(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】溶接切削機および溶接部の切削方法
(51)【国際特許分類】
B23D 79/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B23D79/00 A
(21)【出願番号】P 2021532257
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 SE2019050523
(87)【国際公開番号】W WO2020036522
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065296
【氏名又は名称】ユーティーヴイ センター アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】UTV CENTER AB
【住所又は居所原語表記】Sodra Boda, Hoglunda, KIL, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン ロビン
(72)【発明者】
【氏名】カールソン ステーン オーケ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-020162(JP,A)
【文献】特開2009-028817(JP,A)
【文献】特表2016-530415(JP,A)
【文献】特開昭54-102258(JP,A)
【文献】特開昭53-066840(JP,A)
【文献】特開昭51-039491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 1/08、79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の切削ジョー部(4)および第2の切削ジョー部(5)と、前記第2の切削ジョー部(5)に固定的に取り付けられたベースフレーム(500)と、動力ユニットと、トランスミッション機構(3)とを備え、前記動力ユニットが、前記第1の切削ジョー部(4)を動かすことができるように前記トランスミッション機構(3)に接続され、また、接続部材が、前記第1の切削ジョー部(4)が前記第2の切削ジョー部(5)に対して案内されて動くことを可能にするように配置されている、溶接切削機において、
前記動力ユニットは、電気モータ(2)であり、
前記接続部材は、少なくとも2つのロッド(6)を含み、各ロッド(6)は、前記トランスミッション機構(3)を介して加えられるトルクを前記少なくとも2つのロッド(6)に伝達して前記第1の切削ジョー部(4)を直線的に動かすように少なくとも1組のねじ山(63、64)が設けられた状態で配置されており、
前記トランスミッション機構(3)は、少なくとも2つの部分(31、32)を含み、このうち、第1の減速トランスミッション(31)は、前記電気モータ(2)からの入力回転速度を低減するために配置され、第2の分割トランスミッション(32)は、前記第1の減速トランスミッション(31)からの出力トルクを前記少なくとも2つのロッド(6)の両方に同期して伝達するために配置されて
おり、
前記ロッド(6)は、各々、回転可能であり、2組のねじ山(63、64)が設けられている、
溶接切削機。
【請求項2】
前記第1の減速トランスミッション(3)は、遊星歯車(31)を含む、請求項1に記載の溶接切削機。
【請求項3】
前記第2の分割トランスミッション(32)は、チェーン/ホイールトランスミッション(32)を含む、請求項1または2に記載の溶接切削機。
【請求項4】
遊星歯車(31)の出部材(340)、好ましくはリングホイール(340)は、好ましくは中空軸(319)を介して、同軸上に配置された一対のチェーンホイール(320)に連結され、前記一対のチェーンホイール(320)は、各々、別々の駆動チェーン(321A、321B)を介して、1つのロッド(6)をそれぞれ駆動する、請求項2または3に記載の溶接切削機。
【請求項5】
前記分割トランスミッション(32)は、前記溶接切削機(1)の動作中にレールの中心線(C)に対して対称的に配置される、中央の逆U字形のギャップ(38)を有する固定ハウジング(30、35、37)内に配置されている、請求項1~4のいずれかに記載の溶接切削機。
【請求項6】
前記ロッド(6)は、前記分割トランスミッション(32)の出力駆動輪(610、631)に固定的に取り付けられた駆動部材(61)を介して前記トランスミッション機構(3)に対して摺動可能に配置され、好ましくは、前記駆動部材(61)は、前記ロッド(6)のねじ山と相互作用するねじ山を含む、請求項1~5のいずれかに記載の溶接切削機。
【請求項7】
前記固定ハウジング(30、35、37)の一方の側には、拡張ハウジング(9)が配置され、前記拡張ハウジング(9)は、前記ロッド(6)が前記拡張ハウジング(9)の保護された空間内で前記固定ハウジングの外側の位置に移動できるように配置されている、請求項5に記載の溶接切削機。
【請求項8】
各切削ジョー部(4、5)には、一対の調整案内部材(8)が配置され、前記一対の調整案内部材(8)は、好ましくは、迅速な解放を可能にするように配置された回動案内部材(86)を担持する棒状部材(81)を備える、請求項1に記載の溶接切削機。
【請求項9】
前記調整案内部材(8)は、前記回動案内部材(86)を動作位置と非動作位置の間で移動させるように配置された枢動体(83)を含む、請求項
8に記載の溶接切削機。
【請求項10】
各切削ジョー部(4、5)は、摩耗部(56、46)と、支持部(57、47)とを含み、好ましくは、前記摩耗部(56、46)は、形状適合によって前記支持部(57、47)にしっかりと配置されている、請求項1に記載の溶接切削機。
【請求項11】
前記摩耗部(56、46)および前記支持部(57、47)は、異なる材料で作られている、請求項
10に記載の溶接切削機。
【請求項12】
第1の切削ジョー部(4)および第2の切削ジョー部(5)と、前記第2の切削ジョー部(5)に固定的に取り付けられたベースフレーム(500)と、動力ユニットと、トランスミッション機構(3)とを備え、前記動力ユニットは、前記トランスミッション機構(3)に接続されて前記第1の切削ジョー部(4)を動かし、また、接続部材が、前記第1の切削ジョー部(4)が前記第2の切削ジョー部(5)に対して案内されて動くことを可能にするように配置されている、溶接切削機を提供することを含む、溶接部の切削方法において、
前記動力ユニットは、電気モータ(2)の形態で提供され、
前記接続部材は、少なくとも1組のねじ山(63、64)が設けられた状態で配置された少なくとも2つのロッド(6)を含み、
前記ロッド(6)は、各々、回転可能であり、2組のねじ山(63、64)が設けられている、
前記電気モータ(2)によって前記トランスミッション機構(3)を介して提供されるトルクによって、前記少なくとも2つのロッド(6)を回転させて、前記第1の切削ジョー部(4)を直線的に動かし、
前記トランスミッション機構(3)に少なくとも2つの部分(31、32)を設け、このうち、第1の減速トランスミッション部(31)は、前記電気モータ(2)からの入力回転速度を低減し、第2の分割トランスミッション部(32)は、前記第1の減速トランスミッション部(31)からの出力トルクを前記少なくとも2つのロッド(6)の両方に同期して伝達する、
溶接部の切削方法。
【請求項13】
好ましくは回動案内部材(86)を担持する棒状部材(81)を回すことによって、前記溶接切削機のレール(600)上への取り付けおよび取り外しを容易にすることができるように配置された一対の調整可能な案内部材(8)を、各切削ジョー部(4、5)に配置する、請求項
12に記載の溶接部の切削方法。
【請求項14】
各切削ジョー部(4、5)は、摩耗部(56、46)と、支持部(57、47)とを含み、前記摩耗部(56、46)を前記支持部(57、47)に着脱自在に取り付ける、請求項
12に記載の溶接部の切削方法。
【請求項15】
モータと、
軸周りに回転するように構成された複数のロッドと、
前記モータから入力されたトルクを前記複数のロッドに均等に分配し、前記複数のロッドを互いに等しい速度で回転させるトランスミッション機構と、
前記複数のロッドが回転すると前記複数のロッドに沿って互いに近づくように構成された第1および第2の切削ジョーを有する切削部と、
を備
え、
前記複数のロッドは、各々、回転可能であり、2組のねじ山が設けられている、
溶接切削機。
【請求項16】
前記モータおよび前記トランスミッション機構は、
前記切削部が溶接部に接触する前は、前記切削部が前記溶接部に接触した後よりも、高速で前記切削部を動かし、かつ、
前記切削部が前記溶接部に接触すると、前記切削部が前記溶接部を切削する力を増加させる
ように構成されている、
請求項
15に記載の溶接切削機。
【請求項17】
前記トランスミッション機構は、遊星歯車とチェーン/ホイール機構とを備えている、
請求項
15または
16に記載の溶接切削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール溶接部の切削に特に適した溶接切削機であって、第1の切削ジョー部および第2の切削ジョー部と、前記第2の切削ジョー部に固定的に取り付けられたベースフレームと、動力ユニットと、トランスミッション機構と、を備え、前記動力ユニットが、前記第1の切削ジョー部を動かすように前記トランスミッション機構に接続され、また、接続部材が、前記第1の切削ジョー部が前記第2の切削ジョー部に対して案内されて動くことを可能にするように配置されている、溶接切削機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道建設時において、また、補修時においても、レール部品は、コヒーレントな溶接構造となるように溶接される。溶接された場合、レール表面の外側に溶接継手がはみ出る。溶接継手のこのような余剰部分は、スラグを多少含み、部分的にスラグを除去するとともに表面を滑らかにするために、溶接継手のはみ出た部分は、特殊な切削機で切削される。研削のような他の選択肢も利用可能であるが、それは非常に時間がかかるため、溶接切削機はますます参入を得ている。特許文献1から、多くの欠点(例えば、十分な力を供給できないこと)を呈する設計を有する古い溶接切削機が知られている。
【0003】
今日の溶接切削機械は、例えば、特許文献2、特許文献3、および特許文献4から知られているように、複雑で、重い。1つの理由は、既知の機械はほとんどが油圧を使用して溶接ストリング(weld string)の余剰部分を切削するジョーを駆動することである。油圧にはいくつかの欠点があるが、とりわけ、油圧オイルは環境的に問題であるのみならず、油圧は溶接切削機も重くする。したがって、一般的に、既知の溶接切削機は、一人で取り扱うには重すぎる。
【0004】
また、既知の溶接切削機は、比較的高価であり且つ交換も比較的複雑である切削ジョーを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】英国特許第456326号明細書
【文献】米国特許第4175897号明細書
【文献】英国特許第2316349号明細書
【文献】欧州特許第0119820号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、改良した溶接切削機および改良した溶接部切削方法を提供することによって、上述した問題に対する解決策を提供することである。
【0007】
本発明に係る目的は、請求項1に記載の溶接切削機によって達成される。また、この目的は、請求項12に記載の方法によっても達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0008】
本発明のおかげで、従来技術の機械よりもかなり軽量であり、一人で機械の持ち運びが可能となる溶接切削機が提供される。また、本発明は、基本原理において、切削ジョーの機械的駆動を完全に利用することができ、これにより、従来技術の機械と比較して環境的な利点が提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、従来技術と比較してより費用効率の高い解決策を提供しうる溶接切削ジョーに対して改善した設計および改善した方法を提供することによって、切削ジョーに関する解決策が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下、例示の目的のために本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより詳しく説明する。
【0011】
【
図1】レール構造に関連した溶接部を切削するために本発明と共に使用されうる機械の好ましい一実施形態の斜視図
【
図2】本発明と共に使用されうる機械の好ましい一実施形態のトランスミッションの第1の部分の好ましい一実施形態の斜視図
【
図3】本発明と共に使用されうる機械の好ましい一実施形態のトランスミッションの第2の部分の好ましい一実施形態の斜視図
【
図4】本発明と共に使用されうる機械の好ましい一実施形態のトランスミッションの第2の部分の好ましい一実施形態の斜視図
【
図5】本発明と共に使用されうる調整案内装置の好ましい一実施形態の概略側面図
【
図6】本発明による摩耗部の好ましい一実施形態の正面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、切削ジョー部4、5を備える溶接切削機1であって、既知の機械よりも軽い機械に関する。
図1には、本発明と共に使用されうる例示的な溶接機1の斜視図が示され、
図2には、例示的なトランスミッション機構3の出力部32の斜視図が示されている。
【0013】
本発明による好ましい溶接切削機1では、比較的小さな高速電気モータ2が、所望のトランスミッションを提供するのに適したトランスミッション機構3を作動させる。このトランスミッション機構3は、2つの部分を備える。一方では、モータ2の出力軸312によって駆動される遊星歯車31(好ましくは、
図3および
図4に示す配置を含む)ならびに遊星歯車31からの出力342によって駆動されるチェーン/ホイール機構32(
図2参照)である。2つの切削ジョー部4、5(第1のが4、第2のが5)は、当該ジョー部4、5の相対移動(本機械が使用されるレール部品の伸張Cと同じ動きである)の方向に対して横方向に延びる中心面Mを有するギャップの各側に整列される。
【0014】
少なくとも1つの切削ジョー部4、5は、駆動ロッド6によって移動可能に配置され、例えば、第1の切削ジョー部4が、第2の固定ジョー部5に対して移動可能とされている。第1の切削ジョー部4は、可動支持体40、41、42、43を含み、当該可動支持体は、第1の一組の固定ねじ切りブッシング48が横支持板の貫通孔49に沿って裏側に取り付けられた横可動支持板40を有する。各ねじ切りブッシング48は、駆動ロッド6の第1の端部62で第1のねじ63と相互作用する。複数(好ましくは4つ)の駆動ロッド6が、並列に配置されている。
【0015】
チェーン/ホイール機構は、減速ギア31(好ましくは中央にある)からの出力トルクを分割して少なくとも2つのロッド6を同期駆動するための、好ましい分割伝達装置32であり、前記少なくとも2つのロッド6は、中心線Cに沿って平行に伸張し且つ中心線Cから等距離に配置されている。さまざまなトランスミッション(例えば、コグホイール列やベルト式トランスミッションなど)を使用して基本的に同じ機能を達成しうることは当業者にとって明らかであるが、チェーン/ホイール機構は追加の利点を提供しうる。
【0016】
第2のジョー部5は、ベースフレーム500に対して固定され、当該ベースフレームは、好ましくは、第1のジョー部4に対する支持体と同じ設計を有する固定支持体を含み、例えば、横固定支持板51を含む。駆動ロッド6は、固定ジョー部5の固定横支持板51の機械貫通孔58に沿って伸張し、さらに距離50を経て、それから第2の端部60がトランスミッション機構3に入る。第2のジョー部5の横支持板51には第2の一組の固定ねじ切りブッシング52が取り付けられている。固定ねじ切りブッシング52は、第1のねじ63から少し離れてある第2のねじ64と相互作用する。ねじ63、64の方向は、互いに反対である。結果として、駆動ロッド6が回転すると、駆動ロッド6は、第2のジョー部5の固定横支持板51に対して所望の方向に移動し、同時に第1の切削ジョー部4を同じ方向に移動させることになるため、回転方向に応じて前記ギャップが増減する。
【0017】
また、ベースフレーム500は、トランスミッション機構3の固定ハウジング30、35、36、37を含む、つまり、第2の支持体および固定ハウジング30、35、36、37は、互いに固定的に取り付けられている。チェーン/ホイール機構32のハウジング内には、各駆動ロッド6の第2の端部60と係合する4つの駆動部材61があり、各駆動ロッド6は、好ましくは形状固定(form-locking)成形部65(例えば、六角形のインターフィット)によって、トルクをチェーン/ホイール機構32から駆動ロッド6へ伝達するように配置されている。
【0018】
遊星歯車31からの出力軸319は、チェーン/ホイール機構32の固定ハウジング30、35、37内の中心面(レールの伸張予定ラインCを含む)に沿って配置されている。固定ハウジング30、35、37は、第1の横壁30が、トランスミッション機構3のベアリング/部品を支持して、例えば、第1の支持構造301が、前記第1の横壁30の内側に取り付けられたモータ2を支持して、配置されている。また、駆動ロッド6の駆動部材61を支持する複数の第2の支持構造302がある。
【0019】
駆動部材61は、好ましくは、ロッド6が当該駆動部材の中で前後に摺動することを可能にする。これは、好ましくは、比較的硬い材料(例えば、スチール、これは好ましくは溶接可能でもある)の外側部分61Bと、比較的軟らかい材料(例えば、黄銅)の内側部分61Aとを含む駆動部材61を使用することによって達成される。これにより、駆動ロッド6の形状固定成形部65が、駆動部材61に対して低摩擦で摺動することができるようになり、また、高強度(例えば、スチール)チェーンホイール326が、駆動部材61の外周に溶接されることが可能になる。
【0020】
遊星歯車31の出力342は、シャフト319(
図8参照)を駆動し、当該シャフト319は、例えばスプラインによってシャフト319に固定された2つの中央チェーンホイール320を有する。中央チェーンホイール320A、320Bは、それぞれ、1つの第1チェーン321を駆動する。1つの第1のチェーン321Aは、第1の中央チェーンホイール320Aによって駆動され、当該第1の中央チェーンホイール320Aは、ハウジング30、35、37の第1の側で第1の出力チェーンホイール610を駆動する。第2の中央チェーンホイール320Bは、第2の第1のチェーン321Bを駆動し、当該第2の第1のチェーン321Bは、ハウジング325の反対側で第2の出力チェーンホイール610を駆動する。この設計は、垂直中心面に対して対称であり、これにより、バランスのとれた反力が提供される。以下、片側についてのみを説明する。出力チェーンホイール610は、駆動ロッド6の1つを駆動し、また、同軸の伝達チェーンホイール630も駆動する。当該伝達チェーンホイール630は、駆動部材61にも固定されている。伝達チェーンホイール630は、次に第2のチェーン323を介して、第2の出力チェーンホイール631を駆動する。第2の出力チェーンホイール631は、この側の第2の駆動ロッド6の駆動部材61に取り付けられている。これにより、チェーン/ホイール機構32は、出力回転トルクを、第2の端部60に連結された(トルク伝達用)駆動部材61に伝達することができ、これにより、駆動ロッド6を同期して回転させ、部分的に駆動ロッド6自体の動きによって固定ねじ切りブッシング52を介して、また、部分的に可動ジョー部4の動きによってブッシング48を介して、可動ジョー部4を直線的に動かすことができる。
【0021】
図3および
図4では、遊星歯車31の設計が、より詳しく示されている。モータ2および遊星歯車31は、固定ハウジング30、35、37の両側に取り付けられている。好ましくは、遊星歯車31は、ハウジングの外側プレート37の外側に取り付けられ、一方、モータ2は、内側横壁30の外側に取り付けられている。したがって、モータ2の出力軸312は、ハウジングを貫通する、好ましくは、2つの中央チェーンホイール320を担持する出力軸319の中央通路313を通過することになる。
【0022】
モータ出力軸312の外端部には、遊星アセンブリ350の遊星ホイール351の内側にある歯(dent)353と噛み合う太陽ホイール314を形成する歯がある。遊星アセンブリ350は、遊星キャリア352に対称的に取り付けられた3つの円形の遊星ホイール351を含み、遊星キャリア352は、支持/ベアリング(図示せず)を提供する中央カラー354を有する。したがって、遊星キャリア352は、遊星ホイール351と共に回転しうる。遊星ホイール351は、自身の外側で、それぞれ、固定リングホイール(図示せず)の歯と噛み合うのみならず、回転リングホイール340の歯341とも噛み合っている。回転リングホイール340は、自身の内周で歯342を介して、2つの中央チェーンホイール320を担持するシャフト319(
図8参照)に回転可能に取り付けられていないため、チェーン/ホイール機構32を駆動する。
【0023】
好ましい実施例では、遊星歯車は、ハーモニックギアであり、すなわち、回転リングホイール340および固定リングホイールは、歯数が異なり(例えば、それぞれ51個と48個)、これにより、モータ軸312から回転リングホイール340への回転速度が大幅に低減される。例示的な実施形態では、モータ軸312の歯314の数は、6個であり、各遊星歯車(3つ)は、22個の歯を有する。歯が48個の固定リングホイール(第1の外輪)と歯が51個の回転リングホイール340(第2の外輪)とを組み合わせることにより、1:153のギア比が達成される。すなわち、太陽ホイール314が9回転したとき、各惑星歯車は、1回転(360度)して、回転可能な外輪を1/17回転だけ駆動したことになる。
【0024】
トランスミッション機構3と、遊星歯車31(好ましくは、ハーモニックタイプ)およびチェーン/ホイール機構32との組み合わせのおかげで、信頼できるコンパクトなトルク伝達/回転運動が駆動ロッド6に提供される。
【0025】
電気モータ2の使用は、抵抗が大きくなるほど駆動ロッド6に伝達される速度が低くなる、つまり、抵抗が増大すると、回転速度が低下し、モータ2のトルクが増加して、移動ジョー部4に影響を及ぼす力が増加する点で、駆動ロッド6に対する適応的なトルク/速度が自動的に生成されるという利点をさらに提供しうる。
【0026】
また、溶接切削機1の基本部品を固定するある種のベースフレーム500(つまり、横支持板51、電気モータ2、チェーン/ホイール歯車装置32の固定ハウジング30、35、37、遊星歯車装置31、その他第2のジョー部5に対して少なくとも一方向に固定する必要がある部品を含む固定支持構造)があることが示されている。さらに、ベースフレーム500には、溶接切削機1の持ち運びおよび持ち上げを容易にするためのハンドル7が取り付けられている。チェーン/ホイールギヤハウジングの外側プレート37の外側には、拡張保護装置9があり、当該拡張保護装置9は、外側端部の保護プレート90と、空間を囲む、弾力性のある、使い捨てのゴム膜91とを有する。この保護装置9は、駆動ロッド6が固定ハウジング30/35/37から外に出て、汚れやほこりから保護されて、前記空間に入ることを可能にする。
【0027】
また、
図5に概略的に示すように、各ジョー部4、5には調整案内部材8が配置されうる。ジョー部4、5には、各々、2つのそのような調整案内部材8が配置されている。各調整内部材8は、枢動体83内の通路を通過する、好ましくはねじ810が切られた、調整ロッド81を含む。調整ロッド81は、調整当接部材82を有し、当該調整当接部材82は、好ましくは、枢動体83と相互作用するナットの形をしている。調整部材81の下端部には、案内部材86(ロッドをL字形にする)が取り付けられており、当該案内部材86は、レール600の頭部の下での把持によって、溶接切削機1が切削中にレールに沿って適切に案内されることを守ることを可能にするよう意図されている。各調整ロッド81は、好ましくは各ロッド81の頂部にあるホイール部材87によって、90度回転させることができ、その結果、案内部材86は、レール頭部の下の位置に出入りし(
図5の左側の図を参照)、また、レール600の下で把持しないようにレールと平行に移動することができる(
図5の左側の図を参照)。案内部材86の当接面860と相互作用する当接ジョー表面400は、正しい位置決めを支援する。さらに、各回動体83は、ハンドル84、85を備えて配置されている。ハンドル84、85を動作位置(
図1のハンドル85の位置を参照)から非動作位置(ハンドル84の位置を参照)に枢動させることによって、案内部材86と共に調整部材81が把持位置から非把持位置に移動する。これは、各ジョー部4、5の上側接触面420と各調整当接部材82の下側接触面820との間の枢動体83によるカム作用、つまり、非動作位置における断面寸法Y2よりも動作位置における断面寸法Y1が大きいことによって達成される。この配置のおかげで、溶接切削機1を容易にレール600に着脱して切削作業を行うことができる。
【0028】
作業中、溶接切削機1は、2つのレール部品間の切削対象の溶接部に運ばれる。この運搬は、溶接切削機1を手で、ハンドル7を握って、持ち運ぶことによって容易に行うことができる。損傷を与える危険なしに溶接切削機をでこぼこの地面にも置くことができるようにするために、保護板36を歯車ハウジング30、35、37の底部に配置してもよい。その後、溶接切削機1を、切削対象の溶接部があるレール(図示せず)の上に持ち上げる。このとき、ハンドル84、85は非動作モードにあり、案内部材86はレール600と平行である。溶接切削機1は、溶接部が2つのジョー部4、5の間のギャップに配置されるように、また、好ましくは、溶接部が固定ジョー部5に近接するように、配置される。レールは、ジョー部4、5のギャップ4A、5Bに嵌合し、また、ハウジング30、35、37の逆U形のギャップ38にも嵌合する。
【0029】
電池(図示せず)は、別個に保持することができ、好ましくはハウジング30、35、37の頂部に配置された、電池ホルダ34内に配置される。バッテリは、電気モータ2に電力を供給し、また、例えばハウジング30、35、37の上側に取り付けられた、制御ユニット33にも電力を供給する。また、調整部材8は、まずホイール部材87を回して案内部材86を回転させた後、ハンドル84、85を作動位置に枢動させる、つまり、下方に枢動させることによって、作動する。これで、調整当接部材82は、案内部材86がレール頭部の下に接触し把持するまで回転する。
【0030】
次の段階では、調整当接部材82を回転させて切削中に所望の遊び(例えば、約1mm)を得るようにした後、調整ロッド81を下方に押し下げて再び枢動体83の下部接触面820と接触するようにする。これにより、案内部材86は、今や、レール600の頭部の下の所望の案内位置に位置決めされたことになる。したがって、調整部材86を調整することによって、レールの表面と案内部材86の間に適切なクリアランス(例えば、約1ミリメートル)が設けられる。これで、溶接切削機1は、動作の準備ができている。本機械が始動すると、電気モータ2が回転を始め、それによってこの回転がまず遊星歯車装置31に伝達され、次にチェーン/ホイール歯車32に伝達されて駆動ロッド6を回転させ、それによって可動ジョー部4が切削対象の溶接部に向かって動き始める。好ましくは、少なくとも1:100のギア比を提供するハーモニック遊星歯車と、少なくとも3000rpm、好ましくは約4000~6000rpmで回転する電気モータ2とを使用する。電気モータ2は、抵抗がない第1段階で可動ジョー部4を迅速に動かし、ジョー前端46が溶接部と接触した時に抵抗に遭うとすぐに可動ジョー部4をもっとゆっくり動かし、その後、2つのジョー前端部46、56が互いに近づいて溶接部を切削する。切削は、2つのジョー前端46、56が互いに接触した時に達成される。
【0031】
その後、溶接切削機は、案内部材86がレール前端部と接触しなくなるように、ハンドル84、85を旋回させることによって容易に取り外される。それから、ホイール部材87を容易に回して案内部材86をレール600と平行になるようにしうる。これにより、本機械1をレールから自由に持ち上げることができる。
【0032】
本機械1の上記例示の解決策は、ジョー部4、5をレール面に沿って比較的小さい力で溶接継手に向かって比較的速く動かしうること、および、可動ジョー部4が、他の側から係合する固定ジョー部と共に、溶接継手に係合するとすぐに、速度が低下し、トルク/力が増加して、必要性に適応することを意味する。正しく機能するプロトタイプによって生成される最大出力は、10トンを超え、好ましくは12トンを超える。当該構造のおかげで、重量が約50kgの既知の油圧機械と比較して、重量が約半分の約25kgである機械1を得ることができる。
【0033】
図1に示すように、切削ジョー4、5部は、摩耗部56、46と支持部57、47とにそれぞれ分割されうる。この分割のおかげで、いくつかの利点を得ることができる。第1に、支持部57、47には、より軽くてより安価な材料を使用することができる、つまり、機械全体の重量を軽くすることができる。第2に、摩耗部56、46と支持部57、47の間の結合面を、これらの間で熱膨張が生じうるように設計することができる。これは、熱膨張に関する違いについて妥協する必要なしに、切削に最適な材料で摩耗部56、46を作製しうることを意味する。熱膨張に関する違いは、既知のウェッジ切削機における問題である(つまり、高速で切削すると、ヒートクラックにつながる可能性がある)。第3に、より安価な摩耗部を得ることができる。なぜなら、簡単に交換可能な摩耗部の材料の種類および量は、そのようなものとして切削に関して最適化しうるからである。さらに、好ましい実施形態による摩耗部材と基部の間の結合面(図示せず)を、形状適合によってのみ、つまり、ねじ継手を必要とせずに、非常に迅速且つ容易に変更を加えることができるように、設計することができる。これにより、摩耗部の時間のかかる取り外しおよび固定の必要性がなくなる。
【0034】
図6および
図7には、本発明による摩耗部46の好ましい実施形態が示されている。
図7に記載されているように、摩耗部の幅Wは、比較的小さく、つまり、範囲が10~40mm、より好ましくは25~30mmである。
【0035】
摩耗部56、46および支持部57、47にそれぞれ分割された新規な切削ジョー部4、5を、他の種類の溶接切削機と共に使用しうる、つまり、均一なジョーの代わりに使用しうることは、当業者にとって明らかである。また、もちろん、本機械1をレールに固定するための調整締結装置8であって本機械1の簡単且つ安全な固定および取り外しを可能にする扱いやすいピボット機構83を含むものを、他の溶接切削機と共に使用することも可能である。
【0036】
図8には、本発明による変更されたトランスミッション装置の概略斜視図が示されている。本発明の上記実施形態と比較した主な相違は、この実施形態におけるロッド6は回転せず、固定されていることである。ロッド6を固定状態に保つための例示的な解決策として、
図8は、各対のロッド6の端部60に取り付けられるロック部材67の使用を示す。そこで、右側の対のロッド6には1つのロック部材67があり、また、左側の対のロッド6をロックする全く同じ種類の別のロック部材67がある。ロック機能は、対応する形状(雄/雌またはその逆)を有するロッド6の各ロッド端部60と固体のロック部材67との間で形状を適合させる(例えば、六角形)ことによって達成される。したがって、各ロック部材67は、一対のロッド6のそれぞれの端部60と嵌合する第1および第2のロック部材67A、67Bを有する。ロック部材67a、67bの間には、ロック部材67A、67Bを固定位置に保持する固体67Bがある。したがって、ロック部材67は、どのロッド6についても回転が不可能であることを守る。
【0037】
また、上記のように、ロッドには、切削ジョー部4、5のうちの1つの動きを伝達するために、駆動ねじ64が設けられている。この実施形態では、それは、ロッド6に沿って移動する第2の切削ジョー部5である。この移動は、ベアリング(図示せず)によって第2の切削ジョー部5内に固定的に配置された駆動部材620を回転させることによって達成される。駆動部材620は、好ましくは、摩擦を低くするために、ロッド6の材料とは異なる種類の材料(例えば、黄銅)で作られている。しかし、当業者には、異なる種類の材料を、例えば同じ材料の駆動部材620に使用して、適切な潤滑を使用して所望の基本機能を満たしうることは明らかである。駆動部材620に黄銅を使用することによって、潤滑をなくすことができ、これは、いくつかの態様に関して利点である。駆動部材620は、さまざま適切なトランスミッション機構によって駆動されうる。
【0038】
すでに説明したように、好ましいトランスミッション機構は、中央出力ホイール320からトルクおよび回転を伝達するチェーンギア320、321、323である。
図8に示すように、中央駆動ホイール320をスプラインによって出力軸319に取り付けてトルク/回転を減速ギア31の出力から伝達するようにしている。2つの同一形態のチェーンホイール320A、320Bは、1つのチェーン321A、321Bをそれぞれ駆動し、次に、当該チェーン321A、321Bが、1つの同一形態の第2のチェーンホイール610をそれぞれ駆動する。当該第2のチェーンホイール610は、各対のロッドのうちの第1のロッド6上の第1の駆動部材620にそれぞれ固定的に取り付けられている。その後、前記トルク/回転は、第2のチェーン323によって、各対のロッド6のうちの第2のロッド6にも伝達される。第1の駆動部材620には、入力ホイール610に平行な第3のチェーンホイール630が取り付けられている。第2のチェーン323は、各々、第3のチェーンホイール630に接続され、また、第2の駆動部材621に固定的に取り付けられた第4のチェーンホイール631にも接続されている。したがって、それぞれ同期して回転する4つの駆動部材620、612がある。その結果、駆動部材620、621を回転させることによってロッド6が前後に摺動し、それによってジョー部4、5間のギャップが増減する。この実施形態では、第1のジョー部4が、ロック部材67を有する端部の反対側の一端部で、固定ねじ山63によって、ロッド6に固定的に取り付けられている。ナットは、ねじ山63の上に通すことによって、ロッド6上の支持カラー66と接触して第2のジョー部4をしっかりクランプすることができる。これにより、第1のジョー部4は、ロッド6の一端部に確実に固定、連結される。
【0039】
本発明は、上記の実施形態によって限定されるものではなく、本発明の基本原理から逸脱することなく、複数の態様内で変更可能である。例えば、別個のシャフト319を使用する代わりに、当該シャフトを遊星歯車31および/または駆動ホイール320と一体化してもよいことは明らかである。また、チェーントランスミッションの代わりにコグホイール列を使用すれば、1つの出力部材320だけで十分でありうる。上記の態様のいくつかは、1つ以上の分割出願によるそれら自身の保護の主題になりうること、例えば、別個の摩耗部品の使用が、本発明による溶接切削機に限定されず、他の種類の溶接切削機にも使用されうることが予想される。