(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20240402BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240402BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240402BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20240402BHJP
H01G 4/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01G4/32 511L
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
H01G4/30 311F
H01G13/00 391Z
H01G4/32 551B
C08G73/14
H01G4/18
H01G4/32 551A
(21)【出願番号】P 2022517751
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2021075666
(87)【国際公開番号】W WO2022058528
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】102020124520.3
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズィクス, ビルギット
(72)【発明者】
【氏名】ザクス, シュテファン
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168845(WO,A1)
【文献】特開2000-338667(JP,A)
【文献】特開2011-061191(JP,A)
【文献】特開2013-182908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 4/30
H01G 13/00
C08G 73/14
H01G 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の誘電体層(2)を有するコンデンサ(1)であって、前記誘電体層(2)はポリアミドイミドを含み、第1の電極(3)が前記誘電体層(2)に直接隣接して配置されており、前記誘電体層(2)は、前記ポリアミドイミドのアミド基及びイミド基を含むポリアミドイミド主鎖を含み、前記誘電体層(2)内には、前記ポリアミドイミド主鎖間の、又は、ポリマー主鎖の内部の、化学的な架橋が形成されており、前記化学的な架橋は、ウレタン架橋、イミド架橋及び尿素架橋から選択されている、コンデンサ(1)。
【請求項2】
第2の電極(4)が、同様に前記誘電体層(2)に直接隣接して配置されている、請求項1に記載のコンデンサ(1)。
【請求項3】
前記誘電体層(2)は、50重量%以上、ポリアミドイミドから成る、請求項1又は2に記載のコンデンサ(1)。
【請求項4】
前記誘電体層(2)は、固体の無機材料を含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項5】
前記架橋は、ポリアミドイミド主鎖を直線的に互いに結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項6】
直線的な結合は、イミド架橋又はウレタン架橋を介して形成されている、請求項5に記載のコンデンサ(1)。
【請求項7】
直線的な結合に加えて、尿素架橋を介した3次元的な架橋が形成されている、請求項5に記載のコンデンサ(1)。
【請求項8】
前記ポリアミドイミド主鎖は部分的に芳香族である、請求項1~7のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項9】
前記ポリアミドイミドは、官能基として、フェニレン基、無水物及び/又はフラン基を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)であって、前記ポリアミドイミドは化学式(化1)に従う構造を有し、
【化1】
ここで、
R
1は、ラクタム、無水物、ウレタン架橋又はイミド架橋であり、
R
2は、フェニレン基であり、
R
3は、フラン、アミン、無水物、ウレタン架橋又はイミド架橋である、
コンデンサ(1)。
【請求項11】
多数の第1の電
極(3)が第2の電
極(4)と交互に積み重ねられており、それぞれ隣接する2つの電
極(3、4)の間には、1つの誘電体層(2)が配置されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項12】
第1の電
極(3)の全てが、第1の外部接点(5)に導電的に接続されており、第2の電
極(4)の全てが、第2の外部接点(6)に導電的に接続されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項13】
基板(7)が、前記
第1の電
極(3)の平面に対して平行に位置する前記コンデンサの側面に配置されている、請求項1~12のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項14】
前記コンデンサ(1)は、表面実装デバイス(SMD)である、請求項11~13のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項15】
前記コンデンサは、スルーホール実装のためのワイヤ(8、9)を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)。
【請求項16】
前記コンデンサ(1)は、巻回コンデンサである、請求項11又は12に記載のコンデンサ(1)。
【請求項17】
コンデンサ(1)の製造方法であって、
堆積面上にプレポリマー・ポリアミドイミド溶液を塗布し、
前記堆積面上の前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液を乾燥させ、
乾燥した前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液をアニールする、
ことによる誘電体層(2)の製造を含み、
前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液は、ポリアミドイミド主鎖を含み、前記ポリアミドイミド主鎖上には、イソシアネート基、ラクタム基及び/又は無水物基が配置されている、コンデンサ(1)の製造方法。
【請求項18】
前記堆積面は、基板(7)の表面であり、
前記誘電体層(2)は、その生成の後に、誘電体膜を生成するために前記堆積面から剥離され、
前記誘電体膜は、メタライジングされ、
メタライジングされた前記誘電体膜は、巻回される、
請求項17に記載のコンデンサ(1)の製造方法。
【請求項19】
導電性の基板(7)、又は、その表面上に第1の電
極(3)が生成される基板(7)が使用され、
前記堆積面は、導電性の前記基板(7)又は前記第1の電
極(3)の表面であり、
前記誘電体層(2)の前記堆積面上への塗布の後、前記誘電体層(2)上の第2の電
極(4)が生成され、
前記第2の電
極(4)上の更なる誘電体層(2)が、
前記第2の電
極(4)上にプレポリマー・ポリアミドイミド溶液が塗布され、
前記第2の電
極(4)上の前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液を乾燥させ、
乾燥した前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液をアニールする、
ことにより、生成される、
請求項17に記載のコンデンサ(1)の製造方法。
【請求項20】
前記イソシアネート基、ラクタム基及び/又は無水物基は、ポリアミドイミド主鎖の末端に配置されている、請求項17に記載のコンデンサ(1)の製造方法。
【請求項21】
前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液は、ドクターブレード、ノズルコーティング、ステンシル印刷、回転コーティング又は噴霧コーティングによって塗布される、請求項17~20のいずれか1項に記載のコンデンサ(1)の製造方法。
【請求項22】
単一の誘電体層(2)を有するコンデンサ(1)であって、前記誘電体層(2)はポリアミドイミドを含み、第1の電極(3)が前記誘電体層(2)に直接隣接して配置されており、前記誘電体層(2)は、前記ポリアミドイミドのアミド基及びイミド基を含むポリアミドイミド主鎖を含み、前記誘電体層(2)内には、前記ポリアミドイミド主鎖間の、又は、ポリマー主鎖の内部の、化学的な架橋が形成されており、前記架橋は、ポリアミドイミド主鎖を直線的に互いに結合する、コンデンサ(1)。
【請求項23】
コンデンサ(1)の製造方法であって、
堆積面上にプレポリマー・ポリアミドイミド溶液を塗布し、
前記堆積面上の前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液を乾燥させ、
乾燥した前記プレポリマー・ポリアミドイミド溶液をアニールする、
ことによる誘電体層(2)の製造を含み、
前記堆積面は、基板(7)の表面であり、
前記誘電体層(2)は、その生成の後に、誘電体膜を生成するために前記堆積面から剥離され、
前記誘電体膜は、メタライジングされ、
メタライジングされた前記誘電体膜は、巻回される、コンデンサ(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー誘電体は、パワーエレクトロニクスの用途において、特に例えば電気コンデンサのような受動素子において、多様な用途に適用されている。
【0003】
コンデンサ誘電体として、一例を挙げれば、例えば特許文献1のポリエーテルイミドのような、ポリイミドを含有する誘電体膜が、既に提案されている。
【0004】
ポリアミドイミドは、これまで、とりわけエナメル線等のための耐熱性被膜としての使用を通じて、知られてきた。
【0005】
それらは、コンデンサ用途については、これまで、第一に、誘電体層としての無機構成要素に関連して提案されてきた。
【0006】
特許文献2は、ポリアミドイミドが、コンデンサ誘電体中の無機粒子のためのマトリックスの成分であり得ることを開示している。
【0007】
特許文献3は、ポリアミドイミドが、第1の誘電体層としての有機ポリマー材料、及び、第2の誘電体層として無機材料から成る、均一ではない誘電体層を有するコンデンサにおいて、使用され得ることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2007/0258190号明細書
【文献】特開2000-338667号公報
【文献】米国特許出願公開第2010/0259865号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、卓越した温度安定性と同時に高い又はカスタマイズされた誘電率を有するコンデンサ材料としてポリアミドイミドを使用することは、これまで知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、単一の誘電体層を有するコンデンサが提示される。この場合、誘電体層はポリアミドイミドを含み、少なくとも1つの第1の電極が、誘電体層に直接隣接して配置されている。
【0011】
直接隣接する電極は、層の上に置かれることができる。好ましくは、直接的な接触は、以下に記載される被膜法によって達成され得るように、分子のレベルで存在する。
【0012】
第2の電極は、好ましくは、同様にコンデンサの一部である。任意に又は技術的な要求に応じて、第2の電極も、誘電体層に直接隣接して配置されていることが好ましい。この場合、誘電体層は、第1及び第2の電極によって、サンドイッチ状に取り囲まれる。
【0013】
単一の誘電体層は、例えば均質であり、ポリアミドイミドを含むことができる。均質は、ここでは、特に、誘電体層が、層を不均質にするであろう添加物を含まないことを意味し得る。特に、マイクロ材料若しくはナノ材料又は付加的な他の固体が、誘電体層に含まれていないと、好ましい。誘電体層は、好ましくは、ハイブリッド材料を含まない。電極は、単一の誘電体層に直接隣接して配置されているので、単一の誘電体層と電極との間には、例えば単一の誘電体層とは異なる更なる層もない。
【0014】
ポリアミドイミドを含む単一の誘電体層は、他のポリマーベースの誘電体層と比較して、ほぼ300℃まで温度安定性を有する、という利点を有する。更に、ポリアミドイミドを含む誘電体層は、広い入力周波数範囲に亘って高い誘電率を有することができる。その場合、好ましくは、高い絶縁破壊電圧も維持される。
【0015】
したがって、コンデンサ用途における誘電体層用のポリマー材料としてのポリアミドイミドによって、高い温度安定性とカスタマイズされた又は安定した誘電特性という、相反する要求を、同時に満たすことができる。
【0016】
したがって、ポリアミドイミドを含む単一の誘電体は、コンデンサ誘電体用に最も広く使用されている材料の1つである二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)の代用となり得る。これは、最大105℃の通常の使用温度及び2.2の領域の低い誘電率を有するBOPPが、特に電気的な又は電子的なパラメータを同時に維持しながらの温度安定性に関して、当面の開発に関してその性能限界に達しているため、有利であり得る。
【0017】
したがって、本発明によるポリアミドイミド含有誘電体層は、150℃までのより高い温度安定性を有し得る。更に、BOPPのほぼ2倍の誘電率が、より高い温度においても達成され得る。
【0018】
したがって、例えば航空宇宙工学におけるもののような将来の用途に対する要求さえも満たされる可能性があり、その場合、150℃を超える、場合によっては200℃を超える動作温度が、達成されるかも知れない。
【0019】
コンデンサの好ましい実施形態によれば、誘電体層は、少なくとも50重量%のポリアミドイミドから成る。
【0020】
単一の誘電体層中のこのような高いポリアミドイミド含有率は、ポリアミドイミドの卓越した誘電特性が、他の可能な任意の成分に勝ることを保証し得る。
【0021】
好ましくは、誘電体層は、90%以上のポリアミドイミドの重量比を有し、更に好ましくは、誘電体層はポリアミドイミドのみから成る。
【0022】
本発明者らは、ポリアミドイミドが化学的に容易に官能化可能であることを認識した。したがって、それは、その特性において、例えば有機成分のみによって用途に応じて満たされるべき卓越した電気的又は電子的な特性に、柔軟にカスタマイズされ得る。したがって、コンデンサは、好ましくは、好ましくは単一の誘電体層である誘電体層が、無機材料のような固体の付加的な材料を含まないように、製造されている。誘電体層は、好ましくは、ハイブリッド材料ではない。
【0023】
無機材料を含まない誘電体層は、無機-有機ハイブリッド材料から成る混合層よりも、製造が容易であり得る。
【0024】
好ましくは、コンデンサの誘電体層は、ポリアミドイミドのアミド基及びイミド基を含むポリアミドイミド主鎖を含む。
【0025】
これは、特に、ポリアミドイミド・ポリマーの主鎖が、アミド結合又はイミド結合のみを介して形成されることを意味する。これは、更なる化学官能基が主鎖に又は主鎖内に結合され得ることを排除しない。
【0026】
ポリアミドイミド化合物又はそれらに含まれる化学結合は、高温で安定であり、これは、高温条件下で使用される誘電体層にとって、利点である。
【0027】
更に好ましい態様として、誘電体層に含まれているポリアミドイミド主鎖は、化学的に互いに架橋されていることができ、すなわち、架橋を有することができる。
【0028】
カスタマイズされた数の架橋によって、ポリアミドイミドの機械的及び電子的な特性、並びに、特に温度特性を、狙いを定めて調整することができる。
【0029】
原則的に、本出願の意味における用語「架橋」は、ポリアミドイミド主鎖間又はポリアミドイミド主鎖の異なる点間に存在する、任意の種類の共有化学結合を含む。架橋は、ポリアミドイミド主鎖の繰り返し単位間の化学結合に加えて形成された化学結合である。この場合、好ましくは、架橋の数は、熱可塑性ポリアミドイミドが形成されるように選択される。
【0030】
好ましくは、架橋は、ポリアミドイミド主鎖の末端単位を他のポリアミドイミド主鎖の末端単位に連結する直線的な結合を含み、それにより、直列の鎖連結が生成される。好ましくは、主鎖間の直線的な結合は、ポリアミドイミド主鎖の内部の結合タイプとは異なる。すなわち、架橋は、好ましくは、アミドイミド・モチーフを有さない。しかしながら、架橋は、アミド結合又はイミド結合であることができる。その場合、このような結合は、ポリアミドイミド主鎖内で繰り返されるポリアミドイミド・モチーフの繰り返しモチーフを中断させることができる。複数のポリアミドイミド主鎖が、直列に直線的に結合され得る。
【0031】
架橋の数は、アニール温度によって制御することができる。これが高ければ高いほど、より多くのポリアミドイミド主鎖が互いに直列に結合される。したがって、ポリマー鎖は、アニール温度が上昇するにつれて長くなる。それにより、誘電体層の機械的な安定性を高めることができる。更に、散逸率を低減することができる。温度によって架橋の程度を制御するこの方法は、特に直線的な結合にとって好ましい。
【0032】
好ましくは、化学的な架橋は、ウレタン架橋を介して形成される。
【0033】
ウレタン架橋は、好ましくは、主鎖上にあるイソシアネート基を介して形成されることができ、当該イソシアネート基は、ウレタン結合を形成すべく、他の主鎖上の水酸基と反応する。
【0034】
出発材料中にラクタムが官能基として存在することもできる。なぜなら、ラクタムは、イソシアネート基と水酸基との間の反応を制御するための保護基として機能するからである。このようなラクタムは、例えば温度の作用によって開環され、イソシアネート基が形成され、次いで、このイソシアネート基が、例えば他の主鎖の水酸基と反応する。すなわち、出発材料中には、イソシアネート基及び/又はラクタム官能基が存在し得る。しかしながら、好ましくは、出発材料中にはラクタムのみが存在する。これは、非常に長い耐久性が室温においても達成され得るためである。更に、例えば、誘電体層の製造中の適用可能な滴下時間を延長することもできる。
【0035】
ウレタン架橋のような他の架橋に代えて又はこれに加えて、好ましくは、イミド架橋が、ポリアミドイミド主鎖間に形成され得る。
【0036】
イミド架橋は、2つのポリアミドイミド主鎖間に架橋としてのイミド架橋を形成すべく、例えば、無水物基が、他のポリアミドイミド主鎖上の例えばアミンのような適切な基と反応することにより、反応してイミドを形成することができる。好ましくは、無水物基は、無水フタル酸基である。このような反応により、ポリアミドイミド主鎖の異なる点間に結合を形成することもできる。
【0037】
ウレタン架橋もイミド架橋も、直線的な結合の技術的に簡便な形成に、特に好適である。更に、これらの基との直線的な結合の程度は、アニール温度を制御することによって特に正確に調整することができる。
【0038】
更に、架橋は、尿素架橋を介して形成することもできる。これは、ポリアミドイミド主鎖上のアミン基の関与の下で、形成することができる。これによって3次元架橋が形成されると、すなわち、この結合モチーフによって排他的にではなく直線的な結合が形成されることが、特に好ましい。更により好ましくは、尿素架橋を介して、直線的な結合ではないこのような架橋のみが形成され得る。特に好ましくは、これらは、直線的な結合と並存することができる。例えば、尿素架橋を介した3次元的に架橋されたポリマー材料も、イミド架橋又はウレタン架橋を介して直線的に架橋されたポリマー材料も、誘電体層のために形成されている又は形成されることができる。
【0039】
原則的に、ウレタン架橋は、イミド架橋に加えて存在することができる。しかしながら、ただ1つの直線的な結合モチーフが存在することが好ましい。なぜなら、これは、プロセス制御を容易にするからである。
【0040】
適切な出発材料の例は、例えば、商業的に入手可能なRESISTHERN(登録商標)AI 336 Lである。
【0041】
このような出発材料の例として、ポリアミドイミド樹脂溶液を用いることができ、それは、とりわけ、ワイヤ又は電極の絶縁被膜のためにも使用することができる。このようなポリアミドイミド樹脂溶液の例は、例えば、商業的に入手可能なRESISTHERN(登録商標)AI 336 Lである。
【0042】
コンデンサの単一の誘電体層の更なる好ましい態様として、誘電体層は、ポリアミドイミド主鎖が部分的に芳香族であるように形成されていることができる。
【0043】
部分芳香族ポリアミドイミド主鎖は、特に、柔軟性と温度安定性のバランスのとれた関係に寄与する。したがって、完全芳香族ポリアミドイミド主鎖は、硬すぎる可能性がある。しかしながら、部分芳香族性、すなわち、例えばイミド成分の芳香族性により、必要な温度安定性を柔軟性と同時に得ることができる。
【0044】
好ましい態様によれば、ポリアミドイミドは、フェニレン基及び/又はフラン基を、官能基として含むことができる。
【0045】
例えばポリアミドイミド主鎖中におけるフェニレン基の導入は、主鎖の必要な柔軟性の獲得に関連し得る。例えば、主鎖内の1つ又は複数の異なるフェニレン基の中からの選択に応じて、繰り返し単位の長さ及びその柔軟性が適合される。例えば、ビフェニル、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン、オルトジベンジルベンゼン及びパラジベンジルベンゼン又はトリベンジルベンゼンを、可能なフェニレン基として使用することができる。原則的に、ポリアミドイミド主鎖内には、これらの又は他のフェニレン基のうち複数の異なるものが存在し得る。すなわち、ポリアミドイミド主鎖内に種々のフェニレン基が存在することが可能である。しかしながら、多くの場合、主鎖内には、ただ1つのタイプのフェニレン基が存在する。
【0046】
フラン自体が高い極性を有するので、異なるフランを選択することにより、誘電体層の極性を調整することができる。例えば、このために、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、フラノン又はヒドロキシフラノンが使用される。例えば、ヒドロキシフラノン又は他のフラン誘導体は、例えばラクタム基から形成され得るイソシアネート基を介した架橋のために、ウレタン架橋を形成するための反応相手として必要とされる、1つ又は複数の水酸基を有することができる。
【0047】
別の好ましい態様によれば、ポリアミドイミドは、化学式(化1)に従う構造を有することができ、ここで、R1は、ラクタム、無水物若しくはアミンのような未反応基、又は、ウレタン架橋若しくはイミド架橋である。好ましくは、R1は、ウレタン架橋又はイミド架橋である。ここでは、R2はフェニレン基、R3はフランであることができる。代替的に、R3は、ウレタン架橋又はイミド架橋であることができる。この場合、ポリアミドイミド主鎖は、両端において、2つの別のポリアミドイミド主鎖に結合されている。
【0048】
【0049】
原則的に、ラクタムは、既に上述したように、例えば出発材料中のポリマー鎖中のR1として末端に結合されている、好ましい基である。ラクタムから形成されたイソシアネート基を介して、原則的には、他のポリアミドイミド主鎖への、例えばウレタン架橋の形態の架橋が、形成され得る。ラクタムは、例えば、β、γ、δ又はεラクタムであり得る。これらの中で好ましいのは、特にδ及びεラクタムである。
【0050】
ウレタン架橋は、出発材料中で末端にあるラクタム及び末端にあるフランから水酸基と共に形成することができ、それにより、主鎖は直列に連結され、したがって延長される。この反応により、主鎖は、形成されたポリアミドイミド層が熱可塑特性を有するように、架橋され得る。その場合、架橋の数は、コンデンサの誘電体層が硬く脆くなりすぎないように、調整される。
【0051】
上で説明したように、直線的に結合されたイミド架橋は、アミンと反応する例えば無水フタル酸のような無水物を介して、形成され得る。代替的に、イソシアネート基は、無水物基と反応してイミドとなり、その際、CO2が分離される。
【0052】
出発材料中において、すなわち直線的な結合を含む架橋が生成される前において、対応する結合に適した官能基は、化学式(化1)におけるR3又はR1位置にある。
【0053】
コンデンサの好ましい実施形態においては、多数の第1の電極層が、第2の電極層と交互に積層されている。それぞれ2つの隣接する電極層の間には、誘電体層が配置されている。
【0054】
すなわち、コンデンサは、多層コンデンサであることができる。
【0055】
代替的に、多層コンデンサは、例えばコイルから切断され得る。この場合、導電性の又は好ましくは金属の構造化された層を、電極として使用することができ、当該層は、少なくとも2つの電気的に分離された領域を有し、したがってコンデンサ電極として機能する。
【0056】
更なる好ましい態様によれば、第1の電極層の全てが、第1の外部接点に導電的に接続されることができ、第2の電極層の全てが、第2の外部接点に導電的に接続されることができる。
【0057】
外部接点は、フレーム溶射、PVDプロセス又は他の方法によって塗布され得る。
【0058】
対応する外部接点を有する多層コンデンサは、様々な技術的用途での使用を可能にする。
【0059】
更なる実施形態によれば、基板は、電極層の平面に対して平行に位置するコンデンサの側面に配置することができる。
【0060】
上述したように、このような基板は、導電性であることができ、すなわち電極機能を果たすこともできるが、絶縁作用を有して製造プロセスの後に部品に残存することもできる。
【0061】
特に、上述したようなコンデンサは、表面実装デバイス(SMD)であることができる。
【0062】
更に、コンデンサは、上述したように、スルーホールコンデンサ(Durchsteckkondensator)であることもでき、すなわちスルーホール実装用のワイヤを有する。これらのワイヤを用いて、コンデンサを、導電的にも機械的にも、外部接点に取り付けることができる。
【0063】
コンデンサは、巻回コンデンサであってもよい。特に、この場合、コンデンサは、誘電体層に直接接触する電極として、単一のメタライゼーションのみを有することができる。誘電体層に直接接触する2つの電極を有する構造も可能である。
【0064】
本発明の更なる態様として、誘電体層の製造を含む、コンデンサの製造方法が提示される。誘電体層は、プレポリマー・ポリアミドイミド溶液を堆積面上に塗布し、続いて堆積面上のプレポリマー・ポリアミドイミド溶液を乾燥させ、乾燥したプレポリマー・ポリアミドイミド溶液をアニールすることにより製造される。
【0065】
堆積面は、電極又は電極層の表面であることができる。堆積面は、基板の表面であってもよい。基板は、完成したコンデンサの基板であってもよいし、そこから塗布され場合によっては架橋されたポリアミドイミド膜が再び剥離される、中間キャリアにすぎなくてもよい。
【0066】
この方法により、前述したコンデンサを製造することができる。
【0067】
このようにして、単一の誘電体層も製造することができる。プレポリマー・ポリアミドイミド溶液は、特に、絶縁被膜としても適している樹脂、例えば有機溶剤中に溶解されたRESISTHERN(登録商標)AI 336 Lの溶液であり得る。
【0068】
ポリアミドイミドは、基本的に多くの溶剤に可溶であり、閉じた層又は膜を形成するために多様な濃度で塗布され得る。したがって、それらは、以下により詳細に説明するように、実に様々な堆積方法又は種々の層厚さの柔軟な使用に適している。
【0069】
プレポリマー・ポリアミドイミド溶液の乾燥の際、溶剤は大部分が又は完全に除去され得る。
【0070】
乾燥したプレポリマー・ポリアミドイミド溶液のアニールの際、材料はより緻密になり、例えばラクタムを介した架橋が、このようにして形成された層内で使用され得る。
【0071】
架橋反応の速度は、アニール温度によって決定することができる。
【0072】
好ましくは、架橋度は、プレポリマー・ポリアミドイミド溶液中のポリアミドイミド主鎖上のリンカー基(例えば、ラクタムにより保護されたイソシアネート基)の数によって決定され、アニール温度は、全てのリンカー基が架橋を形成するように選択される。
【0073】
好ましい場合において、リンカー基は、ポリアミドイミド主鎖の末端に配置されている。基本的に、しかし特にこの場合、アニール温度によって、架橋度は影響を受けるか又は調整され得る。より高いアニール温度が選択されるほど、所定の時間内により多くの架橋が形成される。それにより、より多くのポリアミドイミド主鎖を一緒に結合させることができる。
【0074】
更なる態様として、方法は、前述したように、堆積面が基板の表面であり、誘電体膜を生成するために誘電体層がその製造の後に堆積面から剥離され、誘電体膜がメタライジングされ、最後にメタライジングされた誘電体膜が巻かれるように、変更することができる。
【0075】
したがって、前述した方法を、巻回コンデンサを製造するために使用することができる。これは、メタライジングによって第1及び第2の電極に設けられる、このようにして形成された誘電体層又は膜を、メタライジングの前にも更に処理することができるという利点を有する。一例を挙げれば、材料特性を最適化するために、箔引き延ばしなどの方法を適用することができる。
【0076】
更なる態様によれば、コンデンサの製造は、以下の点を含むことができる:導電性の基板、又は代替的に、その表面上に第1の電極層が生成される基板が、使用される。したがって、堆積面は、導電性の基板又は第1の電極層の表面であることができる。誘電体層を堆積面上に塗布した後、第2の電極層を誘電体層上に生成することができ、プレポリマー・ポリアミドイミド溶液を第2の電極層上に塗布し、これを乾燥させ、続いてアニールすることによって、更なる誘電体層をこの第2の電極層上に生成することができる。
【0077】
導電性の基板の場合、この基板は、電極として、例えば第1の電極として機能することができる。この上方に、第2の電極層を塗布することができる。この場合、もちろん、多層コンデンサを得るために、第2の電極層上に再び更なる誘電体層、続いて第1の電極層を塗布することができる。
【0078】
これに代えて、上述したように、基板は、例えば非導電性、すなわち電気絶縁性であることができる。その場合、更なる層が基板の上方に塗布又は配置される前に、先ず電極層が塗布される。いずれの場合も、巻回コンデンサ又は巻回体から切り出される多層コンデンサとは対照的に、積層された多層コンデンサを溶液から構築するための方法である。
【0079】
プレポリマー・ポリアミドイミド溶液が、イソシアネート基及び/又は更に好ましくはラクタム基として保護されたイソシアネート基がポリアミドイミド主鎖に配置された、ポリアミドイミド主鎖を含むと、上述した方法にとって好ましい。
【0080】
これらは、上述した利点を有する。
【0081】
好ましくは、方法は、プレポリマー・ポリアミドイミド溶液が、ドクターブレード、回転コーティング(スピンコーティング)、ノズルコーティング(スロットダイコーティング)又は噴霧コーティング(スプレーコーティング)によって塗布されるように、実行され得る。
【0082】
以下において、本発明が、例示的な実施形態について、詳細に説明される。これらの例示的な実施形態は、以下の図面に示されており、これらの図面は、縮尺どおりではない。したがって、長さ並びに相対的及び絶対的な寸法を、図面から読み取ることはできない。本発明は、また、以下の記述に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】コンデンサの第1の実施例を、概略的な断面図で示している。
【
図2a】熱重量分析におけるポリアミドイミド層の質量損失を示す。
【
図3】コンデンサの第2の実施例としての、第1の多層コンデンサを、概略的な断面図で示している。
【
図4】コンデンサの第3の実施例としての、第2の多層コンデンサを、概略的な断面図で示している。
【
図5】コンデンサの第4の実施例としての、第3の多層コンデンサを、概略的な断面図で示している。
【
図6】コンデンサの第5の実施例としての、スルーホール実装に適した多層コンデンサを、概略的な断面図で示している。
【
図7】コンデンサの第6の実施例としての巻回コンデンサを、概略的な断面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、コンデンサの第1の実施例を、概略的な断面図で示している。コンデンサ1は、有機誘電体層2を有する。誘電体層2は、単一の層である。これは、それが単一の材料から成り、互いに分離可能な如何なる体積領域も含まないことを意味する。したがって、それは複合材料ではない。誘電体層2は、少なくとも50重量%のポリアミドイミドから成る。好ましくは、ポリアミドイミド含有率は、より高く、例えば90%を上回る。更に好ましくは、誘電体層2は、ポリアミドイミドのみから成る。
【0085】
ポリアミドイミドは、任意のポリアミドイミドであることができ、特に、部分芳香族ポリアミドイミドであることができる。構造式(化2)に従うポリアミドイミドが特に好ましい。
【0086】
【0087】
構造式(化2)に従うポリアミドイミドは、ポリアミドイミド主鎖を有し、複数の官能基を有することができる。一例を挙げれば、ポリアミドイミド主鎖内には、構造式(化2)のR2として、フェニレン基が含まれていることができる。フェニレン基によって、ポリアミドイミド主鎖の柔軟性を調整することができる。例えば、ビフェニル、ジフェニルメタン若しくはトリフェニルメタン、オルトジベンジルベンゼン若しくはパラジベンジルベンゼン、又は、トリベンジルベンゼンを、使用することができる。
【0088】
更に、フランを、特に末端に、例えばR3として、ポリアミドイミド主鎖上に配置することができる。したがって、その極性によって、誘電体層の極性を調整することができる。例えば、フランとして、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、フラノン又はヒドロキシフラノンを使用することができる。
【0089】
代替的に、無水物をR3として使用することができる。
【0090】
更に、好ましくは架橋が、誘電体層2中の種々のポリアミドイミド主鎖の間に存在する。
【0091】
好ましくは、ポリアミドイミド主鎖は、ウレタン架橋及び/又はイミドを介して、互いに結合されている。これらの結合は、例えば、構造式(化2)のR1残基の位置に、末端に存在し得る。これに代えて、架橋されていない基、例えばラクタムイソシアネート又は無水物も、R1位置に存在し得る。
【0092】
好ましくは、誘電体層2は、ワイヤの被膜に適したポリアミドイミド樹脂混合物、例えば、RESISTHERN(登録商標)AI 336 L溶液から製造された。
【0093】
誘電体層2の上方及び下方には、第1の電極3及び第2の電極4が配置されている。第1の電極3、誘電体層2も、第2の電極4も、平坦に形成することができる。
【0094】
好ましい積層は、平坦に形成された層の最大の面に亘って行われる。
【0095】
電極の層厚さは、例えば10~50nm、好ましくは20nmであることができる。製造方法に応じて、誘電体層2の層厚さは、500nm~10μmの範囲に設定することができる。
【0096】
電極は、アルミニウム若しくは銀から、又は好ましくはアルミニウム亜鉛合金から成ることができる。代替的に、電極は、クロム/アルミニウム、クロム/銀、又は、クロム/ニッケル/アルミニウム、又は、クロム/ニッケル/銀から成る多層電極であり得る。ここに示された元素に加えて、例えばパリレン又はフッ素系炭化水素のような炭化水素化合物から成る保護層が、電極を有さないコンデンサの側面上に塗布されていてもよい(図示せず)。
【0097】
図示されていない代替例として、誘電体層にただ1つの電極が接触していてもよい。
【0098】
図1に示されたコンデンサの第1の実施例は、如何なる任意の方法によっても製造することができる。好ましくは、それは、溶剤ベースのプロセスによって製造される。例えば、先ず第1の電極3が、基板上に生成され得る。基板は、例えばガラス又は半導体ウェハーのような剛な基板であることができる。それは、例えばアルミニウム若しくは銅のような金属膜、あるいは、例えばポリイミドのようなフレキシブルなポリマー膜又は剥離テープであり得る。基板の表面上に、第1の電極が、例えばスパッタリング又は熱蒸着のような物理蒸着(物理気相成長、PVD)によって塗布される。
【0099】
ここで、堆積面としての電極3の表面上に、プレポリマー・ポリアミドイミド溶液から成る誘電体層2を、塗布することができる。プレポリマー・ポリアミドイミド溶液は、好ましくは、大部分が架橋していないポリアミドイミドを含む。
【0100】
プレポリマー・ポリアミドイミド溶液は、市販のポリアミドイミド樹脂混合物(例えば、RESISTHERN(登録商標)AI 336)から、溶剤での更なる希釈によって調製される。
【0101】
ポリアミドイミド樹脂混合物は、N-メチルピロリドン(NMP)及びキシレンの溶液中に約36%の不揮発性の物質(主にポリアミドイミド主鎖)を含む。それは、4750±1750mPa・sの初期粘度を有する。更に、それは約1.1g/mlの密度を有する。
【0102】
このようにして提供されたポリアミドイミド溶液は、キシレン又はN-メチルピロリドンを用いて、初期のポリアミドイミド濃度の20%以下の濃度に調整される。一例を挙げれば、キシレン中の初期のポリアミドイミド樹脂混合物に対して、19質量%又は15質量%のポリアミドイミド濃度が、生成される。
【0103】
使用される濃度は、達成すべき層厚さ、又は、使用される堆積方法の種類に依存する。
【0104】
ここで、堆積面としての第1の電極3の表面上に、このようにして生成されたプレポリマー・ポリアミドイミド溶液が塗布される。塗布は、ドクターブレード、ステンシル印刷、回転コーティング又は噴霧コーティングによって行うことができる。コーティング方法は、達成すべき誘電体層2の厚さに依存する。例えば、特に500nm~5μmの範囲の比較的厚い層は、回転コーティング若しくは噴霧コーティングによって、又は、例えば1μm~10μmの範囲の比較的厚い層は、ドクターブレード若しくはステンシル印刷によって、それぞれ塗布することができる。
【0105】
このように塗布された溶液は、60~100℃、好ましくは80℃の温度で乾燥される。続いて、乾燥した膜は、200℃を超える温度、好ましくは250℃でアニールされる。
【0106】
乾燥の際、溶剤の大部分は、除去される。揮発性物質の他の部分は、アニールによって除去される。更に、アニールの際、主鎖間の架橋が使用され得る。250℃の温度では、5~10分でほぼ完全な架橋を達成することができる。ここで、好ましくは、ラクタムとして保護されたイソシアネート基が活性化され、それは続いて、例えばフラン残基上に存在する既存の水酸基と又は無水物と反応する。
【0107】
冷却の後、このようにして調製された誘電体層上に、第2の電極4を、再びPVDによって塗布することができる。
【0108】
方法の最後に、
図1の物品を得るために、基板を除去することができる。しかしながら、基本的には、それはコンデンサ上に残存することもできる。
【0109】
図2aは、使用されたポリアミドイミド樹脂混合物の熱重量分析(TGA)を示す。温度勾配は10K/minで一定である。
図2aのグラフが示すように、約275℃の温度までは如何なる質量損失も生じない。約300℃を超える温度で初めて、5%未満の質量損失が生じる。400℃を超えて初めて、質量損失は5%を上回る。
【0110】
これは、誘電体としてのポリアミドイミドの極めて高い温度安定性を証明する。特に、将来の用途のために、200℃を超える長期間の温度安定性が期待され得る。
【0111】
これにより、特に、完成したコンデンサを、例えばはんだ付けによって、部品又は誘電体層の劣化を想定することなく、取り付けることができる。
【0112】
コンデンサ用の誘電体としてのポリアミドイミドの更なる有利な特性は、以下の表1及び2並びに
図2Bのグラフに示されている。
【0113】
表1は、
図1に記載された構造と同様のポリアミドイミド平板コンデンサの散逸率(tanδ)を示す。ここで測定された誘電体層は、溶剤としてのキシレンとの初期混合物に対して15%の質量分率に希釈された上記ポリアミドイミド樹脂混合物から測定された(スキージ速度50mm/s)。層厚さは3μmであり、コンデンサの面積は50mm
2であった。測定は、Novocontrol社のPHECOS冷却/加熱システムを有するKeysight E4990Aを用いて実行された。
【0114】
【0115】
表1が示すように、散逸率は、試験された周波数範囲及び温度範囲において常に2%未満である。注目すべきことに、散逸率は、温度の上昇と共に僅かに改善しさえする。これは、誘電体としてのポリアミドイミドが、傑出した誘電特性を有することを示している。
【0116】
これは、150℃の一定の温度における表1を参照して説明した誘電体層の散逸率を周波数の関数として示す、
図2Bに示されたグラフでも確認される。したがって、1kHz~1MHzの試験された周波数範囲における散逸率は、一次近似では一定と見なし得ることを、見て取ることができる。
【0117】
この一定の挙動は、一般にポリアミドイミド・コンデンサの幅広い使用を可能にし、特に個々のポリアミドイミド・コンデンサの高い柔軟性を可能にする。
【0118】
表2は、
図1による構造に対応するポリアミドイミド平板コンデンサの誘電率(ε
r)の温度及び電気周波数に対する依存性を示す。ここで使用された誘電体層は、最初に使用されたポリアミドイミド樹脂混合物に対して19重量%の溶液を用いて製造された。層厚さは5μmであり、コンデンサの面積は50mm
2であった。測定は、Novocontrol社のPHECOS冷却/加熱システムを有するKeysight E4990Aを用いて実行された。
【0119】
【0120】
表2は、温度及び周波数に関して誘電率に僅かな変動しかないことを示している。基本的に、周波数の上昇に伴う誘電率の低下又は温度の上昇に伴う誘電率の増大を見て取ることができるが、平均誘電率4のポリアミドイミドは、標準材料BOPPのほぼ2倍の誘電率を有する。
【0121】
この高い誘電率は、ポリアミドイミドの部分芳香族特性及び例えばフラン基のような極性基に起因する。更に、誘電損失又はその他の特性が特定の周波数範囲において最適化されるように、ポリアミドイミドを調整することが、基本的に可能である。これは、種々のポリアミドイミドから成るプレポリマー・ポリアミドイミド溶液の組成によっても、主鎖上の官能基の特別な選択によっても、行うことができる。
【0122】
表2に記載された平板コンデンサにおいて、室温での絶縁破壊電圧は、周波数に依存して300~550V/μmである(Sefelec S50で測定)。室温での絶縁抵抗は、常に3TΩを上回る(Novocontrolsystem Alpha Aで測定)。
【0123】
これは、使用されたポリアミドイミドが、高い絶縁破壊電圧及びオーム絶縁抵抗と同時に優れた誘電率を有することを示している。
【0124】
図3は、コンデンサ1の第2の実施例を、概略的な断面図で示している。コンデンサ1は、第2の電極4と交互に積層された多数の第1の電極3を有する。2つの電極は、平坦な電極である。
【0125】
第1の電極3と第2の電極4との間、すなわちそれぞれ2つの隣接する電極の間には、常に1つの誘電体層2が配置されており、これは、それぞれ
図1の第1の実施例の誘電体層2に対応する。
【0126】
第1の電極3及び第2の電極4は、内部電極の性質を有する。
【0127】
したがって、コンデンサ1の第2の実施例は、多層コンデンサである。
【0128】
多層コンデンサの反対側の側面には、第1の外部接点5及び第2の外部接点6が配置されている。
【0129】
第1の電極3は、第1の外部接点5に導電的に接続されている。第2の電極4は、導電的に第2の外部接点6に接続されている。
【0130】
このように組み立てられたコンデンサは、表面実装デバイス(SMD)であることができ、これは、その温度安定性誘電体層2の故に、はんだ付けに非常に好適である。コンデンサ1をSMDコンデンサとしてより有利に使用できるようにするために、外部接点5及び6をクランプ状に構成することができる。すなわち、外部接点5及び6は、両側面上で積層方向に若干延在することができる。
【0131】
コンデンサは、例えば、直方体状であることができ、第1の電極、誘電体層、第2の電極及び更なる誘電体層を含む、合計1000以上の繰り返し単位を有することができる。それは、3~4mmの長さ、2~3mmの幅及び1~2mmの高さを有することができる。個々の誘電体層2は、ここでは、500nm~5μm、好ましくは500nm~2μmの厚さを有することができる。内部電極は、10~50nm、好ましくは20nmの厚さを有する。
【0132】
しかしながら、完成したコンデンサの寸法は、ここで提示されたものと異なっていてもよい。長さ、幅、高さ及び層厚さは、種々の技術的要件に又は種々の技術的タスクに関して、適合させることができる。
【0133】
製造方法は、第1の実施例の製造方法と同様であり得る。例えば、基板上には、例えば第1の電極層3をPVDによって塗布することができる。続いて、溶液から、誘電体層2を塗布することができ、続いて、再びPVDによって第2の電極層4を塗布することができる。この上に、再び溶液から、誘電体層2が塗布される。コンデンサの所望の数の層又は特定の容量を達成するために、これを繰り返すことができる。
【0134】
原則的に、方法において、内部電極を構造化することができる。これは、堆積の際に既に、又は、物理気相成長の後に、行うことができる。
【0135】
積層の後に、基板を除去することができる。
【0136】
任意に、続いて、外部接点がないままである側面上に、第1の実施例のものと同様の保護層(図示せず)を、蒸着プロセス及び溶剤ベースのプロセス、又は、コーティングプロセスによって、塗布することができる。
【0137】
外部接点5及び6は、積層が完了したコンデンサ1上に取り付けられる。これらは、例えば黄銅、銅、錫、アルミニウム、銀などから成ることができ、物理気相成長プロセス又は他の、例えば溶剤ベースのプロセスのいずれかによって、塗布することができる。
【0138】
図4は、概略的な断面図で、やはり多層コンデンサであるコンデンサ1の第3の実施例を示している。
【0139】
図4のコンデンサ1は、
図3に示され前述されたコンデンサに、大部分において対応する。しかしながら、
図4に示された例では、ここでは基板7である元の基板は、依然として部品上に存在する。
【0140】
基板7は、
図4の場合、絶縁性であり、例えば、ガラス基板、半導体ウェハー、又は、ポリイミド膜若しくは剥離テープのようなフレキシブル基板であることができる。
【0141】
図4の第3の実施例の製造方法は、基板の除去を除いて、
図3の第2の実施例の製造方法に対応する。
【0142】
図5は、コンデンサ1(ここでは多層コンデンサ)の第4の実施例を、概略的な断面図で示している。
図5に示された第4の実施例は、大部分において
図4のものに類似している。
【0143】
しかしながら、ここでは、基板7は、例えばアルミニウム、銅又は同様の材料から成る金属製の導電性の基板である。それは、例えば膜として存在する。その導電性の故に、第1の電極3としての導電層を基板上に設ける必要はない。基板7自体は、第1の電極3のうちの1つの代わりとして機能することができる。この上に、次いで直接的に誘電体層2が塗布される。
【0144】
基板は、好ましくはコンデンサの幅及び長さの全体に亘って延びるので、第2の外部接点5が基板と電気的に接触しないよう、注意しなければならない。
【0145】
当該方法も、
図4に記載された実施例に類似している。
【0146】
図6に概略的な断面図で示された第5の実施例は、ほぼ全ての点で、コンデンサ1の第2の実施例に類似している。すなわち、それは多層コンデンサでもある。しかしながら、この多層コンデンサは、その外部接点5及び6にワイヤ8及び9を有しており、それらは、1つの用途では、スルーホール実装での取り付けを可能にする。すなわち、それはスルーホールコンデンサである。ワイヤ8及び9は、1つの用途において、接続部位との電気的な及び大抵の場合は機械的な接触を生成する。ワイヤ8及び9は、例えばボンディングのような任意の方法によって、コンデンサ1に固定することができる。
【0147】
図7は、概略的な断面図で、コンデンサ1の第6の実施例を示している。ここでは、それは巻回コンデンサである。その構造において、巻回コンデンサは、第1の実施例に類似しており、すなわち、誘電体層2が、第1の電極3及び第2の電極4によって、サンドイッチ状に取り囲まれる。対応するサンドイッチ状の構造は、巻かれて巻回コンデンサを形成している。
【0148】
しかしながら、使用される製造方法は、
図1に対応する製造方法とは異なる。したがって、好ましくは、基板上に、
図1に関して説明した堆積方法によって、先ず誘電体膜2が生成される。これは、続いて、基板から剥離することができる。それは、次に、任意の方法によって後処理することができる。続いて、このようにして得られた膜は、片面で又はこの場合には両面で、PVDによってメタライジングすることができる。このようにして得られたメタライジングされた膜は、巻回して巻回コンデンサとすることができる。ポリアミドイミドを有する巻回コンデンサ膜の好ましい層厚さは、1μm~10μm、好ましくは2μm~5μmの範囲である。
【0149】
種々の構造を製造するための付加的な又は代替的な方法として、先ず、溶液からのロール・トゥ・ロールプロセスでの誘電体用のポリアミドイミド膜の形成が、予め剥離剤が備えられた基板上へのプレポリマー・ポリアミドイミド溶液のドクターブレードによって行われる。続いて、乾燥、及び同時に、200℃超、好ましくは220℃超、最良には250℃でのアニールが実行される。その後、乾燥され架橋されたポリアミドイミド膜の基板からの剥離、及び、その巻回が続く。任意に、保護としての中間膜を、共に巻回することができる。続いて、電極の塗布が行われる。これは、好ましくは、同様にロール・トゥ・ロールプロセスで実行される。電極層は、ここでは、技術的要求に応じて、片面に又は両面に塗布することができる。電極は、構造化されていてもよいし、構造化されていなくてもよい。縁部に向かう電極の厚さは、適合されることができ又は適合されていることができる。その後、フラットコイルへの任意の後続のプレスを伴う、ロールのセグメント化が続く。続いて、外部接点が、フレーム溶射、PVD(例えば、スパッタリング、熱蒸着)によって、又は、電気的なプロセスによって、塗布される。後者によって、SMD部品を製造することができる。フラットコイルの場合には、同様に、側面接点の塗布、及びそれに加えてワイヤの取り付け、続いて温度安定性の撥水性のグラウトの注入が続く。SMDコンデンサの場合には、既に前述したように、保護層又はバリア層の塗布を行うことができる。
【0150】
しかしながら、上記のように製造された膜の更なる加工は、シート・トゥ・シート法で行うこともできる。ここで、膜片は、例えばDIN A5又はDIN A4サイズのような規定されたサイズに切断される。これらの膜片は、続いて、電極で被覆される。これは、マザースタック(Mutterstack)の製造に相当する。電極被覆は両面で行われ、PVDプロセスによって構造化される。その後、個々の膜片が積み重ねられてプレスされ、その後、個々のコンデンサがマザースタックから切り出され、例えば、フレーム溶射、電気メッキなどによって側面接点が設けられ、続いて、グラウト注入又は保護層若しくはバリア層による安定化が行われる。
【符号の説明】
【0151】
1 コンデンサ
2 誘電体層
3 第1の電極
4 第2の電極
5 第1の外部接点
6 第2の外部接点
7 基板
8 第1のワイヤ
9 第2のワイヤ