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  • 特許-モータ駆動装置を備えた部品実装機 図1
  • 特許-モータ駆動装置を備えた部品実装機 図2
  • 特許-モータ駆動装置を備えた部品実装機 図3
  • 特許-モータ駆動装置を備えた部品実装機 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】モータ駆動装置を備えた部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H02P5/46
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021550891
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2019039156
(87)【国際公開番号】W WO2021064951
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮志
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-228155(JP,A)
【文献】特開平08-156354(JP,A)
【文献】特開2012-029378(JP,A)
【文献】特開2002-300800(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006437(WO,A1)
【文献】特開2000-078850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装機であって、
複数のモータを駆動するモータ駆動装置であって、
タイミング設定部と、
前記複数のモータのそれぞれに対して設けられ、
前記タイミング設定部から設定信号が入力され、入力された前記設定信号に基づいてキャリア信号を生成するキャリア信号生成部であって、前記設定信号は、各キャリア信号生成部で生成される前記キャリア信号それぞれの各周期の開始タイミングを設定する信号であって、前記複数のキャリア信号の各周期の開始タイミングのそれぞれが、前記複数のモータの間で重ならないように設定する信号である、前記キャリア信号生成部と、
制御する前記モータに印加する電圧値を指令する指令信号を生成する指令信号生成部と、
前記キャリア信号生成部から前記キャリア信号が入力され、前記指令信号生成部から前記指令信号が入力され、入力された前記キャリア信号と前記指令信号に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)制御信号を生成するPWM信号生成部と、
前記PWM信号生成部から前記PWM制御信号が入力され、前記PWM制御信号に基づいて前記モータを駆動するための信号を生成する駆動回路と、を備えるn個(nは3以上)のモータ制御ユニットと、を備え、
前記n個のモータ制御ユニットの各キャリア信号生成部が生成する前記キャリア信号のそれぞれは、周期が同一であり、
前記各キャリア信号の周期をT、1番目のモータにおける前記キャリア信号の開始タイミングをTJ1としたときに、
前記タイミング設定部は、k番目のモータにおける前記キャリア信号の開始タイミングTJkが、以下の式:
Jk=TJ1+T(k-1)/n+T
(式中、kは2以上の整数、Tは0より大きくTより小さい変数)
を満たすように、前記複数の設定信号を生成するとともに、前記各モータにおける前記PWM制御信号の信号レベルが変化するタイミングが重ならないようにTの値を設定する、
前記モータ駆動装置と、
吸着ノズルを装着可能であり、前記複数のモータの一部により駆動されるヘッドと、
基板を搬送し、前記複数のモータの他の一部により駆動されるコンベアと、
前記複数のモータのそれぞれが駆動する複数の駆動軸を備え、前記複数の駆動軸を駆動することで前記吸着ノズルにより前記基板に部品を実装する部品実装部と、を備える部品実装機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモータを駆動するモータ駆動装置が知られている。この種の駆動装置では、モータごとに、当該モータに印加する電圧値を指令する指令信号と、キャリア信号と、に基づいてPWM制御信号を生成し、当該PWM制御信号に基づいてスイッチング素子をスイッチングさせる。これにより、モータに供給する駆動信号を生成し、モータに供給する電力を制御することができる。
【0003】
上記のようなモータ駆動装置では、各モータにおけるスイッチングのタイミングが一致すると、動力線の一部に瞬間的に大電流が流れ、大きなノイズが生じる。このようなノイズが生じると、モータ駆動装置の周囲に配置された他の装置に悪影響が生じる。
【0004】
特表2016-051740号公報には、2つのモータを駆動するモータ駆動装置が開示されている。この駆動装置では、指令信号に重畳信号を重畳した上で、重畳後の指令信号とキャリア信号とに基づいてPWM制御信号を生成する。特表2016-051740号公報の技術では、指令信号に重畳させる重畳信号を、モータごとに異なるパラメータを有する信号(例えば、周波数、位相、振幅、電位等が異なる信号)とすることにより、各モータにおけるPWM制御信号のタイミング(すなわち、スイッチングのタイミング)が重ならないように制御する。これにより、動力線に瞬間的に大電流が流れることが抑制され、大きなノイズが生じることが抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特表2016-051740号公報の技術では、モータごとに異なるパラメータを有する重畳信号を生成する必要があるため、制御が複雑化するという問題がある。本明細書では、複数のモータを駆動するモータ駆動装置において、より簡易な構成により、複数のモータにおけるPWM制御信号のタイミングが一致することによるノイズの発生を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するモータ駆動装置は、複数のモータを駆動する。前記モータ駆動装置は、タイミング設定部と、前記複数のモータのそれぞれに対して設けられたモータ制御ユニットと、を備える。複数のモータ制御ユニットのそれぞれは、キャリア信号生成部と、制御する前記モータに印加する電圧値を指令する指令信号を生成する指令信号生成部と、前記キャリア信号生成部からキャリア信号が入力され、前記指令信号生成部から前記指令信号が入力され、入力された前記キャリア信号と前記指令信号に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)制御信号を生成するPWM信号生成部と、前記PWM信号生成部から前記PWM制御信号が入力され、前記PWM制御信号に基づいて前記モータを駆動するための信号を生成する駆動回路と、を備える。キャリア信号生成部は、前記タイミング設定部から設定信号が入力され、入力された前記設定信号に基づいてキャリア信号を生成する。前記設定信号は、各キャリア信号生成部で生成される前記キャリア信号それぞれの各周期の開始タイミングを設定する信号であって、前記複数のキャリア信号の各周期の開始タイミングのそれぞれが、前記複数のモータの間で重ならないように設定する信号である。
【0007】
上記のモータ駆動装置では、各キャリア信号生成部に、タイミング設定部から設定信号が入力される。この設定信号は、各キャリア信号の各周期の開始タイミングを設定する信号であって、複数のキャリア信号の各周期の開始タイミングのそれぞれが、複数のモータの間で重ならないように設定する信号である。すなわち、各キャリア信号生成部には、タイミング設定部からモータごとに異なる設定信号が入力される。このため、各キャリア信号生成部により生成される複数のキャリア信号は、複数のモータの間で各周期の開始タイミングがずれた信号となる。これにより、各PWM信号生成部により生成されるPWM制御信号それぞれの開始タイミングがずれ、瞬間的に大電流が流れることが抑制される。したがって、上記のモータ駆動装置によれば、ノイズの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例のモータ駆動装置を含むモータ駆動システムの概略構成を示す図。
図2】部品実装機の概略構成を示す図。
図3】本実施例のモータ駆動装置における各信号の波形の一例を示す図。
図4】本実施例のモータ駆動装置における各信号の波形の他の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態では、前記モータ駆動装置は、n個の前記モータ制御ユニットを有してもよい。前記n個のモータ制御ユニットの各キャリア信号生成部が生成する前記キャリア信号のそれぞれは、周期が同一であってもよい。前記各キャリア信号の周期をT、1番目のモータにおける前記キャリア信号の開始タイミングをTJ1としたときに、前記タイミング設定部は、k番目のモータにおける前記キャリア信号の開始タイミングTJkが、以下の式:TJk=TJ1+T(k-1)/n+Tconst(式中、Tconstは0以上の定数)を満たすように、前記複数の設定信号を生成してもよい。
【0010】
本技術の一実施形態では、部品実装機が開示される。前記部品実装機は、上記したモータ駆動装置と、前記モータ駆動装置によって駆動される前記複数のモータと、前記複数のモータのそれぞれが駆動する複数の駆動軸を備え、前記複数の駆動軸を駆動することで基板に部品を実装する部品実装部と、を備えてもよい。
【0011】
(実施例)
図面を参照して、本実施例のモータ駆動装置10を備えるモータ駆動システム50について説明する。図1に示すように、モータ駆動装置10は、タイミング設定部12と、複数のモータ制御ユニット(以下、単に制御ユニットという。)20を備える。本実施例のモータ駆動装置10は、それぞれの制御ユニット20によって駆動が制御される複数のモータ30とともに、例えば、部品4を基板2に実装する部品実装機100(図2参照)に用いられる。部品実装機100は、部品実装部110(例えば、吸着ノズル116を装着可能なヘッド112、基板2を搬送するコンベア114等)を有している。部品実装部110は、各モータ30のそれぞれが駆動する複数の駆動軸を駆動することで基板2に部品4を実装する。
【0012】
モータ駆動システム50は、例えばコンピュータによって構成された上位装置52をさらに備えている。上位装置52は、モータ駆動装置10に対して、モータ駆動装置10を制御するための指令を出力する。モータ駆動装置10は、上位装置52から入力された指令に従って動作し、各モータ30を駆動する。
【0013】
各制御ユニット20は、複数のモータ30(本実施例では、3つ)のそれぞれに対して設けられている。すなわち、制御ユニット20aがモータ30aの駆動を制御し、制御ユニット20bがモータ30bの駆動を制御し、制御ユニット20cがモータ30cの駆動を制御する。各制御ユニット20には、電源32から共通の電源電圧が供給される。各制御ユニット20は、電源32から供給される電源電圧を利用して、制御ユニット20が備える各部を動作させることにより、モータ30を駆動する。各制御ユニット20は、制御部22、指令信号生成部24、キャリア信号生成部26、PWM信号生成部28、及び駆動回路29を備えている。
【0014】
タイミング設定部12は、上位装置52に接続されている。タイミング設定部12は、上位装置52から入力された指令に基づいて、複数の設定信号Ss(Ssa、Ssb、Ssc)を生成する。タイミング設定部12は、生成した複数の設定信号Ssのそれぞれを、対応するキャリア信号生成部26に出力する。すなわち、各キャリア信号生成部26には、異なる設定信号Ssがそれぞれ入力される。設定信号Ssについては、後述する。
【0015】
キャリア信号生成部26は、キャリア信号Scを生成する。キャリア信号Scは、パルス幅変調されたPWM制御信号Spの生成に用いられ、三角波の波形を有する信号である。本実施例では、キャリア信号生成部26のそれぞれが生成する各キャリア信号Scは、周期が等しい。キャリア信号Scは、タイミング設定部12から入力された設定信号Ssに基づいて生成される。設定信号Ssは、キャリア信号生成部26で生成されるキャリア信号Scの各周期の開始タイミングを設定する信号である。また、設定信号Ssは、複数のキャリア信号Scの各周期の開始タイミングのそれぞれが、複数のモータ30の間で重ならないように設定されている。キャリア信号生成部26は、生成したキャリア信号ScをPWM信号生成部28に出力する。
【0016】
制御部22は、上位装置52に接続されている。制御部22には、モータ30の位置、速度、トルク等を指令する情報が上位装置52から入力される。制御部22は、当該情報に含まれる指令値を示す信号を指令信号生成部24に出力する。
【0017】
指令信号生成部24は、制御部22から入力された信号に基づいて、指令信号Sdを生成する。本実施例では、U相、V相及びW相の三相分の指令信号Sdが生成される。指令信号生成部24で生成される各指令信号Sdは、モータ30に印加する電圧値を指令する信号である。具体的には、各指令信号Sdは、モータ30に要求される回転速度やトルク量に応じた正弦波の波形を有する信号であり、各相で互いに120度の位相差を有している。指令信号生成部24は、生成した指令信号SdをPWM信号生成部28に出力する。なお、モータ30のサーボロック時は、モータ30の回転を停止させるため、指令信号Sdの振幅は0となる。
【0018】
PWM信号生成部28は、キャリア信号生成部26から入力されたキャリア信号Sc、及び、指令信号生成部24から入力された指令信号Sdに基づいて、PWM制御信号Spを生成する。PWM信号生成部28は、コンパレータにより構成されており、指令信号Sdとキャリア信号Scの信号レベルを比較することによって、パルス幅変調されたパルス信号をPWM制御信号Spとして生成する。PWM信号生成部28は、生成したPWM制御信号Spを駆動回路29に出力する。
【0019】
駆動回路29は、PWM信号生成部28から入力されたPWM制御信号Spに基づいて、スイッチング素子をスイッチングさせる。これにより、電源32から供給された電力をモータ30を駆動させるための電力に変換する。駆動回路29は、生成した電力をU相、V相及びW相のモータ動力線を介してモータ30に印加する。なお、図1では、1つの制御ユニット20に対して一対のスイッチング素子のみを描いているが、実際には、三対のスイッチング素子が並列に接続されており、U相、V相及びW相の三相でモータ30を駆動する。
【0020】
以上の通り、各制御ユニット20は、上位装置52及びタイミング設定部12からの指令に基づき、各モータ30を駆動するための電力を生成する。そして、各制御ユニット20は、生成した電力を各モータ30に印加することにより、各モータ30を駆動する。
【0021】
続いて、各制御ユニット20a、20b、20cにより生成される各信号についてより詳細に説明する。以下の説明では、3つのモータ30a~30cの全てが、サーボロック状態(すなわち、無回転状態)である状況を想定する。
【0022】
図3は、本実施例のモータ駆動装置10において、指令信号生成部24(24a、24b、24c)が生成する各指令信号Sd(Sda、Sdb、Sdc)、キャリア信号生成部26(26a、26b、26c)が生成する各キャリア信号Sc(Sca、Scb、Scc)、及び、PWM信号生成部28(28a、28b、28c)が生成する各PWM制御信号Sp(Spa、Spb、Spc)の波形図を示している。なお、サーボロック時には、U相、V相及びW相の各波形は等しいため、図3では、制御ユニット20a~20cそれぞれにおける1つの相の各波形のみを示す。上述したように、各モータ30a~30cはサーボロック状態であるため、指令信号生成部24からPWM信号生成部28に入力される各指令信号Sda、Sdb、Sdcの振幅は、いずれも0である。
【0023】
キャリア信号生成部26a~26cのそれぞれは、タイミング設定部12から入力される各設定信号Ssa、Ssb、Sscに基づいて各キャリア信号Sca、Scb、Sccを生成する。タイミング設定部12は、制御ユニットの総数(すなわち、モータの総数)をn個、キャリア信号の周期をT、1番目のモータのキャリア信号の開始タイミングをTJ1としたときに、k番目のモータのキャリア信号の開始タイミングTJkが、以下の式:
Jk=TJ1+T(k-1)/n+Tconst (式中、Tconstは0以上の定数)
を満たすように、各設定信号Ssを生成する。図3に示すように、モータ30a~30cをこの順に、1番目、2番目及び3番目のモータとした場合、タイミング設定部12は、モータ30aにおけるキャリア信号Scaの開始タイミングTJ1に対して、モータ30bにおけるキャリア信号Scbの開始タイミングTJ2がTJ1+T/3+Tconstとなり、モータ30cにおけるキャリア信号Sccの開始タイミングTJ3がTJ1+2T/3+Tconstとなるように、各設定信号Ssを生成する。なお、図3では、Tconstが0である場合を示している。すなわち、キャリア信号ScbはTJ1に対して1/3周期だけ遅れて開始し、キャリア信号SccはTJ1に対して2/3周期だけ遅れて開始する。このように、キャリア信号生成部26のそれぞれに異なる設定信号Ssが入力されることによって、その開始タイミングがモータ間で重ならないようにそれぞれのキャリア信号Sca、Scb、Sccが生成される。
【0024】
PWM信号生成部28は、このように生成されたキャリア信号Scを、指令信号Sdと比較することによって、各PWM制御信号Spを生成する。本実施例では、各キャリア信号Scの位相が互いにずれていることにより、サーボロック時において生成される各PWM制御信号Spa、Spb、Spcも同様のずれ(すなわち、1/3周期ずつのずれ)を有する。すなわち、各制御ユニット20のPWM制御信号Spの間で、信号レベルが変化するタイミングが重ならないように制御される。
【0025】
以上に説明したように、本実施例のモータ駆動装置10では、各キャリア信号生成部26に、タイミング設定部12から異なる設定信号Ssがそれぞれ入力される。これにより、各キャリア信号生成部26により生成される複数のキャリア信号Scは、各周期の開始タイミングがずれた信号となる。その結果、各PWM信号生成部28により生成されるPWM制御信号Spそれぞれの信号レベルが変化するタイミングがずれる。このように、本実施例では、各キャリア信号Scの開始タイミングのみをずらすための設定信号Ssを制御ユニット20ごとに生成するという簡易な制御によって、PWM制御信号Spの信号レベルが変化するタイミングを異ならせることができる。これにより、本実施例のモータ駆動装置10では、スイッチング素子がスイッチングするタイミングがモータ30a~30cの間で重ならず、モータ駆動装置10に瞬間的に大電流が流れることが抑制される。したがって、ノイズの発生を抑制することができる。
【0026】
なお、制御ユニット20の数によっては、PWM制御信号Spaの信号レベルが変化するタイミングと、PWM制御信号Spbの信号レベルが変化するタイミングが重なる場合がある。図4は、2つの制御ユニット20a、20bが設けられている場合を示している。この場合、上述した式により、キャリア信号Scbは、TJ1に対して1/2周期だけ遅れて開始する。このような場合には、図4の上側2つの波形図に示すように、PWM制御信号Spaの信号レベルが変化するタイミングとPWM制御信号Spbの信号レベルが変化するタイミングが重なることが起こり得る(例えば、図4のタイミングT)。しかしながら、本実施例では、このような場合であっても、Tconstを0より大きい値(例えば、キャリア信号Scの周期Tと比較して極めて短い時間)に設定すればよい。これにより、図4の最も下側に示す波形図の通り、キャリア信号Scb’の開始タイミングTJ2’を開始タイミングTJ2からわずかに遅らせることで、PWM制御信号Spa及びSpb’の信号レベルが変化するタイミングが重ならないように制御することができる。
【0027】
なお、例えば、モータ30cのみが駆動中である場合(すなわち、指令信号Sdcが正弦波の波形を有する信号である場合)には、モータ30cと他の2つのモータ30a,30bの間において、あるタイミングで各PWM制御信号Spの信号レベルが変化するタイミングが重なり得る。しかしながら、このようなタイミングが生じる頻度は低いため、当該タイミングに起因するノイズはモータ駆動装置10の動作や周囲に配置される他の装置にほとんど影響しない。
【0028】
上述した実施例では、各キャリア信号Sca、Scb、Sccが上述した式に従った特定のタイミングで開始されるように各設定信号Ssa、Ssb、Sscが生成された。しかしながら、設定信号Ssのそれぞれは、各キャリア信号Scの開始タイミングが重ならないような信号であれば、どのように設定されてもよい。
【0029】
また、上述した実施例において、モータ30a~30cのそれぞれが、エンコーダを備えてもよい。本実施例のようなモータ駆動装置10では、PWM制御信号Spの各周期の開始タイミングにおいて、上位装置52が、エンコーダの出力信号(すなわち、モータ30の回転方向、回転位置、回転速度等)、及び、モータ30を流れる電流値を取得してフィードバックすることにより、次の周期において指令すべき電圧値を算出することが行われる場合がある。本実施例では、制御ユニット20間で、キャリア信号Scの各周期の開始タイミングが重ならないように制御されている。すなわち、制御ユニット20間で、PWM制御信号Spの各周期の開始タイミングがずれている。したがって、本実施例では、上位装置52は、各制御ユニット20におけるPWM制御信号Spの開始タイミングで上記の各処理を開始してもよい。すなわち、上位装置52は、制御ユニット20ごとに異なるタイミングでエンコーダの出力信号及び電流値の取得を開始し、次の周期において指令すべき電圧値を算出してもよい。このような制御を行うことで、より簡易に正確な指令値を算出することができる。
【0030】
また、本実施例では、モータ駆動装置10が部品実装機に用いられる例について説明した。しかしながら、本明細書に開示のモータ駆動装置10は、例えば、工作機械や作業機等、モータを使用する他の機器に用いてもよい。
【0031】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4