(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】タバコ由来ナノセルロース材料
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20240402BHJP
D21C 9/00 20060101ALI20240402BHJP
C08B 1/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
D21H11/18
D21C9/00
C08B1/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022172094
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2019551669の分割
【原出願日】2018-03-19
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドリーズ・ドン・セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・マーク・デバスク
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ニール・マクラナハン
(72)【発明者】
【氏名】パヌ・ラハティネン
(72)【発明者】
【氏名】マルヨ・マエアエッタエネン
(72)【発明者】
【氏名】アイリ・サエルキラハティ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/201414(WO,A1)
【文献】特表2015-514882(JP,A)
【文献】国際公開第2016/168074(WO,A1)
【文献】特表2017-503487(JP,A)
【文献】特表2008-529507(JP,A)
【文献】特開2017-019976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0186376(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0227834(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105926344(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106367455(CN,A)
【文献】国際公開第2016/072231(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38,
D21C1/00-11/14,
D21D1/00-99/00,
D21F1/00-13/12,
D21G1/00-9/00,
D21H11/00-27/42,
D21J1/00-7/00,
C08J5/00-5/22,
C08B1/00-37/18
Japio-GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ由来ナノセルロース材料を調製するための方法であって、
タバコ根、タバコ茎、又はこれらの組合せに由来するタバコパルプを5%未満の濃度のタバコパルプ懸濁液として受け取るステップ;及び
タバコパルプ懸濁液を少なくとも1000barの高圧にて高圧均質化または高圧ミクロ流動化に1回から5回通過させて、粒子形状のタバコ由来ナノセルロース材料を生成させるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
タバコパルプが、タバコ根に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タバコ由来ナノセルロース材料が、セルロースミクロフィブリル、セルロースナノフィブリル又はセルロースナノ結晶を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
タバコパルプ懸濁液が高圧均質化装置又は高圧ミクロ流動化装置を3回以下通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タバコパルプ懸濁液が高圧均質化装置又は高圧ミクロ流動化装置を1回のみ通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
タバコパルプを1つ以上の機械的、化学的又は酵素処理ステップに供することによって、タバコパルプを前処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前処理ステップが、機械的粉砕ステップである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前処理ステップが、TEMPO酸化、過酸化物酸化、カルボキシメチル化、アセチル化、酸加水分解及びこれらの組合せから選択される化学的処理ステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前処理ステップが、エンドグルカナーゼによる処理、ヘミセルラーゼによる処理及びこれらの組合せから選択される酵素処理を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前処理するステップが、前記パルプをナトリウム型にイオン交換することを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タバコから作製された又はタバコに由来する生成物及びそれらの生成のための方法に関する。タバコ由来生成物は、フィルム形成用途及び溶液増粘技術のような、多様な産業上の用途において利用され得る。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノ材料は、樹木、植物及び藻類から単離され、又は細菌によって産生され得る。様々な原材料供給源及び様々な生成方法が、様々なモルフォロジー並びに長さ、アスペクト比、分岐及び結晶化度のような特性を有するセルロースナノ材料をもたらす。商業化に関して、セルロースナノ材料の2つの主要なカテゴリ、すなわちセルロースナノ結晶(CNC)及びセルロースナノフィブリル(CNF)が、最も大きな関心を持たれている。CNC及びCNFは、多様な加工方法を用いて、木材のような多様なセルロース供給源から得られる。例えば、CNCは木材繊維の酸加水分解によって生成される一方、CNFは、フィブリル様ナノスケール材料を生成するための化学的又は生物学的処理を必要とする前処理手順あり又はなしの、機械的プロセスを用いて生成される。様々なモルフォロジー及び特性を有するこのような広い範囲のセルロースナノ材料を生成可能であることは、複数の産業にわたるいろいろな潜在的用途があることを表す。
【0003】
しかし、セルロースナノ材料の生成は、時間とエネルギーを消費する。市販の微粉砕パルプが用いられる場合、天然グレードの生成は通常、フィブリル化段階において複数のサイクルを必要とする。フィブリル化の程度は、前処理の選定及び原材料の選択によって影響され得る。現在、最も一般的な原材料は木材パルプであり、木材パルプはグラインダー又は高圧均質化装置を複数回通過した後、粘性ヒドロゲルを形成する。フィブリル化時間はセルロースナノ材料の生成における最も重大なコスト要因であるため、フィブリル化サイクルの回数が減少した加工方法を開発することには、大きな需要がある。さらに、よりコスト効率が高い生成プロセスを必要としているセルロースナノ材料の生成において、原材料とするための潜在的な供給源として、当技術分野においてより多くのバイオ材料の需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、さらに処理されてセルロースナノ結晶(CNC)及びセルロースナノフィブリル(CNF)のような多様なナノセルロース材料を生成させることができる、タバコ由来パルプの調製物を提供する。出発バイオ材料として木材パルプを用いる現在の手順は、ナノセルロースベースの材料を生成するのに必要な、多数のフィブリル化のサイクルのために大量のエネルギーを必要とするのに対して、ある実施形態において、本発明は、タバコ由来ナノセルロース材料を生成するための、有意に少ない量のエネルギー(及びより少ないフィブリル化サイクルの回数)を必要とする手順を提供する。これらのナノセルロースベースの材料は、以下の実施形態において提示されるフィルム形成能及びレオロジー特性を含む、多数の興味深い特性を呈する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、タバコ由来ナノセルロース材料を調製するための方法であって、タバコパルプが約5%未満の濃度のタバコパルプ懸濁液であるような希釈形態においてタバコパルプを受け取るステップ;及びタバコパルプ懸濁液を機械的にフィブリル化し、少なくとも1つの平均粒子サイズ寸法が約1nm~約100nmの範囲であるタバコ由来ナノセルロース材料を生成させるステップを含む、方法を対象とする。いくつかの実施形態において、タバコパルプは、タバコ根、タバコ茎、タバコ繊維又はこれらの組合せに由来する。いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料は、セルロースミクロフィブリル、セルロースナノフィブリル又はセルロースナノ結晶を含む。いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、少なくとも約20,000mPa・sの見かけ粘度を有する。いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、少なくとも約25,000mPa・sの見かけ粘度を有する。
【0006】
いくつかの実施形態において、機械的にフィブリル化するステップは、均質化、ミクロ流動化、粉砕及び凍結粉砕の1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、機械的にフィブリル化するステップは、タバコパルプ懸濁液を、少なくとも100barの高圧において均質化装置又はミクロ流動化装置に通過させるステップを含む。いくつかの実施形態において、高圧は少なくとも1000barである。いくつかの実施形態において、タバコパルプ懸濁液は均質化装置又はミクロ流動化装置を5回以下通過する。いくつかの実施形態において、タバコパルプ懸濁液は均質化装置又はミクロ流動化装置を3回以下通過する。いくつかの実施形態において、タバコパルプ懸濁液は均質化装置又はミクロ流動化装置を1回のみ通過する。
【0007】
いくつかの実施形態において、方法は、タバコパルプ懸濁液の形成の前又は後のいずれかに、タバコパルプを1つ以上の機械的、化学的又は酵素処理ステップに供することによって、タバコパルプを前処理するステップをさらに含む。いくつかの実施態様において、前処理ステップは、機械的粉砕ステップである。いくつかの実施形態において、前処理ステップは、TEMPO酸化、過酸化物酸化、カルボキシメチル化、アセチル化、酸加水分解及びこれらの組合せから選択される化学的処理ステップを含む。いくつかの実施形態において、前処理ステップは、エンドグルカナーゼによる処理、ヘミセルラーゼによる処理及びこれらの組合せから選択される酵素処理を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの平均粒子サイズ寸法が約1nm~約100nmの範囲であるタバコ由来ナノセルロース材料で形成されたフィルムを対象とする。いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料は、タバコ根、タバコ茎、タバコ繊維又はこれらの組合せに由来する。いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料は、セルロースミクロフィブリル、セルロースナノフィブリル又はセルロースナノ結晶を含む。いくつかの実施形態において、フィルムの引張強度は約120Mpaより大きい。いくつかの実施形態において、フィルムの引張強度は約130Mpaより大きい。いくつかの実施形態において、フィルムの引張強度は約140Mpa以上である。
【0009】
いくつかの実施形態において、フィルムは、(a)少なくとも約11%の伸び率;及び(b)少なくとも約4Gpaの引張弾性率、の1つ以上を有する。いくつかの実施形態において、フィルムの酸素透過度は、(a)23℃の温度及び0%の相対湿度(RH)において0.2cc・mm/m2・日未満並びに(b)23℃の温度及び80%の相対湿度(RH)において約20cc・mm/m2・日未満、の少なくとも一方である。いくつかの実施形態において、フィルムの水蒸気透過度は、23℃の温度及び50%の相対湿度(RH)において、約30g・mm/m2・日未満である。いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料は、疎水性、親水性又は極性官能基の表面への付加によって化学的に修飾された表面を有するセルロースナノフィブリルである。
【0010】
本開示は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0011】
実施形態1:タバコ由来ナノセルロース材料を調製するための方法であって、タバコパルプが約5%未満の濃度のタバコパルプ懸濁液であるような希釈形態においてタバコパルプを受け取るステップ;及びタバコパルプ懸濁液を機械的にフィブリル化し、少なくとも1つの平均粒子サイズ寸法が約1nm~約100nmの範囲であるタバコ由来ナノセルロース材料を生成させるステップを含む、方法。
【0012】
実施形態2:タバコパルプが、タバコ根、タバコ茎、タバコ繊維又はこれらの組合せに由来する、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0013】
実施形態3:タバコ由来ナノセルロース材料が、セルロースミクロフィブリル、セルロースナノフィブリル又はセルロースナノ結晶を含む、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0014】
実施形態4:タバコ由来ナノセルロース材料が、1.5%の濃度において、少なくとも約20,000mPa・sの見かけ粘度を有する、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0015】
実施形態5:タバコ由来ナノセルロース材料が、1.5%の濃度において、少なくとも約25,000mPa・sの見かけ粘度を有する、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0016】
実施形態6:機械的にフィブリル化するステップが、均質化、ミクロ流動化、粉砕及び凍結粉砕の1つ以上を含む、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0017】
実施形態7:機械的にフィブリル化するステップが、タバコパルプ懸濁液を、少なくとも100barの高圧において均質化装置又はミクロ流動化装置に通過させるステップを含む、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0018】
実施形態8:高圧が少なくとも1000barの圧力である、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0019】
実施形態9:タバコパルプ懸濁液が均質化装置又はミクロ流動化装置を5回以下通過する、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0020】
実施形態10:タバコパルプ懸濁液が均質化装置又はミクロ流動化装置を3回以下通過する、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0021】
実施形態11:タバコパルプ懸濁液が均質化装置又はミクロ流動化装置を1回のみ通過する、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0022】
実施形態12:タバコパルプ懸濁液の形成の前又は後のいずれかに、タバコパルプを1つ以上の機械的、化学的又は酵素処理ステップに供することによって、タバコパルプを前処理するステップをさらに含む、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0023】
実施形態13:前処理ステップが、機械的粉砕ステップである、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0024】
実施形態14:前処理ステップが、TEMPO酸化、過酸化物酸化、カルボキシメチル化、アセチル化、酸加水分解及びこれらの組合せから選択される化学的処理ステップを含む、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0025】
実施形態15:前処理ステップが、エンドグルカナーゼによる処理、ヘミセルラーゼによる処理及びこれらの組合せから選択される酵素処理を含む、前述の実施形態のいずれかの方法。
【0026】
実施形態16:少なくとも1つの平均粒子サイズ寸法が約1nm~約100nmの範囲であるタバコ由来ナノセルロース材料で形成されたフィルム。
【0027】
実施形態17:タバコ由来ナノセルロース材料が、タバコ根、タバコ茎、タバコ繊維又はこれらの組合せに由来する、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0028】
実施形態18:タバコ由来ナノセルロース材料が、セルロースミクロフィブリル、セルロースナノフィブリル又はセルロースナノ結晶を含む、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0029】
実施形態19:フィルムの引張強度が約120Mpaより大きい、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0030】
実施形態20:フィルムの引張強度が約130Mpaより大きい、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0031】
実施形態21:フィルムの引張強度が約140Mpa以上である、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0032】
実施形態22:少なくとも約11%の伸び率;及び少なくとも約4Gpaの引張弾性率、の1つ以上を有する、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0033】
実施形態23:フィルムの酸素透過度が、23℃の温度及び0%の相対湿度(RH)において0.2cc・mm/m2・日未満並びに23℃の温度及び80%の相対湿度(RH)において約20cc・mm/m2・日未満、の少なくとも一方である、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0034】
実施形態24:フィルムの水蒸気透過度が、23℃の温度及び50%の相対湿度(RH)において、約30g・mm/m2・日未満である、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0035】
実施形態25:タバコ由来ナノセルロース材料が、疎水性、疎水性又は極性官能基の表面への付加によって化学的に修飾された表面を有するセルロースナノフィブリルである、前述の実施形態のいずれかのフィルム。
【0036】
本開示のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の詳細な説明を、下に簡単に記載される添付図面と一緒に読むことによって明らかとなる。本開示は、上記実施形態の2つ、3つ又は4つ以上の任意の組合せ及び本開示で説明される2つ、3つ又は4つ以上の任意の特徴又は要素の組合せを、これらの特徴又は要素が、本明細書における特定の実施形態の記載において明示的に組み合わせられているか否かにかかわらず、含む。本開示は全体的に、文脈が明確に別段の指示をしない限り、本開示の任意の分離可能な特徴又は要素が、多様な態様及び実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であることを意図するものと見られるべきであるように、読まれることを意図する。
【0037】
本開示の実施形態の理解を支援するため、付属図面をここに参照するが、これらは必ずしも縮尺通りに描かれたものではない。図面は例示的なものに過ぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】タバコパルプを作製するプロセスの個々のステップを示す流れ図である。点線の四角形はプロセスにおける任意選択的なステップを表す。
【
図2】多様なタバコ材料及び比較用サンプルから作製したセルロースナノ材料の画像を示す一連のパネルである:(a)タバコ廃棄物CMF;(b)5回通過後のタバコ茎;(c)5回通過後のタバコ根;(d)5回通過後の未漂白タバコ根;(e)5回通過後、Na型においてナトリウムにより洗浄したタバコ根;(f)5回通過後のタバコ繊維;(g)比較用サンプルの木材ベースCMF(ダイセルセリッシュKY100G);及び(h)比較用サンプルの広葉樹ベースのCNFサンプル。
【
図3】多様なフィブリル化サイクル(例えば、1回、3回及び5回通過)を用いた、タバコ茎、根及び繊維並びに比較用の木材ベース材料に由来するナノセルロース材料の粘度測定値を示す棒グラフである。
【
図4】ナノセルロースベースのフィルムを作製するプロセスの個々のステップを示す流れ図である。点線の四角形はプロセスにおける任意選択的なステップを表す。
【
図5】タバコ由来材料製及び比較用木材ベース材料製のナノセルロースベースフィルムの引張強度を示すグラフである。
【
図6】タバコ由来材料(例えば、タバコ由来フィルム)製及び比較用木材ベース材料製のナノセルロースベースフィルムの伸び率を示すグラフである。
【
図7】タバコ由来材料製及び比較用木材ベース材料製のナノセルロースベースフィルムの弾性率を示すグラフである。
【
図8】23℃及び0%RHにおける、タバコ由来材料製及び比較用木材ベース材料製のナノセルロースベースフィルムの酸素透過度を示すグラフである。
【
図9】23℃及び80%RHにおける、タバコ由来材料製及び比較用木材ベース材料製のナノセルロースベースフィルムの酸素透過度を示すグラフである。
【
図10】ウェットカップ法を用いた、タバコ由来材料製及び比較用木材ベース材料製のナノセルロースベースフィルムの水蒸気透過度を示すグラフである。水(100%)がカップ中にあり、50%RHがカップの外界であり、その結果、測定条件に湿度勾配が存在する。
【
図11】タバコ原材料(元の根、脱髄された茎、脱髄された繊維)の化学組成を示すグラフである。
【
図12】様々なタバコ原材料及びバッチの、不良品含有率及び精選収率を示す一連のグラフである。
【
図13】カッパー価の減少及び白色度の増加を、二酸化塩素消費量の関数として示す一連のグラフである。
【
図14】漂白パルプの炭水化物組成を示すグラフである。
【
図15】元の原材料から計算した、原材料及びパルプの化学組成を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示は以降、添付図面を参照しながら、より詳細にここに記載される。本開示は多くの異なる形態で実施され得るが、本明細書において説明される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、これらの実施形態はむしろ、この開示が、許容される法的要求事項を満足するように提供される。全体にわたって、同じ数字は同じ要素を指す。本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0040】
本開示は、ニコチアナ属種(Nicotiana species)の植物の茎及び/又は根及び/又は繊維から形成された、タバコパルプ製のナノセルロース材料を形成するための方法を提供する。タバコ植物のこれらの構成要素は通例、廃棄物として見なされているため、本方法及び得られるタバコ由来材料は、このようなタバコバイオマス副生成物を活用するために開発された。タバコパルプを生成させるための本方法は、一般に、タバコ材料を強塩基中で加熱して、タバコ原材料(すなわち茎、根、繊維)中に存在するヘミセルロース及びリグニンのような望ましくない構成要素を、セルロースから分離するステップ、並びに得られる混合物を濾過して、最小量の不純物を含む所望のセルロース材料を得るステップを含む。複数の実施形態において、プロセスは、漂白及び抽出方法のような追加の加工ステップを、さらに含むことができる。得られるタバコパルプは、セルロースナノフィブリル(CNF)、セルロースナノ結晶(CNC)及びセルロースミクロフィブリル(CMF)のような多数のナノセルロース材料を生成するために、さらに改質され得るが、これらは主にタバコパルプからの単離方法に基づき、互いに異なる。各セルロースベースの粒子は、特徴的なサイズ、アスペクト比、モルフォロジー及び結晶化度を有するという観点で独特である。一般的に、本発明のナノセルロース材料は、典型的には、与えられた粒子分布の範囲内の粒子(結合していなくとも、又は凝結若しくは凝集の部分としてであろうと)が、少なくとも1つの平均粒子サイズ寸法が約1nm~約100nmの範囲である材料を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料はCNFを含む。CNF粒子は、フィブリル化を促進する技法が、タバコパルプの機械的精砕に組み込まれる場合に生成される、微細なセルロースフィブリルである。いくつかの実施形態において、CNF粒子の平均長さは、約0.5~約5μm又は約0.5~約2μmの範囲である。いくつかの実施形態において、CNF粒子の平均幅は、約1~約30nm又は約4~約20nmの範囲である。一実施形態において、CNF粒子の平均高さは、約1~約30nm又は約4~約20nmの範囲である。いくつかの実施形態において、CNF粒子のアスペクト比は、約1:1~約1:30の範囲である。いくつかの実施形態において、CNF粒子は、アモルファス領域、結晶性領域又はこれらの組合せを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料はCNCを含む。CNCは、CMF又はCNF粒子の酸加水分解後に残る粒子である。いくつかの実施形態において、CNC粒子の平均長さは、約0.05~約1μm又は約0.05~約0.5μmの範囲である。いくつかの実施形態において、CNC粒子の平均幅は、約1~約10nm又は約3~約5nmの範囲である。いくつかの実施形態において、CNC粒子の平均高さは、約1~約100nm又は約3~約5nmの範囲である。いくつかの実施形態において、CNC粒子は、セルロースに対する結晶化度を基準として、約50~約95%の結晶化度を有する。いくつかの実施形態において、アスペクト比は約1:10~約1:100の範囲である。
【0043】
いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料はCMFを含む。CMFは一般に、タバコパルプの機械的精砕を通じて生成される。いくつかの実施形態において、CMF粒子の平均長さは、約0.5~約100μm又は約1~約10μmの範囲である。いくつかの実施形態において、CMF粒子の平均幅は、約10~約100nm又は約30~約60nmの範囲である。一実施形態において、CMF粒子の平均高さは、約10~約100nmの範囲である。いくつかの実施形態において、CMF粒子は、セルロースに対する結晶化度を基準として、約50~約75%の範囲の結晶化度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、ナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、約5,000~約40,000mPa・s、好ましくは約20,000~約35,000mPa・s、より好ましくは約20,000~約30,000mPa・sの範囲の見かけ粘度を有する。ある実施形態において、本発明のタバコ由来ナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、少なくとも約20,000mPa・s又は少なくとも約25,000mPa・sの見かけ粘度を呈する。例えば、いくつかの実施形態において、タバコ茎から作製されたパルプに由来するナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、約20,000~約30,000mPa・sの範囲の見かけ粘度を有する。いくつかの実施形態において、タバコ繊維から作製されたパルプに由来するナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、約5,000~約10,000mPa・sの範囲の見かけ粘度を有する。いくつかの実施形態において、未漂白の茎から作製されたパルプに由来するナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、約5,000~約15,000mPa・sの範囲の見かけ粘度を有する。いくつかの実施形態において、根から作製されたパルプに由来するナノセルロース材料は、1.5%の濃度において、約25,000~約35,000mPa・sの範囲の見かけ粘度を有する。いくつかの実施形態において、パルプに由来するナノセルロース材料は、フィブリル化の前にナトリウム型にイオン交換されており、1.5%の濃度において、約20000~約40000mPa・sの範囲の見かけ粘度を有する。イオン交換パルプの調製については、参照により全体を組み込む、Lahtinenら、BioResources、9(2)、2155~2127頁(2014)を参照されたい。
【0045】
タバコナノセルロース材料を作製する方法
本発明によるタバコ材料の調製は、ニコチアナ属種の植物を収穫するステップを含んでよく、ある実施形態において、茎、葉及び/又は根のような特定の構成要素を植物から分離するステップ、及びこれらの構成要素を物理的に加工するステップを含んでよい。タバコ植物の全体又はこれらの任意の構成要素(例えば、葉、花、葉柄、根、茎等)は、タバコ投入材料のための潜在的な供給源として用いられ得るが、茎及び/若しくは根並びに/又はタバコ植物の単離された繊維の使用が好ましい。いくつかの実施形態において、全体的な灰分の少なさ及びその結果の金属含有率の低さのため、いくつかの繊維材料と比較して、根及び/又は茎が好ましい場合がある。
【0046】
タバコの茎及び/若しくは根は、個々のピース(例えば、茎から分離された根並びに/又は大きな根、中程度の根及び小さな根部分のような、互いから分離された根の部分)に分離され得る、又は茎及び/若しくは根が組み合わせられてもよい。同様に、タバコ繊維は、タバコ植物の任意の部分を用いてタバコ繊維を単離して得られ得るが、これはタバコ投入材料として個別に用いられ得る、又はタバコの茎及び/若しくは根との組合せにおいて用いられてもよい。例えば、タバコ繊維は、タバコ茎、タバコ根、タバコ中肋(葉柄)又はこれらの組合せから得られ得る。「茎」によって、葉(葉柄及び葉身を含む)が除去された後に残る茎が表される。本発明によれば有用な「根」及び多様な特定の根の部分は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Mauseth、Botany:An Introduction to Plant Biology:Fourth Edition、Jones and Bartlett Publishers(2009)及びGlimn-Lacyら、Botany Illustrated,Second Edition、Springer(2006)に記載されているように定義及び分類され得る。繊維は、例えば、葉、中肋(葉柄)及び/又は茎のような、植物の複数の部分から得られ得る。収穫された茎、繊維及び/又は根は、典型的には、洗浄され、粉砕され、乾燥され、微粒子として記載され得る材料を生成する(すなわち、刻まれ、粉末化され、粉砕され、粒状化され又は粉化される)。
【0047】
茎、繊維及び/又は根が提供される方法は、多様であってよい。例えば、ニコチアナ植物茎から得られる材料は単離され、ニコチアナ植物根から得られる材料又はニコチアナ植物葉から得られる材料とは別に処理され得る。さらに、多様な茎及び/又は根の部分由来の材料は、単離され、別に処理され得る。いくつかの実施形態において、ニコチアナ植物の異なる部分由来の材料は、組み合わせられて一緒に加工される場合があり、これによって単一の均質タバコ投入材料を形成する。いくつかの実施形態において、ニコチアナ植物の異なる部分由来の材料は、単離されて別に処理されるが、加工のいくつかの段階で任意選択的に組み合わせられる場合があり、単一のタバコ投入生成物をもたらす。
【0048】
好ましくは、物理的加工ステップは、ニコチアナ植物の部分(すなわち茎、繊維及び/又は根)を、粉砕、微粉砕等のための機器及び技法を用いて、細片化し、粉砕し及び/又は粉末化し、微粒子形態にすることを含む。これらの実施形態において、ハンマーミル、カッターヘッド、空気制御ミル等のような機器が用いられ得る。
【0049】
ニコチアナ茎、繊維及び/又は根を細片化、粉砕、及び/又は粉末化することを経て提供されるタバコ材料は、任意のサイズを有することができる。タバコ材料は、その部分又はピースが、約2mm~約5cm、約2mm~約2cm、又は約2mm~約6mmの平均幅及び/又は長さを有するものであってよい。いくつかの実施形態において、タバコ投入材料の平均幅及び/又は長さは、約2mm~約10cm、又は約10cmを上限として、約2mm以上、約6mm以上、約1cm以上、若しくは約5cm以上である。
【0050】
ナノセルロース材料の調製のためにタバコ投入材料に利用されるタバコの種類の選択は、多様であってよい。タバコ材料が由来するタバコ茎及び/又は根の供給源として用いられるタバコの種類は、多様であってよい。利用され得るタバコは、鉄管乾燥タバコ又はバージニア(Virginia)(例えば、K326)、バーレー(burley)、日干し乾燥種(例えば、カテリニ(Katerini)、プレリップ(Prelip)、コモティニ(Komotini)、クサンティ(Xanthi)及びヤンボル(Yambol)タバコを含む、インディアンクルヌール及びオリエンタルタバコ)、メリーランド(Maryland)、暗色種、暗色火干し種、暗色空気乾燥種(例えば、パサンダ(Passanda)、キュバーノ(Cubano)、ジャティン(Jatin)及びベズキ(Bezuki)タバコなど)、明色空気乾燥種(例えば、ノースウィスコンシン(North Wisconsin)及びガルパオ(Galpao)タバコ)、インディアン空気乾燥種、レッドロシアン(Red Russian)及びルスティカ(Rustica)タバコ並びに多様な他の珍しい又は特殊なタバコを含む。多様な種類のタバコ、栽培業務及び収穫業務の記載は、参照により本明細書に組み込まれる、Tabacco Production, Chemistry and Technology、Davisら(編)(1999)において説明されている。ニコチアナ属種の多様な代表的な種類の植物は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Goodspeed、The Genus Nicotiana、(Chonica Botanica)(1954);Sensabaugh, Jr.らの米国特許第4,660,577号;Whiteらの米国特許第5,387,416号;及びLawsonらの米国特許第7,025,066号;Lawrence, Jr.の米国特許出願公開第2006/0037623号;及びMarshallらの米国特許出願公開第2008/0245377号において説明されている。
【0051】
タバコ投入材料中に存在する糖質成分の組成は多様であり得るが、これは投入材料に利用されるタバコ植物構成要素(例えば、葉、花、葉柄、根、茎、繊維)の相対的な量及び/又はタバコの種類の選択に基づく。ナノセルロース材料の調製のために必要となる主な糖質成分は、セルロースである。セルロースは、大部分の植物及び樹木の細胞壁の主要成分として存在する多糖類であり、葉柄及び葉の構造的剛性をもたらすものである。多量のセルロースを含有するバイオ材料は、ナノセルロース材料の単離について、望ましい出発原材料である。いくつかの実施形態において、タバコ材料中に存在するセルロースの量は、総タバコ投入材料の重量を基準として、約30重量%~約40重量%、好ましくは約32重量%~約37重量%の範囲であってよい。セルロースの他に、タバコ投入材料はまた、さらなる糖質成分並びに、蛋白質及び抽出物のような糖質成分以外の化学物質を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、植物細胞中に存在することが多い別の糖質成分は、リグニンである。リグニンも、まさにセルロースと同様に剛性を与えるため、特に木材及び樹皮の、細胞壁の形成において特に重要である。典型的には、存在するリグニンの量は、選択されるバイオ原材料の供給源次第である。したがって、少量のリグニンが存在する出発バイオ材料が好ましい。いくつかの実施形態において、タバコ材料中に存在するリグニンの量は、タバコ投入材料の総重量を基準として、約1重量%~約10重量%、好ましくは約5重量%~約8重量%の範囲であってよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、ヘミセルロース及び、多糖類のようなさらなる糖質成分も、タバコ投入材料のような出発バイオ材料中に存在することが多い。例は、キシラン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、ガラクトグルコマンナン(GGM)及びキシログルカンを含む。ヘミセルロースもまた、セルロースを単離する場合、パルプ化プロセス中に除去される必要がある。いくつかの実施形態において、タバコ投入材料中に存在するGGMの量は、タバコ投入材料の総量を基準として、約2~約7重量%、好ましくは約2.5~約6重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、タバコ投入材料中に存在するキシランの量は、タバコ投入材料の総重量を基準として、約8重量%~約17.5重量%、好ましくは約8重量%~約12.5重量%の範囲である。
【0054】
さらなる実施形態において、(タバコ投入材料のような)出発バイオ材料中に蛋白質が存在する。植物中の蛋白質の例は、α-カゼイン、グリアジン、エデスチン、コラーゲン、ケラチン及びミオシンを含む。いくつかの実施形態において、タバコ投入材料中に存在する蛋白質の量は、タバコ投入材料の総量を基準として、約5重量%~約9重量%、好ましくは約5重量%~約7.5重量%の範囲である。
【0055】
いくつかの実施形態において、可溶性の材料又は抽出物が出発バイオ原材料中に存在するが、これらは有機溶媒(極性及び非極性)中に可溶であることが多く、当技術分野において公知の抽出方法を通じて除去され得る。水溶性及び揮発性の抽出物は、パルプ化中に除去される。ナノセルロース材料を生成するパルプ化プロセスにおいて、少量の抽出物を含む出発バイオ原材料が望ましい。本明細書において用いられる場合、タバコ茎、繊維及び/又は根は、主に有機可溶性材料(例えば、抽出物)を除去するための抽出プロセスを経ることができる。タバコ茎、繊維及び/又は根材料がこのような抽出プロセスを経た後に残る材料は、後続のパルプ化プロセスにおいて有用である。いくつかの実施形態において、タバコ投入材料中に存在する抽出物の量は、タバコ投入材料の総量を基準として、約0.5~約2.5重量%、好ましくは約0.9~約2.1重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、抽出物は、非極性有機溶媒であるヘプタンを用いて除去された。
【0056】
タバコ投入材料は、周期表から多様な元素をさらに含む場合がある。このようなタバコ投入材料の元素組成もまた、タバコ投入材料の内容物次第で多様であり得る。例えば、元素組成は部分的に、タバコ投入材料が、ニコチアナ茎、根、繊維又はこれらの組合せから調製されたか次第であり得る。もっぱらニコチアナ茎から得る材料から調製されるタバコ投入材料は、もっぱらニコチアナ根から得る材料から調製されるタバコ投入材料とは異なる元素組成を呈し得る。以上のように、いくつかの実施形態において、タバコ根、タバコ茎及びタバコ繊維の元素組成は同じではない。例えば、ある実施形態におけるタバコ繊維の元素組成はおよそ、5%の灰(525℃)、3.8%の灰(900℃)、310mg/kgのAl、15g/kgのCa、7.6mg/kgのCu、280mg/kgのFe、1.2g/kgのMg、48mg/kgのMn、480mg/kgのSi、33mg/kgのNa、1.2g/kgのS、0.02g/kg未満のCl及び3.2g/kgのKである。茎の元素組成は、3%の灰(525℃)、2.3%の灰(900℃)、25mg/kgのAl、4.1g/kgのCa、13mg/kgのCu、42mg/kgのFe、2.4g/kgのMg、22mg/kgのMn、17mg/kgのSi、40mg/kgのNa、1.6g/kgのS、3.5g/kgのCl及び15g/kgのKである。根の元素組成は、2.7%の灰(525℃)、2.1%の灰(900℃)、150mg/kgのAl、2.3g/kgのCa、9.4mg/kgのCu、100mg/kgのFe、1.0g/kgのMg、9.0mg/kgのMn、180mg/kgのSi、97mg/kgのNa、1.5g/kgのS、3.0g/kgのCl及び17g/kgのKである。
【0057】
ナノセルロース材料の生成において用いられるタバコ投入材料として利用される、ニコチアナ属種の植物の選択は、前の実施形態において言及したように、多様であってよい。ナノセルロース材料の生成において用いられる材料の具体的なニコチアナ属種もまた、多様であってよい。N.アラタ(N.alata)、N.アレントシ(N.arentsii)、N.エクセルシオール(N.excelsior)、N.フォルゲティアナ(N.forgetiana)、N.グラウカ(N.glauca)、N.グルチノーザ(N.glutinosa)、N.ゴッセイ(N.gossei)、N.カワカミ(N.kawakamii)、N.ナイチアナ(N.knightiana)、N.ラングスドルフィ(N.langsdorffi)、N.オトホラ(N.otophora)、N.セトケリ(N.setchelli)、N.シルベストリス(N.sylvestris)、N.トメントサ(N.tomentosa)、N.トメントシホルミス(N.tomentosiformis)、N.アンドゥラタ(N.undulata)及びN.×サンデラエ(N.x sanderae)は特に、目的のものである。N.アフリカーナ(N.africana)、N.アムプレキシカウリス(N.amplexicaulis)、N.ベナビデシ(N.benavidesii)、N.ボナリエンシス(N.bonariensis)、N.デブネイ(N.debneyi)、N.ロンギフロラ(N.longiflora)、N.マリチナ(N.maritina)、N.メガロシホン(N.megalosiphon)、N.オクシデンタリス(N.occidentalis)、N.パニクラタ(N.paniculata)、N.プルムバギニフォリア(N.plumbaginifolia)、N.ライモンジ(N.raimondii)、N.ロスラタ(N.rosulata)、N.ルスティカ(N.rustica)、N.シムランス(N.simulans)、N.ストックトニ(N.stocktonii)、N.スアベオレンス(N.suaveolens)、N.タバカム(N.tabacum)、N.アンブラチカ(N.umbratica)、N.ベルチナ(N.velutina)及びN.ウィガンジオイデス(N.wigandioides)も目的のものである。ニコチアナ属種の他の植物は、N.アカウリス(N.acaulis)、N.アクミナタ(N.acuminata)、N.アテヌアタ(N.attenuata)、N.ベンサミアナ(N.benthamiana)、N.カビコラ(N.cavicola)、N.クレベランジ(N.clevelandii)、N.コルジフォリア(N.cordifolia)、N.コリンボサ(N.corymbosa)、N.フラグランス(N.fragrans)、N.グッドスピーディ(N.goodspeedii)、N.リネアリス(N.linearis)、N.ミエルシ(N.miersii)、N.ヌジカウリス(N.nudicaulis)、N.オブツシフォリア(N.obtusifolia)、N.オクシデンタリス亜種ヘスペリス(N.occidentalis subsp. Hersperis)、N.パウシフロラ(N.pauciflora)、N.ペツニオイデス(N.petunioides)、N.クアドリバルビス(N.quadrivalvis)、N.レパンダ(N.repanda)、N.ロツンジフォリア(N.rotundifolia)、N.ソラニフォリア(N.solanifolia)及びN.スペガジニ(N.spegazzinii)を含む。ニコチアナ属種は、遺伝子組み換え又は交雑育種の技法を用いて得られてもよい(例えば、タバコ植物は遺伝子操作又は異種交配され、特定の成分の生成を増加若しくは減少、又はそうでなければ、ある特徴若しくは特質を変化させることができる。)。例えば、Fitzmauriceらの米国特許第5,539,093号;Wahabらの米国特許第5,668,295号;Fitzmauriceらの米国特許第5,705,624号;Weiglへの米国特許第5,844,119号;Dominguezらの米国特許第6,730,832号;Liuらの米国特許第7,173,170;Colliverらの米国特許第7,208,659号;及びBenningらの米国特許第7,230,160号;Conklingらの米国特許出願公開第2006/0236434号;並びにNielsenらのPCT WO 2008/103935において説明されている、植物の遺伝子組み換えの種類を参照されたい。
【0058】
ニコチアナ属種の植物の構成要素は、未成熟形態において利用され得る。すなわち、植物は、熟した又は成熟したと通常認められる段階に植物が達する前に収穫され得る。そのようなものとして、例えば、タバコ植物が新芽の時点、葉の形成を開始したとき、開花し始めたとき等に、植物が収穫され得る。
【0059】
ニコチアナ属種の植物の構成要素は、成熟形態において利用され得る。すなわち、植物は、熟した、熟しきった又は成熟したと伝統的に見られる段階にその植物が達した時点で収穫され得る。そのようなものとして、例えば、農家によって従来利用されるタバコ収穫技法の使用を通じて、オリエンタルタバコ植物が収穫されてよく、バーレータバコ植物が収穫されてよく、又はバージニアタバコ葉が収穫されてよく、若しくは茎の位置で収穫されてよい。
【0060】
収穫後、ニコチアナ属種の植物又はその一部は、未加工の形態で用いられ得る(例えば、タバコはいずれの乾燥プロセスにも供されることなく用いられ得る。)。例えば、未加工の形態のタバコは、凍結され、凍結乾燥され、放射線照射に供され、黄変され、乾燥され、蒸解され(例えば、ローストされ、揚げられ、若しくはボイルされ)、又はそうでなければ後の使用のための貯蔵若しくは処理に供され得る。このようなタバコは、エージング条件にも供され得る。
【0061】
ある実施形態において、タバコパルプ及び、最終的には、ナノセルロース材料を形成するために用いられるタバコ投入物は、タバコ植物の根及び/又は茎から実質的に得られる。例えば、タバコパルプを形成するために用いられるタバコ投入物は、少なくとも乾燥重量で90%の根若しくは茎のいずれか、又は根と茎の組合せを含むことができる。
【0062】
タバコパルプの生成は、蒸解、漂白、中和及び単離のような、複数の操作が関わる。ナノセルロース材料の生成における出発材料として有用であるためには、得られるタバコパルプは、十分な割合のセルロースを含むべきである。典型的には、このようなパルプはパルプの総重量を基準にして、約55重量%~約90重量%の範囲のセルロース量を有する。対照的に、パルプ中のヘミセルロース(例えば、GGM、キシラン等)の分量は、低いことが好ましい(例えば、約0.5重量%~約10重量%)。また、パルプ中のリグニンの分量も、低いことが好ましい(例えば、約0重量%~約1.0重量%)。タバコパルプのさらなる特徴は、灰分(例えば、約0重量%~約0.5重量%)、有機抽出物(例えば、約0重量%~約1.0重量%)、白色度(例えば、約10~約90%の範囲)、粘度(例えば、約2~約30cP)及びカッパー価(例えば、約10~約90の範囲)も含む。
【0063】
本開示の一態様は、参照により全体を本明細書に組み込まれる、Byrd, Jr.らの米国特許第9,339,058号及びByrd, Jr.らの米国特許出願公開第2016/0208440号に記載されている方法による、タバコパルプの生成に関わる。例えば、
図1において図示されるように、一実施形態において、方法100は、タバコ投入物に化学パルプ化(例えば、ソーダパルプ化法)を行い、タバコパルプを形成するステップを含むことができる。このプロセスはクラフト蒸解プロセスと呼ばれることも多く、当初は木材パルプを得るために用いられたが、他のバイオ出発材料と共に用いられている。簡潔にいえば、操作における化学パルプ化は、操作120において、タバコ投入物を強塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムの1つ以上)と組み合わせるステップ並びに操作140においてタバコ投入物及び塩基を加熱するステップを含むことができる。さらに、方法は、操作160において、タバコパルプを漂白剤に曝露するステップを含むことができる。任意選択的に、点線の四角形によって図示されるように、操作160においてタバコパルプを漂白するステップは、操作162における二酸化塩素溶液によるタバコパルプの塩素化、及び操作166における第2の強塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムの1つ以上)によるタバコパルプの苛性抽出を含むことができる。本明細書において用いられる場合、強塩基は、酸塩基反応において非常に弱い酸を脱プロトン化することができる、塩基性化合物(又はこのような化合物の組合せ)をいう。操作162における苛性抽出において利用される強塩基(「第2の強塩基」)は、操作120における化学パルプ化において利用される強塩基と、同じであってもなくてもよいことに注意されたい。
【0064】
したがって、上に記載される方法は、タバコから溶解グレードパルプを生成するように構成される操作を提供する。しかし、方法は、いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の操作を含むことができる。これらの任意選択的な操作は、
図1における点線で画定している四角形によって図示されている。
【0065】
この点において、方法は、タバコ投入物を化学パルプ化する前に、操作102においてタバコ投入物を乾燥するステップをさらに含むことができる。さらに、方法は、タバコ投入物を化学パルプ化する前に、操作104においてタバコ投入物を脱髄するステップを含むことができる。操作104においてタバコ投入物を脱髄するステップ又は剥皮するステップは、タバコ投入物から手作業で(リグニンを含む)髄を除去するために実施され得るが、これによって化学パルプ化及び漂白操作160中にタバコ投入物を脱リグニン化するために必要な化学物質の量を減少させる。いくつかの実施形態において、タバコの茎及び/又は繊維に由来するタバコ投入物は脱髄される。
【0066】
また、方法は、操作106においてタバコ投入物を微粉砕するステップを含むことができ、これはタバコ投入物を化学パルプ化する前に実施され得る。操作106においてタバコ投入物を微粉砕するステップは、操作104においてタバコ投入物を脱髄した後に実施され得る。この点において、髄の手作業の又は機械的除去は、より大きなピースのタバコが投入される場合に比較的容易であり得るが、方法は、他の実施形態における他の順序において実施されてもよい。操作106においてタバコ投入物を粒子に微粉砕するステップが実施されてよく、化学パルプ化操作及び漂白操作がより多くの表面積に作用することができるように、タバコ投入物の表面積を増加させ、その効力を上昇させることができる。いくつかの実施形態において、タバコ投入物粒子の直径は、約2mm~約8mm、好ましくは約2mm~約6mm、最も好ましくは約2mm~約4mmの範囲である。
【0067】
上に記されるように、操作における化学パルプ化は、タバコ投入物中のリグニンを分解するための化学物質(例えば、操作120参照)及び熱(例えば、操作140参照)の使用が関わり得るが、これによってセルロース繊維を重度に劣化させることなく、セルロース繊維同士を結合する。
【0068】
いくつかの実施形態において、強塩基の重量は、タバコ投入物の重量の約5%を超える、約25%を超える、又は約40%を超えることができる。さらなる実施形態において、強塩基の重量は、タバコ投入物の重量の約5%~約50%、又は約30%~約40%であってよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、白色液中に存在するアルカリ性構成成分の濃度である、有効アルカリ添加(EA添加)は、約15~約30%、好ましくは18~約28%、最も好ましくは約20~約25%の範囲である。
【0070】
上に追記されるように、タバコ投入物を化学的にパルプ化するステップは、操作140においてタバコ投入物及び強塩基を加熱するステップを含んでよい。操作140においてタバコ投入物及び強塩基を加熱するステップは、化学パルプ化操作の効力を上昇させるために実施され得る。この点において、蒸解の温度又は時間のいずれかの増加は、反応速度(リグニン除去の速度)の上昇をもたらす。化学パルプ化に関わる計算を単純にするため、本明細書において化学パルプ化は、化学パルプ化操作の温度及び時間の両方を考慮した、Hファクターと呼ばれるパラメータの点から議論される。Hファクターを計算するための等式は、以下のとおりである:
H=∫0
texp(43.2-16115/T)dt (等式1)
式中、
・ T=温度(ケルビン)であり、
・ t=時間(分)である。
【0071】
したがって、Hファクターは、反応速度対時間のプロットによって包含される面積をいう。いくつかの実施形態において、操作140においてタバコ投入物及び塩基を加熱するステップは、約300~約2,000、より好ましくは約400~約1,500、最も好ましくは約400~約900(又は少なくとも400、若しくは少なくとも600、若しくは少なくとも1,000)の範囲のHファクターで実施され得る。
【0072】
さらに、いくつかの実施形態において、タバコ投入物及び強塩基は、約100~約200℃、約120~約180℃、約140~約160℃又は約145~約155℃の範囲の温度に加熱され得る。最高温度は、約30~約150分維持され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、与えられた温度における化学パルプ化のための時間の量は、約30分~約120分又は約50分~約100分の範囲である。
【0074】
いくつかの実施形態において、タバコ投入物の化学パルプ化は、強塩基がタバコ投入物の約30重量%未満の重量比において供給される場合、「穏やか」であると考えられ得る。穏やかな化学パルプ化は、いくつかの実施形態において、約900未満のHファクターによって実施され得る。タバコ投入物の化学パルプ化は、強塩基が約30重量%~約40重量%である場合、「中程度」であると考えられ得る。中程度の化学パルプ化は、約900~約1,100のHファクターによって実施され得る。タバコ投入物の化学パルプ化は、強塩基が約40重量%を超える場合、「過酷」であると考えられ得る。過酷な化学パルプ化は、例えば、約1,100を超えるHファクターによって実施され得る。以下により詳細に論じられるように、多様な他のHファクター、温度及び時間が、他の実施形態において利用され得る。
【0075】
化学パルプ化中の条件は、リグニン除去の速度をさらに上昇させるように構成され得る。例えば、タバコ投入物を化学パルプ化するステップは、いくつかの実施形態において、加圧容器中で実施され得る。陽圧は、タバコ投入物への化学物質の浸透を増加することができる。また、操作122に図示されるように、方法は、タバコ投入物を撹拌するステップをさらに含むことができる。タバコ投入物を撹拌するステップは、タバコ投入物の各ピースの、化学パルプ化において利用される化学物質への曝露を、増加させ、かつ均等化させることができる。化学パルプ化中に利用され得る容器の実施形態の例は、回転地球釜、内部回転歯を有するフィンガーリアクタ、固定バッチ蒸解釜、ホットブロー固定バッチ蒸解釜、オービタル地球釜及び回転蒸解釜を含む。したがって、タバコ投入物の化学パルプ化は、リグニン含有量を減少させるための多様なパラメータを用いて、多様な構成で実施され得る。
【0076】
化学パルプ化の後、方法は、操作160においてタバコパルプを漂白し、溶解グレードパルプを生成するステップも含むことができる。しかし、いくつかの実施形態において、化学パルプ化操作の後かつ漂白操作160の前に、1つ以上の操作が実施され得る。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、操作142において水をタバコパルプと混合し、スラリーを形成するステップ及び操作144においてスラリーをフィルタで濾過し、タバコパルプの一部を除去するステップも含むことができる。いくつかの実施形態において、液体の固体材料に対する比率は、約1:10~約10:1、好ましくは6:1の範囲である。操作142において水をタバコパルプと混合し、スラリーを形成するステップ及び操作144においてスラリーを濾過するステップは、タバコパルプから髄、柔組織及び組織のような非セルロース材料のいくつかを除去するために実施される。いくつかの実施形態において、濾過操作144において除去されるタバコパルプの部分は、濾過する前のタバコパルプの重量の約5%を超える、約15%を超える、約25%を超える(100%を上限とする)若しくは約30%未満(0%を下限とする)又は約0%~約30%である重量を規定することができる。
【0077】
次に、漂白操作160は、セルロースを損傷することなく、化学パルプ化後に残る残留非セルロース材料を除去するために実施され得る。漂白剤によりタバコを処理するための例示的なプロセスは、例えば、すべて参照により本明細書に組み込まれる、Daniels, Jr.の米国特許第787,611号;Oelenheinzの米国特許第1,086,306号;Dellingの米国特許第1,437,095号;Rosenhochの米国特許第1,757,477号;Hawkinsonの米国特許第2,122,421号;Baierの米国特許第2,148,147号;Baierの米国特許第2,170,107号;Baierの米国特許第2,274,649号;Pratsらの米国特許第2,770,239号;Rosenの米国特許第3,612,065号;Rosenの米国特許第3,851,653号;Rosenの米国特許第3,889,689号;Rainerの米国特許第4,143,666号;Campbellの米国特許第4,194,514号;Rainerらの米国特許第4,366,824号;Rainerらの米国特許第4,388,933号;及びSchmekelらの米国特許第4,641,667号;並びにGiolvasのPCT WO 96/31255において論じられている。
【0078】
上に記されるように、一実施形態において、タバコパルプを漂白するステップは、操作162における二酸化塩素溶液によるタバコパルプの塩素化及び操作166におけるタバコパルプの苛性抽出(例えば、水酸化ナトリウムのような強塩基による)を含むことができる。タバコ投入物を漂白するため、他の実施形態において、多様な代替及び追加の化学物質も利用され得る。例えば、二酸化塩素溶液は、硫酸をさらに含むことができる。他の代替又は追加の漂白化学物質は、塩素酸ナトリウム、塩素、過酸化水素、酸素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸、塩酸、リン酸、酢酸、硝酸及び亜硫酸塩を含む。塩素、塩素酸又は亜塩素酸を利用するいくつかの実施形態において、これらの化学物質を酸性条件に曝露することによって、二酸化塩素が生成され得る。
【0079】
また、方法は、操作162における二酸化塩素溶液によるタバコパルプの塩素化中に、操作164においてタバコパルプを撹拌するステップを含むことができる。タバコパルプを撹拌するステップは、タバコパルプの二酸化塩素溶液へのより均一な曝露を確保することによって、タバコパルプを脱リグニン化するステップにおける二酸化塩素溶液の有効性を増加することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、タバコパルプを漂白するステップは規則的な順序を有することができるが、これは1つ以上の追加の塩素化又は苛性抽出の段階を含むことができる。例えば、
図1に図示されるように、操作162における二酸化塩素溶液によるタバコパルプの塩素化及び操作166におけるタバコパルプの苛性抽出の後、方法は、操作168における二酸化塩素溶液(例えば、第2の二酸化塩素溶液)によるタバコパルプの塩素化も含むことができる。この点において、操作166における苛性抽出の後に実施される場合、さらなる脱リグニン化をもたらすため、2つ以上の塩素化操作が用いられてよい。前の操作164について上に記載されるように、追加の塩素化操作のそれぞれは、亜塩素酸ナトリウムのインサイチュ酸性化及びタバコパルプを撹拌するステップを含むことができる。多様な塩素化操作(例えば、162及び168)において利用される塩素化溶液の成分及び濃度は、同一である又は互いに異なることができる。
【0081】
多様な漂白操作は、以下のように省略形において記載され得る。しかし、これらの漂白操作は、例示的な目的のみのために記載されることが理解されるべきである。この点において、漂白操作は下に記載されるものとは異なってもよい。
【0082】
「D」-リグニン及び他の酸化性材料を攻撃及び断片化するため、酸性条件下で二酸化塩素(ClO2)による処理。原材料にClO2溶液を直接添加する代わりに、亜塩素酸ナトリウムをまずスラリーに混合し、インサイチュでClO2ガスを遊離させるための酸性化を続けることができる。実施形態の一例において、D段階は、約0.5時間~約3.5時間、若しくは約0.5時間~約3時間、若しくは約1時間~約2時間(又は少なくとも0.5時間、若しくは少なくとも1.0時間)の間にわたって起こり得る。D段階は、約40℃~約100℃、若しくは約60℃~約80℃(又は少なくとも40℃、若しくは少なくとも60℃)の範囲の温度において実施され得る。ClO2は、タバコパルプの重量の約3%~約30%の範囲の重量を規定することができる。塩素化の開始時のClO2の量は、以下の式:0.21×溶解パルプ混合物について測定した初期カッパー価、によって決定される。「カッパー価」は、二酸化塩素(D)段階において、流入するパルプのカッパー価(リグニン含有量)にかかわらず、同量の漂白を確実に行うために用いられる。すなわち、流入カッパー価が増加する場合、漂白操作は、より多くの二酸化塩素が適用されることを必要とする。いくつかの実施形態において、D段階は、硫酸(H2SO4)のような強酸へのタバコパルプの曝露も含むことができる。硫酸は、タバコパルプの重量の約0.5%~約20%の範囲の重量を規定することができる。いくつかの実施形態において、用いられる硫酸の量は、溶解パルプ混合物の4を下回る値にpHを調整するために必要とする量である。溶解パルプ混合物のpHは酸性であり、例えば、pHは約6を下回り、好ましくは約4を下回る。D段階における混合物の濃度は、約1%~約20%又は約5~約15%の範囲であってよい。この点において、「濃度」は、反応混合物中の固体の割合について用いられる製紙業界の用語である。例えば、6%の濃度において漂白することは、94グラムの水及びこれに混合された化学物質毎に、6乾燥グラムの処理済み材料を用いる。
【0083】
「E」-酸化中に生成させた小~中程度のサイズのリグニン断片を可溶化するための、水酸化ナトリウム(NaOH)のような強塩基による処理。リグニン断片は通常、酸性条件下では可溶性ではなく、そのため低pHにおいて行われる大多数の漂白段階は、E段階の後に続けてよい。実施形態の一例において、E段階は、約30分~約120分、若しくは約60分~約75分(又は少なくとも30分、若しくは少なくとも60分)の範囲の時間にわたって起こり得る。E段階は、約50℃~約90℃、若しくは約60℃~約85℃、若しくは約65℃~約75℃(又は少なくとも50、若しくは少なくとも60℃、若しくは少なくとも75℃)の範囲の温度において実施され得る。NaOHは、タバコパルプの重量の約1.5%~約10%の範囲の重量を規定することができる。E段階における混合物の濃度は、約1%~約10%の範囲であってよい。
【0084】
「E(P)」-白色度の上昇及びリグニン除去のために過酸化水素(H2O2)又は他の酸化剤が添加されるE段階。E(P)段階は、上に記載されるD段階と実質的に同様であってよい。さらに、H2O2は、タバコパルプの約0.2%~約10%の範囲の重量を規定することができる。他の例となる酸化剤は、酸素、オゾン、次亜塩素酸塩及び過酸化物を含む。
【0085】
方法は、操作170において二酸化塩素溶液の残存する部分を水酸化ナトリウムによって中和するステップを含む、多様な他の操作を含むことができる。一実施形態において、操作170において二酸化塩素溶液の残存する部分を中和するステップは、操作162におけるタバコパルプの塩素化後及び操作168におけるタバコパルプの塩素化後に実施され得る。別の実施形態において、
図1に図示されるように、操作170において二酸化塩素溶液の残存する部分を中和するステップは、漂白操作の全体が完了した後に実施され得る。二酸化塩素溶液の残存する部分を中和するステップは、タバコパルプの調製を終結させることができ、最終的なタバコパルプ材料を収集するため、過剰な溶媒は除去され得る。いくつかの実施形態において、操作170は、二酸化塩素以外の他の漂白剤の中和を含んでよい。
【0086】
典型的には、タバコ投入物を蒸解するときの平均蒸解収率は、蒸解する前のタバコ投入物の重量を基準として、約25~約50%、又は約30~約45%の範囲である。例えば、いくつかの実施形態において、タバコ根を用いた平均蒸解収率は約44%である。他の実施形態において、タバコ茎を用いた平均蒸解収率は約34%である。他の実施形態において、タバコ繊維についての平均蒸解収率は約31%である。
【0087】
漂白する前のタバコパルプに残存するリグニンの量は、「カッパー価」試験によって決定することができ、これは試験される物質の過マンガン酸カリウムによる酸化に続く、反応液の滴定からなり、適用された過マンガン酸をどの程度消費することができたかを確認するものである。リグニンはこの方法によって容易に酸化されることができるが、炭水化物(例えば、ヘミセルロース及びセルロース)は酸化されることができない。理想的には、「純粋な」セルロース又は炭水化物材料は、1未満のカッパー価である必要がある。いくつかの実施形態において、タバコパルプのカッパー価は、約10~約22、好ましくは約16~約20の範囲である。いくつかの実施形態において、タバコ根から加工されたパルプのカッパー価は、約17~約20の範囲である。いくつかの実施形態において、タバコ茎から加工されたパルプのカッパー価は、約16~約21の範囲である。いくつかの実施形態において、タバコ繊維から生成させたパルプのカッパー価は、約10~約16の範囲である。
【0088】
パルプ化プロセス中に消費されるEA添加(液中に存在するアルカリ性構成成分の濃度)は、パルプ化プロセスの前のEA添加の量を基準として、約15%~約25%又は約17%~約23%の範囲である。処理前に存在するEA添加は、約22~約28%の範囲である。
【0089】
いくつかの実施形態において、タバコパルプにおける不良品含有率は、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満であった。いくつかの実施形態において、タバコ根から加工されたパルプにおける不良品含有率は、0.5%未満であった。いくつかの実施形態において、タバコ繊維から加工されたパルプにおける不良品含有率は、5%未満であった。他の実施形態において、タバコ茎から加工されたパルプにおける不良品含有率の量は、0.5%未満であった。
【0090】
化学パルプ化後のタバコパルプの漂白は、D-E(P)-Dの順序が関わることができる。換言すれば、パルプを漂白するステップは、操作162においてタバコパルプを塩素化するステップ(例えば、約60℃において約0.5時間、約9%の濃度及びClO2による約3.5のpHによって実施される)、操作166においてタバコパルプを苛性的に抽出するステップ(例えば、約75℃において約1時間、約0.3%過酸化物、1.5%NaOH及び0.1%エプソム塩によって実施される)、並びに操作168においてタバコをもう一度塩素化し、中和170が続くステップ(例えば、pHを約10へ調整するためのNaOHによる中和を含み、約70℃において約3時間、9%の濃度によって実施される)が関わることができる。
【0091】
この点において、比較的穏やかな化学的及び温度条件によってタバコ投入物を化学パルプ化するステップ、濾過操作144中に比較的大部分のタバコを排除するステップ、及びタバコパルプを漂白するステップは、タバコパルプ材料の生成における使用に好適な生成物をもたらすことができる。しかし、強塩基の量、Hファクター、除去されるタバコ投入物の部分及び多様な他の要因は、いくつかの実施形態において上に記載される条件によって変化し得る。
【0092】
さらに、本明細書において、化学パルプ化は一般にある例示的パラメータについて記載されるが、他の実施形態において、他のパラメータ及び化学物質が利用されてよい。例えば、いくつかの実施形態において、伝統的にクラフトプロセスと関連するパラメータ及び化学物質が利用されてよい。したがって、本明細書において提供される開示は、例示的な目的のみのために提供されることが理解されるべきである。
【0093】
次に、複数の機械的プロセスが、セルロースナノ材料(例えば、セルロースミクロフィブリル(CMF)、セルロースナノフィブリル(CNF)、セルロースナノ結晶(CNC))をタバコパルプから単離するために用いられることができる。これらの機械的プロセスはフィブリル化プロセスと呼ばれることが多く、フィブリル化プロセスはタバコパルプを、選択される機械的プロセス次第で、これらのセルロースナノ材料の任意のものに変換することができる。これらの機械的プロセスは、精砕/高圧均質化、ミクロ流動化、粉砕及び凍結粉砕を含む。これらの機械的プロセスを用いることに加えて、1つ以上の機械的プロセスを用いる前に、パルプが多様な前処理法にも曝露されてよい。
【0094】
前処理法は、化学的、酵素的、機械的プロセス又はこれらの組合せを含み、粉砕、均質化又はミクロ流動化のような高エネルギー機械的プロセスを用いて、パルプをナノセルロースベース材料にさらに加工するために必要となるエネルギーの量を減少させるため、主として、望ましくない物質をナノセルロース含有パルプから除去するために利用される。
【0095】
例えば、化学的前処理法は、TEMPO((2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-1-イル)オキシル)酸化、過酸化物酸化、カルボキシメチル化及びアセチル化のような表面セルロース修飾を含むだけでなく、ナノ材料生成をより困難にするパルプ中の望ましくない成分を除去するための、酸又は塩基によるタバコパルプの処理も含む。これらの表面修飾は、セルロースの表面上に、アルデヒド、カルボキシレート及びアセチレートのような荷電基を導入し、これによってセルロースの表面に存在するヒドロキシル基中の水素結合を破壊する。セルロース材料の表面に存在する水素結合が少なければ、このとき、これらの結合を破壊し、均質化を促すためには、より少ない機械的エネルギーが必要となる。
【0096】
いくつかの実施形態において、化学的前処理法は、酸加水分解法を用いてパルプを処理することを含む。硫酸又は塩酸のような酸を用いた制御された酸加水分解は、天然セルロースのアモルファス区画を加水分解し、遠心分離及び洗浄することによって酸溶液から結晶部分を回収し、棒状の高度に結晶性のセルロースナノ結晶(CNC)粒子を得ることができる。結晶性粒子の寸法は主として、天然セルロースの供給源材料、加水分解時間及び温度に依存する。
【0097】
いくつかの実施形態において、化学的前処理法は、繊維中のリグニン構造を分断し、リグニンと炭水化物の間の構造的連結を分離することを支援するために、パルプをアルカリ性処理に曝露することを含む。タバコパルプの穏やかなアルカリ処理による精製は、リグニン、ペクチン及びヘミセルロースの可溶化をもたらす。
【0098】
酵素的前処理法が適用される場合、パルプは、エンドグルカナーゼ及び/又はヘミセルラーゼに曝露される。エンドグルカナーゼはセルロース中の多糖鎖をセルロースのより短い多糖鎖に分割することができる酵素であり、一方ヘミセルラーゼはヘミセルロースを分解することができる酵素の群である。いくつかの実施形態において、タバコパルプはエンドグルカナーゼによって処理される。いくつかの実施形態において、タバコパルプはヘミセルラーゼによって処理される。
【0099】
機械的前処理法は、機械的剪断、粉砕、叩解、精砕及び均質化を含む。これらの方法は、他の前処理法(例えば、化学的又は酵素的前処理法)と組み合わせられることが多い。
【0100】
本開示のある実施形態は前処理法の使用を対象とし、これは機械的プロセスの前にタバコパルプに適用される。いくつかの実施形態において、前処理法は、化学的、酵素的、機械的方法又はこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、タバコパルプは化学的前処理に続いて、機械的前処理によって処理される。例えば、タバコパルプはTEMPOに続いて、均質化(例えば、ミクロ流動化装置)によって処理され得る。いくつかの実施形態において、タバコパルプは酵素的前処理に続いて、機械的前処理によって処理される。例えば、タバコパルプはエンドグルカナーゼに続いて、均質化(例えば、ミクロ流動化装置)によって処理され得る。他の実施形態において、タバコパルプは機械的前処理に続いて、化学的及び/又は酵素的前処理によって処理される。いくつかの実施形態において、タバコパルプはいずれの前処理法にも曝露されない。
【0101】
タバコパルプは、以下の機械的プロセス、すなわち、精砕/高圧均質化、ミクロ流動化、粉砕及び凍結粉砕又はこれらの組合せを含むプロセスの少なくとも1つによって処理され得る。いくつかの実施形態において、上に述べられた前処理法の後にタバコパルプに適用することができる、少なくとも1つの機械的プロセス。
【0102】
いくつかの実施形態において、機械的プロセスは、タバコパルプをフィブリル化するために適用される、精砕/高圧均質化又はミクロ流動化である。この処理は、任意選択的な前精砕に続いて、希釈されたセルロース懸濁液が、例えば、精砕機のローターと固定ディスクの間の隙間に押し込まれる、高圧均質化からなる。繊維を繰り返される周期的な摩擦応力に供するため、ディスク表面は溝が掘られ、バーと噛み合う。均質化中、精砕されたセルロース繊維は高圧で汲み上げられ、バネで負荷を与えたバルブアセンブリに供給される。このバルブが高速で開閉するとき、繊維は剪断及び衝撃力を伴う大きな圧力低下に曝露される。この力の組合せは、セルロース繊維の高度なミクロフィブリル化を促進する。典型的には、フィブリル化の程度を増加するため、手順は複数回繰り返される。各通過の後、粒子はより小さく、より均一な直径になる。均質化装置の代替は、タバコパルプが、例えば、高圧下の細いz型チャンバを通過する、ミクロ流動化装置である。いくつかの実施形態において、このようなz型チャンバの内径は、約100~約500μm、好ましくは約200~約400μmの範囲である。いくつかの実施形態において、圧力は約100bar~約2500bar、好ましくは1000bar~約2200barの範囲である。いくつかの実施形態において、フィブリル化ステップ中の圧力は、少なくとも約100bar、又は少なくとも約500bar、又は少なくとも約1000barである。剪断速度は、セルロースナノ繊維を生成させるために適用される場合、100,000,000s-1の大きさとすることができる。フィブリル化ステップにおいて用いられるタバコパルプスラリーの希釈レベルは多様であってよいが、典型的には、約5%未満、しばしば約4%未満、又は約3%未満、又は約2%未満の濃度を有するタバコパルプ懸濁液のような高度な希釈であり、好ましい範囲は約1~約5%、又は約1~約3%である。
【0103】
いくつかの実施形態において、機械的プロセスは粉砕である。タバコパルプ中に存在するセルロース繊維は、業務用グラインダー(例えば、増幸グラインダー)の固定砥石及び回転砥石の間を通過したパルプ懸濁液からフィブリル化され得る。このプロセスにおいて、細胞壁構造は、砥石の剪断力によって破砕される。パルプは、固定砥石と回転砥石の間を通過する。いくつかの実施形態において、回転砥石は、約500rpm~約2000rpm、好ましくは約1000rpm~約1750rpmで回転する。多層構造中の細胞壁を構成するナノ繊維は、このように個別化され、パルプから分離される。典型的には、約1~約3回の通過後、繊維の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%はナノサイズ繊維に変化する(100%を上限とする)が、繊維の少なくとも1つの次元は、約1ミクロン未満又は約100nm未満(0を下限とする)である。約5回の通過後、繊維の少なくとも50%はナノサイズ繊維となる。
【0104】
いくつかの実施形態において、機械的プロセスは凍結粉砕である。凍結粉砕は、ナノ繊維を生成するための代替的な方法であり、液体窒素を用いて繊維が凍結された後、高剪断力が適用される。典型的には、凍結した繊維が高衝撃力下にある場合、氷晶が細胞壁に圧力をかけ、繊維を破裂させてミクロフィブリルを遊離させる。凍結粉砕された繊維はその後、高圧フィブリル化の前に、破砕機を用いて水懸濁液中に均一に分散され得る。このプロセス順序は、複数の原材料から生じるセルロース材料に適用可能である。
【0105】
本開示のある実施形態は、タバコパルプからセルロースナノ材料を単離するための、機械的プロセスの使用を対象とする。いくつかの実施形態において、タバコパルプは、精砕/高圧均質化、ミクロ流動化、粉砕又は凍結粉砕を含む機械的プロセスの1つ以上に供される。いくつかの実施形態において、タバコパルプを処理するため、1つの機械的プロセスのみが用いられる。ある実施形態において、機械的プロセスはミクロ流動化を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、タバコパルプは、1回以上の通過を含む1つ以上の機械的プロセスによって処理され、通過の回数は、約1~約30回の通過、好ましくは約1~約10回の通過、より好ましくは約1~約6回の通過(すなわち、30回以下、又は10回以下、又は5回以下の通過)の範囲である。例えば、タバコパルプは、5回以下の通過を含む機械的プロセスに供される。別の例において、タバコパルプは3回以下の通過を含む機械的プロセスに供される。別の例において、タバコパルプは、1回のみの通過を含む機械的プロセスに供される。
【0107】
いくつかの実施形態において、タバコパルプは機械的プロセスの前に、前処理法によって処理される。いくつかの実施形態において、タバコパルプは機械的プロセスの前に、機械的前処理によって処理される。例えば、タバコパルプは、機械的プロセス(例えば、ミクロ流動化装置)の前に、粉砕プロセス(例えば、増幸グラインダー)によって処理される。
【0108】
いくつかの実施形態において、タバコパルプは1つ以上の前処理法及び1つ以上の機械的プロセスによって処理され、通過の総数は、約2~約30回、好ましくは約2~約15回、より好ましくは約2~約8回の範囲である。
【0109】
いくつかの実施形態において、前処理法、機械的プロセス、又はこれらの組合せの1つ以上を用いてタバコパルプから単離された、ナノ材料を含有するセルロースは、セルロースミクロフィブリル(CMF)、セルロースナノフィブリル(CNF)又はセルロースナノ結晶(CNC)を含む。一実施形態において、タバコパルプから単離されたセルロースナノ材料は、CNFである。
【0110】
いくつかの実施形態において、前の実施形態において記載される、1つ以上の前処理法及び/又は機械的プロセスを用いてタバコパルプから単離されたセルロースナノ材料は、用いられるタバコパルプの初期重量を基準として、少なくとも50重量%、又は少なくとも60、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、少なくとも90重量%まで、又は少なくとも95重量%の収率において得られる。
【0111】
いくつかの実施形態において、タバコパルプから単離されたセルロースナノ材料は、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の純度を有する。用語「純度」は、望ましくない副生成物の存在及び/又は不存在の程度を表す。純度の程度が高くなるほど、存在する望ましくない副生成物の量が少なくなる。
【0112】
タバコナノセルロースベースのフィルムを作製する方法
いくつかの実施形態において、セルロースナノ材料はさらに加工され、ナノセルロースベースのフィルムを生成することができる。本明細書に記載されるタバコナノセルロースベースのフィルムは、一般に、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Salminenらの米国特許出願公開第2014/0255688号に記載されている方法により調製される。セルロースナノフィブリルの薄く密なフィルムの調製はまず、支持体材料上のCNFの接着及び広がりを制御するため、調整された表面エネルギーを有する支持体材料上で行われる。いくつかの実施形態において、フィルムは、セルロースナノフィブリルの懸濁液として支持体材料の表面上に直接、塗布され、塗り拡げられ、これによってCNFはフィルムを形成する。形成されたCNFフィルムは、支持体から除去されることができ、CNFのみの薄いフィルムを提供する。いくつかの実施形態において、支持体材料は例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらの組合せからなる。支持体材料の表面の活性化は、プラズマ又はコロナ処理を用いることを含んでよい。
【0113】
フィルムは、支持体材料上のCNFの接着及び広がりを制御することによって、このようなフィルム支持体材料上に調製される。いくつかの実施形態において、フィルムは、支持体材料から取り外し可能かつ除去可能である。接着(及び広がり)は、一般に、広げられるCNF及び用いられる支持体材料の種類の、表面エネルギーの機能である。いくつかの実施形態において、CNF及び/又は支持体のいずれかは、支持体材料へのCNFの接着を最適化するように修飾されなければならない。
【0114】
例えば、
図4に図示されるように、方法60は、支持体の表面を前処理するステップ(例えば、プラズマ若しくはコロナ処理)及び/又はCNFの表面を修飾するステップ(例えば、シリル化)を含むことができ、それぞれステップ61及び62である。CNFの支持体への付着は、セルロース表面のヒドロキシル基のような、CNF及び支持体両方の表面の反応性基によって起こるため、親水性CNFと一緒に用いられる場合、支持体の親水性の性質を向上させるような(例えば、プラズマ若しくはコロナ処理を用いた親水化)、又は疎水性CNFと一緒に用いる場合、支持体表面へ疎水性基を付加するような、CNF及び支持体両方へのさらなる反応性基の付加は、必然的に接着を向上させる。
【0115】
例えば、CNF及び支持体の適合する組合せは、CNFを十分に広がらせ、接着させる表面エネルギーを有する支持体層を選択することを含む。これらの例は、疎水性支持体及び疎水化CNF(例えば、ポリスチレン/PE/PP+シリル化CNF)並びに親水性支持体及び親水性CNF(例えば、セルロース誘導体支持体+非修飾CNF)である。CNF及び支持体の適合する組合せについての別の例は、CNFとの適合性を強化するため、例えば、コロナ/プラズマ処理を用いて調整され得る表面エネルギーを有する支持体層を選択することを含む(例えば、プラズマ/コロナ処理PE+非修飾CNF)。
【0116】
いくつかの実施形態において、セルロースナノフィブリルは水又は別の溶媒中に分散され得るが、CNFは、特に非修飾の、疎水化された、又は、反応性基を導入することによって修飾されたCNFのような、それ以外で化学的に修飾されたCNFから選択されるCNFは、ゲルを形成する。例えば、CNFは、表面ヒドロキシル基の酸化又はシリル化によって修飾され得る。セルロースナノフィブリルの懸濁液は、溶媒又は、水及び有機溶媒の約1:5~約5:1混合物の範囲の、水及び有機溶媒の混合物からなる溶媒混合物を用いて形成される。有機溶媒は、疎水性/極性に基づいて、すなわち、CNF又は修飾CNFの極性に本質的に調和する極性を有する溶媒又は溶媒混合物を提供することによって、選択される。いくつかの実施形態において、懸濁液は、水及び極性有機溶媒(例えば、アルコール)からなる溶媒混合物を用いて形成される。
【0117】
いくつかの実施形態において、セルロースナノフィブリル及び支持体材料の両方は、フィルムの形成の前に、好ましくは1つ以上のO、S又はN原子又は1つ以上の二重結合を含有する官能基から選択され、最も好適にはヒドロキシル及びカルボキシル基から選択される、電荷を帯びた、疎水性又は極性官能基の付加によって化学的に修飾されてよい。
【0118】
他の実施形態において、CNFの表面は、化学的グラフト化技法又はポリマーグラフト化技法を用いて修飾される。例えば、いくつかの実施形態において、CNFの表面は、アセチル化法によって修飾されている。カルボン酸、酸無水物又は酸塩化物(例えば、塩化アセチル又は塩化パルミトイル)は、CNFの表面ヒドロキシル基とともにエステル官能基を生成させるための反応剤として用いられる。CNF表面修飾の他の例は、CNFの表面のヒドロキシル基のシリル化(例えば、クロロシラン)を含む。さらなる例は、フルオロ界面活性剤(例えば、パーフルオロオクタデカン酸)、カチオン性/アニオン性界面活性剤(例えば、N-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)並びに高分子電解質溶液(例えば、ポリ-DADMAC、PEI及びPAH)のような、界面活性剤又は高分子電解質吸着剤の使用を含む。いくつかの実施形態において、CNF表面は、第2のポリマー又は小分子とBFCのヒドロキシル基のグラフト化によって修飾され、共有結合を形成してよい。表面CNFの付加的修飾は、TEMPO酸化、カルボキシメチル化及び当技術分野において公知の他のもの(Missoumら、Nanofibrillated Cellulose surface Modifications: A Review,Materials、2013、6、1745-1766;Dufresneら、Nanocellulose: a new ageless bio nanomaterial、Materials Today、16(6)、2013、220-227;Pengら、Chemistry and Applications of nanocrystalline cellulose and its derivatives:A nanotechnology perspective、Canadian Journal of Chemical Engineering、9999、2011、1-16)のような化学的修飾を含む。
【0119】
支持体上への塗布は、ステップ63において、例えば、ロッド、ブレード又はロールコーティング法によって行われ得る。支持体上に塗布されるセルロースナノフィブリルのフィルムの厚さは、好ましくは約50~約150μmの範囲である。支持体の厚さは、本質的なパラメータではない。しかし、一般に、用いられる支持体の厚さは、約150μm~約2000μmの範囲である。
【0120】
一般に、フィルム懸濁液は支持体上に塗布された後、制御された蒸発によって、好ましくはヒドロキシル基が自己集合を通じて有利な速度において相互作用することができ、均一なフィルム形成をもたらす点まで最適化された高温(例えば、40℃を超える)において、ステップ64において乾燥される。ある実施形態において、フィルム懸濁液は、約25~約60℃の範囲の温度、好ましくは室温のような、60℃以下である温度において乾燥され、これによってフィルム材料は有利な速度において固化する。したがって、濾過による脱水によって時間がかかることはない。それと同時に、支持体材料との十分な接着は、乾燥時のCNFフィルムの収縮を防止する。
【0121】
フィルムは、用いる前若しくはステップ65においてさらに加工する前に支持体から取り外されてよい、又はフィルムは支持体にまだ付着したまま、層状構造として用いられるか、若しくはさらに加工されてよい。取り外しは、例えば、溶媒又は溶媒混合物を用いて、最も好適にはメタノールを用いて、フィルムを再湿潤化することによって行われ得る。
【0122】
乾燥したフィルムは、制御された多孔性を有するより薄くより密なフィルム構造を得るため、ステップ66におけるものとして、好ましくはホットプレスによって、好ましくは約60~約95℃の温度において、最も好適には約80℃の温度において、さらに加圧されてよい。加圧するステップは、以上のようにフィルム上で、又はフィルムが支持体に付着したままのいずれかで行われ得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、好適な支持体、制御された乾燥及び任意選択的なホットプレスの組合せは、CNFフィルムの多孔性を制御することを可能にし、それによって、とりわけ良好な酸素バリア特性を有する、透明で強い、有利な厚さのフィルムが製造され得る。いくつかの実施形態において、タバコベースのナノセルロースフィルムは、150℃における焼結を必要とするインクジェット条件に、色の変化を呈することなく曝露され得る。
【0124】
使用の方法
上に記されるように、いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料は、フィルム形成用途において用いられる。これらのフィルムは、例えば、食品産業における包装のために必要とされることが多い、効率的な酸素透過性及び水蒸気透過性を提供することができる。これらのナノセルロースベースのフィルムはまた、例えば、インクジェット印刷のような、電子機器における用途においても用いられ得る。いくつかの実施形態において、このようなナノセルロースベースのフィルムを調製するために用いられるタバコ由来ナノセルロース材料は、セルロースナノフィブリル(CNF)、セルロースナノ結晶(CNC)、セルロースミクロフィブリル(CMF)又はこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムを調製するために用いられるタバコ由来ナノセルロース材料は、CNFを含む。いくつかの実施形態において、CNFの表面は非修飾である、すなわち、天然状態のままである。他の実施形態において、CNFの表面は、アルカン、脂肪族、芳香族、酸、エステル、シラン及びこれらの組合せから選択される1つ以上の官能基を含有するように修飾される。
【0125】
いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムの引張強度は、約120Mpaを超える、好ましくは約130Mpaを超える、又は約140Mpaを超える(例えば、約140~約180Mpa、又は約150~約170Mpaの範囲)。いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムの伸び率は、約10~約15%、又は約11~約14%の範囲のように、少なくとも約11%、又は少なくとも約12%である。いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムの引張弾性率は、約4~約6Gpaの範囲のように、少なくとも約4Gpaである。
【0126】
いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムは半透明である。いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムは透明である。例えば、フィルムは、約200nm~約1000nmの範囲から選択される波長において、約60%~約100%、若しくは約80%~約100%(又は少なくとも60%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも90%)の範囲の光透過率を有する。
【0127】
いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムの酸素透過度は、23℃の温度及び0%の相対湿度(RH)において0.2cc・mm/m2・日未満又は0.1cc・mm/m2・日未満又は0.05cc・mm/m2・日未満であり、23℃の温度及び80%の相対湿度(RH)において約20cc・mm/m2・日未満又は約10cc・mm/m2・日未満又は約5cc・mm/m2・日未満である。
【0128】
いくつかの実施形態において、ナノセルロースベースのフィルムの水蒸気透過度は、23℃の温度及び50%の相対湿度(RH)において、約10~約35g・mm/m2・日の範囲のように、典型的には、約30g・mm/m2・日未満又は約25g・mm/m2・日未満である。
【0129】
タバコ由来セルロースナノ材料は、フィルム形成用途に加えて、限定されるものではないが、建築材料(例えば、表面コーティング、壁板における添加剤、断熱材(例えば、エアロゲル)、水分保持助剤、フィルム形成剤、レオロジー制御剤、靭性及び耐久性を向上させるセメント及びコンクリート)、化粧品/医薬品(例えば、乳化剤、水和剤、レオロジー調整剤、フィルム形成剤、高水分結合容量、生体医学装置において用いられる)、コーティング/塗料(例えば、レオロジー調整剤、仕上がり及び耐久性を改善する、塗料の保存期限を延長させる)、食品包装(例えば、蒸気バリア、新鮮さの指標として機能する、増粘剤又は安定剤として機能する、水結合剤、ゲル化剤)、板紙/包装(例えば、強度対重量比を改善する、より軽量の最終製品を生成させる、乾燥/湿潤強度を改善する)、複合体(例えば、ポリマー強化剤、石油系添加剤に代替する、生分解性を改善する、石油系プラスチックの熱及び機械的安定性を向上する、掘削流体に用いられる)、衛生/パーソナルケア製品(例えば、流体吸収性の向上)、並びに電子工学(例えば、部品/コンポーネント、コーティング、フィルム)のような、多数の産業分野において用いられ得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、タバコ由来ナノセルロース材料はレオロジー調整剤である。増粘剤又は粘性剤と通例呼ばれるレオロジー調整剤は、配合物の粘度を変えることができ、それ故、多くの製品中に存在し得る。配合物の粘度の変化は、典型的には、特定の配合物の使用及び/又は操作の容易さを改善するために実行される。以上のように、レオロジー調整剤の用途は、限定されるものではないが、食品製品(例えば、テクスチャ、味及び保存期限を制御するため)、医薬品(例えば、適用の容易さ、用量、薬品成分の効能、保存期限を改善するため)、化粧品/パーソナルケア(例えば、適用の容易さ及び感触を改善するため、増粘剤)及び建築(例えば、塗料の適当な流動、定着、レベリングを確保するため、保存期限の増加)を含むいろいろな産業セクタに適用される。
【0131】
いくつかの実施形態において、レオロジー調整剤として用いられるタバコ由来ナノセルロース材料は、セルロースナノフィブリル(CNF)、セルロースナノ結晶(CNC)、セルロースミクロフィブリル(CMF)又はこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、レオロジー調整剤として用いられるタバコ由来ナノセルロース材料は、セルロースナノ結晶(CNC)を含む。いくつかの実施形態において、CNCの表面は非修飾である、すなわち、天然状態のままである。他の実施形態において、CNCの表面は、1つ以上の官能基を含有するように修飾される。例えば、いくつかの実施形態において、CNCの表面は、アセチル化法によって修飾されている。カルボン酸、酸無水物又は酸塩化物(例えば、塩化アセチル又は塩化パルミトイル)は、CNCの表面ヒドロキシル基とともにエステル官能基を生じるための反応剤として用いられる。CNC表面修飾の他の例は、CNCの表面のヒドロキシル基のシリル化(例えば、クロロシラン)、酸化(例えば、TEMPO酸化)又はカルボキシメチル化を含む。いくつかの実施形態において、CNCの表面は、カルボキシル化ナノセルロース結晶(cCNC)にするため、表面ヒドロキシ基の少なくとも一部のカルボキシル化によって修飾されている。
【0132】
いくつかの実施形態において、CNCの表面の修飾は、CNCのレオロジー特性を変える。例えば、修飾CNC(例えば、cCNC)の溶液は、典型的には、非修飾CNCを含有する溶液と比較して粘性が高い。
【0133】
本開示のいくつかの態様は、溶液又は懸濁液の粘性を改質することを対象とし、これは事実上、会合性、結合性及び/又はチキソトロピー性であることができる。いくつかの実施形態において、(カルボキシル化ナノセルロース結晶(cCNC)のような)化学的に修飾されたセルロースナノ結晶は、溶液又は懸濁液に添加され、溶液又は懸濁液の粘性を増加する。いくつかの実施形態において、溶液又は懸濁液の粘性は、事実上、会合性、結合性及び/又はチキソトロピー性を有し得るレオロジー調整剤をすでに含み、cCNCによって改質されている。いくつかの実施形態において、cCNCは、セルロースエーテル、多糖類及び粘土から選択される少なくとも1つのレオロジー調整剤を含有する溶液又は懸濁液に添加される。いくつかの実施形態において、セルロースエーテルベースのレオロジー調整剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジエチルアミノエチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒプロメロース又はこれらの組合せから選択され得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、レオロジー調整剤の濃度は、溶液又は懸濁液の総重量を基準として、約0.25重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約2重量%で変化し得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、溶液又は懸濁液は、セルロースエーテルベースのレオロジー調整剤及びcCNCを、約1:5~約5:1、好ましくは約1:2~約2:1の比率で含む。いくつかの実施形態において、レオロジー調整剤は、CMC、HEC、ポリ(エチレン)オキシド(PEO)及びベントナイトから選択される。
【0136】
いくつかの実施形態において、1つ以上のレオロジー調整剤を含む溶液又は懸濁液へのcCNCの添加は、cCNCを含まない溶液/懸濁液と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、溶液/懸濁液の全体的な粘度を増加させた。
【0137】
いくつかの実施形態において、粘度は擬似塑性挙動を呈し、1(1/s)を下回る剪断速度における粘度は、10(1/s)を超える剪断速度において測定される粘度と比較して高い。いくつかの実施形態において、溶液又は懸濁液の粘度は、溶液の総重量を基準にして約0.5から約1重量%の範囲の濃度を有したセルロースエーテルおよびcCNCの両方を独立に含んでおり、少なくとも1×10-1(Pa・s)である。
【0138】
いくつかの実施形態において、cCNC及び1つ以上のレオロジー調整剤を含む溶液又は懸濁液への塩(例えば、塩化ナトリウム)の添加は、溶液又は懸濁液のレオロジー特性を著しく変えるものではない。
【0139】
実験
本発明は、本発明を説明するために記述される以下の例によってより詳細に説明されるが、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。例に記される試験プロトコルは、本明細書において提供される特性範囲に関係する試験プロトコルであると理解される。
【0140】
<実施例1: タバコパルプを作製する方法>
タバコパルプは、参照により全体が組み込まれる、Byrd, Jrらの米国特許出願公開第2016/0208440号及びByrd, Jrらの米国特許第9,339,058号に開示されている方法によって調製される。すべてのパルプ化機器は、典型的にはステンレス鋼製である。蒸解装置は、円筒形圧力容器又は球形圧力容器のいずれかである。大きな粒子を除去するために圧力スクリーンが用いられる場合があり、微細繊維を除去するためにサイドヒル大気スクリーンが用いられる場合がある。
【0141】
漂白機器は大気円筒形タンクであり、典型的には、塩素を含有する漂白剤に曝露される機器であるため、ハステロイ製又はガラス繊維強化プラスチック製である。典型的には、ステンレス鋼は塩素フリー漂白剤について用いられる。この種類の洗浄器は、機器から漂白剤を除去するために用いられ得るが、同様に蒸解装置を洗浄するために一般に用いられる。これらの構成要素はいずれも、限定されるものではないが、Andritz、Metso、GL&V、Black Clawson及びBeloitのような、幅広い製造業者によって作製され得る。
【0142】
より詳細には、多様なタバコパルプは、出発材料としてタバコ根、タバコ茎及びタバコ繊維を用いて形成される。出発材料は、必要に応じて脱髄される。ここで、茎及び繊維原材料は、蒸解する前に、脱髄、すなわち非繊維材料の除去を必要とした。脱髄は、タバコサンプルを冷水中に浸漬し、茎のための48メッシュワイヤ及び繊維のための200メッシュワイヤを用いて脱水することによって行われた。多量の材料損失を避けるため、微細に切断された繊維原材料のためには、より詰まったワイヤが用いられた。脱髄収率を測定した。脱髄原材料及び元の根の化学組成、金属及び灰含有量を分析した。本明細書において用いられた分析方法は表1に提示される。
【0143】
【0144】
蒸解条件は、パルプにおける低不良品含有率(高精選収率)及び黒液中約8~10g NaOH/lの残留アルカリ含有量を目標として最適化された。これらの予備試験は、6×1リットルオートクレーブを装備した空気加熱蒸解釜において行った。変数は、温度(150及び160℃)、Hファクター(400~900)及びEA(有効アルカリ)添加(22~28%)であった。フィブリル化試験のためのパルプは、15l回転蒸解釜を用いてクラフト蒸解された。予備試験の結果に基づき、Hファクターは600、温度は150℃となるように選択した。EA添加は、根については24%、茎については26%、繊維については28%であった。木材に対する液比率は5であり、硫化度は40%であった。必要となる有効アルカリ添加は、ユーカリ及びカバノキのものより、明らかに多かった。蒸解後、パルプは洗浄され、スクリーンされた。パルプ収率、カッパー価、粘度、白色度及び残留アルカリを測定した。化学組成は、根パルプから分析した。
【0145】
タバコパルプは、漂白順序D-E(P)-Dを用いて漂白された。D段階は、18l空気浴リアクタ内で実行した。二酸化塩素を充填する前に、イオウ酸又はNaOHをpH調整に用いた。反応時間の後、反応温度におけるパルプから、最終pHを測定した。漂白濾液の残留塩素含有量を決定した。40lデルフィリアクタにおいてアルカリ抽出段階(EP又はE)を行った。根及び茎には、白色度を改善するために過酸化物が用いられた。繊維の場合、パルプ粘度が非常に低かったため、過酸化物の添加は省略された。反応時間の後、反応温度におけるパルプから、最終pHを測定した。漂白濾液の残留過酸化水素含有量を決定した。すべての漂白段階後に、パルプは脱イオン水によって複数回洗浄され、最後の漂白段階後、pHレベルを均一化し、残留二酸化塩素を消失させるため、SO2によってパルプpHは4.5に調整された。パルプ粘度、カッパー価、白色度及び炭水化物組成は、すべてのパルプから分析した。漂白条件及び結果を示す。
【0146】
【0147】
要約すれば、表2は、パルプを漂白するために用いられた順序D-E(P)-Dによる二酸化塩素漂白を示す。最初のD段階は9%の濃度、60℃、30分とし、段階の開始時にH2SO4によってpHを約3.5に調整する。ClO2の量は0.21×初期カッパー価である。E(P)段階においては、75℃の温度及び60分の時間において、1.5%のNaOH、0.1%エプソム塩及び0.3%過酸化物が用いられる。第2のD1段階の条件は、9%の濃度、70℃、180分であり、段階の開始時にNaOHによってpHを約10に調整する。
【0148】
結果
タバコ原材料の特性評価
2つのバッチの原材料が、蒸解試験のために供給された。化学的特性評価は、第1のバッチからなされた。脱髄収率は、両方のバッチの後に測定された。平均収率は、茎では88.1%、繊維では91.3%であった。タバコ原材料の化学組成は、
図11に提示される。根の組成の約84%が特定された。茎ではその量は77%であり、繊維ではわずか69%であった。合計量55.5%と、セルロース及びヘミセルロース(キシラン+GGM)の含有率が最も高いことにより、化学組成に基づいて、根は最も好適な原材料である。繊維は、灰分及びFe、Mn、Siのような有害金属の含有量が最も高かった(表3)。根及び茎のCl及びK含有量は、通常の木材種より明らかに高い。これは、クラフトパルプ化における化学物質の回収面において、例えば、回収ボイラーの腐食の増加などの問題をもたらす場合がある。
【0149】
【0150】
クラフト蒸解
蒸解条件は、低不良品含有率、高精選収率及び8~10g NaOH/lの残留アルカリ濃度をもたらすように選択した。平均蒸解カッパー価は、茎及び根では約18であり、繊維では約14であった。繊維は低いカッパー価(リグニン含有量)まで蒸解されたが、不良品含有率は、茎及び根のカッパー価と比較して明らかに高く、4%対0.5%であった(
図12)。繊維の脱水及び扱いは複雑であった。異なる茎及び繊維のバッチは脱リグニン能において、根のサンプルより大きなばらつきがあった。
【0151】
平均蒸解収率及びEA消費は、根では44.2%及び19EA%、茎では34%収率及び21EA%、繊維では30.7%及び23.5EA%であった。収率は、バーチクラフトパルプと比較してほぼ10~20%単位低かった(精選収率53%及びEA消費17.6%、Kangasら、2014)
予備試験において、同EA添加の24%による茎の残留EA濃度は6.5g NaOH/lであり、目標値の8~10g NaOH/lよりわずかに低かった。(小規模試験において)根を用いると、残留濃度は10.5g NaOH/lであるため、合わせた濃度は許容されるレベル内であり得る。残留濃度が低すぎると、溶解リグニンの縮合が起こって繊維表面に戻る場合があり、これは漂白化学物質の消費を増加する。実際の微粉砕プロセスにおいて、茎及び根材料は一緒に蒸解され得るが、茎の化学物質消費の多さのため、より良好な結果は別々の蒸解釜によって得られる。バッチ型の蒸解釜では原材料は別々に蒸解され、蒸解後、合わせた繊維ラインによって加工が続けられる。
【0152】
漂白
タバコパルプの漂白において、順序D-E(P)-Dによる二酸化塩素漂白を用いた。繊維の場合、アルカリ性抽出段階における過酸化物の使用は、蒸解後の粘度がかなり低いため、除外した。繊維の漂白は困難であった。同量の二酸化塩素(40kg/tp)の場合、白色度はほぼ30%単位低かった(
図13)。他のパルプが89%の白色度を得たとき、繊維の最終白色度はわずか44%であった(表4)。漂白収率は、原材料供給源次第で、90~95%であった。最高収率は、根によって達成された。
【0153】
【0154】
最高白色度までの二酸化塩素消費は、茎は根と比較して、58.5kg/tp対56.4kg/tpとわずかに高かった(表5)。DEDの順序によって漂白した研究所のバーチパルプと比較すると、根及び茎の漂白度は、カッパー価の減少及び白色度の増加当たりの二酸化塩素消費の点から、より良好でさえあった。漂白の結果に基づき、根はパルプ化について、最も興味深い原材料である。
【0155】
【0156】
パルプの特性評価
炭水化物組成(
図14)及び繊維分布(表6)は、漂白されたパルプから分析した。根及び茎において、パルプの約80%はセルロースであり、約20%は主としてキシランであるヘミセルロースである。繊維パルプは、5%を超える炭水化物以外の成分を含む。漂白後、元の原材料から計算される最高炭水化物収率(約42%)は根から得られ、最低は繊維から得た約24%あった(
図14)。茎は、最も大きい数平均繊維長及び長さ加重繊維長を有していた。繊維は、最も大量の微細繊維材料及び管型の繊維を有していた。そのキンク指数は最低であった。蒸解及び/又は漂白後の同じ材料と比較した、多様な出発材料の化学組成の比較は
図15において説明される。
【0157】
【0158】
これらの結果に基づき、タバコ根は、最も有望なパルプ化のための原材料であり、ナノセルロース材料の調製のための繊維供給源であった。
【0159】
<実施例2: ナノセルロース材料の調製>
セルロースナノフィブリル(CNF)は、実施例において説明されるように生成された、非乾燥タバコ廃棄物パルプを用いて生成される。繊維スラリーをまず、高剪断Diaf溶解機を用いて700rpmにおいて10分間、1.7%の濃度において浸漬し、分散させる。懸濁液は、グラインダー(スーパマスコロイダーMKZA10-15J、増幸産業、日本)中、1500rpmにおいて予備精砕する。予備精砕された繊維懸濁液を、ミクロ流動化装置M-7115-30に供給する。1回目の通過は、500μm及び200μmの直径を有するチャンバを通過する。次の4回の通過は、500μm及び100μmのチャンバを通過する。フィブリル化されたサンプルは、1、3及び5回の通過後に生成され、操作圧は1800barである。具体的なエネルギー消費は、4(1回通過)~25kWh/kg(5回通過)の間で変化する。繊維スラリーは、機械的処理の後、粘性ゲルとなり、1.6~1.8%の最終固体含有率を有する。
【0160】
比較のため、ブルックフィールドレオメータRVDV-IIIによって、10rpmにおいてベーンスピンドルを用い、1.5%の固定濃度における見かけ粘度を測定する。光学顕微鏡を用いて画像化し、画像を
図2に提示する。画像に示されるように、フィブリル化された茎、根及び繊維サンプル中にはわずかなフィブリル束がまだ存在しているが、残留繊維の量は無視できる量である。
【0161】
粘度データは
図3に提示される。タバコ由来ヒドロゲルは、8000~15000mPa・sの見かけ粘度値を有する参照用の木材ベースサンプルと比較して、相対的に高い見かけ粘度を有する。特に根及び茎パルプ製のCNFは、1回及び3回のフィブリル化サイクルを経た後、24000~32000mPa・sという格別に高い粘度を有する。最高の見かけ粘度39000mPa・sは、5回のフィブリル化サイクルの後、原材料がNa型の(例えば、パルプがナトリウム型にイオン交換された)根パルプである場合に測定される。パルプ化プロセスの一部として漂白されていないタバコナノセルロース材料は、木材ベース材料と同様の粘度を呈するが、パルプ化プロセスの一部として漂白された、根及び茎材料から調製されたナノセルロース材料の粘度を大きく下回る。タバコ繊維から形成されたパルプも、木材ベース材料と同様の粘度を呈するが、根及び茎材料から調製された大多数のナノセルロース材料の粘度を大きく下回る。これらの材料の用途は、限定されるものではないが、安定剤、レオロジー調整剤、強度増強剤又はフィルム形成剤を含む。
【0162】
<実施例3: ナノセルロースベースのフィルムの調製及び応用試験>
フィルムは、VTT Technical Research Centre of Finland Ltdから入手可能な、参照により全体が本明細書に組み込まれる、SalminenらのInternational Application No.2014/0255688に記載されている、SUTCO表面処理技術を用いて作製される。プロセスは、十分な粘度を有するCNF懸濁液が移動プラスチックウェブ上にキャストされる、溶液キャスト型プロセスである。プラスチックは、プラズマ装置を用いて、所定のパワーレベルによって前処理する。的確なレベルはハンドシートスケールにおいて、試験の前に試験する。
【0163】
CNF含有懸濁液は、高剪断ミキサー内でフィルム作製の前に撹拌する。60分の混合の後、混合容器に添加剤(ソルビトール)が添加され、さらに60分、混合が続けられる。混合後、真空下で5分間混合することによって、懸濁液から空気が除去される。これにより、CNF懸濁液が支持体ウェブ上にキャストされるときに、確実に気泡が存在しなくなる。混合後、フィルム作製のために必要な量の懸濁液が、プラスチックウェブ基材上にキャストされ、フィルムを形成する。形成されたフィルムは、必要な時間、周囲条件において乾燥された後、基材から取り外される。任意選択的に、プレス又はカレンダー加工を用いて、平滑化されたCNFフィルムを調製することができる。
【0164】
フィルムの引張特性は、Lloyd引張試験機を用いて、100N負荷セルによって測定し、従来の木材ベース材料及びタバコ由来微結晶セルロース原料と比較する。引張特性についての試験方法は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、改正SCN P 38:80 Paper and board-Determination of tensile strength-procedure;Vartiainenら、「Hydrophobization of cellophane and cellulose nanofibrils films by supercritical state carbon dioxide impregnation with walnut oil」、Biorefinery、vol.31、no.(4)、2016に準拠して決定した。試験中のクロスヘッド速度は2mm/分であり、サンプル幅は15mmである。ゲージ長は20mmである。タバコ根ベースのフィルム(ミクロ流動化装置を5回通過後)についての結果は、
図5~7において説明される。図示される結果によれば、タバコ根CNFは優れた引張強度をもたらす。強度レベルは、VTT Technical Research Centre of Finland Ltdにより生成される広葉樹CNFの引張強度より50%超高い。木材ベースCMF及びタバコ廃棄物微結晶セルロース(MCC)の両方は、非常に低いレベルの引張強度を呈した。これらのサンプルの強度は、典型的なコピー用紙の縦方向における強度よりも低かった。MCC中の不純物が、おそらくフィルムの弱さの原因となった。しかし、フィルムは約5%固体においてキャストされており、このことはエネルギー消費を考慮すれば、乾燥フェイズにおいて利点を与える。
【0165】
基本的に、タバコ根CNF及び広葉樹CNFの伸長値(伸び率)を比較するとき、差異を指摘することはできなかった。タバコ廃棄物MCCは、部分的には結晶性構造のため、比較的小さい伸び率を有する。しかし、フィルムは大きな伸び率を許容できなかったため、結果は低い引張強度に影響されている。木材ベースCMFも比較的良好な性能であったが、タバコ根CNFよりわずかに劣っていた。
【0166】
タバコ根CNFの弾性率は許容可能であり、広葉樹CNFと比較して高い。低品質のフィルムにもかかわらず、タバコ廃棄物MCCも標準的なレベルであった。
【0167】
タバコ根CNF及び広葉樹CNFの両方は、優れた酸素バリア特性を有するが(
図8及び9)、これは参照により全体が本明細書に組み込まれる、ASTM D3985;Vartiainenら、「Hydrophobization of cellophane and cellulose nanofibrils films by supercritical state carbon dioxide impregnation with walnut oil」、Biorefinery、vol.31、no.(4)、2016によって測定された。MCCフィルムは高い酸素透過性を有し、酸素バリアフィルムとみなすことはできない。木材ベースCMF製のフィルムも、特に高湿度において、他のサンプルに匹敵する。木材ベースCMFの機械的特性の低さは、酸素バリア特性に著しい影響は及ぼさないようであった。
【0168】
水蒸気透過度測定において、測定は、参照により全体を本明細書に組み込む、改定ASTM-E-96B手順、「wet cup method」;Vartiainenら、「Hydrophobization of cellophane and cellulose nanofibrils films by supercritical state carbon dioxide impregnation with walnut oil」、Biorefinery、vol.31、no.(4)、2016を用いて、重量測定法により決定された。タバコ根CNF及び広葉樹CNF材料から作製されたサンプルフィルムは、再び最良のサンプルである。タバコ廃棄物MCCフィルムは、木材ベースCMFフィルムより良好な水蒸気バリアである(
図10)。
【0169】
フィルムはまた、銀インク及び適当なプリンタを用いて印刷された。印刷されたパターンはアンテナ及び導線であった。アンテナは、EKRA E2スクリーン及びステンシルプリンタを用いて印刷される。印刷ペーストは、アサヒLS411AWであった。硬化は、130℃において10分間実行する。印刷メッシュは、ステンレス鋼SD200、87ワイヤ/cm、ワイヤ直径40μm及び角度22.5である。硬化後の印刷層の厚さは、約10μmである。これらのフィルム上のアンテナの抵抗レベルは、PET基板に匹敵する。
【0170】
インクジェット印刷された導体配線は、PiXDRO LP50を用いて、3つのフィルムサンプル、タバコ根ベースのCNF(ミクロ流動化装置を5回通過)並びに2つの比較用サンプル、本明細書において参照される広葉樹CNF及び本明細書において参照されるタバコ廃棄物MCCに行った。プリントヘッドは、公称液滴体積は4ピコリットルのコニカミノルタKM512SHXである。インクは、ANP(Advanced Nano Products)DGP 40LT 15C銀ナノ粒子インクである。印刷解像度は720dpiであったが、印刷層の数は2層である。印刷は、より平滑なフィルム基板の裏面に実行する。基板テーブルの温度は60℃に設定した。後処理はオーブン乾燥によって行われ、オーブン焼結条件は150℃において30分である。焼結後、タバコ根CNF製のフィルムは150℃における焼結中に色は変化しなかったが、他のものは褐色になったことがわかる。焼結後、LEDランプが印刷対象物に手作業で取り付けられ、電池を導線に取り付けることによって、機能することが試験された。