(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】UDP-ガラクトースを調製するための酵素的方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/30 20060101AFI20240402BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20240402BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240402BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
C12P19/30 ZNA
C12N9/12
C12N9/10
C12N15/54
(21)【出願番号】P 2022525883
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020077396
(87)【国際公開番号】W WO2021089251
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-02
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501497655
【氏名又は名称】マックス プランク ゲゼルシャフト ツゥアー フェデルゥン デル ヴィッセンシャフテン エー フォー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マホウア レザ
(72)【発明者】
【氏名】レクサー トーマス エフ.テー.
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0150968(US,A1)
【文献】特開2001-161390(JP,A)
【文献】特開平03-108491(JP,A)
【文献】MAHOUR, Reza et al.,Journal of Biotechnology,2018年07月22日,Vol. 283,pp. 120-129,DOI: 10.1016/J.JBIOTEC.2018.07.027
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12N 9/00- 9/99
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
【化1】
A)(i)以下の式で表されるウリジン一リン酸およびD-ガラクトース
【化2】
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記酵素のセットが、ピロホスファターゼをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素のセットが、1ドメインポリリン酸キナーゼ2をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵素のセットが、2ドメインポリリン酸キナーゼ2をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素のセットの少なくとも1つの酵素が、固体支持体に固定化されている、請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素のセットが、固体支持体に共固定化されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素のセットが、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから直接的に固体支持体に共固定化されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップA)で準備される溶液中のウリジン一リン酸およびD-ガラクトースの濃度が、0.2mM~15,000mMの範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリリン酸塩が、少なくとも25個のリン酸残基を有する長鎖ポリリン酸塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースが、単一反応混合物中で生産される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップA)のウリジン一リン酸が、ウリジン、アデノシン三リン酸、およびウリジンキナーゼから;またはウラシル、5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸、およびウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼから;またはオロチン酸、5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、およびUMPトランスフェラーゼから得られる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、
またはペプチ
ドの利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、
またはペプチ
ドから、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、
またはガラクトシル化ペプチ
ドを生産するステップ
をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、
またはペプチ
ドが、抗体もしくはモノクローナル抗体であるか、またはヒト乳オリゴサッカライ
ドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
E)ステップD)で形成されるウリジン二リン酸を再利用して、ウリジン三リン酸を得るステップ
をさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットであって、
当該酵素のセットがエポキシ基で官能化された固体支持体に共固定化されている、酵素のセット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、低コスト基質であるウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからUDP-ガラクトースを単一反応混合物中で生産するための酵素触媒プロセスに関する。上記プロセスは、バッチモードまたは送込バッチモードまたは任意の他の操業モードで(半)連続的に操業することができる。さらに、上記プロセスは、サッカライド、特にヒト乳オリゴサッカライド(HMO)、タンパク質、糖タンパク質、特に抗体、糖ペプチド、ならびにバイオコンジュゲート、特に炭水化物コンジュゲートワクチンおよび抗体-薬物コンジュゲートを含むガラクトシル化分子および生体分子を生産するように適合させることができる。
【0002】
[発明の背景]
ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトース(UDP-ガラクトースまたはUDP-Gal)は、数多くのバイオテクノロジー応用および食品技術の重要な基質である。これは、自己免疫疾患の治療に使用される療法用抗体のガラクトシル化のための基質である。さらに、UDP-ガラクトースは、炭水化物ワクチンを生産するために、および個別化医療の成長分野に、つまり薬物送達用の糖ナノ材料の調製に必要である。乳幼児用食品(ヒト乳)では、ガラクトシル化オリゴサッカライドは、ヒト乳オリゴサッカライドの重要な成分を構成しており、したがって乳幼児向けの合成的に生産された乳製品にガラクトシル化糖を含めることには大きな需要が存在する(Carbohydrate Research 432号(2016年)62~70頁)。
【0003】
しかしながら、UDP-ガラクトースの需要が高いにも関わらず(年間トン規模)、研究者でさえ、UDP-ガラクトースの入手可能性は非常に限られている。これまでのところ、UDP-ガラクトースの価格は、1グラムあたり約2,000米ドルである。UDP-ガラクトースの価格が高いため、基礎研究活動および応用研究活動が滞っているのみならず、産業的応用も妨げられている。
【0004】
UDP-ガラクトースを合成するためのバイオプロセス工学戦略は、in vivoプロセスおよびin vitroプロセスに分類することができ、微生物は、代謝の一部として細胞内または細胞外のいずれかでUDP-ガラクトースを産生するために代謝的に操作されている。しかしながら、収率が低いこと、不要な副産物のレベルが高いこと、細胞株設計に時間が必要であること、および大規模化が複雑であることが欠点である。特に乳幼児用食品の場合は規制側面を考慮すると、遺伝子組換え生物(GMO)の応用は、承認プロセスを大幅に遅延させる可能性がある。
【0005】
米国特許出願第09/757,846号およびLiuら(ChemBioChem、2002年、3巻、348~355頁)には、糖ヌクレオチド産生酵素およびグリコシルトランスフェラーゼを使用する、複合糖質をin vitroで産生するための方法が開示されている。UDP-Galは、高価なグルコース1-リン酸およびUDP-グルコースから開始して7個の酵素のカスケードにより調製され、全収率は35%だった。酵素は、より大規模の合成には実用的ではないNi NTAアガロースビーズに固定化されている。酵素はアガロースビーズに弱く結合しており、最適なUDP-Gal産生に必要な高イオン強度の反応混合物では急速に洗い流されてしまう。酵素が浸出するため、特に食品応用および薬学的応用の認証プロセスが大幅に滞る可能性があり、各使用後にビーズを再負荷する必要がある。さらに、大量では毒性のあるニッケルイオンがビーズから溶液に放出されることにより、ビーズをHMOSの合成に使用することはほとんど不可能である可能性が高い。加えて、Niアガロースビーズは機械的にロバストではない。Niアガロースビーズは、柔らかく、高剪断速度がアガロースビーズを劣化させるためまたは大規模カラムパッキングでは圧縮のため、撹拌槽型反応器では使用することができない。劣化したアガロースビーズからのガラクトースの放出は、酵素の基質中毒を引き起こす可能性がある。
【0006】
Koizumoら(Nature Biotech.1998年、16巻、847頁)は、出発物質としてガラクトースおよびオロチン酸に加えてグルコース1-リン酸を使用する類似のUDP-Gal合成を報告している。UTPのガラクトースへの移転は、2つの酵素GalTおよびGalUを用いて達成された。このプロセスは、10%(容積/容積)キシレンの存在下で実施され、ガラクトースからの29%の低反応収率は21時間後に達成された。質量移動制限が著しいため大規模応用が困難である高濃度バイオマスが使用された。さらに、キシレンは、中程度の急性毒性となる。
【0007】
Muthanaら(Chem.Commun.、2012年、48巻、2728~2730頁)は、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)(BLUSP)に由来する無差別UDP糖ピロホスホリラーゼ(USP、EC2.7.7.64)を使用する、モノサッカライドおよびUTPからのUDP-糖のワンポット多酵素合成を報告している。
【0008】
低コストで容易に入手可能な基質から開始して、費用効果の高い様式でUDP-ガラクトースを生産するための方法が長らく必要とされている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、UDP-ガラクトースを調製するための費用効果が高い効率的な方法を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、独立請求項の教示により解決される。本発明のさらに有利な特徴、態様、および詳細は、本出願の従属請求項、明細書、図面、及び実施例から明らかである。
【発明の概要】
【0011】
[発明の説明]
生化学では、ヌクレオチド糖はモノサッカライドの活性型として周知であり、グリコシル化反応では、ヌクレオチド糖はグリコシル供与体として作用することが公知である。グリコシルトランスフェラーゼ(GTF)は、活性化ヌクレオチド糖から求核性グリコシル受容体分子へのサッカライド部分の移転を触媒する酵素である。したがって、生化学的には、グリコシル化反応は、グリコシルトランスフェラーゼにより触媒される。
【0012】
グリコシル供与体として作用するためには、それぞれのモノサッカライドが、例えばヌクレオチド糖、特にウリジン二リン酸、グアノシン二リン酸、またはシトシン二リン酸などに由来するヌクレオチドジホスホ糖の形態のように、高エネルギー形態で存在することが不可欠である。周知のヌクレオチド糖の例は、UDP-グルコース、UDP-ガラクトース、UDP-GlcNAc、UDP-GalNAc、UDP-キシロース、UDP-グルクロン酸、GDP-マンノース、およびGDP-フコースである。単純なモノサッカライドの活性化ヌクレオチド糖への変換は、ヌクレオシド三リン酸(NTP)およびグリコシル一リン酸の酵素触媒反応により達成できること、及び、グリコシル一リン酸は、アノマー炭素にリン酸基を含有することは、周知である。
【0013】
ヌクレオシド二リン酸(NDP)-モノサッカライドを得るためには、使用されるモノサッカライドは、グリコシル一リン酸誘導体へと変換される必要がある。一般に、上記反応は、ホスホトランスフェラーゼおよび加えて必要に応じてホスホムターゼのような特異的な酵素を適用して、所望のモノサッカライド-1-リン酸を得ることにより達成することができる。ホスホトランスフェラーゼは、リン酸化反応を触媒するEC番号2.7に分類される酵素である。ホスホトランスフェラーゼは、それらの受容体分子に応じてさらに分類される。例えば、EC2.7.1のホスホトランスフェラーゼは、受容体としてアルコール基を有するホスホトランスフェラーゼである。ホスホムターゼは、イソメラーゼ、つまりリン酸基の内部移転を触媒することができる酵素である。D-マンノースまたはD-グルコース、例えばそれぞれマンノース-6-リン酸およびグルコース-6-リン酸の場合のように、ホスホトランスフェラーゼを介した基質のリン酸化がモノサッカライド-6-リン酸をもたらす場合、ホスホムターゼが必要とされる。次いで、それぞれのホスホムターゼは、リン酸基の内部移転を触媒し、それによりそれぞれマンノース-6-リン酸がマンノース-1-リン酸へと、またはグルコース-6-リン酸がグルコース-1-リン酸へと変換される。
【0014】
キナーゼは、ホスホトランスフェラーゼファミリーの一部を形成する酵素である。キナーゼは、高エネルギーのリン酸供与分子から特定の基質へのリン酸基の移転を触媒する酵素である。このプロセスはリン酸化として公知であり、基質がリン酸基を獲得し、高エネルギーアデノシン三リン酸(ATP)分子がリン酸基を供与する。このエステル交換により、リン酸化基質およびADPが産生される。したがって、モノサッカライド-1-リン酸を得るために、ガラクトキナーゼのような好適なキナーゼを適用して、D-ガラクトースからガラクトース1-リン酸を得ることができる。
【0015】
ヌクレオチジルトランスフェラーゼを使用すると、ヌクレオシド三リン酸(NTP)およびモノサッカライド-1-リン酸を、それぞれのヌクレオシド二リン酸(NDP)-モノサッカライドに変換することができる。ヌクレオチジルトランスフェラーゼは、リン含有基のトランスフェラーゼ酵素であり、EC番号2.7.7に分類される。様々な天然に存在するヌクレオチドとして、ヌクレオチド特異的ヌクレオチジルトランスフェラーゼが当技術分野で公知であり、例えば、ウリジルトランスフェラーゼはウリジリル基を移転し、アデニルトランスフェラーゼはアデニリル基を移転し、グアニリルトランスフェラーゼはグアニリル基を移転し、シチジリルトランスフェラーゼはシチジル基を移転し、チミジリルトランスフェラーゼはチミジリル基を移転する。したがって、ヌクレオチジルトランスフェラーゼは、モノサッカライド-1-リン酸とヌクレオシド三リン酸との反応を触媒し、例えば、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸(UTP)との反応を触媒してUDP-ガラクトースを得るのに好適である。UDP-ガラクトースの場合、ウリジン三リン酸(UTP)との反応を触媒するためには、ウリジリルトランスフェラーゼが好適である。
【0016】
天然に存在するUDP-モノサッカライドに関するウリジン二リン酸(UDP)-モノサッカライドは、UDP-ガラクトース、UDP-GalNAc、およびUDP-GlcNAcである。上記に記載の基本反応スキームは、特定のウリジニリルトランスフェラーゼとともにウリジン三リン酸およびガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を使用する、UDP-ガラクトースには適用されない。というのは、UTP:ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC2.7.7.10)へのアクスセスが非常に制限されているためである(Chem.Commun.、2012年、48巻、2728~2730頁を参照)。代わりに、UDP-ガラクトースは、通常、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT、EC2.7.7.12)を使用するUDP-グルコースから調製されることにより(例えば、米国特許出願第09/757,846号明細書;NatureBiotech.1998年、16巻、847頁を参照)、さらなる基質(UDP-グルコースまたはグルコース1-リン酸)およびさらなる酵素GalTが必要とされる。
【0017】
文献に記載されているUDP-Gal合成の上述の欠点にも関わらず、NTP糖に至る基本反応スキームのさらなる不都合は、出発物質、特にそれぞれのヌクレオシド三リン酸が非常に高価であり、したがって合成経路がNDPモノサッカライド、特にUDP-ガラクトースの合成にコストがかかるという事実に基づく。上記で既に説明したように、UDP-ガラクトースの場合、当技術ではヌクレオシド二リン酸モノサッカライドを調製するための、特に、低コストで容易に入手可能な出発物質からUDP-ガラクトースを調製するための費用効果が高い効率的な方法を提供する必要性が存在する。
【0018】
UDP-モノサッカライドに関しては、UDP-ガラクトースは、哺乳動物では、天然に存在する活性化UDP-糖に関する。したがって、UMPは好適なヌクレオチドとして特定され、D-ガラクトースはUDP-ガラクトースの調製に好適なモノサッカライドとして特定される。酵素触媒反応に関しては、少なくとも好適な酵素が提供されなければならないことが明らかなはずである。したがって、本発明者らは、UMPおよび容易に入手可能なD-ガラクトースが、酵素的ワンポットカスケード反応でUDP-ガラクトースを生産するための好適な出発物質であることを特定した。
【0019】
UDP-ガラクトースを調製するための費用効果が高く効率的な方法を提供するためには、UMP(ウリジン一リン酸)およびD-ガラクトースが、
図1に図示されている通りの酵素的カスケード反応でUDP-ガラクトースを生産するための好適な出発物質であることを特定した。この酵素カスケード反応は、(a)D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸(ATP;触媒量)からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、(b)UMPおよびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、および(c)ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸(UTP)とを反応させてUDP-ガラクトースに至ることから構成される。UDP-ガラクトースは、ガラクトキナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびグルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、D-ガラクトースおよびウリジン一リン酸から直接的に生産することが起想された。
【0020】
驚くべきことに、本発明者らは、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ることが、UTPとα-D-グルコース1-リン酸とが反応して二リン酸およびUDP-グルコースに至ることを触媒する能力について公知であるに過ぎない酵素であるグルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalU)(EC2.7.7.9)により効率的に触媒され得ることを見出した。したがって、本発明の酵素カスケードには、グルコース1-リン酸などのさらなるモノサッカライド基質も、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼも必要とされない。したがって、本発明による、UDP-Galを生産するための方法は、酵素カスケードがより少量の酵素およびより少数の高価な出発物質を必要とすることにより、本発明の方法がより効率的になり収率が99%を上回り、より安価になるため、上記に記載の方法よりも有益である(実施例2を参照)。
【0021】
さらに、本発明の方法は、高価なウリジン三リン酸出発物質を回避し、ウリジン一リン酸に置き換えることができ、それにより本明細書に記載の通りの、UDP-ガラクトースを調製するための費用効果が高く効率的な方法がもたらされるため、D-ガラクトースおよびウリジン三リン酸からのUDP-ガラクトースの酵素的合成に関して当技術分野で公知である上記に記載の方法よりも有益である。
【0022】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
【0023】
【化1】
A)(i)以下の式により表されるウリジン一リン酸およびD-ガラクトース
【0024】
【化2】
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む、方法に関する。
【0025】
本発明による、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースの生産ステップB)は、
(a)ガラクトキナーゼにより触媒されている、D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、
(b)ウリジン一リン酸キナーゼおよびポリリン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン一リン酸(UMP)、アデノシン三リン酸、およびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、
(c)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ること
を含む。
【0026】
自明のことではあるが、ステップ(a)および(b)は、同時に実施してもよくまたは連続して実施してもよい。それらの順序は(b)->(a)->(c)と逆にすることもできる。
【0027】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)(a)ガラクトキナーゼにより触媒されている、D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、
(b)ウリジン一リン酸キナーゼおよびポリリン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン一リン酸(UMP)、アデノシン三リン酸、およびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、ならびに
(c)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ること
により、酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む、方法に関する。
【0028】
より詳細には、本発明による、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースの生産ステップB)は、
(a)ガラクトキナーゼにより触媒されている、D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、
(b1)ウリジン一リン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン一リン酸およびアデノシン三リン酸からウリジン二リン酸(UDP)を形成すること、
(b2)ポリリン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン二リン酸およびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、ならびに
(c)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ること
を含む。
【0029】
自明のことではあるが、ステップ(a)は、ステップ(b1)または(b2)の前に、同時に、または後に実施してもよい。したがって、ステップの順序は、(b1)->(b2)->(a)->(c)と逆にすることもできる。
【0030】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)(a)ガラクトキナーゼにより触媒されている、D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、
(b1)ウリジン一リン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン一リン酸およびアデノシン三リン酸からウリジン二リン酸(UDP)を形成すること、
(b2)ポリリン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン二リン酸およびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、ならびに
(c)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ること
により、酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む、方法に関する。
【0031】
UDP-ガラクトースを生産するための本発明の方法は、先行技術に記載されている方法に対して、以下の重要な利点を有する:
・出発物質に関してコストが大幅に低減されること、つまり高価なUDPまたはUTPを必要としないこと、
・本方法は、連続的様式で実施することができ、それによって年間トン規模のUDPガラクトース提供が潜在的に可能になること、
・無細胞プロセスであり、それによって有害なGMO側面(規制、ラベリング)が回避されること、
・無細胞抽出物が直接的に使用され、生体触媒精製のコストがかからないこと、
・酵素は、低コストで市販のすぐに使用することができる固体支持体に固定化することができること、
・ガラクトースに関して収率がほぼ定量的であること、
・大規模化可能性が高く、本発明の方法が産業応用に有用であること。
【0032】
一実施形態では、酵素は、固体支持体に固定化されている。したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ、を含み
酵素のセットは固体支持体に固定化されている方法を対象とする。好ましくは、酵素のセットは、各酵素の酵素活性に影響を及ぼすことなく、固体支持体に共固定化されている。
【0033】
本発明のさらなる態様は、サッカライド、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質または糖ペプチド、特にヒト乳オリゴサッカライド(HMO)、および(モノクローナル)抗体を含む分子および生体分子のガラクトシル化であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ
を含むガラクトシル化を対象とする。
【0034】
ガラクトシル化のための本発明の方法の一実施形態では、UTPは、副産物UDPから再生される。したがって、触媒量のUMPしか必要とされない。したがって、ガラクトシル化のための本発明の方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ;ならびに
E)ステップD)で形成されたウリジン二リン酸を再利用して、ウリジン三リン酸を得るステップ
を含む。
【0035】
好ましくは、酵素のセットは、各酵素の酵素活性に影響を及ぼすことなく、固体支持体に共固定化されている。上記固体支持体は、エポキシ基で官能化されたメタクリレートなど、機械的強度の高いポリマー骨格で構成されている場合、生産性に影響を及ぼすことなく複数回再使用することができる。したがって、本発明のさらなる態様は、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットであって、エポキシ基で官能化された固体支持体に共固定化されている酵素のセットに関する。好ましくは、固体支持体は、メタクリレートポリマーである。好ましくは、ガラクトシルトランスフェラーゼは、酵素のセットと共に固体支持体に共固定化されている。
【0036】
[発明を実施するための形態]
定義
本明細書で使用される場合、「ポリリン酸塩」という用語は、長鎖の形成を導く、6つ以上のリン酸(PO4)四面体の角共有(corner sharing)により形成される幾つかのP-O-P結合を含有する任意の塩を指す。「PolyPn」という用語が同義的に使用され、nは、リン酸残基の数の平均鎖長を表し、例えば、PolyP25は、約25個のリン酸残基を有するポリリン酸塩を指し、PolyP14は、約14個のリン酸残基を有するポリリン酸塩を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ウリジンキナーゼ」という用語は、ウリジンキナーゼ活性を有するポリペプチドを指し、つまりウリジンキナーゼは、アデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン5’一リン酸に至るウリジンの反応を触媒する。ウリジンキナーゼは、EC分類2.7.1.48に属する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ポリリン酸キナーゼ」という用語は、ポリリン酸キナーゼ活性を有するポリペプチドを指し、つまり、ポリリン酸キナーゼは、以下の反応を触媒する:
【化3】
[式中、Nは、グアノシン、アデノシン、ウリジンなどのヌクレオチドであり、NMPはヌクレオシド一リン酸であり、NDPはヌクレオシド二リン酸であり、NTPはヌクレオシド三リン酸である]。
【0039】
ウリジンの場合、ポリリン酸キナーゼは、以下の反応を触媒する。
【化4】
ポリリン酸キナーゼは、EC分類2.7.4.1に属する。本明細書に記載の本発明の方法にて使用されるポリリン酸キナーゼ酵素の代表としては、これらに限定されないが、ポリリン酸キナーゼ1(PPK1)、ポリリン酸キナーゼ2(PPK2)、2ドメインポリリン酸キナーゼ2(2D-PPK2)および1ドメインポリリン酸キナーゼ2(1D-PPK2)、ならびにポリリン酸キナーゼ3(PPK3)が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「グルコース1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ」という用語は、ウリジリルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、つまりUTP:α-D-グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼであり、以下の反応を触媒するポリペプチドを指す。
【化5】
グルコース1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalU)は、EC分類2.7.7.9に属する。本発明者らが見出したように、グルコース1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼは、α-D-ガラクトース1-リン酸へのUTPの移転も触媒する。
【化6】
【0041】
本明細書で使用される場合、「ピロホスファターゼ」という用語は、ピロホスファターゼ活性を有するポリペプチド、つまり以下の反応を触媒するポリペプチドを指す:
【化7】
[式中、PPiは、ピロリン酸を指し、Piはリン酸を指す]。
ピロホスファターゼは、EC分類3.6.1.1に属する。この状況では、「ジホスファターゼ」という用語は、二リン酸のリン酸への加水分解を触媒するピロホスファターゼポリペプチドを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ガラクトキナーゼ」という用語は、キナーゼ活性を有するポリペプチド、つまりα-D-ガラクトース1-リン酸に至る以下のリン酸化を触媒するキナーゼを指す。
【化8】
ガラクトキナーゼは、EC分類2.7.1.6に属する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ」という用語は、ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、つまり、以下の反応を触媒するトランスフェラーゼを指す:
【化9】
[式中、PRPPは、リン酸化ペントース、好ましくはリン酸化リボース、最も好ましくは5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸を指す]。例示的に、トランスフェラーゼは、これらに限定されないが、EC分類2.4.2.9に属するウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ、またはそのようなトランスフェラーゼ活性があることも公知である、EC分類2.4.2.57に属するAMPホスホリラーゼである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「UMPシンターゼ」という用語は、ウリジン一リン酸シンセターゼ活性を有するポリペプチド、つまり、以下の反応を触媒するシンターゼを指す:
【化10】
[式中、OMPは、オロチジン-5’-リン酸を指す]。UMPシンターゼという用語は、オロチジン5’-リン酸デカルボキシラーゼと同義的に使用され、この酵素はEC分類4.1.1.23に属する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ」という用語は、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、つまり、以下の反応を触媒するトランスフェラーゼを指す。
【化11】
このトランスフェラーゼは、EC分類2.4.2.10に属する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ガラクトシルトランスフェラーゼ」という用語は、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、つまり、UDP-Galから受容体(生体)分子へのガラクトースの移転を触媒するポリペプチドを指す。好ましくは、受容体は、グルコースまたはN-アセチルグルコサミンなどのサッカライドである。好ましくは、ガラクトシルトランスフェラーゼは、β-ガラクトシルトランスフェラーゼであり、より好ましくは、ガラクトースと受容体サッカライドの4位との間にβ-グリコシド連結を形成することにより、UDP-Galから受容体サッカライドへのガラクトースの移転を触媒するβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである。
【0047】
ヒトでは末端α-ガラクトシル部分は天然に生じず、したがって抗体などにあるα-ガラクトシル構造に対する抗体反応の点で免疫応答を誘発する可能性があるため、α-ガラクトシルトランスフェラーゼよりもβ-ガラクトシルトランスフェラーゼが好ましい。ガラクトシルトランスフェラーゼは、EC分類2.4.1.-に属する。
【0048】
「配列同一性のパーセンテージ」および「相同性パーセンテージ」は、本明細書では、ポリペプチド間の比較を参照するために交換可能に使用され、比較ウィンドウにわたって最適にアラインされた2つの配列を比較することにより決定され、比較ウィンドウ内のポリペプチド配列の部分は、2つの配列を最適にアラインメントするために参照配列と比較して付加又は欠失(つまりギャップ)を含んでいてもよい。パーセンテージは、両配列において同一のアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して一致位置の数を得、一致位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出することができる。その代わりに、パーセンテージは、両配列において同一のアミノ酸残基が存在するかまたはアミノ酸残基がギャップ付きでアラインされているかのいずれかである位置の数を決定して一致位置の数を得、一致位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出することができる。当業者であれば、2つの配列をアラインするために利用可能な多くの確立されているアルゴリズムが存在することを理解している。
【0049】
「参照配列」は、配列比較の基準として使用される画定配列を指す。参照配列は、より大きな配列のサブセット、例えば、完全長ポリペプチド配列のセグメントであってもよい。一般に、参照配列は、ポリペプチドの少なくとも20アミノ酸残基長、少なくとも25残基長、少なくとも50残基長、または完全長である。2つのポリペプチドは各々、(1)2つの配列間で類似する配列(つまり、完全な配列の部分)を含んでいてもよく、(2)2つの配列間で相違する配列をさらに含んでいてもよいため、2つ(またはそれよりも多くの)ポリペプチド間の配列比較は、典型的には、「比較ウィンドウ」にわたって2つのポリペプチドの配列を比較して、配列類似性の局所領域を特定および比較することにより実施される。一部の実施形態では、「参照配列」は、一次アミノ酸配列に基づいていてもよく、参照配列は、一次配列に1つまたは複数の変化を有する可能性のある配列である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「サッカライド」は、これらに限定されないが、モノサッカライド、ジサッカライド、トリサッカライド、テトラサッカライド、ペンタサッカライド、ヘキササッカライド、ヘプタサッカライド、オクタサッカライド・・・、オリゴサッカライド、グリカン、およびポリサッカライドを指す。サッカライドは、好ましくは、以下のものから選択されるモノサッカライド単位を含む:D-アラビノース、D-リキソース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノース、L-リキソース、L-リボース、L-キシロース、D-リブロース、D-キシルロース、L-リブロース、L-キシルロース、D-デオキシリボース、L-デオキシリボース、D-エリスロース、D-スレオ-ス、L-グリセロ-D-マンノ-ヘプトース、D-グリセロ-D-マンノ-ヘプトース、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、D-プシコース、D-フルクトース、D-ソルボース、D-タガトース、6-デオキシ-L-アルトロース、6-デオキシ-D-タロース、D-フコース、L-フコース、D-ラムノース、L-ラムノース、D-キノボース、オリボース、チベロース、アスカリロース、アベクオース、パラトース、ジギトキソース、コリトース、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-マンノサミン、D-アロサミン、L-アルトロサミン、D-グロサミン、L-イドサミン、D-タロサミン、N-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、N-アセチル-D-マンノサミン、N-アセチル-D-アロサミン、N-アセチル-L-アルトロサミン、N-アセチル-D-グロサミン、N-アセチル-L-イドサミン、N-アセチル-D-タロサミン、N-アセチル-D-フコサミン、N-アセチル-L-フコサミン、N-アセチル-L-ラムノサミン、N-アセチル-D-キノボサミン、D-グルクロン酸、D-ガラクツロン酸、D-マンヌロン酸、D-アルロン酸、L-アルトルロン酸、D-グルロン酸、L-グルロン酸、L-イズロン酸、D-タルロン酸、ノイラミン酸、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコリルノイラミン酸、アピオース、バシロサミン、テベトース、アコフリオース、シマロース、ムラミン酸、N-アセチルムラミン酸、N-グリコリルムラミン酸、3-デオキシ-lyxo-ヘプツロサル酸、ケトデオキシオクトン酸、およびケトデオキシノノン酸。好ましくは、モノサッカライド単位は、以下のものを含むかまたはからなる群のα-およびβ-D/L-炭水化物に属する:
α-D-リボピラノース、α-D-アラビノピラノース、α-D-キシロピラノース、α-D-リキソピラノース、α-D-アロピラノース、α-D-アルトロピラノース、α-D-グルコピラノース、α-D-マンピラノース、α-D-グルコピラノース、α-D-イドピラノース、α-D-ガラクトピラノース、α-D-タロピラノース、α-D-プシコピラノース、α-D-フルクトピラノース、α-D-ソルボピラノース、α-D-タガトピラノース、α-D-リボフラノース、α-D-アラビノフラノース、α-D-キシロフラノース、α-D-リキソフラノース、α-D-アロフラノース、α-D-アルトロフラノース、α-D-グルコフラノース、α-D-マンノフラノース、α-D-グロフラノース、α-D-イドフラノース、α-D-ガラクトフラノース、α-D-タロフラノース、α-D-プシコフラノース、α-D-フルクトフラノース、α-D-ソルボフラノース、α-D-タガトフラノース、α-D-キシルロフラノース、α-D-リブロフラノース、α-D-トレオフラノース、α-D-ラムノピラノース、α-D-エリトロフラノース、α-D-グルコサミン、α-D-グルコピラヌロン酸、β-D-リボピラノース、β-D-アラビノピラノース、β-D-キシロピラノース、β-D-リキソピラノース、β-D-アロピラノース、β-D-アルトロピラノース、β-D-グルコピラノース、β-D-マンピラノース、β-D-グルコピラノース、β-D-イドピラノース、β-D-ガラクトピラノース、β-D-タロピラノース、β-D-プシコピラノース、β-D-フルクトピラノース、β-D-ソルボピラノース、β-D-タガトピラノース、β-D-リボフラノース、β-D-アラビノフラノース、β-D-キシロフラノース、β-D-リキソフラノース、β-D-ラムノピラノース、β-D-アロフラノース、β-D-アルトロフラノース、β-D-グルコフラノース、β-D-マンノフラノース、β-D-グロフラノース、β-D-イドフラノース、β-D-ガラクトフラノース、β-D-タロフラノース、β-D-プシコフラノース、β-D-フルクトフラノース、β-D-ソルボフラノース、β-D-タガトフラノース、β-D-キシルロフラノース、β-D-リブロフラノース、β-D-トレオフラノース、β-D-エリトロフラノース、β-D-グルコサミン、β-D-グルコピラヌロン酸、α-L-リボピラノース、α-L-アラビノピラノース、α-L-キシロピラノース、α-L-リキソピラノース、α-L-アロピラノース、α-L-アルトロピラノース、α-L-グルコピラノース、α-L-マンピラノース、α-L-グルコピラノース、α-L-イドピラノース、α-L-ガラクトピラノース、α-L-タロピラノース、α-L-プシコピラノース、α-L-フルクトピラノース、α-L-ソルボピラノース、α-L-タガトピラノース、α-L-ラムノピラノース、α-L-リボフラノース、α-L-アラビノフラノース、α-L-キシロフラノース、α-L-リキソフラノース、α-L-アロフラノース、α-L-アルトロフラノース、α-L-グルコフラノース、α-L-マンノフラノース、α-L-グロフラノース、α-L-イドフラノース、α-L-ガラクトフラノース、α-L-タロフラノース、α-L-プシコフラノース、α-L-フルクトフラノース、α-L-ソルボフラノース、α-L-タガトフラノース、α-L-キシルロフラノース、α-L-リブロフラノース、α-L-トレオフラノース、α-L-エリトロフラノース、α-L-グルコサミン、α-L-グルコピラヌロン酸、β-L-リボピラノース、β-L-アラビノピラノース、β-L-キシロピラノース、β-L-リキソピラノース、β-L-アロピラノース、β-L-アルトロピラノース、β-L-グルコピラノース、β-L-マンピラノース、β-L-グルコピラノース、β-L-イドピラノース、β-L-ガラクトピラノース、β-L-タロピラノース、β-L-プシコピラノース、β-L-フルクトピラノース、β-L-ソルボピラノース、β-L-タガトピラノース、β-L-リボフラノース、β-L-アラビノフラノース、β-L-キシロフラノース、β-L-リキソフラノース、β-L-アロフラノース、β-L-アルトロフラノース、β-L-グルコフラノース、β-L-マンノフラノース、β-L-グロフラノース、β-L-イドフラノース、β-L-ガラクトフラノース、β-L-タロフラノース、β-L-プシコフラノース、β-L-フルクトフラノース、β-L-ソルボフラノース、β-L-タガトフラノース、β-L-キシルロフラノース、β-L-リブロフラノース、β-L-トレオフラノース、β-L-エリトロフラノース、β-L-グルコサミン、β-L-グルコピラヌロン酸、およびβ-L-ラムノピラノース
【0051】
サッカライドは、アミド、カーボネート、カルバメート、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシ、チオカルボキシ、エステル、チオエステル、エーテル、エポキシ、ヒドロキシアルキル、アルキレニル、フェニレン、アルケニル、イミノ、イミド、イソ尿素、チオカルバメート、チオ尿素、および/または尿素部分を有するように、任意選択でさらに修飾されている。
【0052】
本明細書で使用される場合、「糖ペプチド」という用語は、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に共有結合で付着している炭水化物部分を含有するペプチドを指す。炭水化物部分は、側鎖を形成し、セリン残基もしくはスレオニン残基のヒドロキシ基に接続されているO-グリコシド、またはアスパラギン残基のアミド窒素に接続されているN-グリコシドのいずれかである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「糖タンパク質」という用語は、ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に共有結合で付着している炭水化物部分を含むポリペプチドを指す。炭水化物部分は、側鎖を形成し、セリン残基もしくはスレオニン残基のヒドロキシ基に接続されているO-グリコシド、またはアスパラギン残基のアミド窒素に接続されているN-グリコシドのいずれかである。
【0054】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、非グリコシル化タンパク質およびグリコシル化タンパク質を含む、ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に共有結合で付着している炭水化物部分を含有するかまたは欠如するポリペプチドを指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、非グリコシル化ペプチドおよびグリコシル化ペプチドを含む、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に共有結合で付着している炭水化物部分を含有するかまたは欠如するペプチドを指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「療法用抗体」という用語は、特に疾患の治療に所望の効果を有するようにヒトまたは動物に投与することができる抗体を指す。そのような療法用抗体は、一般にモノクローナル抗体であり、一般に遺伝子改変されているだろう。抗体が組換え抗体である場合、それはヒト化されていてもよい。その代わりに、療法用抗体はポリクローナル抗体であってもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「バイオコンジュゲート」という用語は、互いに共有結合で結合している少なくとも2つの分子で構成されており、それらのうちの少なくとも1つは、1つまたは複数の典型的には生物学的プロセスに不可欠な生体分子、つまり生物に存在する分子である分子構築物を指す。例示的なバイオコンジュゲートは、キャリアタンパク質に共有結合でカップリングされている炭水化物抗原で構成されている炭水化物コンジュゲートワクチン、および抗体薬物コンジュゲートである。
【0058】
本明細書で使用される場合、「炭水化物コンジュゲートワクチン」という用語は、免疫原性キャリアに共有結合で結合している炭水化物抗原を含有するコンジュゲートを指す。炭水化物抗原は、これらに限定されないが、細菌性莢膜サッカライド、ウイルス糖タンパク質のサッカライド、胞子虫もしくは寄生虫のサッカライド抗原、病原性真菌のサッカライド抗原、またはがん細胞に特異的なサッカライド抗原であってもよい。免疫原性キャリアは、これらに限定されないが、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応物質197(CRM197)、分類不可能なH.インフルエンザ(H.influenzae)のタンパク質D、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)莢膜群Bの外膜タンパク質複合体(OMPC)、P.エルギノーザ(P.aeruginosa)の外毒素A(EPA)、C.ディフィシル(C.difficile)毒素A(CDTA)、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)などの肺炎球菌タンパク質、肺炎球菌ヒスチジントライアドD(PhtD)、無毒化ニューモリシン(dPly)、およびspr96/2021、黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素、および志賀毒素1bであってもよい。
【0059】
「固体支持体」という用語は、本明細書で使用される場合、酵素または他の試薬を、直接的にまたは係留基を有するリンカーを介して付着または固定化することができ、過剰な試薬、可溶性反応産物、副産物、または溶媒からの酵素の(洗浄、濾過、遠心分離などによる)容易な分離を可能にする不溶性官能化材料を指す。固体支持体は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミドなどの有機ポリマー、ならびにそれらのコポリマーおよびグラフトで構成されていてもよい。また、固体支持体は、ガラス、シリカ、多孔性制御ガラス(CPG、controlled pore glass)、逆相シリカ、または金もしくは白金などの金属などの無機物であってもよい。また、固体支持体は、磁性粒子で構成されていてもよい。酵素固定化に好適な支持材料の概要については、Zdartaら、Catalysts 2018年、8巻、92頁、およびDattaら、Biotech 2013年 3巻:1~9頁を参照されたい。
【0060】
固体支持体の構成は、ビーズ、モノリス、球体、粒子、粒子床、繊維マット、顆粒、ゲル、膜、中空繊維膜、混合マトリックス膜、または表面の形態であってもよい。表面は、平面、実質的に平面、または非平面であってもよい。固体支持体は、多孔性であってもよくまたは非多孔性であってもよく、膨潤特質を有していてもよくまたは非膨潤特質を有していてもよい。固体支持体は、ウェル、窪み、または他の入れ物、容器、特徴、または場所の形に構成されていてもよい。
【0061】
驚くべきことに、本発明者らは、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至る反応が、UTPとα-D-グルコース1-リン酸が二リン酸およびUDP-グルコースに至る反応を触媒する能力について公知であるに過ぎない酵素(EC2.7.7.9)であるグルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalU)により効率的に触媒され得ることを見出した。したがって、本発明の酵素カスケードには、グルコース1-リン酸などのさらなるモノサッカライド基質も、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼも必要とされない。
【0062】
したがって、本発明による、UDP-Galを生産するための方法は、酵素カスケードのためのより少数の酵素、およびより少数の高価な出発物質が必要であり、それにより本発明の方法がより効率的になり収率が99%を上回り、より安価になるため、先行技術の方法よりも有益である(実施例2を参照)。
【0063】
本発明の方法の一実施形態では、プロセスコストを低減するために、より高濃度の反応混合物が使用される。したがって、ステップA)で準備される溶液中のUMPおよびD-ガラクトースの濃度は、好ましくは、0.01mM~100,000mMの範囲である。より好ましくは、UMPおよびD-ガラクトースの濃度は、0.05mM~50,000mMの範囲である。より好ましくは、UMPおよびD-ガラクトースの濃度は、0.1mM~30,000mMの範囲である。より好ましくは、UMPおよびD-ガラクトースの濃度は、0.2mM~15,000mMの範囲である。
【0064】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)で準備される溶液中のウリジン一リン酸およびD-ガラクトースの濃度は、0.2mM~15,000mMの範囲である、方法を対象とする。
【0065】
好ましくは、酵素のセット中の酵素の濃度は、ステップA)で準備される溶液の総容積に基づき、0.0001mg/mL~100mg/mLである。
【0066】
UDP-ガラクトースに至るガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸との反応の副産物として、ピロリン酸(PPi)が形成される。ピロリン酸は、水溶液中で不安定であるが、無機リン酸(Pi)へとゆっくりと加水分解するに過ぎない。PPiは、Mg2+などの金属イオンと結合し、溶液から析出するため、高濃度のピロリン酸は、UDP-ガラクトース形成に関与するグルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ酵素の活性を低下させる。加えて、ピロリン酸は、ウリジリルトランスフェラーゼおよびグアニリルトランスフェラーゼを阻害する能力が公知である。酵素ピロホスファターゼは、ピロリン酸のリン酸への加水分解を触媒し、それによりUDP-ガラクトース形成を効果的に不可逆化することができる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。したがって、本発明による、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0067】
言い換えると、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための本発明の方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)(a)ガラクトキナーゼにより触媒されている、D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、
(b1)ウリジン一リン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン一リン酸およびアデノシン三リン酸からウリジン二リン酸(UDP)を形成すること、
(b2)ポリリン酸キナーゼにより触媒されている、ウリジン二リン酸およびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、ならびに
(c’)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ること、ならびに
(c’’)ピロホスファターゼの存在下で、ピロリン酸をリン酸へと変換することにより、
酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0068】
好ましくは、本明細書に記載の本発明の方法で使用されるピロホスファターゼは、無機ピロホスファターゼである。好ましくは、ピロホスファターゼは、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)由来の無機ピロホスファターゼ(PmPpA)である。
【0069】
ポリリン酸塩は、初期に水性媒体に溶解されていた金属イオン(例えば、Ca2+、Mg2+、Fe2+/3+)と安定した水溶性錯体を形成することができる。この効果は、金属イオン封鎖と呼ばれ、結合した金属イオンが、反応、特に酵素反応に参加することを防止する。したがって、金属イオン封鎖された金属イオン、特にMg2+およびMn2+は、本明細書に記載の本発明の方法に関与する酵素の補因子として作用することができない。特定のポリリン酸塩が特定の金属イオンを金属イオン封鎖する能力は、ポリリン酸塩の鎖長の増加とともに減少するため、本発明では長鎖ポリリン酸塩が好ましい。少なくとも14個のリン酸残基を有するポリリン酸塩がより好ましい。少なくとも25個のリン酸残基を有するポリリン酸塩がより好ましい。
【0070】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ポリリン酸塩は、少なくとも25個のリン酸残基を有する長鎖ポリリン酸塩である、方法を対象とする。
【0071】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ポリリン酸塩は、少なくとも25個のリン酸残基を有する長鎖ポリリン酸塩である。
【0072】
好ましくは、酵素は、他の基質を有する単一反応混合物中に存在する。混合物は、均質(溶液)であってもよくまたは不均質であってもよい。酵素は、固体支持体に固定化されていてもよくまたはされなくてもよい。したがって、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースは、本発明の方法のさらなる態様に従って単一反応混合物中で生産される。
【0073】
したがって、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸、ならびに
(iii)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセット
を含む混合物を準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0074】
また、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸、ならびに
(iii)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセット
を含む溶液を準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
も含む。
【0075】
言い換えると、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸、ならびに
(iii)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む少なくとも4つの酵素
を含む混合物を準備するステップ;
B)少なくとも4つの酵素、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0076】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸、ならびに
(iii)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、任意選択でピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセット
を含む溶液を準備するステップ;ならびに
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0077】
ポリリン酸塩は、本明細書に記載の本発明の方法において唯一のエネルギーキャリアとしての役目を果たし、ポリリン酸キナーゼ3(PPK3)を使用するADPからのATPの再生におけるリン酸供給源として使用される。ATPの再生は、ATPに至るADPのリン酸化も触媒する1ドメインポリリン酸キナーゼ(1D-PPK)、好ましくは1ドメインポリリン酸キナーゼ2(1D-PPK2)を、本発明の方法の酵素カスケードに添加することにより増強することができる。さらに、ADPなどのヌクレオシドリン酸は、水性媒体中で不安定であり、急速に加水分解する傾向がある。AMPへの加水分解によるADPの喪失を回避するため、ADPに至るAMPのリン酸化を触媒する2ドメインポリリン酸キナーゼ(2D-PPK)、好ましくは2ドメインポリリン酸キナーゼ2(2D-PPK2)を、1D-PPKと共にまたは単独で本発明の酵素カスケードに添加してもよい。
【0078】
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、ならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0079】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼ、および2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0080】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、および1ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0081】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、および2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0082】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0083】
本明細書に記載の本発明の方法では、ATPは、ADPおよびポリリン酸塩から連続的に再生されるため、UDP-ガラクトースの生産は、触媒量のATPで実施することができる。したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0084】
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、ならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0085】
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、および1ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0086】
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、および2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0087】
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼ、および2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0088】
「触媒量」という用語は、本明細書では、準化学量論的量のATP、つまり、本発明の方法で使用されるガラクトースの量よりも少ないATPの量を指す。好ましくは、触媒量のATPは、D-ガラクトース1モル当たり0.000001~0.99モルの範囲である。より好ましくは、触媒量のATPは、D-ガラクトース1モル当たり0.000001~0.95モルの範囲である。より好ましくは、触媒量のATPは、D-ガラクトース1モル当たり0.000001~0.9モルの範囲である。より好ましくは、触媒量のATPは、D-ガラクトース1モル当たり0.000005~0.5モル、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.00001~0.1モル、より好ましくはD-ガラクトース1モルあたり0.00001~0.05モル、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.00001~0.01モル、最も好ましくは、D-ガラクトース1モル当たり0.00001~0.001モルの範囲である。
【0089】
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)では、アデノシン三リン酸は、D-ガラクトース1モル当たり0.000001モル~0.9モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.000005モル~0.5モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.00001モル~0.1モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.00001モル~0.05モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.00001モル~0.01モルの量で、最も好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.00001モル~0.001モルの量で添加される。
【0090】
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、ならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)では、アデノシン三リン酸は、D-ガラクトース1モル当たり0.001モル~0.9モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.002モル~0.8モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.7モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.5モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.2モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.1モルの量で、最も好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.005モル~0.05モルの量で添加される。
【0091】
好ましくは、ATPは、ステップA)で準備される溶液中に、0.05mM~100mM、より好ましくは0.1mM~90mM、より好ましくは0.1mM~50mM、より好ましくは0.2mM~20mM、より好ましくは0.2mM~10mM、より好ましくは0.2mM~5mM、最も好ましくは0.5mM~3mMの濃度で存在する。
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)では、溶液中のアデノシン三リン酸の濃度は、0.5mM~3mMの範囲である。
【0092】
代替的な実施形態では、ATPの代わりにADPまたはAMPを、本明細書に記載の本発明の方法に使用することができる。ATPは、AMPまたはADPおよびポリリン酸塩からin situで生成されるため、UDP-ガラクトースの生産は、ADPまたはAMPを出発物質として用いて実施することもできる。したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン一リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0093】
本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン二リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0094】
代替的な実施形態では、ATPは、時空収率を増加させるために、過剰量のD-ガラクトースで使用される。したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、ならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ATPの量は、D-ガラクトース1モル当たり1~100モルの範囲であり、より好ましくは、ATPの量は、D-ガラクトース1モル当たり1.2~50モルの範囲であり、より好ましくは、ATPの量は、D-ガラクトース1モル当たり1.5~20モルの範囲であり、最も好ましくは、ATPの量は、D-ガラクトース1モル当たり2~10モルの範囲である。
【0095】
好ましくは、本発明の方法では、ステップA)で得られる溶液は、5.0~10.0、好ましくは5.5~9.5、より好ましくは6.0~9.0、さらにより好ましくは6.5~9.0、さらにより好ましくは7.0~9.0の範囲のpH値、および最も好ましくは7.5~8.5の範囲のpH値を有する。
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン二リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)で得られる溶液は、7.5~8.5の範囲のpH値を有する。
【0096】
本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン二リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)で得られる溶液は、約8.5の範囲のpH値を有する。
【0097】
本発明の一実施形態では、ステップA)で準備される溶液は、酵素のセットの触媒活性のための補因子としてMg2+イオンを含む。好ましくは、Mg2+イオンは、ステップA)で準備される溶液中に、1mM~200mM、より好ましくは1mM~150mM、より好ましくは2mM~150mM、より好ましくは5mM~100mM、より好ましくは10mM~90mM、より好ましくは15mM~80mM、より好ましくは20mM~80mM、最も好ましくは20mM~50mMの濃度で存在する。
したがって、本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩および触媒量のアデノシン二リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)で得られる溶液は、20mM~80mMの、好ましくは20mM~50mMの範囲のMg2+濃度を有する。
【0098】
また、UDP-ガラクトースを生産するための本発明の方法は、固定化酵素のセットを用いて実施することもできる。その場合、酵素は、それらの活性、基質特異性、立体選択性、および/または他の特性を保持するように、固体支持体に固定化されている。好適な固体支持体は、例えば、ビーズ、モノリス、球体、粒子、粒子床、繊維マット、顆粒、ゲル、膜、中空繊維膜、混合マトリックス膜、表面、または他の固相材料である。
【0099】
一実施形態では、各酵素、つまりグルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼは、固体支持体に固定化されている。さらなる実施形態では、各酵素、つまりグルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼは、固体支持体に固定化されている。
【0100】
一実施形態では、酵素のセットの一部の酵素のみが、固体支持体に固定化されている。さらなる実施形態では、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、またはポリリン酸キナーゼの組合せ、例えば1D-および2D-ppk2およびppk3の組合せ、ウリジン一リン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットから選択される1つの酵素のみが、固体支持体に固定化されている。さらなる別の実施形態では、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、および任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットから選択される少なくとも1つの酵素が、固体支持体に固定化されている。好ましくは、ポリリン酸キナーゼは、固体支持体に固定化されている。好ましくは、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼは、固体支持体に固定化されている。好ましくは、ガラクトキナーゼは、固体支持体に固定化されている。好ましくは、ウリジン一リン酸キナーゼは、固体支持体に固定化されている。好ましくは、ピロホスファターゼは、固体支持体に固定化されている。
【0101】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは固体支持体に結合または固定化されている、方法も対象とする。
【0102】
本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、およびピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは固体支持体に結合または固定化されている、方法も対象とする。
【0103】
本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは固体支持体に結合または固定化されている、方法も対象とする。
【0104】
本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットの少なくとも1つの酵素は固体支持体に固定化されている、方法も対象とする。
【0105】
好ましくは、本明細書に記載の本発明の方法で使用される酵素は、固体支持体に共固定化されている。連続的に作用する酵素を狭い空間内に固定化すると、基質の拡散時間が劇的に低減されるため、変換の触媒効率が増加する。加えて、基質のin-situ形成は、動力学的増強に結び付く高局所濃度をもたらし、実質的なコスト削減と同じであるとみなすことができる。共固定化は、通常、固体支持体に固定化する前に酵素を混合することにより達成される。
【0106】
したがって、また、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは固体支持体に共固定化されている、方法も対象とする。
【0107】
本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、およびピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは固体支持体に共固定化されている、方法も対象とする。
【0108】
本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは固体支持体に共固定化されている、方法も対象とする。
【0109】
また、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に共固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む方法も対象とする。
【0110】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に共固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
固体支持体は、ビーズ、モノリス、球体、粒子、粒子床、繊維マット、顆粒、ゲル、膜、中空繊維膜、混合マトリックス膜、または表面の形態を有する、方法を含む。好ましくは、固体支持体はビーズの形態を有する。
【0111】
そのような実施形態では、固定化された酵素は、UMPおよびD-ガラクトースからのウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースの生産を容易にすることができ、反応完了後、固定化された酵素は容易に保持され(例えば、酵素が固定化されているビーズを保持することにより)、次いでその後の実行に再使用または再利用される。そのような固定化された生体触媒プロセスは、さらなる効率化およびコスト低減を可能にする。加えて、本発明の方法は、ステップA)の供給溶液を、固体支持体に固定化された酵素のセットを含有する反応器に通すことにより、連続的な様式で実施することができる。
【0112】
したがって、一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む供給溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に共固定化された酵素のセットを準備するステップであって、固定化された酵素のセットを含む固体支持体は化学反応器に配置されている、ステップ;
B)ステップA)からの供給溶液を、固定化された酵素のセットを含む固体支持体が配置されている化学反応器に連続的に通すことにより、酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0113】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む供給溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、およびピロホスファターゼを含む、固体支持体に共固定化された酵素のセットを準備するステップであって、固定化された酵素のセットを含む固体支持体は化学反応器に配置されている、ステップ;
B)ステップA)からの供給溶液を、固定化された酵素のセットを含む固体支持体が配置されている化学反応器に連続的に通すことにより、酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0114】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む供給溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む、固体支持体に共固定化された酵素のセットを準備するステップであって、固定化された酵素のセットを含む固体支持体は化学反応器に配置されている、ステップ;
B)ステップA)からの供給溶液を、固定化された酵素のセットを含む固体支持体が配置されている化学反応器に連続的に通すことにより、酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0115】
酵素固定化の方法は当技術分野で周知である。酵素は、吸着、共有結合、イオン結合、金属結合、架橋、または結晶化などの、非共有結合または共有結合で結合していてもよい。酵素を固体支持体(例えば、レジン、膜、ビーズ、ガラスなど)にコンジュゲートおよび固定化するための種々の方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Yiら、Process Biochemistry 2007年、42巻、895頁;Martinら、Applied Microbiology and Biotechnology 2007年、76巻、843頁;Koszelewskiら、Journal of Molecular Catalysis B:Enzymatic、2010年、63巻、39頁;Truppoら、Org.Process Res.Dev.、2011年、15巻、1033頁;Mateoら、Biotechnology Progress、2002年、18巻、629頁に記載されている。好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための本発明の方法で使用される酵素は、固体支持体に共有結合で結合している。
【0116】
本明細書に記載の本発明の方法で使用される酵素、すなわち、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼ、2ドメインポリリン酸キナーゼ、およびピロホスファターゼは、当業者に周知であり、当業者に周知の任意の方法により得ることができる。特に、酵素は、大腸菌(E.coli)、ウイルスおよびファージの培養物、ならびに真核細胞培養物を含む微生物学的培養物中で過剰発現させることができるか、それらから単離することができるか、またはそれらから組換え法により調製することができる。本明細書に記載の本発明の方法は、実験セクションに記載の供給源に由来する酵素に限定されない。したがって、本発明の方法は、一般的なタンパク質発現または単離技法を使用して種々の供給源から得られる上記に列挙されている酵素を用いて実施することができる。さらに、本方法が使用される特定の応用に酵素調製を適合させることは、当業者にとって周知である。例えば、上記に列挙されている酵素は、大豆由来のトリプトンを含むルリア-ベルターニブロスなどの、非動物起源の細菌増殖培地を使用することにより、大腸菌で発現させることができる。
【0117】
一実施形態では、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼは、配列番号4に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ガラクトキナーゼは、配列番号1に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ポリリン酸キナーゼは、配列番号3に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ウリジン一リン酸キナーゼは、配列番号2に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、1ドメインポリリン酸キナーゼは、配列番号6に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、2ドメインポリリン酸キナーゼは、配列番号7に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ピロホスファターゼは、配列番号5に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0118】
したがって、一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼは、配列番号4に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ガラクトキナーゼは、配列番号1に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリリン酸キナーゼは、配列番号3に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ウリジン一リン酸キナーゼは、配列番号2に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、1ドメインポリリン酸キナーゼは、配列番号6に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、2ドメインポリリン酸キナーゼは、配列番号7に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ピロホスファターゼは、配列番号5に示されているアミノ酸配列、または上記配列に対して少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0119】
発酵プロセス、細胞ホモジナイゼーション、または細胞溶解から得られる酵素含有溶液は、通常は、遠心分離および濾過されて細胞残渣が除去されており、酵素を固体支持体に固定化するために直接的に使用することができる。したがって、さらなる精製ステップも単離ステップも必要ではなく、酵素が、活性、基質特異性、立体選択性、および/または他の特性を保持するように酵素を固体支持体に固定化するために、発酵ブロス、(粗または精製)細胞ライセート、または細胞ホモジネートを使用することができる。
【0120】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから固体支持体に固定化されている、方法をさらに対象とする。
【0121】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、粗細胞ライセート、または細胞ホモジネートから直接的に固体支持体に固定化されている。
【0122】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、事前に精製することなく発酵ブロスから直接的に固体支持体に固定化されている。
【0123】
言い換えると、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、事前に精製することなく発酵上清から直接的に固体支持体に固定化されている。
【0124】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから固体支持体に共固定化されている。
【0125】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、酵素のセットは、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから固体支持体に共固定化されている。
【0126】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから固体支持体に共固定化されている。
【0127】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットの少なくとも1つの酵素は、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから固体支持体に共固定化されている。
【0128】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットの少なくとも1つの酵素は、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから固体支持体に共固定化されている。
【0129】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットの少なくとも1つの酵素は、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから固体支持体に共固定化されている。
【0130】
本発明の方法で使用される酵素の固定化に有用な固体支持体としては、これらに限定されないが、以下のものを含むビーズまたはレジンが挙げられる:エポキシド官能基を有するポリメタクリレート、エポキシド官能基を有するポリメタクリレート、アミノエポキシド官能基を有するポリメタクリレート、エチレンジアミン官能基を有するポリメタクリレート、エポキシ官能基を有するポリアクリル酸、アニオン性/アミノC6スペーサー官能基を有するポリアクリル酸、アニオン性/三級アミン官能基を有するポリアクリル酸、アニオン性/四級アミン官能基を有するポリスチレン、カチオン性/スルホン酸官能基を有するポリスチレン、カルボン酸エステル官能基を有するポリアクリル酸、フェニル官能基を有するポリスチレン、オクタデシル官能基を有するポリメタクリレート、スチレン/メチル官能基を有するポリスチレン、Ni-NTA官能基を有する磁性シリカ粒子、またはマグネタイトのコアおよびNi-NTA官能基を有するデキストランシェルを有する磁性ナノ粒子。原理的には、当技術分野で公知の任意の好適な固体支持体を本発明の方法に使用することができるが、NiアガロースビーズまたはNi NTAアガロースレジンは、上記に示されている理由から好ましくない。
【0131】
本発明の方法に使用される酵素の固定化に有用な例示的な固体支持体としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:sepabeads(Resindion):EC-EP/SおよびEC-EP/Mを含むEC-EP、EP112/S、EP112/M、EP113/S、EP113/M、EP403/M、EP403/S、EC-HFA/M、EC-HFA/S、HFA403/M、HFA403/S、EC-EA/M、EC-EA/S、EP400/SS、ならびにEC-HA/SおよびEC-HA/Mを含むEC-HA;relizyme(Resindion)EA403/S;immobeads(ChiralVision)Imm150P、IB-COV1、IB-COV2、IB-COV3、IB-ANI1、IB-ANI2、IB-ANI3、IB-ANI4、IB-CAT1、IB-ADS1、IB-ADS2、IB-ADS3、およびIB-ADS4;Eupergit(Rohm GmbH&Co.KG);Lifetech(商標)(Purolite)ECR8215F、ECR8204F、ECR8209F、ECR8285、ECR8409F、ECR8315F、ECR8309F、ECR1030F、8806F、8415F、1091M、1604;ならびに磁性粒子(micromod GmbH):Nano-mag-DおよびSicastar-M-CT。
【0132】
好ましくは、固体支持体は、以下ものから選択されるレジンまたはビーズで構成されている:sepabeads(Resindion):EC-EP、EC-EP/S、EC-EP/M、EP112/S、EP112/M、EP113/S、EP113/M、EP403/M、EP403/S、EC-HFA/M、EC-HFA/S、HFA403/M、HFA403/S、EC-EA/M、EC-EA/S、EP400/SS、およびEC-HA;EC-HA/S、EC-HA/M、relizyme(Resindion)EA403/S;immobeads(ChiralVision)Imm150P、IB-COV1、IB-COV2、IB-COV3、IB-ANI1、IB-ANI2、IB-ANI3、IB-ANI4、IB-CAT1、IB-ADS1、IB-ADS2、IB-ADS3、およびIB-ADS4;Eupergit(Rohm GmbH&Co.KG);Lifetech(商標)(Purolite)ECR8215F、ECR8204F、ECR8209F、ECR8285、ECR8409F、ECR8315F、ECR8309F、ECR1030F、8806F、8415F、1091M、1604;ならびに磁性粒子(micromod GmbH):Nano-mag-DおよびSicastar-M-CT。
【0133】
より好ましくは、固体支持体は、EC-EP、EP403/M、IB-COV1、IB-COV2、IB-COV3、Eupergit(登録商標)CM、ECR8215F、ECR8204F、ECR8209F、ECR8285、EP403/S、およびEP400/SSから選択されるレジンまたはビーズで構成されている。
【0134】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
固体支持体は、EC-EP、EP403/M、IB-COV1、IB-COV2、IB-COV3、Eupergit(登録商標)CM、ECR8215F、ECR8204F、ECR8209F、ECR8285、EP403/S、およびEP400/SSから選択されるレジンまたはビーズで構成されている、方法をさらに対象とする。
【0135】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
固体支持体は、EC-EP、EP403/M、IB-COV1、IB-COV2、IB-COV3、Eupergit(登録商標)CM、ECR8215F、ECR8204F、ECR8209F、ECR8285、EP403/S、およびEP400/SSから選択されるレジンまたはビーズで構成されている。
【0136】
好ましくは、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
固体支持体は、EC-EP、EP403/M、IB-COV1、IB-COV2、IB-COV3、Eupergit(登録商標)CM、ECR8215F、ECR8204F、ECR8209F、ECR8285、EP403/S、およびEP400/SSから選択されるレジンまたはビーズで構成されている。
【0137】
また、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む、固体支持体に固定化された酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
固体支持体は、エポキシド官能基を有するポリメタクリレート、アミノエポキシド官能基を有するポリメタクリレート、エチレンジアミン官能基を有するポリメタクリレート、エポキシ官能基を有するポリアクリル酸、アニオン性/アミノC6スペーサー官能基を有するポリアクリル酸、アニオン性/三級アミン官能基を有するポリアクリル酸、アニオン性/四級アミン官能基を有するポリスチレン、カチオン性/スルホン酸官能基を有するポリスチレン、カルボン酸エステル官能基を有するポリアクリル酸、フェニル官能基を有するポリスチレン、オクタデシル官能基を有するポリメタクリレート、スチレン/メチル官能基を有するポリスチレン、Ni-NTA官能基を有する磁性シリカ粒子、またはマグネタイトのコアおよびNi-NTA官能基を有するデキストランシェルを有する磁性ナノ粒子を含むビーズまたはレジンで構成されている、方法も対象とする。
【0138】
一実施形態では、酵素は、固体支持体として、エポキシ基で官能化された固体支持体に、共有結合で固定化されている。メタクリレートポリマーなどの固体支持体は、複数回の実行またはサイクルによる反応器での使用に好適な高い機械的強度を有する。エポキシ基は、酵素の活性、基質特異性、立体選択性、および/または他の特性が保持されるように、UDP-Galカスケードの酵素と非常に安定した共有結合を形成し、それにより合成中の酵素の早期流出が最小限に抑えられる。したがって、上記固体支持体は、酵素活性を喪失することなく、または変換もしくは反応収率を低下させることなく、複数回の実行またはサイクルで再使用することができる(
図15を参照)。このように、本発明者らは、酵素が共有結合で固定化された固体支持体を複数回のサイクルで再使用した場合でも、D-ガラクトースおよびUMPのUDP-ガラクトースへの完全な変換を達成することができることを示した。
【0139】
好ましくは、酵素のセットは、再使用可能で機械的に安定な固体支持体に共固定化され、それによりロバストな固体酵素調製物が形成されている。
【0140】
本発明の状況では、再使用可能で機械的に安定な固体支持体は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための本発明の方法ならびに本明細書に記載の他の発明方法内で、固体支持体に共固定化されたすべての酵素が、活性、基質特異性、立体選択性、および/または他の特性の大部分を保持するかまたはそれらを増加させ、酵素が固体支持体から洗い流されず、機械的応力により固体支持体を著しく分解または摩耗させずに、支持体の複数回使用を可能にする支持体である。さらに、酵素は、粗細胞ライレートまたは粗細胞ホモジネートから直接的に、再使用可能で機械的に安定な固体支持体に共固定化することができ、固体支持体は、多数回のサイクル(例えば、20バッチサイクルおよびそれよりも多く)で使用することができるか、または本明細書に記載の本発明の方法が連続的に実行される場合は、再使用可能で機械的に安定な固体支持体を長期間にわたって使用することができる。「ロバストな固体支持体」という用語は、本明細書では、i)粗細胞ライセートまたは粗細胞ホモジネートからの酵素のセットの共固定化を可能にし、ii)共固定化されたすべての酵素の活性の大部分が保持されるかまたは増加し、iii)多数回のサイクル(例えば、20バッチサイクルまたはそれよりも多く)で標的産物の合成を可能にするか、または本明細書に記載の本発明の方法を連続的に実行する場合は、固体支持体を長期間にわたって使用することができる、再使用可能で機械的に安定な固体支持体と同義的に使用される。
【0141】
好ましくは、再使用可能で機械的に安定な固体支持体は、本明細書に記載の本発明の方法の少なくとも3サイクル、より好ましくは少なくとも4サイクル、より好ましくは少なくとも5サイクル、より好ましくは少なくとも6サイクル、より好ましくは少なくとも7サイクル、より好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも9サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、より好ましくは少なくとも12サイクル、より好ましくは少なくとも14サイクル、より好ましくは少なくとも16サイクル、より好ましくは少なくとも18サイクル、より好ましくは少なくとも20サイクル、より好ましくは少なくとも25サイクル、より好ましくは少なくとも25サイクル、より好ましくは少なくとも30サイクル、最も好ましくは少なくとも50サイクルで使用することができる。
【0142】
したがって、本発明のさらなる態様は、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットであって、エポキシ基で官能化された機械的強度が高い骨格を有するポリマー性固体支持体に共固定化されている酵素のセットを対象とする。好ましくは、酵素のセットは、エポキシ基で官能化されたメタクリレートポリマーに共固定化されている。
【0143】
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼも含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。
【0144】
好ましくは、機械的強度が高い骨格を有する固体支持体は、ビーズの形態を有する。好ましくは、ビーズは、150μm~300μmの範囲の粒子サイズを有する。好ましくは、固体支持体は、多孔性であり、孔径は600Å~1200Åである。一実施形態では、固体支持体は、300Å~600Åの孔径を有する低多孔度のものである。一実施形態では、固体支持体は、450Å~650Åの孔径を有する低多孔度のものである。一実施形態では、固体支持体は、1200Å~1800Åの孔径を有する高多孔度のものである。一実施形態では、固体支持体は、ブチル基でさらに官能化されている。
【0145】
好ましくは、固体支持体は、600Å~1200Åの孔径を有する多孔性メタクリレートポリマーである。一実施形態では、固体支持体は、300Å~600Åの孔径を有する低多孔度のメタクリレートポリマーである。一実施形態では、固体支持体は、450Å~650Åの孔径を有する低多孔度のメタクリレートポリマーである。一実施形態では、固体支持体は、1200Å~1800Åの孔径を有する高多孔度のメタクリレートポリマーである。一実施形態では、メタクリレートポリマーは、ブチル基でさらに官能化されている。
【0146】
好ましくは、エポキシ基で官能化されているメタクリレートポリマーは、SEPABEADS EC-EP、RELIZYME EP403/M、SEPABEADS EC-HFA/M、RELIZYME HFA403/M、RELIZYME HFA403/S、SEPABEADS EC-HFA/S、RELIZYME EP403/S、RELISORB EP400/SS、Eupergit(登録商標)CM、Lifetech(商標)ECR8215F、Lifetech(商標)ECR8204F、Lifetech(商標)ECR8209F、Lifetech(商標)ECR8285、Imm150P、IB-COV1、IB-COV2、およびIB-COV3からなる群から選択される。
【0147】
したがって、また、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、エポキシ基で官能化されている固体支持体に共有結合で固定化されている、方法も対象とする。好ましくは、固体支持体は、エポキシ基で官能化されているメタクリレートポリマーである。
【0148】
また、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、およびピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、エポキシ基で官能化されている固体支持体に共有結合で固定化されている、方法も対象とする。好ましくは、固体支持体は、エポキシ基で官能化されているメタクリレートポリマーである。
【0149】
また、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
酵素のセットは、エポキシ基で官能化されている固体支持体に共有結合で固定化されている、方法も対象とする。好ましくは、固体支持体は、エポキシ基で官能化されているメタクリレートポリマーである。
【0150】
好ましくは、固体支持体はビーズの形態を有する。好ましくは、ビーズは、150μm~300μmの範囲の粒子サイズを有する。好ましくは、固体支持体は、多孔性であり、孔径は600Å~1200Åである。一実施形態では、固体支持体は、300Å~600Åの孔径を有する低多孔度のものである。一実施形態では、固体支持体は、450Å~650Åの孔径を有する低多孔度のものである。一実施形態では、固体支持体は、1200Å~1800Åの孔径を有する高多孔度のものである。一実施形態では、固体支持体は、ブチル基でさらに官能化されている。
【0151】
好ましくは、固体支持体は、ビーズの形態のメタクリレートポリマーである。好ましくは、ビーズは、150μm~300μmの範囲の粒子サイズを有する。好ましくは、メタクリレートポリマーは、多孔性であり、孔径は600Å~1200Åである。一実施形態では、メタクリレートポリマーは、300Å~600Åの孔径を有する低多孔度のものである。一実施形態では、メタクリレートポリマーは、450Å~650Åの孔径を有する低多孔度のものである。一実施形態では、メタクリレートポリマーは、1200Å~1800Åの孔径を有する高多孔度のものである。一実施形態では、メタクリレートポリマーは、ブチル基でさらに官能化されている。
【0152】
本発明のさらなる実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、追加のステップC):
C)ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを単離するステップ
を含む。
【0153】
本発明のさらなる実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、追加のステップC):
C)ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースをイオン交換クロマトグラフィーにより単離するステップ
を含む。
【0154】
したがって、本発明は、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法であって、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
C)ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを単離するステップ
を含む方法をさらに対象とする。
【0155】
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。
【0156】
したがって、一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
C)ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを単離するステップ;
を含み、
酵素のセットは固体支持体に固定化または共固定化されている。
【0157】
一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
C)ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを単離するステップ;
を含み、
酵素のセットは、細胞ライセートから固体支持体に共固定化されている。
【0158】
好ましくは、ポリリン酸塩は、少なくとも25個のリン酸残基を有する長鎖ポリリン酸塩である。
【0159】
好ましくは、ステップA)で準備される溶液中のUMPおよびD-ガラクトースの濃度は、0.2mM~15,000mMの範囲である。
【0160】
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。
【0161】
本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースは、ウリジンおよびD-ガラクトースから生産される。したがって、本発明の方法のステップA)におけるウリジン一リン酸は、ウリジン、アデノシンリン酸、およびウリジンキナーゼ酵素から得られる。したがって、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i’)ウリジンおよびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
ウリジンキナーゼ、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジンおよびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0162】
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、固体支持体に固定化または共固定化されている。好ましくは、酵素のセットは、発酵ブロス、粗細胞ライセート、精製細胞ライセート、または細胞ホモジネートから直接的に固体支持体に共固定化されている。
【0163】
好ましくは、ステップA)で準備される溶液中のウリジンおよびD-ガラクトースの濃度は、0.2mM~15,000mMの範囲である。
【0164】
本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースは、ウラシル、5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸(PRPP)、およびD-ガラクトースから生産される。したがって、本発明の方法のステップA)におけるウリジン一リン酸は、ウラシル、5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸、およびウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素から得られる。したがって、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i’)ウラシル、ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸、およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0165】
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、固体支持体に固定化または共固定化されている。
【0166】
本発明の一実施形態では、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースは、オロチン酸、5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸(PRPP)、およびD-ガラクトースから生産される。オロチン酸は、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの存在下でリン酸化され、形成されたオリチジン5’-リン酸(OMP)は、UMPシンターゼによりウリジン一リン酸へと脱炭酸化される。したがって、本発明の方法のステップA)におけるウリジン一リン酸は、オロチン酸、5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、およびUMPシンターゼ酵素から得られる。したがって、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i’)オロチン酸、ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸、およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、UMPシンターゼ、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含む。
【0167】
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットは、固体支持体に固定化または共固定化されている。
【0168】
言い換えると、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i’)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ
を含み、
ステップA)におけるウリジン一リン酸は、ウリジン、アデノシン三リン酸、およびウリジンキナーゼから、またはウラシル、5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸、およびウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼから得られる。
【0169】
ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子
本発明のさらなる態様では、本明細書に記載の本発明の方法は、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、またはガラクトシル化小分子の生産に有用である。
【0170】
したがって、本発明の一実施形態では、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ
を含む。
【0171】
したがって、本発明の一実施形態では、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ
を含む。
【0172】
したがって、本発明の一実施形態では、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジンおよびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
ウリジンキナーゼ、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジンおよびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ
を含む。
【0173】
本発明の一実施形態では、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ピロホスファターゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ
を含み、
ステップA)では、アデノシン三リン酸は、D-ガラクトース1モル当たり0.001モル~0.9モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.002モル~0.8モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.7モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.5モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.2モルの量で、より好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.003モル~0.1モルの量で、最も好ましくはD-ガラクトース1モル当たり0.005モル~0.05モルの量で添加される。
【0174】
したがって、本発明の一実施形態では、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ
を含む。
【0175】
ガラクトシルトランスフェラーゼは、UDP-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との反応を触媒し、それによりガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子、および副産物としてウリジン二リン酸(UDP)を形成する。ステップB)、特にステップ(b1)で形成される中間産物であるUDPは、その後、再使用または再利用することができる。
【0176】
したがって、本発明の一実施形態では、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)(a)ガラクトキナーゼによる触媒作用で、D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、
(b1)ウリジン一リン酸キナーゼによる触媒作用で、ウリジン一リン酸およびアデノシン三リン酸からウリジン二リン酸(UDP)を形成すること、
(b2)ポリリン酸キナーゼによる触媒作用で、ウリジン二リン酸およびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、ならびに
(c)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ること
により、酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ;ならびに
E)in-situで形成されたウリジン二リン酸を再利用して、ウリジン三リン酸を形成するステップ
を含む。
【0177】
したがって、本発明の一実施形態では、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)(a)ガラクトキナーゼによる触媒作用で、D-ガラクトースおよびアデノシン三リン酸からガラクトース1-リン酸(Gal-1-P)を形成すること、
(b1)ウリジン一リン酸キナーゼによる触媒作用で、ウリジン一リン酸およびアデノシン三リン酸からウリジン二リン酸(UDP)を形成すること、
(b2)ポリリン酸キナーゼによる触媒作用で、ウリジン二リン酸およびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、ならびに
(c’)グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの存在下で、ガラクトース1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースを得ること、ならびに
(c’’)ピロホスファターゼの存在下で、ピロリン酸をリン酸へと変換すること
により、酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ;ならびに
E)in-situで形成されたウリジン二リン酸を再利用してウリジン三リン酸を形成するステップ
を含む。
【0178】
本明細書に記載の本発明のガラクトシル化法では副産物ウリジン二リン酸が再利用されるため、ステップA)で準備される溶液中にはより少ない量のUMPが必要とされる。したがって、一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は、0.0001~0.999、より好ましくは0.0005~0.995、より好ましくは0.001~0.995、より好ましくは0.002~0.99、最も好ましくは0.005~0.98である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.05である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.1である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.2である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.5である。
【0179】
別の実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は、1~10、より好ましくは1.2~8、より好ましくは1.5~7、より好ましくは1.6~6、最も好ましくは2~5である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は1.5である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は2である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は5である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は10である。
【0180】
好ましくは、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ;
F)ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を単離するステップ
を含む。
【0181】
好ましくは、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ;
F)ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を単離するステップ
を含む。
【0182】
好ましくは、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ウリジン一リン酸キナーゼ、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼ、ならびに任意選択でピロホスファターゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;
C)ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを単離するステップ;ならびに
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ;
F)ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を単離するステップ
を含む。
【0183】
好ましくは、ポリリン酸塩は、少なくとも25個のリン酸残基を有する長鎖ポリリン酸塩である。
【0184】
好ましくは、ステップA)で準備される溶液中のUMPおよびD-ガラクトースの濃度は、0.02mM~50,000mMの範囲である。より好ましくは、UMPおよびD-ガラクトースの濃度は、0.2mM~15,000mMの範囲である。
【0185】
好ましくは、酵素のセットの酵素の濃度は、ステップA)で準備される溶液の総容積に対して、0.0001mg/mL~100mg/mLである。
【0186】
好ましくは、ATPは、ステップA)で準備される溶液中に、0.05mM~100mM、より好ましくは0.1mM~90mM、より好ましくは0.1mM~50mM、より好ましくは0.2mM~20mM、より好ましくは0.2mM~10mM、より好ましくは0.2mM~5mM、最も好ましくは0.5mM~3mMの濃度で存在する。
【0187】
好ましくは、ステップA)で得られる溶液は、5.0~10.0、好ましくは5.5~9.5、より好ましくは6.0~9.0、さらにより好ましくは6.5~9.0、さらにより好ましくは7.0~9.0の範囲のpH値を有し、最も好ましくは7.5~8.5の範囲のpH値を有する。
【0188】
好ましくは、Mg2+イオンは、ステップA)で準備される溶液中に、1mM~100mM、より好ましくは1mM~90mM、より好ましくは2mM~90mM、より好ましくは5mM~90mM、より好ましくは10mM~90mM、より好ましくは15mM~80mM、より好ましくは20mM~80mM、最も好ましくは20mM~50mMの濃度で存在する。
【0189】
好ましくは、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化バイオコンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するための方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと、サッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよびサッカライド、糖ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、ペプチド、バイオコンジュゲート、または小分子から、ガラクトシル化サッカライド、ガラクトシル化糖ペプチド、ガラクトシル化糖タンパク質、ガラクトシル化タンパク質、ガラクトシル化ペプチド、ガラクトシル化コンジュゲート、またはガラクトシル化小分子を生産するステップ;
を含み、
酵素のセットの少なくとも1つの酵素またはガラクトシルトランスフェラーゼは、固体支持体に固定化されている。
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。また、好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼを含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットの各酵素およびガラクトシルトランスフェラーゼは、固体支持体に共固定化されている。
【0190】
一実施形態では、ガラクトシル化乳サッカライドが、本明細書に記載の本発明の方法により生産される。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、以下のステップを含む:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと乳サッカライドの利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよび乳サッカライドからガラクトシル化乳サッカライドを生産するステップ
を含む。
好ましくは、ガラクトシル化乳サッカライドは、ヒト乳オリゴサッカライドである。
【0191】
好ましくは、ガラクトシル化乳サッカライドは、以下のものを含む群から選択される:ラクト-N-ビオース、ラクト-N-トリオース、3’-ガラクトシルラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-ネオヘキサオース、ラクト-N-ヘキサオース、ラクト-N-ネオオクタオース、ラクト-N-ネオオクタオース、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース、ラクト-N-ネオデカオース、2’-フコシルラクトース、2’,3-ジフコシルラクトース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコネオペンタオースIII、ラクト-N-ジフコヘキサオースI、F-p-ラクト-N-ネオヘキサオース、F-ラクト-N-ネオヘキサオースI、F-ラクト-N-ネオヘキサオースII、DF-ラクト-N-ネオヘキサオース、α1,2-フコシル化ラクト-N-ネオヘキサオースI、α1,2-ジフコシル化ラクト-N-ネオヘキサオース、α1,2-1,3ジフコシル化ラクト-N-ネオヘキサオースI、α1,2-1,3ジフコシル化ラクト-N-ネオヘキサオースII、α1,2-1,3トリフコシル化ラクト-N-ネオヘキサオースI、α1,2-1,3トリフコシル化ラクト-N-ネオヘキサオースII、α1,2-1,3-テトラフコシル化ラクト-N-ネオヘキサオース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオフコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースV、ラクト-N-ネオフコペンタオースII、ラクト-N-ネオジフコヘキサオースII、ラクト-N-ジフコヘキサオースII、α1,3-フコシル化ラクト-N-トリオースII、ジフコシル化パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース、α2,3-シアリルラクトース、α2,3-シアリルラクト-N-ビオース、α2,6-シアリルラクトース、α2,6-シアリルラクト-N-テトラオース、α2,6-シアリルラクト-N-ネオテトラオース、α2,6-シアリルラクト-N-ネオヘキサオース(
図14を参照)。
【0192】
一実施形態では、ガラクトシル化炭水化物コンジュゲートワクチンが、本明細書に記載の本発明の方法により生産される。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースとコンジュゲートワクチンの炭水化物抗原の利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよび炭水化物コンジュゲートワクチンからガラクトシル化炭水化物コンジュゲートワクチンを生産するステップ
を含む。
好ましくは、炭水化物コンジュゲートワクチンは、肺炎球菌サッカライド、H.インフルエンザB型サッカライド、およびN.メニンギティディス血清型A、C、W、またはYサッカライドから選択されるCRM197コンジュゲート;肺炎球菌サッカライド、H.インフルエンザB型サッカライド、およびN.メニンギティディス血清型A、C、W、またはYサッカライドから選択されるTTコンジュゲート;肺炎球菌サッカライド、H.インフルエンザB型サッカライド、およびN.メニンギティディス血清型A、C、W、またはYサッカライド;から選択されるDTコンジュゲート;肺炎球菌サッカライドタンパク質Dコンジュゲート、またはH.インフルエンザB型サッカライドOMPCコンジュゲートであり、肺炎球菌サッカライドは、好ましくは、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される。
【0193】
一実施形態では、ガラクトシル化抗体薬物コンジュゲートが、本明細書に記載の本発明の方法により生産される。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと抗体薬物コンジュゲートの利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよび抗体薬物コンジュゲートからガラクトシル化抗体薬物コンジュゲートを生産するステップ
を含む。
好ましくは、抗体薬物コンジュゲートは、モノクローナル抗体および細胞傷害剤を含む。
【0194】
好ましい実施形態では、ガラクトシル化療法用タンパク質が、本明細書に記載の本発明の方法により生産される(
図13A+13B)。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと療法用タンパク質のサッカライドの利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよび療法用タンパク質からガラクトシル化療法用タンパク質を生産するステップ
を含む。
【0195】
好ましくは、療法用タンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質である。好ましくは、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質は、抗体である。好ましくは、抗体は、二重特異性モノクローナル抗体および抗体ベース薬物を含むモノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は完全にはガラクトシル化されていない。好ましくは、療法用タンパク質は、以下ものもからなる群から選択される:
3F8、8H9、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ(Ascrinvacumab)、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチドルトキスマブ(Atidortoxumab)、アチヌマ(Atinuma)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、アベルマブ、アジンツキシズマブベドチン(Azintuxizumab vedotin)、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、BCD-100、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベゲロマブ(Begelomab)、ベランタマブマホドチン、ベリムマブ、ベマリツズマ(Bemarituzuma)、ベンラリズマブ、ベルリマトキスマブ(Berlimatoxumab)、ベルメキマブ(Bermekimab)、ベルサンリマブ(Bersanlimab)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトキスマブ(Bezlotoxumab)、ビシロマブ(Biciromab)、ビマグルマブ、ビメキズマブ(Bimekizumab)、ビルタミマブ(Birtamimab)、ビバツズマブメルタンシン、ブレセルマブ(Bleselumab)、ブリナツモマブ、ブロンツベトマブ(Blontuvetmab)、ブロソズマブ(Blosozumab)、ボコシズマブ、ブラジクマブ(Brazikumab)、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ(Brolucizumab)、ブロンチクツズマブ、ブロスマブ、カビラリズマブ、カミダンルマブテシリン(Camidanlumab tesirine)、カムレリズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ(Carlumab)、カロツキシマブ(Carotuximab)、カツマキソマブ、cBR96-ドキソルビシンイムノコンジュゲート、セデリズマブ(Cedelizumab)、セミプリマブ、セルグツズマブアムナロイキン(Cergutuzumab amunaleukin)、セルトリズマブペゴール、セトレリマブ(Cetrelimab)、セツキシマブ、シビサタマブ(Cibisatamab)、シルムツズマブ(Cirmtuzumab)、シタツズマブボガトックス(Citatuzumab bogatox)、シズツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン(Clivatuzumab tetraxetan)、コドリツズマブ(Codrituzumab)、コフェツズマブペリドチン(Cofetuzumab pelidotin)、コルツキシマブラブタンシン(Coltuximab ravtansine)、コナツムマブ(Conatumumab)、コンシズマブ(Concizumab)、コスフロビキシマブ(Cosfroviximab)、CR6261、クレネズマブ、クリザンリズマブ(Crizanlizumab)、クロテズマブ(Crotedumab)、クサツズマブ(Cusatuzumab)、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、ダピロリズマブペゴール(Dapirolizumab pegol)、ダラツムマブ、デクトレクマブ(Dectrekumab)、デムシズマブ(Demcizumab)、デニンツズマブマホドチン(Denintuzumab mafodotin)、デノスマブ、デパツキシズマブマホドチン(Depatuxizumab mafodotin)、デルロツキシマブビオチン(Derlotuximab biotin)、デツモマブ(Detumomab)、デザミズマブ(Dezamizumab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ジリダブマブ(Diridavumab)、ドマグロズマブ(Domagrozumab)、ドルリモマブアリトックス(Dorlimomab aritox)、ドスタルリマ(Dostarlima)、ドロジツマブ(Drozitumab)、DS-8201、ズリゴツズマブ(Duligotuzumab)、デュピルマブ、デュルバルマブ、ズシギツマブ(Dusigitumab)、ズボルツキシズマブ(Duvortuxizumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドバコマブ(Edobacomab)、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ(Efungumab)、エルデルマブ(Eldelumab)、エレザヌマブ(Elezanumab)、エルゲムツマブ(Elgemtumab)、エロツズマブ、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エマクツズマブ(Emactuzumab)、エマパルマブ、エミベツズマブ(Emibetuzumab)、エミシズマブ、エナポタマブベドチン(Enapotamab vedotin)、エナバツズマブ(Enavatuzumab)、エンホルツマブベドチン(Enfortumab vedotin)、エンリモマブペゴール(Enlimomab pegol)、エノブリツズマブ(Enoblituzumab)、エノキズマブ(Enokizumab)、エノチクマブ(Enoticumab)、エンシツキシマブ(Ensituximab)、エピツモマブシツキセタン(Epitumomab cituxetan)、エピラツズマブ、エプチネズマブ(Eptinezumab)、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ、エチギリマブ(Etigilimab)、エトロリズマブ(Etrolizumab)、エビナクマブ(Evinacumab)、エボロクマブ、エキスビビルマブ(Exbivirumab)、ファノレソマブ(Fanolesomab)、ファラリモマブ(Faralimomab)、ファリシマブ(Faricimab)、ファーレツズマブ、ファシヌマブ(Fasinumab)、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ(Fezakinumab)、フィバツズマブ(Fibatuzumab)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、フィギツムマブ、フィリブマブ(Firivumab)、フランボツマブ(Flanvotumab)、フレチクマブ(Fletikumab)、フロテツズマブ(Flotetuzumab)、フォントリズマブ、ホラルマブ(Foralumab)、ホラビルマブ(Foravirumab)、フレマネズマブ、フレソリムマブ、フロボシマブ(Frovocimab)、フルネベトマブ(Frunevetmab)、フルラヌマブ(Fulranumab)、フツキシマブ(Futuximab)、ガルカネズマブ、ガリキシマブ、ガンコタマ(Gancotama)、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガチポツズマブ(Gatipotuzumab)、ガビリモマブ(Gavilimomab)、ゲジブマブ(Gedivumab)、ゲムツズマブオゾガミシン、ゲボキズマブ、ギルベトマブ(Gilvetmab)、ギムシルマブ(Gimsilumab)、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレンバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、ゴスラネマブ(Gosuranemab)、グセルクマブ、イアナルマブ(Ianalumab)、イバリズマブ(Ibalizumab)、IBI308、イブリツモマブチウクセタン、イクルクマブ(Icrucumab)、イダルシズマブ、イファボツズマブ(Ifabotuzumab)、イゴボマブ(Igovomab)、イラダツズマブベドチン(Iladatuzumab vedotin)、IMAB362、イマルマブ(Imalumab)、イマプレリマブ(Imaprelimab)、イムシロマブ(Imciromab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、インクラクマブ(Inclacumab)、インダツキシマブラブタンシン(Indatuximab ravtansine)、インズサツマブベドチン(Indusatumab vedotin)、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、
インテツムマブ、Iomab-B、イピリムマブ、イラツムマブ(Iratumumab)、イサツキシマブ、イスカリマブ(Iscalimab)、イスチラツマブ(Istiratumab)、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラクノツズマブ(Lacnotuzumab)、ラジラツズマブベドチン(Ladiratuzumab vedotin)、ランパリズマブ(Lampalizumab)、ラナデルマブ(Lanadelumab)、ランドグロズマブ(Landogrozumab)、ラプリツキシマブエムタンシン(Laprituximab emtansine)、ラルカビキシマブ(Larcaviximab)、レブリキズマブ、レマレソマブ(Lemalesomab)、レンダリズマブ(Lendalizumab)、レンベルビマブ(Lenvervimab)、レンジルマブ(Lenzilumab)、レルデリムマブ(Lerdelimumab)、レロンリマブ(Leronlimab)、レソファブマブ(Lesofavumab)、レトリズマブ(Letolizumab)、レクサツムマブ、リビビルマブ(Libivirumab)、リファスツズマブベドチン(Lifastuzumab vedotin)、リゲリズマブ(Ligelizumab)、リロトマブサテトラキセタン(Lilotomab satetraxetan)、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ(Lodelcizumab)、ロキベトマブ、ロンカスツキシマブテシリン(Loncastuximab tesirine)、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ロサツキシズマブベドチン(Losatuxizumab vedotin)、ルカツムマブ、ルリズマブペゴール(Lulizumab pegol)、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ(Lumretuzumab)、ルパルツマブアマドチン(Lupartumab amadotin)、ルチキズマブ(Lutikizumab)、マパツズマブ(Mapatumumab)、マルゲツキシマブ(Margetuximab)、マルスタシマ(Marstacima)、マスリモマブ(Maslimomab)、マツズマブ、マブリリムマブ(Mavrilimumab)、メポリズマブ、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ、ミンレツモマブ(Minretumomab)、ミリキズマブ(Mirikizumab)、ミルベツキシマブソラブタンシン(Mirvetuximab soravtansine)、ミツモマブ(Mitumomab)、モドツキシマブ(Modotuximab)、モガムリズマブ、モナリズマブ(Monalizumab)、モロリムマブ(Morolimumab)、モスネツズマブ(Mosunetuzumab)、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトックス(Moxetumomab pasudotox)、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトックス(Nacolomab tafenatox)、ナミルマブ(Namilumab)、ナプツモマブエスタフェナトックス(Naptumomab estafenatox)、ナラツキシマブエムタンシン(Naratuximab emtansine)、ナルナツマブ(Narnatumab)、ナタリズマブ、ナビシキシズマブ(Navicixizumab)、ナビブマブ(Navivumab)、ナキシタマブ(Naxitamab)、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、NEOD001、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ネスバクマブ(Nesvacumab)、ネタキマブ(Netakimab)、ニモツズマブ、ニルセビマブ(Nirsevimab)、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オビルトキサキシマブ(Obiltoxaximab)、オビヌツズマブ、オカラツズマブ(Ocaratuzumab)、オクレリズマブ、オズリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ、オララツマブ、オレクルマブ(Oleclumab)、オレンダリズマブ(Olendalizumab)、オロキズマブ(Olokizumab)、オマリズマブ、オンブルタマブ(Omburtamab)、OMS721、オナルツズマブ、オンツキシズマブ(Ontuxizumab)、オンバチリマブ(Onvatilimab)、オピシヌマブ(Opicinumab)、オポルツズマブモナトックス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、オルチクマブ(Orticumab)、オテリキシズマブ、オチリマブ(Otilimab)、オトレルツズマブ(Otlertuzumab)、オキセルマブ(Oxelumab)、オザネズマブ(Ozanezumab)、オゾラリズマブ(Ozoralizumab)、パギバキシマブ、パリビズマブ、パムレブルマブ(Pamrevlumab)、パニツムマブ、パンコマブ(Pankomab)、パノバクマブ(Panobacumab)、パルサツズマブ(Parsatuzumab)、パスコリズマブ、パソツキシズマブ(Pasotuxizumab)、パテクリズマブ(Pateclizumab)、パトリツマブ(Patritumab)、PDR001、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペラキズマブ(Perakizumab)、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブベドチン(Pinatuzumab vedotin)、ピンツモマブ(Pintumomab)、プラクルマブ(Placulumab)、プロザリズマブ(Plozalizumab)、ポガリズマブ(Pogalizumab)、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、ポルガビキシマブ(Porgaviximab)、プラシネズマブ(Prasinezumab)、プレザリズマブ(Prezalizumab)、プリリキシマブ(Priliximab)、プリトキサキシマブ(Pritoxaximab)、プリツムマブ(Pritumumab)、PRO 140、キリズマブ(Quilizumab)、ラコツモマブ(Racotumomab)、ラドレツマブ(Radretumab)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラルパンシズマブ(Ralpancizumab)、ラムシルマブ、ラネベトマブ(Ranevetmab)、ラニビズマブ、ラバガリマブ(Ravagalimab)、ラブリズマブ、ラキシバクマブ、レファネズマブ(Refanezumab)、レガビルマブ、レラトリマブ(Relatlimab)、レムトルマブ(Remtolumab)、レスリズマブ、リロツムマブ、リヌクマブ(Rinucumab)、リサンキズマブ、リツキシマブ、リババズマブペゴール(Rivabazumab pegol)、Rmab、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロレズマブ(Roledumab)、ロミルキマブ(Romilkimab)、ロモソズマブ、ロンタリズマブ(Rontalizumab)、ロスマンツズマブ(Rosmantuzumab)、ロバルピツズマブテシリン(Rovalpituzumab tesirine)、ロベリズマブ(Rovelizumab)、ロザノリキシズマブ(Rozanolixizumab)、ルプリズマブ(Ruplizumab)、SA237、サシツズマブゴビテカン(Sacituzumab govitecan)、サマリズマブ(Samalizumab)、サムロタマブベドチン(Samrotamab vedotin)、サリルマブ、サトラリズマブ、サツモマブペンデチド(Satumomab pendetide)、セクキヌマブ、セリクレルマブ(Selicrelumab)、セリバンツマブ(Seribantumab)、セトキサキシマブ(Setoxaximab)、セトルスマブ(Setrusumab)、セビルマブ(Sevirumab)、SGN-CD19A、SHP647、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ(Sifalimumab)、シルツキシマブ、シムツズマブ(Simtuzumab)、シプリズマブ、シルトラツマブベドチン(Sirtratumab vedotin)、シルクマブ、ソフィツズマブベドチン(Sofituzumab vedotin)、ソラネズマブ、ソリトマブ(Solitomab)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スパルタリズマブ、スタムルマブ(Stamulumab)、スレソマブ(Sulesomab)、スプタブマブ(Suptavumab)、スチムリマブ(Sutimlimab)、スビズマブ(Suvizumab)、スブラトキスマブ(Suvratoxumab)、タバルマブ(Tabalumab)、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(Tadocizumab)、タラコツズマブ(Talacotuzumab)、タリズマブ、タムツベトマブ(Tamtuvetmab)、タネズマブ、タプリツモマブパプトックス(Taplitumomab paptox)、タレキスツマブ(Tarextumab)、タボリマブ(Tavolimab)、テフィバズマブ(Tefibazumab)、テリモマブアリトックス(Telimomab aritox)、テリソツズマブベドチン(Telisotuzumab vedotin)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ(Teneliximab)、テプリズマブ、テポジタマブ(Tepoditamab)、テプロツムマブ(Teprotumumab)、テシドルマブ(Tesidolumab)、テツロマブ(Tetulomab)、テゼペルマブ、TGN1412、チブリズマブ(Tibulizumab)、ティガツズマブ、チルドラキズマブ、チミグツズマブ(Timigutuzumab)、チモルマブ(Timolumab)、チラゴツマブ(Tiragotumab)、チスレリズマブ、チソツマブベドチン(Tisotumab vedotin)、TNX-650、トシリズマブ、トムゾツキシマブ(Tomuzotuximab)、トラリズマブ(Toralizumab)、トサトキスマブ(Tosatoxumab)、トシツモマブ、トベツマブ(Tovetumab)、トラロキヌマブ(Tralokinumab)、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、TRBS07、トレガリズマブ(Tregalizumab)、トレメリムマブ、トレボグルマブ(Trevogrumab)、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ウトミルマブ(Utomilumab)、バダスツキシマブタリリン(Vadastuximab talirine)、バナリマブ(Vanalimab)、バンドルツズマブベドチン(Vandortuzumab vedotin)、バンチクツマブ(Vantictumab)、バヌシズマブ(Vanucizumab)、バパリキシマブ(Vapaliximab)、バリサクマブ(Varisacumab)、バルリルマブ(Varlilumab)、バテリズマブ(Vatelizumab)、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ(Vepalimomab)、ベセンクマブ(Vesencumab)、ビジリズマブ、ボバリリズマブ(Vobarilizumab)、ボロシキシマブ、ボンレロリズマブ(Vonlerolizumab)、ボプラテリマブ(Vopratelimab)、ボルセツズマブマホドチン(Vorsetuzumab mafodotin)、ボツムマブ(Votumumab)、ブナキズマブ(Vunakizumab)、キセンツズマブ(Xentuzumab)、XMAB-5574、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ(Zatuximab)、ゼノクツズマブ(Zenocutuzumab)、ジラリムマブ(Z
iralimumab)、ゾルベツキシマブ(Zolbetuximab)(=IMAB36、Claudiximab)、およびゾリモマブアリトキス(Zolimomab aritox)。
【0196】
好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼをさらに含む。また、好ましくは、酵素のセットは、1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼを含む。好ましくは、酵素のセットは、ピロホスファターゼならびに1ドメインポリリン酸キナーゼおよび/または2ドメインポリリン酸キナーゼをさらに含む。好ましくは、酵素のセットの各酵素およびガラクトシルトランスフェラーゼは、固体支持体に共固定化されている。
【0197】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと抗体のサッカライドの利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよび抗体からガラクトシル化抗体を生産するステップ
を含む。
【0198】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、以下のステップ:
A)(i)ウリジン一リン酸およびD-ガラクトース、
(ii)ポリリン酸塩およびアデノシン三リン酸
を含む溶液を準備し、
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ガラクトキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、およびウリジン一リン酸キナーゼを含む酵素のセットを準備するステップ;
B)酵素のセット、ポリリン酸塩、およびアデノシン三リン酸の存在下で、ウリジン一リン酸およびD-ガラクトースからウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースを生産するステップ;ならびに
D)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの存在下で、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースと抗体のサッカライドの利用可能なヒドロキシル基との間にO-グリコシド結合を形成することにより、ウリジン5’-ジホスホ-α-D-ガラクトースおよび抗体からガラクトシル化抗体を生産するステップ;ならびに
E)in-situで形成されたウリジン二リン酸を再利用してウリジン三リン酸を形成するステップ
を含む。
【0199】
本明細書に記載の本発明のガラクトシル化法では副産物ウリジン二リン酸が再利用されるため、ステップA)で準備される溶液にはより少ない量のUMPが必要とされる。したがって、一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は、0.0001~0.999、より好ましくは0.0005~0.995、より好ましくは0.001~0.995、より好ましくは0.002~0.99、最も好ましくは0.005~0.98である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.05である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.1である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.2である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は0.5である。
【0200】
別の実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は、1~10、より好ましくは1.2~8、より好ましくは1.5~7、より好ましくは1.6~6、最も好ましくは2~5である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は1.5である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は2である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は5である。一実施形態では、UMPのD-ガラクトースに対するモル比は10である。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【
図1】低コスト基質であるガラクトース、ポリリン酸塩、およびUMPから、UDP-ガラクトースを酵素的に合成する多酵素カスケードを示す図である。反応カスケードは、(a)D-ガラクトースおよびATPからガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)を形成すること、(b)UMPおよびポリリン酸塩からウリジン三リン酸(UTP)を形成すること、および(c)ガラクトース-1-リン酸とウリジン三リン酸とを反応させてUDP-ガラクトースに至ることで構成される。任意選択で、酵素グルコース1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼを阻害するピロリン酸PP
iを加水分解するために、無機ジホスファターゼ(PmPpa)を反応カスケードに添加してもよい。このカスケードは、ADPのATPへの変換を支援する1D-PPK2を添加することにより拡張することもできる。このカスケードは、AMPのADPへのリン酸化を活性化するために、2D-PPK2を添加することにより拡張することもできる。さらに、このカスケードは、アデノシンリン酸の高頻度加水分解を阻害するために、1D-PPK2および2DPPK2を添加することにより拡張することができる。
【
図2】ウリジンまたはウラシルおよび5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸から開始してUDP-ガラクトースを生産するための本発明の方法の例示的な反応スキームを示す図である。ウリジンからのUMPの形成はウリジンキナーゼにより触媒され、ウラシルからのUMPの形成はウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼにより触媒される。
【
図3】発現モードBで得られた精製酵素ミックスのSDS-ゲルを示す図である。
【
図4A】すべての測定された化合物の反応時間経過を示す図である。
【
図4B】0分反応時間後の供給溶液のHPAEC-UVクロマトグラムを示す図である。
【
図4C】370分の反応時間後に取り出したアリコートのHPAEC-UVクロマトグラムを示す図である。
【
図5A】すべての測定された化合物の反応時間経過を示す図である。
【
図5B】0分反応時間後の供給溶液のHPAEC-UVクロマトグラムを示す図である。
【
図5C】540分の反応時間後に取り出したアリコートのHPAEC-UVクロマトグラムを示す図である。
【
図6】HPAEC-UV/PADにより測定した、14時間の反応時間後の基質、代謝物、および産物の濃度を示す図である。
【
図7】過剰発現させた酵素を含むバイオマスを混合することから開始して、固体支持体でのUDP-ガラクトースの合成反応を実施するまでの、完全なUDP-ガラクトースカスケードのワークフロースキームを示す図である。このワークフローは、酵素固定化のための種々の固体支持体のスクリーニングにも好適である。
【
図8】UDP-ガラクトース合成の固体支持体スクリーニングの結果を示す図である。濃度はHPAEC-UVにより測定した。
【
図9】リツキシマブまたはハーセプチンなどの市販の抗体を糖鎖工学するための、GalTにカップリングされたUDP-ガラクトースカスケードの反応スキームを示す図である。
【
図10】本発明の方法により調製されたリツキシマブ(A)およびガラクトシル化リツキシマブ(B)のエレクトロフェログラム(CGE-LIF分析)を示す図である。
【
図11】本発明の方法の1段階プロセスでガラクトシル化されたリツキシマブのエレクトロフェログラム(CGE-LIF分析)を示す図である。
【
図12】本発明の方法の2段階プロセスでガラクトシル化されたリツキシマブのエレクトロフェログラム(CGE-LIF分析)を示す図である。
【
図13A】2つの反応器セットアップでの、糖タンパク質または抗体などの分子の本発明のガラクトシル化のプロセススキームを示す図である。
【
図13B】1段階1反応器セットアップでの、糖タンパク質または抗体などの分子の本発明のガラクトシル化のプロセススキームを示す図である。D-ガラクトース、ポリリン酸塩、および触媒量のUMPを、ガラクトシル化しようとする基質、本発明のUDP-Galカスケードの酵素が負荷されたビーズ、およびガラクトシルトランスフェラーゼを含む反応器に添加する。また、ガラクトシルトランスフェラーゼが溶液中に存在していてもよく、ビーズに固定化されていなくともよい。ガラクトシル化反応で消費されたUDP-Galは、本発明のUDP-Galカスケードの酵素が負荷されたビーズ、ガラクトース、およびポリリン酸塩の存在下で継続的に再生されるため、触媒量のUMPしか必要とされない。
【
図14A】例示的なガラクトシル化ヒト乳サッカライドを示す図である。
【
図14B】例示的なガラクトシル化ヒト乳サッカライドを示す図である。
【
図15】エポキシ基で官能化されたメタクリレートビーズに共固定化されたUDP-Gal酵素カスケードの再使用性を例示的に示す図である。
【
図16A】実験HのUDP-Galカスケードで形成された中間体および産物を示す図である。(A)UDP-Galおよびウリジン。実験は三重重複で実施した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図16B】実験HのUDP-Galカスケードで形成された中間体および産物を示す図である。(B)UMP、UDP、およびUTP。実験は三重重複で実施した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図16C】実験HのUDP-Galカスケードで形成された中間体および産物を示す図である。(C)ADP、AMP、およびATP。実験は三重重複で実施した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図17-I】実施例IのUDP-Gal大規模化実験で形成された抽出物、中間体、および産物が、小規模実行との直接比較で示されている図である。(A)ウリジン;(B)UDP-Gal;(C)UMP;(D)UDP。
【
図17-II】実施例IのUDP-Gal大規模化実験で形成された抽出物、中間体、および産物が、小規模実行との直接比較で示されている図である。(E)UTP;(F)ADP;(G)ATP;および(H)AMP。
【
図18】(A)LNnTを含む反応産物のクロマトグラムおよび(B)反応産物のMS/MSスペクトルを示す図である。
【
図19】パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(パラ-LNnH)形成(実験K)の反応産物のMS/MSスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0202】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。当業者であれば、実施例に開示されている技法は、本発明の実施において良好に機能することが発明者により発見された技法を表し、したがって、その実施のための好ましい形態を構成するとみなすことができることを理解するはずである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態において多くの変更をなすことができ、依然として同様のまたは類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0203】
本発明の種々の態様のさらなる改変および代替的実施形態は、当業者にとって本明細書を考慮すれば明らかであろう。したがって、本明細書は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実施する基本的様式を当業者に教示するためのものである。本明細書に示され記載されている本発明の形態は、実施形態の例であるとみなされることになることが理解されるべきである。本明細書に図示および記載されているものの代わりに要素および物質を使用することができ、部分およびプロセスを逆にすることができ、本発明のある特定の特徴を独立して使用することができ、それらは全て、本発明の本明細書の利益を享受した後の当業者にとっては明らかなことであろう。以下の特許請求の範囲に記載の通りの本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の要素に変更をなすことができる。
【実施例】
【0204】
略語および頭字語
ADP アデノシン5’-二リン酸
AMP アデノシン5’-一リン酸
ATP アデノシン5’-三リン酸
dH2O 脱イオン水
IPTG イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド
LGTB ラクト-N-ネオテトラオース生合成グリコシルトランスフェラーゼ
UDP ウリジン5’-二リン酸
UMP ウリジン5’-一リン酸
UTP ウリジン5’-三リン酸
GTP グアノシン5’-三リン酸
PolyP ポリリン酸塩
PPi ピロリン酸
Pi リン酸
PPK2 ポリリン酸キナーゼ2
PPK3 ポリリン酸キナーゼ3
1D-PPK2 1ドメインポリリン酸キナーゼ2
2D-PPK2 2ドメインポリリン酸キナーゼ2
GalU グルコース1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ
GalT UDP-ガラクトシルトランスフェラーゼ
BiGalK ガラクトキナーゼ
GalK ガラクトキナーゼ
URA6 ウリジン一リン酸キナーゼ
UPP ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ
PmPpA パスツレラ・マルトシダ無機ピロホスファターゼ
【0205】
化学薬品&試薬
別様に記載されていない限り、化学薬品および試薬はすべて、Sigma-Aldrichから入手し、入手可能な最の高い純度のものだった。固体支持体は、Resindion、ChiralVision、Rohm GmbH&Co.KG、およびmicromod GmbHから入手した。
【0206】
[実施例1]
酵素の調製
酵素BiGalK、URA6、PPK3、GalU、1D-PPK2、2D-PPK2、およびPmPpAをコードする遺伝子を、表1に列挙されている通り、標準的発現ベクターにクローニングした。
【0207】
【0208】
形質転換、培養、発現
遺伝子発現にはすべて、別様に記載されていない限り、大腸菌BL21 Gold(DE3)を宿主生物として使用した。
【0209】
遺伝子発現:1酵素、1培養(発現モードA)。
プラスミドおよびストック培養
GalU、PPK3、URA6、PmPpa、1D-PPK2の遺伝子配列を有するプラスミド(カナマイシン耐性を有するpET28a)を保持する大腸菌培養物のストック溶液は、以前の研究から入手可能だった([1、2]を参照)。ストック溶液は、50%グリセロールを含み、-20℃で維持されていた。
BiGalKの遺伝子配列の遺伝子合成およびアンピシリンに対する抗生物質耐性を有する発現ベクターpET100/D-TOPOへのクローニングは、商業的供給業者が以前に発表された文献[3]に従って実施した。
1μlのプラスミドストック溶液を培養大腸菌BL21 Gold(DE3)に移すことにより、購入したプラスミドを大腸菌に移した。次いで、溶液を氷上で1時間維持し、続いて42℃で1分間、細胞に熱ショックを与えた。その後、500μLのLB培地を添加し、混合物を37℃で20分間インキュベートし、続いて溶液を6000gおよび4℃で10分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを100μlの脱イオンH2O(dH2O.)に溶解し、アンピシリンを含むLB寒天プレートに撒いた。寒天プレートを37℃でインキュベートした。プラスミドを含む大腸菌細胞のストック溶液を、2mL傾斜培地で生成した。
【0210】
酵素発現
異種性遺伝子発現のために、ストック溶液からアリコートを取り出し、対応する抗生物質を含むLB寒天プレートに撒いた。プレートを37℃で一晩培養した。単一の培養物を使用して、バッフル付き振盪フラスコの前培養物(それぞれ50μg/mLカナマイシンおよび100μg/mLアンピシリンを含む)を接種した。培養物を、典型的には約4.2のOD600まで増殖させた。それぞれ50μg/mLカナマイシンおよび100μg/mLアンピシリンを含む主発現培養物を、典型的には1%前培養物で接種し、約0.6~0.8のOD600まで37℃にて培養した。次いで温度を16~20℃に変更し、典型的には0.4mM IPTGで発現を誘導した。典型的には20時間後、培養物を、典型的には4℃で30分間6000×gで回収した。使用した培地は、自動誘導(AI)培地、LB培地、およびTB培地だった。実験で使用した培地のさらなる詳細は、以下の表2に記載されている。
【0211】
【0212】
酵素精製
プラスミドpET28aおよびpET100/D-TOPOは、N末端His6タグを有しており、したがって酵素は、GE HealthcareのAKTA(商標)start装置およびHisTrap High-PerformanceまたはFast-Flowカラム(1mLカラム容量)を使用したイオン金属アフィニティクロマトグラフィーで精製される。酵素を精製するために、溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.5)、10mM Mg2+、300mM NaCl、10mMイミダゾール、および5%グリセロール)中での超音波処理により細胞を溶解した。
【0213】
イミダゾール(500mM)を、定組成溶離の溶離液(50mM HEPES(pH7.5)、10mM Mg2+、300mM NaCl、500mMイミダゾール、5%グリセロール)として使用した。製造業者が推奨する標準的条件を使用した。精製後、酵素濃度をBCAアッセイにより試験し、SDSゲルで評価した。
【0214】
遺伝子発現:全酵素、1培養(発現モードB)。
このセクションに記載の遺伝子発現には、Kerafast IncのLOBSTR大腸菌発現株(大腸菌BL21 Gold(DE3)に基づく)を使用した。2つの遺伝子配列を、各々1つの特定の発現ベクターにクローニングした。3つすべての発現プラスミドを保有する大腸菌株を作出した。
【0215】
クローニング
使用した発現ベクターの耐性マーカーおよび制限部位は表3に詳述されている。
URA6およびPPK3の遺伝子配列を有するpACZDuetベクターを、商業的供給業者から購入した。GalUおよびPmPpAの遺伝子配列を、単離したpET28aベクターから酵素消化により切断し、pCDFDuet発現ベクターにクローニングした。クローニングには、酵素消化、PCR、およびライゲーションの標準的プロトコールを使用した。pET100-D/TOPOに由来するGalKおよびpET28aに由来するNahKを、発現ベクターpRSFDuet1にクローニングした。空発現ベクターpCDFDuetおよびpRSFDuet1は、商業的供給業者から購入した。
遺伝子構築物は、商業的供給業者による遺伝子配列決定により確認した。
【0216】
【0217】
形質転換
プラスミドはすべて、熱ショックによりLOBSTR大腸菌細胞へと形質転換し(「遺伝子発現:1酵素、1培養」セクションに記載の通り)、次いですべての選択マーカー(クロラムフェニコール、スペクチノマイシン、カナマイシン)を含むLB寒天プレートに播種した。したがって、3つのベクターすべてを保持する細胞のみが寒天プレートで増殖することができた。
【0218】
酵素発現
ここで説明されている発現には、以下の濃度の抗生物質(34μg/mLクロラムフェニコール、50μg/mLスペクチノマイシン、および30μg/mLカナマイシン)を含むTB培地を使用した。15mLの細胞を30℃で一晩前培養し、200mLの主培養物に1%前培養物を接種し、OD600=0.8まで30℃にて培養した。温度を16℃に下げ、0.5mM IPTGを添加することにより発現を誘導した。20時間後、4℃にて30分間6000×gで遠心分離することにより、細胞を回収した。溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.5)、10mM Mg2+、300mM NaCl、10mMイミダゾール、および5%グリセロール)中での超音波処理により細胞を溶解した。
【0219】
精製
「遺伝子発現:1酵素、1培養」に記載の通りに、酵素濃度をBCAアッセイで試験し、SDS-gelにより精製を評価した(
図3を参照)。
【0220】
測定
UV(260nm)およびパルスアンペロメトリー検出(PAD)による高速アニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)を使用して、反応物の濃度を測定した。分析物分離および定量化のために、ステップ勾配溶出法を開発し、検証した。非多孔性ペリキュラーカラムCarboPac(商標)PA1(250×2mm)を使用して、0.5mL/分の装置流でクロマトグラフィー分離を実施した。HPAEC装置(ICS5000)ならびにすべてのカラム、部品、およびソフトウェアは、Thermo Scientific(ウォルサム、米国)から購入した。
抗体のサッカライドを、PNGaseF処理およびCGE-LIF分析により分析した。分析は、標準的プロトコールに従った。
【0221】
[実施例2]
UDP-ガラクトースの均質調製-実験A、B、およびC
こうした実験には、発現モードBの精製酵素を使用した。合成は、1D-PPK2を用いずに(実験A、経路については
図1を参照)および1D-PPK2を用いて(実験B)で実施した。HEPES(pH7.5)緩衝水溶液中の反応容量は、実験Aでは12μL、実験Bでは34μLだった。反応温度は30℃だった。使用した精製酵素の量は400μgだった。初期基質、緩衝液、補因子濃度、および使用した酵素の量は表4に示されている。
【0222】
反応時間経過測定のための反応アリコートを、以下の通りにクエンチした。実験Aでは、2μLの反応物をアリコートし、298μLの90℃ dH2Oで希釈し、実験Bでは、5μLを、315μLの90℃ dH2Oで希釈した。
【0223】
【0224】
実験Aの反応時間経過は、
図4A~Cに示されている。370分後、UMPおよびガラクトースに関して100%のUDP-ガラクトース収率が達成された。この結果は、この酵素組合せが、基質のUDP-ガラクトースへの完全変換を達成し得ることを示す。明らかな酵素阻害は存在せず、副反応は起こっていない。AMPが検出され、これは、ADPが部分的に加水分解されていることを示す。
【0225】
実験Bの反応時間経過は、
図5A~Cに示されている。540分後、UMPおよびガラクトースに関して100%のUDP-ガラクトース収率が達成された。この結果は、この酵素組合せが、基質のUDP-ガラクトースへの完全変換を達成し得ることを示す。明らかな酵素阻害は存在せず、副反応は起こっていない。しかしながら、AMPは検出されず、これは、検出可能な量のADPがAMPへと加水分解される前に、ADPが1D-PPK2の存在下で十分に急速にATPへと変換され戻されたことを示す(実験Aを参照)。
【0226】
実験Cでは、種々の酵素濃度を試験し、この組合せが生産性に及ぼす効果を調査した。酵素を、「遺伝子発現:1酵素、1培養(発現モードA)」のセクションで詳述されている通りに発現させた。反応容量は100μlだった。14時間の反応時間後、20μlのアリコートを取り出し、それを480μlのdH2O(90℃)で希釈することにより反応をクエンチした。
【0227】
【0228】
実験Cの結果は
図6に示されている。すべての反応でUDP-ガラクトースの形成に成功した。
【0229】
[実施例3]
UDP-ガラクトースの不均質調製-実験D
実験Dでは、本発明のUDP-ガラクトース合成(
図1を参照)で使用される酵素の共固定化について、幅広い範囲の市販の固体支持体(表7)をスクリーニングし、UDP-ガラクトースの合成に対するそれらの効果を評価した。
図7に図示されているように、実験には以下のプロトコールを使用した。様々な培養物からのバイオマスを一緒に混合し[
図7、ステップ1を参照]、6000×gで30分間4℃にて遠心分離した[ステップ2]。使用した培養物の組成は表8に詳述されている。細胞ペレットを60mLの緩衝液Aに再懸濁した[ステップ3](表6を参照)。超音波処理により細胞を溶解した[ステップ4]。超音波処理後、スラリーを12,000×gで45分間4℃にて遠心分離して[ステップ5]、細胞残渣を除去し、続いて1.2μmおよび0.8μmフィルターで濾過した。遠心分離後、上清を取り出し、氷上で維持した。所定の質量の各固定化物(immobilizer)(表8を参照)を、2mLの低結合チューブに添加した。緩衝液Aと共に約2時間インキュベーションした後、上清を除去した。その後、0.5mLの細胞溶解物を各チューブに添加し、4℃で一晩(約12時間)インキュベートした[ステップ6]。ビーズを溶解緩衝液Bで洗浄し(3回)[ステップ7]、ブロッキング緩衝液(2Mグリシン)を添加し、続いて24時間インキュベートした[ステップ8]。その後、ブロッキング緩衝液を廃棄し、ビーズを緩衝液B(表6を参照)で3回洗浄した。
種々の酵素が負荷されたビーズでの多酵素カスケードを試験するため、基質を含む100μLの供給溶液(表9を参照)を、ビーズを含む各チューブに移した。反応は、振盪(400rpm)しながら30℃で約20時間実施した。次いで、UDP-ガラクトース濃度を、HPAEC-UV/PADで測定した。結果は
図8に示されている。幅広く様々な市販のビーズに共固定化しても、酵素は活性化であることが示されている。
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
[実施例4]
抗体のガラクトシル化-実験FおよびG
実験FおよびGでは、固体支持体ECR8285に固定化したUDP-ガラクトースカスケードを、Sigma-Aldrichから購入した可溶性UDP-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)にカップリングして、市販の抗体リツキシマブ(Evidentic GmbHから購入)をガラクトシル化した。
【0235】
予備試験
予備試験(実験E)では、リツキシマブの糖プロファイルを、PNGaseF消化およびCGE-LIFで分析した(「測定」セクションを参照)。結果が
図10Aに示されている。抗体のFc領域のグリカンの少数のみが完全にガラクトシル化されていることを理解することができる。抗体の糖プロファイルを操作するために、100μgのリツキシマブを、購入したUDP-Gal(Sigma-Aldrichから購入、注文番号U4500)、25ミリ単位のGalT(Sigma-Aldrichから、注文番号G5507)と共に50mM HEPESおよび10mM MnCl
2中で一晩30℃にてインキュベートした。結果は
図10Bに示されている。CGE-LIF分析は、反応後、すべての検出されたグリカンがガラクトシル化されたことを示した。
【0236】
カスケードとGalTとのカップリング
1段階カップリング
実験Fでは、供給溶液(250μL、表9を参照)を、固定化されたカスケードを有するECR8285ビーズ(52mgの固体支持体、酵素をビーズに固定化する前に測定した重量)(実験Dから)に添加した。その直後に、100μgのリツキシマブ、GalT(25ミリ単位)、および10mM MnCl
2を添加した。次いで、30℃にて550rpmで振盪した24時間のインキュベーション時間後、反応の上清をPNGaseF消化およびCGE-LIF分析により分析した(「測定」セクションを参照)。結果は
図11に示されている。すべてのグリカンがガラクトシル化されていたことを理解することができる。ほとんどのグリカンは完全にガラクトシル化されているが、より少数のものは、2つの分岐の1つに1つのガラクトース部分しか呈していなかった。これは、完全なガラクトシル化の達成が、それぞれインキュベーション時間および反応条件、つまり反応物濃度の最適化の問題であることを示す。
【0237】
2段階カップリング-
図13を参照
実験Gでは、100μgのリツキシマブを2段階プロセスでガラクトシル化した。第1段階では、ECR8285に固定化した酵素カスケードを使用して、UDP-ガラクトースを生産した。52mgのビーズ(酵素を固定化する前に測定した重量)を、供給溶液(100μL)と共に30℃で24時間インキュベートした。第2段階では、上清を100μgのリツキシマブ、25ミリ単位のGalT、および10mM MnCl
2を含む別の反応器に移した。次いで、反応物を30℃および550rpmで約24時間インキュベートした。反応の上清を、PNGaseF消化およびCGE-LIF分析で分析した(「測定」セクションを参照)(
図12を参照)。実験Fと一致して、すべてのグリカンがガラクトシル化され、ほとんどのグリカンは両分岐にガラクトース部分を呈していた。これは、完全なガラクトシル化の達成が、それぞれインキュベーション時間および反応条件、つまり反応物濃度の最適化の問題であることを示す。
【0238】
[実施例5]
ウリジンから開始したUDP-Galの合成-実験H、I、J、およびK
酵素の生産および精製
この研究で使用したプラスミドのリストは表10に示されている。LOBSTR大腸菌コンピテント細胞(Kerafast、米国)を発現宿主として使用した。細胞を、熱ショックプロトコールに基づいて形質転換した。1.5mM MgSO4および対応する抗生物質で補完されたTB培地で発酵を実施した。細胞をOD600が0.8~1.0になるまで37℃で培養し、その後、0.4mM IPTGで誘導を実施し、16℃で20~24時間培養した。使用した化学物質はすべてCarbosynth Ltdからのものである。
培養の終了時に、細胞を、遠心分離(7000×g、20分)で回収し、細胞ペレットを溶解緩衝液(pH7.4の50mM MOPS緩衝液、300mM NaCl、10mM MgCl2、10mMイミダゾール、および5%グリセロール)に再懸濁し、高圧ホモジナイゼーション(Maximator、ドイツ)(800~1000psiで3回通過)で破砕した。酵素を、1mLまたは5mL HisTrap HP(GE Health Care Life Sciences、スウェーデン)カラムと組み合わせた固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(AKTAstart、GE Health Care Life Sciences、ウプサラ、スウェーデン)を使用して精製した。結合緩衝液は、pH7.4の50mM MOPS緩衝液、300mM NaCl、10mM MgCl2、10mMイミダゾール、および5%グリセロールを含んでいた。また、溶離緩衝液は、pH7.4の50mM MOPS緩衝液、300mM NaCl、10mM MgCl2、250mMイミダゾール、および5%グリセロールで構成されていた。
溶離緩衝液からイミダゾールを除去し、酵素溶液を濃縮するために、Amicon(登録商標)Ultra-15遠心分離フィルターユニット-3KDa MWカットオフ(Merck、ドイツ)を用いて緩衝液交換を実施した。交換緩衝液は、pH7.4の50mM MOPS緩衝液、300mM NaCl、10mM MgCl2、5%グリセロールを含んでいた。その後、保持溶液(濃縮酵素)をグリセロールと1:1で混合し、最終酵素溶液を50%グリセロールにした。酵素を-20℃で保管した。
【0239】
【0240】
実験H:精製酵素を使用してウリジンからの開始したUDP-Galの合成
反応は、250μLの総容積に、150mM Tris-HCl(pH8.5)、75mM MgCl
2、52mMウリジン、54mM Gal、0.6mM ATP、20mM PolyP
n、0.07μg/μL UDK、0.12μg/μL URA6/PPK3、0.17μg/μL GALK、0.12μg/μL GALU、0.06μg/μL PmPpaを含んでいた。UDP-Galの成功した生産および中間体の濃度が
図16に示されている。収率は、24時間後に100%に近づいている。
【0241】
実験I:細胞ライセートを使用した、ウリジンおよびGalからのUDP-Galの大規模生産
細胞ライセートを調製するために、以下のバイオマス:UDK、3.46g;URA6/PPK3、5.20g;GALK、5.54g;GALU、5.70g;PmPpA、1.7gを、120mLの50mM HEPES緩衝液(pH8.1)、400mM NaCl、および5%グリセロール中に混合した。混合物を高圧ホモジナイザーに3回通した。無細胞抽出物を、10,000×gで45分間遠心分離した。その後、UDP-Gal合成に好適なライセート量を見出すために、小規模(200μL)の予備実験を実施した。容積/容積で10%の細胞ライセートが、合成の実施に十分であることが見出された。こうした知見を、5000×大規模化係数に相当する1リットル規模の合成に直接的に使用した。
1リットル実験を実施するために、プロペラ型インペラを備えたスピナーフラスコを選択して、撹拌槽型反応器の状態を模倣した。合成条件は以下の通りだった:150mM Tris-HCl(pH8.5)、58mMウリジン、55mM Gal、6.2mM ATP、20mM PolyP
n、および75mM MgCl
2。反応は37℃および60rpmで実施した。カスケードの性能に対する大規模化の影響を理解するために、並行200μL実験を実施した。カスケード中間体の時間経過が
図17に示されている。
【0242】
実験J:ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)のワンポット生産
こうした実験では、組換えLeloirグリコシルトランスフェラーゼおよびヌクレオチド糖モジュール(UDP-GalおよびUDP-GlcNAc)を使用して、HMOSを合成する。まずヌクレオチド糖を合成し、その後、反応混合物をグリコシルトランスフェラーゼおよび基質と組み合わせて、標的HMOを生産する。
【0243】
UDP-Galを、表11に記載の条件に基づいて生産した。すべての反応は、約24時間のインキュベーション時間、37℃での550rpm振盪で実施した。その後、産物UDP-Galを含む75μLの反応モジュールを、0.2μg/μLのLGTB(大腸菌BL21で発現させた、ナイセリア・メニンギティディス血清型B(MC58菌株)由来のラクト-N-ネオテトラオース生合成グリコシルトランスフェラーゼ)、20単位のアルカリホスファターゼ(AP)、150μLのラクト-N-トリオース(LNT II)、および156mM MES緩衝液(pH5.5)を含む新しいバイアルに移した。一晩インキュベーションした後の反応産物のクロマトグラムおよびMS/MSの結果を
図18に示す。
【0244】
【0245】
実験K:パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(パラ-LNnH)のワンポット生産
50μLのパラ-ラクト-N-ネオペンタオース含有溶液を、総容積が210μLのMES緩衝液(240mM-pH6.5)中の、UDP-Galを反応産物として含む表11に列挙されている通りの40μLのUDP-Gal反応混合物、および20単位のAP、および0.2μg/μLのLGTBと混合した。反応産物のMS/MSスペクトルを
図19に示す。
【0246】
参考文献
1. Mahour, R., et al., Establishment of a five-enzyme cell-free cascade for the synthesis of uridine diphosphate N-acetylglucosamine.Journal of Biotechnology, 2018. 283: p. 120-129.
2. Rexer, T.F.T., et al., One pot synthesis of GDP‐mannose by a multi‐enzyme cascade for enzymatic assembly of lipid‐linked oligosaccharides.Biotechnology and Bioengineering, 2018. 115(1): p. 192-205.
3. Li, L., et al., A highly efficient galactokinase from Bifidobacterium infantis with broad substrate specificity. Carbohydrate Research, 2012. 355: p. 35-39.
4. Warnock, D., et al., In vitro galactosylation of human IgG at 1 kg scale using recombinant galactosyltransferase. Biotechnology and Bioengineering, 2005. 92(7): p. 831-842.
5. Li, Z., et al., Simple defined autoinduction medium for high-level recombinant protein production using T7-based Escherichia coli expression systems. Applied Microbiology and Biotechnology, 2011. 91(4): p. 1203.
【配列表】