(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】優先席誘導システム、優先席誘導方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20240402BHJP
G06Q 10/02 20120101ALI20240402BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240402BHJP
【FI】
G06Q50/40
G06Q10/02
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2022004779
(22)【出願日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】藤田 賢一
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-179802(JP,A)
【文献】特開2021-157276(JP,A)
【文献】特開2017-165533(JP,A)
【文献】特開2008-130021(JP,A)
【文献】特開2019-117534(JP,A)
【文献】特開2015-152359(JP,A)
【文献】特開2012-103146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅の改札口において列車に向かう人を撮影する改札口の撮影装置と、
列車に設けられ使用できる態様と使用できない態様とに変化可能な優先席における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる切り替え装置と、
前記優先席を含む領域を撮影し当該優先席に近付く人を撮影可能な車両内の撮影装置と、
前記改札口の撮影装置による撮影画像と、前記車両内の撮影装置による撮影画像とを用いて、前記切り替え装置の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記改札口の撮影装置による撮影画像から、前記優先席の利用を勧める対象者である優先該当者を検知し、また、前記改札口の撮影装置による撮影画像から、当該優先該当者の特徴情報を抽出する検知部と、
前記車両内の撮影装置による撮影画像から、使用できない態様の前記優先席に近付く人を検知し、また、前記車両内の撮影装置による撮影画像から、当該優先席に近付く人の特徴情報を抽出し、当該特徴情報と、前記優先該当者の特徴情報との対比により、前記優先席に近付く人が前記優先該当者であると判断した場合に、前記切り替え装置を制御することによって前記優先席を使用できる態様に変化させる座席制御部と
を備える優先席誘導システム。
【請求項2】
前記制御装置の前記検知部により検知された前記優先該当者を、列車における前記優先席に近い乗降口に対応する駅の乗降位置まで誘導する誘導装置をさらに備える
請求項1に記載の優先席誘導システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検知部により検知された前記優先該当者に、前記優先席への誘導を希望するか否かの意思を確認する確認部をさらに備える
請求項1又は請求項2に記載の優先席誘導システム。
【請求項4】
列車の運行に関わる情報と、前記優先該当者が前記改札口を通過した時刻の情報とを取得し、取得した情報を用いて、前記優先該当者が乗る列車を推定し、当該列車の優先席を予約する予約部を前記制御装置はさらに備える
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の優先席誘導システム。
【請求項5】
前記制御装置の前記検知部は、さらに、前記改札口の撮影装置による撮影画像から車いす利用者を検知し、
前記誘導装置は、さらに、車いすの乗降位置として設定されている駅の乗降位置まで前記車いす利用者を誘導する機能を備える
請求項2に記載の優先席誘導システム。
【請求項6】
駅の改札口において列車に向かう人を撮影する改札口の撮影装置と、列車に設けられ使用できる態様と使用できない態様とに変化可能な優先席における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる切り替え装置と、前記優先席を含む領域を撮影し当該優先席に近付く人を撮影可能な車両内の撮影装置と、前記改札口の撮影装置による撮影画像と前記車両内の撮影装置による撮影画像とを用いて、前記切り替え装置の動作を制御する制御装置とを備える優先席誘導システムの前記制御装置を構成するコンピュータによって、
前記改札口の撮影装置による撮影画像から、前記優先席の利用を勧める対象者である優先該当者を検知し、また、前記改札口の撮影装置による撮影画像から、当該優先該当者の特徴情報を抽出し、
前記車両内の撮影装置による撮影画像から、使用できない態様の前記優先席に近付く人を検知し、また、前記車両内の撮影装置による撮影画像から、当該優先席に近付く人の特徴情報を抽出し、当該特徴情報と、前記優先該当者の特徴情報との対比により、前記優先席に近付く人が前記優先該当者であると判断した場合に、前記切り替え装置を制御することによって前記優先席を使用できる態様に変化させる
優先席誘導方法。
【請求項7】
駅の改札口において列車に向かう人を撮影する改札口の撮影装置と、列車に設けられ使用できる態様と使用できない態様とに変化可能な優先席における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる切り替え装置と、前記優先席を含む領域を撮影し当該優先席に近付く人を撮影可能な車両内の撮影装置と、前記改札口の撮影装置による撮影画像と前記車両内の撮影装置による撮影画像とを用いて、前記切り替え装置の動作を制御する制御装置とを備える優先席誘導システムの前記制御装置を構成するコンピュータに、
前記改札口の撮影装置による撮影画像から、前記優先席の利用を勧める対象者である優先該当者を検知し、また、前記改札口の撮影装置による撮影画像から、当該優先該当者の特徴情報を抽出する処理と、
前記車両内の撮影装置による撮影画像から、使用できない態様の前記優先席に近付く人を検知し、また、前記車両内の撮影装置による撮影画像から、当該優先席に近付く人の特徴情報を抽出し、当該特徴情報と、前記優先該当者の特徴情報との対比により、前記優先席に近付く人が前記優先該当者であると判断した場合に、前記切り替え装置を制御することによって前記優先席を使用できる態様に変化させる処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車などの交通機関に設けられている優先席に、高齢者や障害者や妊婦や乳幼児連れの人などを誘導する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電車などの交通機関には、高齢者や障害者や妊婦や乳幼児連れの人など(以下、優先該当者とも称する)が優先的に座席を利用できるように優先席が設けられている場合がある。しかしながら、優先該当者が車両に乗車した際に、優先該当者ではない者が優先席を利用しているために、優先該当者が優先席を利用できない場合がある。このような事態を考慮した技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2009-258835号公報)には、身体的弱者の情報をIC(Integrated Circuit)カードに記録し公的機関が身体的弱者に発行する優先席カードを利用して、優先席を予約する事項が示されている。また、特許文献1には、優先席の近傍に設けられたICカード読取装置によって優先席カードから情報が読み取られ、当該情報に基づいて、その優先席を使用できる状態とするか否かが判断される事項が示されている。特許文献2(特開2013-200738号公報)には、優先席に非優先者が座っている場合に、優先者(優先該当者)が、携帯通信端末を利用して支援要請情報を乗客支援装置に送信する事項が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-258835号公報
【文献】特開2013-200738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載されている技術では、優先該当者が優先席カードや携帯通信端末を所持していなければ、優先該当者を優先的に優先席に座らせるためのサービスを受けることができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、優先該当者が、通信端末や、優先席を利用するための情報を登録したカードなどを所持していなくとも、優先席を優先的に利用できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る優先席誘導システムは、その一態様として、
駅の改札口において列車に向かう人を撮影する改札口の撮影装置と、
列車に設けられ使用できる態様と使用できない態様とに変化可能な優先席における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる切り替え装置と、
前記優先席を含む領域を撮影し当該優先席に近付く人を撮影可能な車両内の撮影装置と、
前記改札口の撮影装置による撮影画像と、前記車両内の撮影装置による撮影画像とを用いて、前記切り替え装置の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記改札口の撮影装置による撮影画像から、前記優先席の利用を勧める対象者である優先該当者を検知し、また、前記改札口の撮影装置による撮影画像から、当該優先該当者の特徴情報を抽出する検知部と、
前記車両内の撮影装置による撮影画像から、使用できない態様の前記優先席に近付く人を検知し、また、前記車両内の撮影装置による撮影画像から、当該優先席に近付く人の特徴情報を抽出し、当該特徴情報と、前記優先該当者の特徴情報との対比により、前記優先席に近付く人が前記優先該当者であると判断した場合に、前記切り替え装置を制御することによって前記優先席を使用できる態様に変化させる座席制御部と
を備える。
【0008】
また、本発明に係る優先席誘導方法は、その一態様として、
駅の改札口において列車に向かう人を撮影する改札口の撮影装置と、列車に設けられ使用できる態様と使用できない態様とに変化可能な優先席における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる切り替え装置と、前記優先席を含む領域を撮影し当該優先席に近付く人を撮影可能な車両内の撮影装置と、前記改札口の撮影装置による撮影画像と前記車両内の撮影装置による撮影画像とを用いて、前記切り替え装置の動作を制御する制御装置とを備える優先席誘導システムの前記制御装置を構成するコンピュータによって、
前記改札口の撮影装置による撮影画像から、前記優先席の利用を勧める対象者である優先該当者を検知し、また、前記改札口の撮影装置による撮影画像から、当該優先該当者の特徴情報を抽出し、
前記車両内の撮影装置による撮影画像から、使用できない態様の前記優先席に近付く人を検知し、また、前記車両内の撮影装置による撮影画像から、当該優先席に近付く人の特徴情報を抽出し、当該特徴情報と、前記優先該当者の特徴情報との対比により、前記優先席に近付く人が前記優先該当者であると判断した場合に、前記切り替え装置を制御することによって前記優先席を使用できる態様に変化させる。
【0009】
さらに、本発明に係るコンピュータプログラムは、その一態様として、
駅の改札口において列車に向かう人を撮影する改札口の撮影装置と、列車に設けられ使用できる態様と使用できない態様とに変化可能な優先席における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる切り替え装置と、前記優先席を含む領域を撮影し当該優先席に近付く人を撮影可能な車両内の撮影装置と、前記改札口の撮影装置による撮影画像と前記車両内の撮影装置による撮影画像とを用いて、前記切り替え装置の動作を制御する制御装置とを備える優先席誘導システムの前記制御装置を構成するコンピュータに、
前記改札口の撮影装置による撮影画像から、前記優先席の利用を勧める対象者である優先該当者を検知し、また、前記改札口の撮影装置による撮影画像から、当該優先該当者の特徴情報を抽出する処理と、
前記車両内の撮影装置による撮影画像から、使用できない態様の前記優先席に近付く人を検知し、また、前記車両内の撮影装置による撮影画像から、当該優先席に近付く人の特徴情報を抽出し、当該特徴情報と、前記優先該当者の特徴情報との対比により、前記優先席に近付く人が前記優先該当者であると判断した場合に、前記切り替え装置を制御することによって前記優先席を使用できる態様に変化させる処理と
を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優先該当者が、通信端末や、優先席を利用するための情報を登録したカードなどを所持していなくとも、優先席を優先的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の優先席誘導システムの構成を説明する図である。
【
図2】第1実施形態における誘導装置の一態様例を説明する図である。
【
図3】第1実施形態の優先席誘導システムを構成する制御装置の一構成例を説明する図である。
【
図4】第1実施形態における制御装置の一動作例を説明するフロチャートである。
【
図5】本発明に係るその他の実施形態の優先席誘導システムの構成を説明する図である。
【
図6】その他の実施形態の優先席誘導システムにおける制御装置の一動作例を説明するフロチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の優先席誘導システムの構成を説明するイメージ図である。この優先席誘導システム1は、駅の改札口において当該改札口よりも内部に入場しようとする優先該当者Pを検知すると、優先席の近くの乗降口から列車に乗車させるべく優先該当者Pを誘導し、車両内においては、優先該当者Pに、優先席に座ることを勧める。ここでは、優先席とは、車両内において、高齢者や障害者や妊婦や体調不調者や乳幼児連れの人などを優先的に座らせる椅子を表す。また、優先該当者とは、高齢者や障害者や妊婦や体調不調者や乳幼児連れの人などの優先席の利用を勧める対象者を表す。
【0014】
第1実施形態の優先席誘導システム1は、制御装置2と、撮影装置4と、情報取得装置5と、表示装置6と、入力装置7と、誘導装置8と、撮影装置10と、優先席11と、駆動装置12とを備えている。
【0015】
すなわち、撮影装置4は、改札口に設置され、改札機14を通ろうとしている人(つまり、列車に向かう人)を撮影できるように設置位置や撮影範囲が設定されている。情報取得装置5は、改札機14に備えられている装置であり、切符に記録されている行先などの情報を切符から取得する機能と、IC(Integrated Circuit)カードに記憶されている情報をICカードから取得する機能との一方又は両方を備えている。表示装置6は、改札機14に備えられ、情報を表示する装置である。ここでは、表示装置6は、改札機14に関する情報を表示するだけでなく、優先席誘導システム1に関係する情報も表示する機能を備える。入力装置7は、優先該当者Pが情報を入力する際に利用する装置であり、例えば、タッチパネルや操作ボタンなどの態様を採り得る。
【0016】
誘導装置8は、駅の構成における改札口よりも内部において、優先席に近い乗降口から優先該当者Pを列車に乗車させるために、優先該当者Pを誘導する装置である。誘導装置8は、制御装置2から受信する情報(ここでは、優先該当者Pが列車に乗車する駅の乗降位置の情報)を用いて優先該当者Pを誘導可能な構成を備えていれば、その構成は限定されないが、その一例として、例えば、
図2に表されるような誘導灯がある。
図2の例では、誘導灯16はホームに埋設されており、優先該当者Pが乗車するホームの乗降位置まで優先該当者Pを誘導するために、誘導灯16の点灯と消灯が制御される。ここでは、誘導灯16の点灯と消灯の制御手法は限定されず、その説明は省略される。
【0017】
なお、誘導装置8は、誘導灯16に限定されず、例えば、優先該当者Pを列車の乗降位置まで導く経路における複数個所に設置され誘導のための情報を表示する表示装置により構成されてもよい。また、誘導装置8は、駅やホームが広い場合には、優先該当者Pを乗せて走行可能なカートなどの車であってもよい。あるいは、誘導装置8は、移動可能で優先該当者Pを先導するロボットであってもよい。
【0018】
また、
図2の例では、優先該当者Pが誘導装置8によって正しく誘導できるか否かを確認するためのカメラ17がホームやホームにつながるエレベータの近くなどに設置されている。さらに、
図2の例では、ホームには、優先該当者Pに乗車位置であることを報知するために表示器18が乗降位置に設置されている。
【0019】
列車内に設けられ優先席誘導システム1を構成する撮影装置10は、例えば、優先席11を含む優先席領域を撮影し優先席11に接近した者を識別できる画像を取得できるように設置位置や撮影範囲が設定されている。
【0020】
第1実施形態では、列車の車両内に設けられている優先席11は、座面部分が可動することにより、折り畳まれて座ることができない態様(使用できない態様)と、座面が開放されて座ることができる態様(使用できる態様)とに変化可能な座席である。駆動装置12は、優先席11に接続し、優先席11の座面部分を動かす装置である。駆動装置12は、制御装置2から受信する指示に応じて優先席11の座面部分を可動するべく動作する。つまり、駆動装置12は、優先席11における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる切り替え装置として機能する。
【0021】
図3は、制御装置2の構成を説明するブロック図である。制御装置2は、撮影装置4と、情報取得装置5と、表示装置6と、入力装置7と、誘導装置8と、撮影装置10と、駆動装置12と、データベース19とに接続されている。データベース19は、例えば、列車の運行管理を行うシステムが用いる情報が格納されているデータベース(記憶装置)であり、例えば、列車の出発駅や通過(中継)駅や到着駅における駅名および発着時刻を表す時刻表の情報が格納されている。
【0022】
制御装置2は、撮影装置4と情報取得装置5と入力装置7と撮影装置10とデータベース19から取得した情報を用いて、優先該当者Pを優先席に誘導すべく、表示装置6と誘導装置8と駆動装置12の動作を制御するための情報を出力する。
【0023】
すなわち、制御装置2は、コンピュータ装置であり、演算装置20と、記憶装置30とを備えている。記憶装置30は、データや、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも称する)31を記憶する記憶媒体を備えている。記憶装置には、磁気ディスク装置や、半導体メモリ素子などの複数の種類があり、さらに、半導体メモリ素子には、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの複数の種類があるというように、多数の種類がある。制御装置2が備える記憶装置30の種類は1つに限定されるものではない。コンピュータ装置には複数種の記憶装置が備えられることが多い。ここでは、制御装置2に備えられる記憶装置30の種類や数は限定されず、その説明は省略される。また、制御装置2に複数種の記憶装置30が備えられる場合には、それらをまとめて記憶装置35と記すこととする。なお、制御装置2は、外付けの記憶装置と接続し、当該外付けの記憶装置ともデータなどの読み書きを行う場合も考えられるが、ここでは、外付けの記憶装置とのデータなどの読み書きが行われる場合があっても当該説明は省略することとする。
【0024】
演算装置20は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにより構成される。当該演算装置20は、記憶装置30に記憶されているプログラム31を読み出して実行することにより、当該プログラム31に基づいた様々な機能を持つことができる。ここでは、演算装置20は、優先席誘導システム1に関わる機能部として、モニタ部21と、検知部22と、確認部23と、予約部24と、誘導指示部25と、座席制御部26とを有している。
【0025】
モニタ部21は、車両内の撮影装置10や、優先席11の座面の開閉状態を表す情報(例えば駆動装置12の動作制御の情報や、開閉状態を検知するセンサが設置されている場合には当該センサからの情報)を取得する。そして、モニタ部21は、取得した情報を用いて、優先席11の使用状況を監視する。
【0026】
検知部22は、撮影装置4により撮影された撮影画像、つまり、改札機14を通ろうとしている人を撮影した撮影画像から、優先該当者Pを検知する。撮影画像から優先該当者を検知する技術には様々な技術があり、ここでは、撮影画像から優先該当者を検知する技術として採用される技術は特に限定されないが、その一例として、いわゆるAI(Artificial Intelligence)技術が挙げられる。AI技術を利用する場合には、撮影画像を入力とし当該撮影画像から検知された優先該当者Pを出力するモデルが記憶装置30に格納される。そのモデルは優先該当者が撮影されている多数の撮影画像を教師データとした機械学習により生成される。
【0027】
また、検知部22は、撮影装置4により撮影された撮影画像から、優先該当者Pを識別するための特徴情報を抽出する。例えば、抽出する特徴情報としては、顔画像や、歩き方の情報などがある。このような特徴情報は、例えば、優先該当者Pを識別するために当該優先該当者Pに付与された識別番号に関連付けられて記憶装置30に格納される。
【0028】
確認部23は、優先該当者Pが検知された場合に、優先席への誘導を希望するか否かの意思の確認を、検知された優先該当者Pに行う。例えば、優先該当者Pが改札機14を通り抜ける前に検知部22から検知結果が出力されるように、検知部22における検知処理の開始タイミングが設定されているとする。このような場合には、検知部22によって優先該当者Pが検知された場合に、確認部23は、改札機14の表示装置6を用いて、検知された優先該当者Pに向けて、優先席への誘導を希望するか否かの問合せを通知する。具体例を挙げると、表示装置6に、「優先席への誘導を希望しますか? 希望する場合には、入力装置7における『希望』ボタンを押してください」旨のメッセージが表示される。確認部23は、入力装置7の操作情報に基づいて、検知された優先該当者Pが優先席への誘導を希望するか否かの意思の確認を行う。
【0029】
予約部24は、優先該当者Pが検知された場合に、当該優先該当者Pが利用する優先席を予約する。すなわち、予約部24は、優先該当者Pが検知された場合に、当該優先該当者Pが乗車する列車を推定する。例えば、予約部24は、検知された優先該当者Pが改札機14を通ったときに情報取得装置5が取得した情報と、優先該当者Pが改札機14を通ったときの時刻情報と、データベース19における時刻表の情報とを用いて、優先該当者Pが乗車する列車を推定する。なお、優先該当者Pが乗車する列車として、複数の列車が候補として挙げられる場合があることが考えられる。このような場合には、例えば、それら複数の候補を表す情報を表示装置6に表示させ、検知された優先該当者Pに、入力装置7を利用して乗車予定の列車を選択してもらうことにより、優先該当者Pが乗車する列車を特定することが考えられる。また、乗車予定の列車の候補が1つであっても、当該候補を表す情報(例えば行き先と当駅の出発予定時刻を表す情報)を表示装置6に表示させることが考えられる。この場合にも、当該候補の列車に乗車予定であることの確認のための情報を、検知された優先該当者Pに、入力装置7を用いて入力してもらうことも考えられる。
【0030】
さらに、予約部24は、推定あるいは特定された乗車予定の列車において、モニタ部21による優先席11のモニタ情報を参照して、使用されていない優先席11を表す情報を取得する。
【0031】
また、予約部24は、記憶装置30に格納されている優先席予約情報を読み出す。優先席予約情報は、優先席11ごとの予約状況を表す情報であり、記憶装置30に格納されている。優先席予約情報は、例えば、優先席11を識別する優先席識別情報と、当該優先席11が設けられている列車および車両を特定する優先席位置情報と、優先席11が予約された場合に当該優先席11を利用する優先該当者Pの識別情報とが含まれる。さらに、優先席予約情報は、例えば、予約した優先該当者Pが乗車予定の駅を表す情報とその出発予定日時を表す情報も含まれる。
【0032】
予約部24は、それら取得した情報を参照して、検知された優先該当者Pのための優先席11を予約する。つまり、予約部24は、検知された優先該当者Pが利用すると決定した優先席11に対応する優先席識別情報と、優先席位置情報と、予約者である優先該当者Pの識別情報と、当該優先該当者Pが乗車予定の駅とその出発予定日時を表す情報とが関連付けられている新たなエントリを記憶装置30の予約情報に追加する。
【0033】
なお、乗車予定の列車に、予約可能な複数の優先席11が有った場合であって、例えば、降車予定駅の情報を切符から取得できている場合には、降車予定駅における出口の位置などの情報を利用して、予約する優先席11を決定してもよい。例えば、移動が楽となるように、予約可能な複数の優先席11のうち、降車予定駅における改札出口やホームのエレベータに最も近い優先席11を予約部24は予約する。
【0034】
予約部24は、優先該当者Pが優先席への誘導を希望することが確認部23によって確認された後に、上述したような予約処理を実行してもよいし、確認部23による確認の結果を参照せずに、上述したような予約処理を実行してもよい。
【0035】
誘導指示部25は、優先該当者Pが優先席への誘導を希望することが確認部23によって確認され、かつ、予約部24により優先席11の予約が取れた場合に、誘導装置8に向けて、誘導装置8の動作制御に必要な情報を誘導指示として出力する。例えば、予約した優先席11に近い乗降口から乗車予定の列車に乗車できるように、その乗降口に対応するホームの乗降位置を表す情報を誘導指示部25は誘導装置8に出力する。誘導装置8は、制御装置2の誘導指示部25から受信した情報を用いて、優先該当者Pを誘導すべく動作する。
【0036】
座席制御部26は、撮影装置10により取得された撮影画像から、使用されていない優先席11に近付いた人を検知すると、記憶装置30に格納されている優先席11の予約情報を参照し、人が近付いた優先席11に予約があるか否かを判断する。そして、座席制御部26は、予約されていないと判断した場合には、待機状態を継続する。また、座席制御部26は、予約されていると判断した場合には、予約者である優先該当者Pの識別情報を予約情報が読み出し、さらに、当該読み出した優先該当者Pの識別情報に関連付けられている当該優先該当者Pの特徴情報を記憶装置30から座席制御部26は読み出す。
【0037】
さらに、座席制御部26は、撮影装置10による撮影画像から、優先席11に近付いた人の特徴情報を抽出する。例えば、撮影装置4による撮影画像から、優先該当者Pの特徴情報として顔画像が取得されている場合には、座席制御部26は、撮影装置10による撮影画像から、優先席11に近付いた人の顔画像を取得する。
【0038】
そして、撮影装置10から取得した人の特徴情報と、撮影装置4による撮影画像から抽出した優先該当者Pの特徴情報とを対比することにより、優先席11に近付いた人が、当該優先席11を予約した優先該当者Pであるか否かを座席制御部26は判断する。座席制御部26は、優先席11に近付いた人が、予約者である優先該当者Pであると判断した(確認できた)場合には、優先席11の座面部分を開放して優先該当者Pが優先席11に着座できるように駆動装置12を動作させる指示を駆動装置12に出力する。これにより、駆動装置12が動作を開始し、優先席11の座面が開放されて優先該当者Pが優先席11に着座できるようになる。また、座席制御部26は、優先席11に近付いた人が、予約した優先該当者Pではないと判断した場合には、処理を終了し、待機状態となる。
【0039】
また、座席制御部26は、撮影装置10による撮影画像に基づいて、使用されていた優先席11から優先該当者Pが離れて降車したと推定されることを検知した場合には、優先席11の座面部分を可動して座れない状態とするために駆動装置12に情報を出力する。これにより、駆動装置12によって優先席11の座面部分が可動して座れない状態となる。
【0040】
制御装置2は上記のように構成されている。次に、制御装置2における優先該当者Pの誘導に係る動作の一例を、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、制御装置2における優先該当者Pの誘導に係る動作の一例を説明するフロチャートである。
【0041】
例えば、制御装置2の検知部22が、撮影装置4から取得した撮影画像によって、改札機14を通ろうとしている優先該当者Pを検知したとする(
図4におけるステップ101)。この場合、確認部23が、例えば、前述したように表示装置6と入力装置7を用いて、検知された優先該当者Pにおける優先席への誘導を希望するか否かの意思を確認する(ステップ102)。
【0042】
また、予約部24が、情報取得装置5から取得された情報や、優先該当者Pが検知された時刻や、データベース19における時刻表の情報を用いて、検知した優先該当者Pが乗車する列車を推定(特定)する。
【0043】
一方、モニタ部21は、列車に設けられている撮影装置10による撮影画像を用いて、優先席11が使用されているか否かを監視している。予約部24は、検知した優先該当者Pが乗車すると推定(特定)された列車に設けられている優先席11の使用状況を、モニタ部21によるモニタ情報から検知する。また、予約部24は、乗車予定の列車における優先席11の予約状況を記憶装置30の予約情報から取得する。
【0044】
そして、誘導指示部25は、検知された優先該当者Pが優先席11への誘導を希望することを確認し、かつ、優先席11の予約が取れた場合に、当該予約した優先席11に優先該当者Pを誘導すべく誘導に必要な情報を誘導装置8に誘導指示として出力する(ステップ104)。
【0045】
然る後に、座席制御部26は、車両内の撮影装置10による撮影画像と、記憶装置30の予約情報と、優先該当者Pの特徴情報とを用いて、前述したように、予約した優先席11に、予約者である優先該当者Pが近付いたことを確認すると、駆動装置12に駆動を指示する(ステップ105)。つまり、座席制御部26は、優先席11に座ることができるように座面部分を開放する方向に可動させる指示を駆動装置12に出力する。
【0046】
これにより、優先席11は座れる態様となり、優先該当者Pが優先席11に座ることができる。
【0047】
第1実施形態の優先席誘導システム1は、上記のように構成されているから、優先該当者Pが、通信端末や、優先席11を利用するための情報を登録したカードなどを所持していなくとも、優先席11を利用したいときに簡単に利用できる。また、優先席誘導システム1は、優先席11に人が座れる状態と座れない状態との切り替え制御を行う。このため、優先席誘導システム1は、優先該当者と検知されなかった者が優先席11に座っているために優先該当者が優先席11に座れないという事態を防止できる。
【0048】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態の優先席誘導システムを構成する構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略する。
【0049】
第2実施形態では、優先席誘導システム1は、第1実施形態の構成に加えて、車いすに乗っている人(以下、車いす利用者とも称する)を誘導する構成をさらに備えている。すなわち、駅のホームには、車いす利用者が列車に乗車するのに適切な位置が設定されている場合がある。制御装置2の検知部22は、改札口に設けられた撮影装置4の撮影画像から、優先該当者Pだけでなく、車いす利用者も検知する。確認部23は、車いす利用者が検知された場合にも、例えば表示装置6と入力装置7を用いて、誘導を希望するか否かの意思を車いす利用者に確認する。
【0050】
誘導指示部25は、乗車する適切な位置への誘導を車いす利用者が希望していることが確認部23によって確認された場合に、誘導のために必要な情報(誘導先の位置情報など)を誘導指示として誘導装置8に出力する。これにより、誘導装置8は、車いす利用者を、ホームにおける誘導先の位置に誘導すべく動作する。
【0051】
第2実施形態の優先席誘導システム1は、第1実施形態の優先席誘導システム1と同様の構成を備えていることから、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。その上、第2実施形態の優先席誘導システム1は、通信端末や、車いす利用者であることを表す情報を登録したカードなどを車いすの方が所持していなくとも、列車に乗車するのに適したホーム位置に、車いすの方も誘導できる。
【0052】
<その他の実施形態>
本発明は、第1や第2の実施形態に限定されず、様々な実施の態様を採り得る。例えば、第1や第2の実施形態では、優先席誘導システム1は、優先該当者Pに情報を通知する際に改札機14の表示装置6を用いていたが、改札機14とは別体の表示装置を、改札機14を通る優先該当者Pが視認できる位置に設置し、表示装置6に代えて、当該表示装置を用いてもよい。
【0053】
図5は本発明に係るその他の実施形態の優先席誘導システムの構成を説明する図である。
図5に表される優先席誘導システム40は、改札口の撮影装置42と、切り替え装置43と、車両内の撮影装置44と、制御装置45とを備えている。
【0054】
改札口の撮影装置42は、駅の改札口において列車に向かう人を撮影する。切り替え装置43は、列車に設けられ使用できる態様と使用できない態様とに変化可能な優先席における使用できる態様と使用できない態様のうちの一方から他方に態様を変化させる。車両内の撮影装置44は、優先席を含む領域を撮影し当該優先席に近付く人を撮影可能な撮影装置である。
【0055】
制御装置45は、改札口の撮影装置42による撮影画像と、車両内の撮影装置44による撮影画像とを用いて、切り替え装置43の動作を制御する。すなわち、制御装置45は、例えば、コンピュータ装置であり、コンピュータプログラムを実行することにより、機能部として、検知部47と、座席制御部48とを備える。検知部47は、改札口の撮影装置42による撮影画像から、優先席の利用を勧める対象者である優先該当者を検知し、また、改札口の撮影装置42による撮影画像から、当該優先該当者の特徴情報を抽出する。座席制御部48は、車両内の撮影装置44による撮影画像から、使用できない態様の優先席に近付く人を検知し、また、車両内の撮影装置44による撮影画像から、当該優先席に近付く人の特徴情報を抽出する。さらに、座席制御部48は、その抽出した特徴情報と、優先該当者の特徴情報との対比により、優先席に近付く人が優先該当者であると判断した場合に、切り替え装置43を制御することによって優先席を使用できる態様に変化させる。
【0056】
図6は、制御装置45の動作の一例を表すフロチャートである。すなわち、制御装置45の検知部47が、改札口の撮影装置42による撮影画像から優先該当者を検知すると(
図6におけるステップ201)、改札口の撮影装置42による撮影画像から優先該当者の特徴情報を抽出する。
【0057】
然る後に、座席制御部48が車両内の撮影装置44による撮影画像から、使用できない態様の優先席に近付く人を検知すると(ステップ202)、座席制御部48は、その検知した、優先席に近付く人の特徴情報を車両内の撮影装置44による撮影画像から抽出する。そして、座席制御部48は、その抽出した特徴情報と、優先該当者の特徴情報との対比により、優先席に近付く人が優先該当者であることを確認すると(ステップ203)、優先席を使用できる態様に変化させる指示を切り替え装置43に出力する(ステップ204)。
【0058】
図6に表される優先席誘導システム40は、上記のような構成を備えていることから、優先該当者が、通信端末や、優先席を利用するための情報を登録したカードなどを所持していなくとも、優先席を優先的に利用できるという効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,40 優先席誘導システム
2,45 制御装置
4,10,42,44 撮影装置
8 誘導装置
12 駆動装置
22,47 検知部
23 確認部
24 予約部
26,48 座席制御部