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特許7464668ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法
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  • 特許-ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20240402BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B29B17/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022149648
(22)【出願日】2022-09-21
(65)【公開番号】P2023062671
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】110139088
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】莊 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】翁 梓桓
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-255810(JP,A)
【文献】特開平10-195233(JP,A)
【文献】特表2018-534184(JP,A)
【文献】特表平10-512909(JP,A)
【文献】米国特許第05241066(US,A)
【文献】米国特許第05898063(US,A)
【文献】米国特許第05889142(US,A)
【文献】米国特許第05849804(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
B29B 17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法であって、
ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布を提供する工程(a)と、
第1の液体材料及び第1の固体材料を得るために、前記廃棄布に第1段階の処理を実施する工程(b)と、
第2の液体材料及び第2の固体材料を得るために、前記第1の液体材料に第2段階の処理を実施する工程(c)と、
第3の液体材料及び第3の固体材料を少なくとも得るために、前記第1の固体材料に第3段階の処理を実施する工程(d)と、
第4の液体材料及び第4の固体材料を得るために、前記第3の液体材料に第4段階の処理を実施する工程(e)と、を含み、
前記第1段階の処理は、酸処理を含み、
前記第2段階の処理は希釈を含み、
前記第2の液体材料の酸濃度は、前記第1の液体材料の酸濃度よりも低く、
前記第3段階の処理は、酸処理を含み、
前記第4段階の処理は希釈を含み、
前記第4の液体材料の酸濃度は、前記第3の液体材料の酸濃度よりも低く、
前記第3の固体材料はリサイクルされたポリエステルを含むか、前記第2の固体材料はリサイクルされたナイロンを含むか、又は前記第4の固体材料はリサイクルされたナイロンを含む、ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項2】
前記第3の固体材料はリサイクルされたポリエステルを含み、前記第2の固体材料はリサイクルされたナイロンを含み、前記第4の固体材料はリサイクルされたナイロンを含む、請求項1に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項3】
前記第1段階の処理の前記酸処理、又は、前記第3段階の処理の前記酸処理は、直鎖脂肪酸の水溶液のみを使用して前記酸処理を実施することである、請求項1に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項4】
前記第1段階の処理の前記酸処理、及び、前記第3段階の処理の前記酸処理は、直鎖脂肪酸の水溶液のみを使用して前記酸処理を実施することである、請求項に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項5】
前記第1段階の処理の前記酸処理、又は、前記第3段階の処理の前記酸処理は、ギ酸又は酢酸を使用して前記酸処理を実施することを含む、請求項1に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項6】
前記第1段階の処理の前記酸処理、及び、前記第3段階の処理の前記酸処理は、ギ酸又は酢酸を使用して前記酸処理を実施することを含む、請求項に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項7】
前記工程(a)、前記工程(b)、前記工程(c)、前記工程(d)及び前記工程(e)を順番に実行する、請求項1に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項8】
前記第3段階の処理の前記酸処理の酸濃度は、前記第1段階の処理の前記酸処理の酸濃度よりも低く、前記第3段階の処理の前記酸処理の濃度は、前記第2の液体材料の前記酸濃度よりも高い、請求項1に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項9】
前記工程(a)、前記工程(b)及び前記工程(d)をN回実施し、Nは1以上であり、
前記工程(c)をM回実施し、MはN以下であり、かつ、
N回目の前記第3段階の処理の前記酸処理は、M回目の前記第2の液体材料を使用して前記酸処理を実施することを含む、請求項に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項10】
前記工程(a)、前記工程(b)、前記工程(d)及び前記工程(e)をN回実施し、Nは2以上であり、
N回目の前記第3段階の処理の前記酸処理は、P回目の前記第4の液体材料を使用して前記酸処理を実施することを含み、PはNよりも小さい、請求項に記載ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【請求項11】
前記第3段階の処理の前記酸処理で使用する酸性液体は、前記第2の液体材料と混合した混合液である、請求項に記載のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は廃棄布の処分方法に関し、より詳細には、ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維及びナイロン繊維は、市場及び我々の日常生活の中で一般的に見られる布である。例えば、ポリエステル繊維は、ナイロン繊維と交織することができ、それから、織物又は衣服産業における従来の手法を使用して、帽子、衣服、ズボン、スカート及び靴下などのあらゆる種類の布に加工することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このところの目覚ましい環境意識により、これらの交織物におけるポリエステル及び/又はナイロンのリサイクル及び/又はポリエステル廃棄物の処分の研究が進行中である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、以下の工程、すなわち、ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布を提供する工程(a)、第1の液体材料及び第1の固体材料を得るために、廃棄布に第1段階の処理を実施する工程(b)、第2の液体材料及び第2の固体材料を得るために、第1の液体材料に第2段階の処理を実施する工程(c)、第3の液体材料及び第3の固体材料を少なくとも得るために、第1の固体材料に第3段階の処理を実施する工程(d)、第4の液体材料及び第4の固体材料を得るために、第3の液体材料に第4段階の処理を実施する工程(e)を含むポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法を提供する。第1段階の処理は、酸処理を含む。第2の液体材料の酸濃度は、第1の液体材料の酸濃度よりも低い。第3段階の処理は、酸処理を含む。第4の液体材料の酸濃度は、第3の液体材料の酸濃度よりも低い。第3の固体材料はリサイクルされたポリエステルを含むか、第2の固体材料はリサイクルされたナイロンを含むか、又は第4の固体材料はリサイクルされたナイロンを含む。
【発明の効果】
【0005】
上記の説明に基づいて、本開示は、酸性液体の全体の使用量を低減する及び/又はポリエステル及び/又はナイロンのリサイクル量を増加させる、ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態による、ポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処分方法の部分的な図式的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、限定でなく説明のために特定の詳細を明らかにする例示的な実施形態は、本開示の様々な原理の十分な理解を提供するために記載される。ただし、当業者には、本開示から利益を得て、本発明が本明細書に開示された特定の詳細を逸脱する他の実施形態で実施され得ることが明らかであろう。さらに、既知の装置、方法及び材料については、本開示の様々な原理の説明を曖昧にしないために、その説明を省略する場合があり得る。
【0008】
範囲はここでは「約」特定の値から別の「約」特定の値までと表現され得、特定の値及び/又は別の特定の値までとして直接的にも表現され得る。範囲を表す場合、別の実施形態では、ある特定の値から及び/又は別の特定の値までを含む。同様に、ある値が先行詞「約」を用いて近似値として表される場合、その特定の値は、別の実施形態を形成することを理解されたい。さらにまた、各範囲の端点は、明らかに別の端点に関連するか、又は独立していることが理解されるであろう。
【0009】
本明細書において、非限定的な用語(可能である、あり得る、例えば、又は他の同様の用語など)は、必須ではない、又は任意の実装、包含、追加、若しくは存在である。
【0010】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、明確に定義されない限り、理想化された、又は過度に形式的な意味で解釈されるべきでないと理解されるであろう。
【0011】
[リサイクル可能物]
ポリエステル及びナイロンを含むリサイクル可能物が提供される。
【0012】
一実施形態において、リサイクル可能物の入手方法は、ナイロンを含む様々な種類のリサイクル可能物又は廃棄物を収集することと、前述のリサイクル可能物の種類、色、及び/又は使用目的に従って、対応する分類を実施することとを含む。前述のリサイクル可能物は、例えば衣類を含み得るが、本開示はそれに限定されない。一般的に、通常の衣類のラベルは、使用された繊維の組成を表示し得る。
【0013】
一実施形態において、ナイロンを含むリサイクル可能物は、以下の前処理(すなわち、後続の処理の前の処理であり、本質的にはまだリサイクル可能)、すなわち、リサイクル可能物上の物体(クリップ、ファスナー、装飾品、ラベル及び/又は明らかにナイロンを含まない他の物体)を除去することと、リサイクル可能物の予備洗浄(汚れの洗浄、不純物の除去など、ただし、本開示はそれに限定されない)を実施することと、リサイクル可能物の単一のサイズを縮小するために物理的方法(せん断、トリミング、切断又は細断であるが、本発明はそれに限定されない)を使用することと、及び/又は、リサイクル可能物を乾燥させることの一つにさらに供し得る。
【0014】
一実施形態において、リサイクル可能物の入手方法は、例えば、加工されたナイロン含有リサイクル可能物を直接購入することも含み得る。
【0015】
本明細書において、用語「ナイロン」には、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン510、ナイロン1,6などの一般にナイロンと呼ばれるポリマー、ポリアミド官能基を含み前述のポリマーと同様であるポリマー、上記材料のコポリマー、又は上記材料の交織物が含まれる。
【0016】
本明細書において、用語「ポリエステル」には、一般にポリエステル、特に芳香族ポリエステルと呼ばれるポリマーが含まれ、そして特に、精製されたテレフタル酸(PTA)及びエチレングリコール(EG)(すなわち、ポリエチレンテレフタレート(PET))に由来するポリエステルを指す。
【0017】
さらに、本明細書におけるポリエステルは、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又は上記の材料の組み合わせでもあり得る。一実施形態において、ポリエステルは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又はそれらの組み合わせである。さらに、コポリマーを使用することができ、これは、具体的には、2つ以上のジカルボン酸及び/又は2つ以上のジオール成分を使用することによって得られるコポリマーを指す。
【0018】
[第1段階の処理]
第1の液体材料及び第1の固体材料を得るために、前述のリサイクル可能物に第1段階の処理を実施する。
【0019】
ここで使用される用語「液体材料」は、材料が完全に液体でなければならないことに限定されないことに留意されたい。例えば、「液体材料」は、液体、及び、液体中又は液体上に浮遊する浮遊物質を含み得る。上記浮遊物質の粒径は1ミリメートル(mm)以下であり得るか、又は、ASTM E11-01規格により、上記の浮遊物質は、メッシュ数が18以上のふるいを通過し得る。別の例として、「液体材料」は、ポリマーコロイド又は他の同様のコロイドを含み得る。
【0020】
本明細書において、用語「固体材料」は、材料が完全に固体でなければならないということに限定されないことに留意されたい。例えば、「固体材料」は、固体、及び、毛細管現象によって固体に付着した、又は2つの固体の間にある液体を含み得る。「固体材料」は、ほとんど液体を含まない固体を得るために、適切な方法(加熱及び/又は真空乾燥など)によって乾燥され得る。「固形材料」の全重量に関して、乾燥後の固体の重量は約80%以上であり得、好ましくは約90%以上であり、より好ましくは約95%以上である。
【0021】
一実施形態において、第1段階の処理は、酸処理を含み得る。例えば、前述のリサイクル可能物は酸性液体中に浸漬されてもよく、それから、第1の液体材料及び第1の固体材料は、適切な方法(スクリーンを用いた濾過などであるが、本開示はそれに限定されない)によって相互に分離され得る。
【0022】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、リサイクル可能物を酸性液体中に浸漬することであり得る(これは、酸洗いと呼ばれる)。
【0023】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、リサイクル可能物を酸性液体中に浸漬して加熱(例えば、約50±5℃に加熱する)することであり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0024】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、リサイクル可能物を酸性液体中に浸漬し、撹拌及び/又は静置する(例えば、30分超撹拌する及び/又は静置する、又は、60分超撹拌及び/又は静置する)ことでもあり得るが、本開示はそれに限定されない。
【0025】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、有機酸の水溶液を使用して実施し得る。硝酸、塩酸又は硫酸を使用すると、酸処理タンク(酸洗いタンクなどであるが、本開示はそれに限定されない)又は他の考えられる金属工具(ステンレス鋼工具などであるが、本開示はそれに限定されない)が損傷され易くなる。硫酸は他の非ナイロン繊維(ポリエステル繊維など)を溶解して、液体材料と固体材料との間の分離性を低下させることがある。フッ化水素酸は、産業安全上の危険をより生じやすい。シュウ酸は水溶性が低いため(例えば、25℃で約14.3g/100ml)、ナイロンを溶解させるために室温で高濃度の水溶液を調製することは困難である。リン酸はナイロンに対する溶解度が低い。
【0026】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、脂肪酸の水溶液を使用して実施し得る。芳香族酸(安息香酸などであるが、本開示はそれに限定されない)は水溶性が低いため、ナイロンを溶解させるために室温で高濃度の水溶液を調製することは困難である。さらにまた、ナイロンと比較して、他の非ナイロン繊維(ポリエステル繊維、又は芳香族基を含む他のポリマーなど)は、脂肪酸によって溶解させるのがより難しい場合がある。
【0027】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、直鎖脂肪酸の水溶液を使用して実施し得る。炭素数が同じ脂肪酸と比較して、直鎖脂肪酸は、側鎖を有する脂肪酸よりも水溶性に優れる。
【0028】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、炭素数が3以下の直鎖脂肪酸の水溶液を使用して実施し得る。炭素数が3以下の直鎖脂肪酸は、水溶性により優れる。
【0029】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、ギ酸(すなわち、アリ、ミツバチなどのハチ目によって分泌され得るメタン酸)又は酢酸(すなわち、酢酸バクテリアによって生成され得るエタン酸)の水溶液を使用して実施し得る。ギ酸及び酢酸は、自然界に見られる生物酸であり、応用及び/又は処理(廃液処理などであるが、本開示はそれに限定されない)の点で、環境により優しい。
【0030】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、ギ酸の水溶液を使用することによって実施し得る。酢酸と比較して、ギ酸はナイロンをより容易に溶解する。
【0031】
一実施形態において、第1段階の処理の酸処理は、99重量%のギ酸水溶液を使用して実施し得る。
【0032】
一実施形態において、第1の固体材料は、他の非ナイロンポリマー(ポリエステルなど)を含み得る。ただし、本開示は、第1の固体材料が少量のナイロンを含むことをさらに除外しないことに留意されたい。
【0033】
一実施形態において、第1の液体材料は、酸性液体及びナイロン、又は酸性液体中に溶解したナイロン懸濁液を含み得る。
【0034】
一実施形態において、前述のリサイクル可能物中のナイロンの全量に関して、第1の液体材料中のナイロンの量は、約75重量%から90重量%であり、第1の固体材料中のナイロンの量は、それに対応して約25重量%から10重量%である。
【0035】
[第2段階の処理]
第2の液体材料及び第2の固体材料を得るために、前述の第1の液体材料に第2段階の処理を実施する。
【0036】
一実施形態において、第2段階の処理は希釈を含み得る。例えば、前述の第1段階の処理における酸処理で使用される溶媒は、第1の液体材料に添加してもよく、それから、第2の液体材料と第2の固体材料を、適切な方法(例えば、スクリーンを用いた濾過又は静置による分離であるが、本開示はそれに限定されない)によって相互に分離してもよい。
【0037】
一実施形態において、第2段階の処理の方法は、前述の溶媒を前述の第1の液体材料に添加した後に冷却すること(例えば、室温(約25℃)まで冷却すること、又は、室温よりも低く、凝固点よりも高くなるまで冷却すること)を含み得るが、本開示はそれに限定されない。
【0038】
一実施形態において、第2段階の処理の方法は、前述の溶媒を前述の第1の液体材料に添加した後に、溶媒を撹拌及び/又は静置すること(例えば、3分間撹拌し、30分以上静置すること、又は、5分間撹拌し、60分以上静置すること)を更に含み得るが、本開示はそれに限定されない。
【0039】
一実施形態において、第1段階の処理は、99重量%のギ酸水溶液を使用して、第1段階の処理の酸処理を実施することを含み得、第2段階の処理は、水を前述の第1の液体材料に添加して、溶液中のギ酸の濃度を約60重量%から70重量%に低減させることを含み得る。
【0040】
一実施形態において、第2の固体材料はナイロンを含み得る。
【0041】
一実施形態において、第2の液体材料は、酸性液体及びナイロン、又は酸性液体中に溶解したナイロン懸濁液を含み得る。第2の液体材料中の酸性物質の濃度は、第1の液体材料中の酸性物質の濃度よりも低い。
【0042】
[第3段階の処理]
第3の液体材料及び第3の固体材料を得るために、前述の第1の固体材料に第3段階の処理を実施する。
【0043】
一実施形態において、第3段階の処理は、酸処理を含み得る。一実施形態において、第3段階の処理の酸処理の方法は、第1段階の処理の酸処理の方法と同様であり得る。例えば、前述の第1の固体材料は、酸性液体中に浸漬されてもよく、それから、第3の液体材料及び第3の固体材料は、適切な方法(スクリーンを用いた濾過などであるが、本開示はそれに限定されない)によって相互に分離され得る。
【0044】
一実施形態において、第3段階の処理の酸処理は、第1の固体材料を酸性液体中に浸漬して加熱する(例えば、約70±5℃から100±5℃に加熱する)ことであり得るが、本開示はそれに限定されない。
【0045】
一実施形態において、第3段階の処理の酸処理は、第1の固体材料を酸性液体中に浸漬して攪拌及び/又は静置すること(例えば、30分超撹拌及び/又は静置すること、又は、60分超撹拌及び/又は静置すること)であり得るが、本開示はそれに限定されない。
【0046】
一実施形態において、第3段階の処理の酸処理で使用する溶質及び溶媒は、第1段階処理の酸処理で使用する溶質及び溶媒と同じ又は類似であり得る。
【0047】
一実施形態において、第3段階の処理における酸処理の酸濃度は、第1段階の処理における酸処理の酸濃度と異なり、第3段階の処理における酸処理の酸濃度は、第2の液体材料の酸濃度と異なる。
【0048】
一実施形態において、第3段階の処理における酸処理の酸濃度は、第1段階の処理における酸処理の酸濃度よりも低く、第3段階の処理における酸処理の酸濃度は、第2の液体材料の酸濃度よりも高い。
【0049】
一実施形態において、99重量%のギ酸水溶液は、最初に、濃度が約60から70重量%のリサイクルされたギ酸水溶液と混合してもよく、それから、上記混合溶液は、第3段階の処理の酸処理用の酸性液体として使用し得る。この方法により、ギ酸の全体の使用量を低減し得る。一実施形態において、前述の混合溶液中のギ酸の濃度は80重量%超であり得、これはナイロンに対してより良好な溶解効果を有し得る。
【0050】
一実施形態において、前述のリサイクルされたギ酸水溶液は、第2段階の処理の実施によって得られた第2の液体材料(進行中の処理サイクルで得られた第2の液体材料及び/又は本開示の方法を複数回実施した後の、これまでの処理サイクルで得られた第2の液体材料を含む)及び/又はこれまでの処理サイクル(本開示の方法が複数回実施される)において実施された第4段階の処理(その詳細は以下のとおり)の後に得られる第4の液体材料を含み得る。この方法により、ギ酸の全体の使用量を低減することができ、ナイロン又はリサイクルされたギ酸水溶液の酸性液体中に溶解したナイロン懸濁液(第2の液体材料及び/又は第4の液体材料など)をさらに続けてリサイクルすることができ、それによりナイロンのリサイクル量が増加する。
【0051】
一実施形態において、第3の固体材料は、他の非ナイロンポリマー(ポリエステルなど)を含み得る。ただし、本開示は、第3の固体材料が極少量のナイロンをさらに含むことを除外しないことに留意されたい。
【0052】
一実施形態において、第3の固体材料中のナイロンの割合(これは、第3の固体材料全体に対するナイロンの重量比であり得る)は、第1の固体材料中のナイロンの割合(これは、第1の固体材料全体に対するナイロンの重量比であり得る)よりも小さい。
【0053】
一実施形態において、第3の固体材料中のポリエステルの割合(これは、第3の固体材料全体に対するポリエステルの重量比であり得る)は、第1の固体材料中のポリエステルの割合(これは、第1の固体材料全体に対するポリエステルの重量比であり得る)よりも大きい。
【0054】
一実施形態において、第3の液体材料は、酸性液体及びナイロン、又は酸性液体中に溶解したナイロン懸濁液を含み得る。
【0055】
一実施形態において、第1の固体材料中のナイロンの全量に関して、第3の液体材料中のナイロンの量は、約90重量%以上、又は95重量%以上であり得る。換言すると、2つの段階の酸処理(すなわち、第1段階の処理における酸処理及び第3段階の処理における酸処理)を通じて、前述のリサイクル可能物中のナイロンは、後続の工程でほとんど溶解及び分離され得る。
【0056】
[第4段階の処理]
第4の固体材料及び第4の液体材料を得るために、前述の第3の液体材料に第4段階の処理を実施する。
【0057】
一実施形態において、第4段階の処理は希釈を含み得る。例えば、前述の第1段階の処理又は前述の第3段階の処理における酸処理で使用した溶媒を第3の液体材料に添加し、それから、適切な方法(スクリーンを用いた濾過又は静置による分離であるが、本開示はそれに限定されない)によって第4の液体材料と第4の固体材料とを相互に分離し得る。
【0058】
一実施形態において、第4段階の処理の方法は、前述の溶媒を前述の第3の液体材料に添加した後に溶液を冷却すること(例えば、室温(約25℃)まで冷却すること、又は、室温よりも低く、凝固点よりも高くなるまで冷却すること)を含み得るが、本開示はそれに限定されない。
【0059】
一実施形態において、第4段階の処理の方法は、前述の溶媒を前述の第3の液体材料に添加した後に、溶液を撹拌及び/又は静置すること(例えば、3分間撹拌し、30分以上静置すること、又は、5分間撹拌し60分以上静置すること)を更に含み得るが、本開示はそれに限定されない。
【0060】
一実施形態において、第1段階の処理は、99重量%のギ酸水溶液を使用して第1段階の処理の酸処理を実施することを含み得、第3段階の処理は、濃度が異なる第2段階のギ酸水溶液を使用して第3段階の処理の酸処理を実施することを含み得、第4段階の処理は、水を前述の第3の液体材料に添加して溶液中のギ酸の濃度を約60重量%から70重量%に低減することを含み得る。
【0061】
一実施形態において、第4の固体材料はナイロンを含み得る。
【0062】
一実施形態において、第4の液体材料は、酸性液体及びナイロン、又は酸性液体中に溶解したナイロン懸濁液を含み得る。第4の液体材料中の酸性物質の濃度は、第3の液体材料中の酸性物質の濃度よりも低い。
【0063】
[ナイロンのリサイクル及び再利用]
ナイロンのリサイクル及び再利用は、基本的に、ナイロンを含む第2の固体材料及び/又は第4の固体材料に対して適切な方法(ナイロンの引き伸ばし又はナイロンの造粒などであるが、本開示はそれに限定されない)で実行することができる。
【0064】
一実施形態において、第2の固体材料及び/又は第4の固体材料を水で更に洗浄して第2の固体材料及び/又は第4の固体材料中の酸性液体の濃度を低下させてもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0065】
一実施形態において、第2の固体材料及び/又は第4の固体材料を乾燥させてもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0066】
[ポリエステルのリサイクル及び再利用]
ポリエステルのリサイクル及び再利用は、基本的に、ポリエステルを含む第3の固体材料に対して適切な方法(ポリエステルの造粒などであるが、本開示はそれに限定されない)で実行し得る。
【0067】
一実施形態において、第3の固体材料を水で更に洗浄して第3の固体材料中の酸性液体の濃度を低下させてもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0068】
一実施形態において、第3の固体材料を乾燥させてもよいが、本開示はそれに限定されない。
【0069】
[産業上の応用]
本開示の方法を使用することにより、リサイクル可能物中のナイロン又はポリエステルをリサイクルし得る。さらに、リサイクルされたナイロン又はポリエステルは再利用し得る。再利用方法は、例えば、織物、カーテン、タイヤ、及び他のナイロン含有材料の製造であるが、それらに限定されない。リサイクルされたポリエステルの廃棄方法は、物理的再生又は化学的再生を含む。物理的再生は、押出機を使用して加工されたポリエステルを溶融し、それから押出してペレット化することを含む。化学的再生は、化学的解重合溶液を使用してリサイクルされたポリエステルを解重合し、それから解重合後に得られたモノマー及び/又はオリゴマーを特定の条件下で再重合して造粒を行うことを含み、化学的解重合溶液は、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はそれらの組み合わせであり得る。リサイクルされたポリエステルの廃棄方法は、台湾特許出願第110113065号及び/又は米国特許出願第17/320,247を参照することにより推測し得る。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のポリエステル及びナイロンを含む廃棄布の処理方法は、繊維産業に応用することができる。
図1