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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】マクロファージイメージング剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/08 20060101AFI20240402BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240402BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61K49/08
A61B5/055
C08F210/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021522801
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020850
(87)【国際公開番号】W WO2020241665
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019103165
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医療分野研究成果展開事業 産学連携医療イノベーション創出プログラム 「未破裂脳動脈瘤のリスク評価を目指すマクロファージイメージング用新規MRI造影剤の開発」に係る委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐
(72)【発明者】
【氏名】孫 安生
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】今井 宏彦
(72)【発明者】
【氏名】小関 宏和
(72)【発明者】
【氏名】青木 友浩
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 勝行
(72)【発明者】
【氏名】宮路 正昭
(72)【発明者】
【氏名】田守 功二
(72)【発明者】
【氏名】益田 剛明
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 宏一
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104926964(CN,A)
【文献】特開平08-165307(JP,A)
【文献】特開2002-099112(JP,A)
【文献】特開2014-222152(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204209(WO,A1)
【文献】特開平01-282139(JP,A)
【文献】HEMMER, E et al.,Cytotoxic Aspects of Gadolinium Oxide Nanostructures for Up-Conversion and NIR Bioimaging,Acta Biomaterialia,2013年,Vol.9, No.1,pages 4734-4743
【文献】CHO, M et al.,Gadolinium Oxide Nanoplates With High Longitudinal Relaxivity for Magnetic Resonance Imaging,Nanoscale,2014年,Vol.6, No.22,pages 13637-13645
【文献】MIAO, X et al.,Stable and non-toxic ultrasmall gadolinium oxide nanoparticle colloids (coating material = polyacryl,RSC Advances,2018年,Vol.8,pages 3189-3197
【文献】Deli Xiao et al.,Preparation and highlighted applications of magnetic microparticles and nanoparticles: a review on recent advances,Microchimica Acta,2016年,Vol. 183,pages 2655-2675
【文献】HEMMER, E et al.,In Vitro and In Vivo Investigations of Upconversion and NIR Emitting Gd2O3:Er3+,Yb3+ Nanostructures for Biomedical Applications,Journal of Materials Science: Materials in Medicine,Vol. 23, No. 10,2012年,pages 2399-2412
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/08
A61B 5/055
C08F 210/00
G01N 24/00
G03G 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像法によるマクロファージイメージングに対して用いるためのマクロファージイメージング剤であって、酸化ガドリニウム含有粒子の表面上で、エチレン性不飽和結合を有するモノマーおよび架橋性モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなるポリマーを含有する被膜が形成されている複合粒子を含有してなり、前記モノマー成分におけるエチレン性不飽和結合を有するモノマーの含有率が50~95質量%であり、前記モノマー成分における架橋性モノマーの含有率が5~50質量%であり、前記エチレン性不飽和結合を有するモノマーとしてアルキル基の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレン系モノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーが用いられ、前記架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の架橋性モノマーが用いられていることを特徴とするマクロファージイメージング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロファージイメージング剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、マクロファージイメージング剤、当該マクロファージイメージング剤に用いられる複合粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法は、放射線を用いることなく、非侵襲的に実施することができる。したがって、磁気共鳴画像法は、生体の分子イメージングなどに用いられている。磁気共鳴画像法を用いる生体の分子イメージングとして、例えば、多糖被覆酸化鉄粒子をマクロファージイメージング剤として用いるマクロファージイメージングなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、多糖被覆酸化鉄粒子をマクロファージイメージング剤として用いた場合、当該多糖被覆酸化鉄粒子に由来する磁気共鳴信号が生体内のヘモグロビン中の鉄原子に由来するバックグラウンドノイズと重なって検出されることがある。したがって、多糖被覆酸化鉄粒子には、バックグラウンドノイズを消去する画像処理を要することから、定量性が損なわれるという欠点がある。さらに多糖被覆酸化鉄粒子には、生体への負荷が大きいという欠点がある。
【0004】
近年においては、生体内のマクロファージに関する情報を容易に画像化させることができ、しかも生体への負荷が小さいマクロファージイメージング剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-532223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、生体内のマクロファージに関する情報を容易に画像化させることができ、しかも生体への負荷が小さいマクロファージイメージング剤、当該マクロファージイメージング剤に用いられる複合粒子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)磁気共鳴画像法によるマクロファージイメージングに用いられるマクロファージイメージング剤であって、酸化ガドリニウム含有粒子の表面上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を重合させてなるポリマーを含有する被膜が形成されてなる複合粒子を含有することを特徴とするマクロファージイメージング剤、
(2)マクロファージイメージング剤に用いられる複合粒子であって、酸化ガドリニウム含有粒子の表面上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を重合させてなるポリマーを含有する被膜が形成されていることを特徴とする複合粒子、および
(3)前記(2)に記載の複合粒子を製造する方法であって、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分と酸化ガドリニウム含有粒子とを混合し、得られたモノマー成分含有混合物を界面活性剤および重合開始剤の存在下で水中で乳化させた後、前記モノマー成分を重合させて酸化ガドリニウム含有粒子の表面上に被膜を形成させることを特徴とする複合粒子の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体内のマクロファージに関する情報を容易に画像化させることができ、しかも生体への負荷が小さいマクロファージイメージング剤、当該マクロファージイメージング剤に用いられる複合粒子およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】製造例1で得られた酸化ガドリニウム含有粒子を観察した結果を示す図面代用写真である。
図2】実施例1で得られた複合粒子の粒子径分布を示すグラフである。
図3】(A)は実施例1で得られた複合粒子を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は(A)の破線部を拡大して観察した結果を示す図面代用写真である。
図4】実施例2で得られた複合粒子の粒子径分布を示すグラフである。
図5】(A)は試験例1における被験試料存在下でのT1強調画像の図面代用写真、(B)は試験例1における血清含有被験試料存在下でのT1強調画像の図面代用写真である。
図6】(A)は製造例4における抗CD68抗体を用いた正常頸動脈の免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真、(B)は製造例4における抗α-SMA抗体を用いた正常頸動脈の免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真、(C)は製造例4における抗CD68抗体を用いた動脈瘤病変の免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真、(D)は製造例4における抗α-SMA抗体を用いた動脈瘤病変の免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真である。
図7】(A)は実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のマウスのT1強調画像の図面代用写真、(B)は実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から30分間経過後のマウスのT1強調画像の図面代用写真、(C)は実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から1時間経過後のマウスのT1強調画像の図面代用写真、(D)は実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から2時間経過後のマウスのT1強調画像の図面代用写真、(E)は実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から24時間経過後のマウスのT1強調画像の図面代用写真である。
図8】(A)は実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のラットの頸動脈のネック側のT1強調画像の図面代用写真、(B)は実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から24時間経過後のラットの頸動脈のネック側のT1強調画像の図面代用写真、(C)は実施例で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のラットの頸動脈のドーム側のT1強調画像の図面代用写真、(D)は実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から24時間経過後のラットの頸動脈のドーム側のT1強調画像の図面代用写真である。
図9】試験例5で得られたインキュベートされた試料における複合粒子または臨床用造影剤の濃度と細胞生存率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のマクロファージイメージング剤は、前記したように、磁気共鳴画像法によるマクロファージイメージングに用いられるマクロファージイメージング剤であり、酸化ガドリニウム含有粒子の表面上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を重合させたポリマーを含有する被膜が形成された複合粒子を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明のマクロファージイメージング剤は、酸化ガドリニウム含有粒子の表面上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を重合させたポリマーを含有する被膜が形成されていることから、例えば、バックグラウンドノイズを消去する画像処理などの煩雑な操作を行なわなくても、生体の内部などを容易に画像化させることができ、しかも生体に対する負荷が小さいという優れた効果を発現する。
【0012】
複合粒子は、例えば、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分と酸化ガドリニウム含有粒子とを混合し、得られたモノマー成分含有混合物を界面活性剤および重合開始剤の存在下で水中で乳化させた後、前記モノマー成分を重合させて酸化ガドリニウム含有粒子の表面上に被膜を形成させることによって製造することができる。
【0013】
まず、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分と酸化ガドリニウム含有粒子とを混合することによってモノマー成分含有混合物を調製する。
【0014】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマー、カルボキシル基含有モノマー、スチレン系モノマー、ハロゲン原子含有不飽和炭化水素系モノマー、脂肪酸ビニルエステル系モノマー、不飽和ニトリル系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、本発明において、エチレン性不飽和結合を有するモノマーは、エチレン性不飽和結合を1分子中に1個有するモノマーを意味する。
【0015】
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が3~6のシクロアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのオキソ基含有(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル基の炭素数が1~8のフルオロアルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基含有(メタ)アクリレート;2-ブロモエチル(メタ)アクリレート、3-(クロロジメチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、2-(アセトアセチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2―アジドエチル(メタ)アクリレート、N-スクシンイミド(メタ)アクリレートなどの反応性官能基を有する(メタ)アクリレート;ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0017】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する脂肪族系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カルボキシル基含有モノマーのなかでは、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0018】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、4-(トリメトキシシリル)スチレン、ペンタフルオロスチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
ハロゲン原子含有不飽和炭化水素系モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのハロゲン原子含有不飽和炭化水素系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ハロゲン原子含有不飽和炭化水素系モノマーのなかでは、塩化ビニルが好ましい。
【0020】
脂肪酸ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロロ酢酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂肪酸ビニルエステル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
不飽和ニトリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0022】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーのなかでは、生体への負荷を抑制する観点から、(メタ)アクリレート系モノマー、カルボキシル基含有モノマーおよびスチレン系モノマーが好ましく、アルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレンがより好ましく、複合粒子の分散安定性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレートがより一層好ましく、アルキル基の炭素数が1~3のアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、メチル(メタ)アクリレートがさらに一層好ましい。
【0023】
モノマー成分におけるエチレン性不飽和結合を有するモノマーの含有率は、複合粒子を効率よく製造する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、複合粒子の経時的な形状安定性を向上させる観点から、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0024】
モノマー成分は、エチレン性不飽和結合を有するモノマー以外に架橋性モノマーをさらに含有していてもよい。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニル系モノマー、複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー、複数のアリル基を有するアリル系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
ジビニル系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート系モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート系モノマー;テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
複数のアリル基を有するアリル系モノマーとしては、例えば、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアリル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
架橋性モノマーのなかでは、複合粒子の経時的な形状安定性を向上させる観点から、ジビニル系モノマーおよび複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、ジビニルベンゼンおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0029】
モノマー成分における架橋性モノマーの含有率は、複合粒子の経時的な形状安定性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、複合粒子を効率よく製造する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0030】
モノマー成分は、本発明の目的を阻害しない範囲内でエチレン性不飽和結合を有するモノマーおよび架橋性モノマー以外の他のモノマーを含有していてもよい。
【0031】
酸化ガドリニウム含有粒子は、例えば、原料化合物と炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物と炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)とを混合し、得られた混合物を加熱することによって脂肪酸(誘導体)ガドリニウム前駆体を含有する溶液を生成させ、得られた溶液を加熱し、極性溶媒と混合し、得られた混合物から沈殿物を分離することによって得ることができる。酸化ガドリニウム含有粒子は、前記沈殿物として得ることができる。
【0032】
原料化合物としては、例えば、硝酸ガドリニウム、硝酸ガドリニウムの水和物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。硝酸ガドリニウムの水和物としては、例えば、硝酸ガドリニウム六水和物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0033】
炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物としては、例えば、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、エイコセン、ドコセン、テトラコセンなどの炭素数5~24のオレフィン系炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物のなかでは、酸化ガドリニウム含有粒子を効率よく生成させる観点から、オクタデセンが好ましい。
【0034】
原料化合物1モルあたりの炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物の量は、原料化合物の種類、炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物の種類などによって異なることから一概には決定することができないので、原料化合物の種類、炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。原料化合物1モルあたりの炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物の量は、通常、好ましくは0.5~1.5モルである。
【0035】
炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)としては、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸などの飽和脂肪酸;クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸などの不飽和脂肪酸;ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族アミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)のなかでは、酸化ガドリニウム含有粒子を効率よく生成させる観点から、炭素数6~24の不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸がより好ましい。
【0036】
原料化合物1モルあたりの炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)の量は、原料化合物の種類、炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)の種類などによって異なることから一概には決定することができないので、原料化合物の種類、炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。原料化合物1モルあたりの炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)の量は、通常、好ましくは0.1~1モルである。
【0037】
原料化合物と炭素数5~24の不飽和炭化水素化合物と炭素数6~24の脂肪酸(誘導体)との混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱することによって脂肪酸(誘導体)ガドリニウム前駆体を含有する溶液を得ることができる。
【0038】
混合物の加熱温度は、脂肪酸(誘導体)ガドリニウム前駆体を効率よく生成させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上であり、前記と同様に脂肪酸(誘導体)ガドリニウム前駆体を効率よく生成させる観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下である。混合物の加熱時間は、特に限定されないが、通常、好ましくは0.5~4時間、より好ましくは1~3時間である。
【0039】
混合物の加熱は、不活性ガス雰囲気中で行なわれる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0040】
つぎに、前記で得られた脂肪酸(誘導体)ガドリニウム前駆体を含有する溶液を加熱する。前記溶液の加熱温度は、酸化ガドリニウム含有粒子を効率よく生成させる観点から、好ましくは250℃以上、より好ましくは270℃以上であり、酸化ガドリニウム含有粒子を効率よく生成させる観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下である。前記溶液の加熱時間は、特に限定されないが、通常、好ましくは0.5~20時間、より好ましくは10~15時間である。
【0041】
つぎに、加熱後の脂肪酸(誘導体)ガドリニウム前駆体を含有する溶液を極性溶媒と混合し、得られた混合物から沈殿物を分離することにより、酸化ガドリニウム-脂肪酸(誘導体)複合粒子である酸化ガドリニウム含有粒子を得ることができる。
【0042】
極性溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数が1~4の脂肪族1価アルコール;アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン化合物;アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの極性溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、本発明の目的を阻害しない範囲で2種類以上を併用してもよい。極性溶媒のなかでは、酸化ガドリニウム含有粒子を効率よく生成させる観点から、脂肪族1価アルコールおよび脂肪族ケトン化合物が好ましく、メタノールおよびアセトンがより好ましい。
【0043】
混合物からの沈殿物の分離は、例えば、遠心分離などによって行なうことができる。前記沈殿物として酸化ガドリニウム含有粒子を得ることができる。
【0044】
酸化ガドリニウム含有粒子の体積平均粒子径は、マクロファージイメージング剤の用途などによって異なることから一概には決定することができないので、マクロファージイメージング剤の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。酸化ガドリニウム含有粒子の体積平均粒子径は、磁気共鳴信号の検出感度を向上させる観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上であり、マクロファージへのマクロファージイメージング剤の集積性を向上させる観点から、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
【0045】
酸化ガドリニウム含有粒子は、酸化ガドリニウム含有粒子分散液として用いることができる。酸化ガドリニウム含有粒子分散液は、例えば、酸化ガドリニウム含有粒子を必要により洗浄した後、分散媒に分散させることによって得ることができる。
【0046】
酸化ガドリニウム含有粒子の洗浄は、例えば、酸化ガドリニウム含有粒子を極性溶媒と混合して混合物を得、遠心分離によって前記混合物から酸化ガドリニウム含有粒子を回収することによって行なうことができる。前記極性溶媒は、脂肪酸(誘導体)ガドリニウム前駆体を含有する溶液に混合される極性溶媒と同様である。
【0047】
分散媒としては、例えば、脂肪族系有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。脂肪族系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカンなどの炭素数が6~18の脂肪族炭化水素化合物;ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミンなどの炭素数が6~18の脂肪族アミン;ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸などの炭素数6~18の脂肪酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂肪族系有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。脂肪族系有機溶媒のなかでは、酸化ガドリニウム含有粒子の分散安定性を向上させる観点から、炭素数が6~18の脂肪族炭化水素化合物が好ましく、炭素数が6~10の脂肪族炭化水素化合物がより好ましく、ヘキサンおよびヘプタンがより一層好ましく、ヘプタンがさらに好ましい。
【0048】
脂肪族系有機溶媒1Lあたりの酸化ガドリニウム含有粒子の量は、マクロファージイメージング剤の用途などによって異なることから一概には決定することができないので、マクロファージイメージング剤の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。脂肪族系有機溶媒1Lあたりの酸化ガドリニウム含有粒子の量は、通常、好ましくは10~500g、より好ましくは50~250gである。
【0049】
酸化ガドリニウム含有粒子分散液は、本発明の目的を阻害しない範囲で酸化ガドリニウム含有粒子および分散媒以外の他の成分を含有していてもよい。前記他の成分としては、例えば、酸化ガドリニウム含有粒子を分散媒に安定に分散させるための安定化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0050】
安定化剤としては、例えば、界面活性剤、酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、シラン基含有化合物、チタン原子含有化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの安定化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および高分子界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、ドデシル硫酸アンモニウムなどのアルキル基の炭素数が4~16のアルキル硫酸エステルのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アルキル基の炭素数が4~16のアルキルベンゼン硫酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アルキル基の炭素数が4~16のコハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩;アルキル基の炭素数が4~16のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩;アルキル基の炭素数が4~16のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩またはリン酸エステル塩;アルキル基の炭素数が4~16のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩またはリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0053】
また、アニオン性界面活性剤として、商業的に容易に入手することができるものを用いることができ、その例としては、ラテムルS-180A〔花王(株)製、商品名〕、エレミノールJS-2〔三洋化成(株)製、商品名〕、アクアロンHS-10〔第一工業製薬(株)製、商品名〕、アデカリアソープSE-10N〔(株)ADEKA製、商品名〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0054】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどのモノアルキルトリメチルアンモニウム塩;ヘキサデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジニウム塩などの第4級アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0055】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0056】
また、ノニオン性界面活性剤として、商業的に容易に入手することができるものを用いることができ、その例としては、Triton X-100(ユニオンカーバイド社製、商品名)、Triton X-114(ユニオンカーバイド社製、商品名)、Triton X-305(ユニオンカーバイド社製、商品名)、Triton N-101(ユニオンカーバイド社製、商品名)、Tween 20(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Tween 40(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Tween 60(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Tween 80(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Tween 85(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Brij 35(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Brij 58(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Brij 76(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Brij 98(アイ・シー・アイ社製、商品名)、Nonidet P-40(シェル社製、商品名)、Igepol CO530(ローヌ・プーラン社製、商品名)、Igepol CO630(ローヌ・プーラン社製、商品名)、Igepol CO720(ローヌ・プーラン社製、商品名)、Igepol CO730(ローヌ・プーラン社製、商品名)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0057】
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0058】
界面活性剤のなかでは、酸化ガドリニウム含有粒子の分散安定性を向上させる観点から、アニオン性界面活性剤が好ましく、アルキル基の炭素数が4~16のアルキル硫酸エステルのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩がより好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、ドデシル硫酸アンモニウムがより一層好ましく、ドデシル硫酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0059】
酸基含有化合物としては、例えば、1個のカルボキシル基を有するカルボン酸化合物、2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸化合物、1個のスルホ基を有するスルホン酸化合物、2個以上のスルホ基を有するスルホン酸化合物、1個のカルボキシル基と1個のスルホ基を有するスルホカルボン酸化合物、ブレンステッド酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
1個のカルボキシル基を有するカルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸;グリコール酸、乳酸、酒石酸などのオキシ脂肪族モノカルボン酸;シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸;サリチル酸、マンデル酸などのオキシ芳香族モノカルボン酸;トリフルオロ酢酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0061】
2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、クエン酸、ドデカン二酸などの炭素数2~30の脂肪族飽和ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの炭素数2~30の脂肪族不飽和ポリカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの炭素数8~30の芳香族ポリカルボン酸;シクロブテン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、フラン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸などの炭素数5~30の脂環式ポリカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0062】
1個のスルホ基を有するスルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などの脂肪族モノスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、m-トルエンスルホン酸、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、4-オクチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの芳香族モノスルホン酸;トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0063】
2個以上のスルホ基を有するスルホン酸化合物としては、例えば、メチオン酸、1,1-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,1-プロパンジスルホン酸、1,3-プロパンジスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などの炭素数1~30の脂肪族ポリスルホン酸;m-ベンゼンジスルホン酸、1,4-ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、1,6-ナフタレンジスルホン酸、2,6-ナフタレンジスルホン酸、2,7-ナフタレンジスルホン酸、スルホン化ポリスチレンなどの炭素数6~30の芳香族ポリスルホン酸;ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0064】
1個のカルボキシル基と1個のスルホ基を有するスルホカルボン酸化合物としては、例えば、スルホ酢酸、スルホコハク酸などの炭素数が2~30のスルホカルボン酸;o-スルホ安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、2,4-ジスルホ安息香酸、3-スルホフタル酸、3,5-ジスルホフタル酸、4-スルホイソフタル酸、2-スルホテレフタル酸、2-メチル-4-スルホ安息香酸、2-メチル-3,5-ジスルホ安息香酸、4-プロピル-3-スルホ安息香酸、4-イソプロピル-3-スルホ安息香酸、2,4,6-トリメチル-3-スルホ安息香酸、2-メチル-5-スルホテレフタル酸、5-メチル-4-スルホイソフタル酸、5-スルホサリチル酸、3-オキシ-4-スルホ安息香酸などの炭素数7~30のスルホ芳香族カルボン酸化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0065】
ブレンステッド酸としては、例えば、テトラフルオロホウ酸、トリフルオロホウ酸トリフルオロメチル、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、メタ亜ヒ酸、亜ヒ酸、ヒ酸、ヘキサフルオロヒ酸、ホウ酸、次亜臭素酸、炭酸、シアン化水素、シアン酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、クロム酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、モリブデン酸、アジ化水素酸、次亜硝酸、亜硝酸、硝酸、イソチオシアン酸、過酸化水素、ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサフルオロリン酸、硫化水素、硫酸、チオ硫酸、亜セレン酸、セレン酸、オルトケイ酸、フルオロアンチモン酸、亜テルル酸、テルル酸、バナジン酸、タングステン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0066】
アミノ基含有化合物としては、例えば、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリヘキシルアミン、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)アミン、1H,1H-パーフルオロオクチルアミン、ペンタフルオロアニリン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリンなどの含フッ素アミンが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアミノ基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0067】
シラン基含有化合物としては、例えば、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
チタン原子含有化合物としては、例えば、チタニウムトリイソステアロイルイソプロポキサイド、(2-n-ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、チタニウムアセチルアセトネート、イソ-ブトキシチタニウムエチルアセトアセテート、テトライソプロピルチタネート、テトラn-ブチルチタネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのチタン原子含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
酸化ガドリニウム含有粒子分散液における安定化剤の含有率は、安定化剤の種類などによって異なることから一概には決定することができないので、安定化剤の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0070】
酸化ガドリニウム含有粒子分散液は、そのまま用いてもよく、当該酸化ガドリニウム含有粒子分散液に含まれる分散媒の一部を他の分散媒に置換して用いてもよい。
【0071】
酸化ガドリニウム含有粒子100質量部あたりのモノマー成分の量は、酸化ガドリニウム含有粒子をポリマーで効率よく被覆する観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上、より一層好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは150質量部以上であり、磁気共鳴信号の検出感度を向上させる観点から、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは900質量部以下、より一層好ましくは800質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下である。
【0072】
つぎに、得られたモノマー成分含有混合物を界面活性剤および重合開始剤の存在下で水中で乳化させることによってエマルションを得ることができる。
【0073】
前記界面活性剤は、酸化ガドリニウム含有粒子分散液の安定化剤に用いられる界面活性剤と同様である。前記界面活性剤は、モノマー成分と重合可能な反応基を有していてもよい。反応基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0074】
モノマー成分含有混合物100質量部あたりの界面活性剤の量は、モノマーの種類、酸化ガドリニウム含有粒子の量、目的とする複合粒子の粒子径などによって異なることから一概には決定することができないので、モノマーの種類、酸化ガドリニウム含有粒子の量、目的とする複合粒子の粒子径などに応じて適宜決定することが好ましい。モノマー成分含有混合物100質量部あたりの界面活性剤の量は、通常、エマルションを効率よく生成させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、前記と同様にエマルションを効率よく生成させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0075】
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブタンニトリル)、1,1’-アゾビス-(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)塩酸塩などのアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、tert-ブチルペルオクテート、α-クミルペルオキシピバレートなどの過酸化物;過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
モノマー成分含有混合物100質量部あたりの重合開始剤の量は、モノマーの種類、モノマーの量などによって異なることから一概には決定することができないので、モノマーの種類、モノマーの量などに応じて適宜決定することが好ましい。モノマー成分含有混合物100質量部あたりの重合開始剤の量は、通常、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0077】
モノマー成分含有混合物は、例えば、界面活性剤、重合開始剤および水と混合した後、超音波分散機などの剪断混合装置を用いて乳化させることができる。剪断混合装置としては、例えば、プローブ式の超音波分散機などの超音波乳化機などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0078】
モノマー成分含有混合物は、モノマー成分と酸化ガドリニウム含有粒子との複合体の体積平均粒子径が所望の複合粒子の体積平均粒子径と同程度となるように水中で乳化させることが好ましい。
【0079】
超音波分散機を用いる場合、超音波の出力は、酸化ガドリニウム含有粒子を効率よくポリマーで被覆する観点から、好ましくは5W以上、より好ましくは10W以上であり、生体の内部などを容易に画像化させることができ、しかも生体に対する負荷が小さいマクロファージイメージング剤を効率よく製造する観点から、好ましくは200W以下、より好ましくは150W以下である。超音波の照射は、1回で行なってもよく、複数回に分けて行なってもよい。超音波の照射1回あたりの超音波の照射時間は、超音波の出力などによって異なることから一概には決定することができないので、超音波の出力などに応じて適宜決定することが好ましい。超音波の照射1回あたりの超音波の照射時間は、モノマー成分含有混合物を十分に乳化させ、小さい体積平均粒子径を有する複合粒子を形成させる観点から、好ましくは10秒間以上、より好ましくは30秒間以上、さらに好ましくは1分間以上であり、モノマー成分を効率よく酸化ガドリニウム含有粒子に付着させる観点から、好ましくは10分間以下、より好ましくは5分間以下、さらに好ましくは3分間以下である。
【0080】
つぎに、モノマー成分を重合させることにより、酸化ガドリニウム含有粒子の表面上に前記モノマー成分を重合させたポリマーの被膜を形成させることができる。
【0081】
モノマー成分の重合は、1段で行なってもよく、多段で行なってもよい。したがって、複合粒子が有する被膜は、1層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。モノマー成分を重合させる際の重合温度は、モノマー成分に含まれるモノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないので、当該モノマー成分に含まれるモノマーの種類などに応じて適宜決定することが好ましい。モノマー成分の重合温度は、通常、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~95℃である。モノマー成分を重合させる際の重合時間は、特に限定されないが、通常、好ましくは1~50時間、より好ましくは2~24時間である。
【0082】
複合粒子におけるポリマーの含有率は、生体への負荷を抑制する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、マクロファージへの集積性を向上させるとともに磁気共鳴信号の検出感度を向上させる観点から、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0083】
複合粒子における酸化ガドリニウム含有粒子の含有率は、マクロファージイメージング剤の用途などによって異なることから一概には決定することができないので、マクロファージイメージング剤の用途に応じて適宜決定することが好ましい。複合粒子における酸化ガドリニウム含有粒子の含有率は、マクロファージへの集積性を向上させるとともに磁気共鳴信号の検出感度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、生体への負荷を抑制する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0084】
複合粒子の体積平均粒子径は、マクロファージイメージング剤の用途などによって異なることから一概には決定することができないので、マクロファージイメージング剤の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。複合粒子の体積平均粒子径は、磁気共鳴信号の検出感度を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは80nm以上であり、生体への負荷を抑制するとともにマクロファージへのマクロファージイメージング剤の集積性を向上させる観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは190nm以下、より一層好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0085】
本発明のマクロファージイメージング剤は、複合粒子のみで構成されていてもよく、本発明の目的を阻害しない範囲で複合粒子以外に他の成分を含有していてもよい。前記他の成分としては、例えば、複合粒子を分散させるための分散媒、安定化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0086】
分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール系有機溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系有機溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの炭化水素系有機溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系有機溶媒;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油などの油類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。溶媒のなかでは、取り扱いが容易であることから、アルコール系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および炭化水素系有機溶媒が好ましく、ケトン系有機溶媒および炭化水素系有機溶媒がより好ましい。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
前記安定化剤は、酸化ガドリニウム含有粒子分散液に用いられる安定化剤と同様である。
【0088】
マクロファージイメージング剤における複合粒子の含有率は、マクロファージイメージング剤の用途などによって異なることから一概に決定することができないので、マクロファージイメージング剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。マクロファージイメージング剤における複合粒子の含有率は、磁気共鳴信号の検出感度を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。マクロファージイメージング剤における複合粒子の含有率の上限値は、100質量%であり、マクロファージイメージング剤が前記他の成分を含有する場合、他の成分の種類などに応じて、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜決定することが好ましい。
【0089】
本発明のマクロファージイメージング剤は、マクロファージへの集積性に優れることから、例えば、マクロファージが関与する疾患などの画像診断などに用いることができる。マクロファージが関与する疾患としては、例えば、炎症;腫瘍;心筋梗塞などの心疾患;脳卒中、脳梗塞などの脳血管疾患;動脈硬化;糖尿病;アルツハイマー病などの神経疾患などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0090】
以上説明したように、本発明のマクロファージイメージング剤は、生体内のマクロファージに関する情報を容易に画像化させることができ、しかも生体への負荷が小さいことから、マクロファージが関与する疾患の画像診断などに好適に用いられることが期待されるものである。
【実施例
【0091】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。各略語の意味は、以下のとおりである。
【0092】
<略語の説明>
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎仔血清
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
TR:繰返し時間
TE:エコー時間
FOV:撮像視野
NA:平均数
【0093】
製造例1
硝酸ガドリニウム六水和物450mg(10mmol)およびガラス被覆撹拌子を平底反応管内に入れた後、当該平底反応管の上部に冷却器を取り付けた。平底反応管内の減圧と平底反応管内へのアルゴンガスの導入とからなる一連の操作を3回繰り返すことによって平底反応管内の雰囲気をアルゴンガス雰囲気に置換した。アルゴンガスを平底反応管内に供給しながら平底反応管内の硝酸ガドリニウム六水和物にオレイン酸563mg(2mmol)および1-オクタデセン2500mg(10mmol)を添加することによって混合物を得た。得られた混合物をアルゴンガス雰囲気中で撹拌しながら110℃で2時間加熱することによって黄色溶液を得た。得られた黄色溶液を撹拌しながら320℃で14時間加熱することによって茶褐色溶液を得た。得られた茶褐色溶液を撹拌しながら室温まで冷却した後、50mL遠沈管へ移した。この茶褐色溶液にメタノール20mLとアセトン20mLとを添加して遠沈管の内容物を激しく振盪させた後、得られた混合物を1873×gで30分間遠心して薄茶色上清と黒色沈殿物とに分離させた。得られた黒色沈殿物にメタノール20mLとアセトン20mLとを添加し、得られた混合物を振盪させた後、1873×gで30分間遠心する一連の操作を6回繰り返すことによって黒色沈殿物を洗浄した。洗浄後の黒色沈殿物をヘキサン10mLに分散させることによって酸化ガドリニウム含有粒子分散液を得た。
【0094】
得られた酸化ガドリニウム含有粒子分散液を希釈用溶媒〔組成:1M硝酸および1質量%ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル〕で1000倍に希釈して測定試料を得た。偏光ゼーマン原子吸光光度計〔(株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:Z-2710〕を用いて測定試料における酸化ガドリニウム含有粒子の濃度を測定し、酸化ガドリニウム含有粒子分散液における酸化ガドリニウム含有粒子の濃度を求めた。その結果、分散液における酸化ガドリニウム含有粒子の濃度は、約100mMであった。
【0095】
透過型電子顕微鏡〔日本電子(株)製、商品名:JEM-1400〕を用いて加速電圧100kVで測定試料に含まれる酸化ガドリニウム含有粒子を観察した。製造例1で得られた酸化ガドリニウム含有粒子を観察した結果を図1に示す。図中、スケールバーは200nmを示す。
【0096】
図1に示された結果から、酸化ガドリニウム含有粒子の直径は、約20nmであることがわかる。
【0097】
製造例2
ラウリル硫酸ナトリウム2mgと過硫酸ナトリウム4mgとを水1mLに溶解させ、混合水溶液を得た。
【0098】
実施例1
製造例1で得られた酸化ガドリニウム含有粒子分散液(ガドリニウム濃度:16mM)1700μLにヘプタン100μLを添加した後、75℃で1時間加熱して濃縮することによって濃縮物を得た。濃縮物にメチルメタクリレート90mgおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート10mgを添加することによってモノマー成分と酸化ガドリニウム含有粒子とを含有するモノマー成分含有混合物を得た。得られたモノマー成分含有混合物に製造例2で得られた混合水溶液1000mgを添加し、混合水溶液を得た。超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、商品名:US300T〕を用いて氷冷下に150Wで1分間超音波を混合水溶液に照射した後、超音波の照射を1分間停止する一連の操作を5回繰り返すことによってエマルションを得た。エマルションを70℃で4時間加熱することによってエマルションに含まれるモノマー成分を重合させた。得られた反応液を透析膜〔スペクトラムラボラトリーズ製、商品名:Float-A-Lyzer G2、MWCO:1000kDa〕で2日間透析して反応液中に残留する不純物を除くことによって複合粒子分散液Aを得た。
【0099】
(体積平均粒子径の測定)
複合粒子分散液Aを超純水に懸濁させ、測定試料を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置〔日機装(株)製、商品名:ナノトラックUPA-EX150〕を用いて25℃で測定試料に含まれる複合粒子の粒子径分布を測定した。
【0100】
実施例1で得られた複合粒子の粒子径分布を図2に示す。図2に示された結果から、複合粒子の体積平均粒子径は、165nmであることがわかる。
【0101】
(酸化ガドリニウムの含有率の測定)
実施例1で得られた複合粒子における酸化ガドリニウムの含有率を、差動型示差熱天秤〔(株)日立ハイテクサイエンス製、商品名:STA7300〕を用いて500℃で測定した。その結果、実施例1で得られた複合粒子における酸化ガドリニウムの含有率は9.6質量%であった。
【0102】
(複合粒子の観察)
複合粒子分散液Aを希釈用溶媒〔組成:1M硝酸および1質量%ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)〕で1000倍に希釈して測定試料を得た。透過型電子顕微鏡〔日本電子(株)製、商品名:JEM-1400〕を用いて加速電圧100kVで測定試料に含まれる複合粒子を観察した。実施例1で得られた複合粒子を観察した結果を図3(A)、図3(A)の破線部を拡大して観察した結果を図3(B)に示す。図3(A)中、スケールバーは200nmを示す。図3(B)中、スケールバーは、2μmを示す。
【0103】
図3に示された結果から、実施例1で得られた複合粒子は、酸化ガドリニウム粒子の表面上にメチルメタクリレートとトリメチロールプロパントリメタクリレートとの重合体を含有する被膜を有することがわかる。
【0104】
実施例2
実施例1において、メチルメタクリレート90mgおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート10mgを用いる代わりにスチレン90mgおよびジビニルベンゼン10mgを用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、複合粒子分散液Bを得た。
【0105】
(体積平均粒子径の測定)
実施例1において、複合粒子分散液Aを用いる代わりに複合粒子分散液Bを用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、実施例2で得られた複合粒子の体積平均粒子径を求めた。実施例2で得られた複合粒子の粒子径分布を図4に示す。図4に示された結果から、実施例2で得られた複合粒子の体積平均粒子径は、175nmであることがわかる。
【0106】
(酸化ガドリニウムの含有率の測定)
実施例1において、複合粒子分散液Aを用いる代わりに複合粒子分散液Bを用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、実施例2で得られた複合粒子における酸化ガドリニウムの含有率を求めた。その結果、複合粒子Bにおける酸化ガドリニウム含有率は、8.3質量%であった。
【0107】
試験例1
実施例1で得られた複合粒子の濃度が0.0625mM、0.125mM、0.25mM、0.5mMまたは1mMとなるように実施例1で得られた複合粒子分散液Aを生理食塩水に添加し、被験試料(実験番号1)を得た。前記において、生理食塩水を用いる代わりに10体積%FBS含有生理食塩水を用いたことを除き、生理食塩水を用いたときと同様の操作を行ない、血清含有被験試料(実験番号2)を得た。
【0108】
小動物用MRI装置〔ブルカー・バイオスピン(Bruker BioSpin)社製、商品名:BioSpec 70/20 USR〕を用いて被験試料の存在下でT1強調画像を撮影した。T1強調画像は、スピンエコー法にしたがい、TR=200ms、TE=6.22ms、FOV=40×40mm2、マトリックスサイズ=256×256、NA=2、スライス厚=2mmの条件で外部磁場強度7T、室温にて撮影した。
【0109】
試験例1における被験試料存在下でのT1強調画像を図5(A)、血清含有被験試料存在下でのT1強調画像を図5(B)に示す。
【0110】
図5(A)に示された結果から、実施例1で得られた複合粒子の存在下(複合粒子濃度が0.0625~1mM)でのT1強調画像におけるMR信号強度は、実施例1で得られた複合粒子の非存在下(複合粒子濃度が0mM)でのT1強調画像におけるMR信号強度と対比して顕著に高いことがわかる。また、図5(B)に示された結果から、生体内と同様に血清が存在している場合であっても、実施例1で得られた複合粒子の存在下(複合粒子濃度が0.0625~1mM)でのT1強調画像におけるMR信号強度は、実施例1で得られた複合粒子の非存在下(複合粒子濃度が0mM)でのT1強調画像におけるMR信号強度と対比して顕著に高いことがわかる。したがって、実施例1で得られた複合粒子は、陽性MRI造影剤として用いることができることがわかる。
【0111】
なお、実施例1で得られた複合粒子分散液Aを用いる代わりに実施例2で得られた複合粒子分散液Bを用いたときにも、実施例1で得られた複合粒子分散液Aを用いたときと同様の傾向が見られる。したがって、実施例2で得られた複合粒子は、陽性MRI造影剤として用いることができることがわかる。
【0112】
以上の結果から、本願発明の複合粒子は、陽性MRI造影剤として用いることができることがわかる。
【0113】
比較例1
250mL容ポリプロピレン製ボトルに臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム500mg、非イオン性界面活性剤〔シグマ・アルドリッチ社製、商品名:Pluronic F-127〕4000mg、エタノール33.7mL、28体積%アンモニア水10.66mLおよび超純水95.96mLを添加した。このポリプロピレン製ボトルに蓋をした後、当該ボトルを25℃で8時間900~1000min-1の回転数で攪拌することによってミセル溶液を得た。
【0114】
オルトケイ酸テトラエチル1690mgをミセル溶液に添加した。得られた混合物を25℃で1分間高速攪拌した。撹拌後の混合物を25℃で24時間静置し、白色溶液8mLを得た。得られた白色溶液を40000×gで20分間遠心して粒子を沈降させた。
【0115】
沈降させた粒子を超純水8mLに分散させて粒子分散液を得た。粒子分散液を10分間攪拌した後、当該粒子分散液に20分間超音波を照射した。超音波照射後の粒子分散液を40000×gで20分間遠心して粒子を沈降させた。その後、前記と同様にして、超純水への粒子の分散、粒子分散液の撹拌、粒子分散液への超音波の照射および粒子の沈降からなる一連の操作を2回行なった。
【0116】
その後、前記において、超純水を用いる代わりにエタノールを用いたことを除き、超純水を用いたときと同様の操作を1回行なうことによって粒子を洗浄した。洗浄後の粒子を65℃に保たれたオーブン内に入れ、12時間乾燥させた。得られた乾燥物をメノウ乳鉢で破砕することによって粉末を得た。得られた粉末を電気炉内に入れ、550℃で5時間焼成することによってシリカナノ粒子180mgを得た。
【0117】
(体積平均粒子径の測定)
シリカナノ粒子を超純水に懸濁させ、測定試料を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置〔マルバーン社製、商品名:ゼータサイザーナノZS〕を用いて25℃で測定試料に含まれる粒子の粒子径分布を測定した。その結果、シリカナノ粒子の体積平均粒子径は、0.143μmであった。
【0118】
試験例2
FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンをFBSの濃度が10体積%、ペニシリンの濃度が100ユニット/mL、ストレプトマイシンの濃度が100μg/mLとなるようにダルベッコ改変イーグル培地に添加し、細胞増殖培地を得た。
【0119】
マクロファージ細胞株RAW264をその濃度が1.0×105細胞/mLとなるように細胞増殖培地に分散させ、細胞分散液を得た。細胞分散液3mLを6ウェルプレートのウェルに播種した。播種後の細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃で24時間培養することによって細胞を6ウェルプレートのウェルに接着させた。
【0120】
実施例1で得られた複合粒子をその濃度が0.1mg/mLになるよう前記ウェル内に入れた。前記ウェル内の複合粒子を5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃で24時間インキュベートした。細胞をPBS1mLで3回洗浄した。洗浄後の細胞に0.25体積%トリプシン/1mM EDTA溶液500μLを添加した後、得られた混合液を5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃で5分間静置して細胞を浮遊させ、細胞浮遊液を得た。細胞浮遊液に細胞増殖培地500μLを添加して細胞懸濁液を得た。この細胞懸濁液を15mL容スピッツ管に回収した。細胞懸濁液が入ったスピッツ管を1000rpm(180×g)で5分間遠心して上清を除去することによって複合粒子を含む細胞塊を得た。
【0121】
得られた細胞塊に細胞溶解液〔組成:2質量%トリトン X-100および2N硝酸〕150μLを添加した後、ピペッティングにより細胞を溶解させ、試料を得た。偏光ゼーマン原子吸光光度計を用いて試料に含まれるガドリニウムの量を測定することによって1細胞あたりの複合粒子の取り込み量を求めた。その結果、1細胞あたりの複合粒子の取り込み量は、632~1201pgであることがわかった。
【0122】
また、前記において、実施例1で得られた複合粒子を用いる代わりに比較例1で得られたシリカナノ粒子を用いたことを除き、実施例1で得られた複合粒子を用いたときと同様の操作を行ない、1細胞あたりのシリカナノ粒子の量を求めた。その結果、1細胞あたりのシリカナノ粒子の取り込み量は、4.72~8.63pgであることがわかった。
【0123】
これらの結果から、マクロファージ細胞株RAW264における実施例1で得られた複合粒子の取り込み量は、マクロファージ細胞株RAW264における比較例1で得られたシリカナノ粒子の取り込み量と対比して多いことがわかる。したがって、実施例1で得られた複合粒子は、シリカナノ粒子と対比してマクロファージに取り込まれやすいことがわかる。
【0124】
なお、前記において、実施例1で得られた複合粒子分散液Aを用いる代わりに実施例2で得られた複合粒子分散液Bを用いたことを除き、実施例1で得られた複合粒子を用いたときと同様の操作を行なった場合、実施例2で得られた複合粒子Bは、実施例1で得られた複合粒子と同様にマクロファージに取り込まれやすい傾向が見られる。
【0125】
また、前記において、実施例1で得られた複合粒子分散液Aを用いる代わりに酸化ガドリニウム粒子の表面がゼラチンまたはデキストランで被覆された複合粒子を用いたことを除き、実施例1で得られた複合粒子を用いたときと同様の操作を行なった場合、当該複合粒子は、比較例1で得られたシリカナノ粒子と同様にマクロファージに取り込まれにくい傾向が見られる。
【0126】
これらの結果から、本発明の複合粒子は、マクロファージに効率よく取り込まれることがわかる。
【0127】
製造例3
塩化ナトリウムおよびコラーゲン架橋酵素阻害剤(3-アミノプロピオニトリル)を塩化ナトリウムの濃度が8質量%およびコラーゲン架橋酵素阻害剤の濃度が0.12質量%となるようにラット用飼料〔オリエンタル酵母工業 実験動物用飼料MF〕に混合し特殊飼料を得た。
【0128】
製造例4
7週齢の雄性スプラグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラットの左総頸動脈を全身麻酔下に切断した。当該左総頸動脈を端側吻合術によって右総頸動脈に吻合し、新規の血管分岐部を作製した。術後のラットを製造例3で得られた特殊飼料で1カ月間飼育した。
【0129】
飼育後にラットの血管分岐部を観察した。その結果、血管分岐部に動脈瘤が形成されていることがわかった。また、7T-MRI装置〔ブルカーバイオスピン(Bruker BioSpin)製、商品名:動物用7T MRI/MRSシステム BioSpec 70/20 USR〕で血管分岐部を撮影し、観察した。その結果、血管分岐部に嚢状の動脈瘤が形成されていることがわかった。
【0130】
動脈瘤病変を切離し、組織標本を作製した。抗CD68抗体および抗α-SMA抗体を用いて動脈瘤病変の組織標本の免疫組織化学染色を行なった。なお、CD68はマクロファージのマーカーであり、α-SMAは平滑筋細胞のマーカーである。
【0131】
製造例4における抗CD68抗体を用いた正常頸動脈の免疫組織化学染色の結果を図6(A)、抗α-SMA抗体を用いた正常頸動脈の免疫組織化学染色の結果を図6(B)、抗CD68抗体を用いた動脈瘤病変の免疫組織化学染色の結果を図6(C)、抗α-SMA抗体を用いた動脈瘤病変の免疫組織化学染色の結果を図6(D)に示す。図中、スケールバーは、50μmを示す。
【0132】
図6に示された結果から、動脈瘤病変〔図6(C)〕に含まれるCD68陽性細胞であるマクロファージの数は、正常頸動脈〔図6(A)〕に含まれるマクロファージの数と対比して多いことがわかる。これらの結果から、動脈瘤病変では、マクロファージが浸潤していることがわかる。また、動脈瘤病変〔図6(D)〕に含まれるα-SMA陽性細胞である平滑筋細胞は、正常頸動脈〔図6(B)〕に含まれる平滑筋細胞の数と対比して少ないことがわかる。これらの結果から、動脈瘤病変では、血管の平滑筋細胞層が菲薄化していることがわかる。マクロファージの浸潤および平滑筋細胞層の菲薄化は、脳動脈瘤病変の特徴的所見である。したがって、製造例4で得られたラットは、動脈瘤モデル動物として用いることができることがわかる。
【0133】
実施例3
実施例1で得られた複合粒子分散液Aを複合粒子の濃度が10mg/mLとなるように生理食塩水に添加してマクロファージイメージング剤を得た。
【0134】
試験例3
実施例3で得られたマクロファージイメージング剤200μLを6週齢の雌性BALB/cマウスの尾静脈に投与した。小動物用MRI装置〔ブルカー・バイオスピン(Bruker BioSpin)社製、商品名:BioSpec 70/20 USR〕を用いてマウスの全身のT1強調画像を経時的に撮影し、T1強調画像におけるT1コントラストの経時的変化を観察した。T1強調画像は、スピンエコー法にしたがい、TR=200ms、TE=6.22ms、FOV=80×40mm2、マトリックスサイズ=256×128、NA=2、スライス厚=2mm、スライス枚数=9枚および脂肪抑制の条件で外部磁場強度7T、室温にて撮影した。
【0135】
試験例3において、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のマウスのT1強調画像を図7(A)、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から30分間経過後のマウスのT1強調画像を図7(B)、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から1時間経過後のマウスのT1強調画像を図7(C)、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から2時間経過後のマウスのT1強調画像を図7(D)、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から24時間経過後のマウスのT1強調画像を図7(E)に示す。図中、矢印は、マウスの肝臓を示す。
【0136】
図7に示された結果から、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から1時間経過後、2時間後および24時間後のT1強調画像では、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のT1強調画像と対比して肝臓におけるT1コントラストが上昇していることがわかる。したがって、実施例3で得られたマクロファージイメージング剤は、生体内においても陽性MR信号を発することから、陽性MRI造影剤として用いることができることがわかる。
【0137】
実施例4
実施例1で得られた複合粒子分散液Aを複合粒子の濃度が40mg/mLとなるように生理食塩水に添加してマクロファージイメージング剤を得た。
【0138】
試験例4
実施例4で得られたマクロファージイメージング剤1mLを製造例4で得られたラット(動脈瘤モデル動物)の尾静脈に投与した。小動物用MRI装置〔ブルカー・バイオスピン(Bruker BioSpin)社製、商品名:BioSpec 70/20 USR〕を用いてラットの頸動脈のネック側およびドーム側の各T1強調画像を経時的に撮影し、当該T1強調画像におけるT1コントラストの経時的変化を観察した。T1強調画像は、ブラック-ブラッド法を併用した勾配エコー法にしたがい、TR=750ms、TE=3.2ms、フリップアングル=90°、FOV=32×32mm2、マトリックスサイズ=128×128、NA=4、スライス厚=0.5mm、スライス枚数=5枚、ブラック-ブラッド反転時間=700msおよびブラック-ブラッドスラブ厚=5.5mmの条件で外部磁場強度7T、室温にて撮影した。
【0139】
試験例4において、実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のラットの頸動脈のネック側のT1強調画像を図8(A)、実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から24時間経過後のラットの頸動脈のネック側のT1強調画像を図8(B)、実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のラットの頸動脈のドーム側のT1強調画像を図8(C)、実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から24時間経過後のラットの頸動脈のドーム側のT1強調画像を図8(D)に示す。図中、スケールバーは、1mmを示す。
【0140】
図8に示された結果から、実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与終了時から24時間経過後のT1強調画像〔図8(B)および(D)〕では、実施例4で得られたマクロファージイメージング剤の投与前のT1強調画像〔図8(A)および(C)〕と対比して頸動脈瘤周辺におけるT1コントラストが上昇していることがわかる。これらの結果から、実施例4で得られたマクロファージイメージング剤は、動脈瘤に集積したマクロファージに取り込まれることから、動脈瘤を視覚化させることができることがわかる。
【0141】
試験例5
FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンをFBSの濃度が10体積%、ペニシリンの濃度が100ユニット/mL、ストレプトマイシンの濃度が100μg/mLとなるようにダルベッコ改変イーグル培地に添加し、細胞増殖培地を得た。
【0142】
マウス由来線維芽細胞株L929をその濃度が3.2×104/mLとなるように細胞増殖培地に分散させ、細胞分散液を得た。細胞分散液100μLを96ウェルプレートのウェルに播種した。播種後の細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃で24時間培養することによって細胞を96ウェルプレートのウェルに接着させた。
【0143】
実施例1で得られた複合粒子分散体A複合粒子の濃度が0.00001~0.1mg/mLとなるように超純水10μLに分散させ、複合粒子分散液を得た。得られた複合粒子分散液10μLを、前記ウェル内の細胞を含有する試料に添加した後、前記ウェル内の複合粒子と細胞 とを含有する試料を5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃で48時間インキュベートした。インキュベートされた試料をPBS0.1mLで3回洗浄した。洗浄後の試料にCCK-8溶液〔(株)同仁化学研究所製、商品名:セルカウンティングキット-8〕10μLおよび細胞増殖培地100μLを添加した後、5体積%二酸化炭素雰囲気中にて37℃で1.5時間インキュベートすることによって呈色反応を行なった。インキュベートされた試料を含む96ウェルプレートマイクロプレートリーダー〔バイオ-ラッド・ラボラトリーズ・インコーポラーティッド(Bio-Rad Laboratories,Inc.)社製、商品名:iMark〕に供し、各ウェル内のインキュベートされた試料の450nmにおける吸光度(以下、「吸光度A」という)を測定した(参照波長:600nm)。
【0144】
また、前記において、複合粒子分散液10μLを用いる代わりに超純水10μLを用いたことを除き、複合粒子分散液10μLを用いたときと同様の操作を行ない、各ウェル内のインキュベートされた試料の450nmにおける吸光度(以下、「吸光度B」という)を測定した(参照波長:600nm)。
【0145】
吸光度Aを吸光度Bで除することにより、細胞生存率を算出した。
【0146】
さらに、前記において、複合粒子分散液10μLを用いる代わりに臨床用造影剤〔バイエル薬品(株)製、商品名:マグネビスト(登録商標)〕10μLを用いたことを除き、複合粒子分散液10μLを用いたときと同様の操作を行ない、各ウェル内のインキュベートされた試料の450nmにおける吸光度(以下、「吸光度C」という)を測定した(参照波長:600nm)。
【0147】
吸光度Cを吸光度Bで除することにより、細胞生存率を算出した。
【0148】
前記で得られたインキュベートされた試料における複合粒子または臨床用造影剤の濃度と細胞生存率との関係を図9に示す。図9において、白抜き丸印は、インキュベートされた試料における複合粒子の濃度と細胞生存率との関係、白抜き三角印は、インキュベートされた試料における臨床用造影剤の濃度と細胞生存率との関係を示す。
【0149】
図9に示された結果から、実施例1で得られた複合粒子を用いたときの細胞生存率は、臨床用造影剤〔バイエル薬品(株)製、商品名:マグネビスト(登録商標)〕を用いたときの細胞生存率と同程度であることがわかる。この結果から、実施例1で得られた複合粒子は、生体への負荷が小さいことがわかる。
【0150】
なお、前記において、実施例1で得られた複合粒子を用いる代わりに実施例2で得られた複合粒子を用いたことを除き、実施例1で得られた複合粒子を用いたときと同様の操作を行なった場合、実施例2で得られた複合粒子Bは、実施例1で得られた複合粒子と同様に生体への負荷が小さい傾向が見られる。
【0151】
以上説明したように、本発明の複合粒子によれば、マクロファージを視覚化することができる。また、本発明の複合粒子によれば、マクロファージを視覚化することによって動脈瘤を視覚化することができる。さらに、本発明の複合粒子によれば、生体への負荷を小さくすることができる。したがって、本発明の複合粒子および当該複合粒子を含有するマクロファージイメージング剤は、マクロファージが関与する疾患の画像診断、当該疾患に対する薬物治療の効果判定などの用途に好適に用いられることが期待されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9