(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】耐食性とスポット溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼材
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20240402BHJP
C22C 18/00 20060101ALI20240402BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240402BHJP
C22C 38/06 20060101ALI20240402BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240402BHJP
C23C 14/16 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C23C26/00 B
C22C18/00
C22C38/00 301T
C22C38/00 302Z
C22C38/00 302A
C22C38/06
C23C14/06
C23C14/16
(21)【出願番号】P 2022536983
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2020017515
(87)【国際公開番号】W WO2021125636
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0171333
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】クァク、 ヤン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、 ウ-ソン
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-141588(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124649(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/132339(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 26/00
C22C 18/00
C22C 38/00
C22C 38/06
C23C 14/06
C23C 14/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鉄;及び
2以上の区別されるめっき層からなる多層の亜鉛系めっき層を含み、
前記多層の亜鉛系めっき層は、
0.12~0.64重量%のMgを含み、
全体付着量が15~35g/m
2であ
り、
素地鉄との界面から順次第1めっき層、第2めっき層及び第3めっき層を含み、
前記第2めっき層が、Mgを0.4~0.9重量%を含み、前記第2めっき層の付着量は、9~15g/m
2
である、
亜鉛系めっき鋼材。
【請求項2】
前記第1めっき層及び第3めっき層は、それぞれ0.1重量%以下(0重量%を含む)のMgを含むZn層である、請求項
1に記載の亜鉛系めっき鋼材。
【請求項3】
前記第1めっき層及び第3めっき層の付着量は、それぞれ3~10g/m
2である、請求項
2に記載の亜鉛系めっき鋼材。
【請求項4】
前記素地鉄は、C:0.10~1.0%、Si:0.5~3%、Mn:1.0~25%、Al:0.01~10%、P:0.1%以下(0%を除く)、S:0.01%以下(0%を除く)、残部Fe及び不可避不純物を含む、請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼材。
【請求項5】
前記素地鉄に含まれるC、Si、Mn、P及びSの含量は、下記関係式1を満たす、請求項
4に記載の亜鉛系めっき鋼材。
[関係式1][C]+[Mn]/20+[Si]/30+2[P]+4[S]≧0.3
(ここで、[C]、[Mn]、[Si]、[P]及び[S]のそれぞれは、当該元素の含量(重量%)を意味する)
【請求項6】
前記素地鉄は、微細組織として、オーステナイト、残留オーステナイト及びマルテンサイトの中から選択される1種又は2種以上を含む、請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼材。
【請求項7】
SEP 1220-2規格に沿ってスポット溶接を施したとき、Type-Bクラックの平均長さが素地鉄厚さの0.1倍以下である、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の亜鉛系めっき鋼材。
【請求項8】
前記多層の亜鉛系めっき層をなす2以上の区別されるめっき層のうち少なくとも一つのめっき層は、物理的気相蒸着(PVD)法によって形成される、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の亜鉛系めっき鋼材。
【請求項9】
前記物理的気相蒸着(PVD)法によって形成されるめっき層は、Mgを0.4~0.9重量%含むZn-Mg合金層である、請求項
8に記載の亜鉛系めっき鋼材。
【請求項10】
素地鉄を用意する段階;
前記素地鉄上に2以上の区別されるめっき層からなる多層の亜鉛系めっき層を順次形成する段階を含み、
前記多層の亜鉛系めっき層は、
0.12~0.64重量%のMgを含み、
全体付着量が15~35g/m
2であ
り、
素地鉄との界面から順次第1めっき層、第2めっき層及び第3めっき層を含み、
前記第2めっき層が、Mgを0.4~0.9重量%を含み、前記第2めっき層の付着量は、9~15g/m
2
である、
亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
【請求項11】
前記多層の亜鉛系めっき層を順次形成する段階は、
第1めっき層を形成する段階;
Mgを0.4~0.9重量%を含むZn-Mg合金層からなる第2めっき層を形成する段階;及び
第3めっき層を形成する段階を順次含む、
請求項
10に記載の亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
【請求項12】
前記第1めっき層及び第3めっき層は、それぞれ0.1重量%以下(0重量%を含む)のMgを含むZn層である、請求項
11に記載の亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
【請求項13】
前記多層の亜鉛系めっき層のうち一つ以上又はそれ以上のめっき層は、物理的気相蒸着(PVD)法によって形成される、請求項1
0~請求項1
2のいずれか一項に記載の亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性とスポット溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼材に関するものであって、より具体的には、2以上の層を含む多層の亜鉛合金がめっきされ、優れた耐食性とスポット溶接性を有する亜鉛系めっき鋼材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陰極方式で鉄の腐食を抑制する亜鉛めっき法は、防食性能及び経済性に優れることから、高耐食特性を有する鋼材の製造に広く用いられており、自動車、家電製品及び建築資材など、産業全般にわたって亜鉛がめっきされた亜鉛めっき鋼材に対する需要が増加しつつある。
【0003】
このような亜鉛めっき鋼材は、腐食環境に露出したとき、鉄よりも酸化還元電位の低い亜鉛が先に腐食して鋼材の腐食が抑制される犠牲防食(Sacrificial Corrosion Protection)の特性を有し、併せて、めっき層の亜鉛が酸化しながら鋼材表面に緻密な腐食生成物を形成させて、酸化雰囲気から鋼材を遮断することで鋼材の耐腐食性を向上させる。
【0004】
しかし、産業の高度化に伴い大気汚染が増加し、かつ、腐食環境が悪化しており、資源及び省エネルギーに対して厳しい規制が行われているため、従来の亜鉛めっき鋼材よりもさらに優れた耐食性を有する鋼材開発の必要性が高まりつつある。その一環として、めっき層にマグネシウム(Mg)などの元素を添加して鋼材の耐食性を向上させる、亜鉛系めっき鋼材の製造技術に関する様々な研究が行われている。
【0005】
一方、亜鉛めっき鋼材或いは亜鉛合金めっき鋼材(以下、「亜鉛系めっき鋼材」という)は、一般的に加工などによって部品に加工された後、スポット溶接などで溶接されて、製品として用いられるようになるが、微細組織としてオーステナイト又は残留オーステナイトを含む高強度鋼材、高P添加高強度IF(Interstitial Free)鋼材などを素地とする亜鉛系めっき鋼材の場合、スポット溶接の際、溶融状態の亜鉛が素地鉄の結晶粒界に沿って浸透して脆性クラックを誘発する、いわゆる液相金属脆化(LME、Liquid Metal Embrittlement)が発生する問題がある。
【0006】
図1は、スポット溶接によってLME亀裂が発生した溶接部材の溶接部を拡大して観察した写真である。
図1において、ナゲット(Nugget)の上下部に発生したクラックはType Aクラック、溶接肩部で発生したクラックはType Bクラック、溶接の際に電極のmisalignmentによって鋼板の内部に発生したクラックはType Cクラックという。このうち、Type B及びCクラックは、材料の剛性に大きな影響を及ぼすため、溶接時にクラックの発生を防止することが当該技術分野における核心要求事項であるといえる。
【0007】
また、亜鉛系めっき鋼材は、場合によっては真空蒸着などを含む物理的気相(蒸気)蒸着(Physical Vapor Deposition;PVD)方法によってめっきされることがある。ところが、上記物理的気相蒸着方法で形成された亜鉛めっき層は、柱形態の柱状晶(columnar)組織に成長するため、成長する柱と柱との間に空隙が生じる可能性があり、これは、めっき層の密度が低下するという問題を引き起こす。このように、密度の低い亜鉛めっき層は硬度が低く、耐ゴーリング性が低下するという問題がある。
【0008】
また、亜鉛系めっき鋼材の場合には、めっき層の組成によって、素地鉄との密着性が低下し、加工時にめっき層が素地鉄から脱落してしまうという問題が発生する余地もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一側面によると、スポット溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼材を提供することができる。
【0010】
本発明の他の一側面によると、耐ゴーリング性に優れた亜鉛系めっき鋼材を提供することができる。
【0011】
本発明のまた他の一側面によると、めっき層と素地鉄の密着性に優れた亜鉛系めっき鋼材を提供することができる。
【0012】
本発明の課題は、上述した内容に制限されない。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本開示内容に記載された事項から本発明の更なる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面による亜鉛系めっき鋼材は、素地鉄;及び2以上の区別されるめっき層からなる多層の亜鉛系めっき層を含み、上記多層の亜鉛系めっき層は、0.16~0.78重量%のMgを含むことができる。
【0014】
本発明の他の一側面による亜鉛系めっき鋼材の製造方法は、素地鉄を用意する段階;上記素地鉄上に2以上の区別されるめっき層からなる多層の亜鉛系めっき層を順次形成する段階を含み、上記多層の亜鉛系めっき層は、0.12~0.64重量%のMgを含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によると、亜鉛めっき層を多層に形成し、それぞれの層の特徴を本発明の特別な条件で制御することにより、優れた耐食性とスポット溶接性を有する亜鉛系めっき鋼材を提供することができる。また、本発明の他の一側面によると、Mgを微量含む亜鉛合金めっき層を含む亜鉛系めっき層を多層に形成し、そのうち一部の層の剛性を制御することにより、耐ゴーリング性を向上させることができる。さらに、本発明のまた他の一側面では、めっき層の層構成を制御することにより、剛性の層を含むとしても、素地鉄との密着性に優れた亜鉛めっき鋼材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】スポット溶接によってLMEクラックが発生した溶接部材の溶接部の断面を拡大して観察した写真である。
【
図2】亜鉛-マグネシウム二元系状態図の一部である。
【
図3】本発明の一実施形態によって得られる亜鉛系めっき鋼材の多層の亜鉛系めっき層の層構造を示した模式図である。
【
図4】電磁気加熱物理気相蒸着のための装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のスポット溶接性及び耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼材について詳細に説明する。本発明において、鋼板の上下は積置状態によっていつでも変わり得るため、「上(on)」という記載、例えば「素地鉄上」という記載は、素地鉄に接するということを意味するだけであり、高さ上、上部に位置するということを意味するものではないという点に留意する必要がある。また、本発明において、元素の含量は、特に他に表現しない限り、重量を基準としたものであるという点に留意する必要がある。
【0018】
本発明の亜鉛系めっき鋼材は、素地鉄と、上記素地鉄上に形成された多層のめっき層を含む。本発明では、上記素地鉄の形態については特に限定せず、例えば、鋼板又は鋼線材であってもよい。本発明でいう多層とは、組成又は組織として区分される層が数個あるということを意味する。本発明の一実施形態によると、多層をなす個別層は物理的気相蒸着(PVD)などの方法によって形成することができるが、このような工程の特性上、同一層の組成の変動は極めて狭く、それにより他の層と容易に区別することができる。ただし、層を形成する過程又は層の形成前/後に、めっき層に熱が加わることで両層の間に拡散が起こり、両層の境界がわずかに不明瞭になることもあるが、本発明ではこのような場合まで含むことができる。ただし、このような場合には、拡散によって不明瞭になった領域の中間地点を両層の境界とすることができる。ただし、必ずしも物理的気相蒸着でなくても、上述した範疇内で層の区分が明確になされる限り、本発明の範囲から除外するものではない。
【0019】
また、本発明では、素地鉄(鋼材)の条件についても特に制限しない。ただし、スポット溶接の際のLMEクラックによる問題は通常、強度が980MPa以上の高強度鋼材で発生するため、本発明の一実施形態は、強度が1,200MPa以上の高強度鋼材により有利に適用することができる。対象とする高強度鋼材の強度の上限は特に定める必要がないが、通常、市販の鋼材を対象とすると、1,800MPa以下に定めることができる。
【0020】
また、高強度鋼材の素地鉄は、必ずしもこれに限定するものではないが、微細組織として、オーステナイト、残留オーステナイト及びマルテンサイトの中から選択される1種以上を含むことができる。
【0021】
そして、必ずしもこれに限定するものではないが、本発明の一実施形態に適用することができる素地鉄としては、重量%で、C:0.10~1.0%、Si:0.5~3%、Mn:1.0~25%、Al:0.01~10%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む組成を有するものが挙げられる。また、この場合、上記C、Si、Mn、P及びSの含量は、下記関係式1を満たすことができる。
[関係式1][C]+[Mn]/20+[Si]/30+2[P]+4[S]≧0.3
(ここで、[C]、[Mn]、[Si]、[P]及び[S]のそれぞれは、当該元素の含量(重量%)を意味する)
【0022】
上記のような合金組成と微細組織を有する場合、スポット溶接の際、液相金属脆化(LME)が主に問題となる可能性があり、その理由は、次のとおりである。すなわち、オーステナイト又は残留オーステナイト組織は、他の組織に比べて結晶粒界が脆いため、スポット溶接によって応力が作用すると、液相の溶融亜鉛が溶接部上のオーステナイト又は残留オーステナイト組織の結晶粒界に浸透して亀裂を生じさせ、これにより、脆性破壊である液相金属脆化を引き起こすようになる。
【0023】
しかし、本発明では、後述するように、液相の溶融亜鉛が残留する時間を最小化しているため、上記のような合金組成と微細組織を有する鋼材を素地として亜鉛系めっき鋼材を製造しても、液相金属脆化の発生が効果的に抑制される。ただし、素地鉄の合金組成が上記の範囲を満たさない場合にも、本発明を適用できることはいうまでもない。
【0024】
本発明は、亜鉛系めっき鋼材の耐食性をさらに向上させるために、亜鉛系めっき層にMgを添加した亜鉛系めっき鋼材を対象とする。Mgが亜鉛めっき層に添加される場合には、めっき層の耐食性をさらに向上させることができる。しかし、
図2に図示したとおり、Mgが亜鉛めっき層に添加される場合には、めっき層の融点が低くなり、低い融点によって溶接時にめっき層の流動性が増加して、結晶粒界に沿って浸透しやすくなる。
【0025】
本発明の発明者らは、このような問題点を解決するために鋭意研究した結果、区別される2以上のめっき層からなる亜鉛系めっき層を素地鉄上に形成させる場合、耐食性を確保しながらも溶接時に液相金属脆化などの問題点を起こさないことを確認して、本発明に至った。
【0026】
本発明は、2以上の亜鉛層又は微量のMgを含む亜鉛合金層を含む亜鉛系めっき層が素地鉄の表面に形成された亜鉛系めっき鋼材に関するものであって、上記亜鉛系めっき層内のMg含量は低くするが、一部の層のみに適量のMgを添加させることによって耐食性を確保できるようにめっき層の構造を設計したものである。このようにする場合、本発明の亜鉛系めっき層は、多層めっき層全体の重量に対してMgを0.12~0.64%の割合で含むが、Mgを0.4~0.9重量%で含む層を少なくとも一つ含むようになる。多層めっき層全体の重量に対するMg含量が充分でない場合には、耐食性の確保が充分でない可能性がある。逆に、Mg含量が過度に高い場合には、スポット溶接性が不良になる可能性があるため、多層めっき層全体の重量に対するMg含量を上述した範囲に定めることができる。
【0027】
すなわち、
図2から確認できるように、亜鉛含量が100%の地点から耐食性を向上させるために全体めっき層のMg含量を高くすると、融点が大いに下がる領域があり、LME発生が極めて容易になる。本発明は、このような問題点を解決するために、一部の層のみにMgを相対的に高い含量で添加し、耐食性の確保に寄与させるが、残りの層にはMgを添加しないか又は微量添加して、全体合金めっき層のMg含量は高くならないようにする。一部のめっき層でMg含量が多少高いとしても、溶接時にはめっき層が溶融して混合されるため、溶融しためっき液中で、Mgは全体めっき層中の含量又はFeの拡散によって、それよりも低い含量に希釈されるようになり、その結果、溶融しためっき液の融点が大きく低下しないようになる。従って、本発明の一実施形態によって亜鉛系めっき層の層構造を制御する場合には、耐食性とスポット溶接性とを同時に実現することができる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、上記亜鉛系めっき層は、素地鉄上に、一面当たり35g/m2以下の少量で付着することができる(全体層の付着量の合計基準、素地鉄の単位面積当たり付着するめっき層の量を意味する)。このような付着量は、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)の通常の亜鉛めっき付着量である60g/m2よりも遥かに小さい値であって、付着量をこのように少なくすることにより、スポット溶接時にLMEの発生可能性をさらに減少させることができる。従って、本発明の一実施形態では、亜鉛系めっき層の付着量は35g/m2以下であるとよい。ただし、付着量が過度に少ない場合には、耐食性の確保が充分でない可能性があるため、上記付着量は15g/m2以上であるとよい。
【0029】
図3に示した本発明の一実施形態では、亜鉛系めっき層100は素地鉄との界面から順次第1~第3めっき層110~130からなる3層構造を有することができ、その中で第2めっき層120のMg含量が0.4~0.9重量%とすることができる。第2めっき層120のMg含量を0.4重量%以上に制御することにより、亜鉛系めっき層全体の耐食性を確保することができる。また、第2めっき層120のMg含量を0.9重量%以下に制御することにより、亜鉛めっき層のスポット溶接性を向上させることができる。
【0030】
第1めっき層110と第3めっき層130は、後述する各層の機能を発揮できるように、Mg含量が0.1重量%以下であることが好ましく、実質的にMgを含まない純Zn層であってもよい。ただし、純Zn層であっても、不純物レベルの他の元素(他の元素にはMgも含まれることができる)を排除する意味ではないということに留意する必要がある。
【0031】
素地鉄との界面に第1めっき層110を形成することにより、めっき密着性を向上させることができる。すなわち、Mgを0.4~0.9重量%含む第2めっき層120は比較的硬質の層であって、素地鉄との密着が円滑でない可能性があるが、第2めっき層120と素地鉄との間に、Mg含量が低いか又は純Znの第1めっき層110を形成する場合、めっき層の密着性を向上させることができる。また、第3めっき層130は、鋼板表面に黒変が発生することを抑制することができる。Mgは、酸化性の強い元素であって、酸化物又は水酸化物を容易に形成させる傾向にあるが、これにより、表面の粗度が変化し、黒変現象が発生する可能性がある。最表面をMg含量の低い第3めっき層とすることで、黒変を防止することができる。その上、第3めっき層130の付着量を一定レベル以上に制御する場合には、めっき鋼板表面に均一なリン酸塩被膜を形成することができ、自動車用途に使用するとき、優れたリン酸塩処理性及びシーラ(Sealer)密着性を期待することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、上記第2めっき層120による耐食性の向上効果を得るための第2めっき層120の付着量は、8g/m2以上であってもよい。ただし、第2めっき層の付着量が過度に大きい場合には、他のめっき層の付着量が相対的に減り、それによる有利な効果が得られ難い上に、溶接時に溶融しためっき液の融点が減少し、LMEに脆くなる可能性があるため、上記第2めっき層120の付着量は、16g/m2以下に制限することができる。本発明の他の一実施形態によると、上記第2めっき層120の付着量は、9~15g/m2であってもよく、また他の一実施形態では、11~13g/m2であってもよい。
【0033】
また、第1めっき層110及び第3めっき層130の役割を期待するためには、これらのめっき層の付着量は、それぞれ3g/m2以上であるとよい。ただし、これらのめっき層の付着量が過度に増加する場合には、第2めっき層120の付着量が制限される可能性があるため、これらのめっき層の付着量の上限は、それぞれ14g/m2に定めることができ、一実施形態では、10g/m2に定めることもできる。本発明の他の一実施形態では、上記第1めっき層110及び第3めっき層130の一つ又はすべての付着量は、それぞれ3~10g/m2であってもよく、また他の一実施形態では、それぞれ6~8g/m2であってもよい。
【0034】
本発明の上記亜鉛系めっき層は、組成の側面からも、通常の溶融亜鉛めっき(GI)鋼板に比べて、溶接時のLME防止に効果的である。その理由は、通常の溶融亜鉛めっき鋼板の場合、少量のアルミニウムを含むようになるが、上記アルミニウムにより、めっき層と素地鉄との間の合金化を妨害する抑制層(inhibition layer)が形成されるためである。このような抑制層の存在下にスポット溶接を施す場合、鉄との合金化が遅延するようになり、それによって融点の低い溶融めっき液が形成され、結晶粒界へ容易に浸透できるようになる一方で、本発明のようにMgを含む合金層が存在する場合には、抑制層が形成されないことから鉄との合金化が促進され、それによってめっき層(溶融めっき液)の融点が増加するため、LME防止に効果的である。
【0035】
上述した通り、本発明の一実施形態による亜鉛系めっき鋼材は、LMEクラックに対する抵抗性が高く、優れたスポット溶接性を有することができるが、例えば、SEP 1220-2規格に沿ってスポット溶接を施したとき、Type Bクラックの平均長さを素地鉄の厚さの0.1倍以下に制御することができる。
【0036】
本発明の一実施形態による亜鉛系めっき鋼材は、必ずしもこれに制限するものではないが、亜鉛系めっき鋼材は、真空蒸着(vacuum deposition)などを含む物理的気相蒸着(PVD)などの方法によって鋼板表面を蒸着めっきすることで製造することができる。後でより詳細に説明するが、真空蒸着法は、真空チャンバー内でコーティング物質を加熱して蒸気を生成し、上記蒸気を素地鉄の表面に噴出して蒸着するようにする方法を意味する。物理的気相蒸着による場合、溶融めっき過程で発生する抑制層(inhibition layer)の生成を減少乃至は防止することができる。上記抑制層は、溶接などの加熱過程で素地鉄とめっき層との間の合金化を抑制する役割を果たし、めっき層の融点が低い状態に維持される時間を増加させる役割をするため、溶接性の確保に望ましくない。しかし、上述した通り、真空蒸着などの物理的気相蒸着法は、抑制層を減少乃至は防止することにより、亜鉛融点(419℃)よりも融点の高いFe11Zn40などのFe-Zn合金相が容易に形成されるため、物理的気相蒸着法によって形成されるめっき層は、スポット溶接性の確保により有利である。
【0037】
このような真空蒸着によって亜鉛系めっき鋼材を製造する場合、蒸着工程の特性上、めっき層の表面方向に粒子が柱形状に形成される、いわゆる柱状晶粒子が形成されるようになるが、この場合、粒子と粒子との間が緻密でないため、プレス成型などの成型時にゴーリング(galling)現象が発生する可能性がある。しかし、本発明の一実施形態によって、多層のめっき層の一層として、Mgを0.4~0.9重量%含むめっき層を含む場合には、ゴーリング現象を著しく改善することができる。すなわち、めっき層にMgを少量含ませる場合、めっき層の硬度が上昇し、ゴーリングが起こることを防止することができる。
【0038】
本発明の実施形態による亜鉛系めっき鋼材は、多様な方法で製造することができ、その製造方法は特に制限されない。ただし、一実施形態によると、上記多層の亜鉛系めっき層をなす、区別されるめっき層の少なくとも一つの層は、物理的気相蒸着(PVD)法によって形成することができ、好ましくは真空蒸着法によって形成することができる。この場合、上記物理的気相蒸着法によって形成されるめっき層は、Mgを0.4重量%以上含む層(一実施形態によると、第2めっき層)であってもよい。また、本発明の一実施形態によると、上記多層の亜鉛系めっき層をなす、区別されるめっき層は、いずれも物理的気相蒸着、好ましくは真空蒸着法によって形成することができる。具体的には、一実施形態によると、本発明の亜鉛系めっき層は、次のような方法によって製造することができる。
【0039】
まず、素地鉄を用意し、14重量%以上のHCl水溶液を用いて酸洗、リンス及び乾燥後、プラズマ及びイオンビームなどを用いて表面の異物及び自然酸化膜を除去したのち、多層のめっき層を順次形成することによって、本発明の亜鉛系めっき鋼材を製造することができる。
【0040】
このとき、多層のめっき層のそれぞれは、電気めっき法或いは通常の真空蒸着法、例えば、電子ビーム法、スパッタリング法、熱蒸発法、誘導加熱蒸発法、イオンプレーティング法などによって形成することができるが、このうち、Mgめっき層或いはZn-Mg合金めっき層の場合、電磁気撹拌(Electromagnetic Stirring)効果を有する電磁気加熱物理気相蒸着法によって形成することもできる。
【0041】
ここで、電磁気加熱物理気相蒸着法(Electro-Magnetic Heating Physical Vapor Deposition)とは、交流電磁場を生成する一対の電磁気コイルに高周波電源を印加して電磁気力を発生させると、コーティング物質(本発明の場合、Zn、Mg或いはZn-Mg合金)が交流電磁場に囲まれた空間で加熱され、加熱されたコーティング物質が大量の蒸着蒸気(金属蒸気)を発生する現象を利用したものであって、
図4に、このような電磁気加熱物理気相蒸着のための装置の模式図が図示されている。
図4を参照すると、上記のような方法によって形成された大量の蒸着蒸気は、蒸気分配ボックス(vapor distribution box)の多数のノズルを介して素地鉄の表面に高速で噴射され、めっき層を形成するようになる。
【0042】
通常の真空蒸着装置では、コーティング物質がルツボの内部に備えられ、コーティング物質の気化は、このようなコーティング物質が備えられたルツボの加熱によって行われるが、この場合、ルツボの溶融、ルツボによる熱損失などの理由で、コーティング物質そのものに十分な熱エネルギーを供給するのに不具合がある。そのため、蒸着速度が遅いだけでなく、めっき層をなす結晶粒の大きさの微細化にも一定の限界が存在する。また、本発明のようにZn-Mg合金蒸気を蒸着させようとする場合、めっき層の均質性の確保にも一定の限界が存在する。
【0043】
しかし、これとは違って、電磁気加熱物理気相蒸着法によって蒸着を行う場合、通常の真空蒸着法とは異なり、温度による制約条件がなく、コーティング物質をより高温に露出させることができ、これにより、高速蒸着が可能であるだけでなく、結果として、形成されためっき層をなす結晶粒の大きさの微細化と、めっき層中の合金元素分布の均質化を達成できるという長所がある。
【0044】
蒸着工程の際、真空蒸着チャンバー内部の真空度は、1.0×10-3mbar~1.0×10-5mbarの条件に調節することが好ましく、この場合、めっき層の形成過程で、酸化物の形成による脆性の増加及び物性の低下の発生を効果的に防止することができる。
【0045】
蒸着工程の際、加熱されるコーティング物質の温度は、700℃以上に調節することが好ましく、800℃以上に調節することがより好ましく、1000℃以上に調節することがさらに好ましい。もし、その温度が700℃未満の場合、結晶粒の微細化及びめっき層の均質化効果を十分に確保できないおそれがある。一方、加熱されるコーティング物質の温度が高いほど、目的とする技術的効果の達成に有利になるため、本発明では、その上限について特に限定しない。しかし、その温度が一定レベル以上の場合、その効果が飽和されるだけでなく、工程コストが過度に高くなるため、これを考慮すると、その上限を1500℃に限定することができる。
【0046】
蒸着前後の素地鉄の温度は、100℃以下に調節することが好ましく、もし、100℃を超える場合、幅鋼板の温度不均一度による幅方向の反曲によって、出側多段階差等減圧システム通過時の真空度維持を妨害する可能性がある。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。ただし、後述する実施例は、本発明の権利範囲を制限するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0048】
(実施例)
重量%で、C:0.18%、Si:1.5%、Mn:3.5%、Al:0.01%、P:0.006%、S:0.003%、残部Fe及び不可避不純物を含む厚さ1.4mmの自動車用の高強度冷延鋼鈑を用意し、
図4の装置(真空度3.2×10
-3mbar)を用いて、下記表1のような条件の多層めっき層を有する多層亜鉛系めっき鋼材を製造した。すべての例において、各層のめっき層は、別途の真空チャンバーで別途の工程を経て得られており、各層のめっき層の形成の際、一対の電磁気コイルに印加される電流は1.2kA、一対の電磁気コイルに印加される周波数は、蒸着物質2kgを基準として60kHz、加熱したコーティング物質の温度は1000℃、蒸気分配ボックスの温度は900℃と、一定にした。また、各層のめっき層の蒸着前後の素地鉄の温度は60℃と一定にした。
【0049】
次に、ICP(Inductively Coupled Plasma)法によって製造された多層亜鉛系めっき鋼材の付着量とMg重量比を測定した。より具体的には、80mm×80mm大きさの試験片に切断し、表面を脱脂した後、高精密秤を用いて1次秤量(W1:0.0000g)を行った。その後、前面部にO-Ring54.5mm直径(dia)専用のコラムにクランプで付着し、溶液が漏水しないように密着させた。以降、1:3HCl溶液30ccを仕込んだ後、インヒビター(inhibiter)を2~3滴仕込んだ。表面でH2ガスの発生が終了した後、溶液を100ccメスフラスコに捕集した。このとき、洗浄瓶を用いて表面の残量をすべて捕集し、100cc以下に捕集した。以降、試験片を完全乾燥した後、2次秤量(W2)を行い、1次秤量値と2次秤量値との差を単位面積で除した値を総付着量とした。一方、捕集された溶液を対象として、ICP法によってMg含量を測定し、これをMg重量比として、その結果を表1に共に示した。表1に示したとおり、第1めっき層及び第3めっき層は純Znめっき層であって、Zn以外の他の元素は実質的に含まない組成を有しており、第2めっき層は、Mgをさらに含むZn-Mg合金組成を有していた。
【0050】
次に、製造された多層亜鉛系めっき鋼材について、溶接性、耐食性、シーラ接着性、リン酸塩処理性及び耐黒変性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0051】
より具体的には、耐食性は、それぞれの多層亜鉛系めっき鋼材を75mm×150mm大きさの試験片に切断した後、JIS Z2371に準拠して塩水噴霧試験を実施し、初期赤錆発生時間を測定して、下記のような基準で評価した。
1.優秀:片面付着量60g/m2の亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)に対して赤錆発生時間が2倍以上長い場合
2.普通:片面付着量60g/m2の亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)に対して赤錆発生時間が同等レベル又は2倍未満長い場合
3.不良:片面付着量60g/m2の亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)に対して赤錆発生時間が短い場合
【0052】
溶接性は、SEP 1220-2規格に沿って40mm×120mm大きさの試験片に切断し、各試験片にわたって合計100回のスポット溶接を施した後、Type Bクラックの有無及びその大きさを測定して、下記のような基準で評価した。
1.極めて優秀:すべての試験片でType Bクラックが発生しなかった場合
2.優秀:一部或いはすべての試験片でType Bクラックが発生し、Type Bクラックの平均長さが素地鉄(冷延鋼鈑)の厚さの0.1倍以下である場合
3.普通:一部或いはすべての試験片でType Bクラックが発生し、Type Bクラックの平均長さが素地鉄(冷延鋼鈑)の厚さの0.1倍超え0.2倍以下である場合
4.不良:一部或いはすべての試験片でType Bクラックが発生し、Type Bクラックの平均長さが素地鉄(冷延鋼鈑)の厚さの0.2倍を超える場合
【0053】
一方、耐ゴーリング性は、導油した状態でクロムめっきされた冷間加工用の金型鋼材質の鋼球を試験片に5MPaの荷重と200mm/sの速度で回転させながら、摩擦係数が0.3を超えるまでの摩擦回転数を測定して確認した。
1.優秀:摩擦係数が0.3を超えるまでの摩擦回転数が80回以上
2.普通:摩擦係数が0.3を超えるまでの摩擦回転数が60回以上、80回未満
3.不良:摩擦係数が0.3を超えるまでの摩擦回転数が60回未満
【0054】
めっき密着性を確認するために、多層亜鉛系めっき鋼材を40mm×80mm大きさの試験片に切断した後、試験片をプレス試験機に装着し、60°曲げ試験を実施した後、試験片を試験機から脱着して曲がった部分にセロハンテープを付着し、テープを剥がした後、剥がしたテープを白紙に付着して剥離幅を測定し、下記のような基準で評価した。
1.優秀:剥離幅が6.0mm以下である場合
2.普通:剥離幅が6.0mm超え8.0mm以下である場合
3.不良:剥離幅が8.0mmを超える場合
【0055】
リン酸塩処理性は、多層亜鉛系めっき鋼材を75mm×150mm大きさの試験片に切断した後、通常の自動車メーカの規格に沿って表面調整及びリン酸塩処理した後、リン酸塩の均一度を評価した。
1.良好:リン酸塩被膜が均一に形成
2.不良:リン酸塩被膜が不均一に形成
【0056】
耐黒変性は、多層亜鉛系めっき鋼材を75mm×150mm大きさの試験片に切断した後、50℃、95%相対湿度(RH)が維持される恒温恒湿気に10~20kgf/cmの圧力で加圧密着試験片を120時間の間放置し、実験前後の色変化(△E)を測定して、次の基準によって評価した。
1.良好:△E≦3
2.普通:3<△E≦5
3.不良:△E>5
【0057】
【0058】
ここで、(1):全体めっき層中のMg含量、(2):全体めっき層の付着量、(3):めっき層の層個数、(4):第1めっき層のMg含量、(5):第1めっき層の付着量、(6):第2めっき層のMg含量、(7):第2めっき層の付着量、(8):第3めっき層のMg含量、(9):第3めっき層の付着量を意味する。また、含量は重量%、付着量はg/m2を基準とする。
【0059】
【0060】
上記表1の条件と表2の結果から確認できるように、例1は、全体めっき層中のMg含量が、本発明の一実施形態による範囲よりも少なかった場合であって、耐食性が不十分であるということを確認することができた。また、例2は、全体めっき層中のMg含量が多すぎた場合であって、耐食性は充分であるものの、LME発生に弱いことから、スポット溶接性に劣ることが示された。
【0061】
例3は、全体めっき層の付着量が少なかった場合であって、十分な耐食性を示しておらず、また、例4は、全体めっき層の付着量が多すぎることからスポット溶接性が不良であった。例8と例44は、第1めっき層のめっき付着量が少なかった場合であって、その結果、めっき密着性が2等級又は3等級を示していた。
【0062】
例9は、第1めっき層のMg含量が多すぎる場合であるが、これもやはり、めっき密着性に劣る結果を招いていた。
【0063】
例45は、第1及び第3めっき層の付着量が少なかった場合であって、めっき密着性と耐黒変性が不十分である結果を示した。例46は、第1及び第3めっき層の付着量が足りておらず、第2めっき層のMg含量も低かった場合であって、リン酸塩処理性、耐黒変性及び耐食性が不十分である結果を示している。また、例47と例50は、第3めっき層の付着量が足りなかった場合であって、耐黒変性と耐食性が足りない結果を示していた。例51は、全体めっき層中のMg含量が多すぎて、第3めっき層の付着量が足りなかった場合であって、その結果、スポット溶接性がやや不十分である結果を示した。
【0064】
例12は、第3めっき層のMg含量が高かった場合であって、耐黒変性に優れていない結果を示していた。
【0065】
また、例5は、第2めっき層の付着量が本発明で規定する値よりも少なかった場合であって、その結果、耐食性が規定値を満たす場合と比べては、やや不十分である結果(2等級)を示していた。例6は、第2めっき層のMg含量が足りない場合であって、この場合にも、規定値を満たす場合よりも耐食性がやや不十分(2等級)であるということを確認することができる。これに対し、例7は、第2めっき層のMg含量が多すぎる場合であるが、耐食性は優れているものの、スポット溶接性が2等級と示された。
【0066】
例10は、第3めっき層のめっき付着量が足りなかった場合であって、耐黒変性が2等級であることが示された。例11は、第3めっき層の付着量が多すぎた場合であって、めっき耐ゴーリング性が2等級である結果を示していた。
【0067】
一方、本発明で規定する条件をすべて満たす残りの例では、耐食性、スポット溶接性、リン酸塩処理性、耐ゴーリング性、めっき密着性及び耐黒変性のいずれにおいても最上の結果が得られていた。従って、本発明の有利な効果を確認することができた。