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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】加工プログラム編集支援装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4097 20060101AFI20240402BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G05B19/4097 C
G05B19/4093 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022540212
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027088
(87)【国際公開番号】W WO2022024863
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020126561
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】劉 兆甲
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-044222(JP,A)
【文献】特開2002-326175(JP,A)
【文献】特開2016-083730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4097
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変更後のワークのCADデータと変更前のワークの加工プログラムとから、変更後のワークの加工プログラムを生成することを支援する加工プログラム編集支援装置であって、
前記変更後のワークのCADデータを解析して、前記変更後のワークの形状情報であるCAD形状情報を得るCADデータ解析部と、
前記変更前の加工プログラムを解析して、前記変更前のワークの形状情報である加工形状情報を得る加工プログラム解析部と、
前記CADデータ解析部によって得られた前記CAD形状情報と前記加工プログラム解析部によって得られた変更前の前記加工形状情報との形状のマッチングを行い、変更した形状を特定して予測形状情報を得る入力形状予測部と、
前記入力形状予測部によって得られた予測形状情報に基づいて、前記変更後のワークのCADデータにのみ存在する加工経路を前記変更前の加工プログラムに挿入し、前記変更前の加工プログラムにのみ存在する加工経路を前記変更前の加工プログラムから削除するNCプログラム自動生成部と、
を備える、加工プログラム編集支援装置。
【請求項2】
前記入力形状予測部は、前記形状を変更後のワークの形状情報と、前記形状を変更前の加工形状情報との類似度が高い場合のみ入力形状を予測する請求項1に記載の加工プログラム編集支援装置。
【請求項3】
前記入力形状予測部による形状のマッチング結果を表示する表示部をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の加工プログラム編集支援装置。
【請求項4】
前記表示部において、前記CAD形状情報と前記加工プログラム解析部によって得られた変更前の前記加工形状情報との差分から、形状を変更する候補について選択できる請求項3に記載の加工プログラム編集支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工プログラム編集支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CAMを使わず、CNC上でCAD図面を表示して、加工したい形状を選択することで、加工に必要な座標値を加工プログラムへ出力することができる技術が用いられてきた。
【0003】
図12は、従来技術におけるCNCが備える表示画面の例を示す。図12に示す例においては、表示画面の右側に表示されたCAD画面上で加工したい形状を選択すると、表示画面の左側に表示された加工プログラムに対して、加工したい形状の座標値が出力される。
【0004】
この点、CAD装置で加工形状を入力し、CAD装置から数値制御装置に対してソリッドモデルを出力し、数値制御装置でソリッドモデルを用いて各軸を制御する技術が存在する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-267169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、CAD図面に一部変更がある場合、変更前のCAD図面から作成した加工プログラムを一旦削除した後、変更後のCAD図面を表示し、全ての形状をもう1回選択し、加工プログラムを再作成する必要がある。
【0007】
このように、CAD図面の変更後、変更されていない形状も再選択して加工プログラムを作成する必要がある。この際、変更が少ない場合でも全て再選択が必要で手間が掛かる。また、変更前の加工プログラムを自動修正できないため、削除する必要がある。
【0008】
CAD図面を変更する際、当該変更を簡単に加工プログラムに反映することが可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、変更後のワークのCADデータと変更前のワークのプログラムとから、変更後のワークの加工プログラムを生成することを支援する加工プログラム編集支援装置であって、前記変更後のワークのCADデータを解析して、前記変更後のワークの形状情報であるCAD形状情報を得るCADデータ解析部と、前記変更前の加工プログラムを解析して、前記変更前のワークの形状情報である加工形状情報を得る加工プログラム解析部と、前記CADデータ解析部によって得られた前記CAD形状情報と前記加工プログラム解析部によって得られた変更前の前記加工形状情報との形状のマッチングを行い、変更した形状を特定して予測形状情報を得る入力形状予測部と、前記入力形状予測部によって得られた予測形状情報に基づいて、CADデータにのみ存在する加工経路を前記加工プログラムに挿入し、加工プログラムにのみ存在する加工経路を前記加工プログラムから削除するNCプログラム自動生成部と、を備える加工プログラム編集支援装置である。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、CAD図面を変更する際、当該変更を簡単に加工プログラムに反映することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置の機能ブロック図である。
図2】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置で用いられる既存プログラムの例である。
図3】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置で用いられるNC形状情報の例である。
図4】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置で用いられるCAD形状情報の例である。
図5】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置で用いられる変更候補形状情報の例である。
図6】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置で用いられる新規プログラムの例である。
図7A】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図7B】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図7C】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図7D】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図7E】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図7F】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図8】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える入力形状予測部の動作を示すフローチャートである。
図9】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備えるNCプログラム生成部の動作を示すフローチャートである。
図10A】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の操作画面の例を示す図である。
図10B】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の操作画面の例を示す図である。
図10C】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の操作画面の例を示す図である。
図10D】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の操作画面の例を示す図である。
図11A】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図11B】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図11C】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図11D】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図11E】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図11F】一実施形態に係る加工プログラム編集支援装置が備える表示装置の画面遷移の例を示す図である。
図12】従来技術におけるCNCが備える表示画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図1図11Fを参照することにより説明する。
【0013】
〔1 実施形態の構成〕
図1は、本実施形態に係る加工プログラム編集支援装置1の機能ブロック図である。加工プログラム編集支援装置1は、記憶部10と、制御部20と、表示装置30とを備える。
【0014】
記憶部10は、既存プログラムデータベース101、NC形状情報データベース102、CAD形状情報データベース103、変更候補形状情報データベース104、座標系情報データベース105、及び新規プログラムデータベース106を備える。
【0015】
既存プログラムデータベース101は、加工プログラム編集支援装置1を備える数値制御装置が当初より記憶していた既存プログラムを格納する。
【0016】
図2は、既存プログラムの一例を示す。
1行目の「G83」は、深い穴を開けるサイクルを定義するコマンドである。XとYのそれぞれは穴位置のデータを示す。図2に示す例においては、穴位置P1から穴位置PMまでのM個の穴位置のデータを定義する。
【0017】
また、6行目の「G72」は、端面を粗削りするサイクルを定義するコマンドである。Pで示される番号は、形状の最初のブロックのシーケンス番号である。また、Qで示される番号は、形状の最後のブロックのシーケンス番号である。また、Nが付された番号は、各ブロックのシーケンス番号である。また、Xは、X方向の座標値であり、Wは、平面第1軸(ZX平面の場合X軸)方向の仕上げ代の距離である。
【0018】
NC形状情報データベース102は、NC形状情報を格納するデータベースである。ここで、「NC形状情報」とは、後述のNCプログラム解析部202が、既存プログラムを解析することにより生成される、CAD情報を変更する前のワークの形状情報を示す。なお、以降では、既存プログラムを解析することにより生成される、CAD情報を変更する前のワークの形状情報である「NC形状情報」を「加工形状情報」とも呼称する。
【0019】
図3は、NC形状情報の一例を示す。
図3に示す例において、NC形状情報は、穴位置を示す行と、輪郭を示す行とから構成されるNC形状リストとして示されている。穴位置を示す行において、Pが付された番号はシーケンス番号を示し、その後に中心点の座標が示される。また、輪郭を示す行は、各行が、輪郭を構成する要素を示し、Eが付された番号はシーケンス番号を示す。また、要素が直線である場合には、要素を定義する行は、パラメータとして、始点と終点とを含む。要素が円である場合には、要素を定義する行は、パラメータとして、中心点と半径とを含む。要素が円弧である場合には、要素を定義する行は、パラメータとして、中心点、半径、起点角度、終点角度を含む。
【0020】
CAD形状情報データベース103は、CAD形状情報を格納するデータベースである。ここで、「CAD形状情報」とは、後述のCADデータ解析部204が、CADデータ入力部203によって入力されたCADデータを解析することにより生成される、CAD情報を変更した後のワークの形状情報を示す。
【0021】
図4は、CAD形状情報の一例を示す。
図4に示す例において、CAD形状情報は、図3に示すNC形状情報と同様に、穴位置を示す行と、輪郭を示す行とから構成されるCAD形状リストとして示されている。穴位置を示す行において、Pが付された番号はシーケンス番号を示し、その後に中心点の座標が示される。また、輪郭を示す行は、各行が、輪郭を構成する要素を示し、Eが付された番号はシーケンス番号を示す。図4に示すCAD形状情報を、図3に示すNC形状情報と比較すると、穴位置P3の行が消失している一方で、穴位置P(M+1)の行が追加されている。また、輪郭に関しては、要素E2及び要素E3の行が消失していると共に、要素E3’の行が追加されていることがわかる。
【0022】
変更候補形状情報データベース104は、変更候補形状情報を格納するデータベースである。ここで、「変更候補形状情報」とは、後述の入力形状予測部206によって、CAD情報を変更する前のワークの形状情報と、CAD情報を変更した後のCAD形状情報とのマッチングを行った結果、双方の間で変更した形状が特定された情報を示す。なお、以降では「変更候補形状情報」を「予測形状情報」とも呼称する。
【0023】
図5は、変更候補形状情報(予測形状情報)の一例を示す。
図5において、変更候補形状情報(予測形状情報)は、NC形状情報及びCAD形状リストと同様に、穴位置を示す行と、輪郭を示す行とから構成される変更候補形状リストとして示されている。図5は、穴位置を示す行及び輪郭を示す行において、flagを用いることにより、当該形状情報の状態を示す例を示している。図5の例においては、flag=0のフラグが「削除」を、flag=1のフラグが「維持」を、flag=2のフラグが「追加」を意味する。図5を参照すると、CAD情報を変更する前のワークの形状情報において、CAD情報の変更により削除される行(穴位置P3及び要素E3)に対しては、例えばflag=0のフラグが付されると共に削除される。また、CAD情報が変更されても変化しない行(穴位置P1、P2、PM、要素E1、EM)に対しては、例えばflag=1のフラグが付されると共に、記載が維持される。また、CAD情報の変更により追加される行(穴位置P(M+1)、要素E2、E3)に対しては、例えばflag=2のフラグが付される。
【0024】
座標系情報データベース105は、座標系情報を格納するデータベースである。ここで、「座標系情報」とは、後述の座標系情報入力部205によって入力される座標系に係る情報であり、例えば、NCプログラムで用いられるワーク座標系や、CAD装置で用いられるCAD座標系を含む。また、CAD座標系としては、ユーザ座標系(UCS)とワールド座標系(WCS)が挙げられ、ユーザ座標系(UCS)は、ユーザの任意でいくつも設定できる。
【0025】
新規プログラムデータベース106は、後述のNCプログラム自動生成部209によって自動生成される新規プログラムを格納するデータベースである。
【0026】
図6は、新規プログラムの一例を示す。
図2に示す既存プログラムの例と比較すると、穴位置P3の行、及び要素E3の行が消失している一方で、穴位置P(M+1)及び要素E3’の行が追加されている。
【0027】
制御部20は、CPU、ROM、RAM、CMOSメモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成されるものであり、当業者にとって公知のものである。
【0028】
CPUは、加工プログラム編集支援装置1を全体的に制御するプロセッサである。該CPUは、ROMに格納されたシステムプログラム及びアプリケーションプログラムを、バスを介して読み出し、該システムプログラム及びアプリケーションプログラムに従って加工プログラム編集支援装置1全体を制御することで、図1に示すように制御部20が、NCプログラム表示部201、NCプログラム解析部202、CADデータ入力部203、CADデータ解析部204、座標系情報入力部205、入力形状予測部206、CADデータ表示部207、候補選択部208、NCプログラム自動生成部209の機能を実現するように構成する。
【0029】
NCプログラム表示部201は、既存プログラムデータベース101に格納される、CAD情報を変更する前の既存プログラム、又は、新規プログラムデータベース106に格納される、CAD情報を変更した後の新規プログラムを、後述の表示装置30に表示する。
【0030】
NCプログラム解析部202は、既存プログラムデータベース101に格納される、CAD情報を変更する前の既存プログラムを解析することにより、NC形状情報を生成して、NC形状情報データベース102に格納する。
【0031】
CADデータ入力部203は、加工プログラム編集支援装置1を含む数値制御装置に含まれるCAD装置から、CADデータを入力する。
【0032】
CADデータ解析部204は、CADデータ入力部203によって入力されたCADデータを解析して、CAD形状情報を生成し、CAD形状情報データベース103に格納する。
【0033】
座標系情報入力部205は、座標系情報を座標系情報データベース105に格納する。
【0034】
入力形状予測部206は、CAD情報を変更する前の既存プログラムを解析して生成された、NC形状情報データベース102に格納されたNC形状情報と、CAD情報を変更した後のCADデータを解析して生成された、CAD形状情報データベース103に格納された当該CAD形状情報とのマッチングを行うと共に、座標系情報データベース105に格納される座標系情報に含まれる座標系に従って、変更した形状を特定した変更候補形状情報(予測形状情報)を生成して、変更候補形状情報データベース104に格納する。
【0035】
CADデータ表示部207は、CAD形状情報データベース103に格納されたCAD形状情報、及び変更候補形状情報データベース104に格納された変更候補形状情報(予測形状情報)を、座標系情報データベース105に格納された座標系情報に含まれる座標系に従って、後述の表示装置30に表示すると共に、変更候補の形状表示を、候補選択部208に出力する。
【0036】
候補選択部208は、CADデータ表示部207によって表示装置30に表示された変更候補から、変更候補を選択し、NCプログラム自動生成部209に出力する。
【0037】
NCプログラム自動生成部209は、既存プログラムデータベース101に格納された既存プログラム、変更候補形状情報データベース104に格納された変更候補形状情報(予測形状情報)、及び、候補選択部208による変更候補の選択結果に基づいて、新規プログラムを自動生成し、自動生成した新規プログラムを新規プログラムデータベース106に格納する。より具体的には、NCプログラム自動生成部209は、入力形状予測部206によって得られた変更候補形状情報(予測形状情報)に基づいて、CAD情報を変更した後のCADデータにのみ存在する加工経路を、既存プログラムに挿入し、CAD情報を変更する前の既存プログラムにのみ存在する加工経路を既存プログラムから削除することにより、新規プログラムを自動生成し、自動生成した新規プログラムを新規プログラムデータベース106に格納する。
【0038】
表示装置30は、既存プログラムデータベース101に格納された既存プログラム、及び、新規プログラムデータベース106に格納された新規プログラムを表示するデバイスである。また、表示装置30は、CAD形状情報データベース103に格納されたCAD形状情報、及び変更候補形状情報データベース104に格納された変更候補形状情報(予測形状情報)を、座標系情報データベース105に格納された座標系情報に含まれる座標系に従って表示するデバイスである。表示装置30は、例えば液晶モニタによって実現することが可能である。
【0039】
〔2 実施例〕
〔2.1 穴位置の設定〕
図7A図7Fは、穴位置を設定する際の、表示装置30における表示画面の遷移の一例を示す図である。
【0040】
まず図7Aに示すように、表示装置30は、ユーザが選択した既存プログラムを表示する。
【0041】
次に図7Bに示す表示画面において、CADデータ解析部204が、ユーザによって選択されたCAD情報を変更した後のCADデータを解析する。
【0042】
次に図7Cに示す表示画面において、NCプログラム解析部202が、CAD情報の変更前の既存プログラムを解析する。
【0043】
その後、入力形状予測部206が、CAD情報を変更前のNC形状情報と、CAD情報を変更後のCAD形状情報の差分を求めて、変更候補形状情報データベース104に格納する。更に、例えば、CAD情報を変更後のCAD形状情報に維持される、CAD情報を変更前のNC形状情報の形状の数を、CAD情報を変更前のNC形状情報に含まれる形状数全体で除することで類似度を算出し、この類似度が指定値を超える第1の条件、又は、CADのファイル名とNCのプログラム名とが同じである第2の条件のいずれかが成立した場合、表示装置30の表示画面は、以下の図7Dに遷移する。ただし、類似度の算出方法はこれに限られない。
【0044】
図7Dに示す表示画面においては、CAD形状情報のみに存在する穴が太線で、NC形状情報のみに存在する穴が点線で強調表示される。
【0045】
図7Eに示す表示画面において、NCプログラム自動生成部209が、差分を反映した新規プログラムを生成し、画面上に表示する。より具体的には、表示装置30は、CAD形状情報のみに存在する穴情報を規定するブロックを既存プログラムに追加し、NC形状情報のみに存在する穴情報を規定するブロックを既存プログラムから削除した表示をする。
【0046】
図7Fにおいて、後述のように、ユーザがプログラム側の画面をタッチしたり、ソフトキーをクリックしたりすることにより、プログラムを修正する。これにより、CAD情報を変更する前後での差分を、新規プログラムに反映できる。
【0047】
図8は、図7A図7Fの画面遷移により、CAD情報を変更する前後での差分を新規プログラムに反映する際の、入力形状予測部206の動作を示すフローである。
【0048】
ステップS1において、入力形状予測部206は、NC形状情報からNC形状リストを生成する。
【0049】
ステップS2において、入力形状予測部206は、CAD形状情報からCAD形状リストを生成する。
【0050】
ステップS3において、入力形状予測部206は、変更候補形状情報(予測形状情報)の全てをNC形状リストとした上で、全ての行のフラグを、flag=0とする。
【0051】
ステップS4において、穴加工をする場合(S4:Y)には、処理はステップS5に移行する。穴加工をしない場合(S4:N)には、処理はステップS8に移行する。
【0052】
ステップS5において、入力形状予測部206は、使用する工具の半径Rを取得する。
【0053】
ステップS6において、入力形状予測部206は、CAD形状リストから半径=Rの円Cをサーチする。
【0054】
ステップS7において、入力形状予測部206は、NC形状リストに円Cがある場合には、例として、円Cを規定する行のフラグflagを1に設定する。そうではない場合には、変更候補形状情報(予測形状情報)に、円Cの位置を追加し、例として、フラグflagを2に設定する。
【0055】
ステップS8において、入力形状予測部206は、CAD形状リストから、E1、E2、・・・EMと同じ要素Sをサーチし、変更候補形状情報(予測形状情報)に含まれる要素Sのフラグflagを1に設定する。
【0056】
ステップS9において、入力形状予測部206は、CAD形状リストから、例として、隣接したflag=1の2つの要素の間で、両要素と接続する要素Mをサーチする。
【0057】
ステップS10において、入力形状予測部206は、要素Mを、例として、変更候補形状情報(予測形状情報)の隣接したflag=1の2つの要素の間に挿入し、例として、flag=2とする。
【0058】
図9は、図7A図7Fの画面遷移により、CAD情報を変更する前後での差分を新規プログラムに反映する際の、NCプログラム自動生成部209の動作を示すフローである。
【0059】
ステップS11において、NCプログラム自動生成部209は、変更候補形状情報(予測形状情報)から変更候補形状リストを生成する。
【0060】
ステップS12において、NCプログラム自動生成部209は、変更候補形状リストから1つの形状Sを取得する。
【0061】
ステップS13において、例として、フラグflagの値が1の場合(S13:Y)には、処理はステップS14に移行する。例として、フラグflagの値が1ではない場合(S13:N)には、処理はステップS16に移行する。
【0062】
ステップS14において、NCプログラム自動生成部209は、既存プログラムから対応するブロックを新規プログラムにコピーする。
【0063】
ステップS15において、変更候補形状リストには次の形状がある場合(S15:N)は処理を終了する。次の形状がない場合(S15:Y)は、処理はステップS12に移行する。
【0064】
ステップS16において、例として、フラグflagの値が2の場合(S16:Y)には処理はステップS17に移行する。例として、フラグflagの値が2ではない場合(S16:N)には処理はステップS15に移行する。
【0065】
ステップS17において、Sが穴位置である場合(S17:Y)には、処理はステップS20に移行する。Sが穴位置ではない場合(S17:N)には、処理はステップS18に移行する。
【0066】
ステップS18において、Sのタイプが直前の形状と同じ場合(S18:Y)には、処理はステップS19に移行する。Sのタイプが直前の形状と異なる場合(S18:N)には、処理はステップS21に移行する。
【0067】
ステップS19において、NCプログラム自動生成部209は、直線終点座標又は円の終点座標と、Rを新規プログラムに保存する。その後、処理はステップS15に移行する。
【0068】
ステップS20において、NCプログラム自動生成部209は、穴位置の座標値を新規プログラムに保存する。
【0069】
ステップS21において、NCプログラム自動生成部209は、G01直線終点座標又はG02(3)円の終点座標とRを新規プログラムに保存する。
【0070】
上記のように、図7Fにおいて、ユーザがプログラム側の画面をタッチしたり、ソフトキーをクリックしたりすることにより、プログラムを修正する際、ユーザが用いる方法の具体例について説明する。
【0071】
候補選択部208は、ユーザによる画面へのタッチ又はユーザによるキーの操作を検知し、検知した情報に基づいてユーザの変更したい形状、プログラムを決定し、NCプログラム自動生成部209は、候補選択部208によって決定した変更したい形状と、変更候補形状情報データベース104に格納される変更候補形状情報(予測形状情報)と、に基づいて、既存のプログラムに対して変更したい形状のみを反映する。
【0072】
図10A図10Dは、候補選択部208の動作例を示す図である。図10Aに示すように、表示画面の下部に、差分をすべて変更することを指示するソフトキーを設置し、ユーザが当該ソフトキーをクリックすることにより、全ての差分を新規プログラムに反映してもよい。
【0073】
あるいは、図10Bに示すように、CAD画面に差分として示された形状のうち、1個の形状をタッチすることにより、選択した1個の形状のみを新規プログラムに反映してもよい。
【0074】
あるいは、図10Cに示すように、CAD画面中でマウスを用いてドラッグをし、ドラッグにより選択された範囲内の全ての差分を、新規プログラムに反映してもよい。
【0075】
あるいは、図10Dに示すように、既存プログラム中、差分の候補となっているブロックをタッチして、選択したブロックのみを新規プログラムに反映してもよい。
【0076】
〔2.2 輪郭形状の設定〕
図11A図11Fは、輪郭形状を設定する際の、表示装置30における表示画面の遷移を示す図である。
【0077】
まず図11Aに示すように、表示装置30は、ユーザが選択した既存プログラムを表示する。
【0078】
次に図11Bに示す表示画面において、CADデータ解析部204が、ユーザが選択したCAD情報を変更した後のCADデータを解析する。
【0079】
次に図11Cに示す表示画面において、NCプログラム解析部202が、CAD情報の変更前の既存プログラムを解析する。
【0080】
その後、入力形状予測部206が、CAD情報を変更前のNC形状情報と、CAD情報を変更後のCAD形状情報の差分を求めて、変更候補形状情報データベース104に格納する。更に、例えば、CAD情報を変更後のCAD形状情報に維持される、CAD情報を変更前のNC形状情報の形状の数を、CAD情報を変更前のNC形状情報に含まれる形状数全体で除することで類似度を算出し、この類似度が指定値を超える第1の条件、又は、CADのファイル名とNCのプログラム名とが同じである第2の条件のいずれかが成立した場合、表示装置30の表示画面は、以下の図11Dに遷移する。ただし、類似度の算出方法はこれに限られない。
【0081】
図11Dに示す表示画面において、CAD形状情報のみに存在する輪郭が太線で、NC形状情報のみに存在する輪郭が点線で強調表示される。
【0082】
図11Eに示す表示画面において、差分を反映した新規プログラムを生成し、画面上に表示する。より具体的には、表示装置30は、CAD形状情報のみに存在する輪郭情報を規定するプログラムを既存プログラムに追加し、NC形状情報のみに存在する輪郭情報を規定するプログラムを既存プログラムから削除した表示をする。
【0083】
図11Fに示す表示画面において、ユーザがプログラム側の画面をタッチしたり、ソフトキーをクリックしたりすることにより、プログラムを修正する。これにより、CAD情報を変更する前後での差分を、新規プログラムに反映できる。
【0084】
〔3 実施形態が奏する効果〕
(1) 上記の実施形態に係る加工プログラム編集支援装置(例えば、上記の「加工プログラム編集支援装置1」)は、変更後のワークのCADデータと変更前のワークのプログラムとから、変更後のワークの加工プログラムを生成することを支援する加工プログラム編集支援装置であって、変更後のワークのCADデータを解析して、変更後のワークの形状情報であるCAD形状情報を得るCADデータ解析部(例えば、上記の「CADデータ解析部204」)と、変更前の加工プログラムを解析して、変更前のワークの形状情報である加工形状情報を得る加工プログラム解析部(例えば、上記の「NCプログラム解析部202」)と、CADデータ解析部によって得られたCAD形状情報と加工プログラム解析部によって得られた変更前の加工形状情報との形状のマッチングを行い、変更した形状を特定して予測形状情報を得る入力形状予測部(例えば、上記の「入力形状予測部206」)と、入力形状予測部によって得られた予測形状情報に基づいて、CADデータにのみ存在する加工経路を加工プログラムに挿入し、加工プログラムにのみ存在する加工経路を加工プログラムから削除するNCプログラム自動生成部(例えば、上記の「NCプログラム自動生成部209」)と、を備える。
【0085】
これにより、CAD図面を変更する際、当該変更を簡単に加工プログラムに反映することが可能となる。
【0086】
(2) (1)に記載の加工プログラム編集支援装置において、入力形状予測部206は、変更後のワークの形状情報と、変更前の加工形状情報との類似度が高い場合のみ入力形状を予測する。
【0087】
これにより、変更前と変更後とで形状が大きく変わるために、入力形状の予測が困難な場合には、入力形状を予測する必要がなくなる。
【0088】
(3) (1)又は(2)に記載の加工プログラム編集支援装置は、入力形状予測部による形状のマッチング結果を表示する表示部(例えば、上記の「表示装置30」)をさらに備える。
【0089】
これにより、加工プログラム編集支援装置のユーザは、マッチングの結果を目視することにより、変更前と変更後との差分を新規プログラムに反映するか否かを判断することができる。
【0090】
(4) (3)に記載の加工プログラム編集支援装置では、表示部において、CAD形状情報と加工プログラム解析部によって得られた変更前の加工形状情報との差分から、形状を変更する候補について選択できる。
【0091】
これにより、加工プログラム編集支援装置のユーザは、変更前と変更後との差分を目視で確認することにより、形状を変更する候補について選択できる。
【符号の説明】
【0092】
1 加工プログラム編集支援装置
10 記憶部
20 制御部
30 表示装置
101 既存プログラムデータベース
102 NC形状情報データベース
103 CAD形状情報データベース
104 変更候補形状情報データベース
105 座標系情報データベース
106 新規プログラムデータベース
201 NCプログラム表示部
202 NCプログラム解析部
203 CADデータ入力部
204 CADデータ解析部
205 座標系情報入力部
206 入力形状予測部
207 CADデータ表示部
208 候補選択部
209 NCプログラム自動生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12