(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミンの代謝産物
(51)【国際特許分類】
C07D 233/64 20060101AFI20240402BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20240402BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240402BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240402BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240402BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240402BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240402BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240402BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240402BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240402BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240402BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240402BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240402BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240402BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240402BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20240402BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240402BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C07D233/64 CSP
A61K31/4174
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P37/08
A61P11/00
A61P11/06
A61P29/00
A61P3/10
A61P13/12
A61P9/10 101
A61P25/00
A61P25/18
A61P9/00
A61P21/00
A61P37/06
A61P17/02
A61P1/02
A61P25/28
A61P9/10
A61P27/02
A61P15/10
A61P35/00
A61P35/04
A61P19/10
(21)【出願番号】P 2021519874
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(86)【国際出願番号】 US2019054928
(87)【国際公開番号】W WO2020076668
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515293333
【氏名又は名称】ブイティーブイ・セラピューティクス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バナー,ウィリアム・ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ガッダム,バープ
(72)【発明者】
【氏名】ポリセッティ,ダーマ・ラオ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュース,ロバート・カール
(72)【発明者】
【氏名】ビクトリー,サミュエル
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523559(JP,A)
【文献】特表2013-506674(JP,A)
【文献】特表2005-525378(JP,A)
【文献】国際公開第2008/153957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択される化合物
、
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸
、
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン
、
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール
、
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール
、および
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール
、
または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項2】
化合物が、3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸または医薬的に許容しうるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミンまたは医薬的に許容しうるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が、2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物が、5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が、3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オールまたは医薬的に許容しうるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
以下からなる群より選択される化合物
、
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸
、
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン
、
4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール
、
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール
、
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール
、および
3-(4-{2-{ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール
、
または医薬的に許容しうるその塩
、および
少なくとも1つの医薬的に許容しうるキャリヤー
、
を含む、医薬組成物。
【請求項8】
4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩
、
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミンまたは医薬的に許容しうるその塩
、および
医薬的に許容しうるキャリヤー
、
を含む、医薬組成物。
【請求項9】
0.1mg~100mgの[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミンまたは医薬的に許容しうるその塩、および
重量に基づき0.0001%~5%の4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩
を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、皮膚の炎症
、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎
、肺の炎症
、喘息
、慢性閉塞性肺疾
患、急性または慢性炎症、糖尿病、糖尿病関連の合併症、腎不全、糖尿病に関連する高脂血症性アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、再狭窄、ダウン症、頭部外に関連する認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患
、自己免疫または臓器、組織もしくは細胞移植に関連する炎症、創傷治癒障害、歯周病、神経障害、神経細胞変性、血管透過性、腎症、アテローム性動脈硬化症、網膜症、アルツハイマー病、勃起不全、腫瘍の浸潤および/または転移、骨粗鬆症
、糖尿病性後期合併症に関連する血管透過性亢進、
糖尿病性後期合併症に関連する腎症、
糖尿病性後期合併症に関連する網膜症
、または糖尿病性後期合併症に関連する神経障害の処置方法で使用するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミン(アゼリラゴンとしても知られる)の代謝産物に関する。これらの代謝産物はRAGEアンタゴニストとして作用することができる。これらの代謝産物はまた、試料中の代謝産物または親化合物の存在または量を測定するためのアッセイにおいて有用であることができる。
【背景技術】
【0002】
終末糖化産物受容体(RAGE)は、細胞表面分子の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。さまざまな組織および臓器におけるRAGEの活性化は、いくつかの病態生理学的結果をもたらす。RAGEは、以下を含むさまざまな状態に関与している:急性および慢性炎症(Hofmann et.al.,Cell 97:889-901(1999))、糖尿病後期合併症の発症、例えば、血管透過性亢進(Wautier et.al.,J.Clin.Invest.97:238-243(1995))、腎症(Teillet et.al.,J.Am.Soc.Nephrol.11:1488-1497(2000))、アテローム性動脈硬化症(Vlassara et.al.,The Finnish Medical Society DUODECIM,Ann.Med.28:419-426(1996))、および網膜症(Hammes et.al.,Diabetologia 42:603-607(1999))。RAGEはまた、アルツハイマー病(Yan et.al.,Nature 382:685-691(1996))、勃起不全、ならびに腫瘍の浸潤および転移(Taguchi et.al.,Nature 405:354-357(2000))に関与している。
【0003】
終末糖化産物(AGE)、S100/カルグラニュリン/EN-RAGE、β-アミロイド、CML(Nε-カルボキシメチルリジン)、およびアンフォテリン(amphoterin)のようなリガンドのRAGEへの結合は、さまざまな遺伝子の発現を改変することが示されている。例えば、多くの細胞タイプにおいて、RAGEとそのリガンドとの間の相互作用は酸化ストレスを生じさせ、それにより、フリーラジカル感受性転写因子NF-κBの活性化、およびサイトカインIL-1β、TNF-αなどのようなNF-κB調節遺伝子の活性化をもたらす。これに加えて、p21rasが関与する経路など、他のいくつかの調節経路も活性化される。
【0004】
MAPキナーゼであるERK1およびERK2は、AGEおよび他のリガンドのRAGEへの結合によって活性化されることが示されている。実際、RAGE自体の転写は、少なくとも部分的にNF-κBによって調節される。したがって、リガンド結合によって開始される正のフィードバックループによって、上向きの、しばしば有害なスパイラルが刺激される。したがって、過剰濃度のAGEおよび他のRAGEのリガンドによってもたらされる病態生理学的変化をダウンレギュレーションするために、RAGEへの生理学的リガンドの結合に拮抗することが標的である。
【0005】
以下に示す[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミン(化合物I)を含む特定のRAGEアンタゴニストは、米国特許第7361678号に開示されている。
【0006】
【0007】
RAGEに拮抗する新規薬剤は、さまざまな疾患を処置するための、より効果的な新規医薬品を開発するために絶えず必要とされている。本明細書に記載される代謝産物、組成物、および方法は、これらおよび他の目的を対象とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Hofmann et.al.,Cell 97:889-901(1999)
【文献】Wautier et.al.,J.Clin.Invest.97:238-243(1995)
【文献】Teillet et.al.,J.Am.Soc.Nephrol.11:1488-1497(2000)
【文献】Vlassara et.al.,The Finnish Medical Society DUODECIM,Ann.Med.28:419-426(1996)
【文献】Hammes et.al.,Diabetologia 42:603-607(1999)
【文献】Yan et.al.,Nature 382:685-691(1996)
【文献】Taguchi et.al.,Nature 405:354-357(2000)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、以下からなる群より選択される化合物を提供する:
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸;
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン;
4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール;
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール;
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール;および
3-(4-{2-{ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール;
または医薬的に許容しうるその塩。
【0010】
本発明は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩の作製方法も提供する。
本発明はさらに、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩と、医薬的に許容しうるキャリヤーとを含む医薬組成物、およびその作製方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、RAGEのアンタゴニストとして、またはさまざまな医学的状態の処置において、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を使用する方法を提供する。このような疾患または疾患状態としては、限定されるものではないが、および慢性炎症
、アミロイドーシス、アルツハイマー病、がん、腫瘍の浸潤および転移、腎不全、または自己免疫に関連する炎症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、低酸素症、卒中、心臓発作、出血性ショック、敗血症、臓器移植、糖尿病合併症の発症、例えば、血管透過性亢進、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性足潰瘍、心血管合併症、糖尿病性神経障害、創傷治癒障害、勃起不全、および骨粗鬆症を挙げることができる。
【0012】
本発明はまた、in vitroまたはin vivoアッセイにおいて、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を使用する方法を提供する。in vitroまたはin vivoアッセイは、化合物Iまたは本発明の化合物の薬物動態パラメーターの測定(直接的または間接的のいずれか)、例えば、吸収速度の定量、組織または血漿試料中の量の定量、代謝速度の定量、または化合物Iもしくは本発明の化合物の排出速度の定量に、有用であることができる。
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の本発明の詳細な説明においてより詳細に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は化合物Iの代謝産物である化合物を提供し、これらの代謝産物はRAGEに結合し、RAGEアンタゴニストとしての活性を有することができる。RAGEの活性を調節する化合物は、例えば、RAGEシグナル伝達および/または炎症カスケードに関連するさまざまな疾患の処置に有用であることができる。本発明の化合物はまた、化合物Iまたは本発明の化合物の薬物動態を測定するためのin vitroまたはin vivoアッセイに有用であることができる。本発明の化合物を以下の表1に列挙する。
【0015】
【0016】
代謝産物M1、M2、M3、M5、M6およびM7は、1用量以上の化合物Iを投与された被験体から採取したヒト血漿および/または胆汁から単離することができる。
sRAGE(受容体の可溶性細胞外部分)に対する代謝産物M1、M2、M3、M5、M6およびM7の結合親和性(解離定数Kdの形態での)を以下の表2に示す。sRAGEに対する化合物の結合親和性により、RAGEアンタゴニストとしての化合物の活性および効力を予測することができる。
【0017】
本発明は、本明細書に記載される化合物の医薬的に許容しうる塩も包含する。本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容しうる塩」は、開示された化合物の誘導体であって、親化合物が、存在する酸または塩基部分をその塩形態に転化することによって改変されているものをさす。医薬的に許容しうる塩の例としては、限定されるものではないが、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩または有機塩;などが挙げられる。本発明の医薬的に許容しうる塩は、例えば非毒性の無機または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩を包含する。本発明の医薬的に許容しうる塩は、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水中または有機溶媒中、またはこれら2つの混合物中で反応させることによって調製することができ;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストはRemington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,Mack Publishing Company,Easton,Pa,1985,p.1418およびJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)に見いだされ、これらの各々を、本明細書中でその全体を参考として援用する。
【0018】
本明細書では、「医薬的に許容しうる」という語句を、妥当な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を起こすことなく、合理的な損益比に相応して、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形をさすために採用する。
【0019】
本発明の化合物はまた、代謝産物中に存在する原子のすべての同位体も包含する。同位体には、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子が包含される。例えば、水素の同位体には、トリチウムおよび重水素が包含される。
【0020】
合成
本発明の化合物は、その塩を含め、公知の有機合成技術を用いて調製することができ、多数の考えうる合成経路のいずれかに従って合成することができる。本発明の化合物を調製するための例示的な合成方法を、以下の実施例の節に提供する。
【0021】
使用方法
本明細書において、「RAGE媒介疾患」という用語は、以下を含む1以上の状態、疾患または疾患状態をさすために用いられるが、これらに限定されるものではない:皮膚の炎症、例えば、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、ならびに肺の炎症、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患を含む、急性または慢性炎症、糖尿病、糖尿病関連の合併症、腎不全、糖尿病に関連する高脂血症性アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、再狭窄、ダウン症、頭部外傷に関連する認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、例えば、自己免疫または臓器、組織もしくは細胞移植に関連する炎症、創傷治癒障害、歯周病、神経障害、神経細胞変性、血管透過性、腎症、アテローム性動脈硬化症、網膜症、アルツハイマー病、勃起不全、腫瘍の浸潤および/または転移、骨粗鬆症、ならびに糖尿病後期合併症の発症、例えば、血管透過性亢進、腎症、網膜症および神経障害。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「被験体」という語句は、上記疾患または疾患状態のうちの1以上に罹患しているか、またはそのようなリスクがある哺乳類被験体、好ましくはヒトをさす。
【0023】
RAGEとその生理学的リガンドとの相互作用に拮抗する化合物は、RAGE受容体の阻害に応答する可能性がある疾患または状態の処置に潜在的に有用である。本発明は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与することを含む処置方法を提供する。この観点の態様において、本発明は、RAGEとその生理学的リガンドとの相互作用の阻害方法を提供する。この観点の他の態様において、本発明は、RAGEシグナル伝達の阻害方法を提供する。
【0024】
他の態様において、本発明は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を投与することを含む、RAGE媒介疾患の処置方法を提供する。他の態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を投与することを含む、RAGE媒介疾患の処置方法を提供する。
【0025】
I. RAGEおよび糖尿病の合併症
上記のように、本発明の化合物は、糖尿病の合併症の処置に有用であることができる。終末糖化産物(AGE)の形成を最終的にもたらす高分子の非酵素的糖酸化(glycoxidation)は、腎不全において、高血糖症および全身性または局所的なオキシダントストレスに関連する他の状態の存在下、炎症部位で増強されることが示されている(Dyer,D.,et al.,J.Clin.Invest.,91:2463-2469(1993);Reddy,S.,et al.,Biochem.,34:10872-10878(1995);Dyer,D.et al.,J.Biol.Chem.,266:11654-11660(1991);Degenhardt,T.,et al.,Cell Mol.Biol.,44:1139-1145(1998))。血管系におけるAGEの蓄積は、透析関連アミロイドーシスを有する患者に見いだされるAGE-β2-ミクログロブリンから構成される関節アミロイドにおけるように(Miyata,T.,et al.,J.Clin.Invest.,92:1243-1252(1993);Miyata,T.,et al.,J.Clin.Invest.,98:1088-1094(1996))、または一般に、糖尿病患者の血管系および組織によって例示されるように(Schmidt,A-M.,et al.,Nature Med.,1:1002-1004(1995))、局部的に生じることがある。糖尿病患者におけるAGEの経時的な蓄積の進行は、内因性クリアランス機構がAGE沈着部位で効果的に機能できないことを示唆している。このような蓄積されたAGEは、いくつもの機構によって細胞特性を変化させる能力を有する。RAGEは正常な組織および血管系において低レベルで発現されるが、受容体のリガンドが蓄積する環境において、RAGEはアップレギュレートされることが示されている(Li,J.,et al.,J.Biol.Chem.,272:16498-16506(1997);Li,J.,et al.,J.Biol.Chem.,73:30870-30878(1998);Tanaka,N.,et al.,J.Biol.Chem.,275:25781-25790(2000))。RAGE発現は、糖尿病血管系の内皮、平滑筋細胞、および浸潤性単核食細胞において増加する。また、細胞培養における研究は、AGE-RAGE相互作用が血管恒常性に重要な細胞特性に変化を引き起こすことを示した。
【0026】
II. RAGEおよびアミロイドーシスにおける細胞機能異常
また、上記のように、本発明の化合物は、アミロイドーシスおよび/またはアルツハイマー病の処置に有用であることができる。RAGEは、サブユニット(アミロイド-βペプチド、Aβ、アミリン、血清アミロイドA、プリオン由来ペプチド)の組成にかかわらず、βシート線維状物質に結合する細胞表面受容体であると思われる(Yan,S.-D.,et al.,Nature,382:685-691(1996);Yan,S-D.,et al.,Nat.Med.,6:643-651(2000))。アミロイドの沈着は、RAGEの発現の増強をもたらすことが示されている。例えば、アルツハイマー病(AD)患者の脳において、RAGE発現は、神経細胞および神経膠において増加する(Yan,S.-D.,et al.,Nature 382:685-691(1996))。AβとRAGEの相互作用の結果は、神経細胞と小神経膠ではまったく異なると思われる。小神経膠はAβ-RAGE相互作用の結果として活性化されるが、サイトカインの運動性および発現の増加によって反映されるように、初期のRAGE媒介神経細胞活性化は後期の細胞毒性に取って代わられる。Aβの細胞相互作用におけるRAGEの役割のさらなる証拠は、Aβ誘発性脳血管収縮の阻害、および受容体が遮断されたときのペプチドの血液脳関門を横断する脳実質への移動に関するものである(Kumar,S.,et al.,Neurosci.Program,p141(2000))。RAGE-アミロイド相互作用の阻害は、細胞RAGEおよび細胞ストレスマーカーの発現(ならびにNF-kB活性化)を減少させ、アミロイド沈着を低減することが示されており(Yan,S-D.,et al.,Nat.Med.,6:643-651(2000))、アミロイドに富む環境(初期段階でも)における細胞特性の摂動(perturbation)およびアミロイド蓄積の両方におけるRAGE-アミロイド相互作用の役割を示唆している。
【0027】
また、細胞アッセイと動物試験の両方で、血液脳関門(BBB)を横断する循環AβのトランスサイトーシスをRAGEが媒介することが示されている。このようにAβのトランスサイトーシスが増大すると、神経細胞のオキシダントストレスが生じ、脳血流量が持続的に減少する。RAGEの作用は、RAGEモジュレーター(例えば、抗RAGE抗体またはsRAGE)によって阻害することができる(例えば、Mackic et al.,J.Clin.Invest.,102:734-743(1998)参照;Kumar et al.,Neurosci.,Program,p141(2000)も参照)。これらの知見はさらなる試験によって確認された(例えば、米国特許第6825164号、第17段、第48行~第18段、第43行;Deane et al.,Nature Medicine,9:907-913(2003)参照)。脳潅流の低下は、Aβと相乗的に作用して認知症を悪化させる可能性がある虚血性病変を促進することができる。また、不十分な脳血流量は、血液脳関門を横断するAβ輸送を変化させ、これにより、Aβクリアランスを減少させ、脳におけるAβの蓄積を促進する可能性がある(GirouardおよびIadecola,J.Appl.Physiol.,100,328-335(2006)の332頁参照)。したがって、RAGEアンタゴニストによって促進される脳血流量の増加は、アルツハイマー病の症状を軽減するか、発症を遅らせるか、またはその両方の可能性がある。例えば、RAGEアンタゴニストは、認知能力の喪失を遅延または遅滞させる可能性があり、またはアルツハイマー型認知症に罹患している被験体の認知能力を改善する可能性があり、またはその両方であり得る。
【0028】
III. RAGEおよび免疫/炎症反応の伝播
上記のように、本発明の化合物は、炎症の処置に有用であることができる。例えば、S100/カルグラニュリンは、結合ペプチドによって連結された2つのEFハンド領域によって特徴付けられる、密接に関連するカルシウム結合ポリペプチドのファミリーを含むことが示されている(Schafer,B.et al.,TIBS,21:134-140(1996);Zimmer,D.,et al.,Brain Res.Bull.,37:417-429(1995);Rammes,A.,et al.,J.Biol.Chem.,272:9496-9502(1997);Lugering,N.,et al.,Eur.J.Clin.Invest.,25:659-664(1995))。S100/カルグラニュリンは、シグナルペプチドを欠いているものの、特に、嚢胞性線維症および関節リウマチのような慢性免疫/炎症反応の部位において、細胞外空間へのアクセスを獲得することが古くから知られている。RAGEはS100/カルグラニュリンファミリーの多くのメンバーの受容体であり、リンパ球および単核食細胞などの細胞に対する炎症誘発性作用を媒介する。また、遅延型過敏反応、IL-10ヌルマウスにおける大腸炎、コラーゲン誘導性関節炎、および実験的自己免疫性脳炎モデルに関する研究は、RAGE-リガンド相互作用(おそらくS100/カルグラニュリンとの)が、炎症性疾患、例えば、限定されるものではないが、関節リウマチおよび多発性硬化症に関与するような炎症カスケードにおいて、近位の役割を有することを示唆している。
【0029】
RAGEはまた、皮膚の炎症性疾患、例えば、限定されるものではないが、アトピー性皮膚炎、湿疹、および乾癬にも関与する。とりわけ乾癬は、炎症性でかゆみを伴う病変を特徴とする。乾癬は、関節リウマチでみられる症状と類似した関節症性症状を伴うことがある。乾癬が多遺伝子性の自己免疫疾患であるとするかなりの証拠がある。乾癬性病変は、サイトカイン、とりわけIL-1およびIL-8に富み、これらはともに強力な炎症誘発性メディエーターである。とりわけIL-8は好中球の走化性因子であり;好中球はまた、免疫および炎症反応の伝播に関与するRAGEのリガンドの1つであるS100タンパク質を合成し、分泌することが知られている。プソリアシン(psoriasin)(S100A7)は、S100遺伝子ファミリーの新規メンバーであり、乾癬皮膚から単離された分泌タンパク質である。Semprini et al.,(Hum.Genet.2002 Oct,111(4-5),310-3)は、乾癬の遺伝的感受性と、皮膚におけるS100タンパク質の明確な過剰発現とのつながりを示した。したがって、RAGEのモジュレーターは、乾癬における免疫反応を調節すると予想される。
【0030】
IV. RAGEおよびアンフォテリン
上記のように、本発明の化合物は、腫瘍および腫瘍転移の処置に有用であることができる。例えば、アンフォテリンは、RAGEと相互作用することが示されている高移動度群I非ヒストン染色体DNA結合タンパク質である(Rauvala,H.,et al., J.Biol.Chem.,262:16625-16635(1987);Parkikinen,J.,et al.,J.Biol.Chem.268:19726-19738(1993))。アンフォテリンは、神経突起伸長を促進するほか、線溶系においてプロテアーゼ複合体の構築のための表面として働くことが示されている(細胞移動性に寄与することも知られている)。さらに、RAGEを遮断する局所的な腫瘍成長阻害作用が、原発腫瘍モデル(C6神経膠腫)、ルイス肺転移モデル(Taguchi,A.,et al.,Nature 405:354-360(2000))、およびv-Ha-ras導入遺伝子を発現するマウスにおいて自然発生する乳頭腫において観察されている(Leder,A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:9178-9182(1990))。
【0031】
V. RAGEおよび呼吸器疾患
気道炎症は、喘息の病因において重要である。このような炎症は、喘息の重症度の顕著な増悪および増加をもたらすほか、喘息状態の低減の主要因子であることができる。喘息の重度の増悪では、好中球および好酸球の蓄積および活性化が関与する、機構が不均一な強い炎症反応がみられる。好中球は、S100タンパク質、すなわち、免疫反応および炎症の伝播に関与するRAGEの主要なリガンドの重要な供給源である。したがって、RAGEのモジュレーターは、喘息の処置において治療的価値を有すると予想される。
【0032】
さらに、S100-RAGE相互作用によって推進される肺における免疫反応の伝播段階は、肺気腫のような慢性閉塞性肺疾患において損傷性プロテアーゼの重大な供給源である好中球のような炎症性細胞の活性化および/または漸増をもたらすと予想される。したがって、RAGEモジュレーターは慢性閉塞性肺疾患の処置において潜在能力を有すると予想される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」という語句は、求められている被験体の治療反応を引き起こす薬物または医薬品の量を意味するものとする。これらの方法において、治療的有効量を構成するものに影響を及ぼし得る因子としては、限定されるものではないが、被験体のサイズおよび重量、治療薬の生分解性、治療薬の活性、作用領域のサイズ、ならびにそのバイオアベイラビリティが挙げられる。この語句は、そのような量を受けていない対応する被験体と比較して、改良された処置、治癒、もしくは副作用の改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらす量を包含する。
【0034】
本明細書で使用される「処置」という用語は、被験体が罹患している所定の状態または障害の処置の全範囲、例えば、該障害に起因する1以上の症状の緩和または改善から、該障害の発症または進行の遅延までをさす。
【0035】
一態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与することを含む、再狭窄の処置方法を提供する。一態様において、被験体は糖尿病に罹患している。
【0036】
一態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与することを含む、急性または慢性炎症の処置方法を提供する。
一態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与することを含む、頭部外傷に関連する認知症の処置方法を提供する。一態様において、被験体の認知能力は改善する。他の態様において、被験体の認知能力は維持される。他の態様では、被験体の認知能力の喪失速度が遅くなる。
【0037】
一態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与することを含む、アルツハイマー病の処置方法を提供する。アルツハイマー病に関し、本発明は、基礎となる認知症になる過程の経過を変更するのに有用であると考えられる。アルツハイマー病は、NINCDSおよびDSM基準、ミニメンタルステート検査、および臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating)により、特定の範囲内で診断することができる。本発明の一観点は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を投与することを含む、認知能力の改善を包含する。認知能力は、当技術分野で公知であるように、アルツハイマー病評価尺度の認知サブスケール(ADAS-cog)で評価することができ、これは、認知機能を0~70の尺度でスコア化するものであり、スコアが高いほど認知障害が大きいことを示す。このように、スコアの低下は認知改善を示す。本発明の一観点は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与して、ADAS-cogスコアの低下を必要とする被験体のADAS-cogスコアを低下させることを包含する。そのような被験体は、アルツハイマー型認知症、軽度から中等度のアルツハイマー病、または重度のアルツハイマー病を患っているヒトであることができる。
【0038】
さらに、アルツハイマー病の進行はまた、ヒトにおいて、全般、認知、行動、および日常生活の動作の4つの機能領域の検査を通して評価することもできる。このような評価は、臨床面接による認知症変化印象尺度(CIBICまたはCIBICプラス)を使用して実施することができる。本発明の一観点は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を投与することを含む、被験体の機能の改善を包含する。一態様において、被験体の機能は、全般、認知、行動、および日常生活の動作のうちの1以上である。
【0039】
一態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与して、被験体における創傷治癒の速度を未処置の創傷と比較して改善することを含む、糖尿病被験体における創傷治癒の改善方法を提供する。
【0040】
一態様において、本発明は、被験体において、第1の部位から第2の部位への臓器、組織または複数の細胞の移植に関連する炎症を処置するための方法であって、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を被験体に投与して、被験体における炎症を低減することを含む、前記方法を提供する。一態様において、第1および第2の部位は、異なる被験体の中にある。他の態様において、第1および第2の部位は、同じ被験体の中にある。他の態様において、移植された臓器、細胞または組織は、膵臓、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、骨髄、血液、骨、筋肉、動脈、静脈、軟骨、甲状腺、神経系、または幹細胞の細胞または組織を含む。
【0041】
併用療法
他の態様において、本発明の少なくとも1つの化合物または医薬的に許容しうるその塩は、単独で、またはアゼリラゴンもしくは医薬的に許容しうるその塩を含む1以上の公知の治療薬と組み合わせて利用される。
【0042】
本発明のさらなる観点において、本発明の化合物は、アジュバント療法または他の公知の治療薬との併用療法処置において用いることができる。
以下は、本発明の化合物と組み合わせて利用することができるアジュバントおよび追加的な治療薬の非包括的リストである:
【0043】
抗がん剤の薬理学的分類:
1.アルキル化剤:シクロホスファミド、ニトロソ尿素、カルボプラチン、シスプラチン、プロカルバジン
2.抗生物質:ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン
3.代謝拮抗薬:メトトレキサート、シタラビン、フルオロウラシル
4.植物アルカロイド:ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、パクリタキセル
5.ホルモン:タモキシフェン、酢酸オクトレオチド、フィナステリド、フルタミド
6.生物学的応答調節剤:インターフェロン、インターロイキン、抗腫瘍抗体
【0044】
関節リウマチ(炎症)の処置の薬理学的分類
1.鎮痛薬:アスピリン
2.NSAID(非ステロイド性抗炎症薬):イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク
3.DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬):メトトレキサート、金製剤、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン
4.生物学的応答調節剤、DMARD:エタネルセプト、インフリキシマブ、グルココルチコイド
【0045】
糖尿病の処置の薬理学的分類
1.スルホニル尿素:トルブタミド、トラザミド、グリブリド、グリピジド
2.ビグアニド:メトホルミン
3.さまざまな経口剤:アカルボース、トログリタゾン
4.インスリン
【0046】
アルツハイマー病の処置の薬理学的分類
1.コリンエステラーゼ阻害剤:タクリン、ドネペジル
2.抗精神病薬:ハロペリドール、チオリダジン
3.抗うつ薬:デシプラミン、フルオキセチン、トラゾドン、パロキセチン
4.抗痙攣薬:カルバマゼピン、バルプロ酸
【0047】
さらなる態様において、本発明は、RAGE媒介疾患の処置方法を提供し、該方法は、治療的有効量の本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を、アルキル化剤、代謝拮抗薬、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的応答調節剤、鎮痛薬、NSAID、DMARD、グルココルチコイド、スルホニル尿素、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、および抗痙攣薬からなる群より選択される治療薬と組み合わせて、被験体に投与することを含む。
【0048】
さらなる態様において、本発明は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的応答調節剤、鎮痛剤、NSAID、DMARD、グルココルチコイド、スルホニル尿素、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、および抗痙攣薬からなる群より選択される1以上の治療薬をさらに含む、上記のような本発明の医薬組成物を提供する。
【0049】
このような他の治療薬は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩と同様の経路または異なる経路によって投与することができる。本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を他の治療薬と組み合わせて用いる場合、組成物は、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を、他の治療薬(1以上)と組み合わせて含有することができる。あるいは、別個の投与製剤を用いる場合、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩および1以上の追加的な治療薬を、実質的に同じ時期(例えば、同時)または別々にずれた時期に(例えば、連続的に)、投与することができる。
【0050】
上記処置方法の態様のいずれかにおいて、本方法はさらに、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩と、化合物Iまたは医薬的に許容しうるその塩とを投与することを含むことができる。単一剤形または別個の剤形で一緒に投与される場合、用量当たりに投与される化合物Iまたは医薬的に許容しうるその塩の量は0.1mg~20mgであることができ、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩の量は0.1mg~1000mgであることができる。他の態様において、用量当たりに投与される化合物Iまたは医薬的に許容しうるその塩の量は0.1mg~20mgであることができ、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩の量は、化合物Iまたは医薬的に許容しうるその塩の量に対して、または医薬組成物の総重量に対して、重量に基づき0.0001%~5%、または0.001%~5%であることができる。
【0051】
医薬製剤および剤形
本発明はさらに、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩と、医薬的に許容しうるキャリヤーとを含む医薬組成物を提供する。本明細書において、「医薬組成物」という用語は、哺乳類宿主に、従来の非毒性キャリヤー、希釈剤、アジュバント、ビヒクルなどを含有する単位投与量製剤において、例えば、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入スプレーにより、または経直腸的に投与することができる組成物を示すために使用される。本明細書で使用される「非経口的に」という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、槽内注射、または注入技術によるものを包含する。
【0052】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性、または油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、硬カプセルもしくは軟カプセル、またはシロップまたはエリキシルとして、経口使用に適した形態にあることができる。経口使用を意図した組成物は、任意の公知の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、医薬的に洗練され口当たりの良い調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、および防腐剤からなる群より選択される1以上の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の医薬的に許容しうる賦形剤との混加物(admixture)中に活性成分を含有することができる。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア;および潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク;であることができる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、または胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それにより長期間にわたる持続作用を提供するために、公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を採用することができる。それらはまた、制御放出のための浸透圧治療錠剤を形成するための技術によってコーティングすることもできる。
【0053】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルとして、または活性成分が水もしくは油性媒体、例えば落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルとして、提供されることができる。
【0054】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混加物中に活性化合物を含有することができる。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり;分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、例えば、ヘプタデカエチル-エンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートであることができる。水性懸濁液はまた、1以上の着色剤、1以上の香味剤、および1以上の甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリンを含有することもできる。
【0055】
油性懸濁液は、活性成分を植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油中に、または流動パラフィンのような鉱油中に懸濁することによって、製剤化することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。上記のような甘味剤および香味剤を添加して、口当たりの良い経口調製物を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤の添加により保存することができる。
【0056】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1以上の防腐剤との混加物中で活性化合物を提供する。適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、既に上記したものによって例示される。追加的な賦形剤、例えば、甘味剤、香味剤、および着色剤も、存在することができる。
【0057】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルションの形態にあってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはそれらの混合物であることができる。適した乳化剤は、天然に存在するゴム、例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然に存在するホスファチド、例えば、ダイズ、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、ならびに前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであることができる。エマルションはまた、甘味剤および香味剤を含有することもできる。
【0058】
シロップまたはエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースと一緒に製剤化することができる。このような製剤はまた、粘滑剤、防腐剤、香味剤および着色剤を含有することもできる。医薬組成物は、水性または油性の滅菌注射用懸濁液の形態にあってもよい。この懸濁液は、上記の適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の方法に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、非毒性で非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としてであることもできる。採用することができる許容しうるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として好都合に採用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを使用して、任意の無刺激性不揮発性油を採用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射用製剤の調製において用途が見いだされている。
【0059】
組成物はまた、本発明の化合物の直腸投与のための坐剤の形態にあってもよい。これらの組成物は、薬物を、常温では固体であるが直腸温では液体であり、したがって直腸で溶融して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって、調製することができる。このような材料としては、例えば、カカオ脂およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0060】
局所使用に関しては、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液、ローション、眼軟膏および点眼剤または点耳剤、含浸包帯およびエアロゾルなどが意図される。これらの局所製剤は、適切な従来の添加剤、例えば、防腐剤、薬物浸透を補助するための溶媒、ならびに軟膏およびクリーム中の皮膚軟化剤を含有することができる。製剤はまた、適合可能な従来のキャリヤー、例えば、クリームまたは軟膏基剤、およびローション用のエタノールまたはオレイルアルコールも含有することができる。このようなキャリヤーは、製剤の約0.1%から約99%まで存在することができる。より通常には、それらは製剤の最大約80%を形成する。この適用の目的に関し、局所適用は、洗口剤およびうがい剤を包含する。
【0061】
本発明の化合物はまた、標的化しうる薬物キャリヤーとして可溶性ポリマーに結び付けることもできる。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンを挙げることができる。さらに、本発明の化合物は、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロン(polepsilon)カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーに、結び付けることができる。
【0062】
吸入による投与に関し、本発明に従った化合物は、適した噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、二酸化炭素、または他の適したガスを使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で、好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定することができる。吸入器または注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、本発明の化合物とラクトースまたはデンプンなど適切な粉末基剤との粉末混合物を含有させて、製剤化することができる。
【0063】
一般的に言えば、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩は、約0.003~500mg/処置される被験体の体重1kgの投与量レベルで投与することができる。一態様において、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩は、1日あたり約0.003~200mg/体重1kgの投与量範囲で、1日おきに、または1週間に1回、投与することができる。一態様において、本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩は、1日あたり約0.1mg~100mgの投与量範囲で、1日おきに、または1週間に1回、投与することができる。
【0064】
単一投与量をもたらすためにキャリヤー材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に応じて変動する可能性がある。例えば、ヒトへの経口投与を意図した製剤は、1mg~2グラムの本発明の化合物または医薬的に許容しうるその塩を、全組成物の約5~95パーセントで変動することができる適切で好都合な量のキャリヤー材料と一緒に含有することができる。皮膚への局所投与を意図した剤形は、0.1%~99%の化合物と局所賦形剤の比で調製することができる。吸入投与を意図した剤形は、吸入投与量の化合物を送達するのに適したキャリヤー中に0.01~200mgの化合物である。全身に送達される化合物の単位剤形は、概して、約1mg~約500mgの活性成分を含有することができる。この投与量は、処置される被験体の具体的な臨床状態に基づいて臨床医が個別化することができる。したがって、任意の特定の被験体についての具体的な投与量レベルは、採用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、薬物の組み合わせ、作用領域のサイズ、および治療を受けている特定の疾患の重症度を含む、さまざまな因子に依存することが理解されるであろう。
【0065】
化合物Iの代謝産物であることに加えて、M3はまた、化合物Iの分解産物および/または化合物Iの特定の合成方法に起因する不純物であることが見いだされている。したがって、他の態様において、本発明は、M3または医薬的に許容しうるその塩と、化合物Iまたは医薬的に許容しうるその塩と、医薬的に許容しうるキャリヤーとを含む医薬組成物を提供する。他の態様において、本発明は、M3または医薬的に許容しうるその塩と、化合物Iまたは医薬的に許容しうるその塩とを含む医薬組成物を提供し、M3または医薬的に許容しうるその塩は、医薬組成物中に、医薬組成物の重量に基づき0.0001%~5%の量で存在する。他の態様において、M3または医薬的に許容しうるその塩は、医薬組成物中に、医薬組成物の重量に基づき0.01%~0.5%の量で存在する。他の態様において、医薬組成物は、M3または医薬的に許容しうるその塩と、0.1mg~100mg、または0.1mg~50mg、または1mg~30mg、または1mg~10mgの化合物Iまたは医薬的に許容しうるその塩を含み、M3または医薬的に許容しうるその塩は、医薬組成物中に、医薬組成物中の化合物Iもしくは医薬的に許容しうるその塩の量に対して、または医薬組成物の総重量に対して、重量に基づき0.0001%~5%、または0.001%~0.01%、または0.01%~1%の量で存在する。
【0066】
標識化合物およびアッセイ方法
本発明の他の観点は、in vitroおよびin vivoの両方において、画像化技術だけでなくアッセイにおいても有用である本発明の標識化合物(放射性標識、蛍光標識など)に関する。
【0067】
本発明はさらに、本発明の同位体標識または同位体標識化合物を包含する。「同位体的に」または「放射性標識された」化合物は、1以上の原子が、天然に典型的に見いだされる(すなわち、天然に生じる)原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えまたは置換されている、本発明の化合物である。本発明の化合物に組み込むことができる適した放射性核種としては、限定されるものではないが、2H(重水素にちなんでDとも記される)、3H(トリチウムにちなんでTとも記される)、および14Cが挙げられる。本放射性標識化合物に組み込まれる放射性核種は、その放射性標識化合物の具体的な用途に依存する。
【0068】
本発明の標識化合物は、化合物Iおよび/またはその代謝産物の吸収、分布、代謝、および排出プロフィールを同定/評価するために、化合物Iのスクリーニングアッセイまたは毒性学的もしくは薬物動態学的試験において使用することができる。例えば、さまざまな代謝産物の同位体的に富んだ形態は、M1-M3およびM5-M7のブチル基が同位体的に重水素に富むようになるように、代謝産物を合成する際に塩化バレリルをd9-塩化バレリル(CD3CD2CD2CD2COCl)で置換することにより、調製することができる。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
[1]以下からなる群より選択される化合物:
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸;
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン;
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール;
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール;および
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール;
または医薬的に許容しうるその塩。
[2]化合物が、3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸または医薬的に許容しうるその塩である、[1]に記載の化合物。
[3]化合物が、[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミンまたは医薬的に許容しうるその塩である、[1]に記載の化合物。
[4]化合物が、2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩である、[1]に記載の化合物。
[5]化合物が、5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩である、[1]に記載の化合物。
[6]化合物が、3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オールまたは医薬的に許容しうるその塩である、[1]に記載の化合物。
[7]以下からなる群より選択される化合物:
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸;
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン;
4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール;
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール;
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール;および
3-(4-{2-{ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール;
または医薬的に許容しうるその塩;および
少なくとも1つの医薬的に許容しうるキャリヤー;
を含む、医薬組成物。
[8]4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩;
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミンまたは医薬的に許容しうるその塩;および
医薬的に許容しうるキャリヤー;
を含む、医薬組成物。
[9]0.1mg~100mgの[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミンまたは医薬的に許容しうるその塩、および
重量に基づき0.0001%~5%の4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノールまたは医薬的に許容しうるその塩
を含む、[8]に記載の医薬組成物。
[10]皮膚の炎症、例えば、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、ならびに肺の炎症、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患を含む、急性または慢性炎症、糖尿病、糖尿病関連の合併症、腎不全、糖尿病に関連する高脂血症性アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、再狭窄、ダウン症、頭部外傷に関連する認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、例えば、自己免疫または臓器、組織もしくは細胞移植に関連する炎症、創傷治癒障害、歯周病、神経障害、神経細胞変性、血管透過性、腎症、アテローム性動脈硬化症、網膜症、アルツハイマー病、勃起不全、腫瘍の浸潤および/または転移、骨粗鬆症、ならびに糖尿病後期合併症の発症、例えば、血管透過性亢進、腎症、網膜症および神経障害の処置方法であって、
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸;
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン;
4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール;
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール;
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール;および
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール;
または医薬的に許容しうるその塩;
からなる群より選択される化合物を、被験体に投与することを含む方法。
[11]3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸;
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン;
4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール;
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール;
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール;および
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール;
または医薬的に許容しうるその塩;
からなる群より選択される化合物の、医薬品の調製における使用。
[12]3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸;
[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチル-アミン;
4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール;
2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール;
5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール;および
3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール;
または医薬的に許容しうるその塩;
からなる群より選択される化合物の、
皮膚の炎症、例えば、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、ならびに肺の炎症、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患を含む、急性または慢性炎症、糖尿病、糖尿病関連の合併症、腎不全、糖尿病に関連する高脂血症性アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、再狭窄、ダウン症、頭部外傷に関連する認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、例えば、自己免疫または臓器、組織もしくは細胞移植に関連する炎症、創傷治癒障害、歯周病、神経障害、神経細胞変性、血管透過性、腎症、アテローム性動脈硬化症、網膜症、アルツハイマー病、勃起不全、腫瘍の浸潤および/または転移、骨粗鬆症、ならびに糖尿病後期合併症の発症、例えば、血管透過性亢進、腎症、網膜症および神経障害
を処置するための医薬品の調製における使用。
【実施例】
【0069】
代謝産物1(M1):3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸
【0070】
【0071】
t-ブチルアクリレート(50mL)中の4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール(5.5g)(米国特許第7361678号および第8580833号参照)にDBU(1当量)を加え、混合物を100℃で3時間加熱した。反応混合物を濃縮し、水(100mL)および1:1酢酸エチル-ヘキサン混合物(100mL)を加えた。混合物を30分間撹拌し、濾過した。有機層を単離し、濃縮した。残渣を、溶離剤としてヘキサン中の1~100%酢酸エチルを使用するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製した。望ましい画分を濃縮し、残渣をn-ヘプタンと共蒸発させて、tert-ブチル3-[4-[2-ブチル-1-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]イミダゾール-4-イル]フェノキシ]プロパノエート(1.4g)を得た。該エステルをジオキサン中の4N HClに溶解した。水(5mL)を加え、混合物を30分間撹拌した。得られた溶液を濃縮し、乾燥して、3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピオン酸を固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, TMS):δ 0.82 (t, 3H), 1.25 (m, 2H), 1.59 (m, 2H), 2.75 (t, 2H), 2.92 (m, 2H), 4.22 (t, 2H), 7.12-7.20 (m, 4H), 7.29 (d, 2H), 7.55 (d, 2H), 7.75 (d, 2H), 7.92 (d, 2H), 8.21 (s, 1H), ppm.
代謝産物2(M2):[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチルアミン
【0072】
【0073】
[3-(4-{2-{ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-ジエチル-アミン(18g)(米国特許第7361678号参照)を、窒素下の3口丸底フラスコ中で無水ジクロロメタン(150mL)に溶解した。内容物を-78℃に冷却し、ジクロロメタン(150mL)中の(1-クロロエチル)-クロロホルメート(100g)の溶液を0.5時間かけて滴下して加えた。内容物を放置して室温まで温め、その温度で16時間撹拌した。揮発分はすべて、減圧下、ロタベーパー(登録商標)(rotavapor)で蒸発させた。水(150mL)および酢酸エチルを加え、撹拌しながら5N水酸化ナトリウムを用いてpHを約12に調整した。層を分離し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を、溶離剤としてジクロロメタン中の5~15%メタノールを使用するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製した。望ましい画分を濃縮し、残渣をn-ヘプタンと共蒸発させて、[3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンジル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロピル]-エチルアミンを固体(7.8g)として得た。
1H NMR (CDCl3, TMS):δ0.82 (t, 3H), 1.15 (t, 3H), 1.35 (m, 3H), 1.65 (m, 2H), 1.95 (m, 2H), 2.65 (m, 4H), 2.8 (t, 2H), 4.05 (t, 2H), 6.9 (d, 2H), 7.05 (d, 2H), 7.1 (d, 2H), 7.17 (s, 1H), 7.25 (d, 2H), 7.35 (d, 2H), 7.75 (d, 2H) ppm.
代謝産物3(M3):4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール
【0074】
【0075】
米国特許第8580833号の中間体A1参照。
代謝産物5(M5):2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール
【0076】
【0077】
N-[4-[4-クロロ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]フェニル]-N-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-エチル]ペンタンアミド(1.3g)を、以前に記載された手順(米国特許第7361678号および第8580833号参照)を用いて、4-アセトキシアセトフェノン、4-[4-クロロ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]アニリンおよび塩化バレロイルから調製し、ジクロロメタン中の3-(ジエチルアミノ)プロパン-1-オール、トリフェニルホスフィンおよびDIADで処理した後、溶離剤としてジクロロメタン中の0~15%メタノールを用いてシリカ上でカラム精製することによって、N-[4-[4-クロロ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]フェニル-N-[2-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]-2-オキソ-エチル]ペンタンアミド(0.8g)に転化した。
【0078】
N-[4-[4-クロロ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]フェニル]-N-[2-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]-2-オキソ-エチル]ペンタンアミド(0.8g)を、先に記載した手順を用いて、100~110℃で48時間にわたり酢酸中の酢酸アンモニウムで処理することにより、2-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-5-クロロ-フェノール(1.2g)に転化した。(米国特許第7361678号参照)。
1H NMR (CDCl3, TMS):δ0.65 (t, 3H), 1.25 (t, 6H), 1.25 (m, 2H), 1.65 (m, 2H), 1.95 (s, 1H), 2.05 (m, 2H), 2.52 (m, 2H), 2.75-2.9 (m, 6H), 3.92 (t, 2H), 6.85-6.92 (m, 4H), 7.02-7.12 (m, 4H), 7.2 (d, 2H), 7.64 (d, 2H) ppm.
代謝産物6(M6):5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール
【0079】
【0080】
N-[4-[4-クロロ-3-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]フェニル]-N-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-エチル]ペンタンアミド(5.36g)を、以前に記載された手順(米国特許第7361678号および第8580833号参照)を用いて、4-アセトキシアセトフェノン、4-[4-クロロ-3-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]アニリンおよび塩化バレロイルから調製し、ジクロロメタン中の3-(ジエチルアミノ)プロパン-1-オール、トリフェニルホスフィンおよびDIADで処理した後、溶離剤としてジクロロメタン中の0~15%メタノールを用いてシリカ上でカラム精製することによって、N-[4-[4-クロロ-3-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]フェニル-N-[2-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]-2-オキソ-エチル]ペンタンアミド(5.1g)に転化した。
【0081】
N-[4-[4-クロロ-3-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]フェノキシ]フェニル-N-[2-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]-2-オキソ-エチル]ペンタンアミド(5.1g)を、先に記載した手順を用いて、100~110℃で48時間にわたり酢酸中の酢酸アンモニウムで処理することにより、5-[4-[2-ブチル-4-[4-[3-(ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル]イミダゾール-1-イル]フェノキシ]-2-クロロ-フェノール(1.2g)に転化した。(米国特許第7361678号参照)。
1H NMR (CDCl3, TMS):δ0.65 (t, 3H), 1.2 (t, 6H), 1.25 (t, 2H), 1.65 (m, 2H), 2.0 (m, 2H), 2.6-2.75 (m, 8H), 3.2 (br, 1H), 4.05 (t, 2H), 6.56 (m, 1H), 6.7 (m, 1H), 6.88 (d, 2H), 7.04 (m, 3H), 7.25 (d, 2H), 7.3 (d, 1H), 7.66 (d, 2H) ppm.
代謝産物7(M7):3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール
【0082】
【0083】
アセトン(50mL)中の4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノール(3g)(米国特許第7361678号および第8580833号参照)、3-クロロプロパノールおよび炭酸カリウムの混合物を、3日間加熱還流した。反応混合物を濾過し、濃縮し、残渣を、溶離剤としてヘキサン中の1~100%酢酸エチルを用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製した。望ましい画分を濃縮し、残渣を酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶化して、3-(4-{2-ブチル-1-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-フェニル]-1H-イミダゾール-4-イル}-フェノキシ)-プロパン-1-オール(2.7g)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, TMS):δ0.85 (t, 3H), 1.32 (m, 2H), 1.65 (m, 2H), 1.8 (br, 1H), 2.05 (m, 2H), 2.65 (m, 2H), 3.78 (m, 2H), 4.25 (t, 2H), 6.92 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 7.08 (d, 2H), 7.03 (s, 1H), 7.29 (d, 2H), 7.35 (d, 2H), 7.71 (d, 2H) ppm.
【0084】
化合物Iの代謝試験
化合物Iの代謝の評価は、複数用量の化合物Iを投与された被験体から採取したヒト血漿および胆汁試料を用いて実施した。本試験は、化合物Iを14日間経口投与された健常者8例を評価する複数回投与試験であった。被験体には、負荷用量として15mgを1日1回6日間投与した後、1日維持用量として5mgを8日間投与した。1日目の投与前に血漿試料を採取した。血漿は、11日目、12日目および13日目の投与前にも収集した。これに加えて、14日目の投与0、1、2、4、6、8、10時間後、ならびに投与24および28時間後の15日目に、血漿を収集した。胆汁試料は、15日目(投与28時間後)に、胆管付近に蛍光透視的に配置された口腔腸管を通して連続吸引することによって、最長4時間にわたり収集した。胆汁は、以下の画分で収集した:胆汁収集開始後0~0.5時間(化合物Iの投与後約24~24.5時間)、胆汁収集開始後0.5~1.0時間、1.0~2.0時間、2.0~3.0時間、および3.0~4.0時間。
【0085】
ヒト血漿中の化合物Iおよび特定の代謝産物の濃度を決定するための1つのアッセイ方法は、以下の通りである。ヒト血漿中の化合物Iおよび特定の代謝産物の濃度は、タンパク質沈殿、続いて高速液体クロマトグラフィーおよびタンデム質量分析(HPLC-MS/MS)に基づくアッセイを用いて測定することができ、定量下限は、各分析物について0.2ng/mLまたは0.4ng/mLである。重水素化(d9)化合物I、M1、M2、M3、M5、M6またはM7の内部標準化合物を使用して、内部標準溶液(メタノール-DMSO中0.5mg/mL、90:10体積/体積)を調製することができる。50μLのK2 EDTA血漿のアリコートを、450μLのブランクの溶媒(0.2%ギ酸を含有するアセトニトリル、体積/体積)および450μLの内標準物質を含有する2mLの96 DeepWell(登録商標)プレートに添加する。プレートを1000rpmで少なくとも5分間ボルテックスし、続いて室温において約4000rpmで少なくとも5分間にわたり遠心分離する。100μLの上清のアリコートを、100μLの再構成溶液(水-ギ酸、100:0.2体積/体積)を予め満たした1mLまたは500μLのDeepWell(登録商標)プレートのいずれかに移す。プレートを約1000rpmで少なくとも5分間ボルテックスした後、HPLC-MS/MSシステムに入れて分析する。HPLC条件は以下の通りである:カラム、XBridge(Waters)C18、3.5μM、2.1×50mm;カラム温度、45℃;移動相組成、移動相A:0.1%ギ酸および0.05%トリフルオロ酢酸(体積/体積/体積)、移動相B:0.1%ギ酸および0.05%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル(体積/体積/体積);移動相Bの%に対する移動相Aの%を、12分間の測定時間にわたって65%/35%~5%/95%で変動させる;流速、1mL/分。血漿の品質管理試料を、各分析バッチにおいて低濃度、中濃度、および高濃度で分析する。同様の方法を用いて胆汁試料をアッセイすることができる。
【0086】
マイクロスケール熱泳動
ヒトsRAGE(終末糖化産物に対するヒト受容体の可溶性細胞外ドメイン)に対する化合物Iおよび本発明の化合物の結合親和性を、マイクロスケール熱泳動を用いて測定した。
【0087】
Microscale Thermophoresis System(Monolith NT.115 Pico,NanoTemper,Inc.)を使用して、組換えヒトsRAGEに対する化合物Iならびに代謝産物M1、M2、M3、M5、M6およびM7の結合親和性を決定した。sRAGEをNT-647-NHS蛍光染料で標識した。続いて、約5nMのsRAGEを600nM~20pMの濃度の化合物に添加し、25mMのHepes(pH7.5)、5mMのCaCl2、5mMのMgCl2、50mMのNaCl、0.05%のTween20および1%のDMSOを含有する緩衝液中で25℃で5分間インキュベートした後、マイクロスケールの熱泳動に進めた。
【0088】
生の熱泳動データおよび平均Kdを、Microscale Thermophoresis System分析ソフトウェアを使用して、製造業者のプロトコルに従って生じさせた。
【0089】
組換えヒトsRAGEと化合物I、M1~M3、M5、M6またはM7との間の平均Kdを以下の表に示す。
【0090】
【0091】
S100BおよびアミロイドベータELISAアッセイ
以下のアッセイ法は、S100bおよびβ-アミロイドのような生理学的RAGEリガンドのRAGEへの結合の阻害剤として有用でありうる化合物を同定するために用いることができる。
【0092】
100mM重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)中のS100bまたはβ-アミロイド(500ng/100μL/ウェル)を、NUNC Maxisorp平底96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに入れる。プレートを4℃で一晩インキュベートする。ウェルを吸引し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(300μL/ウェル)を含有する50mMイミダゾール緩衝生理食塩水(pH7.2)(5mM CaCl2/MgCl2を含む)で室温で1時間処理する。ウェルを吸引する。
【0093】
試験化合物をナノ純水(濃度:10~100μM)に溶解する。DMSOを共溶媒として使用することができる。4%のDMSO中の試験化合物溶液25μLを、75μLのsRAGE(6nM FAC)と一緒に各ウェルに添加し、試料を37℃で1時間インキュベートする。ウェルを155mMのpH7.2のNaCl緩衝生理食塩水で数回洗浄し、各洗浄の間に数秒間浸漬する。
【0094】
非放射性検出は、10μLのビオチン化ヤギF(ab’)2抗マウスIgG.(8.0×10-4mg/mL、FAC)、5μL Alk-phos-ストレプトアビジン(3×10-3mg/mL FAC)、5mLにつき0.42μLのsRAGEのモノクローナル抗体(FAC 6.0×10-3mg/mL)を5mLの、0.2%ウシ血清アルブミンおよび5mM CaCl2を含有する50mMイミダゾール緩衝生理食塩水(pH7.2)に添加することによって行う。混合物を室温で30分間インキュベートする。
【0095】
100μLの複合体を各ウェルに添加し、インキュベーションを室温で1時間進行させる。ウェルを洗浄緩衝液で数回洗浄し、各洗浄の間に数秒間浸漬する。1Mジエタノールアミン(HClでpHを9.8に調整)中の100μLの1mg/mL(pNPP)を加える。遮光下の室温で30分~1時間にわたり発色させる。反応を10μLの停止溶液(50%エタノール中の0.5~1.0N NaOH)でクエンチし、吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて405nmで分光光度的に測定する。
【0096】
代謝産物M2を、RAGEリガンドとしてS100bまたはβ-アミロイドを採用して、上記アッセイ方法に従って試験し、以下に示すIC50を有することを見いだした。ELISAアッセイにおけるIC50(μM)は、50%シグナルが阻害された化合物の濃度を表す。
【0097】