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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】組織炎症を検出するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240402BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B5/00 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021533453
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2019084582
(87)【国際公開番号】W WO2020120543
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】18212799.3
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ブールキン,ヤニク パルリアン ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】シャン,カイフェン
(72)【発明者】
【氏名】ライ,マルコ
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03384855(EP,A1)
【文献】特表2018-502677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0249445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00-10/06
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織炎症を検出するための装置であって、
少なくとも1つのセンサから、組織の領域において前記領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す複数のフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を取得し、
前記取得された複数のPPG信号を処理して、前記複数のPPG信号の各々の振幅及び位相を決定し、
前記複数のPPG信号のうち少なくとも1つの前記決定された振幅が閾値振幅より大きく、且つ、閾値位相シフトより大きい位相シフトが、前記複数のPPG信号のうち少なくとも1つの前記決定された位相において検出される場合に組織炎症を検出する
ように構成されたプロセッサを含む装置。
【請求項2】
前記複数のPPG信号の各々の振幅は、前記PPG信号の直流成分によって正規化された前記PPG信号の振幅である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記閾値振幅は、
0.2から2の範囲の振幅、又は
0.8から2の範囲の振幅、又は
1.3から2の範囲の振幅、又は
1.5から2の範囲の振幅、
である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記閾値位相シフトは、
45度から135度の範囲の位相シフト、又は
50度から100度の範囲の位相シフト、又は
55度から90度の範囲の位相シフト、
である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップを生成するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記決定された振幅が閾値振幅より大きい前記決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップを生成するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す位相マップを生成するように構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記決定された位相において検出された位相シフトが閾値位相シフトより大きい前記決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す位相マップを生成するように構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記生成された振幅マップと前記生成された位相マップとを比較し、
前記比較に基づき、前記組織の領域における前記検出された組織炎症の位置を決定する
ように構成されている、請求項5を引用する場合の請求項7に記載の装置、又は、請求項6を引用する場合の請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記組織の領域における検出された組織炎症の決定された位置を表す組織炎症マップを生成するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記組織の領域の画像を取得し、
前記取得された組織の領域の画像上で、前記生成された組織炎症マップからの前記検出された組織炎症の決定された位置を示す
ように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
組織炎症を検出するための装置の作動方法であって、前記装置のプロセッサが、
少なくとも1つのセンサから、組織の領域において前記領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す複数のPPG信号を取得するステップと、
前記取得された複数のPPG信号を処理して、前記複数のPPG信号の各々の振幅及び位相を決定するステップと、
前記複数のPPG信号のうち少なくとも1つの前記決定された振幅が閾値振幅より大きく、且つ、閾値位相シフトより大きい位相シフトが、前記複数のPPG信号のうち少なくとも1つの前記決定された位相において検出される場合に組織炎症を検出するステップと、
を含む作動方法。
【請求項13】
コンピュータ読み取り可能コードを有するコンピュータプログラムであって、前記コンピュータ読み取り可能コードは、コンピュータ又はプロセッサによって実行されると、前記コンピュータ又はプロセッサに請求項12に記載の作動方法を行わせるように構成されている、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織炎症を検出するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織炎症は、組織の外観及び健康への有用な洞察を提供することができる。これは、病原体、損傷細胞、又は刺激物質等の有害な刺激に対する身体組織の複雑な生物学的反応の一部であり、免疫細胞、血管、及び分子メディエーターを含む防御反応である。
【0003】
組織炎症の一例は面皰である。面皰は、皮膚のうち小さな炎症を起こした上昇部分であり、過剰な油が皮膚の孔に閉じこめられ、炎症及び感染を引き起こした結果である。面皰は、皮脂腺から皮膚まで皮脂を運ぶ皮脂管の位置において生じる。思春期の開始時におけるホルモン変化によって駆り立てられ、皮脂腺はより多くの皮脂を産生し始める。この油性物質は、プロピオニバクテリウム・アクネスのような皮膚細菌に対する豊富な食物源であるため、皮脂管にこれらの細菌が集合するようになる。それらの消費性の存在は、より高い濃度の脂質過酸化物及び遊離脂肪酸によって特徴づけられる変化する皮脂組成をもたらす。これらのいくらか侵襲性の作用物質及びプロピオニバクテリウム・アクネス細菌自体が、毛胞周囲領域における炎症前過程の引き金となる。
【0004】
一般的に、子供は、12歳になる前に面皰を有することはない。しかし、思春期の開始後、ティーンエイジャーの85%以上に面皰が発生し、頻繁な吹き出物が、一般的に25歳前後まで続く。実際、この年齢を過ぎても、人々は依然として面皰を有することがある。面皰は、多くの人々に影響を与える皮膚の状態であるざ瘡の臨床症状である。ざ瘡は、丘疹及び膿疱から成り、これらはいずれも炎症を起こした上昇した病変であり、膿疱は目に見える量の膿を有しているが丘疹は有していないという意味でのみ異なっている。発症したざ瘡を決定するための面皰の早期検出が有用である。
【0005】
実際、組織炎症の早期検出は、一般的に有用であり得る。組織炎症は、局所的な増加(又は増大)した灌流の領域によって特徴づけられる。初期の面皰は、(増加した灌流を引き起こす)炎症から始まり、これは、ユーザが面皰に容易に気付くようになる前でさえ生じている。局所的な増大した灌流の領域は、レーザドップラー灌流イメージング又はレーザスペックルコントラスト分析等のレーザ散乱技術によって検出することができる。引用文献1が、スペクトルイメージング技術を使用して、画像化された皮膚の紅斑マップを画像化された皮膚の可視光画像と比較し、出現した病変あたりの任意の領域を特定することを開示している。
【0006】
しかし、組織炎症を検出するための既存の技術は、コストがかかり、動きのロバスト性(motion robustness)が制限され、既製品の構成要素を用いて商業化することが困難である。また、既存の技術において、非炎症性組織は、組織が、例えば刺青、化粧、くも状静脈を含む等、マーキングされる場合に、炎症性組織として誤って分類される可能性がある。そのようなものとして、既存の技術は、炎症性組織を検出することにおいて正確さを欠いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2007/103795号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、既存の技術による制限は、非炎症性組織が炎症性組織として誤って分類される可能性があることであり、従って、既存の技術は、炎症性組織を検出することにおいて正確さを欠いている。従って、この制限に取り組むための改善には価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、第1の態様によると、組織炎症を検出するための装置が提供される。当該装置は、少なくとも1つのセンサから、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す複数のフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を取得するように構成されたプロセッサを含む。プロセッサは、取得された複数のPPG信号を処理して、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相を決定し、決定された複数のPPG信号の各々の振幅及び位相に基づき組織炎症を検出するようにも構成される。
【0010】
一部の実施形態において、プロセッサは、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された振幅が閾値振幅より大きい場合に組織炎症を検出するように構成されてもよい。一部の実施形態において、複数のPPG信号の各々の振幅は、PPG信号の直流成分によって正規化されたPPG信号の振幅であってもよい。
【0011】
一部の実施形態において、プロセッサは、位相シフトが、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された位相において検出される場合に組織炎症を検出するように構成されてもよい。一部の実施形態において、プロセッサは、検出された位相シフトが閾値位相シフトより大きい場合に組織炎症を検出するように構成されてもよい。一部の実施形態において、閾値位相シフトは、45度から135度の範囲の位相シフトであってもよい。
【0012】
一部の実施形態において、プロセッサは、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップを生成するように構成されてもよい。一部の実施形態において、プロセッサは、決定された振幅が閾値振幅より大きい決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップを生成するように構成されてもよい。
【0013】
一部の実施形態において、プロセッサは、決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す位相マップを生成するように構成されてもよい。一部の実施形態において、プロセッサは、決定された位相において検出された位相シフトが閾値位相シフトより大きい決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す位相マップを生成するように構成されてもよい。
【0014】
一部の実施形態において、プロセッサは、生成された振幅マップと生成された位相マップとを比較し、比較に基づき、組織の領域における検出された組織炎症の位置を決定するように構成されてもよい。
【0015】
一部の実施形態において、プロセッサは、組織の領域における検出された組織炎症の決定された位置を表す組織炎症マップを生成するように構成されてもよい。一部の実施形態において、プロセッサは、組織の領域の画像を取得し、取得された組織の領域の画像上で、生成された組織炎症マップからの検出された組織炎症の決定された位置を示すように構成されてもよい。
【0016】
第2の態様によると、組織炎症を検出する方法が提供される。当該方法は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す複数のPPG信号を取得するステップと、取得された複数のPPG信号を処理して、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相を決定するステップとを含む。当該方法は、決定された複数のPPG信号の各々の振幅及び位相に基づき組織炎症を検出するステップも含む。
【0017】
第3の態様によると、コンピュータ読み取り可能媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトが提供される。コンピュータ読み取り可能媒体は、その中で具現化されたコンピュータ読み取り可能コードを有する。コンピュータ読み取り可能コードは、適したコンピュータ又はプロセッサにより実行されると、コンピュータ又はプロセッサに上記の方法を行わせるように構成される。
【0018】
上記の態様及び実施形態によると、既存の技術による制限が取り組まれている。特に、上記の態様及び実施形態によると、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相の双方が、組織炎症の検出に使用される。これは、(例えば、組織が、刺青、化粧、くも状静脈を含む等、マーキングされている場合の)非炎症性組織を炎症性組織として誤って分類することを防ぎ、従って、炎症性組織をより正確に検出することができる。従って、組織炎症を検出するための改善された装置及び方法が記載される。
【0019】
これら及び他の態様は、以下に記載される1つ又は複数の実施形態から明らかになり、以下に記載される1つ又は複数の実施形態を参照して解明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
次に、例証的な実施形態が、単なる例として、以下の図面を参照して記載される。
図1】一実施形態による装置の概略図である。
図2】一実施形態による方法を例示した流れ図である。
図3】一実施形態による方法を例示したブロック図である。
図4】振幅マップ及び位相マップを例示した図である。
図5】振幅マップ及び位相マップを例示した図である。
図6】振幅マップ及び位相マップを例示した図である。
図7】振幅マップ及び位相マップを例示した図である。
図8】振幅マップ及び位相マップを例示した図である。
図9】振幅マップ及び位相マップを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、組織炎症を検出するための改善された装置及び方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、本明細書において記載される装置は、組織炎症を検出するための専用装置(又はデバイス)、又は、(例えば、組織炎症を検出するためのアプリケーション若しくは「アプリ」を実行する)スマートフォン若しくはタブレット等のモバイルデバイスであってもよい。
【0022】
本明細書において言及される組織は、いかなるタイプの組織を含んでもよい。例えば、組織は、皮膚等の上皮組織(例えば、皮膚の表皮、皮膚の細胞、皮膚内の毛包、若しくは類似のもの等)、又は中空臓器の上皮(例えば、消化管臓器若しくは任意の他の中空臓器の上皮等)、筋組織(例えば、心筋組織、骨格筋、若しくは任意の他の筋組織等)、結合組織(例えば、脂肪、骨、腱、若しくは任意の他の結合組織等)、神経組織(例えば、脳、脊髄、神経、若しくは任意の他の神経組織)、血管、又は任意の他の組織、又は任意の組織の組合せを含んでもよい。
【0023】
一般的に、組織炎症は、(例えば、局所的な)組織の炎症である。組織炎症は、病原体、損傷細胞、刺激物質等の有害な刺激に対する組織の生物学的反応であり得る。組織炎症によって、組織は赤くなる、腫れる、及び/又は熱くなり得る。組織炎症の様々な原因があり、例として、膿疱(又は面皰)、丘疹、嚢胞、小結節、切り傷等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
図1は、一実施形態による組織炎症を検出するための装置100を例示している。図1において例示されているように、装置100は、プロセッサ102を含む。簡単に説明すると、プロセッサ102は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す複数のフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を取得するように構成される。本明細書において言及される組織の領域はまた、組織の関心領域(ROI)と呼ばれてもよい。プロセッサ102は、少なくとも1つのセンサ104から複数のPPG信号を取得するように構成される。プロセッサ102は、取得された複数のPPG信号を処理して、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相を決定するようにも構成される。プロセッサ102は、決定された複数のPPG信号の各々の振幅及び位相に基づき組織炎症を検出するように構成される。
【0025】
プロセッサ102は、本明細書において記載される様々な機能を行うために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の方法で実装することができる。特定の実装形態において、プロセッサ102は、複数のソフトウェア及び/又はハードウェアモジュールを含んでもよく、各モジュールは、本明細書において記載される方法の個々又は複数のステップを行うように構成されるか又はそれらを行うためのものである。プロセッサ102は、(1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のマルチコアプロセッサ、及び/又は1つ以上のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等の)1つ以上のプロセッサ、1つ以上の処理装置、及び/又は(1つ以上のマイクロコントローラ等の)1つ以上のコントローラを含んでもよく、これらは、(例えば、ソフトウェア又はコンピュータプログラムコードを使用して)本明細書において記載される様々な機能を行うように構成又はプログラムされてもよい。プロセッサ102は、一部の機能を行うための専用ハードウェア(例えば、増幅器、プリアンプ、アナログ-デジタル変換器(ADCs)、及び/又はデジタル-アナログ変換器(DACs)等)と、他の機能を行うためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、DSP、及び関連回路等)との組み合わせとして実装されてもよい。
【0026】
図1において例示されているように、一部の実施形態において、装置100は、少なくとも1つのセンサ104を含んでもよく、このセンサ104から複数のPPG信号のうち1つ以上を取得するようにプロセッサ102を構成することができる。代替的又は追加的に、そこから複数のPPG信号のうち1つ以上を取得するようにプロセッサ102を構成することができる少なくとも1つのセンサ104は、装置100の外部に(例えば、装置100とは別に又は装置100から離れたところに)あってもよい。本明細書において言及される少なくとも1つのセンサ104は、組織の領域から、領域内の複数のそれぞれの位置において複数のPPG信号を得るように構成される。従って、少なくとも1つのセンサ104はまた、少なくとも1つのPPGセンサと呼ばれてもよい。少なくとも1つのセンサ104は、単一の(例えば、特定の)波長の光又は複数の波長の光で複数のPPG信号を得るように構成することができる。少なくとも1つのセンサ104は、単一のセンサ又は複数の(例えば、一連の)センサであってもよい。
【0027】
少なくとも1つのセンサ104の例として、(組織の領域を照射し、組織の領域内の光吸収の変化を測定して、複数のPPG信号を取得するように構成することができる)パルスオキシメータ、(組織の色の変化を測定して複数のPPG信号を取得するように構成することができる)カメラ、又はPPG信号を得るのに適した任意の他のセンサ若しくはセンサの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、複数のPPG信号を取得するのに適した種々のセンサ、及び、それらのセンサが複数のPPG信号を取得するために動作するように構成され得る様式を認識することになる。一部の実施形態において、少なくとも1つのセンサ104は、組織からある距離に(例えば、組織から離れたところに)置かれてもよい。従って、少なくとも1つのセンサ104は、一部の実施形態による非接触センサであり得る。従って、これらの実施形態において取得される複数のPPG信号はまた、複数の非接触PPG信号と呼ばれてもよい。代替的又は追加的に、一部の実施形態において、少なくとも1つのセンサ104は、組織に接触して複数のPPG信号を得るように置かれてもよい。
【0028】
図1において例示されているように、一部の実施形態において、装置100は、少なくとも1つのメモリ106を含んでもよい。代替的又は追加的に、少なくとも1つのメモリ106は、装置100の外部に(例えば、装置100とは別に又は装置100から離れたところに)あってもよい。例えば、病院のデータベースが、少なくとも1つのメモリ106を含んでもよく、少なくとも1つのメモリ106は、クラウドコンピューティングリソース又は類似のものであってもよい。装置100のプロセッサ102は、少なくとも1つのメモリ106と通信及び/又は接続するように構成することができる。メモリ106は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能なPROM(EPROM)、及び電気的に消去可能なPROM(EEPROM)等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリを含む、キャッシュメモリ又はシステムメモリ等、任意のタイプの非一時的な機械読み取り可能媒体を含んでもよい。一部の実施形態において、少なくとも1つのメモリ106は、装置100を本明細書において記載される様式で動作させるように装置100のプロセッサ102によって実行され得るプログラムコードを格納するように構成することができる。
【0029】
代替的又は追加的に、一部の実施形態において、少なくとも1つのメモリ106は、本明細書において記載される方法によって必要とされるか又は本明細書において記載される方法から生じる情報を格納するように構成することができる。例えば、一部の実施形態において、少なくとも1つのメモリ106は、取得された複数のPPG信号、複数のPPG信号のうち1つ以上の決定された振幅、複数のPPG信号のうち1つ以上の決定された位相、検出された組織炎症、若しくは任意の他の情報、又は、本明細書において記載される方法によって必要とされるか若しくは本明細書において記載される方法から生じる情報の任意の組合せのうち任意の1つ以上を格納するように構成されてもよい。一部の実施形態において、装置100のプロセッサ102は、少なくとも1つのメモリ106を制御して本明細書において記載される方法によって必要とされるか又は本明細書において記載される方法から生じる情報を格納するように構成することができる。
【0030】
図1において例示されているように、一部の実施形態において、装置100は、ユーザインターフェース108を含んでもよい。代替的又は追加的に、ユーザインターフェース108は、装置100の外部に(例えば、装置100とは別に又は装置100から離れたところに)あってもよい。装置100のプロセッサ102は、ユーザインターフェース108と通信及び/又は接続するように構成されてもよい。一部の実施形態において、装置100のプロセッサ102は、ユーザインターフェース108を制御して本明細書において記載される様式で動作するように構成することができる。
【0031】
ユーザインターフェース108は、本明細書において記載される方法によって必要とされるか又は本明細書において記載される方法から生じる情報をレンダリング(又は、出力、表示、若しくは提供)するように構成することができる。例えば、一部の実施形態において、ユーザインターフェース108は、取得された複数のPPG信号、複数のPPG信号のうち1つ以上の決定された振幅、複数のPPG信号のうち1つ以上の決定された位相、検出された組織炎症、若しくは任意の他の情報、又は、本明細書において記載される方法によって必要とされるか若しくは本明細書において記載される方法から生じる情報の任意の組合せのうち1つ以上をレンダリング(又は、出力、表示、若しくは提供)するように構成されてもよい。代替的又は追加的に、ユーザインターフェース108は、ユーザ入力を受けるように構成することができる。例えば、ユーザインターフェース108は、ユーザが情報又は命令を手動で入力する、装置100と対話する、及び/又は装置100を制御するのを可能にし得る。従って、ユーザインターフェース108は、情報のレンダリング(又は、出力、表示、若しくは提供)を可能にし、代替的又は追加的に、ユーザがユーザ入力を提供するのを可能にする任意のユーザインターフェースであってもよい。
【0032】
例えば、ユーザインターフェース108は、1つ以上のスイッチ、1つ以上のボタン、キーパッド、キーボード、マウス、(例えば、タブレット、スマートフォン、又は任意の他のスマートデバイス等のスマートデバイス上の)タッチスクリーン若しくはアプリケーション、ディスプレイ若しくは表示画面、タッチスクリーン等のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)若しくは任意の他のビジュアルコンポーネント、1つ以上のスピーカ、1つ以上のマイクロホン若しくは任意の他のオーディオコンポーネント、1つ以上の(発光ダイオードLEDライト等の)ライト、(振動機能、又は任意の他の触覚フィードバックコンポーネント等の)触知若しくは触覚フィードバックを提供するためのコンポーネント、(拡張現実グラス、又は任意の他の拡張現実デバイス等の)拡張現実デバイス、(スマートミラー、タブレット、スマートフォン、スマートウオッチ、又は任意の他のスマートデバイス等の)スマートデバイス、又は、任意の他のユーザインターフェース若しくはユーザインターフェースの組み合わせを含んでもよい。一部の実施形態において、情報をレンダリングするように制御されるユーザインターフェースは、ユーザがユーザ入力を提供するのを可能にするものと同じユーザインターフェースであってもよい。
【0033】
図1において例示されているように、一部の実施形態において、装置100は、通信インターフェース(又は通信回路)110を含んでもよい。代替的又は追加的に、通信インターフェース110は、装置100の外部に(例えば、装置100とは別に又は装置100から離れたところに)あってもよい。通信インターフェース110は、装置100又は装置100の構成要素が、本明細書において記載されるもののうちいずれか等、1つ以上の他の構成要素(例えば、1つ以上のセンサ、インターフェース、装置、プロセッサ、又はメモリ等)と通信及び/又は接続するのを可能にするためのものであり得る。例えば、通信インターフェース110は、装置100のプロセッサ102が、上述の少なくとも1つのセンサ104、上述の少なくとも1つのメモリ106、及び上述のユーザインターフェース108のうち任意の1つ以上と通信及び/又は接続するのを可能にするためのものであり得る。
【0034】
通信インターフェース110は、装置100又は装置100の構成要素が、任意の適した方法で通信及び/又は接続するのを可能にし得る。例えば、通信インターフェース110は、装置100又は装置100の構成要素が、無線で、有線接続を介して、又は任意の他の通信(又はデータ転送)機構を介して通信及び/又は接続するのを可能にし得る。一部の無線の実施形態では、例えば、通信インターフェース110は、装置100又は装置100の構成要素が、無線周波数(RF)、Bluetooth(登録商標)、又は任意の他の無線通信技術を使用して通信及び/又は接続するのを可能にし得る。
【0035】
図2は、一実施形態による組織炎症を検出する方法200を例示している。より具体的には、図2は、組織炎症を検出するための上述した装置100の作動方法200を例示している。方法200は、コンピュータ実装方法である。上記のように、装置100は、プロセッサ102を含む。図2において例示されている方法200は、一般的に、装置100のプロセッサ102によって又はその制御下で行うことができる。
【0036】
図2を参照すると、図2のブロック202において、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す複数のPPG信号が取得される。より具体的には、装置100のプロセッサ102は、少なくとも1つのセンサ104から複数のPPG信号を取得する。
【0037】
組織の領域において検出される光は、組織の領域における色を示すことができ、例えば、組織の領域において検出される光の変化は、組織の領域における色の変化を示すことができる。組織の領域における色の変化は、脈圧によって引き起こされる。従って、複数のPPG信号はまた、複数のパルス信号と呼ばれてもよい。一般的に、各PPG信号は、直流(DC)成分及び交流(AC)成分を含む。各PPG信号のDC成分は、組織の領域内のそれぞれの位置における組織のバルク吸収に起因し得る。各PPG信号のAC成分は、脈圧によって引き起こされる、組織の領域内のそれぞれの位置における血液量の変動に起因し得る。
【0038】
図2に戻ると、ブロック204において、取得された複数のPPG信号は、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相を決定するように処理される。より具体的には、装置100のプロセッサ102が、取得された複数のPPG信号を処理して、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相を決定する。複数のPPG信号は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示すため、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相は、領域内の複数のそれぞれの位置で効果的に決定される。
【0039】
図2のブロック206において、組織炎症が、決定された複数のPPG信号の各々の振幅及び位相に基づき検出される。より具体的には、装置100のプロセッサ102が、決定された複数のPPG信号の各々の振幅及び位相に基づき組織炎症を検出する。従って、組織炎症の検出は、振幅及び位相の情報を組み合わせることによって行われる。
【0040】
一部の実施形態において、プロセッサ102は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された振幅が閾値振幅より大きい場合に組織炎症を検出するように構成されてもよい。閾値振幅は、対象者及び/又は条件に応じて異なるように設定することができる。従って、一部の実施形態において、閾値振幅は較正を通して決定されてもよく、ここで、最適な閾値振幅を決定するために、試験が様々な対象者に対して及び/又は様々な条件下で行われる。
【0041】
一部の実施形態において、複数のPPG信号の各々の振幅は、正規化された振幅であってもよい。例えば、複数のPPG信号の各々の振幅は、PPG信号の直流(DC)成分によって正規化される(生の)PPG信号の振幅であってもよい。これらの実施形態のうち一部において、閾値振幅は、0.2から2の範囲の振幅、例えば0.3から1.9の範囲の振幅、例えば0.4から1.8の範囲の振幅、例えば0.5から1.7の範囲の振幅、例えば0.6から1.6の範囲の振幅、例えば0.7から1.5の範囲の振幅、例えば0.8から1.4の範囲の振幅、例えば0.9から1.3の範囲の振幅、例えば1.0から1.2の範囲の振幅であってもよい。一部の実施形態において、閾値振幅は、0.8から2の範囲の振幅、例えば0.9から1.9の範囲の振幅、例えば1から1.8の範囲の振幅、例えば1.1から1.7の範囲の振幅、例えば1.2から1.6の範囲の振幅、例えば1.3から1.5の範囲の振幅であってもよい。一部の実施形態において、閾値振幅は、1.3から2の範囲の振幅、例えば1.35から1.95の範囲の振幅、例えば1.4から1.9の範囲の振幅、例えば1.45から1.85の範囲の振幅、例えば1.5から1.8の範囲の振幅、例えば1.55から1.75の範囲の振幅、例えば1.6から1.7の範囲の振幅であってもよい。一部の実施形態において、閾値振幅は、1.5から2の範囲の振幅、例えば1.55から1.95の範囲の振幅、例えば1.6から1.9の範囲の振幅、例えば1.65から1.85の範囲の振幅、例えば1.7から1.8の範囲の振幅であってもよい。
【0042】
他の実施形態において、プロセッサ102は、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップヒストグラムを生成するように構成されてもよく、閾値振幅は、振幅マップヒストグラムの40から100%の範囲の振幅であってもよい。
【0043】
代替的又は追加的に、一部の実施形態において、プロセッサ102は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された位相において位相シフトが検出される場合に組織炎症を検出するように構成されてもよい。従って、プロセッサ102は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された振幅が閾値振幅より大きい場合に組織炎症を検出するように構成することができるか、又はプロセッサ102は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された位相において位相シフトが検出される場合に組織炎症を検出するように構成することができるか、又はプロセッサ102は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された振幅が閾値振幅より大きく、且つ、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された位相において位相シフトが検出される場合に組織炎症を検出するように構成することができる。一部の実施形態において、この後者の検出は、(例えば、「AND」論理ゲート等の)論理ゲート又は(例えば、組織炎症検出について収集されたデータセットから最適な重み係数を学習することができる等)より複雑なアルゴリズムを使用して達成することができる。
【0044】
位相シフトが検出される一部の実施形態において、プロセッサ102は、検出された位相シフトが閾値位相シフトより大きい場合に組織炎症を検出するように構成されてもよい。一部の実施形態において、閾値位相シフトは、45から135度の範囲の位相シフト、例えば50から130度の範囲の位相シフト、例えば55から125度の範囲の位相シフト、例えば60から120度の範囲の位相シフト、例えば65から115度の範囲の位相シフト、例えば70から110度の範囲の位相シフト、例えば75から105度の範囲の位相シフト、例えば80から100度の範囲の位相シフト、例えば85から95度の範囲の位相シフトであってもよい。一部の実施形態において、閾値位相シフトは、50から100度の範囲の位相シフト、例えば52から98度の範囲の位相シフト、例えば54から96度の範囲の位相シフト、例えば56から94度の範囲の位相シフト、例えば58から92度の範囲の位相シフト、例えば60から90度の範囲の位相シフト、例えば62から88度の範囲の位相シフト、例えば64から86度の範囲の位相シフト、例えば66から84度の範囲の位相シフト、例えば68から82度の範囲の位相シフト、例えば70から80度の範囲の位相シフト、例えば72から78度の範囲の位相シフト、例えば74から76度の範囲の位相シフトであってもよい。一部の実施形態において、閾値位相シフトは、55から90度の範囲の位相シフト、例えば57から88度の範囲の位相シフト、例えば59から86度の範囲の位相シフト、例えば61から84度の範囲の位相シフト、例えば63から82度の範囲の位相シフト、例えば65から80度の範囲の位相シフト、例えば67から78度の範囲の位相シフト、例えば69から76度の範囲の位相シフト、例えば71から74度の範囲の位相シフトであってもよい。
【0045】
一部の実施形態において、プロセッサ102は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの決定された振幅が閾値振幅より大きく、且つ、検出された位相シフトが閾値位相シフトより大きい場合に組織炎症を検出するように構成されてもよい。一部の実施形態において、この検出は、(例えば、「AND」論理ゲート等の)論理ゲート又は(例えば、組織炎症検出について収集されたデータセットから最適な重み係数を学習することができる等)より複雑なアルゴリズムを使用して達成することができる。
【0046】
図3は、複数のPPG信号の各々の振幅及び位相シフトを決定するための例となる方法を例示している。例となる方法は、ロックイン増幅を使用する。複数のPPG信号は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示すため、複数のPPG信号は、複数の「局所」PPG信号と呼ぶことができる。図3において例示されているように、当該方法に対する入力は、基準信号R(t)及び局所PPG信号S(t)である。基準信号R(t)は:
【0047】
【数1】
として表すことができ、ここで、wHRは心拍周波数(a heart rate frequency)であり、tは時間である。基準信号R(t)は、心拍周波数wHRで変調し、局所PPG信号全てを平均することによって得ることができる。
【0048】
局所PPG信号S(t)は:
【0049】
【数2】
として表すことができ、ここで、Aは変調心拍周波数wHRの振幅であり、φは基準信号R(t)に関する局所PPG信号S(t)の位相シフトであり、Sn(t)は他の周波数成分全てを含み、tは時間である。R(t)及びS(t)は、ロックイン増幅ブロックに供給され、S(t)にR(t)、すなわちcos(wHRt)が掛けられ、R(t)は90度、すなわちsin(wHRt)位相シフトされる。次に、これら演算の2つの出力信号がローパスフィルタにかけられる。ローパスフィルタにかけることは、例えば、時間内の2つの出力信号を平均することによって行われてもよいが、任意の他の形態のローパスフィルタが代わりに使用され得るということが理解されることになる。
【0050】
ローパスフィルタの結果として、2つの値であるx及びyが、それぞれ
【0051】
【数3】
【0052】
【数4】
として得られる。これらの値は、局所PPG信号の振幅A及びR(t)に関する局所PPG信号の位相シフトφに関連する。x及びyの値を組み合わせることによって、局所PPG信号の振幅A及び局所PPG信号の位相シフトφをそれぞれ
【0053】
【数5】
及び
【0054】
【数6】
として表すことができる。従って、複数のPPG信号の各々に対して、PPG信号の振幅を表す値と、PPG信号の位相シフトを表す値とを決定することができる。
【0055】
図2には例示されていないけれども、複数のPPG信号の各々の振幅が決定される一部の実施形態において、プロセッサ102は、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップを生成するように構成されてもよい。代替的又は追加的に、複数のPPG信号の各々の振幅が決定される一部の実施形態において、プロセッサ102は、決定された振幅が閾値振幅より大きい決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップを生成するように構成されてもよい。このようにして、組織炎症を、生成された振幅マップにおけるバックグラウンドノイズから識別することができる。複数のPPG信号は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示すため、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す振幅マップは、空間マップである。振幅マップは、空間的にどのくらい十分に組織が灌流されているかの指標を提供することができる。一部の実施形態において、振幅マップは、複数のPPG信号の各々に対して、色を、決定されたPPG信号の振幅と相関させ、その色を、組織の領域内のそれぞれの位置に関連付けることによって生成されてもよい。当業者は、振幅マップを生成するために使用され得る様々な技術を認識することになる。
【0056】
代替的又は追加的に、ここでも図2には例示されていないけれども、複数のPPG信号の各々の位相が決定される一部の実施形態において、プロセッサ102は、決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す位相マップを生成するように構成されてもよい。代替的又は追加的に、複数のPPG信号の各々の位相が決定される一部の実施形態において、プロセッサ102は、決定された位相において検出された位相シフトが閾値位相シフトよりも大きい決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す位相マップを生成するように構成されてもよい。このようにして、組織炎症を、生成された位相マップにおけるバックグラウンドノイズから識別することができる。複数のPPG信号は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示すため、決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す位相マップは、空間マップである。位相マップは、局所PPG信号の位相におけるシフトの指標を提供することができる。一部の実施形態において、位相マップは、複数のPPG信号の各々に対して、色を、決定されたPPG信号の位相と相関させ、その色を、組織の領域内のそれぞれの位置に関連付けることによって生成されてもよい。当業者は、位相マップを生成するために使用され得る様々な技術を認識することになる。
【0057】
図4及び5は、一実施形態による振幅マップ及び位相マップを例示した図である。より詳細には、図4(a)及び5(a)は各々、組織の領域の画像を例示しており、図4(b)及び5(b)は各々、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す生成された振幅マップを例示しており、図4(c)及び5(c)は各々、決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す生成された位相マップを例示している。上記のように、複数のPPG信号は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す。組織の領域内の組織炎症300、400が、図4(a)、(b)、及び(c)、並びに、図5(a)、(b)、及び(c)において丸で囲まれている。例示されている例では、組織炎症300、400は面皰であり、組織は皮膚である。図4(d)及び5(d)は各々、組織の領域の画像にオーバーレイした生成された振幅マップを例示しており、図4(e)及び5(e)は各々、組織の領域の画像にオーバーレイした生成された位相マップを例示している。
【0058】
図4及び5において例示されているように、生成された振幅マップ及び生成された位相マップの双方が、面皰300、400による影響を受けている。例えば、図4(a)において示されているように、(中心部に膿を有する)面皰が、組織の領域の画像の丸で囲まれた領域内に見えている。図4(b)の振幅マップにおいて見られるように、面皰領域において灌流の振幅の増加がある。また、図4(c)の位相マップにおいて見られるように、面皰領域において位相シフトがある。さらに、(膿は血液によって灌流されないため)膿自体の領域と比較して、膿の領域を取り囲む組織において灌流の振幅の増加がある。その一方で、図5は、初期段階の面皰を検出する一例を示している。この場合、面皰は、図5(a)の組織の領域の画像の丸で囲まれた領域においてほとんど見えないけれども、局所的な増大した灌流が、図5(b)の振幅マップの丸で囲まれた領域400及び図5(c)の位相マップの丸で囲まれた領域400においてはっきりと見える。従って、図4及び5において例示されているように、PPG信号の振幅の増加及びPPG信号の位相シフトは、初期段階においてさえ、組織炎症(例えば、面皰等)の良い指標を提供することができる。
【0059】
プロセッサ102が振幅マップ及び位相マップの双方を生成するように構成されている一部の実施形態において、プロセッサ102はまた、生成された振幅マップと生成された位相マップとを比較するように構成されてもよい。これらの実施形態の一部において、プロセッサ102は、比較に基づき、組織の領域における検出された組織炎症の位置を決定するように構成することができる。例えば、一部の実施形態では、生成された振幅マップにおけるある位置での振幅が閾値振幅より大きく、生成された位相マップにおける対応する位置での位相シフトが閾値位相シフトより大きい場合、組織炎症をその位置において検出することができる。一部の実施形態において、これは、(例えば、「AND」論理ゲート等の)論理ゲート、又は、(例えば、組織炎症検出について収集されたデータセットから最適な重み係数を学習することができる等)より複雑なアルゴリズムを使用して達成することができる。これらの実施形態の一部において、プロセッサ102はまた、組織の領域における検出された組織炎症の決定された位置を表す組織炎症マップを生成するように構成されてもよい。
【0060】
一部の実施形態において、プロセッサ102は、組織の領域の画像(例えば、RGB画像等)を取得し、生成された組織炎症マップからの検出された組織炎症の決定された位置を、取得した組織の領域の画像上に示すように構成されてもよい。例えば、一部の実施形態において、プロセッサ102は、生成された組織炎症マップを、取得した組織の領域の画像にオーバーレイするように構成されることによって、検出された組織炎症の決定された位置を、取得した組織の領域の画像上に示すように構成されてもよい。
【0061】
図6は、振幅マップ及び位相マップが(例えば、上記の様式で)比較され、組織の領域における検出された組織炎症の位置が決定される一実施形態による振幅マップ及び位相マップを例示した図である。より詳細には、図6(a)は、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す生成された振幅マップを例示しており、図6(b)は、決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す生成された位相マップを例示している。上記のように、複数のPPG信号は、組織の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す。
【0062】
図6の矢印500において、上記の閾値振幅が、図6(a)の生成された振幅マップに適用される。このようにして、組織炎症を、生成された振幅マップにおけるバックグラウンドノイズから識別することができる。従って、図6(c)は、決定された振幅が閾値振幅より大きい決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す生成された振幅マップを例示している。同様に、図6の矢印502において、上記の閾値位相シフトが、図6(b)の生成された位相マップに適用される。このようにして、組織炎症を、生成された位相マップにおけるバックグラウンドノイズから識別することができる。従って、図6(d)は、決定された位相において検出された位相シフトが閾値位相シフトよりも大きい決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す生成された位相マップを例示している。
【0063】
図6のブロック504において、図6(c)において例示されている生成された振幅マップと図6(d)において例示されている生成された位相マップとが比較され、比較に基づき、組織の領域における検出された組織炎症の位置が決定され、組織の領域における検出された組織炎症の決定された位置を表す組織炎症マップが生成される。上記のように、一部の実施形態では、図6(c)の生成された振幅マップにおけるある位置での振幅が閾値振幅より大きく、図6(d)の生成された位相マップにおける対応する位置での位相シフトが閾値位相シフトより大きい場合、組織炎症を、その位置において検出することができる(その後、組織炎症マップにおける対応する位置で表される)。一部の実施形態において、これは、図6においてブロック504の形状によって例示されている(例えば、「AND」論理ゲート等の)論理ゲート、又は、(例えば、組織炎症検出について収集されたデータセットから最適な重み係数を学習することができる等)より複雑なアルゴリズムを使用して達成することができる。実際には、図6(c)において例示されている生成された振幅マップと、図6(d)において例示されている生成された位相マップとが組み合わされる。
【0064】
図6(e)は、生成された組織炎症マップを例示している。図6(e)から分かるように、組織炎症は、生成された組織炎症マップにおいてはっきりと見え、バックグラウンドノイズは見えない。このようにして、組織炎症をより正確に検出することができる。図6(f)は、取得した組織の領域の画像にオーバーレイされた(又はそれと重なり合った)生成された組織炎症マップを例示しており、このように、組織炎症(例えば、面皰等)が検出されることが分かる。
【0065】
図7(a)は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの振幅が1.5の閾値振幅より大きく、且つ、45から135度の範囲におけるいずれかの位相シフトが複数のPPG信号のうち少なくとも1つの位相において検出されるいかなる画素値も黒に設定され、全ての他の画素値が白に設定される、生成された組織炎症マップを例示している。図7(b)は、複数のPPG信号のうち少なくとも1つの振幅が0.2の閾値振幅より大きく、且つ、0から45度の範囲におけるいずれかの位相シフトが複数のPPG信号のうち少なくとも1つの位相において検出されるいかなる画素値も黒に設定され、全ての他の画素値が白に設定される、生成された組織炎症マップを例示している。分かるように、組織炎症は、図7(b)の炎症マップにおいて見えないが、図7(a)においてはっきりと見える。
【0066】
図8は、一実施形態による振幅マップ及び位相マップを例示した図である。より詳細には、図8(a)は、組織の領域の画像を例示している。この例において、組織は、対象者の前頭部の皮膚である。4つの色のついた点が、額にインクで描かれている。図8(b)は、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す生成された振幅マップを例示しており、図8(c)は、決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す生成された位相マップを例示している。複数のPPG信号は、対象者の皮膚の前頭部上の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す。黒い点が、装置100のプロセッサ102によってバックグラウンドとして見られ、これは皮膚を排除し、従って、黒い点の位置では、図8(b)の振幅マップにおいて、光(従って、灌流)は検出されない。図8(c)の位相マップにおける黒い点の領域の位相も、バックグラウンドと同じである。装置100のプロセッサ102は、(インクが皮膚を覆っているため)点の領域上で少ない灌流を検出している。図8(c)の位相マップは、点の領域における灌流の変化を示していない。点の境界上で、灌流の変動が検出されているが、それは単に、皮膚とインクの間の急激な色の変化によるものである。PPG信号における振幅及び位相シフトの双方を調べることによって、いかなる非炎症性組織(例えば、刺青、化粧、くも状静脈、又は他の非炎症性組織等)も、炎症性組織(例えば、面皰又は他の炎症性組織等)として誤って分類されることはない。
【0067】
図9は、振幅マップ及び位相マップが(例えば、上記の様式で)比較され、組織の領域における検出された組織炎症の位置が決定される一実施形態による振幅マップ及び位相マップを例示した図である。この例において、組織の領域は、対象者の前頭部上の皮膚の領域であり、図8において例示されているように、4つの色のついた点がインクで描かれている。より詳細には、図9(a)は、決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す生成された振幅マップを例示しており、図9(b)は、決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す生成された位相マップを例示している。複数のPPG信号は、前頭部上の皮膚の領域において領域内の複数のそれぞれの位置で検出された光を示す。
【0068】
図9の矢印700において、上記の閾値振幅が、図9(a)の生成された振幅マップに適用される。このようにして、組織炎症を、生成された振幅マップにおけるバックグラウンドノイズから識別することができる。従って、図9(c)は、決定された振幅が閾値振幅より大きい決定された複数のPPG信号の各々の振幅を表す生成された振幅マップを例示している。同様に、図9の矢印702において、上記の閾値位相シフトが、図9(b)の生成された位相マップに適用される。このようにして、組織炎症を、生成された位相マップにおけるバックグラウンドノイズから識別することができる。従って、図9(d)は、決定された位相において検出された位相シフトが閾値位相シフトよりも大きい決定された複数のPPG信号の各々の位相を表す生成された位相マップを例示している。
【0069】
図9のブロック704において、図9(c)において例示されている生成された振幅マップと図9(d)において例示されている生成された位相マップとが比較され、比較に基づき、前頭部上の皮膚の領域における検出された組織炎症の位置が決定され、前頭部上の皮膚の領域における検出された組織炎症の決定された位置を表す組織炎症マップが生成される。上記のように、一部の実施形態では、図9(c)の生成された振幅マップにおけるある位置での振幅が閾値振幅より大きく、図9(d)の生成された位相マップにおける対応する位置での位相シフトが閾値位相シフトより大きい場合、組織炎症を、その位置において検出することができる(その後、組織炎症マップにおける対応する位置で表される)。一部の実施形態において、これは、図9においてブロック704の形状によって例示されている(例えば、「AND」論理ゲート等の)論理ゲート、又は、(例えば、組織炎症検出について収集されたデータセットから最適な重み係数を学習することができる等)より複雑なアルゴリズムを使用して達成することができる。実際には、図9(c)において例示されている生成された振幅マップと、図9(d)において例示されている生成された位相マップとが組み合わされる。図9(e)は、生成された組織炎症マップを例示している。図9(e)から分かるように、(この例では、初期段階の潜在的な面皰である)組織炎症706は、生成された組織炎症マップにおいてはっきりと見え、(色のついた点を含む)バックグラウンドノイズは見えない。このようにして、図9によって例示されているように、組織炎症をより正確に検出することができる。
【0070】
コンピュータ読み取り可能媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトも記載される。コンピュータ読み取り可能媒体は、その中に具現化されたコンピュータ読み取り可能コードを有する。コンピュータ読み取り可能コードは、適したコンピュータ又はプロセッサによって実行されると、コンピュータ又はプロセッサに本明細書において記載される方法を行わせるように構成される。コンピュータ読み取り可能媒体は、例えば、コンピュータプログラムプロダクトを保有することができる任意の実体又は装置であってもよい。例えば、コンピュータ読み取り可能媒体は、(CD-ROM若しくは半導体ROM等の)ROM又は(ハードディスク等の)磁気記録媒体等のデータ記憶装置を含んでもよい。さらに、コンピュータ読み取り可能媒体は、電気又は光信号等の伝送可能なキャリアであってもよく、これは、電気若しくは光ケーブルを介して、又は、無線若しくは他の手段によって伝達されてもよい。コンピュータプログラムプロダクトがそのような信号で具現化される場合、コンピュータ読み取り可能媒体は、そのようなケーブル又は他の装置若しくは手段によって構築されてもよい。或いは、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータプログラムプロダクトが埋め込まれた集積回路であってもよく、集積回路は、本明細書において記載される方法を行うように適応するか又はその実行において使用される。
【0071】
従って、本明細書には、既存の技術に関連する制限に取り組む装置100、方法200、及びコンピュータプログラムプロダクトが記載されている。従って、組織炎症を検出するための改善された装置及び方法が記載されている。本明細書において記載された様式での組織炎症の検出は、感染、創傷治癒、皮膚炎、及び組織炎症を含む他の状態のより良好な検出を可能にすることができる。
【0072】
開示された実施形態に対する変更は、本明細書において記載された原理及び技術を実行する際に、図面、明細書、及び付随の特許請求の範囲の調査から当業者により理解する及びもたらすことができる。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞はその複数形を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲において列挙されたいくつかの項目の機能を満たすことができる。特定の手段が互いに異なる従属項において記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを役立つよう使用することができないと示しているわけではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に若しくはその一部として供給される、光記憶媒体又は固体記憶媒体等、適したメディア上に記憶又は分散させてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の通信システムを介して等、他の形状で分散させてもよい。特許請求の範囲におけるいかなる参照番号も、その範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図4(e)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9