(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】老化防止剤供給用組成物、老化防止剤供給材及び老化防止剤供給方法
(51)【国際特許分類】
C09K 15/18 20060101AFI20240402BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240402BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240402BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C09K15/18
C08L101/00
C08L83/04
C08L27/12
C08K5/18
(21)【出願番号】P 2021526142
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2020023109
(87)【国際公開番号】W WO2020250996
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019110186
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕士
(72)【発明者】
【氏名】田原 聖一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】浦田 智裕
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-001449(JP,A)
【文献】実開昭60-139936(JP,U)
【文献】特開平09-208750(JP,A)
【文献】特開2015-042700(JP,A)
【文献】特開2013-095382(JP,A)
【文献】特開2010-260258(JP,A)
【文献】特開2009-220692(JP,A)
【文献】特開2002-146069(JP,A)
【文献】特開平11-278008(JP,A)
【文献】国際公開第2009/025044(WO,A1)
【文献】特開2007-224166(JP,A)
【文献】特開2003-002991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K15/00-15/34
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
B29C71/04
B60C1/00-19/12
C08J7/00-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、老化防止剤5質量%以上と、を含む老化防止剤供給用組成物であって、
前記基材が、シリコーン系ポリマー及びフッ素系ポリマーから選択される少なくとも一種を含有し、
前記基材の溶解度パラメータ(SP値)が、7.8(cal/cm
3)
1/2未満であることを特徴とする、老化防止剤供給用組成物。
【請求項2】
前記基材が、シリコーン系ポリマーを少なくとも含有することを特徴とする、請求項
1に記載の老化防止剤供給用組成物。
【請求項3】
前記老化防止剤が、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンを少なくとも含有することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の老化防止剤供給用組成物。
【請求項4】
前記基材のSP値が、6.7~7.6(cal/cm
3)
1/2であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の老化防止剤供給用組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の老化防止剤供給用組成物を含むことを特徴とする、老化防止剤供給材。
【請求項6】
前記老化防止剤供給材は、厚さが0.5mm未満のシート状であることを特徴とする、請求項
5に記載の老化防止剤供給材。
【請求項7】
タイヤへ老化防止剤を供給する方法であって、
タイヤの外表面に、請求項
5又は6に記載の老化防止剤供給材を接触させた状態で、8時間以上おくことを特徴とする、老化防止剤供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化防止剤供給用組成物、老化防止剤供給材及び老化防止剤供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、ホース、ベルト、クローラ等の野外で使用されるゴム物品については、紫外線、オゾン等による劣化を防ぐことを目的として、一般に老化防止剤が含まれている。
ただし、ゴム物品中の老化防止剤は、経時的に消費され、含有量が減少することから、ゴム物品を一定期間使用した後には、紫外線やオゾン劣化等によって、ゴム物品に亀裂やクラックが生じやすくなる(耐オゾン性が低下する)等の問題があった。
【0003】
上述した耐オゾン性の低下を抑制するため、減少する老化防止剤の量を考慮して、ゴム物品中に含有する老化防止剤の量を増やすことが考えられる。しかしながら、ゴム物品中の老化防止剤の含有量を増やした場合、ゴム物品の表面が茶色く変色し、外観性の悪化を招くという問題や、タイヤの場合には、プライ等の他の部材との接着性が低下するおそれもあった。
また、ゴム物品中のポリマー成分の改善や、老化防止剤の抜けを防ぐための保護膜のようなものを設ける技術もあるが、いずれも耐オゾン性の向上効果が十分ではなく、コストの上昇を招くという問題もあった。
【0004】
そのため、一定期間使用したゴム物品に対して、老化防止剤を後付けで加えることで、耐オゾン性の低下を抑制する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、粉末状や液体状の老化防止剤に、ゴム等のエラストマーを埋没又は浸漬によって、一定時間接触させることで、老化防止剤をエラストマー中に浸透させ、エラストマーの劣化を抑制する技術が開示されている。
また、特許文献2及び3には、ゴム等のポリマー成分と、老化防止剤と、を含む老化防止用貼付材を、架橋ゴムの表面に一定時間貼り付けることで、架橋ゴムの老化を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-2991号公報
【文献】国際公開第2009/25044号
【文献】特開2007-224166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術については、老化防止剤のゴム物品中への浸透が十分ではなく、より効果的に老化防止剤を補充することができる技術の開発が望まれていた。
また、特許文献2及び3の技術についても、老化防止剤のゴム物品中への浸透が十分ではなく、老化防止用貼付材を長時間ゴム物品へ貼り付ける必要があることから、より効果的且つ短時間に老化防止剤を補充することができる技術の開発が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、長時間を要することなく、ゴム物品へ老化防止剤を補充することができる、老化防止剤供給用組成物及び老化防止剤供給材を提供することを目的とする。
また、本発明は、長時間を要することなく、タイヤへ老化防止剤を補充することができ、耐オゾン性の低下を効果的に抑制できる、老化防止剤供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の老化防止剤供給用組成物は、基材と、老化防止剤5質量%以上と、を含む老化防止剤供給用組成物であって、前記基材の溶解度パラメータ(SP値)が、7.8(cal/cm3)1/2未満であることを特徴とする。
上記構成を具えることで、長時間を要することなく、ゴム物品へ老化防止剤を補充することができる。
【0009】
本発明の老化防止剤供給用組成物では、前記基材が、シリコーン系ポリマー及びフッ素系ポリマーから選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。この場合、ゴム物品へ老化防止剤をより効率的に補充することができる。
【0010】
本発明の老化防止剤供給用組成物では、前記老化防止剤が、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンを少なくとも含有することが好ましい。この場合、ゴム物品へ老化防止剤をより効率的且つ確実に補充することができる。
【0011】
本発明の老化防止剤供給用組成物では、前記基材のSP値が、6.7~7.6(cal/cm3)1/2であることが好ましい。この場合、基材と老化防止剤との分離を招くことなく、ゴム物品へ老化防止剤をより効率的且つ確実に補充することができる。
【0012】
本発明の老化防止剤供給材は、上述した本発明の老化防止剤供給用組成物を含むことを特徴とする。
上記構成を具えることで、長時間を要することなく、ゴム物品へ効率的且つ確実に老化防止剤を補充することができる。
【0013】
本発明の老化防止剤供給材では、厚さが0.5mm未満のシート状であることが好ましい。加工性に優れつつ、ゴム物品へ効率的且つ確実に老化防止剤を補充することができるためである。
【0014】
本発明の老化防止剤供給方法は、タイヤへ老化防止剤を供給する方法であって、タイヤの外表面に、溶解度パラメータ(SP値)が、7.8(cal/cm3)1/2未満である基材と、老化防止剤5質量%以上と、を含む老化防止剤供給用組成物を用いた老化防止剤供給材を接触させた状態で、8時間以上おくことを特徴とする。
上記構成を具えることで、長時間を要することなく、タイヤへ老化防止剤を効率的且つ確実に補充することができ、耐オゾン性の低下を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長時間を要することなく、ゴム物品へ老化防止剤を補充することができる、老化防止剤供給用組成物及び老化防止剤供給材を提供することができる。
また、本発明によれば、長時間を要することなく、タイヤへ老化防止剤を補充することができ、耐オゾン性の低下を効果的に抑制できる、老化防止剤供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例において、ゴムの表面近傍での老化防止剤濃度の経時変化を、サンプルごとに示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の老化防止剤供給用組成物、老化防止剤供給材及び老化防止剤供給方法の一実施形態について説明する。
【0018】
<老化防止剤供給用組成物>
本発明の老化防止剤供給用組成物は、基材と、老化防止剤5質量%以上と、を含む。
そして、本発明の老化防止剤供給用組成物では、前記基材の溶解度パラメータ(SP値)が、7.8(cal/cm3)1/2未満であることを特徴とする。
【0019】
一般的に、老化防止剤のSP値は、ゴム物品中のゴム成分のSP値に比べて高いことから、従来の技術では、老化防止剤とゴム成分との相溶性が低く、老化防止剤供給用組成物からゴム物品へ老化防止剤の補充を十分に行うことができなかった。そのため、本発明では、老化防止剤供給用組成物を構成する基材について、一般的なゴム成分よりもSP値が低く(具体的には、SP値が7.8(cal/cm3)1/2未満の)、老化防止剤との相溶性がより低いものを用いることによって、老化防止剤との相溶性が相対的に高いゴム成分を含むゴム物品中への老化防止剤の移行を促進させることができる結果、コストの高騰を招くことなく、より効率的且つ確実に、ゴム物品へ老化防止剤の補充ができる。
また、時間の経過とともに、ゴム物品から老化防止剤が抜けるため、耐オゾン性が低下するという問題に対し、本発明の老化防止剤供給用組成物を適用することによって、ゴム物品へ老化防止剤を補充することができるため、ゴム物品の耐オゾン性の低下を抑制することが可能となる。
【0020】
本発明の老化防止剤供給用組成物に含まれる基材については、前記SP値が7.8(cal/cm3)1/2未満の材料であれば特に限定はされない。
前記基材のSP値については、より効率的且つ確実に、ゴム物品へ老化防止剤を補充する観点からは、7.8(cal/cm3)1/2以下であることが好ましく、7.6(cal/cm3)1/2以下であることがより好ましい。また、前記基材のSP値については、基材と老化防止剤との分離を防ぐ観点からは、6.7(cal/cm3)1/2以上であることが好ましい。つまり、前記基材のSP値については、6.7~7.6(cal/cm3)1/2であることが好ましい。
【0021】
ここで、前記基材としては、例えば、各種ゴム、ポリスチレン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素系ポリマー等が挙げられる。
これらの中でも、より確実にSP値が7.8(cal/cm3)1/2未満となり、ゴム物品への老化防止剤の補充をより効率的に行える点からは、シリコーン系ポリマー及びフッ素系ポリマーから選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、少なくともシリコーン系ポリマーを含有することがより好ましい。
【0022】
前記シリコーン系ポリマーについては、シリコーンを有する(シロキサン結合による主骨格を有する)ポリマーであり、例えば、シリコーングリース、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンエマルジョン等が挙げられる。これらは、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、前記シリコーン系ポリマーは、SP値が本発明の範囲であれば、無変性のものであっても、変性されたものであってもよく、市販品を用いることがきる。
【0023】
前記フッ素系ポリマーについては、フッ素を含有するポリマーであり、ポリテトラフルオロエチレンや、部分フッ素化樹脂、フッ素化樹脂共重合体等のフッ素樹脂や、フッ素ゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、前記フッ素系ポリマーは、SP値が本発明の範囲であれば、特に限定はなく、市販品を用いることがきる。
【0024】
また、本発明の老化防止剤供給用組成物における前記基材の含有量は、前記老化防止剤の含有量との関係から95質量%以下であることを要し、ゴム物品への老化防止剤の補充効率を高める観点からは、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。また、前記基材の含有量は、組成物の取り扱いの容易さや、効果飽和の観点からは、80質量%以上であることが好ましい。
【0025】
本発明の老化防止剤供給用組成物に含まれる老化防止剤については、その含有量が5質量%以上であること以外は、特に限定はされない。
前記老化防止剤の含有量については、効率的且つ確実にゴム物品へ老化防止剤を補充する観点から、5質量%以上であることを要し、同様の観点から、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、前記老化防止剤の含有量については、組成物の取り扱いの容易さや、効果飽和の観点からは、30質量%以下であることが好ましい。
【0026】
ここで、前記老化防止剤の種類については、特に限定はされず、補充する対象のゴム物品の種類に応じて適宜変更することができる。例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤、等が挙げられる。これらの老化防止剤は、一種のみ含有しても良いし、複数を組み合わせて含有することもできる。
上述した老化防止剤の中でも、より効率的且つ確実にゴム物品へ老化防止剤を補充する観点からは、アミン系老化防止剤を含有することが好ましく、アミン系老化防止剤の中でも、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンを含有することがより好ましい。
【0027】
なお、本発明の老化防止剤供給用組成物は、上述した基材及び老化防止剤を含むことで、所望の効果を奏することができる(効率的且つ確実にゴム物品へ老化防止剤を補充できる)。
ただし、加工性や、取り扱いの容易性、ゴム物品との接着性等の、その他の作用効果を得る点からは、上述した基材及び老化防止剤以外の成分(以下、「その他成分」という。)を、適宜含有することができる。
【0028】
前記その他成分については、例えば、充填剤、可塑剤、加硫促進剤、硫黄等が挙げられる。
【0029】
また、本発明の老化防止剤供給用組成物の態様については、特に限定はなく、前記基材の種類に応じて、液状、粒状、エマルジョン、ゴム状、ゲル状等、種々の態様を有することができる。
【0030】
<老化防止剤供給材>
本発明の老化防止剤供給材は、上述した本発明の老化防止剤供給用組成物を含むことを特徴とする。
本発明の老化防止剤供給用組成物を含むことによって、効率的且つ確実に、ゴム物品へ老化防止剤の補充を行うことができる。
【0031】
本発明の老化防止剤供給材は、本発明の老化防止剤供給用組成物を主成分として含むが、その他にも、取り扱いの容易性、意匠性、ゴム物品との接着性、劣化を防ぐ等の、その他の作用効果を得る点からは、老化防止剤供給用組成物以外の成分を、適宜含むこともできる。
【0032】
また、本発明の老化防止剤供給材の使用形態については、特に限定はなく、要求される性能に応じて適宜変更することができる。
例えば、本発明の老化防止剤供給材を、液状又はペースト状にしてゴム物品へ塗布することもでき、スプレー状にしてゴム物品へ散布することもでき、シート状にしてゴム物品へ貼り付けることもできる。
【0033】
さらに、本発明の老化防止剤供給材は、ゴム物品へ効率的且つ確実に老化防止剤を補充することができる観点からは、シート状であることが好ましく、さらに、高い加工性も維持できる観点からは、厚さが0.5mm未満のシート状であることがより好ましい。なお、ゴム物品へ効率的且つ確実に老化防止剤を補充するためには、前記シート状の老化防止剤供給材の厚さは、0.05mm以上であることが好ましい。
【0034】
<老化防止剤供給方法>
本発明の老化防止剤供給方法は、タイヤへ老化防止剤を供給する方法であって、上述した本発明の老化防止剤供給材を接触させた状態で、20時間以上おくことを特徴とする。
【0035】
本発明では、老化防止剤供給材を構成する老化防止剤供給用組成物の基材について、ゴム成分よりもSP値が低く(具体的には、SP値が7.8(cal/cm3)1/2未満の)、老化防止剤との相溶性がより低いものを用い、且つ、老化防止剤供給材とタイヤ外表面との接触時間を20時間以上とすることによって、タイヤへの老化防止剤の移行を促進させることができ、長時間を要することなく、より効率的且つ確実に、タイヤへ老化防止剤の補充ができる。
さらに、時間の経過とともに、タイヤから老化防止剤が抜けるため、耐オゾン性が低下するという問題に対し、本発明の老化防止剤供給用組成物を適用することによって、タイヤへ老化防止剤を効率的且つ確実に補充することができるため、タイヤの耐オゾン性の低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0036】
ここで、本発明の老化防止剤供給方法に用いられる、老化防止剤供給用組成物及び老化防止剤供給材については、上述した本発明の老化防止剤供給用組成物及び本発明の老化防止剤供給材と、同様の構成とすることができる。
【0037】
また、本発明の老化防止剤供給方法において、前記老化防止剤供給材と前記タイヤ外表面との接触時間については、タイヤへ確実に老化防止剤を補充する観点から、8時間以上であることを要し、同様の観点から、18時間以上であることが好ましく、24時間以上であることがより好ましい。
なお、前記老化防止剤供給材と前記タイヤ外表面とを接触させる際の、前記老化防止剤供給材の温度は、25℃であることが好ましい。
【0038】
なお、本発明の老化防止剤供給方法において使用されるタイヤの種類については、特に限定はされず、乗用車用、二輪車用、建設車両用、航空機用等のタイヤを適宜選択することができる。
また、前記老化防止剤供給材と接触されるタイヤの部位についても、外表面であればどの部分でもよく、老化防止剤の含有状態に応じて適宜選択することができる。ただし、耐オゾン性の低下を抑制する効果を、より享受できる観点からは、前記老化防止剤供給材と接触するタイヤの部位が、例えば、タイヤのサイドウォール部、レッドの溝、ショルダー部(トレッド部とサイドウォール部の境目付近)であることが好ましい。オゾン劣化により、サイドウォール部に亀裂やクラックが入るケースが多いためである。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
<実施例1~4、比較例1~2>
以下の条件で、実施例1~4及び比較例1~2の老化防止剤供給用組成物の各サンプルを作製した。
【0041】
(実施例1)
シリコーングリース(東レ・ダウコーニング製「モリコートFS-50」、SP値: 7.0(cal/cm3)1/2)4.5gに、老化防止剤としてのN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業株式会社製「ノクラック 6C」)を0.5g(10質量%)加え、混合することで、老化防止剤供給用組成物のサンプルを作製した。
【0042】
(実施例2)
老化防止剤の添加量0.24g(5質量%)としたこと以外は、実施例1と同様の条件で、老化防止剤供給用組成物のサンプルを作製する。
【0043】
(実施例3)
シリコーンシーラント(信越シリコーン製「KE-45」、SP値:7.0(cal/cm3)1/2)4.2gに、老化防止剤としてのN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業株式会社製「ノクラック 6C」)を0.8g(16質量%)加え、混合することで、老化防止剤供給用組成物のサンプルを作製した。
【0044】
(実施例4)
シリコーンワックス(信越シリコーン製「KP-561P」、SP値:7.0(cal/cm3)1/2)3.8 gに、老化防止剤としてのN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業株式会社製「ノクラック 6C」)を1.2g(24質量%)加え、混合することで、老化防止剤供給用組成物のサンプルを作製する。
【0045】
(比較例1)
液状SBRゴム(クラレ製「L-SBR-841」、SP値:8.2(cal/cm3)1/2)4.5gに、老化防止剤としてのN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業株式会社製「ノクラック 6C」)を0.5g(10質量%)加え、混合することで、老化防止剤供給用組成物のサンプルを作製する。
【0046】
(比較例2)
シリコーンワックス(信越シリコーン製「KP-561P」、SP値:7.0(cal/cm3)1/2)4.85gに、老化防止剤としてのN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業株式会社製「ノクラック 6C」)を0.15g(3質量%)加え、混合することで、老化防止剤供給用組成物のサンプルを作製する。
【0047】
<評価>
実施例1の老化防止剤供給用組成物の各サンプルを用い、0.5mm厚さのシート状にした老化防止剤供給用組成物のサンプルをゴムシートの上に塗布した。
その後、
図1に示すように、得られた老化防止剤供給用シートの各サンプルを、1mm厚さのゴムシートを4枚重ねたものの上に載置し、25℃にて一定時間経過させた。その後、以下の評価(1)を行った。
実施例2、3、4及び比較例1,2の老化防止剤供給用組成物の各サンプルを用い、0.5mm厚さのシート状にした老化防止剤供給用組成物のサンプルをゴムシートの上に塗布する。
その後、
図1に示すように、得られた老化防止剤供給用シートの各サンプルを、1mm厚さのゴムシートを4枚重ねたものの上に載置し、25℃にて一定時間経過させる。その後、以下の評価(1)を行う。
【0048】
(1)老化防止剤の供給量の経時変化
ゴムシートの表面近傍(老化防止剤供給用シートと接した部分から1mmの深さ範囲)における、10時間経過時、24時間経過時及び48時間経過時の老化防止剤濃度(質量%)を、テトラヒドロフラン及びクロロホルムの混合溶媒で抽出した後、ガスクロマトグラフィーを用いて測定し、ゴムシートへの供給量の経時変化を検量線法により導出を行う。また、実施例1の老化防止剤供給用組成物を用いて作製したサンプルにおいても、同様の測定及び評価を行った。得られた結果は、表1及び
図1に示す。
【0049】
【0050】
表1及び
図1の結果から、各実施例のサンプルでは、10時間経過時には、十分にゴムシートへ老化防止剤が供給されていることがわかった。また、時間が経過するほど老化防止剤の供給量が大きくなることもわかった。なお、各比較例のサンプルについては、24時間経過した後も、十分に老化防止剤の供給が行えていないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、長時間を要することなく、ゴム物品へ老化防止剤を補充することができる、老化防止剤供給用組成物及び老化防止剤供給材を提供することができる。
また、本発明によれば、長時間を要することなく、タイヤへ老化防止剤を補充することができ、耐オゾン性の低下を効果的に抑制できる、老化防止剤供給方法を提供することができる。