(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】3Dプリント構造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/205 20170101AFI20240402BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240402BHJP
B32B 25/00 20060101ALI20240402BHJP
B32B 25/20 20060101ALI20240402BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240402BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240402BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240402BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240402BHJP
F16S 1/04 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
B29C64/205
B32B7/022
B32B25/00
B32B25/20
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
F16S1/04
(21)【出願番号】P 2021526814
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2019081899
(87)【国際公開番号】W WO2020104511
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502004995
【氏名又は名称】エッコ スコ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリツィオ カールッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー ミッチェル
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-524533(JP,A)
【文献】特表2017-511865(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105034361(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03213909(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B32B 1/00 - 43/00
F16S 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の層
と、前記第1の層に第1の軸の方向に積層される第2の層
と、を有する弾性材料の3Dプリント構造であって、
前記第1の軸の方向に力が加えられたときに変形するように構成され、加えられた前記力が取り除かれたときに元の形態に戻るように構成された少なくとも1つの第1の壁であって、少なくとも1つの一次構造層及び少なくとも1つの第1の可撓性層を備える前記第1の壁と、
前記第1の壁と当接しており、前記第1の軸の方向に力が加えられたときに変形するように構成され、加えられた前記力が取り除かれたときに元の形態に戻るように構成された少なくとも1つの第2の壁であって、少なくとも1つの二次構造層及び少なくとも1つの第2の可撓性層を備える前記第2の壁と、
前記第1の層及び前記第2の層と交差し、前記一次構造層及び前記二次構造層と交差する第3の軸と、を備え、
前記一次構造層は、第1の剛性を有し、
前記第1の可撓性層は、第2の剛性を有し、
前記第1の剛性は、前記第2の剛性よりも大きい、3Dプリント構造。
【請求項2】
前記第2の層と前記第1の軸の方向に積層される第3の層と、
前記第2の壁と当接しており、少なくとも1つの三次構造層及び少なくとも1つの第3の可撓性層を備える少なくとも1つの第3の壁と、を備え、
前記第3の軸は、前記第3の層及び前記三次構造層と交差する、請求項1に記載の弾性材料の3Dプリント構造。
【請求項3】
前記第1の壁、前記第2の壁、及び/または前記第3の壁は、それぞれ、一次第1の軸、二次第1の軸、及び三次第1の軸を備える、請求項2に記載の3Dプリント構造。
【請求項4】
前記一次構造層及び前記二次構造層は、前記3Dプリント構造の異なる層に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【請求項5】
前記三次構造層は、前記3Dプリント構造の前記一次構造層及び/または前記二次構造層と異なる層に配置される、請求項2に記載の3Dプリント構造。
【請求項6】
前記第1の壁及び前記第2の壁は、所定のセルの容積を画定するクローズドセルの一部を形成する、請求項1から
5のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【請求項7】
前記第3の軸は、螺旋軸及び/または渦巻き軸である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【請求項8】
前記一次構造層は、前記第1の層の一部であり、
前記二次構造層は、前記第2の層の一部である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【請求項9】
前記一次構造層における前記第3の軸の交点は、前記第1の層における交点と同じ位置にあり、
前記二次構造層における前記第3の軸の交点は、前記第2の層の交点と同じ位置にある、請求項1から
8のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【請求項10】
前記三次構造層と前記第3の軸との交点は、前記第3の層と前記第3の軸との交点と同じ位置にある、請求項2または5に記載の3Dプリント構造。
【請求項11】
前記弾性材料は、シリコン材料またはシリコン材料の混合物である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【請求項12】
前記一次構造層及び前記二次構造層のそれぞれは、第1の材料組成から製造され、
前記第1の可撓性層及び前記第2の可撓性層のそれぞれは、第2の材料組成から製造され、
前記第1の材料組成は、前記第2の材料組成と異なる、請求項1から
11のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【請求項13】
前記
第1の剛性及び
前記第2の剛性は、縦方向、横方向、及び/または回転方向の1つまたは複数におけるものである、請求項1から1
2のいずれか一項に記載の3Dプリント構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも第1の層及び第2の層を有する弾性材料の3Dプリント構造であって、少なくとも1つの一次構造層及び少なくとも1つの第1の可撓性層を備える少なくとも1つの第1の壁と、少なくとも1つの二次構造層及び少なくとも1つの第2の可撓性層を備える少なくとも1つの第2の壁と、を備える3Dプリント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリント構造に関する共通の問題は、そのような種類の構造が、比較的硬い材料から作製されることが多いことである。別言すれば、プリントに使用される材料の組成に起因して、3Dプリント構造の構造は、比較的可撓性がない場合があるということである。
【0003】
CN105034361は、厚さ、形状が異なるセルを含むハニカムコアを開示している。得られたハニカムユニットの壁厚の少なくとも一部が、ハニカムユニットの両端に向かってハニカムユニットの中心に沿った方向に徐々に厚くなるので、ハニカムクランプを追加することができる。コアとパネルとの接触領域、及びハニカムコアは、非線形湾曲構造の要件を満たすように、平坦または湾曲構造であってもよく、ハニカムコアは、優れた曲げ及び圧縮抵抗を有する。
【0004】
欧州特許第3213909号は、高速衝撃耐性構造のための耐衝撃性サンドイッチ構造アーキテクチャを開示している。耐衝撃性サンドイッチ構造アーキテクチャは、複数のスペーシング層及び複数のトリガ層によって形成されたサンドイッチコアを囲むサンドイッチスキンを備え、これらの層は、コアにおいて交互に積み重ねられている。
【0005】
これらの種類の材料は、航空宇宙産業において補強を提供するために広く使用される。これらの材料は、外力が加えられている間に、自身の形状を維持することを目的としている。
【0006】
しかしながら、圧縮性及び可撓性を有する構造を得るために、材料の構造的完全性を維持しながらも、所望の可撓性を有する材料を構築する多くの試みがなされてきた。プリントに使用される材料の可撓性及び重量に起因して、ある領域において構造を維持するための所望の反力を有しながらも、ある程度の可撓性を有する層状構造を構築することは、困難な作業であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのような可撓性層は、しばしば、PU発泡体などの発泡体物質を使用して作製されてきた。発泡体は、シート用のクッション、靴用のミッドソール、荷物用のパッドなどのように、ある程度の可撓性を有しながら、ある特定の形態を維持することができる。この種の可撓性層に伴う1つの問題は、材料の構造強度が増すと、層の可撓性が低下し、材料の重量も増すことである。さらに、この種の材料の成形は、大型の金型で行われることが多い。ユーザ個人ごとの個別化のために個別化された金型を形成することは、コストが大きすぎて実行可能な選択肢ではないため、特殊な輪郭形成などの材料の個別化をするには、製造後に材料をカットしたり、発泡体を削ったりする必要がある場合が多い。
【0008】
したがって、可撓性構造の個別化のための改善された構造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書によれば、少なくとも1つの第1の層及び第2の層を有する弾性材料の3Dプリント構造が提供される。3Dプリント構造は、第1の軸の方向に力が加えられたときに変形するように構成され、加えられた力が取り除かれたときに元の形態に戻るように構成される少なくとも1つの第1の壁であって、少なくとも1つの一次構造層及び少なくとも1つの第1の可撓性層を備える第1の壁と、第1の軸の方向に力が加えられたときに変形するように構成され、加えられた力が取り除かれたときに元の形態に戻るように構成される少なくとも1つの第2の壁であって、少なくとも1つの二次構造層及び少なくとも1つの第2の可撓性層を備える第2の壁と、を備える。3Dプリント構造は、第3の軸を備える。第3の軸は、第1及び第2の層と交差し、一次構造層及び二次構造層と交差する。一次構造層は、第1の剛性を有し、第1の可撓性層は、第2の剛性を有する。第1の剛性は、第2の剛性よりも大きい。
【0010】
第3の軸が、3Dプリント構造の両方の層ならびに一次及び二次構造と交差する上記の3Dプリント構造では、第3の軸が、互いに実質的に平行な第1及び第2の層に対して、傾斜して設けられている。これは、傾斜した第3の軸が、第1の層を通って第2の層へと延び、続けて第2の層の後続の層へと延びることも意味し得る。さらに、第1及び第2の壁が実質的に平行な第1の軸を有し得る3Dプリント構造の異なる壁における構造層の存在。これは、第3の軸が、3Dプリント構造の壁に対して傾斜していることも意味する。すなわち、第3の軸は、第1の壁に平行な第1の軸と、第1の層に平行な第2の軸との間の角度を有するとみなされてよい。すなわち、第1の軸が90°であり、第2の軸が0°である場合、第3の軸は、0°よりも大きく、かつ、90°よりも小さい角度を有する。これにより、第3の軸は、3Dプリント構造の少なくとも2つの層と、3Dプリント構造の少なくとも2つの壁と交差することができる。
【0011】
複数の層における第3の軸の交差は、第1の層と第2の層とが互いに異なること、及び一次構造層と二次構造層とが互いに分離されていることを意味し、すなわち、軸が、第1及び第2の構造の層及び/または壁の構造層と同じ位置で交差しないことを意味し得る。したがって、3D構造の層及び構造層は、第3の軸の異なる位置で第3の軸と交差してもよく、すなわち、3D構造の複数の層における交差は、第3の軸に沿った異なる位置で生じる。複数の壁の構造層との交差についても、同様である。
【0012】
構造層を第3の軸に沿って配置することによって、3Dプリント構造の異なる層における構造層及び/または可撓性層間の相互作用を得ることが可能となり得る。可撓性層と比較して、高い構造層の剛性は、異なる壁における2つの層間で弾性/バネ効果を生じさせ得る。これによって、3Dプリント構造の異なる壁間で、弾性的な機械的相互作用が可能となり、その結果、構造層によって提供される3Dプリント構造の剛性が、第3の軸に沿って、3Dプリント構造の全体にわたって適応され得る。
【0013】
本明細書の文脈において、「剛性」という用語は、可撓性の度合いとして理解され得る。剛性の測定は、層の硬さ、降伏率、硬度(すなわち、より硬い層がより軟らかい層よりも高い剛性度を有する場合の理解において)で行うことができる。ある特定の層の剛性は、ある方向への層の屈曲する性能、適性、または能力として理解されるべきである。剛性の代替の表現は、例えば、層の可撓性であってもよく、一次構造層(または任意の後続の構造層)は、第1の可撓性を有してもよく、第1及び/または第2の可撓性層(または任意の後続の可撓性層)は、第2の可撓性を有してもよい。第1の可撓性は、第2の可撓性よりも低くてもよい。剛性は、加えられた力に対して層が変形にどのくらい抵抗するかの程度の定量化であると理解されてもよい。可撓性という用語は、剛性に対する相補的な概念であってもよく、すなわち、層が高い可撓性を有するほど、その層の剛性はより小さい。
【0014】
本開示の文脈では、壁という用語は、壁の一部を開示するときには、壁部という用語で置き換えることができる。
【0015】
本開示の理解の範囲内で、「層」という用語は、三次元構造の二次元平面として理解されてもよい。層は、二次元平面と交差する1つまたは複数の壁を含んでもよい。本開示の理解の範囲内で、「壁」は、三次元構造の二次元平面として理解されてもよく、二次元平面は、壁に平行であってもよく、三次元構造の複数の層と交差してもよい。本開示の理解の範囲内で、壁の第1の層は、壁の第2の層と当接してよく、壁の第2の層は、壁の第3の層と当接してよい。したがって、壁は、2つまたは3つ以上の層が互いの上または下に積み重ねられた構造として理解されてもよい。
【0016】
「構造層」という用語は、構造層を壁構造の他の層、すなわち可撓性層と区別するために、壁構造の他の層と区別することを意図しており、「可撓性層」という用語は、構造層と見なされない層の名前を意図している。壁構造における構造層及び少なくとも1つの可撓性層の存在は、壁構造において、構造層及び/または可撓性層として定義される2つの層とは異なる特性を有する他のタイプの層を排除しない。
【0017】
一次構造層、二次構造層、三次構造層、または任意の他の構造層は、第1の剛性を有してもよい。すべての構造層は、第1の剛性を有してもよく、第1の剛性は、第2の剛性よりも大きい。第1の可撓性層、第2の可撓性層、第3の可撓性層、及び/または任意の他の後続の可撓性層は、第2の可撓性を有してもよく、第2の可撓性は、第1の可撓性よりも低くてもよい。
【0018】
一実施形態では、1つの壁及び/または複数の壁のすべての構造層は、同じ可撓性を有してよい。一実施形態では、1つの壁及び/または複数の壁のすべての可撓性層は、同じ可撓性を有してよい。
【0019】
第1の壁を弾性材料で提供するということは、壁を崩壊させる力が壁に対して第1の軸の方向に加えられた際に、壁が力を吸収することができるということである。この力は、圧縮力と見なされてよく、所定のレベルまでの力であれば、壁が第1の軸から離れるように変形することなく、第1の壁を圧縮させることができる。すなわち、壁は、ある量の力までは、その形状を維持することができる。しかしながら、力の所定の閾値を超える場合、すなわち閾値よりも高い力が壁に加えられる場合、壁が、形状をとどめずに変形してしまう可能性があり、その結果、壁の1つまたは複数の層が、第1の軸の方向とは異なる方向、すなわち、例えば第1の軸に直交するような方向に変位する場合がある。したがって、壁は、曲がっている、または、第1の軸から離れるように膨らんでいるように見える。第1の壁に加えられる力は、弾性材料の弾性によって壁構造に吸収され、力が第1の壁から解放/除去されると、第1の壁は、元の形状に戻る。すなわち、弾性材料は、弾性壁構造を提供し、壁は、圧縮された後に、元の形状に戻る。したがって、第1の壁、または任意の後続の壁は、弾力性があると見なすことができる。壁は、非圧縮状態、圧縮状態、中間状態を有するものとして見なすことができる。中間状態とは、壁に圧縮力が加えられているが、壁が完全に圧縮された状態には達していないという壁の状態と見なすことができる。
【0020】
壁は、壁の頂部と見なされてよい第1の端部と、壁の底部と見なされてよい第2の端部とを有していてもよい。壁には、第1の端部と第2の端部との間に複数の層が設けられている。壁に圧縮力が加わっていない場合、壁は、壁の各層の高さの実質的な合計である第1の長さを有してよい。圧縮力が第1の軸に平行な方向で壁に加えられる場合、壁は、各層の高さの合計よりも低い第2の高さを有してよい。
【0021】
これは、3Dプリント構造の壁が、第1の軸の方向において、第1の軸に沿って他の位置に配置される他の領域よりも高い剛性を有する領域を有してよいということである。第1の壁の一次構造層または任意の他の構造層は、剛性が高いことによって、構造層と比較して低い剛性を有する可撓性層よりも変形しにくい。したがって、所定の力を超える(第1の軸方向の)圧縮力が壁に加えられる場合、層に加えられた圧縮力が壁を圧縮し、壁が、圧縮力に屈し、圧縮力によって座屈または屈曲し得る。層によって剛性に差異があるため、圧縮力は、より高い剛性を有する層より先に、より低い剛性を有する層を降伏させる。これは、壁の屈曲及び/または座屈が、より高い剛性を有する層で生じる前に、より低い剛性を有する層が第1の軸から離れるように偏向する所定の領域において生じることを意味する。
【0022】
剛性及び層の数は、3Dプリント構造の要件に従って調整されてもよい。第1の壁を降伏させるのに要される力の要件がより低い壁では、可撓性層の数を増加させてもよい。一方で、圧縮力に対する抵抗を向上させるために、構造層の数を増加させてもよい。したがって、可撓性層対構造層の比率を変えることによって、第1の壁の剛性を変えることができる。
【0023】
本開示の1つの例示的な実施形態では、3Dプリント構造は、3Dプリント可撓性構造であってもよい。3Dプリント構造は、衝撃吸収と見なされ得る構造であってもよく、3Dプリント構造に加えられる力を吸収するように構成される。衝撃吸収は、3Dプリント構造が3Dプリント構造に加えられる力のエネルギーを吸収するという形態で提供されてもよく、3Dプリント構造は、エネルギーを吸収するために弾性的に変形してよい。力が取り除かれると、弾性変形が復元するときにエネルギーが解放されてよい。
【0024】
3Dプリント構造及び3Dプリント構造の壁は、それらの永久的な形状として理解されてよい元の形状と、一時的な形状と見なされてよい変形形状とを有してもよい。変形形状は、3Dプリント構造及び/または3Dプリント構造の部分への外部からの力、または外部から加えられる機械的エネルギーなどの外部からの刺激によって生じる形状として理解されてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態では、3Dプリント構造は、人体によって生じる力を吸収するように適合された3Dプリント構造であってもよい。3Dプリント構造は、靴のソールアセンブリの一部、シートの着座部、リュックサックとユーザの身体との間のパッド、マットレス、及び人体から別の実体に伝達されるエネルギーを吸収及び分配するために使用され得る同様の構造などの人体の一部と別の実体との間の減衰構造、すなわち、剛性構造であってもよい。
【0026】
本発明の理解の範囲内で、「弾性材料」という用語は、弾性材料が塑性変形せずに伸張または圧縮することができることを意味する用語として理解されるべきである。すなわち、応力ひずみ曲線の弾性領域が、応力ひずみ曲線の塑性領域よりも大きい。すなわち、材料のヤング率は、60GPa未満、好ましくは40GPa未満、20GPa未満、または10GPa未満であってもよい。
【0027】
「弾性材料」という用語は、少なくとも50%の伸び率、具体的には100%を超える伸び率、具体的には200%を超える伸び率、または具体的には300%を超える伸び率を有する材料を意味してもよい。伸び率(伸び%)という用語は、材料が破断するまで塑性的及び弾性的に変形する量を示す測定値である。伸び率は、材料の延性を測定し、定量化するための1つの方法である。材料の最終的な長さを元の長さと比較して、伸び率と材料の延性を決定する。
【0028】
層を提供するために使用される弾性材料は、30~80のショアA硬度を有する材料であってもよい。しかしながら、材料は、互いに分離された層状材料の多数の壁でできていてもよいので、3D構造は、弾性材料よりも低い総ショアA硬度を有してもよい。したがって、構造の硬度は、壁構造の硬度と壁間のスペースとの組み合わせであってもよい。さらに、壁の降伏性に起因して、壁は、弾性材料の硬度よりも低い速度で、たわむか、または屈曲してもよい。したがって、個々の層は、圧縮力の方向において安定していてもよい。複数の層は個々に、それらが受ける力で最小限に圧縮する。
【0029】
構造層、第1の可撓性層、第2の可撓性層の順序は、第1の軸の方向で見たときに、一次構造層の次に、第1の可撓性層及び第2の可撓性層が続く順であってもよい。この順序は、代替的に、第1の可撓性層の次に一次構造層が続き、その次に第2の可撓性層が続く順序であってもよい。この順序は、代替的に、第1の可撓性層の次に第2の可撓性層が続き、その次に一次構造層が続く順序であってもよい。
【0030】
これは、縦方向軸に平行な方向に力が加えられると、一次構造層が縦方向軸から離れるように偏向する前に、第1及び/または第2の可撓性層が縦方向軸から離れるように偏向することを意味する。
【0031】
壁に対して縦方向に圧縮力が加えられた場合、全長に沿って同一の層を有する層構造を有する壁は、ある程度予測可能な崩壊力を有し得る。しかしながら、壁がどのように崩壊するかを予測することは、ほぼ不可能であり得る。なぜなら、力が縦軸に完全に平行でない場合、力の方向が、壁がどのように崩壊または曲がるかについて大きな影響を及ぼし得るためである。別の問題は、壁が崩壊すると、壁は圧縮力に対する反力の大部分またはすべてを失ってしまうことである。よって、壁が完全に折り畳まれ、かつ/または崩壊してしまうため、壁が崩壊するとすぐに、壁がその対抗力の大部分を失ってしまう。
【0032】
しかしながら、例えば、縦方向軸に沿って繰り返される構造であってよい構造層及び可撓性層の構造を適用することによって、第1の壁がどの部分で圧縮力に対して屈するかを予測することができる。なぜなら、壁がほぼ確実に、構造層を有する領域で偏向する前に、可撓性層を有する領域で偏向するように、可撓性層が、低減された硬度及び/または力に対する抵抗を有するためである。したがって、予測可能な方法で壁を圧縮力に対して崩壊させる/偏向させることが可能となるため、壁をある特定の力で崩壊するように構成することがより容易になる。さらに、これにより、制御された方法で壁を崩壊または偏向させることができるため、可撓性部分が構造部分の間で偏向または崩壊したとしても、壁の構造部分によって圧縮力への反力を維持することができる。
【0033】
第1の壁は、より大きな構造の一部であってもよく、壁の各層は、より大きな3D構造の層に対応してもよく、より大きな3D構造は、複数の層を有してもよい。第1の壁は、第2の壁、第3の壁、または後続の壁を有する構造の一部であってもよい。第1の壁は、第1の壁がセル構造の一部である構造の一部であってもよい。第1の壁は、(上から見て)円形、環状、三角形、六角形、または任意の適切な多角形のクローズドセルなどのクローズドセルの一部である。第1の壁及び/または複数の壁は、セルの容積を画定する。
【0034】
1つまたは複数の実施形態では、3Dプリント構造は、第3の層を含んでよく、任意で、少なくとも1つの三次構造層及び少なくとも1つの第3の可撓性層を含む少なくとも1つの第3の壁をさらに含んでもよい。第3の軸は、第3の層及び三次構造層と交差する。したがって、3Dプリント構造は、3Dプリント構造の少なくとも1つの第3の層だけでなく、三次構造層を有するさらなる壁を備えてもよい。第3の軸は、第3の層及び三次構造層の両方と交差する。したがって、第1の壁及び第2の壁と第3の壁との間に弾性関係を提供するために、第3の壁は、第1の壁と第2の壁へのさらなる接続を提供してもよい。第3の軸が三次構造層と交差するので、壁の構造層を囲み得る可撓性層よりも高い三次構造層の剛性は、3Dプリント構造の複数の層及び複数の壁に亘って第3の軸に沿って適応され得る。
【0035】
1つまたは複数の実施形態では、第1の壁、第2の壁、及び/または第3の壁は、それぞれ、一次第1の軸、二次第1の軸、及び三次第1の軸を含んでもよい。第1の壁、第2の壁及び/または第3の壁の各々は、第1の軸を備えてもよく、壁の可撓性層及び構造層の構造は、第1の軸に追従してもよい。構造は、壁によって異なっていてもよいし、各壁について同様であってもよい。例えば、壁によって、位置が変更されていてもよい。すなわち、構造層が、第1の壁では第1の層にあり、第2の壁では第2の層にあり、第3の壁では第3の層にあるなどである。
【0036】
1つまたは複数の実施形態では、一次構造層及び二次構造層は、3Dプリント構造の異なる層に配置されてもよい。3Dプリント構造の異なる層に、一次構造層及び二次構造層が設けられることによって、壁の剛性を一つの壁から別の壁へと斜めにシフトさせることができる。すなわち、第2の壁では、第1の壁の構造層よりも低いかまたは高い層で、高い剛性が提供される。
【0037】
1つまたは複数の実施形態では、三次構造層は、3Dプリント構造において、一次及び/又は二次構造層とは異なる層に配置されてもよい。したがって、三次構造層は、一次構造層及び二次構造層とは異なる層にあってもよい。すなわち、一次層が第1の層にあり、二次層が第2の層にある場合、三次構造層は、第1及び/または第2の層とは異なる層にあってもよい。したがって、構造層は、一つの壁から別の壁へと高さがシフトされてもよい。これにより、構造層の剛性を、第3の軸に沿って移動させることができる。
【0038】
1つまたは複数の実施形態では、第1の壁は、第2の壁と当接してもよく、及び/または第3の壁は、第2の壁と当接してもよい。第1及び第2の壁を互いに当接させ、選択的に第3の壁を第2の壁と当接させることによって、剛性を一つの壁から別の壁に直接移動することができる。したがって、1つの壁の構造層の剛性は、別の壁に直接伝達されてよく、別の壁では、壁の剛性が当接する壁の構造層によって影響される。さらに、壁を互いに隣接させ、構造層と交差する第3の軸を有することによって、剛性が、1つの壁から別の壁に移動し、3Dプリント構造の壁の間で移動する協調効果を生み出してよい。
【0039】
1つまたは複数の実施形態では、第1の壁及び第2の壁、ならびに選択的に第3の壁は、所定のセル容積を画定するクローズドセルの一部を形成してもよい。したがって、クローズドセルを上から見ると、壁は、クローズドセルの境界を画定しており、クローズドセルを形成する複数の壁の一部であってもよい。クローズドセルは、例えば、六角形として環状になるように接続された6つの壁を有してもよい。この場合、第1の壁が第2の壁と当接し、第3の壁が第2の壁と当接し、第4の壁が第3の壁に当接する等となる。セルの閉端では、例えば、第6の壁が、第1の壁の反対側で第1の壁と当接してもよい。各壁において構造層を有することによって、層が、第3の軸と交差してよく、ある壁をそれに当接する壁と比較したときに、構造層が上方または下方方向に移動していてよい。したがって、クローズドセルの壁の剛性は、壁ごとに変化し得る。クローズドセルは、任意の適切な形状を有してもよい。
【0040】
1つまたは複数の実施形態では、第3の軸は、螺旋軸及び/または渦巻き軸であってもよい。螺旋軸及び/または渦巻き軸の形態で第3の軸を提供することによって、軸は、コイル状の経路をたどってよく、コイル状の経路は、例えば、クローズドセルの壁(すなわち、周壁)をたどってよい。例えば、第3の軸が壁の構造層と交差する螺旋状の経路に第3の軸を設けることによって、壁の構造層も螺旋状の経路に追従してよい。したがって、これは、壁の剛性が螺旋状に形成されてもよく、その結果、クローズドセルは、例えば、その周囲に沿うコイルばねのような剛性のプロファイルを有することを意味する。したがって、クローズドセルの壁が、コイルばねのように機能するということである。この場合、第1の軸の方向に加えられる力が、構造層を介して一つの壁から別の壁に伝達され、力は、螺旋軸の経路をたどるときに、横方向(第2の軸)ならびに上向き及び/または下向きに伝達される。したがって、壁及び構造層は、衝撃を吸収するため、または、接触面間の力を維持するために、エネルギーを蓄積しそれを解放するために用いられる機械的装置として利用され得る。
【0041】
1つまたは複数の実施形態では、一次構造層は第1の層の一部であり、二次構造層は第2の層の一部であってもよい。選択的に、三次構造層は、第3の層の一部であってもよい。これにより、先行する壁と比較して壁の構造層が1層オフセットされた壁の構造が提供される。これは、構造層が層内に配置される場合、構造層は層の一体部分であるか、または、ある特定の位置にある層が対応する構造層を含むか、または構成してもよいということである。
【0042】
1つまたは複数の実施形態では、一次構造層における第3の軸の交点は、第1の層における交点と同じ位置にあってもよく、二次構造層における第3の軸の交点は、第2の層の交点と同じ位置にあってもよい。選択的に、三次構造層における第3の軸の交点は、第3の層の交点と同じ位置にあってもよい。したがって、第3の軸は、構造層及び層と同じ位置で交差するため、1つの層及び1つの構造層における交差は、3次元空間の少なくとも1つの点と見なしてもよい。
【0043】
1つまたは複数の実施形態では、一次構造層及び/または第1及び/または第2の可撓性層は、境界を介して別の層に取り付けられてもよい。2つの層の間の境界は、一次構造層及び/または可撓性層の剛性よりも小さい剛性を有してもよい。これは、第1の壁が第1の軸から偏向するときに、2つの層の偏向が、(断面図で見たときに)境界を横切ってピボットしてもよいということである。これは、層は所定の領域で偏向してよいということであり、第1の壁の偏向を予測及び/または予想することができるということである。したがって、層の剛性、または層間の境界の剛性を調整することによって、偏向をコントロールしやすくすることができる。
【0044】
1つまたは複数の実施形態では、構造層は、第1の表面及び第2の表面を有してもよい。構造層の第1の表面及び/または第2の表面は、第1の壁が非圧縮状態のときに、第1の軸と交差する層の一部として見なされてよい。構造壁の第1の表面及び/または第2の表面は、第1の壁の先行層または後続層に面する層の一部として見なされてもよい。したがって、第1の表面及び/または第2の表面は、(断面図で見たときに)第1の軸に実質的に直交する接線軸を有してもよい。第1の表面及び/または第2の表面は、壁の別の層と当接する層の一部として見なされてもよい。
【0045】
壁が、壁の各層が第1の軸に沿って互いに積み重ねられるように直線状に構築されている場合、第1の壁の非圧縮状態は、第1の軸が第1の壁のすべての層及び/または壁の少なくとも複数の層と交差している状態であってよい。第1の壁の中間状態は、例えば、第1の軸が第1の壁のすべての層及び/または少なくとも複数の層と交差し、圧縮力が、例えば低すぎて、壁の1つまたは複数の層を第1の軸から偏向させることができない状態であってよい。第1の壁の圧縮状態は、第1の壁の少なくとも1つの層が、第1の軸から離れるように偏向している状態であってよい。
【0046】
1つの例示的な実施形態では、一次構造層は、第1の軸に沿って第1の可撓性層及び第2の可撓性層と当接してもよい。これは、第1の壁の一次構造層が、一次構造層の第1の側に第1の可撓性層を有し、一次構造層の反対側の第2の側に第2の可撓性層を有してもよいということである。したがって、第1の軸は、第1の軸の長さに沿って、可撓性層、構造層、可撓性層、の順序で交差してもよい。これにより、一次構造層を、可撓性層によって囲む、すなわち、上下から囲むことができる。よって、第1の壁に力が加えられたときに、構造層の変形に先立って、可撓性層が変形することができる。
【0047】
構造層は、可撓性層と比較して高い剛性を有する壁を形成する構造であれば、どんな種類の構造であってもよい。構造層は、第1の軸の方向に複数の層を含んでもよく、複数の層は、互いに積み重ねられて、高い剛性を有する壁の一部を形成してもよい。構造層は、第1の軸の方向において、第1の層の高さと類似または同一の高さを有してもよい。しかしながら、代替的に、構造層は、可撓性層の高さよりも大きい高さを有してもよい。
【0048】
1つまたは複数の実施形態では、第1の層は、第1の軸の方向で第2の層と当接してもよい。これは、第1の層が、第2の層の上に配置されてもよく、または第2の層の下に配置されてもよいことを意味する。第1の層と第2の層を互いに重ねて配置することによって、第1の層と第2の層は、互いに重ねて配置され得る複数の層の構造として構成され得る、3Dプリント構造の一部を提供する。したがって、3D構造の壁部は、壁構造の1つの層が、同じ壁構造の別の層とは異なる剛性を有し、かつ/または壁部の1つの層が、同じ層の異なる壁部の層とは異なる剛性を有し得る3Dプリント構造を形成してもよい。
【0049】
1つまたは複数の実施形態では、第2の層の第2の壁部は、二次構造層または第3の可撓性層を備えてもよい。第2の壁部に二次構造層または第3の可撓性層を設けることによって、第2の壁部の3Dプリント構造が、第1の壁部と同数の層を有してよく、第1の壁部と同様の剛性、またはより小さい剛性を有してもよい。すなわち、第1の壁部及び第2の壁部の両方が、同数の層を有し、構造層及び可撓性層を有する場合、それらの総剛性は、実質的に同様である。しかしながら、第1の壁部及び第2の壁部が、同量の可撓性層と構造層とを有さない場合、より少ない構造層を有する壁部の剛性は、より多くの構造層を有する壁部よりも小さくなる。このように、構造層や可撓性層の数を調整することで、壁部の剛性をコントロールすることができる。
【0050】
1つまたは複数の実施形態では、第1の可撓性層は、二次構造層または第3の可撓性層と当接してもよい。これは、二次構造層または第3の可撓性層が、第2の壁部に特定の構造を提供してもよいということである。二次構造層は、第2の可撓性層と当接することによって、第2の壁部の総剛性を増加させてもよく、または、第3の可撓性層は、第2壁部の剛性が、第1壁部の対応する層よりも低いことを保証してもよい。
【0051】
1つまたは複数の実施形態では、3Dプリント構造は、第3の壁を備えてもよい。第3の壁は、3Dプリント構造に高い変動性を提供してよい。第3の壁は、第1の壁及び/または第2の壁と同様の層で構成されてもよいが、第3の部分は、対応する層において第1の壁及び/または第2の壁とは第1の軸の方向に異なる層構造を有してもよい。または、3Dプリント構造の構造によって必要とされる場合、第3の壁は、第1の壁及び/または第2の壁と同様の構造を有してもよい。
【0052】
1つまたは複数の実施形態では、第1の層は、第3の壁部をさらに備えてもよい。第1の層内の第3の壁部は、第2の可撓性層または二次構造層を備える。第3の壁部は、3Dプリント構造にさらなる層を提供してよい。第3の壁部は、同じ層内の第1の壁部及び/または第2の壁部と同様の剛性を有してもよいし、第1の壁部及び/または第2の壁部とは異なる剛性、すなわち、より高いまたはより低い剛性を有してもよい。
【0053】
1つまたは複数の実施形態では、第2の層は、第3の壁部を備えてもよい。第3の壁部は、第2の層において、可撓性層または構造層を備える。第3の壁部は、第1の壁部及び/または第2の壁部と同数の層を有してもよいため、第1、第2、及び第3の壁部の高さは同じである。
【0054】
1つまたは複数の例示的な実施形態では、第1の壁、第2の壁、第3の壁、または任意の後続の壁は、第1の高さ、ならびに第1の端部及び第2の端部を有してもよい。一次構造層は、第1の端部から少なくとも第1の長さの20%の距離に配置され、及び/または第2の端部から少なくとも20%の距離に配置される。第1の高さは、第1の軸に沿った第1の端部から第2の端部までの距離であってもよい。したがって、第1の壁が10mmの高さを有する一例では、第1の壁の高さの2~8mmである部分に、一次構造層を配置してもよい。これは、壁が、壁の中央部に配置された構造層を有してよいということである。第1の壁の中央部は、構造層だけでなく、第1及び第2の可撓性層も有してもよい。これにより、壁に力が加わったときに、第1の壁の変形を制御することができる。別の例では、第1の壁の中央部は、2つまたは3つ以上の構造層を有してもよく、これらの構造層は、1つまたは複数の可撓性層によって分離されてもよい。
【0055】
1つまたは複数の実施形態では、第2の軸に沿った方向で、第1の壁が、第2の壁と当接してもよく、及び/または、第3の壁が、第2の壁と当接してもよい。これは、壁が、ある特定の方向に延在してもよいということである。また、第2の軸は、円形方向の一部であってもよく、第1の壁、第2の壁、及び第3の壁は、環状または多角形状に接続され、セルのような閉じた構造の部分を形成してもよい。したがって、第1、第2、及び/または第3の壁は、環状または部分的に環状に互いに当接してもよく、壁は、環状構造の一部を形成する。
【0056】
1つまたは複数の実施形態では、第2の可撓性層は、一次構造層と当接してもよい。第2の可撓性層は、第2の軸に沿った方向で一次構造層と当接してもよい。この場合、第2の可撓性層は、第2の軸の方向に沿って見たときに、一次構造層の横に配置される。
【0057】
1つまたは複数の実施形態では、可撓性層は、一次表面及び二次表面を有してもよい。可撓性層の一次表面及び/または二次表面は、第1の壁が非圧縮状態のときに、第1の軸と交差する層の一部として見なされてもよい。可撓性壁の一次表面及び/または二次表面は、第1の壁の先行層または後続層に面する層の一部として見なされてもよい。したがって、一次表面及び/または二次表面は、(断面図で見たときに)第1の軸に実質的に直交する接線軸を有してもよい。一次表面及び/または二次表面は、壁の別の層と当接する層の一部として見なされてもよい。
【0058】
第1の壁の層は、融合、結合、混合、一体化及び/または合併してもよく、壁構造が形成されると、壁の2つの層の間の境界が識別不能であってよい。しかしながら、第1の壁または任意の後続の壁の3Dプリント中に、壁は層ごとに形成される。1つの層は、先行する層(既に形成され、配置された層)の上に配置され、先行する層の第1の表面は、後続する層(先行する層の上に配置された層)の第2の表面と当接する。2つの層の配置は、第1の表面と第2の表面とが交差し、互いに区別されないように、硬化前に行ってもよい。あるいは、第1の表面は、永久的な方法によって、第2の表面に結合または接着されてもよい。この場合、2つの層の間の境界は、第1の壁または任意の後続の壁の断面の顕微鏡図で見ることができる。
【0059】
1つまたは複数の実施形態では、剛性は、縦方向のものであってもよい。縦方向は、第1壁の第1の軸に平行な方向であってもよい。第1の壁または任意の後続の壁の層の剛性は、縦方向における層の可撓性を表す剛性として理解されてもよい。すなわち、剛性は、層が縦方向にどのくらい動きやすいかを示す。高い剛性は、より低い剛性を有する層と比較して、縦方向に層を配置するためにより大きな力を必要とし得ることを意味し、逆も同様である。
【0060】
1つまたは複数の実施形態では、剛性は、横方向のものであってもよい。横方向は、第1壁の第1の軸を横断する方向であってもよい。第1の壁または任意の後続の壁の層の剛性は、横方向における層の可撓性を表す剛性として理解されてよい。すなわち、剛性は、層がどのくらい横方向に動きやすいかを表す。高い剛性は、より低い剛性を有する層と比較して、横方向に層を配置するためにより大きな力を必要とし得ることを意味し、逆も同様である。
【0061】
1つまたは複数の実施形態では、剛性は、回転方向のものであってもよい。回転方向は、第1の壁の層の縦方向軸に沿って回転する方向であってもよい。第1の壁の層の縦方向軸は、第1の壁の第1の軸に対して実質的に直交して(直角であっても)もよい。したがって、第1の壁または任意の後続の壁の層の剛性は、回転方向における層の可撓性を表す剛性として理解されてもよい。したがって、構造の壁に圧縮力が加えられると、1つまたは複数の層は、壁の第1の軸から離れるように偏向してもよく、層は、別の層に結合されてもよい。これは、圧縮力によって、当該層または両方の層に、トルクが加えられることを意味する。回転方向の層の剛性は、例えば、2つの層の間の接続、単一層の回転方向における可撓性を表してもよい。回転方向における可撓性は、加えられた力に対する層のねじれ運動への抵抗、すなわち、加えられた力に対して層が回転運動にどれくらい抵抗するのかとして理解されてもよい。回転剛性及び/または硬さは、ねじれ剛性、硬さ及び/または可撓性として理解されてもよい。
【0062】
1つまたは複数の実施形態では、構造層は、可撓性層の厚さよりも大きい幅(縦軸に対して横断方向)を有してもよい。
【0063】
構造層は、可撓性層の厚さの110%、120%、130%、または150%を超える幅(縦軸に対して横断方向)を有する。構造層は、可撓性層の幅の約2倍の幅を有してもよい。
【0064】
構造層は、横方向に互いに当接する可撓性材料の2つまたは3つ以上の層として形成されてもよい。すなわち、2つの層が、壁構造の単一層に配置されてよく、各層が、構造の先行する層及び/または後続の層、ならびに横方向に並んだ層に結合してもよいということである。したがって、一次構造層または任意の後続の層は、材料の2つまたは3つ以上の層から構成されてもよい。この場合、2つまたは3つ以上の層の各層は、壁構造の可撓性層と同等である。2つまたは3つ以上の層が、互いに結合され、縦方向に隣接する層に結合されると、材料が大きな幅を持つことができるので、構造層を形成するために2つまたは3つ以上の材料の層を設けることで、壁の層の剛性を増すことができる。当接する2つの層は、可撓性層の高さと同等または同一の(縦方向の)高さを有してもよく、当接する層を導入することによって、構造層の高さは変化しない。したがって、構造層は、可撓性層と同等または同一の高さを有してもよい。
【0065】
1つまたは複数の実施形態では、第1の壁は、少なくとも1つの二次構造層及び/または少なくとも1つの第3の可撓性層を有してもよい。一次構造層及び/または可撓性層に続いて、3Dプリント構造の壁に、二次構造層がさらに提供されてもよい。当該さらなる構造層は、壁の高さを増加させるために、及び/または壁の剛性を増加させるために提供されてもよい。一次構造層、二次構造層、第1の可撓性層、及び/または第2の可撓性層に続いて、3Dプリント構造の壁に、第3の可撓性層がさらに提供されてもよい。当該さらなる可撓性層は、壁の高さを増加させるために、及び/または壁の剛性を減少させるために提供されてもよい。第1の壁または任意の後続の壁は、第1の軸の方向に沿った所定の壁の長さを提供するために、複数の構造層及び/または可撓性層を備えてもよい。
【0066】
1つまたは複数の実施形態では、構造層及び可撓性層の順序は、第1の軸に沿って繰り返されてもよい。すなわち、構造層と第1及び第2の可撓性層の順序は、壁の長さに沿って(第1の軸に沿って)繰り返されてもよい。一次構造層と二次構造層とは、1つまたは複数の可撓性層によって分離されてもよい。一例では、2つの構造層は、2つの可撓性層によって分離されてもよい。したがって、壁の長さは、構造層がその各側(縦方向の長さに沿って上下側)で1つまたは2つの可撓性層と当接する構造を有してもよい。この順序は、壁の長さに沿って繰り返されてよい。
【0067】
1つまたは複数の実施形態では、第1の壁は、縦方向軸に沿って、少なくとも1つの一次構造層及び少なくとも1つの可撓性層の繰り返される層構造を有してもよい。
【0068】
すなわち、可撓性層が、2つの構造層の間にある領域で、第1の壁に加えられる圧縮力に従うように構成されてもよい。その結果、壁は、その第1の端部からその第2の端部までの高さを低減することができる。
【0069】
1つまたは複数の実施形態では、一次構造層と二次構造層は、少なくとも1つの第1の可撓性層によって分離されてもよい。少なくとも1つの可撓性層で一次構造層と二次構造層を分離することによって、第1の壁の縦方向軸に沿った変形をコントロールすることができ、構造層よりも剛性が低い可撓性層が、構造層の変形に先立って変形する。したがって、第1の壁がどのように変形するかをより正確に予測することができる。よって、構造層の剛性、及び/または第1の壁を取り囲む任意の壁を調整して、壁全体の予測可能かつコントロール可能な集合的な剛性を単独で有する第1の壁を提供することができる。
【0070】
1つまたは複数の実施形態では、構造層の高さは、可撓性層の高さと実質的に同様であってもよい。構造層の高さが可撓性層と同一である1つまたは複数の実施形態では、可撓性層と同様の高さで構造層を提供することによって、壁の構築中に、1つの構造層を1つの可撓性層と交換する場合、またはその逆の場合でも、壁の全高を再較正することなく、構造層を可撓性層と交換すること、またはその逆の交換を行うことができる。したがって、製造/プリントされる壁の第1の軸の方向の長さ(高さまたは全高)は、層の総数から画定されてもよい。特定の層の特定の数は、壁の長さに影響を与えず、壁の全長の特定の修正及び計算をせずに、特定のタイプの層を交換することができる。すなわち、3Dプリントされる物品の層の任意の位置において、その物品の後続の層に影響を及ぼすことなく、構造壁の導入を選択的に行うことができ、壁の後続の層の構造層を補償する必要がないということである。
【0071】
1つまたは複数の実施形態では、一次構造層は、2つまたは3つ以上の可撓性層によって、縦方向に分離されていてもよい。2つまたは3つ以上の可撓性層で一次構造層を分離することによって、縦方向(第1の軸の方向)において、一次構造層の後に、少なくとも2つの可撓性層が続くこととなる。これは、少なくとも2つの可撓性層が、壁に対してより可撓性がある(剛性が小さい)ゾーンを(縦方向において)提供するということであり、壁は、このゾーンにおいて、より容易に崩壊することができる。したがって、第1の軸の方向に互いに当接する2つの可撓性層を設けるということは、2つの層の間の結合の可撓性が、構造層と可撓性層の間よりも小さいこということも意味し、第1の軸の方向に壁に圧縮力が加えられると、一方の可撓性層が他方の可撓性層から容易に偏向できるということである。
【0072】
1つまたは複数の実施形態では、第1の可撓性層は、一次構造層と当接してもよい。一次構造層を第1の軸の方向で第1の可撓性層と当接させることによって、壁の可撓性が、第1の軸の方向において増大されてもよい。可撓性層は、構造層よりも低い剛性を有するため、組み合わされた2つの層の合計の剛性は、例えば、2つの構造層を互いに当接させる構成に比して小さい。したがって、可撓性壁を設けることによって、3Dプリントに使用される材料の組成を変更することなく、壁の可撓性を増すことができる。
【0073】
1つまたは複数の実施形態では、第1の軸は、構造層及び/または可撓性層の中心軸と交差してもよい。すなわち、第1の壁は、構造層及び可撓性層の各層が、直接的に互いに積み重ねられるようにして直線状に設けられるように構成されてよい。その結果、第1の軸に平行な方向に第1の壁に加えられる任意の圧縮力は、第1の軸と交差する中心軸を有する壁のすべての層を通って伝達される。層の中心軸は、層の長さに沿った縦方向軸として理解してよく、層の断面平面に垂直であると理解されてもよい。
【0074】
1つまたは複数の実施形態では、弾性材料は、シリコン材料、またはシリコン材料の混合物であってもよい。3Dプリントは、1つの層を別の層の上に追加し、これを壁が所望の高さを有するまで続けることで実行されてもよい。有利には、3Dプリントは、正しい位置に配置されたときに硬化する液体形態のポリマーを使用して実行されてもよい。したがって、3Dプリント構造は、硬化されると、ポリマー材料から製造されていてもよい。この一例は、上に配置される層と同じ方向に添加される液体シリコンポリマーであり、壁は、互いの上に追加されるポリマーの多数の別個のラインである。当該ラインは、互いの上に3Dプリントされる際、互いに平行であってもよい。有利には、材料は、弾性を有する。その結果、圧力が加えられている間の材料の変形は、可逆的なものであり、材料は、弾性変形する際に、塑性変形しない。すなわち、材料は、塑性変形が生じる前に、高い応力/歪比関係を有している。
【0075】
一実施形態では、硬化時のポリマーのショアA硬度は、20~90、好ましくは30~85、より好ましくは35~80、より好ましくは約40~60であってもよい。ポリマーの一例はシリコンであり、その1つのタイプは、約50のショアA硬度を有し、3Dプリント用に設計されたDow Corning LC3335液体シリコンゴムであってもよい。3Dプリントに適合される他のタイプのポリマー及びシリコンが利用されてもよい。本発明には、特定のタイプのシリコンまたはポリマーが必須ではないものの、3Dプリントの弾性、硬度、及び能力は、重要な因子として理解されてもよい。
【0076】
3Dプリント使用方法は、用途にもよるが、2つの定義された流体を強制的にスタティックミキサーに通し、その後ノズルから押し出す熱溶解積層方法(Fusion Deposition Modelling)である。プリント装置は、ドイツのRapRap GMbH社の3DプリンタであるX400PRO3Dプリンタであってもよいが、他のタイプのプリンタを使用してもよい。
【0077】
一実施形態では、各層の厚さは、0.1~1.6mm、より好ましくは0.2~1.2mm、より好ましくは0.3~1.0mm、またはより好ましくは0.4~0.9mmであってもよい。層の厚さは、3Dプリントされたラインの厚さ、及び/または3Dプリントされたラインの多重度のいずれかによって調整されてよい。厚さが増すと、抵抗及び/または剛性が増すため、ラインの厚さで壁の抵抗を調整してよい。
【0078】
1つまたは複数の実施形態では、構造層は、第1の材料組成で形成されてもよく、かつ/または可撓性層は、第2の材料組成で形成される。第1の材料組成は、第2の材料組成とは異なる。したがって、3Dプリント構造は、少なくとも2つの異なる材料組成で形成されてもよく、材料組成は、圧縮力を加えられたときに、層の挙動及び圧縮性に影響を及ぼし得る。
【0079】
壁を異なる数の層で設けることで、3Dプリント構造の形態を調節してよい。高さを低くしたい3Dプリント構造の部分には、少ない数の層を有する壁を設けてもよく、高さを高くしたい3Dプリント構造の部分には、互いに重ねて配置された、増大された量の層を設けてもよい。
【0080】
3Dプリント構造が靴のミッドソールである例では、高さを低くしたい領域は、例えば、前足領域であってもよく、高さがより高い領域は、例えば、3Dプリント構造の中央部分のアーチ領域やかかと領域であってもよい。したがって、3Dプリント構造は、完全に特定のユーザの足の形態に従って形成されるように利用されてもよい。ミッドソールが使用される靴は、比較的一般的な形態で形成されてもよく、アッパー及びアウトソールは、互いに接合されていてもよく、アウトソールの内面は、高さという点において、比較的平坦であってもよく、足の形態に沿って形成されなくてもよい。したがって、アウトソールの内面、すなわち、アウトソールの足に対向する面、または靴の足に対向する面は、中間部分を備える場合、比較的平坦であってもよく、3Dプリントされたミッドソールの下部のための受容面として提供されてもよい。したがって、アウトソールの足に対向する面は、縦方向及び横方向には、足の形状で提供されてもよいが、高さ方向、すなわち、足の縦方向及び/または横方向に垂直な方向には、特徴的な足の形状を有さなくてもよい。したがって、ユーザの正しいサイズ(靴の縦方向軸に沿って)を有する靴は、ユーザの足の輪郭に対して、足に対向する面において、特に高さ方向にユーザのために特別に形成された3Dプリントされたミッドソールを備えてよく、歩き方、足から伝達される力、ならびにウォーキング中、ランニング中または静止中の位置のいずれかの足の輪郭分析によって、各特定のユーザのために特別に選択された領域において、強化されたり、柔らかくされたりしてよい。
【0081】
このように、本発明はまた、上記開示による3Dプリント構造からなる3Dプリントされたミッドソールを有する靴に関してもよい。
【0082】
3Dプリント構造の抵抗を調整する別の方法は、壁の形態だけでなく、1つの壁の第2の壁に対する接続の仕方である。1つの壁が別の壁に斜めに接続されている場合、すなわち、それらの壁の平面が斜めに交差する場合、第2の壁は、第1の壁に対して増加した抵抗を提供してもよく、またその逆も同様である。なぜなら、壁が互いに向かって角度をつけられており、特に1つの壁がその全高に沿って第2の壁に接続されている場合、壁が互いに構造的な抵抗を提供しあうためである。
【0083】
3Dプリント構造は、複数の壁を備えてもよい。複数の壁は、複数のセルを画定してもよく、複数のセルは、壁に実質的に平行な中心軸と、壁から中心軸までの半径とを有する。
【0084】
壁に圧力が加えられ、壁に加えられた力がある限界を超えると、壁は変形する。壁の下端(第2の端部)は、アウトソールの足に対向する面によって靴の内側に制限されているので、第1の端部は、第2の端部に向かう方向に移動する。このため、壁は、座屈、拡張、または他の方法によって変形し、第1の端部を下方向に移動させる。壁が変形する際、少なくとも1つの方向に、すなわちセルの中心軸に向かう方向に、壁の変形が制限されないという利点があり得る。したがって、変形した壁は、セル内へと自由に変形することが可能であり、その結果、壁とセルとの間の半径は、少なくとも1つの領域で小さくなる。接続された壁及び接続の角度が、壁の抵抗を増加又は減少させ得るため、セルの形状、例えば、上方又は側方から見たセルの形態は、壁の変形に影響を及ぼし得る。
【0085】
複数の層において円筒形の壁を提供する円形の壁によって、単一のセルが提供されてもよい。その場合、壁の外面は、第2の壁に接続されてもよい。したがって、セル構造は、壁を介して他の円筒形セルに接続された複数の円筒形セルであってもよい。円形壁は、第1の壁、第2の壁、及び/または第3の壁を含んでもよい。第1の壁、第2の壁、及び/または第3の壁は、円形壁に沿った異なる位置にある円形壁の領域であってもよい。したがって、第1の壁は、例えば、0~60度の角度で配置されてもよく、一方、第2の壁は、61~120度の角度で配置されてもよく、第3の壁は、121~180度の角度で配置されてもよい。あるいは、第1の壁は、例えば、0~120度の角度で配置されてもよく、一方、第2の壁は、121~240度の角度で配置されてもよく、第3の壁は、240~360度の角度で配置されてもよい。円形壁は、360度の回転を有してもよく、円形壁の中心軸の周りの回転であってもよい。中心軸は、円形壁の中心を通って延在する。
【0086】
1つまたは複数の実施形態では、少なくとも1つの第1の壁及び第2の壁を有する弾性材料の3Dプリント構造は、第1の壁部及び第2の壁部を有する少なくとも1つの第1の層と、少なくとも第1の壁部及び第2の壁部を有する少なくとも1つの第2の層とを備える。第1の層の第1の壁部は、少なくとも1つの一次構造層を備え、第1の層の第2の壁部は、第1の可撓性層を備える。第2の層の第1の壁部は、第2の可撓性層を備える。一次構造層は、第1の剛性を有し、第1の可撓性層は、第2の剛性を有する。第1の剛性は、第2の剛性よりも大きい。
【0087】
これは、3Dプリント構造の第1の層は、第2の層とは異なる構造を有するということである。3Dプリント構造の壁は、第1の軸に沿って延在してもよい。一方、第2の壁は、第1の壁の側方、すなわち、第1の軸から直角である方向に、配置されてもよい。本開示の意味の範囲内では、第2の軸は、第1の軸に直交してもよい。したがって、3Dプリント構造は、少なくとも2つの方向において、様々な構造を有する複数の層を有してよく、第1の壁部及び第2の壁部、または任意の後続の壁部の構造は、3Dプリント構造の異なる部分で繰り返されてもよい。すなわち、特定の剛性を有する3D構造であって、1つまたは複数の壁または壁部の構造層及び可撓性層の組み合わせである3D構造を提供するために複数の壁及び/または複数の層を提供するために、第1の壁部及び第2の壁部の構造は、第1の軸の方向及び/または第2の軸の方向に繰り返されてもよい。
【0088】
以下では、図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】
図1a、1bは、本明細書が開示による3Dプリント壁の第1、第2実施形態の断面図を示す。
【
図2】
図2a、2b、2cは、3Dプリント壁の断面図を示し、圧縮力が加えられたときに壁がどのように反応するかを示す。
【
図4】3Dプリント壁のさらなる実施形態の断面図を示す。
【
図5】3Dプリント壁の3つの断面の顕微鏡図を示す。
【
図6】
図6a、6b、6cは、3Dプリント構造の3つの別個の層を示す。
【
図7】
図7a、7bは、異なるステップにおける層状構造の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
(詳細な説明)
図1は、3Dプリント構造1の例示的な第1の実施形態の概略断面図を示し、3Dプリント構造1は、第1の軸Aに沿って延在する複数の層を有する第1の壁2を備える。第1の壁2は、一次構造層3、第1の可撓性層4、及び第2の可撓性層5を備える。この例示的な実施形態では、第1の壁2は、二次構造層6、三次構造層7、及び四次構造層8を含む。二次構造層6と三次構造層7、ならびに三次構造層7と四次構造層8は、それぞれ、2つの可撓性層9、10、及び、11、12によって分離されている。すなわち、一次構造層3及び第1、第3の可撓性層4の構造が、壁2の縦方向Aにおいて、壁2の長さに沿って繰り返されている。
【0091】
一次構造壁3、第1の可撓性壁4、第2の可撓性壁5、ならびに後続の壁は、高さH及び幅Wを有する可撓性材料の押出ラインを使用して3Dプリントされる。3Dプリント構造の材料の1つの層は、高さHであってよく、3Dプリント構造で必要に応じて連続的に適用されてもよい。
【0092】
この実施形態では、この壁2の構造層6は、押出された可撓性材料の2つの別個のライン12、13として提供される。2つの別個のライン13、13’は、接合側壁において互いに接合されており、接合側壁14は、材料の2つのライン13、13’の間に永久的な結合を提供する。さらに、構造層6は、少なくとも1つの可撓性壁5、9に接合されてもよい。可撓性壁の上壁15または下壁16は、構造層6の上壁または下壁に接合されてよく、2層間に永久的な結合を形成する。層間の結合は、本断面図に示される2D平面に実質的に垂直な軸Bに沿って、層6、5、9の全長に沿って延在してもよい。可撓性層9、10も、層9、10の全長に沿って結合されてもよい。この実施形態に見られるように、構造層6は、可撓性層5、9の幅(W)の約2倍の幅(2W)を有する。この幅によって、構造層6は、可撓性層5、9よりも高い剛性を有する。その結果、壁2に対して第1の軸Aの方向に圧縮力が加えられると、構造層6は、可撓性層よりも長い時間、変形に抵抗する。
図1aに示されている全ての構造層及び可撓性層についても、同様である。
【0093】
同様に、
図1bは、壁20の別の例示的な実施形態を示す。当該壁は、一次構造層21、二次構造層22、ならびに二次構造層21を二次構造層22から第1の軸Aの方向に分離する6つの可撓性層23、24、25、26、27、28を備える。さらに2つの可撓性層が、二次構造層22の下に設けられている。この実施形態では、可撓性層の数が、
図1aに示される実施形態よりも多い。これは、壁20と壁2が、同様の高さ(H)及び幅(W)を有する可撓性材料のラインと同様の材料及び同様の寸法で同じように製造される場合、壁20の合計の剛性が、
図1aに示される壁2に比して小さいということである。この可撓性の増加は、
図1aの壁2よりも、軸Aに沿う単位長さ当たりにより多くの可撓性層を有することに起因する。したがって、軸Aの方向に圧縮力が加えられると、構造層21、22は変形に抵抗する一方、可撓性層23、24、25、26、27のいずれか1つは、構造層21、22に先駆けて変形し得る。
【0094】
図2aは、3つの可撓性層34、35、36の第1のセット及び可撓性層37、38、39の第2のセットによって、互いに分離された3つの構造層31、32、33を有する壁30を示す。壁30が非圧縮状態にあるとき、第1の軸Aは、各層の中心部と交差する。よって、壁30は、実質的に直線形状を有してもよい。
【0095】
軸Aの方向の圧縮力が増加すると、層34、35、36、37、38、39の可撓性材料の変形が引き起こされ、材料の可撓性によって壁30の形状を変化させる。圧縮力の増加に伴って、壁30は最終的に、第1の軸Aから離れるように屈曲変形する。壁の第1の端部40及び壁41の第2の端部の位置が固定されている場合、壁30の中央部42において、壁の変形が最も生じやすく、壁30の中央部42は、第1の軸Aから離れるように偏向する。壁が異なる剛性を有する層で構成されているため、可撓性層34、35、37、38 39のようなより低い剛性を有する壁の部分が、最初に変形する領域である。したがって、可撓性層34、35、36、37、38、39の領域において、壁の軸Aからの偏向が引き起こされ、構造層31、32、33は、ある程度まで変形に抵抗する。
図2bに示されるように、変形の一例では、2つの可撓性層35、38が横方向Cに偏向し、両方の層が同じ方向c1に偏向する。その結果、
図2bに示されるように、壁の長さが、その初期長さXから圧縮長さYに減少する。
【0096】
図2cでは、同様の状況が示されている。壁30に圧縮力が加えられ、可撓性層35は、方向c1に偏向し、可撓性層は、方向c2に偏向する。方向c1及びc2は、例として示されているだけであり、可撓性層は、同一方向、反対方向、または交互方向に偏向してもよい。同様の偏向は、可撓性層の数が2つだけである場合にも起こる可能性があり、可撓性層は、軸Cによって示される方向に第1の軸Aから離れる方向に偏向し得る。
【0097】
図3は、壁50を有する3Dプリント構造1の別の実施形態の概略断面図を示す。壁は、少なくとも1つの一次構造層51と、第1の可撓性層52と、第2の可撓性層53とを備える。壁はさらに、二次構造層54と、4つのさらなる可撓性層55、56、57、58と、を備える。壁50の層の各々は、各層の長さに沿って層の中心に沿って延在する長手方向軸Dを有する。
【0098】
図3に示される3Dプリント構造は、層51~層58の長手方向軸Dが、軸Aの方向の壁50の長さに沿って実質的に中心に位置するように、すなわち、軸Dが各層の長手方向軸Dと交差するように形成される。これは、壁50に軸Aの方向で圧縮力が加えられた場合に、力が各層の中心に移動し、
図2b、
図2cで示すように、可撓性層が変形して、縦方向軸Aから偏向し始めるまで、壁50が所定の大きさの圧縮力までその高さ(
図2aに示すX)を維持するのを補助できるということである。
【0099】
図4は、壁60の概略断面図を示し、壁60は、
図2a~
図2cに示されるものと同様に、3つの構造層61、62、63及び6つの可撓性層64、65、66、67、68、69を有する。この例示的な実施形態では、可撓性層65及び68の長手方向軸Dは、壁60の縦方向軸から離れるように方向c1及びc2にオフセットされている。この長手方向軸のオフセットは、圧縮力が壁60の縦方向軸Aの方向に加えられたときに、可撓性層65及び68を方向c1及びc2に偏向しやすくするまたは付勢するものであり、壁60が、これらの方向に曲がることができる。層の長手方向軸のオフセットは、必ずしも反対方向である必要はなく、同じ方向であってもよい。圧縮力を斜め方向(方向Aと方向c1またはc2との積)に移動させ、壁の特定の変形を強制するために、オフセットが、構造層のうちの1つまたは複数にも導入されてもよい。
【0100】
図5は、3Dプリント構造の顕微鏡で見た断面切断図を示す。
図5では、壁70、80及び81の3つの例が示されており、各壁70、80、81は、第1の端部71及び第2の端部72を有する。各壁70、80、81は、複数の可撓性層73及び複数の構造層74を有し、構造層74は、可撓性層によって分離されている。図に示されるように、材料の層は互いに結合して、第1の端部71から第2の端部72まである程度均一な構造を形成しており、各層73、74は互いに溶着されている。明らかなように、構造層は、可撓性層の幅(W)よりも大きな幅(2W)を有しており、このため、構造層74の剛性は、可撓性層73の剛性よりも高い。
【0101】
図6a~
図6cは、3Dプリント構造の別個の層を示す。
図6aは、第1の層90を示し、
図6bは、第2の層91を示し、
図6cは、第3の層92を示す。第1の層90をベース層とする3Dプリント構造が3Dプリントによって構築される場合、第2の層91は第1の層90の上に配置されてもよく、第3の層92は第2の層91の上に配置されてもよい。第4の層が3Dプリント構造に追加される場合、第4の層は、例えば、第1の層と同じ構造を有してもよい。
【0102】
図6a~
図6cに示されるように、各層は、層90、91、92の右側95から左側96へジグザグパターンに従う連続線94を有する。この構造は、線が複数の六角形97を作るように形成されてもよい。各六角形97は、6つの壁98を有する。1つの六角形に対して隣接する二つの六角形97a、97bは、六角形97aと97bを分離する双壁98a、98a’が存在するようにプリントされる。一方、隣接する六角形97cの4つ(これらのうちの2つのみが参照番号を有する)は、第1の六角形97から分離する単壁を有する。したがって、双壁98a、98a’は互いに結合し、単壁よりも高い剛性を有するため、単層の双壁は、構造層を形成する。したがって、単壁98b、98c、98e、98fによってのみ分離されている六角形は、可撓性壁を形成する。
【0103】
次いで、
図6bに示されるように、次の層、すなわち第2の層91が、第1の層90に対して層91の構造が60度回転されるようにして生成される。これは、六角形の双壁上に存在していた双壁が、可撓性壁(
図6aの98b、98e)上に位置することになるということであり、その結果、第2の層91の構造層は、壁の縦方向(
図1の軸A)において、可撓性層と当接するようになる。
【0104】
次いで、
図6cに示されるように、次の層、すなわち第3の層92が、第2の層90に対して層92の構造が60度(α)回転されるようにして生成される(第1の層90に対して120度の回転)。これは、六角形の双壁上に存在していた双壁98a、98a’が、可撓性壁(
図6aの98c~98e)上に位置することになるということであり、その結果、第2の層91の構造層は、壁の縦方向(
図1の軸A)において、可撓性層と当接するようになる。
【0105】
したがって、層を互いの上に重ねて追加し、層をある角度で回転させることによって、六角形のセルを構築することができる。ここで、六角形の壁は、例えば
図1aに示されるような構造を有し、壁は、軸Aの方向に、一次構造層と、第1及び第2の可撓性層とを有する。軸Aは、
図6a~
図6cに示される2次元平面に対する垂線である軸として理解してもよい。この場合、壁の縦方向軸は、図面の平面から読み手に向かって立っている。
【0106】
図7a及び
図7bは、
図6a~
図6cに開示されるプロセスの斜視図を示す。最も左の構造は、3Dプリント構造の第1の層100を示し、二重壁101は、第1の角度を有し、2つの隣接する単壁103を有する。左から2番目の構造では、第1の層101の上に第2の層102が配置されており、層の構造を60度回転させることによって、二重壁101が、単壁103と当接しており、単壁103が、第1の層の二重壁の上に配置されている。左から3番目の構造は、第3の層104が、第2の層102の上に配置された状態を示す。ここでは、二重壁は、第2の層102の単壁103の上に配置されており、第3の層の単壁103は、第2の層の二重層101の上に配置されている。左から4番目の構造は、第1の層とある程度同一の構造を有する第4の層105が、第3の層の上に配置されている様子を示す。ここでは、二重壁101が単壁103の上に配置され、第4の層の単壁103が第3の層の二重壁101の上に配置されている。
【0107】
それぞれの高さで二重壁を回転させ、
図1に示すように層同士を重ねて設けることによって、
図1~
図5のような、構造層(二重壁)の次に可撓性層(単壁)が来る壁を構築することができる。回転は、異なる方法で行われてもよい。所望の壁構造が得られるように、各層は、異なる回転及び構造で提供されてもよい。さらに、セルが異なる形状を有する場合、層の回転は異なる方法で行われてもよい。すなわち、特定の構造を得るために、セルが三角形の場合、回転は約120度の積であってよく、長方形の場合には、回転は、例えば、90度の積であってもよい。セルの形状が円形である場合、任意の角度を回転に利用して構造を得てよい。したがって、層の回転は、セルの形状または3Dプリント構造の壁構造を考慮して調整されてよい。
【0108】
図8は、セル200の構造の概略断面図を示す。
図8は、C方向に互いに取り付けられた3つの隣接する壁201、202、203を示す。各壁は、軸Aの方向において、構造層204とそれに続く2つの可撓性層205、206とを繰り返すパターンで有する。他の実施形態では、特定のパターン、壁の構造、ならびに隣接する壁を得るために、先の実施形態に示される壁のいずれかを利用してもよい。一実施形態では、隣接する壁のパターンは、任意の適切なパターンであってもよい。例えば、
図1aに示される構造層と可撓性層のパターンが、1つの壁に設けられてもよく、隣接する壁は、例えば
図1b、1c、または
図4に示されるようなパターンを有してもよい。したがって、壁が特定のパターンである必要性はなく、特定の用途のために、パターンを調整してもよい。1つの壁が第1の剛性を有し、次に、当該第1の壁よりも高いまたは低い別の可撓性を有する別の壁が続く。
【0109】
図8の3Dプリント構造を軸Cの方向で見ると、構造の材料の各層が、第2の軸Eを有し、少なくとも1つの構造層204と第1及び第2の可撓性層205、206を有することが確認できる。したがって、3Dプリント構造は、1つの層において、壁の層を画定することができる。壁のうちの1つは、より高い剛性を有する構造層を有してもよく、一方で、隣接する2つの壁は、または構造壁の両側で、可撓性壁を有してもよい。
【0110】
さらに、
図8の構造を見ると、構造壁の構造が、
図8に示されるように、軸Fに沿って、斜めのパターンを有していると理解することができる。方向Cに移動すると、構造層が可撓性層205によって置き換えられ、横の、すなわち隣接する壁202の次の構造層204は、第1の壁201の一次構造層204よりも1層低い。構造層204の第3の壁203が、第2の壁202の前の構造層204よりも1層低いということから、同様の事が説明される。したがって、3次元で見ると、構造層204は螺旋軸をたどり、隣接する壁は、その前の壁よりも1層低い構造層を有する。
【0111】
この実施形態では、構造層204は、軸Aの方向で可撓性層と当接し、軸Eの方向でも可撓性層と当接してもよい。したがって、3Dプリント構造200の第1の層207の構造層204は、3Dプリント構造200の第2の層208の構造層204と当接する可撓性層205を有してもよい。さらに、第2の壁202には、第1の層208の構造層204と当接する可撓性層205を設けてもよい。さらに、第3の壁203には、第1の層208の可撓性層205と軸Eの方向で当接する可撓性層205をさらに設けてもよい。
【0112】
さらに、第3の層209には、軸Aの方向で前の層208の可撓性層205または構造層204と当接する可撓性層205または構造層204をさらに設けてよい。
【0113】
図8に示す実施形態の壁は、第3の軸Fを有するものとして理解してもよい。第3の軸は、セルの壁(
図7a及び
図7bに見られる)を螺旋状にたどるものとして理解してもよい。したがって、螺旋軸Fは、斜め下方に延びてよく、各壁において構造層204と交差する。
図8に示す図は、側面から2次元で見ているので、歪んでいる。螺旋軸は、三次元空間では曲線として見ることができ、コイルばねと形状が類似していてもよく、または螺旋階段の手すりと類似していてもよい。螺旋軸は、例えば、円筒螺旋形状に「ねじ閉め」の動きで下方に移動する。
【0114】
本開示によれば、3Dプリント構造の1つ、2つ、または3つの壁の例示的な実施形態は、組み合わせ可能であると理解されるべきである。すなわち、1つの壁を示す図では、本開示に従って、同じ壁を、第2、第3、または任意の後続の壁または壁部として利用してもよい。当業者は、3Dプリント構造の本説明に基づいて、1つの実施形態の開示を別の実施形態と組み合わせる際に、いかなる問題も有しないであろう。
【0115】
「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」、「一次」、「二次」、「三次」、等の用語は、個々の要素を識別するために用いられるものであり、特定の順序を暗示するものではない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」、「一次」、「二次」、「三次」等の用語は、いかなる順序または重要度を示すものではなく、むしろ、1つの要素を別の要素と区別するために用いられる用語である。「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」、「一次」、「二次」、「三次」等の用語は、ここや別の部分で、ラベル付けのみを目的として用いられるものであり、特定の空間的または時間的な順序を示すものではないことに留意されたい。
【0116】
さらに、第1の要素のラベル付けによって、第2の要素の存在を暗示するものではない。また、その逆も同様である。
【0117】
特徴が示され、説明されたが、それらは、特許請求された発明を限定することを意図していないことに留意されたい。特許請求された発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正がなされ得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。特許請求される発明は、全ての代替物、変更物、及び均等物を包含することが意図される。