IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法及び積層鉄心
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240402BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240402BHJP
   H02K 1/28 20060101ALI20240402BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K1/18 B
H02K1/28 Z
B21D28/02 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022553689
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008852
(87)【国際公開番号】W WO2022196359
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021041801
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平間 道信
(72)【発明者】
【氏名】萩原 赳
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-185695(JP,A)
【文献】特開2016-152725(JP,A)
【文献】実開昭56-123775(JP,U)
【文献】国際公開第2008/023448(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169175(US,A1)
【文献】特開2011-125141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/18
H02K 1/28
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工によって各鉄心片に形成する長尺なかしめ部を互いに嵌合させて前記各鉄心片同士を積層固定し、積層鉄心を製造する積層鉄心の製造方法であって、
前記かしめ部を形成する際に、
前記鉄心片の本体部に接続され、前記鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなし、前記鉄心片の厚み方向他方側の面に対して凸をなし、且つ前記各面に対して平行をなす平坦部と、
前記かしめ部の長手方向における前記平坦部の両端から互いに前記長手方向の反対側で且つ前記平坦部が前記厚み方向他方側の面に対して凸をなす側へ向けて斜めに延出される一対の傾斜部を有する一対の延在部と、
を形成し、
前記一対の傾斜部を形成する際に、前記一対の傾斜部と同一角度に傾斜した傾斜面を備えた断面台形の凹部を有するカシメパンチを用い、前記斜めの方向に前記一対の傾斜部を延伸させると共に、
前記かしめ部の長手方向の端部のせん断と前記延伸とを同時に行い、
前記延伸は、前記鉄心片の積層方向における前記平坦部の厚みが前記積層方向における前記傾斜部の厚みよりも大きくなるように行い、
前記鉄心片の上面を前記カシメパンチの前記傾斜面の形状に沿わせながら前記傾斜部を成形し、
前記かしめ部の最下面を押し上げ機構の上面より前記カシメパンチ側に配置し、前記押し上げ機構を用いて前記鉄心片をダイから分離する積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
プレス加工によって円環形状の各鉄心片に形成される長尺なかしめ部が互いに嵌合されて前記各鉄心片同士が積層固定されてなる積層鉄心であって、
前記かしめ部は、
前記鉄心片の本体部に接続され、前記鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなし、前記鉄心片の厚み方向他方側の面に対して凸をなし、且つ前記各面に対して平行をなす平坦部と、
前記かしめ部の長手方向における前記平坦部の両端から互いに前記長手方向の反対側で且つ前記厚み方向他方側へ向けて斜めに延出され、少なくとも一部で前記鉄心片の本体部よりも厚みが薄い一対の傾斜部を有する一対の延在部と、
を備え、
前記かしめ部の長手方向が前記鉄心片の径方向と交差しており、
隣接して積層された各前記鉄心片の一方に形成された一の前記かしめ部における凸側の長手方向の端面と、隣接して積層された各前記鉄心片の他方に形成された別の前記かしめ部における凹側の長手方向の端面とが接触しており、
前記各鉄心片には、各々が前記鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなす複数の前記かしめ部が各々の長手方向に互いに繋がって形成されている積層鉄心。
【請求項3】
前記一対の延在部は、前記一対の傾斜部における前記平坦部とは反対側の端部から互いに前記長手方向の反対側へ向けて延出され、前記各面に対して平行をなす一対の外側平坦部を有する請求項2に記載の積層鉄心。
【請求項4】
前記鉄心片の厚みを1とした場合、前記厚み方向一方側の面から前記平坦部が凹む深さが0.15~0.85の範囲内に設定される請求項2又は請求項3に記載の積層鉄心。
【請求項5】
前記一対の延在部は、前記平坦部とは反対側の端部が前記本体部に対して直接繋がる請求項2~請求項4の何れか1項に記載の積層鉄心。
【請求項6】
前記一対の延在部は、前記平坦部とは反対側の端部が前記本体部に対して直接繋がらない請求項2~請求項4の何れか1項に記載の積層鉄心。
【請求項7】
前記一対の延在部は、前記一対の外側平坦部における前記一対の傾斜部とは反対側の端部から互いに前記長手方向の反対側で且つ前記厚み方向一方側へ向けて斜めに延出され、少なくとも一部で前記本体部よりも厚みが薄い一対の外側傾斜部を有する請求項3又は請求項3を引用する請求項4~請求項6の何れか1項に記載の積層鉄心。
【請求項8】
プレス加工によって円環形状の各鉄心片に形成される長尺なかしめ部が互いに嵌合されて前記各鉄心片同士が積層固定されてなる積層鉄心であって、
前記かしめ部は、
前記鉄心片の本体部に接続され、前記鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなし、前記鉄心片の厚み方向他方側の面に対して凸をなし、且つ前記各面に対して平行をなす平坦部と、
前記かしめ部の長手方向における前記平坦部の両端から互いに前記長手方向の反対側で且つ前記厚み方向他方側へ向けて斜めに延出され、少なくとも一部で前記鉄心片の本体部よりも厚みが薄い一対の傾斜部を有する一対の延在部と、
を備え、
前記かしめ部の長手方向が前記鉄心片の径方向と交差しており、
隣接して積層された各前記鉄心片の一方に形成された一の前記かしめ部における凸側の長手方向の端面と、隣接して積層された各前記鉄心片の他方に形成された別の前記かしめ部における凹側の長手方向の端面とが接触しており、
前記一対の延在部は、前記一対の傾斜部における前記平坦部とは反対側の端部から互いに前記長手方向の反対側へ向けて延出され、前記各面に対して平行をなす一対の外側平坦部を有し、
前記各外側平坦部は、前記厚み方向において互いに異なる位置に配置されるものを含む積層鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実登3046084号公報に記載された積層固着品のかしめ構造では、プレス加工によって薄板に形成されたかしめ部を上下に係合させて薄板同士を連結し、積層固着品を組み立てる。上記のかしめ部は、薄板を側面視略ハの字形に打ち抜いて形成された左右一対の弾性片と、この弾性片の打ち抜きにより薄板に形成された左右一対の開口とからなる。かしめ部は、一対の弾性片が並ぶ方向を長手とする長尺状をなしており、一対の弾性片は、先端が下向きに湾曲した形状に形成されている。このかしめ構造では、薄板を積層した際、一方の薄板に形成された一対の弾性片が、他方の薄板に形成された一対の開口にそれぞれ嵌入し、薄板同士が二カ所でかしめられ、連結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の先行技術では、一対の弾性片がかしめ部の長手方向に弾性変形し易い湾曲形状をなしているため、かしめ部の長手方向のかしめ剛性を高める観点で改善の余地がある。また、かしめ部における一対の弾性部の間の部位がかしめに利用されないため、薄板の厚み方向のかしめ力を高める観点でも改善の余地がある。さらに、一対の弾性片同士が薄板の厚み方向に互いに干渉し合うことにより、薄板間に板間隙間が生じる可能性があるため、板間隙間を少なくする観点でも改善の余地がある。
【0004】
本開示は上記事実を考慮し、かしめ部の長手方向のかしめ剛性及び鉄心片の厚み方向のかしめ力を高めることができる積層鉄心の製造方法及び積層鉄心を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様の積層鉄心の製造方法は、プレス加工によって各鉄心片に形成する長尺なかしめ部を互いに嵌合させて前記各鉄心片同士を積層固定し、積層鉄心を製造する積層鉄心の製造方法であって、前記かしめ部を形成する際に、前記鉄心片の本体部に接続され、前記鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなし、前記鉄心片の厚み方向他方側の面に対して凸をなし、且つ前記各面に対して平行をなす平坦部と、前記かしめ部の長手方向における前記平坦部の両端から互いに前記長手方向の反対側で且つ前記厚み方向他方側へ向けて斜めに延出される一対の傾斜部を有する一対の延在部と、を形成し、前記一対の傾斜部を形成する際に、前記斜めの方向に前記一対の傾斜部を延伸させる。
【0006】
なお、第1の態様の「平行」は、正確に平行である必要はなく、略平行であってもよい。この点は、第2の態様及び第3の態様の「平行」についても同様である。
【0007】
第1の態様の積層鉄心の製造方法では、プレス加工によって各鉄心片に形成する長尺なかしめ部を互いに嵌合させて前記各鉄心片同士を積層固定し、積層鉄心を製造する。かしめ部を形成する際には、平坦部及び一対の延在部を形成する。平坦部は、前記鉄心片の本体部に接続され、鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなし、鉄心片の厚み方向他方側の面に対して凸をなし、且つ上記各面に対して平行をなす。一対の延在部は、かしめ部の長手方向における平坦部の両端から互いに長手方向の反対側で且つ厚み方向他方側へ向けて斜めに延出される一対の傾斜部を有する。
【0008】
上記一対の傾斜部は、例えば鉄心片の本体部に対する傾斜角度を小さく設定することにより、かしめ部の長手方向に弾性変形し難い形状に形成することができる。これにより、かしめ部の長手方向のかしめ剛性を高めることができる。また、上記のかしめ部では、一対の傾斜部の間の平坦部がかしめ嵌合に利用されるため、鉄心片の厚み方向のかしめ力を高めることができる。しかも、一対の傾斜部を形成する際には、上記斜めの方向に一対の傾斜部を延伸させる。これにより、一対の傾斜部の少なくとも一部において鉄心片の本体部よりも厚みが薄くなるので、各鉄心片の傾斜部同士が鉄心片の厚み方向に互いに干渉し難くなる。その結果、板間隙間が少なくなるので、上記のかしめ剛性及びかしめ力を一層高めることができる。
【0009】
第2の態様の積層鉄心は、プレス加工によって各鉄心片に形成される長尺なかしめ部が互いに嵌合されて前記各鉄心片同士が積層固定されてなる積層鉄心であって、前記かしめ部は、前記鉄心片の本体部に接続され、前記鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなし、前記鉄心片の厚み方向他方側の面に対して凸をなし、且つ前記各面に対して平行をなす平坦部と、前記かしめ部の長手方向における前記平坦部の両端から互いに前記長手方向の反対側で且つ前記厚み方向他方側へ向けて斜めに延出され、少なくとも一部で前記鉄心片の本体部よりも厚みが薄い一対の傾斜部を有する一対の延在部と、を備えている。
【0010】
第2の態様の積層鉄心では、プレス加工によって各鉄心片に形成される長尺なかしめ部が互いに嵌合されて前記各鉄心片同士が積層固定される。かしめ部は、平坦部及び一対の延在部を備えている。平坦部は、前記鉄心片の本体部に接続され、鉄心片の厚み方向一方側の面に対して凹をなし、鉄心片の厚み方向他方側の面に対して凸をなし、且つ上記各面に対して平行をなす。一対の延在部は、かしめ部の長手方向における平坦部の両端から互いに長手方向の反対側で且つ厚み方向他方側へ向けて斜めに延出される一対の傾斜部を有する。
【0011】
上記一対の傾斜部は、例えば鉄心片の本体部に対する傾斜角度を小さく設定することにより、かしめ部の長手方向に弾性変形し難い形状に形成することができる。これにより、かしめ部の長手方向のかしめ剛性を高めることができる。また、上記のかしめ部では、一対の傾斜部の間の平坦部がかしめ嵌合に利用されるため、鉄心片の厚み方向のかしめ力を高めることができる。しかも、一対の傾斜部は、少なくとも一部で鉄心片の本体部よりも厚みが薄いので、各鉄心片の傾斜部同士が鉄心片の厚み方向に互いに干渉し難くなる。その結果、板間隙間が少なくなるので、上記のかしめ剛性及びかしめ力を一層高めることができる。
【0012】
第3の態様の積層鉄心は、第2の態様の積層鉄心において、前記一対の延在部は、前記一対の傾斜部における前記平坦部とは反対側の端部から互いに前記長手方向の反対側へ向けて延出され、前記各面に対して平行をなす一対の外側平坦部を有する。
【0013】
第3の態様の積層鉄心では、かしめ部の一対の延在部が有する一対の外側平坦部は、一対の傾斜部における平坦部とは反対側の端部から互いに長手方向の反対側へ向けて延出される。これらの外側平坦部により、各鉄心片のかしめ部同士の接触面積を増加させることができるので、かしめ力を一層高めることができる。
【0014】
第4の態様の積層鉄心は、第2の態様又は第3の態様の積層鉄心において、前記鉄心片の厚みを1とした場合、前記厚み方向一方側の面から前記平坦部が凹む深さが0.15~0.85の範囲内に設定される。
【0015】
第4の態様の積層鉄心では、鉄心片の厚み方向一方側の面からかしめ部の平坦部が凹む深さが上記の範囲内に設定される。これにより、平坦部と鉄心片の本体部との接続強度を確保しつつ、平坦部におけるかしめ部同士のかしめ力を確保することができる。
【0016】
第5の態様の積層鉄心は、第2の態様~第4の態様の何れか1つの態様の積層鉄心において、前記一対の延在部は、前記平坦部とは反対側の端部が前記本体部に対して直接繋がる。
【0017】
第5の態様の積層鉄心では、上記のように構成されているので、一対の延在部における平坦部とは反対側の端部が、鉄心片の本体部に対して直接支持される。これにより、一対の延在部が不用意に変形し難くなるので、鉄心片の厚み方向のかしめ力を高めることができる。
【0018】
第6の態様の係る積層鉄心は、第2の態様~第4の態様の何れか1つの態様の積層鉄心において、前記一対の延在部は、前記平坦部とは反対側の端部が前記本体部に対して直接繋がらない。
【0019】
第6の態様の積層鉄心では、上記のように構成されているので、一対の延在部を鉄心片の厚み方向他方側の面からより突出して配置させることができる。これにより、一対の延在部におけるかしめ部同士の接触面積を増加させることができるので、鉄心片の厚み方向のかしめ力を高めることができる。
【0020】
第7の態様の積層鉄心は、第1の態様又は第2の態様の積層鉄心において、前記各鉄心片には、複数の前記かしめ部が各々の長手方向に互いに繋がって形成される。
【0021】
第7の態様の積層鉄心では、上記のように構成されているので、例えばかしめ部同士の接触面積を増加させることができ、鉄心片の厚み方向のかしめ力を高めることができる。
【0022】
第8の態様の積層鉄心は、第3の態様又は第3の態様を引用する第4の態様~第7の態様の何れか1つの態様の積層鉄心において、前記一対の延在部は、前記一対の外側平坦部における前記一対の傾斜部とは反対側の端部から互いに前記長手方向の反対側で且つ前記厚み方向一方側へ向けて斜めに延出され、少なくとも一部で前記本体部よりも厚みが薄い一対の外側傾斜部を有する。
【0023】
第8の態様の積層鉄心では、かしめ部の一対の延在部が有する一対の外側傾斜部は、一対の外側平坦部における一対の傾斜部とは反対側の端部から互いにかしめ部の長手方向の反対側で且つ鉄心片の厚み方向一方側へ向けて斜めに延出される。これらの外側傾斜部により、各鉄心片のかしめ部同士のかしめ嵌合を案内することができる。しかも、一対の外側傾斜部は、少なくとも一部で鉄心片の本体部よりも厚みが薄いので、一対の外側傾斜部同士が鉄心片の厚み方向に互いに干渉し難くなる。その結果、板間隙間が生じ難くなるので、前述したかしめ剛性及びかしめ力を高める効果が確保される。
【0024】
第9の態様の積層鉄心は、第3の態様又は第3の態様を引用する第4の態様~第7の態様の何れか1つの態様の積層鉄心において、前記各外側平坦部は、前記厚み方向において互いに異なる位置に配置されるものを含む。
【0025】
第9の態様の積層鉄心では、かしめ部の各外側平坦部が鉄心片の厚み方向において互いに異なる位置に配置されるものを含むので、各外側平坦部におけるかしめ部同士のかしめ力を異ならせることができる。これにより、かしめ力の設定の自由度が向上する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本開示に係る積層鉄心の製造方法及び積層鉄心では、かしめ部の長手方向のかしめ剛性及び鉄心片の厚み方向のかしめ力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る積層鉄心の構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る積層鉄心の鉄心片におけるかしめ部周辺を鉄心片の厚み方向一方側から見た状態で示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る積層鉄心の鉄心片におけるかしめ部周辺を鉄心片の厚み方向他方側から見た状態で示す斜視図である。
図4図2の一部を図2とは異なる方向から見た状態で示す斜視図である。
図5図3の一部を図3とは異なる方向から見た状態で示す斜視図である。
図6図2のF6-F6線に沿った切断面を示す断面図である。
図7】鉄心片の積層時の状況を示す図6に対応した断面図である。
図8A】断面V字状のかしめ部の成形方法を示す第1断面図である。
図8B】断面V字状のかしめ部の成形方法を示す第2断面図である。
図9A】断面階段状のかしめ部の成形方法を示す第1断面図である。
図9B】断面階段状のかしめ部の成形方法を示す第2断面図である。
図10A】断面V字状のかしめ部の別の成形方法を示す第1断面図である。
図10B】断面V字状のかしめ部の別の成形方法を示す第2断面図である。
図11A】第1実施形態におけるかしめ部の成形方法を示す第1断面図である。
図11B】第1実施形態におけるかしめ部の成形方法を示す第2断面図である。
図12】第2実施形態に係る積層鉄心の鉄心片におけるかしめ部周辺の構成を示す図6に対応した断面図である。
図13】第3実施形態に係る積層鉄心の鉄心片におけるかしめ部周辺の構成を示す図6に対応した断面図である。
図14】第4実施形態に係る積層鉄心の鉄心片におけるかしめ部周辺の構成を示す図6に対応した断面図である。
図15】第5実施形態に係る積層鉄心の鉄心片におけるかしめ部周辺の構成を示す図6に対応した断面図である。
図16】第6実施形態に係る積層鉄心の鉄心片におけるかしめ部周辺の構成を示す図6に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
以下、図1図11Bを参照して本開示の第1実施形態に係る積層鉄心10及びその製造方法について説明する。なお、各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0029】
(構成)
第1実施形態に係る積層鉄心10は、第1実施形態に係る積層鉄心の製造方法によって製造されたものである。この積層鉄心10は、一例としてインナロータ型モータに設けられるロータの主要部を構成するものであり、円筒状をなしている。上記のロータは磁石埋込型であり、積層鉄心10の外周部には複数の磁石挿入孔12が形成されている。これらの磁石挿入孔12には、それぞれ図示しない永久磁石が挿入される。積層鉄心10の中央部には、積層鉄心10を軸線方向に貫通した嵌合孔14が形成されている。この嵌合孔14には図示しない回転軸が挿入される。
【0030】
この積層鉄心10は、多数の鉄心片16が積層されて構成されている。各鉄心片16は、電磁鋼板によってリング形の円板状に形成されている。各鉄心片16の外周部には、複数(ここでは8個)のかしめ部18が形成されている。各かしめ部18は、鉄心片16を構成する電磁鋼板がプレス加工されることで形成されたダボであり、鉄心片16の厚み方向(図1では紙面に垂直な方向)から見て鉄心片16の周方向を長手とする長尺矩形状をなしている。
【0031】
図2図6に示されるように、上記のかしめ部18は、鉄心片16の厚み方向一方側の面16A(以下、「一側面16A」と称する)に対して凹をなし、鉄心片16の厚み方向他方側の面16B(以下、「他側面16B」と称する)に対して凸をなしている。鉄心片16の一側面16Aにおいてかしめ部18が形成された箇所には、一側面16Aに対して凹んだかしめ凹部18Aが形成されている。鉄心片16においてかしめ部18が形成された箇所には、他側面16Bから突出したかしめ凸部18Bが形成されている。
【0032】
このかしめ部18は、平坦部20と一対の延在部22とを備えており、一対の延在部22は、一対の傾斜部23と一対の外側平坦部24とを有している。平坦部20及び一対の延在部22は、鉄心片16の本体部17に接続されている。平坦部20は、鉄心片16の一側面16Aに対して凹をなし、鉄心片16の他側面に対して凸をなしている。この平坦部20は矩形板状をなしており、一側面16A及び他側面16Bに対して平行に配置されている。図6に示されるように、平坦部20が一側面16Aから凹む深さDは、鉄心片16の厚みtを1とした場合、0.15~0.85の範囲内に設定されている(0.15t≦D≦0.85t)。
【0033】
一対の傾斜部23は、かしめ部18の長手方向における平坦部20の両端から互いにかしめ部18の長手方向の反対側で且つ鉄心片16の厚み方向の他方側へ向けて斜めに延出されている。各傾斜部23は、矩形板状をなしており、少なくとも一部(ここでは略全部)において本体部17よりも厚みが薄く設定されている(図6においてt1<t)。かしめ部18の長手方向における平坦部20及び一対の傾斜部23の寸法Bは、かしめ部18の長手方向における平坦部20の寸法Aよりも大きく設定されている(A<B)。
【0034】
一対の外側平坦部24は、一対の傾斜部23における平坦部20とは反対側の端部から互いにかしめ部18の長手方向の反対側へ向けて延出されている。各外側平坦部24は、矩形板状をなしており、一側面16A及び他側面16Bに対して平行に配置されている。なお、平坦部20及び外側平坦部24に関して記載する「平行」は、正確に平行である必要はなく、略平行であってもよい。
【0035】
図6に示されるように、各外側平坦部24が一側面16Aから凹む深さCは、平坦部20が一側面16Aから凹む深さDよりも大きく設定されている(D<C)。つまり、各外側平坦部24は、平坦部20よりも鉄心片16の厚み方向他方側に配置されている。但し、本実施形態では、各外側平坦部24が一側面16Aから凹む深さCは、鉄心片16の厚みtよりも小さく設定されている。
【0036】
一対の外側平坦部24における一対の傾斜部23とは反対側の端部24Aは、一対の延在部22における平坦部20とは反対側の端部であり、かしめ部18の長手方向の端部である。これらの端部24Aは、鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっている。これらの端部24Aには、かしめ部18の長手方向の外側を向く端面24A1が形成されている。これらの端面24A1は、かしめ部18の長手方向に対して垂直又は略垂直に配置されている。
【0037】
上記構成の鉄心片16では、パンチとダイを用いるプレス加工によりかしめ部18が形成される。このプレス加工により一対の傾斜部23が形成される際には、平坦部20から一対の傾斜部23が延出される斜めの方向に、一対の傾斜部23が延伸される(引き延ばされる)。この延伸により、各傾斜部23の少なくとも一部(ここでは略全部)の厚みが、平坦部20の厚みよりも薄くされる構成になっている。
【0038】
図7に示されるように、多数の鉄心片16が積層される際には、各鉄心片16のかしめ部18が互いに嵌合されて各鉄心片16同士が積層固定される。この際には、かしめ凸部18Bがかしめ凹部18A内に嵌合されることで各鉄心片16同士が固定される。かしめ凸部18Bがかしめ凹部18Aに嵌合した状態では、かしめ部18の長手方向におけるかしめ凹部18Aの端面18A1と、一対の外側延出部24の端面24A1とが、かしめ部18の長手方向(すなわち鉄心片16の周方向)に互いに対向し合い且つ互いに接触するように構成されている。
【0039】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
上記構成の積層鉄心10では、プレス加工によって各鉄心片16に形成される長尺なかしめ部18が互いに嵌合されて各鉄心片16同士が積層固定される。かしめ部18は、平坦部20及び一対の延在部22を備えている。平坦部20は、鉄心片16の本体部17に接続され、鉄心片16の一側面16Aに対して凹をなし、鉄心片16の他側面16Bに対して凸をなし、且つ一側面16A及び他側面16Bに対して平行をなしている。一対の延在部22は、かしめ部18の長手方向における平坦部20の両端から互いにかしめ部18の長手方向の反対側で且つ鉄心片16の厚み方向の他方側へ向けて斜めに延出された一対の傾斜部23を有している。
【0041】
一対の傾斜部23は、例えば鉄心片16の本体部17に対する傾斜角度を小さく設定することにより、かしめ部18の長手方向に弾性変形し難い形状に形成することができる。これにより、かしめ部18の長手方向のかしめ剛性を高めることができる。その結果、例えば高速プレスによる型内転積によって各鉄心片16を積層する場合に、各鉄心片16間に軸線回りのねじれが生じ難くなる。これにより、当該ねじれによる各鉄心片16の分離を阻止し易くなり、積層鉄心10の製造が容易になる。
【0042】
また、上記のかしめ部18では、一対の傾斜部23の間の平坦部20がかしめ嵌合に利用されるため、鉄心片16の厚み方向のかしめ力を高めることができる。しかも、一対の傾斜部23は、少なくとも一部で本体部17よりも厚みが薄く設定されているので、各鉄心片16の傾斜部23同士が鉄心片16の厚み方向に互いに干渉し難くなる。その結果、板間隙間が少なくなるので、上記のかしめ剛性及びかしめ力を一層高めることができる。
【0043】
また、この積層鉄心10では、かしめ部18の一対の延在部22が有する一対の外側平坦部24は、一対の傾斜部23における平坦部20とは反対側の端部から互いに長手方向の反対側へ向けて延出されている。これらの外側平坦部24により、各鉄心片16のかしめ部18同士の接触面積を増加させることができるので、かしめ力を一層高めることができる。特に、鉄心片16が薄板からなる場合に上記の効果が高くなる。
【0044】
また、この積層鉄心10では、鉄心片16の厚みを1とした場合、鉄心片16の一側面16Aから平坦部20が凹む深さが0.15~0.85の範囲内に設定されている。これにより、平坦部20と鉄心片16の本体部17との接続強度を確保しつつ、平坦部20におけるかしめ部18同士のかしめ力を確保することができる。
【0045】
また、この積層鉄心10では、一対の延在部22は、平坦部20とは反対側の端部24Aが鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっているので、一対の延在部22の上記端部24Aが鉄心片16の本体部17に対して直接支持される。これにより、一対の延在部22が不用意に変形し難くなるので、鉄心片16の厚み方向のかしめ力を高めることができる。
【0046】
以下、図8A図11Bを用いて本実施形態の効果につき補足説明する。なお、図8A図11Bにおいて、30は金型であり、32は板押えであり、34はダイであり、36は押し上げ機構であり、38はカシメパンチである。
【0047】
図8A及び図8Bに示される第1比較例のように、断面形状がV字状のかしめ部18Vを成形する場合、板押さえ32によりダイ34に押し当てられた電磁鋼板ESが、カシメパンチ38によってダイ穴34Aに押し込まれることにより、電磁鋼板ESのカシメパンチ38との反対側に凸形状のかしめ部18V(ダボ)が形成される。押し上げ機構36は、ダイ穴34Aに入り込むかしめ部18Vに対してカシメパンチ38側への圧力(背圧)を加えることにより、かしめ加工された電磁鋼板ESをダイから分離する。この第1比較例では、本体部17側からかしめ部18V側への材料の流入が多い(図8Aの矢印IF参照)ため、かしめ部18Vの傾斜部の厚みを薄くすることが困難である。
【0048】
一方、図9A及び図9Bに示される第2比較例のように、階段状のかしめ部18Sを一工程で成形する場合、カシメパンチ38に形成された凹部38A内に電磁鋼板ESの一部18S1を入り込ませる必要があるが、この一部18S1の角部がR形状になる。これを解消するため、図10A及び図10Bに示される第3比較例のように、上記のかしめ部18Sを二工程で成形する場合、工数が増えるだけでなく、図10A及び図10Bに示される二種類の金型30A、30Bが必要となり、製造コストが増加する。
【0049】
これらに対し、図11A及び図11Bに示される本実施形態のように、平坦部20から一対の傾斜部23が延出されたかしめ部18を成形する場合、本体部17側から一対の延在部22側への材料の流入が少ない(図11Aの矢印IF参照)ため、傾斜部23の厚みを薄くすることが容易である。また、カシメパンチ38に形成された凹部38A内に平坦部20及び一対の傾斜部23が入り込み易ため、平坦部20と一対の傾斜部23との間の角部がR形状になることを防止し易い。
【0050】
次に、本開示の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0051】
<第2の実施形態>
図12には、本開示の第2実施形態に係る積層鉄心の鉄心片16におけるかしめ部18周辺の構成が断面図にて示されている。このかしめ部18では、一対の延在部22における平坦部20とは反対側の端部24Aが鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっていない。このため、一対の延在部22を鉄心片16の他側面16Bからより突出して配置させることができる。これにより、一対の延在部22におけるかしめ部18同士の接触面積を増加させることができるので、鉄心片16の厚み方向のかしめ力を高めることができる。この実施形態では、上記以外の構成は、第1実施形態と同様とされているため、上記以外の点では第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。
【0052】
<第3の実施形態>
図13には、本開示の第3実施形態に係る積層鉄心の鉄心片16におけるかしめ部18周辺の構成が断面図にて示されている。このかしめ部18では、一対の延在部22が一対の外側平坦部24を有しておらず、一対の傾斜部23のみによって構成されている。一対の傾斜部23における平坦部20とは反対側の端部23Aは、一例として、鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっている。これらの端部23Aには、かしめ部18の長手方向の外側を向く端面23A1が形成されている。これらの端面23A1は、かしめ部18の長手方向に対して垂直又は略垂直に配置されている。この実施形態では、一対の延在部22が一対の外側平坦部24を有していないため、第1実施形態と比較してかしめ部18の成形が容易である。この実施形態では、上記以外の構成は、第1実施形態と同様とされているため、上記以外の点では第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。なお、この実施形態において、上記の端部23Aが鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっていない構成にしてもよい。
【0053】
<第4の実施形態>
図14には、本開示の第4実施形態に係る積層鉄心の鉄心片16におけるかしめ部18周辺の構成が断面図にて示されている。このかしめ部18では、一対の延在部22は、一対の外側平坦部24における一対の傾斜部23とは反対側の端部から互いにかしめ部18の長手方向の反対側で且つ鉄心片16の厚み方向一方側へ向けて斜めに延出された一対の外側傾斜部25を有している。各外側傾斜部25における各外側平坦部20とは反対側の端部25Aは、一例として、鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっている。これらの端部25Aには、かしめ部18の長手方向の外側を向く端面25A1が形成されている。これらの端面25A1は、かしめ部18の長手方向に対して垂直又は略垂直に配置されている。なお、この実施形態において、上記の端部25Aが鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっていない構成にしてもよい。
【0054】
この実施形態では、一対の外側傾斜部25により、各鉄心片16のかしめ部18同士のかしめ嵌合を案内することができる。しかも、一対の外側傾斜部25は、少なくとも一部(ここでは略全部)で本体部17よりも厚みが薄くなっているで、一対の外側傾斜部25同士が鉄心片16の厚み方向に互いに干渉し難くなる。その結果、板間隙間が生じ難くなる。この実施形態では、上記以外の構成は、第1実施形態と同様とされているため、上記以外の点では第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。
【0055】
<第5の実施形態>
図15には、本開示の第5実施形態に係る積層鉄心の鉄心片16におけるかしめ部19周辺の構成が断面図にて示されている。このかしめ部19は、複数(ここでは2個)のかしめ部18が各々の長手方向に互いに繋がって形成されている。但し、各かしめ部18の長手方向寸法は、第1実施形態の半分程度に設定されている。特に、各かしめ部18において互いに繋がる側の外側平坦部24は、上記長手方向寸法が短く設定されている。この実施形態では、かしめ部19が複数のかしめ部18によって構成されているので、例えばかしめ部19同士の接触面積を増加させることができる。その結果、鉄心片16の厚み方向のかしめ力を高めることができる。また、かしめ部19の長手方向の両端部は、鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっていない構成になっている。これにより、第2実施形態と同様の効果が得られる。この実施形態では、上記以外の構成は、第1実施形態と同様とされているため、上記以外の点では第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。なお、この実施形態において、かしめ部19の長手方向の両端部が鉄心片16の本体部17に対して直接繋がっている構成にしてもよい。
【0056】
<第6の実施形態>
図16には、本開示の第6実施形態に係る積層鉄心の鉄心片16におけるかしめ部19’周辺の構成が断面図にて示されている。このかしめ部19’は、第5実施形態におけるかしめ部19に類似しており、2個のかしめ部18が各々の長手方向に互いに繋がって形成されている。但し、このかしめ部19’では、2個の各かしめ部18において、互いに繋がる側の外側平坦部24と、互いに反対側に位置する外側平坦部24とが、鉄心片16の厚み方向において互いに異なる位置に配置されているので、これらの外側平坦部24におけるかしめ部18同士のかしめ力の設定自由度を高めることができる。
【0057】
なお、上記各実施形態では、ロータの積層鉄心に対して本開示が適用された場合について説明したが、これに限らず、本開示はステータの積層鉄心に対しても適用可能である。
【0058】
その他、本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本開示の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【0059】
また、2021年3月15日に出願された日本国特許出願2021-041801号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個別に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16