(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】CTGF遺伝子特異的二重鎖オリゴヌクレオチド及びこれを含む線維症関連疾患及び呼吸器関連疾患の予防及び治療用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240402BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240402BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240402BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20240402BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240402BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240402BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240402BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240402BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C12N15/113 120Z
C12N15/87 Z ZNA
A61P11/00
A61P11/06
A61P11/08
A61P1/16
A61K31/713
A61K48/00
A61K9/14
A61P43/00 101
(21)【出願番号】P 2022529798
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 KR2020014948
(87)【国際公開番号】W WO2021101113
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0151673
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514171197
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BIONEER CORPORATION
【住所又は居所原語表記】8-11, Munpyeongseo-ro, Daedeok-gu, Daejeon 34302, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】パク ハンオ
(72)【発明者】
【氏名】キム テリム
(72)【発明者】
【氏名】コ ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン スンイル
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンホン
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525346(JP,A)
【文献】特表2013-532952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0065162(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0059629(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178510(US,A1)
【文献】特表2015-518721(JP,A)
【文献】特表2012-520683(JP,A)
【文献】Nucleic Acids Research,2018, Vol.46, pp.1614-1623
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式1の構造を含むCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
A-X-R-Y-B
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYは、それぞれ独立して単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合を意味し、
Rは、配列番号10の配列から成るセンス鎖(sense strand)と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)と、を含む二重鎖オリゴヌクレオチドであって、前記センス鎖はDNAであり、前記アンチセンス鎖はRNAである、二重鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【請求項2】
下記の構造式(2)の構造を含む、
請求項1に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(2)]
A-X-S-Y-B
AS
前記構造式(2)において、S及びASは、それぞれ請求項
1に記載の二重鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖を意味し、A、B、X及びYは、請求項
1に記載の定義と同一である。
【請求項3】
下記の構造式(3)又は構造式(4)の構造を含む、請求項
2に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体:
A-X-5’S 3’ -Y-B
AS 構造式(3)
A-X-3’S 5’ -Y-B
AS 構造式(4)
前記構造式(3)及び(4)において、A、B、X、Y、S及びASは、請求項
2に記載の定義と同一であり、5’及び3’は、二重鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’及び3’末端を意味する。
【請求項4】
前記親水性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンからなる群から選ばれる、請求項
1に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項5】
前記親水性物質は、下記の構造式(5)又は構造式(6)の構造を有することを特徴とする、請求項
1に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体:
(A’
m-J)
n 構造式(5)
(J-A’
m)
n 構造式(6)
前記構造式(5)又は構造式(6)において、A’は親水性物質単量体(monomer)を、Jは、m個の親水性物質単量体の間又はm個の親水性物質単量体と二重鎖オリゴヌクレオチドとを互いに連結するリンカーを、mは1~15の整数を、nは1~10の整数を意味し、
親水性物質単量体A’は、下記の化合物(1)~化合物(3)から選ばれたいずれか一つの化合物であり、リンカー(J)は、-PO
3
--、-SO
3-及び-CO
2-からなる群から選ばれる;
【化1】
前記化合物(1)において、Gは、O、S及びNHからなる群から選ばれる;
【化2】
【請求項6】
下記の構造式(7)又は構造式(8)の構造を有することを特徴とする、請求項
5に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体:
(A’
m-J)
n-X-R-Y-B 構造式(7)
(J-A’
m)
n-X-R-Y-B 構造式(8)
【請求項7】
前記親水性物質の分子量は、200~10,000であることを特徴とする、請求項
1に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項8】
前記疎水性物質の分子量は、250~1,000であることを特徴とする、請求項
1に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項9】
前記疎水性物質は、ステロイド誘導体、グリセリド誘導体、グリセロールエーテル、ポリプロピレングリコール、C
12~C
50の不飽和又は飽和炭化水素、ジアシルホスファチジルコリン(diacylphosphatidylcholine)、脂肪酸、リン脂質、リポポリアミン(lipopolyamine)、脂質(lipid)、トコフェロール(tocopherol)及びトコトリエノール(tocotrienol)からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とし、前記ステロイド誘導体は、コレステロール、コレスタノール、コール酸、コレステリルホルメート、コレスタニルホルメート及びコレステリルアミンからなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とし、前記グリセリド誘導体は、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドからなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする、請求項
8に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項10】
前記X及びYで表される共有結合は、非分解性結合又は分解性結合であることを特徴とする、請求項
1に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項11】
前記非分解性結合は、アミド結合又はリン酸結合であることを特徴とする、請求項
10に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項12】
前記分解性結合は、ジスルフィド結合、酸分解性結合、エステル結合、アンハイドライド結合、生分解性結合及び酵素分解性結合からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項
10に記載のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項13】
請求項
1に記載の二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子。
【請求項14】
前記ナノ粒子は、互いに異なる配列を含む二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体が混合されて構成されることを特徴とする、請求項
13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
請求項
13に記載のナノ粒子を有効成分として含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項16】
前記呼吸器疾患は、慢性閉塞性疾患(COPD)、喘息、急・慢性気管支炎、アレルギー鼻炎、鎮咳去痰、気管支炎、細気管支炎、咽喉炎、扁桃炎及び喉頭炎からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項
15に記載の線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項17】
前記線維症は、特発性肺線維症(IPF)、肝線維症(liver fibrosis)、肝硬変(cirrhosis)、骨髓線維症(myelofibrosis)、心筋線維症(myocardial fibrosis)、腎線維症(renal fibrosis)、ケロイド(keloid)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、心臓線維症(cardiac fibrosis)及び放射線線維症(radiation-induced fibrosis)からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項
15に記載の線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項18】
請求項
1に記載の二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を有効成分として含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項19】
前記呼吸器疾患は、慢性閉塞性疾患(COPD)、喘息、急・慢性気管支炎、アレルギー鼻炎、鎮咳去痰、気管支炎、細気管支炎、咽喉炎、扁桃炎及び喉頭炎からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項
18に記載の線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項20】
前記線維症は、特発性肺線維症(IPF)、肝線維症(liver fibrosis)、肝硬変(cirrhosis)、骨髓線維症(myelofibrosis)、心筋線維症(myocardial fibrosis)、腎線維症(renal fibrosis)、ケロイド(keloid)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、心臓線維症(cardiac fibrosis)及び放射線線維症(radiation-induced fibrosis)からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項
18に記載の線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTGF発現を非常に特異的且つ高い効率で阻害できる二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子、及びその線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
1995年、GuoとKemphuesは、C.elegansでアンチセンスを用いた遺伝子発現を抑制するのに、アンチセンスRNAと同様にセンスRNAも有効であることを発見することによって、その原因を究明するための研究が進められた。1998年、Fire等が初めてdsRNA(double stranded RNA)を注入し、それに対応するmRNAが特異的に分解されることによって遺伝子の発現が抑制される現象を確認し、これをRNAi(RNA interference)と命名した。RNAiは、遺伝子発現を抑制するために使用される方法であり、手軽でありながら少ない費用で遺伝子抑制効果を明確に達成できるので、その技術の応用分野が多様になっている。
【0003】
このような遺伝子の発現を抑制する技術は、特定遺伝子の発現を調節できるので、特定遺伝子の過剰発現が原因になる癌、遺伝疾患などの標的遺伝子をmRNA水準で除去することができ、疾病治療のための治療剤開発及び標的検証の重要な道具として活用され得る。標的遺伝子の発現を抑制する従来の技術としては、標的遺伝子に対する転移遺伝子を導入する技術が開示されているが、プロモーターを基準にして逆方向(antisense)に転移遺伝子を導入する方法と、プロモーターを基準にして正方向(sense)に移植遺伝子を導入する方法とがある。
【0004】
このようなRNAを標的とするRNA治療法は、標的RNAに対するオリゴヌクレオチドを用いて該当の遺伝子の機能を除去する方法であり、既存の抗体と化合物(small molecule)などの従来の治療剤が主にタンパク質を標的とするのとは異なると言える。RNAを標的とする接近法には大きく二つが存在するが、一つは、二重らせん-RNAが媒介したRNAiであり、他の一つはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。現在、多様な疾病でRNAを標的とした臨床が試みられている。
【0005】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)(以下、「ASO」と言う)は、ワトソン-クリック塩基反応によって目的遺伝子に結合されるようにデザインされた短い長さの合成DNAであり、遺伝子の特定塩基配列の発現を特異的に抑制することができ、遺伝子の機能を研究し、癌などの疾患を分子水準で治療できる治療剤を開発するのに用いられてきた。このようなASOは、遺伝子発現を抑制する目標を多様に設定することによって容易に製作可能であるという長所を有し、発癌遺伝子の発現と癌細胞の成長を抑制するのに活用しようとする研究が進められてきた。ASOが特定遺伝子の発現を抑制する過程は、相補的なmRNA配列との結合によってRNase H活性を誘導することによってmRNAを除去したり、タンパク質翻訳のためのリポソーム複合体の形成及び進行を妨害して行われる。また、ASOは、ゲノムDNAと結合し、トリプル-ヘリックス(Triple helix)構造を形成することによって遺伝子の転写を抑制するとも報告された。ASOは、上記のような潜在的可能性を有するが、これを臨床に活用するためには、ヌクレアーゼ(nuclease)に対する安定性を向上させ、目的遺伝子の塩基配列に特異的に結合するように標的組織や細胞内に効率的に伝達されなければならない。また、遺伝子mRNAの2次及び3次構造は、ASOの特異的結合に重要な要素であり、mRNAの2次構造が少ない部分は、ASOが接近するのに非常に有利であるので、ASOを合成する前にmRNAの2次構造が少なく生成される領域を体系的に分析し、生体外のみならず、生体内でも遺伝子-特異的抑制を効果的に達成するために努力してきた。このようなASOは、RNAの種類であるsiRNAより非常に安定的であり、水及び生理食塩水などによく溶解されるという長所を有しており、現在、三つのASOがFDA(Federal Drug Administration)に承認された(Jessica,C.,J Postdoc Res,4:35-50,2016)。
【0006】
干渉RNA(RNA interference、以下、「RNAi」と言う)は、その役割が発見されて以来、多様な種類の哺乳動物細胞(mammalian cell)で配列特異的mRNAに作用するという事実が明らかになった(Barik,S.,J Mol.Med.(2005)83:764-773)。長い鎖のRNA二重鎖が細胞に伝達されると、伝達されたRNA二重鎖は、ダイサーというエンドヌクレアーゼ(endonuclease)によって21個~23個の二重鎖(base pair、bp)にプロセッシングされた短い干渉RNA(small interfering RNA、以下、「siRNA」と言う)に変換され、siRNAは、RISC(RNA-induced silencing complex)に結合し、ガイド(アンチセンス)鎖がターゲットmRNAを認識して分解する過程を通じてターゲット遺伝子の発現を配列特異的に阻害する。siRNAを用いた遺伝子の発現抑制技術は、標的細胞で標的遺伝子の発現を抑制させ、これによる変化を観察することによって、標的細胞での標的遺伝子の機能を究明する研究に有用に使用される。特に、感染性ウイルス又は癌細胞などで標的遺伝子の機能を抑制することは、該当の疾病の治療方法を開発するのに有用に活用可能であり、生体外(in vitro)での研究及び実験動物を用いた生体内(in vivo)研究を行った結果、siRNAによる標的遺伝子の発現抑制が可能であると報告されている。
【0007】
Bertrand研究陣によると、同一のターゲット遺伝子に対するsiRNAは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotide、ASO)に比べて生体内/外(in vitro及びin vivo)でのmRNA発現の阻害効果に優れ、該当の効果が長い間持続されるという効果を有することが明らかになった。また、siRNAの作用メカニズムは、ターゲットmRNAと相補的に結合し、配列特異的にターゲット遺伝子の発現を調節するので、既存の抗体基盤の医薬品や化学物質医薬品(small molecule drug)に比べて適用可能な対象が画期的に拡大され得るという長所を有する(MA Behlke,MOLECULAR THERAPY.2006 13(4):664-670)。
【0008】
siRNAの優れた効果及び多様な使用範囲にもかかわらず、siRNAが治療剤として開発されるためには、体内でのsiRNAの安定性(stability)改善及び細胞伝達効率改善を通じてsiRNAがターゲット細胞に効果的に伝達されなければならない(FY Xie,Drug Discov.Today.2006 Jan;11(1-2):67-73)。体内安定性を向上させ、siRNAの非特異的な細胞免疫反応(innate immune stimulation)問題を解決するために、siRNAの一部のヌクレオチド又は骨格(backbone)を、核酸分解酵素抵抗性を有するように変形(modification)したり、ウイルス性ベクター(viral vector)、リポソーム又はナノ粒子(nano particle)などの伝達体を用いるなど、これに対する研究が活発に試みられている。
【0009】
アデノウイルスやレトロウイルスなどのウイルス性ベクターを用いた伝達システムは、形質注入効率(transfection efficacy)が高いが、免疫原性(immunogenicity)及び発癌性(oncogenicity)が高い。その一方で、ナノ粒子を含む非ウイルス性(non-viral)伝達システムは、ウイルス性伝達システムに比べて細胞伝達効率が低い方であるが、生体内(in vivo)での安定性(stability)が高く、ターゲット特異的に伝達が可能であり、内包されているRNAiオリゴヌクレオチドを細胞又は組織に吸収(uptake)及び内在化(internalization)し、細胞毒性及び免疫誘発(immune stimulation)がほとんどないという長所を有しており、現在は、ウイルス性伝達システムに比べて有力な伝達方法であると評価されている(Akhtar S,J Clin Invest.2007 December 3;117(12):3623-3632)。
【0010】
非ウイルス性伝達システムのうちナノ伝達体(nano carrier)を用いる方法は、リポソーム、陽イオン高分子複合体などの多様な高分子を使用することによってナノ粒子を形成し、siRNAをこのようなナノ粒子(nano particle)、すなわち、ナノ伝達体(nano carrier)に担持して細胞に伝達する方法である。ナノ伝達体を用いる方法のうち主に活用される方法としては、高分子ナノ粒子(polymeric nanoparticle)、高分子ミセル(polymer micelle)、リポフレックス(lipoplex)などを用いた方法があるが、このうち、リポフレックスを用いた方法は、陽イオン性脂質で構成され、細胞のエンドソーム(endosome)の陰イオン性脂質との相互作用によってエンドソームの脱安定化効果を誘発し、細胞内への伝達を実現することができる。
【0011】
また、siRNAパッセンジャー(passenger;センス(sense))鎖の末端部位に化学物質などを連結し、増進した薬物動態学(pharmacokinetics)的な特徴を付与することによって生体内(in vivo)で高い効率を誘導できることが知られている(J Soutschek,Nature 11;432(7014):173-8,2004)。このとき、siRNAセンス(sense;パッセンジャー(passenger))又はアンチセンス(antisence;ガイド(guide))鎖の末端に結合された化学物質の性質によってsiRNAの安定性が変わる。例えば、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol、PEG)などの高分子化合物が接合された形態のsiRNAは、陽イオン性物質が存在する条件でsiRNAの陰イオン性リン酸基と相互作用しながら複合体を形成することによって、改善されたsiRNA安定性を有する伝達体になる(SH Kim,J Control Release 129(2):107-16,2008)。特に、高分子複合体で構成された各ミセル(micelle)は、薬物伝達運搬体として使用される他のシステムである、微小球体(microsphere)又はナノ粒子(nano particle)などに比べてその大きさが極めて小さいながらも分布が非常に一定であり、自発的に形成される構造であるので、製剤の品質管理及び再現性確保が容易であるという長所を有する。
【0012】
siRNAの細胞内伝達効率性を向上させるために、siRNAに生体適合性高分子である親水性物質(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG))を単純共有結合又はリンカー-媒介(linker-mediated)共有結合で接合させたsiRNA接合体を通じて、siRNAの安定性確保及び効率的な細胞膜透過性のための技術が開発された(大韓民国登録特許第883471号)。しかし、siRNAの化学的変形及びポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)を接合させること(PEGylation)のみでは、生体内での低い安定性及び標的臓器への伝達が円滑でないという短所を依然として有する。このような短所を解決するために、オリゴヌクレオチド、特にsiRNAなどの二重鎖オリゴRNAに親水性及び疎水性物質が結合された二重鎖オリゴRNA構造体が開発されたが、前記構造体は、疎水性物質の疎水性相互作用によってSAMiRNATM(self assembled micelle inhibitory RNA)と命名された自己集合ナノ粒子を形成するようになるが(大韓民国登録特許第1224828号)、SAMiRNATM技術は、既存の伝達技術に比べて非常にサイズが小さいながらも、均一な(homogenous)ナノ粒子を収得できるという長所を有する。
【0013】
SAMiRNATM技術の具体的な例としては、親水性物質としてPEG(polyethylene glycol)又はHEG(Hexaethylen glycol)が使用されるが、PEGは、合成ポリマー(synthetic polymer)であり、通常、医薬品、特にタンパク質の水溶性(solubility)増加及び薬物動態学(pharmacokinetics)の調節のために使用される。PEGは、多分散系(polydisperse)物質であり、一つのバッチ(batch)のポリマーは、他の個数の単量体(monomer)の総合からなり、分子量がガウス曲線形態を示し、多分散指数(polydisperse value、Mw/Mn)で物質の同質性程度を表現する。すなわち、PEGは、低い分子量(3kDa~5kDa)であるときに約1.01の多分散指数を示し、高い分子量(20kDa)であるときに約1.2という高い多分散指数を示すので、高い分子量であるほど、物質の同質性が相対的に低いという特徴を示す。よって、PEGを医薬品に結合させた場合、接合体にPEGの多分散的特徴が反映され、単一物質の検証が容易でないという短所があり、PEGの合成及び精製過程の改善を通じて低い多分散指数を有する物質を生産する趨勢であるが、特に、分子量が小さい物質にPEGを結合させた場合、結合が容易に行われたかどうかを確認することが容易でないという不便さがあるなど、物質の多分散性特徴による問題が存在する(Francesco M.VDRUG DISCOVERY TODAY(2005)10(21):1451-1458)。
【0014】
これによって、最近は、既存の自己集合ナノ粒子であるSAMiRNATM技術の改良された形態として、SAMiRNATMを構成する二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質を、一定の分子量を有する均一な1個~15個の単量体(monomer)及びリンカー(linker)(必要時に)を含む基本単位にブロック(block)化し、これを必要によって適切な個数だけ使用することによって、既存のSAMiRNATMに比べてより小さい大きさを有しながらも、多分散性が画期的に改善された新しい形態の伝達体技術が開発された。また、体内にsiRNAを注入した場合、血液内に存在する多様な酵素によってsiRNAが急速に分解され、標的細胞又は組織などへの伝達効率が良くないことが既に知られているように、改良されたSAMiRNATMでも、標的遺伝子によって安定性及び発現阻害率の偏差が表れた。よって、本発明者等は、改良された自己集合ナノ粒子であるSAMiRNATMを用いて標的遺伝子の発現をより安定的且つ効果的に阻害するために、ガイドであるセンス鎖はASOであるDNA配列を、パッセンジャーであるアンチセンス鎖はRNA配列を用いてDNA-RNAハイブリッド形態の二重鎖オリゴヌクレオチドを適用することによって、標的遺伝子に対する発現阻害効果及び安定性を増進させようとした。
【0015】
喘息と共に、代表的な肺疾患の一つである慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、以下、「COPD」と言う)は、非可逆的な気道の閉塞を伴うという点で喘息と異なり、繰り返される感染、有害な粒子やガスの吸入又は喫煙によって発生する肺の非正常的な炎症反応に伴い、完全に可逆的ではなく、徐々に進行する気流制限を示す呼吸器疾患である(Pauwels et al,Am J Respir Crit Care Med,163:1256-1276、2001)。COPDは、気道及び肺実質炎症による細気管支及び肺実質の病理学的変化によって発生する病気であり、閉塞性細気管支炎及び肺気腫(肺実質の破壊)を特徴とする。COPDの種類には、慢性閉塞性気管支炎(Chronic obstructive bronchitis)、慢性細気管支炎(Chronic bronchiolitis)及び肺気腫(Emphysema)がある。COPDの場合、好中球の数が増加し、GM-CSF、TNF-α、IL-8、MIP-2などのサイトカインの分泌が増加する。また、気道に炎症が生じ、筋肉の壁が厚くなり、粘液分泌が増加し、気管支閉鎖が表れる。気管支が閉鎖されると、肺胞は拡張・損傷し、酸素と二酸化炭素との交換能力が損傷を受けるようになり、呼吸不全の発生が増加する。
【0016】
全世界的にCOPDの深刻性が浮き彫りになっているが、これは、COPDが1990年に疾患による死亡原因の6位であったが、2020年には3位になると予測されており、10大疾患のうち唯一にその発病率が増加する疾患であるためである。COPDは、有病率が高く、呼吸障害をもたらし、COPDの診断及び治療に必要な直接医療費が多く発生するだけでなく、呼吸困難障害や休職によって発生する損失又は早期死亡による損失などの間接医療費も相当であるので、全世界的にも社会-経済的な問題になっている(慢性閉塞性肺疾患(COPD)診療指針.2005.慢性気道閉塞性疾患臨床研究センター.p.30-31)。
【0017】
現存する如何なる治療薬剤においても、COPDの特徴である長期的肺機能の減少を緩和させると確認されたことがない。そのため、COPDでの薬物療法は、主に症状或いは合併症を減少させる目的で使用する。このうち、気管支拡張剤は、代表的なCOPD対症療法治療剤であり、抗炎症剤や副腎皮質ホルモンなどが主に処方されるが、その効果が微々たるもので、適用範囲が狭小であり、副作用が発生する憂いが大きい。その他の薬物としては、インフルエンザワクチンのみが、COPD患者で深刻な病症及び死亡を約50%まで減少できると知られている(慢性閉塞性肺疾患(COPD)診療指針.2005.慢性気道閉塞性疾患臨床研究センター.p.52-58)。
【0018】
一方、多くの遺伝的因子が個人のCOPD発生危険を増加(或いは減少)させると推定される。現在まで証明された遺伝的な危険因子としては、α1-アンチトリプシンの遺伝的欠乏がある。喫煙がCOPD発病危険を相当増加させるが、幼い年齢で速く進行する汎小葉性肺気腫(panlobular emphysema)の発生及び肺機能の減少は、深刻な遺伝的欠乏を示す喫煙者と非喫煙者の両方から表れる。α1-アンチトリプシン遺伝子の他に、COPD病因と関係すると確認された他の遺伝子は未だにないが、COPD患者達で表れる基本的な細胞的、分子的及び遺伝子的な非正常的な状態に対する研究を通じて疾病のバイオマーカー(biomarker)を識別し、これを診断に活用したり、新しい治療方法の発掘に活用するための試みが進行中である(P.J.Barnes and R.A.Stockely.Eur Respir J.(2005)25:1084-1106)。特に、遺伝子マイクロアレイ(gene microarray)やプロテオミクス(proteomics)などの方法を通じてCOPDの診断及び治療ターゲットを選定する研究が活発に進められているが、COPD敏感性(susceptibility)を付与する遺伝因子の分析及び喫煙で誘発されるCOPD症状の悪化の原因に対する分析が主に行われている(Peter J.Castaldi et al.Human Molecular Genetics,2010,Vol.19,No.3 526-534)。
【0019】
線維症(Fibrosis)の一種類である特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis、以下、「IPF」と言う)は、肺胞壁に慢性炎症細胞が浸透しながら肺を硬くする多くの変化が発生しながら、肺組織の深刻な構造的変化をもたらし、肺機能が徐々に低下し、結局は死亡に至る疾患であり、未だに効果的な治療方法がないので、ほとんどの場合、症状が表れてから診断すると、平均生存期間が僅か3年~5年程度である予後が非常に悪い疾病である。発生頻度は、外国の場合、人口10万名当たり約3人~5人程度であると報告されており、ほとんどの場合、50代以後に発病率が高く、男が女よりも2倍ほど高い発病率を有すると知られている。
【0020】
IPFの発病原因は未だに明確に究明されていないが、喫煙者で頻度が高く、抗憂鬱剤、胃-食道逆流による慢性的肺吸入、金属粉塵、木材粉塵、又は溶媒剤吸入などがIPFの発生と連関する各危険因子であると報告されているが、ほとんどの患者達では、確実な因果関係を有する各因子が報告されていない。最も多く言及される因子としては、如何なる原因によっても、Th1/Th2反応、凝固カスケードなどが活性化されると、これらによって線維化性サイトカイン(cytokine)が分泌され、活性化されたサイトカインが、線維芽細胞を刺激することによってECM(Extracellular Matrix)を増加させ、肺線維化が起こると知られている。もちろん、この過程で肺の炎症を伴うようになり、これによって肺の線維化を起こし得るが、最近は、肺の炎症と関係なく、肺線維化を直接起こし得るという意見がさらに支配的である。最近は、上皮間葉相互作用(Epithelial-mesenchymal interaction)の非正常的な信号伝逹体系によって傷治癒過程で病理的な肺線維化が起こるという仮説がある。上皮細胞が損傷を受けると、上皮細胞のアポトーシスが増加し、移動が制限され、分化が調節されずに増殖が抑制され、液性因子(TGF、HGF、KGF、アンジオテンシンII、ROSなど)が分泌され、ECMと共に間葉系細胞のアポトーシスが抑制され、筋線維芽細胞の分化が増加し、ECMの沈着による肺線維化を誘発したり、或いは上皮細胞を再度刺激するようになる。すなわち、肺の炎症が肺線維化を直接起こすとは言えなく、ただ、肺の炎症が先行され、引き続いて、正常組織に治癒される過程でIPF患者と正常人との差によって肺線維化が起こることを意味する。また、IPFは、Th1/Th2サイトカインの不調和によって誘発し得るが、Th1サイトカイン反応は、細胞媒介性免疫に関係するものとして、組織回復に関する損傷部位を正常に回復させる一方で、Th2サイトカインは、線維芽細胞の活性化及び増殖を通じてECMの沈着及び線維化を誘発する。ブレオマイシンを用いた肺線維化モデルでIFN-γを投与すると、TGF-β及びプロコラーゲンのmRNAを減少させ、肺線維化を防止できると報告されているが、病因に対して正確に知られていないので、後ほどで線維化を起こす初期の原因因子を究明し、IPFと関連する遺伝子及びTGF-β信号伝達体系を抑制できる物質の開発などが必要である。
【0021】
IPFは、治療していないときに継続的に悪化し、患者の約50%以上が3年~5年内に死亡すると知られており、また、一旦病気が進行し、線維化で完全に硬くなった後は如何なる治療をしても好転しないので、早期に治療する場合に効果がある可能性が高いと予測している。現在使用されている治療剤としては、ステロイド(steroid)とアザチオプリン(azathioprine)、又はシクロホスファミド(cyclophosphamide)の併合療法を使用する方法が知られているが、特別な効果を示すとは見なしにくく、様々な線維化抑制剤が動物実験及び小規模の患者達で試みられたが、確実な効果が立証されていない状態である。特に、末期IPF患者では、肺移植以外の他の効果的な治療方法がない実情である。よって、より効率的なIPFの治療剤開発が切実な状況である。
【0022】
線維症(Fibrosis)は、何らかの理由により、組織や臓器が結合組織の過剰線維化によって硬くなる病症を通称するが、線維化が起こる全ての過程は、部位を問わず、傷痕が治療される過程と同一の経路で行われる。線維症状は、現在まで完治方法がほとんどなく、治療方法が開発及び研究中である。効果的な線維化治療剤は、代表的な線維症である肝硬変(cirrhosis)、肝線維症(liver fibrosis)、骨髓線維症(myelofibrosis)、心筋線維症(myocardial fibrosis)、腎線維症(renal fibrosis)、肺線維症(pulmonary fibrosis)のみならず、線維症が伴われる多様な疾病に適用可能であるので、効率的な線維症の治療剤開発が切実な状況である。
【0023】
CTGF(connective tissue growth factor;CCN2)は、CCNファミリーに属したマトリセルラータンパク質の一つであり、細胞結合(cell adhesion)、移動(migration)、増殖(proliferation)、血管形成(angiogenesis)、傷回復(wound repair)などの多様な生物学的過程(biological processes)に関与するものとして知られている分泌サイトカインであり、CTGFの過剰発現は、強皮症(scleroderma)、線維症(fibrotic disease)及び傷痕形成などの症状の主要原因であると見なされる(Brigstock DR.J Cell Commun Signal(2010)4(1):1-4)。特に、線維症と関連して、CTGFは、TGF-β増殖因子-βと共に、慢性線維症(sustained fibrosis)を誘発したり、線維形成を誘発する条件でECM(extracelluar matrix)の生産を促進させる役割をするものとして知られており、近来は、CTGFの発現を阻害したり、作用を抑制する試料や物質を処理することによって、非正常的なCTGFの発現による視覚障害(ocular disorders)や筋萎縮症(Muscular Dystrophy)を治療できると知られている(米国登録特許第7622454号、米国公開特許第20120164151号)。
【0024】
上記で検討したように、未だにCTGFに対するRNAi治療剤及びその伝達技術に対する技術開発は微々たるものであり、特異的且つ高効率でCTGF発現を阻害できる二重鎖オリゴヌクレオチド治療剤及びその伝達技術に対する市場の需要は非常に高い状況である。
【0025】
そこで、本発明者等は、COPDを初めとした呼吸器疾患及びIPFを初めとした線維症と関連する遺伝子としてCTGFを選定し、CTGFを標的とする二重鎖オリゴヌクレオチドを選別し、CTGF発現を阻害できるRNAi治療剤及びその伝達体を確認することによって本発明を完成した。
【発明の概要】
【0026】
本発明の目的は、CTGFの発現を非常に特異的且つ高い効率で阻害できる二重鎖オリゴヌクレオチド、好ましくはRNA/RNA、DNA/DNA、又はDNA/RNAハイブリッド形態、最も好ましくはDNA/RNAハイブリッド形態の配列を含む二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体、及び前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子を提供することにある。
【0027】
本発明の他の目的は、前記二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及び/又は前記ナノ粒子を有効成分として含有する呼吸器疾患及び線維症の予防又は治療用医薬組成物を提供することにある。
【0028】
本発明の更に他の目的は、前記二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及び/又は前記ナノ粒子を線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与する段階を含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療方法を提供することにある。
【0029】
本発明の更に他の目的は、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療に使用するための二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体、及び前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子の用途を提供することにある。
【0030】
本発明の更に他の目的は、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療に使用するための前記薬学的組成物の用途を提供することにある。
【0031】
本発明の更に他の目的は、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療のための薬物を製造するための前記二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体、及び前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子の用途を提供することにある。
【0032】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号1~16で構成された群、好ましくは、配列番号1、2、10及び15で構成された群から選ばれるいずれか一つの配列、さらに好ましくは、配列番号10で表される配列を含むセンス鎖(sense strand)と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含む二重鎖オリゴヌクレオチドを提供する。
【0033】
また、本発明は、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体;及び前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;を提供する。
【0034】
また、本発明は、配列番号1~16で構成された群、好ましくは、配列番号1、2、10及び15で構成された群から選ばれたいずれか一つの配列、さらに好ましくは、配列番号10で表される配列を含むセンス鎖(sense strand)と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含む二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体、及び/又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子を含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0035】
また、本発明は、前記二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及び/又は前記ナノ粒子を線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与する段階を含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0036】
また、本発明は、前記線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物を、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与する段階を含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0037】
本発明に係る配列番号1~16で構成された群、好ましくは、配列番号1、2、10及び15で構成された群から選ばれたいずれか一つの配列、さらに好ましくは、配列番号10で表される配列を含むセンス鎖(sense strand)と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含む二重鎖オリゴヌクレオチド、これを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体、及び前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子のそれぞれは、CTGFの発現を非常に効率的に阻害できるので、本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及び前記ナノ粒子は、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療に有用に使用可能である。
【0038】
前記目的を達成するために、提供される好ましい二重鎖オリゴヌクレオチドに含まれる配列番号1、2、10及び15の配列は次の通りである。
【0039】
5’-ATGTACAGTTATCTAAGTT-3’(配列番号1)
【0040】
5’-TGTACAGTTATCTAAGTTA-3’(配列番号2)
【0041】
5’-TGATTTCAGTAGCACAAGT-3’(配列番号10)
【0042】
5’-TCAGTAGCACAAGTTATTT-3’(配列番号15)
【0043】
本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチドは、一般的なRNAi(RNA interference)作用を有する全ての物質を含む概念であり、前記CTGFタンパク質をエンコードするmRNA特異的二重鎖オリゴヌクレオチドにCTGF特異的shRNAなども含まれることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。すなわち、前記オリゴヌクレオチドは、siRNA、shRNA又はmiRNAであることを特徴とすることができる。
【0044】
また、CTGFに対する特異性が維持される限り、前記配列番号1、2、10及び15で構成された群から選ばれるいずれか一つの配列を含むセンス鎖又はこれに相補的なアンチセンス鎖において、一つ以上の塩基が置換、欠失、又は挿入された配列を含むセンス鎖及びアンチセンス鎖を含むCTGF特異的siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドも本発明の権利範囲に含まれることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0045】
本発明において、前記センス又はアンチセンス鎖は、独立してDNA又はRNAであることを特徴とすることができ、また、センス鎖はDNA、アンチセンス鎖はRNAであったり、センス鎖はRNA、アンチセンス鎖はDNAであるハイブリッド形態が使用され得る。
【0046】
本発明において、前記配列番号1、2、10及び15はDNA形態で記載されているが、RNA形態が使用される場合、配列番号1、2、10及び15の配列としては、これに対応するRNA配列、すなわち、TがUに変更された配列が使用され得る。
【0047】
また、本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチドは、CTGFに対する特異性が維持される限り、配列のセンス鎖がCTGF遺伝子の結合部位と100%相補的な塩基配列である場合、すなわち、完全一致(perfect match)するものだけでなく、一部の塩基配列が一致していない場合、すなわち、不完全一致(mismatch)するものも含む。
【0048】
本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチドは、一つ又は両鎖の3’末端に一つ又はそれ以上の非結合(unpaired)ヌクレオチドを含む構造であるオーバーハング(overhang)を含むことができる。
【0049】
本発明において、前記センス鎖又はアンチセンス鎖は、好ましくは19個~31個のヌクレオチドで構成されることを特徴とすることができるが、これに限定されるのではない。
【0050】
本発明において、配列番号1、2、10及び15で構成された群から選ばれたいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む二重鎖オリゴヌクレオチドは、CTGF(connective tissue growth factor)に特異的であることを特徴とすることができるが、これに限定されるのではない。
【0051】
本発明において、前記二重鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖又はアンチセンス鎖は、生体内の安定性向上のために、又は核酸分解酵素の抵抗性付与及び非特異的免疫反応の減少のために、多様な化学的変形(chemical modification)を含むことを特徴とすることができ、化学的変形は、ヌクレオチド内の糖(sugar)構造の2’炭素位置で水酸化基(-OH)がメチル基(-CH3)、メトキシ基(-OCH3)、アミン基(-NH2)、フッ素(-F)、O-2-メトキシエチル基、O-プロピル基、O-2-メチルチオエチル基、O-3-アミノプロピル基、O-3-ジメチルアミノプロピル基、O-N-メチルアセトアミド基及びO-ジメチルアミドオキシエチルで構成された群から選ばれるいずれか一つに置換される変形;ヌクレオチド内の糖構造の酸素が硫黄に置換される変形;ヌクレオチド結合がホスホロチオエート(phosphorothioate)結合、ボラノホスフェート(boranophosphate)結合及びメチルホスホネート(methyl phosphonate)結合で構成された群から選ばれるいずれか一つの結合になる変形;PNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)及びUNA(unlocked nucleic acid)形態への変形;及びDNA-RNAハイブリッド形態への変形;で構成された群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とすることができるが(Ann.Rev.Med.55,61-65 2004;US 5,660,985;US 5,958,691;US 6,531,584;US 5,808,023;US 6,326,358;US 6,175,001;Bioorg.Med.Chem.Lett.14:1139-1143,2003;RNA,9:1034-1048,2003;Nucleic Acid Res.31:589-595,2003;Nucleic Acids Research,38(17)5761-773,2010;Nucleic Acids Research,39(5):1823-1832,2011)、これに限定されるのではない。
【0052】
本発明において、二重鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の5’末端に一つ以上のリン酸基(Phosphate group)が結合されていることを特徴とすることができ、好ましくは、1個~3個のリン酸基が結合されていることを特徴とすることができる。
【0053】
本発明は、他の観点において、下記の構造式(1)の構造を含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体に関するものであり、下記の構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYは、それぞれ独立して単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合を意味し、Rは、二重鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0054】
A-X-R-Y-B 構造式(1)
【0055】
一つの好ましい具体例として、本発明に係るCTGF特異的配列を含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体は、構造式(1)のような構造を有することが好ましい。
【0056】
A-X-R-Y-B 構造式(1)
【0057】
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYは、それぞれ独立して単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合を意味し、Rは、CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0058】
本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチドの形態としては、DNA-RNAハイブリッド、siRNA(short interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)及びmiRNA(microRNA)などが好ましいが、これに限定されるのではなく、miRNAに対する拮抗剤(antagonist)としての役割をし得る単一鎖のmiRNA阻害剤も含まれる。
【0059】
以下、本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチドは、RNAを中心に説明するが、本発明の二重鎖オリゴヌクレオチドと同一の特性を有する他の二重鎖オリゴヌクレオチド(例えば、DNA/RNAハイブリッド)にも適用可能であることは、当業界の通常の技術者にとって自明である。
【0060】
より好ましくは、本発明に係るCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(2)の構造を有する。
【0061】
A-X-S-Y-B
AS 構造式(2)
【0062】
前記構造式(2)において、A、B、X及びYは、前記構造式(1)での定義と同一であり、Sは、CTGF特異的ヌクレオチド配列のセンス鎖を意味し、ASは、CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖を意味する。
【0063】
より好ましくは、CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(3)又は(4)の構造を有する。
【0064】
A-X-5’S 3’ -Y-B
AS 構造式(3)
A-X-3’S 5’ -Y-B
AS 構造式(4)
【0065】
前記構造式(3)及び構造式(4)において、A、B、S、AS、X及びYは、前記構造式(2)での定義と同一であり、5’及び3’は、CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’末端及び3’末端を意味する。
【0066】
前記親水性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンで構成された群から選ばれることを特徴とすることができるが、これに限定されるのではない。
【0067】
前記構造式(1)~構造式(4)における前記CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体は、アンチセンス鎖の5’末端にリン酸基(phosphate group)が1個~3個結合され得る。また、RNAの代わりにshRNAも使用可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0068】
前記構造式(1)~構造式(4)における親水性物質は、分子量が200~10,000である高分子物質であることが好ましく、さらに好ましくは、分子量が1,000~2,000である高分子物質である。例えば、親水性高分子物質としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリンなどの非イオン性親水性高分子化合物を使用することが好ましいが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0069】
特に、構造式(1)~構造式(4)における親水性物質(A)は、下記の構造式(5)又は構造式(6)のような形態の親水性物質ブロック形態で利用可能であるが、このような親水性物質ブロックを必要によって適切な個数(構造式(5)又は構造式(6)でのn)だけ使用することによって、一般の合成高分子物質などを使用する場合に発生し得る多分散性による問題を大きく改善することができる。
【0070】
(A’m-J)n 構造式(5)
(J-A’m)n 構造式(6)
【0071】
前記構造式(5)において、A’は親水性物質単量体(monomer)を意味し、Jは、m個の親水性物質単量体の間又はm個の親水性物質単量体とオリゴヌクレオチドとを互いに連結するリンカーを意味し、mは1~15の整数を意味し、nは1~10の整数を意味し、(A’m-J)又は(J-A’m)で表される反復単位が親水性物質ブロックの基本単位に該当する。
【0072】
前記構造式(5)又は構造式(6)のような親水性物質ブロックを有する場合、本発明に係るCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(7)又は構造式(8)のような構造を有することができる。
【0073】
(A’m-J)n-X-R-Y-B 構造式(7)
(J-A’m)n-X-R-Y-B 構造式(8)
【0074】
前記構造式(7)及び構造式(8)において、X、R、Y及びBは、構造式(1)での定義と同一であり、A’、J、m及びnは、構造式(5)及び構造式(6)での定義と同一である。
【0075】
前記構造式(5)及び構造式(6)において、親水性物質単量体(A’)は、非イオン性親水性高分子の単量体のうち、本発明の目的に符合するものであれば制限なく使用可能であり、好ましくは、表1に記載した化合物(1)~化合物(3)から選ばれた単量体、さらに好ましくは化合物(1)の単量体が使用され得る。また、化合物(1)において、Gは、好ましくはO、S及びNHから選ばれ得る。
【0076】
特に、親水性物質単量体のうち化合物(1)で表される単量体は、多様な官能基を導入することができ、生体内の親和性が良く、免疫反応を少なく誘導するなど、生体適合性(bio-compatibility)に優れるだけでなく、構造式(7)又は構造式(8)による構造体内に含まれた二重鎖オリゴヌクレオチドの生体内の安定性を増加させ、伝達効率を増加できるという長所を有しており、本発明に係る構造体の製造に非常に適している。
【0077】
【0078】
前記構造式(5)~構造式(8)での親水性物質は、総分子量が1,000~2,000の範囲内であることが特に好ましい。よって、例えば、構造式(7)及び構造式(8)において、化合物(1)によるヘキサエチレングリコール(Hexaethylene glycol)、すなわち、GがOで、mが6である物質が使用される場合、ヘキサエチレングリコールスペーサーの分子量が344であるので、反復回数(n)は3~5であることが好ましい。特に、本発明は、必要によって、前記構造式(5)及び構造式(6)において(A’m-J)n又は(J-A’m)nで表される親水性グループの反復単位、すなわち、親水性物質ブロックがnで表される適切な個数で使用され得ることを特徴とする。前記各親水性物質ブロック内に含まれる親水性物質単量体であるAとリンカーであるJは、独立して各親水性物質ブロックの間で同一又は異なり得る。すなわち、親水性物質ブロックが3個使用される場合(n=3)、1番目のブロックには化合物(1)による親水性物質単量体が、2番目のブロックには化合物(2)による親水性物質単量体が、3番目のブロックには化合物(3)による親水性物質単量体が使用されるなど、全ての親水性物質ブロック別に異なる親水性物質単量体が使用されてもよく、全ての親水性物質ブロックに化合物(1)~化合物(3)による親水性物質単量体から選ばれたいずれか一つの親水性物質単量体が同一に使用されてもよい。同様に、親水性物質単量体の結合を媒介するリンカーとしても、各親水性物質ブロック別に全て同一のリンカーが使用されてもよく、各親水性物質ブロック別に異なるリンカーが使用されてもよい。また、親水性物質単量体の個数であるmも、各親水性物質ブロックの間で同一又は異なり得る。すなわち、1番目の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が3個連結(m=3)され、2番目の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が5個連結(m=5)され、3番目の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が4個連結(m=4)されるなど、互いに異なる個数の親水性物質単量体が使用されてもよく、全ての親水性物質ブロックで同一の個数の親水性物質単量体が使用されてもよい。
【0079】
また、本発明において、前記リンカー(J)は、-PO3
--、-SO3-及び-CO2-で構成された群から選ばれることが好ましいが、これに制限されるのではなく、使用される親水性物質の単量体などによって、本発明の目的に符合する限り、如何なるリンカーも使用可能であることは通常の技術者にとって自明である。
【0080】
前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)での疎水性物質(B)は、疎水性相互作用を通じて構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)による二重鎖オリゴヌクレオチド構造体で構成されたナノ粒子を形成する役割をする。前記疎水性物質は、分子量が250~1,000であることが好ましく、ステロイド(steroid)誘導体、グリセリド(glyceride)誘導体、グリセロールエーテル(glycerol ether)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、C12~C50の不飽和又は飽和炭化水素(hydrocarbon)、ジアシルホスファチジルコリン(diacylphosphatidylcholine)、脂肪酸(fatty acid)、リン脂質(phospholipid)、リポポリアミン(lipopolyamine)などが使用され得るが、これに制限されるのではなく、本発明の目的に符合するものであれば、如何なる疎水性物質も使用可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0081】
前記ステロイド(steroid)誘導体は、コレステロール、コレスタノール、コール酸、コレステリルホルメート、コレスタニルホルメート及びコレステリルアミンで構成された群から選ばれ得る。また、前記グリセリド誘導体は、モノ-、ジ-及びトリ-グリセリドなどから選ばれ得るが、このとき、グリセリドの脂肪酸は、C12~C50の不飽和又は飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0082】
特に、前記疎水性物質のうち飽和又は不飽和炭化水素やコレステロールは、本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の合成段階で容易に結合できるという長所を有している点で好ましく、C24炭化水素、特にジスルフィド結合を含む形態であることが最も好ましい。
【0083】
前記疎水性物質は、親水性物質の反対側末端(distal end)に結合され、siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖のいずれの位置に結合されても構わない。
【0084】
本発明に係る構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)での親水性物質又は疎水性物質とCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドは、単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合(X又はY)によって結合される。前記共有結合を媒介するリンカーは、親水性物質又は疎水性物質とCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドの末端で共有結合し、必要によって、特定の環境で分解可能な結合を提供する限り、特に限定されるのではない。よって、前記リンカーとしては、本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の製造過程でCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチド及び/又は親水性物質(又は疎水性物質)を活性化するために結合させる如何なる化合物も使用され得る。前記共有結合は、非分解性結合及び分解性結合のうちいずれであっても構わない。このとき、非分解性結合としては、アミド結合又はリン酸結合があり、分解性結合としては、ジスルフィド結合、酸分解性結合、エステル結合、アンハイドライド結合、生分解性結合又は酵素分解性結合などがあるが、これに限定されるのではない。
【0085】
また、前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)でのR(又はS及びAS)で表されるCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドは、CTGFのmRNAと特異的に結合できるという特性を有する二重鎖オリゴヌクレオチドであれば、いずれも制限なく使用可能であり、好ましくは、本発明では、配列番号1、2、10及び15から選ばれたいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とで構成される。
【0086】
また、本発明は、本発明に係るCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体において、前記構造体内の親水性物質のオリゴヌクレオチドと結合された反対側末端部位にアミン基又はポリヒスチジン(polyhistidine)グループがさらに導入され得る。
【0087】
これは、本発明に係るCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の伝達体の細胞内導入及びエンドソーム脱出を容易にするためのものであり、既に量子ドット、デンドリマー、リポソームなどの伝達体の細胞内導入及びエンドソーム脱出を容易にするために、アミングループの導入、ポリヒスチジングループの利用及びその効果が報告されている。
【0088】
具体的に、伝達体の末端或いは外側に修飾された一次アミン基は、生体内のpHでプロトン化されながら陰電荷を帯びる遺伝子との静電気的相互作用によって結合体を形成し、細胞内に流入した後、エンドソームの低いpHで緩衝効果を有する内部3次アミンによってエンドソームの脱出が容易になることによってリソソームの分解から伝達体を保護できると知られており(高分子基盤のハイブリッド物質を用いた遺伝子伝達及び発現抑制。Polymer Sci.Technol.,Vol.23,No.3,pp254-259)、
【0089】
非必須アミノ酸の一つであるヒスチジンは、残基(-R)にイミダゾール環(pKa3 6.04)を有するので、エンドソームとリソソームで緩衝能力(buffering capacity)を増加させるという効果を有し、リポソームを初めとした非ウイルス性遺伝子伝達体(non-viral gene carrier)においてエンドソーム脱出効率を高めるためにヒスチジン修飾を利用可能であることが知られている(Novel histidine-conjugated galactosylated cationic liposomes for efficient hepatocyte selective gene transfer in human hepatoma HepG2 cells.J.Controlled Release 118,pp262-270)。
【0090】
前記アミン基又はポリヒスチジン(polyhistidine)グループは、一つ以上のリンカーを介して親水性物質又は親水性物質ブロックと連結され得る。
【0091】
本発明の構造式(1)による二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質にアミン基又はポリヒスチジン(polyhistidine)グループが導入される場合は、構造式(9)のような構造を有することができる。
【0092】
P-J1-J2-A-X-R-Y-B 構造式(9)
【0093】
前記構造式(9)において、A、B、R、X、及びYは構造式(1)での定義と同一であり、
Pは、アミン基又はポリヒスチジングループを意味し、J1とJ2は、リンカーとして、独立して単純共有結合、PO3
-、SO3、CO2、C2-12アルキル、アルケニル及びアルキニルから選ばれ得るが、これに限定されるのではなく、使用される親水性物質によって本発明の目的に符合するJ1とJ2であれば、如何なるリンカーも使用可能であることは通常の技術者にとって自明である。
【0094】
好ましくは、アミン基が導入された場合、J2は単純共有結合又はPO3
-で、J1はC6アルキルであることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0095】
また、ポリヒスチジン(polyhistidine)グループが導入された場合、構造式(9)において、J2は単純共有結合又はPO3
-で、J1は化合物(4)であることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0096】
【0097】
また、構造式(9)による二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質が構造式(5)又は構造式(6)による親水性物質ブロックで、これに、アミン基又はポリヒスチジン(polyhistidine)グループが導入される場合、構造式(10)又は構造式(11)のような構造を有することができる。
【0098】
P-J1-J2-(A’m-J)n-X-R-Y-B 構造式(10)
P-J1-J2-(J-A’m)n-X-R-Y-B 構造式(11)
【0099】
前記構造式(10)及び構造式(11)において、X、R、Y、B、A’、J、m及びnは、構造式(5)又は構造式(6)での定義と同一であり、P、J1及びJ2は、構造式(9)での定義と同一である。
【0100】
特に、前記構造式(10)及び構造式(11)において、親水性物質は、CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の3’末端に結合された形態であることが好ましく、この場合、前記構造式(9)~構造式(11)は、次の構造式(12)~構造式(14)の形態を有することができる。
【0101】
P-J1-J2-A-X-3’S 5’-Y-B
AS 構造式(12)
P-J1-J2-(A’m-J)n-X-3’S 5’-Y-B
AS 構造式(13)
P-J1-J2-(J-A’m)n-X-3’S 5’-Y-B
AS 構造式(14)
【0102】
前記構造式(12)~構造式(14)において、X、R、Y、B、A、A’、J、m、n、P、J1及びJ2は、前記構造式(9)~構造式(11)での定義と同一であり、5’及び3’は、CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’末端及び3’末端を意味する。
【0103】
本発明で導入され得るアミン基としては、1次~3次アミン基が使用可能であり、1次アミン基が使用されることが特に好ましい。前記導入されたアミン基は、アミン塩としても存在し得るが、例えば、1次アミン基の塩はNH3+の形態で存在し得る。
【0104】
また、本発明で導入され得るポリヒスチジングループは、3個~10個のヒスチジンを含むことが好ましく、特に好ましくは5個~8個、最も好ましくは6個のヒスチジンを含むことができる。さらに、ヒスチジン以外に、一つ以上のシステインが含まれ得る。
【0105】
一方、本発明に係るCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及びこれから形成されたナノ粒子にターゲッティングモイエティが備えられる場合、ターゲット細胞への伝達を効率的に促進し、比較的低い濃度の投与量でもターゲット細胞に伝達され、高いターゲット遺伝子発現調節機能を示すことができ、他の臓器及び細胞への非特異的なCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドの伝達を防止することができる。
【0106】
これによって、本発明は、前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)による構造体に、リガンド(L)、特に、受容体媒介内包作用(receptor-mediated endocytosis、RME)を通じてターゲット細胞内在化(internalization)を増進させる受容体と特異的に結合するという特性を有するリガンドがさらに結合された二重鎖オリゴRNA構造体を提供し、例えば、構造式(1)による二重鎖オリゴRNA構造体にリガンドが結合された形態は、下記の構造式(15)のような構造を有する。
【0107】
(Li-Z)-A-X-R-Y-B 構造式(15)
【0108】
前記構造式(15)において、A、B、X及びYは、前記構造式(1)での定義と同一であり、Lは、受容体媒介内包作用(receptor-mediated endocytosis、RME)を通じてターゲット細胞内在化(internalization)を増進させる受容体と特異的に結合するという特性を有するリガンドを意味し、iは、1~5の整数、好ましくは1~3の整数である。
【0109】
前記構造式(15)でのリガンドは、好ましくは、ターゲット細胞特異的に細胞内在化(internalization)を増進させるRME特性を有するターゲット受容体特異的抗体、アプタマー及びペプチド;又は葉酸塩(Folate)(一般に、葉酸塩(folate)と葉酸(folic acid)は交互に使用されており、本発明での葉酸塩は、自然状態又は人体で活性化状態である葉酸塩を意味する。)、N-アセチルガラクトサミン(N-acetyl Galactosamine、NAG)などのヘキソアミン(hexoamine)、ブドウ糖(glucose)、マンノース(mannose)を初めとした糖や炭水化物(carbohydrate)などの化学物質などから選ばれ得るが、これに限定されるのではない。
【0110】
また、前記構造式(15)での親水性物質Aは、構造式(5)及び構造式(6)による親水性物質ブロックの形態で使用され得る。
【0111】
本発明の更に他の様態として、本発明は、CTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する方法を提供する。
【0112】
本発明に係るCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する過程は、例えば、
(1)固形支持体(solid support)を基盤にして親水性物質を結合させる段階;
(2)前記親水性物質が結合された固形支持体を基盤にしてオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(3)前記オリゴヌクレオチド単一鎖5’末端に疎水性物質を共有結合させる段階;
(4)前記オリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(5)合成が完了すると、固形支持体からオリゴヌクレオチド-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド単一鎖を分離・精製する段階;及び
(6)製造されたオリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖のアニーリングを通じて二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する段階;を含んで構成され得る。
【0113】
本発明での固形支持体(solid support)は、CPG(Controlled Pore Glass)であることが好ましいが、これに限定されるのではなく、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)シリカゲル、セルロースペーパーなどが使用され得る。CPGの場合、直径は40μm~180μmであることが好ましく、500Å~3000Åの空隙サイズを有することが好ましい。前記段階(5)以後、製造が完了すると、精製されたRNA-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド単一鎖に対しては、MALDI-TOF質量分析計で分子量を測定し、目的とするオリゴヌクレオチド-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド単一鎖が製造されたかどうかを確認することができる。前記製造方法において、(2)段階で合成されたオリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階(4)は、(1)段階以前又は(1)段階~(5)段階のうちいずれか一つの過程中に行われても構わない。
【0114】
また、(2)段階で合成されたオリゴヌクレオチド単一鎖と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチド単一鎖は、5’末端にリン酸基が結合された形態で用いられたことを特徴とする。
【0115】
一方、本発明のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体に追加的にリガンドが結合された二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の製造方法を提供する。
【0116】
リガンドが結合されたCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する方法は、例えば、
(1)官能基が結合されている固形支持体に親水性物質を結合させる段階;
(2)官能基-親水性物質が結合されている固形支持体を基盤にしてオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(3)前記オリゴヌクレオチド単一鎖の5’末端に疎水性物質を共有結合させる過程で合成する段階;
(4)前記オリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(5)合成が完了すると、固形支持体から官能基-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を分離する段階;
(6)前記官能基を用いて親水性物質の末端にリガンドを結合することによってリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体単一鎖を製造する段階;及び
(7)製造されたリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖のアニーリングを通じてリガンド-二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する段階;
を含んで構成され得る。
【0117】
前記(6)段階以後、製造が完了すると、リガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を分離・精製した後、MALDI-TOF質量分析計で分子量を測定し、目的とするリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的なオリゴヌクレオチドが製造されたかどうかを確認することができる。製造されたリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖のアニーリングを通じてリガンド-二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造することができる。前記製造方法において、(3)段階で合成されたオリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階(4)は、独立的な合成過程であり、(1)段階以前又は(1)段階~(6)段階のうちいずれか一つの過程中に行われても構わない。
【0118】
本発明は、更に他の観点において、本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子に関するものである。本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチド構造体の場合、疎水性物質の疎水性相互作用によって自己集合ナノ粒子を形成するようになるが(大韓民国登録特許公報第1224828号)、このようなナノ粒子は、体内への伝達効率及び体内での安定性に極めて優れるだけでなく、粒子サイズの均一性に優れ、QC(Quality Control)が容易であるので、薬物としての製造工程が簡単である。
【0119】
本発明において、前記ナノ粒子は、互いに異なる配列を含む二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体が混合されて構成されることを特徴とすることができ、例えば、前記ナノ粒子は、配列番号1、2、10及び15から選ばれるいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む一種類のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含み得るが、更に他の様態として、配列番号1、2、10及び15から選ばれるいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む互いに異なる種類のCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを共に含むことができ、本発明で開示していないCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを共に含むこともできる。
【0120】
本発明は、他の観点において、本発明に係る二重鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド構造体又はナノ粒子を有効成分として含有する線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0121】
本発明に係る線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物は、結合組織再形成(tissue remodeling)、特に、肺動脈再形成(pulmonary artery remodeling)及び気道再形成(airway remodeling)を抑制し、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療において効果を示す。
【0122】
本発明において、呼吸器疾患は、慢性閉塞性疾患(COPD)、喘息、急・慢性気管支炎、アレルギー鼻炎、鎮咳去痰、気管支炎、細気管支炎、咽喉炎、扁桃炎又は喉頭炎であることを特徴とすることができ、線維症は、特発性肺線維症(IPF)、肝線維症(liver fibrosis)、肝硬変(cirrhosis)、骨髓線維症(myelofibrosis)、心筋線維症(myocardial fibrosis)、腎線維症(renal fibrosis)、ケロイド(keloid)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、心臓線維症(cardiac fibrosis)、放射線線維症(radiation-induced fibrosis)などから選ばれることを特徴とすることができるが、これに限定されるのではない。本発明において、前記放射線線維症は、癌、腫瘍などの治療のためによく使用される放射線療法によって頻繁に誘発される副作用であり、放射線線維症侯群(radiation fibrosis syndrom、RFS)と混用され得る。
【0123】
本発明の組成物は、投与のために、前記記載した有効成分以外に、薬剤学的に許容可能な担体を1種以上さらに含んで製造され得る。薬剤学的に許容可能な担体は、本発明の有効成分と両立可能でなければならなく、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち一つの成分又は二つ以上の成分を混合して使用することができ、必要によって抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形に製剤化することができ、特に、凍結乾燥(lyophilized)された形態の剤形に製剤化して提供することが好ましい。凍結乾燥剤形の製造のために、本発明の属する技術分野で通常的に知られている方法が使用可能であり、凍結乾燥のための安定化剤が追加されてもよい。さらに、当分野の適正な方法又はレミントン薬科学(Remington’s pharmaceutical Science,Mack Publishing company,Easton PA)に開示されている方法を用いて各疾病又は成分によって好ましく製剤化することができる。
【0124】
本発明の組成物は、通常の患者の症侯及び疾病の深刻度に基づいて本技術分野の通常の専門家が決定することができる。また、本発明の組成物は、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、軟膏剤、シロップ剤などの多様な形態に製剤化することができ、単位-投与量又は多-投与量容器、例えば、密封されたアンプル及び瓶などに提供されてもよい。
【0125】
本発明の組成物は、経口又は非経口投与が可能である。本発明に係る組成物の投与経路は、これらに限定されるのではないが、例えば、口腔、吸入用、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、腸管、舌下又は局所投与が可能である。特に、呼吸器疾患の治療のために、気管支内点滴注入を通じた肺への投与も可能である。本発明に係る組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、方法、排泄率又は疾病の重症度などによってその範囲が多様であり、本技術分野の通常の専門家が容易に決定することができる。また、臨床投与のために、公知の技術を用いて本発明の組成物を適切な剤形に製剤化することができる。
【0126】
本発明は、他の観点において、本発明に係る医薬組成物を含む凍結乾燥された形態の剤形に関するものである。
【0127】
本発明は、他の観点において、本発明に係る線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療用医薬組成物を、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与する段階を含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療方法に関するものである。
【0128】
本発明において、呼吸器疾患は、慢性閉塞性疾患(COPD)、喘息、急・慢性気管支炎、アレルギー鼻炎、鎮咳去痰、気管支炎、細気管支炎、咽喉炎、扁桃炎又は喉頭炎であることを特徴とすることができ、線維症は、特発性肺線維症(IPF)、肝硬変(cirrhosis)、骨髓線維症(myelofibrosis)、心筋線維症(myocardial fibrosis)、腎線維症(renal fibrosis)、ケロイド(keloid)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、心臓線維症(cardiac fibrosis)、肝線維症(liver fibrosis)、又は放射線線維症(radiation-induced fibrosis)であることを特徴とすることができるが、これに限定されるのではない。
【0129】
本発明は、更に他の観点において、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療に使用するための前記二重鎖オリゴヌクレオチド、これを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子の用途に関するものである。
【0130】
本発明は、更に他の観点において、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療に使用するための前記薬学的組成物の用途に関するものである。
【0131】
本発明は、更に他の観点において、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療に使用するための二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体、及び前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子の用途に関するものである。
【0132】
本発明は、更に他の観点において、前記二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及び/又は前記ナノ粒子を、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与する段階を含む線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療方法に関するものである。
【0133】
本発明は、更に他の観点において、線維症又は呼吸器疾患の予防又は治療のための薬物の製造のための前記二重鎖オリゴヌクレオチド、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体、及び前記二重鎖オリゴヌクレオチド又は前記二重鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子の用途に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【
図1】ヒトCTGFをターゲットにする1,162個のSAMiRNAスクリーニングの結果であり、実施例3のCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示す図である。
【0135】
【
図2】実施例4のCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示した図であり、本発明の配列番号1、2、10、15の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを異なる濃度で(50nM、100nM、200nM、500nM、1000nM)肺癌細胞株であるA549に処理し、CTGF mRNAの相対的な発現量(%)を示したグラフである。
【0136】
【
図3】実施例4のCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示した図であり、本発明の配列番号10の配列をセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度別に肺癌細胞株であるA549に処理したとき、CTGF mRNAの相対的な発現量(%)を分析し、SAMiRNAのIC
50値を確認したグラフである。
【0137】
【
図4】実施例4のCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示した図であり、本発明の配列番号10及びRxi-109の配列をセンス鎖として有するSAMiRNAを処理したとき、CTGF mRNAの相対的な発現量(%)を分析し、SAMiRNAのIC
50値を比較分析したグラフである。
【0138】
【
図5】実施例5のCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示した図であり、選別されたCTGF特異的SAMiRNAを含む二重鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドによるCTGF mRNAの相対的な発現量(%)を比較した分析結果である。本発明の配列番号10の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを異なる濃度で(200nM又は600nM)肺癌細胞株であるA549に処理し、CTGF mRNAの相対的な発現量(%)を比較して示したグラフである。
【0139】
【
図6】ラットCTGFをターゲットにする94個のSAMiRNAスクリーニングの結果及びそのうち選別された12個の候補配列の効果を示す図である。
【0140】
【
図7】実施例6のラットCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示した図であり、本発明の配列番号46、47、48の配列を含む選別された12個の候補配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを異なる濃度で(200nM又は500nM)ラット肝癌細胞株であるH4-II-Eに処理し、ratCTGF mRNAの相対的な発現量(%)を示したグラフである。
【0141】
【
図8】実施例6のラットCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示した図であり、本発明の配列番号46、47、48の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを異なる濃度で(25nM、50nM、100nM、200nM、400nM、800nM)ラット肝癌細胞株であるH4-II-Eに処理し、ratCTGF mRNAの相対的な発現量(%)を分析し、SAMiRNAのIC
50値を確認したグラフである。
【0142】
【
図9】実施例6のratCTGF mRNA発現量の定量分析結果を示した図であり、選別されたratCTGF特異的SAMiRNAを含む二重鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドによるratCTGF mRNAの相対的な発現量(%)を比較した分析結果である。本発明の配列番号46、47、48の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを異なる濃度で(200nM又は600nM)肝癌細胞株であるH4-II-Eに処理し、ratCTGF mRNAの相対的な発現量(%)を比較して示したグラフである。
【0143】
【
図10】実施例7の創傷誘発ケロイドモデルのネズミに、皮内投与法によってSAMiRNA-rCTGF(D/R)#46及びSAMiRNA-rCTGF(R/R)#46 1200μgを投与した後、皮膚組織リアルタイムPCR分析結果及びターゲット遺伝子CTGF mRNAの相対的な発現量(%)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0144】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎなく、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは、当該技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されると言える。
【0145】
本発明では、CTGFの発現を阻害できる最終の一つの特異的な配列を同定し、これらがCTGFを暗号化するmRNAと相補的に結合し、CTGFの発現を効果的に抑制することによって、線維症及び呼吸器疾患関連疾患を効果的に治療できることを確認した。
【0146】
実施例1.CTGFをターゲットにするSAMiRNAスクリーニングのためのアルゴリズム及び候補配列選定
【0147】
SAMiRNAベースの治療剤高速大量スクリーニング(SAMiRNA based drug high-throughput screening)は、mRNA全体に対して1-塩基(1-base)又は2-塩基(2-base)スライディングウィンドウアルゴリズム(sliding window algorithm)を適用することによって可能な全ての候補配列を生成し、相同性フィルタリング(homology filtering)を進行することによって不必要な候補配列を除去し、最終的に選別された全てのSAMiRNAに対して該当の遺伝子発現阻害程度を確認する方法である。
【0148】
まず、CTGFに対するSAMiRNA候補配列に対するデザイン過程は、ヒトCTGF mRNAであるNM_001901.2(2,358bp)に対して2-塩基スライディングウィンドウアルゴリズム(2-base sliding window algorithm)を適用することによって、19個の塩基で構成された1,162個のSAMiRNA候補配列を最終的に選別し、CTGF阻害程度の実験を行った。
【0149】
実施例2.二重鎖オリゴRNA構造体の合成
【0150】
本発明で製造された二重鎖オリゴRNA構造体(SAMiRNA)は、下記の構造式のような構造を有する。
【0151】
C24-5’S 3’-(ヘキサエチレングリコール-PO4
-)3-ヘキサエチレングリコール
AS 5’-PO4
【0152】
monoSAMiRNA(n=4)二重鎖オリゴ構造体のセンス鎖は、3,4,6-トリアセチル-1-ヘキサ(エチレングリコール)-N-アセチルガラクトサミン-CPG(1-Hexa(Ethylene Glycol)-N-Acetyl Galactosamine-CPGを支持体とし、親水性物質単量体であるDMTヘキサエチレングリコールホスホロアミダート(Demethoxytrityl hexaethylene glycol phosphoramidate)3個を前記反応を通じて連続的に結合し、RNA又はDNA合成を進行した後、追加的に5’末端部位に疎水性物質であるジスルフィド結合が含まれているC24(C6-S-S-C18)を結合させ、3’末端にNAG-ヘキサエチレングリコール-(-PO3
-ヘキサエチレングリコール)3が結合されており、5’末端にC24(C6-S-S-C18)が結合されているmonoSAMiRNA(n=4)のセンス鎖を製造した。
【0153】
合成が完了すると、60℃の温湯器(water bath)で28%(v/v)アンモニア(ammonia)を処理し、合成されたRNA単一鎖及びオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体をCPGから剥ぎ取った後、脱保護(deprotection)反応を通じて保護残基を除去した。保護残基が除去されたRNA単一鎖及びオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体は、70℃のオーブンでN-メチルピロリドン(N-methylpyrolidon)、トリエチルアミン(triethylamine)及びトリエチルアミントリヒドロフルオライド(triethylaminetrihydrofluoride)を体積比10:3:4の比率で処理することによって2’-ジメチルシリルを除去した。前記各反応物から高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)でRNA単一鎖、オリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体及びリガンドが結合されたオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体を分離し、MALDI-TOF質量分析計(MALDI TOF-MS、SHIMADZU、日本)で分子量を測定し、合成しようとする塩基配列及びオリゴ-高分子構造体に符合するかどうかを確認した。その後、それぞれの二重鎖オリゴ構造体を製造するためにセンス鎖とアンチセンス鎖を同量混合し、1Xアニーリングバッファー(30mM HEPES、100mM酢酸カリウム(Potassium acetate)、2mM酢酸マグネシウム(Magnesium acetate)、pH7.0)に入れ、90℃恒温水槽で3分反応させた後、再度37℃で反応させ、目的とするSAMiRNAを製造した。製造された二重鎖オリゴRNA構造体のアニーリングは、電気泳動を通じて確認した。
【0154】
実施例3.ヒト(Human)CTGFをターゲットにしてRNAiを誘導するSAMiRNAナノ粒子の高速大量スクリーニング(HTS)
【0155】
3.1 SAMiRNAナノ粒子の製造
【0156】
実施例2で合成されたCTGF配列をターゲットにする1,162種のSAMiRNAを1XDPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)(WELGENE、KR)に溶かし、凍結乾燥機(LGJ-100F、CN)で5日間凍結乾燥した。凍結乾燥されたナノ粒子パウダーを脱塩蒸留水(deionized distilled water(Bioneer、KR))1,429mlに溶かして均質化し、これを本発明のための実験に使用した。
【0157】
3.2 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
【0158】
CTGFの発現を抑制するSAMiRNA発掘のためにヒト由来乳癌細胞株であるMDA-MB231を用いており、MDA-MB231細胞株は、10%ウシ胎児血清(Hyclone、US)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Hyclone、US)が含まれたGibcoTMRPMI 1640培地(Thermo、US)を用いて37℃及び5%CO2の条件で培養した。上記と同一の培地を用いてMDA-MB231細胞株を96-ウェルプレート(Costar、US)に2X104cells/wellの条件で分注し、翌日に前記実施例3.1において脱塩蒸留水(deionized distilled water)で均質化したSAMiRNAを1XDPBSで希釈し、細胞に200nM又は600nMの濃度になるように処理した。SAMiRNAの処理は、12時間ごとに1回ずつ処理する条件で合計4回行い、37℃及び5%CO2の条件で培養した。
【0159】
3.3 CTGF mRNA発現抑制効能分析を通じたSAMiRNAスクリーニング
【0160】
実施例3-2においてSAMiRNA処理された細胞株から全体のRNAを抽出することによってcDNAを製造した後、リアルタイムPCR(real-time PCR)を用いてCTGF遺伝子のmRNA発現量を相対定量した。
【0161】
CTGF遺伝子のmRNA発現量分析のために、AccuPower(登録商標) Dual-HotStart RT-qPCRキット(Bioneer、Korea)の各ウェルにCTGF正方向プライマー300nM、CTGF逆方向プライマー300nM、CTGFプローブ300nM、RPL13A正方向プライマー200nM、RPL13A逆方向プライマー200nM、RPL13Aプローブ300nM、TBP正方向プライマー400nM、TBP逆方向プライマー400nM、TBPプローブ300nMが追加されて乾燥・製造された(表2)。製造されたキットの性能は、A549細胞の全体のRNAを用いて検量曲線を作成し、PCR増幅効率(表3)に基づいて判定した。RT-qPCRは、95℃ 10分(95℃ 5秒、58℃ 15秒)x45サイクルの条件で反応し、各サイクルごとに蛍光値が検出されるプロトコルを使用した。
【0162】
SAMiRNA処理された96-ウェルプレート(Costar、US)は、全体のRNA抽出からRT-qPCRまで自動化装備であるExiStation HTTM(韓国)にHT DNA/RNA抽出キット(Bioneer、Korea)と、CTGF遺伝子のmRNA定量分析のためのプライマー及びプローブを含んで別途に製造されたAccuPower(登録商標) Dual-HotStart RT-qPCRキット(Bioneer、Korea)とを使用し、自動化プログラムによって全体のRNA抽出及びワンステップRT-qPCRが行われた。
【0163】
qPCRアレイ後に導出される二つの遺伝子のCt値に基づいて、2(-Delta Delta C(T))Method[Livak KJ,Schmittgen TD.2001.Analysis of relative gene expression data using real-time quantitative PCR and the 2(-Delta Delta C(T))Method.Methods.Dec;25(4):402-8]を通じて相対定量分析を行うことによって、対照群に比べて実験群であるCTGF遺伝子のmRNAの相対的な量(%)を計算した。
【0164】
【0165】
【0166】
実施例4.ヒト(Human)CTGFをターゲットにしてRNAiを誘導するSAMiRNAナノ粒子スクリーニング
【0167】
高効率のSAMiRNAを選別するために、対照群に比べて、200nM又は600nMの最終濃度でのCTGF mRNA発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、減少効率が>60%以上である16種の配列(合計49種のSAMiRNA-hCTGFに対する2次スクリーニング結果)を肺癌細胞株であるA549細胞株で500nM及び1000nMの濃度で処理して行った。該当のSAMiRNAの配列情報は、下記の表4の通りである。
【0168】
その後、Rxi-109(Sense:5’-GCACCUUUCUA*G*A-chol-3’(配列番号57)13mer/AS:5’-phosphate-UCUAGAAAGGUGC*A*A*A*C*A*U-3’(配列番号58)19mer/ボールド体=2’OME/下線=2’F/星印=ホスホロチオエート/chol=cholesterol)(WO2009/102427参照)に比べてIC50を確認するために低濃度まで処理した後、発現量の減少効果(Knock-down)確認実験を進行するために、最も強力な配列8種に対する3次スクリーニングを肺癌細胞株であるA549細胞株で50nM、100nM、200nM、500nM、1000nMの濃度で処理して行った。その結果、配列番号1、2、10、15の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAの4種を選別した。
【0169】
図1に示したように、CTGFを標的にする1,162種のSAMiRNAから、CTGF遺伝子発現を最も効果的に抑制するSAMiRNAの4種を最終的に選別(
図2)した。
【0170】
【0171】
実施例3で選別された配列番号1、2、10、15の配列を、それぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを用いて肺癌細胞株であるA549に処理し、前記細胞株でCTGF mRNAの発現様相を分析した。
【0172】
4.1 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
【0173】
CTGFの発現を抑制するSAMiRNA発掘のためにヒト由来肺癌細胞株であるA549(ATCC(登録商標) CCL-185TM、Manassas、VA)を用いており、A549細胞株は、10%ウシ胎児血清(Hyclone、US)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Hyclone、US)が含まれたGibcoTMF-12K(Kaighn’s)培地(Thermo、US)を用いて37℃及び5%CO2の条件で培養した。上記と同一の培地を用いてA549細胞株を12-ウェルプレート(Costar、US)に8X104cells/wellの条件で分注し、翌日に前記実施例3.1において脱塩蒸留水(deionized distilled water)で均質化したSAMiRNAを1XDPBSで希釈し、細胞に50nM、100nM、200nM、500nM、1000nMの濃度になるように処理した。SAMiRNAの処理は、12時間ごとに1回ずつ処理する条件で合計4回行い、37℃及び5%CO2の条件で培養した。
【0174】
4.2 ヒト(Human)CTGF mRNA発現抑制効能分析を通じたSAMiRNAスクリーニング
【0175】
実施例4-1でSAMiRNA処理された細胞株から全体のRNAを抽出することによってcDNAを製造した後、リアルタイムPCR(real-time PCR)を用いてCTGF遺伝子のmRNA発現量を相対定量した。
【0176】
4-2-1 SAMiRNA処理された細胞からRNA分離及びcDNA製造
【0177】
RNA抽出キット(AccuPrep Cell total RNA extraction kit、BIONEER、韓国)を用いて、前記実施例4-1でSAMiRNA処理された細胞株から全体のRNAを抽出し、抽出されたRNAは、RNA逆転写酵素(AccuPower(登録商標) RocketScriptTMCycle RT Premix with oligo(dT)20、Bioneer、韓国)を用いて、下記のような方法でcDNAに製造した。具体的に、0.25mlのエペンドルプチューブに入っているAccuPower(登録商標) RocketScriptTMRT Premix with oligo(dT)20(Bioneer、韓国)に、一つのチューブ当たりに抽出された1μgずつのRNAを入れ、総体積が20μlになるようにDEPC(diethyl pyrocarbonate)処理された蒸留水を添加した。これに、遺伝子増幅器(MyGenieTMGradient Thermal Block、BIONEER、韓国)で37℃で30秒間RNAとプライマーを混成化し、48℃で4分間cDNAを製造する二つの過程を12回繰り返した後、95℃で5分間酵素を不活性化させることによって増幅反応を終了した。
【0178】
4-2-2 ヒト(Human)CTGF mRNAの相対定量分析
【0179】
実施例4-2-1で製造されたcDNAを鋳型にし、SYBRグリーン方式のリアルタイムqPCRを通じて、SAMiRNAコントロールサンプルに比べてCTGF mRNAの相対的発現率を下記のような方法で分析した。96-ウェルプレートの各ウェルに前記実施例4-2-1で製造されたcDNAを蒸留水で5倍希釈し、CTGF mRNA発現量分析のために希釈されたcDNA 3μl、AccuPower(登録商標)GreenStarTM(韓国)25μl、蒸留水19μl、及びCTGF qPCRプライマー(配列番号7及び8(表5);それぞれ10pmole/μl、BIONEER、韓国)3μlを入れることによって混合液を製造した。一方、CTGF mRNAの発現量を正規化するために、ハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene、以下、HK遺伝子)であるGAPDH(Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase)を標準遺伝子にした。前記混合液が入っている96-ウェルプレートに対して、ExicyclerTMReal-Time Quantitative Thermal Block(BIONEER、韓国)を用いて下記のような反応を行った:95℃で15分間反応することによって酵素を活性化し、cDNAの二次構造をなくした後、94℃での30秒変性(denaturing)、58℃での30秒アニーリング(annealing)、72℃での30秒延長(extension)、及びSYBRグリーンスキャン(SYBR green scan)の4個の過程を42回繰り返して行い、72℃で3分間最終延長を行った後、55℃で1分間温度を維持し、55℃から95℃までのメルティングカーブ(melting curve)を分析した。
【0180】
PCRが終了した後、それぞれ収得したターゲット遺伝子のCt(threshold cycle)値としては、GAPDH遺伝子を通じて補正されたターゲット遺伝子のCt値を求めた後、遺伝子発現阻害を起こさないコントロール配列であるSAMiRNA(SAMiCONT)(Sense:5’-CUUACGCUGAGUACUUCGA-3’(19mer)(配列番号59)、Antisense:5’-UCGAAGUACUCAGCGUAAG-3’(19mer)(配列番号60))が処理された実験群を対照群にしてΔCt値の差を求めた。前記ΔCt値と計算式2(-ΔCt×100)を用いてCTGF特異的SAMiRNAが処理された細胞のターゲット遺伝子の発現量を相対定量した。
【0181】
高効率のSAMiRNAを選別するために、対照群に比べて、50nM、100nM、200nM、500nM、1000nMの最終濃度でCTGF mRNA発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、配列番号10の配列をセンス鎖として有するSAMiRNA#10を最終的に選別した。
【0182】
図3に示したように、CTGFを標的にする8種のSAMiRNAから、CTGF遺伝子発現を最も効果的に抑制するSAMiRNA#10を最終的に選別し、前記細胞株でCTGF mRNAの発現様相を分析することによってSAMiRNAのIC
50値を確認した。該当のSAMiRNAの配列情報は、下記の表6の通りである。
【0183】
その結果、配列番号10の配列をセンス鎖として有するCTGF特異的SAMiRNAは、いずれも50nMの低濃度でも50%以上のCTGF mRNA発現量の減少を示し、非常に高効率でCTGF発現を阻害する効果を示すことを確認した。IC
50は、配列番号10の配列をセンス鎖として有するCTGF特異的SAMiRNAの場合、
図4に示したように30.75nMであると確認され、最も効果的にCTGF遺伝子発現を阻害する効果を示すことを確認し、Rxi-109 IC
50に比べても相対的にさらに優れた効果を確認した。
【0184】
【0185】
【0186】
実施例5.選別された配列番号10の配列をセンス鎖として含むDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドSAMiRNAによるヒト(Human)CTGFの発現抑制比較分析
【0187】
実施例4で選別された配列番号10の配列をセンス鎖として有するCTGF特異的SAMiRNAを含む二重鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドを用いて肺癌細胞株であるA549に処理し、前記細胞株でCTGF mRNAの相対的な発現量(%)を比較・分析した。
【0188】
5.1 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
【0189】
CTGFの発現を抑制するSAMiRNA発掘のためにヒト由来肺癌細胞株であるA549を用いており、A549細胞株は、10%ウシ胎児血清(Hyclone、US)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Hyclone、US)が含まれたGibcoTMF-12K(Kaighn’s)培地(Thermo、US)を用いて37℃及び5%CO2の条件で培養した。上記と同一の培地を用いてA549細胞株を12-ウェルプレート(Costar、US)に8X104cells/wellの条件で分注し、翌日に前記実施例3.1において脱塩蒸留水(deionized distilled water)で均質化したSAMiRNAを1XDPBSで希釈し、細胞に200nM又は600nMになるように処理した。SAMiRNAの処理は、12時間ごとに1回ずつ処理する条件で合計4回行い、37℃及び5%CO2の条件で培養した。
【0190】
5.2 ヒト(Human)CTGF mRNA発現抑制効能分析を通じたSAMiRNAスクリーニング
【0191】
実施例5-1でSAMiRNA処理された細胞株から全体のRNAを抽出することによってcDNAを製造した後、リアルタイムPCR(real-time PCR)を用いてCTGF遺伝子のmRNA発現量を相対定量した。
【0192】
5-2-1 SAMiRNA処理された細胞からRNA分離及びcDNA製造
【0193】
RNA抽出キット(AccuPrep Cell total RNA extraction kit、BIONEER、韓国)を用いて、前記実施例5-1でSAMiRNA処理された細胞株から全体のRNAを抽出し、抽出されたRNAは、RNA逆転写酵素(AccuPower(登録商標)RocketScriptTMoligo(dT)20、Bioneer、韓国)を用いて、下記のような方法でcDNAに製造した。具体的に、0.25mlのエペンドルプチューブに入っているAccuPower(登録商標)RocketScriptTM(韓国)に一つのチューブ当たりに抽出された1μgずつのRNAを入れ、総体積が20μlになるようにDEPC(diethyl pyrocarbonate)処理された蒸留水を添加した。これに、遺伝子増幅器(MyGenieTMGradient Thermal Block、BIONEER、韓国)で37℃で30秒間RNAとプライマーを混成化し、48℃で4分間cDNAを製造する二つの過程を12回繰り返した後、95℃で5分間酵素を不活性化させることによって増幅反応を終了した。
【0194】
5-2-2 ヒト(Human)CTGF mRNAの相対定量分析
【0195】
実施例5-2-1で製造されたcDNAを鋳型にし、SYBRグリーン方式のリアルタイムqPCRを通じて、SAMiRNAコントロールサンプルに比べてCTGF mRNAの相対的発現率を下記のような方法で分析した。96-ウェルプレートの各ウェルに前記実施例5-2-1で製造されたcDNAを蒸留水で5倍希釈し、CTGF mRNA発現量分析のために希釈されたcDNA 3μl、AccuPower(登録商標)TM(韓国)25μl、蒸留水19μl、及びCTGF qPCRプライマー(配列番号44及び45(表5);それぞれ10pmole/μl、BIONEER、韓国)3μlを入れることによって混合液を製造した。一方、CTGF mRNAの発現量を正規化するために、ハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene、以下、HK遺伝子)であるGAPDH(Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase)を標準遺伝子にした。前記混合液が入った96-ウェルプレートに対して、ExicyclerTMQuantitative Thermal Block(BIONEER、韓国)を用いて下記のような反応を行った:95℃で15分間反応することによって酵素を活性化し、cDNAの二次構造をなくした後、94℃での30秒変性(denaturing)、58℃での30秒アニーリング(annealing)、72℃での30秒延長(extension)、及びSYBRグリーンスキャン(SYBR green scan)の4個の過程を42回繰り返して行い、72℃で3分間最終延長を行った後、55℃で1分間温度を維持し、55℃から95℃までのメルティングカーブ(melting curve)を分析した。
【0196】
PCRが終了した後、それぞれ収得したターゲット遺伝子のCt(threshold cycle)値としては、GAPDH遺伝子を通じて補正されたターゲット遺伝子のCt値を求めた後、遺伝子発現阻害を起こさないコントロール配列であるSAMiRNA(SAMiCONT)が処理された実験群を対照群にしてΔ値の差を求めた。前記Δ値と計算式2(-Δ×100)を用いてCTGF特異的SAMiRNAが処理された細胞のターゲット遺伝子の発現量を相対定量した。
【0197】
二重鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドのうち高効率のSAMiRNAを選別するために、対照群に比べて、200nM、600nMの最終濃度でCTGF mRNA発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、配列番号10のDNA配列をセンス鎖として有するDNA/RNAハイブリッドであるSAMiRNAを最終的に選別した。
【0198】
図5に示したように、最終的に選別されたCTGF特異的SAMiRNAを含む二重鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドから、CTGF遺伝子発現を最も効果的に抑制するDNA/RNAハイブリッドSAMiRNA#10を最終的に選別した。
【0199】
実施例6.ラット(Rat)CTGFをターゲットにしてRNAiを誘導するSAMiRNAナノ粒子のスクリーニング
【0200】
siRNA治療剤の場合、互いに異なる種(Strain)に共通的に適用可能な最適な配列の発掘が難しい。この場合、治療効果を分析する動物モデル(in vivo efficacy test確認)特異的なsiRNA配列(surrogate sequence;mouse gene-specific siRNA)をデザインし、該当の遺伝子の発現阻害による薬剤学的効能(pharmacologically active)及び該当の遺伝子発現阻害による毒性部分を検証するように米FDAガイドラインが存在する(presentation by Robert T.Dorsam Ph.D.Pharmacology/Toxicology Reviewer、FDA/CDER)。
【0201】
既存のアルゴリズム基盤のsiRNAデザインプログラム(自社が保有したTurbo-si-designer)を通じてSAMiRNA基盤の配列発掘を進行した。ラットCTGF遺伝子(NM_022266.2)フルスクリプト配列を対象にして合計94個の候補siRNA配列を生成し、該当のSAMiRNAを合成した後、ラット肝癌由来H4-II-E細胞株に10%FBSが存在する細胞培養条件で500nMの濃度で処理し、in vitro発現阻害効果を表8(qPCR用プライマー配列情報)のプライマーを用いて1次スクリーニングした。(
図6)
【0202】
高効率のSAMiRNAを選別するために、対照群に比べて、500nMの最終濃度でratCTGF mRNA発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、減少効率が>60%以上である12種の配列(合計94種のSAMiRNA-ratCTGF)に対する2次スクリーニングをラット肝癌細胞株であるH4-II-E細胞株で200nM、500nMの濃度で処理して行った。その結果、配列番号46、47、48の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAの3種を選別した。
【0203】
図6に示したように、ratCTGFを標的にする94種のSAMiRNAから、ratCTGF遺伝子発現を最も効果的に抑制するSAMiRNAの3種を最終的に選別(
図8)し、該当のSAMiRNAの配列情報は下記の表9の通りである。
【0204】
高効率のSAMiRNAを選別するために、対照群に比べて、25nM、50nM、100nM、200nM、400nM、800nMの最終濃度でratCTGF mRNA発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、配列番号46の配列をセンス鎖として有するSAMiRNA-ratCTGF #46を最終的に選別した。
【0205】
図8に示したように、IC
50は、配列番号46の配列をセンス鎖として有するratCTGF特異的SAMiRNAの場合、122.9nMであると確認され、最も効果的にratCTGF遺伝子発現を阻害する効果を示すことを確認した。
【0206】
また、
図9に示したように、最終的に選別されたratCTGF特異的SAMiRNAを含む二重鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドから、ratCTGF遺伝子発現を最も効果的に抑制するDNA/RNAハイブリッドSAMiRNA #46を最終的に選別した。
【0207】
【0208】
【0209】
実施例7.創傷誘発ケロイド性動物モデルにおける皮内投与法によるSAMiRNA-ratCTGFの効能検証
【0210】
8mmのバイオプシーパンチ(Biopsy punch、BP-80F、Kai、日本)で誘発した創傷に対して、SAMi-rCTGFの効能分析を実施した。実験のために、7週齢のラットを入手(SD Rat、Nara Biotech、江南、大韓民国)して1週間馴化させた。8mmのバイオプシーパンチを用いて背中皮膚に創傷を作った。陰性対照群に生理食塩液(PBS)を投与した群、実験群にSAMiRNA-rCTGF#46 DNA/RNA(D/R)を投与した群、実験群にSAMiRNA-rCTGF #46 RNA/RNA(R/R)を投与した群に、創傷を誘発する2日前及び創傷当日に1200μg/siteを皮内に合計2回投与した。創傷を誘発してから3日後にラットを犠牲させた。
【0211】
7-1.創傷誘発ケロイド性動物モデルにおけるSAMiRNAに対する遺伝子発現分析
【0212】
SAMiRNA処理されたネズミの皮膚組織を獲得し、液体窒素及び乳鉢を用いて1次粉砕した。粉砕された組織は、RNA抽出キット(AccuPrep Cell total RNA extraction kit、BIONEER、韓国)の溶解バッファーに入れた後、ホモジナイザーで2次粉砕した。その後、製造社のマニュアルに従って全体のRNAを抽出した。抽出されたRNAは、RNA逆転写酵素(AccuPower(登録商標)RocketScriptTMRT Premix with oligo(dT)20、Bioneer、韓国)を用いて、下記のような方法でcDNAに製造した。
【0213】
【0214】
製造されたcDNAを鋳型にし、SYBRグリーン方式のリアルタイムqPCRを通じて各群の全体のmRNAの相対的発現率を下記のような方法で分析した。96-ウェルプレートの各ウェルに製造されたcDNAを蒸留水で10倍希釈し、CTGF mRNA発現量分析のために希釈されたcDNA 10μl及びAccuPower(登録商標)GreenStarTM(韓国)25μl、蒸留水20μl、及びCTGF qPCRプライマー(それぞれ3pmole/μl、表11参照)5μlを入れることによって混合液を製造した。一方、CTGF、フィブロネクチン及びCol3α1 mRNAの発現量を正規化するためにハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene、以下、HK遺伝子)であるRPL13Aを標準遺伝子にした。qPCRが終了した後、それぞれ収得したターゲット遺伝子のCt(threshold cycle)値としては、RPL13A遺伝子を通じて補正されたターゲット遺伝子のΔCt値を求めた後、各群を対照群と比較することによってΔΔCt値を求めた。前記ΔΔCt値と計算式2(-ΔΔCt×100)を用いてCTGF、フィブロネクチン及びCol3α1遺伝子の発現量を相対定量した。
【0215】
【0216】
【0217】
その結果、CTGFの場合、創傷モデルに生理食塩液を処理した群に比べて、SAMiRNA-rCTGF(D/R)1200μgを処理した群で有意性のある減少効果を確認した。また、SAMiRNA-rCTGF(R/R)1200μgを処理した群に比べて、SAMiRNA-rCTGF(D/R)1200μgを処理した群で統計的に有意性のある減少効果を同時に確認した。
【0218】
すなわち、
図10に示したように、最終的に選別されたrCTGF特異的SAMiRNAを含む二重鎖オリゴRNA/RNAハイブリッドに比べて、DNA/RNAハイブリッドがCTGF遺伝子発現を最も効果的に抑制する様相を確認した。
【0219】
以上では、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界で通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は好ましい実施様態に過ぎなく、これによって本発明の範囲が制限されないことは明白であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明に係るCTGF特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを含む二重鎖オリゴヌクレオチド構造体及びこれを有効成分として含む医薬組成物は、副作用なしで高い効率でCTGFの発現を抑制することができ、過度な線維化による疾病及び呼吸器疾患の予防及び治療において優れた効果を達成することができる。
【配列表】