(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】放射線センサ素子及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/144 20060101AFI20240402BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240402BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L27/144 K
H01L27/146 A
H01L31/00 A
(21)【出願番号】P 2021570917
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 FI2020050352
(87)【国際公開番号】W WO2020240087
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-29
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519280955
【氏名又は名称】エルフィス オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】ハーラヒルトゥネン アンッティ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイノネン ユハ
(72)【発明者】
【氏名】ユントゥネン ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】モダネーゼ キアラ
(72)【発明者】
【氏名】パサネン トニ
(72)【発明者】
【氏名】サヴィン ヘレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァハニッシ ヴィレ
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-296827(JP,A)
【文献】特開2013-033864(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017305(WO,A1)
【文献】特開2015-220313(JP,A)
【文献】特開2003-086827(JP,A)
【文献】特開平06-244444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/144
H01L 27/146
H01L 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板(101)を備える放射線センサ素子(100)であって、前記半導体基板(101)は、第1の極性のバルク多数電荷キャリア、バルク屈折率、前記半導体基板(101)の前側を画定する前表面(102)、及び、前記前表面(102)の反対側に配置されて実質的にベース平面(104)に沿って延在する後表面(103)を有し、
前記放射線センサ素子(100)が複数のピクセル部(110)を備え、前記複数のピクセル部(110)の各ピクセル部(111,112)は、前記第1の極性と符号が反対の第2の極性の自由電荷キャリアを収集するための収集領域(120)を前記後表面(103)上に備え、
前記複数のピクセル部(110)の各ピクセル部(111,112)は、前記前表面(102)上にテクスチャ領域(130)を備え、前記テクスチャ領域(130)は、前記ベース平面(104)に対して垂直な厚さ方向に実質的に沿って延在するとともに光変換層(136)を形成する高アスペクト比ナノ構造(135)を備え、前記光変換層(136)は、シンチレータ(170)によって放出されて前記半導体基板(101)の前記前側から前記ピクセル部に入射する光の反射を低減するために前記バルク屈折率に向かって徐々に変化する有効屈折率を有し、
前記放射線センサ素子(100)は、前記複数のピクセル部(110)のうちの2つのピクセル部(111,112)間にある中間部(140)を備え、前記中間部(140)は、前記2つのピクセル部(111,112)のいずれかのテクスチャ領域(130)の二乗平均平方根粗さであるRMS粗さよりも低いRMS粗さを伴う中間領域(141)を前記前表面(102)上に備え、
前記放射線センサ素子(100)は、前記中間領域(141)に結合される前記シンチレータ(170)を備える、
放射線センサ素子(100)
であって、
前記中間領域(141)のRMS粗さは、前記2つのピクセル部(111,112)のいずれかのテクスチャ領域(130)のRMS粗さの0.2倍又は0.1倍又は0.05倍又は0.01倍以下であ
る放射線センサ素子(100)。
【請求項2】
前記中間領域(141)が前記ベース平面(104)と略平行に延在する、請求項
1に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項3】
前記2つのピクセル部(111,112)のテクスチャ領域(130)は、前記ベース平面(104)までの最大距離d
tr
maxを有し、前記中間領域(141)は、d
tr
maxよりも大きい前記ベース平面(104)までの最小距離d
ir
minを有する、請求項1
又は2に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項4】
前記半導体基板(101)の前記前側に金属コーティング(160)を備え、前記ベース平面(104)上の前記金属コーティング(160)の投影が前記ベース平面(104)上の前記中間領域(141)の投影と交差する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項5】
前記半導体基板(101)及び前記高アスペクト比ナノ構造(135)がシリコンSiから形成される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項6】
前記放射線センサ素子(100)は、前記高アスペクト比ナノ構造(135)をコンフォーマルコーティングする誘電体材料(150)を備える、請求項1から
5のいずれか一項に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項7】
前記誘電体材料(150)が前記第2の極性の正味電荷を有する、請求項
6に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項8】
前記収集領域(120)は、前記第2の極性の多数電荷キャリアを伴う収集ドーピングウェル(121)によって画定される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項9】
前記半導体基板(101)の前記前側に配置されるシンチレータ(170)を備える、請求項1から
8のいずれか一項に記載の放射線センサ素子(100)。
【請求項10】
複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法(300)において、
半導体基板を用意するプロセス(301)であって、前記半導体基板が、第1の極性のバルク多数電荷キャリア、バルク屈折率、前記半導体基板の前側を画定する前表面、及び、前記前表面の反対側に配置されて実質的にベース平面に沿って延在する後表面を有する、プロセス(301)と、
前記複数のピクセル部のそれぞれのピクセル部ごとに、前記第1の極性と符号が反対の第2の極性の自由電荷キャリアを収集するための収集領域を前記後表面上に形成するプロセス(302)と、
前記複数のピクセル部のそれぞれのピクセル部ごとに、前記前表面上にテクスチャ領域を形成するプロセス(303)であって、前記テクスチャ領域が、前記ベース平面に対して垂直な厚さ方向に実質的に沿って延在するとともに光変換層を形成する高アスペクト比ナノ構造を備え、前記光変換層が、シンチレータによって放出されて前記半導体基板(101)の前記前側から前記ピクセル部に入射する光の反射を低減するために前記バルク屈折率に向かって徐々に変化する有効屈折率を有する、プロセス(303)と、
前記複数のピクセル部のうちの2つのピクセル部間に中間部を形成するプロセス(304)であって、前記中間部が、前記2つのピクセル部のいずれかのテクスチャ領域の二乗平均平方根粗さであるRMS粗さよりも低いRMS粗さを伴う中間領域を前記前表面上に備える、プロセス(304)と、
前記シンチレータを前記中間領域上に結合するプロセス(305)と、
を含
み、
前記中間領域のRMS粗さは、前記2つのピクセル部のいずれかのテクスチャ領域のRMS粗さの0.2倍又は0.1倍又は0.05倍又は0.01倍以下である、
方法(300)。
【請求項11】
テクスチャ領域を形成する前記プロセス(303)は、金属支援化学エッチングMACEステップ、大気ドライエッチングADEステップ、及び/又は、反応性イオンエッチングRIEステップを含む、請求項1
0に記載の方法(300)。
【請求項12】
前記放射線センサ素子が請求項
1から
9のいずれか一項に記載の放射線センサ素子(100)である、請求項1
0又は1
1に記載の方法(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、放射線検出器に関する。特に、この開示は、半導体ピクセル検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ピクセル検出器は、家庭用電化製品において、例えばカメラにおいて、並びに、様々な産業的及び科学的な設定において、例えば、光検出器、X線検出器、及び、粒子検出器において、幅広く使用される。
【0003】
従来の検出器では、個々のピクセル間のクロストーク、例えば光学的クロストークが、多大な問題をもたらす場合がある。一般に、光学的クロストークは、誘電体反射防止コーティング層を堆積することによって低減されてきた。しかしながら、誘電体反射防止コーティングは、高い入射角で反射防止特性の低下を伴う場合がある。更に、電離放射線を非電離電磁放射に変換するためのシンチレータを備える従来の半導体検出器の場合、シンチレータを基板に結合することが困難な場合がある。
【0004】
これに照らして、半導体ピクセル検出器に関連する新たな解決策を生み出すことが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0005】
この概要は、以下の詳細な説明で更に記載される概念の選択を簡略化された形式で紹介するために提供される。この概要は、特許請求の範囲に記載される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定しようとするものではなく、特許請求の範囲に記載される主題の範囲を限定するべく使用されることも意図されていない。
【0006】
第1の態様によれば、放射線センサ素子が提供される。放射線センサ素子は半導体基板を備え、半導体基板は、第1の極性のバルク多数電荷キャリア、バルク屈折率、半導体基板の前側を画定する前表面、及び、前表面の反対側に配置されて実質的にベース平面に沿って延在する後表面を有する。
【0007】
放射線センサ素子は複数のピクセル部を備え、複数のピクセル部の各ピクセル部は、第1の極性と符号が反対の第2の極性の自由電荷キャリアを収集するための収集領域を後表面上に備える。
【0008】
複数のピクセル部の各ピクセル部は、前表面上にテクスチャ領域を備え、テクスチャ領域は、ベース平面に対して垂直な厚さ方向に実質的に沿って延在するとともに光変換層を形成する高アスペクト比ナノ構造を備え、光変換層は、半導体基板の前側から前記ピクセル部に入射する光の反射を低減するためにバルク屈折率に向かって徐々に変化する有効屈折率を有する。
【0009】
第2の態様によれば、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法が提供される。方法は、半導体基板を用意するプロセスであって、半導体基板が、第1の極性のバルク多数電荷キャリア、バルク屈折率、半導体基板の前側を画定する前表面、及び、前表面の反対側に配置されて実質的にベース平面に沿って延在する後表面を有する、プロセスと、複数のピクセル部のそれぞれのピクセル部ごとに、第1の極性と符号が反対の第2の極性の自由電荷キャリアを収集するための収集領域を後表面上に形成するプロセスと、複数のピクセル部のそれぞれのピクセル部ごとに、前表面上にテクスチャ領域を形成するプロセスであって、テクスチャ領域が、ベース平面に対して垂直な厚さ方向に実質的に沿って延在するとともに光変換層を形成する高アスペクト比ナノ構造を備え、光変換層が、半導体基板の前側から前記ピクセル部に入射する光の反射を低減するためにバルク屈折率に向かって徐々に変化する有効屈折率を有する、プロセスとを含む。
【0010】
本開示は、添付の図面に照らして読まれる以下の詳細な説明からより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の断面IIに沿う放射線センサ素子の部分断面図を示す。
【
図3】複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法を示す。
【0012】
特に反対の記載がなければ、前述の図面のうちのいかなる図面も原寸に比例して描かれない場合があり、そのため、前記図面中の任意の要素は、前記図面の実施形態の特定の構造的態様を強調するべく、前記図面中の他の要素に対して不正確な比率で描かれる場合がある。
【0013】
更に、前述の図面のうちの任意の2つの図面の実施形態における対応する要素は、前記2つの図面の実施形態の特定の構造的態様を強調するべく、前記2つの図面において互いに不均衡となる場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び
図2は、一実施形態に係る放射線センサ素子100を示す。特に、
図2は、
図1の断面IIに沿う放射線センサ素子100の断面図を示す。
図2は放射線センサ素子100の断面を示すため、
図2は、
図1の断面IIと角度を成す任意の方向で
図1及び
図2の実施形態及びその任意の部分の形状を限定しない。他の実施形態において、放射線センサ素子は、
図1及び
図2の実施形態の放射線センサ素子100と同一であってもよく、類似であってもよく、又は、異なっていてもよい。
【0015】
本明細書中において、「放射線」は、例えば、電磁放射線及び粒子放射線を網羅して、広く理解されるべきである。放射線は、一般に、電離放射線又は非電離放射線に対応し得る。
【0016】
この明細書中において、「電離」放射線は、媒体中で電離を引き起こすのに十分な粒子エネルギー又は光子エネルギーを伴う放射線を指し得る。電離放射線は、例えば、少なくとも3.89電子ボルト(eV)、少なくとも10eV、又は、少なくとも33eVの粒子エネルギー又は光子エネルギーを伴う放射線を含み得る。一方、「非電離」放射線は、本明細書中では、媒体中で実質的な電離を引き起こすのに不十分な粒子エネルギー又は光子エネルギーを伴う放射線を指し得る。非電離放射線は、例えば、33eV未満、10eV未満、又は、3.89eV未満の粒子エネルギー又は光子エネルギーを伴う放射線を含み得る。
【0017】
この明細書の全体にわたって、「放射線検出器」は、完備した動作可能な放射線検出器を指し得る。放射線検出器は、一般に、少なくとも1つの放射線センサを備え得る。また、放射線検出器は、他の要素、ユニット、及び/又は、構造を備えてもよい。
【0018】
この開示において、「放射線センサ」は、放射線を検出及び/又は測定して前記放射線を登録する、表示する、及び/又は、前記放射線に応答するように構成される動作可能なユニット、モジュール、又は、デバイスを指し得る。
【0019】
更に、「放射線センサ素子」は、それ自体、放射線センサを形成し得る素子を指してもよい。或いは、放射線センサ素子は、他の要素及び/又は構造も備える放射線センサの1つの要素として使用されてもよい。放射線センサ素子が活性材料を備えてもよく、その物理的特性は、前記活性材料に入射する放射線を登録する、表示する、及び/又は、放射線に応答するために前記放射線センサ素子で利用される。放射線センサ素子は、間接変換放射線センサ素子又は直接変換放射線センサ素子に対応し得る。
【0020】
この開示の全体にわたって、「間接変換放射線センサ素子」は、電離放射線を非電離電磁放射線に変換するためのシンチレータと、シンチレータによって放出される電磁放射線を検出するための活性材料とを備える放射線センサ素子を指し得る。
【0021】
これに対し、「直接変換放射線センサ素子」は、前記電離放射線を検出するために電離放射線を非電離電磁放射線に変換するシンチレータの使用を必要としない放射線センサ素子を指し得る。
【0022】
この明細書中において、「シンチレータ」は、粒子放射線などの電離放射線によって励起されるときに発光する材料を備える要素を指し得る。一般に、シンチレータの発光は、大きな立体角に対する光の放出をもたらし得る。その結果、シンチレータからの光は、通常、高い入射角でテクスチャ領域に到達し得る。
【0023】
図1及び
図2の実施形態において、放射線センサ素子100は半導体基板101を備える。
【0024】
本明細書中において、「半導体」は、金属などの導電性材料の導電率と多くのプラスチック及びガラスなどの絶縁材料の導電率との間の中間の導電率を有する、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)などの材料を指し得る。半導体材料は、一般に、制御可能な態様で前記半導体材料の特性を調節するために調整され得るドーピングレベルを有し得る。
【0025】
この明細書の全体にわたって、「基板」は、その上に他の層又は他の要素又は構造が結合、接着、実装、配置、堆積、積層、及び/又は、製造され得る表面をもたらすのに適した又はそのような表面をもたらすように構成される層又は他の要素又は構造を指し得る。したがって、「半導体基板」は、半導体ウエハ又はダイなどの半導体材料を備える及び/又はそのような半導体材料から形成される基板を指し得る。
【0026】
図1及び
図2の実施形態の半導体基板101は、第1の極性のバルク多数電荷キャリアを有する。
図1及び
図2の実施形態の場合、第1の極性は負である。他の実施形態において、半導体基板は、負又は正であってもよい第1の極性のバルク多数電荷キャリアを有してもよい。
【0027】
この開示の全体にわたって、「電荷キャリア」は、要素又はその一部において電荷を運ぶ自由に移動する粒子又は準粒子を指し得る。一般に、そのような要素又はその一部は、1つ以上のタイプの電荷キャリアを備えてもよい。例えば、半導体は、電荷キャリアとして電子及び正孔を備えてもよい。したがって、「多数電荷キャリア」は、要素又はその一部においてより一般的又は豊富なタイプの電荷キャリアを指し得る。例えば、n型半導体では、電子が多数電荷キャリアとして作用し得る。更に、「バルク」は、要素のより大きな部分及び/又はより多くの部分を指し得る。これに加えて又は代えて、バルクは、要素の内部及び/又は中央部を指す場合がある。したがって、「バルク多数電荷キャリア」は、そのバルク部分における要素の多数電荷キャリアを指し得る。
【0028】
図1及び
図2の実施形態の半導体基板101はSiから形成されてもよい。他の実施形態において、半導体基板は、任意の適した材料、例えば、Si及び/又はGeを備えてもよい。
【0029】
図1及び
図2の実施形態の半導体基板101は、約4×10
11/立方センチメートル(cm
-3)以下のバルク多数電荷キャリア濃度に対応する、通常の温度及び圧力(NTP)条件で少なくとも100オームメートル(Ωm)のバルク電気抵抗率を有してもよい。他の実施形態において、Siから形成されてもされなくてもよい半導体基板は、任意の適したバルク多数電荷キャリア濃度、例えば、約1×10
20cm
-3又は1×10
16cm
-3又は1×10
12cm
-3以下のバルク多数電荷キャリア濃度を有してもよい。
【0030】
図1及び
図2の実施形態の半導体基板101はバルク屈折率を有する。
【0031】
この明細書において、媒体の「屈折率」は、真空中の光の速度と前記媒体中の光の位相速度との間の比率を指し得る。一般に、「屈折率」という用語は、複素数値屈折率を指してもよく又は指さなくてもよい。更に、要素の「バルク屈折率」は、前記要素のバルク部分の屈折率を指し得る。
【0032】
本明細書中において、「光」は、関連する波長の範囲内の任意の波長の電磁放射線を指し得る。関連する波長のそのような範囲は、電磁スペクトルの紫外線部分(約10ナノメートル(nm)~約400nmの波長)、可視部分(約400nm~約700nmの波長)、及び/又は、赤外線部分(約700nm~約1ミリメートル(mm)の波長)と重複又は一致してもしなくてもよい。
【0033】
図1及び
図2の実施形態の半導体基板101は前表面102を有する。半導体基板101の前表面102は、半導体基板101の前側を画定する。
【0034】
この開示の全体にわたって、「表面」は、ゼロ以外のおそらく位置依存の曲率を有し得るとともに、接続され、経路接続され、又は、単に接続されてもされなくてもよい、平面の一般化の有限部分を指し得る。これに加えて又は代えて、表面は、本体又は要素の外側境界の一部を指し得る。表面は、具体的には、特定の観察方向から見ることができる本体又は要素の外側境界の一部、或いは、その一部分を指し得る。
【0035】
図1及び
図2の実施形態の半導体基板101は後表面103を有する。半導体基板101の後表面103は、前表面102の反対側に配置され、仮想ベース平面104に沿って実質的に延在する。
【0036】
本明細書中において、「ベース平面」は、ゼロ以外のおそらく位置依存の曲率を有しても有さなくてもよい、平面の仮想一般化を指し得る。したがって、ベース平面は平坦であってもなくてもよい。
【0037】
図1及び
図2の実施形態のベース平面104は平坦である。他の実施形態において、半導体基板は、実質的に平坦な又は湾曲したベース平面に沿ってそれぞれ延在する前表面を有して、平坦であってもよく又は湾曲していてもよい。
【0038】
図1及び
図2の実施形態において、厚さ方向は、ベース平面104に対して垂直に規定される。厚さ方向は、
図1及び
図2において垂直に延在する。ベース平面が湾曲される幾つかの実施形態では、厚さ方向が位置に依存してもよい。他のそのような実施形態では、単一の位置に依存しない厚さ方向が規定されてもよい。
【0039】
図1及び
図2の実施形態において、放射線センサ素子100は複数のピクセル部110を備える。
【0040】
この開示の全体にわたって、要素又は特徴の「複数」は、前記要素又は特徴のそれぞれの2つ以上又は3つ以上などのグループを指し得る。更に、放射線センサ素子の「部」は、半導体基板の前表面上の領域から半導体基板の後表面上の領域まで延在する、放射線センサ素子の一部分を指し得る。本明細書中において、「領域」は、表面の一部分を指し得る。その結果、「ピクセル部」は、特に前記ピクセル部に入射する放射線を登録する、表示する、及び/又は、放射線に応答するために前記放射線センサ素子で利用され得る、放射線センサ素子の一部を指し得る。複数のピクセル部の個々のピクセル部は、互いに境を接していてもいなくてもよい。すなわち、それらのピクセル部は、互いに共通の境界を共有していてもいなくてもよい。そのような共通の境界は、例えば、半導体基板内で延在してもよい。
【0041】
図1及び
図2の実施形態において、複数のピクセル部110の個々のピクセル部は、同一又は類似の特徴を有してもよい。したがって、
図1及び
図2の実施形態の各ピクセル部が複数のピクセル部110に属してもよく、また、放射線センサ素子100が単一の複数のピクセル部110のみを備えてもよい。他の実施形態において、放射線センサ素子は、少なくとも1つ(すなわち、1つ以上、2つ以上など)の複数のピクセル部を備えてもよい。
【0042】
図1及び
図2の実施形態の複数のピクセル部110は、ピクセル部の規則的な矩形の2次元配列を形成する。他の実施形態において、複数のピクセル部は、ピクセル部の配列、例えば、規則的であってもなくてもよいとともに任意の適切な対称性を有してもよいピクセル部の1次元又は2次元配列を形成してもしなくてもよい。
【0043】
図1及び
図2の実施形態の複数のピクセル部110の個々のピクセル部は、ベース平面104と平行な1ミリメートル(mm)×1mmの横方向サイズを有してもよい。他の実施形態において、複数のピクセル部の個々のピクセル部は、例えば、任意の適した横方向の形状及びサイズ、例えば、実質的に立方体のピクセル部の場合には、5マイクロメートル(μm)×5μm~10mm×10mm又は10μm×10μm~1mm×1mm又は50μm×50μm~0.5mm×0.5mmの範囲の横方向サイズを有してもよい。
【0044】
図1及び
図2の実施形態において、複数のピクセル部110の各ピクセル部は、半導体基板101の後表面103上に収集領域120を備える。
【0045】
本明細書中において、「収集領域」は、第1の極性と符号が反対の第2の極性の自由電荷キャリアを収集するのに適した又は収集するように構成される、第1の極性のバルク多数電荷キャリアを伴う半導体基板の後表面上に配置されてもよい領域を指し得る。そのような自由電荷キャリアは、例えば、一体型の又は外部の電気読み出し回路に対して収集されてもよい。具体的には、ピクセル部の収集領域は、前記ピクセル部から自由電荷キャリアを収集するのに適していてもよく又は収集するように構成されてもよい。
【0046】
2つの典型的なピクセル部111,112に関して
図2に概略的に示されるように、収集領域120が収集ドーピングウェル121によって画定される。収集ドーピングウェルによって画定される収集領域は、放射線センサ素子の量子効率を高めることができる自由電荷キャリアの分離を促進し得る。他の実施形態において、収集領域は、任意の適切な手段によって、例えば、収集ドーピングウェルによって、又は、半導体基板とメタライゼーションパッド又は半田バンプなどの導体パターンとの間の界面によって、又は、半導体基板の後表面上の誘電体層におけるスルーホールによって画定されてもよい。
【0047】
この開示において、「層」は、一般に、表面上又は本体上に配置されるシート形状の要素を指し得る。これに加えて又は代えて、層は、一連の重ね合わされた、覆い被された、又は、積み重ねられた略シート形状の要素のうちの1つを指してもよい。層は、一般に、異なる材料又は材料組成物の複数の副層を備えてもよい。一部の層は経路接続されてもよく、一方、他の層は、局所的に経路接続され及び切断されていてもよい。
【0048】
この開示の全体にわたって、「誘電体」材料は、低い導電率を示すことができる材料を指し得る。これに加えて又は代えて、誘電体材料は電気的に分極可能であってもよい。一般に、誘電体材料は、任意の適した比誘電率、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、又は、少なくとも20の比誘電率を有し得る。したがって、誘電体層は、誘電体材料を備える又は誘電体材料から形成される層を指し得る。
【0049】
本明細書中において、層における「スルーホール」の存在は、前記層が不連続性を含むようなものである前記層の形状を指し得る。これに加えて又は代えて、スルーホールは、位相的(異質同形)な意味でのホールを指し得る。
【0050】
図1及び
図2の実施形態の収集ドーピングウェル121は、半導体基板101に形成される。そのような収集ドーピングウェルは、一般に、少なくとも部分的にドーパント注入ステップ及び/又はドーパント拡散ステップによって形成され得る。
【0051】
図1及び
図2の実施形態において、放射線センサ素子100は、
図2に示されるように、半導体基板101の後表面103上にバルク接触領域122を備える。一般に、半導体基板の後表面のそのようなバルク接触領域は、シンチレータを半導体基板に結合することを容易にし得る、及び/又は、個々のピクセルのための電気的接続が放射線センサ素子の1つ以上の側で必要ないときに、複数の放射線センサ素子を互いに近接して配置できるようにし得る。他の実施形態において、放射線センサ素子は、半導体基板の後表面上に配置されてもされなくてもよい1つ以上のバルク接触領域を備えてもよい。
【0052】
この明細書の全体にわたって、「バルク接触領域」は、第1の極性の自由電荷キャリアを収集する及び/又は前記半導体基板のバルク部分から自由電荷キャリアを収集するのに適した又は収集するように構成される、第1の極性のバルク多数電荷キャリアを伴う半導体基板の後表面などの表面上の領域を指し得る。
【0053】
図2に概略的に示されるように、バルク接触領域122はバルク接触ドーピングウェル123によって画定される。バルク接触ドーピングウェルによって画定されるバルク接触領域は、放射線センサ素子の量子効率を高めることができる自由電荷キャリアの分離を促進し得る。他の実施形態において、バルク接触領域は、任意の適切な手段によって、例えば、バルク接触ドーピングウェルによって、又は、半導体基板とメタライゼーションパッド又は半田バンプなどの導体パターンとの間の界面によって、又は、半導体基板上の誘電体層におけるスルーホールによって画定されてもよい。
【0054】
図1及び
図2のいずれにも具体的に示されないが、
図1及び
図2の実施形態の放射線センサ素子100などの放射線センサ素子は、一般に、収集領域及び/又はバルク接触領域に電気的に接続される導体パターンを備えてもよい。
【0055】
2つの典型的なピクセル部111,112に関して
図2に概略的に示されるように、複数のピクセル部110の各ピクセル部は、前表面102上にテクスチャ領域130を備える。
【0056】
本明細書中において、「テクスチャ領域」は、半導体基板の前表面上に配置されてもよい、滑らかでない、パターン化された、及び/又は、ナノ構造化された領域を指し得る。
【0057】
図1及び
図2の実施形態のテクスチャ領域130は高アスペクト比ナノ構造135を備える。
【0058】
この開示において、「高アスペクト比ナノ構造」は、それらの横方向寸法の数倍のそれらの高さを厚さ方向で有するナノ構造を指し得る。そのようなナノ構造は、例えば、円筒状の柱、円錐状の柱、又は、狭いピラミッドを備えてもよい。
【0059】
図1及び
図2の実施形態の高アスペクト比ナノ構造135は、実質的に厚さ方向に沿って延在する。ベース平面が湾曲される他の実施形態において、高アスペクト比ナノ構造は、実質的に、位置に依存する厚さ方向又は単一の位置に依存しない厚さ方向に沿って延在してもよい。
【0060】
2つの典型的なピクセル部111,112に関して
図2に概略的に示されるように、
図1及び
図2の実施形態の高アスペクト比ナノ構造135は光変換層136を形成する。光変換層136は、バルク屈折率n
Bに向かって徐々に変化する有効屈折率n
1
eff,n
2
effを有する。これは、半導体基板101の前表面から複数のピクセル部110の個々のピクセル部に入射する光の反射を低減する。一般に、そのような高アスペクト比ナノ構造は、特に放射線センサ素子の少なくとも1つのピクセル部の前側にシンチレータが配置されるようになっている場合に、放射線センサ素子の個々のピクセル部間の光学的クロストークを低減し得る。光学的クロストークのそのような低減は、例えば、シンチレータと半導体基板との間の放射線センサ素子内の反射の減少に起因し得る。
【0061】
この明細書の全体にわたって、「光変換層」は、放射線センサ素子にその前側から入射する光の反射を低減するべく周囲の屈折率niからバルク屈折率nBに向かって徐々に変化する有効屈折率neffを有する、横方向界面などの連続的な材料界面に基づいて画定できない場合がある層を指し得る。例えば、放射線センサ素子が約1の屈折率を伴う周囲空気に対する暴露下で使用されるように設計される場合、有効屈折率は、前記約1からバルク屈折率nBまで徐々に変化し得る。
【0062】
本明細書中において、「有効屈折率」は、光とナノ構造層との相互作用に関連する補助的な定義である。サブ波長の特徴又は実質的に関連波長の範囲内の特徴により、光は、そのようなナノ構造層において、そのような特徴がない同じ材料の対応する層とは異なる挙動を成し得る。この異なる挙動は、補助的な用語「有効屈折率」を使用して説明され得る。すなわち、あたかも変換層の各レベルでそのレベルにおける有効屈折率neffに等しい屈折率を有する徐々に変化するバルク材料から層が形成されているかのように、光がそのようなナノ構造層中で振る舞うとともにそのようなナノ構造層と相互作用する。
【0063】
図1及び
図2の実施形態の高アスペクト比ナノ構造135は不規則に配置される。高アスペクト比ナノ構造のそのような不規則な配置は、テクスチャ領域の反射率を低減し得る。他の実施形態において、高アスペクト比ナノ構造は、任意の適切な構成で、例えば、不規則に又は規則的に配置され得る。
【0064】
図2では、2つの光変換層136に関して、2つの有効屈折率n
1
eff,n
2
effが示される。このことは、n
1
eff,n
2
effが互いに独立し得ることを示す。したがって、n
1
eff,n
2
effは、光変換層136の任意の所定のレベルで互いに同一、類似、又は、異なる値を有し得る。他の実施形態において、任意の2つの光変換層の任意の2つの有効屈折率は、互いに独立していてもしなくてもよい。
【0065】
図1及び
図2の実施形態の高アスペクト比ナノ構造135は、半導体基板101と連続的であって一体である。更に、高アスペクト比ナノ構造135は、半導体基板101と共通の材料から形成される。
図1及び
図2の実施形態の場合、そのような共通の材料がSiであってもよい。一般に、半導体基板と共通の材料から形成される及び/又は半導体基板と連続する及び/又は半導体基板と一体の高アスペクト比ナノ構造は、一般に、低い再結合損失を示し得る。他の実施形態において、高アスペクト比ナノ構造は、半導体基板と共通の材料から形成されてもされなくてもよい及び/又は半導体基板と連続的及び/又は一体であってもなくてもよい。前記他の実施形態において、そのような共通の材料は、任意の適切な材料、例えば、Si又はGeであってもよい。
【0066】
図1及び
図2の実施形態の高アスペクト比ナノ構造135はブラックシリコン(b-Si)スパイクであってもよい。他の実施形態において、高アスペクト比ナノ構造は、b-Siスパイク又はバルク屈折率に向かって徐々に変化する有効屈折率を有する光変換層を形成するのに適した任意の他のナノ構造であってもよい。
【0067】
本明細書中において、「ブラックシリコン」は、徐々に変化する有効屈折率を有する光変換層をもたらす、Si上のナノスケール表面形成のクラスを指し得る。b-Si表面は、複数の針状及び/又はスパイク状の表面形成を含み得る。そのような複数の表面形成の個々の表面形成は、様々なサイズを有していてもよく、及び/又は不規則に配置されてもよい。
【0068】
図1及び
図2の実施形態の高アスペクト比ナノ構造135は、500nm~1500nmの範囲の平均高さを厚さ方向で有してもよい。他の実施形態において、高アスペクト比ナノ構造は、厚さ方向で任意の適切な平均高さ、例えば、500nm~1500nm又は約600nm~1200nm又は800nm~1000nmの範囲の平均厚さを有してもよい。
【0069】
図1及び
図2の実施形態の高アスペクト比ナノ構造135は、50nm~500nmの範囲の平均幅をベース平面104と平行な横方向で有してもよい。他の実施形態において、高アスペクト比ナノ構造は、厚さ方向で、任意の適した平均幅、例えば、50nm~500nm又は100nm~400nm又は200nm~300nmの範囲の平均幅を有してもよい。
【0070】
2つの典型的なピクセル部111,112に関する
図2に概略的に示されるように、
図1及び
図2の実施形態の放射線センサ素子100は、高アスペクト比ナノ構造135をコンフォーマルコーティングする誘電体材料150を備える。そのような誘電体材料は、一般に、放射線センサ素子の再結合損失を低減し得る。他の実施形態において、放射線センサ素子は、そのような誘電体材料を備えても備えなくてもよい。
【0071】
本明細書中において、高アスペクト比ナノ構造を「コンフォーマルコーティングする」材料は、実質的に均一なコーティング厚を伴う前記高アスペクト比ナノ構造をたどる形状に形成されている前記材料を指し得る。本明細書中において、「実質的に均一なコーティング厚」は、50%未満又は25%未満又は15%未満のコーティング厚の相対標準偏差、及び/又は、20nm未満又は10nm未満又は5nm未満の厚さの標準偏差を指し得る。一般に、高アスペクト比ナノ構造をコンフォーマルコーティングする材料のコーティング厚は、前記高アスペクト比ナノ構造の表面法線に沿って測定可能であってもよい。そのようなコーティング厚は、例えば、約1nm~100nm又は約2nm~50nm又は約3nm~30nm又は約5nm~約20nmの範囲であってもよい。
【0072】
図1及び
図2の実施形態の誘電体材料150は、
図2に示される第1のピクセル部111から
図2に示される第2のピクセル部112へと連続的に延在する層を形成する。他の実施形態において、誘電体材料は、層などの1つ以上の断片として形成されてもよい。
【0073】
この実施形態の誘電体材料150は、第2の極性の正味電荷を有してもよい。
図1及び
図2の実施形態の場合、第2の極性は正である。第2の極性のそのような正味電荷は、一般に、半導体基板の後表面上の収集領域に向かって第2の極性の自由電荷キャリアをはね返すことができる。これにより、放射線センサ素子の再結合損失が減少し得る。放射線センサ素子が高アスペクト比ナノ構造上に誘電体材料を備える他の実施形態において、前記誘電体材料は、第2の極性を成しても成さなくてもよい正味電荷を有しても有さなくてもよい。放射線センサ素子が第2の極性の正味電荷を伴う誘電体材料を高アスペクト比ナノ構造上に備える他の実施形態において、複数のピクセル部の各ピクセル部は、半導体基板の前表面に沿って延在するとともに第1の極性の多数電荷キャリアを有する正面基板層を備えても備えなくてもよい。一般に、第1の極性の多数電荷キャリアを有する正面基板層は、特により短い波長で放射線センサ素子の感度を高め得るオージェ再結合の減少を示し得る。
【0074】
図1及び
図2の実施形態の誘電体材料150は、例えば、非化学量論的な酸化ケイ素(SiOx)などの正に帯電した酸化ケイ素を備えてもよい。他の実施形態では、SiOx又は負に帯電した酸化アルミニウム、例えば、非化学量論的な酸化アルミニウム(AlOx)などの任意の適した誘電体材料が使用されてもよい。
【0075】
図1及び
図2の実施形態では、放射線センサ素子100がシンチレータ170を備えてもよい。そのようなシンチレータ170は、例えば、破線を使用して
図1に示されるように、半導体基板101の前側に配置されてもよい。一般に、シンチレータは、電離放射線を、高エネルギー放射線との弱い相互作用を示す、半導体基板を伴う放射線センサ素子を使用して検出可能な非電離電磁放射線に変換できるようにしてもよい。他の実施形態において、放射線センサ素子は、そのようなシンチレータを備えても備えなくてもよい。放射線センサ素子が半導体基板の前側にシンチレータを備える実施形態において、前記シンチレータは、直接的に又は間接的に前記半導体基板に結合されてもされなくてもよい。
【0076】
図1及び
図2の実施形態において、放射線センサ素子100は、複数のピクセル部110の個々のピクセル部の間に複数の中間部140を備える。
図1では、1つのそのような中間部140が破線を使用して強調表示される。
図2では、2つの典型的なピクセル部111,112間に配置される異なる中間部140が示される。他の実施形態において、放射線センサ素子は、複数のピクセル部の個々のピクセル部の間に配置される少なくとも1つの中間部を備えても備えなくてもよい。一実施形態において、複数のピクセル部の個々のピクセル部は、前記個々のピクセル部のテクスチャ領域が半導体基板の前表面上に連続領域を形成するように互いに当接する。
【0077】
この開示の全体にわたって、「中間部」は、複数のピクセル部の第1のピクセル部と第2のピクセル部との間に配置されてもよい放射線センサ素子の部分を指し得る。中間部は、半導体基板の前表面から前記半導体基板の後表面へと延在してもしなくてもよい。
【0078】
図1で強調表示される中間部140は、ピクセル部の単一の横列又は縦列のピクセル部間に配置されるが、中間部は、一般に、ピクセル部の単一の横列又は縦列の2つのピクセル部、及び/又は、互いに対して対角線上に配置される2つのピクセル部など、複数のピクセル部のうちの任意の2つのピクセル部間に存在してもよい。
【0079】
以下では、2つの典型的なピクセル部111,112について詳細に説明する。以下の説明は、2つの典型的なピクセル部111,112及びそれらの間の中間部140に主に関連するが、以下に開示される任意の特徴は、
図1及び
図2の実施形態の複数のピクセル部110のうちの任意の2つのピクセル部及び/又は前記2つのピクセル部間の中間部140に適用できてもできなくてもよい。
【0080】
図2に示される中間部140は、半導体基板101の前表面102上に中間領域141を備える。他の実施形態において、複数のピクセル部のうちの任意の2つのピクセル部間の中間部は、そのような中間領域を備えても備えなくてもよい。放射線センサ素子が前記放射線センサ素子の前側に配置されるシンチレータを備える一実施形態において、前記シンチレータは、中間部の中間領域に結合される。前記実施形態では、前記結合が直接的又は間接的であってもよい。したがって、前記結合は、任意の適切な手段によって、例えば、少なくとも部分的に、アンダーフィリングステップを含んでも含まなくてもよい接着プロセスによって行なわれてもよい。
【0081】
本明細書中において、「中間領域」は、半導体基板の前表面上の領域を指し得る。これに加えて又は代えて、中間領域は、複数のピクセル部の2つのピクセル部間に横方向で配置されてもよい。
【0082】
図2に示される中間領域141は、2つの典型的なピクセル部111,112のテクスチャ領域130の二乗平均平方根(RMS)粗さよりも低いRMS粗さを有する。そのような低いRMS粗さは、放射線センサ素子の前側から幅広いスペクトル範囲にわたって中間部に入射する光に関してより高い反射率をもたらし得る。これは、中間部及び/又はその近傍において自由電荷キャリアの生成を低減し得る。自由電荷キャリアの生成におけるそのような低減は、特にシンチレータがない場合に、放射線センサ素子の個々のピクセル間のクロストークを減少させ得る。他の実施形態において、放射線センサ素子は、複数のピクセル部のうちの任意の2つのピクセル部の間に少なくとも1つの中間部を備えても備えなくてもよく、2つのピクセル部のいずれかのテクスチャ領域のRMS粗さよりも低いRMS粗さを伴う中間領域を前表面上に備える。
【0083】
この開示において、「粗さ」は、より高い空間周波数を伴う表面粗さを指し得る。具体的には、「二乗平均平方根粗さ」は、表面及び/又はその断面プロファイルに関して測定され得る二乗平均粗さを指し得る。そのような測定は、規格ISO 4287:1997及びISO 25178のうちの少なくとも一方にしたがって実施されてもよい。そのような測定では、原子力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、及び/又は、プロフィロメトリーなどの任意の適切な方法が使用されてもよい。テクスチャ領域の場合、そのような測定は、前記テクスチャ領域の巨視的部分に関して行なわれてもよい。
【0084】
この明細書中において、「巨視的部分」は、肉眼で見ることができるのに十分に大きい領域の少なくとも一部分を指し得る。これに加えて又は代えて、テクスチャ領域の巨視的部分は、高アスペクト比ナノ構造など、少なくとも100個又は少なくとも400個又は少なくとも900個のテクスチャ単位を包含し得る又はそれらのテクスチャ単位にわたって延在し得る。
【0085】
図2に示される中間領域141のRMS粗さは、2つのピクセル部111,112のいずれかのテクスチャ領域のRMS粗さの0.2倍以下であってもよい。したがって、中間領域141のRMS粗さは、第1のピクセル部111のテクスチャ領域130のRMS粗さの5倍以上、及び、第2のピクセル部112のテクスチャ領域130のRMS粗さの5倍以上高くてもよい。一般に、RMS粗さの差が大きいほど、結果として、放射線センサ素子の個々のピクセル間のクロストークが低くなり得る。他の実施形態では、2つのテクスチャ領域のRMS粗さと、前記2つのテクスチャ領域間に配置される中間領域のRMS粗さとの間で、任意の適切な比率が使用されてもよい。例えば、2つのピクセル部間の中間領域のRMS粗さは、前記2つのピクセル部のいずれかのテクスチャ領域のRMS粗さの0.2倍又は0.1倍又は0.05倍又は0.01倍以下であってもよい。
【0086】
図2に示される中間領域141は、ベース平面104と略平行に延在する。ベース平面と略平行に延在する中間領域は、一般に、シンチレータを半導体基板に結合することを容易にし得る。他の実施形態において、中間領域は、ベース平面と略平行に延在してもしなくてもよい。
【0087】
図2に示される2つのピクセル部111,112のテクスチャ領域130は、ベース平面104までの最大距離d
tr
maxを有する。更に、
図2に示される中間領域141は、d
tr
maxよりも大きいベース平面104までの最小距離d
ir
minを有する。そのようなd
ir
minは、一般に、シンチレータを半導体基板に結合することを更に容易にし得る。これは、高アスペクト比ナノ構造とシンチレータとの間の直接的な接触を回避できるため、高アスペクト比ナノ構造が前記結合中に破壊するリスクの低減に起因し得る。他の実施形態において、d
ir
minは、複数のピクセル部のうちの任意の2つのピクセル部間の任意の中間部に関して、d
tr
maxより大きくても大きくなくてもよい。
【0088】
図2を参照すると、放射線センサ素子100は金属コーティング160を備える。金属コーティング160は、ベース平面104上の金属コーティング160の投影がベース平面104上の中間領域141の投影と交差するように、半導体基板101の前側に配置される。そのような金属コーティングは、幅広いスペクトル範囲にわたってその中間部へ向けて入射する光に関して放射線センサ素子の反射率を増大させることができ、それにより、中間領域及び/又はその近傍における自由電荷キャリアの生成を低減することができる。自由電荷キャリアの生成におけるそのような低減は、特にシンチレータがない場合に、放射線センサ素子の個々のピクセル間のクロストークを減少させ得る。他の実施形態では、放射線センサ素子がそのような金属コーティングを備えても備えなくてもよい。
【0089】
本明細書中において、「コーティング」は、表面上又はその一部分にわたって延在する層などの要素を指し得る。具体的には、領域の「前側」のコーティングは、直接的に又は間接的に前記領域に結合されてもされなくてもよい。更に、「金属コーティング」は、金属材料を備える又は金属材料から形成されるコーティングを指し得る。
【0090】
第1の態様の先の実施形態のいずれかを互いに組み合わせて使用できることが理解されるべきである。言い換えると、幾つかの実施形態を互いに組み合わせて、第1の態様の更なる実施形態を形成してもよい。
【0091】
上記では、主に放射線センサ素子の構造的及び材料的な態様について説明される。以下では、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法に関連する態様に更に重点が置かれる。構造的及び材料的な態様に関連する実施方法、定義、詳細、及び、利点について前述したことは、必要な変更を加えて、以下で説明する方法の態様に当てはまる。同じことが逆もまた同様に適用される。
【0092】
第2の態様に係る方法を使用して、第1の態様及び第1の態様に関して説明された実施形態のいずれかに係る放射線センサ素子を提供できることが特に理解されるべきである。それに対応して、第2の態様に係る方法を使用して第1の態様の任意の実施形態に係る任意の放射線センサ素子を製造できる。
【0093】
図3は、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法300を示す。他の実施形態において、そのような方法は、
図3の実施形態のプロセス及び/又はステップと同様又は実質的に異なるプロセス及び/又はステップをそれぞれ含んでもよい。
【0094】
この明細書中において、「プロセス」は、最終結果をもたらす一連の1つ以上のステップを指し得る。更に、「ステップ」は、1つ以上の所定の最終結果を達成するために講じられる措置を指し得る。一般に、プロセスはシングルステップ又はマルチステップのプロセスであってもよい。更に、プロセスは複数のサブプロセスに分割されてもよく、その場合、そのような複数のサブプロセスの個々のサブプロセスは、共通のステップを共有してもよくしなくてもよい。
【0095】
図3の実施形態において、方法300は、プロセス301において、半導体基板を用意することを含む。半導体基板は、負又は正のいずれかであってもよい第1の極性のバルク多数電荷キャリアを有する。また、半導体基板は、バルク屈折率と、半導体基板の前側を画定する前表面とを有する。半導体基板は、前表面の反対側に配置されて実質的にベース平面に沿って延在する後表面を更に有する。
【0096】
図3の実施形態の方法300は、プロセス302において、複数のピクセル部のそれぞれのピクセル部ごとに収集領域を後表面上に形成することを含む。収集領域は、第1の極性と符号が反対の第2の極性の自由電荷キャリアを収集するのに適している。幾つかの実施形態において、収集領域を形成するプロセスは、例えば、イオン注入ステップを含んでもよい。
【0097】
図3の実施形態において、方法300は、プロセス303において、複数のピクセル部のそれぞれのピクセル部ごとにテクスチャ領域を前表面上に形成することを含む。各テクスチャ領域は高アスペクト比ナノ構造を備え、この高アスペクト比ナノ構造は、ベース平面に対して垂直な厚さ方向に沿って実質的に延在するとともに、半導体基板のバルク屈折率に向かって徐々に変化する有効屈折率を有する光変換層を形成する。これにより、半導体基板の前側から前記ピクセル部に入射する光の反射が低減される。
【0098】
図3の実施形態において、テクスチャ領域を形成するプロセス303は、例えば、金属支援化学エッチング(MACE)ステップ、大気ドライエッチング(ADE)ステップ、及び/又は、反応性イオンエッチング(RIE)ステップ、例えば深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)ステップを含んでもよい。一般に、そのようなエッチングステップは、低い欠陥密度及び明確なナノスケール特徴をもたらす態様でテクスチャ領域を形成することを容易にし得る。他の実施形態において、テクスチャ領域を形成するプロセスは、任意の適切なステップ、例えば、MACEステップ、ADEステップ、及び/又は、DRIEステップなどのRIEステップを含んでもよい。
【0099】
図3の実施形態において、方法300は、随意的なプロセス304において、複数のピクセル部のうちの2つのピクセル部間に中間部を形成することを含む。中間部は、2つのピクセル部のいずれかのテクスチャ領域のRMS粗さよりも低いRMS粗さを伴う中間領域を半導体基板の前表面上に備える。他の実施形態において、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法は、中間部を形成するそのようなプロセスを含んでも含まなくてもよい。
【0100】
プロセス302,303,304を表わすボックスの順序によって示されるように、前記プロセス302,303,304を実施するステップは、一般に、様々な別の順序で完了されてもよい。更に、ステップは、一般に、前記プロセス302,303,304のうちの2つ以上に寄与してもよい。例として、エッチングステップ、例えば、MACEステップ、ADEステップ、及び/又は、DRIEステップなどのRIEステップは、テクスチャ領域を形成するプロセス及び中間部を形成するプロセスの両方に寄与してもよい。そのようなことは、例えば、研磨された前表面を有する半導体基板が用意されて前記エッチングステップにおけるエッチングが例えばエッチングマスクを使用して局所的に行なわれる場合に起こり得る。
【0101】
図3の実施形態において、方法300は、随意的なプロセス305において、シンチレータを中間領域に結合することを含む。そのようなプロセスは、一般に、例えば、接着結合ステップを含んでもよい。他の実施形態において、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法は、シンチレータを結合するそのようなプロセスを含んでも含まなくてもよい。
【0102】
一実施形態において、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法は、
図3の実施形態の方法300のプロセス301,302,303に対応するプロセスを含む。他の実施形態において、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法は、
図3の実施形態の方法300のプロセス301,302,303並びにプロセス304,305のうちの少なくとも一方に対応するプロセスを含んでもよい。
【0103】
一般に、
図3の実施形態の方法300のプロセス301,302,303,304,305のいずれかに対応するプロセスを実施する複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法のステップは、複数の別の順序で実行されてもよい。更に、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法は、一般に、
図3の実施形態の方法300に関連して本明細書中に開示されない任意の数の更なるプロセス又はステップを含んでもよい。
【0104】
例えば、一実施形態において、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法は、高アスペクト比ナノ構造上に誘電体材料を堆積させることを含み、誘電体材料は、高アスペクト比ナノ構造をコンフォーマルコーティングする。
【0105】
先の実施形態に係るものであってもよい他の実施形態において、複数のピクセル部を備える放射線センサ素子を製造するための方法は、中間領域の前側に金属コーティングを形成することを含む。前記実施形態において、金属コーティングを形成するプロセスは、例えば、蒸発ステップ又はスパッタリングステップを含んでもよい。
【0106】
当業者に明らかなように、技術の進歩に伴い、本発明の基本的な考え方が様々な態様で実施されてもよい。したがって、本発明及びその実施形態は、前述の例に限定されず、代わりに、それらは特許請求の範囲内で変動し得る。
【0107】
前述の任意の利益及び利点が1つの実施形態に関連し得る又は幾つかの実施形態に関連し得ることが理解される。実施形態は、記載された問題のいずれか又は全てを解決する実施形態、或いは、記載された利益及び利点のいずれか又は全てを有する実施形態に限定されない。
【0108】
「備える」という用語は、この明細書では、1つ以上の更なる特徴又は行為の存在を排除することなく、その後に続く特徴又は行為を含むことを意味するために使用される。「1つの」項目への言及がそれらの項目のうちの1つ以上を指すことが更に理解され得る。
【符号の説明】
【0109】
100 放射線センサ素子
101 半導体基板
102 前表面
103 後表面
104 ベース平面
110 複数のピクセル部
111 ピクセル部
112 ピクセル部
120 収集領域
121 収集ドーピングウェル
122 バルク接触領域
123 バルク接触ドーピングウェル
130 テクスチャ領域
135 高アスペクト比ナノ構造
136 光変換層
140 中間部
141 中間領域
150 誘電体材料
160 金属コーティング
170 シンチレータ
300 方法
301 半導体基板を用意する
302 収集領域を形成する
303 テクスチャ領域を形成する
304 中間部を形成する
305 シンチレータを結合する