(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コバルトフリー複合正極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240402BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240402BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240402BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2022551002
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(86)【国際出願番号】 CN2020141191
(87)【国際公開番号】W WO2021238202
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】202010452133.8
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522354388
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】孫 明珠
(72)【発明者】
【氏名】楊 紅新
(72)【発明者】
【氏名】江 衛軍
(72)【発明者】
【氏名】喬 斉斉
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲シン▼培
(72)【発明者】
【氏名】馬 加力
(72)【発明者】
【氏名】施 澤濤
(72)【発明者】
【氏名】陳 思賢
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬飛
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511402(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176471(WO,A1)
【文献】特開2004-355824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトフリー正極材料を含み、複合被覆層をさらに含み、前記複合被覆層は、被覆材料及び分散剤によって前記コバルトフリー正極材料の表面に均一に包まれて形成さ
れ、
前記被覆材料の含有量の質量百分率は、前記コバルトフリー正極材料の質量の0.1%~3%であり、前記分散剤と前記被覆材料の比率は、(1:1000)~(1:10)である、コバルトフリー複合正極材料。
【請求項2】
前記コバルトフリー正極材料はコバルトフリー単結晶正極材料であり、その化学式はLiNi
xMn
yO
2であり、ただし、0.3≦x≦1.0、x+y=1、D50粒径は1~5μmである、請求項1に記載のコバルトフリー複合正極材料。
【請求項3】
前記被覆材料は、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、MgO、B
2O
3、WO
3の少なくとも一種を含み、前記分散剤は、黒鉛、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂の少なくとも一種を含む、請求項1に記載のコバルトフリー複合正極材料。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のコバルトフリー複合正極材料の製造方法であって、
(1)コバルトフリー単結晶正極材料を製造することと、
(2)前記コバルトフリー単結晶正極材料を前記被覆材料及び前記分散剤と乾式混合して混合物を得ることと、
(3)前記混合物を200~800℃で4~10時間焼成してコバルトフリー複合正極材料の製品を得ることとを含む、コバルトフリー複合正極材料の製造方法。
【請求項5】
具体的に、
リチウム源と前駆体のNi
xMn
1-x(OH)
2を量り、均一に混合するS1と、
前記混合した材料を焼結し、焼結反応された塊状材料を粉砕して前記コバルトフリー単結晶正極材料を得るS2と、
前記コバルトフリー単結晶正極材料を前記被覆材料及び前記分散剤と混合機に加えて乾式混合するS3であって、前記被覆材料は金属酸化物が用いられ、その含有量の質量百分率は、前記コバルトフリー単結晶正極材料の質量の0.1%~3%であり、前記分散剤と前記被覆材料の比率は、(1:1000)~(1:10)であるS3と、
被覆された前記正極材料を200~800℃で4~10時間焼成し、前記被覆材料及び前記分散剤を粒子の表面に均一に被覆するS4と、
焼成された材料を気流分級及び篩分して最終製品を得るS5とを含む、請求項
4に記載のコバルトフリー複合正極材料の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS1において、前記前駆体のD50粒径は1~4μmであり、前記リチウム源及び前記前駆体をLi/(Ni+Mn)のモル比が0.95~1.10であるように量る、請求項
5に記載のコバルトフリー複合正極材料の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS2において、焼結反応の温度は500~1000℃であり、空気又は酸素条件下で10~25時間反応する、請求項
5に記載のコバルトフリー複合正極材料の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS2において、機械ミル又はジェットミルを用いて粉砕し、得られた前記コバルトフリー単結晶正極材料のD50粒径は1~5μmである、請求項
5に記載のコバルトフリー複合正極材料の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS5において、気流分級の周波数は100~200Hzであり、篩分は、篩目粒径が300~400目の篩で篩過する、請求項
5に記載のコバルトフリー複合正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はリチウム電池の分野に関し、例えば、コバルトフリー複合正極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー自動車の段階的な開発と普及に伴い、人々はリチウムイオン電池の関連資源にますます注目を集めている。その中でも、ニッケルマンガン層状材料は、エネルギー密度が高く、コストが低く、サイクル寿命が長いなどの利点を有するため、近年、研究の焦点になっている。研究によると、単結晶材料の粒子強度とサイクル回数は多結晶材料よりも高いが、加工過程に大きな問題があり、被覆効果が低下し、表層が剥がれ、最終に界面が損傷することにつながり、これにより、電解液との間の副反応が増加し、ガスの発生によってサイクルが悪くなり、実際の使用が制限される。
【0003】
正極材料は小さな単結晶材料であり、その粒度が小さいため、高温サイクル過程にガスが発生し、また、単結晶材料であり、且つコバルトフリー正極材料であるため、DCRが大きく、倍率性能が悪い。そのため、被覆材料の選択に制限があり、流動性の悪い被覆物を小さな単結晶と共通に被覆すると、材料が正常に流れず、デバイスの内壁に付着する状況が出現し、被覆が不均一になり、ひどい場合に正常に被覆できないことにつながる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、コバルトフリー複合正極材料及びその製造方法を提供する。
【0005】
本開示は、一実施例においてコバルトフリー複合正極材料を提供しており、該コバルトフリー複合正極材料は、コバルトフリー正極材料を含み、複合被覆層をさらに含み、前記複合被覆層は、被覆材料及び分散剤によって前記コバルトフリー正極材料の表面に均一に包まれて形成されている。
【0006】
本開示に係る一実施例において、材料の被覆性能に影響を及ぼさない物質を増加して被覆機能を有する物質と共通に被覆することにより、材料の被覆効果を向上させ、サイクル過程におけるガスの発生を低減し、流動性のよい分散剤材料を添加して共通に被覆することにより、コバルトフリー単結晶正極材料の倍率及びサイクル性能を向上させる。本開示では、特有の複合被覆の設計構想を採用し、材料被覆の均一性を改善し、製品の倍率性能が向上する。
【0007】
本開示では、
一実施例において、前記コバルトフリー正極材料はコバルトフリー単結晶正極材料であり、その化学式はLiNixMnyO2であり、ただし、0.3≦x≦1.0、例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1.0などであり、x+y=1、D50粒径は1~5μmであり、例えば、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm又は5.0μmなどである。
【0008】
本開示に係る一実施例において、ニッケルとマンガンの2種類の強力な化学結合元素によって八面体構造を安定化し、材料の安定性が向上し、単結晶材料は、ロールプレス過程に強い粒子強度及びよい安定した構造を有するため、耐圧性が著しく向上し、コバルトフリー正極材料の耐用年数が著しく延長する。
【0009】
一実施例において、前記被覆材料は、Al2O3、TiO2、ZrO2、MgO、B2O3、WO3の少なくとも一種を含み、前記分散剤は、黒鉛、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂の少なくとも一種を含む。
【0010】
本開示に係る一実施例において、金属酸化物を用いて被覆材料とし、コバルトフリー正極単結晶材料の表面にナノ酸化物層を被覆し、また、単結晶材料構造は粒子内部の結晶粒界が少ない特徴があるため、コバルトフリー正極単結晶材料は電解液と接触して副反応が発生することを低減し、コバルトフリー正極材料の表面安定性を改善することにより、サイクル過程における電池のガス発生の問題を低減し、高圧下での材料のサイクル性能を効果的に改善することができる。分散剤の添加は、コバルトフリー正極材料の表面被覆に流動性の向上効果を果たし、コバルトフリー正極材料の表面に被覆材料をより均一に被覆可能にし、コバルトフリー正極材料の表面に多孔質の三次元構造の表層材料を形成し、被覆効果を改善する。
【0011】
一実施例において、前記被覆材料の含有量の質量百分率は、前記コバルトフリー正極材料の質量の0.1%~3%であり、例えば、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%又は3%などであり、前記分散剤と前記被覆材料の比率は、(1:1000)~(1:10)であり、例えば、1:10、1:100、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900又は1:1000などである。
【0012】
本開示は、一実施例において、一実施例に記載のコバルトフリー複合正極材料の製造方法を提供しており、前記製造方法は、
(1)コバルトフリー単結晶正極材料を製造することと、
(2)前記コバルトフリー単結晶正極材料を前記被覆材料及び前記分散剤と乾式混合して混合物を得ることと、
(3)前記混合物を200~800℃で4~10時間焼成してコバルトフリー複合正極材料の製品を得て、例えば、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃又は800℃などで、例えば、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間又は10時間など焼成することとを含む。
【0013】
本開示に係る一実施例において、被覆効果を改善し、被覆物を正極材料の表面に均一に被覆可能にするために、金属酸化物を用いて被覆材料とし、正極材料の表面安定性を効果的に改善し、サイクル過程における電池のガス発生の問題を低減することにより、電池のサイクル寿命を向上させると同時に倍率性能を向上させ、材料自体の流動性が悪いため、本開示では、被覆材料に流動性がよりよい分散剤を増加して共通に被覆することにより、分散しにくい被覆材料を正極材料の表面により均一に被覆し、さらに焼成によって粒子の表面に多孔質の三次元構造の金属酸化物及び高速イオン導体層材料を形成する。
【0014】
一実施例において、前記製造方法は、具体的に、
リチウム源と前駆体のNixMn1-x(OH)2を量り、均一に混合するS1と、
前記混合した材料を焼結し、焼結反応された塊状材料を粉砕して前記コバルトフリー単結晶正極材料を得るS2と、
前記コバルトフリー単結晶正極材料を前記被覆材料及び前記分散剤と混合機に加えて乾式混合するS3であって、前記被覆材料は金属酸化物が用いられ、その含有量の質量百分率は、前記コバルトフリー単結晶正極材料の質量の0.1%~3%であり、例えば、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%又は3%などであり、前記分散剤と前記被覆材料の比率は、(1:1000)~(1:10)であり、例えば、1:10、1:100、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900又は1:1000などであるS3と、
被覆された前記正極材料を200~800℃で4~10時間焼成し、前記被覆材料及び前記分散剤を粒子の表面に均一に被覆し、例えば、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃又は800℃などで、例えば、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間又は10時間など焼成するS4と、
焼成された材料を気流分級及び篩分して最終製品を得るS5とを含む。
【0015】
一実施例において、前記ステップS1において、前記前駆体のD50粒径は1~4μmであり、例えば、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm又は4.0μmなどであり、前記リチウム源及び前記前駆体をLi/(Ni+Mn)のモル比が0.95~1.10であるように量り、例えば、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.0又は1.1などである。
【0016】
一実施例において、前記ステップS2において、焼結反応の温度は500~1000℃であり、例えば、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃又は1000などであり、空気又は酸素条件下で10~25時間反応し、例えば、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間又は25時間など反応する。
【0017】
一実施例において、前記ステップS2において、機械ミル又はジェットミルを用いて粉砕し、得られた前記コバルトフリー単結晶正極材料のD50粒径は1~5μmであり、例えば、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm又は5.0μmなどである。
【0018】
一実施例において、前記ステップS5において、気流分級の周波数は100~200Hzであり、例えば、100Hz、110Hz、120Hz、130Hz、140Hz、150Hz、160Hz、170Hz、180Hz、190Hz又は200Hzなどであり、篩分は、篩目粒径が300~400目の篩で篩過し、例えば、300目、310目、320目、330目、340目、350目、360目、370目、380目、390目又は400目などである。
【0019】
図面は、本開示の技術案のさらなる理解を提供するために使用され、且つ明細書の一部を構成し、本願の実施例とともに、本開示の技術案を説明するために使用され、本開示の技術案に対する限定を構成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本開示の一実施例で製造されたコバルトフリー複合正極材料のSEM図である。
【
図2】
図2は、本開示の一比較例で製造されたコバルトフリー複合正極材料のSEM図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施例及び比較例で得られたコバルトフリー複合正極材料により製造された電池の容量のテスト比較図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施例及び比較例で得られたコバルトフリー複合正極材料により製造された電池の倍率性能のテスト比較図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施例及び比較例で得られたコバルトフリー複合正極材料により製造された電池のサイクル性能のテスト比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、具体的実施形態によって本開示の技術案をさらに説明する。
【0022】
一実施例において、本開示はコバルトフリー複合正極材料を提供しており、該コバルトフリー複合正極材料は、コバルトフリー正極材料を含み、複合被覆層をさらに含み、複合被覆層は、被覆材料及び分散剤によってコバルトフリー正極材料の表面に均一に包まれて形成されている。
【0023】
コバルトフリー正極材料はコバルトフリー単結晶正極材料であり、化学式はLiNixMnyO2であり、0.3≦x≦1.0、x+y=1を満たし、例えば、LiNi0.65Mn0.35O2、LiNi0.35Mn0.65O2、LiNi0.5Mn0.5O2などである。上記コバルトフリー単結晶正極材料を用いて、ニッケルとマンガンの2種類の強力な化学結合元素によって八面体構造を安定化し、材料の安定性が向上し、単結晶材料は、ロールプレス過程に強い粒子強度及びよい安定した構造を有するため、耐圧性が著しく向上し、コバルトフリー正極材料の耐用年数が著しく延長する。
【0024】
被覆材料は、Al2O3、TiO2、ZrO2、MgO、B2O3、WO3のいずれか一種又は複数種の組合せ、例えば、Al2O3、Al2O3+TiO2、TiO2+ZrO2、Al2O3+MgO+ZrO2などであってもよい。上記金属酸化物を用いて被覆材料とし、コバルトフリー正極単結晶材料の表面にナノ酸化物層を被覆し、また、単結晶材料構造は粒子内部の結晶粒界が少ない特徴があるため、コバルトフリー正極単結晶材料は電解液と接触して副反応が発生することを低減し、コバルトフリー正極材料の表面安定性を改善することにより、サイクル過程における電池のガス発生の問題を低減し、高圧下での材料のサイクル性能を効果的に改善することができる。
【0025】
分散剤は、黒鉛、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂のいずれか一種又は複数種の組合せ、例えば、黒鉛、ポリエチレン+ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール+ポリエチレングリコールなどであってもよく、コバルトフリー正極材料の表面被覆に流動性の向上効果を果たし、コバルトフリー正極材料の表面に被覆材料をより均一に被覆可能にし、コバルトフリー正極材料の表面に多孔質の三次元構造の表層材料を形成し、被覆効果を改善する。
【0026】
実施例1
本実施例に係るコバルトフリー複合正極材料は以下の製造方法により得られた。
【0027】
S1は、水酸化リチウム及びD50粒径が3μmの前駆体のNi0.65Mn0.35(OH)2をLi/(Ni+Mn)のモル比が1.02であるように量り、均一に混合することであり、
S2は、900℃、空気又は酸素条件下で20時間反応し、反応して焼結された塊状材料を機械ミル又はジェットミルで粉砕してD50粒径が3.5μmの単結晶材料を得ることであり、
S3は、正極材料を被覆材料及び分散剤と混合機に添加して乾式混合し、被覆材料は含有量が0.1wt%の金属酸化物のAl2O3が用いられ、分散剤は黒鉛が用いられ、分散剤と被覆材料の比率は1:500であり、ブレード剪断力の作用で、正極材料と被覆材料の界面が融合効果を達成することであり、
S4は、被覆された正極材料を700℃で10時間焼成し、分散剤及び被覆材料を粒子の表面に均一に被覆することであり、
S5は、最終に材料を分級周波数が108Hzの気流分級及び325目の篩過を行い、0.1μm以下及び15μmを超える粉末を除去し、D50粒径が3.5μmの単結晶材料で化学式がLiNi0.65Mn0.35O2である最終製品を得ることであった。
【0028】
実施例2
本実施例に係るコバルトフリー複合正極材料は以下の製造方法により得られた。
【0029】
S1は、水酸化リチウム及びD50粒径が2μmの前駆体のNi0.35Mn0.65(OH)2をLi/(Ni+Mn)のモル比が0.98であるように量り、均一に混合することであり、
S2は、850℃、空気又は酸素条件下で18時間反応し、反応して焼結された塊状材料を機械ミル又はジェットミルで粉砕することであり、
S3は、正極材料を被覆材料及び分散剤と混合機に添加して乾式混合し、被覆材料は含有量が0.1wt%の金属酸化物のTiO2が用いられ、分散剤は黒鉛が用いられ、分散剤と被覆材料の比率は(1:400)であり、ブレード剪断力の作用で、正極材料と被覆材料の界面が融合効果を達成することであり、
S4は、被覆された正極材料を650℃で10時間焼成し、分散剤及び被覆材料を粒子の表面に均一に被覆することであり、
S5は、最終に材料を分級周波数が120Hzの気流分級及び350目の篩過を行い、0.1μm以下及び15μmを超える粉末を除去し、D50粒径が2.5μmの単結晶材料で化学式がLiNi0.35Mn0.65O2である最終製品を得ることであった。
【0030】
実施例3
本実施例に係るコバルトフリー複合正極材料は以下の製造方法により得られた。
【0031】
S1は、水酸化リチウム及びD50粒径が4μmの前駆体Ni0.65Mn0.35(OH)2をLi/(Ni+Mn)のモル比が1.04であるように量り、均一に混合することであり、
S2は、850℃、空気又は酸素条件下で23時間反応し、反応して焼結された塊状材料を機械ミル又はジェットミルで粉砕することであり、
S3は、正極材料を被覆材料及び分散剤と混合機に添加して乾式混合し、被覆材料は含有量が0.3wt%の金属酸化物のMgOが用いられ、分散剤は黒鉛が用いられ、分散剤と被覆材料の比率は1:400であり、ブレード剪断力の作用で、正極材料と被覆材料の界面が融合効果を達成することであり、
S4は、被覆された正極材料を800℃で8時間焼成し、分散剤及び被覆材料を粒子の表面に均一に被覆することであり、
S5は、最終に材料を分級周波数が108Hzの気流分級及び300目の篩過を行い、0.1μm以下及び15μmを超える粉末を除去し、D50粒径が4μmの単結晶材料で化学式がLiNi0.35Mn0.65O2である最終製品を得ることであった。
【0032】
比較例
被覆されていないコバルトフリー正極材料のLiNi0.65Mn0.35O2、D50粒径が3.5μmの単結晶材料を比較例とした。
【0033】
上記実施例で得られた製品と被覆されていない製品の性能の比較を下記の表に示した。
【0034】
【0035】
上記の表から分かるように、比較例の0.5C、50clsのサイクル容量は96.8%、0.5C/0.1Cの放電容量は0.93、1C/0.1Cの放電容量は0.85、2C/0.1Cの放電容量は0.76、3C/0.1Cの放電容量は0.71であり、本開示の製造方法を用いて得られたコバルトフリー複合正極材料、即ち、実施例1、実施例2、実施例3の0.5C、50clsの平均サイクル容量は99.0%、0.5C/0.1Cの平均放電容量は0.96、1C/0.1Cの平均放電容量は0.90、2C/0.1Cの平均放電容量は0.83、3C/0.1Cの平均放電容量は0.78であった。これにより、本開示に係るコバルトフリー正極材料の製造方法を用いて得られたコバルトフリー複合正極材料の製品は、サイクル容量の保持率でも、放電容量でも比較例よりも優れていることが分かった。
【0036】
同時に、
図1及び
図2の比較から、実施例1で得られた製品の表面の粒子の均一性が著しくよりよいため、製品の表面安定性がより高いことが分かった。また、
図2、3、4から、実施例1の製品と比較例の製品の充放電性能の差異が小さいが、実施例1の製品の倍率性能及びサイクル保持率は比較例の製品よりも著しく優れていることが分かった。
【0037】
要約すると、本開示では、金属酸化物を用いて被覆材料とし、被覆材料に流動性がよりよい分散剤を増加して共通に被覆し、コバルトフリー単結晶材料の表面安定性を効果的に改善し、サイクル過程における電池のガス発生の問題を低減することにより、電池のサイクル寿命を向上させると同時に倍率性能を向上させることができる。