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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/20 20060101AFI20240402BHJP
   H04W 68/02 20090101ALI20240402BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20240402BHJP
【FI】
H04M3/20 C
H04W68/02
H04W4/42
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021048708
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147462
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 秀之
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284131(JP,A)
【文献】特開2003-018052(JP,A)
【文献】特開2003-060546(JP,A)
【文献】特開平11-205859(JP,A)
【文献】特開平04-129365(JP,A)
【文献】特開平07-143533(JP,A)
【文献】特開平09-270874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/14-7/26
H04J3/00-3/26
H04L5/22-5/26
12/00-12/22
12/42-12/437
12/50-12/66
45/00-49/9057
H04M3/00
3/08-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q1/20-1/26
3/52
11/00-11/08
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割多元接続の通信方式における通話用の特定スロットで地上設備と第一の無線通信装置とで通話を行い、前記通信方式における通話用の空きスロットで地上設備と第二の無線通信装置とで通話を行う中央制御局を有する無線通信システムであって、
前記中央制御局は、前記通信方式における制御用の特定スロットに前記第一の無線通信装置への呼出要求又は前記第二の無線通信装置への呼出要求を含めて送信し、
前記第二の無線通信装置は、前記制御用の特定スロットを監視し、前記第一の無線通信装置への呼出要求を受信すると当該第一の無線通信装置と前記地上設備との通話のモニタを行い、当該モニタ中に、前記第二の無線通信装置への呼出要求を受信すると前記モニタを中断して当該呼出要求の通話を開始することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
中央制御局は、制御用の特定スロットに優先度が高い優先通話の呼出要求を含めて送信し、
第二の無線通信装置は、前記制御用の特定スロットを監視し、前記優先通話の呼出要求を受信すると、前記モニタ中であれば当該モニタを中断し、前記地上設備と通話中であれば当該通話を中断して、前記優先通話を開始することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
第二の無線通信装置は、前記地上設備との通話が終了した場合に、制御用の特定スロットで地上設備と前記第一の無線通信装置との通話が継続している旨の情報を受信すると、当該通話のモニタを再開することを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
時分割多元接続の通信方式における通話用の空きスロットで地上設備と通話を行う無線通信装置であって、
前記通信方式における制御用の特定スロットを監視し、前記特定スロットで地上設備と他の無線通信装置とで行われる通話の呼出要求を受信すると、当該通話のモニタを行い、当該モニタ中に、前記特定スロットで前記地上設備から呼出要求を受信すると、前記モニタを中断して当該呼出要求の通話を開始することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
制御用の特定スロットを監視し、前記特定スロットで優先度が高い優先通話の呼出要求を受信すると、前記モニタ中であれば当該モニタを中断し、前記地上設備と通話中であれば当該通話を中断して、前記優先通話を開始することを特徴とする請求項4記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記地上設備との通話が終了した場合、地上設備と前記他の無線通信装置とで通話が継続していると、当該通話のモニタを再開することを特徴とする請求項4又は5記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の無線システム等に用いられる無線通信システム及び無線通信装置に係り、特に、無線通信装置において、無線通話のモニタを行っている場合でも、空きスロットを用いた通話の呼出があれば当該通話を開始でき、利便性を向上させることができる無線通信システム及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
無線通信システムには、列車無線システムに用いられるものがある。
このような無線通信システムでは、地上局と列車に搭載された車上局との間の通信(列車無線)と、地上局と保守員が携帯する保守端末(無線通信装置)との間の通信(保守無線)を、TDMA(Time Division Multiple Access/時分割多元接続)方式を用いて実現するものがあった。
【0003】
列車無線では、運行管理者が操作する地上局である列車無線用通信卓と、各列車に搭載された車上局(移動局)との間で音声通話及び車両情報のデータ通信を行う。
また、保守無線では、保守作業の管理者が操作する地上局である保守用通信卓と、保守作業員が携帯する保守端末との間、又は保守端末間で音声通信を行う。
【0004】
また、保守端末は、動作モード(受信モード)として、列車無線モニタモードと保守無線モードとを備えている。保守端末は、列車無線モニタモードでは、列車無線をモニタ(傍受)する動作を行い、保守無線モードでは、保守用通信卓との間、又は保守端末間で音声通話を行う。
保守端末の制御部は、当該保守端末の操作部から設定された動作モードを保持しており、当該動作モードに応じて各部を制御して、適切な動作を行う。
【0005】
そして、無線通信システムには、中央制御装置が設けられており、列車無線及び保守無線における回線制御や呼制御を行って、各種の通信を実現する。
【0006】
[保守端末におけるモード切替の処理:図6
ここで、保守端末におけるモード切替の処理について図6を用いて説明する。図6は、保守端末におけるモード切替の処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、保守端末の制御部は、操作部からモード切替操作が行われたかどうかを判断し(S31)、行われていない場合には、S31に戻って操作を待ち受ける。
【0007】
また、処理S31でモード切替操作が行われた場合には、制御部は、切り替え先のモードが列車無線モニタモードか保守無線モードかを判断する(S32)。切り替え先が列車無線モニタモードであれば、列車無線モニタモードに設定し(S33)、保守無線モードであれば、保守無線モードに設定して(S34)、処理を終わる。
このようにして、保守員が携帯する保守端末におけるモード切替が行われる。
【0008】
[従来の保守端末における動作:図7
次に、従来の保守端末における動作について図7を用いて説明する。図7は、従来の保守端末における動作を示すフローチャートである。
従来の無線通信システムでは、TDMAの音声通話用のチャネルとしてT1,T2を備えており、列車無線ではT1を使用し、保守無線ではT2を使用する。
【0009】
そして、図7に示すように、保守端末の制御部は、動作が開始されると、現在設定されている受信モードが列車無線モニタモードであるか、保守無線モードであるかを判断する(S41)。
設定されている受信モードが列車無線モニタモードであれば、制御部は、無線部を制御してT1で受信を待ち受ける(S42)。
【0010】
制御部は、T1で着信があったかどうかを判断し(S43)、着信がなければ処理S41に戻る。
処理S43で着信があった場合には、制御部は、列車無線モニタを行い(S44)、終話(通話が終了)したかどうかを判断し(S45)、終話していなければ(Noの場合)、処理S44に戻ってモニタを続ける。
また、処理S45で、終話した場合(Yesの場合)には、制御部は、処理S41に戻って同様の処理を繰り返す。
【0011】
処理S41で、設定されている受信モードが保守無線モードであった場合には、制御部は、T2で受信を待ち受け(S46)、着信があったかどうかを判断し(S47)、着信がなければ処理S41に戻る。
また、処理S47で着信があった場合には、制御部は、保守無線通話を行い(S48)、終話したかどうかを判断し(S49)、終話していない場合(Noの場合)には、処理S48に戻って通話を継続する。
処理S49で終話した場合(Yesの場合)には、制御部は、処理S41に戻る。
このようにして、従来の保守端末における動作が行われていた。
【0012】
つまり、従来の保守端末では、受信モードによって待ち受けるスロットを切り替えるため、列車無線モニタモードが設定されていた場合には、スロットT1でモニタを行うのみであり、スロットT2で本来の保守無線の呼出要求があっても受信することはできない。
【0013】
[関連技術]
尚、無線通信システムの従来技術としては、特開2014-155210号公報「無線通信システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、モニタ装置から遠い位置にある基地局を介して行われる音声通話をモニタすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2014-155210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、従来の無線通信システムでは、無線通信装置(保守端末)において、設定された受信モードによって受信スロットが決まるため、列車無線モニタモードが設定されている場合には、別のスロットで保守無線の通話の呼出要求が発生しても、受信できず不便であるという問題点があった。
【0016】
尚、特許文献1には、無線通信装置が、移動通話をモニタしている際に、制御チャネルを監視して、当該制御チャネルで、音声チャネルの空きスロットを利用して行われる保守通話の呼出要求を受信すると、モニタを中断して別の通話を行うことは記載されていない。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、通話のモニタ中に、空きスロットを用いた通話の呼出要求を制御用チャネルで受信すると、モニタを中断して当該通話を開始することができ、利便性を向上させることができる無線通信システム及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、時分割多元接続の通信方式における通話用の特定スロットで地上設備と第一の無線通信装置とで通話を行い、当該通信方式における通話用の空きスロットで地上設備と第二の無線通信装置とで通話を行う中央制御局を有する無線通信システムであって、中央制御局は、当該通信方式における制御用の特定スロットに第一の無線通信装置への呼出要求又は第二の無線通信装置への呼出要求を含めて送信し、第二の無線通信装置は、制御用の特定スロットを監視し、第一の無線通信装置への呼出要求を受信すると当該第一の無線通信装置と地上設備との通話のモニタを行い、当該モニタ中に、第二の無線通信装置への呼出要求を受信するとモニタを中断して当該呼出要求の通話を開始することを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、中央制御局は、制御用の特定スロットに優先度が高い優先通話の呼出要求を含めて送信し、第二の無線通信装置は、制御用の特定スロットを監視し、優先通話の呼出要求を受信すると、モニタ中であれば当該モニタを中断し、地上設備と通話中であれば当該通話を中断して、優先通話を開始することを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、第二の無線通信装置は、地上設備との通話が終了した場合に、制御用の特定スロットで地上設備と第一の無線通信装置との通話が継続している旨の情報を受信すると、当該通話のモニタを再開することを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、時分割多元接続の通信方式における通話用の空きスロットで地上設備と通話を行う無線通信装置であって、当該通信方式における制御用の特定スロットを監視し、特定スロットで地上設備と他の無線通信装置とで行われる通話の呼出要求を受信すると、当該通話のモニタを行い、当該モニタ中に、特定スロットで地上設備から呼出要求を受信すると、モニタを中断して当該呼出要求の通話を開始することを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、上記無線通信装置において、制御用の特定スロットを監視し、当該特定スロットで優先度が高い優先通話の呼出要求を受信すると、モニタ中であれば当該モニタを中断し、地上設備と通話中であれば当該通話を中断して、優先通話を開始することを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、地上設備との通話が終了した場合、地上設備と他の無線通信装置とで通話が継続していると、当該通話のモニタを再開することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、時分割多元接続の通信方式における通話用の特定スロットで地上設備と第一の無線通信装置とで通話を行い、当該通信方式における通話用の空きスロットで地上設備と第二の無線通信装置とで通話を行う中央制御局を有する無線通信システムであって、中央制御局は、当該通信方式における制御用の特定スロットに第一の無線通信装置への呼出要求又は第二の無線通信装置への呼出要求を含めて送信し、第二の無線通信装置は、制御用の特定スロットを監視し、第一の無線通信装置への呼出要求を受信すると当該第一の無線通信装置と地上設備との通話のモニタを行い、当該モニタ中に、第二の無線通信装置への呼出要求を受信するとモニタを中断して当該呼出要求の通話を開始する無線通信システムとしているので、第二の無線通信装置が、例えば、第一の無線通信装置の無線通話のモニタ中に、自己宛ての呼出要求を制御用の特定スロットで受信すると、当該呼出要求の通話を行うことができ、モードによって固定されずに柔軟に情報を取得することができ、利便性を向上させることができる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、上記無線通信システムにおいて、中央制御局は、制御用の特定スロットに優先度が高い優先通話の呼出要求を含めて送信し、第二の無線通信装置は、制御用の特定スロットを監視し、優先通話の呼出要求を受信すると、モニタ中であれば当該モニタを中断し、地上設備と通話中であれば当該通話を中断して、優先通話を開始する無線通信システムとしているので、モニタ中や通話中であっても、優先度の高い優先通話を確実に受けることができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、時分割多元接続の通信方式における通話用の空きスロットで地上設備と通話を行う無線通信装置であって、当該通信方式における制御用の特定スロットを監視し、特定スロットで地上設備と他の無線通信装置とで行われる通話の呼出要求を受信すると、当該通話のモニタを行い、当該モニタ中に、特定スロットで地上設備から呼出要求を受信すると、モニタを中断して当該呼出要求の通話を開始する無線通信装置としているので、例えば、第一の無線通信装置の無線通話のモニタ中に、自己宛ての呼出要求を制御用の特定スロットで受信すると、当該呼出要求の通話を行うことができ、モードによって固定されずに柔軟に情報を取得することができ、利便性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本無線通信システムの概略構成図である。
図2】保守端末7の概略構成を示すブロック図である。
図3】TDMAスロットの構成を示す説明図である。
図4】列車無線モニタモードにおける保守端末7の処理を示すフローチャートである。
図5】優先度の高い通話による処理を示すフローチャートである。
図6】保守端末におけるモード切替の処理を示すフローチャートである。
図7】従来の保守端末における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、TDMAを用いた通信において、通話用の特定スロットで地上設備と第一の無線通信装置としての車上局とが行う移動通話を実現し、通話用の空きスロットで地上設備と第二の無線通信装置としての保守端末とが行う保守通話を実現する中央制御局を備え、中央制御局が、制御用の特定スロットに移動通話の呼出要求又は保守通話の呼出要求を含めて送信し、保守端末が、制御用の特定スロットを監視して、移動通話の呼出要求を受信すると、当該移動通話のモニタを行い、モニタ中であっても、制御用の特定スロットで保守通話の呼出要求を受信すると、当該モニタを中断して、保守通話を開始するようにしており、移動通話のモニタ中に保守通話の呼出が発生した場合に、当該保守通話を行うことができ、利便性を向上させると共に、保守対象となる設備の安全性を高めることができるものである。
【0029】
[本無線通信システムの概略構成:図1
本無線通信システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本無線通信システムの概略構成図である。尚、本実施の形態では、列車無線システムに適用した場合を例として説明するが、列車無線システムに限るものではない。
【0030】
図1に示すように、本無線通信システムは、列車無線用通信卓1と、保守無線用通信卓2と、中央制御局3と、基地局4と、列車5に搭載される車上局6と、保守作業員が携帯する保守端末7とを備えている。
この内、中央制御局3と、保守端末7が本無線通信システムの特徴部分であり、他の部分は、従来と同様の構成及び動作となっている。
尚、請求項に記載した地上設備は、列車無線用通信卓1と、保守無線用通信卓2を含むものとする。また、車上局6は、請求項に記載した第一の無線通信装置に相当し、保守端末7は、請求項に記載した第二の無線通信装置に相当する。
【0031】
本無線通信システムの各部について説明する。
列車無線用通信卓1は、従来と同様であり、運行管理者が操作して、列車5に搭載された車上局6との音声通話や、車両情報のデータ通信を行う。
保守無線用通信卓2は、従来と同様に、保守作業の管理者が操作し、保守作業員が携帯する保守端末7と音声通話を行う。
【0032】
中央制御局3は、従来と同様に、列車無線及び保守無線における回線制御や呼制御を行うと共に、本無線通信システムの特徴として、列車無線や保守無線による音声通話の呼出要求を保守端末7で常時受信可能とするよう、制御用のスロットに含めて送信する。
また、後述するように、それぞれの音声通話毎に固有の呼番号を付して管理している。
【0033】
基地局4は、中央制御局3に有線回線で接続すると共に、通信圏内の移動局6及び保守端末7と無線回線によって接続し、無線通信を行う。
車上局6は、列車5に搭載され、列車無線用通信卓1と音声通話を行うと共に、車両情報等のデータ送受信を行う。
【0034】
保守端末7は、保守作業員が携帯する無線通信装置であり、従来と同様に、列車無線のモニタや音声通話を行う。
特に、本無線通信システムの保守端末7は、後述するように、制御用のスロットを常時監視しており、当該スロットで保守無線通話の呼出要求を検出すると、列車無線のモニタ中であっても、モニタを中断して保守無線通話を開始するものである。
【0035】
更に、保守端末7は、保守無線通話中に、制御用のスロットで、一般の列車無線の音声通話や保守無線の音声通話より優先度の高い優先通話、例えば地震速報など緊急事態を連絡するための一斉通話を検出した場合には、保守無線通話を終了して、当該優先度の高い優先通話を行う。
保守端末7の動作については後述する。
【0036】
[保守端末7の構成:図2
保守端末7の構成について図2を用いて説明する。図2は、保守端末7の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、保守端末7は、制御部71と、無線部72と、記憶部73と、マイク75と、スピーカ76とを備えている。
また、無線部72には、無線通信を行うためのアンテナ72aが接続される。
制御部71は、記憶部73に記憶されたプログラムを起動して、保守端末7を構成する各部を制御し、保守端末7全体の動作を制御する。
【0037】
[TDMAスロット構成:図3
次に、本無線通信システムで用いられるTDMAスロットの構成について図3を用いて説明する。図3は、TDMAスロットの構成を示す説明図である。
図3に示すように、本システムのTDMAスロットは、スロット0~スロット3の4つのスロットで構成され、スロット0、スロット1は音声通話用のチャネルとして、それぞれT1,T2を割り当て、スロット2、スロット3はデータ通信用のチャネルD1,D2として用いられる。
【0038】
また、スロット2、3のデータチャネルは、MCA(Multi-Channel Access)における制御用チャネルとしても用いられ、本無線通信システムの特徴として、列車無線の音声通話用及び保守無線の音声通話の呼出要求が送信される。
本無線通信システムでは、列車無線の音声通話は、T1,T2の順で使用して行い、保守通話は、T2に空きがある場合に、T2を使用して行う。
列車無線の音声通話は、請求項に記載した移動通話に相当し、保守無線の音声通話は、保守通話に相当している。
【0039】
[保守端末における動作]
本無線通信システムの保守端末7における動作について説明する。
保守端末7は、従来と同様に、図6に示したモード切替の処理によって設定されたモードに従って動作を行う。
つまり、列車無線モニタモードが設定された場合には列車無線のモニタを行い、保守無線モードが設定された場合には保守無線による音声通話を行うが、各モードにおける動作が従来とは異なっている。
【0040】
例えば、本無線通信システムの保守端末7では、列車無線モニタモードであっても、保守通話の呼出があった場合には、保守通話を行う。
また、列車無線のモニタ又は保守通話を行っている場合に、より優先度の高い呼出があると、現在のモニタ又は通話を中断して、当該優先度の高い呼出による通話を開始する。優先度の高い通話としては、例えば地震一斉通報等の緊急通報がある。
【0041】
これらの動作を実現するため、本無線通信システムでは、図3に示したスロット3(チャネルD1)を制御チャネルとして使用し、中央制御局5が、列車無線及び保守無線の音声通話の呼出要求を受信すると、当該呼出要求に使用チャネルを付して、D1を用いて送信する。
保守端末7では、常時チャネルD1を監視して、呼出要求を受信するかどうかチェックし、音声通話の有無を検出する。
【0042】
そして、保守端末7の制御部71は、列車無線モニタモードであっても、チャネルD1で保守無線の呼出要求を受信すると、保守無線の通話に移行するよう制御する。
また、保守端末7の制御部71は、列車無線のモニタ中又は保守無線の通話中にもチャネルD1を監視して、優先度の高い通話の呼出要求があった場合には、当該優先度の高い通話に移行するよう制御する。
これらの処理について、以下、具体的に説明する。
【0043】
[列車無線モニタモードにおける処理:図4
保守端末7に列車無線モニタモードが設定されている場合の制御部71の処理について図4を用いて説明する。図4は、列車無線モニタモードにおける保守端末7の処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、保守端末7の制御部71は、列車無線モニタモードが設定されている場合、常時チャネルD1を監視して保守無線の着信があるかどうか、つまりチャネルD1に保守無線の呼出要求が含まれているかどうかを判断する(S11)。
【0044】
保守無線の呼出要求が含まれておらず、着信がなかった場合(Noの場合)、制御部71は、D1を監視して、列車無線の着信があるかどうか(列車無線の呼出要求が含まれているかどうか)を判断し(S12)、列車無線の着信もなかった場合(Noの場合)には、処理S11に戻ってチャネルD1の監視を続ける。
【0045】
処理S12で列車無線の着信があった場合(Yesの場合)、制御部71は、当該列車無線のモニタを行う(S13)。チャネルD1には、使用するチャネルも指定されており、例えばチャネルT1で列車無線のモニタを行う。
【0046】
制御部71は、列車無線のモニタを行っている際にも、チャネルD1の監視を行って保守無線の着信があるかどうかをチェックし、保守無線の着信がなければ(Noの場合)、モニタ中の列車無線が終話したかどうかを判断し(S15)、終話していなければ(Noの場合)、処理S13に移行して列車無線のモニタを継続する。処理S15で、列車無線が終話した場合(Yesの場合)には、処理S11に移行して、チャネルD1の監視を行う。
【0047】
また、処理S11、処理S14で保守無線の着信を検出した場合(Yesの場合)、制御部71は、列車無線のモニタを中断して保守無線通話の呼出を行って、指定されたチャネルT2を用いて保守無線通話を行う(S16)。
【0048】
そして、制御部71は、保守無線通話が終話したかどうかを判断し(S17)、終話していなければ(Noの場合)、処理S16に移行して保守無線通話を継続する。
処理S17で保守無線通話が終話した場合(Yesの場合)には、制御部71は、チャネルD1をチェックして列車無線が継続中であれば(Yesの場合)、処理S13に移行して、再びT1で列車無線のモニタを行う。
【0049】
例えば、中央制御局5において、保守端末7がモニタ中であった列車無線の通話に関する情報(呼番号等)を保持しておき、保守無線通話が終了した場合に、呼番号を基に、当該列車無線の通話が継続しているか否かを判断し、継続していれば、D1に当該呼番号及び使用チャネルを含めて送信することで、保守端末7において列車無線のモニタに復帰することが可能となるものである。呼番号は、例えば、スロット内のRICH(無線情報チャンネル)等によって送信される。
【0050】
また、処理S18で列車無線が継続中ではなく終了していた場合(Noの場合)、処理S11に戻って、チャネルD1の監視を行う。
このようにして、本無線通信システムの保守端末の列車無線モニタモードにおける処理が行われる。
【0051】
これにより、本無線通信システムでは、保守端末7に列車無線モニタモードが設定されていても、更に、列車無線のモニタ中であっても、保守無線の着信があった場合には迅速に保守無線通話を実現でき、保守作業に関する情報を保守作業員に確実に伝達できるものである。
【0052】
[優先度の高い通話による処理:図5
次に、保守端末7において、保守通話又は列車無線モニタが行われている状態で、優先度の高い通話があった場合の処理について図5を用いて説明する。図5は、優先度の高い通話による処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、保守端末7の制御部71は、保守通話中又は列車無線のモニタ中に、チャネルD1を監視して、優先度の高い通話の呼出があったかどうかを判断する(S21)。
【0053】
ここで、本無線通信システムでは、通話の種別毎に優先度が設定されており、中央制御局5は、呼出要求に種別を付してチャネルD1で送信する。
保守端末7の制御部71は、種別に対応する優先度を予め記憶しており、呼出要求に付された種別をチェックして、優先度を判断する。
【0054】
処理S21において、優先度の高い通話の着信がなかった場合(Noの場合)には、制御部71は、処理S21でチャネルD1の監視を続ける。
また、処理S21で優先度の高い通話の着信があった場合には(Yesの場合)、制御部71は、現在行っている保守無線通話又はモニタ(列車無線のモニタ)を中断し(S22)、優先度の高い通話を行う(S23)。
【0055】
そして、制御部71は、優先度の高い通話が終話したかどうかを判断し(S24)、終話していなければ(Noの場合)、処理S23に戻って通話を継続する。
また、処理S24で優先度の高い通話が終話した場合には(Yesの場合)、制御部71は、D1をチェックして、中断前にモニタしていた列車無線(元の列車無線)が継続しているかどうかを判断し(S25)、継続している場合(Yesの場合)には、当該列車無線のモニタに移行して(S26)、処理を終了する。
また、処理S25で元の列車無線が継続していなかった場合(Noの場合)には、そのまま処理を終了する。
このようにして、優先度の高い通話があった場合の処理が行われる。
【0056】
尚、ここでは、優先度の高い通話が保守無線の音声通話でも行われる場合を例として説明したが、列車無線のみに優先度の高い通話があった場合には、制御部71は、D1によりその旨認識し、現在の列車無線のモニタ又は保守通話を中断して、チャネルT1で列車無線のモニタを開始し、当該優先度の高い通話をモニタする。
【0057】
[実施の形態の効果]
本無線通信システム)は、TDMAを用いた通信において、通話用の特定スロットで地上設備と車上局6とが行う移動通話を実現し、通話用の空きスロットで地上設備と保守端末7とが行う保守通話を実現する中央制御局5を備え、中央制御局5が、制御用の特定スロットに移動通話の呼出要求又は保守通話の呼出要求を含めて送信し、保守端末7の制御部71が、制御用の特定スロットを監視して、移動通話の呼出要求を受信すると、当該移動通話のモニタを行い、モニタ中であっても、制御用の特定スロットで保守通話の呼出要求を受信すると、当該移動通話のモニタを中断して、保守通話を開始するようにしており、移動通話のモニタ中に保守通話の呼出が発生した場合には、保守作業員にとって重要度の高い保守通話を行うことができ、モードで固定されることなく柔軟に情報取得でき、利便性を向上させると共に、保守対象となる設備の安全性を高めることができる効果がある。
【0058】
また、本無線通信システムによれば、中央制御局5が、制御用の特定スロットに保守通話より優先度が高い通話の呼出要求を含めて送信し、保守端末7の制御部71が、制御用の特定スロットを監視し、優先度が高い通話の呼出要求を受信すると、移動通話のモニタ中であれば当該モニタを中断し、保守通話中であれば当該保守通話を中断して、当該優先度が高い通話を開始するようにしており、緊急地震一斉通報等の優先度の高い通話を優先して行って、情報伝達を確実にすることができる効果がある。
【0059】
上述した実施の形態では、無線通信システムが列車無線通信システムであり、車上局が第一の無線通信装置であり、保守端末が第二の無線通信装置である場合を例にあげて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、第一の無線通信装置と、第二の無線通信装置が異なるものであればよく、第二の無線通信装置が、第一の無線通信装置の通話をモニタするモニタモード(例えば実施の形態で説明した列車無線モニタモード)と、自身が通話する通話モード(例えば実施の形態で説明した保守無線モード)で動作するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、移動通話のモニタ中に、空きスロットを用いた別の通話の呼出要求を制御チャネルで受信すると、モニタを中断して当該別の通話を開始することができ、利便性を向上させることができる無線通信システム及び無線通信装置に適している。
【符号の説明】
【0061】
1…列車無線用通信卓、 2…保守無線用通信卓、 3…中央制御局、 4…基地局、 5…列車、 6…車上局、 7…保守端末、 71…制御部、 72…無線部、72a…アンテナ 73…記憶部、 74…操作表示部
図1
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図7