IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティアマの特許一覧

特許7464689複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法
<>
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図1
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図2
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図3
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図4
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図5
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図6
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図7
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図8
  • 特許-複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】複数のガラス容器の壁の厚さを測定するための設備及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G01B11/06 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022501189
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 FR2020051257
(87)【国際公開番号】W WO2021009456
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】1907877
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509083201
【氏名又は名称】ティアマ
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ルコント,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ソラン,ピエール-イヴ
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-205827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0076353(US,A1)
【文献】特表2005-534904(JP,A)
【文献】特開2002-214047(JP,A)
【文献】特表2003-525435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形キャビティから出てくる複数の高温ガラス容器(2)の厚さを測定するための方法であって、
前記容器の互いに正反対側にある第1の側(I)及び第2の側(II)から前記容器(2)から放出された放射を測定し、それにより、前記第1の側に沿って配置された前記容器の第1の壁(21)及び前記第2の側に沿って配置された前記容器の正反対側の第2の壁(22)から放出された放射を計算に入れることを選択することと、
2,800nmから4,000nmの範囲における第1のスペクトルバンド(λ1)で、かつ第2のスペクトルバンド(λ2)で前記容器(2)から放出された放射を測定することを選択することと、ここで、これらの2つのスペクトルバンドは別個のものであって、かつ、
一方では、前記ガラスによる放射の吸収率が、前記複数の容器の温度に対して前記2つのスペクトルバンドで異なり、
他方では、少なくとも前記第1のスペクトルバンド(λ1)で、前記ガラスによる放射の吸収率が、
前記第1の壁に由来する、前記容器の第1の側(I)から測定された放射が、前記第1の壁(21)から放出された放射と、前記第2の壁(22)から放出されるとともに吸収を伴いつつ前記第1の壁(21)を透過した放射との合計であり、合成された放射は、前記第1及び第2の壁(21、22)の厚さ及び温度に依存し、
前記第2の壁(22)に由来する、前記容器の第2の側(II)から測定された放射が、前記第2の壁(22)から放出された放射と、前記第1の壁(21)から放出されるとともに吸収を伴いつつ前記第2の壁(22)を透過した放射との合計であり、合成された放射は、前記第1及び第2の壁(21、22)の厚さ及び温度に依存するようになっている、
ように選択され、
前記容器の前記第1の側(I)から、前記第1のスペクトルバンド(λ1)及び前記第2のスペクトルバンド(λ2)における前記第1の壁(21)に由来する放射の強度と、前記容器の前記第2の側(II)から、前記第1のスペクトルバンド(λ1)及び前記第2のスペクトルバンド(λ2)における前記第2の壁(22)に由来する放射の強度とを同時に測定することと、
前記第1及び第2のスペクトルバンドにおける前記第1の壁に由来する放射の強度の測定値と、前記第1及び第2のスペクトルバンドにおける前記第2の壁に由来する放射の強度の測定値とから、前記第1のスペクトルバンドにおける放射の強度において、一方の壁から放出された放射と、吸収を伴いつつ通過しかつ他方の正反対側の壁に由来する放射とを計算に入れることによって、少なくとも前記第1の壁の厚さ及び前記第2の壁(22)の厚さを特定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第2のスペクトルバンド(λ2)において、前記ガラスによる放射の吸収率は、前記第1のスペクトルバンド(λ1)の放射の吸収率とは異なっており、一方では、前記第1の壁(21)に由来する、前記容器の前記第1の側(I)から測定された放射は、前記第1の壁(21)から放出された放射と、前記第2の壁(22)から放出されかつ前記第1の壁(22)を透過した放射との合計であり、他方では、前記第2の壁(22)に由来する、前記容器の前記第2の側から測定された放射は、前記第2の壁(22)から放出された放射と、前記第1の壁(21)から放出されかつ前記第2の壁を透過した放射との合計であるようになっており、合成された放射は、前記第1及び第2の壁の厚さ及び前記第1及び第2の壁の温度に依存する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の壁(21)の温度(T1)及び前記第2の壁(22)の温度はまた、前記第1及び第2のスペクトルバンドにおける前記第1の壁(21)の放射の強度の測定値と、前記第1及び第2のスペクトルバンドにおける前記第2の壁(22)の放射の強度の測定値とから、前記第1のスペクトルバンドにおける放射の強度において、吸収を伴いつつ透過しかつ反対側に位置する壁に由来する放射を計算に入れることによって特定される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
3,000nmから4,000nmの範囲の前記第1のスペクトルバンド(λ1)において前記容器から放出された放射を測定することが選択される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のスペクトルバンド(λ2)において、前記ガラスによる放射の吸収率は、一方では、前記第1の壁(21)に由来する、前記容器の前記第1の側(I)から測定された放射が、前記第1の壁(21)の表面からのみ放出された放射であり、他方では、前記第2の壁(22)に由来する、前記容器の前記第2の側(II)から測定された放射が、前記第2の壁(22)の表面からのみ放出された放射であるようになっており、前記放射は温度にのみ依存する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のスペクトルバンド(λ2)における前記第1の壁(21)の放射の強度の測定値と、前記第2のスペクトルバンド(λ2)における前記第2の壁(22)の放射の強度の測定値とのそれぞれから前記第1の壁の温度及び前記第2の壁の温度(T1、T2)が特定される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1,100nmから2,600nmの範囲の前記第2のスペクトルバンド(λ2)において前記容器から放出された放射を測定することが選択される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
4,500nmを超える範囲、好ましくは5,000nmを超える範囲の前記第2のスペクトルバンド(λ2)において前記容器から放出された放射を測定することが選択される、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記放射は、少なくとも2つのバイスペクトル赤外線カメラ(11、12-13、14)を使用して同時に測定され、ここで、各カメラは、各容器について、その観察視野に位置する前記容器の壁の放射の少なくとも2つの赤外線画像を提供する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
成形キャビティ(4)から出てきて並進経路(F)に沿って移動する複数の高温ガラス容器(2)の壁の厚さを測定するための設備であって、
前記容器の第1の側(I)に位置する前記容器(2)の第1の壁(21)及び正反対側の第2の側に位置する前記容器の第2の壁(22)から放出された放射を計算に入れるために、前記複数の容器の前記経路(F)の両側に互いに正反対側に配置された少なくとも第1(11)及び第2(12)のバイスペクトル赤外線カメラと、ここで、各カメラ(11、12)は、2,800nmから4,000nmの範囲の第1のスペクトルバンド(λ1)で、かつ第2のスペクトルバンド(λ2)で、その観測視野に位置する前記容器の壁の放射の2つの赤外線画像を提供し、これらの2つのスペクトルバンドは、別個のものであり、かつ、
一方では、前記ガラスによる放射の吸収率が、前記複数の容器の温度に対して前記2つのスペクトルバンド(λ1、λ2)で異なり、
他方では、少なくとも前記第1のスペクトルバンド(λ1)で、前記ガラスによる放射の吸収率が、
前記第1の壁(21)に由来する、前記容器の第1の側から測定された放射が、前記第1の壁(21)から放出された放射と、前記第2の壁(22)から放出されるとともに吸収を伴いつつ前記第1の壁(21)を透過した放射との合計であり、合成された放射は、前記第1及び第2の壁の厚さ及び温度に依存し、
前記第2の壁(22)に由来する、前記容器の第2の側(II)から測定された放射が、前記第2の壁(22)から放出された放射と、前記第1の壁(21)から放出されるとともに吸収を伴いつつ前記第2の壁(22)を透過した放射との合計であり、合成された放射は、前記第1及び第2の壁(21、22)の厚さ及び温度に依存するようになっている、
ように選択され、
前記第1のカメラ(11)で、前記第1のスペクトルバンド(λ1)及び前記第2のスペクトルバンド(λ2)における前記第1の壁(21)の放射の強度を測定する2つの画像と、前記第2のカメラ(12)で、前記第1のスペクトルバンド(λ1)及び前記第2のスペクトルバンド(λ2)における前記第2の壁(22)の放射の強度を測定する2つの画像とを同時に取得するように、前記バイスペクトル赤外線カメラ(11、12)の動作を駆動するためのシステム(15)と、
前記第1(λ1)のスペクトルバンドにおける前記第1の壁(21)に由来する放射の強度の測定値と、前記第2(λ2)のスペクトルバンドにおける前記第1の壁(21)に由来する放射の強度の測定値とをそれぞれ提供する2つの画像と、前記第1及び第2のスペクトルバンドにおける前記第2の壁の前記2つの画像とを分析することにより、前記第1のスペクトルバンドにおける放射の強度において、一方の壁から放出された放射と、吸収を伴いつつ透過しかつ反対側に位置する壁に由来する放射とを計算に入れることによって、少なくとも前記第1の壁(21)の厚さ及び前記第2の壁(22)の厚さを特定するように構成されたコンピュータ(16)と、
を含む設備。
【請求項11】
バイスペクトラル赤外線カメラ(11-14)を含むことを特徴とし、前記バイスペクトラル赤外線カメラは、
ビームスプリッタ(20)と、ここで、その下流で、光線は2つの別個の下流ビームに分離され、
前記ビームスプリッタ(20)の下流で、1つ又は2つの画像平面に設置された2つの別個のセンサ(21、22)又は2つのセンサ部分と、ここで、それぞれは前記2つの別個の下流ビームのうちの1つを受け取り、第1のセンサ又は第1のセンサ部分は、前記第1のスペクトルバンドにおいて第1の放射ビームを受け取り、第2のセンサ又は第2のセンサ部分は、前記第2のスペクトルバンドにおいて第2の放射ビームを受け取り、
各画像平面上の光学的共役により、前記第1のスペクトルバンド及び前記第2のスペクトルバンドのそれぞれにおいて前記容器の光学画像(K1、K2)を形成するレンズ(23)によって前記スプリッタ(20)の上流又は下流に形作られている第1及び第2のビームと、
前記第1のスペクトルバンド及び前記第2のスペクトルバンドをそれぞれ選択する1つ又は複数の光学フィルタ(25、26)によってフィルタリングされている前記第1及び/又は前記第2のビームと、
を含む、
請求項10に記載の設備。
【請求項12】
各バイスペクトル赤外線カメラは、
センサ平面上の光学的共役により、容器が通過する視野の光学画像(K3)を形成するレンズ(23)と、
2つの別個のリニアセンサ部分(41、42)と、ここで、前記2つのリニアセンサ部分は、レンズ(23)の視野での容器の移動中に、前記2つのリニアセンサ部分のそれぞれを用いて走査画像が生成されるように配置された垂直である自身の支持線(s1、s2)を有し、
前記第1のスペクトルバンドにおける第1の放射ビーム部分(31)を受け取る前記第1のリニアセンサ部分(41)と、
前記第2のスペクトルバンドにおける第2の放射ビーム部分(32)を受け取る前記第2のセンサ部分(42)と、
前記第1のスペクトルバンド及び前記第2のスペクトルバンドを選択するために、前記光ビームの経路上に配置された少なくとも1つの光学フィルタ(45)と、
を備える、
請求項10に記載の設備。
【請求項13】
前記光学フィルタ(25、26、45)は、2,800nmから4,000nmの範囲における前記第1のスペクトルバンド、及び4,500nmを超える範囲、好ましくは5,000nmを超える範囲の第2のスペクトルバンドを選択する、
請求項11又は12に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の半透明又は透明の容器又は中空物体の光学検査の技術分野に関する。
【0002】
本発明の目的は、より具体的には、製造機械又は成形機械から出てくる高温状態の複数のガラスボトル又はフラスコなどの複数の物体の高速光学検査に関する。そのため、本発明は、製造設備の高温部門における複数の物体の検査を目的とする。
【背景技術】
【0003】
従来、おおよそ1,600℃の炉で溶融されたガラスは、その後、「フロントコア」チャネルと呼ばれる複数のチャネルを通じて複数の成形機械の上に運ばれる。上記設備はまた、重力によって各ブランク金型に落下する溶融ガラスのゴブ又は可鍛性ガラスの滴の分配装置を備えている。そのため、この装置は、ガラスの滴を形成し、形成されたガラスの滴は、搬送ガイドと呼ばれる複数のガイドのセットによって、様々な独立した成形セクションの方向に分配される。成形機械ISと呼ばれる機械は、異なる複数のセクションから構成され、それぞれのセクションは、ブランク金型が搭載された少なくとも1つのブランクキャビティと、同じ数の仕上げキャビティとを備え、各仕上げキャビティは、高温で容器に最終形状を与える仕上げ型を受け取る。セクションの1つ、2つ、3つ、又は4つのブランクキャビティに、ゴブと呼ばれる1、2、3、又は4滴の高温ガラス(おおよそ1,200℃)が所定の順で次々に投入される。成形機械の出口で、まだ高温の、一般に300℃から600℃の、複数の容器は、それらのリングでピックアップされ、搬送コンベヤ上で列をなすように移送される。容器同士の間隔は様々であり、成形機械によって、容器同士の中心距離と容器の直径とに応じて定められる。搬送コンベヤは、表面処理用のスプレーフード及びアニーリングレールと呼ばれるアニーリング炉などの様々な処理ステーションにおいて複数の容器を連続的に移動させる。
【0004】
成形機械で成形欠陥をできるだけ早く補正できるように、様々な処理ステーションの前の成形機械の出口で、成形欠陥をできるだけ早く特定することは興味深いことに見える。そのため、ドリフトの際に、可能な限り迅速に成形方法を補正するために、成形方法の設定に直接関連している、特に複数の容器の寸法偏差又は変形を検出することが有利である。
【0005】
そのような複数の容器の品質を制御することにより、それらの美的性質に影響を与える可能性のある、あるいはさらに悪いことには、後続のユーザに対して実際に危険をなす可能性のある欠陥を有する容器を排除することができる。そのため、機械的強度に影響を与える可能性のある一部の区域で厚さが小さすぎる、又は厚さに違いがある容器を排除するために、そのような容器の厚さ分布の質を制御する必要があるように見える。
【0006】
実際に、厚さは、容器の部分によって高すぎたり低すぎたりと、ばらつきがありうるため、厚さ分布の質は非常に重要なパラメータである。生産された複数の製品は潜在的に壊れやすいので、この厚さの差異は問題である。加えて、製造業者らは軽量化されかつ薄型化された複数のガラス容器を製造する可能性を模索しているため、ガラスを適切に分配する方法を知る必要がある。ガラス分布に影響を与える製造パラメータは公知でかつ多数あるので、それらを制御する必要がある。公知の例として言及されるが、これらには、特に以下のパラメータが含まれる。
i)速度ベクトルと、滴がブランク金型に落下したときの滴の中心とを含む投入パラメータ、
ii)滴における熱の分布、
iii)金型の冷却。
【0007】
製造パラメータを正しく決定するには、成形直後の複数の容器におけるガラスの分布を知ることが必要である。
【0008】
厚さ分布を知ることは、容器の異なる点での厚さを絶対的に知ることを意味するか、あるいは、容器の異なる領域間の厚さの偏差を相対的に知ることを意味することを理解されたい。例えば、ボトルは下から上に向かって、底部、ヒールによって底部に接続された本体、次にショルダーによって本体に接続されたネック、そして最後にストッパ、キャップ又は蓋による充填及び密閉のためのリングで構成されている。ガラス分布の不良は、例えば、底部の過剰なガラス、及びショルダーの薄いガラスとして、垂直方向で観察されうる。水平分布の不良は、例えば、ショルダーのレベルでは、軸に対して一方の側におけるガラスが反対側よりも多いこととして観察されうる。ガラスの厚さの最小値及び最大値だけでなく、ガラスの分布及び垂直方向又は水平方向の偏差、そして薄い区域又は厚い区域の位置のこの分析は、上記方法を適切に補正するために重要である。
【0009】
本技術分野において、成形機械の出口における複数の容器の検査について、ガラス分布の測定を目的として、高温状態の複数の容器から放出された赤外線放射を使用する様々な解決策が提案されている。
【0010】
例えば、特許US 3 535 522には、成形機械の出口においてそのような容器から放出された赤外線放射を測定することを含む、容器のガラス厚さを測定するための方法が記載されている。赤外線放射の測定は、容器の温度を所定の値に均質化するために、容器を炉に入れたままで実行される。次に、まだ炉内にある容器を、赤外線センサの光軸の前で、垂直軸を中心に回転させる。赤外線センサは、一回転の間に、2.06から2.5μの範囲で又は3.56から4.06μの範囲で、容器の壁を通過する放射を測定する。炉によって温度が均質化されることが予想されるので、感知された放射のばらつきは、厚さのばらつきに直接起因する。この技術では、複数の容器の連続的な制御は可能ではなく、容器の変形の原因となる可能性のある緩速をもたらすような複数の容器の取り扱いが必要となる。
【0011】
特許EP 0 643 297には、成形機械から出てくる複数の物体から放出された赤外線放射に感度を持つセンサを含む複数のガラス製品を製造するための方法の分析及び診断を実行するための装置が記載されている。このシステムには、ガラスの分布に存在する偏差及び/又は容器に熱応力の存在をもたらす原因を特定するために、放射を数学的な参照モデルと比較するデジタル処理装置も含まれている。その上、この特許には、数学的参照モデルを得るための手段の示唆はない。
【0012】
したがって、このような赤外線測定装置は、製造機械の(進行方向における)下流、つまり、装置に最も近い最後のセクションの下流で、排出コンベヤ上を移動する複数の容器を監視するために設置されるということを考慮に入れる必要がある。製造機械の他方の端は、最も上流のセクションである。複数の容器から放出された放射に関して、それは、材料の分布だけでなく温度の分布を含む、多くのパラメータに依存する。上記セクションと赤外線測定装置との間を複数の容器が移動する間、温度移行は、温度の「自発的均質化」と呼ばれることもある熱平衡の方向に沿って、容器の異なる部分間における放射及び伝導、及び、「冷却」と呼ばれる放射及び対流による地球冷却によって発生する。複数の容器の熱状態、すなわち型から取り出されたときの容器の材料における温度分布を、以下では「初期条件」と呼ぶ。したがって、検査時の複数の容器の熱状態は、一方では初期条件に依存し、他方では搬送中の自発的均質化及び冷却に依存するが、それはもちろん、成形セクションから検査ステーションまでの容器の移動距離に応じて異なる。
【0013】
実際のところ、この先行特許によれば、熱応力又は厚さの偏差に起因する放射のばらつきは検出されるが、応力又は厚さの値を特定することは不可能であり、放射のばらつきが熱応力又は材料の厚さの偏差に関連しているかどうかを特定することすらできない。したがって、赤外線放射の測定が、以下の非限定的な例としてリストされているもののような多数のパラメータに依存する限りにおいて、そのような技術を実装することは実際には不可能であるように見える。
【0014】
高温の複数の容器から放出された赤外線放射の強度は、シュテファン・ボルツマンの法則:E=sT4に従って温度に大きく依存する。上記式において、E=物体から放出された放射の総量(Wm-2)、s=シュテファン・ボルツマン定数=5.67×l0-8Wm-2-4、及びT=ケルビン(K)単位の温度である。
【0015】
高温の複数の容器から放出された赤外線放射の強度は、例えばサイズ、色、形状、及びガラスの組成など、これらの高温の複数の容器の特徴に依存する。
【0016】
赤外線センサと金型の出口との間の距離は、各高温容器の冷却時間が異なるように金型ごとに異なるので、複数の高温の容器は、赤外線センサの前を通過するときに異なる温度を有していることを考慮する必要がある。言い換えると、上記センサによって測定された赤外線放射の強度は、製造金型のおおもと、より具体的には上記センサに対するこの金型の位置に依存する。
【0017】
成形機械の出口において、複数の容器はコンベヤ上にスライド可能に置かれる。これにより、赤外線測定センサに対するコンベヤ上の複数の容器の位置を異ならせて、測定される測定値を変更することができる。
【0018】
成形温度条件及び複数の容器の搬送中の相互関係は、生産条件(起動条件、入射条件など)及び環境(昼/夜、天候、気流)に応じて様々である可能性がある。
【0019】
EP 0 643 297に従って使用される放射は透過性の放射であるため、感知された放射は合成された2つの壁の放射である。
【0020】
上記から判断すると、多くのパラメータが赤外線放射に影響を与えることになるため、そのような特許は、高温で複数の容器のガラス厚さの分布を測定するための解決策を提供していない。この特許は単に、放射の偏差が厚さに起因することをオペレータが確認するという条件下で、ガラス分布の偏差の検出を教示している。厚さ又は熱応力の相対値のみが、複数の容器の異なる領域間又は異なる複数の容器間で、かつ短期間にわたって、推定される。この特許では、測定値がいつ測定されたかにかかわらず、複数の容器のガラス厚さを絶対値で測定することはできない。
【0021】
1つの変形例によれば、この特許は、ガラスの偏り及び/又は分布の情報を得るために、複数のガラス製品の画像を生成するための光学センサの実装を提供する。上記情報は、赤外線放射に感度を持つセンサから得られたデータと比較されて、これにより、基準を調節することができる。なお、この基準に従って、赤外線放射に感度を持つセンサによって提供されたデータが分析される。この変形例の実装により、使用される基準の補正が施される一方で、この特許に記載され、上記で示された方法に固有の欠点を克服することはできない。また、この解決策では、相対値でも絶対値でもガラスの厚さを測定することはできず、その結果、広い区域にわたる厚さの分布、ましてや容器全体にわたる厚さの分布を測定することはできない。
【0022】
特許EP 1 020 703は、容器の外側及び内側の2つの表面の間の材料から赤外線放射が放出される第1のスペクトルバンドで放射の第1の強度を測定することを含む赤外線放射から容器のガラス厚さを測定することを提案している。その信号がガラス温度と厚さとの両方に依存する第1のスペクトルバンドは、好ましくは0.4から1.1ミクロンの範囲である。この方法はまた、容器の単一の外表面から実質的に完全に放射が放出される第2のスペクトルバンドで放射の第2の強度を測定することを含む。この特許によれば、放射が温度にのみ依存する第2のスペクトルバンドは、表面放射に対応して、好ましくは4.8から5ミクロンの範囲である。上記方法は、第1及び第2の測定された強度の合成関数として、外表面と内表面との間の容器の厚さを特定することを含む。言い換えると、厚さ及び温度は、第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドにおいて測定された2つの放射測定値から特定される。
【0023】
図3に示される1つの変形例によれば、この特許は、放射が温度にのみ依存する第2のスペクトルバンドにおいて放射を測定する4つのカメラと、信号がガラスの温度及び厚さの両方に依存する第1のスペクトルバンドにおいて放射を測定するパイロメータとを容器の周囲に均等に分配することを提案している。
【0024】
したがって、正確な厚さの計算は、パイロメータ及びカメラによって測定された点についてのみ可能であるように見える。それは、温度に応じた厚さを知るための既定の関係をもたらす。他のカメラによって測定された他の点は、厚さが容器のある位置における既定の局所数学モデルに従って温度に依存することを仮定することによる外挿によってのみ推定される。複数の容器の温度が成形中に均質でない限り、言い換えると、初期温度条件がボトル全体について同じでない限り、厚さが温度測定によって特定されるという仮定は誤りである。
【0025】
補足的に、第1のスペクトルバンドにおいて、パイロメータの測定点に関する容器の放射は、測定点の側に位置する前壁と呼ばれる壁の放射であって、かつ、その厚さ及び温度に依存する放射だけでなく、後壁と呼ばれる反対側の壁の放射であって、容器の内側に向かって放出されるとともに前壁を通過する放射をも含むことに留意されたい。この「後放射」は、直接観測された表面の「前放射」と合成される。「前壁」は、第1のスペクトルバンドでこの放射を部分的にのみ吸収する。そのため、感知された放射は、2つの壁の厚さ及び2つの壁の温度に依存する。言い換えると、前壁の放射の測定では、放射が後壁の影響を受けるため、前壁の厚さを測定することはできない。
【0026】
最後に、この特許に記載されている方法は、限られた色合いのファミリーに属する容器のガラス厚さを測定するのに適しているということが分かる。ただし、できるだけ多くの色合いのガラス容器の厚さを測定できることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
以上より、本発明の目的は、壁のある部分が壁の別の部分にもたらす放射の影響を考慮することによって、成形キャビティから出てくる複数の高温ガラス容器の壁の厚さを正確に測定するための新規な方法を提案することにより、従来技術の欠点を克服することである。
【0028】
本発明の別の目的は、多様な色合いを有する複数のガラス容器の壁の厚さを正確に測定するための方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
そのような目的を達成するために、成形キャビティから出てくる複数の高温ガラス容器の厚さを測定するための方法は、以下のステップを含む。
容器の互いに正反対側にある第1の側及び第2の側から容器から放出された放射を測定し、それにより、第1の側に沿って配置された容器の第1の壁及び第2の側に沿って配置された容器の正反対側の第2の壁から放出された放射を計算に入れることを選択すること、
2,800nmから4,000nmの範囲の第1のスペクトルバンドで、かつ第2のスペクトルバンドで容器から放出された放射を測定することを選択すること、ここで、これらの2つのスペクトルバンドは別個のものであって、かつ、
一方では、ガラスによる放射の吸収率が、複数の容器の温度に対して2つのスペクトルバンドで異なり、
他方では、少なくとも第1のスペクトルバンドで、ガラスによる放射の吸収率が、
第1の壁に由来する、容器の第1の側から測定された放射が、第1の壁から放出された放射と、第2の壁から放出されるとともに吸収を伴いつつ第1の壁を透過した放射との合計であり、合成された放射は、第1及び第2の壁の厚さ及び温度に依存し、
第2の壁に由来する、容器の第2の側から測定された放射が、第2の壁から放出された放射と、第1の壁から放出されるとともに吸収を伴いつつ第2の壁を透過した放射との合計であり、合成された放射は、第1及び第2の壁の厚さ及び温度に依存するようになっている、
ように選択され、
容器の第1の側から、第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドにおける第1の壁に由来する放射の強度と、容器の第2の側から、第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドにおける第2の壁に由来する放射の強度とを同時に測定すること、
第1及び第2のスペクトルバンドにおける第1の壁に由来する放射の強度の測定値と、第1及び第2のスペクトルバンドにおける第2の壁に由来する放射の強度の測定値とから、第1のスペクトルバンドにおける放射の強度において、一方の壁から放出された放射と、吸収を伴いつつ通過しかつ他方の正反対側の壁に由来する放射とを計算に入れることによって、少なくとも第1の壁の厚さ及び第2の壁の厚さを特定すること。
【0030】
加えて、本発明に係る方法は、以下の追加の特徴の少なくとも一方又は両方を組み合わせてさらに含んでいてもよい。
第2のスペクトルバンドにおいて、ガラスによる放射の吸収率は、第1のスペクトルバンドの放射の吸収率とは異なっており、一方では、第1の壁に由来する、容器の第1の側から測定された放射は、第1の壁から放出された放射と、第2の壁から放出されかつ第1の壁を透過した放射との合計であり、他方では、第2の壁に由来する、容器の第2の側から測定された放射は、第2の壁から放出された放射と、第1の壁から放出されかつ第2の壁を透過した放射との合計であるようになっており、合成された放射は、第1及び第2の壁の厚さ及び第1及び第2の壁の温度に依存し、
第1の壁の温度及び第2の壁の温度はまた、第1及び第2のスペクトルバンドにおける第1の壁の放射の強度の測定値と、第1及び第2のスペクトルバンドにおける第2の壁の放射の強度の測定値とから、第1のスペクトルバンドにおける放射の強度において、吸収を伴いつつ透過しかつ反対側に位置する壁に由来する放射を計算に入れることによって特定される。
【0031】
本発明の別の目的は、白色ガラスを含む広範囲のガラスの色合いについて、複数の高温ガラス容器の壁の厚さを正確に測定するための方法を提案することである。
【0032】
そのような目的を達成するために、3,000nmから4,000nmの範囲の第1のスペクトルバンドにおいて容器から放出された放射を測定するために選択された方法が実行される。
【0033】
加えて、本発明に係る方法は、以下の追加の特徴の少なくとも一方又は両方を組み合わせてさらに含んでいてもよい。
第2のスペクトルバンドにおいて、ガラスによる放射の吸収率は、一方では、第1の壁に由来する、容器の第1の側から測定された放射が、第1の壁の表面からのみ放出された放射であり、他方では、第2の壁に由来する、容器の第2の側から測定された放射が、第2の壁の表面からのみ放出された放射であるようになっており、放射は温度にのみ依存し、
第2のスペクトルバンドにおける第1の壁の放射の強度の測定値と、第2のスペクトルバンドにおける第2の壁の放射の強度の測定値とのそれぞれから第1の壁の温度及び第2の壁の温度を特定すること、
1,100nmから2,600nmの範囲の第2のスペクトルバンドにおいて容器から放出された放射を測定することを選択すること、
4,500nmを超える範囲、好ましくは5,000nmを超える範囲の第2のスペクトルバンドにおいて容器から放出された放射を測定することを選択すること、
少なくとも2つのバイスペクトル赤外線カメラを使用して放射を同時に測定すること、ここで、各カメラは、各容器について、その観察視野に位置する容器の壁の放射の少なくとも2つの赤外線画像を提供する。
【0034】
本発明の別の目的は、複数の容器のガラス壁の厚さを正確に測定するための設備を提案することである。
【0035】
そのような目的を達成するために、成形キャビティから出てきて並進経路に沿って移動する複数の高温ガラス容器の壁の厚さを測定するための設備は、
容器の第1の側に位置する容器の第1の壁及び正反対側の第2の側に位置する容器の第2の壁から放出された放射を計算に入れるために、複数の容器の上記経路の両側に互いに正反対側に配置された少なくとも第1及び第2のバイスペクトル赤外線カメラと、ここで、各カメラは、2,800nmから4,000nmの範囲の第1のスペクトルバンドで、かつ第2のスペクトルバンドで、その観測視野に位置する容器の壁の放射の2つの赤外線画像を提供し、これらの2つのスペクトルバンドは、別個のものであり、かつ、
一方では、ガラスによる放射の吸収率が、複数の容器の温度に対して2つのスペクトルバンドで異なり、
他方では、少なくとも第1のスペクトルバンドで、ガラスによる放射の吸収率が、
第1の壁に由来する、容器の第1の側から測定された放射が、第1の壁から放出された放射と、第2の壁から放出されるとともに吸収を伴いつつ第1の壁を透過した放射との合計であり、合成された放射は、第1及び第2の壁の厚さ及び温度に依存し、
第2の壁に由来する、容器の第2の側から測定された放射が、第2の壁から放出された放射と、第1の壁から放出されるとともに吸収を伴いつつ第2の壁を透過した放射との合計であり、合成された放射は、第1及び第2の壁の厚さ及び温度に依存するようになっている、
ように選択され、
第1のカメラで、第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドにおける第1の壁の放射の強度を測定する2つの画像と、第2のカメラで、第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドにおける第2の壁の放射の強度を測定する2つの画像とを同時に取得するように、上記バイスペクトル赤外線カメラの動作を駆動するためのシステムと、
第1のスペクトルバンドにおける第1の壁に由来する放射の強度の測定値と、第2のスペクトルバンドにおける第1の壁に由来する放射の強度の測定値とをそれぞれ提供する2つの画像と、第1及び第2のスペクトルバンドにおける第2の壁の上記2つの画像とを分析することにより、第1のスペクトルバンドにおける放射の強度において、一方の壁から放出された放射と、吸収を伴いつつ透過しかつ反対側に位置する壁に由来する放射とを計算に入れることによって、少なくとも第1の壁の厚さ及び第2の壁の厚さを特定するように構成されたコンピュータと、
を含む。
【0036】
加えて、本発明に係る設備は、一実施形態によれば、
バイスペクトラル赤外線カメラを含んでいてもよく、バイスペクトラル赤外線カメラは、
ビームスプリッタと、ここで、その下流で、光線は2つの別個の下流ビームに分離され、
ビームスプリッタの下流で、1つ又は2つの画像平面に設置された2つの別個のセンサ又は2つのセンサ部分と、ここで、それぞれは2つの別個の下流ビームのうちの1つを受け取り、第1のセンサ又は第1のセンサ部分は、第1のスペクトルバンドにおいて第1の放射ビームを受け取り、第2のセンサ又は第2のセンサ部分は、第2のスペクトルバンドにおいて第2の放射ビームを受け取り、
各画像平面上の光学的共役により、第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドのそれぞれにおいて容器の光学画像を形成するレンズによって上記スプリッタの上流又は下流に形作られている第1及び第2のビームと、
第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドをそれぞれ選択する1つ又は複数の光学フィルタによってフィルタリングされている第1及び/又は第2のビームと、
を含む。
【0037】
別の実施形態によれば、各バイスペクトル赤外線カメラは、
センサ平面上の光学的共役により、容器が通過する視野の光学画像を形成するレンズと、
2つの別個のリニアセンサ部分と、ここで、2つのリニアセンサ部分は、レンズの視野での容器の移動中に、2つのリニアセンサ部分のそれぞれを用いて走査画像が生成されるように配置された垂直である自身の支持線を有し、
第1のスペクトルバンドにおける第1の放射ビーム部分を受け取る第1のリニアセンサ部分と、
第2のスペクトルバンドにおける第2の放射ビーム部分を受け取る第2のセンサ部分と、
第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドを選択するために、光ビームの経路上に配置された少なくとも1つの光学フィルタと、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、成形機械から出てくる複数の容器のガラス壁の厚さを測定するのに適した本発明に係る検査設備を示す概略的な上面図である。
図2図2は、第1のスペクトルバンドにおいて、容器の両側に置かれた測定点に関する容器の放射の原理を説明する概略図である。
図3図3は、黒体の熱放射を示す図である。
図4図4は、ガラス体の熱放射を示す図である。
図5図5は、第2のスペクトルバンドにおいて、容器の両側に置かれた測定点に関する容器の放射の原理を説明する概略図である。
図6図6は、ガラス壁の表面温度にのみ感度を持つ第2のスペクトルバンドにおいて、容器の両側に置かれた測定点に関する容器の放射の原理を説明する概略図である。
図7図7は、本発明の枠組み内で使用されるバイスペクトル赤外線カメラの一例の概略図である。
図8図8は、本発明の枠組み内で使用されるバイスペクトル赤外線カメラの別の例の概略図である。
図9図9は、本発明の枠組み内で使用されるバイスペクトル赤外線カメラの別の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の記載においては、第1のスペクトルバンドλ1及び第2のスペクトルバンドλ2が使用される。スペクトルバンドλは、1つの値を中心とした波長間隔である。用いる各スペクトルバンドは、より広い波長間隔である特定の波長範囲において、本発明又は変形例に従って選択される。これは、用いる各スペクトルバンドの波長間隔が、正確な波長範囲に含まれていることを意味する。
【0040】
図1によってより具体的に明らかになるように、本発明の目的は、例えばボトル又はフラスコなどの複数のガラス容器2の、これらの容器のガラス壁の厚さの測定を目的とした、高温検査のための設備1に関する。設備1は、自体公知のすべてのタイプの製造又は成形機械3から出てくる複数の容器2の検査が可能であるように設置されている。成形機械の出口において、複数の容器2は、通常は300℃から700℃の範囲の高い温度を有する。
【0041】
成形機械3は、慣習的には、一連のキャビティ4を含み、各キャビティ4が容器2の成形に関わる。公知の方法で、機械3によって形成されたばかりの複数の容器2は、複数の容器の列をなすように排出コンベヤ5上に連続的に置かれる。複数の容器2は、異なる複数の処理ステーションに連続的に送られるために、並進経路Fに沿ってコンベヤ5によって一列で搬送される。
【0042】
本発明の1つの有利であるが非排他的な配列によれば、本発明に係る設備1は、排出コンベヤ5がこの検査設備1の前で複数の高温容器2の連続移動を確保にするように、可能な限り成形機械3の近くに設置される。通常は、設備1は、成形機械3の出口とアニーリングレール6との間に、好ましくは、成形後に複数の第1の処理ステーションを一般に構成している表面処理フードの前に、位置付けられる。
【0043】
本発明に係る設備1は、複数の容器の並進経路Fの両側に互いに正反対側に配置された少なくとも第1のバイスペクトル赤外線カメラ11及び第2のバイスペクトル赤外線カメラ12を含む。各バイスペクトル赤外線カメラ11、12は、その観察視野に置かれた容器の壁の赤外線放射から得られた複数の画像を提供するのに適している。各バイスペクトル赤外線カメラ11、12は、各容器2について、第1のスペクトルバンドλ1で受け取った赤外線放射から得られた少なくとも1つの第1の画像と、第2のスペクトルバンドλ2で受け取った赤外線放射から得られた少なくとも1つの第2の画像とを提供する。スペクトルバンドは、波長の間隔を指す。スペクトルバンドλ1、λ2の特徴は、以下で特定される。
【0044】
図1に示される変形例によれば、本発明に係る設備1はまた、第2のペアのバイスペクトル赤外線カメラ13、14を含む。この第2のペアのこれらのバイスペクトル赤外線カメラ13、14もまた、複数の容器の並進経路Fの両側に互いに正反対側に配置されている。例えば、第1のペアのバイスペクトル赤外線カメラ11、12は、それらの観察軸が並進経路Fに対して45°であるように配置されている。同様に、第2のペアのバイスペクトル赤外線カメラ13、14は、並進経路Fに対して45°で配置され、そのため、バイスペクトル赤外線カメラ11から14の観察軸は、ペアで90°オフセットされる。もちろん、上記バイスペクトル赤外線カメラのそのような配列は、決して限定的なものではない。移動する複数の容器間の好ましくない間隔条件に適応させるために、4つの観察軸の間の角度は、例えば以下の値:30°、150°、30°、150°に適応されうる。
【0045】
本発明はまた、120°の軸を持つ3つのバイスペクトル赤外線カメラを使用することによって動作することもありうる。この場合、各カメラの視野は2つの部分に分割され、各視野部分は、円筒形容器の60°の扇形の画像を含むと考えられる。1つのカメラの各視野部分は、別のカメラの視野部分とは対極にある。
【0046】
本発明は、すべての壁という観点に立ってみれば、複数のバイスペクトル赤外線画像を生成するという原則を尊重することによって、最終的に4つを超えるカメラを用いて実行されうる。
【0047】
本発明に係る設備1はまた、複数のバイスペクトル赤外線カメラによって提供された画像K1、K2を、以下で詳細に記載される方法に従って取得するように、複数のバイスペクトル赤外線カメラの動作を駆動するためのシステム15を備える。本発明に係る設備1はまた、バイスペクトル赤外線カメラ11~14によって提供された画像K1、K2を分析することによって容器のガラス壁の厚さを特定するように構成されたコンピュータ16を含む。
【0048】
本明細書において、コンピュータ16は、公知の方法で、特にマイクロプロセッサ、データ入力/出力バス、メモリ、コンピュータネットワークへの接続部、及び/又はディスプレイを備えうるコンピュータユニットである。コンピュータは、壁の厚さを測定するための設備に専用のコンピュータユニットでありうるか、又は、容器製造ラインの他の要素と共用可能である。それは例えば、ライン又はその一部を駆動するための集中型ユニットでありうる。入口から出口の間には、もちろん複数の赤外線画像を取得するための手段が含まれている。メモリには、複数のデジタル赤外線画像を保存するための手段が含まれている。マイクロプロセッサは、本発明に係る方法を実施する複数のアルゴリズムを実行するように体系化された複数のプログラムを達成するように構成されている。
【0049】
複数のデジタル画像のコンピュータ分析は、2値結果(真/偽、存在/非存在、適合/非適合など)及び/又は、例えば1つ又は複数の測定の形式において、定性的な、もっといえば定量的な結果を含みうる検査結果を生成する。したがって、検査結果には、ガラスの厚さの最小値及び最大値だけでなく、上記方法を補正するために重要な、分布及び垂直方向又は水平方向の偏差と、薄い又は厚い区域の位置とが含まれうる。厚さ分布又はマッピングの特定、すなわち検査された容器における材料の分布の特定に加えて、検査結果には、複数の容器の温度マッピング、局所的に高い温度のばらつきが観察されたときに高い熱応力を持つ領域の識別も含まれる。加えて、この分析には、表面上の包有物、気泡、しわ又は亀裂の存在などの外観又は組成の欠陥、あるいはネックの傾き、外形寸法のずれなどの幾何学的又は寸法上の欠陥の検出が含まれうる。
【0050】
コンピュータの複数の出力間には、実行された測定に基づき上記方法のドリフトを補正することを目的として、製造機械の任意の制御システムに向けて複数の通信回線が設けられうる。
【0051】
以下の記載は、この記載が複数のバイスペクトル赤外線カメラの第2のペアに適用できることから、バイスペクトル赤外線カメラ11、12の第1のペアのみを考慮することによって実行される。第1のバイスペクトル赤外線カメラ11は、容器2の第1の側Iに沿って配置され、第2のバイスペクトル赤外線カメラ12は、上記容器の正反対側の第2の側IIに沿って配置される。
【0052】
各容器2が、回転体形状又は円筒形状を有するガラス壁を含んでいると仮定すると、容器に対してバイスペクトル赤外線カメラ11、12を正反対側に位置付けることは、各測定点について、容器2が前壁と呼ばれる壁及び後壁と呼ばれる壁を有し、あるバイスペクトル赤外線カメラについての前壁及び後壁は、他のカメラについての後壁及び前壁に対応することを考慮することにつながる。特に図2に示される例では、各容器2は、慣例では、容器の第1の側Iに位置する、つまり第1のバイスペクトル赤外線カメラ11に最も近い位置にある第1の壁21と、正反対側の第2の側IIに位置する、つまり第2のバイスペクトル赤外線カメラ12に最も近い位置にある第2の壁22とを含む。そのため、各バイスペクトル赤外線カメラ11、12は、容器の前壁から放出された放射、及び、場合によっては容器の後壁から放出されるとともに前壁を通過した放射を考慮に入れる。
【0053】
本発明によれば、各バイスペクトル赤外線カメラ11、12は、各容器について、その観察視野に位置する容器の放射の少なくとも2つの赤外線画像、第1のスペクトルバンドλ1における一方のK1と第2のスペクトルバンドλ2における他方のK2とを提供する。この第1のスペクトルバンドλ1及びこの第2のスペクトルバンドλ2は、以下に記載する測定原理に従って選択される。
【0054】
まず、第1のスペクトルバンドλ1及び第2のスペクトルバンドλ2は、別個である又は重複していない、つまり共通の値を有していないことが考慮されるべきである。別の特徴によれば、ガラスによる放射の吸収率は、複数の容器2の温度に対して2つのスペクトルバンドで異なる。
【0055】
熱放射の理論を以下に示す。以下の説明では、放射体を観察する観察者、例えば容器を観察する温度カメラ、に対して立体角で感知された赤外線放射を単純化するために、放射は同化される。
【0056】
図3に示されるように、所定の波長及び所定の温度、それぞれλ及びT、での黒体の熱放射Rcnは、次の式で示される。
【0057】
【数1】
【0058】
黒体の定義によれば、放射率εは、熱平衡で、吸収率αに等しくなる。
【0059】
【数2】
【0060】
ガラス壁(灰色体)の場合、図4に示されるように、全感知放射M(感知された全放射)の式は次のように記述される。
【0061】
【数3】
ここで、Rは熱放射であり、ρは反射した放射であり、Trは透過した放射である。
【0062】
したがって、用いるスペクトル範囲において、すなわち、本発明に係る複数のセンサによって感知された波長間隔について、反射した放射は、容器から放出された放射の強度と比較して無視できるとみなされる。次いで、反射によって感知されたフラックスはゼロとみなされ、F=ρ=0となる。
【0063】
【数4】
【0064】
半透明体の場合、放射Aoが通過する厚さeに応じて放射Aの吸収率αを定義するランベルトベールの法則が考慮される。
【0065】
【数5】
ここで、Aoは入射放射であり、τは透過率である。
【0066】
【数6】
ここで、μ(λ,T)は、波長λ及び所定の温度T(K)についての吸収係数(mm-1)である。実際には、μ(λ,T)は、波長λを中心とした狭い波長域で積分された吸収係数である。
【0067】
以下において、放射率の及び吸収率の温度に対する依存性は、本願の条件の分野、つまり選択されたガラス温度及び波長間隔については無視できるとみなされる。
【0068】
所定の波長λに対する厚さe及び温度Tのガラス壁から放出された放射Rは次のように記述される。
【0069】
【数7】
ここで、上記壁の放射率は、方程式[6]に従って表される。
【0070】
【数8】
【0071】
本発明によれば、熱放射理論の適用は、容器の2つのガラス壁を考慮に入れることにつながる。実際、例えば容器の第1の壁の第1の側で考慮された測定点について、容器から受け取った放射は、測定点の側に位置する第1の壁の放射と、容器の内側に向かって放出されるとともに第1の壁を通過する、第2の反対側の壁の放射とを含む。そのため、図2に示されるように、厚さ及び温度に感度を持つ第1のスペクトルバンドλ1における容器の厚さe1及び温度T1を有する、第1の壁21の感知された放射
は、上記壁の熱放射
及び透過した放射
を含み、後者は、少なくとも部分的に壁21に吸収され、そのため透過率
を持ち、厚さe2及び温度T2を有する、第2の壁22の熱放射
である。同様に、厚さ及び温度に感度を持つ第1のスペクトルバンドλ1における容器の厚さe2及び温度T2を有する、第2の壁22の感知された放射
は、上記壁の熱放射
及び透過した放射
を含み、後者は、少なくとも部分的に壁22に吸収され、そのため透過率
を持ち、厚さe1及び温度T1を有する、第1の壁21の放射である。上記において、波長λ1についての透過率
及び
は、方程式[6]に従って透過した壁の厚さに依存するが、温度の影響は無視できる。
【0072】
同様に、図5に示されるように、厚さ及び温度に感度を持つ第2のスペクトルバンドλ2における容器の厚さe1及び温度T1を有する、第1の壁21が受け取った放射
は、波長λ2において上記壁から放出された熱放射、すなわち
及び放射
を含み、後者は、少なくとも部分的に壁21に吸収され、そのため透過率
を持ち、厚さe2及び温度T2を有する、第2の壁22の放射である。同様に、厚さ及び温度に感度を持つ第2のスペクトルバンドλ2における容器の厚さe2及び温度T2を有する、第2の壁22が受け取った放射
は、上記壁の放射
及び放射
を含み、後者は、少なくとも部分的に壁22に吸収され、そのため透過率
を持つ、厚さe1及び温度T1を有する、第1の壁21の放射である。
【0073】
上記の熱放射理論を前提として、以下の方程式を記述することが可能である。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【0074】
これらの方程式[9]、[10]、[11]、及び[12]は、容器全体にわたって考慮された複数の放射に関し、つまり、それぞれ温度T1及びT2でエアギャップによって分離された厚さe1、e2の2つの壁についてのものである。放射率は波長λ1とλ2について異なっている必要があることを思い出されたい。そうでない場合、もちろん上記の系は4つではなく2つの方程式しか持たない。
【0075】
本発明は、4つの方程式[9]から[12]から4つの未知数、つまり、2つの壁について厚さe1、e2及びそれぞれ温度T1、T2を、複数の高温の容器を観察する複数の赤外線バイスペクトルカメラなどの測定手段によって提供された4つの放射測定値
から知ることが可能であるという事実に基づいている。上記複数の方程式は、今しがた説明したように、放射についてのプランクの法則と透過率のランベルトベールの法則から導かれたものである。複数の容器の及び材料の、あるいはパラメータの識別又は校正方法の先験的な知識が、複数の容器の所定の生産についてこれらの方程式を正確に特定することにつながる。
【0076】
本発明の実装を促進するために、1つの方法は、上記複数の方程式を単純化することを含み、これにより、複数の赤外線画像を分析するコンピュータを用いて、この方法の実施中に上記複数のパラメータの単純化された識別、及びリアルタイムでの高速化された計算が可能となる。したがって、以下では、複数の作用点の周辺で、そのため、選択された複数のスペクトルバンドについて、ガラスのスペクトル透過率について、複数の成形機械の出口における複数の容器の温度範囲について、そのため、300~700℃の間で、測定されるべき厚さの範囲、例えば0.5から5mmの範囲について、放射率の、黒体放射の、及び吸収を伴う透過率の単純化された複数の関数を定義する。
【0077】
方程式[7]によれば、壁から放出された放射、すなわちガラス壁への特定の放射は、次のようになる。
【0078】
【数13】
【0079】
本発明によれば、そして方程式[8]によれば、第1のスペクトルバンドλ1における放射率εは、半透明体の厚さの関数である。したがって、この放射率は1とは異なる。測定されるべき壁の厚さの値(例えば0.5から5mm)について、第1のスペクトルバンドλ1の放射率は、厚さのアフィン関数によって近似され、その複数のパラメータは、測定及び校正によって識別可能である。
【0080】
【数14】
ここで、係数a、bは波長λ1に依存する。
【0081】
黒体の放射は、方程式[1]よりも単純な関数G(λ1,T)で記載される。用いる波長λ1について、より具体的には、λ1を中心とした用いるスペクトルバンドについて、G(λ1,T)=G1(T)は温度のみの関数である。G1(T)は、プランクの法則から導出され、スペクトルバンドλ1についての黒体の放射の単純化されたモデルであって、例えばそれは、多項式関数、べき関数又は指数関数である。実際には、この関数G1は、収集網全体、特にセンサのスペクトル感度と、容器とセンサとの間に挿入された複数の光学部品の透過率とを考慮に入れている。関数G1の複数のパラメータ、例えば多項式の係数、指数、指数係数などは、適切な方法で、特に本発明に係る測定装置を校正する段階で経験に基づいて、特定される。いうまでもなく、第2の波長λ2についても同じように特定され、関数G(λ2,T)=G2(T)である。
【0082】
したがって、所定の波長で、又は波長λ1の周辺の所定のスペクトルバンドについて、ガラス壁から放出された放射Rの単純化されたモデルは、以下のように記述される。
【0083】
【0084】
この式において、G1(T)の複数のパラメータ又は定数、及び係数a及びbは、経験に基づいて、又は特にガラスの組成に応じて事前に、特定されうる。もちろん、波長λ2についての同じ壁の放射、及び厚さe2及び温度T2を有する他方の壁の放射は、同じように記述され、すなわち以下の通りである。
【0085】
【数15】
【0086】
【数16】
【0087】
【数17】
【0088】
【数18】
【0089】
厚さe=e1又はe2の前壁による、後壁に由来する放射の透過率τは、以下の方程式[19]において、所定の温度によって特定された作用点、おおむね第1の波長λ1の周辺を中心とした第1のスペクトルバンドで、かつ、測定されるべき厚さの範囲について、特に方程式[6]及び[14]を使用して、線形化される。
【0090】
【数19】
【0091】
同様に、おおむねλ2を中心とした第2のスペクトルバンドについて、後壁による、前壁に由来する放射の減衰量は以下のようになる。
【0092】
【数20】
【0093】
係数a、b、c及びdは、校正によって得られるか、又は適切な方法によって事前に知ることができる。それらは、作用点に、特に選択された波長λ1及びλ2に、そして、検査された複数の容器の温度区域に、及び測定されるべき厚さの範囲に依存する。
【0094】
波長λ1について、放射
は、第1の壁の総放射に、第1の壁の吸収によって変調された第2の壁の放射を加えたものに相当する。したがって、それは以下のように表すことができる。
【0095】
【数21】
【0096】
同様に、放射
は、第2の壁の総放射に、第2の壁の吸収によって変調された第1の壁の放射を加えたものに相当する。したがって、それは以下のように表すことができる。
【0097】
【数22】
【0098】
同様に、波長λ2について、放射N12は、第1の壁の総放射に、第1の壁の吸収によって変調された第2の壁の放射を加えたものに相当する。したがって、N12は以下のように表すことができる。
【0099】
【数23】
【0100】
同様に、
は以下のように表すことができる。
【0101】
【数24】
【0102】
本発明のこの第1の変形例において、第2のスペクトルバンドλ2が、その放射率が第1のスペクトルバンドλ1の放射率とは異なるが、厚さに依存するように選択される場合、方程式[9]、[10]、[11]及び[12]は、それぞれ方程式[21]、[22]、[23]及び[24]に置き換えることができる。
【0103】
補完的には、特に成形機械から出てくる複数の容器2によって提示される特徴のために、以下の検討事項を考慮に入れる必要がある。
【0104】
特定された波長範囲において、ガラスの放射率は、300から700℃の範囲で変化する壁の温度にほとんど影響されないことにも留意されたい。この特定された波長範囲について、吸収係数(つまり放射率)は温度に依存しないか、あるいはこの依存性は無視できる程度である。そのため、スペクトル吸収係数μのみが吸収率を厚さに関連付け、同様に放射率を厚さに関連付ける。
【0105】
本発明の1つの特徴によれば、第1のスペクトルバンドλ1は、ガラスの放射率が温度に依存しないこの波長範囲から選択される。これにより、方程式[7]及び[8]の適用が可能となる。
【0106】
加えて、4,500nmを超える、好ましくは5,000nmを超える範囲において特定されたスペクトルバンドについて、ガラスの放射率は1に非常に近く、つまり近似的に1に等しいとみなされる。このスペクトルバンドについて、放射は黒体の放射に同化される。好ましい変形例によれば、第2のスペクトルバンドλ2は、吸収率も1に近く、言い換えるとガラスがこの波長範囲において不透明であるので、放射が厚さに依存せず、観察した壁が反対の面の放射を透過しないこの波長範囲において選択される。壁の各面について、このスペクトルバンドで感知された放射の式が推定され、すなわち、以下の通りである。
【0107】
【数25】
【0108】
【数26】
【0109】
したがって、この変形例において、方程式[9]、[10]、[11]及び[12]は、それぞれ方程式[21]、[22]、[25]及び[26]に置き換えることができる。放射が厚さに依存しない波長を使用するこの変形例は、未知数T1及びT2、つまり2つの壁の温度が方程式[21]及び[22]から直ちに生ずるので、4つの未知数を持つ4つの方程式の系を解くための計算を単純化する。
【0110】
本発明によれば、第1のスペクトルバンドλ1は、第1のスペクトルバンドにおいて、ガラスによる放射の吸収率が、
第1の壁21に由来する、容器2の第1の側から測定された放射が、第1の壁21から放出された放射と、第2の壁22から放出されるとともに吸収を伴いつつ第1の壁21を透過した放射線との合計であり、それにより、合成された放射は、第1及び第2の壁の厚さ及び温度に依存し、
第2の壁22に由来する、容器2の第2の側から測定された放射線が、第2の壁に22よって放出された放射と、第1の壁21から放出されるとともに吸収を伴いつつ第2の壁22を透過した放射との合計であり、それにより、合成された放射は、第1及び第2の壁の厚さ及び温度に依存するようになっている、
ように選択される。
【0111】
本発明は、放射の強度がガラス壁の厚さ及びガラス壁の表面温度に依存する第1のスペクトルバンドλ1での赤外線放射を測定することを提案することを理解されたい。本発明によれば、第1のスペクトルバンドλ1は、放射率が、ガラス壁の厚さに依存し、そのため1からは離れるが、測定されるべき十分な放射について不足のない大きさであるように選択される。さらに、この放射率がガラスの色合いによってほとんど変化しないことが求められる。そのため、この第1のスペクトルバンドλ1は、厚さが1から5mmの範囲であって、ガラス温度がおおよそ450℃、より広くは300から700℃の範囲の場合、放射率が、白色ガラスについては、例えば(約)0.3から0.7の範囲であるように選択される。緑色又は琥珀色のガラスにおいて同じ厚さ及び同じ温度の場合の放射率は、おおよそ同じ値にあることに留意されたい。
【0112】
さらに、この第1のスペクトルバンドλ1は、前面による吸収を伴う、後面に由来する放射の透過率を得るように選択される。これにより、実際、方程式[10]及び[11]において、それぞれ透過率
及び
は1に等しくないため、減衰量はゼロではない。ゼロ減衰量は、標準の容器には当てはまらない。減衰量がゼロであると、2つの壁の区別なしで2つの壁の厚さの合計e1+e2のみが測定されることになる。逆にいえば、吸収率の総計が、
又は
である場合、これはガラスが第1のスペクトルバンドで不透明であることを意味する。この場合、厚さにかかわらず、この第1のスペクトルバンドにおいて、前壁の表面温度のみが測定される。
【0113】
第1のスペクトルバンドλ1において容器から放出された放射は、1,100nmから2,600nmの範囲から選択されうることに留意されたい。ただし、この範囲は、緑色ガラス又は琥珀色ガラス容器には適しているが、この範囲において白色(透明)ガラスの放射率は非常に小さいので、白色ガラス容器には適していない。
【0114】
本発明によれば、第1のスペクトルバンドλ1は、2,800nmから4,000nmの範囲、好ましくは3,000nmから4,000nmの範囲から選択される。この好ましい第1のスペクトルバンドは、白色ガラスを含む多くのガラスの色合いについて作用するように選択される。
【0115】
上記で示したように、第2のスペクトルバンドλ2は、ガラスによる放射の吸収率が第1のスペクトルバンドλ1のそれとは異なるように選択される。選択された第1のスペクトルバンドλ1の放射率は、0.3から0.7の範囲であることを思い出されたい。図5に示される第1の変形例によれば、第2のスペクトルバンドλ2もまた、一方では、第1の壁21に由来する、容器の第1の側から測定された放射が、第1の壁21から放出された放射と、第2の壁22から放出されかつ第1の壁を透過した放射との合計であり、他方では、第2の壁22に由来する、容器の第2の側から測定された放射が、第2の壁22から放出された放射と、第1の壁21から放出されるかつ第2の壁22を透過した放射との合計であり、合成された放射は、第1及び第2壁の厚さ及び第1及び第2壁の温度に依存するように選択される。
【0116】
この第1の変形例によれば、第2のスペクトルバンドλ2において容器から放出された放射は、1,100nmから2,600nmの範囲から選択される。この変形例では、透過率が大きく、そして、放射率は、一部のガラスについては小さい可能性があり、通常は、450℃でガラスの厚さが1から5mmの場合は0.1未満である。赤外線信号が制限されているため、これらのガラスの色合いについては厚さの測定精度が不十分な可能性がある。
【0117】
図6に示される第2の好ましい変形例によれば、第2のスペクトルバンドλ2は、ガラスによる放射の吸収率が、一方では、第1の壁21に由来する、容器の第1の側Iから測定された放射が、第1の壁21の表面からのみ放出された放射であり、他方では、第2の壁22に由来する、容器の第2の側IIから測定された放射が、第2の壁の表面からのみ放出された放射であるように選択され、放射は、温度にのみ依存する。
【0118】
そのため、第2のスペクトルバンドにおいて容器の第1の壁から放出された放射
は、表面温度にのみ感度を持つ。同様に、第2のスペクトルバンドにおいて容器の第2の壁から放出された放射
は、表面温度にのみ感度を持つ。
【0119】
この好ましい変形例によれば、第2のスペクトルバンドλ2は、4,500nmを超える範囲、好ましくは5,000nmを超える範囲から選択される。第2のスペクトルバンドλ2は、放射率が1に近くなるように、つまり黒体の放射率に近くなるように選択される。これは、放射率が例えば0.9を越えるように、このスペクトルバンドにおけるガラスによる放射の吸収率が大きいことを意味する。第1の面及び第2の面について第2のスペクトルバンドλ2において感知された放射N1、N2は、プランクの法則、又は方程式[25]及び[26]によって示されるような、本発明G(T1)及びG(T2)に係る近似関数によってかなり忠実に表される。
【0120】
4,500nmを超える、好ましくは5,000nmを超える範囲で選択された第2のスペクトルバンドλ2を有するこの好ましい変形例によれば、2,800nmから4,000nmの範囲、好ましくは3,000nmから4,000nmの範囲で第1のスペクトルバンドλ1を同時に選択することが有利である。これにより、MWIR(中赤外)の、好ましくは非冷却のセンサタイプの全く同一のセンサ技術を使用するように、2つのスペクトルバンドλ1及びλ2において複数の画像を測定又は生成することが可能になる。ここでの冷却センサとは、複数の極低温タイプの冷却システムを備えたSOFRADIR社又はLYNRED社によって販売されているようなMWIR又はLWIRセンサを指す。もちろん、本発明に係る複数のMWIRカメラは、放射の保護のための解決策(冷却されたエンクロージャ、天窓、スクリーン)、及び、例えば、水回路、強制換気、ペルティエ効果セル、ヒートパイプ、ラジエータなどの冷却及び/又は放熱のための解決策を備える。
【0121】
通常、第1のスペクトルバンドλ1は、3,000nmから4,000nmの範囲から選択され、第2のスペクトルバンドλ2は、4,500nmを超える範囲から選択される。有利には、第1のスペクトルバンドλ1は、おおよそ3,600nmのオーダーの波長値を中心として選択され、第2のスペクトルバンドλ2は、おおよそ4,700nmのオーダーの波長値を中心として選択される。
【0122】
本発明によれば、バイスペクトル赤外線カメラ11~14は、システム15によって駆動され、それにより、容器の第1の側Iから、第1のスペクトルバンドλ1及び同時に第2のスペクトルバンドλ2における第1の壁21に由来する放射の強度と、容器の第2の側IIから、第1のスペクトルバンドλ1及び同時に第2のスペクトルバンドλ2における第2の壁22に由来する放射の強度とを測定する。そのため、各容器2について、本発明は、第1のスペクトルバンドにおいて、2つの対向する壁から受け取った放射の強度の少なくとも2つの測定値と、第2のスペクトルバンドにおいて、2つの対向する壁からの放射の強度の少なくとも2つの測定値とを測定することを目的とする。1つの有利な特徴によれば、本発明は、放射線測定として、複数の容器の壁の複数の一次元又は二次元画像を生成することを目的とする。そのため、バイスペクトル赤外線カメラ11、14はそれぞれ、各容器について、その観察視野に位置する容器壁の放射の少なくとも2つの赤外線画像を提供する。1つの変形例によれば、2つのバイスペクトル赤外線カメラ11、12は、各容器について、第1のスペクトルバンドにおける赤外線放射の少なくとも2つの画像及び第2のスペクトルバンドにおける赤外線放射の少なくとも2つの画像を提供する。4つのバイスペクトル赤外線カメラ11、14を実施する別の変形例によれば、容器の壁が全体として2つのスペクトルバンドで表されるように、赤外線放射の8つの画像が得られうる。この場合、観測された視野は、各カメラが容器の外周の少なくとも4分の1を測定するようになっている。
【0123】
対向するバイスペクトルカメラの3つのペアを用いて、視界の重なりを増加させることも考えられうる。より一般的には、複数のカメラの配列は、複数の容器の外周を完全に観察するために、複数の容器の形状及び間隔に基づいていかようにも設定することができ、それは、当業者の慣習に従って、そして特に低温部門における複数のインライン検査システムの構造に応じて、容器の形状が、円形の水平な(円錐形の本体又は標準の円柱)又は長方形の、多角形の平面な断面などによって特徴付けられるか否かにかかわらない。
【0124】
本発明の別の特徴によれば、コンピュータ16により、第1及び第2のスペクトルバンドにおける第1の壁21に由来する放射の強度の測定値と、第1及び第2のスペクトルバンドにおける第2の壁22に由来する放射の強度の測定値とから、第1のスペクトルバンドにおける放射の強度において、一方の壁から放出された放射と、吸収を伴いつつ透過しかつ他方の正反対側の壁に由来する放射とを計算に入れることによって、少なくとも第1の壁21の厚さe1及び第2の壁22の厚さe2を特定することが可能である。
【0125】
そのため、第1の壁21の厚さe1及び第2の壁22の厚さe2は、一般方程式[9]、[10]、[11]及び[12]、又はより具体的には、それらを単純化した式[21]、[22]、[23]及び[24]、又はさらには、放射率が1に近くなるように第2の波長が選択された場合には[21]、[22]、[25]及び[26]に従って、放射強度の4つの測定値から特定される。4つの未知数を持つこの4つの連立方程式は、少なくとも線形化バージョンで解かれるが、測定精度を高めるために必要に応じてより複雑なモデルを用いることでも解かれる。
【0126】
第2のスペクトルバンドλ2が温度にのみ依存する好ましい変形例によれば、厚さ及び場合によって温度は、連立方程式[21]、[22]、[25]及び[26]から特定される。
【0127】
この好ましい変形例については、一方では、放射の強度が壁の厚さ及び表面温度に依存する第1のスペクトルバンドで、他方では、放射の強度が表面温度にのみ依存する第2のスペクトルバンドで、赤外線放射が測定されることを思い出されたい。そのため、温度情報は「信号から差し引かれ」うる。
【0128】
放射の4つの独立した測定値から、そして、第1のスペクトルバンドにおいて、各面で感知された放射における反対側の面の影響を考慮することによって、第1の面の厚さe1、第2の面の厚さe2、及び任意に、第1の面の温度T1及び第2の面の温度T2を推定することが可能である。この計算を実行するために、4つの放射測定値と4つの最終測定値とを、つまり2つの厚さ測定値と2つの温度測定値とをリンクさせる数学モデルが使用される。
【0129】
この数学的モデルは、経験的又は分析的でありうる。それは、定数の設定及び上記モデルの線形化を可能にする一部の動作条件についてのみ有効な場合がある。もちろん、方程式[15]及び[19]に対してなされた単純化は、本発明に必須ではなく、単純化は、単に上記計算のより容易でより安価な実施を可能にする。分析モデルはいうまでもなくより複雑であって、より正確な測定を可能にし、複数の容器の組成、平均温度、又は形状を考慮しうる。数学的モデルはまた、ガラス厚さの分布及び温度の分布を特徴として有する、容器の3D形状を記述可能な幾何モデルを含みうる。例えば、単純な円錐タイプの製品について、本体の表面は、その各点が単位mmの厚さ及び単位Kの温度を有する円錐であるとよい。
【0130】
上記記載からは、本発明に係る設備1は、バイスペクトル赤外線カメラ11~14を含むように見える。複数の非平面イメージセンサは、複数の非平面画像から本発明を実行するために不都合なく採用されうるが、上記記載は、複数の平面センサを想定しており、形成画像という用語は、一般に、1つの物体又は1つの場所の、この場合は少なくとも容器の壁の一部の、1つの平面画像を意味する。
【0131】
カメラごとに複数のセンサがある場合、それらを組み立てるための方法は複数ある。以下では、上流及び下流により、1つのセンサに到達するように容器に起因する光の経路の方向で収集されかつ処理された複数の放射ビーム上に置かれた複数の光学要素の位置が特定される。
【0132】
本発明の第1の変形例によれば、バイスペクトル赤外線カメラは、例えば図7、8に示されるように、
ビームスプリッタ20と、ここで、その下流で光線は2つの別個の下流ビームに分離され、
ビームスプリッタ20の下流で、1つ又は2つの画像平面に設置された2つの別個のセンサ21、22(図7)又は2つのセンサ部分(図8)と、ここで、それぞれは2つの別個の下流ビームのうちの1つを受け取り、第1のセンサ又は第1のセンサ部分は、第1のスペクトルバンドにおいて第1の放射ビームを受け取り、第2のセンサ又は第2のセンサ部分は、第2のスペクトルバンドにおいて第2の放射ビームを受け取り、
各画像平面上の光学的共役、すなわち各センサ又はセンサ部分、により、第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドのそれぞれにおいて容器の光学画像K1、K2を形成するレンズ23によって、スプリッタ20の上流又は下流に形作られている第1及び第2のビームと、
例えば、それぞれ第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドを選択するバンドパスタイプの1つ又は複数の光学フィルタ25、26によってフィルタリングされている第1及び/又は第2のビームと、
を備える。
【0133】
少なくとも2つの別個のセンサ21、22(図7)又はセンサ部分(図8)は、それぞれが、各容器から、少なくとも2つの別個の赤外線波長バンドで感知された放射M又はNの光学画像K1、K2を変換したものに対応するデジタル画像を供給する。
【0134】
ビームスプリッタ20は、例えば、プリズム、ブレード、又はスプリッタキューブである。それは、2つの異なる方向に2つの下流光学ビームに沿って上流光学ビームを偏向させる光学部品である。
【0135】
リニアセンサ部分とは、並置された複数の感光性素子の列である。リニアセンサ部分の収集又は読み取りにより、単一のデジタル画像列が提供される。また、移動する複数の容器の検査中、単純かつ公知の走査方法によって、リニアセンサ部分の平面視野を通過する容器の二次元画像を再現するために、連続する複数のデジタル画像列を取得することが知られている(nb平面視野=センサ列及び光学的中心によって定義される=扇型視野)。もちろん、変位又は移動ベクトルは、リニアセンサ部分の方向に平行ではない。複数の感光性素子の単一の列を含むリニアセンサが市場に出回っている。並置された複数の感光性素子の複数の列を含み、かつ、異なる複数の列からの情報の組み合わせである複数のデジタル画像列のみを信号として提供するセンサもある。最後に、マトリックスセンサは、センサの別個の列に由来する1つ又は2つ以上のデジタル画像列のみを取得するように、かつ、経時的に並置されたこれらの別個の列から、異なる複数の位置に対応する、時間的に分離された、移動する容器の1つ又は2つ以上の2D画像を走査することによって得るように、駆動されうる。言い換えると、マトリックスセンサは、1つ又は2つ以上のリニアセンサとして使用でき、経時的に複数のデジタル画像列を提供する。リニアセンサ部分の概念は、両方の方法をカバーする。
【0136】
本発明の第2の変形例によれば、各バイスペクトル赤外線カメラは、例えば図9に示されるように、
センサ平面上の光学的共役により、容器が通過する視野の光学画像K3を形成するレンズ23と、
2つの別個のリニアセンサ部分41、42と、ここで、2つのリニアセンサ部分41、42は、レンズ23の視野での容器の移動中に、2つのリニアセンサ部分のそれぞれを用いて走査画像が生成されるように配置された垂直である自身の支持線s1、s2を有し、
第1のスペクトルバンドにおける第1の放射ビーム部分31を受け取る第1のリニアセンサ部分41と、
第2のスペクトルバンドにおける第2の放射ビーム部分32を受け取る第2のセンサ部分42と、
第1のスペクトルバンド及び第2のスペクトルバンドを選択するために、上記レンズと2つのリニアセンサ部分41、42との間の光ビームの経路上に配置された少なくとも1つの光学フィルタ45と、
を備える。
【0137】
このバージョンでは、ビームスプリッタ20は必要ないことに留意されたい。
【0138】
このように、容器は、レンズ23の視野を通過した後、2つのリニアセンサ部分のそれぞれの視野を通過する。走査することにより、容器の2つの二次元画像が2つの選択された波長で得られる。
【0139】
1つの有利な実施形態は、単一の二次元センサ43を使用することであって、それは、図9に示されるように、センサの一部のみをカバーする少なくとも1つの光学フィルタの後ろに配置される。もう1つの方法は、画像平面に2つのリニアセンサを配置することを含む。
【0140】
もちろんこの第2の変形例は、レンズ23の視野での容器の移動中に、その二次元画像が、所定の点で、部分的に第1のセンサ部分41に、部分的に第2のセンサ部分42に、形成されることを妨げるものはない。
【0141】
すべての変形例において、場合によっては、これらの2つのスペクトルバンドを選択するために2つの光学フィルタが使用される。光学フィルタとしてバンドパスフィルタを選択すると有利な場合がある。
【0142】
2つのセンサ部分が同一の技術を有し、これによりそれぞれが同じ固有のスペクトル応答又は感度を持っている場合にのみ、少なくとも1つのフィルタが必要であることは明らかである。
【0143】
第2のスペクトルバンドλ2が4,500nmを超える、好ましくは5,000nmを超える範囲で選択され、かつ、第1のスペクトルバンドλ1が2,800nmから4,000nmの範囲、好ましくは3,000nmから4,000nmの範囲で選択される1つの好ましい変形例によれば、上記で説明したような冷却システムを必要としないMWIR(中赤外)センサタイプの1つ又は2つのセンサが、上記センサとして使用されうる。これにより、単一のセンサを備える図8及び9に示される変形例を実行することが可能となる。図7に示されるように、2つのセンサを含む変形例を実現するために、同一の技術からなる2つのセンサを使用すると、特に2つのセンサが同じ視野に対して同じ解像度を持ち、一般的でかつ簡素化された駆動手段を用いて、同期させるようにすることで、実装が簡素化される。
【0144】
各バイスペクトル赤外線カメラに含まれるセンサは、例えば196又は300KでのPbSeセンサ又はマイクロボロメータに基づいている。
【0145】
もちろん、本発明は、上述したバイスペクトルカメラの実施形態に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9