(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】インストルメントパネル構造
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20240101AFI20240402BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240402BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240402BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
H02G3/04 087
B62D25/08 J
B60R16/02 620B
(21)【出願番号】P 2022062335
(22)【出願日】2022-04-04
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】花島 学
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-220011(JP,A)
【文献】特開2012-055105(JP,A)
【文献】特開2004-175266(JP,A)
【文献】特開2003-267264(JP,A)
【文献】特開平8-084425(JP,A)
【文献】特開2017-050986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
B60R 16/00-17/02
B62D 17/00-25/08,
25/14-29/04
H02G 3/00- 3/04,
3/22- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右のフロントピラー間に掛け渡され、運転席側に配置される大径パイプと助手席側に配置される小径パイプとを有するリインホースメントと、
前記リインホースメントに沿って配索されるワイヤハーネスと、
前記リインホースメントに取り付けられ、前記ワイヤハーネスを収容して保護するプロテクタと、
前記リインホースメントに保持され、前記左右のフロントピラー間に配設されるインストルメントパネルと、
を備え、
前記リインホースメントの大径パイプ及び小径パイプには、少なくとも1つの取付部がそれぞれ設けられ、
前記プロテクタの中央及び両側には、前記各パイプの取付部に係止される係止部がそれぞれ設けられ、
前記車両の右側に運転席がある場合に、前記プロテクタの右側の係止部が前記リインホースメントの運転席側に配置された大径パイプの取付部に係止され、
前記車両の左側に運転席がある場合に、前記プロテクタの左側の係止部が前記リインホースメントの運転席側に配置された大径パイプの取付部に係止されるインストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記リインホースメントの大径パイプ及び小径パイプには、前記取付部としての取付長孔がそれぞれ設けられ、
前記プロテクタは、中央の下面側に凸部を有すると共に左右両側の下面側に凹部をそれぞれ有し、
前記凸部及び前記左右両側の凹部には、前記各パイプの取付長孔に係止される前記係止部としてのクリップ部がそれぞれ突設されている、請求項1に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項3】
前記リインホースメントの大径パイプと小径パイプとの間には、テーパ状に縮径されたテーパ部を有し、
前記プロテクタの凸部の下面と左右両側の各凹部の下面との間には、前記テーパ部に当接する傾斜面をそれぞれ有する、請求項2に記載のインストルメントパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の室内に配設されるインストルメントパネルには、その補強部材として、リインホースメント(Reinforcement:R/F)が一般に設けられている。このリインホースメントで保持されるインストルメントパネルの構造体として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に記載のインストルメントパネル構造体は、ワイヤハーネスが配索された車両のリインホースメントに組み付けられて車両のインストルメントパネル部分を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のインストルメントパネル構造では、ワイヤハーネスがリインホースメントに沿って配索さているため、ワイヤハーネスを保護するためには、プロテクタを設ける必要がある。しかしながら、車両には、右ハンドルのタイプ(車両の右側に運転席があるタイプ)と左ハンドルのタイプ(車両の左側に運転席があるタイプ)の2仕様がある。このため、ワイヤハーネスの配索経路の規制を行う中で、工数やコスト面から2仕様の車両に共通のプロテクタの開発が望まれている。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、ワイヤハーネスを収容して保護する1部品のプロテクタで右ハンドルと左ハンドルの両タイプの車両に使用(共通化)することができ、工数を削減して低コスト化を図ることができるインストルメントパネル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るインストルメントパネル構造は、車両の左右のフロントピラー間に掛け渡され、運転席側に配置される大径パイプと助手席側に配置される小径パイプとを有するリインホースメントと、前記リインホースメントに沿って配索されるワイヤハーネスと、前記リインホースメントに取り付けられ、前記ワイヤハーネスを収容して保護するプロテクタと、前記リインホースメントに保持され、前記左右のフロントピラー間に配設されるインストルメントパネルと、を備え、前記リインホースメントの大径パイプ及び小径パイプには、少なくとも1つの取付部がそれぞれ設けられ、前記プロテクタの中央及び両側には、前記各パイプの取付部に係止される係止部がそれぞれ設けられ、前記車両の右側に運転席がある場合に、前記プロテクタの右側の係止部が前記リインホースメントの運転席側に配置された大径パイプの取付部に係止され、前記車両の左側に運転席がある場合に、前記プロテクタの左側の係止部が前記リインホースメントの運転席側に配置された大径パイプの取付部に係止されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワイヤハーネスを収容して保護する1部品のプロテクタで右ハンドルと左ハンドルの両タイプの車両に使用(共通化)することができ、工数を削減して低コスト化を図ることができるインストルメントパネル構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造を備える右ハンドルの自動車の運転席部分の一例を示す斜視図である。
【
図1B】上記右ハンドル用のインストルメントパネル構造のリインホースメントにプロテクタが取り付けられる前の斜視図である。
【
図1C】上記右ハンドル用のリインホースメントにプロテクタが取り付けられた状態の要部の断面図である。
【
図2A】上記インストルメントパネル構造を備える左ハンドルの自動車の運転席部分の一例を示す斜視図である。
【
図2B】上記左ハンドル用のリインホースメントにプロテクタが取り付けられた状態の要部の断面図である。
【
図2C】上記左ハンドル用のリインホースメントにプロテクタが取り付けられた状態の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造について詳細に説明する。
【0010】
図1Aは本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造を備える右ハンドルの自動車の運転席部分の一例を示す斜視図である。
図1Bは右ハンドル用のインストルメントパネル構造のリインホースメントにプロテクタが取り付けられる前の斜視図である。
図1Cは右ハンドル用のリインホースメントにプロテクタが取り付けられた状態の要部の断面図である。
図2Aはインストルメントパネル構造を備える左ハンドルの自動車の運転席部分の一例を示す斜視図である。
図2Bは左ハンドル用のリインホースメントにプロテクタが取り付けられた状態の要部の断面図である。
図2Cは左ハンドル用のリインホースメントにプロテクタが取り付けられた状態の要部の断面図である。
【0011】
図1A、
図2Aに示すように、インストルメントパネル構造1は、金属製で円筒状のリインホースメント10と、複数本の電線Hを束ねてなるワイヤハーネスW/Hと、合成樹脂製のプロテクタ20と、合成樹脂製のインストルメントパネル30と、を備えている。
【0012】
リインホースメント10は、金属製で円筒状のパイプからなり、外部からの衝撃に対する車両ボディの剛性を高める補強部材であり、ECU等の各種機器やハンドルを固定させるために、車両の左右のフロントピラー2,2間に掛け渡されて連結されている。リインホースメント10は、運転席側に配置される円筒状の大径パイプ11と、助手席側に配置される円筒状の小径パイプ16と、を有する。これら大径パイプ11と小径パイプ16を溶接等により接合して円筒状のリインホースメント10を形成することにより、車両の軽量化及び高剛性化が図られている。特に、運転席側のリインホースメント10の剛性を高めるために運転席側には大径パイプ11を配置している。すなわち、運転席側の剛性が低いと車両衝突時にリインホースメント10が変形し、ステアリングが変位することで運転者に危険が及ぶことを高剛性の大径パイプ11で防いでいる。
【0013】
図1B、
図1C、
図2B、
図2Cに示すように、円筒状の大径パイプ11の一端部である内端部12は円筒状の小径パイプ16にむけて縮径させてある。すなわち、内端部12は、その内径が小径パイプ16の一端部である内端部17の外径に略等しくなる程度までテーパ状に縮径するテーパ部12aと、これに続いて一定長さの範囲で平行パイプとなった連結部12bとよりなる。また、
図1A、
図2Aに示すように、大径パイプ11の他端部である外端部13には、フロントピラー2にボルト止めされるブラケット14が設けられている。さらに、大径パイプ11の両端部12,13間の内端部12寄りの位置には、取付部としての取付長孔15が設けられている。
【0014】
図1C、
図2Cに示すように、円筒状の小径パイプ16の一端部である内端部17は、平行パイプとした円筒状の大径パイプ11の内端部12の内周面と接したオーバラップ状態に挿入されて溶接されている。また、
図1A、
図2Aに示すように、小径パイプ16の他端部である外端部18には、フロントピラー2にボルト止めされるブラケット14が設けられている。さらに、小径パイプ16の両端部17,18間の内端部17寄りの位置には、取付部としての取付長孔19が設けられている。
【0015】
図1B、
図2Bに示すように、ワイヤハーネスW/Hは、複数本の電線Hをクランプ部4付きのバンド3で束ねた電線束からなり、長手方向に延びる箱形のプロテクタ20に挿入され、円筒状のリインホースメント10に沿って配索されている。
【0016】
プロテクタ20は、上側と左右両側が開口した長箱形のプロテクタ本体21と、下側と左右両側が開口した長箱形の蓋体27と、を有し、プロテクタ本体21側がリインホースメント10に取り付けられ、内部にワイヤハーネスW/Hを収容して保護するものである。
【0017】
図1B、
図2Bに示すように、プロテクタ20のプロテクタ本体21は、底壁部21aと、この底壁部21aの両側より垂直に起立する両側壁部21b,21bと、を有する。そして、プロテクタ本体21の中央の下面側(つまり底壁部21aの中央)には凸部22が設けられると共に、プロテクタ本体21の左右両側の下面側(つまり底壁部21aの左右両側)には凹部23がそれぞれ設けられている。この中央の凸部22の下面と左右両側の各凹部23の下面との間には、大径パイプ11のテーパ部12aに当接する傾斜面24をそれぞれ有する。また、中央の凸部22及び左右両側の凹部23には、各パイプ11,16の取付長孔15,19に係止される係止部としてのクリップ部25がそれぞれ突設されている。
【0018】
図1B、
図2Bに示すように、プロテクタ20の蓋体27は、天井壁部27aと、この天井壁部27aの両側より垂下する両側壁部27b,27bと、を有する。そして、プロテクタ本体21の上面側の開口を蓋体27で覆って、プロテクタ本体21の側壁部21bのロック枠部21cに蓋体27の側壁部27bの係止突起27cをロックした状態で、その内部にワイヤハーネスW/Hが収容されて保護されるようになっている。
【0019】
図1C、
図2Cに示すように、プロテクタ本体21の中央の凸部22と左右両側の凹部23の下面に突出したクリップ部25は、支柱部25aと、支柱部25aの先端より逆V字状に形成された一対の弾性片部26b,25bと、を有している。プロテクタ本体21をリインホースメント10に取り付ける際に、クリップ部25の逆V字状の一対の弾性片部26b,25bを各パイプ11,16の取付長孔15,19に挿入すると、一対の弾性片部26b,26bが支柱部25a側に弾性変形する。そして、一対の弾性片部26b,26bの先端のL字形の各係止突起26cが取付長孔15,19の短縁に係止されると、この係止状態が一対の弾性片部26b,26bの弾性付勢力で保持され、クリップ部25が取付長孔15,19から抜けることがない。
【0020】
図1Bに示すように、右ハンドルRHDの場合(車両の右側に運転席がある場合)に、プロテクタ20の右側の凹部23に突設したクリップ部25がリインホースメント10の運転席側に配置された大径パイプ11の取付長孔15に係止されるようになっている。また、
図2Bに示すように、左ハンドルLHDの場合(車両の左側に運転席がある場合)に、プロテクタ20の左側の凹部23に突設したクリップ部25がリインホースメント10の運転席側に配置された大径パイプ11の取付長孔15に係止されるようになっている。
【0021】
インストルメントパネル30は、合成樹脂製であり、リインホースメント10に保持され、プロテクタ20とワイヤハーネスW/H等を覆うように、左右のフロントピラー2,2間に配設されている。
【0022】
以上実施形態のインストルメントパネル構造1によれば、
図1Bに示すように、右ハンドルRHDの場合、プロテクタ20の右側の凹部23に突設したクリップ部25をリインホースメント10の運転席側に配置された大径パイプ11の取付長孔15に係止する。かつ、プロテクタ20の中央の凸部22に突設したクリップ部25をリインホースメント10の助手席側に配置された小径パイプ16の取付長孔19に係止する。これらの係止により、リインホースメント10上にワイヤハーネスW/Hを収容したプロテクタ20が取り付けられる。この際、
図1Cに示すように、リインホースメント10の大径パイプ11のテーパ部12aにプロテクタ20の凸部22と右側の凹部23間の傾斜面24が隙間なく当接し、かつ、大径パイプ11の連結部12bにプロテクタ20の凸部22の底面が隙間なく当接する。この当接により、プロテクタ20の両端でワイヤハーネスW/Hが保持される。また、プロテクタ20の3つのクリップ部25のうちの2つのクリップ部25しかリインホースメント10に固定されないが、プロテクタ20を通るワイヤハーネスW/Hの電線束が太いことからプロテクタ20の剛性が担保でき、周辺部品との干渉が防止される。
【0023】
また、
図2Bに示すように、左ハンドルLHDの場合に、プロテクタ20の左側の凹部23に突設したクリップ部25をリインホースメント10の運転席側に配置された大径パイプ11の取付長孔15に係止する。かつ、プロテクタ20の中央の凸部22に突設したクリップ部25をリインホースメント10の助手席側に配置された小径パイプ16の取付長孔19に係止する。これらの係止により、リインホースメント10上にワイヤハーネスW/Hを収容したプロテクタ20が取り付けられる。この際、
図2Cに示すように、リインホースメント10の大径パイプ11のテーパ部12aにプロテクタ20の凸部22と左側の凹部23間の傾斜面24が隙間なく当接し、かつ、大径パイプ11の連結部12bにプロテクタ20の凸部22の底面が隙間なく当接する。この当接により、プロテクタ20の両端でワイヤハーネスW/Hが保持される。また、プロテクタ20の3つのクリップ部25のうちの2つのクリップ部25しかリインホースメント10に固定されないが、プロテクタ20を通るワイヤハーネスW/Hの電線束が太いことからプロテクタ20の剛性が担保でき、周辺部品との干渉が防止される。
【0024】
このように、ワイヤハーネスW/Hを収容して保護する1部品のプロテクタ20で右ハンドルRHDと左ハンドルLHDの両タイプの車両に使用(共通化)することができ、その分、工数を削減して低コスト化を図ることができる。
【0025】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0026】
すなわち、前記実施形態によれば、大径パイプと小径パイプを接合して円筒状のリインホースメントを形成したが、大径部となる幅広部と小径部となる幅狭部を有する平板を曲げ加工等で一体に成形することにより、円筒状のリインホースメントを形成しても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 インストルメントパネル構造
2,2 左右のフロントピラー
10 リインホースメント
11 大径パイプ
12a テーパ部
15 取付長孔(取付部)
16 小径パイプ
19 取付長孔(取付部)
20 プロテクタ
22 中央の凸部
23,23 左右両側の凹部
25 クリップ部(係止部)
30 インストルメントパネル
W/H ワイヤハーネス
RHD 右ハンドル(車両の右側に運転席)
LHD 左ハンドル(車両の左側に運転席)