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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】スクリュ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F04C18/16 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021032584
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133726
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】壷井 昇
(72)【発明者】
【氏名】野口 透
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012439(JP,A)
【文献】実開昭54-104514(JP,U)
【文献】特開2008-082273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛合する雄ロータおよび雌ロータと、
前記雄ロータおよび前記雌ロータを収容し、吸入口および吐出口が設けられたケーシングと
を備え、 前記ケーシング内では、前記吸入口と連通する吸入空間と、前記吐出口と連通する吐出空間と、前記雄ロータと前記雌ロータとの間に位置する作動空間とが形成されており、
前記雄ロータおよび前記雌ロータの吐出側端面に対向する前記ケーシングの吐出側壁面に開口するように、前記吐出空間と前記作動空間とを連通する凹部が設けられており、
前記凹部は、開口部の開口縁が前記吐出口の開口縁と連続しており、前記開口部の先端方向ほど深さが浅い複数段状である、スクリュ圧縮機。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記作動空間を部分的に塞ぎ、前記吐出空間と前記作動空間とを部分的に仕切るように延在する舌状部を有し、
前記雌ロータの回転軸が延びる方向において、前記舌状部の前記雌ロータと反対側には前記吐出空間が広がっている、請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項3】
前記凹部の前記開口部の先端は、前記雄ロータおよび前記雌ロータのそれぞれの中心点を結ぶ仮想線まで延びているか、または前記仮想線を跨いで延びている、請求項1または請求項2に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記凹部の複数段形状は、少なくとも部分的に面取りされている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュ圧縮機は、ケーシング内において雄ロータおよび雌ロータが互いに噛合してガスを圧縮する。特に給油式スクリュ圧縮機では、ケーシング内に給油することで、雄ロータおよび雌ロータの冷却、シール、および潤滑などを行う。
【0003】
雄ロータおよび雌ロータが互いに噛合して雄ロータの歯が雌ロータの歯溝に収まると、雄ロータの歯先と雌ロータの歯溝との間に密閉状態の作動空間が形成される。作動空間は、ガスおよび油が閉じ込められた状態で、雄ロータおよび雌ロータの回転に伴って小さくなり、最後には消滅する。これにより、作動空間内のガスおよび油は、著しく高圧に圧縮され、異常高圧が発生するおそれがある。
【0004】
上記異常高圧が発生すると、雄ロータおよび雌ロータが振動して損傷するおそれがある。従って、これを回避するために、作動空間内の圧力を適切な圧力まで低下させることが必要である。例えば、特許文献1には、ケーシングのロータ吐出側端面に対向する壁面に凹部を設けることにより、当該凹部を介して作動空間から吐出口へとガスおよび油を逃がすことができるようにしたスクリュ圧縮機が開示されている。これにより、ガスおよび油が作動空間内に閉じ込められないようにし、作動空間内の圧力の低下を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-82273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のスクリュ圧縮機の構成では、十分量のガスおよび油を作動空間から逃がすために、凹部を十分に大きく形成する必要がある。しかし、凹部を形成するケーシングの壁面部分には、軸受や給油流路などの構成が配置されることがあり、凹部を大きく形成できない場合がある。
【0007】
また、前述のように作動空間は雄ロータおよび雌ロータの回転に伴って小さくなるため、作動空間からガスおよび油を逃がす必要量は作動空間の縮小に伴って少なくなる。しかし、特許文献1では、作動空間から逃がすべきガスおよび油の量の経時的な変化については検討されておらず改善の余地がある。特に、作動空間の閉じ込み始めにおいて、十分量のガスおよび油を逃がすことができない場合、異常高圧が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、スクリュ圧縮機において、作動空間の大きさの変化に合わせて作動空間から適量のガスおよび油を逃がし、特に作動空間の閉じ込み始めにおける異常高圧を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、互いに噛合する雄ロータおよび雌ロータと、前記雄ロータおよび前記雌ロータを収容し、吸入口および吐出口が設けられたケーシングとを備え、前記ケーシング内では、前記吸入口と連通する吸入空間と、前記吐出口と連通する吐出空間と、前記雄ロータと前記雌ロータとの間に位置する作動空間とが形成されており、前記雄ロータおよび前記雌ロータの吐出側端面に対向する前記ケーシングの吐出側壁面に開口するように、前記吐出空間と前記作動空間とを連通する凹部が設けられており、前記凹部は、開口部の開口縁が前記吐出口の開口縁と連続しており、前記開口部の先端方向ほど深さが浅い複数段状である、スクリュ圧縮機を提供する。
【0010】
この構成によれば、ガスおよび油を吐出空間に逃がすことができ、作動空間の異常高圧を抑制できる。特に、閉じ込み始めの作動空間が大きいときには凹部の深い部分を利用して多量のガスおよび油を吐出空間へと逃がすことができる。そして、作動空間が小さいときには凹部の浅い部分を利用して少量のガスおよび油を吐出空間へと逃がすことができる。従って、作動空間の大きさの変化に合わせて作動空間から適量のガスおよび油を逃がすことができ、特に作動空間の閉じ込み始めにおける異常高圧を抑制できる。また、このように作動空間の大きさの変化に合わせて複数段状の凹部を形成しているため、必要以上に凹部を深く形成する必要がない。よって、軸受や給油流路などの他の構成の配置を阻害せず、設計上も有効である。
【0011】
前記ケーシングは、前記作動空間を部分的に塞ぎ、前記吐出空間と前記作動空間とを部分的に仕切るように延在する舌状部を有し、前記雌ロータの回転軸が延びる方向において、前記舌状部の前記雌ロータと反対側には前記吐出空間が広がっていてもよい。
【0012】
この構成によれば、舌状部によって作動空間を部分的に塞ぐことができるため、ケーシング内の密閉性を高めて圧縮効率を向上できる。また、舌状部の背面側(雌ロータの回転軸が延びる方向において舌状部の雌ロータと反対側)には吐出空間が広がっているため、凹部を介して作動空間から吐出空間へと逃がすガスおよび油の量を多くすることができる。
【0013】
前記凹部の前記開口部の先端は、前記雄ロータおよび前記雌ロータのそれぞれの中心点を結ぶ仮想線まで延びているか、または前記仮想線を跨いで延びていてもよい。
【0014】
この構成によれば、作動空間が小さくなって消失する直前まで作動空間からガスおよび油を逃がすことができる。詳細には、作動空間が小さくなって消失する直前には上記仮想線付近に作動空間が位置するため、当該位置まで凹部の先端が延びていることで消失直前の小さくなった作動空間からもガスおよび油を逃がすことができる。
【0015】
前記凹部の複数段形状は、少なくとも部分的に面取りされていてもよい。
【0016】
この構成によれば、ガスおよび油を作動空間から凹部を介して吐出空間へと滑らかに流すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スクリュ圧縮機において、作動空間の閉じ込み始めにおける異常高圧の抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るスクリュ圧縮機の圧縮部の吸込側端部における断面図。
図2】本発明の第1実施形態に係るスクリュ圧縮機の圧縮部から雄ロータおよび雌ロータを取り外した吐出側端部における断面図。
図3図2のIII-III線に沿ったケーシングの吐出側壁の一部の断面の断面図。
図4】ケーシングの吐出側壁の斜視図。
図5】回転する雄ロータおよび雌ロータを示す第1断面図。
図6】回転する雄ロータおよび雌ロータを示す第2断面図。
図7】回転する雄ロータおよび雌ロータを示す第3断面図。
図8】回転する雄ロータおよび雌ロータを示す第4断面図。
図9】回転する雄ロータおよび雌ロータを示す第5断面図。
図10】回転する雄ロータおよび雌ロータを示す第6断面図。
図11図5における作動空間を示す断面図。
図12図6における作動空間を示す断面図。
図13図7における作動空間を示す断面図。
図14図8における作動空間を示す断面図。
図15図9における作動空間を示す断面図。
図16図10における作動空間を示す断面図。
図17】第2実施形態に係るスクリュ圧縮機のケーシングの吐出側壁の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1~4を参照して、本発明の第1実施形態に係るスクリュ圧縮機の圧縮部1の構成について説明する。図では、後述する雄ロータ10と雌ロータ20の回転軸方向が符号Xで示されている。また、回転軸方向(X方向)に垂直な断面において、雄ロータ10の回転軸と雌ロータ20の回転軸とを通る直線に対して平行な方向(Y方向)であり、図1では水平方向が符号Yで示されている。また、X方向において垂直な断面において、Y方向に対して垂直な方向であり、図1では鉛直方向が符号Zで示されている。Z方向上側を単に上側、Z方向下側を単に下側と称することもある。ただし、当該配置は一例として示すものであり、スクリュ圧縮機の配置方向を限定するものではない。
【0021】
図1,2を参照して、圧縮部1は、互いに噛合する雄ロータ10および雌ロータ20と、雄ロータ10および雌ロータ20を収容するケーシング30とを含んでいる。
【0022】
ケーシング30には、空気を吸入する吸入口31(図1において模式的に示す)と、空気を吐出する吐出口32(図2において斜線部で示す)とが設けられている。本実施形態では、吸入口31がケーシング30の上部に設けられ、吐出口32がケーシング30の下部に設けられている。従って、圧縮部1では、ガスを、上方から吸入口31を介して吸気し、内部で圧縮し、下方へ吐出口32を介して吐出する。本実施形態では、圧縮対象のガスとして空気を例に以下説明する。
【0023】
ケーシング30内には、吸入口31と連通する吸入空間S1と、吐出口32と連通する吐出空間S2とが画定されている。吸入空間S1および吐出空間S2は、雄ロータ10と雌ロータ20とによって区分されている。なお、ケーシング30は鋳物で全体が構成されているが、ここでは図示を明瞭にするためにケーシング30の内面のみが図示されている。
【0024】
雄ロータ10は、回転軸部材11と、回転軸部材11の周囲に固設された本体部12とを有している。同様に、雌ロータ20は、回転軸部材21と、回転軸部材21の周囲に固設された本体部22とを有している。雄ロータ10および雌ロータ20は、ケーシング30内でモータ(図示せず)によって回転駆動され、互いに噛合して空気を圧縮する。本実施形態では、雄ロータ10は4つの歯を有し、雌ロータ20は6つの歯を有している。雄ロータ10および雌ロータ20が互いに噛合し、雄ロータ10の歯が雌ロータ20の歯溝に収まると、雄ロータ10の歯先と雌ロータ20の歯溝との間に作動空間S3が形成される。作動空間S3の詳細については後述する。
【0025】
図3,4を参照して、ケーシング30は、雄ロータ10および雌ロータ20の本体部12,22の吐出側端面12a,22aに対向する吐出側壁面30aに開口するように、前記吐出空間S2と前記作動空間S3とを連通する凹部33を有している。凹部33はX方向に凹んでいる。凹部33は、圧縮部1の吐出側端部において雄ロータ10の歯先と雌ロータ20の歯溝との間に形成される作動空間S3に通じるように設けられている。即ち、この凹部33を介して、上記作動空間S3が吐出空間S2と連通する。なお、本実施形態の凹部33は、鋳物のケーシング30に対して機械加工が施されたものである。凹部であるかどうかの判断は、表面粗さを測定することにより行うことができる。また、目視確認による鋳肌面との機械加工面との性状の違いから判断することも可能である。
【0026】
凹部33は、開口部33aを有し、開口部33aの開口縁33bが吐出口32の開口縁32aと連続している。そのため、凹部33の開口部33aは、吐出口32と連続している一端と、行き止まりとなっている他端とを有している。すなわち、凹部33の開口部33aは、吐出口32と連続している。より詳細には、凹部33の開口部33aは、一端が吐出口32と連続しており、他端は吐出口32と連続していない。開口部33aの形状は、作動空間S3の閉じ込み直後から作動空間S3の容量が略ゼロとなる状態までを通して凹部33を介して空気および油を作動空間S3から吐出空間S2に逃がすことができる形状であれば、特に限定されない。例えば、開口部33aの形状は一端から他端に向かって一方向に延びる細長い形状である。
【0027】
凹部33は、開口部33aの先端33c方向ほど深さが浅い複数段状である。すなわち、本実施形態では、凹部33の深さが一端から他端に向かうほど浅くなっている。凹部33の開口部33aの先端33cとは、吐出口32と連続していない端部を意図する。凹部33の開口部33aの先端33c方向ほど深さが浅いとは、吐出口32と連続している開口縁32aに対向する凹部33の底までの深さよりも、吐出口32と連続していない開口縁33bに対向する凹部33の底までの深さの方が浅いことを意図する。図3に示すように、本実施形態では、凹部33は、2段形状を有している。凹部33は、第1段部34と、第2段部35とを有しており、第1段部34は第2段部35よりも上側(先端33c側)に形成されている。第1段部34に対向する凹部33の開口部33aは凹部33の開口部33aの先端33cを形成している。第1段部34は、深さd1の段差であり、第2段部35は、深さd2の段差である。本実施形態において開口部33aの先端方向ほど深さが浅いとは、深さd1が、深さd2よりも小さい(d1<d2)ことを意図する。なお、深さd1は、吐出側壁面30aと平行な第1段部34の端面と、吐出側壁面30aとの間の距離を意図する。また、深さd2は、吐出側壁面30aと平行な第2段部35の端面と、吐出側壁面30aとの間の距離を意図する。第1段部34の端面または第2段部35の端面が吐出側壁面30aに対して平行でない場合、吐出側壁面30aから第1段部34の端面または第2段部35の端面へと引いた垂線のうち最も短い距離を深さd1またはd2とする。深さd1は、深さd2よりも小さく、第1段部34が後述の給油流路36に達しなければ、具体的な深さは限定されない。第2段部35のZ方向の高さも第2段部35が給油流路36に達しなければ、具体的なZ方向の高さは限定されない。第1段部34は、直角の角部が面取りされた面取部34aを有している。第2段部35は、面取りされていない鈍角の角部35aを有している。また、第1段部34に近いケーシング30の内部には軸受(図示せず)に給油するための給油流路36が設けられている。
【0028】
特に図2を参照して、凹部33は、鉛直方向(Z方向)において、雄ロータ10の中心点Pmと雌ロータ20の中心点Pfを結ぶ仮想線Lまで延びている。凹部33の先端は、鉛直方向(Z方向)において、雄ロータ10の中心点Pmと雌ロータ20の中心点Pfを結ぶ仮想線Lに達している。代替的には、凹部33は、仮想線Lを跨いで延びていてもよい。なお、本実施形態においては、凹部33は、吐出側壁面30aにおいて仮想線Lに相対的に近づくほど深さが浅くなるように形成されている。
【0029】
図5~10および図11~16を参照して、雄ロータ10および雌ロータ20の回転に伴って大きさが変化する作動空間S3と、当該作動空間S3と凹部33との位置関係とについて説明する。図5~10は、本発明の第1実施形態に係るスクリュ圧縮機の圧縮部の吐出側端部における断面図である。
【0030】
図5~10では、雄ロータ10および雌ロータ20が矢印Aの方向に回転する様子が順に示されている。また、図11~16では、図5~10における作動空間S3がそれぞれ示されている。
【0031】
雄ロータ10および雌ロータ20が回転すると、空気および油が閉じ込められる作動空間S3が形成される。作動空間S3は、閉じ込み直後の図5図11)の状態において最も大きく、その後の図6~10(図12~16)の状態になるにつれて順に小さくなっている。
【0032】
図11~16では、作動空間S3と凹部33の付近が拡大された拡大図が示されている(二点鎖線円参照)。拡大図では、作動空間S3と凹部33の重複領域Rが斜線を付されて示されている。重複領域Rは、作動空間S3の空気および油を吐出空間S2へと逃がすための流路を示している。重複領域Rが大きいほど多量の空気および油を作動空間S3から吐出空間S2へと逃がすことができる。また、重複領域Rの(X方向の)深さが深いほど、多量の空気および油を作動空間S3から吐出空間S2へと逃がすことができる。
【0033】
閉じ込み始めの図11~13においては、凹部33の深さが第1段部34よりも深い第2段部35乃至面取部34a(図3,4参照)に合わせて相対的に大きな面積の重複領域Rが形成されている。その後、図14~16においては、作動空間S3が徐々に小さくなり、凹部33の深さが第2段部35よりも浅い面取部34a乃至第1段部34(図3,4参照)に合わせて相対的に小さな重複領域Rが形成されている。従って、変化する作動空間S3の大きさに合わせて空気および油を逃がすための流路(凹部33によって画定される溝)の大きさも変化している。
【0034】
本実施形態によれば、凹部33を介して空気および油を作動空間S3から吐出空間S2に逃がすことができ、作動空間S3の異常高圧を抑制できる。特に、閉じ込み始めの作動空間S3が大きいときには凹部33の深い部分(第2段部35)を利用して多量の空気および油を吐出空間S2へと逃がすことができる。そして、作動空間S3が小さいときには凹部33の浅い部分(第1段部34)を利用して少量の空気をおよび油を吐出空間S2へと逃がすことができる。従って、作動空間S3の大きさに合わせて適切な量の空気および油を吐出空間S2に逃がすことができ、特に作動空間S3の閉じ込み始めにおける異常高圧を効果的に抑制できる。また、必要以上に凹部33を深く形成する必要がないため、軸受(図示せず)や給油流路36などの他の構成の配置を阻害せず、設計上も有効である。
【0035】
また、図2図16を合わせて参照して、凹部33が仮想線Lまで延びているため、作動空間S3が小さくなって消失する直前まで空気および油を逃がすことができる。詳細には、作動空間S3が小さくなって消失する直前には仮想線L付近に作動空間S3が位置するため、当該位置まで凹部33の先端33cが延びていることで消失直前の小さくなった作動空間S3からも空気および油を逃がすことができる。
【0036】
また、第1段部34に面取部34aが設けられているため、空気および油を作動空間S3から凹部33を介して吐出空間S2へと滑らかに流すことができる。
【0037】
(第2実施形態)
図17に示す第2実施形態のスクリュ圧縮機は、吐出側壁面30aの構成が第1実施形態とは異なる。これに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0038】
本実施形態の図17は、第1実施形態の図4に対応している。本実施形態では、ケーシング30は、作動空間S3を部分的に塞ぎ、吐出空間S2と作動空間S3とを部分的に仕切るように延在する舌状部37を有している。
【0039】
舌状部37は、薄い板状であり、吐出口32が形成されている吐出側壁面30aの内部において凹部33と接続するようにケーシング30を切削して形成されている。これにより、雌ロータ20の回転軸が延びる方向(X方向)において、舌状部37の背面側(雌ロータ20と反対側)には、仮想線L方向(Y方向)に沿ってケーシング30が切り欠かれた切欠空間38が形成されている。切欠空間38は、凹部33と接続するように形成され、吐出空間S2は切欠空間38により拡大されている。
【0040】
本実施形態によれば、舌状部37によって作動空間S3を部分的に塞ぐことができるため、ケーシング30内の密閉性を高めて圧縮効率を向上できる。また、舌状部37の背面側(雌ロータ20の回転軸が延びる方向において舌状部37の雌ロータ20と反対側)に吐出空間S2が広がっているため、第1実施形態と比べて作動空間S3から凹部33を介して吐出空間S2へと逃がす空気および油の量を大きくすることができる。
【0041】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、凹部33は、3段以上で構成されていてもよい。また、凹部33の複数段形状において、全段が面取りされてもよいし、一部の段が面取りされてもよい。また、切欠空間38は、鋳造によって形成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 圧縮部
10 雄ロータ
11 回転軸部材
12 本体部
12a 吐出側端面
20 雌ロータ
21 回転軸部材
22 本体部
22a 吐出側端面
30 ケーシング
30a 壁面(吐出側壁面)
31 吸入口
32 吐出口
32a 開口縁
33 凹部
33a 開口部
33b 開口縁
33c 先端 34 第1段部
34a 面取部
35 第2段部
35a 角部
36 給油流路
37 舌状部
38 切欠空間
S1 吸入空間
S2 吐出空間
S3 作動空間
R 重複領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17