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特許7464557監視カメラ、監視カメラシステム及び監視カメラの校正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】監視カメラ、監視カメラシステム及び監視カメラの校正方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240402BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240402BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240402BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240402BHJP
   H04N 23/69 20230101ALI20240402BHJP
【FI】
H04N23/60
G02B7/04 E
G02B7/08 C
G03B15/00 S
H04N23/69
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021051113
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149118
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥平 将俊
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-059291(JP,A)
【文献】特開平08-054553(JP,A)
【文献】特開平02-226484(JP,A)
【文献】特開2001-285872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
G02B 7/04
G02B 7/08
G03B 15/00
H04N 23/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズームレンズ、撮像素子、画像処理・制御部を備えた監視カメラにおいて、
前記ズームレンズは、前記画像処理・制御部からの信号に基づいて電動制御され、
前記画像処理・制御部は、
入力画像を保存する現在画像記憶部、
基準画像を保存する基準画像記憶部、
前記入力画像と前記基準画像を比較して前記入力画像のズーム倍率を算出する倍率算出部、
前記入力画像を撮影した際のズームレンズの制御値と前記ズーム倍率とを保存する倍率/制御値記憶部、
前記倍率/制御値記憶部に保存された前記制御値と前記ズーム倍率との関係に基づいて、ズームレンズを制御するズームレンズ制御部、
を有する監視カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の監視カメラ装置において、
前記基準画像記憶部は、倍率既知画像記憶部を有し、
前記倍率算出部は、前記入力画像と前記倍率既知画像記憶部に保存された画像を比較して前記入力画像のズーム倍率を算出する、
ことを特徴とする監視カメラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の監視カメラ及び制御端末からなる監視カメラシステムであって、
前記監視カメラは、前記基準画像記憶部に記憶された前記基準画像と前記現在画像記憶部に記憶された第1の入力画像を比較して、第1の入力画像撮影時の第1のズーム倍率を算出し、
前記基準画像と前記現在画像記憶部に記憶された第2の入力画像を比較して、第2の入力画像撮影時の第2のズーム倍率を算出し、
前記第1のズーム倍率、前記第1の入力画像撮影時の制御値、前記第2のズーム倍率及び前記第2の入力画像撮影時の制御値に基づいて、ズーム倍率/制御値の関係を算出し、
前記制御端末からズーム倍率変更要求に対して、前記監視カメラは、前記ズーム倍率/制御値の関係に基づいて、ズームレンズを制御する
ことを特徴とする監視カメラシステム。
【請求項4】
制御値によりズーム倍率を変更する監視カメラの校正方法であり、
基準画像と入力画像を比較して、前記入力画像のズーム倍率を算出する第1の工程と、
前記入力画像を撮影した時の制御値と、前記算出したズーム倍率と、を保存する第2の工程と、
指定されたズーム倍率に対応する、前記第2工程で記憶した制御値により、前記監視カメラのズーム倍率を変更する第3の工程と、
を含む監視カメラの校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ、監視カメラシステム及び監視カメラの校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の監視カメラ、中でも屋外用監視カメラには、遠方の画像を鮮明に取得するために電動ズームレンズを搭載しているものがある。そして、電動ズームレンズの倍率制御は、電動ズームレンズのレンズ位置を制御するためのパラメータである制御値を用いて行われている。そして、電動ズームレンズの制御値としては、ズームレンズに備えられたポテンショメータのポテンショ電圧を用いることが多い。
このため、電動ズームレンズを用いた監視カメラでは、個々のカメラについて、ポテンショ電圧とズーム倍率の関係が記憶されており、所望のズーム倍率を得たい場合には、その倍率に対応した制御値であるポテンショ電圧となるように電動ズームレンズを操作して、所望のズーム倍率を実現することとなる。
【0003】
一方、カメラ製品は、製造時にレンズや撮像素子の設定など様々な条件を精緻に調整して出荷しているが、これらの設定は、外部環境や何らかの衝撃、経年劣化などによって変動しやすい。
【0004】
このため、特許文献1では、工場出荷時に行われたズームレンズのバックフォーカス調整が経年劣化によって誤差を生じた場合、コントラスト信号値のフォーカスレンズ位置に対する曲線の接線の傾きを用いて検知し、製品がユーザの手に渡った後に修正するための方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6063347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
監視カメラの電動ズームレンズについても、屋外等の過酷な条件下で長時間使用されると、上述の制御値であるポテンショ電圧とズーム倍率の関係について、経年劣化などにより校正が必要となることがある。
しかし、特許文献1においては、バックフォーカス調整の方法については開示しているものの、電動ズームレンズの倍率とレンズ位置の制御値(ポテンショ電圧)との経年劣化の対応については検討されていない。
【0007】
そこで、本発明では、ズームレンズの倍率(以下、「ズーム倍率」という。)とレンズ位置の制御値(以下、「制御値」という。)の関係を校正することが可能な監視カメラ、監視カメラシステム及び監視カメラの校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の監視カメラの一つは、
ズームレンズ、撮像素子、画像処理・制御部を備え、前記ズームレンズは、前記画像処理・制御部からの信号に基づいて電動制御される。
そして、前記画像処理・制御部は、入力画像を保存する現在画像記憶部、基準となる画像を保存する基準画像記憶部、前記入力画像と前記基準となる画像を比較して入力画像のズーム倍率を算出する倍率算出部、前記入力画像を撮影した際のズームレンズの制御値と前記ズーム倍率とを保存する倍率/制御値記憶部、及び、前記倍率/制御値記憶部に保存された前記制御値と前記ズーム倍率との関係に基づいて、ズームレンズを制御するズームレンズ制御部を有している。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、代表的な本発明の監視カメラシステムの一つは、監視カメラが、前記基準画像記憶部に記憶された前記基準画像と前記現在画像記憶部に記憶された第1の入力画像を比較して、第1の入力画像撮影時の第1のズーム倍率を算出し、前記基準画像と前記現在画像記憶部に記憶された第2の入力画像を比較して、第2の入力画像撮影時の第2のズーム倍率を算出し、前記第1のズーム倍率、前記第1の入力画像撮影時の制御値、前記第2のズーム倍率及び前記第2の入力画像撮影時の制御値に基づいて、ズーム倍率/制御値の関係を算出する。
そして、制御端末からズーム倍率変更要求に対して、前記監視カメラは、前記ズーム倍率/制御値の関係に基づいて、ズームレンズを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ズーム倍率とレンズ位置の制御値を校正することが可能な監視カメラ、監視カメラシステム及び監視カメラの校正方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】監視カメラの構成の概略図である。
図2】監視カメラシステムの概略図である。
図3】レンズ位置の原点を定めるフローチャートである。
図4】画像処理・制御部の構成の概略図である。
図5】実施例1を示すフローチャートである。
図6】画像処理・制御部(倍率既知画像記憶部を有している場合)の構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
なお、本開示において、ズームレンズの「レンズ位置」とは、ズームレンズに含まれるフォーカス、ズームなどのレンズ群の位置を総称するものである。また、レンズ位置の「原点」とは、以下で説明する「ズーム倍率」を定めるための基準となるレンズの位置であり、レンズ位置が「原点」であるときに撮影された画像は、等倍(倍率1倍)の画像として設定される。
また、「ズーム倍率」とは、電動ズームレンズの倍率を意味し、レンズ位置が原点の場合のズームレンズの焦点距離を1とした場合に、ズーム撮影時のズームレンズの焦点距離を比で表したものである。
また、「制御値」とは、レンズ位置を電動制御する際のパラメータであって、例えば、ポテンショメータのポテンショ電圧を用いることができる。
また、「入力画像」とは、撮像素子であるセンサから供給される画像データを意味し、「基準画像」とは、「入力画像」の撮影時のズーム倍率を算出するために基準として用いる画像である。さらに、「原点画像」とは、レンズが原点に位置した場合に撮影された画像を意味し、原点画像は、基準画像として用いることができる。
【0013】
<監視カメラの構成>
図1は、本開示における監視カメラ100の構成図である。図1に示されたズームレンズ101は、フォーカスレンズ、ズームレンズ、アイリスなどから構成されるとともに、これらをモータで制御することが可能となっている。このため、モータの駆動によってレンズの焦点距離を変えれば、所望の画角の画像を撮影することができる。ズームレンズの構成は上記したものに限らず、多種多様な構成を採用することができる。
【0014】
また、モータの制御は、図1に示されるようにカメラに付属された画像処理・制御部102からモータドライバ105に制御信号が送られることによって実現される。画像処理・制御部の構成としては、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)103を用いることができるが、これに限定されるものではない。FPGAの一部または全部については、汎用の機械学習マシン、DSP(Digital Signal Processor)、ISP(Image Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、PLD(programmable logic device)などで代替してもよい。また、ハードウェアの一部または全部をネットワーク上のサーバに集中または分散してクラウド配置することによって、複数の制御端末201がネットワークを介して画像処理・制御部102を共同使用してもよい。
また、フォーカス、ズームなどの各レンズ群には、ポテンショメータが備え付けられており、ポテンショ電圧によって、それぞれの各レンズの位置を知ることが可能となっている。
【0015】
このため、ズームレンズの制御値であるポテンショ電圧とズームレンズのレンズ位置とズーム倍率は一対一に対応していることとなる。
なお、ズームレンズの制御値としては、レンズ位置を示すポテンショ電圧が一般的であるが、制御値はポテンショ電圧に限られるものではない。
また、ズームレンズやフォーカスレンズのポテンショメータのポテンショ電圧106は、ズームレンズからアナログ/デジタル変換器(ADC)107を経て、デジタル情報の画像データとしてFPGA103に供給される。
【0016】
ズームレンズによって得られた光学像は、撮像素子であるセンサー108の受光面に投影され、電気信号に変換されて、画像データとして画像処理部でもあるFPGA103に供給される。撮像素子としてのセンサー108は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などから構成される。
また、画像処理・制御部には、画像記憶部104が含まれており、FPGA103における画像処理に必要な画像を保存することができる。画像記憶部104及びこれに含まれる基準画像記憶部402、倍率/制御値記憶部406、原点画像記憶部601、倍率既知画像記憶部602は、不揮発性メモリーやその他の記憶デバイスで構成することができる。
【0017】
<監視カメラシステムの構成>
図2は、本開示における電動ズームレンズ付きの監視カメラ100を、監視カメラシステム200に適用した場合の実施形態を示している。
監視カメラシステムは、監視カメラと、画像モニタ機能を兼ねた制御端末201から構成される。
【0018】
制御端末201としては、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピュータ、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器を使用することができるである。
そして、監視カメラ100と制御端末201の間は、一般的にはLANケーブル250で接続され、画像データや制御情報を送受信することができる。
なお、監視カメラ100と制御端末201の間の通信経路は、例えば、無線通信を経たものであってもよいし、ネットワークであってもよい。
【0019】
監視カメラ100は、通常は、雲台などに設置され、雲台を動作させることによって、一定の方向や範囲を撮影することが可能となっている。また、雲台に備えられたプリセット機能などを用いると、監視カメラを自動的に一定の方向にセットすることも可能である。
このような監視カメラシステム200においては、ユーザ210は、制御端末201を通じて、監視カメラ100の画像を確認することができると共に、必要に応じて、画像を記録したり、記録した画像を再生することができる。
また、監視カメラ100の撮影範囲を変更するために、制御端末201を操作して撮影方向、撮影倍率などを変更することができる。
その他、撮影した画像に画像処理を施したり、特定の被写体を自動追尾して記録することが可能な場合もある。
【0020】
<ズーム倍率の設定>
ユーザ210が図2の監視カメラシステム200を用いて監視カメラ100のズーム倍率を指定する場合は、まず、制御端末201から監視カメラ100に、ズーム倍率に関する制御信号が送信される。監視カメラ100は、ズーム倍率に関する制御信号を受信すると、予め監視カメラに保存されているズーム倍率と制御値であるポテンショ電圧の関係に基づき、所望のズーム倍率に対応するポテンショ電圧を算出する。そして、画像処理・制御部102から、算出したポテンショ電圧となるようにモータドライバ105に制御信号が送られて、ズームレンズ101が所定の位置に移動し、所望のズーム倍率の画像を撮影、記録することなどができる。
【0021】
<ズーム倍率の誤差の抑制>
上述したようなズームレンズ101及び監視カメラシステム200において、個々の電動ズームレンズのバラつきを抑制するとともに、電動ズームレンズの倍率とレンズ位置の関係を適正に校正して、経年劣化によるズーム倍率の誤差を抑制する技術について、以下説明する。
【0022】
<電動ズームレンズの個体差の抑制>
カメラに採用する電動ズームレンズには、個体差が存在することが多い。このため、個々の電動ズームレンズの個体差による製品のばらつきを抑制するためには、例えば、所定の画角の画像を得るときの電動ズームレンズのレンズ位置を、個々の電動ズームレンズについて原点として正確に定めておくことが望ましい。
具体的には、例えば、カメラ製造時に、カメラ製品として決定しているWIDE端の画像を得るときのレンズ位置のポテンショ電圧を、個々の電動ズームレンズについて、原点として登録しておくことが望ましい。このような処理を個々のカメラに施すことにより、カメラ間の個体差のバラつきを抑制することが可能となる。
【0023】
具体的には、図3に示す以下の工程によって、レンズ位置の原点を定めることができる。
(ステップ301)カメラ製品として決定しているWIDE端画となる基準画像を設定する。
(ステップ302)電動ズームレンズのレンズ位置を物理的なWIDE側の限界まで移動する。
(ステップ303)画像を撮影
(ステップ304)撮影画像がWIDE端画の基準画像を一致しているか否かを判断し、一致していなければ、ステップ305に進み、一致していれば、ステップ306に進む。
(ステップ305)レンズ位置を少しTELE側に移動させ、ステップ303に戻り、移動したレンズ位置で撮影を行う。
【0024】
(ステップ306)ステップ304において、撮影画像が基準画像と一致していれば、その時のレンズ位置の制御値(ポテンショ電圧)を原点として記憶する。
このように、レンズ位置を徐々に移動させ、WIDE端画の基準画像と一致するまで、レンズ位置調整することにより、電動ズームレンズの原点位置を統一し、個体差をなくすことが可能となる。
なお、基準画像と電動ズームレンズによって得られた画像が一致していることを検知するためには、様々な画像比較技術を採用することができるが、例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)等のテンプレートマッチング手法を用いれば、両画像が一致したことを決定できる。
【0025】
上記の例では、レンズ位置の原点をWIDE端の付近に設定したが、原点の位置は、TELE端に設定してもよいし、WIDE端とTELE端の中間の位置に設定してもよい。
【0026】
<ズーム倍率と制御値の関係の設定>
次に、ズーム倍率とズームレンズの制御値(ポテンショ電圧)の関係の校正技術について説明する。
【0027】
まず、校正を実施するためのハードウエア構成を図4を用いて説明する。
監視カメラシステムの機能は、監視カメラの画像処理・制御部や制御端末によって実現されるが、以下では、後述する校正手順を実施するために必要な画像処理・制御部の構成について説明する。
【0028】
<監視カメラの画像処理・制御部の構成>
図4は監視カメラの画像処理・制御部102において、後述する校正手順を実施するために必要な構成の概略を示している。
図4の構成においては、現在画像記憶部401、基準画像記憶部402の2種類の画像記憶部が備えられている。
校正手順が行われている間は、現在画像記憶部401は、センサー108から逐次入力される画像(入力画像)の画像データを保持し、基準画像記憶部402及び倍率算出部405に画像データを供給することができる。
基準画像記憶部402は、画像の倍率を算出するための基準となる画像を記憶しており、例えば、電動ズームレンズが原点に位置した場合の原点画像を保持している。
【0029】
倍率算出部405は、基準画像を基準として、現在画像記憶部から供給された入力画像のズーム倍率を算出する。倍率算出部405は、2つの画像(例えば、基準画像と入力画像)について、一方の画像の特定領域に対応する他方の画像の画像倍率を求める機能を有しており、ハードウェアの回路として実現されてもよいし、パターンマッチング技術を用いたソフトウエアで実現されてもよい。
【0030】
倍率/制御値記憶部406は、倍率算出部405で算出したズーム倍率と現在画像の撮影時の制御値(ポテンショ電圧)を保存する。
【0031】
次に、図5を用いて、個々の監視カメラに施す校正の手順を説明する。
出荷された監視カメラに保存されている電動ズームレンズのズーム倍率とレンズ位置を制御するための制御値の関係は、経年劣化や気候的要因などを経ることによって、実際の使用の状況とずれを生じる可能性がある。このため、以下の工程によって、ズーム倍率と制御値の関係を、個々の監視カメラごとに校正することが可能となる。
【0032】
<実施例1>
(ステップ501)
まず、校正がスタートすると、ズームレンズの位置をレンズ位置の基準となる原点に合わせ、画像を撮影する。
校正を実施する時期は、カメラ製品の電源起動時、または任意の期間毎など自在に設定することができる。
(ステップ502)
ステップ501で撮影した画像は、現在画像記憶部401を経て、基準画像記憶部402に保存される。基準画像記憶部に保存された画像は基準画像と称する。
【0033】
(ステップ503)
次に、電動ズームレンズの位置をTELE側に変化させて、基準画像を撮影したときとカメラの方向を動かさずに同一の被写体を撮影し、現在画像記憶部401に新たな入力画像として保存する。
(ステップ504)
倍率算出部405において、基準画像記憶部402に保存された基準画像を基準として、現在画像記憶部401に保存された入力画像のズーム倍率を算出する。
(ステップ505)
入力画像の撮影時のレンズの制御値のデータ及びステップ504で算出した入力画像のズーム倍率のデータのデータのセット(以下、「データセット」という。)を倍率/制御値記憶部406に保存する。
【0034】
(ステップ506)
倍率/制御値記憶部406に保存されたデータセットの数が、ズーム倍率と制御値の関係を十分校正可能な所定の値に達した場合には、校正手順を終了する。
また、データセットの数が所定の値に達していない場合には、ステップ503に戻り、さらに異なるレンズ位置でのデータセットの取得をおこなう。
【0035】
このように、必要な数の制御値とズーム倍率のデータセットが倍率/制御値記憶部406に保存されるまで、入力画像の撮影を繰り返すことにより、倍率/制御値記憶部406に校正されたズーム倍率とレンズ位置の制御値の関係が保存されたこととなる。
【0036】
なお、基準画像をカメラ製品のTELE端画角の望遠画像として定めた場合には、電動ズームレンズの位置をTELE端から任意の間隔で少しずづWIDE側に移動させて、上記と同様の処置を行ってもよい。
【0037】
このようにして得た電動ズームレンズの倍率とポテンショ電圧の関係は、個々のカメラで実際に撮影した画像に基づき、基準画像を基準としてズーム倍率を算出して得られたものであるから、経年劣化の影響を校正した、正確なものとなっている。
【0038】
なお、入力画像を基準画像と比較してズーム倍率を算出する手法としては、様々な画像処理の手法を採用することができ、特定の手法に限定されるものではない。例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)等のテンプレートマッチング手法を用いれば、倍率算出を高速に行うことが可能である。
【0039】
つまり、本開示の監視カメラシステムによれば、監視カメラは、基準画像記憶部に記憶された基準画像と現在画像記憶部に記憶された第1の入力画像を比較して、第1の入力画像の倍率を判定し、第1の入力画像撮影時の制御値(ポテンショ電圧)をズーム倍率とともに倍率/制御値記憶部に保存する。そして、次にレンズ位置を変更して撮影され、現在画像記憶部に記憶された第2の入力画像と基準画像とを比較して、第2の入力画像の倍率を判定し、第2の入力画像撮影時の制御値(ポテンショ電圧)をズーム倍率とともに倍率/制御値記憶部に保存する。
【0040】
そして、監視カメラの画像処理・制御部は、少なくとも第1のズーム倍率、第1の入力画像撮影時の制御値(ポテンショ電圧)、第2のズーム倍率及び第2の入力画像撮影時の制御値(ポテンショ電圧)に基づいて、ズーム倍率/制御値の関係を算出する。
そして、監視カメラシステムにおいては、制御端末から監視カメラのズーム倍率変更の指令があった場合、ズーム倍率/制御値の関係に基づいて、所望のズーム倍率を得るための制御値(ポテンショ電圧)を算出し、監視カメラを駆動することにより、所望のズーム画像を得ることができる。
【0041】
なお、倍率/制御値記憶部に保存するズーム倍率と制御値の関係は、表形式で保存してもよいし、ズーム倍率と制御値の関係を関数として表現して保存してもよい。
また、倍率/制御値記憶部の保存内容は、再度の校正手続きが行われるたびに更新されることとなる。
【0042】
そして、通常の監視カメラシステム使用時において、ユーザ210からズーム倍率の指示が入力された場合は、倍率/制御値記憶部406に保存されたズーム倍率/制御値の関係から対応する制御値を特定し、ズームレンズ制御部407を通じて、電動ズーム制御信号をモータドライバに送信して電動ズームレンズを制御する。
【0043】
<実施例2>
上述の実施例1は、カメラ製品の電源起動時、または任意の期間毎などに、電動ズームレンズの位置を校正基準の原点に移動させ、校正の都度基準画像を取得するものである。
しかし、監視カメラを雲台のプリセット等の機能を用いて、一定の方向に作動させることができる場合には、必ずしも、校正の都度に基準画像を取得、保存する必要はなく、一度取得した基準画像を保存しておくとともに、校正時には、監視カメラを基準画像を取得したときと同一方向に向けた後に、実施例1のステップ503以降を行うことによっても校正を行うことができる。
このような校正手順によれば、基準画像を校正の都度撮影する手間が不要になるとともに、校正基準の原点が経年劣化によってずれた場合の影響を抑制することが可能となる。
【0044】
<実施例3>
上述の実施例1,2では、常に、基準画像として校正基準の原点として定めたWIDE端の場合の原点画像を用いた。しかし、本開示の発明はこれに限定されるものではなく、図6に示したような構成を用いて、基準画像を複数保存することも可能である。
例えば、基準画像記憶部402に基準画像としての原点画像を記憶する原点画像記憶部601と倍率既知画像記憶部602を設けてもよい。
ズーム倍率の高いレンズの場合、一つの基準画像からだけでは、すべての入力画像の倍率を計算することが困難になる可能性がある。つまり、校正基準の原点がカメラ製品のWIDE端画角として定められた場合には、画角の広い基準画像とズーム倍率の高いTELE端近傍の入力画像を比較しても、両画像間の重複関係が一意に定めることが困難となり、ズーム倍率を確定できない事象が発生する可能性がある。
このような場合には、原点画像の代わりに、倍率が既知の別の画像を基準画像して用意し、これと入力画像と比較することによって入力画像のズーム倍率を計算しても良い。
【0045】
このような場合には、図6に示すような、基準画像記憶部の一部として、倍率既知画像記憶部602を有する画像処理・制御部102を用いてもよい。
【0046】
図6は、図5で説明した基準画像記憶部402の構成を、原点画像記憶部601及び倍率既知画像記憶部602に分けて構成したものである。
倍率既知画像記憶部602は、倍率が既知の画像を保存する記憶部であり、原点画像を保存する基準画像記憶部402とともに入力画像のズーム倍率を判断するための基準となる画像を保存することができる。
倍率算出部405は、入力画像と原点画像を比較して現在画像のズーム倍率を算出してもよいし、入力画像と倍率既知画像とを比較して入力画像のスーム倍率を算出してもよい。
倍率算出部405の機能は、基本的に図5の場合と同様であるが、倍率既知画像を基準画像として入力画像のズーム倍率を算出する際には、倍率既知画像の倍率を勘案して、入力画像の倍率を算出することとなる。
つまり、倍率既知画像のズーム倍率が10倍であり、入力画像のズーム倍率が倍率既知画像のズーム倍率の5倍であった場合には、入力画像のズーム倍率は10倍×5倍=50倍と判断することとなる。
【0047】
具体的な校正手順としては、ズーム倍率と制御値のデータセットを取得する初期の段階では、原点画像を基準画像として、ズームレンズの位置をWIDE端から任意の間隔で少しずづTELE側に移動させながら、データセットを倍率/制御値記憶部406に保存する。
そして、WIDE端とTELE端に至る中間の段階で、倍率既知画像を新たな基準画像して倍率既知画像記憶部に記憶し、その後は、倍率既知画像を基準画像として、入力画像のズーム倍率を算出するとともに、入力画像の制御値を記憶して、ズーム倍率と制御値の関係の情報としてもよい。
【0048】
このような倍率既知画像を基準画像として用いて入力画像のズーム倍率を算出することにより、入力画像と原点画像を比較する場合に比べて、比較するズーム倍率差が小さくなるため、ズーム倍率の判定の精度やスピードを向上させることが可能となる。
【0049】
なお、上記の倍率既知画像を取得する際のズームレンズの位置は、WIDE端とTELE端の中間付近に限定されるものではない。倍率既知画像は、入力画像との比較による画像処理によって、ズーム倍率を算出しやすい適宜のズームレンズの位置によって行うことができる。
そして、倍率既知画像として採用する画像は1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。つまり、WIDE端とTELE端の間において、何回か倍率既知画像としての倍率既知画像を取得し、その都度、倍率既知画像記憶部602に基準画像として記憶しなおしてもよい。
さらに、<実施例2>の基準画像の場合と同様に、倍率既知画像についても、校正手続きのたびに取得する必要はなく、一度取得した倍率既知画像を保存しておいて、これを後の校正手順で用いることもできる。
【0050】
このような校正を行うことによって、倍率/制御値記憶部406には、個々のカメラの現状に応じて、ズーム倍率を正確に実現するためのレンズの倍率と制御値の関係が保存されることとなる。
そして、この校正されたレンズの倍率と制御値の関係に基づいて、監視カメラシステムの利用時に、制御端末からの指示に基づいて、ズーム倍率として指定された正確なズーム倍率への制御が可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、監視カメラにおける画像処理・制御部で実行している機能は、監視カメラシステムの制御端末で行うこととしてもよいし、ネットワークで接続されたその他のデバイスで行うこととしてもよい。
また、上述の実施例では、レンズ位置の制御値としてポテンショ電圧を用いて説明したが、レンズ位置の制御値はポテンショ電圧に限られるものではなく、レンズ位置を制御するためのあらゆる数値、パラメータが使用可能である。
さらに、本開示の技術は監視カメラのみに適用されるものではなく、ズーム機能を有する他の光学装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
100…監視カメラ、101…ズームレンズ、102…画像処理・制御部、103…FPGA、104…画像記憶部、105…モータドライバ、108…センサー、201…制御端末、401…現在画像記憶部、402…基準画像記憶部、405…倍率算出部、406…倍率/制御値記憶部、407…ズームレンズ制御部、601…原点画像記憶部、602…倍率既知画像記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6