濾過フィルタ345と、マイナス電極325とを含む。第1濾過フィルタ335は、空気の流入側に突き出すよう湾曲した形状を成す。第1プラス電極315は、第1濾過フィルタ335の凸側にかぶせるよう設置されている。第2濾過フィルタ345は、第1濾過フィルタ335を上側及び下側から挟むように設置されている。マイナス電極325は、第2濾過フィルタ345の前面側に設置されている。
【0046】
流入する大小様々な粒子は、荷電部205によって正荷電化される。そして、比較的質量が大きい粒子は第1濾過フィルタ335によって集塵される。一方、第1濾過フィルタ335によって集塵されない、比較的質量が小さい粒子は、第1プラス電極315の湾曲面に沿って移動し、マイナス電極325からの引力によって、第2濾過フィルタ345によって集塵される。つまり、フィルタ105は、比較的質量が大きい粒子と比較的質量が小さい粒子の両方を集塵できる。
【0047】
従って、本実施形態のフィルタ105には、プレフィルタを使用することなく粒子を効果的に除去できるという効果がある。その結果、本実施形態のフィルタ105には、粒子の堆積による腐食や短絡等の障害を低減できるという効果がある。
【0048】
又、本実施形態のフィルタ105には、複数の濾過フィルタが重ねて使用されないので空気圧損が増加せず、冷却効率が高いという効果がある。
(第3実施形態)
本発明の第2実施形態を基本とする、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、集塵部は、第2プラス電極を更に有する。
【0049】
本実施形態における構成について説明する。
【0050】
図3は、本発明の第3実施形態におけるフィルタの構成の一例を示す断面図である。尚、
図3では、粒子の動きを説明するために、粒子を白抜きの丸印で示し、正荷電化された粒子を「+」が付加された白抜きの丸印で示す。
【0051】
図3に示すように、フィルタ106は、荷電部205と、集塵部306とを含む。
【0052】
集塵部306は、第1濾過フィルタ335と、第1プラス電極315と、第2濾過フィルタ345と、マイナス電極325と、絶縁膜356と、第2プラス電極366とを含む。
【0053】
絶縁膜356は、マイナス電極325及び第2濾過フィルタ345と、第2プラス電極366との間のショートを防ぐ。絶縁膜356は、第2濾過フィルタ345と第2プラス電極366の間に設置される。
【0054】
第2プラス電極366は、絶縁膜356を挟んで、第2濾過フィルタ345の反対側に配置される。又、第2プラス電極366は、第2濾過フィルタ345及び絶縁膜356の後面(
図3のY+側)からフィルタ106の上端側及び下端側(
図3のZ+側及びZ-側)にせり出し、フィルタ106の内側と第2濾過フィルタ345の間の隙間をふさぐ形状を有する。第2プラス電極366は、第1プラス電極315と異なり、穴あき形状、格子形状、及び網状形状ではなく、板状形状を成す。第2プラス電極366は、第1プラス電極315と同じく電源425の正極に接続される。
【0055】
本実施形態における動作について説明する。
【0056】
大小様々な粒子は、フィルタ106へ、空気の流れに沿って流入する。流入した粒子は、荷電部205のイオン化電極215と対向電極225の間を通り抜ける際に、正荷電化される。正荷電化された粒子は、空気の流れに沿って集塵部306を通過しようとする。ところが、正荷電化された粒子は、第1プラス電極315からの斥力によって、第1プラス電極315及び第1濾過フィルタ335の湾曲面(凸面)に沿って、第2濾過フィルタ345の方向へ進路を偏向させられる。
【0057】
比較的質量が大きい粒子は、慣性力が大きいために直進し、第2濾過フィルタ345の方向へ向かう前に第1プラス電極315の隙間を通過し、第1濾過フィルタ335によって集塵される。
【0058】
比較的質量の小さい粒子は、慣性力が小さいために第1プラス電極315の湾曲面(凸面)に沿って移動し、マイナス電極325からの引力によって、マイナス電極325の隙間を通過し、第2濾過フィルタ345によって集塵される。
【0059】
第2実施形態では、第2濾過フィルタ345が目の細かい材質で構成されるため空気圧損が大きい。そのため、フィルタ105の上端側(
図2のZ+側)及び下端側(
図2のZ-側)に誘導された粒子は、フィルタ105の内側と第2濾過フィルタ345間の隙間から漏れ出す可能性があった。ところが、フィルタ106では、第2プラス電極366が、第2濾過フィルタ345の上端側(
図3のZ+側)及び下端側(
図3のZ-側)までせり出して設置され、正荷電化されている。そのため、フィルタ106では、上端側(
図3のZ+側)及び下端側(
図3のZ-側)から漏れ出そうとする正荷電化された粒子は、第2プラス電極366からの斥力によって跳ね返され、第2濾過フィルタ345によって集塵される。
【0060】
従って、本実施形態のフィルタ106には、粒子が集塵部306の側方(
図3に示す例ではZ+側及びZ-側)から散逸することを抑制できるという効果がある。
【0061】
以上、本発明を、上述した各実施形態およびその変形例によって例示的に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態およびその変形例に記載した範囲に限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、空冷式の電気装置の空気取り入れ口に設置される防塵フィルタに利用できる。
【符号の説明】
【0063】
100、105、106、109 フィルタ
200、205 荷電部
215 イオン化電極
225 対向電極
300、305、306 集塵部
310 偏向部
315 第1プラス電極
325 マイナス電極
330、335 第1濾過フィルタ
340、345 第2濾過フィルタ
339 濾過フィルタ
356 絶縁膜
366 第2プラス電極
415、425 電源
500 情報処理装置
510 ディスクドライブ装置
520 コントローラ
530 ファン
600、609 電気装置