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特許7464624注型薄膜製造装置と注型薄膜製造装置を備える薄膜延伸装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】注型薄膜製造装置と注型薄膜製造装置を備える薄膜延伸装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/25 20190101AFI20240402BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240402BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20240402BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240402BHJP
【FI】
B29C48/25
B29C48/305
B29C48/88
B29C48/92
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021566161
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020060062
(87)【国際公開番号】W WO2020224908
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】102019112077.2
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】エーデル・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルツ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】カスパール・コルビニアン
(72)【発明者】
【氏名】エドフェルダー・アントン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー・フェルディナンド
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-055759(JP,A)
【文献】特開昭49-116160(JP,A)
【文献】特開昭55-034957(JP,A)
【文献】特開平01-275118(JP,A)
【文献】特開平10-315306(JP,A)
【文献】特開平11-000944(JP,A)
【文献】特開平11-268101(JP,A)
【文献】特開2002-219723(JP,A)
【文献】特開2010-269550(JP,A)
【文献】特開2013-010301(JP,A)
【文献】国際公開第2009/127197(WO,A1)
【文献】米国特許第03571853(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
B29D 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜延伸装置(3)に使用する注型薄膜(2)を製造する注型薄膜製造装置(1)において、
開口金型(4)と、冷却ロール(5)の対向する両端面(5a, 5b)間に形成される円筒状の外被(6)を有する冷却ロール(5)と、電極片(15)と、高電圧発生装置と、絶縁体(20)と、感知装置(30)と、制御装置(25)とを備え、
開口金型(4)は、注型薄膜(2)を形成するため、回転する冷却ロール(5)の表面(6a)の当接領域(9)に樹脂溶融物(7)を供給し、
冷却ロール(5)の回転方向に当接領域(9)からずれて配置される冷却ロール(5)の引出領域(10)に冷却ロール(5)の表面(6a)から引出される注型薄膜(2)は、薄膜延伸装置(3)に直接又は間接的に供給され、
冷却ロール(5)の当接領域(9)と引出領域(10)との間に電極片(15)が設けられ、
電極片(15)は、冷却ロール(5)の両端面(5a, 5b)間の冷却ロール(5)の少なくとも一部の長さに沿って冷却ロール(5)の表面(6a)から距離を空けて配置され、
高電圧発生装置は、発生する高電圧を電極片(15)に印加し、
冷却ロール(5)の円筒状外被(6)と電極片(15)との間に絶縁体(20)が設けられ、
感知装置(30)は、左注型薄膜縁(2a)と右注型薄膜縁(2b)の位置情報を継続的に検出し、
制御装置(25)は、左注型薄膜縁(2a)と右注型薄膜縁(2b)の検出した位置情報に基づき、
a) 冷却ロール(5)の左端面(5a)と左注型薄膜縁(2a)との間に絶縁体(20)を移動し、
b) 冷却ロール(5)の右端面(5b)と右注型薄膜縁(2b)との間に絶縁体(20)を移動して、電極片(15)と冷却ロール(5)との間の電圧放電路橋絡を回避し、
感知装置(30)の感知領域(31)は、注型薄膜(2)の搬送方向に開口金型(4)より下流かつ電極片(15)の上流に設けられることを特徴とする注型薄膜製造装置(1)。
【請求項2】
注型薄膜(2)を少なくとも部分的に覆う導電性ブラシは、電極片(15)に設けられない請求項1に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項3】
電極片(15)から冷却ロール(5)までの距離は、少なくとも注型薄膜(2)の幅に沿って一定である請求項1又は2に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項4】
電極片(15)には、空気導管が設けられない請求項1~3の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項5】
絶縁体(20)は、左絶縁片(20a)と右絶縁片(20b)とを備え、
左絶縁片(20a)は、冷却ロール(5)の左端面(5a)から冷却ロール(5)の中央(5c)方向かつその逆方向に移動され、
右絶縁片(20b)は、冷却ロール(5)の右端面(5b)から冷却ロール(5)の中央(5c)方向かつその逆方向に移動される請求項1~4の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項6】
左絶縁片(20a)と右絶縁片(20b)は互いに独立して移動され、
左絶縁片(20a)は、
a) 管状に形成され、電極片(15)は、帯状、針金状又は棒状であり、管状に形成される左絶縁片(20a)を貫通し、
右絶縁片(20b)は、
b) 管状に形成され、電極片(15)は、帯状、針金状又は棒状であり、管状に形成される右絶縁片(20b)を貫通する請求項5に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項7】
制御装置(25)は、注型薄膜製造装置(1)の始動時に、左絶縁片(20a)と右絶縁片(20b)を冷却ロール(5)の中央(5c)方向に移動する請求項5又は6に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項8】
感知装置(30)は、光学感知装置である請求項1~7の何れか1項に記載注型薄膜製造の装置(1)。
【請求項9】
感知装置(30)は、左注型薄膜縁(2a)を検出する左感知装置(30a)と、右注型薄膜縁(2b)を検出する右感知装置(30b)とを備える請求項1~8の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項10】
左感知装置(30a)と右感知装置(30b)は、夫々第1のIR検出器(30a1, 30b1)と第2のIR検出器(30a2, 30b2)とを備え、
左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)と第2のIR検出器(30a2)の感知領域(31)は、冷却ロール(5)の長手方向に互いにずれて配置され、左感知装置(30a)の第2のIR検出器(30a2)の感知領域(31)は、左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)の感知領域(31)よりも、冷却ロール(5)の左端面(5a)近くに配置され、
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)と第2のIR検出器(30b2)の感知領域(31)は、冷却ロール(5)の長手方向に互いにずれて配置され、右感知装置(30b)の第2のIR検出器(30b2)の感知領域(31)は、右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)の感知領域(31)よりも冷却ロール(5)の右端面(5b)近くに配置される請求項9に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項11】
左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)の感知領域(31)は、左感知装置(30a)の第2のIR検出器(30a2)の感知領域(31)と重複せずに配置され、
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)の感知領域(31)は、右感知装置(30b)の第2のIR検出器(30b2)の感知領域(31)と重複せずに配置される請求項10に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項12】
左感知装置(30a)と右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30a1, 30a2)と第2のIR検出器(30b1, 30b2)の感知領域(31)は、点状の感知領域を構成する請求項10又は11に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項13】
左感知装置(30a)のIR検出器(30a1, 30a2)と右感知装置(30b)のIR検出器(30b1, 30b2)の検出器光線(32)は、75°よりも大きくかつ140°よりも小さい角度で冷却ロール(5)の表面(6a)に照射される請求項10~12の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項14】
左感知装置(30a)は、左絶縁片(20a)に同期して移動され、
右感知装置(30b)は、右絶縁片(20b)に同期して移動される請求項10~13の何れか1項、請求項5又は6に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項15】
制御装置(25)は、左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)及び第2のIR検出器(30a2)の測定値と、右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)及び第2のIR検出器(30b2)の測定値とを検出し、
制御装置(25)は、
a) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)及び第2のIR検出器(30a2)の測定値が第1の温度閾値より低いとき、冷却ロール(5)の中心(5c)方向に左絶縁片(20a)を移動しかつ/又は
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)及び第2のIR検出器(30b2)の測定値が第1の温度閾値より低いとき、冷却ロール(5)の中心(5c)方向に右絶縁片(20b)を移動しかつ/又は
b) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)及び第2のIR検出器(30a2)の測定値が第2の温度閾値より高いとき、冷却ロール(5)の左端面(5a)方向に左絶縁片(20a)を移動しかつ/又は
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)及び第2のIR検出器(30b2)の測定値が第2の温度閾値より高いとき、冷却ロール(5)の右端面(5b)方向に右絶縁片(20b)を移動しかつ/又は
c) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)の測定値が、左感知装置(30a)の第2のIR検出器(30a2)の測定値と所定の限界値分だけ相違するとき、左絶縁部材(20a)をその位置に保持しかつ/又は
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)の測定値が、右感知装置(30b)の第2のIR検出器(30b2)の測定値に対し所定の限界値分ずれるとき、右絶縁片(20b)をその位置に保持する請求項10~14及び請求項5~7の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項16】
a) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)の測定値が第2の温度閾値より高くかつ第3の温度閾値より低く、並びに左感知装置(30a)の第2のIR検出器(30a2)の測定値が第3の温度閾値より高く又は第1の温度閾値より低いとき又は
b) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)の測定値が第3の温度閾値より高くかつ左感知装置(30a)の第2のIR検出器(30a2)の測定値が第1の温度閾値より低いとき、制御装置(25)は、左絶縁片(20a)をその位置に保持し、かつ/又は
a) 右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)の測定値が第2の温度閾値より高いが第3の温度閾値より低く、右感知装置(30b)の第2のIR検出器(30b2)の測定値が第3の温度閾値より高く若しくは第1の温度閾値より低いとき又は
b) 右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)の測定値が第3の温度閾値より高くかつ右感知装置(30b)の第2のIR検出器(30b2)の測定値が第1の温度閾値より低いとき、制御装置(25)は、右絶縁片(20b)をその位置に保持する請求項15に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項17】
制御装置(25)は、左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)及び第2のIR検出器(30a2)の測定値と、右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)及び第2のIR検出器(30b2)の測定値とを検出し、左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1, 30a2)及び右感知装置(30b)の第2のIR検出器(30b1, 30b2)は、注型薄膜(2)の標準中央領域(C)の温度、注型薄膜(2)の縁領域(B)の温度及び冷却ロール(2)のロール端領域(A)の温度を測定し、
a) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)及び第2のIR検出器(30a2)がロール端領域(A)の温度を測定したとき、制御装置(25)は、冷却ロール(5)の中央(5c)方向に左絶縁片(20a)を移動しかつ/又は
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)及び第2のIR検出器(30b2)がロール端領域(A)の温度を測定したとき、制御装置(25)は、冷却ロール(5)の中央(5c)方向に右絶縁片(20b)を移動しかつ/又は
b) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)及び第2のIR検出器(30a2)が標準中央領域(C)の温度を測定したとき、制御装置(25)は、冷却ロール(5)の左端面(5a)方向に左絶縁片(20a)を移動しかつ/又は
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)及び第2のIR検出器(30b2)が標準中央領域(C)の温度を測定したとき、制御装置(25)は、冷却ロール(5)の右端面(5b)方向に右絶縁片(20b)を移動しかつ/又は
c) 左感知装置(30a)の第1のIR検出器(30a1)及び第2のIR検出器(30a2)が異なる領域(A, B, C)の温度を測定したとき、制御装置(25)は、左絶縁片(20a)をその位置に保持しかつ/又は
右感知装置(30b)の第1のIR検出器(30b1)及び第2のIR検出器(30b2)が異なる領域(A, B, C)の温度を測定したとき、制御装置(25)は、右絶縁片(20b)をその位置に保持する請求項10~14及び請求項5~7の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項18】
感知装置(30)は、カメラ(35)を備え、
a) カメラ(35)は、樹脂溶融物(7)の当接領域(9)と電極片(15)との間の冷却ロール(5)の一定の領域に方向付けされて注型薄膜(2)の全幅を撮影し、制御装置(25)は、撮影信号に基づいて、左注型薄膜縁(2a)と右注型薄膜縁(2b)とを継続的に検出し又は
b) カメラ(35)は、開口金型(4)と冷却ロール(5)上の樹脂溶融物(7)の当接領域(9)との間の領域に向けられて注型薄膜(2)の全幅を撮影し、制御装置(25)は、撮影信号に基づいて、左注型薄膜縁(2a)及び右注型薄膜縁(2b)を継続的に検出し、配置される請求項1~8の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項19】
感知装置(30)は、第1のカメラと第2のカメラとを備え、
a) 第1のカメラは、樹脂溶融物(7)の当接領域(9)と電極片(15)との間の冷却ロール(5)の一定の領域に方向付けされて左注型薄膜縁(2a)の一定の領域を撮影し、制御装置(25)は、撮影信号に基づいて、左注型薄膜縁(2a)を継続的に検出し、配置され又は
b) 第1のカメラは、開口金型(4)と冷却ロール(5)上の樹脂溶融物(7)の当接領域(9)との間の領域に方向付けされて左注型薄膜縁(2a)の領域を撮影し、制御装置(25)は、撮影情報に基づいて左注型薄膜縁(2a)を継続的に検出し、配置され、かつ
a) 第2のカメラは、樹脂溶融物(7)の当接領域(9)と電極片(15)との間の冷却ロール(5)の一定の領域に方向付けされて右注型薄膜縁(2b)の一定の領域を撮影し、制御装置(25)は、撮影情報に基づいて、右注型薄膜縁(2b)を継続的に検出し、配置され又は
b) 第2のカメラは、開口金型(4)と冷却ロール(5)上の樹脂溶融物(7)の当接領域(9)との間の一定の領域に方向付けされて右注型薄膜縁(2b)の一定の領域を撮影し、制御装置(25)は、撮影情報に基づいて右注型薄膜縁(2b)を継続的に検出し、配置される請求項1~8の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項20】
カメラ(35)又は第1のカメラ及び/若しくは第2のカメラは、可視光波長領域で動作し又は
カメラ(35)又は第1のカメラ及び/若しくは第2のカメラは、赤外波長領域で動作する請求項18又は19に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項21】
カメラ(35)又は第1のカメラ及び/又は第2のカメラは、線状走査カメラであり、又は
カメラ(35)又は第1のカメラ及び/若しくは第2のカメラは、面状走査カメラである請求項18~20の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項22】
カメラ(35)又は第1のカメラ及び/若しくは第2のカメラは、静止状態に配置される請求項18~21の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項23】
感知装置(30)は、左レーザ走査機(36a)と右レーザ走査機(36b)とを備え、
左レーザ走査機(36a)は、左注型薄膜縁(2a)の領域内に配置され、注型薄膜(2)までの距離又は注型薄膜(2)の厚さを測定し、制御装置(25)は、測定信号に基づいて左注型薄膜縁(2a)を継続的に検出し、
右レーザ走査機(36b)は、右注型薄膜縁(2b)の領域内に配置され、注型薄膜(2)までの距離又は注型薄膜(2)の厚さを測定し、制御装置(25)は、右注型薄膜縁(2b)を継続的に検出する請求項1~8の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項24】
左レーザ走査機(36a)と右レーザ走査機(36b)は、静止状態で配置される請求項23に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項25】
感知装置(30)は、左レーザ距離計(33a)と右レーザ距離計(33b)とを備え、
左レーザ距離計(33a)のレーザ光線(34)は、冷却ロール(5)の表面(6a)に平行に投光されてかつ左注型薄膜縁(2a)に照射され、左レーザ距離計(33a)は、冷却ロール(5)から距離を空けた位置に配置され、左注型薄膜縁(2a)までの距離を測定する左レーザ距離計(33a)の測定情報(測定信号)に基づき、制御装置(25)は、左注型薄膜縁(2a)を継続的に検出し、
右レーザ距離計(33b)のレーザ光線(34)は、冷却ロール(5)の表面(6a)に平行に投光されてかつ右注型薄膜縁(2b)に照射され、右レーザ距離計(33b)は、冷却ロール(5)から距離を空けた位置に配置され、右注型薄膜縁(2b)までの距離を測定する右レーザ距離計(33b)の測定情報に基づき、制御装置(25)は、右注型薄膜縁(2b)を継続的に検出する請求項1~8の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項26】
感知装置(30)は、検出器表面の前方に配置されて検出器表面を汚染から保護する保護ガラス又は前面レンズを備える請求項1~25の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項27】
感知装置(30)は、冷却装置により冷却される筐体を備える請求項1~26の何れか1項に記載の注型薄膜製造装置(1)。
【請求項28】
請求項1~27の何れか1項に記載の注型薄膜(2)を製造する注型薄膜製造装置(1)を備える薄膜延伸装置(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型薄膜製造装置と注型薄膜製造装置を備える薄膜延伸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂原料を供給する押出機内で樹脂原料を加熱して樹脂原料を液化し、樹脂薄膜が通常製造される。その後、樹脂溶融物は、開口金型とも呼ばれる金型装置の開口を通過して加圧される。次に、樹脂溶融物は、冷却されるロール(=冷却ロール又はチルロール)に供給又は捲回される。
【0003】
続いて、冷却ロール上に排出される樹脂溶融物〔注型(キャスト)又は溶融(メルト)薄膜とも呼ばれる〕は、複数の追加ロールを経由して、別の複数の延伸装置〔注型薄膜を長手方向及び/又は横断方向に引伸ばす(=延伸する)〕に供給される。床からの距離が異なる追加ロールに捲回される注型薄膜は、蛇行状態で搬送される。異なる回転速度かつ/又は異なる温度調節で追加ロールを駆動することもできる。
【0004】
特に静電気接触装置を用いて、冷却ロールに樹脂溶融物を良好に接触させて樹脂溶融物を搬送できる。冷却ロールに設けられる対応する複数の電極は、樹脂溶融物内に同軸上に配置される複数の双極子を構成して、電極及び冷却ロールに対し数千ボルトの電圧が印加される。このとき、適切な電気的レベルの接地される冷却ロールに対し、樹脂溶融物は、押圧される。樹脂溶融物の無被覆領域に絶縁体を取り付けて、電極系により接地される冷却ロールへの放電路橋絡(フラッシオーバ)が阻止される。しかし、定期的に絶縁体を点検しなければならない。逆に、接地する冷却ロールと電極系との間で、樹脂溶融物自身は、絶縁体、即ち誘電体として作用する。注型薄膜製造装置の動作中にも、冷却ロール上(冷却ロールの長手方向に沿う)で樹脂溶融物の伸張幅が変化することがある。開口金型から樹脂溶融物が排出される時点で、樹脂溶融物の伸張幅変化は、既に発生している。樹脂溶融物の幅は、開口金型の幅よりも小さい。樹脂溶融物と開口金型との幅の相違は、収縮とも呼ばれる(開口金型から排出される樹脂溶融物は、その後僅かに収縮する)。
【0005】
ロールを備える薄膜製造装置の動作及び新たな始動時にも、樹脂溶融物の伸張幅を調整する必要があるが、調整を失念することも多い。調整懈怠により、電極から冷却ロールまでの放電路橋絡が発生することがある。放電路橋絡事故により、冷却ロールの表面が損傷するのみならず、高電圧発生装置の寿命を短縮する難点がある。
【0006】
手作業での再調整は、製造価格が増加する上に不具合を招来し易い。特に、ロール装置の回転速度を増加すると、樹脂溶融物の収縮量が増大し、迅速な再調整が必要となる。
【0007】
下記特許文献1は、成形ローラ上に供給される樹脂溶融物を成形ローラに対し極力良好に押圧するピン固定式電極片構造を示す。薄膜表面の電荷が高い程、成形ローラに対する樹脂溶融物の押圧密着が成功する。押圧密着時には、樹脂溶融物の端領域を成形ローラ上に押圧すべきである。そこで、特許文献1の全実施の形態は、導電性を有する金属細線又は炭素繊維で構成されるブラシ毛の採用構造を提案する。ブラシ毛は、樹脂溶融物方向に配置される。電極片に設けられる相応の空気導管内に圧縮空気が導入され、導入される空気をブラシ毛を介して排出して、ブラシ毛から不純物が除去される。特許文献1の装置は、ブラシの採用が必須である。揺動可能に配置されるブラシは、成形ローラの長軸と平行に移動可能に設けられる。常に樹脂溶融物の上方で移動可能なブラシにより、成形ローラに対する電圧放電路橋絡の発生が確実に阻止される。特許文献1には、ブラシと樹脂溶融物との間に採用される絶縁体装置に言及する実施の形態もあるが、実際には、折曲げられ及び折れるブラシ毛構造が非常に不利であることが判明した。折れたブラシ毛は、樹脂溶融物上に落下して汚染する難点があるため、特許文献1は、回転軸を中心とする寄り合わせ構造のブラシを提案するが、特許文献1に記載される構造には、一連の欠点もある。
【0008】
特許文献2は、回転速度と注型薄膜の線速度に比例して収縮量が、変化する冷却ロールを示す。冷却ロールの駆動部に結合される電位差計は、回転速度に対応する基準電圧を生成する。絶縁体中の変位調節装置の駆動部に他の電位差計が設けられる。両電圧がほぼ等しいとき、絶縁体の移動(例えば、縁領域に対する進退方向)は、阻止される。しかし、冷却ロールの駆動部の速度変化により、対応する電位差計の基準電圧も変動する。変位調節装置の駆動部は、両電圧が再びほぼ均等になるまで相応の方向に絶縁体を移動する。
【0009】
しかしながら、注型薄膜の線速度に比例する樹脂溶融物の収縮量は、他の多くの要因にも依存する点が問題となる。例えば、収縮幅は、押出機の押出量、薄膜の厚さ及び実際の原料種類に依存する。特に、押出される原料の粘度は、薄膜の収縮量に大きく影響する。
【0010】
例示する要因は、全て収縮量に影響を与えるので、製品を変更する(例えば、異なる層構造、異なる材料及び異なる薄膜厚等異なる薄膜を製造する)とき、注型薄膜の線速度に比例する収縮量は保証されない。この場合も、電気的放電路橋絡と、関連する冷却ロールと高電圧発生装置との損傷が発生することがある。
【0011】
特許文献2の特許ファミリーと同一の特許ファミリーから検索される特許文献3は、冷却ロールから剥離した後の注型薄膜の幅を検出する感知器を示す。絶縁体は、検出する幅に対応して移動される。
【0012】
しかしながら、特許文献3の移動装置には、移動での慣性があるため、収縮量の変化に直接正確に対応できない欠点があるため、電気的放電路橋絡が発生して、損傷が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2009/127197A2号公報
【文献】独国特許第2324345C2号公報
【文献】米国特許第3982863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の課題は、電気的放電路橋絡の発生前に関連する絶縁体の変位を調節して、電気的放電路橋絡を確実に回避すると共に、樹脂溶融物の収縮量の変化を検出する注型薄膜製造装置と注型薄膜製造装置を備える薄膜延伸装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の課題は、注型薄膜を製造する請求項1に記載する注型薄膜製造装置と、注型薄膜を製造する装置を備える請求項28に記載する薄膜延伸装置とにより達成される。注型薄膜を製造する本発明の注型薄膜製造装置の有利な更なる実施の形態を請求項2~27に記載する。
【0016】
薄膜延伸装置用の注型薄膜を製造する本発明の注型薄膜製造装置は、開口金型と、冷却ロールと、電極片と、高電圧発生装置と、絶縁体と、感知装置と、制御装置とを備え、冷却ロールは、冷却ロールの対向する両端面間に配置される円筒状外被を備える。開口金型は、回転する冷却ロール(英語では、Chill roll)の表面の当接領域に樹脂溶融物を押出して、注型薄膜が形成される。冷却ロールの回転方向に当接領域からずれて配置される冷却ロールの引出領域では、冷却ロールの表面から注型薄膜を引出すことができる。その後、薄膜延伸装置の後段の装置に注型薄膜を供給できる。冷却ロールの当接領域と引出領域との間に配置される電極片は、冷却ロールの表面から距離を空けて配置され、冷却ロールの両端面間で冷却ロールに沿う少なくとも一部の長さを有し、冷却ロールの長軸に対して平行に一部の長さを配置することが好ましい。高電圧発生装置は、高電圧を発生して電極片に高電圧を印加する。直流電圧は、3,000ボルトから15,000ボルト又は30,000ボルト、40,000ボルト、50,000ボルトまでも考慮の対象になる。冷却ロールの構成材料又は回転速度に応じて、印加電圧レベルを変更することができる。注型薄膜は、冷却ロールの周面の30%より大きく、40%、50%又は60%より大きいが、冷却ロールの周面に当接する80%より小さいことが好ましく、当接領域と引出領域とを互いに反対側に設けることが好ましい。120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°、190°、200°、210°、230°又は240°より大きい周方向角度領域で注型薄膜を冷却ロールに接触させることが特に好ましく、320°、310°、300°、290°又は280°より小さい周方向角度領域で冷却ロールに接触することが好ましい。
【0017】
絶縁体は、冷却ロールの円筒状外被と電極片との間に滑動可能に配置される。感知装置は、注型薄膜の左注型薄膜縁と右注型薄膜縁(又は注型薄膜縁幅)を継続的に検出する。制御装置は、左注型薄膜縁と右注型薄膜縁の検出した位置情報(位置信号)に基づいて、絶縁体を移動して、冷却ロールの左端面と左注型薄膜縁との間に絶縁体を配置しかつ冷却ロールの右端面と右注型薄膜縁との間に絶縁体を配置して、電極片と冷却ロールとの間の電圧放電路橋絡を回避する。特に、左注型薄膜縁と右注型薄膜縁との間の電極片に向かう注型薄膜領域には、絶縁体が設けられないので、注型薄膜のほぼ全幅又は全幅に沿って電界を作用させることができる。注型薄膜の搬送方向に開口金型の下流かつ電極片の上流に感知装置の感知領域が設けられる。つまり、注型薄膜の移動方向に対して、開口金型と電極片との間に感知領域が設けられることを意味する。
【0018】
左注型薄膜縁と右注型薄膜縁を検出し又は感知する感知装置の検出結果に応じて、絶縁体を相応に移動して、冷却ロールの円筒状外被のうちの注型薄膜に覆われない部分と電極片との間に絶縁体を常に配置することが特に有利である。電極片の前に感知領域を設けて、注型薄膜の収縮量の変化を早期に検出し、常に最適に絶縁体を追跡して、最適な位置に絶縁体を配置して、電圧放電路橋絡を防止することができる。
【0019】
本発明の発展形実施の形態では、絶縁体は、左絶縁片と、右絶縁片(左絶縁片から離間する)とを備える。左絶縁片は、冷却ロールの左端面から冷却ロールの中央方向にも逆方向にも移動可能であり、右絶縁片は、冷却ロールの右端面から冷却ロールの中央方向及び逆方向に移動可能である。好適な実施の形態では、感知装置は、光学感知装置を備える。また、感知装置は、左感知装置と右感知装置とを備えることが好ましい。左感知装置は、左注型薄膜縁を検出又は感知し、右感知装置は、右注型薄膜縁を検出又は感知する。
【0020】
本発明の好適な実施の形態では、左感知装置と右感知装置の両方が、夫々第1のIR検出器と第2のIR検出器とを備える。左感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の感知領域は、冷却ロールの長手方向に互いにずれて配置され、左感知装置の第2のIR検出器の感知領域は、左感知装置の第1のIR検出器の感知領域よりも、冷却ロールの左端面に近い位置に配置される。左感知装置の第1のIR検出器は、内側検出器とも呼ばれ、第2のIR検出器は、外側IR検出器とも呼ばれる。右感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の感知領域にも、同様の構成を適用できる。
【0021】
互いに重複せずに又はほぼ(例えば、70%、80%又は90%を越えて)重複を回避して、各感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の感知領域を配置することが好ましい。また、第1のIR検出器と第2のIR検出器の感知領域を点状の感知領域で形成することが好ましい。更に、検出器光線は、極力小さい配光角度が望ましい。各IR検出器に対する極力良好な反射光の復帰が可能なように、各IR検出器の検出器光線を冷却ロールの表面に照射する必要がある。特に、角度85°から125°、好適には角度90°で、良好な光検出値が得られた。
【0022】
また、別の好適な実施の形態では、左絶縁片と同期して左感知装置を移動し、右絶縁片と同期して右感知装置を移動させる。各感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器との間の距離は、注型薄膜製造装置の動作中一定に保持される。
【0023】
本発明の好適な実施の形態では、制御装置は、左感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の測定値と、右感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の測定値を検出する。検出した測定値に対応して、制御装置は、冷却ロールの中央に接近又は離間する方向に左絶縁片又は右絶縁片を移動させ又はそれらの位置に保持することができる。左絶縁片と右絶縁片は、制御装置が駆動・制御するモータ装置により駆動される。特に、動作(注型薄膜製造装置が注型薄膜を生成する)中に、左感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の測定値が第1の温度閾値より低いとき、制御装置は、冷却ロールの中央方向に左絶縁片を移動させる。冷却ロールの温度よりも(僅かに)高くかつ注型薄膜の温度よりも低い温度に第1の温度閾値を設定することが好ましい。左感知装置の両IR検出器は、冷却ロールの温度を検出して、温度検出信号を受信する制御装置は、冷却ロールの中央方向に絶縁片を更に移動させる。この際、複数のIR検出器は、絶縁片と同期して作動して、冷却ロール(注型薄膜を含む)上の種々の複数の領域を検出する。右絶縁片にも同様の動作が適用され、右感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の測定値が第1の温度値より低いとき、右絶縁片は、冷却ロールの中央方向に移動される。
【0024】
逆に、左感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の測定値が第2の温度閾値より高いとき、制御装置は、左冷却ロールの左端面方向に移動させる。第2の温度閾値は、標準中央領域内の縁領域外での注型薄膜の温度よりも(絶縁片を僅かに)低い。この場合、制御装置は、注型薄膜を超えて突出する左絶縁片を検出しかつ冷却ロールの左端面方向に左絶縁片を更に移動させる結果、注型薄膜の左外側領域である左縁領域にも電界を作用させて、注型薄膜内に双極子を配向させることができる。同様の動作が右絶縁片にも適用され、右感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の測定値が第2の温度閾値より高いとき、右絶縁片は、冷却ロールの右端面方向に移動される。
【0025】
補足的に又は代替的に、左感知装置の第1のIR検出器と第2のIR検出器の測定値が、互いに所定の限界値分だけ相違するとき、制御装置は、左絶縁片をその位置に保持する。例えば、一方の検出器は、注型薄膜の標準中央領域を検出し、他方の検出器は、縁領域(標準中央領域よりも高温)又は冷却ロール(標準中央領域よりも低温)を検出する。複数の測定値に差異があると、制御装置は、左絶縁片が最適な位置に到達したと判断する。右絶縁片にも同様の動作が適用される。右感知装置の第1のIR検出器の測定値が、右感知装置の第2のIR検出器の測定値から、所定の限界値分よりも大きく相違するとき、右絶縁片は、その位置に保持される。
【0026】
本発明の注型薄膜製造装置の別の実施の形態では、樹脂溶融物の当接領域と電極片との間に設けられるロール端領域に方向付けされて注型薄膜の全幅を撮影するカメラを備える感知装置が設けられる。カメラが撮影する画像情報(画像信号)に基づいて、制御装置は、左注型薄膜縁と右注型薄膜縁を継続的に検出して、駆動装置を作動し、注型薄膜幅に応じて左絶縁片と右絶縁片を相応に移動させる(例えば、冷却ロールの中央方向に左絶縁片と右絶縁片を更に移動し又は冷却ロールの左端面若しくは右端面方向に更に移動する)。冷却ロール上の樹脂溶融物の当接領域分と開口金型との間にカメラを設置してもよい。透過光の測定により、設置したカメラを動作して、注型薄膜の幅を撮影できよう。光源を使用して、撮影画像の明暗比を高めることもできる。カメラと光源との間に注型薄膜を通過させて、撮影画像情報に基づいて、制御装置は、左注型薄膜縁と右注型薄膜縁を継続的に検出し、左絶縁片と右絶縁片を適切に移動させることができる。
【0027】
他の好適な実施の形態では、可視光波長領域で動作するカメラ、赤外光波長領域で動作するカメラ、線状走査(ラインスキャン)カメラ(注型薄膜の幅全体を撮影するが、注型薄膜の高さ(幅に垂直方向)では一定数の画像情報しか得られない)又は面状走査(エリアスキャン)カメラも使用できる。カメラは、静止配置できる形態が望ましい。特に左絶縁片又は右絶縁片の移動と同期して、移動するカメラも設けることができる。
【0028】
本発明の注型薄膜製造装置の異なる実施の形態の感知装置は、左レーザ走査機と右レーザ走査機とを備える。左レーザ走査機は、左注型薄膜縁の領域中に配置され、注型薄膜までの距離又は注型薄膜の厚さを測定し、制御装置は、測定結果に基づき、左注型薄膜縁を継続的に検出する。右注型薄膜縁を検出する右レーザ走査機にも同様の構成を適用できる。左レーザ走査機と右レーザ走査機とを静止して配置できれば、十分である。
【0029】
本発明の注型薄膜製造装置の更なる実施の形態の感知装置は、左レーザ距離計と右レーザ距離計とを備える。冷却ロールから間隔を空けて配置される左レーザ距離計のレーザ光線は、冷却ロール表面と平行な光路を通過して注型薄膜の左縁領域に照射されて、注型薄膜の左縁領域までの距離を測定する。制御装置は、測定した距離情報(距離信号)に基づいて左注型薄膜縁を継続的に検出する。測定した距離に応じて、冷却ロールの端面方向又は中央方向に左絶縁片は、更に移動される。右注型薄膜縁を検出する右レーザ距離計にも同様の構成を適用できる。
【0030】
好適な実施の形態では、検出器表面の前方に配置されて検出器表面を汚染から保護する保護ガラス又は前面レンズが感知装置に設けられる。これは、特に、押出される注型薄膜から蒸発する低重合体から検出器を保護する機能がある。特に、検出器表面の曇り、検出器の故障又は誤作動を防止して、検出器表面に螺合して簡単に交換できる保護ガラス又は前面レンズが好ましい。
【0031】
検出器構成部を収容し又は配置できる筐体を備える感知装置も好ましい。冷却装置により筐体を冷却して、冷却ロールの特に近くに感知装置を配置することができる。
【0032】
本発明の薄膜延伸注型薄膜製造装置は、注型薄膜を製造する適切な注型薄膜製造装置を備える。
【0033】
添付図面について本発明を例示する種々の実施の形態を以下説明する。同一の対象物には同一の参照符号を図面に付する。添付図面の対応する図は、下記を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の注型薄膜製造装置を備える薄膜延伸装置の平面図
図2】本発明の注型薄膜製造装置の開口金型と冷却ロールを示す斜視図
図3A図2に示す開口金型と冷却ロールの正面図
図3B】冷却ロールに密着する注型薄膜縁を示す部分断面図
図3C】冷却ロールの長手方向横軸に沿う注型薄膜の温度変化を示すグラフ
図4図2の注型薄膜製造装置に第1の感知装置と電極片を設けた斜視図
図5A図4に示す感知装置と一対のIR検出器を設けた部分断面図
図5B】注型薄膜縁の内側に移動した感知装置とIR検出器の部分断面図
図5C】注型薄膜縁上と外部に移動する感知装置とIR検出器の部分断面図
図5D】注型薄膜縁内と上部に移動する感知装置とIR検出器の部分断面図
図6A】感知装置をレーザ走査機で構成した注型薄膜製造装置の斜視図
図6B】注型薄膜縁の内部から外部を走査するレーザ走査機の部分断面図
図6C】レーザ走査機による冷却ロールの長手方向横軸に沿う注型薄膜の温度変化を示すグラフ
図7】注型薄膜縁の位置を検出するレーザ距離計を使用する部分断面図
図8A】冷却ロールの長手方向横軸に沿う注型薄膜を監視するカメラの斜視図
図8B図8Aのカメラに面状走査カメラを使用する斜視図
図9】電極片を挿入した管状絶縁片の断面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、薄膜延伸装置3の一部を構成する注型薄膜2を製造する従来の注型薄膜製造装置1の平面図を示す。図1の実施の形態では、薄膜延伸装置3は、同時延伸装置を示すが、例えば、縦横逐次延伸装置等他形式の延伸装置にも本発明の実施の形態を適用できる。注型薄膜2を製造する本発明の注型薄膜製造装置1は、薄膜延伸装置3の工程先端に配置される開口(スリット)金型4(図2)と冷却ロール5とを備える。冷却ロール5は、対向両端面5a, 5bと、両端面5a, 5b間に設けられる円筒状外被6とを備える。
【0036】
回転する冷却ロール5の表面6aの当接領域9上に樹脂溶融物7(図3A及び図6A)が開口金型4から排出されて、冷却ロール5の表面6a上に注型薄膜2が形成される。
【0037】
開口金型4から排出される注型薄膜2が冷却ロール5の表面6aに最初に接触する当接領域9に対して、冷却ロール5の引出領域10は、冷却ロール5の回転方向でずれて配置され、冷却ロール5の引出領域10の表面6aから注型薄膜2を引出して、薄膜延伸装置3の後工程に設けられる装置に直接又は間接的に注型薄膜2を供給することができる。
【0038】
図1の例では、冷却ロール5の後段に少なくとも1つの別のロール11が配置される。また、床面から異なる距離で追加の複数のロールを設けて、注型薄膜2を蛇行して搬送することもできる。
【0039】
次に、注型薄膜2は、薄膜延伸装置3の予熱領域12aに供給される。予熱領域12aでは、注型薄膜2は、特定の温度に加熱される。予熱領域12aの次に設けられる延伸領域12bは、移動方向に対して横断方向及び/又は長手方向に注型薄膜2を引伸ばし、延伸する。延伸領域12bに続く複数の後処理領域12cでは、注型薄膜2は、適切な温度に調節される。温度調節領域は、アニール領域又は内部応力緩和領域とも呼ばれる。薄膜延伸装置3の一端12dから排出される注型薄膜2は、図示しないローラに適宜巻取られる。
【0040】
図2は、注型薄膜2を製造する本発明の注型薄膜製造装置1の一部を示す。樹脂溶融物7は、冷却ロール5の表面6aの当接領域9に開口金型4から排出される。本実施の形態では、冷却ロール5は、反時計方向に回転される。
【0041】
電界により注型薄膜2内に複数の双極子(電荷の対)が適宜配向されて、冷却ロール5に対して最適に当接する注型薄膜2の冷却ロール5の表面6aからの過度の突出が、阻止される。この目的で、針金又は棒として形成される電極片15が、冷却ロール5の当接領域9と引出領域10との間に設けられる。電極片15は、冷却ロール5の表面6aから距離を空けて配置され、少なくとも冷却ロール5の長さの一部分に沿って両端面5a, 5b間に配置される。冷却ロール5の全長に沿って電極片15を配置してもよい。
【0042】
針金又は棒で構成される電極片15と注型薄膜2との間には、導電性材料製の又は導電性材料を含むブラシは特に配置されない。換言すれば、針金又は棒と注型薄膜2との間の空間には、ブラシがなく、注型薄膜2の全幅に沿って針金又は棒が配置される。
【0043】
注型薄膜2の全領域を覆う導電性植毛を備えるブラシは、電極片15に設けられない。
【0044】
従って、針金又は棒から発信される電界のみにより又は主に(80%以上)電界により、複数の双極子を注型薄膜2内に配向することが好ましい。
【0045】
高電圧発生装置(不図示)は、発生する高電圧(直流電圧)を電極片15に印加する。高電圧レベルは、注型薄膜2の材料と、電極片15と注型薄膜2との距離と、注型薄膜2を移動する速度とに依存する。電極片15への印加電圧は、基本的に、数kVから30kV、40kV、50kV、60kVまでの範囲である。例えば、高印加電圧は、3kV、5kV、7kV、10kV、15kV、20kV又は25kVより大きくかつ50kV、40kV、30kV、20kV、15kVより小さいことが好ましい。
【0046】
開口金型4から排出される樹脂溶融物7の厚さを5μm~5000μm範囲に設定できる。
【0047】
樹脂溶融物7の材料又は排出速度により、注型薄膜2の収縮量Eは、相違するため、異なる寸法の注型薄膜2が形成される(図3A)。収縮幅Eは、樹脂溶融物7の収縮量である。収縮幅Eは、開口金型4の幅と、冷却ロール5の表面6aに接触する注型薄膜2の幅との差を2で割った値である。
【0048】
収縮幅Eは、冷却ロール5の回転速度のみならず、他の媒介変数(注型薄膜2の材料及び温度等)にも依存する。媒介変数は、生産工程中に変化することがある。
【0049】
非導電性材料(誘電体)で構成される樹脂溶融物7と注型薄膜2は、電極片15と注型薄膜2で覆われる冷却ロール5領域との間に電圧放電路橋絡を発生しない。左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bの冷却ロール5への移行部にのみ、圧放電路橋絡が、形成されることがある。
【0050】
冷却ロール5の円筒状外被6と電極片15との間に絶縁体20を配置する本発明の注型薄膜製造装置1では、放電路橋絡を回避することができる。絶縁体20は、滑動可能に配置される。冷却ロール5の円筒状外被6の中央5c又は冷却ロール5の各端面5a, 5bに対し、進退自在に絶縁体20を移動することができる。
【0051】
図2は、左絶縁片20aと右絶縁片20bとを備える絶縁体20を示す。冷却ロール5の左端面5aから中央5c方向にかつ中央5cから左端面5aの逆方向にも左絶縁片20aを移動できる。冷却ロール5の右端面5bから冷却ロール5の中央5c方向にかつ中央5cから右端面5bの逆方向にも右絶縁片20bも移動できる。
【0052】
互いに独立して左絶縁片20aと右絶縁片20bを移動できることが好ましい。図示の実施の形態では、電極片15の端部と冷却ロール5と上方に配置される左絶縁片20aは、板状に形成されるが、電極片15が帯状、針金状又は棒状に好適に形成されるとき、左絶縁片20aは、電極片15が貫通する管状に形成される。同様の構成を右絶縁片20bにも採用できるが、右絶縁片20bとは異なる構造を左絶縁片20aに採用できる。
【0053】
図9は、中空の輪郭又は管としてを形成される両絶縁片20a, 20bの断面を示す。電極片部15は、中空の両絶縁片20a, 20bの内部空洞を貫通するので、電極片15に沿って絶縁片20a, 20bを滑動することができる。柔軟な設計が可能な電極片15は、管状の両絶縁片20a, 20bの中心に必ずしも配置されず、管状の両絶縁片20a, 20bの内壁から異なる距離に間隔を空けて両絶縁片20a, 20b内に配置することができる。両絶縁片20a, 20bの内径よりも小さく電極片15の直径を形成して、電極片15の周方向領域と絶縁片20a, 20bとの間に間隙又は空洞を形成し、電極片15に沿って、絶縁片20a, 20bを容易に滑動することが望ましい。任意(例えば、角型、楕円型等)の断面で中空又は管状の両絶縁片20a, 20bを形成できる。本実施の形態では丸断面であるが、必ずしも円形断面にする必要はない。
【0054】
また、両絶縁片20a, 20bを篏合構造で形成することもできる。
【0055】
絶縁片20a, 20bの両内端面のみに設けられる開口部から、針金状又は棒状に形成される電極片15を導出することが好ましい。例えば、電極片15の冷却及び/又は洗浄に使用する加圧ガスは、絶縁片20a, 20bには設けられない。管状の絶縁片20a, 20b内の空気圧は、絶縁片20a, 20b外の空気圧に等しいことが好ましい。
【0056】
電極片15を一体に形成することが好ましい。注型薄膜2の上方又は冷却ロール5の上方に配置される電極片15部分は、特に一体に構成される。これは、例えば針金又は棒を採用する電極片15に該当する。
【0057】
電極片15から冷却ロール5までの距離は、電極片15又は冷却ロール5の全長に沿ってほぼ一定が好ましい。電極片15の部分領域(注型薄膜2が下方に配置される領域)では、電極片15から冷却ロール5までほぼ一定の距離であることが当然好ましい。用語「ほぼ」は、10mm、8mm、6mm、4mm未満又は2mm未満の差異が好ましいと理解される。使用するブラシの各ブラシ植毛間に形成される中間領域では、電極片15から冷却ロール5までの距離は常に一定ではない。
【0058】
空洞のない針金状又は棒状の電極片15が好ましい。特に、長手方向に形成される(ほぼ全長又は全長に沿って針金又は棒が貫通する)空洞は、針金状又は棒状に形成されない。また、針金状又は棒状に空気導管を形成しない電極片15が好ましい。
【0059】
中空輪郭又は管状に形成される絶縁片20a, 20bを通り長手方向に形成される受容管の断面形状は、電極片15の断面形状に相当し又は近似する。絶縁片20a, 20bの受容導管は、円形断面が好ましい。
【0060】
図4は、駆動装置26の駆動を制御する制御装置25も示す。制御装置25により電気駆動装置26で構成される駆動装置26を作動して、冷却ロール5の中央5c方向又は各端面5a, 5b方向に接近させて絶縁体20を移動することが好ましい。駆動装置26は、左駆動モータ26aと右駆動モータ26bとを備えることが好ましい。左絶縁片20aに作動連結される左駆動モータ26aを駆動すると、冷却ロール5の中央5c方向又は左端面5a方向の何れかに左絶縁片20aを滑動又は移動させる。右絶縁片20bに作動連結される右駆動モータ26bを駆動すると、右駆動モータ26bは、冷却ロール5の中央5c方向又は右端面5b方向の何れかに右絶縁片20bを滑動又は移動する。
【0061】
左駆動モータ26aと右駆動モータ26bとを備える駆動装置26と制御装置25との制御接続線を破線で示す。
【0062】
図3Bは、注型薄膜2と冷却ロール5との一部断面を示す。
【0063】
注型薄膜2は、ほぼ一定厚みを有する標準中央領域Cを含む。左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bに向かって厚みが増加する。左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bは、縁領域Bとも呼ばれる。左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bの縁領域Bの外側に、ロール端領域Aとも呼ばれる冷却ロール5の表面6aが露出する。注型薄膜2の標準中央領域Cよりも厚みのある左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bの縁領域Bは、厚み分温度も高い。
【0064】
図3Bは、電極片15と絶縁体20も示す。絶縁体20の下方には、左注型薄膜縁2a又は右絶縁片20bが配置される。本実施の形態では、左絶縁片20a又は右絶縁片20bは、左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bの縁領域Bのほぼ上方に配置されるが、注型薄膜2の標準中央領域C中に僅か(10cm、8cm、6cm、4cm、2cm又は1cm未満)に重複して、左絶縁片20a又は右絶縁片20bを配置してもよい。また、ロール端領域Aを構成する注型薄膜2で被覆されない冷却ロール5の表面6a上に、左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bの縁領域Bから、4cm、3cm、2cm、1cm又は0.5cm未満だけ距離を空けて左絶縁片20a又は右絶縁片20bを配置してもよい。
【0065】
電極片15は、管状の絶縁体20を貫通する。図9の説明を参照されたい。
【0066】
図3Bに示す側面を有する電極片15の少なくとも長さの一部と一体に絶縁体20を形成して、電極片15よりも冷却ロール5により近い位置に絶縁体20を配置してもよい。
【0067】
注型薄膜2の幅又は収縮幅Eが変化しても、制御装置25は、駆動装置26を駆動して、左(第1の)注型薄膜縁2a又は右(第2の)注型薄膜縁2bの縁領域B内に絶縁体20の左絶縁片20a又は右絶縁片20bを保持し続ける。
【0068】
駆動装置26の左駆動モータ26aと右駆動モータ26bには、ステッピングモータ又はサーボモータを使用することが好ましい。
【0069】
注型薄膜製造装置1を始動すると、制御装置25は、駆動装置26を作動して、左絶縁片20aと右絶縁片20bを冷却ロール5の中央5c方向に移動させる。
【0070】
図3Cは、水平軸(横座標)の冷却ロール5の長手方向に沿う注型薄膜2の温度曲線領域A、B、Cを示すグラフである。注型薄膜2の標準中央領域Cは、冷却ロール5のロール端領域Aの表面6aより温度が高いが、左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bの縁領域Bは、標準中央領域Cより著しく温度が高い。温度曲線は、標準中央領域Cから縁領域Bで上昇し、縁領域Bから冷却ロール5の表面6a(ロール端領域A)への移行部で再び下降する。
【0071】
図4に示す注型薄膜製造装置1は、左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bを検出する感知装置30を備える。感知装置30は、左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2aの位置を継続的に検出する。感知装置30は、左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bの円筒状外被6に対する相対的な位置又は冷却ロール5の左端面5a若しくは右端面5bに対する相対的な位置を原理上検出する。感知装置30が検出する左注型薄膜縁2aの位置情報(位置信号)と、右注型薄膜縁2bの位置情報とに基づいて、制御装置25は、駆動装置26を作動して、冷却ロール5の左端面5aと左注型薄膜縁2aとの間又は冷却ロール5の右端面5bと右注型薄膜縁2bとの間に絶縁体20を移動させて、電極片15と冷却端面5aロール5との間の電圧放電路橋絡を回避することができる。制御装置25への図4に破線で示す制御接続線は、感知装置30と制御装置25とを接続するデータ交換用信号回路を示す。感知装置30は、複数の測定値を制御装置25に転送する。
【0072】
注型薄膜2の搬送方向に開口金型4の下流かつ電極片15の上流に感知装置30の感知領域31(図5A)を設ける点が特に重要である。図4に示すように、注型薄膜2の移動方向に開口金型4と電極片15との間に感知装置30を設けることが好ましい。開口金型4と電極片15との間に感知装置30を配置すると、注型薄膜2が電極片15の下方を通過する前時点で、感知装置30が左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bを検出できる重要な利点が生ずる。特に、感知装置30が左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bを早期に検出又は感知して、収縮量Eが変化しても、制御装置25は、駆動装置26を迅速に駆動して、左絶縁片20aと右絶縁片20bを備える絶縁体20を移動できるので、収縮量Eの変化時でも、電極片15と冷却ロール5との間の放電路橋絡形成を阻止することができる。
【0073】
尤も、電極片15の下流に感知装置30の感知領域31を設ける構造も考えられる。この構造では、電極片15の下方を注型薄膜2が貫通した後、感知装置30は、初めて左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bを検出する。この場合も感知装置30は、左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bを検出する。この領域に感知装置30を設けることが好ましい。感知装置30は、例えば、単一又は複数のカメラ35(図8A)でよい。また、別の複数の感知装置30を採用することもできる。
【0074】
図4に示す感知装置30は、左注型薄膜縁2aを検出する左感知装置30aと、右注型薄膜縁2bを検出する右感知装置30bとを備える。
【0075】
図4に示す実施の形態の左感知装置30aは、第1のIR(赤外線)検出器30a1と第2のIR検出器30a2とを備える。右感知装置30bは、第1のIR検出器30b1と第2のIR検出器30b2とを備える。左感知装置30aの第1のIR検出器30a1と第2のIR検出器30a2の感知領域31は、冷却ロール5の長手方向Xにずれて、特に、互いにほぼ又は完全に重複せずに設定される。左感知装置30aの第2のIR検出器30a2の感知領域31は、左感知装置30aの第1のIR検出器30a1の感知領域31よりも、冷却ロール5の左側端面5aにより近い位置に設定される。左感知装置30aの第1のIR検出器30a1は、内側IR検出器30a1とも呼ばれる。他面、左感知装置30aの第2のIR検出器30a2は、左感知装置30aの外側IR検出器30a2と呼ばれる。左感知装置30aの第1のIR検出器30a1と第2のIR検出器30a2全体を、原理的に冷却ロール5の長手方向Xに互いにずれて設定してもよい。
【0076】
右感知装置30bの第1のIR検出器30b1と第2のIR検出器30b2にも同様の構成を採用できる。第1のIR検出器30b1と第2のIR検出器30b2も、冷却ロール5の長手方向に互いにずれて配置され、右感知装置30bの第2のIR検出器30b2の感知領域31は、右感知装置30bの第1のIR検出器30b1の感知領域31よりも、冷却ロール5の右端面5bに近い位置に設定される。ほぼ又は全く重複せずに設定される感知領域31が好ましい。
【0077】
左感知装置30aと右感知装置30bの第1のIR検出器30a1又は30b1及び第2のIR検出器30a2又は30b2の複数の感知領域31は、複数の点状感知領域31となる。感知領域31を極力拡張せずに設定しかつ冷却ロール5又は注型薄膜2に極力接近させて、左感知装置30aと右感知装置30bを配置すべきである。感知領域31は、冷却ロール5から100cm、80cm、70cm、50cm、40cm、30cm、20cm、10cm又は5cm未満だけ離間して配置される。尤も、過度の高温による感知装置30の熱破損阻止に注意すべきである。感知装置30及び左感知装置30a又は右感知装置30bの温度を不図示の冷却装置により調節する相応の筐体を設けることが原理的に可能である。
【0078】
左感知装置30aと右感知装置30bの各IR検出器30a1, 30a2, 30b1, 30b2の検出器光線32を、照射角度90°で冷却ロール5に投光することが好ましいが、90°から逸脱する複数の照射角度も考えられる。何れにしても、左感知装置30aと右感知装置30bの各IR検出器30a1, 30a2, 30b1, 30b2の検出器光線32が冷却ロール5の表面6aに投光(衝突)する角度は、75°、80°、85°、90°、95°、100°、105°、110°、115°、120°、125°又は130°よりも大きくかつ140°、135°、130°、125°、120°、115°、110°、105°、100°、95°、90°、85°、80°、又は75°よりも小さい。
【0079】
左絶縁片20aと同期して左感知装置30aを移動することが好ましい。同様の構成を右感知装置30bにも適用して、右絶縁片20bに同期して右感知装置30bを移動することが好ましい。左感知装置30aの各IR検出器30a1, 30a2の相対的移動を抑制することが好ましい。同様の構成を右感知装置30bの各IR検出器30b1, 30b2にも適用できる。しかし、左感知装置30aの各IR検出器30a1, 30a2及び/又は右感知装置30bの各IR検出器30b1, 30b2を、個別にかつ/又は他の感知装置30a, 30bの各IR検出器30a1, 30a2, 30b1, 30b2に対して滑動させてもよい。2つのIR検出器30a1, 30a2又は30b1, 30b2を正に左感知装置30aと右感知装置30bに使用できる。また、3つ以上のIR検出器30a1, 30a2又は30b1, 30b2を使用することもできる。感知装置30a, 30b毎に単一のIR検出器30a1, 30a2, 30b1, 30b2のみを使用してもよい。特に、各感知装置30a, 30bの他方のIR検出器30a1, 30a2, 30b1, 30b2の故障時の緊急実行プログラムにより、これを実施できよう。IR検出器30a1, 30a2, 30b1, 30b2の故障時に、音響警告及び/又は視覚的警告を発することが好ましい。
【0080】
注型薄膜2を製造する本発明の注型薄膜製造装置1の作用を図5A図5Dについて説明する。制御装置25は、左感知装置30aと右感知装置30bの第1のIR検出器30a1, 30a2と第2のIR検出器30b1, 30b2の測定値を検出する。図5Aは、注型薄膜2から露出する冷却ロール5の表面6aの温度を検出する右感知装置30bの両IR検出器30b1, 30b2を示す。両IR検出器30b1, 30b2は、右絶縁片20bに同期して移動される。図5Aに示す右感知装置30bの第1のIR検出器30b1と第2のIR検出器30b2の測定値は、第1の温度閾値より低いため、冷却ロール5の中央5c方向に右絶縁片20bを移動すべきである。標準中央領域Cの注型薄膜2の温度と、冷却ロール5のロール端領域Aの温度との中間温度値に、第1の温度閾値が、設定される。制御装置25は、駆動装置26を駆動して、冷却ロール5の中央5c方向に右絶縁片20bを更に移動させる。
【0081】
図5Bは、IR検出器30bを注型薄膜2の内側への逆方向移動を示す。第1のIR検出器30b1と第2のIR検出器30b2は、標準中央領域Cの注型薄膜2の温度を検出する。右感知装置30bの第1のIR検出器30b1と第2のIR検出器30b2の測定値は、第2の温度閾値より高いため、制御装置25は、駆動装置26を駆動して、冷却ロール5の右端面5b方向に右絶縁片20bを移動させる。第2の温度閾値は、第1の温度閾値と同一でもよいが、第1の温度閾値よりも高い第2の温度閾値の方が好ましい。冷却ロール5の表面6aの温度と、注型薄膜2の標準中央領域Cの温度との中間に第2の温度閾値を設定すことが好ましい。
【0082】
図5Cは、右絶縁片20bの配置位置を示す。右感知装置30bの第2のIR検出器30b2の測定値から所定の限界値分だけずれる右感知装置30bの第1のIR検出器30b1の測定値に対応して、右絶縁片20bもずれて配置される。図示の実施の形態では、第1のIR検出器30b1は、右注型薄膜縁2bの温度を検出し、第2のIR検出器30b2は、冷却ロール5の表面6aの温度を検出する。右絶縁片20bは、ほぼ右注型薄膜縁2bの高さに保持される。
【0083】
第1のIR検出器30b1は、注型薄膜2の標準中央領域Cの温度を検出し、逆に第2のIR検出器30b2は、右注型薄膜縁2の温度を検出することも原理的に可能である。この検出状況を図5Dに示す。対応配置位置に右絶縁片20bを保持することができる。
【0084】
左注型薄膜縁2aと左絶縁片20aに対する左感知装置30aの第1のIR検出器30a1と第2のIR検出器30a2にも、前記の説明を適用できる。
【0085】
冷却した共通の筐体内に左感知装置30aの第1のIR検出器30a1と第2のIR検出器30a2を配置することが好ましい。右感知装置30bの第1のIR検出器30b1と第2のIR検出器30b2にも同様の構成を適用できる。
【0086】
右感知装置30bの第1のIR検出器30b1の測定値は、第2の温度閾値より高くかつ第3の温度閾値より低いが、右感知装置30bの第2のIR検出器30b2の測定値が、第3の温度閾値より高く又は第1の温度閾値より低いとき、制御装置25は、基本的に対応配置位置に右絶縁片20bを保持する。このとき、第3の温度閾値は、注型薄膜2の標準中央領域Cの平均温度より高い。特に、第3の温度閾値は、注型薄膜2の標準中央領域Cの温度と、注型薄膜2の各縁領域Bの温度とのほぼ中間値である。この状況を図5Dに示す。右感知装置30bの第1のIR検出器30b1の測定値が、第3の温度閾値より高くかつ右感知装置30bの第2のIR検出器30b2の測定値が、第1の温度閾値より低いときも、制御装置25は、右絶縁片20bを対応配置位置に保持する。この状況を図5Cに示す。このとき、第1のIR検出器30b1は、右注型薄膜縁2bの温度を測定し、第2のIR検出器30b2は、冷却ロール5の表面6aの温度を測定する。
【0087】
左感知装置30aの第1のIR検出器30a1と第2のIR検出器30a2にも、前記説明を適用する。
【0088】
約言すると、左感知装置30aの第1のIR検出器30a1と第2のIR検出器30a2は、注型薄膜2の標準中央領域Cの温度値、注型薄膜2の縁領域Bの温度値又は冷却ロール5のロール端領域Aの温度値を測定する。両IR検出器30a1, 30a2が冷却ロールの領域Aの温度を測定するとき、制御装置25は、冷却ロール5の中央5c方向に左絶縁片20aを移動し又は両IR検出器30a1, 30a2が注型薄膜2の標準中央領域Cの温度を測定するとき、冷却ロール5の左端面5a方向に左絶縁片20aを移動する。両IR検出器30a1, 30a2が異なる複数の領域A, B, Cの温度を測定するとき、制御装置25は、左絶縁片20aを対応配置位置に保持する。両IR検出器30b1, 30b2を備える右感知装置30bにも同様の構成を適用できる。
【0089】
図6A図6B図6Cは、感知装置30の異なる実施の形態を示す。感知装置30は、左レーザ走査機36aと右レーザ走査機36bとを備える。左注型薄膜縁2aの領域に配置される左レーザ走査機36aは、注型薄膜2までの距離又は注型薄膜2の厚さを測定し、制御装置25は、レーザ走査機の測定値に基づいて左注型薄膜縁2aを継続的に検出して駆動装置26を作動して、冷却ロール5の中央5c又は左端面5aに対し進退自在に左絶縁片20aを移動する。
【0090】
右レーザ走査機36bにも同様の構成を採用できる。右注型薄膜縁2bの領域に配置される右レーザ走査機36bは、注型薄膜2までの距離又は注型薄膜2の厚さを測定し、制御装置25は、右注型薄膜縁2bを継続的に検出する。
【0091】
図6Bは、注型薄膜2の標準中央領域Cよりも大きい厚みを有する左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bの縁領域Bを示す。
【0092】
測定した注型薄膜2の一連の厚さ情報(厚さ信号)(冷却ロール5の長手方向に沿う)に基づいて、制御装置25は、注型薄膜2の縁領域Bを正確に決定し、注型薄膜2の縁領域Bの上方で左絶縁片20a又は右絶縁片20bを静止させる。
【0093】
図6Cは、注型薄膜2の変化する厚さグラフを示す。ロール端領域Aでは、レーザ走査機32a, 32bまでの距離の最大値を測定し、縁領域Bでは、レーザ走査機32a, 32aまでの最小距離を測定し、縁領域Bの内側に配置される標準中央領域Cへの距離を測定する。
【0094】
静止して配置する利点を有するレーザ走査機32a, 32bの採用が好ましい。また、冷却ロール5の長軸と平行に配置するレーザ走査機32a, 32bが好ましい。
【0095】
図7は、左レーザ距離計33aと右レーザ距離計33bの感知装置30を設ける本発明の注型薄膜製造装置1の実施の形態を示す。冷却ロール5から離間して配置される図7に示す右レーザ距離計33bのレーザ光線34は、冷却ロール5の表面6aと平行に投光され、右縁領域Bの右注型薄膜縁(側部)2bに照射(衝突)される。右レーザ距離計33bは、右縁領域Bの右注型薄膜縁2bまでの距離を測定して、制御装置25に距離情報(距離信号)を伝送する。制御装置25は、測定した距離情報に基づいて右注型薄膜縁2bを継続的に検出し、右絶縁片20bを移動して、右注型薄膜縁2bの上方で右絶縁片20bを静止させる。冷却ロール5から離れた非高温暴露位置にレーザ距離計33bを配置できるレーザ距離計33bを採用する利点がある。
【0096】
左注型薄膜縁2aにレーザ光を照射する左レーザ距離計33aにも、右レーザ距離計33bの説明を同様に適用できる。
【0097】
図8A図8Bは、本発明の注型薄膜製造装置の別の実施の形態を示す。感知装置30には、複数のカメラ35が設けられる。第1の応用例Iの感知装置30に設けられるカメラ35は、冷却ロール5の領域(樹脂溶融物7の当接領域9と電極片15との間に形成される領域)に方向付けされて、注型薄膜2の全幅(点線)を撮影する。制御装置25は、カメラ35が撮影した映像信号に基づいて、左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bを継続的に検出する。カメラ35は、線状走査カメラである。
【0098】
第2の応用例IIの感知装置は、左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bに方向付けされる2台のカメラを備える。制御装置25は、各カメラの画像情報(画像信号)に基づいて、左注型薄膜縁2a又は右注型薄膜縁2bを継続的に検出する。線状走査カメラをカメラに使用することが好ましい。
【0099】
第3の応用例IIIは、開口金型4と冷却ロール5上の樹脂溶融物7の当接領域9との間の領域に方向付けされるカメラ35を備える。例えば、線状走査カメラとして注型薄膜2の全幅を撮影するカメラを設けて、制御装置25により、カメラの撮影情報(撮影信号)に基づいて左注型薄膜縁2aと右注型薄膜縁2bの位置を継続的に検出することが好ましい。また、透過光測定を行うことが好ましい。
【0100】
第1のカメラの透過光測定法により左注型薄膜縁2aを検出し、第2のカメラの透過光測定法により右注型薄膜縁2bを検出する2台のカメラ(不図示)を採用できる。
【0101】
第1の応用例Iに対応するが、第1の応用例Iとは異なり、第4の応用例IVのカメラ35は、面状走査カメラである。
【0102】
第2の応用例IIに対応するが、第2の応用例IIとは異なり、第5応用例Vでの第1の及び第2のカメラ35は、面状走査カメラである。
【0103】
可視光波長範囲(約400nm~750nm)又は赤外線波長領域で動作するカメラ35又は第1のカメラ及び/又は第2のカメラが設けられる。
【0104】
線状走査カメラ又は面状走査カメラとして、カメラ35又は第1のカメラ及び/又は第2のカメラを設けることができる。距離計33a, 33bと同様に、静止してカメラを配置することが好ましい。
【0105】
本発明は、前記実施の形態に限定されない。本発明に関する全説明及び/又は図示する特徴を任意に相互に組み合わせることができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9