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  • 特許-半透膜支持体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】半透膜支持体
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/10 20060101AFI20240402BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B01D69/10
B01D71/26
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022091355
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2021072981の分割
【原出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2022107809
(43)【公開日】2022-07-22
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2017058938
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017068286
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017253974
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018001565
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018010982
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 圭介
(72)【発明者】
【氏名】志水 祐介
(72)【発明者】
【氏名】落合 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】増田 敬生
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-183879(JP,A)
【文献】特開2012-106177(JP,A)
【文献】特開2012-250223(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049231(WO,A1)
【文献】特開2017-170293(JP,A)
【文献】特開2015-043295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
D01F8/00-18
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜を設けて用いられる半透膜支持体において、該半透膜支持体が、バインダー繊維として機能する、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維からなる湿式不織布であり、
該芯鞘型複合繊維の繊維長が1~12mmであり、
該芯鞘型複合繊維として、平均繊維径9μm超11μm以下の芯鞘型複合繊維A、平均繊維径が11μm超15μm以下の芯鞘型複合繊維B及び平均繊維径15μm超20μm以下の芯鞘型複合繊維Cの群から選択される2種以上の繊維を含有し、
芯鞘型複合繊維Aを必須成分として含有し、
芯鞘型複合繊維Aと芯鞘型複合繊維Bからなる半透膜支持体における含有比率(A/B)が、質量基準で50/5090/10未満であるか
芯鞘型複合繊維Aと芯鞘型複合繊維Cからなる半透膜支持体における含有比率(A/C)が、質量基準で50/50超70/30未満であることを特徴とする半透膜支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透膜支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜の分離機能層としては、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂等の多孔質性樹脂で構成されている。しかし、これら多孔質性樹脂単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布などの繊維基材からなる半透膜支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態である「濾過膜」が使用されている。半透膜支持体において、半透膜が設けられる面を「塗布面」と称し、半透膜が設けられない面を「非塗布面」と称する。
【0003】
半透膜支持体に半透膜が設けられた形態である「濾過膜」は、上述したポリスルホン系樹脂等の合成樹脂を有機溶媒に溶解して、半透膜溶液を調製した後、この半透膜溶液を半透膜支持体上に塗布する方法が広く用いられている。また、濾過膜はモジュール化されて使用される。シート状の濾過膜における代表的なモジュールは、スパイラル型モジュールと平膜型モジュールである。管状の濾過膜における代表的なモジュールは、管型/チューブラー型モジュールである(非特許文献1参照)。スパイラル型モジュールは、原水供給側流路材と濾過膜と処理水透過側流路材とを一緒に巻き上げた構造を有している(特許文献1参照)。また、平膜型モジュールでは、ポリプロピレンやアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等の樹脂からなるフレーム材に、濾過膜を接着・固定して用いられる。フレーム材への接着・固定には加熱融着処理、超音波融着処理等が行われるのが一般的である。
【0004】
半透膜支持体としては、一般に、パルプ繊維を抄紙して得られる紙、ポリエステル繊維から形成した不織布が用いられる。しかし、濾過膜は様々な条件下で用いられ、原水がアルカリ性液の場合や濾過膜を繰り返し洗浄した場合やアルカリ性液で逆洗浄した場合、上記のパルプ繊維、ポリエステル繊維を使用した半透膜支持体はアルカリ性液によって劣化し易く、濾過膜の性能低下、破損、損傷等を起こすことがある(特許文献1~5参照)。
【0005】
耐アルカリ性を改良した半透膜支持体として、ポリオレフィン系繊維によって構成される半透膜支持体が開示されている。例えば、ポリプロピレン不織布からなる半透膜支持体(特許文献6参照)、ポリプロピレンを芯材とし、ポリエチレンを鞘材として複合したオレフィン繊維を熱処理することで製造された半透膜支持体(特許文献7及び11参照)が提案されている。また、ポリオレフィン系主体繊維及びポリオレフィン系バインダー繊維を含む半透膜支持体であり、ポリオレフィン系主体繊維がポリプロピレン繊維であり、ポリオレフィン系バインダー繊維がポリプロピレン系樹脂を芯材とし、ポリエチレン系樹脂を鞘材とする芯鞘型複合繊維である半透膜支持体(特許文献8参照)が提案されている。
【0006】
これらのオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体を使用した濾過膜においても、繰り返しの洗浄や逆洗浄を実施することによって、半透膜の性能が劣化していく場合があった。半透膜の性能が劣化していくことによって、洗浄回数が更に増加することや装置を停止させてメンテナンスをすることが必要になり、時間が多く取られることによって、運転効率の低下が問題となる。
【0007】
また、これらのオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体を使用した濾過膜を樹脂フレームに接着する際も、非塗布面と樹脂フレームが接着はするものの、接着性は十分ではなかった。また、半透膜を設ける工程において、裏抜けが発生する問題が生じる場合があった。さらに、ポリプロピレン繊維を含有している場合、半透膜支持体の表面上に毛羽が立ちやすく、半透膜溶液塗工時に、膜欠陥を生じ易いという問題が生じる場合があった。
【0008】
また、バインダー繊維としてエチレンビニルアルコール系繊維を用いた不織布からなる半透膜支持体(特許文献9参照)が提案されている。特許文献9の半透膜支持体は、地合、強度、耐アルカリ性に優れるが、耐熱性に劣るために、半透膜支持体に半透膜を設ける製造工程において皺やカールが発生するといった問題が生じている。
【0009】
ところで、特許文献8では、半透膜支持体の平滑度、通気度、引張強度、坪量を調整することで、塗布面と半透膜との接着性に優れた半透膜支持体が得られることが開示されている。また、半透膜と塗布面との接着性などを改良することを目的に、塗布面と非塗布面の平滑度の比を調整する方法も提案されている(特許文献10参照)。特許文献8及び10では、JIS P8119に準拠したベック平滑度を測定している。しかし、ベック平滑度は、ガラス製の標準面を半透膜支持体表面に所定の圧力で押し当て、その間を所定の圧力差で一定の空気量が抜けるのに要する時間を測定する方法であり、熱処理により軟化又は溶融を生じるオレフィン系繊維によって構成される半透膜支持体の接着性を評価するには、ベック平滑度だけでは、十分では無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特公平04-21526公報
【文献】特許第3153487号公報
【文献】特開2002-95937号公報
【文献】特開2010-194478号公報
【文献】特開2012-101213号公報
【文献】特開昭56-152705号公報
【文献】特開2001-17842号公報
【文献】特開2014-128769号公報
【文献】特開2012-250223号公報
【文献】国際公開第2011/049231号パンフレット
【文献】特開2012-106177号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】下水道膜処理技術会議編、「下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン」、第2版、[online]、平成23年3月、[平成28年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.mlit.go.jp/common/000146906.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、ポリオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体において、半透膜成分が浸透しやすいが、裏抜けしにくく、半透膜支持体と半透膜との接着性に優れ、非塗布面と樹脂フレームとの接着性にも優れた半透膜支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記<8>に記載のとおりである
【0014】
<8>
半透膜を設けて用いられる半透膜支持体において、該半透膜支持体が、バインダー繊維として機能する、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維からなる湿式不織布であり、
該芯鞘型複合繊維の繊維長が1~12mmであり、
該芯鞘型複合繊維として、平均繊維径9μm超11μm以下の芯鞘型複合繊維A、平均繊維径が11μm超15μm以下の芯鞘型複合繊維B及び平均繊維径15μm超20μm以下の芯鞘型複合繊維Cの群から選択される2種以上の繊維を含有し、
芯鞘型複合繊維Aを必須成分として含有し、
芯鞘型複合繊維Aと芯鞘型複合繊維Bからなる半透膜支持体における含有比率(A/B)が、質量基準で50/5090/10未満であるか
芯鞘型複合繊維Aと芯鞘型複合繊維Cからなる半透膜支持体における含有比率(A/C)が、質量基準で50/50超70/30未満であることを特徴とする半透膜支持体。
【発明の効果】
【0015】
発明によれば、ポリオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体において、半透膜成分が浸透しやすいが、裏抜けしにくく、半透膜支持体と半透膜との接着性に優れ、非塗布面と樹脂フレームとの接着性にも優れた半透膜支持体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明において、熱圧加工装置で使用されるロールの組合せ及び配置並びにシートの通紙状態を表した概略図である。
図2】本発明において、熱圧加工装置で使用されるロールの組合せ及び配置並びにシートの他の通紙状態を表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、「ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維」を「PP/PE芯鞘繊維」と略記する場合がある。
【0018】
本発明に使用されるPP/PE芯鞘繊維は、溶融紡糸機を用い、芯鞘型複合紡糸用口金を用いて溶融紡糸される。紡糸温度は、鞘成分であるポリエチレンが変質しない温度で実施され、紡糸温度200℃以上300℃以下で重合体を押し出し、所定の繊度の紡糸フィラメントを作製する。紡糸フィラメントには、必要に応じて延伸処理を実施する。延伸処理は、鞘成分であるポリエチレンが融着しない温度で実施され、例えば、延伸温度50℃以上100℃以下の範囲で、延伸倍率2倍以上で処理すると、繊維強度が向上して好ましい。得られたフィラメントには、必要に応じて繊維処理剤を付与し、親水性や分散性を制御した後、所定の長さに切断して、不織布製造用の芯鞘型複合繊維として使用される。
【0019】
PP/PE芯鞘繊維を構成する芯成分はポリプロピレンであるが、繊維物性を調整するため、必要に応じてポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、芯成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加する場合の添加量は、好ましくは樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲である。
【0020】
次に、PP/PE芯鞘繊維を構成する鞘成分はポリエチレンであるが、例えば、HDPE、LDPE、LLDPE等のポリエチレンが挙げられる。繊維物性を調節するため、必要に応じてポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、鞘成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加する場合の添加量は、好ましくは樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲である。
【0021】
本発明において、PP/PE芯鞘繊維は、バインダー繊維として機能する。バインダー繊維は、乾燥工程又は熱圧工程での熱により軟化・溶融することによって、接着性を発現し、繊維間の接着に関与し、半透膜支持体の機械的強度を向上させる。PP/PE芯鞘繊維は皮膜を形成しにくいので、半透膜支持体の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。
【0022】
本発明において、ポリオレフィン系繊維とは、1つ以上の二重結合を分子内に有し、炭素と水素を構成元素とする一種類以上の単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸して繊維化したものであり、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)やエチレン-ビニルアルコール共重合体繊維等のように、炭素と水素以外の構成元素を含有する単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸した繊維は含まない。前記PP/PE芯鞘繊維と併用して使用することのできるポリオレフィン系繊維としては、例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の単一成分からなる繊維、2種類以上の異なるポリオレフィンの混合物からなる混合ポリオレフィン系繊維、2種類以上の異なるオレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィン系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等の樹脂を適宜組み合わせた、芯鞘型、サイドバイサイド型、偏芯型あるいは分割性複合繊維等が挙げられる。
【0023】
本発明における繊維の平均繊維径は、湿式不織布断面をマイクロスコープにて観察し、無作為に選んだ50本以上の繊維の断面積を求め、その繊維断面を同じ面積の円形とした場合の当該円の繊維直径の値である。
【0024】
本発明<8>の半透膜支持体は、バインダー繊維として機能する、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維からなる湿式不織布であり、該芯鞘型複合繊維の繊維長が1~12mmであり、該芯鞘型複合繊維として、平均繊維径9μm超11μm以下の芯鞘型複合繊維A(PP/PE芯鞘繊維A)、平均繊維径が11μm超15μm以下の芯鞘型複合繊維B(PP/PE芯鞘繊維B)及び平均繊維径15μm超20μm以下の芯鞘型複合繊維C(PP/PE芯鞘繊維C)の群から選択される種以上の繊維を含有し、PP/PE芯鞘繊維A及びPP/PE芯鞘繊維Bの少なくともいずれか一方の繊維を必須成分として含有することを特徴とする。
【0025】
具体的には、本発明<8>の半透膜支持体は下記6種類のうち、3)~6)の4種類である。
1)PP/PE芯鞘繊維Aのみを含有する半透膜支持体。
2)PP/PE芯鞘繊維Bのみを含有する半透膜支持体。
3)PP/PE芯鞘繊維AとBを含有する半透膜支持体。
4)PP/PE芯鞘繊維A、B及びCを含有する半透膜支持体。
5)PP/PE芯鞘繊維AとCを含有する半透膜支持体。
6)PP/PE芯鞘繊維BとCを含有する半透膜支持体。
【0026】
本発明<8>によれば、半透膜の滲み込みと接着性が良好で、フレーム材との接着性が良好な半透膜成分が浸透しやすい半透膜支持体を得ることができる。
【0027】
本発明<8>において、平均繊維径9μm超11μm以下のPP/PE芯鞘繊維Aの平均繊維径は、9.5μm超10.5μm未満がより好ましい。平均繊維径が9μm以下である場合には、短繊維での製造が困難であるため、入手しづらいといった問題がある。また、半透膜と半透膜支持体との接着性が低下する問題、シートの厚さが出にくく、通水性が上がりにくいと言った問題が発生する。
【0028】
本発明<8>において、平均繊維径11μm超15μm以下のPP/PE芯鞘繊維Bの平均繊維径は、13.0μm超14.5μm以下がより好ましい。平均繊維径が15μm超である場合には、繊維が太いため、通気度が下がり、半透膜成分が裏抜けし易いといった問題が起こりうる。
【0029】
平均繊維径15μm超20μm以下のPP/PE芯鞘繊維Cを用いる場合、半透膜支持体の強度を高め易くなるが、平均繊維径20μmを超えると、通気度の低下や、半透膜成分の裏抜けが大きくなり、調整が難しくなる。
【0030】
上記3)の半透膜支持体では、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維Bの含有比率(A/B)が、質量基準で50/50~90/10であり、60/40~80/20であることがより好ましい。該含有比率が好ましい範囲内である場合、通水性が高く、皮膜化しにくく、半透膜成分が浸透しやすいという効果が得られやすくなる。
【0031】
上記5)の半透膜支持体では、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維Cの含有比率(A/C)が、質量基準で40/60~80/20であり、50/50~70/30であることがより好ましく、60/40であることが更に好ましい。該含有比率が好ましい範囲内である場合、通水性が高く、皮膜化しにくく、半透膜成分が浸透しやすいという効果が得られやすくなる。
【0032】
上記6)の半透膜支持体では、PP/PE芯鞘繊維BとPP/PE芯鞘繊維Cの含有比率(B/C)が、質量基準で70/30~90/10であり、80/20~90/10であることがより好ましい。該含有比率が好ましい範囲内である場合、通水性が高く、皮膜化しにくく、半透膜成分が浸透しやすいという効果が得られやすくなる。
【0033】
上記4)の半透膜支持体では、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維BとPP/PE芯鞘繊維Cの含有比率(A/B/C)が、質量基準で40/30/30~80/10/10であり、60/20/20~80/10/10であることがより好ましい。該含有比率が好ましい範囲内である場合、通水性が高く、皮膜化しにくく、半透膜成分が浸透しやすいという効果が得られやすくなる。
【0034】
本発明<8>において、繊維の繊維長は、1mm~12mmであり、より好ましくは3~10mmであり、さらに好ましくは4~6mmである。主体繊維の断面形状は円形が好ましいが、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、表面平滑性のために、繊維分散性等の他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
【0035】
本発明の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維を含有する不織布である。不織布原布(シート)は、湿式抄造法という、公知の方法によって製造することができる。
【0036】
例えば、カード法、クロスレイヤー法は、繊維長の長い繊維を用いることができるが、均一な原反化が困難で、地合が悪く、透過光で観測すると、斑点模様が見られる。このため、半透膜の裏抜けを防ぐような空隙径を得るには、高目付にしなければならないという問題がある。一方、湿式抄造法は、生産速度が上記方法に比べて速く、同一装置で繊維径の異なる繊維や複数の種類の繊維を任意の割合で混合できる利点がある。即ち、繊維の形態もステープル状、パルプ状等と選択の幅は広く、使用可能な繊維径も、極細繊維から太い繊維まで使用可能で、他の方法に比べ、極めて良好な地合の原布が得られる方法である。さらに、分割型複合繊維を用いた場合、該繊維を分割するに当たり、パルパーや高速ミキサーやビーター等の離解機での離解工程、及び分散工程で分割型複合繊維をほぼ完全に分割させることができる。このようなことから、極めて応用範囲が広い原布形成法である。そこで、本発明の半透膜支持体に用いる不織布原布の製造方法としては、湿式抄造法が最適である。
【0037】
湿式抄造法では、まず、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.01~0.50質量%に調成されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0038】
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が単独で設置されている抄紙機、同種又は異種の2種以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。本発明の半透膜支持体が多層不織布である場合、その製造方法としては、各抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する「抄き合わせ法」や、先に形成した一層上に繊維を分散したスラリーを流延して、他の層を形成して積層していく「流延法」等が挙げられる。流延法において、先に形成した一層は湿紙状態であっても良いし、乾燥状態であっても良い。また、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて、多層不織布とすることもできる。
【0039】
抄紙網で製造された湿紙を、ドライヤーで乾燥する乾燥工程を経て、シート(不織布原布)を得る。湿式抄造法の乾燥工程において、バインダー繊維の熱融着によるバインダー接着法により不織布が形成される。乾燥工程におけるドライヤーの加熱乾燥方式としては、ヤンキードライヤーに代表される熱板圧着方式、バンド式スルードライヤー、エアスルードライヤーに代表される熱風通気方式等が挙げられるが、本発明においては熱板圧着方式による加熱乾燥がより好ましい。熱板圧着方式では、PP/PE芯鞘繊維の熱融着効率が高く、地合の均一性が高く、強度が向上した不織布を得ることができる。
【0040】
ヤンキードライヤー等の熱ロールに繊維ウェブを接着させて乾燥を行う場合、本発明<8>においては、半透膜支持体の塗布面を熱ロールと接触させることが、半透膜の平滑性向上、非塗布面のフレーム材との接着性向上の点で好ましい。熱ロールの表面温度は90~160℃が好ましく、100~150℃がより好ましく、110~140℃が更に好ましい。圧力は、好ましくは20~200kN/m、より好ましくは30~150kN/m、特に好ましくは50~125kN/mである。
【0041】
本発明の半透膜支持体において、不織布原布製造後、熱ロールによる熱圧工程を経ることがさらに好ましい。熱圧工程では、熱圧加工装置(カレンダー装置)のロール間をニップしながら、湿式抄造法で製造されたシートを通過させて熱圧加工を行う。ロールの組み合わせとしては、2本の金属ロール、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとコットンロール等が挙げられる。2本のロールのうち、一方又は両方を加熱して熱ロールとする。一般的には、金属ロールが加熱される。そして、熱ロールの表面温度、ロール間のニップ圧力、加工速度を制御することによって、所望の半透膜支持体を得る。
【0042】
本発明<8>において、熱ロールの表面温度は、好ましくは40~170℃であり、より好ましくは70~160℃、特に好ましくは100~150℃である。ロールのニップ圧力は好ましくは25~200kN/m、より好ましくは50~150kN/m、特に好ましくは75~125kN/mである。加工速度は、好ましくは4~100m/minであり、より好ましくは10~80m/min、特に好ましくは15~70m/minである。熱ロールによる熱圧加工は2回以上行うことも可能であり、その場合、直列に配置された2組以上の上記のロール組み合わせを使用しても良いし、1組のロールの組み合わせを用いて2回加工しても良い。必要に応じて、シートの表裏を逆にしても良い。
【0043】
半透膜支持体の坪量は特に限定しないが、20~150g/mが好ましく、より好ましくは30~110g/m、特に好ましくは40~80g/mである。20g/m未満の場合は、十分な引張強度が得られない場合がある。また、半透膜溶液が裏抜けしてしまい、半透膜の接着性が弱くなる場合がある。また、150g/mを超えた場合、通液抵抗が高くなる場合や厚みが増してユニットやモジュール内に規定量の濾過膜を収納できない場合がある。また、製造工程で乾燥負荷が大きくなり、製造安定性が低下し易くなる。
【0044】
本発明の半透膜支持体は、2枚以上の不織布を該熱加工処理と同様の方法を用いて張り合わせてなる多層不織布であっても良い。各不織布の坪量は同一であっても良いし、異なっていても良い。この場合、製造工程での乾燥負荷を抑えつつ、150~300g/mの半透膜支持体を得ることができる。300g/mを超えた場合、張り合わせる工程での負荷が大きくなり、製造安定性が低下し易くなる。
【0045】
また、半透膜支持体の密度は0.25~0.90g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.30~0.80g/cm、特に好ましくは0.35~0.75g/cmである。半透膜支持体の密度が0.25g/cm未満の場合は、厚みが厚くなるため、ユニットに組み込める濾過膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方0.90g/cmを超える場合は、通液性が低くなることがあり、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
【0046】
半透膜支持体の厚みは50~300μmであることが好ましく、70~250μmであることがより好ましく、90~200μmであることがさらに好ましい。半透膜支持体の厚みが300μmを超えると、ユニットに組み込める濾過膜の面積が小さくなってしまい、結果として半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方、50μm未満の場合、十分な引張強度が得られない場合や通液性が低くなって、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
【実施例
【0047】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが本発明は実施例に限定されるものではない。以下、特に断りのない限り、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。なお、本発明<8>に関する下記実施例8-10~8-17、8-19~8-22は参考例である。
【0048】
本発明<8>
参考例8-1
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.2μm、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。PP/PE芯鞘繊維のPPの融点は165℃であり、ポリエチレンの融点は135℃であった。傾斜ワイヤー抄紙機と円網抄紙機とのコンビネーションマシンを用いて、乾燥質量で合計60g/mの抄き合わせ湿紙を形成した後、表面温度133℃のヤンキードライヤーに接触するように熱圧乾燥し、シートを得た。得られたシートを金属ロール(加熱)と樹脂ロール(非加熱)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、金属ロール温度100℃、圧力100kN/m、加工速度40m/minの条件で、塗布面が金属ロールに接触するように熱圧加工し、半透膜支持体を得た。
【0049】
参考例8-2
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.5μm、繊維長5mm)100質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0050】
参考例8-3
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径12.1μm、繊維長5mm)100質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0051】
参考例8-4
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)100質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0052】
実施例8-5
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0053】
実施例8-6
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.5μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径14.1μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0054】
実施例8-7
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.2μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径12.0μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0055】
実施例8-8
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.5μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径14.8μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0056】
実施例8-9
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.5μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径12.1μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0057】
実施例8-10
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)90質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)10質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0058】
実施例8-11
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)50質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)50質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0059】
実施例8-12
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0060】
実施例8-13
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)90質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)10質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0061】
実施例8-14
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)40質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)60質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0062】
実施例8-15
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)50質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)50質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0063】
実施例8-16
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)80質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)20質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0064】
実施例8-17
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0065】
実施例8-18
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)60質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)40質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0066】
実施例8-19
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.5μm、繊維長5mm)60質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)20質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)20質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0067】
実施例8-20
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.5μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)20質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)10質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0068】
実施例8-21
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.5μm、繊維長5mm)80質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)10質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)10質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0069】
実施例8-22
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.5μm、繊維長5mm)40質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)30質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0070】
比較例8-1
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径8.3μm、繊維長5mm)50質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)20質量部、ポリプロピレン繊維(平均繊維径22.0μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0071】
比較例8-2
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径8.3μm、繊維長5mm)50質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)20質量部、ポリプロピレン繊維(平均繊維径22.0μm、繊維長10mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0072】
比較例8-3
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径8.3μm、繊維長5mm)70質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0073】
比較例8-4
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径8.3μm、繊維長5mm)70質量部、ポリプロピレン繊維(平均繊維径22.0μm、繊維長10mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0074】
比較例8-5
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)40質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)60質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0075】
比較例8-6
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)30質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)70質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0076】
比較例8-7
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径10.3μm、繊維長5mm)90質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)10質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0077】
比較例8-8
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)60質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)40質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0078】
比較例8-9
PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径9.5μm、繊維長5mm)30質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径13.9μm、繊維長5mm)40質量部、PP/PE芯鞘繊維(平均繊維径16.1μm、繊維長5mm)30質量部に配合を変更した以外は、参考例8-1と同様の方法で、半透膜支持体を得た。
【0079】
参考例、実施例及び比較例で得られた半透膜支持体について、下記測定及び評価を行い、結果を表に示した。
【0080】
測定8-1(平均繊維径)
不織布を構成する各繊維の平均繊維径は、マイクロスコープによって、繊維の断面を観察し、無作為に選んだ50本以上の繊維断面の面積を画像解析ソフトによって算出し、繊維直径に換算して、測定データとした。
【0081】
測定8-2(厚さ)
JIS P8118に準じ、厚さを測定した。
【0082】
評価8-1(半透膜滲み込み)
一定のクリアランスを有するコンマコーターを用いて、半透膜支持体の塗布面にポリスルホン樹脂(SOLVAY社製、商品名:ユーデル Udel(登録商標)P-3500 LCD MB3、分子量78000~84000g/mol)のDMF溶液(濃度22%)を塗布し、水洗、乾燥を行い、半透膜支持体の表面にポリスルホン膜(半透膜)を形成させて濾過膜を作製し、濾過膜の断面SEM写真を撮影して、ポリスルホン樹脂の半透膜支持体への滲み込み度合いを評価した。
【0083】
◎:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の中心付近までしか滲み込んでいない。非常に良好なレベル。
○:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の非塗布面に滲み出ていない。良好なレベル。
△:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の非塗布面に一部滲み出ている。実用上、使用可能レベル。
×:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の非塗布面に滲み出ている。実用上、使用不可レベル。
【0084】
評価8-2(半透膜接着性)
評価8-1で作製した濾過膜における半透膜支持体と半透膜との接着性を評価した。濾過膜作製から1日後に、半透膜と半透膜支持体とを、その界面で剥がれるように、ゆっくりと引き剥がし、剥離するときの抵抗度合いで「半透膜接着性」を判断した。
【0085】
◎:半透膜と半透膜支持体の接着性が非常に高く、剥離できない。非常に良好なレベル。
○:部分的に剥離しやすい所が存在する。良好なレベル。
△:半透膜と半透膜支持体とが接着はしているが、全体的に剥離しやすい。実用上下限レベル。
×:半透膜塗布後の水洗又は乾燥工程で剥離が発生する。使用不可レベル。
【0086】
評価8-3(フレーム材接着性)
評価8-1で得られた濾過膜をABS樹脂からなるフレーム材に、非塗布面がフレーム材に接するように載せ、200℃に加熱したヒートシーラーを半透膜側から3秒間当てて、加熱接着した。加熱接着から1日後に、濾過膜とフレーム材とを、その界面で剥がれるように、ゆっくりと引き剥がし、剥離するときの抵抗度合いで「フレーム材接着性」判断した。
【0087】
◎:半透膜支持体とフレーム材との接着性が非常に高く、剥離できない。非常に良好なレベル。
○:部分的に剥離しやすい所が存在する。良好なレベル。
△:半透膜支持体とフレーム材とは接着はしているが、全体的に剥離しやすい。あるいは、半透膜支持体とフレーム材との接着は問題ないが、半透膜のひび割れ、半透膜の半透膜支持体からの脱落が認められる。実用上下限レベル。
×:簡単に剥離する。又は、濾過膜とフレーム材とが接着はするが、半透膜のひび割れ、半透膜の半透膜支持体からの脱落等があり、使用不可レベル。
【0088】
【表1】
【0089】
参考例8-1~参考例8-4及び実施例8-5~8-22の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維A、PP/PE芯鞘繊維B及びPP/PE芯鞘繊維Cの群から選択される種以上の繊維を含有し、PP/PE芯鞘繊維A及びPP/PE芯鞘繊維Bの少なくともいずれか一方の繊維を必須成分として含有する。PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維Bを含有する半透膜支持体における含有比率(A/B)は、質量基準で50/50~90/10であり、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維Cを含有する半透膜支持体における含有比率(A/C)は、質量基準で40/60~80/20であり、PP/PE芯鞘繊維BとPP/PE芯鞘繊維Cを含有する半透膜支持体における含有比率(B/C)は、質量基準で70/30~90/10であり、そしてPP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維BとPP/PE芯鞘繊維Cを含有する半透膜支持体における含有比率(A/B/C)は、質量基準で40/30/30~80/10/10である。
【0090】
比較例8-1の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維Aを含有せず、PP/PE芯鞘繊維Bと平均繊維径22.0μm、繊維長5mmのポリプロピレン繊維を含有する半透膜支持体である。比較例8-2の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維Aを含有せず、PP/PE芯鞘繊維Bと平均繊維径22.0μm、繊維長10mmのポリプロピレン繊維を含有する半透膜支持体である。
【0091】
参考例8-1~参考例8-4及び実施例8-5~8-22の半透膜支持体は、半透膜が半透膜支持体に滲み込んでいて、半透膜支持体と半透膜との接着性に優れていながらも、非塗布面にまで半透膜が滲み出ることが無く、裏抜けはし難かった。また、フレーム材との接着性にも優れていた。これに対し、比較例8-1及び8-2の半透膜支持体は、半透膜が非塗布面にまで滲み出て、裏抜けが発生しており、フレーム材との接着性も低かった。
【0092】
実施例8-5~8-11の半透膜支持体を比較すると、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維Bの含有比率(A/B)が60/40~80/20の範囲内である実施例8-5~8-9の半透膜支持体が、含有比率が範囲外である実施例8-10及び8-11の半透膜支持体と比較して、半透膜の滲み込み及び半透膜接着性がバランス良く、より優れていた。また、比較例8-5の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維Bの含有比率(A/B)が50/50~90/10の範囲外であるため、半透膜の滲み込みが悪かった。
【0093】
実施例8-14~8-18の半透膜支持体を比較すると、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維Cの含有比率(A/C)が60/40である実施例8-18の半透膜支持体が、実施例8-14~8-17の半透膜支持体と比較して、半透膜の滲み込み、半透膜接着性、フレーム材への接着性のバランスがより優れていた。また、含有比率(A/C)が50/50~70/30の範囲内である実施例8-15、8-17及び8-18の半透膜支持体が、含有比率が範囲外である実施例8-14及び8-16の半透膜支持体と比較して、半透膜の滲み込み、半透膜接着性、フレーム材への接着性のバランスがより優れていた。比較例8-6及び8-7の半透膜支持体は、含有比率(A/C)が、質量基準で40/60~80/20の範囲外であるため、半透膜の滲み込み、半透膜接着性、フレーム材への接着性のバランスが悪かった。
【0094】
実施例8-12及び8-13の半透膜支持体を比較すると、PP/PE芯鞘繊維BとPP/PE芯鞘繊維Cの含有比率(B/C)が80/20~90/10の範囲内である実施例8-13の半透膜支持体が、含有比率が範囲外である実施例8-12の半透膜支持体と比較して、半透膜接着性により優れていた。比較例8-8の半透膜支持体は、含有比率(B/C)が、質量基準で70/30~90/10の範囲外であるため、半透膜接着性及びフレーム材への接着性が悪かった。
【0095】
実施例8-19~8-22の半透膜支持体を比較すると、PP/PE芯鞘繊維AとPP/PE芯鞘繊維BとPP/PE芯鞘繊維Cの含有比率(A/B/C)が60/20/20~80/10/10の範囲内である実施例8-19~8-21の半透膜支持体が、含有比率が範囲外である実施例8-22の半透膜支持体と比較して、半透膜の滲み込み、半透膜接着性、フレーム材への接着性のバランスが優れていた。比較例8-9の半透膜支持体は、含有比率(A/B/C)が、質量基準で40/30/30~80/10/10の範囲外であるため、半透膜の滲み込み及びフレーム材への接着性が悪かった。
【0096】
実施例8-5と比較例8-3の半透膜支持体を比較すると、PP/PE芯鞘繊維Aよりも細い繊維径のPP/PE芯鞘繊維を含む比較例8-3の半透膜支持体は、半透膜との接着性が悪かった。また、PP/PE芯鞘繊維Aよりも細い繊維径のPP/PE芯鞘繊維と平均繊維径22.0μm、繊維長10mmのポリプロピレン繊維を含有する半透膜支持体を含む比較例8-4の半透膜支持体は、半透膜の滲み込み及びフレーム材への接着性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の半透膜支持体は海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造、膜分離活性汚泥処理等の分野で利用することができる。特に膜分離活性汚泥処理法で好ましく利用することができる。
図1
図2