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特許7464713ナビゲーション手術システムおよびその登録方法、電子機器および支持装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ナビゲーション手術システムおよびその登録方法、電子機器および支持装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240402BHJP
   A61B 34/35 20160101ALN20240402BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/35
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022535039
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 CN2020095979
(87)【国際公開番号】W WO2021114595
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】201911252494.1
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522124758
【氏名又は名称】蘇州微創暢行機器人有限公司
【氏名又は名称原語表記】MICROPORT NAVIBOT (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Plant 3,No.151 Fengli Street, SIP Suzhou, Jiangsu 215000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】李 涛
(72)【発明者】
【氏名】何 超
(72)【発明者】
【氏名】程 武超
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0157887(US,A1)
【文献】特表2017-512551(JP,A)
【文献】特表2017-538452(JP,A)
【文献】国際公開第2019/219348(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0110839(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムと、前記ロボットシステムに通信可能に接続されたナビゲーションシステムと、を含み、前記ロボットシステムは、ロボットアームを含み、前記ナビゲーションシステムは、ナビゲーション追跡装置を含む、ナビゲーション手術システムであって、
前記ロボットシステムは、前記ロボットアーム上において構築されたロボットアームベース座標系を有し、前記ロボットアームベース座標系は、患者を支持する支持装置に対して相対位置が固定であり、
前記ナビゲーションシステムは、前記ナビゲーション追跡装置によって認識可能な基準座標系を有し、前記基準座標系は、前記支持装置に対して位置が固定されるように構築され、ここで、前記ナビゲーションシステムは、複数の光学マーカを含み、各前記光学マーカは前記ナビゲーション追跡装置によって認識および追跡可能であり、前記光学マーカの前記支持装置に対する位置は固定であり、前記ナビゲーションシステムは、複数の前記光学マーカに基づいて、前記支持装置に対する前記基準座標系の位置が固定されるように、前記支持装置に応じた前記基準座標系を構築でき、
前記ナビゲーション手術システムは、前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との位置関係、および前記基準座標系と前記支持装置との位置関係に基づいて、前記ロボットアームと前記ナビゲーション追跡装置との位置関係を取得でき、直接に前記ロボットアームと前記ナビゲーション追跡装置との位置合わせを実現でき、
前記ナビゲーション手術システムは、前記支持装置に対する位置が固定かつ既知のロボットアーム固定装置をさらに含み、前記ロボットアームは、前記ロボットアーム固定装置によって前記支持装置に固定され、前記ロボットアーム固定装置は、垂直に設けられたブラケットと水平に設けられたカンチレバーを含み、前記ブラケットの一端は前記支持装置に固定され、他端は前記カンチレバーの一端に接続され、前記カンチレバーの他端は前記ロボットアームに接続されている、ナビゲーション手術システム。
【請求項2】
前記ロボットアームは基部関節を有し、前記基部関節は支持装置に対して固定位置にあり、前記ロボットアームベース座標系は前記基部関節に設けられている、ことを特徴とする請求項に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項3】
前記ナビゲーション手術システムは、前記カンチレバーの長さおよび前記支持装置に対する前記カンチレバーの高さに基づいて、前記支持装置に対する前記ロボットアームベース座標系の位置を得るように構成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項4】
前記ナビゲーション手術システムは、手術用カートを含み、前記ロボットアームは、前記手術用カートに取り付けられ、前記手術用カートは、支持装置に対して固定位置にあり、前記ロボットアームは、基部関節を有し、前記基部関節は、前記手術用カートに対して固定位置にあり、前記ロボットアームベース座標系は前記基部関節に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項5】
前記基準座標系は、前記支持装置上または手術用カート上に設けられている、ことを特徴とする請求項に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項6】
前記ナビゲーション手術システムは、ナビゲーション支持アームを含み、前記ナビゲーション追跡装置は、前記ナビゲーション支持アームによって支持装置に固定され、前記ナビゲーション支持アームは、前記ナビゲーション支持アームの先端に取り付けられた前記ナビゲーション追跡装置を駆動して前記ナビゲーション追跡装置の位置および姿勢を調整できるように、複数の自由度を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項7】
前記ナビゲーション支持アームは、ナビゲーション基部関節を有し、前記ナビゲーション基部関節は、前記支持装置に対して固定位置にあり、前記基準座標系は、前記支持装置上または前記ナビゲーション基部関節に設けられている、ことを特徴とする請求項に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項8】
前記ナビゲーション手術システムは、手術対象を支持装置に固定する手術対象固定装置をさらに含み、前記手術対象は、前記支持装置に対して固定位置にあり、前記ナビゲーションシステムは、前記手術対象上に複数の特徴点をマーキングするターゲット部品をさらに含み、前記ナビゲーション手術システムは、複数の前記特徴点に基づき、ロボットアームに対する前記手術対象上のターゲット領域の位置を取得できる、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項9】
前記光学マーカは少なくとも3つあり、かつ、前記支持装置上に設けられている、ことを特徴とする請求項に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項10】
前記光学マーカは、球状反射マーカまたはステッカー型反射マーカである、ことを特徴とする請求項に記載のナビゲーション手術システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のナビゲーション手術システムに用いられる支持装置であって、患者を支持でき、前記支持装置には複数の位置決め装置が設けられ、前記複数の位置決め装置は、ナビゲーション追跡装置と通信可能に接続されている、ナビゲーション手術システムに用いられる支持装置。
【請求項12】
前記ナビゲーション手術システムに用いられる支持装置において、前記位置決め装置は、光反射装置を含む、ことを特徴とする請求項11に記載のナビゲーション手術システムに用いられる支持装置。
【請求項13】
前記ナビゲーション手術システムに用いられる支持装置において、前記支持装置には、前記ロボットアームを固定するロボットアーム固定装置、および/または、前記ナビゲーション追跡装置を固定するナビゲーション支持アームが設けられている、ことを特徴とする請求項11に記載のナビゲーション手術システムに用いられる支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援ナビゲーション手術の技術分野に関し、特にナビゲーション手術システムおよびその登録方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムは、外科手術、特に整形外科手術において使用されることがますます多くなってきている。たとえば、MAKO整形外科ナビゲーションシステムやRobodoc整形外科ナビゲーションシステム等は、いずれもロボットアームと赤外線光学式ナビゲーション装置との組み合わせを利用し、医者の術前計画と、術中の登録および位置合わせ技術とを組み合わせることに基づいて、すなわち、光学式ナビゲーション装置により患者の骨の真の位置を捉え、ソフトウェア中の骨モデル座標系と照合することによって、ロボットによる医者への支援を実現する。ここで、登録および位置合わせ技術は、ロボットとナビゲーション装置を接続するための重要な技術である。ロボットは、登録および位置合わせ技術により操作が必要な手術領域の位置を把握し、手術計画に基づいて能動的に位置決めや手術の支援を行う。しかしながら、現在の一般的な登録ツールや登録方法には、以下のような問題点が存在する。
【0003】
(1)プロセスが煩雑で、エクストラ手術時間が長い。一般的に、骨の登録の前に、まずはロボットアームの登録を行うことにより、ロボットアームとナビゲーション装置との位置を合わせる。通常のロボットアームの登録方法は、ロボットアームの先端に登録用ターゲットを取り付け、登録完了後に再度登録用ターゲットを取り外す。しかしながら、ターゲットの取り付けは非常に難しく、また、そのほとんどが固設の方法によりロボットアームとターゲットとを接続するため、ターゲットの取り外しや取り付けに手間がかかるという問題がある。さらに、骨を登録する際には、他の種類のターゲットに置き換えてターゲットの登録および位置合わせをする必要がある。一方で、整形外科の手術において、感染のリスクを減らすためには、出来る限り手術領域の露出を最小限に抑える必要がある。
【0004】
(2)信頼性およびリアルタイム性が低い。上述とは異なり、他の種類のロボットアームの登録方法においては、骨の登録が完了した後に、ロボットアームの基部または先端に取り付けられたターゲットを用いて、エンドエフェクタまたは手術ツールの位置をリアルタイムに追跡する。しかしながら、ロボットアームは、移動中において振動が生じうるため、ナビゲーション装置により収集したターゲットの位置精度も振動の影響を受け、ロボットアーム登録の精度が低くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、手術プロセスの簡素化、エクストラ手術時間の短縮、位置追跡の信頼性およびリアルタイム性の向上を実現できるナビゲーション手術システムおよびその登録方法、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様によれば、ロボットシステムと、前記ロボットシステムに通信可能に接続されたナビゲーションシステムと、を含み、前記ロボットシステムは、ロボットアームを含み、前記ナビゲーションシステムは、ナビゲーション追跡装置を含む、ナビゲーション手術システムであって、
前記ロボットシステムは、前記ロボットアーム上において構築されたロボットアームベース座標系を有し、前記ロボットアームベース座標系は、支持装置に対して相対位置が固定であり、
前記ナビゲーションシステムは、前記ナビゲーション追跡装置によって認識可能な基準座標系を有し、前記基準座標系は、前記支持装置に対して位置が固定されるように構築され、
前記ナビゲーション手術システムは、前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との位置関係、および前記基準座標系と前記支持装置との位置関係に基づいて、前記ロボットアームと前記ナビゲーション追跡装置との位置関係を取得できる。
【0007】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムは、ロボットアーム固定装置をさらに含み、前記ロボットアームは、前記ロボットアーム固定装置によって支持装置に固定され、前記ロボットアーム固定装置は、垂直に設けられたブラケットと水平に設けられたカンチレバーを含み、前記ブラケットの一端は支持装置に固定され、他端は前記カンチレバーの一端に接続され、前記カンチレバーの他端は前記ロボットアームに接続されている。
【0008】
好ましくは、前記ロボットアームは基部関節を有し、前記基部関節は支持装置に対して固定位置にあり、前記ロボットアームベース座標系は前記基部関節に設けられている。
【0009】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムは、前記カンチレバーの長さおよび前記支持装置に対する前記カンチレバーの高さに基づいて、前記支持装置に対する前記ロボットアームベース座標系の位置を得るように構成されている。
【0010】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムは、手術用カートを含み、前記ロボットアームは、前記手術用カートに取り付けられ、前記手術用カートは、支持装置に対して固定位置にあり、前記ロボットアームは、基部関節を有し、前記基部関節は、前記手術用カートに対して固定位置にあり、前記ロボットアームベース座標系は前記基部関節に設けられている。
【0011】
好ましくは、前記基準座標系は、支持装置上または手術用カート上に設けられている。
【0012】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムは、ナビゲーションカートをさらに備え、前記ナビゲーション追跡装置は、前記ナビゲーションカートに取り付けられている。
【0013】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムは、ナビゲーション支持アームを含み、前記ナビゲーション追跡装置は、前記ナビゲーション支持アームによって支持装置に固定され、前記ナビゲーション支持アームは、前記ナビゲーション支持アームの先端に取り付けられた前記ナビゲーション追跡装置を駆動して前記ナビゲーション追跡装置の位置および姿勢を調整できるように、複数の自由度を有する。
【0014】
好ましくは、前記ナビゲーション支持アームは、ナビゲーション基部関節を有し、前記ナビゲーション基部関節は、前記支持装置に対して固定位置にあり、前記基準座標系は、前記支持装置上または前記ナビゲーション基部関節に設けられている。
【0015】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムは、手術対象を支持装置に固定する手術対象固定装置をさらに含み、前記手術対象は、前記支持装置に対して固定位置にあり、前記ナビゲーションシステムは、前記手術対象上に複数の特徴点をマーキングするターゲット部品をさらに含み、前記ナビゲーション手術システムは、複数の前記特徴点に基づき、ロボットアームに対する前記手術対象上のターゲット領域の位置を取得できる。
【0016】
好ましくは、前記ナビゲーション追跡装置は、光学式ナビゲーション追跡装置であり、前記ナビゲーションシステムは、複数の光学マーカをさらに含み、各前記光学マーカは、前記光学式ナビゲーション追跡装置によって認識でき、複数の前記光学マーカは、前記基準座標系の構築に用いられる。
【0017】
好ましくは、前記光学マーカは少なくとも3つあり、かつ、前記支持装置上に設けられている。
【0018】
好ましくは、前記光学マーカは、球状反射マーカまたはステッカー型反射マーカである。
【0019】
好ましくは、前記ナビゲーション追跡装置は、磁気式ナビゲーション追跡装置であり、前記磁気式ナビゲーション追跡装置は、磁場を生成する磁気式発射装置と、前記磁場を感知して前記基準座標系の構築に用いる電気信号を生成する磁気式位置決め装置と、を含む。
【0020】
好ましくは、前記磁気式位置決め装置は、誘導コイルを含む。
【0021】
好ましくは、前記ナビゲーション追跡装置は、慣性ナビゲーション追跡装置であり、前記ナビゲーションシステムは、少なくとも1つの慣性ナビゲーションマーカを含み、前記慣性ナビゲーションマーカは、前記慣性ナビゲーション追跡装置によって認識でき、前記基準座標系の構築に用いられる。
【0022】
好ましくは、前記慣性ガイドマーカは、手術対象に設けられている。
【0023】
好ましくは、前記ロボットアームの先端にはターゲットが取り付けられ、前記ターゲットにより前記ロボットアームの先端の空間位置を追跡する。
【0024】
本発明の第二態様によれば、ナビゲーション手術システムの登録方法であって、前記ナビゲーション手術システムは、ロボットシステムと、前記ロボットシステムに通信可能に接続されたナビゲーションシステムと、を含み、前記ロボットシステムは、ロボットアームを含み、前記ナビゲーションシステムは、ナビゲーション追跡装置を含み、前記登録方法は、
ナビゲーション手術システムにおいて、ナビゲーション追跡装置によって認識可能な基準座標系を構築し、前記基準座標系と支持装置との相対位置を固定するステップと、
ロボットアーム上において、ロボットアームベース座標系を構築し、前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との相対位置を固定するステップと、
前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との位置関係、および前記基準座標系と前記支持装置との位置関係のそれぞれに基づいて、前記ナビゲーション追跡装置と前記ロボットアームとの位置関係を確定するステップと、
を含む。
【0025】
好ましくは、前記ロボットアームベース座標系を構築する際、前記ロボットアームベース座標系を前記ロボットアームの基部関節に設け、前記ロボットアームの基部関節の前記支持装置に対する位置を固定する。
【0026】
好ましくは、前記基準座標系を構築する際に、手術用カート、支持装置またはナビゲーション支持アームのナビゲーション基部関節上において前記基準座標系を設け、前記ナビゲーション追跡装置または前記ナビゲーション支持アームのナビゲーション基部関節の前記支持装置に対する位置を固定させることにより、前記ナビゲーション支持アームを介して前記ナビゲーション追跡装置を前記支持装置に固定させる。
【0027】
好ましくは、前記ロボットアームは、ロボットアーム固定装置によって支持装置に固定され、前記ロボットアーム固定装置は、垂直に設けられたブラケットと水平に設けられたカンチレバーを含み、前記ブラケットの一端は支持装置に固定され、他端は前記カンチレバーの一端に接続され、前記カンチレバーの他端は、前記ロボットアームに接続され、前記カンチレバーの長さおよび前記支持装置に対するカンチレバーの高さに基づいて、前記支持装置に対する前記ロボットアームベース座標系の位置を確定する。
【0028】
好ましくは、前記登録方法は、
前記ナビゲーション支持アームによって前記ナビゲーション追跡装置を支持装置に固定し、前記ナビゲーション支持アームによって先端に取り付けられた前記ナビゲーション追跡装置の位置および姿勢を調整するステップと、
をさらに含む。
【0029】
好ましくは、前記登録方法は、
前記支持装置に対して位置が固定された前記手術対象に設けられた複数の特徴点に基づいて、前記ロボットアームに対する前記手術対象の目標領域の位置を確定するステップと、をさらに含む。
【0030】
好ましくは、前記登録方法は、さらに、
前記ロボットアームの先端にターゲットを取り付け、前記ターゲットによって前記ロボットアームの先端の空間位置を追跡するステップと、を含む。
【0031】
好ましくは、光学式ナビゲーション追跡装置、磁気式ナビゲーション追跡装置または慣性ナビゲーション追跡装置によって前記基準座標系を構築する。
【0032】
本発明の第三態様によれば、プロセッサとメモリとを含む電子機器であって、前記メモリにはコンピュータプログラムが格納され、前記コンピュータプログラムが前記プロセッサによって実行されると、上記いずれか1つに記載の登録方法が実行される。
【0033】
本発明の第四態様によれば、ナビゲーション手術システムに用いられる支持装置であって、患者を支持でき、前記支持装置には複数の位置決め装置が設けられ、前記複数の位置決め装置は、ナビゲーション追跡装置と通信可能に接続されている。
【0034】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムに用いられる支持装置において、前記位置決め装置は、光反射装置を含む。
【0035】
好ましくは、前記ナビゲーション手術システムに用いられる支持装置において、前記支持装置には、前記ロボットアームを固定するロボットアーム固定装置、および/または、前記ナビゲーション追跡装置を固定するナビゲーション支持アームが設けられている。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るナビゲーション手術システムおよびその登録方法によれば、ロボットアームベース座標系の位置を支持装置に対して固定し、ナビゲーション追跡装置により認識可能な基準座標系の位置を支持装置に対して固定することにより、ロボットアームとナビゲーション追跡装置との間の相対位置を直接位置合わせできるため、ロボットアーム先端やロボットアーム基部においてターゲットを取り付けてロボットアームの登録をしなくてもよく、手術プロセスが簡素化され、手術領域の露出時間が短縮され、患者の感染確率を低減できる。特に、手術中においてロボットアームにターゲットを取り付ける必要がないため、ロボットアームの移動中の振動の影響を受けずにロボットアーム先端位置を収集でき、確実でリアルタイムなロボットアーム先端位置の取得を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の実施方法および関連する実施形態の特徴、特性および利点について、以下の図面を参照しながら説明する。
図1】従来のナビゲーション手術システムを示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態2に係るナビゲーション手術システムの構成を第1角度に沿って示す図である。
図4】本発明の実施形態2に係るナビゲーション手術システムの構成を第2角度に沿って示す図である。
図5】本発明の実施形態3に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図6】本発明の実施形態4に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図7】本発明の実施形態5に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図8】本発明の実施形態6に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図9a】本発明の実施形態6に関連する従来の骨登録を説明するための図である。
図9b】本発明の実施形態6に係る骨登録を説明するための図である。
図10】本発明の実施形態7に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図11】本発明の実施形態8に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図12】本発明の実施形態9に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図13】本発明の実施形態10に係るナビゲーション手術システムの構成を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係るナビゲーション手術システムの登録方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態に係る技術的解決手段について、明確にかつ詳細に説明する。本発明に係る実施形態に基づいて、いわゆる当業者が創作的な労力を要することなく得られる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0039】
本発明において、単数形の「一」、「1つ」および「該」との用語は、明細書において内容が明確に示された場合を除き、複数の対象も含んで使用される。本発明で使用される「または」との用語は、明細書において内容が明確に示された場合を除き、一般的には「および/または」の意味を含んで使用される。本発明で使用される「複数」との用語は、明細書において内容が明確に示された場合を除き、一般的には「少なくとも1つ」の意味を含んで使用される。本発明で使用される「少なくとも2つ」との用語は、明細書において内容が明確に示された場合を除き、一般的には「2つ以上」の意味を含んで使用される。さらに、「第1」、「第2」、「第3」との用語は、わかりやすく説明するために用いられ、相対的な重要性または技術的特徴の数を示唆するものとして理解されてはいけない。したがって、「第1」、「第2」、「第3」の用語を用いて示された特徴は、明示的または暗黙的に1つまたは少なくとも2つの該特徴を含むことができる。
【0040】
背景技術において説明したように、既存のナビゲーション手術システムは、登録プロセスが煩雑で、エクストラ手術時間が長く、位置追跡の信頼性およびリアルタイム性が低いとの問題がある。この問題について、図1を参照してさらに説明すると、既存のナビゲーション手術システム100は、患者110の手術領域105で動作し、ロボットシステム115およびナビゲーションシステム165を含む。ロボットシステム115は、ロボットアーム120を含む。実際に手術する際、ロボットアーム120は、その遠端130においてエンドエフェクタまたは手術ツール125を設けている。手術ツール125は、ロボットアーム120によって位置決めできる。
【0041】
ロボットアーム120は複数の関節135を含み、所定の手術領域105の近傍または内部のいずれかの所望位置において手術ツール125を位置決めすることを許可する。ロボットシステム115は、さらに、ロボットアーム120および手術ツール125を操作するコンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは、制御台車140内に設けられたコントローラと、制御台車140上に設けられたヒューマンマシンインターフェースデバイス145、たとえばディスプレイとを含み、手術中に使用した画像を医者に提供する。コンピュータシステムは、ナビゲーションシステム165と通信し、ナビゲーションシステムは、手術領域105内の複数の対象の位置を追跡するために、関心のある対象に固定された複数の追跡部品、たとえばロボットアームの先端の光学的ターゲット170を監視できる。ナビゲーションシステム165は、光学的ターゲット170と相互作用し、患者の解剖学的構造、手術ツールまたはロボットシステム115の一部を追跡するために、手術領域105内において仮想三次元座標系を構築する。光学的ターゲット170は、仮想三次元座標系の位置を追跡するために、ロボットアーム120または手術ツール125上に設けられ、患者の位置、骨の位置、関節の位置、ロボットアームの位置等の位置データを提供する。ロボットアーム120は、制御台車140に固定されている。
【0042】
手術中、ナビゲーションシステム165は、ロボットアーム先端の器具や手術ツールの空間位置をリアルタイムで追跡し、ディスプレイに表示する。このため、ロボットアームの先端またはロボットアームの基部にターゲットを取り付け、ナビゲーションシステム165によってターゲットを追跡することにより、ロボットアーム先端/手術ツールのリアルタイム追跡を実現することが一般的な手法である。しかしながら、実際の使用においては、ロボットアームの振動によってロボットアーム上のターゲットも振動してしまい、追跡の信頼性やリアルタイム性に大きな影響を与える。
【0043】
以上のことに基づき、本発明は、ロボットアームの先端や基部にターゲットを設けることなく、ナビゲーションシステムによってロボットアームの先端位置のリアルタイム追跡の目的を達成でき、ロボットアームの先端位置の追跡の信頼性やリアルタイム性を向上でき、さらにロボットアームの登録プロセスを省略して、エクストラ手術時間の短縮、患者の感染リスクを低減できるナビゲーション手術システムおよび該ナビゲーション手術システムの登録方法を提供する。
【0044】
具体的には、本発明に係るナビゲーション手術システムは、通信可能に接続されたロボットシステムおよびナビゲーションシステムを含み、前記ロボットシステムは、ロボットアームを含み、前記ナビゲーションシステムは、ナビゲーション追跡装置を含む。前記ナビゲーション追跡装置は、光学式ナビゲーション追跡装置、磁気式ナビゲーション追跡装置または慣性ナビゲーション追跡装置を含む。ナビゲーション手術システムの登録方法は、
ナビゲーション手術システムにおいて、ナビゲーション追跡装置によって認識可能な基準座標系を構築し、前記基準座標系と患者を支持する支持装置、たとえば病院のベッドとの相対位置を固定するステップと、
ロボットアーム上において、ロボットアームベース座標系を構築し、前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との相対位置を固定するステップと、
前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との位置関係、および前記基準座標系と前記支持装置との位置関係のそれぞれに基づいて、前記ナビゲーション追跡装置と前記ロボットアームとの位置関係を確定するステップと、
を含む。
この方法によれば、ロボットアームの先端や基部においてターゲット(たとえば、光反射装置または光学式追跡装置)を取り付けてロボットアームを登録するプロセスを省略でき、さらにターゲットを取り外すプロセスも省略でき、手術時間が短縮される。また、手術中において、ロボットシステムがロボットアームの位置をリアルタイムにナビゲーションシステムへ送信さえすれば、ナビゲーションシステムはロボットアーム先端の器具や手術ツールの空間位置をリアルタイムで追跡でき、ディスプレイに表示できる。
【0045】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態を介して、本発明に係るナビゲーション手術システムおよびその登録の実施形態についてさらに説明する。
【0046】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1に係るナビゲーション手術システム200の構成を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係るナビゲーション手術システム200は、通信可能に接続されたロボットシステムおよびナビゲーションシステムを含む。前記ロボットシステムは、ロボットアーム2を含み、前記ロボットアーム2の先端は、手術ツールの取り付けに使用され、該手術ツールは、ロボットシステムの使用に適した任意の手術ツール、たとえばクランプ、フラップ装置、リーミング装置、インパクター装置または上腕骨頭インパクターなどであってよい。
【0047】
前記ナビゲーションシステムは、光学式ナビゲーション追跡装置4と、複数の光学マーカなどの位置決め装置とを含み、前記光学マーカは、光学式ナビゲーション追跡装置4によって認識および追跡されることが可能である。本実施形態において、複数の前記光学マーカ101は支持装置1(たとえば病院のベッド)に取り付けられ、これらの光学マーカの支持装置1に対する位置は固定され、既知である。このように、本発明に係るナビゲーションシステムは、複数の光学マーカに基づいて、支持装置1に対する基準座標系の位置が固定かつ既知となるように、支持装置1に応じた基準座標系を構築できる。さらに、複数の前記光学マーカは、算出処理を簡略化するために、支持装置1上においてマトリクス状に分布されていることが好ましい。いくつかの実施形態において、複数の前記光学マーカは、一定間隔で支持装置1に設けられる。さらに、少なくとも3つの光学マーカに基づいて空間的に直角な座標系を構築するため、すなわち、基準座標系を空間的直角座標系とするため、前記光学マーカの数は少なくとも3つである。本実施形態において、支持装置1上の光学マーカの位置が固定されればよく、なお、支持装置1に対する光学マーカの取り付け位置は術前に分かっている、すなわち、支持装置上の基準座標系の位置が分かっていれば、特に限定することはない。さらに、光学マーカは、球状反射マーカであってもよく、ステッカー型反射マーカであってもよい。
【0048】
本実施形態において、前記ロボットアーム2は、ロボットアーム固定装置5によって支持装置1に固定され、ロボットアーム固定装置5の支持装置1に対する位置は固定されており、既知である、すなわち、ロボットアーム固定装置5の支持装置1に対する位置は固定であり、既に確定され、取得されている。前記ロボットアーム固定装置5は、垂直に設けられたブラケット51と、水平に設置されたカンチレバー52とを含み、前記ブラケット51の一端は支持装置1に固定され、他端はカンチレバー52の一端に接続され、前記カンチレバー52の他端はロボットアーム2に接続されている。本実施形態において、前記ロボットアーム2は基部があり、前記基部はカンチレバー52に固定されている。また、前記ロボットアーム2は、前記基部に直接回転可能に接続された基部関節21を有する。本発明は、ロボットアーム2の構成についてはなんら限定もせず、たとえば、ロボットアーム2は、複数の回転関節が順次に直列接続され、隣接する任意の2つの回転関節が多関節アームによって互いに接続されて構成されてもよい。
【0049】
本実施形態において、前記ロボットシステムは、ロボットアーム2において構築されたロボットアームベース座標系を有し、前記ロボットアームベース座標系は支持装置1に対して位置が固定され、すなわち、基準座標系に対するロボットアームベース座標系の位置は固定されたままで、術前に既知であるため、ロボットアーム2と光学式ナビゲーション追跡装置4との位置関係のアライメントが実現され、光学式ナビゲーション追跡装置4はロボットアームの位置をリアルタイムで追跡できる。
【0050】
さらに、前記ロボットアームベース座標系は、ロボットアーム2の基部関節21に設けられ、ロボットアーム2の基部関節21の支持装置1に対する位置は固定され、既知であることが好ましい。さらに、本実施形態において、前記ナビゲーション手術システム200は、カンチレバー52の長さおよび支持装置1に対するカンチレバー52の高さに基づいて、ロボットアーム2の基部関節21の支持装置1に対する位置を取得し、すなわち、支持装置に対するロボットアームのベース座標系の位置を取得する。
【0051】
従来のロボットアームの登録方法と比較して、本発明に係るナビゲーション手術システム200は、ロボットアームの先端にターゲットを設けなくても、ロボットアームと光学式ナビゲーション追跡装置との位置関係をアライメント(位置合わせ)できるため、ターゲットを取り外したり取り付けたりするプロセスを省略でき、手術時間の短縮、手術領域の露出時間の短縮、患者の感染確率の低減を図ることができる。さらに、このような登録方法によれば、手術中においてロボットアームの位置がロボットアームの移動時に発生する振動の影響を受けないため、ロボットアームの位置を高精度、高信頼性、リアルタイムに把握でき、手術の精度を向上できる。また、光学式ナビゲーション追跡装置4が支持装置1に対する患者の骨の位置を取得できるように、骨を登録すればよく、続いて、光学式ナビゲーション追跡装置4によって支持装置1に対する骨の位置情報をロボットシステムに送信する。ロボットシステムは骨の位置情報に基づいて、患者の骨に対するロボットアームの位置を知り、ロボットアームを制御して骨切り位置決め操作を行う。本実施形態において、骨の登録は、従来の登録方法によって行うことが可能で、医者がターゲット部品を持って患者の骨上において注目登録ポイントを選択し、ナビゲーション追跡装置4はターゲット部品に基づいて選択された骨の登録ポイントの座標情報を取得し、骨の実物とナビゲーションにおける骨のモデルとを照合し、該座標情報をコントローラにフィードバックし、コントローラにより骨の位置を確定する。前記ターゲット部品には、前記ナビゲーション追跡装置と通信するリフレクターのような装置が設けられている。
【0052】
いくつかの実施形態において、ロボットアーム2の先端には光学ターゲットが設けられ、ロボットアームの先端の空間位置を追跡でき、したがって、ロボットアームの位置の冗長追跡が可能となり、手術システムの信頼性を向上できる。さらに、前記基準座標系は、前記支持装置1の角部に設けられていることが好ましく、これにより、医者や看護師によって基準座標系が見えなくなることを防止し、効果的なナビゲーションを確保できる。
【0053】
前記ナビゲーション手術システム200は、ナビゲーションカート3をさらに備え、前記光学式ナビゲーション追跡装置4は、前記ナビゲーションカート3に直接取り付けられている。さらに、前記ナビゲーションシステムは、ケーブルによって前記ロボットシステムに通信可能に接続されている。ナビゲーションシステムは、たとえば、ナビゲーションカート3に設けられるナビゲーションコントローラを含む。ロボットシステムは、支持装置1の底部に設けられたロボットコントローラを含む。前記ナビゲーションコントローラと前記ロボットコントローラとはケーブルを介して有線通信している。また、ナビゲーションカート3にはディスプレイが設けられ、ロボットアームの位置またはその他の情報をリアルタイムに表示するようにしてもよい。
【0054】
実際の手術時において、前記ロボットアーム2の先端に手術ツールを接続する必要があり、前記手術ツールは、関節手術用の手術ツールに限らず、脊椎手術用の手術ツール、または脳手術用の手術ツール等を含む。本発明では、全ての実施形態において関節置換手術ツールを例として説明しているが、これを本発明の限定とすることはできないことは理解されるべきである。
【0055】
以上のとおり、本実施形態に係るナビゲーション手術システム200によれば、ロボットシステム内のたとえば各関節の位置センサにより、ロボットアーム先端の位置と姿勢をリアルタイムに光学式ナビゲーション追跡装置4にフィードバックさえすればよく、光学式ナビゲーション追跡装置4はロボットアーム先端の空間位置を知って表示できるため、エンドエフェクタまたは手術ツールの位置をリアルタイムに追跡する目的を達成できる。
【0056】
(実施形態2)
図3および図4は、それぞれ、本発明の実施形態2に係るナビゲーション手術システム300の異なる角度からの構成を示す図である。本実施形態に係るナビゲーション手術システム300の構成と実施形態1に係るナビゲーション手術システム200の構成とは、基本同じであり、以下では、主に両者の相違点について説明する。
【0057】
図3および図4に示すように、本実施形態に係るナビゲーション手術システム300は、手術用カート6をさらに備え、ロボットアーム2は手術用カート6に直接固定され、支持装置1に対する手術用カート6の位置は固定され、かつ、既知である。同じ原理で、手術用カート1に対するロボットアーム2の基部関節21の位置は固定で既知であるため、支持装置1に対するロボットアームベース座標系の位置も固定で既知となり、したがって基準座標系に対するロボットアームベース座標系の位置関係も既知となる。
【0058】
さらなる違いは、本実施形態に係るロボットアーム2の基部が手術用カート6に直接固定されるため、ロボットアーム固定装置5が不要となることである。さらに、ロボットコントローラは手術用カート6の内部に設けられ、有線通信用のケーブルを介してナビゲーション手術用カート3内部のナビゲーション制御装置と通信できる。いくつかの実施形態において、ロボットコントローラは無線でナビゲーション制御装置と通信している。
【0059】
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3に係るナビゲーション手術システム400の構成を示す図である。本実施形態に係るナビゲーション手術システム400の構成と実施形態2に係るナビゲーション手術システム300の構成とは、基本同じであり、以下では、主に両者の相違点について説明する。
【0060】
本実施形態に係る基準座標系は、支持装置1ではなく、手術用カート6に構築されている。図5に示すように、手術用カート6には光学ターゲット7が設けられ、光学ターゲット7には通常少なくとも3つの反射球が設けられ、複数の反射球に基づいて基準座標系を簡便に構築できる。支持装置1に対する手術用カート6の位置は固定で既知であるため、支持装置1に対する基準座標系の位置も固定で既知となる。同様に、手術用カート6に対するロボットアームベース座標系の位置も固定で既知であるため、基準座標系に対するロボットアームベース座標系の位置も固定で既知となり、ロボットアーム2と光学式ナビゲーション追跡装置4との位置関係も既知となる。
【0061】
(実施形態4)
図6は、本発明の実施形態4に係るナビゲーション手術システム500の構成を示す図である。本実施形態に係るナビゲーション手術システム500の構成と実施形態1に係るナビゲーション手術システム200の構成とは、基本同じであり、以下では、主に両者の相違点について説明する。
【0062】
図6に示すように、光学式ナビゲーション追跡装置4は、ナビゲーション支持アーム8によって支持装置1に固定されているため、使用者が光学式ナビゲーション追跡装置4の位置および姿勢を調整しやすく、手術の効率を高めることができ、ナビゲーションカート3は支持装置1から遠く離れることが可能で、医者のスペースを広げられる。具体的には、ナビゲーション支持アーム8もロボットアームの構成であり、多数の自由度を有し、その先端には光学式ナビゲーション追跡装置4が取り付けられ、光学式ナビゲーション追跡装置4を駆動し、光学式ナビゲーション追跡装置4の位置および姿勢の調整できる。本実施形態において、支持装置1には光学式ナビゲーション追跡装置4により認識および追跡可能な光学マーカが設けられ、ロボットアーム2の基部関節21の位置が支持装置1に対して固定であるため、同様に、ナビゲーション支持アーム8のナビゲーション基部関節81の支持装置1に対する位置は既知となり、光学式ナビゲーション追跡装置4に対するロボットアーム2の位置も既知で、ロボットアームを登録する必要がなく、支持装置1に対する骨の位置を得るために骨を登録するだけでよい。ナビゲーションシステムは支持装置1に対する骨の位置をロボットシステムに送信し、ロボットアーム2は骨切り位置決め操作を行う。
【0063】
また、本実施形態に係るナビゲーションカート3には、依然としてナビゲーションコントローラが取り付けられており、支持装置1の底部にあるロボットコントローラとケーブルを介して通信する。さらに、基準座標系は、支持装置1に構築されてもナビゲーション支持アーム8のナビゲーション基部関節81に構築されてもよい。
【0064】
(実施形態5)
図7は、本発明の実施形態5に係るナビゲーション手術システム600の構成を示す図である。本実施形に係るナビゲーション手術システム600の構成と実施形態4に係るナビゲーション手術システム500の構成とは、基本同じであり、以下では、主に両者の相違点について説明する。
【0065】
図7に示すように、光学式ナビゲーション追跡装置4は、ナビゲーション支持アーム8によってカンチレバー52に固定されている。本実施形態において、ロボットアーム2はカンチレバー52の下方に設けられ、光学式ナビゲーション追跡装置4はカンチレバー52の上方に設けられている。このようにすれば、光学式ナビゲーション追跡装置4の位置および姿勢の調整が容易で、手術の効率を向上でき、ナビゲーション手術用カート3を支持装置1から遠く離せるため、医者のスペースが広げられる。
【0066】
(実施形態6)
図8は、本発明の実施形態6に係るナビゲーション手術システム700の構成を示す図である。実施形態4に係るナビゲーション手術システム500と異なるところは、本実施形態に係るナビゲーション手術システム700は、骨の登録を必要とせず、支持装置に対する骨の位置を予めマーキングする必要があることである。
【0067】
具体的には、本実施形態に係るナビゲーション手術システム700は、患者下肢9などの手術対象を支持装置1に固定し、患者下肢9の支持装置1に対する位置を固定する手術対象固定装置(不図示)をさらに含む。前記ナビゲーション手術システム700は、患者下肢9上に複数の特徴点をマーキングするターゲット部品をさらに含み、複数の前記特徴点に基づいて、ロボットアームに対する前記患者下肢上の手術領域(すなわち、ターゲット領域)の位置を取得する。そのため、患者下肢に光学ターゲットを追加で取り付ける必要がなく、光学ターゲットの取り外しや取り付けのプロセスを省略でき、手術時間をさらに短縮できる。
【0068】
たとえば、図9aに示すように、従来の骨登録プロセスでは、患者下肢9に骨登録のための光学ターゲットaを取り付ける必要があるが、図9bに示すように、本実施形態によれば、患者下肢9に光学ターゲットを取り付ける必要がなく、代わりに、ターゲット部品を用いて患者下肢に複数の特徴点をマーキングするだけで骨に対するロボットアームの位置が確定できるため、操作がより便利で、さらにエクストラ手術露出時間を短縮できる。
【0069】
(実施形態7)
図10は、本発明の実施形態7に係るナビゲーション手術システム800の構成を示す図である。本実施形態に係るナビゲーション手術システム800の構成と実施形態1に係るナビゲーション手術システム200の構成とは、基本同じであり、以下では、主に両者の相違点について説明する。
【0070】
本実施形態において、光学式ナビゲーション追跡装置4は磁気式ナビゲーション追跡装置11によって置き換えられ、さらに、前記磁気式ナビゲーション追跡装置11は、磁場を生成する磁気式発射装置と、磁場を感知して誘導信号(たとえば電圧または電流信号)を生成する磁気式位置決め装置とを含み、これによりナビゲーションシステムは、前記磁気式位置決め装置の誘導信号に基づいて基準座標系を構築する。本実施形態において、前記磁気式発射装置は支持装置1の底部に設けられ、支持装置1上の光学マーカは少なくとも1つの磁気位置決め装置(不図示)により置き換えられる。すなわち、磁気式位置決め装置によって、支持装置上において基準座標系が構築される。さらに、磁気式位置決め装置は、少なくとも1つの誘導コイルを含む。同様に、磁気式位置決め装置は磁気式ナビゲーション追跡装置11によって認識でき、支持装置1に対するロボットアームの位置は固定で既知であるため、磁気式ナビゲーション追跡装置11に対するロボットアームの位置も既知である。光学式ナビゲーション追跡装置と比較して、手術中に医者や看護師が光学式ナビゲーション追跡装置を妨害してナビゲーション障害を起こすことがないため、ナビゲーション手術システムの信頼性を高めることができる。
【0071】
(実施形態8)
図11は、本発明の実施形態8に係るナビゲーション手術システム900の構成を示す図である。本実施形態に係るナビゲーション手術システム900の構成と実施形態7に係るナビゲーション手術システム800の構成とは、基本同じであり、以下では、主に両者の相違点について説明する。
【0072】
図11に示すように、磁気式ナビゲーション追跡装置11は、ナビゲーション支持アーム8によって支持装置1に固定されており、ナビゲーション支持アーム8のナビゲーション基部関節81の支持装置1に対する位置は固定されており、既知である。さらに、磁気式位置決め装置は、支持装置1に設けられても、ナビゲーション支持アーム8のナビゲーション基部関節81に設けられてもよく、ロボットアーム2の基部関節21に設けられてもよい。
【0073】
(実施形態9)
図12は、本発明の実施形態9に係るナビゲーション手術システム1000の構成を示す図である。本実施形態に係るナビゲーション手術システム1000の構成と実施形態1に係るナビゲーション手術システム200の構成とは、基本同じであり、以下では、主に両者の相違点について説明する。
【0074】
図12に示すように、慣性ナビゲーション追跡装置12により光学式ナビゲーション追跡装置4を置き換えられ、さらに、前記慣性ナビゲーション追跡装置12は、慣性ナビゲーション情報処理ユニット(受信機に相当)を含み、支持装置の底部に設けられてもよい。また、前記ナビゲーションシステムは、少なくとも1つの慣性ナビゲーションマーカ13をさらに含み、前記慣性ナビゲーションマーカ13は、前記慣性ナビゲーション情報処理ユニットによって認識可能であり、すなわち、支持装置1に対する慣性ナビゲーションマーカ13の位置は既知で固定されている。本実施形態において、慣性ナビゲーションマーカ13の位置は限定されず、たとえば、患者下肢9に設けられてもよい。このように、ナビゲーションシステムは、慣性ナビゲーションマーカ13に基づいて、基準座標系を構築できる。
【0075】
光学式ナビゲーション追跡装置と比較して、慣性ナビゲーション追跡装置を使用することで、手術中に医者や看護師がナビゲーション追跡装置を妨害することを避け、ナビゲーション失敗の問題を回避することができる。また、実際の手術の際には、医者は慣性ナビゲーションターゲティングペン(ターゲット部品)14を介して骨登録を完了できる。また、慣性ナビゲーション情報処理ユニットと慣性ナビゲーションマーカ13とはケーブルを介して通信でき、慣性ナビゲーション情報処理ユニットとナビゲーションカート3内のナビゲーションコントローラとはケーブルを介して通信できる。
【0076】
また、他の実施形態として、図13に示すように、慣性ナビゲーション情報処理ユニットをナビゲーションカート3内に設け、慣性ナビゲーションマーカ13を慣性ナビゲーション情報処理ユニットに無線接続し、たとえば無線伝送用のブルートゥース(登録商標)Sを介して無線接続してもよい。
【0077】
上述の各実施形態において、支持装置上のマーカは、光反射マーカ、磁気式位置決め装置、慣性ナビゲーションマーカに限らず、ナビゲーション追跡装置により検出可能な他の方法であってもよく、本発明はこれについて何ら限定もしない。さらに、支持装置上の光学マーカの数および配置方法は、少なくともマーカの一部が手術中の任意の時刻において患者または医者、看護師等によって遮らなければよく、ナビゲーション追跡装置によって収集できる限り、制限されない。
【0078】
本発明の実施形態によれば、プロセッサとメモリとを含む電子機器をさらに提供し、前記メモリにはコンピュータプログラムが格納され、前記コンピュータプログラムが前記プロセッサによって実行されると、図14に示される登録方法が実行される。
【0079】
図14に示すように、本発明の実施形態に係るナビゲーション手術システムの登録方法は、
ナビゲーション手術システムにおいて、ナビゲーション追跡装置によって認識可能な基準座標系を構築し、前記基準座標系と支持装置との相対位置を固定するステップS1と、
ロボットアーム上において、ロボットアームベース座標系を構築し、前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との相対位置を固定するステップS2と、
前記ロボットアームベース座標系と前記支持装置との位置関係、および前記基準座標系と前記支持装置との位置関係のそれぞれに基づいて、前記ナビゲーション追跡装置と前記ロボットアームとの位置関係を確定するステップS3と、
を含む。
【0080】
さらに、前記ロボットアームベース座標系を構築する際、前記ロボットアームベース座標系を前記ロボットアームの基部関節に設け、前記ロボットアームの基部関節の前記支持装置に対する位置を固定する。
【0081】
さらに、前記基準座標系を構築する際に、手術用カート、支持装置またはナビゲーション支持アームのナビゲーション基部関節上において前記基準座標系を設け、前記ナビゲーション追跡装置または前記ナビゲーション支持アームのナビゲーション基部関節の前記支持装置に対する位置を固定させることにより、前記ナビゲーション支持アームを介して前記ナビゲーション追跡装置を前記支持装置に固定させる。
【0082】
さらに、前記登録方法は、前記ナビゲーション支持アームによって前記ナビゲーション追跡装置を支持装置に固定し、前記ナビゲーション支持アームによって先端に取り付けられた前記ナビゲーション追跡装置の位置および姿勢を調整するステップと、をさらに含む。
【0083】
さらに、前記登録方法は、前記支持装置に対して位置が固定された前記手術対象に設けられた複数の特徴点に基づいて、前記ロボットアームに対する前記手術対象の目標領域の位置を確定するステップと、をさらに含む。
【0084】
以上のとおりで、本発明の好ましい実施形態に係るナビゲーション手術システムによれば、ナビゲーション追跡装置によって認識可能な基準座標系に対するロボットアームのベース座標系の位置を位置合わせ(アライメント)することによって、光学ターゲットを設けてロボットアームを登録する必要がなく、ロボットアームとナビゲーション追跡装置との位置を直接位置合わせるできるため、ロボットアームを登録するプロセスを省略でき、手術時間が短縮され、手術領域の長時間露出による患者への感染リスクを低減できる。さらに、手術中にロボットアームに光学ターゲットを取り付ける必要がないため、ロボットアームの先端位置の取得はロボットアーム移動時の振動の影響を受けないため、ロボットアームの先端位置の取得の信頼性およびリアルタイム性がよく、位置取得の精度が高い。
【0085】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態の説明に過ぎず、本発明の範囲について何ら限定するものではなく、本発明の技術分野における通常の知識を有する者により上記の記載内容に基づいて行われるいかなる変更、改良も本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14