(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】作業バッチ生成装置、作業バッチ生成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20240402BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G06Q10/087
B65G1/137 F
(21)【出願番号】P 2022066776
(22)【出願日】2022-04-14
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 知左
(72)【発明者】
【氏名】平野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】西原 弘真
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-175978(JP,A)
【文献】特表2020-509981(JP,A)
【文献】特表2021-516803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0033186(US,A1)
【文献】實藤 政子,WMS 導入と運用のための99の極意 [第2版],第1版,株式会社秀和システム 斉藤 和邦,2017年09月20日,p.180-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 ー 99/00
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成装置であって、
前記複数の注文情報を取得する取得手段と、
前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成するリスト生成手段と、
前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算するエリア別移動量計算手段と、
前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する親リスト別移動量計算手段と、
前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う交換手段と、
前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成手段と、
を含む作業バッチ生成装置。
【請求項2】
前記リスト生成手段は、前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報のうち共通の前記保管エリアに関連付けられる商品情報を結合することによりエリア別リストを生成する、
請求項1に記載の作業バッチ生成装置。
【請求項3】
前記作業バッチ生成手段は、前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれにおいて生成される前記エリア別リストに基づいて、前記1以上の作業者の数と同数の前記作業バッチを生成する、
請求項2に記載の作業バッチ生成装置。
【請求項4】
前記リスト生成手段は、前記交換手段により交換する前記注文情報を特定する際に、前記交換後の前記複数の親リストにおける前記エリア別リストをそれぞれ暫定的に生成し、
前記交換手段は、暫定的に生成された前記エリア別リストに基づいて、前記親リスト別移動量の総和が減少する前記複数の親リスト間での前記注文情報の交換を特定する、
請求項2又は3に記載の作業バッチ生成装置。
【請求項5】
前記複数の商品情報はそれぞれ、当該商品情報に関連付けられる前記保管エリアにおけるピッキング順位に関する情報を含み、
前記リスト生成手段は、前記ピッキング順位に基づいて、前記複数の注文情報を前記複数の親リストのいずれかに割り当てる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業バッチ生成装置。
【請求項6】
物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチを
コンピュータが生成する作業バッチ生成方法であって、
前記コンピュータが、
前記複数の注文情報を取得する手順と、
前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成する手順と、
前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算する手順と、
前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する手順と、
前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う手順と、
前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する手順と、
を実行する作業バッチ生成方法。
【請求項7】
物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチの生成をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記複数の注文情報を取得する手順、
前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成する手順、
前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算する手順、
前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する手順、
前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う手順、
前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する手順、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業バッチ生成装置、作業バッチ生成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業指示がリスト化された作業バッチを生成する作業バッチ生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物流倉庫における作業においては、1の顧客が注文した2以上の商品を複数の作業者が並行してピッキングを行うことにより、当該注文に関する商品の発送を効率的に行うことができる。しかしながら、物流倉庫に収容される商品点数の増加による物流倉庫の拡大に伴い各作業者の移動量が増加し、全体として作業効率が落ちてしまう場合がある。
【0005】
本開示の目的は、物流倉庫における作業効率を向上する作業バッチ生成装置、作業バッチ生成方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る作業バッチ生成装置は、物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成装置であって、前記複数の注文情報を取得する取得手段と、前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成するリスト生成手段と、前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算するエリア別移動量計算手段と、前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する親リスト別移動量計算手段と、前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う交換手段と、前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成手段と、を含む。
【0007】
また、本開示の他の側面に係る作業バッチ生成方法は、物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成方法であって、前記複数の注文情報を取得する手順と、前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成する手順と、前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算する手順と、前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する手順と、前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う手順と、前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する手順と、を含む。
【0008】
また、本開示の他の側面に係るプログラムは、物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチの生成をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記複数の注文情報を取得する手順、前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成する手順、前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算する手順、前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する手順、前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う手順、前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する手順、をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】保管エリアA及びBにおける収容棚の配置及びそれらに付与されたピッキング順位を示す平面図である。
【
図3】作業バッチ生成装置のハードウェア構成図である。
【
図4】作業バッチ生成装置で実装される機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図5】作業バッチ生成装置が受注システムから受信する注文情報の一例を模式的に示す図である。
【
図6】作業バッチ生成装置により生成される作業バッチの一例を模式的に示す図である。
【
図7】作業バッチ生成装置における作業バッチ生成処理の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図7のS2における初期親リスト群の生成処理の一例を示すフロー図である。
【
図9】初期親リストの生成処理の一例を模式的に示す図である。
【
図10】
図7のS3におけるエリア別リストの生成処理の一例を模式的に示す図である。
【
図11】
図7のS5における第2の局所探索処理の一例を示すフロー図である。
【
図12】
図11のS57における交換を実行する様子の一例を模式的に示す図である。
【
図13】作業バッチを各作業者に割り当てる様子の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
[物流倉庫10の概要]
図1は、本実施形態における物流倉庫の一例を示す平面図である。以下では、
図1に示される物流倉庫10に、本実施形態に係る作業バッチ生成装置100(
図3、
図4参照)が用いられる例について説明する。
図1に示すように、物流倉庫10には複数の保管エリアA~Fが設けられている。
【0012】
図2は、保管エリアA及びBにおける収容棚の配置及びそれらに付与されたピッキング順位を示す平面図である。
図2は、保管エリアA及びBの全体像を模式的かつ簡略化して図示するものである。なお、
図2においては保管エリアA及びBのみを示し、他の保管エリアの図示は省略するが、他の保管エリアにおいても同様にピッキング順位が付与された収容棚が配置されている。
【0013】
本実施形態において、作業バッチとは、ピッキング作業者(以下、単に作業者という)に商品のピッキング順を示すものである。作業バッチは、紙媒体で配布されたり、タブレットなどの電子端末に表示されたりする等により作業者一人一人に提供される。
【0014】
各保管エリアA~Fには1以上の作業者がそれぞれ配置されている。本実施形態において、作業者とは、物流倉庫10に配置される収容棚Sから商品をピッキングすると共にコンテナボックス15(
図2参照)に入れて、それをコンベア11(
図2参照)へ運ぶ者である。作業者は、作業バッチ生成装置100により生成された作業バッチにより指示された商品を、指示された順序でピッキングする。なお、作業者は、人間に限らず、ロボットであっても構わない。
【0015】
本実施形態において、各作業者は、担当の保管エリア内においてピッキングを行う。すなわち、各作業者は、1の作業バッチに基づいて一連の作業を行うにあたり、異なる保管エリアを跨って移動することはない。
【0016】
各保管エリアA~Fには、種類が共通する複数の商品がそれぞれ保管されているとよい。例えば、保管エリアAには複数の靴が保管されており、保管エリアEには複数の上着が保管されている等であるとよい。このように物流倉庫10を複数のエリアに区画し、各作業者が自己の担当するエリアのみでピッキングを行うことにより、各作業者の移動量(移動距離)を削減することができる。また、各保管エリアA~Fには種類が共通する商品が保管されていることより、複数種類の商品が混在する場合と比較して、作業者は効率的にピッキングを行うことができる。
【0017】
物流倉庫10には、コンベア11と仕分けエリア12が設けられているとよい。コンベア11は、各保管エリアA~Fにおいて各作業者にピッキングされてコンテナボックス15に収容された商品を仕分けエリア12へ搬送する。コンベア11は、各保管エリアA~Fのそれぞれに隣接するように延伸しているとよい。仕分けエリア12においては発送先に応じた商品の仕分けが行われ、図示しない発送エリアにおいては梱包などの発送作業がさらに行われる。
【0018】
各保管エリアA~Fにおいては、在庫商品を保管する収容棚Sが整列配置されているとよい。
図2において、黒点を起点に延びる矢印は、作業者の基本移動経路を示している。各収納棚Sにはこの基本移動経路にしたがってピッキング順位が付与されている。ピッキング順位は、ピッキング順の優先度を示すものであり、
図2においては数字が小さいほど優先度が高いことを示している。なお、
図2に示す収容棚Sの配置や基本移動経路は一例であって、これに限られるものではない。
【0019】
ここで、各作業者それぞれによる商品のピッキング数が少ないと、1のコンテナボックス15に収容される商品数が少なくなり、その分コンベア11により搬送されるコンテナボックス15の数が多くなる。コンテナボックス15の数が多くなると、仕分けエリア12における仕分け作業量が多くなってしまう。また、共通の注文情報に含まれる商品の全てが仕分けエリア12に搬送されるまで発送作業に進むことができず、仕分けエリア12において発送作業待ちの商品が滞留してしまう。このような問題を解消すべく、本実施形態においては、作業効率を向上する作業バッチを生成する作業バッチ生成装置100を提供する。以下、作業バッチ生成装置100の詳細について説明する。
【0020】
[作業バッチ生成装置100のハードウェア構成]
図3は、作業バッチ生成装置のハードウェア構成図である。作業バッチ生成装置100は、例えば物流倉庫10の隅に配置されており、注文情報が所定数蓄積されるたびに、それらを作業者と同数の作業バッチに仕分ける。作業バッチ生成装置100は、一般的なパーソナルコンピュータにより構成されてよく、CPUなどのプロセッサ101、RAMなどのメモリ102、ストレージ103、通信インタフェース104、ポインティングデバイスやキーボードなどの入力部105、LCDやOLEDなどのディスプレイ106及びプリンタ107を含んでよい。通信インタフェース104はLAN又はインターネットに接続されており、図示しない受注コンピュータと作業バッチ生成装置100との間でデータ通信が可能となっている。特に、作業バッチ生成装置100は商品に対する注文が発生するたびに受注コンピュータから注文データを受信する。ストレージ103はHDDやSSDであってよく、本開示に係る作業バッチ生成方法を実行するためのプログラムが特にインストールされている。また、上述のようにして受注コンピュータから受信される注文情報が順次蓄積される。
【0021】
[作業バッチ生成装置100の機能構成]
図4は、作業バッチ生成装置で実装される機能の一例を示す機能ブロック図である。作業バッチ生成装置100には、
図4に示すように、取得部21、リスト生成部22、エリア別移動量計算部23、親リスト別移動量計算部24、総移動量計算部25、交換部26、作業バッチ生成部27が含まれるとよい。これら各機能はプロセッサ101を主として実装されているとよい。
【0022】
取得部21は、複数の保管エリアのいずれかに紐づけられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報を取得する。リスト生成部22は、取得部21により取得された複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の商品情報のそれぞれに関連付けられる複数の親リストを生成する。また、リスト生成部22は、生成された複数の親リストのそれぞれにおいて、親リストに関連付けられている複数の商品情報のうち共通の保管エリアに関連付けられる商品情報を結合することによりエリア別リストを生成する。また、リスト生成部22は、交換部26により親リスト間で交換する注文情報を特定する際に、交換後の複数の親リストにおけるエリア別リストをそれぞれ暫定的に生成する。
【0023】
エリア別移動量計算部23は、保管エリア毎に親リストに関連付けられている複数の商品情報に関する商品をピッキングする際の1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量TA,TB,TC…をそれぞれ計算する。エリア別移動量TA,TB,TC…とは、1の親リストにおける各保管エリアに含まれる全商品をピッキングするのに必要な移動量である。
【0024】
親リスト別移動量計算部24は、複数の親リストのそれぞれにおいて、エリア別移動量TA,TB,TC…の総和である親リスト別移動量T1,T2,T3…を計算する。親リスト別移動量T1,T2,T3…とは、各親リストに含まれる全商品をピッキングするのに必要な移動量である。すなわち、親リスト別移動量T1=T1A+T1B+T1C+…、親リスト別移動量T2=T2A+T2B+T2C+…、親リスト別移動量T3=T3A+T3B+T3C+…で表される。
【0025】
総移動量計算部25は、親リスト別移動量T1,T2,T3…の総和Tを計算する。総和Tとは、取得部21が取得した注文情報に含まれる全商品をピッキングするのに必要な移動量である。
【0026】
交換部26は、親リスト別移動量T1,T2,T3…の総和Tを減少させるように複数の親リスト間で注文情報の交換を行う。本実施形態においては、総和Tが可能な限り小さくなるよう、交換部26による親リスト間で注文情報の交換が反復して行われる。また、交換部26は、リスト生成部22により暫定的に生成されたエリア別リストに基づいて、親リスト別移動量の総和Tが減少する複数の親リスト間での注文情報の交換を特定する。
【0027】
作業バッチ生成部27は、交換部26による注文情報の交換後の親リストに基づいて、1以上の作業バッチを生成する。さらに具体的には、作業バッチ生成部27は、交換部26による注文情報の交換後の複数の親リストのそれぞれにおいて生成されるエリア別リストに基づいて、各保管エリアで作業を行う1以上の作業者の数と同数の作業バッチを生成する。
【0028】
[注文情報]
図5は、作業バッチ生成装置が受注システムから受信する注文情報の一例を模式的に示す図である。注文情報は、1注文の内容を示しており、当該注文により顧客から発送要求された複数の商品情報を含む。
図5においては、一例として、商品情報M1、M2を含む注文情報O1を示している。
【0029】
各商品情報は、例えば商品のID、物流倉庫10における保管位置情報を含むとよい。保管位置情報は、少なくとも、当該商品が収容される収容棚Sが配置される保管エリア、当該商品が収容される収容棚Sのピッキング順位に関する情報を含むとよい。保管位置情報は、さらに商品が収容される収容棚Sの位置座標等、商品の保管位置に関するより詳細な情報を含んでもよい。
【0030】
[作業バッチ]
図6は、作業バッチ生成装置により生成される作業バッチの一例を模式的に示す図である。作業バッチB1,B2,B3,…には、その作業バッチに割り当てられた商品情報が、商品をピッキングすべき順序で記述されている。例えば、
図6に示す作業バッチB1が割り当てられる作業者は、最初に商品情報M12に係る商品をピッキングし、次に商品情報M14に係る商品をピッキングする。作業バッチB1が割り当てられる作業者には、作業バッチB1に示されるピッキング作業が全て完了した後、別の作業バッチが割り当てられるとよい。各作業バッチB1,B2,B3,…に含まれる商品情報の数は所定数以下に制限されてよい。
【0031】
作業バッチを作業者に電子データ形式で配布する場合、作業バッチ生成装置100は、作業バッチB1,B2,B3,…のデータを、通信インタフェース104を介して各作業者が所持している電子端末に送信する。また、紙媒体で作業バッチを配布する場合には、作業バッチ生成装置100はプリンタ107により作業バッチB1,B2,B3,…を印刷する。
【0032】
[作業バッチの生成処理]
図7~
図13を参照して、作業バッチ生成装置100による作業バッチの生成処理について説明する。
【0033】
図7は、作業バッチ生成装置における作業バッチ生成処理の一例を示すフロー図である。
図7に示す処理は、ストレージ103に格納されたプログラムをプロセッサ101が実行することにより、実現されるものである。
【0034】
図7に示すように、作業バッチ生成装置100は、まずストレージ103に蓄積されている注文情報群を読み出して取得する(S1)。例えば、n個の注文情報(注文情報O1,O2,…On)がストレージ103に蓄積されるたびに、注文情報群の読み出しを行うとよい。次に、S1で取得された注文情報群に基づいて初期親リスト群を生成する(S2)。なお、初期親リストとは、後述のエリア別リストの生成及び注文情報の交換を行う前、すなわち最適化処理が行われる前の親リストである。
【0035】
次に、初期親リスト群に基づいてエリア別リストを生成する(S3)。次に、第1の局所探索を用いて初期作業バッチ群を生成する(S4)。さらに、第2の局所探索を行うことにより(S5)、作業バッチ群の最適化を行う。その後、作業バッチ生成装置100はプリンタ107又は通信インタフェース104により作業バッチB1,B2,B3,…を出力する(S6)。出力された複数の作業バッチは、複数の作業者それぞれに割り当てられる。
【0036】
図8は、
図7のS2における初期親リスト群の生成処理の一例を示すフロー図である。
図9は、初期親リスト群の生成処理の一例を模式的に示す図である。
【0037】
初期親リスト群の生成処理においては、まず、各注文情報に含まれる商品情報のピッキング順位に基づいて、取得部21により取得された注文情報群を並び替える(S21)。ピッキング順位は、
図2に示した数字に対応するものである。ピッキング順位は、各保管エリアのそれぞれにおけるピッキングの優先度を示すものであるが、S21においては商品情報に紐づけられる保管エリアに関する情報は考慮しない。すなわち、保管エリアに関わらず、ピッキングの優先度に基づいて複数の注文情報を並び替える。
【0038】
具体的には、まず、取得された各注文情報に含まれる商品情報のうちピッキング順位が最上位の商品情報を、各注文情報における代表商品情報として選択する。そして、代表商品情報のピッキング順位が高いものから順に、注文情報を並べる。
図9においては、注文情報O1の代表商品情報のピッキング順位が「9」であり、注文情報O2の代表商品情報のピッキング順位が「5」であり、注文情報O3の代表商品情報のピッキング順位が「2」である例を示している。そのため、
図9の例においては、注文情報O3、注文情報O2、…注文情報O1…の順に並び替えが行われている。
【0039】
次に、並び替えられた注文情報を初期親リストPL1,PL2,PL3…のいずれかに割り当てる(S22)。初期親リストの数及び初期親リストに割り当て可能な注文情報の最大数は、物流倉庫10で作業する作業者の人数に応じて予め設定されているとよい。
【0040】
図9においては、ピッキング順位が高い代表商品情報を含む注文情報O3、O2を親リストPL1に割り当て、ピッキング順位が低い代表商品情報を含む注文情報O1を親リストPL2に割り当てる例を示している。
【0041】
なお、
図8を参照して説明した初期親リストの生成処理は一例であり、これに限られない。例えば、所定数の注文情報がランダムに割り当てられることにより、初期親リストが生成されてもよい。
【0042】
図10は、
図7のS3におけるエリア別リストの生成処理の一例を模式的に示す図である。エリア別リストとは、親リストに含まれる複数の商品情報を、その商品情報に関連付けられる保管エリア毎に結合して構成されるリストである。エリア別リストは、現在の親リストに基づいて一意に決まるものである。
【0043】
図10においては、初期親リストPL1において、初期親リストPL1に含まれる注文情報O3、O2等に含まれる複数の商品情報を、その複数の商品情報のそれぞれに関連付けられる保管エリア毎に結合してエリア別リストLA,LB…を生成する例を示している。なお、図示は省略するが、初期親リストPL2,PL3…においても同様に、エリア別リストが生成される。
【0044】
図10で示すエリア別リストが生成された後、各初期親リストPL1,PL2,PL3…のそれぞれにおいて、第1の局所探索を用いて初期作業バッチ群が生成される(
図7のS4)。この処理は、公知の局所探索のアルゴリズムの一つである焼きなまし法を用いたものであるとよい。第1の局所探索により、各初期親リストにおいて、エリア別リスト毎に、各保管エリアでピッキングを行う作業者の移動量の総和が出来る限り少なくなるように初期作業バッチが生成されるとよい。
【0045】
図11は、
図7のS5における第2の局所探索処理を示すフロー図である。この処理は、公知の局所探索のアルゴリズムの一つである焼きなまし法を用いたものである。この処理では、各親リストから交換候補の注文情報を選出する(S51)。そして、交換候補に関する全ての交換について、暫定エリア別リストを生成する(S52)。暫定エリア別リストは、交換後の各親リストにおいて、
図10で示した処理と同様の処理により生成されるとよい。さらに、交換候補に関する全ての交換について、第1の局所探索を用いて暫定作業バッチ群を生成する(S53)。この処理は、
図7のS4における処理と同様の処理であるとよい。
【0046】
さらに、交換候補に関する全ての交換について、物流倉庫10で作業する全作業者の移動量の総和Tの変化量を計算する(S54)。そして、総和Tの減少量が最大の交換を特定する(S55)。そして、特定された交換を行った場合の前後で総和Tが減少する場合(S56のYES)、当該交換を実行する(S57)。一方、特定された交換を行った場合の前後で総和Tが変化しない又は増加する場合であっても(S56のNO)、交換を確率的に実行する(S58)。
【0047】
その後、S51乃至S58の処理の反復回数が上限回数Nに達するまで(S59)、S51に戻って処理を繰り返す。S51乃至S58の処理の反復回数が上限回数N以上となった場合(S59のYES)、現在の親リスト群に基づいて作業バッチ群を生成する(S510)。なお、S58においては、現在までの反復回数が多ければ多いほど交換を実行する確率を低くしてもよい。
【0048】
図12は、
図11のS57における交換を実行する様子の一例を模式的に示す図である。
図12においては、親リストPL1に含まれる注文情報O2と、親リストPL2に含まれる注文情報O1とを交換する様子を示している。
【0049】
図13は、作業バッチを各作業者に割り当てる様子の一例を模式的に示す図である。
図13においては、親リストPL1に含まれるエリア別リストLAに基づいて生成される作業バッチB1、B2を、保管エリアAで作業する二人の作業者に割り当て、親リストPL2に含まれるエリア別リストLBに基づいて生成される作業バッチB3を保管エリアBで作業する一人の作業者に割り当てる様子を示している。
【0050】
以上説明した本実施形態においては、所定数の注文情報が蓄積される毎に複数の親リストを生成し、複数の親リスト毎に商品のピッキングを行うことにより、共通の注文情報に含まれる複数の商品情報に係る商品のピッキングを並行して行うことができる。そのため、共通の注文情報に含まれる複数の商品情報に係る商品のピッキングがされるタイミングの時差が少なくなり、ピッキング後に行われる仕分け作業や発送作業等が滞ることが抑制される。また、物流倉庫10を複数のエリアに区画し、各作業者が自己の担当するエリアのみでピッキングを行うことにより、各作業者の移動量(移動距離)を削減することができる。また、総和Tが減少するように各親リスト間で注文情報の交換処理を行うことにより、結果として各親リストに含まれるエリア別リストの数が少なくなる。そのため、各エリア別リストに含まれる商品情報の数を多くすることができ、1のコンテナボックス15に収容される商品数を十分に確保することができる。それにより、仕分けエリア12に搬送されるコンテナボックスの数が少なくなり、仕分けエリア12における仕分け作業量を少なくすることができる。
【0051】
[付記]
本発明の範囲は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能であり、そのような変形も本発明の範囲に含まれる。例えば、作業バッチ生成装置100、作業バッチ生成方法、及びプログラムは、下記のような構成も可能である。
【0052】
(1)
物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成装置であって、
前記複数の注文情報を取得する取得手段と、
前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成するリスト生成手段と、
前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算するエリア別移動量計算手段と、
前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する親リスト別移動量計算手段と、
前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う交換手段と、
前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成手段と、
を含む作業バッチ生成装置。
(2)
前記リスト生成手段は、前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報のうち共通の前記保管エリアに関連付けられる商品情報を結合することによりエリア別リストを生成する、
(1)に記載の作業バッチ生成装置。
(3)
前記作業バッチ生成手段は、前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれにおいて生成される前記エリア別リストに基づいて、前記1以上の作業者の数と同数の前記作業バッチを生成する、
(2)に記載の作業バッチ生成装置。
(4)
前記リスト生成手段は、前記交換手段により交換する前記注文情報を特定する際に、前記交換後の前記複数の親リストにおける前記エリア別リストをそれぞれ暫定的に生成し、
前記交換手段は、暫定的に生成された前記エリア別リストに基づいて、前記親リスト別移動量の総和が減少する前記複数の親リスト間での前記注文情報の交換を特定する、
(2)又は(3)に記載の作業バッチ生成装置。
(5)
前記複数の商品情報はそれぞれ、当該商品情報に関連付けられる前記保管エリアにおけるピッキング順位に関する情報を含み、
前記リスト生成手段は、前記ピッキング順位に基づいて、前記複数の注文情報を前記複数の親リストのいずれかに割り当てる、
(1)~(4)のいずれかに記載の作業バッチ生成装置。
(6)
物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチを生成する作業バッチ生成方法であって、
前記複数の注文情報を取得する手順と、
前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成する手順と、
前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算する手順と、
前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する手順と、
前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う手順と、
前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する手順と、
を含む作業バッチ生成方法。
(7)
物流倉庫に設けられる複数の保管エリアのいずれかに関連付けられる複数の商品情報をそれぞれ含む複数の注文情報がそれぞれ割り当てられる複数の親リスト毎に注文に係る商品をピッキングする際に、前記保管エリア毎に作業をする1以上の作業者が使用する複数の作業バッチの生成をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記複数の注文情報を取得する手順、
前記複数の注文情報のうち1以上の注文情報をそれぞれ割り当てることにより、複数の前記商品情報のそれぞれに関連付けられる前記複数の親リストを生成する手順、
前記親リストに関連付けられている前記複数の商品情報に関する商品を前記保管エリア毎にピッキングする際の前記1以上の作業者の移動量の総和であるエリア別移動量をそれぞれ計算する手順、
前記複数の親リストのそれぞれにおいて、前記エリア別移動量の総和である親リスト別移動量を計算する手順、
前記親リスト別移動量の総和を減少させるように前記複数の親リスト間で前記注文情報の交換を行う手順、
前記交換後の前記複数の親リストのそれぞれに基づいて、前記複数の作業バッチを生成する手順、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0053】
10 物流倉庫、11 コンベア、12 仕分けエリア、15 コンテナボックス、21 取得部、22 リスト生成部、23 エリア別移動量計算部、24 親リスト別移動量計算部、25 総移動量計算部、26 交換部、27 作業バッチ生成部、100 作業バッチ生成装置、101 プロセッサ、102 メモリ、103 ストレージ、104 通信インタフェース、105 入力部、106 ディスプレイ、107 プリンタ。