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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240402BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240402BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240402BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240402BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240402BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240402BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240402BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09J7/38
C09J7/29
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B27/26
B32B7/027
B32B27/28 101
H01L21/02 C
H01L21/304 631
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022524459
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018599
(87)【国際公開番号】W WO2021235389
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020089610
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】畦▲崎▼ 崇
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 喬士
(72)【発明者】
【氏名】室伏 貴信
(72)【発明者】
【氏名】木下 仁
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017226(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/017225(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059572(WO,A1)
【文献】特開2018-006540(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169958(WO,A1)
【文献】特開2019-161031(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061132(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0024591(KR,A)
【文献】国際公開第2020/203089(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02、21/304、21/52
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路形成面を有する電子部品と、前記電子部品の前記回路形成面側に貼り付けられた粘着性積層フィルムと、前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の面に貼り付けられた熱硬化性保護フィルムと、
を備える構造体を準備する準備工程(A)と、
前記構造体を加熱することにより、前記熱硬化性保護フィルムを熱硬化させる熱硬化工程(B)と、
を備える電子装置の製造方法であって、
前記粘着性積層フィルムが基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備え、電子部品の回路形成面を保護するために用いられる粘着性積層フィルムであって、
前記凹凸吸収性樹脂層は、融点が40℃以上80℃以下であるエチレン系共重合体と、架橋剤と、を含み、
前記凹凸吸収性樹脂層中の前記架橋剤の含有量が、前記エチレン系共重合体100質量部に対して、0.06質量部以上0.60質量部以下である電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置の製造方法において、
前記エチレン系共重合体がエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む電子装置の製造方法
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置の製造方法において、
前記エチレン・ビニルエステル共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む電子装置の製造方法
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記架橋剤が光架橋開始剤および有機過酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含む電子装置の製造方法
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性積層フィルムがバックグラインドテープである電子装置の製造方法
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層が架橋助剤をさらに含む電子装置の製造方法
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置の製造方法において、
前記架橋助剤が、ジビニル芳香族化合物、シアヌレート化合物、ジアリル化合物、アクリレート化合物、トリアリル化合物、オキシム化合物およびマレイミド化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記基材層を構成する樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリイミドからなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記基材層を構成する樹脂がポリエチレンナフタレートを含む電子装置の製造方法
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層の厚みが10μm以上1000μm以下である電子装置の製造方法
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記準備工程(A)は、
前記電子部品の前記回路形成面に前記粘着性積層フィルムが貼り付けられた状態で、前記粘着性積層フィルムにおける前記凹凸吸収性樹脂層を熱硬化または紫外線硬化させる硬化工程と、
前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の面に前記熱硬化性保護フィルムを貼り付ける工程と、
を含む電子装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電子装置の製造方法において、
前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の面に前記熱硬化性保護フィルムを貼り付ける工程における加熱温度が50℃以上90℃以下である電子装置の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電子装置の製造方法において、
前記準備工程(A)は、前記硬化工程の前に、前記電子部品の前記回路形成面に前記粘着性積層フィルムが貼り付けられた状態で、前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の面をバックグラインドするバックグラインド工程を含む電子装置の製造方法。
【請求項15】
請求項乃至14のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記熱硬化工程(B)における加熱温度が120℃以上170℃以下である電子装置の製造方法。
【請求項16】
請求項乃至15のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記電子部品の前記回路形成面はバンプ電極を含む電子装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の電子装置の製造方法において、
前記バンプ電極の高さをH[μm]とし、前記凹凸吸収性樹脂層の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性積層フィルムおよび電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置(例えば、半導体装置)の製造工程では、電子部品(例えば、半導体ウエハ)の非回路形成面(裏面)を保護する観点から、電子部品の非回路形成面に熱硬化性保護フィルムを貼り付ける工程をおこなう場合がある。
このような熱硬化性保護フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2017-1188号公報)に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、非導電性無機材料で構成された保護層と、上記保護層の一方の面に設けられた接着剤層とを具備する半導体用保護フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-1188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の傾向として電子部品の厚みが薄くなってきている。本発明者らの検討によれば、電子部品の厚みが薄くなるに従い、従来の電子装置の製造方法において、電子部品の非回路形成面に熱硬化性保護フィルムを貼り付けた後に上記保護フィルムを熱硬化する際や、バックグラインド工程後に電子部品に反りが生じやすくなる傾向にあることが明らかになった。特に、ウエハーレベルCSPの様に封止樹脂と半導体が一体化されており当該封止樹脂の厚みが比較的厚い場合は、反りが生じやすい傾向にある。電子部品に反りが生じると、電子部品のハンドリングが難しくなったり、電極にクラックが発生したりしてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品の反りを抑制しつつ当該電子部品や周辺装置への汚染を抑制することが可能な粘着性積層フィルムおよび電子装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電子部品の回路形成面を保護するための表面保護フィルムとして、基材層、融点が特定の範囲にあるエチレン系共重合体と、架橋剤と、を含む凹凸吸収性樹脂層および粘着性樹脂層をこの順番に有し、架橋剤の含有量が特定の範囲にある粘着性積層フィルムを使用することにより、電子部品の反りを抑制しつつ、粘着性フィルムに伴う電子部品や周辺装置への汚染(特に粘着性積層フィルムを構成する樹脂の染み出し)が抑制できることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、以下に示す粘着性積層フィルムおよび電子装置の製造方法が提供される。
【0009】
[1]
基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備え、電子部品の回路形成面を保護するために用いられる粘着性積層フィルムであって、
上記凹凸吸収性樹脂層は、融点が40℃以上80℃以下であるエチレン系共重合体と、架橋剤と、を含み、
上記凹凸吸収性樹脂層中の上記架橋剤の含有量が、上記エチレン系共重合体100質量部に対して、0.06質量部以上0.60質量部以下である粘着性積層フィルム。
[2]
上記[1]に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記エチレン系共重合体がエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む粘着性積層フィルム。
[3]
上記[2]に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記エチレン・ビニルエステル共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む粘着性積層フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記架橋剤が光架橋開始剤および有機過酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含む粘着性積層フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
バックグラインドテープである粘着性積層フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記凹凸吸収性樹脂層が架橋助剤をさらに含む粘着性積層フィルム。
[7]
上記[6]に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記架橋助剤が、ジビニル芳香族化合物、シアヌレート化合物、ジアリル化合物、アクリレート化合物、トリアリル化合物、オキシム化合物およびマレイミド化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む粘着性積層フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記基材層を構成する樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリイミドからなる群から選択される一種または二種以上を含む粘着性積層フィルム。
[9]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記基材層を構成する樹脂がポリエチレンナフタレートを含む粘着性積層フィルム。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記凹凸吸収性樹脂層の厚みが10μm以上1000μm以下である粘着性積層フィルム。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む粘着性積層フィルム。
[12]
回路形成面を有する電子部品と、上記電子部品の上記回路形成面側に貼り付けられた粘着性積層フィルムと、上記電子部品の上記回路形成面とは反対側の面に貼り付けられた熱硬化性保護フィルムと、
を備える構造体を準備する準備工程(A)と、
上記構造体を加熱することにより、上記熱硬化性保護フィルムを熱硬化させる熱硬化工程(B)と、
を備える電子装置の製造方法であって
上記粘着性積層フィルムが上記[1]乃至[11]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムである電子装置の製造方法。
[13]
上記[12]に記載の電子装置の製造方法において、
上記準備工程(A)は、
上記電子部品の上記回路形成面に上記粘着性積層フィルムが貼り付けられた状態で、上記粘着性積層フィルムにおける上記凹凸吸収性樹脂層を熱硬化または紫外線硬化させる硬化工程と、
上記電子部品の上記回路形成面とは反対側の面に上記熱硬化性保護フィルムを貼り付ける工程と、
を含む電子装置の製造方法。
[14]
上記[13]に記載の電子装置の製造方法において、
上記電子部品の上記回路形成面とは反対側の面に上記熱硬化性保護フィルムを貼り付ける工程における加熱温度が50℃以上90℃以下である電子装置の製造方法。
[15]
上記[13]または[14]に記載の電子装置の製造方法において、
上記準備工程(A)は、上記硬化工程の前に、上記電子部品の上記回路形成面に上記粘着性積層フィルムが貼り付けられた状態で、上記電子部品の上記回路形成面とは反対側の面をバックグラインドするバックグラインド工程を含む電子装置の製造方法。
[16]
上記[12]乃至[15]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記熱硬化工程(B)における加熱温度が120℃以上170℃以下である電子装置の製造方法。
[17]
上記[12]乃至[16]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記電子部品の上記回路形成面はバンプ電極を含む電子装置の製造方法。
[18]
上記[17]に記載の電子装置の製造方法において、
上記バンプ電極の高さをH[μm]とし、上記凹凸吸収性樹脂層の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子部品の反りを抑制しつつ当該電子部品や周辺装置への汚染を抑制することが可能な粘着性積層フィルムおよび電子装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の粘着性積層フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0013】
1.粘着性積層フィルム
図1は、本発明に係る実施形態の粘着性積層フィルム50の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、基材層20と、凹凸吸収性樹脂層30と、粘着性樹脂層40と、をこの順番に備え、電子部品の回路形成面を保護するために用いられる粘着性積層フィルム50であって、凹凸吸収性樹脂層30は、融点が40℃以上80℃以下であるエチレン系共重合体と、架橋剤と、を含み、凹凸吸収性樹脂層30中の架橋剤の含有量が、エチレン系共重合体100質量部に対して、0.06質量部以上0.60質量部以下である。
エチレン系共重合体の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【0014】
前述したように、本発明者らの検討によれば、電子部品の厚みが薄くなるに従い、従来の電子装置の製造方法において、電子部品の非回路形成面に熱硬化性保護フィルムを貼り付けた後に上記保護フィルムを熱硬化する際や、バックグラインド工程後に電子部品に反りが生じやすくなる傾向にあることが明らかになった。特に、ウエハーレベルCSPの様に樹脂と半導体が一体化されており当該樹脂の厚みが比較的厚い場合には、反りが生じやすい傾向にある。電子部品に反りが生じると、電子部品のハンドリングが難しなったり、電極にクラックが発生したりしてしまう。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電子部品の回路形成面を保護するための表面保護フィルムとして、基材層20、融点が40℃以上80℃以下であるエチレン系共重合体と、架橋剤と、を含む凹凸吸収性樹脂層30および粘着性樹脂層40をこの順番に有し、架橋剤の含有量が上記範囲にある粘着性積層フィルム50を使用することにより、電子部品の反りを抑制しつつ、粘着性フィルムに伴う電子部品や周辺装置への汚染(特に粘着性積層フィルムを構成する樹脂の染み出し)が抑制できることを見出した。
以上のように、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50によれば、電子部品の反りを抑制することが可能となる。
【0015】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、電子装置の製造工程において、電子部品の表面を保護したり、電子部品を固定したりするために用いられ、より具体的には電子装置の製造工程の一つである電子部品を研削する工程(バックグラインド工程とも呼ぶ)において電子部品の回路形成面(すなわち回路パターンを含む回路面)を保護するために使用するバックグラインドテープとして好適に用いられる。具体的には電子部品の回路形成面に粘着性積層フィルム50を貼付けて保護し、当該回路形成面とは反対側の面を研削する工程に用いられる。回路形成面にバンプ電極を有する場合、凹凸吸収性樹脂層30を備える本実施形態に係る粘着性積層フィルム50を好適に適用することができる。
また、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、例えば、ダイシング工程や転写工程等において表面凹凸を有する電子部品(例えば、半導体ウエハ、封止ウエハ等)の保護や保持に使用する粘着性フィルム;表面凹凸を有する電子部品(例えば、半導体チップや半導体パッケージ等)を仮固定するための粘着性フィルム;電子部品(例えば、半導体ウエハ等)のドライポリッシュ、電子部品(例えば、半導体ウエハ等)の裏面保護用部材の貼り付け・硬化、電子部品(例えば、半導体パッケージ等)への電磁波シールド膜の形成、電子部品(例えば、半導体ウエハ等)の裏面への金属膜形成等の90℃以上の加熱工程で使用する粘着性フィルムとしても用いることができる。
【0016】
<基材層>
基材層20は、粘着性積層フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層20は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
基材層20を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリイミド等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、耐熱性をより一層良好にする観点から、ポリエチレンナフタレートおよびポリイミドから選択される少なくとも一種が好ましく、ポリエチレンナフタレートがより好ましい。
【0017】
基材層20は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層20を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0018】
基材層20の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下、さらに好ましくは25μm以上100m以下である。
基材層20は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0019】
<凹凸吸収性樹脂層>
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、基材層20と粘着性樹脂層40との間に凹凸吸収性樹脂層30を有する。
凹凸吸収性樹脂層30は、粘着性積層フィルム50の回路形成面10Aへの追従性を良好にし、回路形成面10Aと粘着性積層フィルム50との密着性を良好にすることを目的として設けられる層である。さらに、凹凸吸収性樹脂層30は熱硬化または紫外線硬化することで、粘着性積層フィルム50の耐熱性を高めることを目的として設けられる層である。これによって、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)や熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる熱硬化工程(B)において電子部品の反りを抑制することができる。さらに電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)や熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる熱硬化工程(B)において、凹凸吸収性樹脂層30が溶融して樹脂の染み出しが起きるのを抑制できる。
【0020】
凹凸吸収性樹脂層30はエチレン系共重合体を含む。
本実施形態に係るエチレン系共重合体としてはエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0021】
本実施形態に係るエチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合することによって得られる共重合体である。
α-オレフィンとしては、例えば、炭素数3~20のα-オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα-オレフィンであり、特に好ましいのは炭素数が3~8のα-オレフィンである。このようなα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。中でも、入手の容易さからプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0022】
ここで、エチレン・α-オレフィン共重合体としては、例えば、三井化学社製のタフマー(商標登録)、DOW社製のENGAGE(商標登録)、エクソンモービル社製のEXACT(商標登録)、日本ポリエチレン社製のカーネル(商標登録)等が挙げられる。
【0023】
ASTM D1505に準拠し測定される、エチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、好ましくは850~900kg/m、より好ましくは850~880kg/m、さらに好ましくは850~870kg/mである。
密度が上記下限値以上であると、ブロッキングなどのハンドリングトラブルを回避できる。また、密度が上記上限値以下であると、凹凸吸収性に優れる凹凸吸収性樹脂層30を得ることができる。
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される、エチレン・α-オレフィン共重合体のメルトフローレ-ト(MFR)は、好ましくは0.1~50g/10分であり、より好ましくは1~40g/10分、さらに好ましくは3~35g/10分である。
MFRが上記下限値以上であると、エチレン・α-オレフィン共重合体の流動性が向上し、凹凸吸収性樹脂層30の加工性をより良好にすることができる。
また、MFRが上記上限値以下であると、より一層均一な厚みの凹凸吸収性樹脂層30を得ることができ、加熱工程時に凹凸吸収性樹脂層に起因する樹脂の染み出しを抑制できる。
【0024】
本実施形態に係るエチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
【0025】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であり、例えばランダム共重合体である。
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有割合は、好ましくは15質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上45質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上40質量%以下である。酢酸ビニルの含有量がこの範囲にあると、凹凸吸収性樹脂層30の柔軟性、耐熱性、透明性、機械的性質のバランスにより一層優れる。また、凹凸吸収性樹脂層30を成膜する際にも、成膜性が良好となる。
酢酸ビニル含有量は、JIS K7192:1999に準拠して測定可能である。
【0026】
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンおよび酢酸ビニルのみからなる二元共重合体が好ましいが、エチレンおよび酢酸ビニルの他に、例えばギ酸ビニル、グリコール酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、或いはこれらの塩もしくはアルキルエステル等のアクリル系単重体;等から選択される一種または二種以上を共重合成分として含んでもよい。上記エチレンおよび酢酸ビニル以外の共重合成分を含む場合、エチレン・酢酸ビニル共重合体中の上記エチレンおよび酢酸ビニル以外の共重合成分の量を0.5質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される、エチレン・ビニルエステル共重合体のメルトフローレ-ト(MFR)は、好ましくは0.1~50g/10分であり、より好ましくは1~40g/10分、さらに好ましくは3~35g/10分である。
MFRが上記下限値以上であると、エチレン・ビニルエステル共重合体の流動性が向上し、凹凸吸収性樹脂層30の成形加工性をより良好にすることができる。
また、MFRが上記上限値以下であると、分子量が高くなるためチルロール等のロール面への付着が起こり難くなり、より一層均一な厚みの凹凸吸収性樹脂層30を得ることができ、加熱工程時に凹凸吸収性樹脂層に起因する樹脂の染み出しを抑制できる。
【0028】
凹凸吸収性樹脂層30は、例えば、各成分をドライブレンドまたは溶融混練した後、押出成形することにより得ることができる。また、必要に応じて、酸化防止剤を添加することができる。
【0029】
凹凸吸収性樹脂層30に含まれるエチレン系共重合体および架橋剤の合計含有量は、凹凸吸収性樹脂層30の全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0030】
エチレン系共重合体の融点は40℃以上であるが、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは54℃以上である。
エチレン系共重合体の融点が上記下限値以上であると、粘着性積層フィルム50を輸送・保管した際の形状変化を抑制することができる。さらに、エチレン系共重合体の融点が上記下限値以上であると、バックグラインド工程での粘着性積層フィルム50の形状変化を抑制でき、電子部品のバックグラインドをより一層良好に進めることができる。さらに、エチレン系共重合体の融点が上記下限値以上であると、凹凸吸収性樹脂層30の加工温度を上げることができる。
【0031】
エチレン系共重合体の融点は80℃以下であるが、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。
エチレン系共重合体の融点が上記上限値以下であると、粘着性積層フィルム50を電子部品に貼り付ける際の温度を低くできる。さらに、エチレン系共重合体の融点が上記上限値以下であると、エチレン系共重合体への添加剤の相溶性を向上でき、その結果、凹凸吸収性樹脂層30に含まれる添加剤のブリードアウトを抑制できる。さらに、エチレン系共重合体の融点が上記上限値以下であると、粘着性積層フィルム50の厚みを厚くした場合の粘着性積層フィルム50のハンドリング性や、粘着性積層フィルム50の応力緩和性をより向上させることができる
【0032】
エチレン系共重合体を2成分以上含むと、2つ以上の融点が観測されることもあるが、少なくとも一つの融点が上記範囲にあればよい。当該2つ以上の融点がいずれも上記範囲であることが好ましい。
【0033】
また、凹凸吸収性樹脂層30は架橋剤を含む。凹凸吸収性樹脂層30が架橋剤を含むことにより、工程(B)の前に凹凸吸収性樹脂層30を効果的に熱硬化または紫外線硬化させることができ、凹凸吸収性樹脂層30の耐熱性を向上させることが可能となる。これにより、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)や熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる熱硬化工程(B)において電子部品の反りをより一層抑制することができる。さらに電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)や熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる熱硬化工程(B)において、凹凸吸収性樹脂層30が溶融して樹脂の染み出しが起きるのをより一層抑制できる。
本実施形態に係る架橋剤としては特に限定されないが、例えば、光架橋開始剤および有機過酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
凹凸吸収性樹脂層30中の架橋剤の含有量は、反り抑制の観点から、エチレン系共重合体100質量部に対して、0.60質量部以下であり、0.55質量部以下であることが好ましく、0.50質量部以下であることがより好ましい。
また、凹凸吸収性樹脂層30中の架橋剤の含有量は、加熱時の樹脂の染み出し防止の観点から、エチレン系共重合体100質量部に対して、0.06質量部以上であり、0.07質量部以上であることが好ましく、0.08質量部以上であることがより好ましい。
【0034】
有機過酸化物としては、例えば、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーフタレート、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-アミルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ジ(ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)プチレート、メチルエチルケトンパ-オキサイド、エチル-3,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0035】
これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエートから選択される一種または二種以上を用いることが好ましい。
【0036】
光架橋開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、チオキサントン誘導体、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノール類、アシルホスフィノキサイド類、アルキルフェニルグルオキシレート類、ジエトキシアセトフェノン、オキシムエステル類、チタノセン化合物、アントラキノン誘導体からなる群より選択される一種または二種以上を用いることができる。中でも、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、オキシムエステル類、アントラキノン誘導体が、架橋性がより良好な点で好ましく、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アントラキノン誘導体がさらに好ましく、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体が、透明性も良好なため最も好ましい。
ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体の好ましい例として、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-フェノキシベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等を挙げることができる。
アントラキノン誘導体の好ましい例として、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等を挙げることができる。
【0037】
また、凹凸吸収性樹脂層30は、耐熱性をさらに向上させる観点から、架橋助剤をさらに含むことが好ましい。
架橋助剤としては、例えば、ジビニル芳香族化合物、シアヌレート化合物、ジアリル化合物、アクリレート化合物、トリアリル化合物、オキシム化合物およびマレイミド化合物からなる群より選択される一種または二種以上を用いることができる。
凹凸吸収性樹脂層30中の架橋助剤の含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが特に好ましい。
また、凹凸吸収性樹脂層30中の架橋助剤の含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.10質量部以上であることがさらに好ましい。
【0038】
ジビニル芳香族化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジ-i-プロペニルベンゼン等が挙げられる。
シアヌレート化合物としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
ジアリル化合物としては、例えば、ジアリルフタレート等が挙げられる。
トリアリル化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
アクリレート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
オキシム化合物としては、例えば、p-キノンジオキシム、p-p'-ジベンゾイルキノンジオキシム等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、m-フェニレンジマレイミド等が挙げられる。
架橋助剤としてはビニル基等の架橋性不飽和結合を1分子中に3官能以上有する化合物が好ましく、中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが、架橋性が良好な点で好ましく、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
【0039】
凹凸吸収性樹脂層30の厚さは、電子部品10の回路形成面10Aの凹凸を埋め込むことができる厚さであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上900μm以下であることがより好ましく、30μm以上800μm以下であることがさらに好ましく、50μm以上700μm以下であることが特に好ましい。
【0040】
電子部品10の回路形成面10Aに存在するバンプ電極の高さをH[μm]とし、凹凸吸収性樹脂層30の厚みをd[μm]としたとき、H/dが1以下であることが好ましく、0.85以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。H/dが上記上限値以下であると、粘着性積層フィルム50の厚みをより薄くしつつ、凹凸吸収性をより良好にすることができる。
H/dの下限は特に限定されないが、例えば、0.01以上である。バンプ電極の高さは、一般的に2μm以上600μm以下である。
【0041】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層40は、凹凸吸収性樹脂層30の一方の面側に設けられる層であり、粘着性積層フィルム50を電子部品10の回路形成面10Aに貼り付ける際に、電子部品10の回路形成面10Aに接触して粘着する層である。
【0042】
粘着性樹脂層40を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0043】
また、粘着性樹脂層40を構成する粘着剤としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着剤を用いることもできる。放射線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層40は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、後述する電子部品10と粘着性積層フィルム50とを剥離する工程(C)において、粘着性樹脂層40から電子部品10を剥離し易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0045】
放射線架橋型粘着剤は、例えば、上記(メタ)アクリル系重合体と、架橋性化合物(炭素-炭素二重結合を有する成分)と、光重合開始剤または熱重合開始剤と、を含む。
【0046】
架橋性化合物としては、例えば、分子中に炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合により架橋可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。このような架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステル(メタ)アクリレートオリゴマー;2-プロペニルジ-3-ブテニルシアヌレート、2-ヒドロキシエチルビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル系重合体が、ポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を有する放射線架橋型ポリマーである場合は、架橋性化合物を加えなくてもよい。
【0047】
架橋性化合物の含有量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して1~900質量部が好ましく、2~100質量部がより好ましく、5~50質量部がさらに好ましい。架橋性化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて粘着力の調整がし易くなり、上記範囲よりも多い場合に比べて、熱や光に対する感度が高すぎることによる保存安定性の低下が起こりにくい。
【0048】
光重合開始剤としては、放射線を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0049】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤等が挙げられる。加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0050】
粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層40の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0051】
粘着性樹脂層40の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0052】
粘着性樹脂層40は、例えば、凹凸吸収性樹脂層30上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0053】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、凹凸吸収性樹脂層30を紫外線硬化させたり、粘着性樹脂層40を紫外線架橋させたりする場合には、当該硬化や架橋を本発明の目的を妨げない程度に光線透過率を有する必要がある。
【0054】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは25μm以上1100μm以下であり、より好ましくは100μm以上900μm以下であり、さらに好ましくは200μm以上800μm以下である。
【0055】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、各層の間に接着層(図示せず)を設けていてもよい。この接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50の製造方法の一例について説明する。
まず、基材層20の一方の面に凹凸吸収性樹脂層30を押出しラミネート法によって形成する。次いで、凹凸吸収性樹脂層30上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって、粘着性樹脂層40を形成し、粘着性積層フィルム50が得られる。
また、基材層20と凹凸吸収性樹脂層30とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層20とフィルム状の凹凸吸収性樹脂層30とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0057】
2.電子装置の製造方法
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
図2は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の工程(A)および工程(B)を含む。
(A)回路形成面10Aを有する電子部品10と、電子部品10の回路形成面10A側に貼り付けられた粘着性積層フィルム50と、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに貼り付けられた熱硬化性保護フィルム70と、を備える構造体60を準備する準備工程
(B)構造体60を加熱することにより、熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる熱硬化工程
ここで、電子部品10の回路形成面10Aと粘着性樹脂層40が接している。
【0058】
(工程(A))
はじめに、回路形成面10Aを有する電子部品10と、電子部品10の回路形成面10A側に貼り付けられた粘着性積層フィルム50と、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに貼り付けられた熱硬化性保護フィルム70と、を備える構造体60を準備する。
【0059】
このような構造体60は、例えば、電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50を貼り付ける工程(A1)と、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)とをおこなうことによって作製することができる。
【0060】
電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50を貼り付ける方法は特に限定されず、一般的に公知の方法で剥がすことができる。例えば、人手により行ってもよいし、ロール状の粘着性積層フィルム50を取り付けた自動貼り機と称される装置によって行ってもよい。
【0061】
電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける方法は特に限定されず、一般的に公知の方法で剥がすことができる。例えば、人手により行ってもよいし、ロール状の熱硬化性保護フィルム70を取り付けた自動貼り機と称される装置によって行ってもよい。
【0062】
電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)は、例えば、熱硬化性保護フィルム70を加熱しながら行われる。工程(A2)における加熱温度は熱硬化性保護フィルム70の種類によって適宜設定されるため特に限定されないが、例えば、50℃以上90℃以下であり、好ましくは60℃以上80℃以下である。
【0063】
熱硬化性保護フィルム70としては特に限定されず、例えば、公知の熱硬化型の半導体裏面保護用フィルムを用いることができる。
熱硬化性保護フィルム70は、例えば、熱硬化性の接着剤層を備え、必要に応じて保護層をさらに備えてもよい。
接着剤層としては、熱硬化性樹脂により形成されていることが好ましく、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂により形成されていることがより好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、イオン性不純物等の含有量が少ないエポキシ樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、イオン性不純物等の含有量が少ないアクリル樹脂が好ましい。
【0064】
接着剤層には、必要に応じて他の添加剤を含有させることができる。他の添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、増量剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
保護層は、例えば、耐熱性樹脂、金属等で構成されている。
保護層を構成する耐熱性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
保護層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルマイト、ステンレス、鉄、チタン、スズ、銅等が挙げられる。
【0066】
熱硬化性保護フィルム70は、市販のフィルムを用いてもよい。市販のフィルムとしては、例えば、リンテック社製のチップ裏面保護テープ(製品名:「LCテープ」シリーズ)等が挙げられる。
【0067】
電子部品10としては回路形成面10Aを有する電子部品10であれば特に限定されないが、例えば、半導体ウエハ、サファイア基盤、タンタル酸リチウム基板、モールドウエハ、モールドパネル、モールドアレイパッケージ、半導体基板等が挙げられる。
また、半導体基板としては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、ゲルマニウム-ヒ素基板、ガリウム-リン基板、ガリウム-ヒ素-アルミニウム基板、ガリウム-ヒ素基板、等が挙げられる。
【0068】
また、電子部品10はどのような用途の電子部品であってもよいが、例えば、ロジック用(例えば、通信用、高周波信号処理用等)、メモリ用、センサー用、電源用の電子部品等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0069】
電子部品10の回路形成面10Aは、例えば、電極10Bを有することにより、凹凸構造となっている。
また、電極10Bは、電子装置を実装面に実装する際に、実装面に形成された電極に対して接合されて、電子装置と実装面(プリント基板等の実装面)との間の電気的接続を形成するものである。
電極10Bとしては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプ、ピラーバンプ等のバンプ電極が挙げられる。すなわち、電極10Bは、通常凸電極である。これらのバンプ電極は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、バンプ電極を構成する金属種は特に限定されず、例えば、銀、金、銅、錫、鉛、ビスマス及びこれらの合金等が挙げられる。これらの金属種は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0070】
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50が貼り付けられた状態で、粘着性積層フィルム50における凹凸吸収性樹脂層30を熱硬化または紫外線硬化させる硬化工程(A3)を行うことが好ましい。これにより、粘着性積層フィルム50の耐熱性を向上させることができる。こうすることで、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)や熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる熱硬化工程(B)において電子部品10の反りを抑制することができる。さらに電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)や熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる熱硬化工程(B)において、凹凸吸収性樹脂層30が溶融して樹脂の染み出しが起きるのを抑制できる。硬化工程(A3)は特に限定されないが、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに熱硬化性保護フィルム70を貼り付ける工程(A2)の前に行うことが好ましい。
【0071】
凹凸吸収性樹脂層30の熱硬化方法としてはエチレン系共重合体を熱硬化できる方法であれば特に限定されないが、ラジカル重合開始剤による熱架橋が挙げられる。
ラジカル重合開始剤による熱架橋は、エチレン系共重合体の架橋に用いられているラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0072】
また、凹凸吸収性樹脂層30に紫外線を照射することによって、凹凸吸収性樹脂層30を架橋させて硬化させることができる。
紫外線は、例えば、粘着性積層フィルム50の基材層20側の面から照射される。
また、いずれの架橋方法においても凹凸吸収性樹脂層30に架橋助剤を配合して凹凸吸収性樹脂層30の架橋をおこなってもよい。
【0073】
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50が貼り付けられた状態で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cをバックグラインドするバックグラインド工程(A4)をおこなってもよい。すなわち、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50をバックグラインドテープとして使用してもよい。ここで、バックグラインド工程(A4)の前に硬化工程(A3)をおこなうと、粘着性積層フィルム50の粘着力が低下するため、バックグラインド工程(A4)において、粘着性積層フィルム50が剥れてしまう懸念がある。そのため、硬化工程(A3)の前にバックグラインド工程(A4)を行うことが好ましい。
【0074】
バックグラインド工程(A4)では、粘着性積層フィルム50に貼り付けられた状態で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cをバックグラインドする。
ここで、バックグラインドするとは、電子部品10を割ったり、破損したりすることなく、所定の厚みまで薄化加工することを意味する。
電子部品10のバックグラインドは、公知の方法で行うことができる。例えば、研削機のチャックテーブル等に電子部品10を固定し、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cを研削する方法が挙げられる。
【0075】
裏面研削方式としては特に限定されないが、例えば、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式を採用することができる。それぞれ研削は、水を電子部品10と砥石にかけて冷却しながら行うことができる。
【0076】
(工程(B))
つぎに、構造体60を加熱することにより、熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる。
【0077】
熱硬化性保護フィルム70を熱硬化させる工程(B)における加熱温度は熱硬化性保護フィルム70の種類によって適宜設定されるため特に限定されないが、例えば、120℃以上170℃以下であり、好ましくは130℃以上160℃以下である。
【0078】
(工程(C))
また、本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(B)の後に電子部品10と粘着性積層フィルム50とを剥離する工程(C)をさらにおこなってもよい。この工程(C)をおこなうことで、粘着性積層フィルム50から電子部品10を剥離することができる。剥離温度は、例えば20~100℃である。
電子部品10と粘着性積層フィルム50との剥離は、公知の方法で行うことができる。
【0079】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、電子装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
【0080】
例えば、金属膜形成工程、アニール処理、ダイシング工程、ダイボンディング工程、ワイヤボンディング工程、フリップチップ接続工程、キュア加温テスト工程、封止工程、リフロー工程等の電子部品の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程等をさらに行ってもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0082】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0083】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
粘着性フィルムの作製に関する詳細は以下の通りである。
【0084】
<基材層>
基材層1:ポリエチレンナフタレートフィルム(製品名:テオネックスQ81、東洋紡フィルムソリューション社製、厚み:50μm)
基材層2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、製品名:E7180、厚み:50μm)
【0085】
<凹凸吸収性樹脂層形成用の樹脂>
樹脂1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(製品名:エバフレックスEV150、三井・ダウ・ポリケミカル社製、融点:61℃)
樹脂2:エチレン・プロピレン共重合体(製品名:タフマーA35070S、三井化学社製、融点:55℃)
樹脂3:エチレン・プロピレン共重合体(製品名:タフマーA4070、三井化学社製、融点:55℃)
【0086】
<粘着剤ポリマー(アクリル系樹脂)>
アクリル酸n-ブチル77質量部、メタクリル酸メチル16質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル16質量部、および重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3質量部をトルエン20質量部、酢酸エチル80質量部で10時間反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにトルエン30質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製、製品名:カレンズMOI)7質量部、およびジラウリル酸ジブチル錫0.05質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で12時間反応させ、粘着剤ポリマー溶液を得た。
【0087】
<粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液>
粘着剤ポリマー(固形分)100質量部に対して、光開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF社製、商品名:イルガキュア651)8質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名:オレスターP49-75S)2.33質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:AD-TMP)6質量部を添加し、粘着剤塗布液を得た。
【0088】
[実施例1]
樹脂1(100質量部)、架橋助剤であるトリアリルイソシアヌレート(三菱化学社製、商品名:タイク)0.44質量部および架橋剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックスTBEC)0.32質量部をドライブレンドした組成物を得た。次いで、ラボプラストミルで溶融混錬して得られた組成物を熱プレス機で厚さ500μmに成形し、凹凸吸収樹脂層を得た。次いで、基材層1を凹凸吸収樹脂層に貼り合わせることで、積層フィルムを作製した。
【0089】
次いで、粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液をシリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(38μm)に塗布し、乾燥させて、厚み20μmの粘着性樹脂層を形成した。次いで、得られた粘着性樹脂層を上述の積層フィルムの凹凸吸収性樹脂層側に貼り合わせることで、粘着性フィルムを得た。得られた粘着性フィルムについて、以下の各評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0090】
<評価>
(1)エチレン系共重合体の融点
エチレン系共重合体の融点は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、示差走査型熱量計(SII社製、製品名:X-DSC7000)によって測定した。試料約10mgをアルミパンの中に入れ、30℃から230℃まで10℃/分で昇温した後(1st加熱)、5分間保持した。次いで、-100℃まで10℃/分で冷却し、5分間保持した後、再度230℃まで10℃/分で昇温した(2nd加熱)。横軸に温度、縦軸にDSCをとった際の2nd加熱時のグラフにおいて、吸熱ピークから融点を求めた。
【0091】
(2)シリコンテストピース反り評価
75umに研削したシリコンウェハを5cm×2.5cmに個片化したテストピースを用意した。粘着性フィルムの粘着性樹脂層側のシリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムをはがし、70℃に加熱したホットプレート上で貼りつけてから、当該粘着性フィルムをテストピースのサイズに沿ってカットし、粘着性フィルム/シリコンテストピース積層体を作製した。その後、積層体のシリコンテストピース側を下にして、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートの離型面に載せた状態で加熱オーブンに入れ、150℃で2時間30分間加熱した。その後、取り出した積層体を10分間静置・放冷してから、積層サンプルのシリコンテストピース側を下にして、積層サンプルの片方の短辺(2.5cm幅)中央部を上から指で押さえ、その際に持ちあがったもう片方のサンプル短辺の中点の底面からの高さを定規にて測定し、その値を反りとした。
反りは以下の基準で評価した。
◎:≦2mm
〇:2mm<反り<4mm
×:≧4mm
【0092】
(3)凹凸吸収性樹脂層の染み出し評価
反り評価後のテストピース端部から凹凸吸収性樹脂層が染み出していないかを目視にて確認した。また、染み出していた場合には染み出した樹脂層がポリエチレンテレフタレートフィルムに貼りついていないかを確認した。
染み出しは以下の基準で評価した。
◎:染み出し無し
〇:染み出しはあるが、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートに貼り付いていない
×:染み出しがあり、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートと貼りついている
【0093】
[実施例2~4および比較例1、2]
基材層および凹凸吸収性樹脂層の種類を表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、粘着性フィルムをそれぞれ作製した。また、実施例1と同様に各評価をそれぞれ行った。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
【0094】
[実施例5]
基材層および凹凸吸収性樹脂層の種類を表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、粘着性フィルムをそれぞれ作製した。また、反り評価において、粘着性フィルム/シリコンテストピース積層体を加熱オーブンに入れる前に室温において粘着性フィルム側から高圧水銀ランプで 照射強度100mW/cmで3240mJ/cmのUV照射を実施した以外は、実施例1と同様に各評価をそれぞれ行った。得られた結果を表1にそれぞれ示す。ここで、光開始剤としては、4-メチルベンゾフェノン(SHUANG-BANG INDUSTRIAL社製、商品名:SB-PI712)を用いた。
【0095】
【表1】
【0096】
この出願は、2020年5月22日に出願された日本出願特願2020-089610号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0097】
10 電子部品
10A 回路形成面
10B 電極
10C 回路形成面とは反対側の表面
20 基材層
30 凹凸吸収性樹脂層
40 粘着性樹脂層
50 粘着性積層フィルム
60 構造体
70 熱硬化性保護フィルム
図1
図2