IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-LC-MS用の品質管理ツール 図1A
  • 特許-LC-MS用の品質管理ツール 図1B
  • 特許-LC-MS用の品質管理ツール 図2
  • 特許-LC-MS用の品質管理ツール 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】LC-MS用の品質管理ツール
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240402BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20240402BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01N30/86 B
G01N30/04 P
G01N30/72 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022550999
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021056470
(87)【国際公開番号】W WO2021185727
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】20163293.2
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】インテルマン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェリー,ユリアン
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-242255(JP,A)
【文献】特表2012-530918(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155057(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/229811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
G01N 27/62-27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの分析物についての試料のクロマトグラムにおける少なくとも1つの前記分析物のピークを識別および/または検証するための方法であって、
ステップであって、
(i)a)分析物定量器信号強度および分析物定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって前記試料のクロマトグラムを決定し、b)ステップa)で取得された前記データ点の少なくとも一部について、分析物定量器の分析物定性器に対する比である比タイプを決定すること、
(ii)a)内部標準定量器信号強度および部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって前記試料のクロマトグラムを決定し、b)ステップa)で取得された前記データ点の少なくとも一部について、内部標準定量器の内部標準定性器に対する比である比タイプを決定すること
(iii)a)分析物定量器信号強度および内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって前記試料のクロマトグラムを決定し、b)ステップa)で取得された前記データ点の少なくとも一部について、分析物定量器の内部標準定量器に対する比である比タイプを決定すること、または
(iv)a)分析物定性器信号強度および内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって前記試料のクロマトグラムを決定し、b)ステップa)で取得された前記データ点の少なくとも一部について、分析物定性器内部標準定性器に対する比である比タイプを決定すること
の何れかである、ステップと、
c)ステップb)において決定された前記比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物ピークを識別および/または検証するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料が内部標準を含み、前記方法が、
ステップであって、
(i)a)分析物定量器信号強度および分析物定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供し、b)ステップa)において取得された前記データ点の少なくとも一部について、分析物定量器の分析物定性器に対する比を決定すること、
(ii)a)内部標準定量器信号強度および部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供し、b)ステップa)において取得された前記データ点の少なくとも一部について、内部標準定量器の内部標準定性器に対する比を決定すること、
(iii)a)分析物定量器信号強度および内部標準定量器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供し、b)ステップa)において取得された前記データ点の少なくとも一部について、分析物定量器の内部標準定量器に対する比を決定すること、または
(iv)a)分析物定性器信号強度および内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供し、b)ステップa)において取得された前記データ点の少なくとも一部について、分析物定性器の内部標準定性器に対する比を決定すること、
の何れかである、ステップと
c)ステップb)において決定された前記比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物ピークを識別および/または検証するステップと
を含み、
或いは、
前記試料が内部標準を含まず、前記方法が、
a)分析物定量器信号強度および分析物定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供するステップと、
b)ステップa)において取得された前記データ点の少なくとも一部について分析物定量器分析物定性器に対する比を決定するステップと、
c)ステップb)において決定された前記比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物ピークを識別および/または検証するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、a1)前記分析物に対応する推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界を決定るステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準が、前記分析物および/または内部マーカーついて予め決定された比であるか、或いは、該予め決定された比から計算される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの分析物ピークを識別および/または検証するステップが、分析物ピークの少なくとも1つの推定ピーク境界を識別および/または検証することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)において比が決定される前記データ点の前記一部が、識別または検証される前記推定ピーク境界の下流および/または上流のデータ点を含み、並びに或いは、前記推定ピーク境界が、前記比がデータ点の所定の一部についての所定の基準範囲内にある場合に、識別および/または検証される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの分析物ピークを識別および/または検証するステップが、ピーク同一性および/またはピーク純度を識別および/または検証することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、推定分析物ピーク面積内部標準ピーク面積に対する比(ピーク面積比)を決定するステップをさらに含み、
前記方法が、分析物定量器内部標準定量器に対する比、または分析物定性器内部標準定性器に対する比を決定するステップを含み、前記少なくとも1つの分析物ピークを識別および/または検証するステップが、前記ピーク面積比を識別および/または検証することを含む、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)において比が決定される前記データ点の前記一部が、前記推定下側ピーク境界と前記推定上側ピーク境界との間のデータ点を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、分析物ピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク純度、および/または推定ピーク面積比を識別および/または検証することを含み、分析物定量器内部標準定量器に対する比または分析物定性器内部標準定性器に対する比を決定することを含み、さらに、前記比の分布を決定すること含む、請求項1、2、4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
多数のn個のデータ点にわたる前記比の分布が所定の許容基準を満たす場合に、分析物ピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク純度、および/または推定ピーク面積比が識別および/または検証される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、推定ピーク面積比を決定するステップをさらに含み、
前記推定ピーク面積比が、前記分析物に対応する推定下側ピーク境界と推定上側ピーク境界との間のデータ点の少なくとも10%にわたって計算された前記比の平均が、基準ピーク面積比±30%によって画定される範囲内にある場合に検証される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
試料の液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)測定の品質管理方法であって、
A)液体クロマトグラフィ質量分析計装置を使用して対象の前記試料中の分析物を測定し、少なくとも1つのクロマトグラムを決定するステップと、
B)請求項1から12のいずれか一項に記載の方法のステップb)からd)を実行するステップと、
C)ステップB)の結果に基づいて前記LC-MS測定の品質を評価するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
試料中の少なくとも1つの分析物の濃度を決定するためのシステムであって、
(I)少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析計装置であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法のステップa)を実行するために、前記試料中の前記分析物を測定するように構成され、かつデータ点を経時的に取得するように構成されている液体クロマトグラフィ質量分析計装置と、
(II)少なくとも1つの評価装置であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)実行するように構成されている評価装置と
を備える、システム。
【請求項15】
プログラムコード有するコンピュータプログラであって、前記プログラムコードコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)実行するために、前記プログラムコード記憶媒体に記憶されることができるか、または記憶媒体に記憶される、コンピュータプログラ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの分析物についての試料のクロマトグラムにおける少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法であって、:a)定量器信号強度および/または定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを決定し、試料が内部標準を含む場合、任意に、内部標準定量器信号強度および/または内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得するステップと、b)ステップa)において取得されたデータ点の少なくとも一部について、(i)分析物定量器と分析物定性器との比、(ii)内部標準定量器と内部標準定性器との比、(iii)分析物定量器と内部標準定量器との比、および(iv)分析物定性器と内部標準定性器との比からなるリストから選択された比タイプを決定するステップと、c)ステップb)において決定された比を基準と比較するステップと、d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと、を含む、方法に関する。本発明はまた、液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの分析物の内部標準を含む試料のクロマトグラム中の少なくとも分析物のピークを識別および/または検証するための方法であって、:a)定量器信号強度、および任意に、定性器信号強度の複数のデータ点を取得することによって試料のクロマトグラムを経時的に決定するステップと、b)ステップa)において取得されたデータ点の少なくとも一部について、(i)分析物定量器と分析物定性器との比、(ii)内部標準定量器と内部標準定性器との比、(iii)分析物定量器と内部標準定量器との比、および(iv)分析物定性器と内部標準定性器との比からなるリストから選択された比タイプを決定するステップと、c)ステップb)において決定された比を基準と比較するステップと、d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと、を含む方法、それに関連する方法、システム、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【0002】
技術分野
本発明は、液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの試料のクロマトグラムにおける少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法、前述の方法を適用する品質管理方法、ならびにそれに関連するシステムおよびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
LC-MSアッセイの場合、ピーク面積の比は、計算または検証を得るための一般的な方法である。それらは、CLSI(臨床・検査標準協会)、EMA(欧州医薬品庁)、またはGTFCh(ドイツ毒物学法化学会)などによる質量分析アッセイの検証のためのいくつかの国際ガイドラインの一部である。アッセイの品質保証のために、分析実行前に測定された添加化合物を用いた非抽出システム適合性試験は、目標値からの最小絶対ピーク面積または最大保持時間偏差などの許容要件を満たさなければならない。分析実行内で、品質管理(QC)試料は、その後に特定の頻度で試験され、計算結果が許容範囲に対してチェックされる。さらに、保持時間、ピーク幅(ピーク境界間の保持時間差によって与えられる)、内部標準(ISTD)の絶対ピーク面積、および分析物の定量器/定性器ピーク面積比は、通常、各試料において監視され、最大偏差または特定のカットオフ値の許容要件を満たすべきである。しかしながら、これらのパラメータのほとんどは、以下のピーク積分に基づいている:
【0004】
ピーク境界、干渉の検出、および結果の計算は、全て、ピーク積分に直接依存する。しかしながら、ノイズの多いバックグラウンド(例えば、老朽化MS源に起因する)またはテーリングピーク(例えば老朽化LCカラムに起因する)は、不適切なピーク積分につながる可能性がある。ピーク境界の決定は、通常、積分されたピークの保持時間の外側の点として定義され、したがって不適切なピーク積分の影響を受ける。同じ分析物の2つの異なる遷移のピーク面積比(例えば、定量器/定性器の比)は、ピークの同一性を検証し、干渉を排除するために使用される。この原理は、異なる分析物の遷移のピーク面積比が、分析物濃度とは無関係な固定値付近で逸脱するという事実に起因する。しかしながら、この値は、個々の質量遷移の検出アーチファクト、すなわち干渉によって変更されるだけでなく、不適切なピーク積分によっても変更されることができない。双方の問題を明確に区別することは、これらのピーク面積比を単独で監視することによっては不可能であり、したがって専門家による手動のピークレビューを頻繁に必要とする。分析物および内部標準(ISTD)のピーク面積の場合、その比(分析物/ISTDの比)は、結果、すなわち所望の濃度の計算につながる。結果の計算は、ピーク積分に直接依存するため、その障害は、すぐに結果に影響を及ぼす。
【0005】
さらにまた、ピーク積分における障害は、未熟な積分手順のために非常に一般的であり、これらの障害は、それぞれのシステム障害と自動的に区別されることができない。したがって、専門家による手動のピークレビューがしばしば必要とされる。一方、このピークレビューは、オペレータの経験に強く依存し、人間の作業負荷を増加させる。したがって、ピーク積分とは独立したパラメータを有する代替手順が検証に望ましい。
【0006】
解決すべき課題
それにもかかわらず、LC-MS測定におけるピーク識別および結果計算の正確さを保証するのを助ける手段および方法が当該技術分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
概要
この問題は、独立請求項の特徴を有する方法、システム、コンピュータプログラム製品、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、コンピュータロード可能データ構造、コンピュータプログラム、および記憶媒体によって対処される。単独で、または任意の組み合わせで実現されることができる有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
したがって、本発明は、液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの分析物についての試料のクロマトグラムにおける少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法であって、
a)一実施形態では、定量器信号強度および/または定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを決定することを提供するステップと;試料が内部標準を含む場合、任意に、一実施形態では、内部標準定量器信号強度および/または内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することを提供するステップと、
b)ステップa)において取得されたデータ点の少なくとも一部について、(i)分析物定量器と分析物定性器との比、(ii)内部標準定量器と内部標準定性器との比、(iii)分析物定量器と内部標準定量器との比、および(iv)分析物定性器と内部標準定性器との比からなるリストから選択された比タイプを決定するステップと、
c)ステップbにおいてで決定された比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと
を含む、方法に関する。
【0009】
当業者が理解するように、内部標準定量器および/または内部標準定性器、ならびにそのような値を含む比は、試料が内部標準を含む場合にのみ決定されることができる。したがって、前述の方法は、液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの試料のクロマトグラムにおける少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証する方法であって、
a)一実施形態では、定量器信号強度および定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを決定することを提供するステップと、
b)ステップa)において取得されたデータ点の少なくとも一部について分析物定量器と分析物定性器との比を決定するステップと、
c)ステップb)において決定された比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと
を含む、方法とすることができる。
【0010】
さらに、前述の方法はまた、液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの前記分析物の内部標準を含む試料のクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証する方法であって、
a)一実施形態では、定量器信号強度および/または定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを決定することを提供するステップと;任意に、一実施形態では、内部標準定量器信号強度および/または内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することを提供するステップと、
b)ステップa)において取得されたデータ点の少なくとも一部について、(i)分析物定量器と分析物定性器との比、(ii)内部標準定量器と内部標準定性器との比、(iii)分析物定量器と内部標準定量器との比、および(iv)分析物定性器と内部標準定性器との比からなるリストから選択された比タイプを決定するステップと、
c)ステップb)において決定された比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと
を含む、方法とすることができる。
【0011】
本明細書で使用される用語は、広義の用語であり、当業者によってそれらに割り当てられるそれらの通常および通例の意味が与えられるべきである。したがって、本明細書で使用される用語は、特に指定されない限り、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されない。以下において使用される場合、用語「有する」、「備える」もしくは「含む」またはそれらの任意の文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。また、当業者によって理解されるように、「を備える(comprising a)」および「を備える(comprising an)」という表現は、好ましくは「1つ以上を備える(comprising one or more)」を指し、すなわち「少なくとも1つを備える(comprising at least one)」と等価である。同様に、「Xを決定する(determining an X)」という用語は、1つのXを決定すること、ならびにXの2つ以上、例えばXの2つ、3つ、または4つを決定することを指す。また、「複数」という用語は、多数、一実施形態では少なくとも2つ、さらなる実施形態では少なくとも3つ、さらなる実施形態では少なくとも4つ、さらなる実施形態では少なくとも5つの示された項目に関する。
【0012】
さらに、以下で使用されるように、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より詳細には」、「具体的には」、「より具体的には」または同様の用語は、さらなる可能性を制限することなく、任意の特徴と組み合わせて使用される。したがって、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を、いかなる方法によっても制約することを意図されていない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施されてもよい。同様に、「実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明のさらなる実施形態に関する制限がなく、本発明の範囲に関する制限がなく、およびそのような方法で導入された特徴を、本発明の他の任意または非任意の特徴と組み合わせる可能性に関する制限がない任意の特徴であることを意図する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、関連分野において一般に認められている技術的精度を有する表示値に関し、好ましくは表示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、「本質的に」という用語は、示された結果または使用に影響を及ぼす偏差が存在しない、すなわち、潜在的な偏差が、示された結果を±20%を超えて、より好ましくは±10%を超えて、最も好ましくは±5%を超えて偏差させないことを示す。したがって、「から本質的になる」とは、特定された成分を含むが、不純物として存在する材料、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、および本発明の技術的効果を達成すること以外の目的のために添加される成分を除く他の成分を除外することを意味する。例えば、「から本質的になる」という語句を使用して定義される組成物は、任意の既知の許容される添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。好ましくは、一組の成分から本質的になる組成物は、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の特定されていない成分を含む。本明細書で言及されるように、測定および計算されたパラメータは、例示的な基準で説明される。当業者が理解するように、パラメータは、標準的な数学的演算、特に乗算、除算、加算、減算、逆数形成、スケーリング、および当業者に知られている他の演算によって変更されることができる。一実施形態では、特に同じ数学的演算を適用することによって、基準がそれに応じて調整される。測定および計算されたパラメータはまた、スコアの計算に使用されてもよく、スコアの計算は、任意に重み付けされてもよい1つ以上のパラメータ値に基づいて、および/または特に上記のようなさらなる数学的演算、例えばスケーリングによって計算されてもよい。
【0014】
少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証する方法は、インビトロ法である。さらに、本方法は、先に明示的に述べられたものに加えて、複数のステップを含んでもよい。例えば、さらなるステップは、例えば、ステップa)のための試料の提供、またはステップb)および/またはc)のさらなる計算に関連してもよい。また、本方法は、a1)分析物に対応する推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界を決定し、任意に内部標準に対応する推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界を決定するステップを含むことができる。さらに、前記ステップのうちの1つ以上は、自動化された機器によって実行されてもよい。一実施形態では、特にステップb)およびc)は、本明細書の他の箇所で指定されるように、評価装置として構成されることができるプロセッサ、特にコンピュータによって実行される。一実施形態では、内部標準を含む試料のクロマトグラムにおける少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法は、ステップa)において、内部標準定量器信号強度および/または内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することをさらに含む。一実施形態では、(定量器信号強度、定性器信号強度、内部標準定量器信号強度、および/または内部標準定性器信号強度)を決定するための信号強度またはそれらの組み合わせは、存在する場合、各データ点に対して独立して選択される。一実施形態では、信号強度は、ステップb)に示す比の少なくとも1つが決定されることができるように決定される。一実施形態では、少なくとも定量器信号強度および定性器信号強度は、分析物の溶出時間と相関することが知られているまたは疑われる少なくとも全てのデータ点について決定される。さらなる実施形態では、定量器信号強度、定性器信号強度、内部標準定量器信号強度および内部標準定性器信号強度は、分析物の溶出時間と相関することが知られているまたは疑われる少なくとも全てのデータ点について決定される。
【0015】
「LC-MS装置」と略される「液体クロマトグラフ質量分析装置」という用語は、当業者によって理解される。一実施形態では、この用語は、液体クロマトグラフィ(LC)と質量分析(MS)との組み合わせを実施するように構成された装置に関する。したがって、装置は、一実施形態では、少なくとも1つのLCユニットおよび少なくとも1つのMSユニットを備え、LCユニットおよびMSユニットは、少なくとも1つのインターフェースを介して結合される。本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィ(LC)ユニット」という用語は、一実施形態では、質量分析装置を用いて1つ以上の分析物を検出するための一実施形態では、液体クロマトグラフィを介して試料の1つ以上の対象の分析物を試料の他の成分から分離するように構成された分析モジュールに関する。LCは、当業者によって適切と考えられる任意の分離原理に基づいてもよい。一実施形態では、LCは、逆相クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、またはキラルクロマトグラフィである。さらなる実施形態では、LCは、逆相クロマトグラフィである。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備えることができる。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよく、複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、対象の分析物を分離および/または溶出および/または移送するために移動相が圧送される固定相を有することができる。LCユニットは、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)ユニットおよび/または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置とすることができるか、またはそれを備えることができる。本明細書で使用される場合、「質量分析ユニット」という用語は、一実施形態では、分析物またはその断片の質量電荷比に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された質量分析装置に関する。質量分析ユニットは、少なくとも1つの四重極質量分析装置とすることができ、またはそれを備えることができる。LCユニットとMSユニットとを結合するインターフェースは、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成された少なくとも1つのイオン化源を備えることができる。一実施形態では、MSユニットは、タンデム質量分析(MS/MS)ユニット、さらなる実施形態ではトリプル四重極MS/MS、さらなる実施形態では多重反応モニタリング(MRM)モードである。
【0016】
「クロマトグラム」という用語は、当業者に知られている。一実施形態では、この用語は、MS検出器によって試料から得られた1つ以上の信号の定量的尺度とクロマトグラフィ分離の進行との相関プロットに関し、一実施形態では経時的な相関プロット、例えば保持時間および/または溶出体積に関する。一実施形態では、信号の前記定量的尺度は、試料成分の少なくとも一部の濃度、特に分析物または内部標準と相関する。したがって、信号の定量的尺度は、特に信号強度とすることができる。したがって、一実施形態では、クロマトグラムは、MSクロマトグラムであり、さらなる実施形態では、MS/MSクロマトグラムである。一実施形態では、信号の前記定量的尺度は、分析物信号強度および/または内部標準信号強度を含む。一実施形態では、信号の定量的尺度は、分析物定量器、内部標準定量器、分析物定性器および/または内部標準定性器を含む。したがって、一実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラムを決定することは、上記のように、分析物定量器、内部標準定量器、分析物定性器および内部標準定性器のうちの少なくとも1つを経時的におよび/または溶出時間にわたって測定することを含む。そのような場合、一実施形態では、MSは、タンデムMSである。当業者によって理解されるように、前述の表現は、必ずしもそうである必要はないが、グラフィカル表現であってもよい。しかしながら、表現は、例えば、値対のリスト、例えば、溶出時間/定量器値対および/または溶出時間/定性器値対として、または数学的モデルとして提供されてもよい。上記のように、クロマトグラムは、2つ以上の信号を表すことができる。一実施形態では、クロマトグラムは、2つの信号、例えば、定量器信号強度および定性器信号強度を表す。さらなる実施形態では、クロマトグラムは、3つの信号を表し、さらなる実施形態では、クロマトグラムは、4つの信号、例えば、それぞれ分析物および内部標準の定量器信号強度および定性器信号強度を表す。理解されるように、クロマトグラムはまた、さらなる信号を表すことができる。しかしながら、前述の多数の信号はまた、それぞれ1つの信号を表す多数のクロマトグラムによって表されてもよい。当業者がさらに理解するように、溶出時間は、特に溶出体積または保持時間によって、当業者によって適切と考えられるLCの進行の任意の他の尺度によって置き換えられることができる。クロマトグラムは、試料のLC-MS実行全体にわたるデータ点を含むことができる。一実施形態では、特にクロマトグラムにおける分析物のピークの位置が例えば以前の実行から予測されることができる場合、クロマトグラムは、予想される分析物のピーク幅にわたる、例えば推定される下側ピーク境界から推定される上側ピーク境界までのデータ点を含むことができ、任意に、分析物のピークの下流および/または上流のそれぞれの推定境界値の1%、一実施形態では5%、さらなる実施形態では10%、さらなる実施形態では50%、さらなる実施形態では100%に及ぶデータをさらに含む。
【0017】
「ピーク」という用語は、当業者に知られており、一実施形態では、クロマトグラムの少なくとも1つの極大値に関する。したがって、「分析物のピーク」という用語は、一実施形態では、対象の分析物の識別されたピークについて、分析物と相関するピークに関する。ピーク積分のための方法は、当該技術分野において公知であり、用語「ピーク積分」は、一実施形態では、クロマトグラムのピークによって囲まれたピーク面積を決定するための少なくとも1つの数学的演算および/または数学的アルゴリズムに関する。具体的には、ピークの積分は、クロマトグラムの曲線特性の識別および/または測定を含むことができる。ピーク積分は、ピーク検出、ピーク発見、ピーク識別、ピークフィッティング、ピーク評価、下側ピーク境界および/または上側ピーク境界の決定、バックグラウンドの決定、および基底線の決定のうちの1つ以上を含むことができる。ピーク積分は、ピーク面積、保持時間、ピーク高さ、およびピーク幅のうちの1つ以上の決定を可能にすることができる。一実施形態では、ピーク検出および/または積分は、自動的に、すなわち手動の動作またはユーザとの相互作用なしに実行される。特に、ピーク識別および/またはピーク検出および/またはピーク面積の決定は、非手動で、且つ手動の動作またはユーザとの相互作用なしに実行されてもよい。
【0018】
本明細書で使用される「分析物のピークの識別」という用語は、クロマトグラムにおけるピークの少なくとも1つのパラメータを決定する任意の尺度に関する。一実施形態では、前記識別することは、下側ピーク境界および/または上側ピーク境界を識別すること、ピーク同一性および/またはピーク純度を識別すること、および/または分析物のピーク面積対内部標準ピーク面積比(ピーク面積比)を識別することを含む。
【0019】
本明細書で使用される「分析物のピークの検証」という用語は、クロマトグラムを介して分析物の事前に確立された測定を確認する任意の手段を含む。したがって、一実施形態では、前記検証は、ピークの推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界を検証すること、ピーク同一性および/もしくはピーク純度を検証すること、および/または分析物のピーク面積対内部標準ピーク面積比(ピーク面積比)を検証することである。
【0020】
本明細書で使用される「推定ピーク境界」という用語は、本明細書で指定される方法によって検証されないピーク境界に関する。したがって、推定ピーク境界は、一実施形態では、予備ピーク境界であり、例えばピーク検出および/またはピーク積分の従来の方法によって、本明細書の他の箇所で指定されるクロマトグラムに基づいて決定されることができる。推定ピーク境界はまた、異なるクロマトグラム、例えばLC-UV/VIS-クロマトグラムに基づいて決定されたピーク境界であってもよい。また、推定ピーク境界は、例えば同じもしくは類似の試料での、または本質的に純粋な分析物および/または内部標準での先行するLC-MS実行に基づいて決定された所定のピーク境界であってもよい。一実施形態では、推定ピーク境界はまた、予測ピーク境界であってもよく、例えば、分析物と化学的に類似した化合物による先行する実行に基づいて予測されてもよい。したがって、推定ピーク境界は、特定の値または範囲によって識別されてもよく、さらなる実施形態では、特定の値、例えば保持時間または溶出体積の値によって識別される。
【0021】
上記にしたがって、「推定ピーク面積比」とも呼ばれる「推定分析物のピーク面積対内部標準ピーク面積比」という用語は、本明細書で指定される方法によって検証されない分析物のピーク面積対内部標準ピーク面積比に関する。したがって、推定ピーク面積比は、一実施形態では、予備ピーク面積比であり、従来の方法によって本明細書の他の箇所で指定されるクロマトグラムに基づいて決定されることができる。当業者が理解するように、上記のピーク面積比は、特に検量線を使用して、LC-MS法における分析物を定量するために一般的に使用される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「試験試料」とも呼ばれる「試料」という用語は、物質の任意の種類の組成物に関する。したがって、この用語は、限定されないが、生物学的試料などの任意の試料を指すことができる。一実施形態では、試料は、液体試料であり、さらなる実施形態では水性試料である。一実施形態では、試験試料は、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、涙液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、および羊水を含む生理液、洗浄液、組織、細胞などからなる群から選択される。一実施形態では、試料は、血液、血漿、血清、唾液または尿試料、さらなる実施形態では、血液、血漿または血清試料、さらなる実施形態では、血清または血漿試料である。しかしながら、試料は、天然または工業用液体、特に地上水または地下水、下水、工業廃水、処理液、土壌溶出液などであってもよい。一実施形態では、試料は、少なくとも1つの対象の化合物、すなわち「分析物」と呼ばれる決定される化学物質を含むか、または含むと疑われる。試料は、1つ以上のさらなる化学化合物を含んでいてもよく、これらは決定されるべきではなく、一般に「マトリックス」と呼ばれる。試料は、それぞれの供給源から得られたものとして直接使用されてもよく、または1つ以上の前処理および/または試料調製ステップに供されてもよい。したがって、試料は、物理的および/または化学的方法、一実施形態では、遠心分離、濾過、混合、均質化、クロマトグラフィ、沈殿、希釈、濃縮、結合および/または検出試薬との接触、および/または死亡した人によって適切と考えられる任意の他の方法によって前処理されることができる。試料調製ステップにおいて、すなわち、試料調製ステップの前、最中、および/または後に、1つ以上の内部標準が試料に添加されることができる。試料には、内部標準が添加されてもよい。例えば、内部標準が所定の濃度で試料に添加されてもよい。内部標準は、質量分析装置の通常の動作条件下で容易に識別することができるように選択されることができる。内部標準の濃度は、予め決定され、分析物の濃度よりも有意に高くてもよい。
【0023】
上記のように、本明細書で使用される「分析物」という用語は、試料中で決定される任意の化合物または化合物群に関する。一実施形態では、分析物は、高分子、すなわち1000uを超える(すなわち、1kDaを超える)分子質量を有する化合物である。さらなる実施形態では、分析物は、生物学的高分子、特にポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、または前述のいずれかの断片である。一実施形態では、分析物は、小分子化合物、すなわち最大1000u(1kDa)の分子質量を有する化合物である。さらなる実施形態では、分析物は、被験者、特にヒト被験者の身体によって代謝される化学化合物であるか、または被験者の代謝の変化を誘導するために被験者に投与される化合物である。したがって、一実施形態では、分析物は、乱用薬物またはその代謝産物、例えばアンフェタミン、コカイン、メタドン、エチルグルクロニド、硫酸エチル、オピエート、特にブプレノルフィン、6-モノアカチルモルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、モルヒネ、モルフィン-3-グルクロニド、および/またはトラマドール、および/またはオピオイド、特にアセチルフェンタニル、カルフェンタニル、フェンタニル、ヒドロコドン、ノルフェンタニル、オキシコドン、および/またはオキシモルホンである。
【0024】
一実施形態では、分析物は、治療薬、例えばバルプロ酸、クロナゼパム、メトトレキサート、ボリコナゾール、ミコフェノール酸(合計)、ミコフェノール酸-グルクロニド、アセトアミノフェン、サリチル酸、テオフィリン、ジゴキシン、免疫抑制薬、特にシクロスポリン、エベロリムス、シロリムス、および/またはタクロリムス、鎮痛薬、特にメペリジン、ノルメペリジン、トラマドール、および/またはO-デスメチル-トラマドール、抗生物質、特にゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、バンコマイシン、ピペラシリン(タゾバクタム)、メロペネム、および/またはリネゾリド、抗てんかん薬、特にフェニトイン、バルポール酸、遊離フェニトイン、遊離バルプロ酸、レベチラセタム、カルバマゼピン、カルバマゼピン-10、11-エポキシド、フェノバルビタール、プリミドン、ガバペンチン、ゾニサミド、ラモトリギンおよび/またはトピラマートである。一実施形態では、分析物は、ホルモン、特にコルチゾール、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)、ジヒドロテストステロン、および/またはコルチゾンである。一実施形態では、試料は、血清または血漿試料であり、分析物は、コルチゾール、DHEA-S、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アルドステロン、DHEA、ジヒドロテストステロン、および/またはコルチゾンである。一実施形態では、試料は、唾液試料であり、分析物は、コルチゾール、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アンドロステンジオン、および/またはコルチゾンである。一実施形態では、試料は、尿試料であり、分析物は、コルチゾール、アルドステロンおよび/またはコルチゾンである。一実施形態では、分析物は、ビタミン、一実施形態ではビタミンD、特にエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)および/またはコレカルシフェロール(ビタミンD3)またはそれらの誘導体、例えば25-ヒドロキシ-ビタミン-D2、25-ヒドロキシ-ビタミン-D3、24,25-ジヒドロキシ-ビタミン-D2、24,25-ジヒドロキシ-ビタミン-D3、1,25-ジヒドロキシ-ビタミン-D2および/または1,25-ジヒドロキシ-ビタミン-D3である。さらなる実施形態では、分析物は、被験者の代謝産物である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「内部標準」という用語は、一実施形態では、試料中に定義された濃度で存在する分析物に関する。したがって、一実施形態では、内部標準の濃度は既知である。しかしながら、標準の濃度は未知であるが、少なくとも対象の試料および少なくとも1つの較正試料については同じであることも想定される。そのような場合、一実施形態では、内部標準の濃度は、分析される全ての試料について同じである。内部標準は、一実施形態では、分析物と構造的に類似しており、さらなる実施形態では、分析物と構造的に同一である。特に後者の場合、一実施形態では、内部標準は、同位体標識分子、特に分析物の同位体標識バージョン、例えばH(重水素化)、15Nおよび/または13C標識誘導体である。内部標準試料は、予め定義された量の少なくとも1つの内部標準物質を含む試料とすることができる。標準試料に関するさらなる詳細については、例えば欧州特許出願公開第3 425 369号明細書を参照されたい。
【0026】
本明細書で使用される「提供」という用語は、示された情報または対象物を利用可能にすることに関する。したがって、クロマトグラムを提供する場合、クロマトグラムは、データとして、例えば、グラフィカル表現として、測定値のリストとして、例えば、溶出時間/定量器値対および/または溶出時間/定性器値対などの値対として、または数学的モデルとして提供されることができる。クロマトグラムは、当業者によって適切であると見なされる任意の媒体を介して、特にMS装置と評価装置との間の動作可能な接続を介して、データネットワークなどのデータ接続を介して、またはデータ記憶媒体を介して提供されることができる。一実施形態では、提供することは、本明細書において以下に指定されるように決定することである。
【0027】
「決定」という用語は、事実および/またはデータを確定すること、結論付けること、または確認することを指すと当業者によって理解される。したがって、一実施形態では、決定は、定量的決定に関する。また、「クロマトグラムの決定」は、クロマトグラムについて本明細書の他の箇所で指定されているようにパラメータ値を測定すること、具体的には、LC-MS実行の進行にわたって記録されたLC-MS装置の信号を表すデータ点を記録し、任意に適切な記憶装置に記憶することに関する。同様に、一実施形態では、「比の決定」は、本明細書の他の箇所で指定される比の値を確立することである。当業者によって理解されるように、典型的には、比は、例えば同じ溶出時間または溶出体積を有する、クロマトグラフィの進行と同時に測定された値から計算される。
【0028】
「定量器」および「定性器」という用語は、本明細書の文脈において、当業者によって理解される。一実施形態では、この用語は、タンデムMSにおいて生成された分析物の断片の信号に関し、一般に、最も豊富なおよび/または最も確実に検出された断片は、分析物を定量するために使用され(分析物定量器)、第2の断片は、分析物の同一性を確認するために使用される(分析物定性器)。対応する用語は、しばしばAQN(分析物定量器)およびAQL(分析物定性器)と略される。一実施形態では、値は、特に定量器/定性器の比の計算に使用される場合、単一サイクル値、すなわち1スキャンサイクル、選択イオンモニタリング(SIM)サイクル、または多重反応モニタリング(MRM)サイクルで決定される強度である。さらなる実施形態では、値は、特に定量器/定性器の比の計算に使用される場合、特に正規化、標準化、いくつかの単一サイクル値にわたる平均または中央値の計算、いくつかの単一サイクル値にわたるデータ平滑化などを含む標準的な数学的計算によって単一サイクル強度値から導出される。したがって、一実施形態では、定量器値または定性器値として使用される各値は、最大で10個、一実施形態では最大で5個、さらなる実施形態では最大で2個の単一サイクル強度値、一実施形態では連続する単一サイクル強度値から導出される。2つのパラメータの値は、通常、対応するm/z値を有するイオンの信号強度として決定され、本明細書のクロマトグラムをもたらすためにLCの進行と相関させることができる。したがって、AQNまたはAQLの値は、単一サイクル値として、またはピーク積分の既知の方法によって決定されることができる。「定量器と定性器との比を決定する」という表現は、定性器の値を定量器の値で割ることによって比を計算することに関する。一実施形態では、AQN/AQLの比は、分析物の化合物特異的および測定方法特異的パラメータである。理解されるように、上記は、内部標準定量器および定性器の測定に準用される。
【0029】
本明細書で使用される「データ点の画分」という用語は、決定されたデータ点の部分に関する。本明細書の開示から理解されるように、記録および/または選択されるデータ点の画分は、識別または検証されるパラメータに依存することができる。したがって、推定(上側または下側)ピーク境界が識別または検証される場合、一実施形態では、データ点の画分は、推定ピーク境界の上流および/または下流のデータ点を含む。したがって、一実施形態では、データ点の画分は、推定ピーク境界を包含する50個、さらなる実施形態では25個、さらなる実施形態では10個、さらなる実施形態では5個のデータ点、一実施形態では推定ピーク境界を対称的に包含する5個のデータ点を含むことができる。これに対応して、ピーク同一性、ピーク純度、および/またはピーク面積比が識別および/または検証されるべき場合、データ点の画分は、一実施形態では、適切に分散されたデータ点、一実施形態では規則的に分散された、ピーク幅にわたって分散されたデータ点、例えば、データ点1~3、7~9、13~15など、またはピーク幅にわたって均等に分散されたデータ点、例えば、1つおきまたは2つおきのデータ点を含む。そのような場合、一実施形態では、ピーク幅に対応するデータ点の少なくとも1/4、さらなる実施形態では少なくとも1/3、さらなる実施形態では少なくとも半分に対応するデータ点が分析される。さらなる実施形態では、連続するデータ点が分析される。そのような場合、一実施形態では、少なくとも50%、さらなる実施形態では少なくとも75%、さらなる実施形態では少なくとも90%、さらなる実施形態では少なくとも95%、さらなる実施形態では少なくとも99%のピーク幅に対応するデータ点が分析される。さらなる実施形態では、ピークの全てのデータ点が分析される。
【0030】
本明細書で使用される「基準」という用語は、関連するパラメータの識別および/またはその検証を可能にする識別器を指す。そのような識別器は、比の目標値、例えば、本質的に純粋な分析物を示すAQN/AQLの比であってもよい。一実施形態では、基準は、定量的指標であり、さらなる実施形態では、値、例えば閾値であり、範囲、例えば値の範囲であり、スコアであり、または当業者によって適切であると考えられる任意の他の値もしくは範囲である。一実施形態では、選択された基準の種類に応じて、基準は、分析物固有、装置固有、および/または方法固有のパラメータであり、さらなる実施形態では、分析物固有のパラメータである。適切な基準を確立するための方法は、本明細書の他の箇所に例示的に提供されている。一実施形態では、分析物の定量器/定性器の比が分析される場合、基準は、本質的に純粋な分析物について決定された定量器/定性器の比の値である。それに対応して、実施形態では、内部標準の定量器/定性器の比が分析される場合、基準は、本質的に純粋な内部標準について決定された定量器/定性器の比の値である。さらなる実施形態では、分析物の定量器/定性器の比が分析される場合、基準は、本質的に純粋な分析物について決定された定量器/定性器の比、例えば、本質的に純粋な分析物について決定された定量器/定性器の比±100%、一実施形態では±50%、さらなる実施形態では±30%に由来する範囲である。それに対応して、一実施形態では、内部標準の定量器/定性器の比が分析される場合、基準は、本質的に純粋な内部標準について決定された定量器/定性器の比から導かれる範囲であり、例えば、本質的に純粋な内部標準について決定された定量器/定性器の比は、一実施形態では±100%、さらなる実施形態では±50%、さらなる実施形態では±25%、さらなる実施形態では±10%である。上記は、他の比、例えば分析物定量器と内部標準定量器との比に適用される。
【0031】
一実施形態では、少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証することは、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界を識別および/または検証することを含む。そのような場合、一実施形態では、特に推定ピーク境界を包含するデータ点が分析される。さらなる実施形態では、推定ピーク境界に近く、分析物のピーク内のデータ点のみを分析すれば十分であり得る。一実施形態では、決定された比が基準に基づいて予め定義された許容基準を満たす場合、特に予め定義された基準範囲内にある場合、さらなる実施形態では、比がデータ点の予め定義された画分、例えば5つのデータ点のうちの少なくとも3つの予め定義された基準範囲内にある場合、分析物のピークが識別および/または検証される。一実施形態では、ピーク境界は、多数のn個のデータ点にわたる前記比の平均が所定の許容基準を満たす場合に識別および/または検証され、一実施形態では、nは少なくとも2であり、さらなる実施形態では、少なくとも3であり、さらなる実施形態では、少なくとも4であり、さらなる実施形態では、少なくとも5であり、さらなる実施形態では、少なくとも7であり、さらなる実施形態では、少なくとも10個のデータ点である。値の「平均」という表現は、本明細書で使用される場合、当業者によって適切と考えられる平均、特に中央値または平均値を示す任意のパラメータに関する。
【0032】
一実施形態では、少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証することは、ピーク同一性および/またはピーク純度を識別および/または検証することを含む。そのような場合、一実施形態では、ステップb)において比が決定されるデータ点の画分は、推定下側ピーク境界と推定上側ピーク境界との間のデータ点を含む。一実施形態では、決定された比が基準に基づいて所定の許容基準を満たす場合、特に所定の基準範囲内にある場合に、ピーク同一性および/またはピーク純度が検証される。さらなる実施形態では、多数のn個のデータ点にわたる前記比の平均が所定の基準範囲内にある場合にピーク同一性が検証され、一実施形態では、nは少なくとも2であり、さらなる実施形態では、少なくとも3であり、さらなる実施形態では、少なくとも4であり、さらなる実施形態では、少なくとも5であり、さらなる実施形態では、少なくとも7であり、さらなる実施形態では、少なくとも10個のデータ点である。さらなる実施形態では、比がデータ点の所定の画分についての所定の基準範囲内にある場合、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間で分析されたデータ点の少なくとも80%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間で分析されたデータ点の少なくとも90%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間で分析されたデータ点の少なくとも95%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも80%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも90%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも95%である場合にピーク純度が検証される。
【0033】
一実施形態では、少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証することは、推定ピーク面積比を識別および/または検証することを含む。一実施形態では、そのような場合、本方法は、ステップa1)において識別された推定ピーク境界に基づいて推定ピーク面積比を決定することをさらに含み、分析物定量器と内部標準定量器との比、または分析物定性器と内部標準定性器との比を決定することをさらに含む。そのような場合、一実施形態では、ステップb)において比が決定されるデータ点の画分は、推定下側ピーク境界と推定上側ピーク境界との間のデータ点を含み、一実施形態では、本明細書で上述した画分を含む。さらに、そのような場合、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも10%、一実施形態では推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも50%、一実施形態では推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも90%にわたって計算された前記比の平均が、前記ピーク面積比±Xによって定義される範囲内であり、Xは、ピーク面積比の100%、一実施形態では50%、さらなる実施形態では30%である。
【0034】
一実施形態では、本方法は、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク純度、および/または推定ピーク面積比を検証する方法である。一実施形態では、そのような場合、前記方法は、分析物定量器と内部標準定量器との比、分析物定性器と内部標準定性器との比、分析物定量器と分析物定性器との比、内部標準定量器と内部標準定性器との比、分析物定量器と内部標準定性器との比および内部標準定量器と分析物定性器との比を決定することを含み、前記比の分布を決定することをさらに含む。本明細書で使用される場合、「分布」値という用語は、当業者によって適切であると考えられる値の統計的分散を示す任意のパラメータに関する。一実施形態では、分布は、特定の比の値の頻度の表現であり、例えば、比の値とその頻度とのプロットとしてグラフィカルに表されることができる。一実施形態では、分布値は、歪度または尖度である。一実施形態では、そのような場合、基準は、少なくとも部分的に純粋な分析物を含む試料、一実施形態では、分析物が潜在的な干渉から分離されていると判定された試料、さらなる実施形態では、本質的に純粋な分析物を含む試料で予め決定された前記分布の値または範囲である。さらなる実施形態では、試料は、少なくとも約0.7、一実施形態では少なくとも約0.8、さらなる実施形態では少なくとも約0.9の最も近い干渉に対する平均ピーク分解能が決定された試料である。さらなる実施形態では、分布値が基準値または基準範囲に対応する場合、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク純度、および/または推定ピーク面積比が検証される。一実施形態では、基準範囲は、少なくとも部分的に純粋な分析物について決定された分布値の±100%、一実施形態では±75%、さらなる実施形態では±50%である。
【0035】
本明細書に照らして当業者によって理解されるように、少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証する方法は、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク同一性、ピーク純度、および/またはピーク面積比を識別および/または検証することを含むことができる。したがって、本方法は、前述の識別および/または検証のうちの1つ以上を含むことができる。また、本方法は、1つ以上の検証と組み合わされた1つ以上の識別を含んでもよく、例えば、少なくとも1つのピーク境界の識別は、ピーク面積比の検証と組み合わされてもよい。例えば、推定ピーク境界内にあるデータ点を分析することは、分析物のピークの下側および上側の推定ピーク境界、ピーク同一性、ピーク純度、およびピーク面積比を識別および/または検証するために使用されることができることも理解されよう。一実施形態では、そのような分析は、例えば、最初に少なくとも1つの推定ピーク境界を識別および/または検証し、続いて、少なくとも1つの推定ピーク境界が識別/検証されることができる場合にのみピーク同一性、ピーク純度、および/またはピーク面積比を識別および/または検証することによって、および/または、最初に分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク同一性、および/またはピーク純度を最初に識別および/または検証し、続いて、少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク同一性、および/またはピーク純度が識別/検証されることができる場合にのみピーク面積比を識別および/または検証することによって、階層的に実行される。
【0036】
有利には、本発明の基礎となる研究では、分析LC-MSの重要なパラメータ、特にピーク境界、ピーク同一性、ピーク純度だけでなくピーク面積比を識別および/または検証するために、単一サイクル質量遷移パラメータが使用されることができることが分かった。有利には、そのために使用されるデータ点は、最初の分析実行の生のLC-MSデータから取得されることができ、追加の試験または試薬を必要としない。
【0037】
上記の定義は、以下に準用される。以下にさらに行われる追加の定義および説明は、本明細書に記載される全ての実施形態にも準用される。
【0038】
本発明はまた、試料中の分析物の液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)測定の品質管理方法であって、
A)液体クロマトグラフィ質量分析計装置を使用して試料中の前記分析物を測定し、少なくとも1つのクロマトグラムを決定するステップと、
B)本発明の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法のステップb)からd)を実行するステップと、
C)ステップB)の結果に基づいて前記LC-MS測定の品質を評価するステップと
を含む、方法に関する。
【0039】
品質管理の方法は、インビトロ法である。さらに、本方法は、先に明示的に述べられたものに加えて、複数のステップを含んでもよい。例えば、さらなるステップは、例えば、ステップa)のための試料の提供、またはステップb)および/またはc)のさらなる計算に関連してもよい。また、本方法は、推定ピーク境界、ピーク同一性、ピーク純度、およびピーク面積比の少なくとも1つが、i)ステップA)の結果を信頼できないものとしてマークするステップ、ii)ステップA)の結果を出力しないステップ、および(iii)任意に同一でないLC-MSプロトコルを使用して前記試料の再実行を開始するステップのうちの1つ以上のステップであるステップB)において検証されない場合のさらなるステップを含むことができる。本方法は、自動化された機器、例えば本明細書において以下に指定される評価ユニットによって支援または実行されてもよい。
【0040】
本明細書で使用される「品質管理」という用語は、当業者に知られている。一実施形態では、品質管理は、エンティティによって実行されたプロセスおよび/または生産された商品が所定の品質基準に適合することを保証するプロセスである。さらなる実施形態では、試料測定、特に患者試料などの医療試料の測定、例えば臨床診断および/または臨床化学における品質管理は、特定の測定方法で得られた分析結果がゴールドスタンダード法で得られる結果に対応すること、したがって、一実施形態では、所定の範囲内で理論的に得られる結果に対応することを確実にすることを含む。したがって、一実施形態では、品質管理のための方法は、さらなるステップとして、ステップB)の結果に基づいて前記LC-MS測定の品質を評価し、任意に、本明細書で上記に特定される一実施形態では、適切な措置をとることを含む。
【0041】
「試料中の分析物を測定する」という用語は、当業者によって理解される。一実施形態では、この用語は、試料中の分析物の量の定性的、半定量的、または定量的決定に関し、一実施形態では、試料中の分析物の量の定量的決定に関する。本明細書で使用される場合、分析物の「量」という用語は、分析物の任意の定量的尺度に関し、試料質量または試料体積が分かっている場合の量から計算されることができる質量分率および濃度などの他の対応する尺度と等価である。したがって、試料中の分析物の測定結果は、任意の単位、重量、質量分率、濃度などの測定値、またはそれらから導出された測定値、例えば所定の定義による国際単位を含む、当業者によって適切と考えられる任意の単位で表されることができる。
【0042】
LC-MSによって分析物の量を決定するための方法は、原則として当業者に知られている。一実施形態では、本方法は、分析物のピーク面積(分析物のピーク面積)を決定することによって、試料中の分析物の量を定量的に決定することを含む。さらなる実施形態では、さらに内部標準のピーク面積(ISピーク面積)が決定され、分析物のピーク面積とISピーク面積との比が決定され、一実施形態では、前記比が較正関数と比較され、それによって濃度値が決定される。対応する方法は、当業者に知られている。
【0043】
本発明は、さらに、試料中の少なくとも1つの分析物の濃度を決定するためのシステムであって、
(I)少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析計装置であって、前記試料中の前記分析物を測定するように構成され、かつデータ点を経時的に取得するように構成されている、一実施形態では、本発明の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法のステップa)を実行するように構成されている、少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析計装置と、
(II)本発明の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では、全てのステップb)からd)を実行するように構成されている、少なくとも1つの評価装置と
を備える、システムに関する。
【0044】
本明細書で使用される「システム」という用語は、互いに動作可能に連結された異なる手段に関する。前記手段は、単一の物理ユニット内に実装されてもよく、または互いに動作可能に連結された物理的に分離されたユニットであってもよい。適切な構成要素およびそれらの特性は、少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法の文脈において、本明細書の以下の他の箇所および本明細書の上記の箇所に記載されている。したがって、本発明の方法は、本明細書で指定されるシステムによって実装されることができる。したがって、一実施形態では、装置は、本明細書の他の箇所で指定される少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証する方法、および/または本明細書の他の箇所で指定される品質管理方法を実行するように構成される。システムは、さらなる装置またはユニット、特にデータ収集器、出力ユニット、通信インターフェース、および/または当業者によって適切であると考えられる任意の他の装置またはユニットを備えることができる。
【0045】
少なくとも1つのクロマトグラムを決定するためのLC-MS装置ならびに手段および方法は、本発明の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法の文脈で本明細書において上述されている。
【0046】
「評価装置」という用語は、一般に、一実施形態では少なくとも1つのデータ処理装置を使用し、さらなる実施形態では少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、上述した方法ステップを実行するように適合された任意の装置を指す。したがって、例として、少なくとも1つの評価装置は、いくつかのコンピュータコマンドを含むソフトウェアコードが記憶された少なくとも1つのデータ処理ユニットを備えることができる。評価装置は、示された動作のうちの1つ以上を実行するための1つ以上のハードウェア要素を提供することができ、および/または方法ステップのうちの1つ以上を実行するために実行されるソフトウェアを1つ以上のプロセッサに提供することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「データ収集器」という用語は、データ、特にLC-MS装置によって決定されたデータ点、クロマトグラム、決定された比、識別および/または検証の結果、および/または提供された推奨事項、および/または試料に関してさらに進める上で行われる決定を記憶するように構成された任意の記憶ユニットに関する。一実施形態では、データ収集器は、少なくとも1つのクロマトグラムを受信および/または記憶するように構成された少なくとも1つのデータベースを備える。一実施形態では、データ収集器は、1つ以上の基準値を含む少なくとも1つのデータベースを備える。
【0048】
本明細書で使用される「出力ユニット」という用語は、システムから別のエンティティへの情報の転送のために構成された任意のユニットに関し、別のエンティティは、さらなるデータ処理装置および/またはユーザとすることができる。したがって、出力装置は、適切に構成されたディスプレイなどのユーザインターフェースを備えてもよく、またはプリンタであってもよい。しかしながら、出力ユニットは、例えばキャリーオーバの検出を示すインジケータ、例えばインジケータランプであってもよい。
【0049】
「通信インターフェース」という用語は、情報の交換、特にデータの交換のために構成された任意のインターフェースに関するものと当業者によって理解される。そのようなデータ交換は、同軸、ファイバ、光ファイバまたはツイストペア、10ベース-Tケーブル、USBなどのストレージユニットコネクタ、ファイアワイヤ、および同様のコネクタなどの永続的または一時的な物理的接続によって達成されることができる。あるいは、例えば、Wi-Fi、LTE、LTEアドバンストまたはブルートゥースなどの電波を使用する一時的または永続的な無線接続によって達成されてもよい。
【0050】
本発明は、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に添付された実施形態のうちの1つ以上において本発明にかかる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムをさらに開示および提案する。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ媒体に記憶されることができる。したがって、具体的には、上記の1つ、2つ以上、またはさらには全ての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって、好ましくはコンピュータプログラムを使用することによって支援または実行されることができる。
【0051】
本発明は、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態では、本発明にかかる方法を実行するために、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品をさらに開示および提案する。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアに記憶されることができる。
【0052】
さらに、本発明は、例えばコンピュータまたはコンピュータネットワークの作業メモリまたはメインメモリなど、コンピュータまたはコンピュータネットワークへとロードされた後に、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上による方法を実行することができるデータ構造を記憶したデータキャリアを開示および提案する。
【0053】
本発明は、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に開示された実施形態のうちの1つ以上にかかる方法を実行するために、機械可読キャリア上に記憶されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品をさらに提案および開示する。本明細書中で用いられる場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリア上に存在することができる。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0054】
さらに、本発明は、本明細書に開示された実施形態のうちの1つ以上にかかる方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号を提案および開示する。
【0055】
一実施形態では、本発明のコンピュータ実施態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態の1つ以上にかかる方法のうちの1つ以上の方法ステップまたは全ての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行されることができる。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれかは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行されることができる。一般に、これらの方法ステップは、試料の提供および/または実際の測定を実行する特定の態様などの手作業を必要とする方法ステップを通常除いて、任意の方法ステップを含むことができる。
【0056】
具体的には、本発明は、以下をさらに開示する:
プロセッサが、この説明で記載される実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【0057】
データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造。
【0058】
プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータプログラム。
【0059】
コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム。
【0060】
プログラム手段がコンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に記憶された、先行する実施形態にかかるプログラム手段を備えるコンピュータプログラム。
【0061】
データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークのメイン記憶部および/またはワーキング記憶部にロードされた後、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された、記憶媒体。
【0062】
コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、この説明に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体上に記憶され得る、または記憶される、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【0063】
本発明は、さらに、LC-MS装置における分析物の分析方法を最適化する方法であって、
a)一実施形態では、定量器信号強度および定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを決定することを提供するステップと、
b)推定下側ピーク境界、推定上側ピーク境界、推定ピーク最大値、ピーク同一性、および/またはピーク純度を決定するステップと、
c)本発明の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法によって、ステップ(b)の推定下側ピーク境界、推定上側ピーク境界、推定ピーク最大値、ピーク同一性、および/またはピーク純度を検証するステップと、
d)推定下側ピーク境界、推定上側ピーク境界、推定ピーク最大値、ピーク同一性、および/またはピーク純度のうちの少なくとも1つがステップ(c)において検証されない場合に、試料前処理パラメータ、LCパラメータ、および/またはMSパラメータを変更するステップと、
e)それによって、分析物の分析方法を最適化するステップと
を含む、方法に関する。
【0064】
分析方法を最適化する方法は、インビトロ法である。本方法は、上記で指定されたものに加えてステップを含むことができる。例えば、さらなるステップは、分析のための試料を提供することに関することができる。分析方法を最適化するための方法において、試料は、部分的または本質的に純粋な分析物を含むことができる。しかしながら、一実施形態では、試料は、体液の試料または体細胞からの試料であり、実施形態では体液の試料である。本方法は、自動化された機器によって支援されてもよい。一実施形態では、本方法は、完全自動化方法である。
【0065】
「分析方法の最適化」という用語は、原則として、当業者によって理解される。一実施形態では、この用語は、一実施形態ではマトリックス成分の存在下で、さらなる実施形態では試料中に存在すると予想されるマトリックス成分の存在下で、対象の分析物が本質的に干渉を受けずに測定されることができるように分析LC-MS方法のパラメータを変更することを含む進行に関する。したがって、一実施形態では、ステップd)において、推定下側ピーク境界、推定上側ピーク境界、推定ピーク最大値、ピーク同一性、および/またはピーク純度が検証されるまで、方法ステップa)からe)が繰り返される。
【0066】
「試料前処理パラメータ」という用語は、前記試料での分析LC-MS実行の結果に影響を及ぼすことが知られているまたは仮定されている任意の前処理パラメータに関すると当業者によって理解される。一実施形態では、パラメータは、分析実験室における受信後の試料前処理に関する。したがって、一実施形態では、試料前処理パラメータは、試料取り扱いのパラメータ、例えば温度、物理的試料前処理、例えば遠心分離、濾過、加熱および/または冷却のパラメータ、化学的試料前処理、例えば試料沈殿および/または抽出およびそれに使用される溶媒のパラメータ、試料成分の誘導体化などである。
【0067】
「LCパラメータ」という用語は、試料に対する分析LC-MS実行の結果に影響を及ぼすことが知られているまたは仮定されている任意のLCパラメータに関すると当業者によって理解される。一実施形態では、前記LCパラメータは、試料希釈、試料体積、分離原理およびLCカラムの選択、1つ以上の溶媒の選択、勾配の形態、カラム温度などから選択される。
【0068】
「MSパラメータ」という用語は、試料に対する分析LC-MS実行の結果に影響を及ぼすことが知られているまたは仮定されている任意のMSパラメータに関すると当業者によって理解される。一実施形態では、前記MSパラメータは、イオン化法、検出器の種類、断片化の数などから選択される。
【0069】
本明細書で使用される「パラメータの変更」という用語は、分析LC-MS実行の結果に影響を及ぼすことが知られているまたは仮定されているパラメータの任意の変化に関する。したがって、変更は、典型的には、結果の変化が予想される程度のようなものである。一実施形態では、変更されたパラメータは、LCパラメータである。一実施形態では、パラメータは、LC-MS装置のオペレータによって変更され、さらなる実施形態では、パラメータは、特に最適化アルゴリズムにしたがって自動的に変更される。適切なアルゴリズムは、当該技術分野において公知である。したがって、一実施形態では、分析方法を最適化するための方法は、本明細書において上述したシステムで実装される。当業者が理解するように、システムは、そのような場合、指定された少なくとも1つの評価装置に動作可能に接続された多数のLC-MS装置を備えることができる。
【0070】
本発明はまた、LC装置上で分取試料から対象の化合物を精製する方法であって、
a)前記LC装置によって前記分取試料の成分を画分に分離し、プール化のために1つ以上の画分を予備的に割り当てることと、
b)ステップa)におけるプール化のために予備的に割り当てられた画分の少なくとも1つのアリコートのMSクロマトグラムを記録することと、
c)少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法にかかる方法によってプール化のためのステップb)の前記少なくとも1つの画分の割り当てを検証することと、
d)化合物を含む画分のプールにおける確認された割り当てを有する試料を含めることと、
e)それによって、前記対象の化合物を精製することと
を含む、方法に関する。
【0071】
化合物を精製するための方法は、インビトロ法であり、一実施形態では分取法である。さらに、本方法は、上記で指定されたものに加えてさらなるステップを含むことができる。例えば、さらなるステップは、試料の前処理および/または試料の前精製に関連することができる。したがって、一実施形態では、試料は、予備精製試料である。また、LC分離のクロマトグラム、例えばUV/VISクロマトグラムが記録されてもよい。一実施形態では、本方法は、化合物の分取精製における最後のLCステップである。
【0072】
本明細書で使用される「対象の化合物」という用語は、当業者によって精製またはさらに精製されることが対象であると考えられる任意の化学分子を含む。一実施形態では、対象の化合物は、分析物として上記に示された基の1つからの化合物であるか、または分析物として上記に示された化合物の1つである。したがって、一実施形態では、対象の化合物は、最大1kDaの分子質量を有する低分子質量化合物である。さらなる実施形態では、対象の化合物は、高分子、一実施形態では生物学的高分子、一実施形態では1kDaを超える分子質量を有する高分子である。一実施形態では、対象の化合物は、ポリペプチド、さらなる実施形態では治療用ポリペプチドである。
【0073】
本明細書で使用される「分取試料」という用語は、分取精製に十分な量の対象の化合物を含む試料に関する。当業者が理解するように、分取精製に十分な量は、含まれる対象の化合物の種類に強く依存する。一実施形態では、分取試料が、少なくとも1mg、一実施形態では少なくとも10mg、さらなる実施形態では少なくとも100mg、さらなる実施形態では少なくとも1g、さらなる実施形態では少なくとも10g、さらなる実施形態では少なくとも100g、さらなる実施形態では少なくとも1kgの量の対象の化合物を含む。上記のように、分取試料は、一実施形態では、予備精製試料である。したがって、一実施形態では、対象の化合物は、少なくとも10%、さらなる実施形態では少なくとも25%、さらなる実施形態では少なくとも50%、さらなる実施形態では少なくとも75%、さらなる実施形態では少なくとも85%、さらなる実施形態では少なくとも90%、さらなる実施形態では少なくとも95%、さらなる実施形態では少なくとも99%の純度で分取試料に含まれる。当業者が理解するように、分取試料の体積は、対象の化合物の種類、その濃度、および実施されるLCに強く依存する。したがって、分取試料の体積は、数マイクロリットルから数千リットルとすることができる。典型的には、分取試料は、内部標準を欠いている。
【0074】
「画分」という用語は、当業者には、物質の組成物の部分、一実施形態では、分取試料への分離ステップの適用から生じる、本明細書で指定されるLC分離の溶出液の部分に関すると理解される。一実施形態では、画分の少なくとも1つは、対象の化合物を含むことが知られているか、または疑われる。特に、少数の画分、特に3つまたは2つの画分が得られる場合、画分は、必ずしも同じ体積を有する必要はない。一実施形態では、本明細書で指定される画分は、仮想画分であり、すなわち、分離ステップの溶出液を同じまたは異なる体積を有することができる部分に形式的に分割することによって生成される。さらなる実施形態では、画分は、別々の容器に含まれる、同じまたは異なる体積を有することができる物理的画分である。一実施形態では、画分の少なくとも一部は、例えば本方法を実施する以前の例から、対象の化合物を含むことが知られているまたは疑われる画分である。
【0075】
本明細書で使用される場合、「画分のアリコート」という用語は、画分の小部分、典型的には画分の体積と比較して小さい小部分、例えば画分の体積の10分の1、100分の1、1000分の1、またはさらに少ない小部分に関する。
【0076】
「少なくとも1つの画分」という用語は、当業者には、提供される全ての画分の少なくとも1つの画分の数に関すると理解される。一実施形態では、画分の少なくとも1つは、少なくとも2個、一実施形態では少なくとも5個、さらなる実施形態では少なくとも10個の画分である。さらなる実施形態では、画分の少なくとも1つは、提供される全ての画分の少なくとも1%、一実施形態では少なくとも5%、さらなる実施形態では少なくとも10%、さらなる実施形態では少なくとも25%、さらなる実施形態では少なくとも50%に関する。一実施形態では、画分の少なくとも一部は、提供される全ての画分を含む。上記のように、一実施形態では、画分の少なくとも一部が、例えば本方法を実施する以前の例から、対象の化合物を含むことが知られているまたは疑われる。また、純度は、画分の一部、例えばLCクロマトグラムにおける生成物ピークの開始および/または終了に近い画分についてのみ重要であることが知られることができる。したがって、対象の化合物を精製するための方法において、MSクロマトグラムは、対象の化合物の純度が確立される必要がある、すなわち、プールへの割り当てが本明細書において以下に指定されるように検証される必要がある画分についてのみ記録されるのに十分であり得る。したがって、一実施形態では、対象の化合物を精製するための方法は、本明細書において上記特定されるような対象の化合物ピークの少なくとも1つのピーク境界を識別および/もしくは検証すること、および/または本明細書において上記特定されるような対象の化合物ピークのピーク同一性および/もしくはピーク純度を識別および/または検証することを含むことができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「プール化のための試料の割り当て」という用語は、精製またはさらに精製された対象の化合物の将来のプールの一部になる画分を割り当てることに関する。一実施形態では、プール化は、少なくとも2つの別々の画分を物理的に組み合わせてプールを形成する行為を含む。しかしながら、上記を考慮して、この用語は、いくつかの仮想画分を含むことができるLC実行の溶出液の部分をプールに向け直すことも含む。一実施形態では、プールされる画分の数は1つであってもよい。本明細書で使用される「予備的に割り当てる」という用語は、画分の非最終的な割り当てに関する。そのような予備的割り当ては、同じLC実行の以前の例、LC実行のUV/VISクロマトグラムの分析、および/または当業者によって適切であると考えられる任意の他の方法に基づいてもよい。予備的割り当て後、画分は、プールに含めるべきか否かの確認を必要とする。そのような画分は、特に、対象の化合物のピークの予想される開始または終了に近い画分とすることができる。一実施形態では、例えば、これらの画分が干渉に関して重要ではないことが知られている場合、割り当ての検証が必要ではない画分が存在することができる。そのような試料は、検証なしにプール化のために最終的に割り当てられることができる。そのような場合、取得されたプールは、典型的には、最終的に割り当てられた画分および検証された割り当てられた画分を含む。当業者が理解するように、プール化はまた、対象の化合物の2つ以上のプールを確立することができる。例えば、高純度の1つのプールおよび低純度の第2のプールが生成されることができ、第2のプールは、例えば、同じLC実行の繰り返しにおいて、または別の非同一の分離方法において使用される。上記にしたがって、「検証された割り当て」という用語は、画分の予備的でない割り当てに関する。これは、一実施形態では、検証された割り当ての後、画分が対象の化合物プールに含まれる。
【0078】
以上を考慮して、以下の実施態様が特に想定される:
実施形態1。液体クロマトグラフィ質量分析計装置からの分析物についての試料のクロマトグラムにおける少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法であって、
a)定量器信号強度および/または定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供し、試料が内部標準を含む場合、任意に、一実施形態では、内部標準定量器信号強度および/または内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に提供する、取得するステップと、
b)ステップa)において取得されたデータ点の少なくとも一部について、(i)分析物定量器と分析物定性器との比、(ii)内部標準定量器と内部標準定性器との比、(iii)分析物定量器と内部標準定量器との比、および(iv)分析物定性器と内部標準定性器との比からなるリストから選択された比タイプを決定するステップと、
c)ステップb)において決定された比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと
を含む、方法。
【0079】
実施形態2。前記試料が内部標準を含み、方法が、
a)定量器信号強度および/または定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供し、任意に、一実施形態では、内部標準定量器信号強度および/または内部標準定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することを提供するステップと、
b)ステップa)において取得されたデータ点の少なくとも一部について、(i)分析物定量器と分析物定性器との比、(ii)内部標準定量器と内部標準定性器との比、(iii)分析物定量器と内部標準定量器との比、および(iv)分析物定性器と内部標準定性器との比からなるリストから選択された比タイプを決定するステップと、
c)ステップb)において決定された比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと
を含み、
または
前記試料が内部標準を含まず、方法が、
a)定量器信号強度および定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを提供するステップと、
b)ステップa)において取得された前記データ点の少なくとも一部について分析物定量器と分析物定性器との比を決定するステップと、
c)ステップb)において決定された比を基準と比較するステップと、
d)比較するステップc)に基づいてクロマトグラム中の少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップと
を含む、実施形態1に記載の方法。
【0080】
実施形態3。クロマトグラムを提供することがクロマトグラムを決定することである、実施形態1または2に記載の方法。
【0081】
実施形態4。前記方法が、a1)前記分析物に対応する推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界を決定し、任意に、前記内部標準に対応する推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界を決定するステップをさらに含む、実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
実施形態5。前記推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界が、予め定義された推定ピーク境界であり、および/または前記推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界が、一実施形態では、自動ピーク認識を行うことによってクロマトグラムに基づいて決定される、実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
実施形態6。前記基準が、所定の基準値、基準範囲、または基準スコアであり、一実施形態では、所定の基準範囲である、実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
実施形態7。前記基準が、分析物および/または内部マーカー、一実施形態では精製された分析物および/または精製された内部マーカーについて予め決定された比であるか、またはそれから計算される、実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
実施形態8。前記基準が前記所定の比±Xであり、一実施形態では、精製された分析物の所定の比±Xであり、Xが所定の比の100%、一実施形態では50%、さらなる実施形態では30%である、実施形態7に記載の方法。
【0086】
実施形態9。前記少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップが、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界を識別および/または検証するステップを含む、実施形態1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
実施形態10。ステップb)において比が決定されるデータ点の前記画分が、識別または検証されるピーク境界の下流および/または上流のデータ点を含む、実施形態9に記載の方法。
【0088】
実施形態11。前記ピーク境界が、比が所定の基準範囲内にある場合に識別および/または検証される、実施形態9または10に記載の方法。
【0089】
実施形態12。前記ピーク境界が、一実施形態では5つの連続するデータ点のうち少なくとも3つにおいて、比がデータ点の所定の画分について所定の基準範囲内にある場合に識別および/または検証される、実施形態9から11のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
実施形態13。前記ピーク境界が、多数のn個のデータ点にわたる前記比の平均が所定の許容基準を満たす場合に識別および/または検証され、一実施形態では、nは少なくとも2であり、さらなる実施形態では、少なくとも3であり、さらなる実施形態では、少なくとも4であり、さらなる実施形態では、少なくとも5であり、さらなる実施形態では、少なくとも7であり、さらなる実施形態では、少なくとも10個のデータ点である、実施形態9から12のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
実施形態14。前記少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップが、ピーク同一性および/またはピーク純度を識別および/または検証することを含む、実施形態1から13のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
実施形態15。ステップb)において比が決定されるデータ点の前記画分が、推定下側ピーク境界と推定上側ピーク境界との間のデータ点を含む、実施形態1から14のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
実施形態16。ピーク同一性および/またはピーク純度が、比が所定の基準範囲内にある場合に検証される、実施形態13から15のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
実施形態17。ピーク同一性が、比がデータ点の所定の画分について所定の基準範囲内にある場合に検証される、実施形態13から16のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
実施形態18。多数のn個のデータ点にわたる前記比の平均が所定の基準範囲内にある場合にピーク同一性が検証され、一実施形態では、nは少なくとも2であり、さらなる実施形態では、少なくとも3であり、さらなる実施形態では、少なくとも4であり、さらなる実施形態では、少なくとも5であり、さらなる実施形態では、少なくとも7であり、さらなる実施形態では、少なくとも10個のデータ点である、実施形態13から17のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
実施形態19。ピーク純度が、比がデータ点の所定の画分についての所定の基準範囲内にある場合、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間で分析されたデータ点の少なくとも80%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間で分析されたデータ点の少なくとも90%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間で分析されたデータ点の少なくとも95%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも80%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも90%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも95%である場合に検証される、実施形態13から16のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
実施形態20。複数のn個のデータ点にわたる前記比の平均が、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも80%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも90%、一実施形態では、推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも95%にわたって所定の許容基準を満たす場合にピーク純度が検証され、実施形態ではnが少なくとも2、さらなる実施形態では少なくとも3、さらなる実施形態では少なくとも4、さらなる実施形態では少なくとも5、さらなる実施形態では少なくとも7、さらなる実施形態では少なくとも10個のデータ点である、実施形態13から16または19のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
実施形態21。前記方法が、推定分析物のピーク面積対内部標準ピーク面積比(ピーク面積比)を決定することをさらに含み、前記方法が、分析物定量器と内部標準定量器との比、または分析物定性器と内部標準定性器との比を決定することを含み、前記少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するステップが、前記ピーク面積比を識別および/または検証することを含む、実施形態2から20のいずれか一項に記載の方法。
【0099】
実施形態22。ステップb)において比が決定されるデータ点の前記画分が、推定下側ピーク境界と推定上側ピーク境界との間のデータ点を含む、実施形態21に記載の方法。
【0100】
実施形態23。推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも10%、一実施形態では推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも50%、一実施形態では推定下側ピーク境界および/または推定上側ピーク境界の間のデータ点の少なくとも90%にわたって計算された前記比の平均が、前記ピーク面積比±Xによって定義される範囲内であり、Xが、ピーク面積比の100%、一実施形態では50%、さらなる実施形態では30%である、実施形態21または22に記載の方法。
【0101】
実施形態24。前記方法が、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク純度、および/または推定ピーク面積比を識別および/または検証することを含む、実施形態2から23のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
実施形態25。前記方法が、分析物定量器と内部標準定量器との比または分析物定性器と内部標準定性器との比を決定することを含み、前記比の分布を決定することをさらに含み、一実施形態では、前記データ点の歪度および/または尖度を決定することを含み、一実施形態では、前記方法が、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク純度、および/または推定ピーク面積比を検証する方法である、実施形態24に記載の方法。
【0103】
実施形態26。多数のn個のデータ点にわたる前記比の分布が所定の許容基準を満たす場合に、分析物のピークの少なくとも1つの推定ピーク境界、ピーク純度、および/または推定ピーク面積比が識別および/または検証され、一実施形態ではnが少なくとも2個のデータ点であり、さらなる実施形態ではnが少なくとも3個のデータ点であり、さらなる実施形態ではnが少なくとも4個のデータ点であり、さらなる実施形態ではnが少なくとも5個のデータ点であり、さらなる実施形態ではnが少なくとも7個のデータ点であり、さらなる実施形態ではnが少なくとも10個のデータ点である、実施形態23から25のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
実施形態27。試料の液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)測定の品質管理方法であって、
A)液体クロマトグラフィ質量分析計装置を使用して対象の試料中の前記分析物を測定し、少なくとも1つのクロマトグラムを決定するステップと、
B)実施形態1から23のいずれかに記載の方法のステップb)からd)を実行するステップと、
C)ステップB)の結果に基づいて前記LC-MS測定の品質を評価するステップと
を含む、方法。
【0105】
実施形態28。i)ステップA)の結果を信頼できないものとしてマークするステップ、ii)ステップA)の結果を出力しないこと、および(iii)ステップB)において推定ピーク境界、ピーク同一性、ピーク純度、およびピーク面積比のうちの少なくとも1つが検証されない場合、任意に同一でないLC-MSプロトコルを使用して、前記試料の再実行を開始することのうちの少なくとも1つを行う、実施形態27に記載の方法。
【0106】
実施形態29。方法ステップb)、c)、および/またはd)、一実施形態ではステップb)からd)が、コンピュータによって実行される、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
実施形態30。前記クロマトグラフィ質量分析計装置がタンデム質量分析計(MS/MS)ユニットを備える、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
実施形態31。試料中の少なくとも1つの分析物の濃度を決定するためのシステムであって、
(I)少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析計装置であって、前記試料中の前記分析物を測定するように構成され、かつデータ点を経時的に取得するように構成されている、一実施形態では、実施形態1から28のいずれかに記載の方法のステップa)を実行するように構成されている、少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析計装置と、
(II)少なくとも1つの評価装置であって、実施形態1から28のいずれかに記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では、全てのステップb)からd)を実行するように構成されている、少なくとも1つの評価装置と
を備える、システム。
【0109】
実施形態32。装置が、実施形態27から30のいずれかに記載の品質管理方法を実行するように構成されている、先行する実施形態に記載の装置。
【0110】
実施形態33。少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、前記プロセッサが、実施形態1から28のいずれか1つに記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では全てのステップb)からd)を実行するように適合されている、コンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【0111】
実施形態34。データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、実施形態1から28のいずれか1つに記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では全てのステップb)からd)を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造。
【0112】
実施形態35。コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されている間に、実施形態1から28のいずれか1つに記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では全てのステップb)からd)を実行するように適合されている、コンピュータプログラム。
【0113】
実施形態36。コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、実施形態1から28のいずれか1つに記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では全てのステップb)からd)を実行するためのプログラム手段を備える、コンピュータプログラム。
【0114】
実施形態37。プログラム手段がコンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に記憶された、先行する実施形態にかかるプログラム手段を備えるコンピュータプログラム。
【0115】
実施形態38。記憶媒体であって、データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークの主記憶装置および/または作業記憶装置にロードされた後に、実施形態1から28のいずれか1つに記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では全てのステップb)からd)を実行するように適合されている、記憶媒体。
【0116】
実施形態39。プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、実施形態1から28のいずれか1つに記載の方法の少なくともステップb)、c)および/またはd)、一実施形態では全てのステップb)からd)を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に記憶されることができるか、または記憶媒体に記憶される、コンピュータプログラム製品。
【0117】
実施形態40。LC-MS装置における分析物の分析方法を最適化する方法であって、
a)一実施形態では、定量器信号強度および定性器信号強度についての複数のデータ点を経時的に取得することによって試料のクロマトグラムを決定することを提供するステップと、
b)推定下側ピーク境界、推定上側ピーク境界、ピーク同一性、および/またはピーク純度を決定するステップと、
c)実施形態1から28のいずれか一項に記載の方法によって、ステップ(b)の推定下側ピーク境界、推定上側ピーク境界、ピーク同一性、および/またはピーク純度を検証するステップと、
d)推定下側ピーク境界、推定上側ピーク境界、ピーク同一性、および/またはピーク純度のうちの少なくとも1つがステップ(c)において検証されない場合に、試料前処理パラメータ、LCパラメータ、および/またはMSパラメータを変更するステップと、
e)それによって、分析物の分析方法を最適化するステップと
を含む、方法。
【0118】
実施形態41。LC装置上で分取試料から対象の化合物を精製する方法であって、
a)前記LC装置によって前記分取試料の成分を画分に分離し、プール化のために1つ以上の画分を予備的に割り当てることと、
b)ステップa)におけるプール化のために予備的に割り当てられた画分の少なくとも1つのアリコートのMSクロマトグラムを記録することと、
c)少なくとも1つの分析物のピークを識別および/または検証するための方法にかかる方法によってプール化のためのステップb)の前記少なくとも1つの画分の割り当てを検証することと、
d)化合物を含む画分のプールにおける確認された割り当てを有する試料を含めることと、
e)それによって、前記対象の化合物を精製することと
を含む、方法。
【0119】
実施形態42。定量器信号強度、定性器信号強度、内部標準定量器信号強度、および/または内部標準定性器信号強度の値が、単一サイクル信号強度、または標準的な数学的演算によってそこから導出された値、一実施形態では単一サイクル信号強度である、先行する実施形態のいずれかに記載の主題。
【0120】
本明細書で引用された全ての参考文献は、その全体の開示内容および本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書で組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1A】クロナゼパム(A)およびEDDP(B)のクロマトグラムを、それらの定量器/定性器の比のブロットとともに示している。
図1B】クロナゼパム(A)およびEDDP(B)のクロマトグラムを、それらの定量器/定性器の比のブロットとともに示している。
図2】ベンゾイルエクゴニンのクロマトグラムを、その定量器/定性器の比ブロットとともに示している。
図3】等圧干渉エピテストステロンの異なるピーク分解能でのテストステロンについての内部標準単一サイクル比に対する分析物定量器の歪度ブロットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0122】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。それらは、いかなる場合でも、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0123】
実施例1:ベンゾイルエクゴニン、クロナゼパムおよびEDDP、ならびにそれらのISTD(内部標準)ベンゾイルエクゴニン-13C6、クロナゼパム-d4およびEDDP-d3を含む混合物が添加された血清試料をLC-MSによって測定した。単一のデータ点をMS生データから読み取り、各分析物/ISTDの組み合わせについて遷移の保持時間を位置合わせした。以下の表1は、ピーク積分および単一サイクル比による計算、およびそれぞれの目標値に対するそれらの偏差、ならびに許容範囲をまとめたものである。
【表1】
表1:ピーク積分および単一サイクル比によるピーク境界、定量器/定性器の比および分析物/内部標準(ISTD)の比およびそれらの目標値に対する偏差の計算
太字の表示は、検証されていない結果に関する
【0124】
実施例2:実施例1の定量器/定性器の単一サイクル比を、それらの目標値に関連して計算した。図1は、クロナゼパムおよびEDDPのクロマトグラムをそれらの定量器/定性器の比のブロットとともに示し、図2は、ベンゾイルエクゴニンのクロマトグラムを示している。ピーク境界を検証するために、ベンゾイルエクゴニンについては8,078および12,590ミリ秒、クロナゼパムについては11,956および18,557ミリ秒、EDDPについては43,664および56,774ミリ秒の検出されたピーク境界付近の5つの連続単一サイクル比を監視した。目標値の±30%誤差の許容範囲を満たす平滑化されたデータ点の数をカウントした。許容範囲内の5つのデータ点のうち少なくとも3つのデータ点の数が検証につながった。ピーク積分によって決定されたピーク境界は、有意に異なるベンゾイルエクゴニンのピーク開始境界を除いて、全て検証されることができた。
【0125】
実施例3:この測定内での定量器/定性器単回サイクル比の高い変化を伴う実施例2のベンゾイルエクゴニンのピーク開始境界の有意な逸脱は、ピーク開始境界付近の共溶出化合物による根本的な干渉の仮定をもたらした。そのような共溶出干渉は、明らかにピーク曲線に影響を与えなかったため、ピーク形状パラメータによって監視されることができなかった。それにもかかわらず、さらに計算されたピーク境界内の単一サイクル比の中央値は、それぞれの目標値との比較によってピーク開始に近い干渉を検証することができた。
【0126】
実施例4:分析物/ISTD単一サイクル比を決定し、ピーク境界内のその中央値を計算した。ピーク積分によって決定されたピーク面積比と比較して、ベンゾイルエクゴニンを除いて全ての化合物について決定された量を検証することができた。この結果もまた、ベンゾイルエクゴニンのピーク下での干渉物質の仮定につながり、したがって実施例3に記載された仮定と一致した。この干渉は、最終結果、すなわち測定されたベンゾイルエクゴニンの濃度に直接影響を及ぼし、定量器/定性器ピーク面積比を含む従来のパラメータによって監視されることができず、干渉を見逃すリスクを引き起こす。
【0127】
実施例5:テストステロンおよびエピテストステロンならびにISTD(内部標準)テストステロン-13C3を含有する混合物を添加した血清試料を、6つの異なるLCプロトコルおよび6つの分析的反復実験においてLC-MSによって測定した。単一のデータ点をMS生データから読み取り、遷移の保持時間を分析物/ISTDの組み合わせについて位置合わせした。
【0128】
実施例6:実施例5の分析物/ISTD単一サイクル比の歪度を計算し、試料のピーク同一性および/または純度を検証するために監視した。図3は、それぞれの目標値および許容範囲とともに、等圧干渉エピテストステロンの異なるピーク分解能でのテストステロンについての分析物/ISTD単一サイクル比の歪度ブロットを示している。目標値の±100%誤差の許容範囲を満たす歪度値が検証につながった。ピーク同一性および/または純度は、LCプロトコル1、2および3において測定された試料について検証されることができた。LCプロトコル4、5および6において測定された試料については、歪度値が許容範囲外であり、したがって、それらの試料においてピーク同一性および/または純度が検証されることができなかった。
【0129】
実施例7:実施例6において、分析物/ISTD単一サイクル比の歪度をその分布においてずらすことによって検証されなかった試料は、共溶出化合物による根本的な干渉の仮定をもたらした。さらに、テストステロンとエピテストステロンとの間の平均ピーク分解能(干渉として)を各LCプロトコルおよび試料について推定した。0.9以上の平均ピーク分解能を有する全ての試料では、ピーク同一性および/または純度は、対応する歪度によって検証されることができ、0.9未満の値を有する試料では、ピーク同一性および/または純度が検証されることができなかった。これらの観察により、これらの試料における共溶出干渉、この例ではエピテストステロンの存在の仮定が確認された。
【0130】
文献:
欧州特許出願公開第3 425 369号明細書
図1A
図1B
図2
図3