(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】通信回路、通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/22 20060101AFI20240402BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G06F11/22 610
H04L25/02 301A
(21)【出願番号】P 2022013051
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】村井 信博
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-240834(JP,A)
【文献】特開平03-167646(JP,A)
【文献】特開2009-105549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/22
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバであり、スタンバイモードに移行する場合にHighの信号を送信する前記トランシーバの前記スタンバイモードへの移行を制御する制御手段と、
前記トランシーバに送信用の信号を出力する出力手段と、
前記トランシーバが受信する信号の入力を受け付ける入力手段と、
前記スタンバイモードに移行後、前記送信用の信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、前記トランシーバから入力される信号に基づいて、前記スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する検出手段と
を備える通信回路。
【請求項2】
前記検出手段は、前記スタンバイモードに移行後、前記トランシーバから入力される信号がLowの場合に、前記スタンバイモードへの移行の異常を検出する、
請求項1に記載の通信回路。
【請求項3】
前記所定のシーケンスは、前記スタンバイモードに移行後における、前記送信用の信号のレベルのHighとLowの切り替えの順として設定され、
前記検出手段は、HighとLowのいずれにおいても前記トランシーバから入力される信号がHighの場合に、前記スタンバイモードへの移行が正常に行われていることを検出する、
請求項1または2に記載の通信回路。
【請求項4】
前記所定のシーケンスは、前記スタンバイモードへの移行後、前記トランシーバにLow、High、Lowに順に信号を出力する設定である、
請求項3に記載の通信回路。
【請求項5】
前記トランシーバに出力する信号の経路を切り替える切り替え手段をさらに備え、
前記検出手段は、前記切り替え手段を制御して、前記信号の経路を、前記スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出するための信号と、前記バスを介して送信する信号とのいずれかを出力する経路に切り替える、
請求項1から4いずれかに記載の通信回路。
【請求項6】
前記バスは、Controller Area Networkバスである、
請求項1から5いずれかに記載の通信回路。
【請求項7】
バスに信号を送信し、スタンバイモードに移行する場合にHighの信号を送信する送信手段と、前記バスにおいて伝送されている信号と、前記送信手段が送信する信号を分岐した信号とを受信する受信手段とを有するトランシーバと、
請求項1から6いずれかに記載の通信回路と
を備え、
前記通信回路は、前記トランシーバを前記スタンバイモードに移行後、前記トランシーバの前記受信手段が受信する信号に基づいて、前記スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する、
通信装置。
【請求項8】
バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバであり、スタンバイモードに移行する場合にHighの信号を送信する前記トランシーバの前記スタンバイモードへの移行を制御し、
前記トランシーバに送信用の信号を出力し、
前記トランシーバが受信する信号の入力を受け付け、
前記スタンバイモードに移行後、前記送信用の信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、前記トランシーバから入力される信号に基づいて、前記スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する、
通信方法。
【請求項9】
前記スタンバイモードに移行後、前記トランシーバから入力される信号がLowの場合に、前記スタンバイモードへの移行の異常を検出する、
請求項8に記載の通信方法。
【請求項10】
前記所定のシーケンスは、前記スタンバイモードに移行後における、前記送信用の信号のレベルのHighとLowの切り替えの順として設定され、HighとLowのいずれにおいても前記トランシーバから入力される信号がHighの場合に、前記スタンバイモードへの移行が正常に行われていることを検出する、
請求項8または9に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信回路および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の装置を有するシステムにおいて、各装置を制御する電子回路をバスで接続することで、各装置間の通信が行われることがある。そのようなシステムにおいて、電子回路間を接続するバスの通信方式としては、例えば、CAN(Controller Area Network)通信方式が用いられる。CAN通信方式に用いられるバスは、CANバスとも呼ばれる。
【0003】
バスに接続されている電子回路に異常が生じた場合には、例えば、異常となった電子回路をバスから切り離すことで、他の電子回路の動作が継続される。システム全体を安定して稼働させるためには、ネットワークからの電子回路の切り離しが正常に行われるかを事前に確認できることが望ましい。そのため、ネットワークからの電子回路の切り離しの可否を確認する技術の開発が行われている。
【0004】
特許文献1の自動車用制御装置は、バスを介して接続されている複数の制御ユニットを有している。特許文献1の自動車用制御装置は、バスを介して他の制御ユニットから確認対象の制御ユニットに信号を送信することで、制御ユニットの切り離し機能の異常の有無の確認を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、各制御ユニット内において、ネットワークからの切り離し機能の異常の有無の確認することが難しい場合がある。
【0007】
本発明は、バスを介さずにネットワークからの切り離し機能の異常の有無を確認することができる通信回路等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の通信回路は、バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバであり、スタンバイモードに移行する場合にHighの信号を送信するトランシーバのスタンバイモードへの移行を制御する制御手段と、トランシーバに送信用の信号を出力する出力手段と、トランシーバが受信する信号の入力を受け付ける入力手段と、スタンバイモードに移行後、送信用の信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、トランシーバから入力される信号に基づいて、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する検出手段とを備える。
【0009】
本発明の通信方法は、バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバであり、スタンバイモードに移行する場合にHighの信号を送信するトランシーバのスタンバイモードへの移行を制御し、トランシーバに送信用の信号を出力し、トランシーバが受信する信号の入力を受け付け、スタンバイモードに移行後、送信用の信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、トランシーバから入力される信号に基づいて、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、バスを介さずにネットワークからの切り離し機能の異常の有無を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の構成の概要を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の通信回路の構成の例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態のトランシーバの構成の例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の信号のレベルの例を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態のトランシーバの構成の例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の通信回路の動作フローの例を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態の構成の概要を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態の通信回路の動作フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の通信装置10の構成の例を示す図である。通信装置10は、通信回路20と、トランシーバ30と、切り替え器40を備える。
【0013】
通信装置10は、例えば、車載装置を制御する電子回路に接続されている。電子回路が制御する対象となる装置は、車載装置に限られない。車載装置などの装置を制御する電子回路は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。電子回路は、例えば、
図1の通信回路20に接続されている。通信装置10は、電子回路が他の電子回路と通信を行う場合に、他の電子回路に接続された通信装置との間で信号を送受信する装置。すなわち、電子回路は、通信装置10の通信機能を介して、他の電子回路との通信を行う。
【0014】
通信装置10は、バスを介して他の通信システムと通信を行う。通信装置10は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信方式によって他の通信装置と通信を行う。
【0015】
通信装置10は、接続されている電子回路をネットワークから切り離す機能を有する。通信装置10は、トランシーバ30を、スタンバイモードに移行することで他の通信装置と通信を行わない状態に移行する。また、通信装置10は、トランシーバ30のスタンバイモードへの移行の異常の有無を確認する機能を有する。スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認は、例えば、電子回路からスタンバイモードへの移行の要求を受けた場合に行われる。スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認は、電子回路からスタンバイモードへの移行の異常の有無の確認を要求された場合に行われてもよい。また、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認は、あらかじめ設定された日時または時間間隔で行われてもよい。
【0016】
通信回路20の構成について説明する。
図1に示すように、通信回路20は、制御回路21と、信号処理回路22をさらに備える。
【0017】
制御回路21の構成について説明する。
図2は、制御回路21の構成の例を示す図である。制御回路21は、制御部101と、出力部102と、入力部103と、検出部104をさらに備える。
【0018】
制御部101は、トランシーバ30のスタンバイモードへの移行を制御する。トランシーバ30は、バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバである。また、トランシーバ30は、スタンバイモードに移行する場合に、Highの信号をバスに送信する。
【0019】
制御部101は、トランシーバ30をスタンバイモードに移行させる場合に、トランシーバ30に、スタンバイ信号を出力する。制御部101は、例えば、トランシーバ30に、トランシーバ30が送信する信号のレベルをHighにする信号をスタンバイ信号として出力する。スタンバイ信号は、High以外のレベルの信号であってもよい。スタンバイ信号の信号レベルは、システム全体の仕様に応じて、適宜、設定される。
【0020】
出力部102は、トランシーバ30に、送信用の信号を出力する。送信用の信号は、トランシーバがバスに送信する信号である。出力部102は、例えば、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認を行う際に、トランシーバ30に、送信用の信号のレベルを示す信号を出力する。出力部102は、所定のシーケンスに応じて、トランシーバ30からHighとLowの信号が送信されるように、トランシーバ30が送信する信号のレベルを制御する信号を出力する。所定のシーケンスは、トランシーバ30のスタンバイモードへの移行の異常の有無を確認するためのシーケンスとして設定されている。所定のシーケンスは、例えば、HighとLowの信号の送信の順番、送信時間および送信間隔を示す情報である。信号のレベルのHighとLowの順番は、確認のシーケンスとしてあらかじめ設定されている。出力部102は、例えば、スタンバイモードに移行後、Low、High、Lowの順に送信用の信号が送信されるように信号を出力する。出力部102は、例えば、検出部104からの要求に基づいて、信号のHighとLowを切り替える。出力部102は、あらかじめ設定された時間ごとに、信号のHighとLowを切り替えてもよい。
【0021】
入力部103は、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認を行う際に、トランシーバ30が受信する信号の入力を受け付ける。入力部103は、例えば、スタンバイモードの異常の有無を確認する際に、トランシーバ30が受信する信号がHighであるかLowであるかを示す信号の入力を受け付ける。また、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認を行っていない場合には、入力部103は、入力された信号の処理を行わなくてもよい。
【0022】
検出部104は、スタンバイモードに移行後、送信用の信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、トランシーバ30から入力される信号に基づいて、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する。すなわち、検出部104は、入力部103が取得する、トランシーバ30が受信する信号がHighであるかLowであるかを示す信号に基づいて、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する。検出部104がスタンバイモードへの移行の異常の有無を確認する方法については、後で説明する。
【0023】
検出部104は、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認を開始する際に、確認を開始する信号を、制御部101、出力部102および入力部103に出力してもよい。
【0024】
検出部104は、通信装置10に接続されている電子回路に、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認結果を出力してもよい。また、検出部104は、バスに接続された複数の通信装置を管理する装置に、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認結果を出力してもよい。
【0025】
検出部104は、切り替え器40のスイッチ素子の切り替えを制御してもよい。検出部104は、スタンバイモードの異常の有無の確認を開始する際に、スイッチの切り替えの要求を切り替え器40に出力する。検出部104は、例えば、スタンバイモードの異常の有無の確認を開始する際に、出力部102から出力される信号がトランシーバ30に入力されるように切り替え器40のスイッチ素子の切り替えを行う。また、検出部104は、確認の開始時にスイッチの切り替えの要求を切り替え器40に出力する場合に、スタンバイモードの異常の有無の確認が完了した際に、スイッチの切り替えの要求を切り替え器40に出力してもよい。検出部104は、例えば、スタンバイモードの異常の有無の確認が完了した際に、信号処理回路22から出力される信号がトランシーバ30に入力されるように切り替え器40のスイッチ素子の切り替えを行う。
【0026】
検出部104がスタンバイモードへの移行の異常の有無を確認する方法の例を説明する。
図4は、スタンバイモードへの移行の異常の有無を確認する際における、各信号のレベルの例を模式的に示す図である。
【0027】
信号処理回路22は、電子回路から入力される信号を、送信用の信号形式に変換して、トランシーバ30に出力する。信号処理回路22は、トランシーバ30から入力される受信信号を、電子回路の信号形式に変換して出力する。信号処理回路22は、トランシーバ30のスタンバイモードへの移行の異常の有無の確認が行われている場合には、入力される信号の処理を行わなくてもよい。
【0028】
制御回路21および信号処理回路22には、それぞれ半導体装置が用いられる。制御回路21および信号処理回路22には、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)が用いられる。制御回路21および信号処理回路22は、FPGA以外の半導体装置であってもよい。制御回路21および信号処理回路22は、一体の半導体装置であってもよい。また、制御回路21は、例えば、GPIO(General-purpose input/output)インタフェースを有する半導体装置であってもよい。
【0029】
トランシーバ30の構成について説明する。
図3は、トランシーバ30の構成の例を示す図である。トランシーバ30は、送信器31と、受信器32をさらに備える。
【0030】
送信器31は、通信回路20から入力された送信用の信号を、差動信号としてバスに出力する。送信器31とバスの間の信号線は、分岐されて受信器32の受信端子に接続されている。そのため、送信器31から送信された信号は、折り返されて受信器32にも入力される。また、送信器31は、スタンバイ信号の入力端子33を備える。スタンバイ信号が入力されると、送信器31は、Highの信号を送信する。
【0031】
送信器31が送信する送信用の信号は、切り替え器40を介して、信号処理回路22と、制御回路21とから入力される。送信器31が送信する送信用の信号は、切り替え器40のスイッチ素子の状態に応じて、信号処理回路22が出力する信号と、制御回路21が出力する信号のいずれかが選択されて入力される。
【0032】
受信器32は、バスを介して受信する差動信号をビット信号に変換し、通信回路20に出力する。受信器32が受信する信号には、送信器31が出力した信号が含まれる。受信器32が出力する信号は、通信回路20の信号処理回路22と、制御回路21の入力部103にそれぞれ入力される。また、受信器32と、信号処理回路22および制御回路21の間に切り替え器を設け、受信器32から出力された信号が、信号処理回路22と制御回路21のいずれか一方にのみ入力されるようにしてもよい。
【0033】
図4の(a)のスタンバイ信号は、制御部101がトランシーバ30に出力する、スタンバイ信号のレベルを示す。スタンバイ信号は、スタンバイモードの時にHighの信号として出力される。
図4の(b)の送信信号は、出力部102がトランシーバ30に送る送信用の信号のレベルを示す。
図4の(c)と(d)の受信信号は、入力部103に入力される、トランシーバ30が受信する信号のレベルを示している。
図4の(c)は、スタンバイモードへの移行が正常に行われた場合における、受信する信号のレベルを示している。
図4の(d)は、スタンバイモードの移行に異常が生じた場合における、受信する信号のレベルを示している。
【0034】
図4の例において、異常の有無の確認が開始されると、出力部102は、例えば、100マイクロ秒間、Lowの信号をトランシーバ30に出力する。出力部102は、
図4の例において、T1からT2の間で、Lowの信号をトランシーバ30に出力する。Lowの信号を出力する時間は、100マイクロ秒に限られない。Lowの信号を出力する時間は、例えば、通常の信号と区別できる長さに設定される。また、トランシーバに、Lowへの固着を防ぐタイムアウト機能が設定されている場合には、Lowの信号を出力する長さは、タイムアウト機能の設定時間よりも短く設定される。また、出力部102は、タイムアウト機能の作動を防ぐため、Lowの信号を出力する前に、Highの信号を出力してもよい。
【0035】
Lowの信号が100マイクロ秒間、出力されると、
図4の例におけるT2の時点において、制御部101は、スタンバイ信号をトランシーバ30に出力する。この時点において、トランシーバ30の送信器31が送信するHighの信号は、折り返されて受信器32に入力されるので、スタンバイモードへの移行が正常な場合に、入力部103に入力される信号は、Highを示す信号となる。
【0036】
スタンバイ信号の出力が開始された後、出力部102は、Lowの信号をトランシーバ30に出力する。スタンバイモードの時に、Lowの信号を出力しても、スタンバイモードへの移行が正常に行われている場合、入力部103に入力される信号は、Highを示す。そのため、入力部103に入力される信号がLowの場合、検出部104は、スタンバイモードへの移行に異常が生じていると判定する。検出部104は、スタンバイモードへの移行に異常が生じていると判定することで、スタンバイモードへの移行に異常が生じていることを検出する。
【0037】
検出部104は、出力部102がLowの信号を出力後、あらかじめ設定された時間が経過した時に、スタンバイモードへの移行の異常の有無を判定する。検出部104は、出力部102がLowの信号を出力後、例えば、2マイクロ秒後に、スタンバイモードへの移行の異常の有無を判定する。信号の出力後、異常の有無を判定するまでの時間は、2マイクロ秒に限られない。信号の出力後、異常の有無を判定するまでの時間は、出力した信号がトランシーバ30の送信器31から送信後に、折り返されて受信器32において受信され、受信した信号のレベルの情報が入力部103に入力されるまでに要する時間を基に設定される。出力部102が信号を出力してから、検出部104が異常の有無を判定するまでの時間の設定は、以降のステップの場合にも同様である。
【0038】
出力部102によるLowの信号の出力後、入力部103に入力される受信信号がHighの場合、
図4の例におけるT3の時点において、出力部102は、Highの信号を出力する。検出部104は、出力部102がHighの信号を出力後、あらかじめ設定された時間が経過した時に、スタンバイモードへの移行の異常の有無を判定する。あらかじめ設定された時間は、
図4の場合、2マイクロ秒である。この時点において、スタンバイ信号、送信信号ともにHighのため、スタンバイモードへの移行が正常ならば、
図4(c)に示すように、受信信号は、Highとなる。そのため、入力部103に入力される信号が、
図4(d)に示すようにLowの場合、検出部104は、スタンバイモードへの移行に異常が生じていると判定する。
【0039】
出力部102によるHighの信号の出力後、入力部103に入力される受信信号がHighの場合、
図4の例におけるT4の時点において、出力部102は、Lowの信号をさらに出力する。検出部104は、出力部102がLowの信号を出力後、あらかじめ設定された時間が経過した時に、スタンバイモードへの移行の異常の有無を判定する。この時点において、スタンバイ信号が出力されているため、スタンバイモードへの移行が正常ならば、
図4(c)に示すように、受信信号は、Highとなる。そのため、入力部103に入力される信号が、
図4(d)に示すようにLowの場合、検出部104は、スタンバイモードへの移行に異常が生じていると判定する。また、各出力パターンについての確認が完了しているため、入力部103に入力される信号がHighの場合、検出部104は、スタンバイモードへの移行が正常に行われていると判定する。検出部104は、スタンバイモードへの移行が正常に行われていると判定することで、スタンバイモードへの移行が正常であることを検出する。
【0040】
トランシーバは、タイムアウト信号を出力する素子を備えていてもよい。タイムアウト信号は、信号がLowに固着した場合に、Lowへの固着を回避するために出力される信号である。
【0041】
図5は、タイムアウト信号を出力する素子を備えるトランシーバの例を、トランシーバ50として示す図である。トランシーバ50は、送信器31と、受信器32を備える。Time-out部51は、例えば、あらかじめ設定された時間以上、Lowの状態が続いた場合に、送信器31に、Highの信号をタイムアウト信号として出力する。タイムアウト信号を出力するまでのLowの状態の継続時間は、例えば、数100マイクロ秒から数10ミリ秒の間の時間に設定される。
【0042】
切り替え器40は、制御回路21の検出部104から入力される制御信号に基づき、スイッチ素子の切り替えにより信号の経路を切り替える。切り替え器40は、制御回路21から入力される信号と、信号処理回路22から入力される信号のいずれか一方がトランシーバ30の送信器31に入力されるようにスイッチ素子を切り替える。切り替え器40は、通信回路20の内部にスイッチ素子として形成されていてもよい。
【0043】
本実施形態の通信装置10において、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認が行われる際の動作について説明する。
図6は、通信装置10がスタンバイモードへの移行の異常の有無の確認を行う際の動作フローの例を示す図である。
【0044】
スタンバイモードへの移行の有無の確認が開始されると、検出部104は、切り替え器40を制御して、制御回路21が出力した信号がトランシーバ30に出力されるようにスイッチを切り替える(ステップS101)。
【0045】
スイッチの切り替えが行われると、出力部102は、あらかじめ設定された時間、トランシーバ30に、Lowの信号を出力する(ステップS102)。出力部102からトランシーバ30に出力された信号は、送信器31に入力される。送信器31は、出力部102から入力された信号に基づいて、バスにLowの信号を送信する。送信器31がバスに送信した信号は、バスに接続された信号線上で折り返されて受信器32に入力される。受信器32は、受信信号を受信信号のレベルを示す信号に変換する。受信信号のレベルを示す信号に変換すると、受信器32は、入力部103に、受信信号のレベルを示す信号を出力する。
【0046】
あらかじめ設定された時間の経過後、出力部102は、スタンバイ信号をトランシーバ30に出力し、トランシーバ30をスタンバイモードに移行させる(ステップS103)。スタンバイモードに移行すると、送信器31は、入力されたスタンバイ信号に基づいて、バスにHighの信号を送信する。送信器31がバスに送信した信号は、バスに接続された信号線上で折り返されて受信器32に入力される。受信器32は、受信信号を受信信号のレベルを示す信号に変換する。受信信号のレベルを示す信号に変換すると、受信器32は、入力部103に、受信信号のレベルを示す信号を出力する。
【0047】
スタンバイ信号の出力後、検出部104は、入力部103に入力される信号が示す受信信号のレベルを確認する。入力部103に入力される受信信号がLowの場合(ステップS104でNo)、検出部104は、スタンバイモードへの移行に異常が生じていると判定する(ステップS110)。
【0048】
入力部103に入力される信号が示す受信信号のレベルがHighの場合(ステップS104でYes)、検出部104は、出力部102に出力する信号のレベルを切り替える要求を出力する。出力する信号のレベルを切り替える要求を受け取ると、出力部102は、トランシーバ30に、Highの信号を出力する(ステップS105)。
【0049】
トランシーバ30の送信器31は、入力されたHighの信号に基づいて、バスにHighの信号を送信する。送信器31がバスに送信した信号は、バスに接続された信号線上で折り返されて受信器32に入力される。受信器32は、受信信号を受信信号のレベルを示す信号に変換する。受信信号のレベルを示す信号に変換すると、受信器32は、入力部103に、受信信号のレベルを示す信号を出力する。
出力部102からHighの信号が出力された後、あらかじめ設定された時間後に、検出部104は、入力部103に入力される信号が示す受信信号のレベルを確認する。入力部103に入力される信号が示す受信信号のレベルがLowの場合(ステップS106でNo)、検出部104は、スタンバイモードへの移行に異常が生じていると判定する(ステップS110)。
【0050】
入力部103に入力される信号が示す受信信号のレベルがHighの場合(ステップS106でYes)、検出部104は、出力部102に出力する信号のレベルを切り替える要求を出力する。出力する信号のレベルを切り替える要求を受け取ると、出力部102は、トランシーバ30に、Lowの信号を出力する(ステップS107)。
【0051】
トランシーバ30の送信器31は、入力されたLowの信号に基づいて、バスにLowの信号を送信する。この時点において、スタンバイ信号が入力されているため、送信器31は、バスに送信する信号にHighの信号を重畳する。このため、送信器31が送信する信号は、Highの信号となる。バスに送信器31がバスに送信した信号は、バスに接続された信号線上で折り返されて受信器32に入力される。受信器32は、受信信号を受信信号のレベルを示す信号に変換する。受信信号のレベルを示す信号に変換すると、受信器32は、入力部103に、受信信号のレベルを示す信号を出力する。
出力部102からLowの信号が出力された後、あらかじめ設定された時間後に、検出部104は、入力部103に入力される信号が示す受信信号のレベルを確認する。入力部103に入力される信号が示す受信信号がLowの場合(ステップS108でNo)、検出部104は、スタンバイモードへの移行に異常が生じていると判定する(ステップS110)。
【0052】
入力部103に入力される信号が示す受信信号のレベルがHighの場合(ステップS108でYes)、検出部104は、スタンバイモードへの移行が正常に行われていると判定する(ステップS109)。
【0053】
検出部104は、例えば、トランシーバ30のスタンバイモードへの移行の有無の確認結果を、通信装置10に接続されている電子回路に出力する。また、検出部104は、バスに接続された複数の通信装置を管理する管理システムに、スタンバイモードへの移行の異常の有無の確認結果を出力してもよい。
【0054】
本実施形態の通信装置10において、通信回路20の出力部102は、スタンバイモードに移行後、LowとHighの信号をトランシーバ30に出力する。トランシーバ30は、出力部102から入力される信号に基づき、送信用の信号を送信し、折り返された信号を受信する。トランシーバ30は、受信した信号のレベルを示す信号を通信回路20に出力する。通信回路20の入力部103は、トランシーバ30が出力する信号の入力を受け付ける。そして、検出部104は、入力された信号に基づき、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する。そのため、通信回路20は、トランシーバ30が出力した信号を基に、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出することができる。その結果、通信回路20は、バスを介さずにネットワークからの切り離し機能の異常の有無を確認することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図7は、本実施形態の通信回路200の構成の概要を示す図である。
【0056】
通信回路200は、制御部201と、出力部202と、入力部203と、検出部204を備える。
【0057】
制御部201は、バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバであり、スタンバイモードに移行する場合にHighの信号を送信するトランシーバのスタンバイモードへの移行を制御する。出力部202は、トランシーバに送信用の信号を出力する。入力部203は、トランシーバが受信する信号の入力を受け付ける。検出部204は、スタンバイモードに移行後、送信用の信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、トランシーバから入力される信号に基づいて、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する。
【0058】
ここで、第1の実施形態の制御部101は、制御部201の一例である。また、制御部201は、制御手段の一態様である。出力部102は、出力部202の一例である。また、出力部202は、出力手段の一態様である。入力部103は、入力部203の一例である。また、入力部203は、入力手段の一態様である。検出部104は、検出部204の一例である。また、検出部204は、検出手段の一態様である。
【0059】
通信回路200の動作について説明する。
図8は、通信回路200の動作フローの例を示す図である。
【0060】
制御部201は、バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバであり、スタンバイモードに移行する場合にHighの信号を送信するトランシーバのスタンバイモードへの移行を制御する(ステップS201)。スタンバイモードへの移行を制御する、出力部202は、トランシーバに、送信用の信号を出力する(ステップS202)。送信用の信号を出力すると、入力部203は、トランシーバが受信する信号の入力を受け付ける(ステップS203)。トランシーバが受信する信号が入力されると、検出部204は、スタンバイモードに移行後、送信用の信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、トランシーバから入力される信号に基づいて、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する(ステップS204)。
【0061】
通信回路200は、バスに送信する信号を分岐して受信する手段を有するトランシーバに送信用の信号を出力する。そして、通信回路200は、信号のレベルを所定のシーケンスで切り替えた場合における、トランシーバから入力される信号に基づいて、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出する。そのため、通信回路200は、通信回路200が出力した信号を基に、スタンバイモードへの移行の異常の有無を検出することができる。その結果、通信回路200は、バスを介さずにネットワークからの切り離し機能の異常の有無を確認することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 通信装置
20 通信回路
21 制御回路
22 信号処理回路
30 トランシーバ
31 送信器
32 受信器
33 入力端子
40 切り替え器
50 トランシーバ
51 Time-out部
101 制御部
102 出力部
103 入力部
104 検出部
200 通信回路
201 制御部
202 出力部
203 入力部
204 検出部